以下、一実施形態に従うシースルーディスプレイが、図面を用いて説明される。図面中、同一、同様の作用或いは同様の動作をなす構成要素には、同様の符号が付されている。冗長な説明を避けるために、必要に応じて、重複する説明は省略される。一連の実施形態の原理の理解を助けるために、図面に示される構成要素は、模式的に示されている。したがって、図面に示される構成要素の形状も模式的であり、以下に説明される実施形態の原理を何ら限定するものではない。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に従うシースルーディスプレイとして例示されるヘッドアップディスプレイ(以下、HUDと称される)の概略図である。図1を用いて、ヘッドアップディスプレイが説明される。
(ヘッドアップディスプレイの構成)
図1に概略的にHUD100は、例えば、自動車に搭載される。図1には、自動車のフロントガラス210が示されている。フロントガラス210は、車室の内側境界を規定する内面211と、内面211とは反対側の外面212と、を含む。
HUD100は、レーザ光LBを出射するレーザ光源110と、レーザ光源110から出射されたレーザ光LBを投射する投射光学系120と、フロントガラス210の内面211に取り付けられた体積ホログラム200と、を備える。投射光学系120は、レンズ121、折返ミラー122、液晶パネル123、投射レンズ124及びスクリーン125を備える。本実施形態において、レーザ光源110は、光を発する光源として例示される。
HUD100は、制御部130を更に備える。制御部130は、レーザ光源110と液晶パネル123とに電気的に接続される。レーザ光源110及び液晶パネル123は、制御部130の制御下で動作する。
(ヘッドアップディスプレイの動作)
図1を用いて、本実施形態のHUD100の動作が説明される。
制御部130は、レーザ光源110に、レーザ光LBを出射させるための制御信号を出力する。レーザ光源110は、制御部130からの制御信号に応じて、レーザ光LBをレンズ121に向けて出射する。レンズ121を通過したレーザ光LBは、折返ミラー122によって液晶パネル123に向けて反射される。この結果、液晶パネル123は、レーザ光LBによって2次元的に照明される。
レンズ121は、液晶パネル123が無駄なく照明されるように、レーザ光LBを拡大する。折返ミラー122がレーザ光LBを折り返すように配設されるので、小型のHUD100が形成される。尚、レーザ光を拡大するレンズやレーザ光を折り返す折返ミラーは、HUDの仕様やレーザ光源の特性に応じて省略されてもよい。
制御部130は、液晶パネル123に、表示される画像のパターンを表示させるための制御信号を出力する。液晶パネル123は、制御部130からの制御信号に応じて、表示される画像のパターンを作り出す。上述の如く、レーザ光LBは、液晶パネル123を照明するので、レーザ光LBは2次元的に強度変調され、映像光ILとして、液晶パネル123から出射される。
投射レンズ124は、液晶パネル123から出射された映像光ILをスクリーン125上に結像する。この結果、スクリーン125上に画像が表示されることとなる。
体積ホログラム200は、スクリーン125から出射された映像光ILを回折し、運転者DRに向けて偏向する。この結果、運転者DRは、体積ホログラム200によって拡大された虚像VIをフロントガラス210越しに視認することができる。
図1に関連して説明された投射光学系120の機能が達成されるならば、他の光学的構成を有する光学系が投射光学系として用いられてもよい。したがって、図1に示される投射光学系120の光学的構成は、本実施形態の原理を何ら限定するものではない。
(体積ホログラムの回折原理)
図2Aは、干渉縞の形成工程下にある体積ホログラム200の概略図である。図2Bは、干渉縞の形成の後にレーザ光LBが入射された体積ホログラム200の概略図である。図1乃至図2Bを用いて、体積ホログラムの回折原理が説明される。
体積ホログラム200には、干渉縞201が形成される。干渉縞201を形成するために、図1に関連して説明されたレーザ光LBと略等しい波長のレーザ光(以下、記録光RLと称される)が2光束に分離される。2光束に分離された記録光RLは、図2Aに示される如く、角度θ1及び角度θ2で体積ホログラム200に入射される。この結果、干渉縞間隔Γの干渉縞201が体積ホログラム200に形成される。
干渉縞201が形成された後、レーザ光LBが角度θ1で体積ホログラム200に入射するならば、体積ホログラム200は、所定の回折効率で、レーザ光LBを回折する。この結果、レーザ光LBは、角度θ2の方向に体積ホログラム200から出射される。この条件は、一般的に、ブラッグ条件と呼ばれる。
(温度変動の影響)
HUD100の周囲の温度の変化が、体積ホログラム200の回折に与える影響が説明される。
図1に関連して説明されたHUD100の様々な要素のうち、HUD100の周囲の温度の変動に影響を受けやすい要素は、主に、体積ホログラム200及びレーザ光源110である。HUD100の周囲の温度の変動によって体積ホログラム200及びレーザ光源110が受ける影響が説明される。
体積ホログラム200は、HUD100の周囲の温度の変動に応じて、膨張又は収縮する。この結果、干渉縞間隔Γが変動する。干渉縞間隔Γの変動は、体積ホログラム200の回折角度や回折効率の変動に帰結する。例えば、レーザ光LBの波長が一定であり、且つ、HUD100の周囲の温度の上昇に起因して、体積ホログラム200が等方的に膨張するならば、図2Bに示される如く、角度θ1より角度θ2が大きいとき、角度θ1で入射したレーザ光LBは、体積ホログラム200が膨張する前の角度θ2よりも小さな角度で、体積ホログラム200から出射することとなる。ブラッグ条件からの逸脱の結果、HUD100の周囲の温度が上昇する前と比べて、回折効率も低下する。HUD100の周囲の温度が低下するならば、角度θ1で体積ホログラム200に入射したレーザ光LBは、逆に、角度θ2よりも大きな角度で体積ホログラム200から出射することとなる。角度θ1が角度θ2よりも小さい条件下では、HUD100の周囲の温度が上昇するならば、レーザ光LBは、体積ホログラム200の膨張前の角度θ2よりも大きな角度で、体積ホログラム200から出射する。逆に、HUD100の周囲の温度が低下するならば、レーザ光LBは、体積ホログラム200の収縮前の角度θ2よりも小さな角度で、体積ホログラム200から出射する。
上述の如く、温度変動に起因して、体積ホログラム200が膨張又は収縮するならば、角度θ1と角度θ2との間の大小関係に応じて、ブラッグ条件からの逸脱方向は相違する。しかしながら、いずれの場合においても、ブラッグ条件からの逸脱は生ずるので、HUD100の周囲の温度が変動する前と比べて、回折効率は低下することとなる。
本実施形態のレーザ光源110として、半導体レーザ光源が例示される。半導体レーザ光源の周囲の温度が変動すると、半導体レーザ光源から出射されるレーザ光LBの波長が変動する。一般的に、半導体レーザ光源の周囲の温度が高くなるほど、半導体のバンド構造の禁制帯の幅が狭くなる。この結果、半導体レーザ光源からのレーザ光LBの発振波長は低エネルギ側(長波長側)にシフトする。レーザ光LBの波長の変動は、体積ホログラムでの回折角や回折効率の変動に帰結する。
体積ホログラム200の干渉縞間隔Γが一定である条件の下、レーザ光源110として用いられる半導体レーザ光源の周囲の温度の上昇に起因して、レーザ光LBの波長が長波長側にシフトし、且つ、図2Bに示される如く、角度θ1より角度θ2の方が大きいならば、角度θ1で体積ホログラム200に入射したレーザ光LBは、レーザ光LBの波長が変動する前の角度θ2よりも大きな角度で体積ホログラム200から出射する。ブラッグ条件からの逸脱の結果、レーザ光源110の周囲の温度が上昇する前と比べて、回折効率は低下する。逆に、レーザ光源110の周囲の温度が低下するならば、レーザ光LBは、角度θ2よりも小さな角度で体積ホログラム200から出射する。角度θ2が角度θ1より小さく、且つ、レーザ光源110の周囲の温度が上昇するならば、レーザ光LBは、レーザ光LBの波長が変動する前の角度θ2よりも小さな角度で体積ホログラム200から出射する。逆に、レーザ光源110の周囲の温度が低下するならば、レーザ光LBは、角度θ2よりも大きな角度で体積ホログラム200から出射する。
上述の如く、温度変動に起因して、レーザ光LBの波長が変動するならば、角度θ1と角度θ2との間の大小関係に応じて、ブラッグ条件からの逸脱方向は相違する。しかしながら、いずれの場合においても、ブラッグ条件からの逸脱は生ずるので、レーザ光源110の周囲の温度が変動する前と比べて、回折効率は低下することとなる。
上述の検討から、HUD100の周囲の温度変動に起因する体積ホログラム200の膨張又は収縮によって引き起こされるブラッグ条件からの逸脱方向は、好ましくは、レーザ光源110の周囲の温度の変動に起因するレーザ光源110の波長変動によって引き起こされるブラッグ条件からの逸脱方向とは反対となるように設定される。HUD100及び/又はレーザ光源110の周囲の温度の変動の結果、体積ホログラム200の膨張又は収縮及びレーザ光LBの波長シフトが同時に生ずると、ブラッグ条件からのずれは相殺される。
レーザ光源110として、温度上昇によって波長が長波長側にシフトする光源(例えば、半導体レーザ光源)が用いられるならば、温度変動に起因して体積ホログラムが単独で膨張又は収縮する場合や温度変動に起因してレーザ光源から出射されるレーザ光の波長が単独で変動する場合と比較して、回折角の変動に起因する画像の表示位置のずれや回折効率の低下に伴う輝度の低下といった画質の劣化が生じにくくなる。
半導体レーザ光源から出射されるレーザ光の波長の温度変動量は、一般的に、半導体レーザ光源に用いられる半導体の種類に依存する。例えば、一般的に使用される赤色レーザ光源として、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、リン(P)からなる組成の活性層を持つ半導体レーザ光源が例示される。当該半導体レーザ光源から出射されるレーザ光の波長の温度依存性Kは、約0.2nm/℃である。シースルーディスプレイに一般的に用いられる体積ホログラムの線膨張係数αは、約2.0×10−4/℃である。
図3は、体積ホログラムの温度膨張特性及びレーザ光の波長の温度依存特性を概略的に示すグラフである。図3を用いて、体積ホログラムの温度膨張特性及びレーザ光の波長の温度依存特性が説明される。
図3に示される温度膨張特性は、2.0×10−4/℃の線膨張係数αを有する体積ホログラムから得られている。また、図3に示されるレーザ光の波長の温度依存特性は、0.2nm/℃の波長の温度依存性Kを有する赤色半導体レーザ光源から出射された赤色レーザ光から得られている。
図3のグラフの横軸は、温度を表す。図3のグラフの左の縦軸は、温度変動に起因して変動する波長の変動割合を表す。図3のグラフの右の縦軸は、温度変動に起因して膨張する体積ホログラムの干渉縞間隔Γの変動割合を表す。
図3に示されるグラフにおいて、25℃における赤色レーザ光の波長は、637nmである。温度が、例えば、45℃であるとき、温度変動量は20℃である。したがって、温度が25℃から45℃に上昇したときの波長の変動割合は、0.0063(=20(℃)×0.2(nm/℃)÷637(nm))となる。また、温度が25℃から45℃に上昇したときの体積ホログラムの干渉縞間隔Γの一次元方向の変動割合は、0.004(=2.0×10−4/℃×20℃)となる。したがって、波長の変動割合と干渉縞間隔Γの変動割合との間の差異は、0.0023となる。
上述の検討から、体積ホログラムとともに上述の波長依存性を有する半導体レーザ光源が用いられるならば、温度変動に起因するブラッグ条件からのずれが好適に低減されることが分かる。したがって、体積ホログラムを利用するHUDといったシースルーディスプレイの光源として、温度上昇によって波長が長波長側にシフトする光源(例えば、半導体レーザ光源)が用いられるならば、温度変動が生じても、回折角の変動に起因する画像の表示位置のずれや回折効率の低下に起因する輝度低下といった画質の劣化が生じにくくなる。
半導体レーザ光源は、一般的に、レーザ光源の中で最も安価である。したがって、HUDの光源として半導体レーザ光源が用いられるならば、安価なHUDが提供される。尚、上述の組成以外の半導体を用いた半導体レーザ光源でも、上述の効果が得られることは明らかである。したがって、本実施形態の原理は、上述の組成の半導体を有する赤色半導体レーザ光源に限定されるものではない。更に、光源からの光の波長が、上述の特性と同様の温度特性を有するならば、半導体レーザ光源以外の光源であっても、上述の効果は得られる。
本発明者は、上述の原理に基づく検討の結果、以下の条件において、回折角の変動に起因する画像の表示位置のずれや回折効率の低下に起因する輝度の低下といった画質の劣化が生じにくくなることを見出した。図1乃至図3を用いて、画質の劣化を抑制するための条件が説明される。
体積ホログラム200が、α(/℃)の線膨張係数と、Λ(nm)の波長の記録光RLで記録された干渉縞201を有し(図2A参照)、レーザ光源110から発せられたレーザ光LBの波長がK(nm/℃)の温度依存性を有するならば、波長Λ(nm)及び温度依存性K(nm/℃)が、以下の数式1に示される関係を満たすとき、体積ホログラム200を利用したシースルーディスプレイ(HUD100)において、温度変動に起因するブラッグ条件からの逸脱が低減される。
[数1]
0≦K/Λ≦2α
上述の数式1の関係が満たされるならば、回折角の変動に起因する画像の表示位置のずれや回折効率の低下に起因する輝度の低下といった画質の劣化が生じにくくなる。
図4は、本実施形態の他のシースルーディスプレイとして例示されるHUDの概略図である。図1及び図4を用いて、HUDが説明される。
図4に示されるHUD100Aは、図1に関連して説明されたHUD100と同様の投射光学系120を備える。HUD100Aは、図1に関連して説明されたHUD100と異なり、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bを含む光源150を備える。赤色半導体レーザ光源110Rは、赤色レーザ光LB(r)を出射する。緑色半導体レーザ光源110Gは、緑色レーザ光LB(g)を出射する。青色半導体レーザ光源110Bは、青色レーザ光LB(b)を出射する。本実施形態において、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bそれぞれは、光源要素として例示される。
HUD100Aは、制御部130Aを更に備える。制御部130Aは、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G、青色半導体レーザ光源110B並びに液晶パネル123それぞれに電気的に接続される。赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G、青色半導体レーザ光源110B並びに液晶パネル123は、制御部130Aの制御下で動作する。
HUD100Aは、ダイクロイックミラー151、152を更に備える。赤色半導体レーザ光源110Rは、赤色レーザ光LB(r)をダイクロイックミラー151に向けて出射する。また、青色半導体レーザ光源110Bも、青色レーザ光LB(b)をダイクロイックミラー151に向けて出射する。ダイクロイックミラー151は、赤色レーザ光LB(r)及び青色レーザ光LB(b)を合波する。ダイクロイックミラー151によって合波されたレーザ光は、ダイクロイックミラー152へ向けて伝搬する。緑色半導体レーザ光源110Gは、緑色レーザ光LB(g)をダイクロイックミラー152に向けて出射する。ダイクロイックミラー152は、ダイクロイックミラー151によって合波されたレーザ光と緑色レーザ光LB(g)とを合波する。ダイクロイックミラー152によって合波された3色のレーザ光は、投射光学系120へ入射する。
投射光学系120は、図1に関連して説明された如く、レンズ121、折返ミラー122、液晶パネル123、投射レンズ124及びスクリーン125を備える。赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)は、液晶パネル123を照明する。この結果、赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)を含む映像光ILが液晶パネル123から出射される。その後、赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)によって描かれる画像がスクリーン125上に表示される。
HUD100Aは、フロントガラス210の内面211に取り付けられた体積ホログラム200Aを更に備える。スクリーン125から出射された赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)は、体積ホログラム200Aによって回折され、運転者DRに向けて偏向される。この結果、運転者DRは、体積ホログラム200Aによって拡大された虚像VIをフロントガラス210越しに視認することができる。
体積ホログラム200Aは、赤色、緑色及び青色のそれぞれの色相に対応する干渉縞が多重に記録された単一のホログラム素子であってもよい。代替的に、体積ホログラム200Aは、赤色の色相に対応する干渉縞が形成されたホログラム素子、緑色の色相に対応する干渉縞が形成されたホログラム素子及び青色の色相に対応する干渉縞が形成されたホログラム素子が積層されることによって形成されてもよい。
図1に関連して説明された如く、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び/又は青色半導体レーザ光源110Bの周囲の温度が上昇すると、赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の波長は、長波長側にそれぞれシフトする。
図5は、赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の波長の温度依存特性を概略的に示すグラフである。図2B、図4及び図5を用いて、赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の波長の温度依存特性が説明される。
図5のグラフの横軸は、温度を表す。図5のグラフの縦軸は、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び/又は青色半導体レーザ光源110Bの周囲の温度変動に起因して変動する波長の変動割合を表す。
図5のグラフは、25℃における赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の波長が、温度変動に伴って、どの程度変化したかを表す。図5中において、赤色半導体レーザ光源110Rからの赤色レーザ光LB(r)の波長の温度依存性は、「Kr」の記号を用いて表されている。緑色半導体レーザ光源110Gからの緑色レーザ光LB(g)の波長の温度依存性は、「Kg」の記号を用いて表されている。青色半導体レーザ光源110Bからの青色レーザ光LB(b)の波長の温度依存性は、「Kb」の記号を用いて表されている。
赤色半導体レーザ光源110Rは、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、リン(P)からなる組成の活性層を持つ半導体レーザ光源であってもよい。この場合、赤色レーザ光LB(r)の波長の温度依存性Krは、約0.2nm/℃となる。
緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、窒素(N)からなる組成の活性層を持つ広く知られた半導体レーザ光源であってもよい。この場合、緑色レーザ光LB(g)の波長の温度依存性Kgは、約0.04nm/℃となる。また、青色レーザ光LB(b)の波長の温度依存性Kbも、約0.04nm/℃となる。
図5において、25℃の温度において、赤色半導体レーザ光源110Rからの赤色レーザ光LB(r)の波長は、637nmである。緑色半導体レーザ光源110Gからの緑色レーザ光LB(g)の波長は、532nmである。青色半導体レーザ光源110Bからの青色レーザ光LB(b)の波長は、445nmである。
体積ホログラム200Aの干渉縞の記録に用いられた記録光の波長に対して、25℃において略等しい波長のレーザ光を出射する半導体レーザ光源が用いられるとき、半導体レーザ光源の周囲の温度が上昇するならば、半導体レーザ光源から出射されるレーザ光の波長は、長波長側にシフトする。この結果、ブラッグ条件が満たされなくなり、回折角が変動する。
図2Bに示される如く、体積ホログラム200Aに対してレーザ光LBが入射する角度θ1より体積ホログラム200Aからレーザ光LBが出射する角度θ2の方が大きいというブラッグ条件下において、レーザ光LBの波長が長くなると、上述の如く、体積ホログラム200Aから出射するレーザ光LBの体積ホログラム200Aからの出射角度は、角度θ2よりも大きくなる。例えば、HUD100Aの光源150のうち緑色半導体レーザ光源110Gに代えて、温度変動に拘わらず波長が一定となる特性を有するレーザ光源(例えば、固体レーザ素子から出射される基本波を波長変換し、緑色レーザ光を生成する波長変換レーザ光源)が用いられるならば、当該レーザ光源の周囲の温度が、例えば、45℃となっても、緑色レーザ光の波長はほとんど変動しない。その一方で、赤色レーザ光LB(r)の波長は、25℃の条件下の波長よりも約0.0062倍の波長分だけ長くなる。したがって、赤色レーザ光LB(r)と温度変動の影響を受けにくい緑色レーザ光源から出射された緑色レーザ光との間で、体積ホログラム200Aから出射されるときの角度θ2に差異が生ずる。したがって、運転者DRは、赤色レーザ光LB(r)で描かれた赤色画像と温度変動の影響を受けにくい緑色レーザ光源から出射された緑色レーザ光で描かれた緑色画像との間で、0.0062倍の波長変動割合に対応する量だけ色ずれした虚像VIを視認することとなる。
本実施形態のHUD100Aは、光源150として、温度上昇に応じて、出射される光の波長が長波長側にシフトする光源(赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110B)を有する。例えば、45℃において、緑色半導体レーザ光源110Gから出射される緑色レーザ光LB(g)の波長は、25℃における波長よりも約0.0016倍の波長分だけ長くなる。
緑色の色相の光を発する光源として、緑色半導体レーザ光源110Gが用いられるならば、赤色レーザ光LB(r)と緑色レーザ光LB(g)との間における体積ホログラム200Aからの出射角の差異は、温度に依存することなく一定の波長の緑色のレーザ光を発するレーザ光源が用いられたときと比べて、約1/4((0.0062−0.0016)/0.0016=0.74)だけ低減される。したがって、画像ずれ量も、約1/4だけ低減される。
上述の画像ずれ量の低減の原理は、光源が発する色相に限定されるものではない。上述の画像ずれ量の低減の原理は、任意の色相のレーザ光を発する光源に対して、同様に当てはめられる。
したがって、本実施形態の原理は、異なる色相(異なる波長)の光を発するn個(nは、1より大きい整数)の光源要素を有するシースルーディスプレイ(ヘッドアップディスプレイ)に適用される。n個の光源要素全てが、温度上昇に伴って、長波長側への波長のシフトを引き起こすならば、温度変動に起因する画像間(色相の異なる画像間)での相対的な位置ずれが緩和される。したがって、HUDは、高画質の画像を表示することができる。
本実施形態において、温度変動に起因する画像ずれが説明されている。しかしながら、HUDの使用環境温度が一定に管理されている条件下においても、体積ホログラムに干渉縞を記録するために用いられた記録光の波長に対して、画像形成に用いられるレーザ光の波長が相違するならば、上述と同様の理由で、画像形成に用いられるレーザ光の偏光方向は、干渉縞の記録時に設定された方向と相違することとなる。
複数の色相のレーザ光を、所定温度において、干渉縞の記録時と同じ方向に偏向させ、画像を形成するならば(例えば、HUD100Aのように)、所定温度において、干渉縞の記録に用いられた記録光と同じ波長のレーザ光を出射するレーザ光源が必要とされる。このことは、使用可能な波長の範囲が狭くする。したがって、例えば、安価な半導体レーザ光源が画像形成のための光源として用いられると、歩留まりの悪化が引き起こされる。
以下に説明される本発明者の検討により、使用可能な波長範囲は拡大される。
例えば、25℃の温度条件下で、複数の半導体レーザ光源(n個の光源要素)から出射されるレーザ光の波長が測定される。尚、複数の半導体レーザ光源は、異なる波長(λ1、λ2、・・・、λn)のレーザ光を発するように形成されている。測定された波長と体積ホログラムの干渉縞の記録に用いられた記録光の波長(Λ1、Λ2、・・・、Λn)との間のずれの割合が、その後算出される。測定された半導体レーザ光源の中で、算出されたずれの割合が近いもの同士が選択的に組み合わせられるならば、角度θ2に対する異なる波長(λ1、λ2、・・・、λn)のレーザ光の回折角のずれが低減される。尚、波長Λ1は、画像形成に用いられるレーザ光の波長λ1を回折するための干渉縞を記録するために用いられた記録光の波長である。波長Λ2は、画像形成に用いられるレーザ光の波長λ2を回折するための干渉縞を記録するために用いられた記録光の波長である。波長Λnは、画像形成に用いられるレーザ光の波長λnを回折するための干渉縞を記録するために用いられた記録光の波長である。
赤色の色相のレーザ光を回折するための干渉縞を形成するために用いられる赤色レーザ光源から出射される波長は、以下の説明において、「Λr」の記号を用いて表される。緑色の色相のレーザ光を回折するための干渉縞を形成するために用いられる緑色レーザ光源から出射される波長は、以下の説明において、「Λg」の記号を用いて表される。青色の色相のレーザ光を回折するための干渉縞を形成するために用いられる青色レーザ光源から出射される波長は、以下の説明において、「Λb」の記号を用いて表される。
HUD100Aに搭載された赤色半導体レーザ光源110Rから出射される赤色レーザ光LB(r)の波長は、以下の説明において、「λr」の記号を用いて表される。HUD100Aに搭載された緑色半導体レーザ光源110Gから出射される緑色レーザ光LB(g)の波長は、以下の説明において、「λg」の記号を用いて表される。HUD100Aに搭載された青色半導体レーザ光源110Bから出射される青色レーザ光LB(b)の波長は、以下の説明において、「λb」の記号を用いて表される。
以下の数式2乃至数式4に基づき算出される無次元数が近くなるように赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bが選択されるならば、角度θ2からの赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の回折角のずれが略同等となる。したがって、所定温度における赤色画像、緑色画像及び青色画像間の相対的なずれが低減される。
[数2]
(λr−Λr)/Λr
[数3]
(λg−Λg)/Λg
[数4]
(λb−Λb)/Λb
具体的には、(λr−Λr)/Λr、(λg−Λg)/Λg、(λb−Λb)/Λbの最大値と最小値との差異が、0.005以下であるならば、運転者DRは、所定温度における赤色画像、緑色画像及び青色画像間の相対的なずれをほとんど知覚しない。
例えば、Λr=637nm、Λg=532nm、Λb=445nmであり、且つ、25℃において、λr=640nm、λg=534nm、λb=448nmであるならば、(λr−Λr)/Λr、(λg−Λg)/Λg、(λb−Λb)/Λbはそれぞれ、0.0047、0.0038、0.0067となる。これらの無次元数の中で、最小値は、0.0038である。また、最大値は、0.0067である。したがって、最大値と最小値との差分値は、「0.0067−0.0038=0.0029」となる。したがって、これらの赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bの組み合わせから得られる無次元数の最大値と最小値との間の差異が0.005以下となるので、25℃の温度条件下において、運転者DRは、赤色画像、青色画像及び緑色画像間での相対的なずれをほとんど知覚しない。
上述の如く、所定の温度において、上記数式2乃至数式4で規定される無次元数の範囲が所定の範囲に収まる半導体レーザ光源が組み合わせられる結果、異なる色相で描かれた画像間の相対的なずれが低減される。
HUDが、異なる波長を出射する複数の光源を備えていても(例えば、図4に関連して説明されたHUD100A)、所定温度において測定された波長データに基づき、光源要素が適切に組み合わせられる結果、異なる色相で描かれた画像間の相対的なずれが低減される。加えて、線膨張係数との関係が、上述の数式1で規定される関係が満足されるように設定されるならば、HUDは、温度変動に拘わらず、色ずれの少ない画像を表示することができる。
本実施形態において、25℃の温度は、所定の温度として例示される。代替的に、他の温度において測定された波長データが、光源要素の組み合わせの決定のために用いられてもよい。
上述のλr、λg、λb、Λr、Λg、Λbの値も一例にすぎず、他の値の波長が用いられてもよい。上述の説明において、主に3色の光源要素が説明されている。しかしながら、2或いは3より多い数の光源要素が用いられてもよい。また、光源要素から出射される光の色相も、赤、緑、青に限定されず、他の色相の光が光源要素から出射されてもよい。
上述の説明において、波長依存性を有する光源として、半導体レーザ光源が例示されている。しかしながら、同様の波長依存性を有する光源が、HUDに組み込まれてもよい。
(レーザ光源に対する温度制御)
HUD100は、レーザ光源110の温度を調整する調整要素を備えてもよい。同様に、HUD100Aは、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bの温度をそれぞれ調整する調整要素を備えてもよい。
レーザ光源に対する温度制御に関する以下の説明において、体積ホログラムは、図3のグラフに関連して説明されたように、2.0×10−4/℃の線膨張係数αを有する。また、半導体レーザ光源から出射されるレーザ光の波長の温度依存性Kは、0.2nm/℃である。
例えば、HUD100の体積ホログラム200の周辺の温度が50℃となると、干渉縞間隔Γは、25℃の温度の時と比較すると、0.005倍の干渉縞間隔分だけ、幅広くなる。このとき、レーザ光源110として用いられた半導体レーザ光源の周辺の温度が、約41℃に調整されるならば、25℃におけるレーザ光LBの波長に対して、約0.005倍の波長分だけ長い波長のレーザ光LBが出射される。
上述の如く、半導体レーザ光源のように、レーザ光源から出射されるレーザ光の波長が温度依存性を有するならば、体積ホログラムの線膨張係数α及びレーザ光の波長の温度依存性Kに基づき、レーザ光源の温度が決定されることが好ましい。この結果、ブラッグ条件からのずれが低減され、回折角の変動に起因する画像の表示位置のずれや回折効率の低下に起因する輝度の低下といった画質の低下が生じにくくなる。
上記説明において、HUDの光源として、温度上昇時に波長が長波長側にシフトする温度依存性を有する半導体レーザ光源が例示されている。しかしながら、温度依存性は、温度上昇時に波長が長波長側にシフトする特性に限定されるものではない。レーザ光源から出射されるレーザ光の波長が何らかの温度依存性を有しているならば、上述の効果は得られる。
上述の説明において、体積ホログラムの線膨張係数αの値として、「2.0×10−4/℃」が例示されている。しかしながら、他の線膨張係数の値でも、上述の効果は得られる。
図6は、レーザ光源に対する温度調整機能を有するHUDの概略図である。図6を用いて、温度調整機能を有するHUDが説明される。
図6に示されるHUD100Bは、図1に関連して説明されたHUD100と同様のレーザ光源110、投射光学系120及び体積ホログラム200に加えて、体積ホログラム200自体の温度及び/又は体積ホログラム200の周辺の温度を測定する温度センサ160と、レーザ光源110の温度を調整するための調整部165と、を備える。HUD100Bは、制御部130Bを更に備える。制御部130Bは、図1に関連して説明された制御部130と同様に、レーザ光源110及び液晶パネル123に電気的に接続される。制御部130Bは、温度センサ160及び調整部165にも電気的に接続される。本実施形態において、制御部130B及び調整部165は、調整要素として例示される。
温度センサ160は、体積ホログラム200自体の温度及び/又は体積ホログラム200の周辺の温度を測定し、測定された温度に関する温度情報を制御部130Bに出力する。制御部130Bは、温度情報に基づき、レーザ光源110の温度に対する目標温度を設定する。調整部165は、制御部130Bの制御下で、レーザ光源110の温度が目標温度となるように、レーザ光源110の温度を調整する。
図7は、調整部165の概略図である。図6及び図7を用いて調整部165が説明される。
調整部165は、レーザ光源110に取り付けられたペルチエ素子166とペルチエ素子166に取り付けられた放熱板167とを備える。制御部130Bに電気的に接続されたペルチエ素子166は、制御部130Bの制御下でレーザ光源110の温度を調整する。
制御部130Bには、好ましくは、体積ホログラム200の線膨張係数αやレーザ光源110の波長の温度依存性Kに関する情報が予め入力されている。この結果、制御部130Bは、温度センサ160からの温度データに基づき、レーザ光源110に対する適切な目標温度を略リアルタイムで設定することができる。
本実施形態において、調整部165としてペルチエ素子が用いられている。代替的に、レーザ光源の温度を調整することができる他の調温要素(例えば、ヒータ、ファンやコンプレッサ)が用いられてもよい。更に、図6及び図7に示された調温構造に限らず、体積ホログラムの線膨張係数αとレーザ光源が出射するレーザ光の温度依存性とに基づき、レーザ光源の温度を適切に設定することができる他の調温技術が用いられてもよい。
図8は、レーザ光源に対する温度調整機能を有する他のHUDの概略図である。図8を用いて、温度調整機能を有するHUDが説明される。
図8に示されるHUD100Cは、図4に関連して説明されたHUD100Aと同様の光源150、投射光学系120及び体積ホログラム200Aに加えて、体積ホログラム200A自体の温度及び/又は体積ホログラム200Aの周辺の温度を測定する温度センサ160と、赤色半導体レーザ光源110Rの温度を調整するための調整部165Rと、緑色半導体レーザ光源110Gの温度を調整するための調整部165Gと、青色半導体レーザ光源110Bの温度を調整するための調整部165Bと、を備える。HUD100Cは、制御部130Cを更に備える。制御部130Cは、図4に関連して説明された制御部130Aと同様に、光源150及び液晶パネル123に電気的に接続される。制御部130Cは、温度センサ160及び調整部165R、165G、165Bにも電気的に接続される。本実施形態において、制御部130C及び調整部165R、165G、165Bは、調整要素として例示される。
温度センサ160は、体積ホログラム200A自体の温度及び/又は体積ホログラム200Aの周辺の温度を測定し、測定された温度に関する温度情報を制御部130Cに出力する。制御部130Cは、温度情報に基づき、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bに対する目標温度を個別に設定する。調整部165R、165G、165Bは、制御部130Cの制御下で、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bの温度がそれぞれ目標温度となるように、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bの温度を調整する。
体積ホログラム200Aには、赤色レーザ光LB(r)を回折するための干渉縞、緑色レーザ光LB(g)を回折するための干渉縞及び青色レーザ光LB(b)を回折するための干渉縞が記録されている。赤色半導体レーザ光源110Rは、25℃の温度条件下において、赤色レーザ光LB(r)を回折するための干渉縞を記録するために用いられた記録光の中心波長と略等しい波長の赤色レーザ光LB(r)を出射する。緑色半導体レーザ光源110Gは、25℃の温度条件下において、緑色レーザ光LB(g)を回折するための干渉縞を記録するために用いられた記録光の中心波長と略等しい波長の緑色レーザ光LB(g)を出射する。青色半導体レーザ光源110Bは、25℃の温度条件下において、青色レーザ光LB(b)を回折するための干渉縞を記録するために用いられた記録光の中心波長と略等しい波長の青色レーザ光LB(b)を出射する。
光源150の周囲温度が常温から上昇したとき、制御部130Cは、例えば、青色半導体レーザ光源110Bの目標温度を約35℃に設定し、緑色半導体レーザ光源110Gの目標温度を約37℃に設定し、赤色半導体レーザ光源110Rの温度を約28℃に設定してもよい。25℃の温度条件を基準としたとき、光源150から出射された赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の波長変動割合は、いずれも約0.001である(図5参照)。したがって、光源150から出射された赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の波長の温度依存性に応じて、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bに対する目標温度が個別に設定されると、温度変動に起因する赤色画像、緑色画像及び青色画像間の相対的なずれが低減される。したがって、HUD100Cは、高画質な画像を表示することができる。
上述の説明において、波長変動割合が約0.001となるように、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bそれぞれに対する目標温度が設定されている。代替的に、波長変動割合の他の値を基準に、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bそれぞれに対する目標温度が設定されてもよい。例えば、温度センサ160が測定する温度が比較的高いならば、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bそれぞれに対する目標温度は、より高く設定されてもよい。
例えば、制御部130Cは、青色半導体レーザ光源110Bの目標温度を47℃に設定し、緑色半導体レーザ光源110Gの目標温度を51℃に設定し、赤色半導体レーザ光源110Rの温度を31℃に設定してもよい。或いは、制御部130Cは、他の目標温度の組み合わせを設定してもよい。温度センサ160が測定した温度に応じて、制御部130Cが設定される目標温度を増減するならば、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bに対する温度調整によって消費される電力量が低減される。したがって、HUD100Cの消費電力が低減される。
上述の如く、制御部130Cは、体積ホログラム200Aの線膨張係数だけでなく、体積ホログラム200Aの干渉縞の記録に用いられた記録光の中心波長及び光源150が所定温度において発する光の波長に基づき、光源150の温度を調整する。また、上述の説明において、光源150からの赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の波長は、25℃において、体積ホログラム200Aの干渉縞の記録に用いられた記録光の中心波長と略等しくなるように設定されている。25℃において、赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の波長が体積ホログラム200Aの干渉縞の記録に用いられた記録光の中心波長からずれているならば、制御部130Cは、25℃における赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の波長に対しても目標温度を設定してもよい。
例えば、赤色半導体レーザ光源110Rが25℃の温度条件下で出射する赤色レーザ光LB(r)の波長が、638nmであり、且つ、赤色レーザ光LB(r)を回折するための干渉縞の記録に用いられた記録光の波長が637nmであるならば、温度センサ160によって測定された温度が25℃であるとき、制御部130Cは、赤色半導体レーザ光源110Rの温度を25℃よりも5℃(=1(nm)÷0.2(nm/℃))低い目標温度を設定してもよい。即ち、赤色半導体レーザ光源110Rに対して設定された目標温度は、20℃となる。その後、温度センサ160によって測定された温度が変動するならば、制御部130Cは、赤色半導体レーザ光源110Rに対して、20℃を基準に目標温度を設定してもよい。制御部130Cは、他の半導体レーザ光源(緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110B)に対しても、同様の手法に従い、目標温度を設定することができる。
上述の説明において、温度依存性を有する波長のレーザ光を出射するレーザ光源として、半導体レーザ光源が例示されている。代替的に、同様の温度依存性を有する波長の光を発する光源が用いられてもよい。
図9は、体積ホログラムの温度膨張特性及びレーザ光の波長の温度依存特性を概略的に示すグラフである。尚、図9に示されるグラフは、図5に示されるグラフに体積ホログラムの干渉縞間隔Γの変動割合を右側の縦軸として追加したグラフである。図8及び図9を用いて、体積ホログラムの温度膨張特性及びレーザ光の波長の温度依存特性が説明される。
以下の説明において、体積ホログラム200Aの線膨張係数は、上述の説明と同様に、2×10−4(/℃)である。また、体積ホログラム200Aに干渉縞を記録するための記録光として用いられた赤色レーザ光の波長は、以下の説明において、記号「Λr(nm)」で示される。体積ホログラム200Aに干渉縞を記録するための記録光として用いられた緑色レーザ光の波長は、以下の説明において、記号「Λg(nm)」で示される。体積ホログラム200Aに干渉縞を記録するための記録光として用いられた青色レーザ光の波長は、以下の説明において、記号「Λb(nm)」で示される。HUD100Cに搭載される赤色半導体レーザ光源110Rからの赤色レーザ光LB(r)の波長の温度依存性は、「Kr(nm/℃)」の記号を用いて表されている。HUD100Cに搭載される緑色半導体レーザ光源110Gからの緑色レーザ光LB(g)の波長の温度依存性は、「Kg(nm/℃)」の記号を用いて表されている。HUD100Cに搭載される青色半導体レーザ光源110Bからの青色レーザ光LB(b)の波長の温度依存性は、「Kb(nm/℃)」の記号を用いて表されている。体積ホログラムの線膨張係数は、記号「α(/℃)」を用いて表される。以下の数式5で示される関係が満足されるならば、上述の如く、温度変動に拘わらず波長が一定である特性を有する光源が用いられるときよりも、温度変動に起因するブラッグ条件からのずれが低減される。したがって、回折角の変動に起因する画像の表示位置のずれや回折効率の低下に起因する輝度の低下といった画質の劣化は生じにくくなる。
[数5]
0≦Kn/Λn≦2α(n=r、g、b)
図9を参照すると、例えば、体積ホログラム200Aの周囲の温度が35℃であるとき、干渉縞間隔Γは、25℃のときと比べて、0.002倍の干渉縞間隔分だけ広くなっている。制御部130Cが、赤色半導体レーザ光源110Rに対する目標温度を32℃に設定し、青色半導体レーザ光源110Bに対する目標温度を47℃に設定し、緑色半導体レーザ光源110Gに対する目標温度を51℃に設定するならば、ブラッグ条件からのずれがキャンセルされる。したがって、回折角の変動に起因する画像の表示位置のずれや回折効率の低下に起因する輝度の低下といった画質の劣化は生じにくくなる。また、赤色画像、青色画像及び緑色画像の間の相対的なずれもキャンセルされる。したがって、HUD100Cは、高画質の画像を表示することができる。
図8に示される温度センサ160は、例えば、放射温度計であってもよい。放射温度計は、測定された温度に関する温度情報を制御部130Cに出力する。この結果、放射温度計が測定した温度が、赤色半導体レーザ光源110R、緑色半導体レーザ光源110G及び青色半導体レーザ光源110Bの温度制御に反映される。尚、体積ホログラム200A自体の温度又は体積ホログラム200Aの周辺温度は、他の測定方法で測定されてもよい。
図10は、赤色画像、青色画像及び緑色画像の間の相対的なずれを低減させるための機能を有するHUDの概略図である。図4及び図10を用いて、赤色画像、青色画像及び緑色画像の間の相対的なずれを低減させるための機能を有するHUDが説明される。
図10に示されるHUD100Dは、図4に関連して説明されたHUD100Aと略同様の構造を備える。HUD100Dは、図4に関連して説明されたHUD100Aと同様に、体積ホログラム200A、光源150、制御部130A、ダイクロイックミラー151,152及び投射光学系120を備える。図面の明瞭化のため、これらの要素は、図10には示されていない。尚、図10には、投射光学系120のスクリーン125が示されている。
HUD100Dは、スクリーン125と体積ホログラム200Aとの間に配設された反射型ホログラム170を更に備える。図面の明瞭化のため、図10には、スクリーン125から出射される赤色レーザ光LB(r)、LB(r+)が示されている。赤色レーザ光LB(r)は、以下の説明において、体積ホログラム200Aの干渉縞の記録に用いられた記録光と同じ波長を有する。赤色レーザ光LB(r+)は、赤色レーザ光LB(r)よりも、例えば、5nmだけ長波長側にシフトした波長を有する。
反射型ホログラム170は、体積ホログラム200Aの回折角の波長依存線をキャンセルする特性を有する。図10に示される如く、赤色レーザ光LB(r)及び赤色レーザ光LB(r+)は、反射型ホログラム170上の異なる点に入射している。反射型ホログラム170は、異なる点に入射した赤色レーザ光LB(r)及び赤色レーザ光LB(r+)を体積ホログラム200A上の略同一点に入射させる。この結果、赤色レーザ光LB(r)及び赤色レーザ光LB(r+)は、略同じ角度で体積ホログラム200Aから出射する。したがって、波長が異なるレーザ光であっても虚像VI中の画像間の位置ずれはほとんど生じない。したがって、運転者DRは、虚像VI中の画像間の位置ずれを略知覚することなく、快適に画像を視認することができる。上述の原理は、青色レーザ光及び緑色レーザ光に対しても同様に適用される。
図10に関連して説明された原理によれば、例えば、周囲温度が変動しても、赤色画像、緑色画像及び青色画像間の相対的な位置ずれがキャンセルされる。したがって、HUD100Dは、高画質な画像を表示することができる。上述の特性を有する反射型ホログラムが用いられるならば、HUDの光源が半導体レーザ光源のようにレーザ光の波長が温度依存性を有しても、温度調整なしに、画像の位置ズレが生じにくくなる。したがって、HUDは、高画質の画像を表示することができる。
図11は、反射型ホログラム170の概略的な断面図である。図10及び図11を用いて、反射型ホログラム170が説明される。
図11に示される反射型ホログラム170は、レリーフホログラムである。尚、反射型ホログラム170として、体積ホログラムが用いられてもよい。
図11に示される反射型ホログラム170は、積層された樹脂材料171、172、173を備える。樹脂材料171、172、173は略同一の屈折率を有する。樹脂材料171、172、173の表面には、相補的な表面レリーフ(不連続な凹凸構造)が刻まれている。表面レリーフが刻まれた樹脂材料171、172、173の表面は、互いに隙間無く密着されている。樹脂材料171の外面には、赤色レーザ光LB(r)を反射させる反射コート174rが設けられている。樹脂材料171と樹脂材料172との間には、赤色レーザ光LB(r)の透過を許容する一方で、緑色レーザ光LB(g)を反射する反射コート174gが設けられている。樹脂材料172と樹脂材料173との間には、赤色レーザ光LB(r)及び緑色レーザ光LB(g)の透過を許容する一方で、青色レーザ光LB(b)を反射する反射コート174bが設けられている。
図11に示される反射コート174r、174g、174bは、例えば、誘電体多層膜の蒸着によって形成される。しかしながら、他の手法を用いて、反射コート174r、174g、174bが形成されてもよい。代替的には、反射コート174rは金属コートであってもよい。
樹脂材料171と樹脂材料172との間の密着面のレリーフ構造は、緑色レーザ光LB(g)を所望の方向に効率的に回折できるように形成されたブレーズ構造であってもよい。同様に、樹脂材料172と樹脂材料173との間の密着面のレリーフ構造は、青色レーザ光LB(b)を所望の方向に効率的に回折できるように形成されたブレーズ構造であってもよい。樹脂材料171の外面に形成されたレリーフ構造も、赤色レーザ光LB(r)を所望の方向に効率的に回折できるように形成されたブレーズ構造であってもよい。
図10に関連して説明された特性(体積ホログラム200Aの回折角の波長依存性をキャンセルするための特性)は、樹脂材料171、172、173のレリーフ構造(レリーフのピッチ、厚み、角度といった様々な寸法パラメータ)の最適化によって得られる。
映像光ILが反射型ホログラム170に入射すると、映像光ILの赤色レーザ光LB(r)は、反射コート174b、174gを透過し、反射コート174rに到達する。反射コート174rは、赤色レーザ光LB(r)を反射・回折する。この結果、赤色レーザ光LB(r)は所望の方向に出射される。映像光ILの緑色レーザ光LB(g)は、反射コート174bを透過し、反射コート174gに到達する。反射コート174gは、緑色レーザ光LB(g)を反射・回折する。この結果、緑色レーザ光LB(g)は、所望の方向に出射される。映像光ILの青色レーザ光LB(b)が、反射コート174bに到達すると、反射コート174bは、青色レーザ光LB(b)を反射・回折する。この結果、青色レーザ光LB(b)は、所望の方向に出射される。
図11に示される反射型ホログラム170が用いられるならば、図10に関連して説明された如く、例えば、周囲温度が変動しても、赤色画像、緑色画像及び青色画像間の相対的な位置ずれがキャンセルされる。かくして、HUD100Dは、高画質な画像を表示することができる。
本実施形態において、反射型ホログラム170として、図11に示されるレリーフホログラムが例示される。代替的に、体積ホログラム200Aの回折角の波長依存性を補償することができる他の構造が反射型ホログラム170として用いられてもよい。
(体積ホログラムの配置)
図12は、体積ホログラムを挟持するフロントガラスの概略的な断面図である。図12を用いて、体積ホログラムの配置が説明される。
車両のフロントガラス210Eは、典型的には、内面211を形成する内ガラス215と、外面212を形成する外ガラス216と、内ガラス215と外ガラス216との間に配設された中間膜217と、を備える。中間膜217は、車室内に入射する外光の波長成分を選択的に調整する。例えば、中間膜217は、赤外線や紫外線を吸収する吸収特性を有する。
図12に示される体積ホログラム200Eは、内ガラス215と中間膜217との間に配設される。体積ホログラム200Eは、典型的には、赤外線領域の光を吸収する特性を有することがある。中間膜217には、多くの場合、赤外線吸収剤が添加される。したがって、図12に示される如く、体積ホログラム200Eが車室(内ガラス215)と中間膜217との間に配設されるならば、体積ホログラム200Eの熱膨張はほとんど生じない。図12に示される体積ホログラム200Eの配置は、太陽光が含む赤外線が引き起こす体積ホログラム200Eの昇温並びに熱膨張の影響を低減する。図12に示される体積ホログラム200Eの配置が、上述のHUD100乃至100Dに適用されるならば、HUD100乃至100Dは、高画質の画像を表示することができる。
上述のHUD100B、100Cのように、レーザ光源の温度がフロントガラスの温度に応じて調整されるならば、体積ホログラムの昇温の抑制の結果、レーザ光源の温度の上昇も抑制される。したがって、温度調節に必要とされるエネルギが低減される。
半導体レーザ光源のように、高温環境下において、発光効率が低減する光源が用いられるならば、体積ホログラムの昇温の抑制の結果、昇温に起因する発光効率の低減はほとんど生じない。したがって、HUDのエネルギ消費量は好適に低減される。
図12に示される体積ホログラム200Eは、内ガラス215と中間膜217との間に配設されている。代替的に、体積ホログラムは、内ガラス215の内面211に取り付けられてもよい。
中間膜217が紫外線吸収特性を有するならば、紫外線に起因する体積ホログラム200Eの劣化が生じにくくなる。したがって、図12に関連して説明された体積ホログラム200Eの配置は、HUDの耐久性を向上させる。
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態に従うシースルーディスプレイとして例示されるHUDの概略図である。図4及び図13を用いて、HUDが説明される。
本実施形態のHUD300は、図4に関連して説明されたHUD100Aと同様の制御部130A、ダイクロイックミラー151,152及び投射光学系120に加えて、赤色波長変換レーザ光源310R、緑色波長変換レーザ光源310G及び青色波長変換レーザ光源310Bを含む光源350と、フロントガラス210の内面211に取り付けられた体積ホログラム320と、を備える。赤色波長変換レーザ光源310R、緑色波長変換レーザ光源310G及び青色波長変換レーザ光源310Bは、制御部130Aに電気的に接続され、制御部130Aの制御下で動作する。
赤色波長変換レーザ光源310Rは、基本波を、波長変換素子を用いて高調波に変換し、赤色レーザ光LB(r)を出射する。緑色波長変換レーザ光源310Gは、基本波を、波長変換素子を用いて高調波に変換し、緑色レーザ光LB(g)を出射する。青色波長変換レーザ光源310Bは、基本波を、波長変換素子を用いて高調波に変換し、青色レーザ光LB(b)を出射する。
HUD300は、半導体レーザ光源に代えて、光源として波長変換レーザ光源を備える点において、図4に関連して説明されたHUD100Aと相違する。他の要素に関連する説明は、HUD100Aと共通するので、HUD100Aに対する説明がHUD300に援用される。
図14Aは、緑色波長変換レーザ光源310Gの概略図である。図13及び図14Aを用いて、緑色波長変換レーザ光源310Gが説明される。尚、以下の緑色波長変換レーザ光源310Gに関連する説明は、赤色波長変換レーザ光源310R及び青色波長変換レーザ光源310Bにも同様に適用可能である。
緑色波長変換レーザ光源310Gは、励起レーザ光PLを出射する励起用の半導体レーザ光源311と、集光レンズ312と、固体レーザ結晶313と、波長変換素子314と、を備える。半導体レーザ光源311から出射した励起レーザ光PLは、集光レンズ312によって集光され、固体レーザ結晶313へ入射する。
緑色波長変換レーザ光源310Gに組み込まれた半導体レーザ光源311は、緑色レーザ光LB(g)を得るために、典型的には、固体レーザ結晶313の吸収波長に合わせて、約808nmの中心波長を有する励起レーザ光PLを出射する。
固体レーザ結晶313は、典型的には、YAG(イットリウム(Y)とアルミニウム(Al)の複合酸化物にネオジム(Nd)をドープしたもの)やYVO4(イットリウム(Y)とバナジウム(V)の複合酸化物にネオジム(Nd)をドープしたもの)であってもよい。YAG又はYVO4が用いられた固体レーザ結晶313は、約1064nmの基本波光FLを発する。
固体レーザ結晶313は、励起レーザ光PLが入射する入射面315と、入射面315とは反対側の出射面316と、を備える。典型的には、入射面315と出射面316との間で、共振器が形成される。この結果、約1064nmの波長の基本波光FLがレーザ発振する。
波長変換素子314は、典型的には、酸化マグネシウムがドープされたニオブ酸リチウム(LiNbO3)であってもよい。波長変換素子314には、分極反転構造が形成される。
波長変換素子314に入射した基本波光FLは、波長変換素子314内で、基本波光FLの波長の半分の波長に相当する532nmの波長の第二高調波に変換される。第二高調波は、緑色レーザ光LB(g)として、波長変換素子314から出射する。
緑色レーザ光LB(g)の発振波長は、固体レーザ結晶313のピーク波長で主に決定される。固体レーザ結晶313のピーク波長は、典型的には、約0.01nm/℃しか変動しない。即ち、緑色レーザ光LB(g)の波長は、約0.005nm/℃しか変動しない。したがって、周囲温度が変動しても、緑色波長変換レーザー光源の発振波長は、ほとんど変動しないこととなる。赤色波長変換レーザ光源310Rや青色波長変換レーザ光源310Bが同様の構造を有するならば、周囲温度が変動しても、これらの発振波長は、同様に、ほとんど変動しないことになる。
HUD300の周囲の温度が変動すると、第1実施形態に関連して説明された如く、体積ホログラム320は、膨張又は収縮する。しかしながら、本実施形態において、体積ホログラム320に入射する赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の波長はほとんど変動しない。体積ホログラム320の周囲の温度が上昇し、体積ホログラム320が膨張すると、赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の回折角度は変動する。しかしながら、赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の回折角度の変動量は同じであるので、画像の表示位置は変動するものの、赤色画像、緑色画像及び青色画像の表示位置の相対的なずれはほとんど生じない。したがって、HUD300は、高画質な画像を表示することができる。
図14Bは、他の構成を有する緑色波長変換レーザ光源310Gの概略図である。図13乃至図14Bを用いて、緑色波長変換レーザ光源310Gが説明される。尚、以下の緑色波長変換光源310Gに関連する説明は、赤色波長変換レーザ光源310R及び青色波長変換レーザ光源310Bにも同様に適用可能である。
緑色波長変換レーザ光源310Gとして、半導体レーザ光源311からの励起レーザ光PLによって励起される固体レーザ結晶を有する光源に代えて、基本波光を発生させるファイバレーザが組み込まれた光源が用いられてもよい。図14Bは、ファイバレーザが組み込まれた緑色波長変換レーザ光源310Gを概略的に示す。
緑色波長変換レーザ光源310Gは、励起レーザ光PLを出射する励起用の半導体レーザ光源311と、集光レンズ312と、ファイバレーザ317と、を備える。半導体レーザ光源311から出射した励起レーザ光PLは、集光レンズ312によって集光され、ファイバレーザ317へ入射する。
ファイバレーザ317は、典型的には、ダブルクラッド構造を有する。ファイバレーザ317は、典型的には、例えば、イットリビウム(Yb)がドープされたコアを備える。インナークラッド部は、典型的には、例えば、石英で構成される。励起レーザ光PLは、通常、インナークラッド部を伝搬する。インナークラッド部を伝搬する励起レーザ光PLは、コアに含まれるYbを励起する。
ファイバレーザ317の両端部近傍にはファイバグレーティング318が構成される。Ybの励起によって生成された赤外線のうちファイバグレーティング318によって定められた特定の波長の光のみが、ファイバレーザ317のコア内で選択的に共振し、基本波光FLとしてファイバレーザ317から出射する。
緑色波長変換レーザ光源310Gは、波長変換素子314を備える。波長変換素子314は、典型的には、酸化マグネシウムがドープされたニオブ酸リチウム(LiNbO3)であってもよい。ニオブ酸リチウム(LiNbO3)には、分極反転構造が形成される。
ファイバレーザ317から出射する基本波光FLの波長が1064nmであるならば、図14Aに関連して説明された如く、波長変換素子314は、第二高調波として、532nmの波長を有する緑色レーザ光LB(g)を発生する。緑色レーザ光LB(g)は、波長変換素子314から出射する。
ファイバレーザ317から出射する基本波光FLの波長は、ファイバグレーティング318の周期により決定される。上述の如く、ファイバレーザ317のコアは、通常、石英で構成され、且つ、石英の線膨張係数は、約6×10−7であるので、ファイバレーザ317から出射する基本波光FLの波長は、周囲温度の変動に拘わらず、ほとんど変動しない。基本波光FLの波長は、周囲温度の変動に拘わらず、ほとんど変動しないので、基本波光FLの第二高調波として出射される緑色レーザ光LB(g)の波長も同様に、周囲温度の変動に拘わらず、ほとんど変動しない。
図14に関連して説明された光学的構成が、赤色波長変換レーザ光源310R及び青色波長変換レーザ光源310Bに適用されるならば、緑色レーザ光LB(g)だけでなく、赤色レーザ光LB(r)及び青色レーザ光LB(b)も同様に、周囲温度の変動に拘わらず、波長をほとんど変動させないこととなる。したがって、基本波光を発生させるための光源として、ファイバレーザが用いられた波長変換レーザ光源がHUD300に用いられても、周囲温度の変動に拘わらず、赤色画像、緑色画像及び青色画像間の相対的な位置ずれは生じにくくなる。したがって、HUD300は、高画質の画像を表示することができる。
本実施形態の原理は、n個(nは1より大きい整数)の光源要素を含む光源を備えるシースルーディスプレイに適用される。n個の光源要素の波長が、周囲温度の変動に拘わらず、ほとんど変動しないならば、n個の光源要素から出射される光によって描かれる画像間の相対的な位置ずれは、周囲温度の変動に拘わらず、生じにくくなる。
n個の光源要素から出射される光の波長の温度依存性が同程度であるならば、上述の原理は、同様に適用される。
以下の説明において、赤色レーザ光LB(r)を回折するための体積ホログラム320の干渉縞の記録に用いられた記録光(レーザ光)の波長は、「Λr(nm)」の記号で表される。緑色レーザ光LB(g)を回折するための体積ホログラム320の干渉縞の記録に用いられた記録光(レーザ光)の波長は、「Λg(nm)」の記号で表される。青色レーザ光LB(b)を回折するための体積ホログラム320の干渉縞の記録に用いられた記録光(レーザ光)の波長は、「Λb(nm)」の記号で表される。赤色波長変換レーザ光源310Rから出射される赤色レーザ光LB(r)の波長依存性は、「Kr(nm/℃)」の記号で表される。緑色波長変換レーザ光源310Gから出射される緑色レーザ光LB(g)の波長依存性は、「Kg(nm/℃)」の記号で表される。青色波長変換レーザ光源310Bから出射される青色レーザ光LB(b)の波長依存性は、「Kb(nm/℃)」の記号で表される。
Kr/Λr、Kg/Λg、Kb/Λbの中の最大値と最小値の差分が0.0001以下であるならば、周囲温度の変動に拘わらず、運転者DRは、赤色画像、緑色画像及び青色画像間間の相対的な位置ずれをほとんど知覚しない。したがって、HUD300は、高画質な画像を表示することができる。
本実施形態において、波長変換レーザ光源として、基本波光を生成するための固体レーザ光源を備える光源及び基本波光を生成するためのファイバレーザを備える光源が例示されている。代替的に、周囲温度の変動に拘わらず基本波光の波長がほとんど変動しない構成を有する他の光源が光源要素として用いられてもよい。
図15は、基材上に固定された体積ホログラム320の概略的な断面図である。図13及び図15を用いて、本実施形態の更なる有利な効果が説明される。
図15には、体積ホログラム320が固定される平坦な上面211Bを含む基材210Bが示されている。また、図15には、上面211Bに垂直な第1方向及び上面211Bに平行な第2方向が示されている。
以下の説明において、基材210Bの線膨張係数は、「β(/℃)」の記号で表される。また、体積ホログラム320の線膨張係数は、「α(/℃)」の記号で表される。基材210Bがガラス板であるならば、線膨張係数βは、典型的には、約8×10−6(/℃)である。また、体積ホログラム320の線膨張係数αは、典型的には、約2×10−4(/℃)である。
一般的に、体積ホログラム320は、ガラス板といった基材210Bと比べて、遙かに柔らかい。したがって、周囲温度が変動しても、第2方向における体積ホログラム320の膨張幅又は収縮幅は、第2方向における基材210Bの膨張幅又は収縮幅を超えない。しかしながら、体積ホログラム320は、第1方向において、自由に膨張又は収縮することができる。
体積ホログラム320が第1方向にのみ膨張又は収縮する(即ち、第2方向における体積ホログラム320の膨張又は収縮が生じない)という条件下において、体積ホログラム320に入射するレーザ光(赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b))の角度θ1及び波長が変動しないならば、体積ホログラム320が第1方向に膨張又は収縮しても、レーザ光が出射する角度θ2はほとんど変動しない。したがって、基材210Bの線膨張係数βが体積ホログラム320の線膨張係数αに対して小さいならば、周囲温度が変動しても、体積ホログラム320からレーザ光が出射する角度θ2は変化しにくくなる。基材210Bの線膨張係数βが体積ホログラム320の線膨張係数αよりも小さく設定されるならば、周囲温度が変動しても、画像の表示位置のずれはほとんど生じない。かくして、HUD300は、高画質な画像を表示することができる。
本実施形態において、基材210Bとして、ガラスが例示される。代替的に、体積ホログラム320の線膨張係数αより小さな線膨張係数βを有する他の材料が基材210Bとして用いられてもよい。例えば、ポリカーボネイト(β=7×10−5)やアクリル(β=7.5×10−5)が基材として用いられてもよい。更に、図13に示されるフロントガラス210も基材としての役割を果たす。したがって、図13に示される如く、フロントガラス210に取り付けられた体積ホログラム320は、図15に関連して説明された効果をもたらす。
(第3実施形態)
第1実施形態の原理では、光源から出射される光の波長の温度依存性が考慮されているが、本実施形態の原理は、光源から出射される光の波長の温度依存性に限定されることなく適用可能である。
図16は、第3実施形態に従うシースルーディスプレイとして例示されるHUDの概略図である。図4及び図16を用いて、HUDが説明される。
本実施形態のHUD400は、図4に関連して説明されたHUD100Aと同様のダイクロイックミラー151,152、投射光学系120及び体積ホログラム200Aに加えて、赤色レーザ光源410R、緑色レーザ光源410G及び青色レーザ光源410Bを含む光源450と、制御部430と、を含む。制御部430は、液晶パネル123、赤色レーザ光源410R、緑色レーザ光源410G及び青色レーザ光源410Bに電気的に接続される。液晶パネル123、赤色レーザ光源410R、緑色レーザ光源410G及び青色レーザ光源410Bは、制御部430の制御下で動作する。赤色レーザ光源410R、緑色レーザ光源410G及び青色レーザ光源410Bは、第1実施形態に関連して説明された半導体レーザ光源であってもよい。或いは、赤色レーザ光源410R、緑色レーザ光源410G及び青色レーザ光源410Bは、第2実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源であってもよい。代替的に、光源450は、半導体レーザ光源と波長変換レーザ光源との組み合わせであってもよい。更に代替的に、光源450として、他のレーザ光源が用いられてもよい。
赤色レーザ光源410Rは、制御部430の制御下で、赤色レーザ光LB(r)を出射する。緑色レーザ光源410Gは、制御部430の制御下で、緑色レーザ光LB(g)を出射する。青色レーザ光源410Bは、制御部430の制御下で、青色レーザ光LB(b)を出射する。本実施形態において、赤色レーザ光源410R、緑色レーザ光源410G及び青色レーザ光源410Bのうち1つは、第1光源要素として例示され、他のもう1つは、第2光源要素として例示される。赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)のうち1つは、第1光として例示され、他のもう1つは、第2光として例示される。
図17は、HUD400が表示する表示コンテンツの概略図である。図16及び図17を用いて、表示コンテンツが説明される。
制御部430は、光源450及び液晶パネル123を制御し、注意コンテンツCT1、速度コンテンツCT2及び案内コンテンツCT3を含む表示コンテンツを表示する。図17に示される如く、制御部430は、液晶パネル123を制御し、注意コンテンツCT1と速度コンテンツCT2とを所定の距離「W」だけ垂直方向に離間させる。また、制御部430は、液晶パネル123を制御し、注意コンテンツCT1及び速度コンテンツCT2を、案内コンテンツCT3から水平方向に離間させ、これらの間での重なりをなくしている。
本実施形態において、注意コンテンツCT1は、赤色レーザ光LB(r)を用いて描かれている。速度コンテンツCT2は、緑色レーザ光LB(g)を用いて描かれている。案内コンテンツCT3は、青色レーザ光LB(b)を用いて描かれている。本実施形態において、注意コンテンツCT1、速度コンテンツCT2及び案内コンテンツCT3のうち1つは、第1画像として例示され、他のもう1つは第2画像として例示される。
上述の如く、表示コンテンツ中において、注意コンテンツCT1、速度コンテンツCT2及び案内コンテンツCT3間の重なりは生じないので、赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の混色なしに、HUD400は、表示コンテンツを表示する。したがって、周囲温度の変動といった環境変化に応じて、体積ホログラム200Aに対する赤色レーザ光LB(r)、緑色レーザ光LB(g)及び青色レーザ光LB(b)の出射角が変動しても、運転者DRは、注意コンテンツCT1、速度コンテンツCT2及び案内コンテンツCT3の位置の変化を色ずれとして知覚することはない。
図17に示される如く、上下方向に整列された注意コンテンツCT1及び速度コンテンツCT2は、所定の距離「W」だけ離間している。したがって、温度変動に起因して、注意コンテンツCT1及び速度コンテンツCT2の位置が相対的に変動しても、注意コンテンツCT1及び速度コンテンツCT2はオーバーラップしにくい。したがって、HUD400は、様々な種類の光源要素を用いて、色ずれとして視認されにくい画像を表示することができる。かくして、高画質の画像が運転者DRに提供される。
本実施形態において、表示コンテンツとして、3種類の画像(注意コンテンツCT1、速度コンテンツCT2及び案内コンテンツCT3)が例示される。代替的に、HUDは、他の内容の画像、及び/又は、より多い又は少ない種類の画像を表示してもよい。例えば、HUDが4つの色相で表示コンテンツを作成するならば、4種類のレーザ光源が使用される。赤、緑及び青以外の色相(例えば、黄色)で画像を表示するならば、光源として黄色レーザ光源が用いられてもよい。波長の温度依存性が略同一の光源の組み合わせが用いられるならば、これらの光源によって表現される色のみが混色によって表現されてもよい。
(第4実施形態)
図18Aは、第4実施形態のシースルーディスプレイとして例示されるHUDの概略図である。図18Aを用いて、第4実施形態のHUDが説明される。
本実施形態のHUD500は、レーザ光LBを出射するレーザ光源510と、レーザ光源510から出射された出射されたレーザ光LBを投射する投射光学系520と、フロントガラス210の内面211に取り付けられた体積ホログラム530と、を備える。投射光学系520は、MEMSミラー523と、スクリーン525と、を備える。本実施形態において、レーザ光源510は、光を発する光源として例示される。
HUD500は、レーザ光源510とMEMSミラー523との間に配設された1/2波長板540と、レーザ光源510、MEMSミラー523及び1/2波長板540にそれぞれ電気的に接続された制御部550を更に備える。レーザ光源510、MEMSミラー523及び1/2波長板540は、制御部550の制御下で動作する。
レーザ光源510は、制御部550の制御下で、レーザ光LBを出射する。レーザ光LBは、1/2波長板540を通過し、MEMSミラー523によって、体積ホログラム530に向けて反射される。1/2波長板540は、MEMSミラー523がレーザ光LBを反射する前に、レーザ光LBの偏光方向を変調する。本実施形態において、1/2波長板540は、変調要素として例示される。
制御部550の制御下で動作するMEMSミラー523は、レーザ光LBを2次元的にスクリーン525上で走査し、スクリーン525を照明する。このとき、レーザ光源510は、表示される画像に応じて、MEMSミラー523の走査に同期して、レーザ光LBを変調する。この結果、スクリーン525上に所望の画像が表示される。その後、スクリーン525に描かれた画像に応じた映像光ILがスクリーン525から体積ホログラム530に出射される。体積ホログラム530は、運転者DRに向けて映像光ILを回折する。この結果、運転者DRは、フロントガラス210越しに虚像VIを視認する。
図18Bは、1/2波長板540を備えないHUDの概略図である。図18A及び図18Bを用いて、1/2波長板540を備えないHUDが説明される。
図18Bに示されるHUD900は、図18Aに示されるHUD500と同様に、レーザ光源510、投射光学系520、体積ホログラム530及び制御部950を備える。しかしながら、HUD900は、HUD500と異なり、1/2波長板540を備えない。また、制御部950は、投射光学系520のMEMSミラー523とレーザ光源510を制御し、1/2波長板540を制御しない。HUD900の動作は、図18Aに関連して説明された1/2波長板540の動作を除いて、HUD500の動作と同様である。
図19Aは、HUD900がスクリーン525上に描く画像の概略図である。図19Bは、運転者DRが視認する虚像VIの概略図である。図2B、図18A乃至図19Bを用いて、1/2波長板540の効果が説明される。
レーザ光源510は、例えば、半導体レーザ光源であってもよい。半導体レーザ光源から出射されるレーザ光の波長は、レーザ光のパワーに応じて変動することが知られている。
半導体レーザ光源として、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、リン(p)からなる組成の活性層を持つ赤色レーザ光を出射する赤色半導体レーザー光源が例示される。赤色半導体レーザ光源は、典型的には、約0.005nm/mWのパワー依存性を有する。
図19Aに示される画像は、低い輝度のレーザ光によって描かれる低輝度領域LBAと、高い輝度のレーザ光によって描かれる高輝度領域HBAと、を含む。低輝度領域LBA及び高輝度領域HBAは交互に配列されている。高輝度領域HBAを描くレーザ光の波長は、半導体レーザ光源の上述の特性にしたがって、低輝度領域LBAを描くレーザ光の波長よりも長くなる。この結果、虚像VI上では、低輝度領域LBAに対して、高輝度領域HBAの位置がシフトすることとなる。
例えば、図19Bに示される如く、低輝度領域LBAに対して高輝度領域HBAの位置が下方にずれると、虚像VI中において、高輝度領域HBAと低輝度領域LBAとの間の隙間又は重なりが生ずる。
虚像VI中での低輝度領域LBA及び高輝度領域HBAの相対的な移動方向(上下方向)は、図2Bに示されるブラッグ条件下でのレーザ光LBの入射角と出射角との関係によって定められる。例えば、図2Bに示される如く、体積ホログラムへ入射する角度θ1が体積ホログラムから出射する角度θ2より小さいならば、波長が長いほど(輝度が高いほど)、角度θ2よりも大きな角度でレーザ光LBは出射する。逆に、角度θ1が角度θ2よりも小さいならば、波長が長いほど(輝度が高いほど)、角度θ2よりも小さな角度でレーザ光LBは出射する。
図19Aに示されるHUD500は、上述の如く、レーザ光源510とMEMSミラー523との間に配設された1/2波長板540を備える。また、1/2波長板540は、制御部550の制御下で動作する。
レーザ光源510は、画像形成のために、同一パワーで、所定の方向に単一偏光のレーザ光LBを出力する。制御部550は、表示対象の画像データとMEMSミラー523の走査位置に応じて、1/2波長板540を回転し、1/2波長板540を透過するレーザ光LBの偏光方向を変調する。最高輝度で画像が描かれるとき、MEMSミラー523の直前に配設された1/2波長板540は、レーザ光LBの偏光方向を図18Aの紙面に対して垂直方向に設定する。この結果、体積ホログラム530に対して、レーザ光LBは、S偏光で入射する。
体積ホログラムは、一般的に、S偏光が入射すると、高い回折効率を達成する一方で、P偏光に対しては低い回折効率を有する。したがって、S偏光で入射した部分のみが明るく点灯することとなる。
1/2波長板540が、レーザ光LBの偏光方向を図18Aの紙面において上下方向に設定するように、制御部550が1/2波長板540の角度を設定すると、レーザ光LBは、体積ホログラム530に対してP偏光で入射する。この結果、P偏光が入射した部分は暗くなる。制御部550が、1/2波長板540の角度を適切に調節すると、体積ホログラム530へ入射するレーザ光LBのP偏光とS偏光の割合が調整され、任意の階調で表現された画像が表示される。
レーザ光源510のパワーが一定に保たれるので、体積ホログラム530へ入射するレーザ光LBの波長も略一定になる。したがって、図19Bに関連して説明された輝度差に起因する画像ずれは生じにくくなる。
本実施形態の原理にしたがうと、MEMSミラーといった走査光学系を用いてレーザ光を点状走査し、輝度差に起因する画像ずれの少ない画像が表示される。したがって、HUD500は、高画質の画像を表示することができる。
本実施形態において、偏光方向を調整する変調要素として、1/2波長板540が例示される。代替的に、レーザ光の偏光方向を任意のタイミングで調整することができる他の光学素子が変調要素として用いられてもよい。
本実施形態において、出力に応じて波長が変動するレーザ光を出射する光源として、半導体レーザが例示される。同様の特性を有する光源が用いられるならば、本実施形態の原理に従い、高画質の画像が表示されることとなる。
図20は、第4実施形態のシースルーディスプレイとして例示される他のHUDの概略図である。図18A及び図20を用いて、第4実施形態の他のHUDが説明される。
図20に示されるHUD500Aは、図18Aに示されるHUD500と同様のレーザ光源510、投射光学系520、体積ホログラム530、1/2波長板540及び制御部550に加えて、1/2波長板540とMEMSミラー523との間に配設された偏光板545を備える。偏光板545は、図20において上下方向の偏光成分を吸収又は反射する。偏光板545は、図20の紙面に対して垂直方向の偏光成分の透過を許容する。この結果、体積ホログラム530にレーザ光LBは、S偏光で入射する。この結果、運転者DRは、高輝度且つ輝度差に起因する画像ずれが少ない画像を視認することができる。かくして、HUD500Aは、高画質な画像を表示することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態に従うシースルーディスプレイが表示するフレーム画像は、時分割されたサブフレームを用いて形成される。シースルーディスプレイは、サブフレームごとの輝度調整により、画像の位置ずれを低減する。
図21Aは、図18Bに示されるHUD900がスクリーン525上に描くフレーム画像の概略図である。図21Bは、図21Aに示されるフレーム画像に対応する虚像VIの概略図である。図18B、図21A及び図21Bを用いて、HUD900が内包する課題が説明される。
図21Aには、スクリーン525上に表示された高輝度点HBP及び低輝度点LBPが示されている。高輝度点HBPの階調は、8ビットで、230である。また、低輝度点LBPの階調は、同様に、8ビットで、80である。
HUD900は、1つのフレーム画像を描くために、それぞれの走査位置において所望の輝度でレーザ光源510を駆動する。レーザ光源510として、半導体レーザ光源が用いられるならば、上述の如く、半導体レーザ光源の波長は、パワーに応じて変動するので、図21Bに示される如く、虚像VI中では、高輝度点HBPの位置ずれ量は、低輝度点LBPの位置ずれ量よりも大きくなる。したがって、高輝度点HBP及び低輝度点LBPの相対位置がずれることとなる。
図22は、本実施形態のシースルーディスプレイとして例示されるHUDの概略図である。図18B及び図22を用いて、本実施形態のHUDが説明される。
本実施形態のHUD600は、図18Bに関連して説明されたHUD900と同様のレーザ光源510、投射光学系520及び体積ホログラム530に加えて、レーザ光源510及びMEMSミラー523に電気的に接続された制御部650を備える。レーザ光源510及びMEMSミラー523は、制御部650の制御下で動作し、時分割された複数のサブフレームを用いて1フレーム画像を形成する。
図23Aは、HUD900のレーザ光源510の点灯パターンを概略的に示すタイミングチャートである。図23Bは、HUD600のレーザ光源510の点灯パターンを概略的に示すタイミングチャートである。図18B、図21A乃至図23Bを用いて、レーザ光源510の点灯パターンの相違が説明される。
HUD600の制御部650は、図18Bに示されるように、1フレームを複数のサブフレームに分割し、レーザ光源510を制御する。この結果、高輝度点HBPと低輝度点LBPとの間の位置ずれ量の相対差が低減する。
図23Bに示される点灯パターンにおいて、1フレームは、4つのサブフレーム(サブフレーム1、サブフレーム2、サブフレーム3、サブフレーム4)に分割される。MEMSミラー523は、1つのサブフレーム内で、スクリーン525の全面を1回走査する。
上述の如く、高輝度点HBPの階調は、8ビットで、230である。4回の走査によって得られる高輝度点HBPの総階調に対して、以下の数式6で表される変換が可能である。
[数6]
230×4=256×3+152
上述の数式6で表される変換に基づき、サブフレーム1乃至サブフレーム4において、制御部650は、レーザ光源510を256の階調で点灯させ、サブフレーム4において、152の階調で点灯させる。
サブフレーム当たりの高輝度点HBPの点灯時間は、図23Aに示される高輝度点HBPの点灯時間の1/4となっている。したがって、1フレーム当たりの高輝度点HBPの輝度は、図23Aと図23Bとの間で等しい。
上述の如く、低輝度点LBPの階調は、8ビットで、80である。4回の走査によって得られる低輝度点LBPの総階調に対して、以下の数式7で表される変換が可能である。
[数7]
80×4=256+64
高輝度点HBPと同様の理由から、1フレーム当たりの低輝度点LBPの輝度は、図23Aと図23Bとの間で等しい。
1フレームが複数のサブフレームに分割されるならば、サブフレーム1からサブフレーム3の期間において、レーザ光源510が点灯される場合には、レーザ光源510は256の階調でしか点灯しない。したがって、サブフレーム1からサブフレーム3の期間において、虚像VI中の点(高輝度点HBP及び/又は低輝度点LBP)の相対位置は、どのような階調であっても、変動しない。かくして、1フレームが複数のサブフレームに分割されるならば、レーザ光源510が中間階調で点灯している時間が短くなり、階調差に起因する虚像VI中での相対位置のずれが適切に低減される。かくして、HUD600は、高画質の画像を表示することができる。
本実施形態において、高輝度点HBPの表示のために、サブフレーム1乃至サブフレーム3の間、レーザ光源510が発する光量は、最大値となっている。また、低輝度点LBPの表示のために、サブフレーム1において、レーザ光源510が発する光量は、最大値に設定され、サブフレーム2及びサブフレーム3において、レーザ光源510が発する光量は、「0」に設定されている。しかしながら、レーザ光源510が発する光量が最大値或いは0に設定されるサブフレームは、任意に設定されてもよい。複数のサブフレームのうち少なくとも1つにおいて、レーザ光源510が発する光の量が最大値又は0に設定されるならば、表示される画像のずれは知覚されにくくなる。
本実施形態において、1フレームは、4つのサブフレームに分割されている。代替的に、1フレームは、4未満又は4を超える数のサブフレームに分割されてもよい。1フレーム当たりの分割数が多いほど、相対位置のずれに対する低減効果は顕著となる。
本実施形態において、HUD600は、単一の光源を備える。しかしながら、HUDは、異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ光源を備えてもよい。
本実施形態において、レーザ光源510として、半導体レーザ光源が例示される。代替的に、HUDは、同様の波長−出力パワー特性を有する光源を備えてもよい。この場合であっても、上述の相対位置のずれに対する低減効果がもたらされる。
上述の一連の実施形態において、光源又は光源要素として、レーザ光源が例示されている。代替的に、光源又は光源要素として、他の光源(例えば、LED)が用いられてもよい。上述のレーザ光源の波長特性と同様の特性を有する光源であれば、上述された一連の実施形態の原理は、好適に適用される。
上述の一連の実施形態は、シースルーディスプレイの一例にすぎない。したがって、上述の説明は、本実施形態の原理の適用範囲を限定するものではない。上述の原理の真意及び範囲を逸脱することなしに、当業者は、様々な変形や組み合わせを行うことが可能であることは容易に理解されるべきである。
上述された実施形態は、以下の構成を主に備える。以下の構成を備えるシースルーディスプレイは、光源波長の固体ばらつきや波長変動に起因する色ずれや回折効率の低下に伴う輝度の低下、輝度分布並びに色分布の劣化を引き起こしにくい。したがって、以下の構成を備えるシースルーディスプレイは、画質低下をほとんど引き起こすことなく、高画質の画像を表示することができる。
上述の実施形態の一局面に係るシースルーディスプレイは、光を発する光源と、該光源から発せられた光を投射する投射光学系と、該投射光学系から投射された光を偏向する体積ホログラムと、を備え、該体積ホログラムは、α(/℃)の線膨張係数と、Λ(nm)の波長の記録光で記録された干渉縞と、を有し、前記光源から発せられた光の波長は、K(nm/℃)の温度依存性を有し、前記波長Λ(nm)及び前記温度依存性K(nm/℃)は、0≦K/Λ≦2αの関係を満たすことを特徴とする。
上記構成によれば、投射光学系は、光源から発せられた光を投射する。投射光学系から投射された光を偏向する体積ホログラムは、α(/℃)の線膨張係数と、Λ(nm)の波長の記録光で記録された干渉縞と、を有する。光源から発せられた光の波長は、K(nm/℃)の温度依存性を有する。波長Λ(nm)及び温度依存性K(nm/℃)は、0≦K/Λ≦2αの関係を満たすので、温度変動に起因するブラッグ条件からのずれが低減される。したがって、回折角の変動に起因する画像の表示位置のずれや回折効率の低下に起因する輝度の低下といった画質の劣化が生じにくくなる。
上記構成において、前記光源は、n個(nは1より大きい整数)の光源要素を含み、該複数の光源要素は、所定の温度において、λ1、λ2、・・・、λnの波長の光を出射し、前記干渉縞は、前記λ1、λ2、・・・、λnの波長の光をそれぞれ回折するために、Λ1、Λ2、・・・、Λnの波長の記録光を用いて形成され、(λ1−Λ1)/Λ1、(λ2−Λ2)/Λ2、・・・(λn−Λn)/Λnの最大値と最小値との間の差分値は、0.005以下であることが好ましい。
上記構成によれば、光源は、n個(nは1より大きい整数)の光源要素を含む。複数の光源要素は、所定の温度において、λ1、λ2、・・・、λnの波長の光を出射する。干渉縞は、λ1、λ2、・・・、λnの波長の光をそれぞれ回折するために、Λ1、Λ2、・・・、Λnの波長の記録光を用いて形成される。(λ1−Λ1)/Λ1、(λ2−Λ2)/Λ2、・・・(λn−Λn)/Λnの最大値と最小値との間の差分値は、0.005以下であるので、λ1、λ2、・・・、λnの波長の光を用いてそれぞれ描かれる画像間の相対的なずれは、視聴者に知覚されにくくなる。
上述の実施形態の他の局面に係るシースルーディスプレイは、光を発する光源と、該光源から発せられた光を投射する投射光学系と、該投射光学系から投射された光を偏向する体積ホログラムと、前記光源の温度を調整する調整要素と、を備え、前記光源から発せられた光の波長は、温度依存性を有し、該体積ホログラムは、αの線膨張係数と、Λの中心波長の記録光で記録された干渉縞と、を有し、前記調整要素は、前記線膨張係数αと前記記録光の中心波長Λとに基づき、前記光源の温度を調整することを特徴とする。
上記構成によれば、投射光学系は、光源から発せられた光を投射する。投射光学系から投射された光を偏向する体積ホログラムは、αの線膨張係数と、Λの中心波長の記録光で記録された干渉縞と、を有する。光源の温度を調整する調整要素は、線膨張係数αと前記記録光の中心波長Λとに基づき、光源の温度を調整するので、回折角の変動に起因する画像の表示位置のずれや回折効率の低下に起因する輝度の低下といった画質の劣化が生じにくくなる。
上記構成において、前記光源は、複数の光源要素を含み、前記複数の光源要素は、異なる波長の光をそれぞれ発し、前記調整要素は、前記複数の光源要素それぞれに対して、個別に目標温度を設定し、該目標温度となるように前記複数の光源要素の温度をそれぞれ調整することが好ましい。
上記構成によれば、光源は、複数の光源要素を含む。複数の光源要素は、異なる波長の光をそれぞれ発する。調整要素は、複数の光源要素それぞれに対して、個別に目標温度を設定し、目標温度となるように前記複数の光源要素の温度をそれぞれ調整するので、異なる波長の光を用いてそれぞれ描かれる画像間の相対的なずれは、視聴者に知覚されにくくなる。
上記構成において、前記調整要素は、前記線膨張係数α及び前記中心波長Λに加えて、前記光源が所定温度において発する光の波長に基づき、前記光源の温度を調整することが好ましい。
上記構成によれば、調整要素は、線膨張係数α及び中心波長Λに加えて、光源が所定温度において発する光の波長に基づき、光源の温度を調整するので、回折角の変動に起因する画像の表示位置のずれや回折効率の低下に起因する輝度の低下といった画質の劣化が生じにくくなる。
上記構成において、シースルーディスプレイは、前記体積ホログラムの温度及び前記体積ホログラムの周囲の温度のうち少なくとも一方を測定する温度センサを更に備え、前記調整要素は、前記温度センサが測定した温度に基づき、前記目標温度を設定することが好ましい。
上記構成によれば、温度センサは、体積ホログラムの温度及び体積ホログラムの周囲の温度のうち少なくとも一方を測定する。調整要素は、温度センサが測定した温度に基づき、目標温度を設定するので、回折角の変動に起因する画像の表示位置のずれや回折効率の低下に起因する輝度の低下といった画質の劣化が生じにくくなる。
上述の実施形態の更に他の局面に係るシースルーディスプレイは、光を発するn個(nは1より大きい整数)の光源要素を含む光源と、該光源から発せられた光を投射する投射光学系と、該投射光学系から投射された光を偏向する体積ホログラムと、を備え、該体積ホログラムは、前記n個の光源要素から発せられる光をそれぞれ回折するために、Λ1、Λ2、・・・、Λnの波長の記録光を用いて形成された干渉縞を有し、前記n個の光源要素から発せられ、前記Λ1、Λ2、・・・、Λnの波長の記録光を用いて形成された干渉縞によって回折される光の波長それぞれは、K1(nm/℃)、K2(nm/℃)、・・・、Kn(nm/℃)の温度依存性を有し、K1/Λ1、K2/Λ2、・・・Kn/Λnの最大値と最小値との間の差分値は、0.0001以下であることを特徴とする。
上記構成によれば、投射光学系は、光を発するn個の光源要素を含む光源から発せられた光を投射する。体積ホログラムは、投射光学系から投射された光を偏向する。体積ホログラムは、n個の光源要素から発せられる光をそれぞれ回折するために、Λ1、Λ2、・・・、Λnの波長の記録光を用いて形成された干渉縞を有する。n個の光源要素からそれぞれ発せられる光の波長は、K1(nm/℃)、K2(nm/℃)、・・・、Kn(nm/℃)の温度依存性を有する。K1/Λ1、K2/Λ2、・・・Kn/Λnの最大値と最小値との間の差分値は、0.0001以下であるので、n個の光源要素から発せられる光を用いてそれぞれ形成される画像間の相対的なずれは、知覚されにくくなる。
上述の実施形態の更に他の局面に係るシースルーディスプレイは、光を発する光源と、該光源から発せられた光を投射する投射光学系と、該投射光学系から投射された光を偏向する体積ホログラムと、を備え、前記光源は、第1波長の第1光を発する第1光源要素と、前記第1波長と異なる波長の第2光を発する第2光源要素と、を含み、前記第1光によって描かれる第1画像は、前記第2光によって描かれる第2画像から離間した位置に表示されることを特徴とする。
上記構成によれば、投射光学系は、光源から発せられた光を投射する。体積ホログラムは、投射光学系から投射された光を偏向する。光源は、第1波長の第1光を発する第1光源要素と、第1波長と異なる波長の第2光を発する第2光源要素と、を含む。第1光によって描かれる第1画像は、第2光によって描かれる第2画像から離間した位置に表示されるので、色ずれが知覚されにくくなる。
上述の実施形態の更に他の局面に係るシースルーディスプレイは、光を発する光源と、該光源から発せられた光を投射する投射光学系と、該投射光学系から投射された光を偏向する体積ホログラムと、を備え、前記投射光学系は、前記光源からの光を反射するMEMSミラーと、該MEMSミラーが前記光源から発せられた光を反射する前に、前記光源からの光の偏光方向を変調する変調要素と、を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、投射光学系は、光源から発せられた光を投射する。体積ホログラムは、投射光学系から投射された光を偏向する。投射光学系は、光源からの光を反射するMEMSミラーと、MEMSミラーが光源から発せられた光を反射する前に、光源からの光の偏光方向を変調する変調要素と、を含むので、画像のずれが発生しにくくなる。
上述の実施形態の更に他の局面に係るシースルーディスプレイは、光を発する光源と、該光源から発せられた光を投射し、フレーム画像を形成する投射光学系と、該投射光学系から投射された光を偏向する体積ホログラムと、を備え、前記投射光学系は、MEMSミラーを含み、前記フレーム画像は、時分割された複数のサブフレームを用いて形成され、前記複数のサブフレームのうち少なくとも1つにおいて、前記光源が発する光の光量は、0又は最大値であることを特徴とする。
上記構成によれば、MEMSミラーを含む投射光学系は、光源から発せられた光を投射し、フレーム画像を形成する。体積ホログラムは、投射光学系から投射された光を偏向する。フレーム画像は、時分割された複数のサブフレームを用いて形成される。複数のサブフレームのうち少なくとも1つが表示されるときの光源が発する光の光量は、0又は最大値であるので、画像の表示位置の相対的なずれが知覚されにくくなる。
上記構成において、前記光源は、半導体レーザ光源を含むことが好ましい。
上記構成によれば、光源は、半導体レーザ光源を含む。半導体レーザ光源からのレーザ光の波長変動を生じても、画像の表示位置のずれは知覚されにくくなる。
上述の実施形態の更に他の局面に係る車室内に入射する光の波長成分を選択的に調整する中間膜が介在されたフロントガラスを有する車両に搭載されたヘッドアップディスプレイは、上述のシースルーディスプレイを備え、前記体積ホログラムは、前記車室と前記中間膜との間に配設されることを特徴とする。
上記構成によれば、車室内に入射する光の波長成分を選択的に調整する中間膜が介在されたフロントガラスを有する車両に搭載されたヘッドアップディスプレイは、上述のシースルーディスプレイを備える。体積ホログラムは、車室と中間膜との間に配設されるので、車室内に入射する光に起因する体積ホログラムの特性変化は生じにくくなる。