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JP5771542B2 - ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

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JP5771542B2 JP2012027813A JP2012027813A JP5771542B2 JP 5771542 B2 JP5771542 B2 JP 5771542B2 JP 2012027813 A JP2012027813 A JP 2012027813A JP 2012027813 A JP2012027813 A JP 2012027813A JP 5771542 B2 JP5771542 B2 JP 5771542B2
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Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体に関する。より詳しくは、流動性、耐薬品性、及び難燃性のバランスに優れ、層状剥離を呈することがない成形体、及び該成形体を与えるポリカーボネート樹脂組成物に関するものである。
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐衝撃性等の機械的強度、透明性等に優れたものであることから、電子・情報・電気部品や機械部品等重要な素材として用いられている。しかし、流動性が低い、耐薬品性に劣る等の弱点も有しているため、これら特性を改善するために、ポリオレフィンによるポリカーボネートのアロイ化が検討されてきた。
例えば、ポリカーボネートと、エポキシ基等を有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマーと、ポリオレフィンとによるポリカーボネートのアロイ化が行われている(特許文献1〜4)。これらにより耐熱性、耐衝撃性等の機械的強度を維持し、耐薬品性、流動性等にも優れるポリカーボネート樹脂が得られている。
特許文献3には、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ基又はグリシジル基を有するポリオレフィン系樹脂、及びアミン系化合物を混合することで、流動性、耐薬品性に優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られることが開示されている。また、特許文献4には、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ基又はグリシジル基を有するポリオレフィン系樹脂、及びリン系難燃剤を含有し、耐薬品性、難燃性に優れる樹脂組成物が開示されている。
特開2009−275131号公報 特開2009−298993号公報 特開2010−24368号公報 特開2011−132312号公報
しかしながら、難燃性に関してはさらに高い性能が求められており、流動性、耐薬品性、及び難燃性のバランスに優れた材料が求められている。
難燃性を向上させるためにタルクなどの無機充填材を多量に添加すると、高せん断のかかるゲート形状の近傍や成形条件によっては剥離が発生してしまうようなことがあり、また、流動性も低下する。一方、難燃性を向上させるために、リン系難燃剤を多量に添加すると耐薬品性が低下し、ポリオレフィン系樹脂の添加量を少なくすると流動性と耐薬品性の両方が低下する。
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂の欠点を補い、流動性、耐薬品性、及び難燃性のバランスに優れ、薄肉成形品であっても成形後に層状剥離を呈することがなく、特に、フィルムゲートやピンゲート等で薄肉成形品を成形した際にゲート近傍に剥離を生じることがないポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、芳香族ポリカーボネート樹脂と、エポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマーと、ポリオレフィン系樹脂と、スチレン系樹脂とをそれぞれ特定の割合で含む樹脂成分に対し、特定の添加剤成分を加えたポリカーボネート樹脂組成物とすることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記のポリカーボネート樹脂組成物及び成形体を提供するものである。
1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂60〜95質量%、(B)エポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマー2〜10質量%、(C)前記(B)成分以外のポリオレフィン系樹脂2〜15質量%、及び(D)スチレン系樹脂0〜20質量%からなる樹脂成分100質量部に対し、(E)リン系難燃剤5〜20質量部、(F)無機充填材3〜20質量部、及び、(G)活性化剤を含有し、該(G)成分が下記(G1)及び/又は(G2)である、ポリカーボネート樹脂組成物。
(G1)リン原子に少なくとも1個のアルコキシ基が結合した、ホスファイト化合物及びホスフェート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種(但し、該化合物が、リン原子に結合したアリールオキシ基を有する場合、該アリールオキシ基のすべてのオルト位が水素原子である化合物) 0.001〜1質量部
(G2)リン酸、亜リン酸、及び有機スルホン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種 0.000001〜0.01質量部
2. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂が、分子鎖末端基としてヒドロキシル基を有するものを含み、全末端基に対する該ヒドロキシル基の含有量が20〜80モル%である、上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂が、分子鎖末端基としてヒドロキシル基を有するものを含み、全末端基に対する該ヒドロキシル基の含有量が20モル%未満である、上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4. 前記樹脂成分100質量部に対し、(H)脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシアンモニウム塩、及び4級ホスホニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を0.0001〜1質量部配合してなる、上記3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
5. 前記樹脂成分100質量部に対し、(I)フッ素含有ポリマーを0.1〜1質量部含む、上記1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
6. (D)スチレン系樹脂が、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、及びメチルメタクリレート−ブタジエンゴム−スチレン共重合体(MBS樹脂)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
7. (G2)成分の有機スルホン酸系化合物がアリールスルホン酸エステルである、上記1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
8. (F)無機充填材がタルク及び/又はマイカである、上記1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
9. 温度280℃、荷重2.16kgで測定したメルトボリュームフローレート(MVR)が2〜30ml/10分である、上記1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
10. 上記1〜9のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂とポリオレフィン系樹脂との相溶性を高めることができ、流動性、耐薬品性、及び難燃性のバランスに優れ、薄肉成形品であっても成形後に層状剥離を呈することがないポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体を提供することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂60〜95質量%、(B)エポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマー2〜10質量%、(C)前記(B)成分以外のポリオレフィン系樹脂2〜15質量%、及び(D)スチレン系樹脂0〜20質量%からなる樹脂成分100質量部に対し、(E)リン系難燃剤5〜20質量部、(F)無機充填材3〜20質量部、及び、(G)活性化剤を含有し、該(G)成分が下記(G1)及び/又は(G2)であるポリカーボネート樹脂組成物である。
(G1)リン原子に少なくとも1個のアルコキシ基が結合した、ホスファイト化合物及びホスフェート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種(但し、該化合物がリン原子に結合したアリールオキシ基を有する場合、該アリールオキシ基のすべてのオルト位が水素原子である化合物) 0.001〜1質量部
(G2)リン酸、亜リン酸、及び有機スルホン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種 0.000001〜0.01質量部
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いる各成分について説明する。
[(A)芳香族ポリカーボネート樹脂]
本発明における(A)成分である芳香族ポリカーボネート樹脂としては、2価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される種々の芳香族ポリカーボネートを用いることができる。
2価フェノールとしては、様々なものが挙げられるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド及びビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。これらの2価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
特に、好ましい2価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノールA又はビスフェノールAを主原料としたものである。
カーボネート前駆体としては、例えばカルボニルハライド、カルボニルエステル及びハロホルメート等、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等が挙げられる。
また、芳香族ポリカーボネートは、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、例えば1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ビドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸及びイサチンビス(o−クレゾール)等が挙げられる。
本発明における(A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、11000〜35000であることが好ましく、12000〜30000がより好ましく、15000〜30000であることがさらに好ましい。粘度平均分子量が11000以上であれば耐薬品性、耐衝撃性及び引張強度が十分であり、また、35000以下であれば成形性、引張強度が良好であるとともに、成形体の層状剥離も生じない。
なお、本発明における(A)成分の粘度平均分子量は、塩化メチレン100cm3に芳香族ポリカーボネート樹脂約0.7gを20℃で溶解した溶液をウベローデ粘度計を用いて測定した比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
(ηsp)/C=[η]+0.45×[η]2
[η]=1.23×10-50.83
(但し、[η]は極限粘度、Cはポリマー濃度である)
本発明における(A)成分の配合量は、(A)〜(D)成分の合計量中、60〜95質量%である。60質量%未満では引張強度、弾性率等が低下し、95質量%超では流動性、耐薬品性等の改良効果が不十分となることがある。配合量は、好ましくは65〜92質量%であり、より好ましくは70〜90質量%である。
ここで用いる(A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂は、その分子鎖末端基としてヒドロキシル基を有するものを含むが、このヒドロキシル基(以下「末端ヒドロキシル基」ともいう)の量を増やし、成形品の剥離を改善する目的で、後述する(H)成分である脂肪族アミン類、芳香族アミン類、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシルアミン塩、4級ホスホニウム塩等を配合することができる。
すなわち、芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端基に対する末端ヒドロキシル基の含有量が20モル%以上である場合には、上記(H)成分を配合する必要がないが、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端ヒドロキシル基の含有量が20モル%未満の場合には、上記(H)成分である脂肪族アミン類、芳香族アミン類、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシルアミン塩、及び4級ホスホニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を配合することが好ましい。もちろん、末端ヒドロキシル基の含有量が20モル%以上であっても、上記(H)成分等を配合してもよく、また、逆に、末端ヒドロキシル基の含有量が20モル%未満であっても、上記(H)成分等を配合しなくても、差し支えはない。
(A)成分として、芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端基に対する末端ヒドロキシル基の含有量が20モル%以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を用いる場合には、該ヒドロキシル基の含有量は、(B)成分のエポキシ基又はグリシジル基との反応性の観点から、好ましくは20〜80モル%、より好ましくは20〜60モル%、さらに好ましくは20〜50モル%である。含有量が20モル%以上であればエポキシ基又はクリシジル基との反応性が良好であり、80モル%以下であれば架橋反応が起こることがなく、得られる樹脂組成物の流動性低下や耐衝撃性低下のおそれがない。
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端基に対する末端ヒドロキシル基の量(以下、「OH末端分率」ともいう)は、1H−NMRを測定し、末端ヒドロキシル基に由来するピークの積分値から決定できる。
[(B)エポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマー]
本発明における(B)成分であるポリオレフィン系樹脂は、前記(A)成分と(C)成分とを相溶化させる目的で用いるものであり、例えばエポキシ基又はグリシジル基を有するオレフィンの単独重合体、あるいはオレフィンとエポキシ基又はグリシジル基を有する不飽和単量体との共重合体、オレフィン重合体に対してエポキシ基又はグリシジル基を有する不飽和単量体を共重合したものであってもよく、このような共重合体はグラフト共重合体、ランダム共重合体、あるいはブロック共重合体であってもよい。
また、例えばオレフィン重合体の末端、あるいはオレフィンと他の不飽和単量体等との共重合体及びこれらの複合物中に存在する不飽和結合を、過酸化水素あるいは有機過酸等、例えば過安息香酸、過ギ酸及び過酢酸等により酸化することでエポキシ基を導入したものであってもよい。すなわち、オレフィン系重合体にエポキシ基又はグリシジル基を導入したものであればいずれを用いてもよい。
また、(B)成分におけるポリオレフィン系エラストマーとは、エポキシ基又はグリシジル基を含有し、X線回折法により測定される結晶化度が50%以下の低結晶性ないし非晶性のオレフィン系共重合体のことである。
オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、2−ブテン、シクロブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、1−オクテン、1−デセン、及び1−ドデセン等が挙げられる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ基又はグリシジル基を有する不飽和単量体としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、2−メチルプロペニルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、グリシジルシンナメート、イタコン酸グリシジルエステル、及びN−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル]メタクリルアミド等が挙げられる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、さらに、これらのエポキシ基又はグリシジル基を有する不飽和単量体とともに、例えば、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレート等のようなエポキシ基又はグリシジル基を有さない不飽和単量体を用いて、これらを共重合したような、グリシジル基に加えアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等の基が含まれているものであってもよい。
本発明における(B)成分であるポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマーを構成するオレフィン及び単量体のうち、エポキシ基又はグリシジル基を有する不飽和単量体の含有量は、1〜20質量%であることが好ましい。含有量が1質量%以上であれば、(A)成分と(C)成分との相溶性の改善効果が発揮され、引張伸びや耐衝撃性が低下せず、成形体の層状剥離が発生することがない。また、20質量%以下であると自己架橋が起こるおそれがなく、引張伸びや耐衝撃性が低下せず、さらに成形体の層状剥離が発生することがない。このような点から、エポキシ基又はグリシジル基を有する不飽和単量体の含有量は、2〜18質量%がより好ましく、4〜15質量%であることがさらに好ましい。
また、(B)成分の重量平均分子量は、5万〜50万程度であることが好ましい。この範囲内であれば、層状剥離を防止できると共に、良好な引張伸びや高い耐衝撃性を得ることができる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いることにより求めることができる。
本発明においては、(B)成分として、エポキシ基又はグリシジル基を有するポリオレフィン系樹脂を1種以上用いてもよいし、エポキシ基又はグリシジル基を有するポリオレフィン系エラストマーを1種以上用いてもよく、また上記ポリオレフィン系樹脂1種以上とポリオレフィン系エラストマー1種以上とを併用してもよい。
本発明における(B)成分の配合量は、(A)〜(D)成分の合計量中、2〜10質量%である。2質量%未満であると(A)成分と(C)成分との相溶性の改善が充分とはいえず、引張伸度及び耐衝撃性が低下し、さらに成形体の層状剥離が発生することがある。10質量%超では自己架橋が起こりやすく、流動性が低下するとともに引張伸度及び耐衝撃性が低下する。このような点から、配合量は、2〜8質量%であることが好ましい。
[(C)ポリオレフィン系樹脂]
本発明における(C)成分であるポリオレフィン系樹脂は、主成分となる前記(A)成分の耐薬品性及び流動性を改善する目的で用いるものであり、前記(B)成分であるエポキシ基又はグリシジル基を有するポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系の樹脂としては、前述したエチレンやプロピレン、ブテン等のオレフィン類を単独で重合したものやこれらを共重合した重合体が挙げられる。
例えば、ポリエチレン系樹脂としては、エチレンを単独で重合したものであってもよく、エチレンを主体として共重合したものであってもよく、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等のポリエチレン系樹脂等が挙げられる。また、エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレンとエチレンの共重合体等が挙げられ、グラフト共重合体、ランダム共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
これらのポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.01〜50g/10分程度のものであることが好ましく、0.02〜30g/10分であることがより好ましい。MFRが0.01g/10分以上であれば流動性の改善効果を充分に発揮でき、50g/10分以下であれば成形体の層状剥離が発生しにくくなる。
なお、ポリエチレン系樹脂の場合のMFRは、ASTM D 1238に準拠した測定法により求めたものであり、樹脂温度190℃、荷重21.18Nにおいて測定したものである。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独で重合したものであってもよく、プロピレンを主体として共重合したものであってもよい。例えば、アイソタクチックプロピレン単独重合体、あるいはシンジオタクチックプロピレン単独重合体であってもよい。また、共重合体は、例えばプロピレンとエチレンの共重合体等が挙げられ、グラフト共重合体、ランダム共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
このようなポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜60g/10分程度のものであることが好ましく、0.1〜50g/10分であることがより好ましい。MFRが0.1g/10分以上であれば流動性の改善効果を充分に発揮でき、60g/10分以下であれば成形体の層状剥離が発生しにくくなる。なお、このポリプロピレン系樹脂のMFRはASTM D 1238に準拠した測定法により求めたものであり、樹脂温度230℃、荷重21.18Nにおいて測定したものである。
また、上記のポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂の他、メルトフローレート(MFR)が0.01〜60g/10分(230℃、荷重21.18N)程度のポリオレフィン系樹脂であれば、同様に使用することができる。
本発明においては、(C)成分として、上記ポリオレフィン系樹脂を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における(C)成分の配合量は、(A)〜(D)成分の合計量中、2〜15質量%であり、3〜14質量%であることが好ましい。2質量%未満では流動性及び耐薬品性の改善効果が充分に発揮できず、15質量%超では引張伸度、弾性率及び耐衝撃性が低下し、場合により成形体の層状剥離が発生し易くなる傾向がある。
[(D)スチレン系樹脂]
本発明の(D)成分として用いるスチレン系樹脂は、ポリカーボネート樹脂の成形加工性、特に流動性を改善する目的で使用されるものであり、非晶質スチレン系樹脂及び結晶性スチレン系樹脂を用いることができる。
非晶質スチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン等のモノビニル系芳香族単量体20〜100質量%、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体0〜60質量%、及びこれらと共重合可能なマレイミド、(メタ)アクリル酸メチル等の他のビニル系単量体0〜50質量%からなる単量体、又は単量体混合物を重合して得られる結晶構造を有さない重合体が挙げられる。
これらの重合体としては、汎用ポリスチレン(GPPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)等がある。
また、非晶質スチレン系樹脂としてはゴム状重合体で強化されたゴム変性スチレン系樹脂が好ましく利用できる。このゴム変性スチレン系樹脂としては、例えば、ポリブタジエン等のゴムにスチレンが重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリブタジエンにアクリロニトリルとスチレンとが重合したアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブタジエンにメタクリル酸メチルとスチレンが重合したメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)等があり、ゴム変性スチレン系樹脂は、2種以上を併用することができると共に、前記のゴム未変性である非晶質スチレン系樹脂との混合物としても使用できる。
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴムの含有量は、好ましくは2〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。ゴムの割合が2質量%以上であれば、耐衝撃性が充分であり、又、50質量%以下であれば、熱安定性の低下、溶融流動性の低下、ゲルの発生、着色等の問題が生じない。
上記ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、アクリレート及び/又はメタクリレートを含有するゴム質重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム(SBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエン−アクリルゴム、イソプレンゴム、イソプレン−スチレンゴム、イソプレン−アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム等が挙げられる。このうち、特に好ましいものは、ポリブタジエンである。ここで用いるポリブタジエンは、低シスポリブタジエン(例えば、1,2−ビニル結合を1〜30モル%、1,4−シス結合を30〜42モル%含有するもの)、高シスポリブタジエン(例えば、1,2−ビニル結合を20モル%以下、1,4−シス結合を78モル%以上含有するもの)のいずれを用いてもよく、また、これらの混合物であってもよい。
また、結晶性スチレン系樹脂としては、シンジオタクチック構造、アイソタクチック構造を有するスチレン系(共)重合体が挙げられるが、本発明では流動性をより改善する目的から、非晶質スチレン系樹脂を用いることが好ましい。さらに非晶質スチレン系樹脂の中でも、200℃、5kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.5〜100g/10分、より好ましくは2〜80g/10分、さらに好ましくは2〜50g/10分のものが用いられる。メルトフローレート(MFR)が5g/10分以上であれば十分な流動性となり、100g/10分以下であれば、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性が良好になる。
さらに非晶質スチレン系樹脂の中でも、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、アクリロニトリル−アクリル酸メチル−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−(エチレン/プロピレン/ジエン共重合体)−スチレン共重合体(AES樹脂)が好ましく、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、及びメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)が特に好ましい。
これらの特に好ましいものを例示すれば、AS樹脂としては、290FF(テクノポリマー株式会社製)、S100N、S200N、S101(ユーエムジー・エービーエス株式会社製)、PN−117C(奇美実業社製)を挙げることができ、ABS樹脂としては、サンタックAT−05、SXH−330(以上、日本エイアンドエル株式会社製)、トヨラック500、700(東レ株式会社製)、PA−756(奇美実業社製)を挙げることができる。MBS樹脂としては、C223A(三菱レイヨン株式会社製)を挙げることができる。
本発明においては、(D)成分として、上記スチレン系樹脂を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における(D)成分の配合量は、(A)〜(D)成分の合計量中、0〜20質量%であり、0〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。配合量が20質量%超では難燃性が低下する。
[(E)リン系難燃剤]
本発明における(E)成分としては、赤リンやリン酸エステル系の難燃剤が挙げられる。
リン酸エステル系の難燃剤としては、特にハロゲンを含まないものが好ましく、リン酸エステルのモノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物からなるものであって、後述する(G1)成分以外の化合物が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート等、又はこれらの置換体、縮合物等が挙げられる。
リン酸エステル系難燃剤として好適に用いることができる市販のリン酸エステル化合物としては、たとえば、大八化学工業株式会社製の、TPP〔トリフェニルホスフェート〕、TXP〔トリキシレニルホスフェート〕、CR733S〔レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)〕、CR741〔ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)〕、PX200〔1,3−フェニレン−テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、PX201L〔1,4−フェニレン−テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、PX202〔4,4'−ビフェニレン−テトラキス)2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート等を挙げることができる。
上記リン酸エステル系難燃剤は、2価のフェノール類及びAr・OHで表される1価のフェノール類とオキシ塩化リンとの反応によって得られる。
これらの(E)成分のリン系難燃剤は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの成分(E)の含有量は、前記(A)〜(D)からなる樹脂成分100質量部に対して、5〜20質量部であり、好ましくは8〜20質量部、さらに好ましくは10〜20質量部である。
配合量が5質量部未満であると所望の難燃性が得られず、20質量部を超えると耐薬品性、耐熱性、引張伸度及び耐衝撃性が低下する。
[(F)無機充填材]
本発明における(F)成分である無機充填材は、成形品の剛性、さらには難燃性をさらに向上させるために用いられる。
ここで、無機充填材としては、タルク、マイカ、カオリン、珪藻土、炭酸カルシウム等をあげることができる。なかでも、板状であるタルク、マイカ等や、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状の充填材が好ましく、板状であるタルク及び/又はマイカがより好ましい。これらの無機充填材は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
無機充填材の平均粒径は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは0.2〜20μmである。
ここで、(F)無機充填材の含有量は、前記(A)〜(D)からなる樹脂成分100質量部に対して、3〜20質量部であり、好ましくは5〜15質量部、より好ましくは7〜15質量部である。(F)成分の含有量が3質量部未満であると、目的とする剛性、難燃性改良効果が不十分であり、20質量部を超えると、成形品のゲート近傍において剥離が生じやすくなり、また、流動性が低下する。
[(G)活性化剤]
本発明の(G)成分として用いる活性化剤は、下記(G1)及び/又は(G2)である。なお、ここでいう「活性化剤」とは、後述のように、前記(B)成分のエポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマーのエポキシ基又はグリシジル基を活性化し、反応性を高めることができる機能を有する成分をいう。
(G1)リン原子に少なくとも1個のアルコキシ基が結合した、ホスファイト化合物及びホスフェート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種(但し、該化合物が、リン原子に結合したアリールオキシ基を有する場合、該アリールオキシ基のすべてのオルト位が水素原子である化合物) 0.001〜1質量部
(G2)リン酸、亜リン酸、及び有機スルホン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種 0.000001〜0.01質量部
本発明の(G)成分は、前記(B)成分のエポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマーのエポキシ基又はグリシジル基を活性化し、前記(A)成分と(B)成分との反応生成物の生成効率を高めるとともに、前記(A)成分ないし(C)成分の樹脂の相溶性を高め、(A)成分中における(C)成分の分散性を向上させ、(C)成分の配向を抑制し、層状剥離を抑制するという機能を奏するものである。
<(G1)成分>
本発明における(G1)成分は、リン原子に少なくとも1個のアルコキシ基が結合した、ホスファイト化合物及びホスフェート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。但し、該化合物が、リン原子に結合したアリールオキシ基を有する場合、該アリールオキシ基のすべてのオルト位が水素原子である化合物であることを特徴とする。
リン原子に少なくとも1個のアルコキシ基が結合した、ホスファイト化合物及びホスフェート化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、及び亜ホスホン酸のエステル等が挙げられる。
前記ホスファイト化合物としては、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
前記ホスフェート化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、ジオクチルフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート等が挙げられる。
上記化合物の中でも、トリデシルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトが相溶性を高める点で好ましい。上記化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における(G1)成分の配合量は、前記(A)〜(D)からなる樹脂成分100質量部に対して、0.001〜1質量部であり、好ましくは0.01〜0.5質量部、さらに好ましくは0.05〜0.5質量部である。0.001質量部未満では、上述した相溶化成分の生成効率を高める効果が不十分となり、1質量部を超える場合には、相溶化成分の生成効率が高くなりすぎ、架橋成分が多くなり耐衝撃性が低下するようになる。
<(G2)成分>
本発明における(G2)成分は、リン酸、亜リン酸、及び有機スルホン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、有機スルホン酸系化合物であることが好ましい。また、有機スルホン酸系化合物のうち、成形体を成形する際の押出機の温度においても揮発し難いという観点から、アリールスルホン酸エステルであることが好ましい。アリールスルホン酸エステルは、成形時に押出機内で分解することでアリールスルホン酸として微量の酸となり、この酸がエポキシ基又はグリシジル基を活性化し、押出機内での前記(A)成分中における(C)成分の分散性を向上させ、成形品の剥離性を改善することができる。
前記アリールスルホン酸エステルとしては、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸イソブチル、ナフタレンスルホン酸ブチル、ナフタレンスルホン酸エチル、ナフタレンスルホン酸メチルなどのアリールスルホン酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらのうち、酸発生のしやすさ、安定性の点から、p−トルエンスルホン酸ブチルが特に好ましい。
上記(G2)成分は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における(G2)成分の配合量は、前記(A)〜(D)からなる樹脂成分100質量部に対して、0.000001〜0.01質量部であり、好ましくは0.0001〜0.01質量部、より好ましくは0.001〜0.01質量部である。0.000001質量部未満では、上述した相溶化成分の生成効率を高める効果が不十分となり、0.01質量部を超える場合には、製造装置の腐食が発生することがあり、また、成形体の湿熱安定性及び熱安定性が低下する。
本発明における(G)成分としては、前記(G1)又は(G2)成分のいずれか一方のみを用いてもよく、併用してもよい。前記(G1)及び(G2)成分を併用する場合には、前記(A)〜(D)からなる樹脂成分100質量部に対して、それぞれ(G1)成分を0.001〜0.5質量部、(G2)成分を0.000001〜0.01質量部の範囲で配合することが好ましい。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、以上の(A)から(G)成分の他に、必要に応じ、(H)脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシルアミン塩、及び4級ホスホニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を配合してもよく、あるいは、(I)フッ素含有ポリマーを配合することができる。
[(H)脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシルアミン塩、及び4級ホスホニウム塩]
本発明における(H)成分は、脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシルアミン塩、及び4級ホスホニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、必要に応じて用いられる。
脂肪族アミン塩及び芳香族アミン塩は、例えば一般式R123N・1/nA1で表すことができ、脂肪族アミン塩のときR1〜R3は、独立して水素原子又は脂肪族基を示す(ただし、全てが同時に水素原子ではない)。芳香族アミン塩のときR1〜R3は、独立して水素原子又は芳香族基を示す(ただし、全てが同時に水素原子ではない)。A1は酸を表し、例えば塩酸、硫酸、硝酸、塩素酸、過塩素酸、酢酸、モノアルキル硫酸、スルホン酸化合物等である。nは、酸A1のアニオンの価数であり、例えば塩酸の場合はn=1、硫酸の場合はn=2である。
アンモニウムヒドロキシドは、例えば一般式R4567+・OH-で表すことができる。R4〜R7は、例えば独立して水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す(ただし、全てが同時に水素原子ではない)。
このアンモニウムヒドロキシドの具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。
一方、ヒドロキシルアミン塩としては、例えば一般式R89NOH・1/mA2で表すことができ、R8及びR9は、例えば独立に水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す(ただし、全てが同時に水素原子ではない)。A2は酸を示し、mは酸A2のアニオンの価数である。
このヒドロキシルアミン塩の例としては、塩酸メチルヒドロキシルアミン、塩酸エチルヒドロキシルアミン、塩酸n−プロピルヒドロキシルアミン、塩酸イソプロピルヒドロキシルアミン、塩酸ジメチルヒドロキシルアミン、塩酸ジエチルヒドロキシルアミン、及びこれらのヒドロキシルアミン類における塩酸を他の酸、例えば硫酸、硝酸、酢酸、モノアルキル硫酸、スルホン酸化合物等に置換したヒドロキシルアミン類等を挙げることができる。
また、4級ホスホニウム塩は、特に限定されないが、例えば下記一般式(I)〜(III)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
(PR4+・(X2- ・・・(I)
(PR4+ 2・(Y22- ・・・(II)
〔(PR4+-n−P(=O)R”3-n ・・・(III)
上記一般式(I)〜(III)中、Rは有機基を示し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基やシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基等を示す。リン原子に結合する4つのRのうち少なくとも一つはアリール基であることが必要である。また4つのRは互いに同一でも異なっていてもよく、二つのRが結合して環構造を形成していてもよい。
上記一般式(I)中、X2はハロゲン原子、水酸基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、HCO3又はBR’4等の1価の対アニオンを示す。ここで、R’は水素原子又はアルキル基やアリール基等の炭化水素基を示し、4つのR’は互いに同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(II)中、Y2はCO3等の2価の対アニオンを示す(2個の1価の対アニオンの場合を含む)。
上記一般式(III)中、R”は炭化水素基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基又は水酸基を示し、R”は互いに同一でも異なっていてもよく、nは1〜3の整数を示す。
上記一般式(I)で表される4級ホスホニウム化合物の具体例としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、ビフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ビフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムフェノキシド、ビフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド、メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド、フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド、ナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムフェノキシド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、ビフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド又はナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムクロライド、シクロヘキシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。
上記一般式(II)で表されるような2価の対アニオンを有する4級ホスホニウム化合物の具体例としては、例えばビス(テトラフェニルホスホニウム)カーボネート、ビス(ビフェニルトリフェニルホスホニウム)カーボネート、ビス(ナフチルトリフェニルホスホニウム)カーボネート等の4級ホスホニウム塩や、さらに、例えば2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのビス−テトラフェニルホスホニウム塩、エチレンビス(トリフェニルホスホニウム)ジブロミド、トリメチレンビス(トリフェニルホスホニウム)−ビス(テトラフェニルボレート)等も挙げることができる。
上記一般式(III)で表されるようなリン酸塩を有する4級ホスホニウム化合物の具体例としては、例えば、リン酸テトラフェニルホスホニウム、フェニルリン酸テトラフェニルホスホニウム、ジフェニルリン酸テトラフェニルホスホニウム等が挙げられる。
前記(A)成分である芳香族ポリカーボネート樹脂と、前記(C)成分であるポリオレフィン系樹脂との相溶性を向上させ、剥離を改善する観点からは、これらの4級ホスホニウム塩のうち、上記一般式(I)で表され、リン原子に結合するアリール基を1個以上有するものが好ましく、3個以上有するものがより好ましい。4級ホスホニウム塩は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前述のように、(H)成分は、(A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂が有する全末端基に対する末端ヒドロキシル基の割合に応じて、すなわち、全末端基に対して末端ヒドロキシル基が20モル%未満であるときに、特に配合することが好ましく、配合することにより、機械的強度や剥離強度等をより向上させることができる。配合する場合、(H)成分の配合量は、(A)〜(D)からなる樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.0001〜1質量部である。1質量部以下であれば、ポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネートの分子量が低下せず、耐薬品性、引張伸度及び耐衝撃性が低下するおそれがない。このような点から、配合量は(A)〜(D)からなる樹脂成分100質量部に対して0.0002〜0.5質量部であることがより好ましく、0.0004〜0.1質量部であることがさらに好ましい。
(H)成分を配合する場合には、該(H)成分である脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシルアミン塩、4級ホスホニウム塩は2種以上組み合わせて用いてもよいが、相溶性を向上させ、剥離を改善する観点からは、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドのような4級アンモニウム塩とともに4級ホスホニウム塩とを組み合わせて用いてもよく、併用する場合には、アミン類の配合量が4級ホスホニウム塩に対して、0.1〜50倍量の配合量とすることが、仕上がりのポリカーボネートの分子量を制御し、機械的強度等を発現する点で好ましい。
[(I)フッ素含有ポリマー]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、さらなる難燃性向上(UL94の5V試験における5VB)のために、必要に応じて(I)成分であるフッ素含有ポリマーを用いてもよい。
(I)成分であるフッ素含有ポリマーとしては、通常フルオロエチレン構造を含む重合体、共重合体であり、例えば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体が挙げられる。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、より好ましくは500,000〜10,000,000である。
本発明で用いることができるポリテトラフルオロエチレンとしては、現在知られているすべての種類のものを用いることができる。なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能力のあるものが好ましい。
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。
その具体例としては、例えば、テフロン6−J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業株式会社製)及びCD076、CD097E(旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えば、アルゴフロンF5(モンテフルオス株式会社製)、ポリフロンMPA及びポリフロンFA−100(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。
これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えば、テトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、7〜700kPaの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得ることができる。
(I)フッ素含有ポリマーの配合量は、前記(A)〜(D)からなる樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜1質量部、より好ましくは0.2〜0.8質量部である。配合量が0.1質量部以上であれば滴下防止性が向上し、また1質量部以下であれば表面外観や機械物性(耐衝撃性)への影響を与えない。
[添加剤]
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、上記(A)〜(I)成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、アンチブロッキング剤、離型剤及び滑剤等が挙げられる。
このうち着色材は、成形品の外観性を向上させるために用いられ、有機又は無機系の着色材のいずれも用いることができる。有機系の着色材としては、カーボンブラック等が挙げられ、無機系の着色材としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の金属酸化物系の着色材が挙げられる。また、これらの着色材は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
上記着色材を配合する場合には、その配合量は、前記(A)〜(D)からなる樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.003〜5質量部の範囲であり、より好ましくは0.005〜3質量部の範囲である。
[ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記(A)〜(G)成分、必要に応じて用いられる(H)〜(I)成分及び各種の添加剤を常法により配合し、溶融混練することにより得ることができる。より好ましくは、(H)成分のアミン塩等を配合する場合、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)エポキシ基又はグリシジル基含有ポリオレフィン又はポリオレフィンエラストマー、及び(H)成分のアミン塩等を混合した後に、(D)スチレン系樹脂、(E)リン系難燃剤、及び(G)活性化剤を配合することが好ましく、(C)ポリオレフィン系樹脂は(A)及び(B)成分の混合と同時に、あるいはこれらを混合した後に配合してもよく、また、(F)無機充填材は、(H)成分の配合の有無に関わらず(A)成分及び(B)成分を混合した後に配合することが好ましい。溶融混練する溶融混練機としては、例えばバンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ及び多軸スクリュー押出機等が挙げられる。溶融混練における加熱温度は、通常220〜300℃、特に250℃程度が適当である。
上記条件で溶融混練すると、(B)成分のエポキシ基又はグリシジル基含有ポリオレフィン又はポリオレフィンエラストマーのエポキシ基又はグリシジル基を、(G)成分が活性化させ、(A)成分との反応を促進する。これにより、本発明で得られるポリカーボネート樹脂組成物は、マトリックス相に(A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂が、ドメインに(C)成分のポリオレフィン樹脂が存在し、その界面にはポリカーボネートとエポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィンとの反応生成物による相溶化成分が存在するものとなる。適度な量の該相溶化成分の介在は界面を安定化させ、ポリカーボネートとポリオレフィンの相溶性が向上し、耐衝撃性、曲げ強度等の機械特性、流動性及び耐薬品性に優れ、剥離し難いポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、成形性の観点から、温度280℃、荷重2.16kgで測定したメルトボリュームフローレート(MVR)が2〜30ml/10分であることが好ましく、5〜25ml/10分であることがより好ましい。MVRが2ml/10分以上であれば流動性が良好であり、30ml/10分以下であれば耐薬品性や耐衝撃性が良好である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、公知の成形方法、例えば中空成形、射出成形、押出成形、真空成形、圧空成形、熱曲げ成形、圧縮成形、カレンダー成形及び回転成形等を適用することにより、成形体とすることができ、特に射出成形による成形法が好ましい。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、流動性、耐薬品性、及び難燃性のバランスに優れ、層状剥離を呈することがないため、射出成形によりこれらの特性が要求される自動車部品、電子機器や情報機器のハウジング等として利用可能である。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下において、GMAはグリシジルメタクリレート、MFRはメルトフローレート、MVRはメルトボリュームフローレートを示す。
実施例及び比較例において用いた(A)〜(I)成分を以下に示す。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
A−1:タフロンFN3000A[出光興産(株)製、分子量29,300] OH末端分率:5モル%
A−2:タフロンFN2600A[出光興産(株)製、分子量25,400] OH末端分率:4モル%
A−3:溶融法で製造したPC[分子量21,200] OH末端分率:30モル%
内容積30リットルのSUS316製オートクレーブに、ビスフェノールA 4560g(20モル)、ジフェニルカーボネート4418g(20.65モル)を仕込み、触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)をビスフェノールAに対して2.5×10-4モル、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(北興化学工業株式会社製、TPPK)を1×10-5モル加え、210℃で30分加熱したのち240℃、270℃、290℃と段階的に昇温し、さらに徐々に真空度を上げ最終的に0.4mmHgにて2時間攪拌混合し、上記A−3に示したポリカーボネートを得た。
なお、末端ヒドロキシル基の量(OH末端分率)は、ポリカーボネート樹脂70mgを重クロロホルム0.6mLに室温下で溶解した後、1H−NMRを測定し(1H核共鳴周波数:500MHz、観測周波数範囲:10000Hz、積算回数:256回)、末端の水酸基由来のピークa(7.06、7.05ppm)、末端のビスフェノールAのフェニルの水素のピーク(6.67、6.65ppm)及びc(4.87ppm)に基づき、算出した。
(B)エポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマー
B−1:エチレン−GMA共重合体[住友化学(株)製、ボンドファーストE、GMA含有量12質量%]
B−2:ポリプロピレン−GMAグラフト共重合体[ポリプロピレンとGMAと有機過酸化物(日油株式会社製、パーヘキサ25B)をブレンド後、バッチ式混練にて溶融混練して製造、GMA含有量9質量%]
(C)ポリオレフィン系樹脂
C−1:ポリプロピレンブロック重合体[プライムポリマー(株)製、E−185G、MFR=0.3g/10分(230℃、荷重21.18N)]
C−2:チーグラー触媒で製造した高密度ポリエチレン[プライムポリマー(株)製、640UF、MFR=0.21g/10分(190℃、荷重49N)]
(D)スチレン系樹脂
D−1:アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂):[ユーエムジー・エービーエス株式会社製、S200N]
D−2:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)[日本エイアンドエル株式会社製、サンタックAT−05、MFR=18g/10分(220℃、5kg荷重)]
(E)リン系難燃剤
E−1:芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤[大八化学工業株式会社製、CR−741]
(F)無機充填材
F−1:タルク[富士タルク工業株式会社製、TPA−25]
(G)活性化剤
(G1)成分
G−1:モノオクチルジフェニルホスファイト[株式会社ADEKA製、アデカスタブC]
G−2:ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト[株式会社ADEKA製、PEP−8]
G−3:トリデシルホスファイト[株式会社ADEKA製、3010]
(G2)成分
G−4:p−トルエンスルホン酸ブチル
(G)成分以外の添加剤(酸化防止剤)
g−1:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト[BASF社製、イルガフォス168]
g−2:2,2’−メチレンビス(4,6−ジブチルフェニル)オクチルホスファイト[株式会社ADEKA製、HP−10]
(H)アンモニウムヒドロキシド類
H−1:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド[和光純薬株式会社製、3%水溶液]
(I)フッ素含有ポリマー
I−1:ポリテトラフルオロエチレン[旭硝子株式会社製、PTFE CD076]
<評価試験用の試験片の作製方法>
押出機として、供給口を2個有するベント付き二軸押出機[日本製鋼所株式会社製、TEX44]を用い、設定温度を250℃とし、スクリュー回転数300rpm、吐出量100kg/時で表1に示す(A)〜(I)成分及びその他成分を溶融混練し、目的とするペレットを得た。得られたペレットを110℃で5時間以上乾燥した後、成形温度260℃、金型温度60℃で、各評価における所定の大きさの試験片を射出成形により作製した。
<評価方法>
(1)流動性(MVRの測定)
温度280℃、荷重2.16kgにて、ISO1133に準拠して測定した。
(2)耐薬品性
125×13×3.2mmの試験片を作製し、スパン距離80mmの3点曲げ試験機を用いて、ひずみ量1.3%をかけた状態で薬品(住友スリーエム株式会社製、のり取りクリーナ30M、リモネン含有)をスプレーした。30回往復させて擦り、直ちに薬品の揮発を防ぐためにポリ袋で蔽い、23℃、168時間後のクラックの発生の有無を確認した。
(3)難燃性
UL94に準拠し、125×12.5×2mm厚みの試験片を用いて5V試験を行った。なお、表1において、5VB試験に合格したものを「○」、不合格のものを「×」と表記した。
(4)耐剥離性(折り曲げ試験による剥離評価)
前述のようにして得られたペレットを用いて、JIS K 7162における試験片1B形でかつ厚み3.2mmの試験片を成形した。
試験片を中央部から両端がつくまで折り曲げ、さらに反対方向に同様に折り曲げて、表面にシワの発生する回数で剥離性を評価した。なお、表1において、10回以上折り曲げても剥離しなかった場合は「10<」とした。
〔実施例1〜6、比較例1〜5〕
表1に示す配合割合で樹脂組成物を配合してペレットを作製し、前述した方法で試験片の作製及び物性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
Figure 0005771542
表1によると、本発明のポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品は、UL94の5V試験において5VBという高い難燃性を達成することができ、流動性、耐薬品性、及び難燃性のバランスに優れ、フィルムゲートを有する薄肉成形品の場合であっても、折り曲げ剥離回数10回以内に層状剥離を呈することがないことがわかる。
一方、比較例1及び2は、(F)無機充填材を含有しないため難燃性が不十分であり、比較例3〜5は、(F)無機充填材を含有するため難燃性は高いものの、耐薬品性及び流動性が低下した。
比較例2〜5は、特定の(G)成分を含有しないため、耐剥離性が低下した。なお、比較例5では、(G1)成分の替わりに、酸化防止剤である、リン原子に1個のアルコキシ基(オクチルオキシ基)が結合したホスファイト化合物を用いているが、該ホスファイト化合物がリン原子に結合したアリールオキシ基を有しており、該アリールオキシ基のオルト位に置換基を有しているため、十分な耐剥離性が得られないことがわかる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、流動性、耐薬品性、及び難燃性のバランスに優れ、薄肉成形品の場合であっても層状剥離を呈することがないため、自動車部品、電子機器や情報機器のハウジング等に有用である。

Claims (10)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂60〜95質量%、(B)エポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマー2〜10質量%、(C)前記(B)成分以外のポリオレフィン系樹脂2〜15質量%、及び(D)スチレン系樹脂0〜20質量%からなる樹脂成分100質量部に対し、(E)リン系難燃剤5〜20質量部、(F)無機充填材3〜20質量部、及び、(G)活性化剤を含有し、該(G)成分が下記(G1)及び/又は(G2)である、ポリカーボネート樹脂組成物。
    (G1)リン原子に少なくとも1個のアルコキシ基が結合した、ホスファイト化合物及びホスフェート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種(但し、該化合物が、リン原子に結合したアリールオキシ基を有する場合、該アリールオキシ基のすべてのオルト位が水素原子である化合物) 0.001〜1質量部
    (G2)リン酸、亜リン酸、及び有機スルホン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種 0.000001〜0.01質量部
  2. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂が、分子鎖末端基としてヒドロキシル基を有するものを含み、全末端基に対する該ヒドロキシル基の含有量が20〜80モル%である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂が、分子鎖末端基としてヒドロキシル基を有するものを含み、全末端基に対する該ヒドロキシル基の含有量が20モル%未満である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記樹脂成分100質量部に対し、(H)脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシアンモニウム塩、及び4級ホスホニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を0.0001〜1質量部配合してなる、請求項3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 前記樹脂成分100質量部に対し、(I)フッ素含有ポリマーを0.1〜1質量部含む、請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. (D)スチレン系樹脂が、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、及びメチルメタクリレート−ブタジエンゴム−スチレン共重合体(MBS樹脂)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  7. (G2)成分の有機スルホン酸系化合物がアリールスルホン酸エステルである、請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  8. (F)無機充填材がタルク及び/又はマイカである、請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 温度280℃、荷重2.16kgで測定したメルトボリュームフローレート(MVR)が2〜30ml/10分である、請求項1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。
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