本発明の免疫誘導剤に有効成分として含まれるポリペプチドとしては、以下のものが挙げられる。なお、本発明において、「ポリペプチド」とは、複数のアミノ酸がペプチド結合することによって形成される分子をいい、構成するアミノ酸数が多いポリペプチド分子のみならず、アミノ酸数が少ない低分子量の分子(オリゴペプチド)や、全長タンパク質も包含され、本発明では配列番号2又は4に示すアミノ酸配列を有するTRIP11の全長タンパク質も包含される。
(a) 配列表の配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列を有し、免疫誘導活性を有するポリペプチド。
(b) (a)のポリペプチドと86%以上の相同性を有し、免疫誘導活性を有するポリペプチド。
なお、本発明において、「アミノ酸配列を有する」とは、アミノ酸残基がそのような順序で配列しているという意味である。従って、例えば、「配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド」とは、配列番号2に示されるMet Ser Ser Trp・・(中略)・・Leu Leu Lys Glnのアミノ酸配列を持つ、1977アミノ酸残基のサイズのポリペプチドを意味する。また、例えば、「配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド」を「配列番号2のポリペプチド」と略記することがある。「塩基配列を有する」という表現についても同様である。
ここで、「免疫誘導活性」とは、生体内でインターフェロン等のサイトカインを分泌する免疫細胞を誘導する能力を意味する。ポリペプチドが免疫誘導活性を有するか否かは、例えば公知のエリスポットアッセイ等を用いて確認することができる。具体的には、例えば下記実施例に記載されるように、免疫誘導活性を評価すべきポリペプチドを投与した生体から末梢血単核球等の細胞を得て、該細胞を該ポリペプチドと共存培養し、該細胞からのサイトカイン産生量を特異抗体を用いて測定することにより、該細胞中の免疫細胞数を測定することができるので、これにより免疫誘導活性を評価することができる。また、下記実施例に記載されるように、配列番号2又は4のアミノ酸配列を基に作製した組換えポリペプチドを担癌生体に投与すると、その免疫誘導活性により腫瘍を退縮させることもできる。よって、上記免疫誘導活性は、配列番号2又は4のポリペプチドを発現する癌細胞の増殖を抑制し又は癌組織(腫瘍)を縮小若しくは消滅させる能力(以下、「抗腫瘍活性」という)として評価することもできる。ポリペプチドの抗腫瘍活性は、例えば下記実施例に具体的に記載されるように、実際に該ポリペプチドを担癌生体に投与して腫瘍が縮小等されるか否かを調べることよって確認することができる。また、該ポリペプチドで刺激したT細胞(すなわち、該ポリペプチドを提示する抗原提示細胞と接触させたT細胞)が、生体外で腫瘍細胞に対して細胞障害活性を示すか否かを調べることによって、ポリペプチドの抗腫瘍活性を評価することもできる。T細胞と抗原提示細胞との接触は、後述するように、両者を液体培地中で共存培養することにより行なうことができる。細胞障害活性の測定は、例えばInt.J.Cancer,58:p317,1994に記載された51Crリリースアッセイと呼ばれる公知の方法により行なうことができる。ポリペプチドを癌の治療及び/又は予防用途に用いる場合には、特に限定されないが、抗腫瘍活性を指標として免疫誘導活性を評価することが好ましい。
配列表の配列番号2及び4にそれぞれ示されるアミノ酸配列は、イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌犬由来の血清中に特異的に存在する抗体と結合するポリペプチドおよびそのヒト相同因子として単離された、TRIP11タンパクのアミノ酸配列である(実施例1参照)。TRIP11(thyroid hormone receptor interactor 11)は、当初は甲状腺ホルモン受容体βに相互作用する因子として同定されたが、ゴルジ体や微小管に結合することも判明し、ゴルジ体や微小管等を結びつけ、これら細胞小器官の形状をを維持する役割を果たしていると考えられている。しかし、該タンパクが癌に発現し、治療や予防に有用であるという報告はない(非特許文献10 Mol Endocrinol. 9:243-54(1995)、非特許文献11 J Cell Biol. 145:83-98(1999))。なお、イヌTRIP11遺伝子とヒトTRIP11遺伝子の相同性は、塩基配列で88%、アミノ酸配列で86%である。
上記(a)のポリペプチドは、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、免疫誘導活性を有するものである。なお、この分野で公知の通り、約7アミノ酸残基以上のポリペプチドであれば抗原性を発揮できる。従って、配列番号2又は4のアミノ酸配列中の連続する9アミノ酸残基以上のポリペプチドであれば、免疫誘導活性を有し得る。ただし、生体中で抗原物質に対して生産される抗体がポリクローナル抗体であることに鑑みれば、アミノ酸残基の数が多い方が、抗原物質上の種々の部位を認識する、より多くの種類の抗体を誘導できるので、ひいては免疫誘導活性を高めることができると考えられる。
また、癌抗原ポリペプチドを投与することによる免疫誘導の原理として、ポリペプチドが抗原提示細胞に取り込まれ、その後該細胞内でペプチダーゼによる分解を受けてより小さな断片となり、該細胞の表面上に提示され、それを細胞障害性T細胞等が認識し、その抗原を提示している細胞を選択的に殺していくということが知られている。
抗原提示細胞の表面上に提示されるポリペプチドのサイズは比較的小さく、アミノ酸数で7〜30程度である。従って、抗原提示細胞上に提示させるという観点からは、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列中の連続する9〜30程度のアミノ酸から成るものであれば十分である。これら比較的小さなサイズのポリペプチドは、抗原提示細胞内に取り込まれることなく、直接抗原提示細胞上の細胞表面に提示される場合もある。
もっとも、上記した通り、抗原提示細胞に取り込まれたポリペプチドは、該細胞内のペプチダーゼによりランダムな位置で切断を受けて、種々のポリペプチド断片が生じ、これらのポリペプチド断片が抗原提示細胞表面上に提示されるので、配列番号2又は4の全長領域のように大きなサイズのポリペプチドを投与すれば、抗原提示細胞内での分解によって、抗原提示細胞を介する免疫誘導に有効なポリペプチド断片が必然的に生じる。従って、抗原提示細胞を介する免疫誘導にとっても、サイズの大きなポリペプチドを好ましく用いることができる。
上記(b)のポリペプチドは、上記(a)のポリペプチドのうちの少数のアミノ酸残基が置換し、欠失し及び/又は挿入されたポリペプチドであって、元の配列と86%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の相同性を有し、かつ、免疫誘導活性を有するポリペプチドである。一般に、タンパク質抗原において、該タンパク質のアミノ酸配列のうち少数のアミノ酸残基が置換され、欠失され又は挿入された場合であっても、元のタンパク質とほぼ同じ抗原性を有している場合があることは当業者において広く知られている。従って、上記(b)のポリペプチドも免疫誘導活性を発揮し得るので、本発明の免疫誘導剤の調製に用いることができる。また、上記(b)のポリペプチドは、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列のうち、1個ないし数個のアミノ酸残基が置換し、欠失し及び/又は挿入されたポリペプチドであることも好ましい。
ここで、アミノ酸配列の「相同性」とは、比較すべき2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基ができるだけ多く一致するように両アミノ酸配列を整列させ、一致したアミノ酸残基数を全アミノ酸残基数で除したものを百分率で表したものである。上記整列の際には、必要に応じ、比較する2つの配列の一方又は双方に適宜ギャップを挿入する。このような配列の整列化は、例えばBLAST、FASTA、CLUSTAL W等の周知のプログラムを用いて行なうことができる。ギャップが挿入される場合、上記全アミノ酸残基数は、1つのギャップを1つのアミノ酸残基として数えた残基数となる。このようにして数えた全アミノ酸残基数が、比較する2つの配列間で異なる場合には、相同性(%)は、長い方の配列の全アミノ酸残基数で、一致したアミノ酸残基数を除して算出される。
なお、天然のタンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、低極性側鎖を有する中性アミノ酸(Gly, Ile, Val, Leu, Ala, Met, Pro)、親水性側鎖を有する中性アミノ酸(Asn, Gln, Thr, Ser, Tyr Cys)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Arg, Lys, His)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)のように類似の性質を有するものにグループ分けでき、これらの間での置換であればポリペプチドの性質が変化しないことが多いことが知られている。従って、本発明の上記(a)のポリペプチド中のアミノ酸残基を置換する場合には、これらの各グループの間で置換することにより、免疫誘導活性を維持できる可能性が高くなる。
上記したポリペプチドは、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t―ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して常法により合成することもできる。また、公知の遺伝子工学的手法を用いて、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを調製し、該ポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込んで宿主細胞に導入し、該宿主細胞中でポリペプチドを生産させることにより、目的とするポリペプチドを得ることができる。
上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、公知の遺伝子工学的手法や市販の核酸合成機を用いた常法により、容易に調製することができる。例えば、配列番号1の塩基配列を有するDNAは、イヌ染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、配列番号1に記載した塩基配列を増幅できるように設計した一対のプライマーを用いてPCRを行うことにより調製することができる。配列番号3の塩基配列を有するDNAであれば、上記鋳型としてヒト染色体DNA又はcDNAライブラリーを使用することで同様に調製できる。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応行程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができるが、これに限定されない。また、本明細書中の配列表の配列番号1ないし4に示される塩基配列及びアミノ酸配列の情報に基づいて、適当なプローブやプライマーを調製し、それを用いてイヌやヒトなどのcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、所望のDNAを単離することができる。cDNAライブラリーは、配列番号2又は4のタンパク質を発現している細胞、器官又は組織から作製することが好ましい。上記したプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、ならびに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、モレキュラークロニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラバイオロジー等に記載された方法に準じて行うことができる。このようにして得られたDNAから、上記(a)のポリペプチドをコードするDNAを得ることができる。また、各アミノ酸をコードするコドンは公知であるから、特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの塩基配列は容易に特定することができる。従って、上記した(b)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列も容易に特定することができるので、そのようなポリヌクレオチドも、市販の核酸合成機を用いて常法により容易に合成することができる。
上記宿主細胞としては、上記ポリペプチドを発現可能な細胞であればいかなるものであってもよく、原核細胞の例としては大腸菌など、真核細胞の例としてはサル腎臓細胞COS 1、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO等の哺乳動物培養細胞、出芽酵母、分裂酵母、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
宿主細胞として原核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、原核細胞中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、DNAクローニング部位、ターミネーター等を有する発現ベクターを用いる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescriptII、pET発現システム、pGEX発現システムなどが例示できる。上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで原核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを原核宿主細胞中で発現させることができる。この際、該ポリペプチドを、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることもできる。
宿主細胞として真核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターを用いる。そのような発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK-CMV、pBK-RSV、EBVベクター、pRS、pcDNA3、pMSG、pYES2等が例示できる。上記と同様に、上記ポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで真核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしているポリペプチドを真核宿主細胞中で発現させることができる。発現ベクターとしてpIND/V5-His、pFLAG-CMV-2、pEGFP-N1、pEGFP-C1等を用いた場合には、Hisタグ、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ、GFPなど各種タグを付加した融合タンパク質として、上記ポリペプチドを発現させることができる。
発現ベクターの宿主細胞への導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の周知の方法を用いることができる。
宿主細胞から目的のポリペプチドを単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒分別沈殿法、透析、遠心分離、限外ろ過、ゲルろ過、SDS-PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等が挙げられるが、これらに限定されない。
以上の方法によって得られるポリペプチドには、上述した通り、他の任意のタンパク質との融合タンパク質の形態にあるものも含まれる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)やHisタグとの融合タンパク質などが例示できる。さらに、形質転換細胞で発現されたポリペプチドは、翻訳された後、細胞内で各種修飾を受ける場合がある。このような翻訳後修飾されたポリペプチドも、免疫誘導活性を有する限り、本発明の範囲に含まれる。この様な翻訳修飾としては、N末端メチオニンの脱離、N末端アセチル化、糖鎖付加、細胞内プロテアーゼによる限定分解、ミリストイル化、イソプレニル化、リン酸化などが例示できる。
下記実施例に具体的に記載される通り、上記した免疫誘導活性を有するポリペプチドを担癌生体に投与すると、既に生じている腫瘍を退縮させることができる。本発明の免疫誘導剤は、癌の治療及び/又は予防剤として用いられる。対象となる癌としては、配列番号2又は4のポリペプチドをコードする遺伝子を発現している癌であり、脳腫瘍、頭、首、肺、子宮又は食道の扁平上皮癌、メラノーマ、肺、乳または子宮の腺癌、腎癌、悪性混合腫瘍、肝細胞癌、基底細胞癌、勅細胞腫様歯肉腫、口腔内腫瘤、肛門周囲腺癌、肛門嚢腫瘤、肛門嚢アポクリン腺癌、セルトリ細胞腫、膣前庭癌、皮脂腺癌、皮脂腺上皮腫、脂腺腺腫、汗腺癌、鼻腔内腺癌、鼻腺癌、甲状腺癌、大腸癌、気管支腺癌、腺癌、腺管癌、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、線維肉腫、血管周皮腫、骨肉腫、軟骨肉腫、軟部組織肉腫、組織球肉腫、粘液肉腫、未分化肉腫、肺癌、肥満細胞腫、皮膚平滑筋腫、腹腔内平滑筋腫、平滑筋腫、慢性型リンパ球性白血病、リンパ腫、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫、副腎髄質腫瘍、顆粒膜細胞腫、褐色細胞腫、膀胱癌(移行上皮癌)、化膿性炎症、腹腔内肝臓腫瘍、肝臓癌、形質細胞腫、悪性血管外膜細胞腫、血管肉腫、肛門嚢腺癌、口腔癌、転移性悪性黒色腫、メラニン欠乏性悪性黒色腫、皮膚悪性黒色腫、悪性筋上皮腫、悪性精巣上皮腫、精細胞腫(セミノーマ)、大腸腺癌、胃腺癌、低グレード皮脂腺癌、耳垢腺癌、アポクリン腺癌、低分化型アポクリン汗腺癌、悪性線維性組織球腫、多発性骨髄腫、間葉系悪性腫瘍、脂肪肉腫、骨肉腫、起原不明の肉腫、軟部肉腫(紡錘形細胞腫瘍)、低分化肉腫、滑膜肉腫、血管肉腫、転移性悪性上皮腫瘍、管状乳腺腺癌、乳腺導管癌、炎症性乳癌、胚細胞腫、白血病、浸潤性毛包上皮腫、中細胞型リンパ腫、多中心型リンパ腫、骨肉腫(乳腺)、肥満細胞腫(Patnaik II型)、肥満細胞腫(Grade II)、平滑筋肉腫等を挙げることができるがこれらに限定されない。また、対象となる動物は、哺乳動物であり、特にヒト、イヌおよびネコが好ましい。
本発明の免疫誘導剤の生体への投与経路は、経口投与でも非経口投与でもよいが、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与が好ましい。癌の治療目的で該免疫誘導剤を用いる場合には、抗癌作用を高めるため、下記実施例に記載するように、治療対象となる腫瘍の近傍の所属リンパ節に投与することもできる。投与量は、免疫誘導するのに有効な量であればよく、例えば癌の治療及び/又は予防に用いるのであれば、癌の治療及び/又は予防に有効な量であればよい。癌の治療及び/又は予防に有効な量は、腫瘍の大きさや症状等に応じて適宜選択されるが、通常、対象動物に対し1日当りの有効量として0.0001μg〜1000μg、好ましくは0.001μg〜1000μgであり、1回又は数回に分けて投与することができる。好ましくは、数回に分け、数日ないし数月おきに投与する。下記実施例に具体的に示されるとおり、本発明の免疫誘導剤は、既に形成されている腫瘍を退縮させることができる。従って、発生初期の少数の癌細胞にも抗癌作用を発揮し得るので、癌の発症前や癌の治療後に用いれば、癌の発症や再発を防止することができる。すなわち、本発明の免疫誘導剤は、癌の治療と予防の双方に有用である。
本発明の免疫誘導剤は、ポリペプチドのみから成っていてもよいし、各投与形態に適した、薬理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤等の添加剤を適宜混合させて製剤することもできる。製剤方法及び使用可能な添加剤は、医薬製剤の分野において周知であり、いずれの方法及び添加剤をも用いることができる。添加剤の具体例としては、生理緩衝液のような希釈剤;砂糖、乳糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン等のような賦形剤;シロップ、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、ポリビニルクロリド、トラガント等のような結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、タルク、シリカ等の滑沢剤等が挙げられるが、これらに限定されない。製剤形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などの経口剤、吸入剤、注射剤、座剤、液剤などの非経口剤などを挙げることができる。これらの製剤は一般的に知られている製法によって作ることができる。
本発明の免疫誘導剤は、生体内での免疫学的応答を強化することができる免疫増強剤と組み合わせて用いることができる。免疫増強剤は、本発明の免疫誘導剤に含まれていてもよいし、別個の組成物として本発明の免疫誘導剤と併用して患者に投与してもよい。
上記免疫増強剤としては、例えばアジュバントを挙げることができる。アジュバントは、抗原の貯蔵所(細胞外またはマクロファージ内)を提供し、マクロファージを活性化し、かつ特定組のリンパ球を刺激することにより、免疫学的応答を強化し得るので、抗癌作用を高めることができる。従って、特に、本発明の免疫誘導剤を癌の治療及び/又は予防に用いる場合、免疫誘導剤は、有効成分たる上記ポリペプチドに加えてさらにアジュバントを含むことが好ましい。多数の種類のアジュバントが当業界で周知であり、いずれのアジュバントでも用いることができる。アジュバントの具体例としては、MPL(SmithKline Beecham)、サルモネラ属のSalmonella minnesota Re 595リポ多糖類の精製および酸加水分解後に得られる同類物;QS21(SmithKline Beecham)、Quillja saponaria抽出物から精製される純QA−21サポニン;PCT出願WO96/33739(SmithKline Beecham)に記載されたDQS21;QS−7、QS−17、QS−18およびQS−L1(ソ(So)、外10名、「モレキュルズ・アンド・セル(Molecules and cells)」、1997年、第7巻、p.178−186);フロイントの不完全アジュバント;フロイントの完全アジュバント;ビタミンE;モンタニド;ミョウバン;CpGオリゴヌクレオチド(例えば、クレイグ(Kreig)、外7名、「ネイチャー(Nature)」、第374巻、p.546−549)を参照);ポリIC及びその誘導体(ポリICLC等)ならびにスクアレンおよび/またはトコフェロールのような生分解性油から調製される種々の油中水エマルションが挙げられる。中でも、フロイントの不完全アジュバント、モンタニド、ポリIC及びその誘導体並びにCpGオリゴヌクレオチドが好ましい。上記アジュバントとポリペプチドの混合比は、典型的には約1:10〜10:1,好ましくは約1:5〜5:1、さらに好ましくは約1:1である。ただし、アジュバントは上記例示に限定されず、当業界で公知の上記以外のアジュバントも本発明の免疫誘導剤を投与する際に用いられ得る(例えば、ゴッディング(Goding)著,「モノクローナル・アンチボディーズ:プリンシプル・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice)」、第2版、1986年を参照)。ポリペプチドおよびアジュバントの混合物またはエマルションの調製方法は、予防接種の当業者には周知である。
また、上記免疫増強剤としては、上記アジュバント以外にも、対象の免疫応答を刺激する因子を用いることもできる。例えば、リンパ球や抗原提示細胞を刺激する特性を有する各種サイトカインを免疫増強剤として本発明の免疫誘導剤と組み合わせて用いることができる。そのような免疫学的応答を増強可能な多数のサイトカインが当業者に公知であり、その例としては、ワクチンの防御作用を強化することが示されているインターロイキン−12(IL−12)、GM−CSF、IL−18、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンω、インターフェロンγおよびFlt3リガンドが挙げられるが、これらに限定されない。このような因子も上記免疫増強剤として用いることができ、本発明の免疫誘導剤に含ませて又は別個の組成物として本発明の免疫誘導剤と併用して患者に投与することができる。
また、上記ポリペプチドと抗原提示細胞とをインビトロで接触させることにより、該ポリペプチドを抗原提示細胞に提示させることができる。すなわち、上記した(a)及び(b)のポリペプチドは、抗原提示細胞の処理剤として利用し得る。ここで、抗原提示細胞としては、MHCクラスI分子を保有する樹状細胞又はB細胞を好ましく用いることができる。種々のMHCクラスI分子が同定されており、周知である。ヒトにおけるMHC分子はHLAと呼ぶ。HLAクラスI分子としては、HLA-A、HLA-B、HLA-Cを挙げることができ、より具体的には、HLA-A1, HLA-A0201, HLA-A0204, HLA-A0205, HLA-A0206, HLA-A0207, HLA-A11, HLA-A24, HLA-A31, HLA-A6801, HLA-B7, HLA-B8, HLA-B2705, HLA-B37, HLA-Cw0401, HLA-Cw0602などを挙げることができる。
MHCクラスI分子を保有する樹状細胞又はB細胞は、周知の方法により末梢血から調製することができる。例えば、骨髄、臍帯血あるいは患者末梢血から、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)とIL-3(あるいはIL-4)を用いて樹状細胞を誘導し、その培養系に腫瘍関連ペプチドを加えることにより、腫瘍特異的な樹状細胞を誘導することができる。この樹状細胞を有効量投与することで、癌の治療に望ましい応答を誘導できる。用いる細胞は、健康人から提供された骨髄や臍帯血、患者本人の骨髄や末梢血等を用いることができるが、患者本来の自家細胞を使う場合は、安全性が高く、重篤な副作用を回避することも期待できる。末梢血または骨髄は新鮮試料、低温保存試料及び凍結保存試料のいずれでもよい。末梢血は、全血を培養してもよいし、白血球成分だけを分離して培養してもよいが、後者の方が効率的で好ましい。さらに白血球成分の中でも単核球を分離してもよい。また、骨髄や臍帯血を起源とする場合には、骨髄を構成する細胞全体を培養してもよいし、これから単核球を分離して培養してもよい。末梢血やその白血球成分、骨髄細胞には、樹状細胞の起源となる単核球、造血幹細胞又は未成熟樹状細胞やCD4陽性細胞等が含まれている。用いられるサイトカインは、安全性と生理活性が確認された特性のものであれば、天然型、あるいは遺伝子組み換え型等、その生産手法については問わないが、好ましくは医療用に用いられる品質が確保された標品が必要最低量で用いられる。添加するサイトカインの濃度は、樹状細胞が誘導される濃度であれば特に限定されず、通常サイトカインの合計濃度で10〜1000ng/mL程度が好ましく、さらに好ましくは20〜500ng/mL程度である。培養は、白血球の培養に通常用いられている周知の培地を用いて行うことができる。培養温度は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、ヒトの体温である37℃程度が最も好ましい。また、培養中の気体環境は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、5%CO2を通気することが好ましい。さらに培養期間は、必要数の細胞が誘導される期間であれば特に限定されないが、通常3日〜2週間の間で行われる。細胞の分離や培養に供される機器は、適宜適当なものを用いることができるが、医療用に安全性が確認され、かつ操作が安定して簡便であることが好ましい。特に細胞培養装置については、シャーレ、フラスコ、ボトル等の一般的容器に拘わらず、積層型容器や多段式容器、ローラーボトル、スピナー式ボトル、バッグ式培養器、中空糸カラム等も用いることができる。
上記ポリペプチドと抗原提示細胞とをインビトロで接触させる方法自体は、周知の方法により行なうことができる。例えば、抗原提示細胞を、上記ポリペプチドを含む培養液中で培養することにより行なうことができる。培地中のペプチド濃度は、特に限定されないが、通常、1μg/mlないし100μg/ml程度、好ましくは5μg/mlないし20μg/ml程度である。培養時の細胞密度は特に限定されないが、通常、103細胞/mlから107細胞/ml程度、好ましくは5x104細胞/mlから5x106細胞/ml程度である。培養は、常法に従い、37℃、5%CO2雰囲気中で行なうことが好ましい。なお、抗原提示細胞が表面上に提示できるペプチドの長さは、通常、最大で30アミノ酸残基程度である。従って、特に限定されないが、抗原提示細胞とポリペプチドをインビトロで接触させる場合、該ポリペプチドをおよそ30アミノ酸残基以下の長さに調製してもよい。
上記したポリペプチドの共存下において抗原提示細胞を培養することにより、ペプチドが抗原提示細胞のMHC分子に取り込まれ、抗原提示細胞の表面に提示される。従って、上記ポリペプチドを用いて、該ポリペプチドとMHC分子の複合体を含む、単離抗原提示細胞を調製することができる。このような抗原提示細胞は、生体内又はインビトロにおいて、T細胞に対して該ポリペプチドを提示し、該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができる。
上記のようにして調製される、上記ポリペプチドとMHC分子の複合体とを含む抗原提示細胞を、T細胞とインビトロで接触させることにより、該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができる。これは、上記抗原提示細胞とT細胞とを液体培地中で共存培養することにより行なうことができる。例えば、抗原提示細胞を液体培地に懸濁して、マイクロプレートのウェル等の容器に入れ、これにT細胞を添加して培養することにより行なうことができる。共存培養時の抗原提示細胞とT細胞の混合比率は、特に限定されないが、通常、細胞数の比率で1:1〜1:100程度、好ましくは1:5〜1:20程度である。また、液体培地中に懸濁する抗原提示細胞の密度は、特に限定されないが、通常、100〜1000万細胞/ml程度、好ましくは10000〜100万細胞/ml程度である。共存培養は、常法に従い、37℃、5%CO2雰囲気中で行なうことが好ましい。培養時間は、特に限定されないが、通常、2日〜3週間、好ましくは4日〜2週間程度である。また、共存培養は、IL-2、IL-6、IL-7及びIL-12のようなインターロイキンの1種又は複数の存在下で行なうことが好ましい。この場合、IL-2及びIL-7の濃度は、通常、5U/mlから20U/ml程度、IL-6の濃度は通常、500U/mlから2000U/ml程度、IL-12の濃度は通常、5ng/mlから20ng/ml程度であるが、これらに限定されるものではない。上記の共存培養は、新鮮な抗原提示細胞を追加して1回ないし数回繰り返してもよい。例えば、共存培養後の培養上清を捨て、新鮮な抗原提示細胞の懸濁液を添加してさらに共存培養を行なうという操作を、1回ないし数回繰り返してもよい。各共存培養の条件は、上記と同様でよい。
上記の共存培養により、該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞が誘導され、増殖される。従って、上記ポリペプチドを用いて、該ポリペプチドとMHC分子の複合体を選択的に結合する、単離T細胞を調製することができる。
下記実施例に記載される通り、配列番号2及び4のTRIP11タンパクをコードする遺伝子は、それぞれイヌおよびヒトの癌細胞と精巣に特異的に発現している。従って、癌細胞においては、配列番号2又は4のTRIP11タンパクが正常細胞よりも有意に多く存在していると考えられる。癌細胞内に存在するTRIP11タンパクの一部が癌細胞表面上のMHC分子に提示され、上記のようにして調製した細胞障害性T細胞が生体内に投与されると、これを目印として細胞障害性T細胞が癌細胞を障害することができる。また、上記ポリペプチドを提示する抗原提示細胞は、生体内においても該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができるので、該抗原提示細胞を生体内に投与することによっても、癌細胞を障害することができる。すなわち、上記ポリペプチドを用いて調製された上記細胞障害性T細胞や上記抗原提示細胞もまた、本発明の免疫誘導剤と同様に、癌の治療及び/又は予防剤として有用である。
上記した単離抗原提示細胞や単離T細胞を生体に投与する場合には、これらの細胞を異物として攻撃する生体内での免疫応答を回避するために、治療を受ける患者から採取した抗原提示細胞又はT細胞を、上記のように上記(a)又は(b)のポリペプチドを用いて調製したものであることが好ましい。
抗原提示細胞又は単離T細胞を有効成分として含む癌の治療及び/又は予防剤の投与経路は、静脈内投与や動脈内投与のような非経口投与が好ましい。また、投与量は、症状や投与目的等に応じて適宜選択されるが、通常1個〜10兆個、好ましくは100万個〜10億個であり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。製剤は、例えば、細胞を生理緩衝食塩水に懸濁したもの等であってよく、他の抗癌剤やサイトカイン等と併用することもできる。また、製剤分野において周知の1又は2以上の添加剤を添加することもできる。
また、上記(a)又は(b)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象動物の体内で発現させることによっても、該生体内で抗体生産や細胞障害性T細胞を誘導することができ、ポリペプチドを投与するのと同等の効果が得られる。すなわち、本発明の免疫誘導剤は、上記した(a)又は(b)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、生体内で該ポリペプチドを発現可能な組換えベクターを有効成分として含むものであってもよい。このような、抗原ポリペプチドを発現可能な組換えベクターは、遺伝子ワクチンとも呼ばれる。遺伝子ワクチンを製造するために用いるベクターは、対象動物細胞内(好ましくは哺乳動物細胞内)で発現可能なベクターであれば特に限定されず、プラスミドベクターでもウイルスベクターでもよく、遺伝子ワクチンの分野で公知のいかなるベクターを用いてもよい。なお、上記ポリペプチドをコードするDNAやRNA等のポリヌクレオチドは、上述した通り、常法により容易に調製することができる。また、ベクターへの該ポリヌクレオチドの組み込みは、当業者に周知の方法を用いて行なうことができる。
遺伝子ワクチンの投与経路は、好ましくは筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与経路であり、投与量は、抗原の種類等に応じて適宜選択することができるが、通常、体重1kg当たり、遺伝子ワクチンの重量で0.1μg〜100mg程度、好ましくは1μg〜10mg程度である。
ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス等のRNAウイルスまたはDNAウイルスに、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組み込み、これを対象動物に感染させる方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
その他の方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
本発明で用いられる上記ポリペプチドをコードする遺伝子を実際に医薬として作用させるには、遺伝子を直接体内に導入するin vivo方法、および対象動物からある種の細胞を採取し体外で遺伝子を該細胞に導入しその細胞を体内に戻すex vivo方法がある(日経サイエンス,1994年4月,p20−45、月刊薬事,1994年,第36巻,第1号,p.23−48、実験医学増刊,1994年,第12巻,第15号、およびこれらの引用文献等)。in vivo方法がより好ましい。
in vivo方法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することが出来る。in vivo方法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には、有効成分である本発明の上記ペプチドをコードするDNAを含有する注射剤等とされ、必要に応じて、慣用の担体を加えてもよい。また、該DNAを含有するリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
なお、本発明において、「配列番号1に示される塩基配列」と言った場合には、配列番号1に実際に示されている塩基配列の他、これと相補的な配列も包含する。従って、「配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチド」と言った場合には、配列番号1に実際に示されている塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、その相補的な塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、及びこれらから成る二本鎖ポリヌクレオチドが包含される。本発明で用いられるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを調製する場合には、適宜いずれかの塩基配列を選択することとなるが、当業者であれば容易にその選択をすることができる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。
実施例1:SEREX法による新規癌抗原タンパクの取得
(1)cDNAライブラリの作製
健常な犬の精巣組織から酸−グアニジウム−フェノール−クロロフォルム法(Acid guanidium-Phenol-Chloroform法)により全RNAを抽出し、Oligotex-dT30 mRNA purification Kit(宝酒造社製)を用いてキット添付のプロトコールに従ってポリA RNAを精製した。
この得られたmRNA(5μg)を用いてイヌ精巣cDNAファージライブラリを合成した。cDNAファージライブラリの作製にはcDNA Synthesis Kit,ZAP-cDNA Synthesis Kit,ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE社製)を用い、キット添付のプロトコールに従ってライブラリを作製した。作製したcDNAファージライブラリのサイズは1.3×106pfu/mlであった。
(2)血清によるcDNAライブラリのスクリーニング
上記作製したイヌ精巣由来cDNAファージライブラリを用いて、イムノスクリーニングを行った。具体的にはΦ90×15mmのNZYアガロースプレートに2340 クローンとなるように宿主大腸菌(XL1-Blue MRF')に感染させ、42℃、3〜4時間培養し、溶菌斑(プラーク)を作らせ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を浸透させたニトロセルロースメンブレン(Hybond C Extra: GE Healthecare Bio-Science社製)でプレートを37℃で4時間覆うことによりタンパク質を誘導・発現させ、メンブレンにタンパク質を転写した。その後メンブレンを回収し0.5%脱脂粉乳を含むTBS(10mM Tris-HCl,150mM NaCl pH7.5)に浸し4℃で一晩振盪することによって非特異反応を抑制した。このフィルターを500倍希釈した患犬血清と室温で2〜3時間反応させた。
上記患犬血清としては、乳癌の患犬より採取した血清を用いた。これらの血清は−80℃で保存し、使用直前に前処理を行った。血清の前処理方法は、以下の方法による。すなわち、外来遺伝子を挿入していないλ ZAP Express ファージを宿主大腸菌(XL1-BLue MRF')に感染させた後、NZYプレート培地上で37℃、一晩培養した。次いで0.5M NaClを含む0.2M NaHCO3 pH8.3のバッファーをプレートに加え、4℃で15時間静置後、上清を大腸菌/ファージ抽出液として回収した。次に、回収した大腸菌/ファージ抽出液をNHS-カラム (GE Healthecare Bio-Science社製)に通液して、大腸菌・ファージ由来のタンパク質を固定化した。このタンパク固定化カラムに患犬血清を通液・反応させ、大腸菌およびファージに吸着する抗体を血清から取り除いた。カラムを素通りした血清画分は、0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて500倍希釈し、これをイムノスクリーニング材料とした。
かかる処理血清と上記融合タンパク質をブロットしたメンブレンをTBS―T(0.05% Tween20/TBS)にて4回洗浄を行った後、二次抗体として0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて5000倍希釈を行ったヤギ抗イヌIgG(Goat anti Dog IgG-h+I HRP conjugated: BETHYL Laboratories社製)を、室温1時間反応させ、NBT/BCIP反応液(Roche社製)を用いた酵素発色反応により検出し、発色反応陽性部位に一致するコロニーをΦ90×15mmのNZYアガロースプレート上から採取し、SM緩衝液(100mM NaCl、10mM MgClSO4、50mM Tris-HCl、0.01% ゼラチン pH7.5)500μlに溶解させた。発色反応陽性コロニーが単一化するまで上記と同様の方法で、二次、三次スクリーニングを繰り返し、血清中のIgGと反応する30940個のファージクローンをスクリーニングして、1個の陽性クローンを単離した。
(3)単離抗原遺伝子の相同性検索
上記方法により単離した1個の陽性クローンを塩基配列解析に供するため、ファージベクターからプラスミドベクターに転換する操作を行った。具体的には宿主大腸菌(XL1-Blue MRF')を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液100μlさらにExAssist helper phage (STRATAGENE社製)1μlを混合した後37℃で15分間反応後、LB培地を3ml添加し37℃で2.5〜3時間培養を行い、直ちに70℃の水浴にて20分間保温した後、4℃、1000×g、15分間遠心を行い上清をファージミド溶液として回収した。次いでファージミド宿主大腸菌(SOLR)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液10μlを混合した後37℃で15分間反応させ、50μlをアンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB寒天培地に播き37℃一晩培養した。トランスフォームしたSOLRのシングルコロニーを採取し、アンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB培地37℃にて培養後、QIAGEN plasmid Miniprep Kit(キアゲン社製)を使って目的のインサートを持つプラスミドDNAを精製した。
精製したプラスミドは、配列番号5に記載のT3プライマーと配列番号6に記載のT7プライマーを用いて、プライマーウォーキング法によるインサート全長配列の解析を行った。このシークエンス解析により配列番号1に記載の遺伝子配列を取得した。この遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を用いて、相同性検索プログラムBLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を行い既知遺伝子との相同性検索を行った結果、得られた遺伝子はTRIP11遺伝子であることが判明した。イヌTRIP11のヒト相同因子は、ヒトTRIP11(相同性:塩基配列88%、アミノ酸配列86%)であった。ヒトTRIP11の塩基配列を配列番号3に、アミノ酸配列を配列番号4に示す。
(4)各組織での発現解析
上記方法により得られた遺伝子に対しイヌおよびヒトの正常組織および各種細胞株における発現をRT-PCR(Reverse Transcription-PCR)法により調べた。逆転写反応は以下の通り行なった。すなわち、各組織50−100mgおよび各細胞株5−10×106個の細胞からTRIZOL試薬(invitrogen社製)を用いて添付のプロトコールに従い全RNAを抽出した。この全RNAを用いてSuperscript First-Strand Synthesis System for RT-PCR(invitrogen社製)により添付のプロトコールに従いcDNAを合成した。ヒト正常組織(脳、海馬、精巣、結腸、胎盤)のcDNAは、ジーンプールcDNA(invitrogen社製)、QUICK-Clone cDNA(クロンテック社製)およびLarge-Insert cDNA Library(クロンテック社製)を用いた。PCR反応は、取得した遺伝子特異的なプライマー(配列番号7および8に記載)を用いて以下の通り行った。すなわち、逆転写反応により調製したサンプル0.25μl、上記プライマーを各2μM、0.2mM各dNTP、0.65UのExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を25μlとし、Thermal Cycler(BIO RAD社製)を用いて、94℃―30秒、55℃―30秒、72℃―1.5分のサイクルを30回繰り返して行った。なお、上記遺伝子特異的プライマーは、配列番号1の塩基配列(イヌTRIP11遺伝子)中の1519番〜2957番および配列番号3の塩基配列(ヒトTRIP11遺伝子)中の1872番〜3310番塩基の領域を増幅するものであり、該プライマーを用いてイヌTRIP11遺伝子及びヒトTRIP11遺伝子のいずれの発現も調べることができるものであった。比較対照のため、GAPDH特異的なプライマー(配列番号9および10に記載)も同時に用いた。その結果、図1に示すように、イヌTRIP11遺伝子は、健常なイヌ組織では精巣に強い発現が見られ、一方イヌ乳癌細胞株で強い発現が見られた。ヒト遺伝子の発現も、イヌTRIP11遺伝子と同様、ヒト正常組織で発現が確認できたのは精巣のみだったが、ヒト癌細胞では脳腫瘍、白血病、乳癌、肺癌、食道癌細胞株など、多種類の癌細胞株で発現が検出され、ヒトTRIP11遺伝子も精巣と癌細胞に特異的に発現していることが確認された。
なお、図1中、縦軸の参照番号1は、TRIP11遺伝子の発現パターンを、参照番号2は、比較対照であるGAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
実施例2:イヌおよびヒトTRIP11タンパクの作製
(1)組換えタンパク質の作製
実施例1で取得した配列番号1の遺伝子を基に、以下の方法にて組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例1で得られたファージミド溶液より調製し配列解析に供したベクターを1μl、SalIおよびXhoI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号11および12に記載)を各0.4μM、0.2mM dNTP、1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、98℃―10秒、55℃―5秒、72℃―6分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーは、配列番号2のアミノ酸配列全長をコードする領域を増幅するものであった。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約6.0kbpのDNA断片を精製した。
精製したDNA断片をクローニングベクターpCR-Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをSalIおよびXhoI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、SalI、XhoI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30b(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた。
また、配列番号3の遺伝子を基に、以下の方法にてヒト相同遺伝子の組換えタンパク質を作製した。PCRは、実施例1で作製した各種組織・細胞cDNAよりRT-PCR法による発現が確認できたcDNAを1μl、NdeIおよびKpnI制限酵素切断配列を含む2種類のプライマー(配列番号13および14に記載)を各0.4μM、0.2mM dNTP、1.25UのPrimeSTAR HSポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cycler (BIO RAD社製)を用いて、98℃―10秒、55℃―5秒、72℃―6分のサイクルを30回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーは、配列番号4のアミノ酸配列全長をコードする領域を増幅するものであった。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製)を用いて約6.0kbpのDNA断片を精製した。
精製したDNA断片をクローニングベクターpCR-Blunt(invitrogen社製)にライゲーションした。これを大腸菌に形質転換後プラスミドを回収し、増幅された遺伝子断片が目的配列と一致することをシークエンスで確認した。目的配列と一致したプラスミドをNdeIおよびKpnI制限酵素で処理し、QIAquick Gel Extraction Kitで精製後、目的遺伝子配列を、NdeI、KpnI制限酵素で処理した大腸菌用発現ベクターpET30b(Novagen社製)に挿入した。このベクターの使用によりHisタグ融合型の組換えタンパク質が産生できる。このプラスミドを発現用大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGによる発現誘導を行うことで目的タンパク質を大腸菌内で発現させた
(2)組換えタンパク質の精製
上記で得られた、配列番号1および配列番号3を発現するそれぞれの組換え大腸菌を30 μg/mLカナマイシン含有LB培地にて600nmでの吸光度が0.7付近になるまで37℃で培養後、イソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシド終濃度が1 mMとなるよう添加し、30℃で20時間培養した。その後4800rpmで10分間遠心し集菌した。この菌体塊をリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、さらに4800rpmで10分間遠心し菌体の洗浄を行った。
得られた菌体塊をリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、氷上にて超音波破砕を行った。大腸菌超音波破砕液を7000rpmで15分間遠心分離し、得られた上清を可溶性画分、沈殿物を不溶性画分とした。
不溶性画分を4%Triton X-100溶液にて懸濁し7000rpmで10分間遠心した。本操作を2回繰り返し、脱プロテアーゼ操作を行った。その後、残渣をリン酸緩衝化生理食塩水に懸濁し、脱界面活性剤操作を行った。
この残渣を6Mグアニジン塩酸塩含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)に懸濁し、4℃で20時間静置しタンパク質を変性させた。この変性操作後、7000rpmで20分間遠心して得られた可溶性画分を、定法に従って調整したニッケルキレートカラム(担体 Chelateing Sepharose(商標)Fast Flow(GE Health Care社)、カラム容量5mL、平衡化緩衝液 6Mグアニジン塩酸塩含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0))に添加した。未吸着画分をカラム容量の10倍量の6Mグアニジン塩酸塩含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)と10mMイミダゾール含有20mMリン酸緩衝液(pH8.0)にて洗浄操作を行った後、直ちに、4段階に分けた50mM-500mMイミダゾール段階的濃度勾配にて溶出を行い精製画分とし、以後この精製画分を投与試験用の材料とした。なお、溶出画分中の目的タンパク質は、定法に従って行ったクマシー染色によって確認した。このうち、イヌTRIP11タンパクを図2に示す。
上記方法によって得られた精製標品のうち200μlを1mlの反応緩衝液(20mM Tris-HCl, 50mM NaCl, 2mM CaCl2 pH7.4)に分注を行った後、エンテロキナーゼ(Novagen社製)2μl添加した後、室温にて一晩静置・反応を行い、Hisタグを切断し、Enterokinase Cleavage Capture Kit(Novagen社製)を用いてその添付プロトコールに従って精製を行った。次に、上記方法によって得られた精製標品1.2mlを、限外ろ過NANOSEP 10K OMEGA(PALL社製)を用いて、生理用リン酸緩衝液(日水製薬社製)置換した後、HTタフリンアクロディスク0.22μm(PALL社製)にて無菌ろ過を行い、これを以下の実験に用いた。
実施例3:組換えタンパク質の担癌患犬に対する投与試験
(1)抗腫瘍評価
表皮に腫瘤を持つ担癌患犬2頭(乳腺腫瘍2頭)に対して、上記で精製した2種類の組換えタンパクの抗腫瘍効果の評価を行った。
上記の通り精製した組換えイヌTRP11およびヒトTRIP11タンパク各々100μg(0.5ml)に、0.5mlの不完全フロイントアジュバント(和光純薬社製)を混合して癌治療剤とし、これを初回投与、3日後および7日後に腫瘍近傍の所属リンパ節に計3回投与を行った。その結果、癌治療剤投与時点で、それぞれ大きさが約75mm3及び102mm3であった腫瘤が、癌治療剤初回投与から10日後にはそれぞれ63mm3及び85mm3に、20日後にはそれぞれ35mm3及び42mm3に、30日後にはそれぞれ15mm3及び19mm3まで縮小した。
また、肥満細胞腫の患犬に対して、イヌTRP11タンパク100μg(0.5ml)に、0.5mlの不完全フロイントアジュバントを混合したものを上記と同様にして計3回投与した。また同時にイヌインターロイキン12を100μgづつ皮下投与した。その結果、癌治療剤投与時点で、大きさが約165mm3であった腫瘤が、癌治療剤初回投与から23日後には完全に退縮した。
(2)免疫誘導能評価
上記(1)での投与試験で抗腫瘍効果が得られた乳腺腫瘍の患犬の血液を採取し、常法に従って末梢血単核球を分離し、それを用いて、投与したタンパクに対する免疫誘導の評価をIFNγのエリスポットアッセイ法により行った。
ミリポア社製の96穴プレート(MultiScreen-IP, MAIPS4510)に70%エタノールを100μl/穴づつ添加し、5分間静置し吸引除去後、滅菌水で洗浄し、200mM Sodium Bicarbonate(pH8.2)を300μl/穴添加し5分間静置後、吸引除去しプレートを洗浄した。次に200mM Sodium Bicarbonateに添加した抗イヌインターフェロンγモノクローナル抗体(R&D社製、clone142529, MAB781)を0.5μg/穴づつ添加し、37℃で一晩インキュベートし、一次抗体を固相化した。一次抗体を吸引除去後、ブロッキング溶液(1%BSA-5%スクロース-200mM Sodium Bicarbonate(pH8.2))を300μl/穴づつ添加し4℃にて一晩インキュベートしてプレートをブロッキングした。ブロッキング溶液を吸引除去後、10%牛胎児血清を含むRPMI培地(Invitrogen社製)を300μl/穴づつ添加して5分間静置し培地を吸引除去した。その後、10%牛胎児血清を含むRPMI培地に懸濁した各々のイヌ末梢血単核球を5x105細胞/穴づつプレートに添加し、これにそれぞれの投与に用いたイヌTRIP11もしくはヒトTRIP11タンパクを10μl/穴づつ添加し、37℃、5%CO2の条件下で24時間培養することにより、末梢血単核球中に存在し得る免疫細胞からインターフェロンγを産生させた。培養後、培地を除去し、洗浄液(0.1%Tween20-200mM Sodium Bicarbonate(pH8.2))を用いてウエルを6回洗浄した。上記ブロッキング溶液にて1000倍に希釈したラビット抗イヌポリクローナル抗体をそれぞれのウエルに100μlづつ添加し4℃にて一晩インキュベートした。上記洗浄液で3回ウエルを洗浄した後、上記ブロッキング溶液にて1000倍に希釈したHRP標識抗ラビット抗体をそれぞれのウエルに100μlづつ添加し、37℃で2時間反応させた。上記洗浄液で3回ウエルを洗浄した後、コニカイムノステイン(コニカ社製)にて発色させ、ウエルを水洗して反応を停止させた。反応停止後、メンブレンを乾燥させ、ウエルを画像化し、スポット形成細胞(SFC)をKSエリスポット・コンパクトシステム(Carl Zeiss、ドイツ)により計数した。
その結果、イヌTRIP11タンパクおよびヒトTRIP11タンパクどちらを投与した患犬においても、投与前の末梢血単核球ではスポットが検出されなかった。一方、イヌTRIP11を投与した患犬においては、投与10日後および30日後の末梢血単核球でそれぞれ26個、65個のスポットが検出された。また、ヒトTRIP11を投与した患犬においては、投与10日後および30日後の末梢血単核球でそれぞれ31個、72個のスポットが検出された。
以上の結果から、いずれの投与患犬においても、投与した組換えタンパクに特異的に反応してインターフェロンγを産生する免疫細胞が誘導されていることが確認でき、これらの免疫細胞を中心とした免疫反応により、上記(1)に示す抗腫瘍効果が発揮されたものと考えられる。