〔第1実施形態〕
以下に図面を参照して、本発明の実施形態を例示する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。即ち、本発明の範囲を以下の実施形態に限定する趣旨のものではない。
(画像形成装置)
第1実施形態にかかる画像形成装置について図1を用いて説明する。図1は第1実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
まず、画像形成装置100における画像形成動作について説明する。
図1において、感光体ドラム2(像担持体)は矢印の方向に回転する。感光体ドラム2は回転しながら、帯電ローラ3(帯電装置)によって一様に帯電される。その後、レーザー光学装置4(露光手段)からのレーザー光により露光され、その表面に静電潜像が形成される。
この静電潜像に対して、後述する非磁性一成分接触方式の現像装置20(現像手段)によって現像剤(トナー)を供給する。すると、静電潜像は現像され、現像剤像(トナー像)として可視化する。そして、可視化された感光体ドラム2上の現像剤像は、転写ローラ5によって記録媒体6(転写材)に転写される。
転写されずに感光体ドラム2上に残存した転写残現像剤は、クリーニングブレード71(クリーニング部材)により掻き取られ、廃現像剤容器70に収納される。クリーニングされた感光体ドラム2は上述の動作を繰り返し、画像形成を行う。
一方、現像剤像を転写された記録媒体6は、定着装置80によって永久画像を定着された後、装置外に排出される。
(現像装置)
現像装置20を図2を用いて更に説明する。図2は第1実施形態の画像形成時における現像装置の概略構成図である。
図2において、現像装置20は現像容器21を有する。現像容器21は非磁性一成分現像剤が充填される。現像容器21内には、現像剤収容室22が設けられる。
現像剤収容室22内には、現像ローラ23(トナー担持体)、供給ローラ24(トナー供給部材)、規制ブレード25、漏れ防止シール27が配設される。ここで、現像ローラ23は、感光体ドラム2に当接し、矢印αのように一定方向に回転して、その外周部に塗布された現像剤を感光体ドラム2に供給する。供給ローラ24は、現像ローラ23に当接して回転し、現像ローラ23に現像剤を供給する。規制ブレード25は、リン青銅、ウレタンゴム等で構成され、一端部が現像ローラ23に摺擦し、現像ローラ23の周りに塗布された現像剤を薄層にコーティングする。漏れ防止シール27は、現像ローラ23の下方の現像室26の隙間を覆う。
本実施形態においては、一成分現像剤として、負帯電性の非磁性現像剤を用いている。現像ローラ23は矢印のβ方向に回転駆動される。
規制ブレード25には、SUS材の薄板(厚み80μm)を用い、規制ブレード25が現像ローラ23の回転方向に対してカウンター方向(対向する方向)になるように設置した。このように、規制ブレード25を設けることにより、現像ローラ23の回転に伴って、現像ローラ23上の現像剤の塗布量(コート量)を規制することができる。
また、供給ローラ24には、芯金の外周にウレタンスポンジを形成したものが用いられている。この構成により、一旦、供給ローラ24内に含まれた現像剤は、供給ローラ24と現像ローラ23との当接部にて現像ローラ23の表面に供給される。
現像ローラ23と供給ローラ24は同方向に回転している。このため、両者の当接部(接触部)では、それぞれのローラの表面が逆方向に移動している。
また、現像装置20の各部材には、電圧が印加されるように構成される。例えば、本実施形態では、現像を行う際は、感光体ドラム2の電位が未露光部で−500V、露光部で−150Vである。また、現像ローラ23、供給ローラ24に約−350V、規制ブレード25に約−550Vが印加される。このような電位設定とすることで、負極性の現像剤は未露光部に付着せず、静電気力によって露光部へ付着することになる。
次に各部の構成を詳細に説明する。
現像ローラ23は、φ6(mm)の導電性の芯金28(第一電極部材)と、その周囲に形成したシリコンゴムを基層とした導電性弾性層からなる。表層にはアクリル・ウレタン系ゴム層がコートされる。現像ローラ23の外径はφ12(mm)、体積抵抗は約105Ω・cmである。画像形成中において、現像ローラ23の回転速度(周速)は160mm/secである。
尚、現像ローラ23は、後述する静電容量を検知するために第一電極部材を有していれば良い。例えば現像ローラ23の表面に導電性のスリーブを有し、スリーブを第一電極部材として用いてもよい。
供給ローラ24は、φ6(mm)の導電性の芯金29(第二電極部材)と、その周囲に形成した柔らかい連続気泡体からなるウレタンスポンジ層(発泡表層)から構成される。供給ローラ24の外径はφ13(mm)、体積抵抗は約108Ω・cmである。ウレタンスポンジ層の表面通気量は、3.2リットル/minである。表面通気量については後に詳述する。画像形成中において、供給ローラの回転速度(周速)は、140mm/secである。
本実施形態では、現像ローラ23の芯金28の中心と供給ローラ24の芯金29の中心との距離(以下、中心間距離)を13mmとする。また、現像ローラ23の表面が供給ローラ24のウレタンスポンジ層を、1.0mmほどの侵入量で押し込むように設置する。
ここで侵入量とは、芯金28の中心と芯金29の中心間を結ぶ線分上で、供給ローラ24と現像ローラ23の外径の和から上記中心間距離を差し引いて2で割った長さである。
規制ブレード25は、可撓性を持ったリン青銅板金から成り、一端を現像容器21に固定し、他端を自由端として現像ローラ23に当接させる。現像ローラ23の回転方向に対してカウンタ方向となる向きで、自由端近傍の平滑面が現像ローラ23の表面と摺擦するように配設される。
(現像装置内のトナーの挙動)
ここで、供給ローラ24と現像ローラ23がそれぞれ所定の速度で回転している際の、供給ローラ24のウレタンスポンジ層とその周りの空気中に分散されたトナーの挙動を解説する。
供給ローラ24と現像ローラ23の当接位置に対して、供給ローラ24の回転方向上流側にある領域(図2中のXの近傍)では、供給ローラ24が圧縮される。一方、回転方向下流側にある領域(図2中のYの近傍)では、供給ローラ24は圧縮状態から開放される。
ここで、X近傍においては、供給ローラ24が圧縮されるために、供給ローラ24に吸い込まれていたトナーが空気と共に吐き出される。逆に、Y近傍においては、供給ローラ24が圧縮状態から開放され元の形状に戻る。この際に、空気中に分散されたトナーが供給ローラ内に吸い込まれていく。
このトナーの出入りがスムーズに行われる条件下では、供給ローラ24の近傍に堆積している粉流体としてのトナーの圧力と供給ローラ24内の粉流体としてのトナーの圧力が均衡する。この場合、供給ローラ24内部に保持されるトナー量(現像剤量)と、現像容器21内のトナー総量との間に一定の相関関係が現れる。よって、供給ローラ24の芯金29と現像ローラ23間の静電容量は、単に供給ローラ24内部に保持されるトナー量を示すだけでなく、現像容器21内のトナー総量を推測することができる。
尚、トナーの出入りは供給ローラ24の回転時のみ起こり、回転停止後の供給ローラ24は回転中のトナー量を保持している。この状態で現像装置20を移動したり姿勢を変えたりしても供給ローラ24内部に保持されるトナー量は変化しない。
上記のトナーの出入りの「容易さ」を表すパラメータとして、連続気泡体からなるウレタンスポンジ層の表面通気量を測定した。本実施形態では前述の通り、表面通気量は3.2リットル/minである。表面通気量は、表面のセルが小さく内部セルの構造も細かく密になるほど通気量は低下し、逆に表面セルが大きい、もしくは内部セルを大きくすると通気量は増加する傾向にある。
このようにして、通気量の最適化が行なわれた供給ローラ24を用いた場合の、供給ローラ24のスポンジ層内部のトナー量と、現像容器21内部のトナー量との推移を図3に示す。図3は供給ローラのスポンジ内トナー量と静電容量の関係を示すグラフである。
現像容器21内のトナー量が減少すると静電容量も減少する。ここで、図3を参照すると、現像容器21内のトナー量が減少するにつれて、供給ローラ24のスポンジ層内部のトナー量も減少していく傾向がわかる。この結果より、供給ローラ24のスポンジ層内部に保持されるトナー量と、現像容器21内のトナー総量とに相関があることがわかる。
(静電容量測定方法)
本実施形態における現像装置20の静電容量測定方法について説明する。
まず、現像ローラ23の芯金28(第一電極部材)に所定の交流電圧を印加して、供給ローラ24の芯金29(第二電極部材)に誘起される交流電圧から芯金間の静電容量を検知する。芯金29に誘起される交流電圧は、芯金28と芯金29の間の静電容量を表し、この静電容量は芯金28と芯金29の間にあるトナーの量を反映する。
尚、芯金28と芯金29は、一方に交流電圧を印加して、他方から出力を検出すればよい。このため、芯金29に交流電圧を印加して、芯金28に誘起される交流電圧からトナー量測定を行っても構わない。
図4は静電容量の差分とトナー量の関係を示すグラフである。図4のグラフでは、供給ローラ24内のトナー量と、芯金28と芯金29との間の静電容量差分の関係を示している。
トナーの誘電率は空気に対して3倍前後である。このため、芯金28と芯金29の間にあるトナーの量が増えるほど、芯金28と芯金29の間の静電容量も増加する。その関係は図4に示すように、ほぼ線形の関係にある。静電容量の検知を行う際は、現像ローラ23が停止した状態で行う。
図5は第1実施形態におけるトナー量測定装置のブロック図である。
トナー量測定装置50(トナー量測定手段)は、トナー量報知手段51、トナー量判断手段52、コンパレーター53、検知回路54(電圧検知回路)、電圧印加手段55、電圧制御手段56を有する。
図5に示すように、芯金28には検知用の電圧印加手段55が接続され、芯金29には検知回路54が接続される。したがって、停止した状態は必須条件ではなく、現像ローラ23が回転していても測定することができる。
静電容量検知用の交流電圧の印加条件は、周波数f=50kHz、ピーク間電圧Vpp=180Vとしている。芯金29に誘起される交流電圧は、検知回路で整流された直流電圧そのものか、前記直流電圧を数値化した信号情報が出力値として出力される。
次に、検知回路54について述べる。図6は第1実施形態におけるトナー量検知回路図である。
図6に示すように、トナー量測定装置50の検知回路54は、検出器30、積分器31、比較器32を有する。図6は、コンデンサーC1で示される供給ローラ24と現像ローラ23、検出器30、積分器31、比較器32、トナー量検知用バイアス電源33、現像バイアス電源34の等価回路を示したものである。
トナー量検知用バイアス電源33より、交流バイアスであるトナー量検知用バイアスが供給される。検出器30は抵抗RとダイオードDから成り、コンデンサーC1の出力は、抵抗Rの電圧として取り出され、ダイオードDで半波整流される。半波整流された電圧は、コンデンサーC2で示される積分器31により積分され、直流電圧化される。この直流電圧は、コンパレーターFと、基準電圧Eで示される比較器32により比較される。
コンパレーターFは、積分器31の出力電圧と、基準電圧Eとの大小を比較し、出力電圧の方が大きければトナー有と判断し、出力電圧の方が小さければトナー切れと判断する。従って、基準電圧Eは、現像容器21内のトナーが消費され、無くなった時の積分器31の出力電圧に調整すれば良い。
図7は第1実施形態の検出電圧とトナー量の関係を示すグラフである。図7には、本実施形態における、現像容器21内のトナー量と積分器31の出力電圧の変化を示している。
図7に示すように、出力電圧はトナー量が多くなってくると、その電圧の増加量が低下することが分かる。さらにトナーが消費されると、図中トナー量がP点において、プリント画像上の一部に、画像欠けが生じる。そして、さらにプリントを続けると、全く画像が出ない状態となる。
以上のことから、本実施形態では、画像欠けが生じてしまうトナー量Pに対し、ベタ黒画像の10枚相当量のマージンを見越したトナー量PaをTOUT(トナー切れ状態)と判断する。そして、出力電圧Qaを基準電圧Eとすることで、現像容器のトナー切れと判断するよう制御される。
制御部は、トナー量測定装置50でトナー切れと判断された場合、操作部における表示部に、現像装置20についての「トナー切れ」等の警告表示を行う。制御部は、画像形成を中止する制御をさせることとしてもよい。また、現像容器21の交換時期を知らせるようにしても良い。
(静電容量のばらつきによる影響を抑制する構成)
上記の手段を用いて静電容量を検知する際には、画像形成などのために、その都度、現像ローラ23および供給ローラ24が回転してから測定を行う。このため、現像ローラ23と供給ローラ24、ならびに現像容器21内トナー分布が毎回異なる状態で測定することとなる。これにより、測定を行うたびに、それらのばらつきに起因する、静電容量のばらつきを含んだ検出電圧を得ることとなる。ここで、一般には上述のようなばらつきがあると、精度良くトナー量検知を行うことが困難となる。
このため、本実施形態においては、静電容量のばらつきを低減させつつトナー量検知を行う。以下、順を追って説明する。
まず、静電容量がばらつく要因について考察する。画像形成を行いながら静電容量を測定する場合、供給ローラ24及び現像ローラ23はその都度回転させる必要がある。たとえ、画像形成によってトナーが消費されず、供給ローラ24内のトナー充填量が変わっていなかったとしても、測定時には前回の位置と異なる当接位置で測定を行うこととなる。
ここで、供給ローラ24及び現像ローラ23の回転方向にばらつきがある場合、毎回検出値、すなわち静電容量Cがばらつくことがあると示唆される。実際に、供給ローラ24及び現像ローラ23を回転させながら、供給ローラ24と現像ローラ23間の静電容量を測定した結果を図8に示す。図8は供給ローラ回転中の静電容量の時間変化を示すグラフである。
図8の結果から、供給ローラ24の回転に伴い、供給ローラ24の1周ごとに同じ周期性を持って、静電容量がばらついていることが分かる。よって、供給ローラ24のばらつきが支配的であり、現像ローラ23のばらつきは、供給ローラ24のばらつきに比べて小さいと考えられる。
図9は検出電圧のばらつきを示すグラフである。図9(a)は、供給ローラ24を回転させた後、静止状態で静電容量を測定し、再度回転させて位相を変えた後、静止状態で測定という手順を繰り返したものである。図9(a)では、5回の静電容量測定を行った結果を示している。図9(a)の結果から、図8から得られた結果と同様に、供給ローラ24の位相が異なる度に、得られる静電容量の値にばらつきが生じていることが分かる。
次に、現像容器21内のトナー分布ならびに供給ローラ24内のトナーのばらつきを調査した。これらの寄与度を切り分けるため、現像容器21内にトナーを充填することなく、つまり供給ローラ24にトナーを含ませずに同様の検討を行った。この結果が図9(b)である。
図9(b)において、供給ローラ24がトナーを含んでいない場合にも、静電容量にばらつきが生じていることが分かる。この結果から、静電容量のばらつきは、トナー起因のばらつきは少なく、供給ローラ24が持つばらつきが支配的であることが明らかとなった。
この一因として、供給ローラ24の発泡具合に回転方向のムラがあると考えられる。供給ローラ24は、連続気泡体からなるウレタンスポンジ材であるので、発泡密度は回転方向で均一とは言い難い。実際、トナーの出入りに寄与する表面通気量にもばらつきが存在する。
したがって、本トナー量検知において、このばらつきを低減させるためには、供給ローラ24を回転させずに、状態を維持したまま測定を行うことが望ましい。そこで、上述のようなばらつきを低減させるため、本実施形態では、静止状態で異なる2状態を作り出し、その差分を取って演算する。
以下に、供給ローラ24のばらつきを抑制させるための手段ならびに理論的解釈を説明する。
実際に搭載しているトナー量の検知回路54を図6に示す。供給ローラ24と現像ローラ23間に交流バイアスを印加して、コントローラから出力される電圧ΔVは、供給ローラ24と現像ローラ23間の静電容量Cに依存する。したがって、供給ローラ24のばらつきが存在すると静電容量の変化として認識されるため、検出電圧ΔVがばらついてしまう。そこで、ばらつきを低減させるために、静電容量Cは変化させずに、他のパラメータを変化させることによりトナー量検知を行う。
出力電圧ΔVは、静電容量Cの他に、トナー量検知バイアスである交流バイアスのピーク間電圧Vppに依存することを利用する。
図3を用いて上述したように、静電容量は供給ローラ24内のトナー量と相関関係がある。ピーク間電圧Vpp、静電容量が出力電圧ΔVに比例することを考えると、供給ローラ24内のトナー量がピーク間電圧にも比例する。
また、現像容器21内のトナー量と、供給ローラ24内のトナー量にも相関があることがわかっている。これについて図10を用いて説明する。図10は現像容器内トナー量と供給ローラのスポンジ内トナー量の関係を示すグラフである。図10に示すように、同じ現像容器21で比較した場合、現像容器21内のトナー量が多い程、供給ローラ24に含まれるトナー量は多くなることが知られている。
これを受けて、ピーク間電圧Vppを変化させた場合を考える。Vpp=180Vを基準として、Vppを変動させる。Vppは150V、130Vを採用した。
あるトナー量検知タイミングで、あるピーク間電圧Vppを印加して誘起された検出電圧ΔVを検出する。この時の検出電圧をVA、現像容器21内のトナー量をTAとする。続いて、TA>TBである現像容器21内のトナー量TBの時、同様にして測定した検出電圧をVBとする。その結果を図11に示す。図11は、Vppを変えた時の検出電圧とトナー量の関係を示すグラフである。
図11に示すように、いずれも、検出電圧VA、VBとトナー量は同様の相関関係にあるが、Vppによって、検出電圧ΔVの増加量は異なることが分かる。Vppが小さくなるにつれ、傾きは小さくなる一方、Vppが大きくなると、傾きも大きくなる。
この時、検出電圧ΔVは、供給ローラ24と現像ローラ23間の静電容量Cと、ピーク間電圧Vppの積で表される。このため、この2値に応じて傾きが変わる。本実施形態においては、供給ローラ24と現像ローラ23の状態や配置関係は変わっていないので、静電容量の変化は無いと考えられる。したがって、Vppを変化させることで、得られる検出電圧ΔVが変わることが分かる。以上から、トナー充填量が多い時と少ない時では、Vppの変化分に伴う、異なるVpp間の検出電圧ΔVの差分に対する変化量が異なることになる。
以上の結果より本実施形態では、供給ローラ24を回転させることなく、静止状態でVppを変化させ、異なるVpp間の検出電圧ΔVの差分を算出する。この算出結果を基にトナー量を判断する。これにより、静電容量のばらつきを考慮する必要がなく、供給ローラ24の持つばらつきを抑制することができるようになる。この結果、検出精度の向上に寄与する。
以下に、実際に本実施形態の方法を用いてトナー量検知を行った結果を示す。
現像容器21内のトナー量が既知の現像容器を3種類(TFull、TOUT、T0)用意する。そして、予め供給ローラ24内にトナーを充分含ませた状態で、トナー量検知を行う。以下に、行った詳細な検討内容を説明する。
まず、実際に、本実施形態により供給ローラ24の回転方向のばらつきをキャンセルすることができることを調査・確認した。
上述の各々の現像容器21に対して、所定の交流バイアスを印加し、検出電圧ΔVを得る。この時のピーク間電圧VppをVpp1、検出電圧をV1とする。続いて、供給ローラ24及び現像ローラ23を回転させず、同じ位置、姿勢で、交流バイアスのVppをV1の測定時と異なる条件に設定する。
設定後、V1測定時と同様にして、検出電圧V2を測定する。この時のVppをVpp2とする。以上のように、静止状態で2値を取り、その差分を算出する。以上に示した実施形態は、上述のVppを変化させて行った検討と同じである。
続いて、供給ローラ24及び現像ローラ23の位相を変えた後、同様の操作を行う。これを5回繰り返す。この時のV1、V2、|V1−V2|のばらつきを比較した。この検討でのVpp1=180V、Vpp2=130Vとした。
図12はVppを変えた時とその差分を取った時のばらつきを比較したグラフである。
図12においては、各々のトナー量に対して、5回測定したときのばらつき結果を示す。
この時のばらつきΔV1、ΔV2、Δ(|V1−V2|)は、5回測定内の最大出力と最小出力の差分である。この結果から、供給ローラ24のみでの検出電圧V1、V2は、検出ごとのばらつきがあるのに対して、本実施形態では、Δ(|V1−V2|)を算出することにより、ばらつきを低減させることができた。
これは、トナー充填量にかかわらず成り立つ。よって、本実施形態は供給ローラ24内のトナー量によらず、効果を発揮することができる。このように、供給ローラ24を回転させず、同じ状態で検出電圧を測定することにより、供給ローラ24の構成から導かれる検出結果のばらつきを抑えることができる。
本方法が成立する理論的解釈として、以下のことが推測される。供給ローラ24は回転方向にばらつきを持っているが、供給ローラ24を回転させないことにより、検出電圧V1、V2は同じばらつきを持った箇所で測定を行うことになる。
そして、位相を変えて同様に測定した場合、前回とは異なるばらつきを持った箇所で測定を行うことになるが、その時の検出電圧V1、V2は同位相で測定される。したがって、同じばらつきを持った状態で検出電圧V1、V2が測定されることになる。よって、検出電圧V1、V2の絶対値は毎回ばらつき分シフトするが、差分を算出することにより、そのばらつきを低減することができる。その詳細を図13に示す。
図13は第1実施形態におけるばらつき低減メカニズムを示したグラフである。図13に示すように、検出電圧V1、V2の絶対値は異なっているものの、検出電圧の差分は略一定である。
次に、本実施形態における、トナー量検知を行うためのトナー量と検出電圧ΔVの差分ΔVD1との関係性を説明する。
図14は第1実施形態におけるVpp変化から得られた差分ΔVD1を取った時のトナー量との関係を示したグラフである。具体的には、上述の結果から得られた|V1−V2|の値をトナー量ごとに比較したものである。そして、現像容器21内のトナー量TAとTBにおける、検出電圧ΔVの差分ΔVD1=|TA(|V1−V2|)−TB(|V1−V2|)|の変化率を示した。ここで、「TA(|V1−V2|)」とは、トナー量がTAのときの|V1−V2|の値を意味する。
図14は、V1はVpp=180Vとした時の検出電圧ΔVを示しており、V2はVpp=150V、130Vの時の検出電圧ΔVを示す。ここで、この時の差分ΔVD1を算出する。次の説明においては、トナー交換時を示すトナー切れ状態のトナー量TOUTに対して、満杯状態のトナー量をTFull、空状態のトナー量をT0とする。
まず、現像容器21内のTFullとTOUTで比較した時、その差分|V1−V2|の差ΔVDa=TFull−TOUT=|TFull(|V1−V2|)−TOUT(|V1−V2|)|を求める。そして、TFullと空状態のトナー量T0とのΔVDb=TFull−T0=|TFull(|V1−V2|)−T0(|V1−V2|)|を求める。すると、この結果から、|V1−V2|はトナー量に依存し、且つΔVDaよりもΔVDbの方が大きくなることが分かる。
したがって本実施形態では、ピーク間電圧Vppを変化させ、トナー量によってΔVD1が変化することを利用してトナー量検知を行う。尚、これは画像形成装置100の動作環境を問わず成り立つ。
以上説明したように、本実施形態では、複数種類の電圧条件の交流電圧を印加し、交流電圧を印加したそれぞれのタイミングで検出電圧を測定する。そして、検出電圧の差分をもとにトナー量を判断する。このようにトナー量を算出すると、トナー供給部材が持つ回転方向の静電容量のばらつきを抑えることができる。したがって、トナー量を精度良く検知することができる。
〔第2実施形態〕
供給ローラ24のばらつきを抑えるために、第1実施形態のようにピーク間電圧Vppを変化させる方法と同様の理論で、交流バイアスの周波数fを変化させることも可能である。
第1実施形態から、検出電圧ΔVと現像容器21内のトナー量に相関があることを踏まえ、周波数fを変化させた場合を考える。f=50kHzを基準として、周波数を変動させ、上記と同じ方法で測定した結果を図15に示す。図15は周波数を変えた時の検出電圧とトナー量の関係を示すグラフである。
図15に示すように、検出電圧ΔVに対してトナー量をプロットすると、周波数によって、検出電圧ΔVとトナー量は相関関係があることが分かる。つまり、周波数が高くなれば、検出電圧ΔVも高くなる。このように、検出電圧ΔVは、周波数と相関関係があるため、周波数に応じて検出電圧ΔVの増加量は異なることが分かる。したがって、周波数を変化させることで、得られる検出電圧ΔVが変わる。以上から、トナー充填量が多い時と少ない時とで、周波数の変化分に伴う、異なる周波数間の検出電圧ΔVの差分に対する変化量が異なる。
このため、本実施形態では、供給ローラ24を回転させることなく、静止状態で周波数を変化させ、その検出電圧ΔVの差分を算出する。この算出結果を基にトナー量を判断する。この検出手段を用いることにより、第1実施形態と同様に、供給ローラ24の持つばらつきを抑制することができるようになり、検出精度の向上に寄与する。
以下に、実際に本実施形態の方法を用いてトナー量検知を行った結果を示す。
現像容器21内のトナー量が既知の現像容器を3種類(TFull、TOUT、T0)用意する。そして、予め供給ローラ24内にトナーを充分含ませた状態で、トナー量検知を行う。以下に、詳細な手段を説明する。
まず、実際に、本実施形態に係る方法により供給ローラ24の回転方向のばらつきをキャンセルすることができることを調査・確認した。
上述の各々の現像容器21に対して、所定の交流バイアスを印加し、検出電圧ΔVを得る。この時の周波数をf11、検出電圧をV11とする。続いて、供給ローラ24及び現像ローラ23を回転させず、同じ位置、姿勢で、交流バイアスの周波数fをV11の測定時と異なる条件(f12)に設定する。
設定後、V11測定時と同様にして、検出電圧V12を測定する。この時の周波数をf12とする。以上のように、供給ローラ24の静止状態で2値を取り、その差分Δを算出する。供給ローラ24及び現像ローラ23の位相を変えた後、同様の操作を行う。これを5回繰り返す。この時のV11、V12、|V11−V12|のばらつきを比較した。この検討でのf11=50kHz、f12=40kHzとした。
各々のトナー量に対して、5回測定のばらつき結果を図16に示す。図16は第2実施形態における周波数を変えた時とその差分を取った時のばらつきを比較したグラフである。
第2実施形態の方法でも、供給ローラ24のみの検出電圧のばらつきΔV11、ΔV12よりも、Δ(|V11−V12|)を算出することにより、ばらつきを低減させることができた。また、本実施形態の方法は供給ローラ24内のトナー量に関わらず、効果を発揮した。この理論的な解釈は第1実施形態に記載した記述と同様である。
次に、第2実施形態の方法を用いて、トナー量検知を行うために、トナー量と検出電圧ΔVの差分ΔVD2との関係性を説明する。
上述の結果から得られた|V11−V12|の値をトナー量ごとに比較した。現像容器21内のトナー量による、検出電圧ΔVの差分ΔVD2=TA(|V11−V12|)−TB(|V11−V12|)の変化率を示した結果を図17に示す。図17は第2実施形態における周波数変化から得られた差分ΔVD2を取った時のトナー量との関係を示したグラフである。
図17では、V11としてf=50kHzの時の検出電圧ΔVを示しており、V12はf=40kHzの時の検出電圧ΔVを示している。この時の差分ΔVD2を算出している。
つまり、まず、現像容器内のトナー量TFullとTOUTで比較した時、その差分|V11−V12|の差ΔVDc=ΔTFull−TOUT=|TFull(|V11−V12|)−TOUT(|V11−V12|)|を求める。そして、TFullとT0とのΔVDd=TFull−T0=|TFull(|V11−V12|)−T0(|V11−V12|)|を求める。すると、この結果から、|V1−V2|はトナー量に依存し、且つΔVDcよりもΔVDdの方が大きくなることが分かる。
したがって本実施形態では、周波数を変化させ、トナー量によってΔVD2が変化することを利用してトナー量検知を行う。
以上説明したように、本実施形態では、複数の周波数条件の交流電圧を印加し、交流電圧を印加したそれぞれのタイミングで検出電圧を測定する。そして、検出電圧の差分をもとにトナー量を判断する。このようにトナー量を算出すると、トナー供給部材が持つ回転方向の静電容量のばらつきを抑えることができる。したがって、ユーザーにトナー量を精度良く検知することができる。
〔他の実施形態〕
第1実施形態、第2実施形態は必ずしも単独で行う必要はない。即ち、Vppおよび周波数を同時に変えて2値を算出しても良い。
第1実施形態では、印加するピーク間電圧VppのΔを大きくすると、より大きなΔVDを確保できることが分かっている。そして、第2実施形態の交流バイアスの周波数に関しても同様のことが成り立つ。このため、Vpp、周波数ともにΔVDを大きく取るような条件を選択することにより、第1実施形態、第2実施形態に比べて、さらに得られる差分Δが大きくなる。すなわち、第1実施形態及び第2実施形態における算出方法を組み合わせることによって、トナー量検知をさらに精度良く行うことができる。
また、前述した実施形態における検出電圧ΔVの差分ΔVDを算出する際に、異なる2値を採用しているが、これに限るものではない。例えば、異なるピーク間電圧Vpp及び周波数fを選択すれば、2値に限らず3値以上でも良い。