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JP5589184B2 - 新規シチジンデアミナーゼ - Google Patents

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Description

本発明は、シチジンデアミナーゼ活性を有する新規タンパク及びその断片、該タンパクをコードするDNA及びその断片(cDNA、ゲノミックDNA、及びプライマーDNA)、該DNAを含む発現ベクター、該発現ベクターで形質転換された形質転換細胞、該タンパク若しくはその断片に反応性を有する抗体、該抗体を産生する細胞、並びに該タンパクの産生、該タンパクをコードする遺伝子のmRNAへの転写、若しくは該タンパクの酵素活性を調節する物質を同定する方法に関する。
哺乳動物の胚中心(germinal center)は、抗原特異的記憶B細胞(antigen specific memory cell)や長命形質細胞(long-lived plasma cell)への成熟の最終過程に必要な極めて特殊化した微小環境を構成する(Embo J., Vol.16, No.11, p.2996-3006, 199; Semin. Immunol., Vol.4, No.1, p.11-17, 1992)。この微小環境では、免疫グロブリンの遺伝子情報の2つの主要な編集が起こることが知られている(J. Exp. Med., Vol.173, No.5, p.1165-1175, 1991; Embo. J., Vol.12, No.13, p.4955-4967, 1993; Adv. Exp. Med. Biol., Vol.186, p.145-151, 1985; Nature, Vol.342, No.6252, p.929-931, 1989; Cell, Vol.67, No.6, p.1121-1129)。
一つは、体細胞超変異(somatic hypermutation)(Curr. Opin. Immunol., Vol.7, No.2, p.248-254, 1995; Annu. Rev. Immunol., Vol.14, p.441-457, 1996; Science, Vol.244, No.4909, p.1152-1157, 1989)で免疫グロブリンの可変領域をコードするエクソン遺伝子に、広範囲に点変異(point mutation)が起こる現象である。この点変異の蓄積により、細胞表面上に高親和性の免疫グロブリンを発現するB細胞の選別並びにそれに伴う抗体の親和性成熟(affinity maturation)が生じる(Embo. J., Vol.4, No.2, p.345-350, 1985; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.85, No.21, p.8206-8210, 1988)。その結果、免疫グロブリン遺伝子は、新たな機能的遺伝子として編集される。
もう一つは、クラススイッチ組換え(class switch recombination; CSR)である。この組換えは、免疫グロブリンの重鎖定常領域をコードするエクソンを取り替えることにより、補体結合(complement fixation)のような抗体のエフェクター機能を選択するものである(Curr. Top. Microbiol. Immunol., Vol.217, p.151-169, 1996; Annu. Rev. Immunol., Vol.8, p.717-735, 1990)。
これら2つのタイプの遺伝子編集(genetic editing)は、有害な微生物を除去するための有効な液性免疫応答にとって極めて重要である。これらの遺伝子的事象の分子メカニズムは、数十年にわたる精力的な研究にも拘らず未だ解明されていない。
本発明者らは、免疫グロブリンのクラススイッチの分子メカニズムを解明するための研究ツールとしてマウスB細胞クローンCH12F3-2を単離した。このB細胞株では、IL-4、TGF-β及びCD40Lによる刺激の数時間後にIgMからIgAへのクラススイッチ組換え(CSR)が始まり、最終的に80%以上の細胞がIgA陽性に至る(Immunity, Vol.9, p.1-10, 1998; Curr. Biol., Vol.8, No.4, p.227-230, 1998; Int. Immunol., Vol.8, No.2, p.193-201, 1996)。
このマウスB細胞クローンCH12F3-2を用いて、本発明者らはさらにクラススイッチ組換えの切断点(breakpoint)が、スイッチ領域(switch region; S region)と称される特徴的な反復配列にだけでなく、その隣接配列中にも分布することを報告してきた(Curr. Biol., Vol.8, No.4, p.227-230, 1998)。しかしながら、該切断点は、スイッチ領域の上流にあるIエクソン及び下流にあるCエクソン中には、希であった。また、これまでに蓄積された科学的証拠により、Iエクソン及びCエクソンの転写並びに該転写物のスプライシングがクラススイッチ組換えに必須であるということが示されている(Cell, Vol.73, No.6, p.1155-1164, 1993; Science, Vol.259, No.5097, p.984-987, 1993; Proc. Natl. Acad. Sci, USA, Vol.90, No.8, p.3705-3709, 1993; Cell, Vol.81, No.6, p.833-836, 1995)。
これは即ち、クラススイッチ組換えにおいて該転写物が直接的または間接的に関与していることを示唆するものである。このことから本発明者らは、クラススイッチは、スイッチ領域の塩基配列が認識されるのではなく、DNAとRNAの複合体の構造が認識することにより開始されるとの理論を提唱するものである。この考え方は、前記マウスB細胞クローンCH12F3-2にミニ染色体を導入することによりSα領域をSε領域またはSγ領域に置き換えた場合であっても、該細胞はサイトカインの刺激によりミニ染色体におけるクラススイッチ組換えを効率的に起こすという事実によってさらに裏付けられる(Immunity, Vol.9, p.1-10, 1998)。
一方、植物や原生動物においては、他のタイプの遺伝子編集(genetic editing)であるRNA編集が、限られたゲノムから機能的な遺伝子を生み出すための手段として広く用いられる(Cell, Vol.81, No.6, p.833-836, 1995; Cell, Vol.81, No.6, p.837-840, 1995)。例えば、哺乳動物ではアポリポプロテインB(apoB)、AMPA受容体、Wilms tumor-1、αガラクトシダーゼ及びnurofibromatosis type-1のmRNA並びにtRNA-Aspなど非常に多くの分子のmRNAの編集が報告されている(Trends Genet., Vol.12, No.10, p.418-424, 1996; Curr. Opin. Genet. Dev., Vol.6, No.2, p.221-231, 1996)。哺乳動物のRNA編集の分子メカニズムは未だ解明されていないが、APOBEC-1(apolipoprotein B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-1)により行われるapoBのmRNAの編集については次第に解明されつつある(Science, VOl.260, No.5115, p.1816-1819, 1993; J. Biol. Chem., Vol.268, No.28, p.20709-20712, 1993)。
apoBのRNA編集では、2153残基目のグルタミンをコードするコドンCAAの最初の塩基C(シトシン)が脱アミノ化反応によりU(ウリジン)に変換されることによりUAAに改変される。その結果、apoBのmRNA中にin-frameストップコドンが作られる(J. Cell., Vol.81, No.2, p.187-195, 1995; J. Cell., Vol.50, No.6, p.831-840, 1987; Science, Vol.238, No.4825, p.363-266, 1987)。apoB-100及びapoB-48は、各々編集されたapoBのmRNA及び未編集のmRNAの翻訳物であり、これらの蛋白は、各々全く異なった生理学的機能を有する(J. Biol. Chem., Vol.271, No.5, p.2353-2356, 1996)。
APOBEC-1による部位特異的RNA編集(site specific RNA-editing)には、補助因子(auxiliary factor)が必要とされる(Science, VOl.260, No.5115, p.1816-1819, 1993; J. Biol. Chem., Vol.268, No.28, p.20709-20712, 1993)。補助因子がない場合には、APOBEC-1は、シチジンデアミナーゼ活性を示すだけであり、RNAに対しては非特異的な低い親和性しか有しない(J. Biol. Chem., Vol.268, No.28, p.20709-20712, 1993; J. Cell., Vol.81, No.2, p.187-195, 1995; J. Biol. Chem., Vol.270, No.24, p.14768-14775, 1995; J. Biol. Chem., Vol.270, No.24, p.14762-14767, 1995)。該補助因子の発現及び活性は、apoBのmRNAの編集が起こっている臓器でだけでなく、APOBEC-1を検出不能なレベルでしか発現していない臓器あるいはapoBのmRNAの編集が起こっていない臓器においても見られる(Science, Vol.260, No.5115, p.1816-1819, 1993; J. Biol. Chem., Vol.268, No.28, p.20709-20712, 1993; Nucleic Acids Res., Vol.22, No.10, p.1874-1879, 1994; Proc Natl. Acad. Sci, USA, Vol.91, No.18, p.8522-8526, 1994; J. Biol. Chem., Vol.269, No.34, p.21725-21734, 1994)。
このようなapoBのmRNAの編集に伴う該補助因子の予期せぬ発現は、該補助因子がより一般的な細胞性機能に関与するか、あるいは他の未知のRNAの編集に関与する可能性を暗示するものである。免疫グロブリンに係る遺伝子編集であるクラススイッチ組換え(CSR)及び超変異(hypermutation)はRNA編集により行われている可能性を有することから、上述した免疫グロブリン遺伝子の遺伝子編集においてRNA編集が起こっているか否かを明らかにすることは非常に興味深い。
発明が解決しようとする課題
本発明は、RNA編集酵素の1つであるAPOBEC-1と構造的な関連性を有し、免疫グロブリン遺伝子の遺伝子編集などが起こる胚中心B細胞でのRNA編集に関与する新規なシチジンデアミナーゼであるAID(Activation-Induced cytidine Deaminase)、並びに該酵素をコードするDNAを提供するものである。
課題を解決するための手段
本発明者らは、免疫グロブリン遺伝子の主要な遺伝子編集の一つであるクラススイッチ組換え(CSR)に関与する新規遺伝子について鋭意探索した結果、サイトカインの刺激による細胞の活性化に伴い極めて高い割合でIgMからIgAへのクラススイッチ組換えを起こすことが証明されているマウスB細胞クローンCH12F3-2について、刺激を与えた該B細胞と未刺激の該B細胞の場合の各々についてcDNAライブラリーを作製し、これらを用いてサブトラクションクローニングを行うことにより、RNA編集酵素の1つであるAPOBEC-1と構造的な関連性を有し、APOBEC-1と同様のシチジンデアミナーゼ活性を有するAID(Activation-Induced cytidine Deaminase)と命名したマウス及びヒト由来の新規タンパクをコードする遺伝子を見出した。
本発明のAIDタンパクは、下記のような特徴を有し、B細胞の活性化の制御、並びに免疫グロブリン遺伝子のクラススイッチ組換え、体細胞超変異(somatic hypermutation)及びアフィニティーマチュレーション(affinity maturation)のような胚中心機能(germinal center function)に特有な遺伝子修飾(genetic editing)において重要な役割を担うRNA修飾デアミナーゼであると考えられる。
(1) AID蛋白をコードするcDNAのORFは、計算上の分子量が約24kDaと算出される198個のアミノ酸から構成される(マウス:配列番号2、及びヒト:配列番号8)。マウスAID蛋白はSDS-PAGEによると約28kDaを示す。
(2) AID蛋白のORFのアミノ酸配列は、APOBEC-1(apolipoprotein B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-1)とマウス由来の蛋白では34%、ヒト由来の蛋白では約26%のアミノ酸同一性を有する。
(3) AID蛋白は、シトシン ヌクレオシド/ヌクレオチド デアミナーゼ ファミリー(cytosine nucleoside/nucleotide deaminase family)に属する蛋白のアミノ酸配列中に保存されているデアミナーゼ活性の活性中心であるシチジン/デオキシシチジンデアミナーゼモチーフ(cytidine/deoxycitidine deaminase motif)を有している。
(4) AID蛋白のシチジンデアミナーゼモチーフは、RNA編集デアミナーゼのサブグループに近縁である。
(5) AID蛋白は、APOBEC-1と同様に、蛋白と蛋白との相互作用に重要であると考えられているロイシンに富んだ領域(Leucine-rich region)を有している。また、該AID蛋白のLeucine-rich region中の4つのロイシンは、ウサギ、ラット、マウス及びヒトのAPOBEC-1のLeucine-rich region中に保存されている。
(6) AID蛋白の一次構造中には、APOBEC-1がRNAに結合するための必須のアミノ酸残基であると報告されている全てのアミノ酸残基(Phe66、Phe87、His61、Glu63及びCys93)が保存されている。
(7) AID蛋白は、APOBEC-1及びE.coli由来のシチジンデアミナーゼ(ECCDA)と同様に、C末端側にホモダイマーを形成するための偽活性化部位ドメイン(pseudoactive site domain)を有していた。AID蛋白は、ホモダイマーを形成する可能性、または他の補助蛋白と会合する可能性がある。
(8) AID蛋白は、濃度依存的なシチジンデアミナーゼ活性を示す。このシチジンデアミナーゼ活性は、シチジンデアミナーゼの特異的阻害剤であるテトラヒドロウリジン(tetrahydrouridine, THU)により濃度依存的に阻害される。また、AID蛋白のシチジンデアミナーゼ活性は、亜鉛キレート化剤である1,10-o-phenanthrolineにより阻害される一方で、その不活性型異性体である1,7-o-phenanthrolineでは阻害が弱いことから、AID蛋白は、APOBEC-1と同様に亜鉛依存的シチジンデアミナーゼであると考えられる。
(9) AID蛋白のmRNAは、リンパ節(mesenteric lymphnode)(腸管膜または扁桃腺)で強い発現が見られる。また、脾臓でも弱い発現が見られる。
(10) AID蛋白のmRNAの発現は、胸腺以外の各種リンパ性組織(パイエル板(Peyer's patch)、腸管膜リンパ節、腋窩リンパ節、脾臓、骨髄)で見られる。特に、リンパ節やパイエル板などの末梢リンパ器官で顕著な発現が見られる。一方、一次性リンパ器官での発現は該末梢リンパ器官での発現と比べ低い。
(11) サイトカイン(IL-4, CD40L, TGF-β)による刺激によりIgMからIgAへのクラススイッチが起こるマウスB細胞クローンCH12F3-2でのAID mRNAの発現は、該サイトカインによる刺激がない場合には検出限界程度であるが、サイトカインの刺激により、刺激後約3時間で発現が誘導され、約12時間後に最大の発現が見られる。
(12) マウスB細胞クローンCH12F3-2でのAID mRNAの発現は、IL-4、CD40L及びTGF-βのいずれか1つのサイトカインによる刺激に比べ、該3種類のサイトカインで刺激した場合に強い発現が誘導される。また、このマウスB細胞クローンCH12F3-2でのサイトカインによるAID mRNAの発現誘導は、蛋白合成阻害剤であるシクロヘキシミドにより阻害されることから、AID mRNAの発現増強には、蛋白の新規合成(de novo synthesis)が必要であると考えられる。
(13) in vitro試験においては、正常マウス脾臓B細胞を、LPSのみ、LPS+IL-4、またはLPS+TGF-βで刺激するとAID mRNAの発現増強が見られる。
(14) in vivo試験においては、正常マウスを、生体に投与するとクローナル細胞増幅(clonal expansion)及び胚中心形成(germinal center formation)を誘導し免疫グロブリン遺伝子のクラススイッチ組換え及びアフィニティーマチュレーションを引き起こすことが知られている羊赤血球(SRBC)で免疫すると、免疫後5日目以降にAID mRNAの有意な発現増強が見られる。
(15) SRBCによる免疫により誘導されるin vivoでのAID mRNAの発現増強は、脾臓のCD19陽性B細胞で特異的に見られる。
(16) リンパ性器官でのAID mRNAの発現誘導は、抗原による刺激により活性化されたB細胞を多く含んでいる胚中心で特異的に見られる。
(17) ヒトAID遺伝子は、APOBEC-1遺伝子のが存在する染色体遺伝子座である12p13.1に近い、遺伝子座12p13に位置する。
上記のような性状から、本発明のAID蛋白は、種々の疾患を惹起する引き金となる非自己抗原(外来性抗原、自己反応性細胞など)を生体から排除するための抗原特異的免疫グロブリン(特異性抗体)の生成に必要な種々の生体メカニズムを制御する機能を有すると考えられる。抗原に高い特異性を有する免疫グロブリンの生成のメカニズムとしては、B細胞の活性化、免疫グロブリン遺伝子のクラススイッチ組換え、体細胞超変異(somatic hypermutation)及びアフィニティーマチュレーション(affinity maturation)のような胚中心機能(germinal center function)が挙げられる。本発明のAID蛋白は、そのような胚中心B細胞で起こる遺伝子編集(genetic editing)(例えば、クラススイッチ組換え、体細胞変異)において重要な役割を担う酵素の一つと考えられる。
本発明のAID蛋白の機能不全は、B細胞の抗原特異的な活性化、クラススイッチ組換え、体細胞変異などの胚中心B細胞機能不全を誘導し、体液性免疫不全症を引き起こす原因となりうる。逆にAID蛋白の機能の亢進は、不適切なB細胞の活性化や、不必要なクラススイッチ組換えや体細胞変異を来し、アレルギー疾患や自己免疫疾患を引き起こす可能性がある。
従って、本発明のAID蛋白及びAID蛋白をコードする遺伝子の機能を制御することにより、例えばB細胞の機能不全(例えば、IgA欠損症、IgA腎症、γグロブリン血症、高IgM血症など)あるいは免疫グロブリンのクラススイッチの不全に起因する種々の免疫不全症、自己免疫疾患またはアレルギーの予防並びに治療することが可能であると考えられ、本発明のAID蛋白及び該AID蛋白をコードする遺伝子は、そのような疾患治療のための医薬品開発のターゲットとなり得る。
本発明のAID蛋白またはAID蛋白をコードする遺伝子の機能を制御することにより発症予防、病状の軽減、治療及び/または対症療法効果が期待される疾患としては、例えば、先天的な免疫系の異常を伴う原発性免疫不全症候群、主としてBリンパ球の欠損、減少あるいは機能異常により発症すると考えられている種々の免疫不全症(例えば、伴性無γグロブリン血症、成長ホルモン欠乏を伴う伴性無γグロブリン血症、IgM高値を伴う免疫グロブリン欠乏症、選択的IgM欠損症、選択的IgE欠損症、免疫グロブリン重鎖遺伝子欠失変異症、κ鎖欠乏症、IgA欠乏症、IgGサブクラス選択的欠乏症、CVID(common variable immunodeficiency)、乳児一過性低γグロブリン血症、Rosen症候群、重症複合免疫不全症(伴性、常染色体劣性)、ADA(adenosine deaminase)欠損症、PNP(purine nucleoside phosphorylase)欠損症、MHCクラスII欠損症、細網異形成症、Wiskott-Aldrich症候群、ataxia telangiectasia、DiGeorge症候群、染色体異常、家族性Ig異化過多症、高IgE症候群、Gitlin症候群、Nezelof症候群、Good症候群、骨異形成症、トランスコバランミン症候群、セクレタリービース症候群、など)、後天的な原因により引き起こされた免疫系の傷害を伴う続発性免疫不全症候群(例えば、AIDSなど)であり抗体産生不全を伴う種々の疾患、及び/または種々のアレルギー性疾患(例えば、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、結膜炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性腸炎、薬剤性アレルギー、食品アレルギー、アレルギー性じんましん、糸球体腎炎など)が挙げられる。
即ち、本発明のAID蛋白及びその断片、AID蛋白をコードするDNA及びその断片、並びにAID蛋白に対する抗体は、そのような疾患の予防または治療のための医薬品開発のための試薬として有用である。
また、該DNAは、それ自体AID遺伝子の機能を遺伝子レベルで制御するアンチセンス医薬品として、また遺伝子治療での使用において有用である。該タンパクまたはその断片(例えば、酵素活性部位)は、それ自体医薬品として有用である。
また、本発明のDNAの一つである本発明のAIDタンパク(特にヒトAIDタンパク)をコードするゲノミックDNAの塩基配列中の任意の部分塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction; PCR)におけるプライマーDNAとして有用である。
該プライマーDNAの一対を用いたPCRにより、本発明のAIDタンパク(特にヒトAIDタンパク)をコードするゲノミックDNAの任意の部分塩基配列を増幅することができる。例えば、ある免疫不全症やアレルギーがAIDタンパクをコードするゲノミックDNA(特にエクソン)の塩基配列に変異あるいは欠失が原因であると推定される場合には、該プライマーDNAの一対を用いたPCRにより免疫不全症患者またはアレルギー患者の組織または細胞から取得したAIDタンパクをコードするゲノミックDNAの任意の部分塩基配列を増幅し、PCR産物の有無、大きさ及び該PCR産物の塩基配列を解析し、該塩基配列と健常人由来のAIDタンパクをコードするゲノミックDNA中の対応塩基配列とを比較することにより該ゲノミックDNA中の変異または欠失を同定することができる。即ち、この方法は、例えば、免疫不全症やアレルギー疾患とAIDタンパクとの関連性を解明できるだけでなく、AIDタンパクがある種の疾患(例えば、免疫不全症及び/またはアレルギー)の発症の原因である場合には、上記の方法により該疾患の診断が可能である。
さらに本発明のAID蛋白に反応性を有する抗体またはその一部は、AID蛋白の機能を制御することによる抗体医薬品として極めて有用である。
さらに、本発明の遺伝子(DNA)、タンパク、及び抗体は、本発明のタンパク(酵素)と相互作用(結合)する基質(例えば、RNAなど)あるいは本発明のタンパクと会合する他の補助蛋白の探索、並びに該基質や補助蛋白をターゲットとした医薬品を開発するための試薬として有用である。
また、本発明のDNAの態様の一つである哺乳動物(マウスなど)由来のAID蛋白の遺伝子情報をもとに、それらの遺伝子を破壊(不活性化)することによりモデル動物を作成することが可能である。このモデル動物の物理学的、生物学的、病理学的及び遺伝子的特徴を分析することにより、本発明に係る遺伝子及びタンパクの機能を解明することが可能となる。
さらに、そのようにして内在性遺伝子が破壊された該モデル動物、本発明の態様の一つであるヒト由来のAID遺伝子あるいは変異を有するヒト由来のAID遺伝子(例えば、免疫不全患者由来の変異ヒトAID遺伝子)を導入することにより、本発明のヒト由来のAID遺伝子あるいは変異ヒトAID遺伝子のみを有するモデル動物を作成することが可能である。このモデル動物に、該導入されたヒト由来AID遺伝子をターゲットとした薬剤(化合物、抗体等)を投与することにより、その薬剤の治療学的効果を評価することが可能となる。
さらに、本発明の他の一つである、本発明のAID蛋白の産生若しくは該AID蛋白をコードする遺伝子のmRNAへの転写を調節する物質、または該AID蛋白の酵素活性(例えば、シチジンデアミナーゼ活性)を阻害する物質を同定する方法は、上述のようなAID蛋白またはAID遺伝子が関与すると考えられる種々の疾患(特に、免疫不全症及び/またはアレルギー)を治療または予防するための医薬品の開発する手段として極めて有用である。
本発明は、即ち、下記のDNA(cDNA、ゲノミックDNA、及びそれらの任意の断片)、タンパク、発現ベクター、形質転換体、抗体医薬組成物、細胞、該DNA断片のプライマーDNAとしての使用、並びにスクリーニング方法を初めて提供するものである。
(1)配列番号2または配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するタンパクをコードするDNAまたはその断片。
(2)該タンパクが、シチジンデアミナーゼ活性を有することを特徴とする前記(1)に記載のDNAまたはその断片。
(3)配列番号1または配列番号7に記載される塩基配列を含むDNAまたはその断片。
(4)下記(a)または(b)の塩基配列を含むDNAまたはその断片:
(a)配列番号1に記載される塩基配列の塩基番号93乃至689の塩基配列;または、
(b)配列番号7に記載される塩基配列の塩基番号80乃至676の塩基配列。
(5)下記(a)または(b)のいずれかのDNAまたはその断片:(a)配列番号1に記載される塩基配列を有するDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するタンパクの相同タンパクでありシチジンデアミナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパクをコードするDNAまたはその断片;または
(b)配列番号7に記載される塩基配列を有するDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するタンパクの相同タンパクでありシチジンデアミナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパクをコードするDNAまたはその断片。
(6)配列番号2または配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するタンパクまたはその断片。
(7)配列番号2または配列番号8に記載されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパクであって、シチジンデアミナーゼ活性を有するタンパクまたはその断片。
(8)下記(a)または(b)のいずれかのタンパク:
(a)配列番号1に記載される塩基配列を有するDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列を有し、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するタンパクの相同タンパクでありシチジンデアミナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパク;または
(b)配列番号7に記載される塩基配列を有するDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列を有し、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するタンパクの相同タンパクでありシチジンデアミナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパク。
(9)前記(1)乃至前記(5)のいずれかに記載のDNA若しくはその断片を含む発現ベクター。
(10)前記(9)記載の発現ベクターで形質転換された形質転換細胞。
(11)前記(6)乃至前記(8)のいずれかに記載のタンパクまたはその断片に反応性を有する抗体または該抗体の一部。
(12)抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする前記(11)記載の抗体または該抗体の一部。
(13)前記(11)または前記(12)記載の抗体若しくは該抗体の一部及び薬学的に許容され得る担体を含んでなる医薬組成物。
(14)前記(6)乃至前記(8)のいずれかに記載のタンパクまたはその断片に反応性を有するモノクローナル抗体を産生する細胞。
(15)該細胞が、モノクローナル抗体を産生する能力を有する非ヒト哺乳動物由来のB細胞と哺乳動物由来のミエローマ細胞とを融合して得られる融合細胞であることを特徴とする前記(14)に記載の細胞。
(16)該細胞が、該モノクローナル抗体の重鎖をコードするDNA若しくはその軽鎖をコードするDNAのいずれか一方のDNA、または両方のDNAが細胞内に導入されることにより形質転換された遺伝子組換え細胞であることを特徴とする前記(15)に記載の細胞。
(17)下記(a)乃至(c)のいずれかの塩基配列を含むゲノミックDNAまたはその断片:
(a)配列番号9に記載される塩基配列;
(b)配列番号10に記載される塩基配列;または、
(c)配列番号35に記載される塩基配列。
(18)下記(a)乃至(e)のいずれかの塩基配列を含むゲノミックDNAまたはその断片:
(a)配列番号11に記載される塩基配列;
(b)配列番号12に記載される塩基配列;
(c)配列番号13に記載される塩基配列;
(d)配列番号14に記載される塩基配列;または
(e)配列番号15に記載される塩基配列。
(19)下記(a)乃至(h)のいずれかの塩基配列中の任意の部分塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNA:
(a)配列番号9に記載される塩基配列;
(b)配列番号10に記載される塩基配列;
(c)配列番号11に記載される塩基配列;
(d)配列番号12に記載される塩基配列;
(e)配列番号13に記載される塩基配列;
(f)配列番号14に記載される塩基配列;
(g)配列番号15に記載される塩基配列;または
(h)配列番号25に記載される塩基配列。
(20)該DNAが下記(a)乃至(q)のいずれかの塩基配列を有することを特徴とする前記(19)に記載のDNA:
(a)配列番号18に記載される塩基配列;
(b)配列番号19に記載される塩基配列;
(c)配列番号20に記載される塩基配列;
(d)配列番号21に記載される塩基配列;
(e)配列番号22に記載される塩基配列;
(f)配列番号23に記載される塩基配列;
(g)配列番号24に記載される塩基配列;
(h)配列番号25に記載される塩基配列;
(i)配列番号26に記載される塩基配列;
(j)配列番号27に記載される塩基配列;
(k)配列番号28に記載される塩基配列;
(l)配列番号29に記載される塩基配列;
(m)配列番号30に記載される塩基配列;
(n)配列番号31に記載される塩基配列;
(o)配列番号32に記載される塩基配列;
(p)配列番号33に記載される塩基配列;または
(q)配列番号34に記載される塩基配列。
(21)前記(19)または前記(20)に記載のDNAのポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)におけるプライマーDNAとしての使用。
(22)下記(a)乃至(n)のいずれかの一対のDNAのポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)におけるプライマーDNAとしての使用:
(a)配列番号31に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号32に記載される塩基配列を有するDNA;
(b)配列番号20に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号22に記載される塩基配列を有するDNA;
(c)配列番号21に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号30に記載される塩基配列を有するDNA;
(d)配列番号24に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号25に記載される塩基配列を有するDNA;
(e)配列番号23に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号27に記載される塩基配列を有するDNA;
(f)配列番号23に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号28に記載される塩基配列を有するDNA;
(g)配列番号23に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号29に記載される塩基配列を有するDNA;
(h)配列番号26に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号27に記載される塩基配列を有するDNA;
(i)配列番号26に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号28に記載される塩基配列を有するDNA;
(j)配列番号26に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号29に記載される塩基配列を有するDNA;
(k)配列番号34に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号28に記載される塩基配列を有するDNA;
(l)配列番号34に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号29に記載される塩基配列を有するDNA;
(m)配列番号33に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号29に記載される塩基配列を有するDNA;または
(n)配列番号18に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号19に記載される塩基配列を有するDNA。
(23)配列番号2若しくは配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するAIDタンパクをコードする遺伝子のmRNAへの転写または該AIDタンパクの産生を調節する能力を有する物質を同定する方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする方法:
(a)該AIDタンパクを産生する細胞を該物質の存在下及び不存在下の各々の条件下で培養する工程;及び
(b)(i)該物質の存在下で培養した細胞が産生する該AIDタンパクのレベルと該物質の不存在下で培養した細胞が産生する該AIDタンパクのレベルを比較する工程;若しくは
(ii)該物質の存在下で培養した細胞中で転写された該AIDタンパクをコードするmRNAのレベルと該物質の不存在下で培養した細胞中で転写された該AIDタンパクをコードするmRNAのレベルとを比較する工程。
(24)配列番号2若しくは配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するAIDタンパクをコードする遺伝子のmRNAへの転写または該AIDタンパクの産生を調節する能力を有する物質を同定する方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする方法:
(a)該AIDタンパク及び該AIDタンパク以外の他のタンパクを産生する細胞であって、該細胞における該他のタンパクをコードする遺伝子のmRNAへの転写が、該AIDタンパクをコードする遺伝子のmRNAへの転写のシグナルの程度に依存して起こるものであることを特徴とする細胞を、該物質の存在下及び不存在下の各々の条件下で培養する工程;及び
(b)該物質の存在下で培養した細胞が産生する該他のタンパクのレベルと該物質の不存在下で培養した細胞が産生する該他のタンパクのレベルを比較する工程。
(25)該細胞が、該タンパクをコードする遺伝子で形質転換された遺伝子組換え細胞であることを特徴とする前記(23)または前記(24)に記載の方法。
(26)該細胞が、該タンパクをコードする遺伝子及び該他のタンパクをコードする遺伝子で形質転換された遺伝子組換え細胞であることを特徴とする前記(24)に記載の方法。
(27)該他のタンパクが、レポータータンパクであることを特徴とする前記(26)に記載の方法。
(28)該他のタンパクのレベルの比較が、該レポータータンパクが発するシグナルのレベルの比較であることを特徴とする前記(27)に記載の方法。
(29)該レポータータンパクが、ルシフェラーゼであることを特徴とする前記(27)または前記(28)に記載の方法。
(30) 配列番号2若しくは配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するAIDタンパクの酵素活性を阻害する能力を有する物質を同定する方法であって、下記(a)または(b)の工程を含むことを特徴とする方法:
(a)哺乳動物由来のB細胞を含む組織またはB細胞を、該物質の存在下または不存在下の各々の条件下で培養し、該各々の条件下での培養したB細胞中の該AIDタンパクの酵素活性を比較する工程;または
(b)(i)内在性AID遺伝子のmRNAへの転写が阻害されるように該内在性AID遺伝子が不活性化されたAID遺伝子ノックアウトマウスまたは正常マウスの各々に、該物質を投与する工程;及び
(ii)該各々のマウスから単離されるB細胞中の該AIDタンパクの酵素活性を比較する工程。
(31)該酵素活性が、シチジンデアミナーゼ活性であることを特徴とする前記(30)に記載の方法。
以下、本発明で用いる語句の意味、並びに本発明のタンパク、DNA、抗体及び細胞の一般的製造方法を明らかにすることにより、本発明を詳細に説明する。
本発明の「タンパクまたはその断片」とは、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ラット、ハムスター、モルモット、及びマウスなどの哺乳動物由来のタンパク及びその断片(フラグメント)であり、好ましくはヒト、ウサギ、ラットまたはマウス由来のタンパク若しくはその断片であり、特に好ましくはヒトまたはマウス由来のタンパク及びその断片(フラグメント)である。
特に好ましい態様としては、下記のいずれかのタンパクまたはその断片である。
<1>配列番号2または配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するタンパクまたはその断片。
<2>配列番号2または配列番号8に記載されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパクであって、シチジンデアミナーゼ活性を有するタンパクまたはその断片。
<3>配列番号1に記載される塩基配列を有するDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列を有し、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するタンパクの相同タンパクでありシチジンデアミナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパク。
<4>配列番号7に記載される塩基配列を有するDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列を有し、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するタンパクの相同タンパクでありシチジンデアミナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパク。
ここで「実質的に同一のアミノ酸配列を有する」とは、該アミノ酸配列中の複数個のアミノ酸、好ましくは1乃至10個のアミノ酸、特に好ましくは1乃至5個のアミノ酸が置換、欠失及び/または修飾されているアミノ酸配列を有するタンパク、並びに該アミノ酸配列に、複数個のアミノ酸、好ましくは1乃至10個のアミノ酸、特に好ましくは1乃至5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列を有することを意味する。
本発明のタンパクには、モノマ−(monomer)分子、同一のアミノ酸配列を有するもう1本の鎖と会合してなるホモダイマー(homodimer)、異なるアミノ酸配列を有する他のもう1本の鎖と会合してなるヘテロダイマー(heterodimer)、及びトリマー(trimer)やテトラマー(tetramer)などのオリゴマー(origomer)も包含される。
また「タンパクの断片」とは、上述した本発明のAID蛋白が有するアミノ酸配列中の任意の部分配列(フラグメント)を意味し、例えば、AID蛋白がシチジンデアミナーゼ活性に代表されるような酵素活性を発現するために必須である酵素活性部位、あるいはAID蛋白が基質(例えば、RNAなど)や種々の補助蛋白と結合若しくは会合するために必須な相互作用部位などを挙げることができる。
本願明細書または図面においてアミノ酸を表記するために用いられるアルファベットの三文字あるいは一文字は、各々次に示すアミノ酸を意味する。
(Gly/G)グリシン、(Ala/A)アラニン、(Val/V)バリン、(Leu/L)ロイシン、(Ile/I)イソロイシン、(Ser/S)セリン、(Thr/T)スレオニン、(Asp/D)アスパラギン酸、(Glu/E)グルタミン酸、(Asn/N)アスパラギン、(Glu/Q)グルタミン、(Lys/K)リジン、(Arg/R)アルギニン、(Cys/C)システイン、(Met/M)メチオニン、(Phe/F)フェニルアラニン、(Tyr/Y)チロシン、(Trp/W)トリプトファン、(His/H)ヒスチジン、(Pro/P)プロリン。
本発明のタンパク及びフラグメントは、後述するような遺伝子組換え技術のほか、化学的合成法、細胞培養方法等のような当該技術的分野において知られる公知の方法あるいはその修飾方法を適宜用いることにより製造することができる。
また、本発明のAID蛋白を他の蛋白(例えば、GST(Glutathione S-transferase)など)との組換え融合蛋白として発現させることもできる。この場合には、GSTに特異的に結合する他の蛋白分子を固定化した吸着剤を用いるアフィニティーカラムクロマトグラフィーを用いることにより該融合蛋白を極めて容易に精製することが可能であるという点で利点を有する。さらに、該GST対する種々の抗体が提供されていることから、該GSTに対する抗体を用いたイムノアッセイ(ELISAなど)により、該融合蛋白の定量を簡便に行うことができる。
本発明のDNAは、前述の本発明のタンパクまたはその断片をコードするDNAであって、本発明のタンパクをコードし得るいかなる塩基配列をも包含し、ゲノミックDNAまたはcDNAのいずれをも包含する。また、該DNAは、同一のアミノ酸をコードするコドンであればどのようなコドンから構成されるDNAをも含む。
また、本発明におけるDNAは、哺乳動物のAID蛋白をコードするDNAを包含し、好ましい態様としては、マウスAID蛋白またはヒトAID蛋白をコードするDNAを挙げることができる。
具体的な態様としては、下記が挙げられる。
<1>配列番号2または配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するタンパクをコードするDNA。
<2>該タンパクが、シチジンデアミナーゼ活性を有することを特徴とする前記(1)に記載のDNA。
<3>配列番号1または配列番号7に記載される塩基配列を含むDNA。
<4>配列番号1に記載される塩基配列の塩基番号93乃至689の塩基配列を有するDNA。
<5>配列番号7に記載される塩基番号80乃至676の塩基配列を有するDNA。
<6>配列番号1に記載される塩基配列を有するDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するタンパクの相同タンパクでありシチジンデアミナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパクをコードするDNA。
<7>配列番号7に記載される塩基配列を有するDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するタンパクの相同タンパクでありシチジンデアミナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパクをコードするDNA。
<8>下記(a)乃至(c)のいずれかの塩基配列を含むゲノミックDNAまたはその断片:
(a)配列番号9に記載される塩基配列;
(b)配列番号10に記載される塩基配列;または、
(c)配列番号35に記載される塩基配列。
<9>下記(a)乃至(e)のいずれかの塩基配列を含むゲノミックDNAまたはその断片:
(a)配列番号11に記載される塩基配列;
(b)配列番号12に記載される塩基配列;
(c)配列番号13に記載される塩基配列;
(d)配列番号14に記載される塩基配列;または
(e)配列番号15に記載される塩基配列。
<10>下記(a)乃至(h)のいずれかの塩基配列中の任意の部分塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNA:
(a)配列番号9に記載される塩基配列;
(b)配列番号10に記載される塩基配列;
(c)配列番号11に記載される塩基配列;
(d)配列番号12に記載される塩基配列;
(e)配列番号13に記載される塩基配列;
(f)配列番号14に記載される塩基配列;
(g)配列番号15に記載される塩基配列;または、
(h)配列番号35に記載される塩基配列。
<11>該DNAが下記(a)乃至(q)のいずれかの塩基配列を有するDNA:
(a)配列番号18に記載される塩基配列;
(b)配列番号19に記載される塩基配列;
(c)配列番号20に記載される塩基配列;
(d)配列番号21に記載される塩基配列;
(e)配列番号22に記載される塩基配列;
(f)配列番号23に記載される塩基配列;
(g)配列番号24に記載される塩基配列;
(h)配列番号25に記載される塩基配列;
(i)配列番号26に記載される塩基配列;
(j)配列番号27に記載される塩基配列;
(k)配列番号28に記載される塩基配列;
(l)配列番号29に記載される塩基配列;
(m)配列番号30に記載される塩基配列;
(n)配列番号31に記載される塩基配列;
(o)配列番号32に記載される塩基配列;
(p)配列番号33に記載される塩基配列;または
(q)配列番号34に記載される塩基配列。
また、上記に定義した本発明のAID蛋白あるいはその断片を構成するアミノ酸配列中に複数個のアミノ酸、好ましくは1乃至10個のアミノ酸、特に好ましくは1乃至5個のアミノ酸を置換、欠失及び/または修飾するか、若しくは該アミノ酸配列に複数個のアミノ酸、好ましくは1乃至10個のアミノ酸、特に好ましくは1乃至5個のアミノ酸を挿入することによって得られる変異タンパク若しくはその断片をコードするDNAも本発明のDNAに包含される。
ここで「ストリンジェントな条件下」としては、例えば、次のような条件を挙げることができる。例えば、50塩基以上のプローブを用い、0.9%NaCl下でハイブリダイゼーションを行う場合には、、50%の解離を生ずる温度(Tm)の目安を下記計算式から求め、ハイブリダイゼーションの温度を下記計算式のように設定することができる。
Tm=82.3℃+0.41×(G+C)%−500/n−0.61×(フォルムアミド)%
(nはプローブの塩基数を示す。)
温度=Tm−25℃
また、100塩基以上のプローブ(G+C=40〜50%の場合)を用いる場合には、Tmが下記(1)及び(2)のように変化することを目安する。
(1)1%ミスマッチ毎に、Tmが約1℃下がる。
(2)フォルムアミド1%毎に、Tmが0.6〜0.7℃下がる。
従って、完全相補鎖の組み合わせの場合の温度条件は下記のようにすることができる。
(A)65〜75℃(フォルムアミド無添加)
(B)35〜45℃(50%フォルムアミド存在下)
また、不完全相補鎖の組み合わせの場合の温度条件は下記のようにすることができる。
(A)45〜55℃(フォルムアミド無添加)
(B)35〜42℃(30%フォルムアミド存在下)
また、23塩基以下のプローブを用いる場合の温度条件は、37℃とすることもできるし、また下記計算式を目安とすることもできる。
温度=2℃×(A+Tの数)+4℃×(C+Gの数)−5℃
また、本発明のDNAは、いかなる方法で得られるものであってもよい。例えばmRNAから調製される相補DNA(cDNA)、ゲノムDNAから調製されるDNA、化学合成によって得られるDNA、RNAまたはDNAを鋳型としてPCR法で増幅させて得られるDNAおよびこれらの方法を適当に組み合わせて構築されるDNAをも全て包含するものである。
本発明のタンパクをコードするDNAは、常法に従って本発明のタンパクのmRNAからcDNAをクローン化する方法、ゲノムDNAを単離してスプライシング処理する方法、化学合成する方法等により取得することができる。
(1)例えば、本発明のタンパクのmRNAからcDNAをクローン化する方法としては、以下の方法が例示される。
まず、本発明のタンパクを発現・産生する前述のような組織あるいは細胞から該本発明のタンパクをコードするmRNAを調製する。mRNAの調製は、例えばグアニジンチオシアネート法(Chirgwinら、Biochemistry,Vol.18, p.5294, 1979)、熱フェノール法もしくはAGPC法等の公知の方法を用いて調製した全RNAをオリゴ(dT)セルロースやポリU−セファロース等によるアフィニティクロマトグラフィーにかけることによって行うことができる。
次いで得られたmRNAを鋳型として、例えば逆転写酵素を用いる等の公知の方法、例えばオカヤマらの方法(Mol.cell.Biol., Vol.2, p.161, 1982; Mol.Cell. Biol., Vol.3, p.280, 1983)やHoffmanらの方法(Gene, Vol.25, p.263, 1983)等によりcDNA鎖を合成し、cDNAの二本鎖cDNAへの変換を行う。このcDNAをプラスミドベクター、ファージベクターまたはコスミドベクターに組み込み、大腸菌を形質転換して、あるいはインビトロパッケージング後、大腸菌に形質移入(トランスフェクト)することによりcDNAライブラリーを作製する。
ここで用いられるプラスミドベクターとしては、宿主内で複製保持されるものであれば特に制限されず、また用いられるファージベクターとしても宿主内で増殖できるものであれば良い。常法的に用いられるクローニング用ベクターとしてpUC19、λgt10、λgt11等が例示される。ただし、後述の免疫学的スクリーニングに供する場合は、宿主内で本発明のタンパクをコードする遺伝子を発現させうるプロモーターを有したベクターであることが好ましい。
プラスミドにcDNAを組み込む方法としては、例えばManiatisらの方法(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory, p.1.53, 1989)に記載の方法などが挙げられる。また、ファージベクターにcDNAを組み込む方法としては、Hyunhらの方法(DNA Cloning, apractical approach, Vol.1, p.49, 1985)などが挙げられる。簡便には、市販のクローニングキット(例えば、宝酒造製等)を用いることもできる。このようにして得られる組換えプラスミドやファージベクターは、原核細胞(例えば、E.coli: HB101, DH5αまたはMC1061/P3等)等の適当な宿主に導入する。
プラスミドを宿主に導入する方法としては、(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Vol.1.74, 1989)に記載の塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。また、ファージベクターを宿主に導入する方法としてはファージDNAをインビトロパッケージングした後、増殖させた宿主に導入する方法等が例示される。インビトロパッケージングは、市販のインビトロパッケージングキット(例えば、ストラタジーン製、アマシャム製等)を用いることによって簡便に行うことができる。
本発明のAID蛋白のようにサイトカイン等の刺激に依存して細胞内で産生が増強される蛋白をコードするcDNAの同定は、刺激を与えた細胞由来のmRNAを基に作製したcDNAライブラリー(tester cDNA library)と未刺激の細胞由来のmRNAを基に作製したcDNAライブラリー(driver cDNA library)の2つのcDNAライブラリーを用い、例えば、抑制PCR効果(Nucleic Acids Res., Vol.23, p.1087-1088, 1995)を利用したサプレッションサブトラクトハイブリダイゼーション法(supression subtract hybridization (SSH))(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.93, p.6025-030, 1996; Anal. Biochem., Vol.240, p.90-97, 1996)により同定することができる。
サブトラクションクローニングに必要なcDNAライブラリーの調製は、市販のキット、例えば、PCR-Select Subtraction Kit(CLONTECH製、カタログ番号:K1804-1)を用いることができる。実験操作は、該キットに添付の実験操作手順書に従って行うことができる。
具体的実験操作の一例を以下に概略する。
適切な刺激物質で刺激した細胞、及び未刺激の細胞の各々から、既報(Nucleic Acids Res., Vol.26, No.4, p.911-918, 1998)と同様にしてpolyA+RNAをする。次いで、各々のpolyA+RNA試料を基に逆転写酵素を用い常法に従ってcDNAを調製する。刺激した細胞から調製したcDNAをテスターcDNA(tester cDNA)として、また未刺激の細胞由来のcDNAをドライバーcDNA(driver cDNA)として用いる。
前記既報及び該市販のキットに添付の実験操作マニュアルに従って、テスターcDNAにドライバーcDNAを加えサブトラクションを行う。なお、サブトラクションの効率は、テスターcDNAに、コントロールとして適当な外来性DNAを少量加えることによりモニターする。サブトラクションの後、該外来性DNAを濃縮する。
サブトラクションされたcDNA(subtracted cDNA)を、常法に従って適当なプラスミド発現ベクター中にクローニングしプラスミドライブラリーを作製する。
既報と同様にして、該ライブラリーの多数のコロニーを、ディファレンシャルハイブリダイゼーション法によりスクリーニングする(Nucleic Acids Res., Vol.26, No.4, p.911-918, 1998; 臨床免疫, Vol.29, No.Suppl.17, p.451-459, 1997)。ここで、ハイブリダイゼーションプローブとしては、前記テスターcDNA及びドライバーcDNAの各々を放射性標識したものを用いることができる。なお、目的のDNAを含むクローンと前記外来性DNAを含むクローンの区別は、レプリカントフルターに該外来性DNAをハイブリダイズさせることにより行うことができる。
放射性標識ドライバーcDNAプローブよりも放射性標識テスターcDNAプローブに対してより強いシグナルを発するクローンを同定し、目的のcDNAまたはcDNA断片を得ることができる。
また、本発明のタンパクをコードするcDNAの単離は、他の一般的なcDNAのスクリーニング法を用いることによっても行うことができる。
例えば、前記のサブトラクションクローニングで単離した本発明のタンパクをコードするcDNA若しくはcDNA断片、あるいは別個に化学合成した本発明のタンパクのアミノ酸配列に対応するオリゴヌクレオチドを32Pでラベルしてプローブとなし、公知のコロニーハイブリダイゼーション法(crunsteinら, Proc. Natl. Acid. sci. USA, Vol.72, p.3961, 1975)またはプラークハイブリダイゼーション法(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, second edition , Cold Spring Harbor Laboratory, p.2.108, 1989)により、市販または所望に応じ独自に調製したcDNAライブラリーをスクリーニングする方法が挙げられる。さらに、前記のサブトラクションクローニングで単離した本発明のタンパクをコードするcDNA若しくはcDNA断片の塩基配列を基に一対のPCRプライマーを作製し、全長cDNAライブラリーを鋳型として該プライマーを用いたPCRにより本発明のタンパクをコードするcDNAを含むDNAを増幅する方法を挙げることができる。
cDNAを発現しうる発現ベクターを用いて作製したcDNAライブラリーを用いる場合には、本発明のタンパクに反応性を有する抗体を用いる抗原抗体反応を利用して、目的のクローンを選択することができる。大量にクローンを処理する場合には、PCR法を利用したスクリーニング法を用いることが好ましい。
この様にして得られたDNAの塩基配列はマキサム・ギルバート法(マキサム(Maxamら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA., Vol.74, p.560, 1977)あるいはファージM13を用いたジデオキシヌクレオチド合成鎖停止の方法(Sangerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA., Vol.74, p.5463-5467, 1977)によって決定することができる。市販のDNAシークエンサーを用いると簡便に塩基配列を決定することが可能である。
本発明のタンパクをコードする遺伝子は、その全部または一部を上記のようにして得られるクローンから制限酵素等により切り出すことにより取得できる。
(2)また、前述のような本発明のタンパクを発現する細胞に由来するゲノムDNAから本発明のタンパクをコードするDNAを単離することによる調製方法としては、例えば以下の方法が例示される。
該細胞を好ましくはSDSまたはプロテナーゼK等を用いて溶解し、フェノールによる抽出を反復してDNAの脱蛋白質を行う。RNAを好ましくはリボヌクレアーゼにより消化する。得られるDNAを適当な制限酵素により部分消化し、得られるDNA断片を適当なファージまたはコスミドで増幅しライブラリーを作成する。そして目的の配列を有するクローンを、例えば放射性標識されたDNAプローブを用いる方法等により検出し、該クローンから本発明のタンパクをコードする遺伝子の全部または一部を制限酵素等により切り出し取得する。
例えば、ヒト由来タンパクをコードするcDNAを取得する場合には、さらにヒトゲノムDNA(染色体DNA)が導入されたコスミドライスラリーを作製(「ラボマニュアルヒトゲノムマッピング」、堀雅明及び中村祐輔 編、丸善 出版)し、該コスミドライブラリーをスクリーニングすることにより、目的タンパクのコーディング領域のDNAを含む陽性クローンを得、該陽性クローンから切り出したコーディングDNAをプローブとして用い、前述のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより調製することもできる。
また、本発明は上述の本発明のAIDタンパク(特にヒトAIDタンパク)をコードするDNA(cDNAやゲノミックDNA)の任意の断片に関する。当該cDNAやゲノミックDNAの塩基配列の任意の部分塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction; PCR)におけるプライマーDNAとして有用である。該プライマーDNAの一対を用いたPCRにより、本発明のAIDタンパク(特にヒトAIDタンパク)をコードするゲノミックDNAの任意の部分塩基配列を増幅することができる。
例えば、ある免疫不全症またはアレルギーがAIDタンパクをコードするゲノミックDNA(特にエクソン)の塩基配列に変異あるいは欠失が原因であると推定される場合には、
そのようなゲノムDNAの変異または欠失の存否は、下記のようなPCRにより解析することができる。
(1)本発明のAID蛋白をコードするゲノミックDNAの任意の部分塩基配列に相補的な塩基配列を有する一対のプライマーDNAを作製する。
(2)免疫不全症患者またはアレルギー患者の組織または細胞から取得したAIDタンパクをコードするゲノミックDNAを鋳型として、該一対のプライマーDNAを用いて、該ゲノミックDNAの目的の部分塩基配列を増幅する。
(3)PCR産物の有無、及び該PCR産物の塩基配列を解析し、該塩基配列と健常人由来のAIDタンパクをコードするゲノミックDNA中の対応塩基配列とを比較することにより該ゲノミックDNA中の変異または欠失を同定する。
即ち、この方法は、例えば、免疫不全症及び/またはアレルギーとAIDタンパクとの関連性を解明できるだけでなく、AIDタンパクがある種の疾患(例えば、免疫不全症またはアレルギー性疾患)の発症の原因である場合には、上記の方法により該疾患の診断が可能である。
当該プライマーDNAの塩基配列としては下記が挙げられる。
<1>下記(a)乃至(h)のいずれかの塩基配列中の任意の部分塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNA:
(a)配列番号9に記載される塩基配列;
(b)配列番号10に記載される塩基配列;
(c)配列番号11に記載される塩基配列;
(d)配列番号12に記載される塩基配列;
(e)配列番号13に記載される塩基配列;
(f)配列番号14に記載される塩基配列;
(g)配列番号15に記載される塩基配列;または、
(h)配列番号35に記載される塩基配列。
<2>該DNAが下記(a)乃至(q)のいずれかの塩基配列を有するDNA:
(a)配列番号18に記載される塩基配列;
(b)配列番号19に記載される塩基配列;
(c)配列番号20に記載される塩基配列;
(d)配列番号21に記載される塩基配列;
(e)配列番号22に記載される塩基配列;
(f)配列番号23に記載される塩基配列;
(g)配列番号24に記載される塩基配列;
(h)配列番号25に記載される塩基配列;
(i)配列番号26に記載される塩基配列;
(j)配列番号27に記載される塩基配列;
(k)配列番号28に記載される塩基配列;
(l)配列番号29に記載される塩基配列;
(m)配列番号30に記載される塩基配列;
(n)配列番号31に記載される塩基配列;
(o)配列番号32に記載される塩基配列;
(p)配列番号33に記載される塩基配列;または
(q)配列番号34に記載される塩基配列。
また、本発明は、上記DNA断片のポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)におけるプライマーDNAとしての使用に関する。
上述のようなPCRによる遺伝子増幅及びそれを解析することによる診断におけるPCRに用いられるプライマーDNAの組み合わせとしては、例えば下記を挙げることができる。
<1>配列番号31に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号32に記載される塩基配列を有するDNA;
<2>配列番号20に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号22に記載される塩基配列を有するDNA;
<3>配列番号21に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号30に記載される塩基配列を有するDNA;
<4>配列番号24に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号25に記載される塩基配列を有するDNA;
<5>配列番号23に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号27に記載される塩基配列を有するDNA;
<6>配列番号23に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号28に記載される塩基配列を有するDNA;
<7>配列番号23に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号29に記載される塩基配列を有するDNA;
<8>配列番号26に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号27に記載される塩基配列を有するDNA;
<9>配列番号26に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号28に記載される塩基配列を有するDNA;
<10>配列番号26に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号29に記載される塩基配列を有するDNA;
<11>配列番号34に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号28に記載される塩基配列を有するDNA;
<12>配列番号34に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号29に記載される塩基配列を有するDNA;
<13>配列番号33に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号29に記載される塩基配列を有するDNA;または
<14>配列番号18に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号19に記載される塩基配列を有するDNA。
さらに本発明は、上述の本発明のタンパクをコードするDNAを含有する組換えベクターに関する。本発明の組換えベクターとしては、原核細胞及び/または真核細胞の各種の宿主内で複製保持または自己増殖できるものであれば特に制限されず、プラスミドベクターおよびファージベクターが包含される。
当該組換えベクターは、簡便には当業界において入手可能な組換え用ベクター(プラスミドDNAおよびバクテリアファージDNA)に本発明のタンパクをコードするDNAを常法により連結することによって調製することができる。
用いられる組換え用ベクターとして具体的には、大腸菌由来のプラスミドとして例えばpBR322、pBR325、pUC12、pUC13、pUC19など、酵母由来プラスミドとして例えばpSH19、pSH15など、枯草菌由来プラスミドとして例えばpUB110、pTP5、pC194 などが例示される。また、ファージとしては、λファージなどのバクテリオファージが、さらにレトロウイルス、ワクシニヤウイルス、核多角体ウイルスなどの動物や昆虫のウイルス(pVL1393、インビトロゲン製)が例示される。
本発明のタンパクをコードするDNAを発現させ本発明のタンパクを生産させる目的においては、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、原核細胞および/または真核細胞の各種の宿主細胞中で本発明のタンパクをコードする遺伝子を発現し、これら蛋白質を生産する機能を有するものであれば特に制限されない。例えば、pMAL C2 、pEF-BOS(ヌクレイックアシッドリサーチ(Nucleic Acid Research)、第18巻、第5322頁、1990年等)あるいはpME18S(実験医学別冊「遺伝子工学ハンドブック」、1992年等)等を挙げることができる。
また、本発明のタンパクは他の別のタンパクとの融合蛋白として製造することもできる。例えば、GST(Glutathione S-transferase)との融合蛋白として調製する場合には、本発明の蛋白をコードするcDNAを、例えば、プラスミドpGEX4T1(Pharmacia製)中にサブクローニングし、大腸菌DH5αを形質転換して該形質転換体を培養することにより調製することができる。
宿主細胞として細菌、特に大腸菌を用いる場合、一般に発現ベクターは少なくともプロモーター−オペレーター領域、開始コドン、本発明のタンパクをコードするDNA、終止コドン、ターミネーター領域および複製可能単位から構成される。
宿主として酵母、動物細胞または昆虫細胞を用いる場合、発現ベクターは少なくともプロモーター、開始コドン、本発明のタンパクをコードするDNA、終止コドンを含んでいることが好ましい。またシグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、本発明のタンパクをコードする遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリアデニレーション部位、選択マーカー領域または複製可能単位などを含んでいてもよい。また、目的に応じて通常用いられる遺伝子増幅遺伝子(マーカー)を含んでいてもよい。
細菌中で本発明のタンパクを発現させるためのプロモーター−オペレータ−領域は、プロモーター、オペレーター及びShine-Dalgarno(SD) 配列(例えば、AAGGなど)を含むものである。例えば宿主がエシェリキア属菌の場合、好適にはTrpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、tacプロモーターなどを含むものが例示される。酵母中で本発明のタンパクを発現させるためのプロモーターとしては、PH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターが挙げられ、宿主がバチルス属菌の場合は、SL01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーターなどが挙げられる。また、宿主が哺乳動物細胞等の真核細胞である場合、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、ヒートショックプロモーターなどが挙げられる。好ましくは、SV40、レトロウイルスである。しかし、特にこれらに限定されるものではない。また、発現にはエンハンサーの利用も効果的な方法である。
好適な開始コドンとしては、メチオニンコドン(ATG)が例示される。
終止コドンとしては、常用の終止コドン(例えば、TAG、TGA、TAA)が例示される。
ターミネーター領域としては、通常用いられる天然または合成のターミネーターを用いることができる。
複製可能単位とは、宿主細胞中でその全DNA配列を複製することができる能力をもつDNAを言い、天然のプラスミド、人工的に修飾されたプラスミド(天然のプラスミドから調製されたDNAフラグメント)および合成プラスミド等が含まれる。好適なプラスミドとしては、E. coli ではプラスミドpBR322、もしくはその人工的修飾物(pBR322を適当な制限酵素で処理して得られるDNAフラグメント)が、酵母では酵母2μプラスミド、もしくは酵母染色体DNAが、また哺乳動物細胞ではプラスミドpRSVneo ATCC 37198、プラスミドpSV2dhfr ATCC 37145、プラスミドpdBPV-MMTneo ATCC 37224、プラスミドpSV2neo ATCC 37149等があげられる。
エンハンサー配列、ポリアデニレーション部位およびスプライシング接合部位については、例えばそれぞれSV40に由来するもの等、当業者において通常使用されるものを用いることができる。
選択マーカーとしては、通常使用されるものを常法により用いることができる。例えばテトラサイクリン、アンピシリン、またはカナマイシン等の抗生物質耐性遺伝子等が例示される。
遺伝子増幅遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、グルタミン酸合成酵素遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子、オルニチンデカルボキシラーゼ遺伝子、ヒグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ遺伝子、アスパルラートトランスカルバミラーゼ遺伝子等を例示することができる。
本発明の発現ベクターは、少なくとも、上述のプロモーター、開始コドン、本発明のタンパクをコードするDNA、終止コドンおよびターミネーター領域を連続的かつ環状に適当な複製可能単位に連結することによって調製することができる。またこの際、所望により制限酵素での消化やT4 DNAリガーゼを用いるライゲーション等の常法により適当なDNAフラグメント(例えば、リンカー、他の制限酵素切断部位など)を用いることができる。
本発明の形質転換細胞は、上述の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより調製することができる。
本発明で用いられる宿主細胞としては、前記の発現ベクターに適合し、形質転換されうるものであれば特に限定されず、本発明の技術分野において通常使用される天然細胞あるいは人工的に樹立された組換細胞など種々の細胞(例えば、細菌(エシェリキア属菌、バチルス属菌)、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属など)、動物細胞または昆虫細胞などが例示される。
好ましくは大腸菌あるいは動物細胞であり、具体的には大腸菌(DH5α、TB1、HB101等)、マウス由来細胞(COP、L、C127、Sp2/0、NS-1またはNIH3T3等)、ラット由来細胞(PC12,PC12h)、ハムスター由来細胞(BHK及びCHO等)、サル由来細胞(COS1、COS3、COS7、CV1及びVelo等)およびヒト由来細胞(Hela、2倍体線維芽細胞に由来する細胞、ミエローマ細胞およびHepG2等)などが例示される。
発現ベクターの宿主細胞への導入(形質転換(形質移入))は従来公知の方法を用いて行うことができる。
例えば、細菌(E.coli、Bacillus subtilis 等)の場合は、例えばCohenらの方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA., Vol.69, p.2110, 1972)、プロトプラスト法(Mol. Gen. Genet., Vol.168, p.111, 1979)やコンピテント法(J. Mol. Biol., Vol.56, p.209, 1971)によって、Saccharomyces cerevisiaeの場合は、例えばHinnenらの方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA., Vol.75, p.1927, 1978)やリチウム法(J. Bacteriol., Vol.153, p.163, 1983)によって、動物細胞の場合は、例えばGrahamの方法(Virology, Vol.52, p.456, 1973)、昆虫細胞の場合は、例えばSummersらの方法(Mol. Cell. Biol., Vol.3, p.2156-2165, 1983)によってそれぞれ形質転換することができる。
本発明のタンパクは、上記の如く調製される発現ベクターを含む形質転換細胞(以下、形質移入体を包含する意味で使用する。)を栄養培地で培養することによって製造することができる。
栄養培地は、宿主細胞(形質転換体)の生育に必要な炭素源、無機窒素源もしくは有機窒素源を含でいることが好ましい。炭素源としては、例えばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖などが、無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが例示される。また所望により他の栄養素(例えば、無機塩(例えば塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えばテトラサイクリン、ネオマイシン、アンピシリン、カナマイシン等)など)を含んでいてもよい。
培養は当業界において知られている方法により行われる。培養条件、例えば温度、培地のpHおよび培養時間は、本発明のタンパクが大量に生産されるように適宜選択される。
なお、下記に宿主細胞に応じて用いられる具体的な培地および培養条件を例示するが、何らこれらに限定されるものではない。
宿主が細菌、放線菌、酵母、糸状菌である場合、例えば上記栄養源を含有する液体培地が適当である。好ましくは、pHが5〜8である培地である。
宿主がE. coliの場合、好ましい培地としてLB培地、M9培地(Millerら、Exp. Mol. Genet、Cold Spring Harbor Laboratory, p.431, 1972)等が例示される。かかる場合、培養は、必要により通気、撹拌しながら、通常14〜43℃、約3〜24時間行うことができる。
宿主がBacillus属菌の場合、必要により通気、撹拌をしながら、通常30〜40℃、約16〜96時間行うことができる。
宿主が酵母である場合、培地として、例えばBurkholder最小培(Bostian, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.77, p.4505, 1980)が挙げられ、pHは5〜8であることが望ましい。培養は通常約20〜35℃で約14〜144時間行なわれ、必要により通気や撹拌を行うこともできる。
宿主が動物細胞の場合、培地として例えば約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地(Science, Vol.122, p.501, 1952)、 DMEM培地(Virology, Vol.8, p.396, 1959)、RPMI1640培地(J. Am. Med. Assoc., Vol.199, p.519, 1967)、199培地(proc. Soc. Exp. Biol. Med., Vol.73, p.1, 1950)等を用いることができる。培地のpHは約6〜8であるのが好ましく、培養は通常約30〜40℃で約15〜72時間行なわれ、必要により通気や撹拌を行うこともできる。
宿主が昆虫細胞の場合、例えば胎児牛血清を含むGrace's培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.82, p.8404, 1985)等が挙げられ、そのpHは約5〜8であるのが好ましい。培養は通常約20〜40℃で15〜100時間行なわれ、必要により通気や撹拌を行うこともできる。
本発明のタンパクは、上述のような形質転換細胞、特に動物細胞を培養し、培養上清中に分泌させることにより製造することができる。
得られた培養物を濾過または遠心分離等の方法で培養濾液(上清)を得、該培養濾液から天然または合成蛋白質を精製並びに単離するために一般に用いられる常法に従って該本発明のタンパクを精製、単離する。
単離、精製方法としては、例えば塩析、溶媒沈澱法等の溶解度を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動など分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーやヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーなどの荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動などの等電点の差を利用する方法などが挙げられる。
一方、本発明のタンパクが培養された形質転換体のペリプラズムまたは細胞質内に存在する場合(例えば、大腸菌)は、培養物を濾過または遠心分離などの常法に付して菌体あるいは細胞を集め、適当な緩衝液に懸濁し、例えば超音波やリゾチーム及び凍結融解などの方法で細胞等の細胞壁および/または細胞膜を破壊した後、遠心分離やろ過などの方法で本発明のタンパクを含有する膜画分を得る。該膜画分をトライトン−X100等の界面活性剤を用いて可溶化して粗溶液を得る。そして、当該粗溶液を先に例示したような常法を用いることにより、単離、精製することができる。
本発明のタンパクに包含されるヒト由来のAIDタンパクをコードするDNA(cDNAまたはゲノミックDNA)を用いれば、ヒトAID蛋白を生体内に分泌するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を作製することができる。即ち、該ヒト由来のDNAが、非ヒト哺乳動物(例えばマウス)の内在性遺伝子座上にインテグレート(integrate)されることにより、体内に該DNAによりコードされる本発明のヒトAID蛋白が発現、分泌される。このトランスジェニック非ヒト哺乳動物も本願の発明に属する。
該トランスジェニック非ヒト哺乳動物は、トランスジェニック動物の製造において通常使用されるような常法(例えば、最新動物細胞実験マニュアル、エル・アイ・シー発行、第7章、第361〜第408頁、1990年を参照)に従って作製することができる。
具体的には、例えば、トランスジェニックマウスの場合には、正常マウス胚盤胞(blastcyst)のから取得した胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell, ES Cell)を、本発明のヒトAID蛋白をコードする遺伝子及びマーカー遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子)が発現可能なように挿入された発現ベクターで形質転換する。該本発明のヒトAID蛋白をコードする遺伝子が内在性遺伝子上にインテグレートされたES細胞を、マーカー遺伝子の発現の有無に基づいて常法により選別する。次いで、選別したES細胞を、別の正常マウスから取得した受精卵(肺盤胞)にマイクロインジェクションする(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.77, No.12, pp.7380-7384, 1980;米国特許第4,873,191号公報)。
該胚盤胞を仮親としての別の正常マウスの子宮に移植する。そうして該仮親マウスから、ファウンダーマウス(子マウス)が生まれる。該ファウンダーマウスを正常マウスと交配させることによりヘテロトランスジェニックマウスを得る。該ヘテロ(heterogeneic)トランスジェニックマウス同士を交配することにより、メンデルの法則に従って、ホモ(homogeneic)トランスジェニックマウスが得られる。
また、本発明に包含されるマウスAID蛋白をコードするDNAの塩基配列に基づいて、いわゆる「ノックアウトマウス」を作製することができる。本発明における「ノックアウトマウス」とは、本発明のマウスAID蛋白をコードする内在性遺伝子がノックアウト(不活性化)されたマウスであり、例えば相同組換えを応用したポジティブネガティブセレクション法(米国特許第5,464,764号公報、同5,487,992号公報、同5,627,059号公報 、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.86, 8932-8935, 1989、Nature, Vol.342, 435-438, 1989など)を 用いて作製することができ、このようなノックアウトマウスも本発明の一態様である。
本発明における「抗体」とは、ポリクローナル抗体(抗血清)あるいはモノクローナル抗体を意味し、好ましくはモノクローナル抗体である。
具体的には、前述の本発明のタンパクまたはその断片(フラグメント)に反応性を有する抗体である。
本発明の「抗体」は、本発明のタンパク(天然体、組換体、合成物、細胞等)若しくはその断片、あるいは前述のような遺伝子組換技術により目的タンパクを高発現する形質転換体を、マウス、ラット、ハムスター、モルモットあるいはウサギ等の哺乳動物に免疫して得られる天然型抗体、遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体及びヒト型抗体(CDR-grafted抗体)、並び にヒト抗体産生トランスジェニック動物等を用いて製造され得るヒト抗体も包含する。
またモノクローナル抗体の場合には、IgG、IgM、IgA、IgDあるいはIgE等のいずれのアイソタイプを有するモノクローナル抗体をも包含する。好ましくは、IgGまたはIgMである。
本発明で言うポリクローナル抗体(抗血清)あるいはモノクローナル抗体は、既存の一般的な製造方法によって製造することができる。即ち、例えば、抗原を、必要に応じてフロイントアジュバント(Freund's Adjuvant)とともに、哺乳動物、好ましくは、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ウマあるいはウシ、より好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモットまたはウサギに免疫する。ポリクローナル抗体は、該免疫感作動物から得た血清から取得することができる。またモノクローナル抗体は、該免疫感作動物から得た該抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し、該ハイブリドーマをクローン化し、哺乳動物の免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することによって製造される。
モノクローナル抗体は、具体的には下記のようにして製造することができる。即ち、前述のような本発明のタンパク若しくはその断片あるいは該タンパクを発現している細胞等をを免疫原として、該免疫原を、必要に応じてフロイントアジュバント(Freund's Adjuvant)とともに、マウス、ラット、ハムスター、モルモットあるいはウサギ、好ましくはマウス、ラットあるいはハムスター(ヒト抗体産生トランスジェニックマウスのような他の動物由来の抗体を産生するように作出されたトランスジェニック動物を含む)の皮下内、筋肉内、静脈内、フッドパッド内あるいは腹腔内に1乃至数回注射するかあるいは移植することにより免疫感作を施す。通常、初回免疫から約1乃至14日毎に1乃至4回免疫を行って、最終免疫より約1乃至5日後に免疫感作された該哺乳動物から抗体産生細胞が取得される。
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの調製は、ケーラー及びミルシュタインらの方法(Nature, Vol.256, p.495-497, 1975)及びそれに準じる修飾方法に従って行うことができる。即ち、前述の如く免疫感作された哺乳動物から取得される脾臓、リンパ節、骨髄あるいは扁桃等、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生細胞と、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギまたはヒト等の哺乳動物、より好ましくはマウス、ラットまたはヒト由来の自己抗体産生能のないミエローマ細胞との細胞融合させることにより調製される。
細胞融合に用いられるミエローマ細胞としては、例えばマウス由来ミエローマP3/X63-AG8.653(653;ATCC No.CRL1580)、P3/NSI/1-Ag4-1(NS-1)、P3/X63-Ag8.U1(P3U1)、SP2/0-Ag14(Sp2/0、Sp2)、PAI、F0あるいはBW5147、ラット由来ミエローマ210RCY3-Ag.2.3.、ヒト由来ミエローマU-266AR1、GM1500-6TG-A1-2、UC729-6、CEM-AGR、D1R11あるいはCEM-T15を使用することができる。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンのスクリーニングは、ハイブリドーマを、例えばマイクロタイタープレート中で培養し、増殖の見られたウェルの培養上清の前述のマウス免疫感作で用いた免疫抗原に対する反応性を、例えばRIAやELISA等の酵素免疫測定法によって測定することにより行なうことができる。
ハイブリドーマからのモノクローナル抗体の製造は、ハイブリドーマをインビトロ、またはマウス、ラット、モルモット、ハムスターまたはウサギ等、好ましくはマウスまたはラット、より好ましくはマウスの腹水中等でのインビボで行い、得られた培養上清、または哺乳動物の腹水から単離することにより行うことができる。
インビトロで培養する場合には、培養する細胞種の特性、試験研究の目的及び培養方法等の種々条件に合わせて、ハイブリドーマを増殖、維持及び保存させ、培養上清中にモノクローナル抗体を産生させるために用いられるような既知栄養培地あるいは既知の基本培地から誘導調製されるあらゆる栄養培地を用いて実施することが可能である。
基本培地としては、例えば、Ham'F12培地、MCDB153培地あるいは低カルシウムMEM培地等の低カルシウム培地及びMCDB104培地、MEM培地、D-MEM培地、RPMI1640培地、ASF104培地あるいはRD培地等の高カルシウム培地等が挙げられ、該基本培地は、目的に応じて、例えば血清、ホルモン、サイトカイン及び/または種々無機あるいは有機物質等を含有することができる。
モノクローナル抗体の単離、精製は、上述の培養上清あるいは腹水を、飽和硫酸アンモニウム、ユーグロブリン沈澱法、カプロイン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52等)、抗イムノグロブリンカラムあるいはプロテインAカラム等のアフィニティカラムクロマトグラフィーに供すること等により行うことができる。
また、当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体をコードする遺伝子をクローニングし、トランスジェニック動物作製技術を用いて当該抗体コーディング遺伝子が内在性遺伝子に組み込まれたトランスジェニックなウシ、ヤギ、ヒツジまたはブタを作製し、当該トランスジェニック動物のミルク中から当該抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得することも可能である(日系サイエンス、1997年4月号、第78頁乃至84頁)。
本発明における「キメラ抗体」は、遺伝子工学的に作製されるモノクローナル抗体であって、具体的には、例えば、その可変領域がマウスイムノグロブリン由来の可変領域であり、かつその定常領域がヒトイムノグロブリン由来の定常領域であることを特徴とするマウス/ヒトキメラモノクローナル抗体等のキメラモノクローナル抗体を意味する。
ヒトイムノグロブリン由来の定常領域は、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE等のアイソタイプにより各々固有のアミノ酸配列を有するが、本発明における組換キメラモノクローナル抗体の定常領域はいずれのアイソタイプに属するヒトイムノグログリンの定常領域であってもよい。好ましくは、ヒトIgGの定常領域である。
本発明におけるキメラモノクローナル抗体は、例えば以下のようにして製造することができる。しかしながら、そのような製造方法に限定されるものでないことは言うまでもない。
例えば、マウス/ヒトキメラモノクローナル抗体は、実験医学(臨時増刊号)、第1.6巻、第10号、1988年及び特公平3-73280号公報等を参照しながら作製することができる。即ち、マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから単離した該マウスモノクローナル抗体をコードするDNAから取得した活性なVH遺伝子(H鎖可変領域をコードする再配列されたVDJ遺伝子)の下流に、ヒトイムノグロムリンをコードするDNAから取得したCH遺伝子(H鎖定常領域をコードするC遺伝子)を、また該ハイブリドーマから単離したマウスモノクローナル抗体をコードするDNAから取得した活性なVL遺伝子(L鎖可変領域をコードする再配列されたVJ遺伝子)の下流にヒトイムノグロムリンをコードするDNAから取得したCL遺伝子(L鎖定常領域をコードするC遺伝子)を、各々発現可能なように配列して1つ又は別々の発現ベクターに挿入し、該発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、該形質転換細胞を培養することにより作製することができる。
具体的には、まず、マウスモノクローナル抗体産生ハイブリドーマから常法によりDNAを抽出後、該DNAを適切な制限酵素(例えばEcoRI、HindIII等)を用いて消化し、電気泳動(例えば0.7%アガロースゲル使用)に付してサザンブロット法を行う。泳動したゲルを例えばエチジウムブロマイド等で染色し、写真撮影後、マーカーの位置を付し、ゲルを2回水洗し、0.25M HCl溶液に15分間浸す。次いで、0.4NのNaOH溶液に10分間浸し、その間緩やかに振盪する。常法により、フィルターに移し、4時間後フィルターを回収して2×SSCで2回洗浄する。フィルターを十分乾燥した後、ベイキング(75℃、3時間)を行う。ベイキング終了後に、該フィルターを0.1×SSC/0.1%SDS溶液に入れ、65℃で30分間処理する。次いで、3×SSC/0.1%SDS溶液に浸す。得られたフィルターをプレハイブリダイゼーション液と共にビニール袋に入れ、65℃で3〜4時間処理する。
次に、この中に32P標識したプローブDNA及びハイブリダイゼーション液を入れ、65℃で12時間程度反応させる。ハイブリダイゼーション終了後、適切な塩濃度、反応温度および時間(例えば、2×SSC/0.1%SDS溶液、室温、10分間)のもとで、フィルターを洗う。該フィルターをビニール袋に入れ、2×SSCを少量加え、密封し、オートラジオグラフィーを行う。
上記サザンブロット法により、マウスモノクローナル抗体のH鎖及びL鎖を各々コードする再配列されたVDJ遺伝子及びVJ遺伝子を同定する。同定したDNA断片を含む領域をショ糖密度勾配遠心にて分画し、ファージベクター(例えば、Charon 4A、Charon 28、λEMBL3、λEMBL4等)に組み込み、該ファージベクターで大腸菌(例えば、LE392、NM539等)を形質転換し、ゲノムライブラリーを作製する。そのゲノムライブラリーを適当なプローブ(H鎖J遺伝子、L鎖(κ)J遺伝子等)を用いて、例えばベントンデイビス法(Science, Vol.196, p.180-182, 1977)に従って、プラークハイブリダイゼーションを行い、再配列されたVDJ遺伝子あるいはVJ遺伝子を各々含むポジティブクローンを得る。得られたクローンの制限酵素地図を作製し、塩基配列を決定し、目的とする再配列されたVH(VDJ)遺伝子あるいはVL(VJ)遺伝子を含む遺伝子が得られていることを確認する。
一方、キメラ化に用いるヒトCH遺伝子及びヒトCL遺伝子を別に単離する。例えば、ヒトIgG1とのキメラ抗体を作製する場合には、CH遺伝子であるCγ1遺伝子とCL遺伝子であるCκ遺伝子を単離する。これらの遺伝子はマウス免疫グロブリン遺伝子とヒト免疫グロブリン遺伝子の塩基配列の高い相同性を利用してヒトCγ1遺伝子及びヒトCκ遺伝子に相当するマウスCγ1遺伝子及びマウスCκ遺伝子をプローブとして用い、ヒトゲノムライブラリーから単離することによって得ることができる。
具体的には、例えば、クローンIg146(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.75, p.4709-4713, 1978)からの3kbのHindIII-BamHI断片とクローンMEP10(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.78, p.474-478, 1981)からの6.8kbのEcoRI断片をプローブとして用い、ヒトのラムダCharon 4A のHaeIII-AluIゲノムライブラリー(Cell, Vol.15, p.1157-1174, 1978)中から、ヒトCκ遺伝子を含み、エンハンサー領域を保持しているDNA断片を単離する。また、ヒトCγ1遺伝子は、例えばヒト胎児肝細胞DNAをHindIIIで切断し、アガロースゲル電気泳動で分画した後、5.9kbのバンドをλ788に挿入し、前記のプローブを用いて単離する。
このようにして単離されたマウスVH遺伝子とマウスVL遺伝子、及びヒトCH遺伝子とヒトCL遺伝子を用いて、プロモーター領域及びエンハンサー領域などを考慮しながらマウスVH遺伝子の下流にヒトCH遺伝子を、またマウスVL遺伝子の下流にヒトCL遺伝子を、適切な制限酵素及びDNAリガーゼを用いて、例えばpSV2gptあるいはpSV2neo等の発現ベクターに常法に従って組み込む。この際、マウスVH遺伝子/ヒトCH遺伝子とマウスVL遺伝子/ヒトCL遺伝子のキメラ遺伝子は、一つの発現ベクターに同時に配置されてもよいし、各々別個の発現ベクターに配置することもできる。
このようにして作製したキメラ遺伝子挿入発現ベクターを、例えばP3X63・Ag8・653細胞あるいはSP210細胞といった、自らは抗体を産生していない骨髄腫細胞にプロトプラスト融合法、DEAE−デキストラン法、リン酸カルシウム法あるいは電気穿孔法等により導入する。形質転換細胞は、発現ベクターに導入された薬物耐性遺伝子に対応する薬物含有培地中での培養により選別し、目的とするキメラモノクローナル抗体産生細胞を取得する。
このようにして選別された抗体産生細胞の培養上清中から目的のキメラモノクローナル抗体を取得する。
本発明における「ヒト型抗体(CDR-grafted抗体)」は、遺伝子工学的に作製されるモノクローナル抗体であって、具体的には、例えば、その超可変領域の相補性決定領域の一部または全部がマウスモノクローナル抗体に由来する超可変領域の相補性決定領域であり、その可変領域の枠組領域がヒトイムノグロブリン由来の可変領域の枠組領域であり、かつその定常領域がヒトイムノグロブリン由来の定常領域であることを特徴とするヒト型モノクローナル抗体を意味する。
ここで、超可変領域の相補性決定領域とは、抗体の可変領域中の超可変領域に存在し、抗原と相補的に直接結合する部位である3つの領域(Complementarity-determining residue;CDR1、CDR2、CDR3)を指し、また可変領域の枠組領域とは、該3つ相補性決定領域の前後に介在する比較的保存された4つの領域(Framework;FR1、FR2、FR3、FR4)を指す。
換言すれば、例えばマウスモノクローナル抗体の超可変領域の相補性決定領域の一部または全部以外の全ての領域が、ヒトイムノグロブリンの対応領域と置き代わったモノクローナル抗体を意味する。
ヒトイムノグロブリン由来の定常領域は、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE等のアイソタイプにより各々固有のアミノ酸配列を有するが、本発明におけるヒト型モノクローナル抗体の定常領域はいずれのアイソタイプに属するヒトイムノグログリンの定常領域であってもよい。好ましくは、ヒトIgGの定常領域である。また、ヒトイムノグロブリン由来の可変領域の枠組領域についても限定されるものではない。
本発明におけるヒト型モノクローナル抗体は、例えば以下のようにして製造することができる。しかしながら、そのような製造方法に限定されるものでないことは言うまでもない。
例えば、マウスモノクローナル抗体に由来する組換ヒト型モノクローナル抗体は、特表平4−506458号公報及び特開昭62−296890号公報等を参照して、遺伝子工学的に作製することができる。即ち、マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから、少なくとも1つのマウスH鎖CDR遺伝子と該マウスH鎖CDR遺伝子に対応する少なくとも1つのマウスL鎖CDR遺伝子を単離し、またヒトイムノグロブリン遺伝子から前記マウスH鎖CDRに対応するヒトH鎖CDR以外の全領域をコードするヒトH鎖遺伝子と、前マウスL鎖CDRに対応するヒトL鎖CDR以外の全領域をコードするヒトL鎖遺伝子を単離する。
単離した該マウスH鎖CDR遺伝子と該ヒトH鎖遺伝子を発現可能なように適当な発現ベクターに導入し、同様に該マウスL鎖CDR遺伝子と該ヒトL鎖遺伝子を発現可能なように適当なもう1つの発現ベクターに導入する。または、該マウスH鎖CDR遺伝子/ヒトH鎖遺伝子とマウスL鎖CDR遺伝子/ヒトL鎖遺伝子を同一の発現ベクターに発現可能なように導入することもできる。このようにして作製された発現ベクターで宿主細胞を形質転換することによりヒト型モノクローナル抗体産生形質転換細胞を得、該形質転換細胞を培養することにより培養上清中から目的のヒト型モノクローナル抗体を得る。
本発明における「ヒト抗体」とは、イムノグロブリンを構成するH鎖の可変領域及びH鎖の定常領域並びにL鎖の可変領域及びL鎖の定常領域を含む全ての領域がヒトイムノグロブリンをコードする遺伝子に由来するイムノグロブリンである。
ヒト抗体は、常法に従って、例えば、少なくともヒトイムノグロブリン遺伝子をマウス等のヒト以外の哺乳動物の遺伝子座中に組込むことにより作製されたトランスジェニック動物を、抗原で免疫感作することにより、前述したポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体の作製法と同様にして製造することができる。例えば、ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスは、既報(Nature Genetics, Vol.15, p.146-156, 1997; Nature Genetics, Vol.7, p.13-21, 1994; 表平4-504365号公報;国際出願公開WO94/25585号公報;日経サイエンス、6月号、第40〜第50頁、1995年;Nature, Vol.368, p.856-859, 1994; 及び特表平6-500233号公報)に記載の方法に従って作製することができる。
本発明における「抗体の一部」とは、前述の本発明における抗体、好ましくはモノクローナル抗体の一部分の領域を意味し、具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv(variable fragment of antibody)、sFv、dsFv(disulphide stabilised Fv)あるいはdAb(single domain antibody)である(Exp. Opin. Ther. Patents, Vol.6, No.5, p.441-456, 1996)。
ここで、「F(ab')2」及び「Fab'」とは、イムノグロブリン(モノ クローナル抗体)を、蛋白分解酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより製造され、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体フラグメントを意味する。例えば、IgGをパパインで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領域)とCL(L鎖定常領域)からなるL鎖、及びVH(H鎖可変領域)とCHγ1(H鎖定常領域中のγ1領域)とからなるH鎖フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントを製造することができる。これら2つの相同な抗体フラグメントを各々Fab'という。またIgGをペプシンで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の下流で切断されて前記2つのFab'がヒンジ領域でつながったものよりやや大きい抗体フラグメントを製造することができる。この抗体フラグメントをF(ab')2という。
本発明の「タンパクまたはその断片に反応性を有するモノクローナル抗体を産生する細胞」とは、前述した本発明のモノクローナル抗体を産生する任意の細胞を意味する。
具体的には、下記が包含される。
(1)前述したとおりの、本発明のタンパク、その断片または該タンパクを産生する細胞等で非ヒト哺乳動物を免疫して得られる本発明のタンパクまたはその一部に反応性を有するモノクローナル抗体を産生する該非ヒト哺乳動物由来のモノクローナル抗体産生B細胞。
(2)そのようにして得られた抗体産生B細胞を哺乳動物由来のミエローマ細胞と細胞融合して得られる前述のハイブリドーマ(融合細胞)。
(3)該モノクローナル抗体産生B細胞またはモノクローナル抗体産生ハイブリドーマから単離される該モノクローナル抗体をコードする遺伝子(重鎖をコードする遺伝子若しくは軽鎖をコードする遺伝子のいずれか一方、または両方の遺伝子)により該B細胞及びハイブリドーマ以外の細胞を形質転換して得られるモノクローナル抗体産生形質転換細胞のいずれかを意味する。
ここで、前記(3)に記載のモノクローナル抗体産生形質転換細胞は、即ち、前記(1)のB細胞または(2)のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体の遺伝子組換え体を産生する遺伝子組換え細胞を意味する。この組換えモノクローナル抗体産生細胞は、前述したキメラモノクローナル抗体及びヒト型抗体の製造において使用される方法と同様にして製造することができる。
本発明の「医薬組成物」とは、前記で定義される本発明のタンパク若しくはその断片(フラグメント)、抗体または該抗体の一部のいずれかと、薬学的に許容され得る担体とからなる医薬組成物である。
ここで「薬学的に許容され得る担体」とは、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。そのような担体の一つ以上を用いることにより、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、注射剤、液剤、カプセル剤、トロー剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤あるいはシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成物は、経口あるいは非経口的に投与することができる。非経口投与のためのその他の形態としては、一つまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される外用液剤、腸溶内投与のための坐剤およびペッサリーなどが含まれる。
投与量は、患者の年齢、性別、体重及び症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは該医薬組成物に含有される活性成分(前記タンパクや抗体など)の種類などにより異なるが、通常成人一人当たり、一回につき10μgから1000mg (あるいは10μgから500mg)の範囲で投与することができる。しかしながら、投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量より少ない量で十分な場合もあり、また上記の範囲を越える投与量が必要な場合もある。
とりわけ注射剤の場合には、例えば生理食塩水あるいは市販の注射用蒸留水等の非毒性の薬学的に許容され得る担体中に0.1μg抗体/ml担体〜10mg抗体/ml担体の濃度となるように溶解または懸濁することにより製造することができる。このようにして製造された注射剤は、処置を必要とするヒト患者に対し、1回の投与において1kg体重あたり、1μg〜100mgの割合で、好ましくは50μg〜50mgの割合で、1日あたり1回〜数回投与することができる。投与の形態としては、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射あるいは腹腔内注射のような医療上適当な投与形態が例示できる。好ましくは静脈内注射である。
また、注射剤は、場合により、非水性の希釈剤(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類など)、懸濁剤あるいは乳濁剤として調製することもできる。
そのような注射剤の無菌化は、バクテリア保留フィルターを通す濾過滅菌、殺菌剤の配合または照射により行うことができる。注射剤は、用時調製の形態として製造することができる。即ち、凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することができる。
本発明の医薬組成物は、例えば、先天的な免疫系の異常を伴う原発性免疫不全症候群、主としてBリンパ球の欠損、減少あるいは機能異常により発症すると考えられている免疫不全症(例えば、伴性無γグロブリン血症、成長ホルモン欠乏を伴う伴性無γグロブリン血症、IgM高値を伴う免疫グロブリン欠乏症、選択的IgM欠損症、選択的IgE欠損症、免疫グロブリン重鎖遺伝子欠失変異症、κ鎖欠乏症、IgA欠乏症、IgGサブクラス選択的欠乏症、CVID(common variable immunodeficiency)、乳児一過性低γグロブリン血症、Rosen症候群、重症複合免疫不全症(伴性、常染色体劣性)、ADA(adenosine deaminase)欠損症、PNP(purine nucleoside phosphorylase)欠損症、MHCクラスII欠損症、細網異形成症、Wiskott-Aldrich症候群、ataxia telangiectasia、DiGeorge症候群、染色体異常、家族性Ig異化過多症、高IgE症候群、Gitlin症候群、Nezelof症候群、Good症候群、骨異形成症、トランスコバランミン症候群、セクレタリービース症候群、など)、後天的な原因により引き起こされた免疫系の傷害を伴う続発性免疫不全症候群(例えば、AIDSなど)であり抗体産生不全を伴う種々の疾患、及び/または種々のアレルギー性疾患(例えば、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、結膜炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性腸炎、薬剤性アレルギー、食品アレルギー、アレルギー性じんましん、糸球体腎炎など)の予防並びに治療、並びに該疾患に伴う種々の免疫異常に起因する病状を軽減するための医薬品として有用である。
前述した本発明のDNA、即ち、「配列番号7、9乃至15または35のいずれかに記載の塩基配列中の部分塩基配列を含むDNA若しくは該DNAの一部が化学修飾されているDNA、または該部分塩基配列に相補的な塩基配列を含むDNA若しくは該DNAの一部が化学修飾されているDNA」が包含される。
ここで、「部分塩基配列」とは、配列番号7、9乃至15または35のいずれかに記載の塩基配列中に含まれる任意の部位における任意の数の塩基からなる部分塩基配列を意味する。
当該DNAは、DNAハイブリダーゼーションまたはRNAハイブリダイゼーションの操作におけるプローブとして有用である。当該DNAをプローブとして用いる目的においては、該部分塩基配列としては、連続した20塩基以上の部分塩基配列が挙げられ、好ましくは、連続した50塩基以上の部分塩基配列、さらに好ましくは連続した100塩基以上の部分塩基配列、より好ましくは連続した200塩基以上の部分塩基配列、特に好ましくは連続した300塩基以上の部分塩基配列が挙げられる。
また、前述したとおり上記DNAは、PCRにおけるプライマーとしても有用である。該DNAをPCRプライマーとして用いる目的においては、該部分塩基配列としては、連続した5乃至100塩基の部分塩基配列が挙げられ、好ましくは、連続した5乃至70塩基の部分塩基配列、さらに好ましくは連続した5乃至50塩基の部分塩基配列、より好ましくは連続した5乃至30塩基の部分塩基配列が挙げられる。
さらに、上記DNAは、アンチセンス医薬としても有用である。即ち、該DNAは、本発明のAID蛋白をコードするDNAまたはRNAにハイブリダイズすることにより、該DNAのmRNAへの転写あるいは該mRNAのタンパクへの翻訳を阻害することができる。
上記DNAをアンチセンス医薬として用いる目的においては、該部分塩基配列としては、連続した5乃至100塩基の部分塩基配列が挙げられ、好ましくは、連続した5乃至70塩基の部分塩基配列、さらに好ましくは連続した5乃至50塩基の部分塩基配列、より好ましくは連続した5乃至30塩基の部分塩基配列が挙げられる。
また、このDNAをアンチセンス医薬として用いる場合には、該DNAが患者の体内に投与された場合の血中半減期の増大(安定性)、細胞内膜の透過性の増大、あるいは経口投与の場合の消化器官での分解耐性の増大若しくは吸収の増大などの目的のために、該DNAの塩基配列の一部に化学修飾を施すことが可能である。化学修飾としては、例えば、オリゴヌクレオチドの構造中のリン酸結合、リボース、核酸塩基、糖部位、3’及び/または5’末端等の化学修飾が挙げられる。
リン酸結合の修飾としては、1以上の該結合を、ホスホジエステル結合(D-オリゴ)、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合(S-オリゴ)、メチルホスホネート結合(MP-オリゴ)、ホスホロアミデート結合、非リン酸結合及びメチルホスホノチオエート結合のいずれかまたはそれらの組み合わせへの変更を挙げることができる。リボースの修飾としては、2'-フルオロリボースあるいは2'-0-メチルリボースへなどへの変更を挙げることができる。核酸塩基の修飾としては、5-プロピニルウラシルまたは2-アミノアデニンなどへの変更が挙げられる。
また、本発明の他の1つは、前述したとおりの「本発明のAID蛋白の産生またはAID蛋白をコードする遺伝子のmRNAへの転写を調節する物質を同定する方法」に関する。該本発明の方法は、即ち、「AID蛋白またはAID遺伝子の機能を制御する能力を有する薬剤を選別(スクリーニング)する方法である。
本発明の方法に用いられる細胞としては、本発明のAID蛋白を産生し得る細胞であればどのような細胞をも利用し得る。例えば、天然の細胞(特に好ましくはマウスまたはヒトの天然細胞)、本発明のAID蛋白をコードする遺伝子で形質転換され遺伝子組換え細胞、本発明のAID蛋白をコードするRNAが導入された細胞などが挙げられる。
該遺伝子組換え細胞の調製に用いられる宿主細胞としては、前述の本発明のDNAを用いて本発明のタンパクを発現させる方法について詳述した部分に記載された種々の細胞を用いることができる。
例えば、本発明の技術分野において通常使用される天然細胞あるいは人工的に樹立された組換細胞など種々の細胞(例えば、細菌(エシェリキア属菌、バチルス属菌)、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属など)、動物細胞または昆虫細胞などが例示される。
好ましくは動物細胞であり、具体的には、マウス由来細胞(COP、L、C127、Sp2/0、NS-1またはNIH3T3等)、ラット由来細胞(PC12、PC12h等)、ハムスター由来細胞(BHK及びCHO等)、サル由来細胞(COS1、COS3、COS7、CV1及びVelo等)およびヒト由来細胞(Hela、2倍体線維芽細胞に由来する細胞、HEK293細胞、ミエローマ細胞およびNamalwa等)などが例示される。
本発明における「物質」とは、自然界に存在する天然の物質あるいは人工的に調製される任意の物質を意味する。該物質は、「ペプチド性物質」と「非ペプチド性物質」に大別することができる。
該「非ペプチド性物質」としては、前述のアンチセンス医薬として有用な「部分塩基配列を含むDNAあるいはそれらを化学修飾した化学修飾DNA」、該アンチセンスDNAと同様の構造的及び薬理学的特徴を有する「アンチセンスRNA」あるいは化学的に合成された任意の「化合物」を挙げることができる。ここで、該「化合物」とは、DNA、RNA及び上記ペプチド性物質を除く化合物であって、分子量約100乃至約1000以下の化合物、好ましくは分子量約100乃至約800の化合物であり、より好ましくは分子量約100乃至約600の化合物を挙げることができる。
該「ペプチド性物質」としては、前記の詳述した本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体、特に好ましくは組換えヒト型モノクローナル抗体若しくはヒトモノクローナル抗体)、オリゴペプチドまたはそれらいずれかの化学修飾体を挙げることができる。オリゴペプチドとしては、5乃至30個のアミノ酸、好ましくは5乃至20個のアミノ酸からなるペプチドを挙げることができる。該化学修飾は、生体に投与された場合の血中半減期の増大あるいは経口投与時における消化管での分解に対する耐性若しくは吸収性の増大の目的等の種々の目的に応じて設計することができる。
本発明の方法の1つであり前記(24)乃至(28)に記載の方法には、所謂レポータージェーンアッセイ(reporter gene assay)が包含される。
「レポータータンパク」としては、蛍若しくはウミシイタケなどに由来するルシフェラーゼ、またはクラゲ由来のGFP(Green Fluorescence Protein)などが好ましい。
レポータージーンアッセイは、例えば、下記のような方法が代表的である。
標的蛋白をコードする遺伝子とレポーター蛋白をコードする遺伝子を、該標的蛋白遺伝子のmRNAへの転写のシグナルに依存して該レポータータンパクをコードする遺伝子のmRNAへの転写が起こるように挿入した発現ベクターで、遺伝子組換えタンパクの製造で一般的に使用される細胞を形質転換して遺伝子組換え細胞を作製する。得られた形質転換細胞に、被験物質(上述)を接触させる。該物質の作用に依存して発現される該標的蛋白のレベルを、該標的蛋白の発現と同時に発現される該レポータータンパクが発する蛍光の量を測定することにより間接的に測定することにより、該化合物が、トランスポーター分子の発現に影響を与えるか否かを分析する方法(例えば、米国特許第5,436,128号及び米国特許第5,401,629号を参照できる)。
また、本アッセイを用いた該化合物の同定は、マニュアル作業でも可能であるが、機械(ロボット)を用いて自動で行う所謂ハイスループットスクリーニング(High Throughput Screening)(組織培養工学, Vol.23, No.13, p.521-524;米国特許第5,670,113号)を用いることによりより迅速、簡便に行うことができる。
上記方法で用いられる「細胞」及び「物質」なる用語は、前記に定義したとおりの意味を有する。
該本発明の同定方法により同定された物質は、本発明のAID蛋白の機能亢進若しくは機能不全、あるいはAID遺伝子の機能不全若しくは変異などに起因すると考えられる上述したような種々の疾患(特に、種々の免疫不全症及びアレルギー性疾患)の治療あるいは該疾患に伴い併発する種々の病状の軽減のための医薬品として極めて有用である。
以下、実施例を以て本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が該実施例に記載される態様のみに限定されるものではないことは言うまでもない。
実施例1 マウスB細胞クローンCH12F3-2の培養及び性状の確認
本発明者らによって以前単離したIL-4、TGF-β及びCD40Lによる刺激の数時間後にIgMからIgAへのクラススイッチ組換え(CSR)を起こすマウスB細胞クローンCH12F3-2を既報と同様にして培養した(Immunity, Vol.9, p.1-10, 1998; Curr. Biol., Vol.8, No.4, p.227-230, 1998; Int. Immunol., Vol.8, No.2, p.193-201, 1996)。
該細胞CH12F3-2をIL-4、TGF-β及びCD40Lで刺激すると、刺激の数時間後にクラススイッチ組換えによりループアウトされるS領域(スイッチ領域)を含む環状DNAが検出される。
既報(Curr. Biol., Vol.8, No.4, p.227-230, 1998)と同様にして以下の操作を行った。
IL-4、TGF-β及びCD40Lで刺激した該B細胞CH12F3-2及び未刺激の該細胞の各々を、蛋白合成阻害剤であるシクロヘキシミド(cycloheximide; 200ng/ml)の存在下または非存在下で6時間培養した。各々の細胞から、ゲノムDNAを抽出し、該DNAを鋳型として常法に従ってPCRを行い、Sμ配列及びSα配列を含む環状DNAを増幅した。PCRは、一対のプライマーαF1及びμR3を用いたPCR、並びに一対のプライマーαF1及びμR3を用いたPCRを行った。
また、対照としてGAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)をコードするゲノムDNAも同様にPCRにより増幅した。
PCR産物を、エチジウムブロマイド染色によるゲル電気泳動に供した。この結果を図1(a)及び図2(a)に示す。
また、ループアウトされたS領域を含む環状DNAの増幅の有無を確認するため、マウスSα領域遺伝子をハイブリダイゼーションプローブとして用い、常法(L.Sambrook, E.F., Tom Maniatis., Second edition, Ed. Molecular Cloning (Nolan, C., Ed.), Cold Spring Harbour, 1989)に従って該PCR産物に対してサザンハイブリダイゼーションを行った。なお、該Sα遺伝子は、10kbのEcoRI切断断片IgH703をHindIII及びEarIで切断して得られる1,155bpのDNA断片を用いた(Genbank #D11468, DNA番号1993-3148)(J. Biol. Chem., Vol.268, p.4651-4655)。結果を図1(b)及び図2(b)に示す。
マウスB細胞CH12F3-2は、サイトカインの刺激によりクラススイッチ組換えに伴うSα配列を含むループアウトされたDNAが生じ、また該DNAの産生はシクロヘキシミドの存在により阻害されることが示された。このことから、免疫グロブリン遺伝子のクラススイッチ組換えが起こるためには、刺激の後の非常に早い段階での蛋白の新規合成が必要であり、該蛋白がクラススイッチの誘導に深く関与するものと推測された。
実施例2 サイトカイン刺激したマウスB細胞クローンCH12F3-2で発現が増強
される遺伝子の同定
マウスB細胞クローンCH12F3-2を刺激後の初期に発現し、免疫グロブリン遺伝子のクラススイッチ組換えの誘導を担うことが推測される遺伝子の該CH12F3-2細胞からの単離を、抑制PCR効果(Nucleic Acids Res., Vol.23, p.1087-1088, 1995)を利用したサプレッションサブトラクトハイブリダイゼーション法(supression subtract hybridization (SSH))(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.93, p.6025-6030, 1996; Anal. Biochem., Vol.240, p.90-97, 1996)により試みた。
実験操作は、サブトラクションクローニングに必要なcDNAライブラリーの調製は、PCR-Select Subtraction Kit(CLONTECH製、カタログ番号:K1804-1)を用い、該キットに添付の実験操作手順書に従って行った。
IL-4、TGF-β及びCD40Lで5時間刺激したマウスB細胞クローンCH12F3-2、同サイトカインで12時間刺激した同細胞、並びに未刺激の同細胞の各々から、既報(Nucleic Acids Res., Vol.26, No.4, p.911-918, 1998)と同様にしてpolyA+RNAを単離し、次いで、DNaseIで処理して混入しているかもしれないゲノムDNAを除去した。次いで、各々のpolyA+RNA試料を基に逆転写酵素を用い常法に従ってcDNAを調製した。前記サイトカインで各々5時間または12時間刺激したマウスB細胞クローンCH12F3-2から調製した各々のcDNAを各々当モル量で混合しテスターcDNA(tester cDNA)として用いた。一方、未刺激の細胞由来のcDNAをドライバーcDNA(driver cDNA)として用いた。
前記既報及び該実験操作マニュアルに従って、テスターcDNAにドライバーcDNAを加えサブトラクションを行った。なお、サブトラクションの効率は、テスターcDNAに、コントロールとして制限酵素HaeIIIで切断したφX174ファージDNAを少量(1:1000のモル比)加えることによりモニターした。サブトラクションの後、該ファージDNAをモル比で約100倍に濃縮した。
サブトラクションされたcDNA(subtracted cDNA)を、常法に従ってT-ベクター(Promega製)中にクローニングしプラスミドライブラリーを作製した。既報と同様にして、該ライブラリーの2,000コロニーを、ディファレンシャルハイブリダイゼーション法によりスクリーニングした(Nucleic Acids Res., Vol.26, No.4, p.911-918, 1998; 臨床免疫,Vol.29, No.Suppl.17, p.451-459, 1997)。なお、前記テスターcDNA及びドライバーcDNAの各々を放射性標識しハイブリダィゼーションプローブとして用いた。なお、レプリカントフルターにφX174ファージDNAをハイブリダイズさせることにより、φX174ファージDNAを含むクローンを区別した。
放射性標識ドライバーcDNAプローブよりも放射性標識テスターcDNAプローブに対してより強いシグナルを発する115クローンを同定し、各々のクローンの塩基配列をDNAシークエンサーを用いて決定した。
該各々のクローンに挿入されているDNAの放射性標識体をプローブとして用い、IL-4、TGF-β及びCD40Lで刺激したマウスB細胞クローンCH12F3-2あるいは未刺激の同細胞株から取得したmRNAに対して常法(L.Sambrook, E.F., Tom Maniatis., Second edition, Ed. Molecular Cloning (Nolan, C., Ed.), Cold Spring Harbour, 1989)によりノーザンブロッティングを行った。その結果、115クローンの内の23クローンで前記サイトカインの刺激に応じた発現増強が見られた。前記で決定した塩基配列情報から、該23クローンには、各々下記の3種類の既知蛋白をコードする遺伝子と4種類の新規蛋白をコードする遺伝子を含む7種類の別々の蛋白をコードする遺伝子の断片が挿入されていた。即ち、マウスB細胞クローンCH12F3-2では、IL-4、TGF-β及びCD40Lによる刺激により該7種類の遺伝子の発現が増強されることが分かった。
<既知蛋白>
(1)ABCD-1/MDC (8クローン)
(2)IFNγ受容体 (2クローン)
(3)I-a(MHC class II) (1クローン)
<新規蛋白>
(1)23C9 (3クローン)
(2)15B11 (7クローン)
(3)8B9 (1クローン)
(4)16A9 (1クローン)
これまでの報告から、マウス脾臓B細胞をIL-4及びCD40Lで刺激すると前記I-a遺伝子及びABCD/MDC遺伝子の発現が増強されることが知られていることから、本サブトラクションクローニングが有効に行われたことが確認された(J. Exp. Med., Vol.188, No.3, p.451-463, 1998; Immunity, Vol.5, No.4, p.319-330, 1996)。
実施例3 新規蛋白23C9のmRNAのマウスB細胞クローンCH12F3-2中での発現
IL-4、TGF-β及びCD40Lで刺激したマウスB細胞クローンCH12F3-2中での新規蛋白23C9をコードする遺伝子の発現の増強の程度を、常法(L.Sambrook, E.F., Tom Maniatis., Second edition, Ed. Molecular Cloning (Nolan, C., Ed.), Cold Spring Harbour, 1989)に従ってノーザンブロッティングにより解析した。
マウスB細胞クローンCH12F3-2を、下記のいずれかの試薬の存在下で12時間培養した。
(1)IL-4、TGF-β及びCD40Lのみ。
(2)蛋白合成阻害剤であるシクロヘキシミド(200ng/ml)のみ。
(3)IL-4、TGF-β及びCD40L並びにシクロヘキシミド(200ng/ml)。
次いで、前記実施例で取得した新規蛋白23C9をコードするcDNA断片(1,020bp)の放射性標識体をプローブとして用い、各々の処理細胞群から既報(Nucleic Acids Res., Vol.26, No.4, p.911-918, 1998)と同様にして取得したmRNA(各群10μg)に対して常法(L.Sambrook, E.F., Tom Maniatis., Second edition, Ed. Molecular Cloning (Nolan, C., Ed.), Cold Spring Harbour, 1989)によりノーザンブロッティングを行った。
対照試験として、前記いずれのサイトカイン及びシクロヘキシミドも加えないで培養したマウスB細胞クローンCH12F3-2由来のmRNAについても同様にノーザンブロッティングを行った。
なお、ゲル電気泳動するmRNAの量は、GAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)のmRNAを指標にして補正した。GAPDH mRNAのブロッティングのためのプローブは、GFプライマー及びGRプライマーを用いたRT-PCRにより増幅されたDNAを用いた(塩基位置:566-1016、Genbank U52599)(Immunity, Vol.9, p.1-10, 1998)。
結果を図3および図4に示す。
新規蛋白23C9のmRNAの発現は、IL-4、TGF-β及びCD40Lで刺激したマウスB細胞クローンCH12F3-2で非常に強く、一方、未刺激の細胞での発現は極めて弱かった。また、該刺激細胞でのmRNAの発現は、蛋白合成阻害剤の存在によって阻害された。また、該刺激細胞では、各々別々の長さの塩基長を有するmRNAの発現を示す2つのバンドが検出された。
前記と同様のノーザンブロッティングにより、元来クラススイッチ組換えをする機能を有していない下記の種々のマウス細胞株での新規蛋白23C9のmRNAの発現を調べた。
B細胞株(LyD9、BA/F3、70Z/3、WEHI231)、T細胞株(EL-4、2B4)、ミエローマ細胞株(X63、WEHI-3)。繊維芽細胞株(L929、NIH3T3)、他の細胞株(F2、P815、ST2)。
しかしながら、いずれの細胞においても新規蛋白23C9のmRNAの発現は見られなかった。
実施例4 新規蛋白23C9をコードする全長cDNAのクローニング
前記実施例で取得した新規蛋白23C9をコードするcDNA断片(1,020bp)をプローブとして用い、IL-4、TGF-β及びCD40Lで刺激したマウスB細胞クローンCH12F3-2から作製したcDNAライブラリー(Nucleic Acids Res., Vol.26, No.4, p.911-918, 1998)をスクリーニングして、4つの別々の陽性クローンを取得した。各々のクローン中のDNAの塩基配列を、常法に従って、DNAシークエンサーを用いて決定した。
1つのクローンは、1.2kbの塩基長を有し、また1つのポリアデニレーション部位を有する単一の読み取り枠(open reading frame; ORF)を有していた。他の3つのクローンは、2.4kbの塩基長を有し、2つのポリアデニレーション部位を有していた。後者のクローンの5'側の1.2kbの部分の塩基配列は、前者の1.2kbのDNAの塩基と同一であった(配列番号1)。
前記実施例3のノーザンブロッティングで検出された、異なる2つのmRNA転写物(図3および図4)は、各々3'側のpolyA部位及び5'側のpolyA部位を用いて転写された前記1.2kb及び2.4kbの各々のcDNAの転写物に対応するものと思われた。なお、前記でプローブとして用いた新規蛋白23C9をコードするcDNA断片(1,020bp)は、23C9の全長cDNAの847乃至1866番目の塩基配列であることが分かった。
各々のcDNAにおける最初の開始コドンの近傍の塩基配列は、コザックのルール(Kozak's rule)(Nucleic Acids Res., Vol.15, No.20, p.8125-8148, 1987)に適合していた。また、該2.4kbのcDNAには、3'側の非翻訳領域中に、mRNAの急速な分解を媒介することができるモチーフであるATTTA(Blood, Vol.83, No.11, p.3182-3187, 1994)が2箇所存在していた。
該新規蛋白23C9をコードするcDNAのORFは、分子量が約24kDaと算出される198個のアミノ酸から構成されていた(配列番号2)。データベースを用いた既知蛋白とのホモロジー検索の結果、新規蛋白23C9のORFのアミノ酸配列は、APOBEC-1(apolipoprotein B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-1)と34%のアミノ酸同一性を有していた(Science, VOl.260, No.5115, p.1816-1819, 1993; J. Biol. Chem., Vol.268, No.28, p.20709-20712, 1993)。なお、DNAデータベースとして、GenBank及びEMBLを利用した。蛋白データベースとしては、SwissPlotを利用した。また、データベース検索は、BLASTプログラム(J. Mol. Biol., Vol.215, No.3, p.403-410, 1990)及びFASTAプログラム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA., Vol.85, No.8, p.2444-2448, 1988)を用いて行った。
該新規蛋白23C9のORFのアミノ酸配列並びに該配列とマウスAPOBEC-1のアミノ酸配列とのアラインメント(alignment)を図5に示す。
PROSITE(Nucleic Acids Res., Vol.11, No.20, p.2013-2018, 1992)を用いてオンライン上でモチーフ検索を行った結果、該APOBEC-1様新規蛋白23C9は、大きなファミリーを形成するシトシン ヌクレオシド/ヌクレオチド デアミナーゼ ファミリー(cytosine nucloside/nucleotide deaminase family)に属する蛋白のアミノ酸配列中に保存されておりデアミナーゼ活性の活性部位であるシチジン/デオキシシチジンデアミナーゼモチーフ(cytidine/deoxycitidine deaminase motif)を有していた。シトシンヌクレオシド/ヌクレオチド デアミナーゼファミリーは、基質特異性及び活性部位の配列の相同性に基づいて、RNA編集デアミナーゼ(RNA editing deaminase)、シチジン/デオキシシチジレートデアミナーゼ(cytidine/deoxycytidylate deaminase)、及びCMP/dCMPデアミナーゼに分類される(Cell, Vol.81, No.2, p.187-195, 1995)。
UPGMA法により、RNA編集デアミナーゼであるAPOBEC-1、シトシンヌクレオシドデアミナーゼ、シトシンヌクレオチドデアミナーゼ、及び該新規蛋白23C9のシチジンデアミナーゼモチーフの領域のアラインメント(alignment)を基に系統樹(phylogenetic tree)を作成した。なお、比較に用いた既知蛋白の配列は下記のとおりGenBankより入手した。
ヒト由来ヌクレオシドデアミナーゼ: L27943
マウス由来ヌクレオシドデアミナーゼ: AA388666
S.subtilis由来ヌクレオシドデアミナーゼ: U18532
E.coli由来シチジンデアミナーゼ: X63144
ウサギ由来APOBEC-1: U10695
ヒト由来APOBEC-1: L25877
ラット由来APOBEC-1: U10695
マウス由来APOBEC-1: U21951
T2/T4ファージ由来ヌクレオチドデアミナーゼ: J05172
ヒト由来ヌクレオチドデアミナーゼ: L12136
S.cerevisies由来ヌクレオチドデアミナーゼ: U10397
結果を図6に示す。新規蛋白23C9のシチジンデアミナーゼモチーフは、ヌクレオシドデアミナーゼ及びヌクレオチドデアミナーゼのサブグループより寧ろRNA編集デアミナーゼのサブグループに近縁であった。
一方、APOBEC-1のC末端側に存在するロイシンに富んだ領域(Leucine-rich region)は、蛋白と蛋白との相互作用に重要であると考えられている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA., Vol.91, No.18, p.8522-8526, 1994; J. Biol. Chem., Vol.269, No.34, p.21725-21734, 1994)。該新規蛋白23C9も、そのC末端側にロイシンに富んだ領域(Leucine-rich region)を有していた。また、23C9の該領域中の4つのロイシンは、ウサギ、ラット、マウス及びヒトのAPOBEC-1のLeucine-rich region中に保存されていた。
また、APOBEC-1のRNAへの結合には、Phe66、Phe87、His61、Glu63及びCys93が必須であることが知られているが、これら全てのアミノ酸残基が23C9蛋白の一次構造中に保存されていた(Trends Genet., Vol.12, No.10, p.418-424, 1996; Cell, Vol.81, No.2, p.187-195, 1995; J. Biol. Chem., Vol.270, No.24, p.14768-14775, 1995; J. Biol. Chem., Vol.270, No.24, p.14762-14767, 1995)。この事実から23C9蛋白は、RNA編集デアミナーゼ活性を有することが推察される。
さらに、APOBEC-1及びE.coli由来のシチジンデアミナーゼ(ECCDA)は、それらのC末端側に、偽活性化部位ドメイン(pseudoactive site domain)を有することが知られているが、該23C9蛋白もAPOBEC-1と同様の偽活性化部位ドメインを有していた。これは、23C9蛋白が、他のグループのデアミナーゼ蛋白よりも、APOBEC-1及びECCDAに近縁であることを示している。
これらの事実から、該新規蛋白23C9を、AID(activation-induced cytidine deaminase)と命名した。以下新規蛋白23C9をAIDと称する。
実施例5 AID-GST融合蛋白の調製
前記実施例でクローニングしたAIDの全長をコードするcDNAを、一対のプライマーAID-138(配列番号3)及びAID-161(配列番号4)、一対のプライマーAID-118(配列番号5)及びAID-119(配列番号6)、並びにTaqポリメラーゼを用いたPCRにより常法に従って増幅した。AID-118とAID-119の間にはイントロンが存在するため、AIDゲノミックDNA配列に由来するPCR産物を容易に分別することができる。
得られたPCR産物を、常法に従ってpGEX4T1ベクター(Pharmacia製)中にサブクローニングした。ベクターの塩基配列を決定し、該ベクター中にクローニングされた全長AIDcDNAの塩基配列中にTaqポリメラーゼの使用に由来する点変異が存在しないことを確認した。
常法に従って、該ベクターで大腸菌DH5αを形質転換した。得られた形質転換体を培養し、全長AID cDNAを、GST(glutathione S-transferase)との融合蛋白として発現させた。AID-GST融合蛋白を、既報と同様にして、抽出した後、グルタチオンアガロースアフィニティークロマトグラフィー(glutathione agarose affinity chromatography)を用いて精製した(J. Biol. Chem., Vol.270, No.24, p.14768-14775, 1995)。
精製AID-GST融合蛋白の分子量を、常法に従って、10%SDS-PAGE及び銀染色法(silver staining)により分析した。なお、野生型の大腸菌DH5αから抽出した蛋白を対照として用いた。結果を図7に示す。
予期したとおり、融合蛋白は約49kDaの分子量を有するバンドとして検出された。該約49kDaの下方に検出されたマイナーバンドは、一般的に精製過程で頻繁に生ずる蛋白分解物であると考えられた。
また精製AID-GST融合蛋白の分子量を常法に従って、ウエスタンブロット法により分析した(Genomics, Vol.54, No.1, p.89-98, 1998)。本アッセイに使用する抗AID蛋白抗体は、市販の実験用ウサギに本発明のAID蛋白(配列番号:2)のアミノ酸番号116及至132番目に対応する合成ペプチドを含むマルチプル抗原ペプチド(Proc.Natl.Acad.Sci.USA., Vol.85, No.15, p.5409, 1988)を免疫して調製した。
結果を図8に示す。
実施例6 AID蛋白のシチジンデアミナーゼ活性
AIDのシチジンデアミナーゼ活性を、既報と同様にして測定した(J. Biol. Chem., Vol.270, No.24, p.14768-14775, 1995)。
前記で調製した精製AID-GST融合蛋白(2, 4, 6, 8, 10, 20, 40, 60, 100, 200, 300, 400, 及び600ng)を、3.3μCiの[3H]デオキシシチジン(24.8Ci/mmol,DuPont製)及び250μMシチジンとともに45mMのTrisを含む緩衝液(pH7.5、総量10μl)中で2乃至4時間インキュベーションした。次いで、デオキシシチジン(10μg/mlで2μl)及びデオキシウリジン(10μg/mlで2μl)を加えて反応を止めた。次いで、遠心分離により不溶性物質を除いた後、反応混合物(4μl)をポリエチレンイミンーセルロース薄層クロマトグラフィープレート(VWR製)に供した。プレートを、イソプロピルアルコール/10%HCl(7:2 v/v)中で展開させた。プレートを、紫外線(254nm)に曝して視覚化し、デオキシシチジン及びデオキシウリジンに対応するバンドをかき集めUltima Gold シンチレーション液中に加え、液体シンチレーション分光計(Packard製)で定量した。
結果を、図9に示す。この結果、AID蛋白は、濃度依存的なシチジンデアミナーゼ活性を示した。
また、AID-GST融合蛋白(300ng)のシチジンデアミナーゼ活性の、シチジンデアミナーゼの特異的阻害剤であるテトラヒドロウリジン(tetrahydrouridine, THU;0乃至40μM)(Calbiochem製、USA)による阻害効果を、前記と同様にして測定した。
結果を、図10に示す。AID蛋白のシチジンデアミナーゼ活性は、THUの濃度に依存して阻害された。
また、AID-GST融合蛋白(300ng)のシチジンデアミナーゼ活性の、亜鉛キレート化剤である1,10-o-phenanthroline(0乃至20mM)及びその不活性型異性体である1,7−o−phenanthroline(0乃至20mM)各々による阻害効果を、前記と同様にして測定した。
結果を、図11に示す。AID蛋白のシチジンデアミナーゼ活性は、20mMの1,10-o-phenanthrolineにより約91%阻害された。不活性型異性体である1,7-o-phenanthrolineでは、約13%しか阻害されなかった。この結果、AID蛋白は、APOBEC-1と同様に亜鉛依存的シチジンデアミナーゼであることが示された。
実施例7 AID蛋白のAU-rich RNAへの結合性
組換えAPOBEC-1は、AU-rich RNAに結合し(Trends Genet., Vol.12, No.10, p.418-424, 1996; Cell, Vol.81, No.2, p.187-195, 1995; J. Biol. Chem., Vol.270, No.24, p.14768-14775, 1995; J. Biol. Chem., Vol.270, No.24, p.14762-14767, 1995)、また補助因子を含むニワトリ抽出物の存在下でapoBのRNA編集を進行させる。
AID蛋白は、APOBEC-1と構造的類似性を有するとともに機能的なシチジンデアミナーゼ活性を有することから、AID蛋白のRNA編集活性を調べるために、APOBEC-1のRNA基質であるAU-rich RNA(5-AU)及びapoB RNAへの結合性を検討した。
ゲルリターデーションアッセイ(gel retardation assay)においては、AID蛋白は、AU-rich RNA(5-AU)に結合性を示さなかった。また、in vitro apoB RNAアッセイでは、C(シチジン)からU(ウリジン)への変換は見られなかった。
実施例8 AID mRNAの組織での発現分布
AID mRNAの各種組織での発現を、ノーザンブロッティングにより常法(L.Sambrook, E.F., Tom Maniatis., Second edition, Ed. Molecular Cloning (Nolan, C., Ed.), Cold Spring Harbour, 1989;実験医学・別冊、「遺伝子工学ハンドブック」、羊土社発行、p.133-140、1992年)に従って調べた。
試料としてのmRNAは、マウスの各種組織(筋肉、脾臓、肺、心臓、リンパ節、脳、腎臓、胸腺、精巣、肝臓)の各々に由来する細胞から既報(Nucleic Acids Res., Vol.26, No.4, p.911-918, 1998)と同様にして取得したpolyA+RNA(各2μg)を用いた。polyA+RNAのブロッティングのためのプローブは、前記実施例で取得したAID(23C9)をコードするcDNA断片(1,020bp)の放射性標識体をプローブとして用いた。
なお、対照として、GAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)のmRNAを同様にしてブロッティングした。GAPDH mRNAのブロッティングのためのプローブは、GFプライマー及びGRプライマーを用いたRT-PCRにより増幅されたDNAを用いた(塩基位置:566-1016、Genbank U52599)(Imunity, Vol.9, p.1-10, 1998)。
結果を図12に示す。
この結果、AID mRNAは、腸管膜リンパ節(mesenteric lymphnode)で強い発現が見られた。また、脾臓でも弱い発現が見られた。
実施例9 AID mRNAの各種リンパ性組織での発現
AID mRNAの各種リンパ性組織での発現を、常法(Imunity, Vol.9, p.1-10, 1998)に従ってRT-PCRにより解析した。
試料としてのmRNAは、マウスの各種リンパ性組織(パイエル板(Peyer's patch)、腸管膜リンパ節、腋窩リンパ節、脾臓、骨髄、胸腺)の各々に由来する細胞から既報(Nucleic Acids Res., Vol.26, No.4, p.911-918, 1998)と同様にして取得したpolyA+RNAを鋳型に、常法により逆転写酵素によりcDNAを調製した。得られたcDNAを鋳型に、PCRによりAID cDNA及びGAPDH cDNAを増幅した。AID cDNAのPCRには、前述の一対のプライマーAID-138(配列番号3)及びAID-161(配列番号4)、一対のプライマーAID-118(配列番号5)及びAID-119(配列番号6)、並びにTaqポリメラーゼを用いた。AID-118とAID-119の間にはイントロンが存在するため、AIDゲノミックDNA配列に由来するPCR産物を容易に分別することができる。
結果を図13に示す。
AID cDNAは、胸腺以外の全てのリンパ性組織で検出された。特に、リンパ節やパイエル板などの末梢リンパ器官で顕著な発現が見られた。一方、一次性リンパ器官での発現は該末梢リンパ器官での発現と比べ低いものであった。
実施例10 活性化マウスB細胞クローンCH12F3-2でのAID mRNAの経時的発現
IL-4、TGF-β及びCD40Lで0乃至60時間刺激したマウスB細胞クローンCH12F3-2中でのAID mRNAの経時的発現を、常法(L.Sambrook, E.F., Tom Maniatis., Second edition, Ed. Molecular Cloning (Nolan, C., Ed.), Cold Spring Harbour, 1989)に従ってノーザンブロッティングにより解析した。
マウスB細胞クローンCH12F3-2を、IL-4、TGF-β及びCD40Lの存在下で各種時間(0, 3, 5, 12, 24, 36, 48または60時間)培養した。
次いで、前記実施例で取得したAID(23C9)をコードするcDNA断片(1,020bp)の放射性標識体をプローブとして用い、各々の培養群から既報(Nucleic Acids Res., Vol.26, No.4, p.911-918, 1998)と同様にして取得したmRNA(各群10μg)に対して常法(L.Sambrook, E.F., Tom Maniatis., Second edition, Ed. Molecular Cloning (Nolan, C., Ed.), cold Spring Harbour, 1989)によりノーザンブロッティングを行った。
なお、ゲル電気泳動するmRNAの量は、GAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)のmRNAを指標にして補正した。GAPDH mRNAのブロッティングのためのプローブは、GFプライマー及びGRプライマーを用いたRT-PCRにより増幅されたDNAを用いた(塩基位置:566-1016、Genbank U52599)(Immunity, Vol.9, p.1-10, 1998)。
結果を図14に示す。
マウスB細胞クローンCH12F3-2でのAID mRNAの発現は、サイトカインによる刺激がない場合には検出不可能な程度であるが、サイトカイン(上述)の刺激により、刺激後約3時間で発現が始まり、約12時間後に最大の発現(約15倍以上)に至り、48時間後から次第に減少することが示された。
実施例11 マウスB細胞クローンCH12F3-2でのAID mRNAの発現誘導のサイトカ
イン特異性
マウスB細胞クローンCH12F3-2中でのAID mRNAの発現誘導のサイトカイン特異性を、常法(L.Sambrook, E.F., Tom Maniatis., Second edition, Ed. Molecular Cloning (Nolan, C., Ed.), Cold Spring Harbour, 1989)に従ってノーザンブロッティングにより解析した。
マウスB細胞クローンCH12F3-2を、各種組み合わせのサイトカイン(IL-4、TGF-β及びCD40Lから選ばれる1以上)の存在下で12時間培養した。
次いで、前記実施例で取得したAID(23C9)をコードするcDNA断片(1,020bp)の放射性標識体をプローブとして用い、各々の培養群から既報(Nucleic Acids Res., Vol.26, No.4, p.911-918, 1998)と同様にして取得したmRNA(各群10μg)に対して常法(L.Sambrook, E.F., Tom Maniatis., Second edition, Ed. Molecular Cloning (Nolan, C., Ed.), Cold Spring Harbour, 1989)によりノーザンブロッティングを行った。
なお、ゲル電気泳動するmRNAの量は、GAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)のmRNAを指標にして補正した。GAPDH mRNAのブロッティングのためのプローブは、GFプライマー及びGRプライマーを用いたRT-PCRにより増幅されたDNAを用いた(塩基位置:566-1016、Genbank U52599)(Immunity, Vol.9, p.1-10, 1998)。
結果を図15に示す。
AID-mRNAの発現誘導は、いずれか1種類のみのサイトカインでは小さなものであった。一方、上記上記3種類のサイトカインを同時に用いた場合には、AID-mRNAの最大の発現誘導が見られた。
前記実施例3で示したように、AID mRNAの発現誘導は蛋白合成阻害剤であるシクロヘキシミドにより阻害されることから、AID mRNAの発現増強には、蛋白の新規合成(de novo synthesis)が必要であると考えられる。
実施例12 刺激による脾臓B細胞でのAID mRNAの発現誘導
B細胞を活性化し免疫グロブリン遺伝子のクラススイッチ組換えを誘導するような刺激による脾臓B細胞でのAID mRNAの発現誘導の有無を検討した。
BALB/cマウス(6乃至12週齢、清水実験材料(SLC)製)から常法に従って脾臓B細胞を精製、取得した。なお、死細胞及び細胞断片は、T細胞除去の工程の後、フィコール密度勾配遠心法により除去した。該精製脾臓B細胞を、既報(Nucleic Acids Res., Vol.26, No.4, p.911-918, 1998)と同様にして各種組み合わせの刺激物質(IL-4、TGF-β、CD40L及びLPS(lipopolysaccharide)から選ばれる1以上)の存在下で4日間培養した。なお、LPSは、Salmonella typhosa由来のLPS(50μg/ml、Sigma製)を用いた。
次いで、前記実施例で取得したAID(23C9)をコードするcDNA断片(1,020bp)の放射性標識体をプローブとして用い、各々の培養群から既報(Nucleic Acids Res., Vol.26, No.4, p.911-918, 1998)と同様にして取得したmRNA(各群15μg)に対して常法(L.Sambrook, E.F., Tom Maniatis., Second edition, Ed. Molecular Cloning (Nolan, C., Ed.), Cold Spring Harbour, 1989)によりノーザンブロッティングを行った。
なお、ゲル電気泳動するmRNAの量は、GAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)のmRNA及び28S ribosomal RNAを指標にして補正した。GAPDH mRNAのブロッティングのためのプローブは、GFプライマー及びGRプライマーを用いたRT-PCRにより増幅されたDNAを用いた(塩基位置:566-1016、Genbank U52599)(Immunity, Vol.9, p.1-10, 1998)。
結果を図16に示す。
正常マウス脾臓B細胞では、LPSのみ、LPS+IL-4、、またはLPS+TGF-βによる刺激によりAID mRNAの発現増強が見られた。
実施例13 AID mRNAのin vivoでの発現誘導
各種刺激によるAID mRNAのin vitroでの発現誘導が、in vivoでも起こるか否かを試験した。
BALB/cマウス(6乃至12週齢、各群5匹、SLC製)を、羊赤血球(SRBC; sheep red blood cell)(1×108個、Cosmo Bio.製)を腹腔内投与することにより免疫した。羊赤血球を免疫された生体では、免疫応答に続いて、クローナル細胞増幅(clonal expansion)及び胚中心形成(germinal center formation)が起き免疫グロブリン遺伝子のクラススイッチ組換え及びアフィニティーマチュレーションが引き起こされることが知られている。
免疫前(0日)、並びに免疫後(2、5及び13日目)の各々に切除した脾臓(各群5匹)から単離した脾臓細胞からpolyA+RNAを調製した。
該polyA+RNA(各2μg)を、前記実施例と同様にして、AID(23C9)をコードするcDNA断片(1,020bp)の放射性標識体をプローブとして用いるノーザンブロッティングに供した。なお、ゲル電気泳動するmRNAの量は、前記実施例と同様にGAPDHのmRNAを指標にして補正した。
結果を図17に示す。
AID mRNAの発現は、SRBCの免疫前(0日)においては最低量しか検出されなかったが、免疫後5日目及び13日目においては有意な発現増強(約4乃至5倍)が見られた。
さらに、SRBCで免疫されたマウス脾臓細胞の内のどの細胞種でAID mRNAの発現増強が起こっているのかを、常法(Imunity, Vol.9, p.1-10, 1998)に従ってRT-PCRを用いて解析した。
上述と同様にしてSRBCの免疫から5日後に取得した脾臓から取得した脾臓細胞から、常法により赤血球を除いた後、既報(Eur. J. Immunol., Vol.3, No.10, p.645-649, 1973)と同様にしてナイロン繊維(和光純薬製)を用いてT細胞と非T細胞に分けた。T細胞分画には、CD3陽性細胞が90%以上含まれており、またB220陽性細胞は20%以下であった。次いで、抗CD19抗体が接合させたマグネティックビーズ(Miltenyi Biotec.製)を用いるMACS法により、T細胞分画の濃縮(B細胞の除去)並びにB細胞分画の濃縮を行った。CD19陽性細胞を除いた分画に含まれるB220陽性B細胞は5%以下であった。一方、CD19陽性細胞を濃縮した分画に含まれるB220陽性B細胞は60%以上であった。
分画された各々の細胞群から調製したpolyA+RNAを鋳型に、常法により逆転写酵素によりcDNAを調製した。得られたcDNAを鋳型に、PCRによりAID cDNA及びGAPDH cDNAを増幅した。AID cDNAのPCRには、前述の一対のプライマーAID-138(配列番号3)及びAID-161(配列番号4)、一対のプライマーAID-118(配列番号5)及びAID-119(配列番号6)、並びにTaqポリメラーゼを用いた。
結果を図18に示す。
この結果、CD19陽性B細胞分画及び非T細胞分画において、AID cDNAの増幅が見られた。即ち、SRBCによる免疫により誘導されるAID mRNAの発現増強は、脾臓のCD19陽性B細胞で起こることが示された。
実施例14 AID mRNAの発現のリンパ性器官における局在
前記実施例の結果から、脾臓におけるAID mRNAの発現の増強のタイミングは、SRBCによる免疫後の胚中心(germinal center; GC)の形成の開始とほぼ一致していることが分かった。本試験では、リンパ性器官でのAID mRNAの発現の正確な局在をin situ hybridization法を用いて解析した。
AID蛋白をコードするcDNAがサブクローニングされているpGEX4T1ベクター(前記実施例)を、EcoRI及びXhoIで消化して切り出したAID cDNAを、プラスミドpBluescriptSK(+)(Stratagene製)中にサブクローニングした。次いで、該プラスミドをEcoRIまたはXhoIで消化して得た線状化プラスミドDNAを鋳型とし、ジゴキシゲニン(digoxigenin)標識rUTP(Boehringer-Mannheim製)の存在下で、T3 RNAポリメラーゼまたはT7 RNAポリメラーゼを用いてRNAへ転写し、ジゴキシゲニン標識したアンチセンスプローブ及びセンスプローブを各々調製した。
一方、リンパ性器官標本として正常マウスの脾臓及びパイエル板の各々からパラホルムアルデヒドで固定化した凍結組織切片を調製した。また、前記実施例と同様に正常マウスをSRBCで免疫し、免疫後5日目に取得した脾臓からパラホルムアルデヒドで固定化した凍結組織切片を調製した。
各々の固定化切片を備えたスライドに該ジゴキシゲニン標識アンチセンスAIDプローブまたはセンスAIDプローブを加えてハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイズしたジゴキシゲニン標識AIDプローブを、アルカリンフォスファターゼを接合させた抗ジゴキシゲニン抗体を用いて検出した。プローブ上のジゴキシゲニンに結合した抗ジゴキシゲニン抗体の局在を、フォスファターゼ反応物(暗い紫様の色)を検出することにより同定した。なお、この解析は、光学顕微鏡(light transmission microscope)を用いて行った。
また、本試験におけるin situ hybridization及びリボプローブ(riboprobe)の検出は、既報と同様にして行った(J. Comp. Neurol., Vol.333, No.3, p.398-416, 1993)。
各組識切片の胚中心の位置は、FITCを接合させたPNA(Vector製)で染色し、蛍光顕微鏡で観察して同定した。
結果を図19及び図20に示す。
アンチセンスAIDプローブを用いた試験においては、SRBC免疫マウス(免疫後5日目)由来の脾臓組織切片において複数の明瞭な限局性シグナル(focal signals)が観察されたが(図19(E)及び図20(E))、SRBCにより免疫を施していないマウス由来の脾臓組織切片では、シグナルが検出されなかった(図19(B)及び図20(B))。この結果は、前記実施例で得られたノーザンブロッティングの結果(図17)と一致していた。FITC標識PNAによる染色により、SRBC免疫マウス(免疫後5日目)由来の脾臓組織切片(図19(F)及び図20(F))、並びに正常パイエル板(図20(I))の両方ともに胚中心の存在が認められた。また、該両組織切片におけるAID mRNAの発現も、胚中心に一致して局在していることが分かった。
なお、センスAIDプローブを用いた試験では、SRBCによる免疫の有無に拘らず、脾臓及びパイエル板のいずれの組織切片においてもバックグラウンドとしてのシグナルが検出されなかった。
この結果から、AID mRNAの発現誘導は、抗原による刺激により活性化された胚中心B細胞で特異的に起こることが示された。
実施例15 ヒト由来AID蛋白をコードするゲノミックDNAの単離
<15-1> ハイブリダイゼーション用プローブの作製
実施例5で作製したマウスAID蛋白の全長をコードするcDNAをプラスミドベクターpGEX4T1に挿入して作製した発現ベクターを鋳型として、一対のPCRプライマー(プライマー170:配列番号16、及びプライマー181:配列番号17)を用いて上述したとおりの常法に従ってPCRを行った。
得られたPCR産物を上述したとおりの常法により精製し、精製DNAの塩基配列をダイレクトシークエンス法で決定し、当該精製DNAが、マウスAID蛋白の全長をコードする塩基配列に相違ないことを確認した。この精製DNAを以下の実験におけるハイブリダイゼーション用プローブとして用いた。
<15-2> ヒトゲノミックDNAライブラリーのスクリーニング
前記で調製したプローブを、上述したノーザンプロッティングにおける放射性標識と同様の方法により放射性同位体で標識した放射性標識プローブとした。
当該標識プローブを用いて、市販のヒトゲノミックDNAライブラリー(カタログ番号:HL1067j; ロット番号:45003;CLONETECH製)を、常法に従ってクロスハイブリダイゼーション法によりスクリーニングした。
ハイブリダイゼーション後の洗浄は、2×SSC(0.1%SDS含有、室温下、10分)で2回、及び2×SSC(0.1%SDS含有、65℃、30分)で2回行った。ファージDNAのサブクローニングは、ファージDNAを精製した後、該ファージDNA中のNotIで切り出して得られる約22kbのゲノミックDNAをプラスミドpZero-2.1のNotI制限酵素部位に挿入することにより行った。このプラスミドを3CpZeroと命名した。
3CPZeroをPstIで消化して得られるDNA断片を、プラスミドpBlueScript KS(東洋紡)のPstI部位に連結し、この連結DNAで大腸菌を形質転換した。
常法に従って上記で調製した標識プローブを用いてコロニーハイブリダーゼーション法により、形質転換細胞をスクリーニングし、複数の陽性クローンを得た。
各々の陽性クローンに挿入されているヒトゲノミックDNAの塩基配列を解析し、ヒトAID蛋白をコードするDNAのゲノミックDNAを含む複数のクローンを同定した。
該複数のクローンのうちの2つのクローン中に含まれるヒトAID蛋白をコードするDNAを含むゲノミックDNAの塩基配列の各々を、配列番号9及び配列番号10に記載した。
さらに他の陽性クローンに含まれるヒトAID蛋白をコードするDNAを含むゲノミックDNAの塩基配列を、配列番号35に記載した。
実施例16 ヒトAID蛋白全長をコードするcDNAの単離及びヒトAID蛋白の調製
得られたヒトAID蛋白のコーディング領域を含むゲノミックDNAの塩基配列を、上述で決定したマウスAID蛋白の全長をコードするcDNA配列と比較することにより、該ヒトゲノミックDNA中のヒトAID蛋白コーディング領域を推定した。
推定されたヒトAID蛋白のコーディング領域の塩基配列を基に一対のRACE-PCR用のプライマーを設計した(プライマー22:配列番号18、及びプライマー25:配列番号19)。
既報(J. Biol. Chem., Vol.274, p.18470-18476, 1999)に従ってヒトB Lymphoma細胞株RAMOSから調製したmRNAを鋳型として、上記一対のプライマーを用いて常法に従ってRACE-PCRを行った。得られたPCR産物の塩基配列を決定し、ヒトAID蛋白の全長をコードするcDNAを得た(cDNA配列:配列番号7、及びアミノ酸配列:配列番号8)。
その結果、ヒトAID蛋白(配列番号8)は、マウスAID蛋白(配列番号2)と非常に高いアミノ酸配列同一性を有していた(図22)。また、AID蛋白の活性領域であるシチジン・デオキシシチジン・デアミナーゼ・亜鉛結合領域(cytidine and deoxycytidilate deaminases zinc-binding region)のアミノ酸配列(マウスAID及びヒトAIDともに、アミノ酸番号:56乃至94)は、マウスとヒトの間で完全に一致していた(保存されていた)。
なお、抗AID蛋白抗体の作製(実施例5)に用いたマウスAID蛋白の部分アミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸番号116及至132番目)は、ヒトAID蛋白の対応アミノ酸配列(配列番号8のアミノ酸番号116乃至132番目)と完全に一致することから、該抗体AID蛋白抗体はマウスAID蛋白だけでなくヒトAID蛋白にも交叉反応性を有することが期待された。
ヒトAID蛋白のN末にHisタグ(ヒスチジンの10回繰り返しペプチド)が付加されたHis-AID融合蛋白が産生されるように常法に従って遺伝子工学的に前記で得たヒトAID cDNAを再構成した後、プラスミドpEF-BOS(特開平2-242687号公報)に挿入し発現ベクターを作成した。該ベクターを、リポフェクタミン(GIBCO BRL製)を用いたリポフェクションにより常法に従って、サル腎臓由来細胞株COS7に導入した。得られた遺伝子導入細胞を常法に従ってを培養し、His-ヒトAID融合蛋白を一過性に発現させた。His-ヒトAID融合蛋白を、既報と同様にして抽出、精製した後、His-ヒトAID融合蛋白の産生を、常法に従って、実施例5で調製した抗AID抗体及び市販の抗Hisタグ抗体を用いたウェスタンブロッティングにより分析した。その結果、該His-AID蛋白は、いずれの抗体を用いた場合も、約31kDaの分子量を有するバンドとして検出された。
実施例17 ヒトAID蛋白をコードするゲノミックDNAのエクソンの決定
前記ヒトAID蛋白の全長をコードするcDNAの塩基配列の情報をもとに、前記で得たヒトAID蛋白をコードするゲノミックDNAの塩基配列中のエクソンを決定した。
その結果、5つのエクソンから構成されることが判明した。
エクソン1(塩基配列:配列番号11);
エクソン2(塩基配列:配列番号12);
エクソン3(塩基配列:配列番号13);
エクソン4(塩基配列:配列番号14);及び
エクソン5(塩基配列:配列番号15)。
なお、エクソン1には、ヒトAID蛋白の最初のメチオニン(配列番号8のアミノ酸番号1)をコードする翻訳開始コドンATGが含まれ、該開始コドンは、配列番号11の塩基番号80乃至82番目に対応する。
即ち、前記実施例で得たヒトAIDをコードするDNAを含むゲノミックDNA(配列番号9、配列番号10及び配列番号35)は、下記のとおりのイントロン及びエクソンから構成されており、全長約11kbを有していた。該構成を図23に模式的に示す。
<配列番号9>
イントロン:塩基番号1乃至1031
エクソン1:塩基番号1032乃至1118
イントロン:塩基番号1119乃至5514
<配列番号10>
イントロン:塩基番号1乃至1064
エクソン2:塩基番号1065乃至1212
イントロン:塩基番号1213乃至2591
エクソン3:塩基番号2592乃至2862
イントロン:塩基番号2863乃至3155
エクソン4:塩基番号3156乃至3271
イントロン:塩基番号3272乃至3740
エクソン5:塩基番号3741乃至5912
イントロン:塩基番号5913乃至6564
<配列番号35>
イントロン:塩基番号1乃至411
エクソン1:塩基番号442乃至528
イントロン:塩基番号529乃至6279
エクソン2:塩基番号6280乃至6427
イントロン:塩基番号6428乃至7806
エクソン3:塩基番号7807乃至8077
イントロン:塩基番号8078乃至8370
エクソン4:塩基番号8371乃至8486
イントロン:塩基番号8487乃至8955
エクソン5:塩基番号8956乃至11067
イントロン:塩基番号11068乃至11204
実施例18 ヒトAID蛋白をコードするゲノミックDNAの任意の部分塩基配列の
PCRによる増幅、並びに該部分塩基配列中の変異の有無の診断
本発明のAID蛋白は、種々の免疫不全症やアレルギー性疾患の発症に関与している可能性がある。例えば、ある免疫不全症またはアレルギー性疾患がAIDタンパクをコードするゲノミックDNA(特にエクソン)の塩基配列に変異あるいは欠失がその原因の一つである可能性もある。
そのようなゲノムDNAの変異または欠失の存否は、下記のようなPCRにより解析することができる。
(1)本発明のAID蛋白をコードするゲノミックDNAの任意の部分塩基配列に相補的な塩基配列を有する一対のプライマーDNAを作製する。
(2)免疫不全症患者またはアレルギー患者の組織または細胞から取得したAIDタンパクをコードするゲノミックDNAを鋳型として、該一対のプライマーDNAを用いて、該ゲノミックDNAの目的の部分塩基配列を増幅する。
(3)PCR産物の有無、及び該PCR産物の塩基配列を解析し、該塩基配列と健常人由来のAIDタンパクをコードするゲノミックDNA中の対応塩基配列とを比較することにより該ゲノミックDNA中の変異または欠失を同定する。
即ち、この方法は、例えば、免疫不全症やアレルギー性疾患とAIDタンパクとの関連性を解明できるだけでなく、AIDタンパクがある種の疾患(例えば、免疫不全症及びアレルギー性疾患)の発症の原因である場合には、上記の方法により該疾患の診断が可能である。
上記の目的で、ヒトAID蛋白をコードするゲノミックDNAの任意の部分塩基配列を基に、下記15種類のプライマーDNAを設計、調製した。
プライマー:p3(配列番号20);
プライマー:p9(配列番号21);
プライマー:p10(配列番号22);
プライマー:p12(配列番号23);
プライマー:p14(配列番号24);
プライマー:p16(配列番号25);
プライマー:p17(配列番号26);
プライマー:p19(配列番号27);
プライマー:p26(配列番号28);
プライマー:p29(配列番号29);
プライマー:p36(配列番号30);
プライマー:p48(配列番号31);
プライマー:p59(配列番号32);
プライマー:p85(配列番号33);及び
プライマー:p86(配列番号34)。
上記プライマーを下記のような組み合わせにより一対のプライマーとして用い、また、ヒトB Lymphoma細胞RAMOSから単離したゲノミックDNAを鋳型として、PCRにより各々の目的のヒトAID蛋白をコードするゲノミックDNAの部分塩基配列を増幅した。各々のプライマーペアにより増幅されるゲノミックDNA部分配列の相対的位置を図21に示した。
<1>配列番号31に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号32に記載される塩基配列を有するDNA;
<2>配列番号20に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号22に記載される塩基配列を有するDNA;
<3>配列番号21に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号30に記載される塩基配列を有するDNA;
<4>配列番号24に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号25に記載される塩基配列を有するDNA;
<5>配列番号23に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号27に記載される塩基配列を有するDNA;
<6>配列番号23に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号28に記載される塩基配列を有するDNA;
<7>配列番号23に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号29に記載される塩基配列を有するDNA;
<8>配列番号26に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号27に記載される塩基配列を有するDNA;
<9>配列番号26に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号28に記載される塩基配列を有するDNA;
<10>配列番号26に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号29に記載される塩基配列を有するDNA;
<11>配列番号34に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号28に記載される塩基配列を有するDNA;
<12>配列番号34に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号29に記載される塩基配列を有するDNA;
<13>配列番号33に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号29に記載される塩基配列を有するDNA;または
<14>配列番号18に記載される塩基配列を有するDNAと配列番号19に記載される塩基配列を有するDNA。
PCRの条件は下記のように設定した。
<反応溶液>
DDW(8μl)、10×緩衝液(2μl)、dNTP(各々2.5mM、2μl)、2μMのプライマー1(2μl)、2μMのプライマー2(2μl)、ヒトB Lymphoma細胞から単離したゲノミックDNA(185ng/μl、4μl)及びTaqポリメラーゼ(5U/ml、0.2μl、Ex Taq(TAKARA製)またはAmpli Taq(Perkin Elmer製))からなる総量20.2μlの溶液。
<反応>
下記(A)または(B)のいずれかを行った。
(A) 1サイクル(94℃で30秒の反応)及び40サイクル(94℃で10秒の反応、54℃で30秒の反応、及び72℃で3分30秒の反応)の後4℃で保存。
(B) 1サイクル(94℃で30秒の反応)及び40サイクル(94℃で10秒の反応、54℃で30秒の反応、及び72℃で2分10秒の反応)の後4℃で保存。
<PCR装置>
市販のPCR装置(Perkin Elmer Thermal Cycler 9700type)を用いた。
実施例19 種々ヒト臓器組織でのヒトAIDのmRNAの発現
ヒトAID mRNAの各種ヒト臓器組織での発現を、常法(Imunity, Vol.9, p.1-10, 1998)に従ってRT-PCRにより解析した。
RT-PCRは、市販のヒト組織cDNAパネル(CLONTECH製)にセットされた種々ヒト組織のcDNAを鋳型として常法に従って行った。
AID cDNAの増幅には、前記で調製したプライマーp17(配列番号26)及びp26(配列番号28)、並びにTaqポリメラーゼを用いた。
なお、対照として、G3PDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)のcDNAを鋳型として、GFプライマー及びGRプライマー(Immunity, Vol.9, p.1-10, 1998)を用いて同様にしてRT-PCRを行った。
結果を図24に示す。その結果、リンパ節及び扁桃においてmRNAの特異的な発現が認められた。この結果は、マウスAIDのmRNAの発現が種々のリンパ性組織で認められる実験結果(実施例8及び9)と合致する。
一方、上記RT-PCRにおいて、飽和状態のサイクル数で上記同様にしてRT-PCRを行った場合には、分析したほぼ全ての臓器でAID mRNAの発現が確認された。
実施例20 ヒトAID遺伝子のヒト染色体上での局在
FISH法(Fluorescence in situ hybridization; 実験医学・別冊、「遺伝子工学ハンドブック」、羊土社発行、1992年、p.271-277)により、ヒトAID遺伝子のヒト染色体上での局在を分析した。
前記で単離したヒトAID遺伝子(エクソン1乃至エクソン5)を含むゲノミックDNAをニックトランスレーション法(nick translation)によりビオチン-11-dUTP(Sigma製)で標識したものをハイブリダイゼーションプローブとして用いた。
細胞分裂中期ヒト細胞(metaphase human cell)の染色体に、該プローブをハイブリダイズさせた。FITC標識アビジン(fluorescein isothiocyanate-avidin, DCS; Vector Laboratories製)を用いて、ハイブリダイゼーションシグナルを検出した。
結果を図25に示す。その結果、ヒトAID遺伝子は、染色体12p13上に位置していることが明らかとなった。また、該位置は、AID蛋白と比較的高いアミノ酸配列相同性を有しAID蛋白と同様にシチジンデアミナーゼ活性を有する前述のAPOBEC-1の染色体上の位置である12p13.1と近いことが明らかとなった。
acrocallosal syndrome、inflammatory bowel syndrome、familial periodic feverなどの疾患は、各々ヒト染色体遺伝子座12p13.3-12p11.2、12p13.2-12p24.1、及び12p13における遺伝子の何らかの異常が関与する可能性が報告されているもののその原因遺伝子は未だ突き止められていない。本発明のヒトAID遺伝子がそのような疾患の発症に関与している可能性が示唆される。
発明の効果
本発明のAID蛋白は、種々の疾患を惹起する引き金となる非自己抗原(外来性抗原、自己反応性細胞など)を生体から排除するための抗原特異的免疫グロブリン(特異性抗体)の生成に必要な種々の生体メカニズムを制御する機能を有すると考えられる。さらに具体的には、抗原に高い特異性を有する免疫グロブリンの生成の特有のメカニズムである、B細胞の活性化、免疫グロブリン遺伝子のクラススイッチ組換え、体細胞超変異(somatic hypermutation)及びアフィニティーマチュレーション(affinity maturation)のような胚中心B細胞(germinal center B cells)で起こるRNA編集等の種々の遺伝子修飾(genetic editing)において重要な役割を担う酵素の一つと考えられる。
本発明のAID蛋白の機能不全は、B細胞の抗原特異的な活性化、クラススイッチ組換え、体細胞変異などの胚中心B細胞機能不全を誘導し、体液性免疫不全症を引き起こす原因となりうる。逆にAID蛋白の制御の破綻は、不適切なB細胞の活性化や、不必要なクラススイッチ組換えや体細胞変異を来し、アレルギー疾患や自己免疫疾患を引き起こす可能性がある。
従って、本発明のAID蛋白及びAID蛋白をコードする遺伝子の機能を制御することにより、例えばB細胞の機能不全(例えば、IgA欠損症、IgA腎症、γグロブリン血症、高IgM血症など)あるいは免疫グロブリンのクラススイッチの不全に起因する種々の免疫不全症やアレルギー性疾患の予防並びに治療することが可能であると考えられ、本発明のAID蛋白及び該AID蛋白をコードする遺伝子は、そのような疾患治療のための医薬品開発のターゲットとなり得る。
本発明のAID蛋白またはAID蛋白をコードする遺伝子の機能を制御することにより発症予防、病状の軽減、治療及び/または対症療法効果が期待される疾患としては、例えば、先天的な免疫系の異常を伴う原発性免疫不全症候群、主としてB細胞の欠損、減少あるいは機能異常により発症すると考えられている免疫不全症(例えば、伴性無γグロブリン血症、成長ホルモン欠乏を伴う伴性無γグロブリン血症、IgM高値を伴う免疫グロブリン欠乏症、選択的IgM欠損症、選択的IgE欠損症、免疫グロブリン重鎖遺伝子欠失変異症、κ鎖欠乏症、IgA欠乏症、IgGサブクラス選択的欠乏症、CVID(common variable immunodeficiency)、乳児一過性低γグロブリン血症、Rosen症候群、重症複合免疫不全症(伴性、常染色体劣性)、ADA(adenosine deaminase)欠損症、PNP(purine nucleoside phosphorylase)欠損症、MHCクラスII欠損症、細網異形成症、Wiskott-Aldrich症候群、ataxia telangiectasia、DiGeorge症候群、染色体異常、家族性Ig異化過多症、高IgE症候群、Gitlin症候群、Nezelof症候群、Good症候群、骨異形成症、トランスコバランミン症候群、セクレタリービース症候群、など)、後天的な原因により引き起こされた免疫系の傷害を伴う続発性免疫不全症候群(例えば、AIDSなど)であり抗体産生不全を伴う種々及び/または種々のアレルギー性疾患(例えば、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、結膜炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性腸炎、薬剤性アレルギー、食品アレルギー、アレルギー性じんましん、糸球体腎炎など)の疾患などが挙げられる。医薬品開発のターゲットとなり得る。
即ち、本発明のAID蛋白及びその断片、AID蛋白をコードするDNA及びその断片、並びにAID蛋白に対する抗体は、そのような疾患の予防または治療のための医薬品開発のための試薬として有用である。
また、該DNAは、それ自体AID遺伝子の機能を遺伝子レベルで制御するアンチセンス医薬品として、また遺伝子治療での使用において有用である。該タンパクまたはその断片(例えば、酵素活性部位)は、その自体医薬品として有用である。
さらに本発明のAID蛋白に反応性を有する抗体またはその一部は、AID蛋白の機能を制御することによる抗体医薬品として極めて有用である。
さらに、本発明の遺伝子(DNA)、タンパク、及び抗体は、本発明のタンパク(酵素)と相互作用(結合)する基質(例えば、RNAなど)あるいは本発明のタンパクと会合する他の補助蛋白の探索、並びに該基質や補助蛋白をターゲットとした医薬品を開発するための試薬として有用である。
さらに、本発明の他の一つである、本発明のAID蛋白の産生または該AID蛋白をコードする遺伝子のmRNAへの転写を調節する物質を同定する方法は、上述のようなAID蛋白またはAID遺伝子が関与すると考えられる種々の疾患(特に、免疫不全症及びアレルギー性疾患)を治療または予防するための医薬品の開発する手段として極めて有用である。
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各種条件で培養したマウスB細胞クローンCH12F3-2におけるクラススイッチ組換えに伴いループアウトされるSα配列を含むDNAの生成の状態を示す写真。 分図(a)は、各種条件で培養したマウスB細胞クローンCH12F3-2由来のDNAを鋳型としたPCRにより増幅したクラススイッチ組換えに伴いループアウトされるSα配列を含むDNAのエチジウムブロマイド染色による電気泳動状態を示す写真。 レーン1及びレーン6は、マーカーDNAの電気泳動状態を示す。レーン2は、IL-4、CD40L、TGFβ及びシクロヘキシミドのいずれも含まない条件下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物の電気泳動状態を示す。レーン3は、シクロヘキシミドのみの存在下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物の電気泳動状態を示す。レーン4は、IL-4、CD40L及びTGFβの存在下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物の電気泳動状態を示す。レーン5は、、IL-4、CD40L、TGFβ及びシクロヘキシミドの存在下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物の電気泳動状態を示す。 分図(b)は、各種条件で培養したマウスB細胞クローンCH12F3-2由来のDNAを鋳型としたPCRにより増幅したクラススイッチ組換えに伴いループアウトされるSα配列を含むDNAのサザンハイブリダイゼーションによる結果を示す写真。 レーン1は、IL-4、CD40L、TGFβ及びシクロヘキシミドのいずれも含まない条件下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物に対するハイブリダイゼーションの結果を示す。レーン2は、シクロヘキシミドのみの存在下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物に対するハイブリダイゼーションの結果を示す。レーン3は、IL-4、CD40L及びTGFβの存在下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物に対するハイブリダイゼーションの結果を示す。レーン4は、、IL-4、CD40L、TGFβ及びシクロヘキシミドの存在下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物に対するハイブリダイゼーションの結果を示す。 各種条件で培養したマウスB細胞クローンCH12F3-2におけるクラススイッチ組換えに伴いループアウトされるSα配列を含むDNAの生成の状態を示す写真。 分図(a)は、各種条件で培養したマウスB細胞クローンCH12F3-2由来のDNAを鋳型としたPCRにより増幅したクラススイッチ組換えに伴いループアウトされるSα配列を含むDNAのエチジウムブロマイド染色による電気泳動状態を示す写真。 レーン1及びレーン6は、マーカーDNAの電気泳動状態を示す。レーン2は、IL-4、CD40L、TGFβ及びシクロヘキシミドのいずれも含まない条件下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物の電気泳動状態を示す。レーン3は、シクロヘキシミドのみの存在下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物の電気泳動状態を示す。レーン4は、IL-4、CD40L及びTGFβの存在下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物の電気泳動状態を示す。レーン5は、、IL-4、CD40L、TGFβ及びシクロヘキシミドの存在下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物の電気泳動状態を示す。 分図(b)は、各種条件で培養したマウスB細胞クローンCH12F3-2由来のDNAを鋳型としたPCRにより増幅したクラススイッチ組換えに伴いループアウトされるSα配列を含むDNAのサザンハイブリダイゼーションによる結果を示す写真。 レーン1は、IL-4、CD40L、TGFβ及びシクロヘキシミドのいずれも含まない条件下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物に対するハイブリダイゼーションの結果を示す。レーン2は、シクロヘキシミドのみの存在下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物に対するハイブリダイゼーションの結果を示す。レーン3は、IL-4、CD40L及びTGFβの存在下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物に対するハイブリダイゼーションの結果を示す。レーン4は、、IL-4、CD40L、TGFβ及びシクロヘキシミドの存在下で培養した細胞のDNAを鋳型としたPCR産物に対するハイブリダイゼーションの結果を示す。 各種条件で培養したマウスB細胞クローンCH12F3-2由来のmRNAに対する、放射性標識した23C9(AID)蛋白をコードするcDNA断片をプローブとしてノーザンブロッティングの結果を示す写真。 レーン1は、IL-4、CD40L、TGFβ及びシクロヘキシミドのいずれも含まない条件下で培養した細胞のmRNAに対するブロッティングの結果を示す。レーン2は、シクロヘキシミドのみの存在下で培養した細胞のmRNAに対するブロッティングの結果を示す。レーン3は、IL-4、CD40L及びTGFβの存在下で培養した細胞のmRNAに対するブロッティングの結果を示す。レーン4は、、IL-4、CD40L、TGFβ及びシクロヘキシミドの存在下で培養した細胞のmRNAに対するブロッティングの結果を示す。 各種条件で培養したマウスB細胞クローンCH12F3-2由来のmRNAに対する、放射性標識した23C9(AID)蛋白をコードするcDNA断片をプローブとしてノーザンブロッティングの結果を示す写真。 レーン1は、IL-4、CD40L、TGFβ及びシクロヘキシミドのいずれも含まない条件下で培養した細胞のmRNAに対するブロッティングの結果を示す。レーン2は、シクロヘキシミドのみの存在下で培養した細胞のmRNAに対するブロッティングの結果を示す。レーン3は、IL-4、CD40L及びTGFβの存在下で培養した細胞のmRNAに対するブロッティングの結果を示す。レーン4は、、IL-4、CD40L、TGFβ及びシクロヘキシミドの存在下で培養した細胞のmRNAに対するブロッティングの結果を示す。 マウスAID蛋白とマウスAPOBEC-1の各々のアミノ酸配列の相同性を示す図。 黒い四角(closed box)で囲まれたアミノ酸は、同一のアミノ酸が一致していることを示す。白抜きの四角(open box)で囲まれた領域は、シチジンデアミナーゼモチーフを示す。アスタリスク(*)及び矢印が付されたアミノ酸は、ラット、マウス、ウサギ及びヒト由来のAPOBEC-1蛋白のアミノ酸配列に保存されているアミノ酸であることを示す。 シチジンデアミナーゼモチーフを基に作成したシトシン ヌクレオシド/ヌクレオチド デアミナーゼ ファミリーに属する種々酵素の系統樹を示す図。 ゲル電気泳動及び銀染色法による分子量分析におけるAID-GST融合蛋白の電気泳動状態を示す写真。 レーン1は、マーカー分子の電気泳動状態を示す。レーン2は、野生型大腸菌DH5αからの抽出物に含まれる種々蛋白の電気泳動状態を示す。レーン3は、精製AID-GST融合蛋白の電気泳動状態を示す。 抗AID蛋白ペプチド抗体を用いるウエスタンブロッティングによるAID-GST融合蛋白の電気泳動状態を示す写真。 レーン1は、野生型大腸菌DH5αからの抽出物に含まれる種々蛋白の電気泳動状態を示す。 レーン2は、精製AID-GST融合蛋白の電気泳動状態を示す。 AID蛋白の濃度依存的なシチジンデアミナーゼ活性を示す図。 シチジンデアミナーゼの特異的阻害剤であるテトラヒドロウリジンによるAID蛋白のシチジンデアミナーゼ活性の阻害効果を示す図。 亜鉛キレート剤である1,10-o-phenanthroline及びその不活性化異性体である1,7-o-phenanthrolineの各々によるAID蛋白のシチジンデアミナーゼ活性の阻害効果を示す図。 ノーザンブロッティング法により分析したマウスの各種組織でのAIDのmRNAの発現状態を示す写真。 RT-PCRにより分析したマウスの各種リンパ性組織でのAIDのmRNAの発現状態を示す写真。 ノーザンブロッティング法により分析した活性化マウスB細胞クローンCH12F3-2でのAIDのmRNAの経時的な発現状態を示す写真。 ノーザンブロッティング法により分析した種々組み合せのサイトカインで刺激したマウスB細胞クローンCHI2F3-2でのAIDのmRNAの発現状態を示す写真。 ノーザンブロッティング法により分析した種々組み合せの刺激物質で刺激したマウス脾臓B細胞でのAIDのmRNAの発現状態を示す写真。 ノーザンブロッティング法により分析した羊赤血球で免疫したマウス由来の脾臓細胞でのAIDのmRNAの発現状態を示す写真。 RT-PCRにより分析した羊赤血球で免疫したマウスの脾臓由来の各種細胞でのAIDのmRNAの発現状態を示す写真。 in situ hybridizationにより分析した正常マウス及び羊赤血球で免疫したマウスの各々に由来する脾臓組織でのAID mRNAの発現の局在を示す写真。 分図A及びDは、センスAIDプローブを用いたハイブリダイゼーションでの結果を示す。分図B及びEは、アンチセンスAIDプローブを用いたハイブリダイゼーションでのAID mRNAの発現の局在を示す。分図C及びFは、FITC標識PNAによる染色試験における胚中心の局在を示す。分図A、B及びCは、正常マウス由来(羊赤血球の免疫前)の脾臓組織を用いた試験での結果を示す。分図D、E及びFは、羊赤血球を免疫したマウスの免疫後5日目に作製した脾臓組織切片を用いた試験での結果を示す。 in situ hybridizationにより分析した正常マウス及び羊赤血球で免疫したマウスの各々に由来する脾臓組織及びパイエル板組織の各々でのAID mRNAの発現の局在を示す写真。 分図A、D及びGは、センスAIDプローブを用いたハイブリダイゼーションでの結果を示す。分図B、E及びHは、アンチセンスAIDプローブを用いたハイブリダイゼーションでのAID mRNAの発現の局在を示す。分図C、F及びIは、FITC標識PNAによる染色試験における胚中心の局在を示す。分図A、B及びCは、正常マウス由来(羊赤血球の免疫前)の脾臓組織を用いた試験での結果を示す。分図D、E及びFは、羊赤血球を免疫したマウスの免疫後5日目に作製した脾臓組織切片を用いた試験での結果を示す。分図G、H及びIは、羊赤血球を免疫したマウスの免疫後5日目に作製したパイエル板(payer's patch)組織切片を用いた試験での結果を示す。 各種のプライマーペアを用いたPCRにより増幅されるヒトAID蛋白をコードするヒトゲノミックDNAの部分塩基配列の相対的位置を模式的に示す図。 マウスAID蛋白のアミノ酸配列とヒトAID蛋白のアミノ酸配列の同一性の程度を模式的に示す図。 四角枠で囲んだ部分は、AID蛋白の活性領域であるシチジン・デオキシシチジン・デアミナーゼ・亜鉛結合領域(cytidine and deoxycytidilate deaminaseszinc-binding region)を示す。 ヒトAID蛋白をコードする遺伝子を含むヒトゲノミックDNAの構成を模式的に示す図。 1乃至5の各々は、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4及びエクソン5を示す。 RT-PCRにより分析したヒトの各種組織でのヒトAIDのmRNAの発現状態を示す写真。 FISH法(Fluorescence in situ hybridization)により分析した、ヒトAID遺伝子のヒト染色体上の位置(局在)を示す写真。 矢印の先の2つの点部分がヒトAID遺伝子が存在する12p13を示す。

Claims (17)

  1. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
  2. 配列番号1に記載される塩基配列を含むDNA。
  3. 配列番号1に記載される塩基配列の塩基番号93乃至689の塩基配列を含むDNA。
  4. 配列番号1に記載される塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号2に記載されるアミノ酸配列において1乃至10個のアミノ酸が置換、欠失及び/または付加されたアミノ酸配列を含み、シチジンデアミナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパク質をコードするDNAであって、該ストリンジェントな条件が、0.9%NaCl、30%フォルムアミド、42℃の条件であるDNA。
  5. 配列番号1に記載される塩基配列の塩基番号93乃至689の塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、シチジンデアミナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパク質をコードするDNAであって、該ストリンジェントな条件が、0.9%NaCl、65℃の条件であるDNA。
  6. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含むタンパク質。
  7. 配列番号1に記載される塩基配列の塩基番号93乃至689の塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列を含み、シチジンデアミナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパク質であって、該ストリンジェントな条件が、0.9%NaCl、65℃の条件であるタンパク質。
  8. 配列番号2に記載されるアミノ酸配列において、1乃至10個のアミノ酸が置換、欠失及び/または付加されたアミノ酸配列を含み、シチジンデアミナーゼ活性を有するタンパク質。
  9. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載のDNAの断片であって、下記(a)から(c)のいずれかに記載の断片。
    (a)配列番号2に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするcDNAまたはゲノミックDNAの断片からなり、該断片は0.9%NaCl、65℃において、該cDNAまたはゲノミックDNAとハイブリダイズし、配列番号1の塩基番号690乃至2440の塩基配列からなるDNAとはハイブリダイズしない断片。
    (b)配列番号2に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするcDNAまたはゲノミックDNAの断片からなり、該断片は0.9%NaCl、65℃において配列番号1に記載される塩基配列の塩基番号1乃至689の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズする断片。
    (c)配列番号2に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質のコード配列(CDS)の断片からなり、0.9%NaCl、65℃において該コード配列からなるDNAとハイブリダイズする断片。
  10. 該タンパク質をコードする鎖に対するアンチセンスである、請求項に記載の断片。
  11. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載のDNA若しくは請求項または請求項10に記載の断片を含む発現ベクター。
  12. 請求項11に記載の発現ベクターで形質転換された形質転換細胞。
  13. 請求項乃至請求項のいずれかに記載のタンパクに反応性を有する抗体または該抗体の該反応性を有する一部。
  14. 抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項13に記載の抗体または該抗体の該一部。
  15. 請求項乃至請求項のいずれかに記載のタンパクに反応性を有するモノクローナル抗体を産生する細胞。
  16. 該細胞が、モノクローナル抗体を産生する能力を有する非ヒト哺乳動物由来のB細胞と哺乳動物由来のミエローマ細胞とを融合して得られる融合細胞であることを特徴とする請求項15に記載の細胞。
  17. 該細胞が、該モノクローナル抗体の重鎖をコードするDNAおよび該モノクローナル抗体の軽鎖をコードするDNAが細胞内に導入されることにより形質転換された遺伝子組換え細胞であることを特徴とする請求項15に記載の細胞。
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