以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、血管等の生体器官内でステントを拡張させるためのカテーテルキットについて具体化している。図1は、カテーテルキット10の構成を示す正面図である。
図1に示すように、カテーテルキット10は、アウタカテーテル11と、インナカテーテル12と、アウタカテーテル11に装着されているステント13と、アウタカテーテル11に取り付けられているYコネクタ14とを備えており、全体として例えば1.5m程度の長さを有している。
アウタカテーテル11は、先端部(遠位端部)から体内に挿入されるアウタチューブ16と、アウタチューブ16の基端部(近位端部)に取り付けられたアウタハブ17とを備えており、例えば1.2m程度の長さを有している。アウタチューブ16は、ポリアミド樹脂等により管状に形成されており、先端部から基端部に向けて延びるアウタ内腔16a(図2参照)を有している。アウタ内腔16aはインナカテーテル用ルーメンを形成しており、そのアウタ内腔16aにはインナカテーテル12が挿通されている。
インナカテーテル12は、アウタ内腔16aに通されているインナチューブ21と、インナチューブ21の基端部に取り付けられたインナハブ22とを備えており、例えば1.4m程度の長さを有している。インナチューブ21は、アウタチューブ16に対する相対的移動が可能となっており、例えば、アウタチューブ16に対して長手方向への移動や軸線を中心とした回転等が可能となっている。また、インナチューブ21は、管状に形成されており、先端部から基端部に向けて延びるインナ内腔21a(図2参照)を有している。インナチューブ21は、アウタチューブ16より長くなっており、その基端部がアウタカテーテル11の基端側に露出している。したがって、インナハブ22はアウタハブ17よりも基端側に配置されている。
ステント13は、ニッケルチタン合金などといった金属材料により略円筒形状に形成されている。また、ステント13は、収縮可能な弾力を有しており、外力が加えられることで通常状態からそれより外径の小さい収縮状態に移行し、その外力が解除されることで自己の付勢力により収縮状態から通常状態に復帰する構成となっている。インナチューブ21の先端部には、外周面から外側に突出する環状のストッパ25,26が長手方向に所定間隔だけ隔てて対向配置されており、これら一対のストッパ25,26により規定された規定領域にステント13が配置されている。ステント13は、規定領域にて収縮された後、その状態でアウタチューブ16により外側が覆われ、アウタチューブ16により外力が継続して加えられることで収縮状態が維持されている。このようにステント13が装着された状態がカテーテルキット10における初期状態であり、インナチューブ21とアウタチューブ16との長手方向の相対位置が初期位置にある状態に相当する。また、アウタチューブ16がインナチューブ21に対して相対的に基端側へ後退した後退位置となることで、ステントが露出する施術状態となる。
なお、ストッパ25,26は、X線造影機能を有する金属材料により形成されている。また、インナチューブ21におけるストッパ25,26よりも先端側には、先端側に先細りするように形成された先端部材27が設けられている。
Yコネクタ14は、インナハブ22とアウタハブ17との間に配置されている。Yコネクタ14は、第1管部28と、その第1管部28の途中位置から分岐された第2管部29とを備えており、第1管部28の内腔にインナチューブ21が挿通されている。
カテーテルキット10はその中間位置からガイドワイヤGが導出される構成となっている。その構成について、図2を参照しつつ説明する。図2は、カテーテルキット10の中間位置を拡大して示す縦断面図である。
図2に示すように、インナチューブ21は、複数の管状シャフトから構成されており、それら管状シャフトとして、基端側シャフト31と、先端側シャフト32とを備えている。
基端側シャフト31は、ステンレスやニッケルチタン合金などといった金属により横断面円形状に形成されており、例えば1m強の長さを有している。基端側シャフト31は、基端部がインナハブ22に接合されており、先端部が先端側シャフト32に接合されている。なお、基端側シャフト31は、合成樹脂製でもよく、外周にPTFEといったフッ素樹脂などがコーティングされていてもよい。コーティングが施されている場合、基端側シャフト31の外周面とアウタチューブ16の内周面との摩擦力が低減され、インナチューブ21をアウタチューブ16に対して相対的に前進させたり後退させたりすることが容易となる。
基端側シャフト31は、その先端部にテーパ領域35を有しており、テーパ領域35においては、その基端側から先端側に向けて連続的に剛性が低くなっている。具体的には、テーパ領域35は、内径及び外径が先端側に向かって連続的に小さくなるテーパ状に形成されているとともに、剛性低下構造としての螺旋状の切り込み36が長手方向に連続させて形成されている。切り込み36は、そのピッチが先端側に向けて狭くなっている。このピッチとは図2の状態で見て長手方向に並ぶ切り込み36間の距離のことをいう。
また、基端側シャフト31には、その内部にコアワイヤ37が挿通されている。コアワイヤ37は、テーパ状に形成された先端部を有しており、先端側に向けて剛性が低くなっている。コアワイヤ37の先端部は、テーパ領域35の先端部を通じてそのテーパ領域35よりも先端側へ突出している。なお、コアワイヤ37の先端部は、インナ貫通孔41よりも遠位端側に突出していてもよい。
基端側シャフト31の先端部には先端側シャフト32が接着されている。先端側シャフト32は、合成樹脂材料により円筒状に形成されており、例えば0.25m弱の長さを有している。先端側シャフト32の基端部には、コアワイヤ37の先端部及び基端側シャフト31の先端部が入り込んでおり、その入り込んだ部分が各シャフト31,32の接着部分となっている。なお、基端側シャフト31及び先端側シャフト32の接合は熱溶着により行ってもよい。
先端側シャフト32の周壁には、アウタ内腔16aとインナ内腔21aとを連通させるように貫通するインナ貫通孔41が形成されている。そのインナ貫通孔41に一端を溶着させてインナシャフト33が設けられている。インナシャフト33は、先端側シャフト32の先端側の開口からインナ貫通孔41の位置に亘って内挿されており、インナ貫通孔41に溶着された側と反対側の端部が先端側シャフト32の先端側の開口に溶着されている。インナシャフト33の孔径は、ガイドワイヤGの外径よりも大きく設定されており、ガイドワイヤGを挿通可能となっている。すなわち、インナシャフト33の内腔はガイドワイヤ用ルーメンを形成している。ガイドワイヤGは、先端側シャフト32の先端側からインナシャフト33内に挿通され、そのインナシャフト33を通ってインナ貫通孔41側の開口からアウタ内腔16aに入り込む。つまり、インナシャフト33の基端側の開口は、アウタ内腔16aへの出口となるインナポートとしての機能を有している。
先端側シャフト32において、コアワイヤ37の先端部はインナ貫通孔41の基端側近傍に存在している。また、インナ貫通孔41よりも基端側においては、コアワイヤ37の先端部から基端側シャフト31のテーパ領域35に向けて剛性が徐々に高められている。これにより、インナ貫通孔41の周辺で局所的に剛性が変化してしまわないようになっており、インナチューブ21は基端側に向けて剛性が徐々に高められている。
アウタチューブ16は、当該チューブ16の樹脂層を構成するチューブ本体61を備える。チューブ本体61は、ポリアミド樹脂を用いて管状に形成されている。アウタチューブ16は、長手方向において中間位置から先端側に向けて設けられている先端側アウタ領域51と、先端側アウタ領域51の基端側に設けられている基端側アウタ領域52とを有している。それら各アウタ領域51,52は、その境界にて連続するようにそれぞれ管状に形成されている。先端側アウタ領域51においては、アウタチューブ16の周壁が基端側アウタ領域52の軸線を基準として基端側アウタ領域52よりも外側(外周側)へ拡張されており、その拡張量は、所定方向がその反対方向に比べて大きくなっている。先端側アウタ領域51には、基端側アウタ領域52に隣接している側に段差部53が形成されており、その段差部53は、カテーテルキット10が初期状態にある場合にインナ貫通孔41よりも基端側に存在する位置に設けられている。
段差部53では、アウタチューブ16の周壁が基端側から先端側に向けて外側へ拡張されている。したがって、この段差部53では、アウタチューブ16の径が基端側から先端側に向かって大きくなっており、その外周面は、基端側から先端側に向かって径方向の外側に傾斜する傾斜面となっている。
段差部53において、外側への拡張量が他の部分よりも大きい部分(所定方向の部分)には、アウタ内腔16aと外部空間とを連通させるように貫通するアウタ貫通孔45が形成されている。この場合、アウタ貫通孔45は、段差部53と同様に、先端側アウタ領域51の基端部に配置されているとともに、カテーテルキット10が初期状態にある場合にインナ貫通孔41よりも基端側に存在している。アウタ貫通孔45は、アウタチューブ16の周壁において基端側に向けて開放されている。アウタ貫通孔45の孔径は、ガイドワイヤGの外径よりも大きく設定されており、ガイドワイヤGを挿通可能となっている。なお、アウタ貫通孔45とアウタチューブ16の先端部との離間距離は例えば0.25mとなっている。
アウタチューブ16は、先端側アウタ領域51及び基端側アウタ領域52に通じるメイン管部56と、先端側アウタ領域51においてメイン管部56から分岐されているサブ管部57とを備えており、メイン管部56の内腔及びサブ管部57の内腔はアウタ内腔16aにより形成されている。メイン管部56とサブ管部57との分岐部分には、それら管部56,57を仕切る仕切部55が設けられており、サブ管部57は、メイン管部56に沿うように基端側に向けて延びている。サブ管部57は、その内径がガイドワイヤGの外径よりも大きくなっており、ガイドワイヤGの挿通が可能となっている。また、サブ管部57は、その基端部が段差部53により形成されているとともに、基端側の開口はアウタ貫通孔45により形成されている。この場合、サブ管部57に到達したガイドワイヤGは、サブ管部57を通ってアウタ貫通孔45から外部へ出る。つまり、サブ管部57の基端側の開口は、アウタチューブ16からの出口となるアウタポートとしての機能を有している。
アウタチューブ16において、インナチューブ21はメイン管部56に挿通されている。インナチューブ21は、基端側アウタ領域52では横断面の中央に配置されており、これにより、先端側アウタ領域51では拡張部分の反対側に偏倚して配置されている。つまり、インナチューブ21は、先端側アウタ領域51にてアウタチューブ16の内周面におけるアウタ貫通孔45に対してインナチューブ21を挟んだ反対側に偏倚している。この場合、基端側アウタ領域52ではインナチューブ21とアウタチューブ16との軸線が同一線上にあり、先端側アウタ領域51ではインナチューブ21の軸線はアウタチューブ16の軸線を挟んでアウタ貫通孔45の反対側にある。
先端側アウタ領域51には、インナチューブ21の外周面とメイン管部56の内周面との間にガイドワイヤGを挿通可能な挿通空間59が形成されている。挿通空間59において、インナチューブ21の偏倚側(アウタ貫通孔45に対してインナチューブ21を挟んだ反対側)では、インナチューブ21の外周面とメイン管部56の内周面との間の離間距離がガイドワイヤGの外径より小さくなっており、アウタ貫通孔45側では、前記離間距離がガイドワイヤGの外径以上の大きさになっている。また、先端側アウタ領域51の基端部において、挿通空間59の一部は段差部53に面しているとともにその一部はアウタ貫通孔45を通じて外部に開放されている。
メイン管部56における先端側アウタ領域51の基端側には、段差部53の先端側に隣接して肉厚部分58が設けられている。肉厚部分58は、メイン管部56において他の部位よりも肉厚が大きく形成されている。本アウタチューブ16は、後述するように、2つのチューブ81,82(図4参照)が溶着により接合されて形成されており、この肉厚部分58は2つのチューブ81,82の溶着部分に相当する。
肉厚部分58は、先端側を向く端面として肉厚面58aを有しており、インナチューブ21の軸線周りを囲むように、メイン管部56に対してサブ管部57側が基端側に傾いた傾斜面となっている。なお、仕切部55は、先端側を向く端面として仕切面55aを有しており、仕切面55aは、肉厚面58aと同一平面を形成する傾斜面となっている。
基端側アウタ領域52においては、メイン管部56の内周面が肉厚部分58の内周面と略面一となっており、メイン管部56の内周面とインナチューブ21(基端側シャフト31)の外周面との間には上記挿通空間59が形成されていない。
ところで、本実施形態では、アウタチューブ16を補強すべく同チューブ16に補強体としての編組体が設けられている。以下、この編組体を含むアウタチューブ16の構成について図2に加え図3を参照しつつ説明する。なお、図3は、アウタチューブ16に設けられた編組体を示す正面図である。また、図3では、便宜上、アウタチューブ16の外形線を二点鎖線で示している。
図2及び図3に示すように、アウタチューブ16は、ポリアミド樹脂からなる上述したチューブ本体61に加え、このチューブ本体61の軸線方向における所定範囲に埋設された複数(図2及び図3では2つ)の編組体62,63を備える。各編組体62,63のうち第1編組体62は、チューブ本体61の軸線方向において先端部から基端側に向けた所定範囲に設けられている。具体的には、第1編組体62は、チューブ本体61の先端側アウタ領域51においてその先端部から基端側に向けて延びており、より詳しくは段差部53の遠位端部近傍まで基端側に向けて延びている。したがって、第1編組体62は、先端側アウタ領域51において段差部53を除くほぼ全域に設けられている。
ここで、第1編組体62の先端部(遠位端部)とは、チューブ本体61においてステント13が収容される収容領域(換言すると、上述したインナチューブ21における各ストッパ25,26間の規定領域)における軸線方向の途中位置又は当該収容領域よりも先端側であることが好ましい。これにより、チューブ本体61の軸線方向においてステント13の収容領域の少なくとも一部には、第1編組体62が埋設されることとなる。また、第1編組体62の先端部は、ステント13の収容領域よりも先端側であることがより好ましい。その場合、チューブ本体61の軸線方向においてステント13の収容領域全体に第1編組体62が埋設されることとなる。なお、上記第1編組体62により、チューブ本体61に埋設された第1編組層(第1補強層に相当)が形成されている。
一方、第2編組体63は、チューブ本体61において第1編組体62よりも基端側に設けられている。第2編組体63は、チューブ本体61の基端側アウタ領域52に設けられており、同アウタ領域52の軸線方向において段差部53よりも近位側を遠位端部として、それよりも近位側に向けて延びている。具体的には、第2編組体63は、上記軸線方向において段差部53から所定の距離基端側の位置を遠位端部として、基端側アウタ領域52の近位端まで延びている。なお、上記第2編組体63により、チューブ本体61に埋設された第2編組層(第2補強層に相当)が形成されている。また、第1編組層(第1編組体62)と第2編組層(第2編組体63)とがチューブ本体61に埋設されていることから、アウタチューブ16の内周面及び外周面の全体は樹脂層(チューブ本体61)により形成されている。
編組体62,63は、チューブ本体61の軸線周りに周回されながらチューブ本体61の軸線方向に延在された複数の補強用線64,65を備え、これら複数の補強用線64,65によりメッシュ状又は網目状に形成されている。補強用線64,65は、例えばステンレス鋼からなる丸線により構成されている。但し、補強用線64,65は必ずしもステンレス鋼により構成する必要はなく、その他の金属材料により構成してもよい。また、補強用線64,65を金属材料に代え、カーボン繊維やナイロン等の非金属材料により構成してもよい。さらに、補強用線64,65は、必ずしも丸線により構成する必要はなく、平角線等その他の断面形状を有する線により構成してもよい。
補強用線64,65は、軸線方向全域においてほぼ一定の線径を有して形成されており、例えば線径が約0.002〜0.015cmに設定されている。本実施形態では、第1編組体62と第2編組体63とで、同じ線径でかつ同じ材料の補強用線64,65を用いている。この場合、各編組体62,63を形成する上で部材管理上好ましい。なお、第1編組体62と第2編組体63とで、補強用線64,65の線径を異ならせてもよいし、材質を異ならせてもよい。
また、各編組体62,63において、複数の補強用線64,65はアウタチューブ16の長手方向にそれぞれ所定のピッチで設けられている。具体的には、第1編組体62における補強用線64のピッチは一定とされており、第2編組体63における補強用線65のピッチも一定とされている。但し、必ずしも各編組体62,63における補強用線64,65のピッチを一定とする必要はなく、各編組体62,63のうち少なくともいずれかについて、補強用線64,65のピッチを編組体62,63の近位側から遠位側に向けて大きくする等、補強用線64,65のピッチを一定としない構成としてもよい。
また、本実施形態では、第1編組体62と第2編組体63との間で補強用線64,65のピッチを異ならせており、第1編組体62における補強用線64のピッチを第2編組体63における補強用線65のピッチよりも小さく設定している。但し、第1編組体62における補強用線64のピッチを、第2編組体63における補強用線65のピッチよりも大きく設定してもよいし、第2編組体63における補強用線65のピッチと同じピッチに設定してもよい。
第1編組体62の補強用線64と第2編組体63の補強用線65とは、アウタチューブ16の軸線方向に対する傾斜角度が異なっている。具体的には、アウタチューブ16の軸線方向に対する第1編組体62の補強用線64の傾斜角度αが、同軸線方向に対する第2編組体63の補強用線65の傾斜角度βよりも大きくなっている(α>β)。なお、アウタチューブ16の軸線方向に対する補強用線64,65の傾斜角度には、鋭角側の角度と鈍角側の角度とが存在するが、本明細書における「傾斜角度α,β」とは鋭角側の角度を指すものとする。
各補強用線64,65の傾斜角度α,βについて補足説明をすると、第1編組体62の補強用線64は、第2編組体63の補強用線65よりもアウタチューブ16の軸線方向に対して直交する角度側に傾斜しているともいえ、第2編組体63の補強用線65は第1編組体62の補強用線64よりも同軸線方向に対して平行な角度側に傾斜しているともいえる。ここで、「アウタチューブ16の軸線方向に対して直交する角度」とは、同軸線方向に対する角度が90°であることを意味し、「アウタチューブ16の軸線方向に対して平行な角度」とは、同軸線方向に対する角度が0°であることを意味する。そして、「アウタチューブ16の軸線方向に対して平行な角度側」とは、同軸線方向に対する傾斜角度が0°に近い側を意味し、「アウタチューブ16の軸線方向に対して直交する角度側」とは、同軸線方向に対する傾斜角度が90°に近い側を意味する。
このように、第1編組体62の補強用線64の傾斜角度αが、第2編組体63の補強用線65の傾斜角度βよりも大きくなっていることから、本アウタチューブ16では、第1編組体62が埋設されている領域では径方向の引張強度が比較的高くなっており、第2編組体63が埋設されている領域では軸線方向の引張強度が比較的高くなっている。そのため、アウタチューブ16の先端側においてステント13の拡張力に対する抵抗力を高めることができるとともに、アウタチューブ16の基端側において同チューブ16の引き抜き時に作用する引張方向への力に対する抵抗力を高めることができる。
ここで、第1編組体62の補強用線64の傾斜角度αは、40°以上であることが好ましく、より好ましくは70°〜90°であることが望ましい。この場合、ステント13の拡張力に対してより一層の抵抗力を付与できる。一方、第2編組体63の補強用線65の傾斜角度βは40°未満であることが好ましく、より好ましくは20°〜30°であることが望ましい。この場合、アウタチューブ16の引き抜き時に作用する引張方向への力に対してより一層の抵抗力を付与することができる。
ところで、第1編組体62の補強用線64の傾斜角度αが、第2編組体63の補強用線65の傾斜角度βよりも大きくなっている構成において、各編組体62,63が、同一の径及び同一の材質からなる補強用線64,65により構成され、かつ、第1編組体62と第2編組体63とで補強用線64,65のピッチや単位体積当たりの線量が同じとされている場合には、アウタチューブ16において第1編組体62が埋設されている先端側の領域よりも第2編組体63が埋設されている基端側の領域の方が剛性が大きくなることが考えられる。その点、本実施形態では、各補強用線64,65の径及び材質を同じとする等、補強用線64の各種パラメータを設定することによりアウタチューブ16において基端側の剛性を先端側の剛性よりも大きくしている。そのため、耐キンク性や力の伝達性の向上が図られている。
なお、「剛性」とは、カテーテル、シャフト又はチューブなどを軸線方向に対して直交する方向に曲げようとするときに作用するモーメントの大きさのことをいう。
アウタチューブ16の軸線方向において、第1編組体62が設けられている領域と第2編組体63が設けられている領域との間には、編組体が設けられていない非編組領域67が形成されている。既に説明したとおり、第1編組体62の基端部は、段差部53の遠位端部近傍に位置している。具体的には、段差部53に対して基端側に連続する肉厚部分58に、第1編組体62の基端部が埋設されており、詳細には、アウタチューブ16の軸線方向における肉厚部分58の全域に第1編組体62の基端部が埋設されている。一方、アウタチューブ16の軸線方向において、第2編組体63の先端部は、段差部53に対して所定の距離基端側に位置している。したがって、非編組領域67は、段差部53と、段差部53に対して基端側に連続する所定の領域とに形成されている。
また、非編組領域67では、第1編組体62及び第2編組体63のみならず、これら各編組体62,63以外の編組体についても設けられていない。したがって、非編組領域67は、ポリアミド樹脂(チューブ本体61)のみからなる領域となっている。そのため、非編組領域67では、それよりも先端側の領域と比べ、編組体が埋設されていない分樹脂量が多くなっている。
なお、各編組体62,63の境界部分となる非編組領域67には編組体62,63が埋設されていないため、アウタチューブ16の剛性が局所的に変化することが懸念される。その点、非編組領域67を跨ぐようにして、アウタチューブ16の剛性よりも十分に大きな剛性を有する基端側シャフト31やコアワイヤ37が設けられているため、カテーテルキット10全体の剛性については局所的な変化が抑制されている。
上記のようにアウタチューブ16には、第1編組体62と第2編組体63との間に非編組領域67が設けられているため、第1編組体62の補強用線64と第2編組体63の補強用線65とは非編組領域67を挟んで不連続となっている。また、非編組領域67には、アウタチューブ16の外径が変化する段差部53が設けられており、段差部53にはアウタ貫通孔45が形成されているため、第1編組体62の補強用線64と第2編組体63の補強用線65とはアウタチューブ16の外径が変化する部分又はアウタ貫通孔45を挟んで不連続になっているともいえる。
次に、アウタチューブ16の製造工程について、図4を参照しつつ説明する。図4は、アウタチューブ16の製造工程を説明するための説明図である。
本アウタチューブ16は、先端側アウタ領域51を形成する大口径チューブ81と、基端側アウタ領域52を形成する小口径チューブ82とを熱溶着により接合し一体化することで形成される。そのため、アウタチューブ16の製造工程は、大口径チューブ81及び小口径チューブ82を製造する前工程と、前工程で製造した各チューブ81,82同士を接合する接合工程とからなる。そこで、まず前工程について説明する。
前工程として、まず大口径チューブ81の製造を行う。図4(a)に示すように、大口径チューブ81の製造では、まずポリアミド樹脂からなる内管86の外周面に、複数の補強用線64を螺旋状にかつ編組させて巻き付けることで第1編組体62を形成する。ここで、補強用線64の巻き付けは、例えばブレーダー装置(図示略)により補強用線64を繰り出しながら、内管86を軸方向に移動させつつ軸を中心に回転させることで行われる。この場合、補強用線64が所定の傾斜角度αで巻回されるように、内管86の移動速度及び回転速度を調整する。なお、第1編組体62は、内管86の長手方向全域に巻回される。
次に、図4(b)に示すように、第1編組体62の外周側にポリアミド樹脂からなる外管87を押し出して、同外周側を外管87により被覆する。そして、内管86の外周面と外管87の内周面とを熱溶着により接合する。これにより、第1編組体62が内部に埋設された大口径チューブ81が製造される。なお、内管86と外管87とは同じポリアミド樹脂により形成されているため、接合後において、第1編組体62の補強用線64が存在していない部分には境界が存在していない。また、内管86と外管87とによりチューブ本体61における先端側アウタ領域51が構成される。内管86と外管87とが接合されたものが第1樹脂チューブに相当する。
次に、小口径チューブ82の製造を行う。小口径チューブ82の製造は、大口径チューブ81の製造とほぼ同様の手順で行われ、まず図4(c)に示すように、内管88の外周面に補強用線65を螺旋状にかつ編組させて巻き付け第2編組体63を形成する。この場合、補強用線65が所定の傾斜角度βで巻回されるように、内管88の移動速度及び回転速度を調整する。また、第2編組体63は、内管88の長手方向において一端部の所定範囲を除く全領域に巻回される。
次に、図4(d)に示すように、第2編組体63の外周側を外管89により被覆し、内管88の外周面と外管89の内周面とを熱溶着により接合する。これにより、第2編組体63が内部に埋設された小口径チューブ82が製造される。なお、内管88と外管89とは同じポリアミド樹脂により形成されているため、接合後において、第2編組体63の補強用線65が存在していない部分には境界が存在していない。また、内管88と外管89とによりチューブ本体61における基端側アウタ領域52が構成される。内管88と外管89とが接合されたものが第2樹脂チューブに相当する。
また、小口径チューブ82は、その後、第2編組体63が設けられていない前記所定範囲側の先端部が軸線方向に対して斜めにカットされる(図4(e)参照)。そして、カット後においても小口径チューブ82の先端側には、第2編組体63が埋設されていない領域が存在している。
次に、接合工程について説明する。接合工程では、まず大口径チューブ81と小口径チューブ82とを組み合わせる組み合わせ工程を行う。組み合わせ工程では、図4(e)に示すように、小口径チューブ82を大口径チューブ81にそれぞれの軸線が重ならずに平行となる状態で入れ込む。大口径チューブ81に小口径チューブ82が入れ込まれた状態では、小口径チューブ82は周方向の一方側に偏倚しており、斜め端部の先端側(尖った側)が大口径チューブ81の内周面に当接している。この場合、小口径チューブ82の偏倚側とは反対側では、大口径チューブ81の内周面と小口径チューブ82の外周面とが離間している。また、大口径チューブ81に小口径チューブ82が入れ込まれた状態において、小口径チューブ82の第2編組体63は、大口径チューブ81の外側に位置しており、具体的には、第2編組体63は大口径チューブ81の先端に対して同チューブ81の軸線方向に所定の距離隔てた位置に設けられている。
次に、金属棒又は溶着用治具としての鋼鉄材を各チューブ81,82に挿通させる鋼鉄材挿通工程を行う。鋼鉄材挿通工程では、図4(f)に示すように、第1鋼鉄材83を小口径チューブ82及び大口径チューブ81の内腔に挿通させるとともに、大口径チューブ81の内周面と小口径チューブ82の外周面とが離間した隙間に第2鋼鉄材84を挿通させる。ここで、第1鋼鉄材83及び第2鋼鉄材84はそれぞれ円柱状に形成されており、第1鋼鉄材83は基端側アウタ領域52におけるメイン管部56の内径と同じ大きさの外径を有し、第2鋼鉄材84は先端側アウタ領域51におけるサブ管部57の内径と同じ大きさの外径を有している。なお、第2鋼鉄材84は、半円形状の断面を有する棒状に形成する等その他の形状としてもよい。
次いで、大口径チューブ81と小口径チューブ82とを熱溶着により接合させる溶着工程を行う。溶着工程では、図4(g)に示すように、大口径チューブ81と小口径チューブ82との当接面を溶着させ、それらチューブ81,82を一体化させるとともに、大口径チューブ81を第2鋼鉄材84及び小口径チューブ82に巻き付かせるように収縮させる。その後、第1鋼鉄材83及び第2鋼鉄材84を各チューブ81,82から抜き取る。これにより、アウタチューブ16の製造が完了する。
次に、カテーテルキット10により血管内の所定の施術対象箇所にステント13を留置する際の作業内容を図5に基づいて説明する。図5は、ステント13が拡張状態にある場合のカテーテルキット10の構成を示す正面図である。
まず、前もって血管内に挿入しておいたガイドワイヤGに沿わせるようにしてカテーテルキット10を血管内に挿入し、カテーテルキット10におけるステント13が装着されている部分を所定の施術対象箇所まで搬送する作業を行う。この場合、ステント13は、圧縮状態でアウタチューブ16のアウタ内腔16aに保持されているため、ステント13の拡張力によりアウタチューブ16の内周面が押圧されている。この点、アウタチューブ16は、ステント13が装着される先端側アウタ領域51において第1編組体62により径方向の引張強度が高められているため、ステント13がアウタチューブ16の内周面に食い込む等の不都合が抑制されている。
次に、ステント13を施術対象箇所に配置する作業を行う。この作業は、図5に示すように、アウタカテーテル11をインナカテーテル12に対し相対的に基端側へ後退させ、ステント13をアウタカテーテル11(詳しくはアウタチューブ16)の外部に露出させることにより行う。この場合、アウタチューブ16の内周面によりステント13に付与されていた圧縮力が解除され、ステント13が径方向に拡張する。つまり、ステント13が収縮状態から通常状態に復帰する。そして、ステント13は、その通常状態で施術対象箇所に留置される。
ここで、アウタカテーテル11を後退させる際の作用についてより詳しく説明すると、後退時にはアウタチューブ16の内周面がステント13の拡張力により押圧されているため、アウタチューブ16の内周面には上記押圧に伴う摩擦抵抗が生じている。そのため、その摩擦抵抗に対抗する力でアウタチューブ16を基端側に引っ張る必要があり、特にアウタチューブ16の基端側では軸線方向への引張力が大きく作用することが想定される。その点、アウタチューブ16の基端側(基端側アウタ領域52)では第2編組体63により軸線方向の引張強度が高められているため、アウタチューブ16の軸線方向への伸びを抑制することができ、その結果アウタチューブ16を後退させるための引き抜き力をチューブ16の先端側まで好適に伝達させることができる。
また、上述したように、アウタチューブ16の内周面に対するステント13の食い込みが第1編組体62により抑制されていることから、アウタチューブ16を後退させる際の引き抜き力を低減させることができる。そのため、アウタチューブ16の軸線方向への伸びについて更なる抑制を図ることが期待できる。
その後、カテーテルキット10を血管内から抜き取る作業を行う。この作業によりステント13内側のインナカテーテル12が抜き取られ、ステント13の留置作業が完了する。なお、留置されたステント13により血管は拡張状態で保持され、血流が好適に確保される。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
チューブ本体61における先端部から基端側に向けた所定範囲に第1編組体62を設け、第1編組体62よりも基端側の所定範囲に第2編組体63を設けた。そして、チューブ本体61の軸線方向に対する第1編組体62の補強用線64の傾斜角度αを、同軸線方向に対する第2編組体63の補強用線65の傾斜角度βよりも大きくした。この場合、アウタチューブ16における先端側の所定範囲において径方向の引張強度を高めることができるとともに、基端側の所定範囲において軸線方向の引張強度を高めることができる。これにより、アウタチューブ16の強度を好適に高めることができる。
また、ステント13を体内の治療対象部位に搬送する本カテーテルキット10において、ステント13はアウタチューブ16の先端部に収容されるため、ステント13の体内への搬送時にステント13がアウタチューブ16の先端部で内周面に食い込むのを抑制でき、しかもアウタチューブ16を体内から引き抜く際に基端側でチューブ16が伸びるのを抑制できる。これにより、アウタチューブ16の操作性を高めることができる。
第1編組層と第2編組層とをそれぞれ異なる編組体62,63により構成した。この場合、各編組層をチューブ本体61に形成するに際し各編組層を個別に形成できる。具体的には、まず第1編組体62を埋設した大口径チューブ81と、第2編組体63を埋設した小口径チューブ82とを製造し、その後それら各チューブ81,82同士を接合することで、各編組層が埋設されたチューブ本体61を製造できる。これにより、各編組層が埋設されたアウタチューブ16を効率よく製造することが可能となる。
第1編組体62と第2編組体63とを、チューブ本体61の軸線方向において重複しないように構成した。この場合、大口径チューブ81と小口径チューブ82とを溶着により接合する場合において、各チューブ81,82の溶着部分に各編組体62,63が共に存在することを回避できる。これにより、溶着部分における樹脂量の低下を抑制でき、その結果溶着強度の低下を抑制できる。
チューブ本体61に形成されたアウタ貫通孔45を基準として先端側に第1編組体62を設け、基端側に第2編組体63を設けた。これにより、アウタ貫通孔45を有するチューブ本体61に各編組体62,62を設けるにあたり、補強用線64,65の一部がアウタ貫通孔45にかかり、その結果アウタ貫通孔45へのガイドワイヤGの挿通が阻害されるといった不都合が生じるのを回避できる。
チューブ本体61において外径が変化する部分を基準として先端側に第1編組体62を設け、基端側に第2編組体63を設けた。この場合、まず第1編組体62が埋設された大口径チューブ81と、第2編組体63が埋設された小口径チューブ82とを製造し、その後各チューブ81,82を溶着することで、各編組体62,63が埋設されたチューブ本体61を製造できる。そのため、かかる形状のチューブ本体61に各編組体62,63を設ける際には都合がよい。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、アウタチューブ16に、補強用線64,65の傾斜角度α,βが異なる2つの編組体62,63を設けたが、これを変更し、補強用線の傾斜角度が互いに異なる3つ以上の編組体を設けてもよい。例えば、アウタチューブ16に、補強用線の傾斜角度が互いに異なる3つの編組体、すなわち第1〜第3編組体を設けることが考えられる。ここで、第2編組体は第1編組体よりも基端側に、第3編組体は第2編組体よりも基端側に設け、補強用線の傾斜角度は第1編組体、第2編組体、第3編組体の順に小さくなるように設定する。これにより、アウタチューブ16の剛性を先端側に向けて滑らかに小さくすることができ、耐キンク性をより一層向上させることができる。
(2)上記実施形態では、アウタチューブ16の軸線方向におけるほぼ全域に編組体62,63を埋設したが、編組体62,63を埋設する範囲は任意としてよい。例えば、アウタチューブ16の先端側アウタ領域51において、ステント13が収容される収容領域を少なくとも含む所定の先端側領域にのみ第1編組体62を埋設してもよい。
また、各編組体62,63は必ずしもアウタチューブ16の各アウタ領域51,52に別々に設ける必要はなく、いずれか一方のアウタ領域51,52に双方の編組体62,63を埋設してもよい。
(3)上記実施形態では、アウタチューブ16において第1編組体62と第2編組体63とを軸線方向に隔てて設けることにより各編組体62,63の間に編組体が存在しない非編組領域67を設けたが、第1編組体62と第2編組体63とを隣接して設けることにより非編組領域67を設けない構成としてもよい。例えば、第2編組体63を非編組領域67(第1編組体62)の側に延長させて形成し、第1編組体62と隣接させることが考えられる。また、第2編組体63を非編組領域67よりも先端側まで延設し、アウタチューブ16の軸線方向において第1編組体62の一部と重複させてもよい。
(4)第1編組体62と第2編組体63とを隣接して設けた上記(3)の構成において、第1編組体62の補強用線64と第2編組体63の補強用線65とを連続させることで、各編組体62,63を一体化させてもよい。
(5)上記実施形態では、大口径チューブ81と小口径チューブ82との溶着部分である肉厚部分58に第1編組体62を埋設したが、これに代えて、第2編組体63を埋設するようにしてもよい。また、肉厚部分58に、第1編組体62及び第2編組体63のいずれも埋設しないようにしてもよい。この場合、溶着部分である肉厚部分58に編組体が存在しないため、溶着に必要な樹脂量を十分確保でき、溶着強度の低下をより一層抑制することができる。例えば、アウタチューブ16において、肉厚部分58に対し先端側に連続するように第1編組体62を設けるとともに、基端側に連続するように第2編組体63を設けてもよい。
(6)各編組体62,63が埋設されたアウタチューブ16の製法は、上記実施形態の製法に限定されることなくその他の製法であってもよい。例えば、長手方向全域において径が均一とされているアウタチューブに対し、第1編組体と、第2編組体とを設ける場合には、共通の内管に各編組体の補強用線を巻き付けて各々の編組体を形成できるため、上記実施形態のようなチューブ81,82同士の溶着を行うことなくチューブを製造できる。
また、かかるチューブに対し第1編組体と第2編組体とを隣接して設ける場合には、各編組体の補強用線を連続させることで各編組体を一体物として構成するのがよい。そうすれば、補強用線を内管に巻回することで各編組体を一挙に設けることができる。
(7)上記実施形態では、補強用線64,65が編組されてなる編組体62,63を補強体としてアウタチューブ16に埋設したが、これを変更し、補強用線が螺旋状に一方向にのみ巻回されてなるコイル状の補強体をアウタチューブ16に埋設してもよい。例えば、アウタチューブ16(先端側アウタ領域51)において第1編組体62に代え、コイル状の補強体を埋設することが考えられる。この場合、アウタチューブ16の先端側において補強体の埋設に伴う可撓性の低下を抑制できるため、アウタチューブ16を屈曲血管へ挿入する際の追従性の低下を抑制できる。
(8)上記実施形態では、アウタチューブ16に編組体62,63を設けたが、インナチューブ21に編組体を設けてもよい。例えば、インナチューブ21の先端側シャフト32において先端側に第1編組体を設け、第1編組体よりも基端側に第2編組体を設けることが考えられる。
(9)アウタチューブ16の内周面及び外周面の少なくとも一方にテフロン(登録商標)等により摩擦低減層を形成してもよい。アウタチューブ16の内周面に摩擦低減層を形成すれば、同チューブ16のアウタ内腔16aにおいてインナチューブ21を摺動させる際の抵抗を低減させることができ、アウタチューブ16の外周面に摩擦低減層を形成すれば、同チューブ16を体内において摺動させる際の抵抗を低減させることができる。また、アウタチューブ16の内周面に摩擦低減層を形成する場合には、摩擦低減層の外周面に編組層の内周面が接するように当該編組層を形成するとともに、その外周側からポリアミド樹脂により編組層を覆う構成とするのが望ましい。
(10)本発明を適用するカテーテルは、ガイドワイヤGの基端側を導出させるポート45が軸線方向の途中位置に設けられたRxタイプのカテーテルに限定されることはなく、当該ポートが基端部に存在するオーバーザワイヤタイプのカテーテルであってもよい。
また、ステント13を搬送するカテーテルに限定されることはなく、他のカテーテルに本発明を適用してもよい。例えば血栓を吸引するための吸引カテーテルに本発明を適用することが考えられる。具体的には、吸引用のルーメンを形成する吸引用チューブにおいて先端部から基端側に向けた所定範囲に第1編組体を設け、第1編組体よりも基端側に第2編組体を設ける。この場合、吸引時に吸引用チューブ内が陰圧になることでチューブ先端の開口がつぶれるのを抑制できるとともに、吸引用チューブの体内への挿入時に同チューブがキンクするのを抑制できる。
また、バルーンカテーテルに本発明を適用してもよい。具体的には、バルーンに圧縮流体を供給する流体用ルーメンを形成する供給用チューブにおいて先端部から基端側に向けた所定範囲に第1編組体を設け、第1編組体よりも基端側に第2編組体を設ける。この場合、バルーンへの圧縮流体供給時に供給用チューブ内が加圧されることでチューブ先端の開口が変形する(広がる)のを抑制できるとともに、供給用チューブの体内への挿入時に同チューブがキンクするのを抑制できる。
(本明細書の開示範囲から抽出される他の発明について)
以下に、本明細書の開示範囲内において課題を解決するための手段欄に記載した発明以外に抽出可能な発明について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
(A−1)樹脂チューブと、
前記樹脂チューブに埋設させて設けられ、補強用線を当該樹脂チューブの軸線周りに周回させながら当該樹脂チューブの軸線方向に延在させることで形成された補強体と、
を備え、
前記補強体は、
前記樹脂チューブの遠位端側から近位側に向けた所定範囲に設けられた第1補強体と、
当該第1補強体よりも近位側に設けられた第2補強体と、
を備え、
前記第1補強体と前記第2補強体とは、前記樹脂チューブの軸線方向において重複していないことを特徴とするカテーテル。
第1補強体を埋設したチューブ部と第2補強体を埋設したチューブ部とを溶着により接合する場合、溶着部分に各補強体が存在すると、その分溶着に必要な樹脂量が不足し、接合強度が低下するおそれがある。その点、本発明では、第1補強体と第2補強体とを樹脂チューブの軸線方向において重複しない構成とすることで、溶着部分に各補強体が共に存在することを回避している。この場合、溶着部分における樹脂量の低下を抑制でき、その結果溶着強度の低下を抑制できる。
なお、本構成を具体的に適用する場合、第1編組体62の補強用線64の傾斜角度αを、第2編組体63の補強用線65の傾斜角度βより小さくしてもよい。この場合、アウタチューブ16における先端側について軸線方向の引張強度を高め、基端側について径方向の引張強度を高めることができる。また、第1編組体62の補強用線64の傾斜角度αを、第2編組体63の補強用線65の傾斜角度βと同一にしてもよい。
(A−1)のより好ましい構成は以下のものである。
(A−2)
前記第1補強体と前記第2補強体とは、前記軸線方向に離間させて設けられており、
前記樹脂チューブにおける前記第1補強体と前記第2補強体との間の領域には補強体が存在していないことを特徴とする(A−1)に記載のカテーテル。
(A−3)
前記樹脂チューブには、軸線方向の途中位置においてチューブ孔を外側に開放させる開口部が形成されており、
その開口部を基準として先端側に前記第1補強体が設けられ、基端側に前記第2補強体が設けられていることを特徴とする(A−1)又は(A−2)に記載のカテーテル。
(A−4)
前記樹脂チューブは、軸線方向の途中位置に外径が変化する部位を有し、その外径が変化する部位を基準として先端側に前記第1補強体が設けられ、基端側に前記第2補強体が設けられていることを特徴とする(A−1)乃至(A−3)のいずれか一に記載のカテーテル。
(A−5)
前記第1補強体と前記第2補強体との境界部分を跨ぐようにして設けられた剛性調整部材を備えることを特徴とする(A−1)乃至(A−4)のいずれか一に記載のカテーテル。
(A−6)
前記第1補強体が埋設された第1樹脂チューブと、前記第2補強体が埋設された第2樹脂チューブとのうちの一方に他方の一部が挿入されてその挿入された箇所が熱溶着又は接着されることで、前記各補強体が埋設された前記樹脂チューブが形成されていることを特徴とする(A−1)乃至(A−5)のいずれか一に記載のカテーテル。