以下に、本発明の発光装置の構造、およびその作製方法について説明する。
図2に発光装置のブロック図の一例を示す。図2の発光装置は、基板上に形成されたTFTによって画素部201、画素部の周辺に配置されたソース信号線駆動回路202、書き込み用ゲート信号線駆動回路(第1のゲート信号線駆動回路)203、消去用ゲート信号線駆動回路(第2のゲート信号線駆動回路)204を有している。なお、本実施の形態で発光装置はソース信号線駆動回路を1つ有しているが、本発明においてソース信号線駆動回路は2つあってもよい。
また本発明において、ソース信号側駆動回路202、書き込み用ゲート信号側駆動回路203または消去用ゲート信号線駆動回路204は、画素部201が設けられている基板上に設けられている構成にしても良いし、ICチップ上に設けてFPCまたはTABを介して画素部201と接続されるような構成にしても良い。
ソース信号線駆動回路202は基本的にシフトレジスタ202a、ラッチ(A)202b、ラッチ(B)202cを有している。
ソース信号線駆動回路202において、シフトレジスタ202aにクロック信号(CLK)およびスタートパルス(SP)が入力される。シフトレジスタ202aは、これらのクロック信号(CLK)およびスタートパルス(SP)に基づきタイミング信号を順に発生させ、バッファ等(図示せず)を通して後段の回路へタイミング信号を順次供給する。
シフトレジスタ202aからのタイミング信号は、バッファ等によって緩衝増幅される。タイミング信号が供給される配線には、多くの回路あるいは素子が接続されているために負荷容量(寄生容量)が大きい。この負荷容量が大きいために生ずるタイミング信号の立ち上がりまたは立ち下がりの”鈍り”を防ぐために、このバッファが設けられる。
バッファによって緩衝増幅されたタイミング信号は、ラッチ(A)202bに供給される。ラッチ(A)202bは、デジタルデータ信号(digital data signals)を処理する複数のステージのラッチを有している。ラッチ(A)202bは、前記タイミング信号が入力されると、時分割階調データ信号発生回路206から供給されるデジタルデータ信号を順次取り込み、保持する。
なお、ラッチ(A)202bにデジタルデータ信号を取り込む際に、ラッチ(A)202bが有する複数のステージのラッチに、順にデジタルデータ信号を入力しても良い。しかし本発明はこの構成に限定されない。
ラッチ(A)202bの全てのステージのラッチにデジタルデータ信号の書き込みが一通り終了するまでの時間を、ライン期間と呼ぶ。すなわち、ラッチ(A)202b中で一番左側のステージのラッチにデジタルデータ信号の書き込みが開始される時点から、一番右側のステージのラッチにデジタルデータ信号の書き込みが終了する時点までの時間間隔がライン期間である。実際には、上記ライン期間に水平帰線期間が加えられた期間をライン期間に含むことがある。
1ライン期間が終了すると、ラッチ(B)202cにラッチシグナル(Latch Signal)が供給される。この瞬間、ラッチ(A)202bに書き込まれ保持されているデジタルデータ信号は、ラッチ(B)202cに一斉に送出され、ラッチ(B)202cの全ステージのラッチに書き込まれ、保持される。
デジタルデータ信号をラッチ(B)202cに送出し終えたラッチ(A)202bには、シフトレジスタ202aからのタイミング信号に基づき、再び時分割階調データ信号発生回路206から供給されるデジタルデータ信号の書き込みが順次行われる。
この2順目の1ライン期間中には、ラッチ(B)202bに書き込まれ、保持されているデジタルデータ信号がソース信号線に入力される。
一方、書き込み用ゲート信号線駆動回路203及び消去用ゲート信号線駆動回路204は、それぞれシフトレジスタ、バッファ(いずれも図示せず)を有している。また場合によっては、書き込み用ゲート信号線駆動回路203及び消去用ゲート信号線駆動回路204が、シフトレジスタ、バッファの他にレベルシフトを有していても良い。
書き込み用ゲート信号線駆動回路203及び消去用ゲート信号線駆動回路204において、シフトレジスタ(図示せず)からのタイミング信号がバッファ(図示せず)に供給され、対応するゲート信号線(走査線とも呼ぶ)に供給される。
ゲート信号線には、1ライン分の画素TFTのゲート電極が接続されており、1ライン分全ての画素TFTを同時にONにしなくてはならないので、バッファは大きな電流を流すことが可能なものが用いられる。
時分割階調データ信号発生回路206においては、アナログまたはデジタルのビデオ信号(画像情報を含む信号)が時分割階調を行うためのデジタルデータ信号(Digital Data Signals)に変換され、ラッチ(A)202bに入力される。またこの時分割階調データ信号発生回路206は、時分割階調表示を行うために必要なタイミングパルス等を発生させる回路でもある。
また、ここでは図示しないが、画素部201には、ソース信号線駆動回路202のラッチ(B)202cに接続されたソース信号線、FPCを介して発光装置の外部の電源に接続された電流供給線、書き込み用ゲート信号線駆動回路203に接続された書き込み用ゲート信号線(第1のゲート信号線)、消去用ゲート信号線駆動回路204に接続された消去用ゲート信号線(第2のゲート信号線)が画素部201に設けられている。
なお、ソース信号線と、電流供給線と、書き込み用ゲート信号線と、消去用ゲート信号線とを備えた領域が画素205である。つまり、画素部201にはマトリクス状に複数の画素205が配列されることになる。
本発明は、以上に説明した構成を有する発光装置において、画素部201に複数の画素205を形成する際に陽極と接触するように導電膜を形成し、陽極の膜抵抗を低抵抗化させる方法に関するものである。なお、図1の領域206には、画素部201が有する複数の画素205が形成されている。なお、本発明の発光素子およびこの作製方法について領域206の拡大図である図3及び図4を用いて説明する。
図3(A)には、領域206の上面図を示し、図3(B)には、図3(A)をP−P’で切断した際の断面図を示す。
図3(A)において、複数の画素が形成されており、その最上部には、陰極となる陰極301が形成されている。点線で示される302は、ソース信号線であり、ソース信号線駆動回路と接続されている。また、点線で示される303は、電流供給線であり、FPCを介して発光装置の外部の電源に接続される。
なお、本発明において陰極と配線は同時に形成することができるため、Al、Ti、W、Al−Si、の他、Al:Li等の合金といった材料を用いて形成され、基板300上に形成された電流制御用TFT304と電気的に接続される。
なお、電流制御用TFTは、各画素にそれぞれ形成されており、電流供給線からの電流を発光素子に供給する役割を果たす。なお、ここでは図示しないが、各画素には、スイッチング用TFTや消去用TFTも形成されている。
また、陰極301間の隙間を埋めるようにバンク305が形成されている。なお、バンク305は、絶縁材料からなる層と導電性材料からなる層との積層構造を有している。
バンク305の作製方法としては、陰極まで形成された基板上に絶縁材料を0.5〜5μmの膜厚に成膜し、次に、金属等の導電性材料を10〜300nm(好ましくは40〜80nm)の膜厚とするのが望ましい。
なお、絶縁材料としては、酸化珪素、窒化珪素および酸化窒化珪素といった珪素を含む無機材料の他、アクリル、ポリイミド、ポリアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)といった有機材料を用いることができる。
なお、絶縁材料の成膜方法としては、無機材料の場合には、蒸着法、CVD法の他スパッタリング法が望ましいが、有機材料の場合には、スピンコート法やインクジェット法などを用いることができる。
また、導電性材料としては、抵抗率(比抵抗ともいう)の低い材料を用いる。
なお、本明細書において抵抗率の低い導電性材料としては、シート抵抗値が0.01〜1Ω/□である材料をいう。具体的には、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、クロム(Cr)、銅(Cu)または銀(Ag)等の材料を用いることができる。なお、導電膜の材料および膜厚は、導電膜の膜抵抗が陽極309の膜抵抗よりも低抵抗となるように適宜選択して用いるとよい。
なお、導電性材料の成膜方法としては、蒸着法若しくはスパッタリング法で形成することが望ましい。
第2の層間絶縁膜306及び導電膜307を成膜したところで、第2の層間絶縁膜306及び導電膜307をエッチングすることにより陰極301に対応する位置に開口部を形成する。
なお、ここでのエッチングには、ICPエッチング法やRIE(反応性イオンエッチング)法といったドライエッチング法やウエットエッチング法を用いることができる。
また、エッチングガスとしては、フッ素系のガスや塩素系のガスの他、Ar、O2、He等のガスを用い、これらのガスを複数混合し、また、これらの流量比を調節することによりエッチングを行う。
そして、開口部を形成するエッチング後に残された第2の絶縁膜306及び導電膜307を本明細書中では、バンク305と呼ぶことにする。
次に、図4(A)および図4(B)で示すように陰極301上に有機化合物層308(308R、308G、308B)を形成する。ここでは、3種類の発光を示す有機化合物層が紙面に向かって縦方向にそれぞれ形成される様子を示している。なお、図4(B)は、図4(A)をP−P’で切断した際の断面図である。
これらの有機化合物層は、電子輸送性の有機化合物、ブロッキング性の有機化合物、発光性の有機化合物、ホスト材料、正孔輸送性の有機化合物および正孔注入性の有機化合物といった公知の有機化合物を自由に組み合わせて用いることができる。
なお、ここでは、3種類の発光を示す有機化合物層が紙面に向かって縦方向にそれぞれ形成される場合について示したが、本発明はこれに限られることはなく、縦方向に異なる有機化合物層を形成することも可能である。
また、有機化合物層308の形成方法としては、蒸着法、インクジェット法、および印刷法等を用いることができる。
有機化合物層308を形成した基板上に発光素子の陽極309を形成する。なお、この時の断面図を図4(C)に示す。
陽極309として、透明導電膜を80〜120nmの膜厚で成膜する。例えば、酸化インジウム・スズ(ITO)膜や酸化インジウムに2〜20[%]の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜などを用いることができる。また、成膜方法としては、蒸着法やスパッタリング法の他イオンプレーティング法により成膜することが可能であるが、有機化合物層を形成した後で陽極を形成することから、蒸着法もしくはイオンプレーティング法を用いるのが望ましい。
本実施例では、同一基板上に画素部と、画素部の周辺に設ける駆動回路のTFT(nチャネル型TFT及びpチャネル型TFT)を同時に作製し、さらに、画素部にはTFTと電気的に接続された発光素子を形成して、素子基板を作製する方法について図5〜図8を用いて説明する。
まず、本実施例ではコーニング社の#7059ガラスや#1737ガラスなどに代表されるバリウムホウケイ酸ガラス、またはアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラスからなる基板600を用いる。なお、基板600としては、透光性を有する基板であれば限定されず、石英基板を用いても良い。また、本実施例の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板を用いてもよい。
次いで、基板600上に酸化珪素膜、窒化珪素膜または酸化窒化珪素膜などの絶縁膜から成る下地膜601を形成する。本実施例では下地膜601として2層構造を用いるが、前記絶縁膜の単層膜または2層以上積層させた構造を用いても良い。下地膜601の一層目としては、プラズマCVD法を用い、SiH4、NH3、及びN2Oを反応ガスとして成膜される酸化窒化珪素膜601aを10〜200nm(好ましくは50〜100nm)形成する。
本実施例では、膜厚50nmの酸化窒化珪素膜601a(組成比Si=32%、O=27%、N=24%、H=17%)を形成した。次いで、下地膜601のニ層目としては、プラズマCVD法を用い、SiH4、及びN2Oを反応ガスとして成膜される酸化窒化珪素膜301bを50〜200nm(好ましくは100〜150nm)の厚さに積層形成する。本実施例では、膜厚100nmの酸化窒化珪素膜301b(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)を形成する。
次いで、下地膜上に半導体層602〜605を形成する。半導体層602〜605は、非晶質構造を有する半導体膜を公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等)により成膜した後、公知の結晶化処理(レーザー結晶化法、熱結晶化法、またはニッケルなどの触媒を用いた熱結晶化法等)を行って得られた結晶質半導体膜を所望の形状にパターニングして形成する。この半導体層602〜605の厚さは25〜80nm(好ましくは30〜60nm)の厚さで形成する。結晶質半導体膜の材料に限定はないが、好ましくは珪素(シリコン)またはシリコンゲルマニウム(SiXGe1-X(X=0.0001〜0.02))合金などで形成すると良い。
本実施例では、プラズマCVD法を用い、55nmの非晶質珪素膜を成膜した後、ニッケルを含む溶液を非晶質珪素膜上に保持させる。この非晶質珪素膜に脱水素化(500℃、1時間)を行った後、熱結晶化(550℃、4時間)を行い、さらに結晶化を改善するためのレーザーアニ―ル処理を行って結晶質珪素膜を形成する。そして、この結晶質珪素膜をフォトリソグラフィ−法によるパターニング処理によって、半導体層602〜605を形成する。
また、半導体層602〜605を形成する前、もしくは、形成した後、TFTのしきい値を制御するために微量な不純物元素(ボロンまたはリン)のドーピングを行ってもよい。
また、レーザー結晶化法で結晶質半導体膜を作製する場合には、パルス発振型または連続発光型のエキシマレーザーやYAGレーザー、YVO4レーザーを用いることができる。これらのレーザーを用いる場合には、レーザー発振器から放射されたレーザー光を光学系で線状に集光し半導体膜に照射する方法を用いると良い。結晶化の条件は実施者が適宣選択するものであるが、エキシマレーザーを用いる場合はパルス発振周波数300Hzとし、レーザーエネルギー密度を100〜400mJ/cm2(代表的には200〜300mJ/cm2)とする。また、YAGレーザーを用いる場合にはその第2高調波を用いパルス発振周波数30〜300Hzとし、レーザーエネルギー密度を300〜600mJ/cm2(代表的には350〜500mJ/cm2)とすると良い。そして幅100〜1000μm、例えば400μmで線状に集光したレーザー光を基板全面に渡って照射し、この時の線状レーザー光の重ね合わせ率(オーバーラップ率)を50〜90%として行えばよい。
次いで、半導体層602〜605を覆うゲート絶縁膜607を形成する。ゲート絶縁膜607はプラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを40〜150nmとして珪素を含む絶縁膜で形成する。本実施例では、プラズマCVD法により110nmの厚さで酸化窒化珪素膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)で形成する。勿論、ゲート絶縁膜は酸化窒化珪素膜に限定されるものでなく、他の珪素を含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。
また、酸化珪素膜を用いる場合には、プラズマCVD法でTEOS(Tetraethyl Ortho silicate)とO2とを混合し、反応圧力40Pa、基板温度300〜400℃とし、高周波(13.56MHz)電力密度0.5〜0.8W/cm2で放電させて形成することができる。このようにして作製される酸化珪素膜は、その後400〜500℃の熱アニールによりゲート絶縁膜として良好な特性を得ることができる。
次いで、図5(A)に示すように、ゲート絶縁膜607上に膜厚20〜100nmの第1の導電膜608と、膜厚100〜400nmの第2の導電膜609とを積層形成する。本実施例では、膜厚30nmのTaN膜からなる第1の導電膜608と、膜厚370nmのW膜からなる第2の導電膜609を積層形成する。
TaN膜はスパッタ法で形成し、Taのターゲットを用い、窒素を含む雰囲気内でスパッタする。また、W膜は、Wのターゲットを用いたスパッタ法で形成する。その他に6フッ化タングステン(WF6)を用いる熱CVD法で形成することもできる。
いずれにしてもゲート電極として使用するためには低抵抗化を図る必要があり、W膜の抵抗率は20μΩcm以下にすることが望ましい。W膜は結晶粒を大きくすることで低抵抗率化を図ることができるが、W膜中に酸素などの不純物元素が多い場合には結晶化が阻害され高抵抗化する。従って、本実施例では、高純度のW(純度99.9999%)のターゲットを用いたスパッタ法で、さらに成膜時に気相中からの不純物の混入がないように十分配慮してW膜を形成することにより、抵抗率9〜20μΩcmを実現することができる。
なお、本実施例では、第1の導電膜608をTaN、第2の導電膜609をWとしたが、特に限定されず、いずれもTa、W、Ti、Mo、Al、Cu、Cr、Ndから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成してもよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素膜に代表される半導体膜を用いてもよい。また、Ag、Pd、Cuからなる合金を用いてもよい。
また、第1の導電膜をタンタル(Ta)膜で形成し、第2の導電膜をW膜とする組み合わせ、第1の導電膜を窒化チタン(TiN)膜で形成し、第2の導電膜をW膜とする組み合わせ、第1の導電膜を窒化タンタル(TaN)膜で形成し、第2の導電膜をAl膜とする組み合わせ、第1の導電膜を窒化タンタル(TaN)膜で形成し、第2の導電膜をCu膜とする組み合わせ、第1の導電膜をW、Mo、もしくはWとMoからなる膜で形成し、第2の導電膜をAlとSi、AlとTi、AlとSc、もしくはAlとNdとからなる膜で形成し、第3の導電膜をTi、TiN、もしくはTiとTiNからなる膜で形成する組み合わせとしてもよい。
次に、図5(B)に示すようにフォトリソグラフィ−法を用いてレジストからなるマスク610〜613を形成し、電極及び配線を形成するための第1のエッチング処理を行う。第1のエッチング処理では第1及び第2のエッチング条件で行う。本実施例では第1のエッチング条件として、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を25/25/10(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを行う。ここでは、松下電器産業(株)製のICPを用いたドライエッチング装置(Model E645−□ICP)を用いる。基板側(試料ステージ)にも150WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。
この第1のエッチング条件によりW膜をエッチングして第1の導電層の端部をテーパー形状とする。第1のエッチング条件でのWに対するエッチング速度は200.39nm/min、TaNに対するエッチング速度は80.32nm/minであり、TaNに対するWの選択比は約2.5である。また、この第1のエッチング条件によって、Wのテーパー角は、約26°となる。
この後、図5(B)に示すようにレジストからなるマスク610〜613を除去せずに第2のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30/30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約30秒程度のエッチングを行う。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。CF4とCl2を混合した第2のエッチング条件ではW膜及びTaN膜とも同程度にエッチングされる。
第2のエッチング条件でのWに対するエッチング速度は58.97nm/min、TaNに対するエッチング速度は66.43nm/minである。なお、ゲート絶縁膜上に残渣を残すことなくエッチングするためには、10〜20%程度の割合でエッチング時間を増加させると良い。
上記第1のエッチング処理では、レジストからなるマスクの形状を適したものとすることにより、基板側に印加するバイアス電圧の効果により第1の導電層及び第2の導電層の端部がテーパー形状となる。このテーパー部の角度は15〜45°とすればよい。こうして、第1のエッチング処理により第1の導電層と第2の導電層から成る第1の形状の導電層615〜618(第1の導電層615a〜618aと第2の導電層615b〜618b)を形成する。620はゲート絶縁膜であり、第1の形状の導電層615〜618で覆われない領域は20〜50nm程度エッチングされ薄くなった領域が形成される。
そして、レジストからなるマスクを除去せずに第1のドーピング処理を行い、半導体層にn型を付与する不純物元素を添加する。(図5(B))ドーピング処理はイオンドープ法、若しくはイオン注入法で行えば良い。イオンドープ法の条件はドーズ量を1×1013〜5×1015atoms/cm2とし、加速電圧を60〜100keVとして行う。本実施例ではドーズ量を1.5×1015atoms/cm2とし、加速電圧を80keVとして行う。
n型を付与する不純物元素として15族に属する元素、典型的にはリン(P)
または砒素(As)を用いるが、ここではリン(P)を用いる。この場合、導電層615〜618がn型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、自己整合的に高濃度不純物領域621〜624が形成される。高濃度不純物領域621〜624には1×1020〜1×1021atoms/cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加する。
次いで、図5(C)に示すようにレジストからなるマスクを除去せずに第2のエッチング処理を行う。第2のエッチング処理では第3及び第4のエッチング条件で行う。ここでは、第3のエッチング条件として、エッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30/30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約60秒程度のエッチングを行う。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。CF4とCl2を混合した第3のエッチング条件ではW膜及びTaN膜とも同程度にエッチングされる。
第3のエッチング条件でのWに対するエッチング速度は58.97nm/min、TaNに対するエッチング速度は66.43nm/minである。なお、ゲート絶縁膜上に残渣を残すことなくエッチングするためには、10〜20%程度の割合でエッチング時間を増加させると良い。
この後、図5(C)に示すようにレジストからなるマスク610〜613を除去せずに第4のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を20/20/20(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して、約20秒程度のエッチングを行う。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。
第4のエッチング処理でのTaNに対するエッチング速度は14.83nm/minである。従って、W膜が選択的にエッチングされる。この第4のエッチング処理により第2の導電層626〜629(第1の導電層626a〜629aと第2の導電層626b〜629b)を形成する。
次いで、図6(A)に示すように第2のドーピング処理を行う。ドーピングは第2の導電層626b〜629bを不純物元素に対するマスクとして用い、第1の導電層におけるテーパー部下方の半導体層に不純物元素が添加されるようにドーピングする。本実施例では、不純物元素としてP(リン)を用い、ドーズ量1.5×1014、電流密度0.5μA、加速電圧90keVにてプラズマドーピングを行う。
こうして、第1の導電層と重なる低濃度不純物領域631a〜634a、第1の導電層と重ならない低濃度不純物領域631b〜634bを自己整合的に形成する。なお、この低濃度不純物領域631〜634へ添加されるリン(P)の濃度は、1×1017〜5×1018atoms/cm3である。また、高濃度不純物領域621〜624にも不純物元素が添加され、高濃度不純物領域635〜638を形成する。
次いで、図6(B)に示すようにレジスト(639、640)からなるマスクを形成して第3のドーピング処理を行う。この第3のドーピング処理により、pチャネル型TFTの活性層となる半導体層に前記一導電型(n型)とは逆の導電型(p型)を付与する不純物元素が添加された不純物領域641、642を形成する。第1の導電層627a、および第2の導電層627bを不純物元素に対するマスクとして用い、p型を付与する不純物元素を添加して自己整合的に不純物領域を形成する。
本実施例では、不純物領域641、642はジボラン(B2H6)を用いたイオンドープ法で形成する。第1のドーピング処理及び第2のドーピング処理によって、不純物領域641、642にはそれぞれ異なる濃度でリンが添加されているが、そのいずれの領域においてもp型を付与する不純物元素の濃度が2×1020〜2×1021atoms/cm3となるようにドーピング処理することにより、pチャネル型TFTのソース領域およびドレイン領域として機能するために何ら問題は生じない。
次いで、レジストからなるマスク639、640を除去して図6(C)に示すように第1の層間絶縁膜643を形成する。本実施例では、第1の層間絶縁膜643として、珪素を含む第1の絶縁膜643aと有機絶縁材料からなる第2の絶縁膜643bとの積層膜を形成する。
まず、珪素を含む第1の絶縁膜643aとしては、プラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを100〜200nmとして珪素を含む絶縁膜で形成する。本実施例では、プラズマCVD法により膜厚50nmの酸化窒化珪素膜と膜厚100nmの窒化珪素膜の積層膜を形成する。勿論、第1の絶縁膜643aは上述した積層膜に限定されるものでなく、他の珪素を含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。
次いで、それぞれの半導体層に添加された不純物元素を活性化処理する工程を行う。この活性化工程はファーネスアニール炉を用いる熱アニール法で行う。熱アニール法としては、酸素濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下の窒素雰囲気中で400〜700℃、代表的には500〜550℃で行えばよく、本実施例では550℃、4時間の熱処理で活性化処理を行った。なお、熱アニール法の他に、レーザーアニール法、またはラピッドサーマルアニール法(RTA法)を適用することができる。
なお、本実施例では、上記活性化処理と同時に、結晶化の際に触媒として使用したニッケルが高濃度のリンを含む不純物領域(635、637、638)にゲッタリングされ、主にチャネル形成領域となる半導体層中のニッケル濃度が低減される。このようにして作製したチャネル形成領域を有するTFTはオフ電流値が下がり、結晶性が良いことから高い電界効果移動度が得られ、良好な特性を達成することができる。
また、第1の絶縁膜を形成する前に活性化処理を行っても良い。ただし、用いた配線材料が熱に弱い場合には、本実施例のように配線等を保護するため層間絶縁膜(シリコンを主成分とする絶縁膜、例えば窒化珪素膜)を形成した後で活性化処理を行うことが好ましい。
その他、活性化処理を行った後でドーピング処理を行い、第1の絶縁膜を形成させても良い。
さらに、3〜100%の水素を含む雰囲気中で、300〜550℃で1〜12時間の熱処理を行い、半導体層を水素化する工程を行う。本実施例では水素を約3%の含む窒素雰囲気中で410℃、1時間の熱処理を行った。この工程は層間絶縁膜に含まれる水素により半導体層のダングリングボンドを終端する工程である。水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行っても良い。
また、活性化処理としてレーザーアニール法を用いる場合には、上記水素化を行った後、エキシマレーザーやYAGレーザー等のレーザー光を照射することが望ましい。
次いで、第1の絶縁膜643a上に有機絶縁材料から成る第2の絶縁膜643bを形成する。本実施例では膜厚1.0μmのアクリル樹脂膜を形成する。
第2の絶縁膜643bとしては、有機絶縁材料としては、ポリイミド、ポリアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)などの有機樹脂を用いることができる。
以上により、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜からなる第1の層間絶縁膜を形成することができる。
次いで、各不純物領域635、636、637、638に達するコンタクトホールを形成するためのパターニングを行う。
本実施例では、第1の絶縁膜としてプラズマCVD法により珪素を含む絶縁膜を形成し、第2の絶縁膜としてアクリルからなる絶縁膜を形成していることから、コンタクトホールの形成には、ドライエッチングまたはウエットエッチングを用いることができるが、本実施例では、RIE装置を用いた、ドライエッチングを行う。
はじめに、第2の絶縁膜のエッチングを行う。この時、エッチングガス用にCF4とO2とHeとを用い、それぞれのガス流量比を5/95/40(sccm)
とし、66.5Paの圧力で電極に500WのRF電力を投入する。
次に第1の絶縁膜のエッチングを行う。この時には、第1の絶縁膜の時と同様のエッチングガスを用い、それぞれのガスの流量比を60/40/35(sccm)に変えて、66.5Paの圧力で電極に400WのRF電力を投入することによりエッチングを行う。
そして、各高濃度不純物領域635、636、637、638とそれぞれ電気的に接続する配線640〜646と陰極649を形成する。本実施例では、Alを用い、500nmの膜厚に成膜した後、これをパターニングして形成するが、TiやAl:Siの他、Al:Liなどの合金、またはこれらの積層膜を導電膜として用いても良い。
なお、本実施例では、陰極649を陰極として形成することから、高濃度不純物領域638との配線を兼ねて形成される。しかし、本発明は、これに限られることはなく、配線と陰極を異なる材料で別々に形成しても良い。
次に、図7(B)に示すように、第2の層間絶縁膜650を1μmの厚さに成膜し、さらに導電性の材料からなる導電膜651を10〜10nm(好ましくは10〜50nm)の厚さに成膜する。
なお、本実施例においては、第2の層間絶縁膜として酸化珪素からなる膜を用いているが、場合によっては、窒化珪素および酸化窒化珪素といった珪素を含む絶縁膜の他、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、BCB(ベンゾシクロブテン)といった有機樹脂膜を用いることもできる。
また、導電膜651を形成する材料としては、抵抗率(比抵抗ともいう)の低い金属材料を用いることが望ましい。なお、本明細書において抵抗率の低い導電性材料としては、シート抵抗値が0.01〜1Ω/□である材料をいう。具体的には、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、クロム(Cr)、銅(Cu)または銀(Ag)等を用いることが可能であり、蒸着法若しくはスパッタリング法で形成することが望ましい。
第2の層間絶縁膜650及び導電膜651を成膜したところで、第3のエッチング処理を行うことにより陰極649に対応する位置に開口部を形成して、第2の層間絶縁膜652a及び導電膜652bからなるバンク652を形成する(図8(A))。
はじめにフォトリソグラフィ−法を用いてレジストからなるマスクを形成し、バンクを形成するための第3のエッチング処理を行う。第3のエッチング処理においてもICPエッチング法を用い、第5及び第6のエッチング条件で行う。
本実施例では第5のエッチング条件として、エッチング用ガスにCl2とBCl3とを用い、それぞれのガス流量比を40/40(sccm)とし、1.2Paの圧力でコイル型の電極に450WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを行い、基板側(試料ステージ)にも100WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。
この第5のエッチング条件により導電膜であるAl膜の一部をエッチングすることができる。
この後、第6のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCHF3とArとを用い、それぞれのガス流量比を30/30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約30秒程度のエッチングを行う。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。これにより第2の層間絶縁膜の一部がエッチングされる。
以上により、図8(A)に示すように第2の層間絶縁膜652a及び導電膜652bからなるバンク652が形成される。
次に、図8(B)で示すように陰極649上に有機化合物層654を蒸着法により形成する。ここでは、本実施例において赤、緑、青の3種類の発光を示す有機化合物により形成される有機化合物層のうちの一種類が形成される様子を示すが、3種類の有機化合物層を形成する有機化合物の組み合わせについて、以下に詳細に説明する。
はじめに、赤色発光を示す有機化合物層を形成する。本実施例における赤色発光の有機化合物層は、電子輸送性の有機化合物、ブロッキング性の有機化合物、発光性の有機化合物、ホスト材料、正孔輸送性の有機化合物および正孔注入性の有機化合物から形成される。
具体的には、電子輸送性の有機化合物である、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、Alq3と示す)を25nmの膜厚に成膜し、ブロッキング性の有機化合物である、バソキュプロイン(以下、BCPと示す)を8nmの膜厚に成膜し、発光性の有機化合物である、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H、23H−ポルフィリン−白金(以下、PtOEPと示す)をホストとなる有機化合物(以下、ホスト材料という)である4,4’−ジカルバゾール−ビフェニル(以下、CBPと示す)と共に共蒸着させて25〜40nmの膜厚に成膜し、正孔輸送性の有機化合物である、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(以下、α−NPDと示す)を40nmの膜厚に成膜し、正孔注入性の有機化合物である、銅フタロシアニン(以下、Cu−Pcと示す)を15nmの膜厚に成膜することにより赤色発光の有機化合物層を形成することができる。
なお、ここでは赤色発光の有機化合物層として、6種類の機能の異なる有機化合物を用いて形成する場合について説明したが、本発明はこれに限られることはなく、赤色発光を示す有機化合物として公知の材料を用いることができる。
次に、緑色発光を示す有機化合物層を形成する。本実施例における緑色発光の有機化合物層は、電子輸送性の有機化合物、ブロッキング性の有機化合物、発光性の有機化合物、ホスト材料、正孔輸送性の有機化合物および正孔注入性の有機化合物から形成される。
具体的には、電子輸送性の有機化合物である、Alq3を40nmの膜厚で成膜し、ブロッキング性の有機化合物である、BCPを10nmの膜厚で成膜し、正孔輸送性のホスト材料としてCBPを用い、発光性の有機化合物であるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)と共に共蒸着することにより5〜40nmの膜厚で成膜し、正孔輸送性の有機化合物である、α−NPDを10nmの膜厚で成膜し、正孔輸送性の有機化合物である、MTDATAを20nmの膜厚で成膜し、正孔注入性の有機化合物である、Cu−Pcを10nmの膜厚で成膜することにより緑色発光の有機化合物を形成することができる。
なお、ここでは緑色発光の有機化合物層として、7種類の機能の異なる有機化合物を用いて形成する場合について説明したが、本発明はこれに限られることはなく、緑色発光を示す有機化合物として公知の材料を用いることができる。
次に、青色発光を示す有機化合物層を形成する。本実施例における青色発光の有機化合物層は、電子輸送性の有機化合物、ブロッキング性の有機化合物、発光性の有機化合物、および正孔注入性の有機化合物から形成される。
具体的には、電子輸送性の有機化合物である、Alq3を40nmの膜厚で成膜し、ブロッキング性の有機化合物である、BCPを10nmの膜厚に成膜し、発光性の有機化合物である、α−NPDを40nmの膜厚で成膜し、正孔注入性の有機化合物である、Cu−Pcを20nmの膜厚に成膜することにより青色発光の有機化合物層を形成することができる。
なお、ここでは青色発光の有機化合物層として、4種類の機能の異なる有機化合物を用いて形成する場合について説明したが、本発明はこれに限られることはなく、青色発光を示す有機化合物として公知の材料を用いることができる。
以上に示した有機化合物を陰極上に形成することにより画素部において、赤色発光、緑色発光及び青色発光を示す有機化合物層を形成することができる。
次に、有機化合物層654及びバンク652を覆って、透明導電膜からなる陽極655を形成する。本実施例では、透明電極として酸化インジウム・スズ(ITO)膜や酸化インジウムに2〜20[%]の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を80〜120nmの膜厚に成膜して用いる。なお、本実施例では発光素子の陽極655として透明性の導電膜であれば、公知の他の材料を用いることができる。
なお、ITO膜は、蒸着法を用いて形成することができる。本実施例では特にイオンプレーティング法を用いて形成する場合について説明する。
イオンプレーティング法は、蒸着法に分類される気相表面処理技術の1つであり、何らかの方法で蒸発させた蒸着物質を、高周波プラズマあるいは真空放電でイオン化または励起させ、蒸着させる基板に負電位を与えることで該イオンを加速し、基板に付着させる方法である。
イオンプレーティング法を用いて陽極を形成する際の具体的な条件として、0.01〜1Paの不活性ガス雰囲気下において、基板温度を100〜300℃に保って蒸着させることが望ましい。そして70%以上の焼結密度を有する蒸発源としてのITOを用いることが望ましい。なお、イオンプレーティング法を用いる際の最適な条件は、実施者が適宜選択することができる。
また高周波プラズマを用いて蒸着物質をイオン化または励起することで、より蒸着物質のイオン化する率または励起する率を高めることができ、なおかつイオン化または励起された蒸着物質が高いエネルギー状態にあるので、速い蒸発速度を有したままで酸素との結合を十分に行うことができる。このため、高速度で良質な膜の形成が可能である。
なお本実施例の陽極655の形成方法は、上述したイオンプレーティング法に限定されない。ただし、イオンプレーティング法を用いて形成された膜は密着性が高く、また比較的低い温度でも結晶性の高いITO膜を成膜することができるので、ITOの抵抗を低くすることができ、さらに比較的広い面積における均一な成膜が可能であり、基板の大型化に適しているといえる。
こうして図8(B)に示すように、電流制御用TFT704に電気的に接続された陰極649と、陰極間の隙間に形成されたバンク652と、バンク652及び陰極649上に形成された有機化合物層654と、有機化合物層654とバンク652上に形成された陽極からなる発光装置の素子基板を形成することができる。なお、本実施例における発光装置の作製工程においては、回路の構成および工程の関係上、ゲート電極を形成している材料を用いてソース信号線を形成し、ソース、ドレイン電極を形成している配線材料を用いてゲート信号線を形成しているが、それぞれ異なる材料を用いることは可能である。
また、nチャネル型TFT701及びpチャネル型TFT702を有する駆動回路705と、スイッチング用TFT703、電流制御用TFT704とを有する画素部706を同一基板上に形成することができる。
駆動回路705のnチャネル型TFT701はチャネル形成領域501、ゲート電極の一部を構成する第1の導電層626aと重なる低濃度不純物領域631(GOLD領域)とソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域635を有している。pチャネル型TFT702にはチャネル形成領域502、ソース領域またはドレイン領域として機能する不純物領域641および642を有している。
画素部706のスイッチング用TFT703にはチャネル形成領域503、ゲート電極を形成する第1の導電層628aと重なる低濃度不純物領域633a(LDD領域)、第1の導電層628aと重ならない低濃度不純物領域633b(LDD領域)及びソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域637を有している。
画素部706の電流制御用TFT704にはチャネル形成領域504、ゲート電極を形成する第1の導電層629aと重なる低濃度不純物領域634a(LDD領域)、第1の導電層628aと重ならない低濃度不純物領域634b(LDD領域)及びソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域638を有している。
なお、本実施例では、消去用TFTについて図示しないが、電流制御用TFTと同様に形成され、同様の構造を有している。
なお、本実施例において、TFTの駆動電圧は、1.2〜10Vであり、好ましくは、2.5〜5.5Vである。
また、画素部の表示が動作しているとき(動画表示の場合)には、発光素子が発光している画素により背景の表示を行い、発光素子が非発光となる画素により文字表示を行えばよいが、画素部の動画表示がある一定期間以上静止している場合(本明細書中では、スタンバイ時と呼ぶ)には、電力を節約するために、表示方法が切り替わる(反転する)ようにしておくと良い。具体的には、発光素子が発光している画素により文字を表示し(文字表示ともいう)、発光素子が非発光となる画素により背景を表示(背景表示ともいう)するようにする。
以上のようにして、基板(素子基板)上に発光素子が形成された素子基板の上面図を図9に示す。
基板600に、画素部706、ゲート信号線駆動回路901、ソース信号線駆動回路902、端子903が形成された状態を示している。端子903と各駆動回路、画素部に形成されている電流供給線及び陽極は、引き回し配線904で接続されている。
また、必要に応じてCPU、メモリーなどを形成したICチップがCOG(Chip on Glass)法などにより素子基板に実装されていても良い。
なお、発光素子656は、第2の層間絶縁膜650及び導電膜651からなるバンク652の間に形成される。まず、陰極649が形成され、その上には有機化合物層654が形成される。そして、複数の有機化合物層654及びバンク652上を覆うように、画素部全体に陽極655が形成される。なお、この時、陽極655は、導電膜653と接するように形成される。
引き回し配線904はゲート信号線(図示せず)と同じ層に形成されており、導電膜653とは直接接触していない。そして引き回し配線904と陽極655は、引き回し配線904上に陽極655が重ねて形成される部分においてコンタクトを取っている。
次に、図9に示した素子基板を発光装置として完成させる方法について図10を用いて説明する。
図10(A)は、発光装置を示す上面図、図10(B)は図10(A)をA−A’で切断した断面図である。点線で示された1001はソース信号線駆動回路、1002は画素部、1003はゲート信号線駆動回路である。また、1004はカバー材、1005はシール剤であり、シール剤1005で囲まれた内側は、空間になっている。
なお、1008はソース信号線駆動回路1001及びゲート信号線駆動回路1003に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)1009からビデオ信号やクロック信号を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
次に、断面構造について図10(B)を用いて説明する。基板1010の上方には画素部1002、ソース信号線駆動回路1001が形成されており、画素部1002は電流制御用TFT1011とそのドレインに電気的に接続された陰極1012を含む複数の画素により形成される。また、ソース信号線駆動回路1001はnチャネル型TFT1013とpチャネル型TFT1014とを組み合わせたCMOS回路(図8参照)を用いて形成される。
陰極1012は発光素子の陰極として機能する。また、陰極1012の両端にはバンク1015が形成され、陰極1012上には有機化合物層1016が形成される。なお、本発明において、バンク1015は、絶縁膜1015aと導電膜1015bとの積層により形成されている。さらに、バンク1015と有機化合物層1016上には発光素子の陽極1017が形成される。
陽極1017は全画素に共通の配線としても機能し、配線1008を経由してFPC1009に電気的に接続されている。
また、シール剤1005によりカバー材1004が貼り合わされている。なお、カバー材1004と発光素子との間隔を確保するために樹脂膜からなるスペーサを設けても良い。そして、シール剤1005の内側の空間1007には窒素等の不活性気体が充填されている。なお、シール剤1005としてはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、シール剤1005はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。さらに、空間1007の内部に吸湿効果をもつ物質や酸化を防止する効果をもつ物質を含有させても良い。
また、本実施例ではカバー材1004を構成する材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass-Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
また、シール剤1005を用いてカバー材1004を接着した後、さらに側面(露呈面)を覆うようにシール剤で封止することも可能である。
以上のようにして発光素子を空間1007に封入することにより、発光素子を外部から完全に遮断することができ、外部から水分や酸素といった有機化合物層の劣化を促す物質が侵入することを防ぐことができる。従って、信頼性の高い発光装置を得ることができる。
なお、本実施例の構成は、実施例1のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
ここで画素の詳細な上面構造を図11(A)に、回路図を図11(B)に示す。図11において、基板上に設けられたスイッチング用TFT1100は図8のスイッチング用(nチャネル型)TFT701を用いて形成される。従って、構造の説明はスイッチング用(nチャネル型)TFT701の説明を参照すれば良い。また、1102で示される配線は、スイッチング用TFT1100のゲート電極1101(1101a、1101b)を電気的に接続するゲート配線である。
なお、本実施例ではチャネル形成領域が二つ形成されるダブルゲート構造としているが、チャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造もしくは三つ形成されるトリプルゲート構造であっても良い。
また、スイッチング用TFT1100のソースはソース配線1103に接続され、ドレインはドレイン配線1104に接続される。また、ドレイン配線1104は電流制御用TFT1105のゲート電極1106に電気的に接続される。なお、電流制御用TFT1105は図8の電流制御用(nチャネル型)TFT704を用いて形成される。従って、構造の説明は電流制御用(nチャネル型)TFT704の説明を参照すれば良い。なお、本実施例ではシングルゲート構造としているが、ダブルゲート構造もしくはトリプルゲート構造であっても良い。
また、電流制御用TFT1105のソースは電流供給線1107に電気的に接続され、ドレインはドレイン配線1108に電気的に接続される。また、ドレイン配線1108は点線で示される陰極1109に電気的に接続される。
また、1110で示される配線は、消去用TFT1111のゲート電極1112と電気的に接続するゲート配線である。なお、消去用TFT1111のソースは、電流供給線1107に電気的に接続され、ドレインはドレイン配線1104に電気的に接続される。
なお、消去用TFT1111は図8の電流制御用(nチャネル型)TFT704と同様にして形成される。従って、構造の説明は電流制御用(nチャネル型)
TFT704の説明を参照すれば良い。なお、本実施例ではシングルゲート構造としているが、ダブルゲート構造もしくはトリプルゲート構造であっても良い。
また、1113で示される領域には保持容量(コンデンサ)が形成される。コンデンサ1113は、電流供給線1107と電気的に接続された半導体膜1114、ゲート絶縁膜と同一層の絶縁膜(図示せず)及びゲート電極1106との間で形成される。また、ゲート電極1106、第1層間絶縁膜と同一の層(図示せず)及び電流供給線1107で形成される容量も保持容量として用いることが可能である。
なお、図11(B)の回路図で示す発光素子1115は、陰極1109と、陰極1109上に形成される有機化合物層(図示せず)と有機化合物層上に形成される陽極(図示せず)からなる。本発明において、陰極1109は、電流制御用TFT1105のソース領域またはドレイン領域と接続している。
発光素子1115の陽極には対向電位が与えられている。また電流供給線Vは電源電位が与えられている。そして対向電位と電源電位の電位差は、電源電位が陰極に与えられたときに発光素子が発光する程度の電位差に常に保たれている。
電源電位と対向電位は、本発明の発光装置に、外付けのIC等により設けられた電源によって与えられる。なお対向電位を与える電源を、本明細書では特に対向電源1116と呼ぶ。
なお、本実施例の構成は、実施例1及び実施例2のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
本実施例では、実施例1で示したのとは異なる構造の発光素子を作製する方法について図12、図13を用いて説明する。なお、実施例1の図7(A)における陰極649の作製までは同様の工程なので省略する。
図12(A)に示すように、陰極649上にアクリルからなる第2の層間絶縁膜1201を1μmの厚さに成膜する。
なお、本実施例においては、第2の層間絶縁膜1201としてアクリルを用いているが、場合によっては、ポリイミド、ポリアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)といった有機樹脂の他、酸化珪素、窒化珪素および酸化窒化珪素といった珪素を含む無機材料を用いることもできる。
第2の層間絶縁膜1201を成膜したところで、これをエッチングすることにより陰極649に対応する位置に開口部を形成する。
なお、ここでのエッチングには、ICPエッチング法やRIE(反応性イオンエッチング)法といったドライエッチング法やウエットエッチング法を用いることができるが、本実施例では、RIE装置を用いた、ドライエッチングを行う。
エッチングガスとしてCF4とO2とHeとを用い、それぞれのガス流量比を5/95/40(sccm)とし、66.5Paの圧力で電極に500WのRF電力を投入する。これにより、陰極上に形成された第2層間絶縁膜をエッチングすることができ、バンク1203を形成することができる。
次に、第2層間絶縁膜の開口部に蒸着法を用いて、有機化合物層1202形成する。なお、本実施例では、赤、緑、青の3種類の発光を示す有機化合物により形成される有機化合物層を形成することからメタルマスクを用いて異なる有機化合物層毎に成膜を行う。なお、図12(B)には、3種類の有機化合物層のうち1種類が形成される様子を示すが、3種類の有機化合物層が形成されている。なお、本実施例において形成される有機化合物層は、実施例1において説明した有機化合物を用いることができる。
次に、図13(A)に示すように画素部の第2の層間絶縁膜上及び有機化合物層の一部を覆うように導電膜1204が形成される。
導電膜1204を形成する金属材料としては、抵抗率(比抵抗ともいう)の低い金属材料を用いることが望ましい。なお、本明細書において抵抗率の低い導電性材料としては、シート抵抗値が0.01〜1Ω/□である材料をいう。具体的には、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、クロム(Cr)、銅(Cu)または銀(Ag)等を用いることが可能である。
また、導電膜1204は、陰極649と有機化合物層が積層されている部分に形成されることがないようにメタルマスクを用いて蒸着法、もしくはスパッタリング法で形成することが望ましい。なお、膜厚は30〜100nm(好ましくは40〜80nm)とすれば良い。
さらに、導電膜1204が形成されたところで、蒸着法により陽極1205を形成する。なお、その他の陽極の形成方法としては、イオンプレーティング法やスパッタリング法を用いることができる。また、陽極1205としては、透明導電膜を80〜120nmの膜厚で成膜する。
なお、本実施例では、陽極1205として酸化インジウム・スズ(ITO)膜や酸化インジウムに2〜20[%]の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いる。なお、本実施例では発光素子の陽極1205として透明性の導電膜であれば、公知の他の材料を用いることができる。
以上のようにして、本発明の発光装置を形成することができる。なお、本実施例の発光装置は、実施例2による封止構造とすることができ、実施例3で示す回路構成で実施することが可能である。
発光素子を用いた発光装置は自発光型であるため、液晶表示装置に比べ、明るい場所での視認性に優れ、視野角が広い。従って、様々な電気器具の表示部に用いることができる。
本発明により作製した発光装置を用いた電気器具として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。特に、斜め方向から画面を見る機会が多い携帯情報端末は、視野角の広さが重要視されるため、発光素子を有する発光装置を用いることが好ましい。それら電気器具の具体例を図14に示す。
図14(A)は表示装置であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。本発明により作製した発光装置は、表示部2003に用いることができる。発光素子を有する発光装置は自発光型であるためバックライトが必要なく、液晶表示装置よりも薄い表示部とすることができる。なお、表示装置は、パソコン用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図14(B)はデジタルスチルカメラであり、本体2101、表示部2102、受像部2103、操作キー2104、外部接続ポート2105、シャッター2106等を含む。本発明により作製した発光装置は表示部2102に用いることができる。
図14(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。本発明により作製した発光装置は表示部2203に用いることができる。
図14(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明により作製した発光装置は表示部2302に用いることができる。
図14(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示するが、本発明により作製した発光装置はこれら表示部A、B2403、2404に用いることができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
図14(F)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。本発明により作製した発光装置は表示部2502に用いることができる。
図14G)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609等を含む。本発明により作製した発光装置は表示部2602に用いることができる。
ここで図14(H)は携帯電話であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。本発明により作製した発光装置は、表示部2703に用いることができる。なお、表示部2703は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
なお、将来的に有機材料の発光輝度が高くなれば、出力した画像情報を含む光をレンズ等で拡大投影してフロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能となる。
また、上記電気器具はインターネットやCATV(ケーブルテレビ)などの電子通信回線を通じて配信された情報を表示することが多くなり、特に動画情報を表示する機会が増してきている。有機材料の応答速度は非常に高いため、発光装置は動画表示に好ましい。
また、発光装置は発光している部分が電力を消費するため、発光部分が極力少なくなるように情報を表示することが好ましい。従って、携帯情報端末、特に携帯電話や音響再生装置のような文字情報を主とする表示部に発光装置を用いる場合には、非発光部分を背景として文字情報を発光部分で形成するように駆動することが好ましい。
以上の様に、本発明により作製された発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電気器具に用いることが可能である。また、本実施例の電気器具は実施例1〜実施例4において作製された発光装置をその表示部に用いることができる。