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JP5791095B2 - Pnh型白血球の検出方法 - Google Patents

Pnh型白血球の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、PNH型白血球の検出方法に関する。
骨髄不全とは、血球減少を呈する疾患のうち、その原因が血球の破壊の亢進や、骨髄の占拠性病変による二次的な造血障害ではなく、造血幹細胞の量的・質的異常のために血球産生が持続的に減少した状態のことをいう。骨髄不全には、薬剤性再生不良性貧血(aplastic anemia、AA)などの二次性造血障害のほか、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome、MDS)、不応性貧血(refractory anemia、RA)、発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria、PNH)などの特発性の造血障害が含まれる。これらの疾患は互いの境界が必ずしも明瞭ではなく、相互に移行することがある。またこれらの疾患には、自己免疫障害による造血障害と造血幹細胞自身の異常による造血障害とが混在しており、骨髄不全はこれらを総称して骨髄不全症候群と総称される場合もある。
ところで骨髄不全に対するプライマリーケアにおいてもっとも重要なポイントは、免疫抑制療法のみでも改善する可能性の高い骨髄不全に対して、不用意に毒性の強い治療をしないことである。そのためには骨髄不全の患者や骨髄不全疑いの患者において、予め免疫病態を正確に診断する必要がある。すなわち臨床の現場においては、(1)自己免疫的障害による骨髄不全;つまり免疫抑制療法を中心とする薬物療法によって治療可能な骨髄不全と(2)薬物療法では治療できない;すなわち造血幹細胞自身の異常による造血障害であり、造血幹細胞移植を必要とする骨髄不全とを正しく鑑別することが重要であり、この判別を正確に行うことができる方法が求められている。
骨髄不全における免疫病態の診断方法のうち、最も簡便で信頼のおける検査は末梢血におけるPNH形質の血球(PNH型血球)の検出である。PNH型血球とはGPI(Glycosylphosphatidylinositol)アンカー型膜蛋白質を欠く血球であり、これらはPIGA遺伝子に突然変異を来した異常造血幹細胞に由来する。
PNH型の異常血球は健常者の末梢血中にもごくわずかに存在するが、正常の造血幹細胞に比べて増殖能が高いわけではないので、一定の割合(0.003%)以上に増えることはない(非特許文献1)。一方で正常造血幹細胞に対する免疫学的な障害が存在する環境においては、PNH型の幹細胞は正常幹細胞に比べてT細胞による障害を受けにくいため、PNH型血球が相対的に増加すると考えられている。
PNH型血球陽性のAAは、陰性のAAに比べてATG・シクロスポリン併用療法の奏効率が有意に高く、また長期予後も良好であることが示されている(非特許文献2)。またPNH血球増加RAの患者においては、非増加RAの患者に比べてシクロスポリン療法の奏効率が高く、白血病への移行率が低い傾向が認められる(非特許文献3)。すなわちPNH型血球は、自己免疫障害による骨髄不全症例に限って発現していることが理解できる。
以上のことから、RAやAAといった骨髄不全症例において治療方針を決定する上で、PNH型血球の検出を臨床前段階において正確に行うことは極めて重要であることがわかる。
PNH型血球の有無は、通常、血算に用いられる残りの血液などを用い、血球表面抗原をフローサイトメトリーの手法で検出することによって容易に判別することができる。しかしながら現在一般的に行われている、血球表面抗原に対する抗体を用いたフローサイトメトリーによる血球の検査方法(以下、「従来法」と記載)では、0.01%未満のPNH型血球を正確に検出することは極めて困難である。これは、当業者であれば誰でも0.01%未満という超微量なPNH型血球を検出可能なわけではなく、PNH型血球の検出には高いレベルでフローサイトメトリーに習熟していることが必要であるからである。特に抗体を使用する以上、フローサイトメトリーには非特異的なノイズが生じるため、僅かなPNH型血球のシグナルに対する当該ノイズを除去すべく、本来のPNH型血球のシグナルと当該ノイズとを主観的かつ経験的な判断に基づいて区別しなければならないという問題点もあった。
AA患者を対象としてPNH型血球を従来法で検出した海外の報告では、PNH型血球の増加がみられる例の割合は30%前後と低率であることが開示されている(非特許文献4)。しかしながら、これらの報告ではPNH型血球検出の特異性が低いため、健常者でも1%までのPNH型血球が検出されており、さらにPNH型血球が増加しているAA患者と健常者との間には明確な境界が示されていない。このような特異性の低さが、PNH型血球の増加が30%前後のAA患者にしか認められなかった原因であった。
以前本発明者らは、FITCでラベルした抗CD55抗体・抗CD59抗体と、PEでラベルした抗CD11b抗体(顆粒球用)または抗グリコフォリンA抗体(赤血球用)を用いて、細胞のゲーティングを工夫すれば、健常者におけるPNH型血球の割合とAA等のPNH増加例におけるPNH型血球の割合との境界を、0.003%まで下げることが可能であることを開示している(非特許文献2)。この方法(以下、「高感度法」と記載)は従来法と比して特異性・感度が高いため、再生不良性貧血患者の6割においてPNH型血球の増加を検出することができた。しかしこの方法では、調べる血球の種類に応じて異なる抗体を用いる必要があるため、多種類の血球系統でPNH型血球を検出するのが煩雑であった。さらに、採血から時間が経った検体では、血球に対する抗体の結合性が低下するため、真のPNH型血球だけを算定するためには、習熟した担当者による主観的かつ経験的な判断が必要であった。そのため、フローサイトメトリーに習熟していない者であっても、正確かつ迅速にどの系統の血球であってもPNH型血球を検出できる方法が求められていた。
Araten DJ,et al.,Proc Natl Acad Sci USA.1999;96:5209−5214. Sugimori C,et al.,Blood.2006;107:1308−1314. Wang H et al.,Blood.2002;100:3897−3902. Maciejewski JP, et al., Br J Haematol, 2002;115:1015−1022.
骨髄不全症候群の免疫病態を治療前段階で正確に診断することができる方法が望まれている。具体的には、PNH型血球、特にPNH型顆粒球および単球を簡便な方法で正確に検出できる方法が望まれている。
本発明者らは、顆粒球抗原(CD11b)、単球抗原(CD33)などといった白血球表面抗原に対する抗体とFLAERとを組み合わせたフローサイトメトリーを行うことによって、血球中の微量のPNH型白血球(PNH型顆粒球、PNH型単球など)を簡便かつ正確に定量することができることを初めて見出した。特に当該フローサイトメトリーにおける波形処理をデジタル化して行うことで、従来の抗GPI−AP抗体法を用いた場合に主観的な判断が要求されていたPNH型白血球の判別を、誰でもできるようになることを見出した。
本発明者らはこれらの知見に基づいてさらに鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、
[1]FLAERおよび少なくとも一種の抗白血球表面抗原抗体を用いてフローサイトメトリーを行うことを含む、PNH型白血球の検出方法;
[2]フローサイトメトリーにおける波形処理がデジタル化されている、[1]に記載の方法;
[3]抗白血球表面抗原抗体が、抗CD11b抗体、抗CD33抗体、抗CD45抗体、抗CD3抗体からなる群、あるいは抗CD19抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体および抗CD56抗体からなる群から選択される、[1]または[2]に記載の方法;
[4]二種類以上のPNH型白血球を同時に検出することを特徴とする、[3]に記載の方法;
[5]FLAERおよび抗白血球表面抗原抗体を用いてフローサイトメトリーを行うことを含む、骨髄不全症候群の検査方法;
[6]フローサイトメトリーにおける波形処理がデジタル化されている、[5]に記載の方法;
[7]抗白血球表面抗原抗体が、抗CD11b抗体、抗CD33抗体、抗CD45抗体、抗CD3抗体からなる群、あるいは抗CD19抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体および抗CD56抗体からなる群から選択される、[5]または[6]に記載の方法;
[8]骨髄不全症候群が自己免疫性であると診断できる、[5]〜[7]のいずれか一に記載の方法;
[9]自己免疫性骨髄不全症候群と造血幹細胞異常性骨髄不全症候群の判別方法である、[5]〜[7]のいずれか一に記載の方法;
[10]骨髄不全症候群に対する免疫抑制療法の適否の判別方法である、[5]〜[9]のいずれか一に記載の方法;
などに関する。
PNH型白血球は健常者の末梢血中にもごくわずかに存在しているが、その割合は、通常、全体の0.001%程度に過ぎない。このため、PNH型白血球が増加しているか否かを判定するためには0.001%オーダーのPNH型白血球を正確に定量する必要がある。PNH型白血球はGPIアンカー型膜蛋白質が「欠失」している血球であるため、従来は、抗GPIアンカー型膜蛋白抗体が結合しないという性質を利用してこの血球を検出していた。しかし、細胞の抗体処理の過程で傷んだ細胞は抗GPIアンカー型膜蛋白抗体との結合性が弱くなるため、フローサイトメトリーのドットグラム上で、真のPNH型白血球とは位置が異なるものの、PNH型白血球と紛らわしいところに位置するようになる。このような偽のPNH白血球集団を真のPNH型白血球と判別するには多くの経験に基づいた主観的な判断が必要であった。
本発明の方法はこれらの問題を一挙に解決し、簡便かつ正確にPNH型白血球を検出可能にするものである。本発明の方法を適用することによって、PNH型白血球の検出における(1)非特異的反応に基づくノイズの発生が抑制されるだけでなく、(2)PNH型白血球の細胞集団がドットグラム上に明瞭に描出される。これにより、PNH型白血球の検出に携わる者のフローサイトメトリーへの習熟度合いに関係なく、多くの施設でPNH型白血球を容易に検出することが可能となる。さらに白血球に特徴的な各表面抗原に対する抗体と組み合わせることで、(3)どのような種類のPNH型白血球(PNH型顆粒球、PNH型単球、PNH型リンパ球など)でも一度に検出することが可能である。
当該検出方法を利用することで、骨髄不全症候群の免疫病態を診断することができる。PNH型白血球は自己免疫性の骨髄不全症例において有意に増加することから、本発明の方法により、自己免疫性の骨髄不全症候群を、造血幹細胞自身の異常に基づく骨髄不全と鑑別することができる。
本発明の方法を使用して、PNH型顆粒球を検出するためのゲーティングを示す図である。 本発明の方法を使用して、健常人50例を対象にPNH型顆粒球の閾値について解析した結果である。 本発明の方法を使用して、PNH型単球を検出するためのゲーティングを示す図である。 本発明の方法を使用して、健常人50例を対象にPNH型単球の閾値について解析した結果である。 本発明の方法を使用してPNH型T細胞(a〜c)、PNH型B細胞(d)およびPNH型NK細胞(e)を検出した結果である。 本発明の方法を使用してPNH型T細胞(a〜c)、PNH型B細胞(d)およびPNH型NK細胞(e)の閾値について解析した結果である。 PNH型白血球の検出精度について、本発明の方法(C法)と、従来法(A法)および高感度検出法(B法)とを比較した図である。 高感度検出法によりPNH型赤血球を検出した結果である。 AA患者において、PNH型白血球の有無が免疫抑制療法の奏効率や生存率に影響することを示す図である。
1.PNH型血球の検出方法
本明細書における「PNH型白血球」とは、PIGA遺伝子に変異を来した造血幹細胞に由来するGPIアンカー型膜蛋白質欠失白血球のことをいう。PIGA遺伝子においては、通常、一定の割合で突然変異が発生することから健常者でもごく少数のPIGA変異幹細胞を有するが、健常者の骨髄に存在するこの変異造血幹細胞は静止期に留まり続けるため、この幹細胞由来のPNH型白血球が末梢血中に検出されることはない(Mochizuki K,et al.,Blood,112:2160−2162(2008))。
一方、正常造血幹細胞に対する免疫学的な障害が存在する環境(例えば自己免疫性の骨髄不全症例)では、PIGA遺伝子に変異を来した造血幹細胞はGPIアンカー型膜蛋白質を欠失しているため、正常幹細胞に比べてT細胞による障害を受けにくい。このような環境ではPIGA変異幹細胞が生き残るため、PNH型白血球が相対的に増加すると考えられる。
とはいえ、このような症例においてもPNH型白血球は血球全体の僅か0.1%前後しか存在しないため、PNH型白血球の検出には極めて高感度のフローサイトメトリーを用いる必要がある。本発明の検出方法は、このような微量PNH型白血球の検出に特に適したフローサイトメトリーの新たな手段を提供するものである。
上記「GPIアンカー型膜蛋白」とは、GPIアンカーと呼ばれる、ホスファチジルイノシトール(PI)、グルコサミン(GlcN)、3つのマンノース(Man)、エタノールアミンリン酸(EtN−P)からなる糖脂質部分に結合して膜表面上に発現する蛋白質全般をいい、現在までに100種類以上の分子が同定されている。あらゆるGPIアンカー型膜蛋白において、上記糖脂質部分は高い割合で保存されている。PIGA遺伝子に変異を来した造血幹細胞由来の血球はGPIアンカーを製造できず、結果的にGPIアンカー型膜蛋白を産生できなくなっている。
血球において高発現しているGPIアンカー型膜蛋白は血球の種類によって異なる発現パターンを示す。例えば補体制御蛋白質であるCD55、CD59(全血球)、HRF(赤血球、血小板);酵素蛋白質であるアセチルコリンエステラーゼ(赤血球)、アルカリホスファターゼ(好中球);受容体であるCD14(単球)、CD16(好中球);接着分子であるCD48(T細胞、B細胞、単球、活性化血小板)、CD58(赤血球、顆粒球、リンパ球)、CD66b、CD66c(好中球);CD73(B細胞)、CD87(単球、好中球)などが挙げられる。
後述する「FLAER(フレア、Fluorescent−Labeled inactive toxin Aerolysin)」はこれらのGPIアンカー型膜蛋白に結合する。
本明細書において「FLAER」とは、細胞表面上のGPIアンカー型蛋白質のGPIアンカー部分、即ち糖脂質部分と特異的に結合する細菌由来の毒素であり、具体的には「遺伝子組換えエロリジン」と呼ばれる種類の蛍光細菌蛋白質である。FLAERは、GPIアンカー型蛋白質の蛋白質部分をエピトープとするモノクローナル抗体と異なり、GPIアンカー部分をエピトープとするため、理論上ほとんどすべてのGPIアンカー型膜蛋白質を認識することができる。
したがってFLAERが結合しない(FLAERで染色されない)白血球は、GPIアンカー型膜蛋白(たとえばCD59)を欠損している白血球として認識されるので、PNH型白血球であると判断することができる。
FLAERには液状とパウダー状の2種類があるが、液状FLAERであることが望ましい。本発明の方法では、液状FLAERの方が安定した結果を得ることができる。FLAERは通常488nmで励起し、530/30nmの蛍光を発する。
本明細書において「抗白血球表面抗原抗体」とは、FLAERと併用しうる抗体であって、各血球系統に特異的に発現している細胞抗原に対する抗体であることが望ましい。本発明においては、例えば、PNH型顆粒球を検出する場合は抗CD11b抗体を、PNH型単球を検出する場合は抗CD33抗体を、PNH型T細胞を検出する場合は抗CD3抗体と抗CD4抗体または抗CD3抗体と抗CD8抗体を、PNH型B細胞を検出する場合は抗CD19抗体、そしてPNH型NK細胞を検出する場合は抗CD56抗体を用いることが好ましい。
また好ましくは、これらの抗体は二つのグループに分けられる。抗CD11b抗体、抗CD33抗体、抗CD45抗体、抗CD3抗体からなる群は、PNH型顆粒球とPNH型単球を同時に検出するために用いられる。一方で抗CD19抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体および抗CD56抗体からなる群は、PNH型のB細胞とT細胞とNK細胞を同時に検出するために用いられる。
本発明の方法によれば、上記二つのグループのいずれかを選択し、その一種以上の抗体を用いることによって、二種類以上のPNH型白血球を同時に検出することも可能である。
これらの抗体のクラスは特に限定されず、また市販のものを用いてもよい。
本発明の方法では、フローサイトメトリーを行う前に生体試料から血球成分を得、さらに当該血球成分をFLAERおよび上記抗白血球表面抗原抗体で処理する。
本発明の方法に用いられ得る生体試料としては血球成分を含む限り特に限定されないが、好ましくは血液(特に末梢血)、リンパ液であり、より好ましくはEDTAまたはヘパリンが添加された末梢血である。
生体試料から血球成分を得る方法としては特に限定されないが、例えば赤血球以外の血球成分を得る場合は、一定速度で遠心分離操作した全血に塩化アンモニウム、炭酸水素カリウム、EDTA・4Naを含む溶血試薬を加えて赤血球を溶血する方法が挙げられる。
一方、血液から赤血球を得るためには、例えば、上記の遠心分離前に取り分けた血液から血漿成分を除き、赤血球層にリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)を加える。これにより赤血球浮遊液が得られる。
得られた血球をFLAERおよび抗白血球表面抗原抗体で処理する方法としては特に限定されず、血球の量、FLAER量、抗白血球表面抗体の処理時間、処理温度などの種々の処理条件は、検出するPNH型白血球の種類やフローサイトメトリーの条件などに合わせて適宜決定することができる。しかしながら、本発明の方法により高感度でPNH型白血球を検出すべく、本明細書の実施例に記載の処理条件によって実施することが望ましい。
抗白血球表面抗原抗体は、後のフローサイトメトリーにおける検出のために、FITC(fluorescein isothiocyanate)、PE(phycoerythrin)、APC(Allophycocyanin)、PerCP−Cy5.5、PE−Cy7、APC、APC−H7などの蛍光色素や蛍光物質で標識されているものを用いることができる。
またFLAERおよび抗体で処理する際、後述するヒストグラムにおけるゲーティング工程や分析工程において死細胞を除去する目的で、細胞検出マーカーを同時に反応させても良い。一般的には、死細胞を特異的なマーカーを用いて検出し、それらをゲーティングで除外する方法が採用される。死細胞検出マーカーとしては、死細胞DNAのシトシン−グアニン塩基対の間に結合する7−アミノアクチノマイシン(7−AAD)やAT(アデニン・チミン)に富んだ領域に結合するDAPIなどが挙げられる。これらを指標に後述するゲーティングを行うことによって、不適格な細胞をさらに除去することができ、本発明の目的を達成することができる。
上記蛍光色素や蛍光物質は、検出する白血球の種類や細胞数、フローサイトメトリーの条件設定等によって適宜選択されるが、少なくとも同時に多種類の細胞を検出する目的で複数の抗体等を用いる場合には、それぞれの抗体や細胞検出マーカー等に対して異なる種類の蛍光色素を用いてもよい。
例えばフローサイトメーターとしてFACSCanto(登録商標)を用いる場合、PE、FITC、PerCP−Cy5.5、PE−Cy7、APC、APC−H7などの蛍光色素や蛍光物質でそれぞれラベルした複数の抗体や細胞検出マーカー等を同時に用いることが可能である。
これらの操作により、FLAERおよび一種以上の抗白血球表面抗原抗体が結合した血球の懸濁液(以下「細胞懸濁液」と記載する場合がある)が得られる。
次いで、FLAERおよび抗白血球表面抗原抗体で処理された血球を検体として、フローサイトメトリーを行う。
フローサイトメトリーの手法としては特に限定されないが、波形処理がデジタル化される(つまり「デジタル波形処理方式」を採用する)フローサイトメーターを用いることが望ましい。
すなわち、本発明における好ましい「フローサイトメトリー」とは、デジタル波形処理(「デジタル波形処理方式」)が可能なフローサイトメーターを用いて行うフローサイトメトリーを意味する。なお、本明細書中、フローサイトメトリーに用いられる機器のことをフローサイトメーターと称する。
本明細書における「デジタル波形処理方式」とは、PMT(photo multiplier tube)検出器から得られた蛍光パルスシグナルを各種方法によってAD変換し、得られた値を解析することをいう。AD変換とは、アナログ信号をデジタル信号へ変換することをいう。
特に後述するように、フローサイトメトリーとしてFACSCanto(登録商標)を採用した場合の「デジタル波形処理方式」としては、例えば上記蛍光パルスシグナルを直接262,144チャネルの解像度でリニアデータにAD変換し、その後Log対数換算及び蛍光補正(逆行列処理)によって数値演算処理プロセッサー(digital signal processer;DSP)によって解析することをいう。
本発明の方法は、FLAERおよび抗白血球表面抗原抗体と、デジタル波形処理が可能なフローサイトメトリーとを組み合わせることが、PNH型白血球の検出に最も適した手段であることを初めて見出したことに基づいて完成したものである。
上記デジタル波形処理方式を実現できるフローサイトメーターとしては、例えば、FACSCantoやBD LSR2、FACSAriaなどが挙げられるが、なかでもFACSCanto(登録商標)が好ましい。FACSCanto(登録商標)は、使用方法が簡便化されているので、多くの検体を取り扱う一般臨床技師にも扱いやすく本発明の方法に最も適したフローサイトメーターであると言える。以下、FACSCantoを一例として、フローサイトメーターについて説明する。
フローサイトメーターに付す血球懸濁液は単一(細胞非集合)の懸濁液として調製し、血球一個ずつをレーザー光に通過させる。
細胞懸濁液には死細胞やデブリスが含まれており、これらはフローサイトメトリーにおけるノイズを発生させる原因となる。また正しいデータを得るためには細胞は一個ずつフローされる必要がある。したがって上記懸濁液をフローサイトメーターに付す前には、細胞懸濁液中の細胞はできるだけ一つずつの細胞に均一化したうえ、死細胞やデブリスなどの不純物はできるだけ除去することが望ましい。均一化には自体公知の一般的手法を適用でき、例えば細胞懸濁液のフィルタリングや、ボルテックス操作などを各操作のプロトコールに準じて行う。
フィルタリングに用いられるフィルターとしては、死細胞の集塊やデブリスが除けるメッシュサイズを有するものであれば特に限定されないが、例えばポア径(40μm)のナイロンメッシュが挙げられる。
フローサイトメーターに付す前には、再度デブリスや細胞塊が残っていないかどうかを視認し、残っていれば改めて上記フィルターに通すことが望ましい。
細胞懸濁液中の細胞一つずつをレーザー光に通過させるべく、フローサイトメトリーにおいては、単一の細胞が連続して流れるサンプル液流とそれを包むシース液流とからなるサンプルコアを形成する必要がある。上記サンプルコア内で一個の細胞がビーム中央を通過するように流れを調節し、かつ一度に複数の細胞が照射されないよう、レーザー光はできるだけ集束させて強度を高めることが好ましい。
レーザー光の強度は、ビーム中心部から縁に行くに従って弱くなるため、感度及び分解能を高めるため、全ての細胞が同じ経路でビーム中心部を通るのが好ましい。そのため、上記サンプルコアの直径は小さいほど好ましい。これらの設定は、当業者であればどのようなフローサイトメーターを用いた場合でも適宜設定可能である。
上記サンプルコアの流速は特に限定されず、感度、分解能、処理速度などの関係で当業者が適宜設定することが可能であるが、本発明が微量のPNH型白血球の検出を目的としている関係上、できるだけ低速であることが望ましい。
特にフローサイトメータとしてFACSCanto(登録商標)を用いた場合、上記サンプルフローの値を制御するシース圧(上記シース液の入った容器に対する圧力)は4.5psiに固定されているが、サンプル流への圧力は数値化(psi)されておらず、サンプルが吸引される量がLow=10μL/min、Med=60μL/min、High=120μL/minになるように、またシース液=18mL/minになるようにサンプル吸引中のチューブ内の圧が調節されている。
測定時のフロー速度は、100〜300細胞/秒が好ましく、特に100〜200細胞/秒であることが好ましい。
上記サンプルコアの流れはシース圧により制御され、上記サンプルコアの直径はシース圧とサンプル圧の差によって制御される。例えば、サンプル圧を一定に維持したまま、シース圧を高くすることによって上記サンプル・コアの流れを速め、サンプルコア直径が小さくなる。これらの設定は、どのようなフローサイトメーターを用いた場合でも適宜設定可能である。
フローサイトメトリーの光源として用いるレーザーは、血球および血球に結合したFLAERや抗白血球表面抗原抗体を変質させず、且つ血球から散乱光が発生する限り、アルゴンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザー、光励起半導体レーザー等、公知のいかなるレーザーであっても用いることもできる。
FACSCanto(登録商標)ではデュアルレーザー・セパレートビームスポット方式に加えてオプティカルゲルを用いる事で蛍光の漏れ込みを最小限にしている。また、従来の直列方式、または分岐光学方式で複数の蛍光色素を同時に検出する場合には、蛍光シグナルの強度は光学システムの検出器に達するまでに透過する光学フィルターの数に比例して減衰するという問題があったが、FACSCanto(登録商標)ではオクタゴン・トライゴン蛍光検出システムを採用することでこの問題を克服している。
FACSCanto(登録商標)ではデジタル波形処理によるフルマトリックス・コンペンセーションを実現している。マルチカラー解析では、波長幅をもつ蛍光シグナルが近接すればするほど隣接した蛍光検出器でもその蛍光シグナルが検出されてしまう、いわゆる「蛍光の漏れ込み」が起こるため、これを補正するコンペンセーションは不可欠である。従来のアナログ方式ではパルス信号をシグナル処理の過程で蛍光補正回路にて漏れ蛍光係数をパルス信号から減算して補正を行っていたが、この方法は特に4種類以上のマルチカラー解析では補正能力に限界があることから、FACSCanto(登録商標)では、逆行列を使用して数学的に補正を行うフルマトリックス・コンペンセーション・システムを採用している。具体的には、PMT検出器から得られた蛍光パルスシグナルを直接262,144チャネルの解像度でリニアデータにAD変換し、その後Log対数換算および蛍光補正(逆行列処理)により数値演算処理プロセッサーにて解析する。
本発明の検出方法では、目的とするPNH型白血球を検出すべく、個々の細胞の測定パラメータをプロットし、ヒストグラムを作製する。
パラメータ数は1パラメータでもよいし、2パラメータ以上であってもよいが、本発明の方法では少なくともFLAERと抗白血球表面抗原抗体の2つを検出するので、2パラメータ以上のヒストグラム(サイトグラム)を用いることが望ましい。複数の抗体を用いて多種類の細胞に対する測定を同時に行う場合は、例えばリストモードデータを用いてパラメータの組合せを変え、異なるヒストグラムをその都度得ればよい。
分析対象となる測定パラメータとしては、以下のパラメータが挙げられる。
(1)前方散乱光(Forward Scatter、FSC)
(2)側方散乱光(Side Scatter、SSC)
(3)7−ADD(DAPI)
(4)蛍光(Fluorescence、FL)
本明細書中、「ゲーティング」とは、サンプルの中の関心のある細胞集団だけを選び出し、その細胞のみのヒストグラムを作ることをいう(「ゲートを設定する」ともいう)。前方散乱光/側方散乱光プロットによるゲーティングだけでなく、蛍光パラメーターを利用し、検索対象の細胞集団にゲーティングを行い、解析集団への絞り込みに活用することができる。
ゲーティングに用いられる蛍光パラメーターの少なくとも一つは、FLAERである。前述のとおりFLAERはGPIアンカー型膜蛋白質を検出するために用いられる。また少なくとも一つは、上記抗白血球表面抗原抗体(蛍光色素などで標識されたもの)に由来する。
上記2以上の蛍光パラメーター(少なくともFLAERの蛍光及び抗体の蛍光)について表示された2次元画面上の細胞クラスターにゲートを設定することで個々の細胞集団を分取する。この場合、例えば顆粒球を解析するならば、以下のような操作を行う。
(1)FSC−A(Area:パルス面積)とSSC−Aで展開し、顆粒球、単球、リンパ球からなる白血球領域にゲートをかける;
(2)FSC−W(Width:パルス幅)とFSC−H(Hight:パルス高)で展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外する;
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外する;
(4)死細胞を除外する(7−AAD陽性細胞やDAPI陰性細胞にゲートをかける);
(5)顆粒球領域にゲートをかける;
(6)CD11b強陽性細胞にゲートをかける;
(7)(1)〜(6)により導きだされた細胞が純粋な成熟顆粒球と定義される。この細胞群におけるFLAER発現を解析する。
なお本明細書中、このようにゲーティングされたヒストグラムのことを「ゲーティングされたヒストグラム」または「ゲートがかけられたヒストグラム」という。
最後に、ゲーティングされたヒストグラムにおいてリージョンを設定することで、リージョン内の細胞についての統計的情報を入手可能である。
ここで「リージョン」とは、目的とする細胞集団に着目した解析(クラスター解析)を行うために、データを絞り込むために設定した領域をいう。またリージョンを目的とする細胞集団ごとに設定することを「リージョンの設定」という。
リージョンの設定は種々の方法や条件式を利用して行われるが、これらの方法や条件式は当業者に公知であり、目的によって適宜設定することが可能である。
抗白血球表面抗原抗体として抗CD11b抗体を用い、PNH型顆粒球を検出する場合、PNH型顆粒球の集団は、
(1)FLAERへの反応性が低く;
(2)抗CD11b抗体に反応する;
という特徴を有するので、FLAER(X軸)と抗CD11b抗体(Y軸)との2パラメータヒストグラム上における左上の領域に現れる。
このヒストグラム上で左上領域に観察される細胞集団に対してリージョンを設定することで、得られたPNH型白血球の統計学的情報を入手することができる。
同様にPNH型単球の集団、PNH型T細胞の集団、PNH型B細胞の集団、PNH型NK細胞の集団などは、
(1)FLAERへの反応性が低く;
(2)各細胞特異的な細胞表面抗原に対する抗体に反応する;
という特徴を有するので、FLAER(X軸)と抗細胞表面抗原抗体(Y軸)との2パラメータヒストグラム上における左上の領域に現れる。各細胞に特異的な細胞表面抗原に対する抗体については、前記したとおりである。
このヒストグラム上で左上領域に観察される細胞集団に対してリージョンを設定することでも、得られたPNH型白血球の統計学的情報を入手することができる。
本発明の方法により得られたドットグラムでは、目的とするPNH型白血球の集団はその他の白血球の集団と明確に区別される。
本発明の方法により得られる結果は、従来行われてきたPNH型血球の検出方法と比べ、以下の点において顕著な効果を示している。
(1)GPIアンカー型膜蛋白質の陰性細胞(PNH型白血球)の集団がヒストグラム上で明瞭に描出されるため、従来法と比べ視認しやすい。
(2)GPIアンカー型膜蛋白質の陰性細胞(PNH型白血球)の集団がヒストグラム上で集塊を形成し、陽性細胞の集団と明確に分離して描出されるため、左上領域に観察される細胞数を確認するだけでPNH型白血球の増加があるかどうかが判定できる。
(3)死細胞に起因するノイズや非特異的な結合に由来するノイズが極めて少なく、主観的な判断でノイズを省く必要が無い。
ところで、本発明の方法において用いられるデジタル波形処理可能なフローサイトメトリーや液状FLAERはどのような施設でも手に入るため、高精度でのPNH型白血球検出を目指して種々の条件設定を検討することは他の施設においても行われうると考えられる。ところがデジタル波形処理可能なフローサイトメトリーと液状FLAERを用いてPNH型白血球を検出した例はこれまで報告されておらず、また本発明の方法によれば、単にこれらの条件設定を検討したことだけでは予想だにし得ないほど、ヒストグラム上において、従来法からの劇的な変化が認められるのである。
つまるところ、従来の高感度フローサイトメトリー法では本発明の方法と同じ感度・特異性で微少PNH型白血球を検出することは不可能であったが、本発明によって、どのような施設でも高感度で微少PNH型白血球を検出することができ、かつこれは何度でも簡単に再現できることが期待される。
本発明では、本発明者等が鋭意検討した結果、「PNH型白血球を検出する」という目的に対して、「FLAER」および「抗白血球表面抗原抗体」を、フローサイトメトリー、特に「波形処理がデジタル化された」フローサイトメトリーで行うという、極めてシンプルな条件を採用するに至った。しかしながらこの条件を採用することにより、従来法では予想だにし得ないほど、微量なPNH型白血球を自動的に検出できるようになったのである。特に、従来法の汎用化を妨げていた「偽のPNH型白血球」の主観による除外が可能となったことは、PNH型血球の検出法における画期的な進歩ということができる。
さらに本発明の方法によれば、波形処理がデジタル化されたフローサイトメトリーやFLAERなどの新しい機器試薬を用いることに加えて、従来法においてPNH型血球を検出する際に行ってきた細胞処理やゲーティングなどにおける条件設定を加えることによって、より正確に0.003%前後のPNH型白血球を検出できるのである。これらの詳細な条件設定は、本願実施例に詳細に記載されている。
なお、FACSCanto(登録商標)を用いてフローサイトメトリーを行う場合は、フローサイトメトリー操作の前に、フローサイトメーターのコンペンセーションを行うことが望ましい。
この場合、各抗体の陽性細胞集団の相対的蛍光強度が1×10〜1×10程度になるよう電圧を設定し、各蛍光抗体単独で染色した細胞(陽性コントロール)を未染色の細胞(陰性コントロール)と混ぜ合わせた検体を順番に流す。その時に陽性細胞集団にポジティブゲートをかけておく。全てのコンペンセーション用検体を流してから、Compensation Calculationボタンを押しコンペンセーションを行う(FACSCanto(登録商標)では自動的に蛍光補正されるので、マニュアルで蛍光補正をする必要がない)。
2.骨髄不全症候群の検査方法
前記したように、骨髄不全症候群には、自己免疫的な障害によるものと造血幹細胞自身の異常によるものの2種類が混在している。骨髄不全症候群の治療に際しては、このような病態に即した治療を選択することが肝要である。
正常造血幹細胞に対する免疫学的な障害が存在する環境においては、PNH型の幹細胞は正常幹細胞に比べてT細胞による障害を受けにくいため、PNH型白血球は相対的に増加する。したがって対象におけるPNH型白血球を検出することで、対象が自己免疫的な骨髄不全に陥っているか否かを判断することができる。
本発明は、FLAERおよび抗白血球表面抗原抗体を用いてフローサイトメトリーを行うという骨髄不全症候群の新たな検査方法を提供するものである。
本発明の方法の対象となる疾患は、骨髄不全症候群のなかでも、自己免疫的障害により生ずる骨髄不全症候群(以下、「自己免疫性骨髄不全症候群」と称する)に属する疾患であり、特に再生不良性貧血と再生不良性貧血との鑑別が困難な芽球が少ないタイプの低リスク骨髄異形成症候群とである。これらの疾患においてPNH型白血球が検出されれば、対象が自己免疫的な骨髄不全に陥っていると診断できる。一方、造血幹細胞自身の異常による骨髄不全症候群ではPNH型白血球の増加がみられることはない。すなわち本発明は、自己免疫性骨髄不全症候群の検査方法を提供するものである。
また血液中の網状赤血球数、血小板数、白血球数等の低下から骨髄不全症候群が疑われる対象において、本発明の方法によりPNH型白血球が検出されれば、当該対象は自己免疫性の骨髄不全症候群を発症している可能性が高く、造血幹細胞の異常に基づく骨髄不全症候群の可能性は低いと診断することができる。
一方、本発明の方法によってもPNH型白血球を検出することができなければ、当該対象は自己免疫性の骨髄不全症候群を発症している可能性は低く、造血幹細胞の異常に基づく骨髄不全症候群の可能性が高いと判断することができる。
すなわち本発明は、対象における骨髄不全症候群が自己免疫性か造血幹細胞異常性かを判別する方法を提供する。
また血液中の網状赤血球数、血小板数、白血球数等の低下から、骨髄不全症候群が疑われる対象患者において、本発明の方法によりPNH型白血球が検出されれば、当該対象は免疫抑制療法によって改善する可能性が高いと判断することもできる。一方、本発明の方法によりPNH型白血球を検出することができなければ、当該対象における免疫抑制療法の奏効率は高くはないと判断することもできる。
すなわち本発明は、骨髄不全症候群に対する免疫抑制療法の適否の判別方法を提供する。
なお前述のとおり、健常者でも微量のPNH型白血球は検出されるのであるが、本発明の方法によれば、健常者と骨髄不全症候群との間でのPNH型白血球量の閾値を設定することも可能である。
本明細書中において、「自己免疫性骨髄不全症候群」とは、造血幹細胞が自己のリンパ球や抗体等により攻撃され減少することに起因する骨髄不全症候群を意味し、免疫抑制療法によって回復が見込まれる骨髄不全症候群のことをいう。このような疾患としては、例えば再生不良性貧血や低リスク骨髄異形成症候群の一部が挙げられる。
また本明細書中において、「造血幹細胞異常性骨髄不全症候群」とは、造血幹細胞が後天的な遺伝子異常により増殖・分化しないようになることに起因する骨髄不全症候群を意味し、免疫抑制療法によって回復が見込まれない骨髄不全症候群のことをいう。このような疾患としては、例えば骨髄異形成症候群、低形成白血病などが挙げられる。
本発明の方法を適用することができる対象はヒトである。さらに好ましくは、汎血球減少を呈するヒトである。また本発明の方法に用いられ得る生体試料は、ヒト由来の末梢血に限られる。
以下に本発明の実施例、比較例、参考例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
(機器の説明)
本発明で用いたフローサイトメーターであるFACSCanto(登録商標)は、ベクトン・ディキンソン社製のものである。
(実施例1)生体試料の処理
生体試料として末梢血を採用し、以下の操作を行うことで末梢血から白血球の細胞浮遊液を採取した。
(1)4℃に保存されたEDTA−2Na末梢血7mLから、別途PNH型赤血球の検出用に2mLを別のファルコンチューブに移し、4℃で保存した。残りのEDTA−2Na血5mLをそのまま2000rpmで10分間遠心分離し、血漿部分を除去した。
(2)ペレットに5−10倍量のLysis buffer(1L中に塩化アンモニウム8.26g、炭酸水素カリウム1.0g、4NA(EDTA・4Na)0.037gを含む溶液)を加えて転倒混和したのち8分間室温で静置した。この間、適宜転倒混和して溶血が進んでいることを確認した。
(3)500gで1分間遠心分離(KUBOTA社製 SEROMATIC IIのselection3)し、ペレットを残して上清をアスピレーターで除去した。
(4)再度5−10倍量のLysis bufferを加えて適宜転倒混和しながら5分間室温に置いた。溶血不十分の場合は計15分まで操作を延長した。
(5)500gで1分間遠心分離(KUBOTA社製 SEROMATIC IIのselection3)し、ペレットを残して上清をアスピレーターで除去した。
(6)ブロッキングのため、0.5%BSA+PBSを140μL加えてvortexしたのち10分間室温で静置した。
検体が採取後24時間以内であればブロッキングは不要とする。
これを細胞浮遊液として、以下の実験を行った。
(実施例2)FLAERおよび抗体とのインキュベーション
以下の操作を行い、フローサイトメトリーに付すサンプルを作製した。
(1)5mLのファルコンチューブを2本用意し、実施例1で得られた細胞浮遊液から正確に50μLずつを取り、それぞれのチューブの底に静置した。この際チューブの壁に浮遊液がつかないように注意した。
(2)1本のチューブに、FLAER(10〜6M、Pinewood Scientific Services社製)6μL、抗CD11b−PE(50 ug/mL、BD Biosciences社製)4μL、7AAD(50 ug/mL、BD Biosciences社製)4μL、抗CD45−PE−Cy7(50μg/mL、BD Biosciences社製)4μL、抗CD33−APC(6.25μg/mL、BECKMAN COULTER社製)4μL、抗CD3−APC−H7(200μg/mL、BD Biosciences社製)4μLを加えた。他方のチューブは陰性対照として用い、FLAER以外の抗体をそれぞれ加えた。この時点で後に洗浄に用いるPBSを室温に戻しておいた。これらの操作は暗室(少なくとも蛍光灯は消した部屋内)で行った。また、試薬チューブの盖を開けたまま放置しないことに留意した。
(3)混合液をvortexした後、各チューブを遮光して、4℃の冷蔵庫内で20分静置した。
(4)各チューブにPBS3mLを加えて500gで1分間遠心分離(KUBOTA社製 SEROMATIC IIのselection3)した。次いで、ペレットを残して上清をアスピレーターで除去した。
(5)各チューブをラックの編み目にこすりつけるなどして震盪(ペレットをほぐす意味がある)し、PBSを400μLずつ加えた。
(6)軽くピペッティングしてからナイロンメッシュフィルターに通して死細胞の集塊を除去した後、新しいチューブに移してこれをフローサイトメトリー解析に付した。
(実施例3)フローサイトメトリー
(I)コンペンセーション
コンペンセーション用の検体は4℃保存されていた前日の健常者由来残余血を用いて行った。
(1)コンペンセーション用に何も加えない細胞浮遊液50μLをPBS 400mLで希釈した検体(以下、「unstained検体」と記載)、そして実施例2(2)に記載の各蛍光抗体を単独で加えた検体(以下、「蛍光抗体単独検体」などと記載)を用意した。なおFLAER検体、CD45検体にはunstained検体を50μLずつそれぞれ加えた。
(2)順番にFACSCanto(登録商標)に付し、データを保存した。細胞数は7AADのみ2×10、他は5×10であった。
(3)FACSCanto(登録商標)のコンペンセーションボタンを押し自動補正を行った。
(II)ゲーティング
以下の方法により顆粒球領域に対するゲーティングを行った。
(1)FSC−AとSSC−Aで展開し、顆粒球、単球、リンパ球からなる白血球領域にゲートをかけた。
(2)FSC−WとFSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(4)7−AAD陽性の死細胞を除外した。
(5)細胞構造の複雑性と大きさから類推される顆粒球領域にCD45およびSSC−Aでゲートをかけた。
(6)CD11b強陽性の細胞にゲートをかけた。
(1)−(6)の操作により導きだされた細胞を、純粋な成熟顆粒球と定義することができる。次にこの細胞群におけるFLAER発現を解析した。
(III)分析
縦軸に白血球系統マーカー(顆粒球:CD11b、単球:CD33、リンパ球:CD3)を、横軸にFLAERをとってヒストグラムを展開した場合、PNH型血球はUpper Left(UL)領域に展開される。このUL領域内にある細胞をPNH型顆粒球として、その割合を(ULの細胞数/UR(Upper Right)の細胞数+ULの細胞数)×100(%)によって計算した。この計算を行うべく、上記方法によりPNH型顆粒球についてゲートをかけた結果を図1−1に示す。
一方、健常人50例を対象とした同様のPNH型顆粒球のフローサイトメトリー解析により、骨髄不全症候群におけるPNH型細胞の有意増加は、PNH型顆粒球0.003%以上と定義することができた。結果を図1−2に示す。
(実施例4)PNH型単球の検出
実施例1および2と同様の方法で末梢血からフローサイトメトリーに付すサンプルを作製した後、実施例3(I)に記載のコンペンセーションを行ったFACSCanto(登録商標)に対し当該サンプルを付した。次いで以下の方法によりゲーティングを行い、PNH型単球を検出した。
(1)FSC−AとSSC−Aで展開し、顆粒球、単球、リンパ球からなる白血球領域にゲートをかけた。
(2)FSC−WとFSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(4)7−AAD陽性死細胞を除外した。
(5)単球領域にゲートをかけた。
(6)CD33強陽性細胞にゲートをかけた。
(1)−(6)の操作により導きだされた細胞を、純粋な成熟単球と定義することができる。この細胞群におけるFLAER発現を実施例3(III)と同様の方法で解析した。この計算を行うべく、上記方法によりPNH型単球についてゲートをかけた結果を図2−1に示す。
一方、健常人50例を対象とした同様のPNH型単球のフローサイトメトリー解析により、骨髄不全症候群におけるPNH型細胞の有意増加は、PNH型単球0.05%以上と定義することができた。結果を図2−2に示す。
(実施例5)PNH型Tリンパ球の検出
実施例1および2と同様の方法で末梢血からフローサイトメトリーに付すサンプルを作製した後、実施例3(I)に記載のコンペンセーションを行ったFACSCanto(登録商標)に対し当該サンプルを付した。次いで以下の方法によりゲーティングを行い、PNH型Tリンパ球を検出した。
(1)FSC−AとSSC−Aで展開し、顆粒球、単球、リンパ球からなる白血球領域にゲートをかけた。
(2)FSC−WとFSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(4)リンパ球領域にゲートをかけた。
(5)CD3強陽性細胞にゲートをかけた。
(6)必要に応じて、さらにCD8、CD4陽性細胞にそれぞれゲートをかけた。
(1)−(6)の操作により導きだされた細胞を、純粋な成熟リンパ球と定義することができる。この細胞群におけるFLAER発現を実施例3(III)と同様の方法で解析した。CD3陽性Tリンパ球におけるFLAER解析結果を図2−3aに、CD3陽性Tリンパ球をさらにCD8陽性Tリンパ球、CD4陽性Tリンパ球に分けてFLAER解析を行った結果を2−3bおよび2−3cにそれぞれ示す。
一方、実施例3(III)に記載の方法と同様の方法で健常人50例以上を対象としたPNH型Tリンパ球の解析により、骨髄不全症候群におけるPNH型細胞の有意増加は、PNH型Tリンパ球0.1%以上と定義することができた。結果を図2−4a、2−4bおよび2−4cに示す。
(実施例6)PNH型B細胞の検出
実施例1および2と同様の方法で末梢血からフローサイトメトリーに付すサンプルを作製した後、実施例3(I)に記載のコンペンセーションを行ったFACSCanto(登録商標)に対し当該サンプルを付した。次いで以下の方法によりゲーティングを行い、B細胞を検出した。
(1)FSC−AとSSC−Aで展開し、顆粒球、単球、リンパ球からなる白血球領域にゲートをかけた。
(2)FSC−WとFSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(4)リンパ球領域にゲートをかけた。
(5)CD19強陽性細胞にゲートをかけた。
(1)−(5)の操作により導きだされた細胞を、純粋な成熟B細胞と定義することができる。この細胞群におけるFLAER発現を実施例3(III)と同様の方法で解析した。結果を図2−3dに示す。
また健常人50例以上を対象としたPNH型B細胞の解析により、骨髄不全症候群におけるPNH型細胞の有意増加は、PNH型B細胞0.05%以上と定義することができた。結果を図2−4dに示す。
(実施例7)PNH型NK細胞の検出
実施例1および2と同様の方法で末梢血からフローサイトメトリーに付すサンプルを作製した後、実施例3(I)に記載のコンペンセーションを行ったFACSCanto(登録商標)に対し当該サンプルを付した。次いで以下の方法によりゲーティングを行い、NK細胞を検出した。
(1)FSC−AとSSC−Aで展開し、顆粒球、単球、リンパ球からなる白血球領域にゲートをかけた。
(2)FSC−WとFSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(4)リンパ球領域にゲートをかけた。
(5)CD3強陽性細胞にゲートをかけた。
(6)CD56陽性細胞にゲートをかけた。
(1)−(6)の操作により導きだされた細胞を、純粋な成熟NK細胞と定義することができる。この細胞群におけるFLAER発現を実施例3(III)と同様の方法で解析した。結果を図2−3eに示す。
また健常人50例以上を対象としたPNH型NK細胞の解析により、骨髄不全症候群におけるPNH型細胞の有意増加は、PNH型NK細胞0.3%以上と定義することができた。結果を図2−4eに示す。
(比較例1)従来法によるPNH型血球の検出(FLAERおよびデジタル波形処理可能なフローサイトメーターを用いない場合)
従来、PNH型血球の検出にはCD59のsingle−colorフローサイトメトリーかCD55−PE、CD59−FITCによるtwo−colorフローサイトメトリーが施行されてきた。
またこの場合、フローサイトメーターとしては、デジタル波形処理を採用していない機種(FACScan、FACSCaliburなど)を使用していた。
このように、FLAERおよびデジタル波形処理可能なフローサイトメーターを用いない従来法によりPNH型血球の検出を試みた。結果を図3に示す(図3のA法)。
比較例1の方法ではUL領域における細胞集団が集塊を形成せず、領域が不明確であるのでPNH型血球検出における感度や特異性が低く、微量なPNH型血球を正確に検出することができなかった。
(比較例2)抗体型高感度法によるPNH型白血球の検出(デジタル波形処理可能なフローサイトメーターを用いるが、FLAERを用いない場合)
次に、FLAERを用いずにFACSCantoと抗体を用いてPNH型白血球の検出を試みた。結果を図3に示す(図3のB法)。
比較例2の方法では、比較例1の方法よりは比較的明瞭であるものの、UL領域における細胞集団が依然として集塊を形成せず、領域が不明確であった。したがって比較例2の方法でもPNH型白血球検出における感度や特異性は依然として低く、微量なPNH型白血球を正確に検出することができなかった。
一方、本発明の方法(図3のC法)によれば、UL領域における細胞集団が集塊を形成し、PNH陽性細胞とPNH陰性細胞との領域が明瞭であった。したがって本発明の方法によれば、微量なPNH型白血球を簡単な手技で正確に検出できることがわかった。
(参考例1)抗体型高感度法を用いたPNH型赤血球の検出(デジタル波形処理可能なフローサイトメーターを用いるが、FLAERを用いない場合)
(I)赤血球浮遊液の調製
生体試料として末梢血を採用し、以下の操作を行うことで末梢血から赤血球の細胞浮遊液を採取した。
(1)実施例1で別途保存しておいたEDTA−2Na血2mL入りファルコンチューブを2000rpmで10分間遠心した。
(2)この間にPBS2mLを入れたファルコンチューブを用意した。
(3)(1)のチューブより血漿を除去した後、赤血球層を50μL採取した。これを(2)のファルコンチューブに加えて3−5%赤血球浮遊液として以下の実験を行った。
(II)赤血球と抗体とのインキュベーション
以下の操作を行い、フローサイトメトリーに付すサンプルを作製した。
(1)新しいファルコンチューブを2本用意し、(I)で得られた赤血球浮遊液50μLを各チューブの底に静置した。
(2)抗CD55−FITC(200μg/mL、BD Biosciences社製)と同量のCD59−FITC(200μg/mL、BD Biosciences社製)とを加え、抗体混合液を用意した(以下、抗CD55/抗CD59−FITCと記載する)。
(3)CD55/CD59−FITC 4μL、glycophorinA−PE4μLを一方の赤血球浮遊液に、mouse IgG−FITC4μLとglycophorinA−PE 4μLを他方の赤血球浮遊液(陰性対照となる)に加え、各混合液をvortexした。次いで各チューブを遮光して、4℃の冷蔵庫内で25分間静置した。
(4)各チューブにPBS 3mLを加えて、軽く撹拌した。ついで500gで4分間遠心分離し、ペレットを残して上清をアスピレーターで除去した。
(5)ペレットにPBS 600μLを加え、スポイトで数回ピペッティングした後、ナイロンメッシュフィルターを通して死細胞の集塊を除去した後、新しいチューブに検体を移してこれをフローサイトメトリー解析に付した。
(III)フローサイトメトリー
コンペンセーションは実施例3(I)と同様に、unstained検体と各蛍光抗体単独検体をFACSCanto(登録商標)に順番に流した後、コンペンセーションボタンを押し、自動補正を行った。
次いで、以下の方法により赤血球領域に対するゲーティングを行った。
(1)FSC−AとSSC−Aで展開し、赤血球領域にゲートをかけた。
(2)FSC−WとFSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(3)SSC−WとSSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外した。
(4)Glycophorin強陽性細胞にゲートをかけた。
(1)−(4)により導きだされた細胞が純粋な成熟赤血球と定義することができる。次にこの細胞群におけるCD55/CD59を解析した。
縦軸に赤血球系統マーカー(GlycophorinA)、横軸にCD55/CD59をとってヒストグラムを展開した場合、PNH型赤血球はUpper Left(UL)領域に展開される。このUL領域内にある細胞をPNH型赤血球として、その割合を(UL/UR+RL)×100(%)によって計算した。この計算を行うべく、上記方法によりPNH型赤血球にゲートをかけた結果を図4に示す。PNH型血球の陽性症例では、UL領域に1.3%のPNH型赤血球が存在した。
一方、この実験を健常人50例を対象として詳細に解析することにより、骨髄不全症候群におけるPNH型細胞の有意増加はPNH型赤血球0.005%以上と定義することができた。
(参考例2)PNH型血球の有無による免疫抑制療法の奏効率・生存率の相違
Blood.2006;107:1308−1314に記載の方法と同様の方法で、PNH型血球の有無により再生不良性貧血患者における免疫抑制療法の奏効率やその後の生存率がどのように変化するかを調べた。結果を図5に示す。
PNH型血球陽性の再生不良性貧血患者では、陰性の患者に比べてATG+シクロスポリン療法が奏効しやすく(図5A)、また生存率が有意に高いこと(図5B)が分かった。
これらの結果から、本発明の方法によりPNH型白血球の存在を検出できることが理解できる。また本発明の方法を適用することによって、骨髄不全症候群の免疫病態を診断することができる。従って本発明の検査方法をRAやAAといった骨髄不全症例の治療方針の判断材料の一つとして採用することにより、対象患者が免疫抑制療法の適応対象か否かを判別することができる。その結果、骨髄不全症例の診療において、個々の患者に最適な治療を選択することが可能になることが分かる。
本発明は、極めて微量のPNH型白血球を簡便かつ正確に検出可能にする方法である。本発明の方法を適用することによって、
(1)PNH型白血球の検出における非特異的反応に基づくノイズの発生が抑制される。
(2)またGPIアンカー型膜蛋白質を有さない細胞集団が、ヒストグラム上に明瞭に描出される。これにより、PNH型白血球の検出に携わる者のフローサイトメトリーへの習熟度合いに関係なく、多くの施設でPNH型白血球を容易に検出することが可能となる。
(3)さらに白血球に特徴的な各表面抗原に対する抗体と組み合わせることで、どのような種類のPNH型白血球(PNH型顆粒球、PNH型単球など)でも一度に検出することが可能である。
また当該検出方法を利用することで、骨髄不全症候群の診断も行うことができる。特にPNH型白血球は自己免疫性の骨髄不全症例において有意に増加するので、本発明の方法により自己免疫性の骨髄不全症候群と造血幹細胞自身の異常による骨髄不全症候群とを判別することができる。

Claims (6)

  1. FLAERおよび少なくとも1種の抗白血球表面抗原抗体を用いてフローサイトメトリーを行うことを含む、PNH型白血球の検出方法であって、フローサイトメトリーにおける波形処理がデジタル化され、少なくとも1種の抗白血球表面抗原抗体が抗CD11b抗体を含み、PNH型白血球がPNH型顆粒球である方法。
  2. PNH型顆粒球以外のPNH型白血球をPNH型顆粒球と同時に検出することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 抗白血球表面抗原抗体として、抗CD11b抗体、抗CD33抗体、抗CD45抗体及び抗CD3抗体を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法によってPNH型白血球を検出することを含む、骨髄不全症候群の検査方法。
  5. 以下(1)〜(7)の操作を行うことを含む、波形処理がデジタル化されるフローサイトメーターを用いて、PNH型顆粒球を検出する方法であって、血球懸濁液を波形処理がデジタル化されるフローサイトメーターに付し、以下(1)〜(7)の操作を行うことを含む方法:
    (1)前方散乱光パルス面積(FSC−A側方散乱光パルス面積(SSC−Aで展開し、顆粒球、単球、リンパ球からなる白血球領域にゲーティングする
    (2)前方散乱光パルス幅(FSC−W前方散乱光パルス高(FSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外するようゲーティングする
    (3)側方散乱光パルス幅(SSC−W側方散乱光パルス高(SSC−Hで展開し、電気信号的に細胞集団から著しくずれている細胞を除外するようゲーティングする
    (4)7−AAD陽性細胞を除外するようゲーティングする
    (5)細胞構造の複雑性と大きさから類推される顆粒球領域にCD45およびSSC−Aでゲーティングする
    (6)CD11b強陽性細胞にゲーティングする、及び、
    (7)(1)〜(6)により導きだされた細胞群におけるFLAER発現を、縦軸にCD11bを横軸にFLAERをとってヒストグラムを展開し、Upper Left(UL)領域の細胞数を確認することにより解析する
    ここで、該血球懸濁液は、FLAER抗体、抗CD11b抗体及び抗CD45抗体を含む抗白血球表面抗原抗体並びに7-アミノアクチノマイシン(7−AAD)で処理されている
  6. 請求項5に記載の方法により検出されたPNH型顆粒球の有意増加値が0.003%以上と定義される、骨髄不全症候群の検出方法。
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