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JP5553832B2 - 角膜内皮細胞増殖促進剤 - Google Patents

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Description

本発明は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)徐放性ゼラチンハイドロゲルの、角膜内皮細胞増殖促進及び角膜内皮損傷に関連する疾患の治療のための使用に関する。
角膜は上皮、実質及び内皮の三層からなり、角膜内皮は角膜の一番内側に存在する単一の細胞層で、角膜の含水率を保持し、透明性を維持している。角膜内皮細胞はin vivoでの増殖能力に乏しく、一度損傷を受けると近隣の細胞が伸展することで、損傷部位が埋められる。このため損傷を受けると角膜内皮細胞の密度が低くなり、透明性が維持できなくなる。このような病態を水疱性角膜症とよび、重篤な視力障害を引き起こす。
増殖能力の少ない角膜内皮細胞を増殖させる因子としてはbFGFが知られており、in vitroでの角膜内皮細胞培養に用いられている。過去の文献でin vivoでのbFGF溶液の前房内投与による角膜内皮細胞増殖促進効果を試みた報告がされている(非特許文献1)。しかし、房水は、常に産生・排出されており、1時間で20%の房水が入れ替わっている。角膜内皮細胞へbFGFを長期的に作用させるには、薬物を徐放させる適切な担体が必要となる。一方、bFGFは種々の臓器で強力な血管新生因子として作用することも知られているため、角膜内皮再生医療においては、そのような種々の副作用を最小限に抑制し且つ治療効果が最大となるような、bFGFの適切な投与方法や投与量を確立することが求められている。
本発明者らは、タンパク質を徐放し得る優れた担体としてゼラチンハイドロゲル(架橋ゼラチンゲル)が有用であることを見出し、この担体を用いたbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル(bFGF含有架橋ゼラチンゲル)製剤を既に開発している。このbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル製剤は、血管新生の促進や、骨折の治療に極めて有用であるが、角膜内皮細胞の増殖促進への適用についてはこれまでに何ら報告はない(特許文献1〜4、非特許文献2及び3)。
特開2005−104910号公報 国際公開第03/007982号 国際公開第94/27630号 国際公開第2006/085653号
Curr Eye Res.Vol.11,pp.1161−72,1992 Advanced Drug Delivery Reviews,vol.31,pp.287−301,1998 Circulation,vol.110,pp.3322−3328,2004
(発明が解決しようとする課題)
本発明は、角膜内皮細胞の増殖を促進し、角膜内皮損傷に関連する疾患の治療に有用なbFGF製剤を提供することを課題とする。
(課題を解決するための手段)
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、bFGFを担持させたゼラチンハイドロゲルを含むbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子を前房内に投与することにより、角膜内皮細胞の増殖を持続的に促進し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
〔1〕bFGFを担持したゼラチンハイドロゲルを含むbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子を含有し、前房内へ投与されることを特徴とする、角膜内皮細胞増殖促進剤。
〔2〕bFGFの投与量が1つの眼あたり30〜300ngである、〔1〕記載の剤。
〔3〕bFGFを担持したゼラチンハイドロゲルを含むbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子を含有し、前房内へ投与されることを特徴とする、角膜内皮損傷に関連する疾患の治療剤。
〔4〕bFGFの投与量が1つの眼あたり30〜300ngである、〔3〕記載の剤。
〔5〕角膜内皮損傷に関連する疾患が水疱性角膜症である、〔3〕記載の剤。
〔6〕bFGFを担持したゼラチンハイドロゲルを含むbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子の有効量を対象の前房内へ投与することを含む、角膜内皮細胞の増殖促進方法。
〔7〕bFGFの投与量が1つの眼あたり30〜300ngである、〔6〕記載の方法。
〔8〕bFGFを担持したゼラチンハイドロゲルを含むbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子の有効量を対象の前房内へ投与することを含む、角膜内皮損傷に関連する疾患の治療方法。
〔9〕bFGFの投与量が1つの眼あたり30〜300ngである、〔8〕記載の方法。
〔10〕角膜内皮損傷に関連する疾患が水疱性角膜症である、〔8〕記載の方法。
〔11〕対象の前房内へ投与する角膜内皮細胞の増殖促進剤の製造のための、bFGFを担持したゼラチンハイドロゲルを含むbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子の使用。
〔12〕bFGFの投与量が1つの眼あたり30〜300ngである、〔11〕記載の使用。
〔13〕対象の前房内へ投与する角膜内皮損傷に関連する疾患の治療剤の製造のための、bFGFを担持したゼラチンハイドロゲルを含むbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子の使用。
〔14〕bFGFの投与量が1つの眼あたり30〜300ngである、〔13〕記載の使用。
〔15〕角膜内皮損傷に関連する疾患が水疱性角膜症である、〔13〕記載の使用。
(発明の効果)
本発明によれば、角膜内皮細胞の増殖を持続的に促進し、角膜内皮損傷に関連する疾患を治療することができる。
正常ウサギにC−MS又はFGF−MS−aを投与して6日目の前眼部写真を示す。 正常ウサギにC−MSを投与後の眼圧の経時的な変化を示す。 角膜内皮障害モデルにC−MS、FGF−MS−b、FGF−MS−c、FGF−MS−eを投与した翌日の写真を示す。 C−MS投与群、FGF−MS−e投与群及び未治療群での角膜内皮欠損面積を示す。 C−MS、bFGF−solution、FGF−MS−eを投与2日後の角膜内皮欠損面積を示す。 C−MS投与群の欠損面積を100%としたときの他検体投与群の角膜内皮欠損面積の割合を示す。 C−MS又はFGF−MS−e投与2日後の前眼部の写真を示す。 C−MS又はFGF−MS−e投与2日後のアリザリン染色した角膜内皮面を示す。 C−MS投与群での角膜内皮欠損面積を100%としたときのFGF−MS−e投与群での角膜内皮欠損面積の割合を示す。 C−MS又はFGF−MS−e投与2日後のKi67染色した角膜内皮面を示す。
本発明は、bFGFを担持したゼラチンハイドロゲルを含むbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子(bFGF徐放性ゼラチンマイクロスフェアー)を含有し、前房内へ投与されることを特徴とする剤に関する。本発明の剤は、角膜内皮細胞増殖促進剤や角膜内皮損傷に関連する疾患の治療剤として有用である。
bFGFは公知のサイトカインであり、そのアミノ酸配列等も公知である。本発明で使用されるbFGFは、脳下垂体、脳、網膜、黄体、副腎、腎、胎盤、前立腺、胸腺などのbFGFを発現する臓器より抽出されるもの、組換えDNA技術などの遺伝子工学的手法で製造されるもの、さらにこれらの修飾体であって角膜内皮細胞の増殖を促進し得るものを含む。bFGFの修飾体としては、例えば前記抽出により得られた又は遺伝子工学的手法で得られたbFGFのアミノ酸配列においてアミノ酸が付加されたもの、アミノ酸の一部が他のアミノ酸で置換されたもの、又はアミノ酸の一部が欠損したものなどが挙げられる。本発明においては、これらのbFGF又はその修飾体は単独で用いられても良いし、これらの混合物として用いられても良い。
本発明で使用されるbFGFは、通常哺乳動物由来である。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類を挙げることができる。
前記bFGFとしては、好ましくは、例えば国際公開第87/01728号(特表昭63−500843号公報)、国際公開第89/04832号(特表平2−504468号公報)、国際公開第86/07595号(特表昭63−500036号公報)、国際公開第87/03885号(特表昭63−501953号公報)、欧州特許出願公開第237966号明細書(特開昭63−226287号公報)、欧州特許出願公開第281822号明細書(特開平2−193号公報)、欧州特許出願公開第326907号明細書(特開平2−909894号公報)、欧州特許出願公開第394951号明細書(特開平3−61494号公報)、欧州特許出願公開第493737号明細書(特開平5−124975号公報)などに記載のものが挙げられる。
これらのbFGFのうち、国際公開第87/01728号に記載の遺伝子工学的手法で製造した国際公開第94/27630号に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドが、安定性及び材料として必要な量を常時供給することが容易であるという点から好ましい。国際公開第94/27630号に記載のアミノ酸配列を有するbFGFは、具体的には国際公開第87/01728号の実施例に記載されているように、ヒトの腎臓のmRNAから調製されたλgt10cDNAライブラリーからウシの1.4kb塩基性副断片を用いてヒトのbFGFのcDNAクローンを調製し、発現ベクターを構築して前記クローンを発現することによって得られる。
本発明で使用されるゼラチンは、bFGFの徐放を可能とする限り特にその種類は限定されないが、bFGFは塩基性のタンパク質であるので、これと安定に複合体を形成できる酸性ゼラチンが好ましい。酸性ゼラチンの等電点は、通常約5(4.9〜5.0)である。酸性ゼラチンを使用した場合、ゲル中で、ゼラチンヒドロゲルを構成するゼラチンとbFGFとが複合体を形成するため、前房内へ移入した際のbFGFの急速な放出が抑制される。
酸性ゼラチンは、ウシやブタを始めとする各種の動物種の皮膚・腱・骨などの部分或いはコラーゲンからアルカリ処理して得ることができる。本発明で使用されるゼラチンは、好ましくは、ウシ又はブタのコラーゲン(好ましくはI型コラーゲン)をアルカリ処理して調製した酸性ゼラチンである。酸性ゼラチンは、新田ゼラチン株式会社の試料IEP5.0等として入手することもできる。
本発明で使用されるゼラチンハイドロゲルは、上記ゼラチンを種々の化学的架橋剤で架橋することにより得ることができる(例えば国際公開第94/27630号参照)。化学的架橋剤としては、例えばグルタルアルデヒド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、1−シクロヘキシル−3−(2−モリホリノエチル)カルボジイミド−メト−p−トルエンスルホナート等の水溶性カルボジイミド、ビスエポキシ化合物、ホルマリン等が好ましく、グルタルアルデヒド、及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩が特に好ましい。本発明においては、グルタルアルデヒドをとりわけ好適に使用することができる。
本発明において、ゼラチンハイドロゲルの化学的架橋は、所望の形状、大きさに成形したゼラチンハイドロゲルを、溶液中で上記架橋剤と反応させることにより行なうことができる。なお、上記成形は、容器にゼラチン水溶液を流し込むことなどにより行なうことができる。架橋剤としてグルタルアルデヒドを使用する場合であれば、ゼラチン水溶液(たとえば、25mgゼラチン/25mL蒸留水)に異なる容積の25重量%のグルタルアルデヒド水溶液を添加し、撹拌、静置することにより架橋を行なうことができる。上記グルタルアルデヒド水溶液の添加容積としては、通常、25mgゼラチン/25mL蒸留水に対して、1〜1000μL、好ましくは2.5〜40μL、さらに好ましくは3〜20μLである。グルタルアルデヒドの添加容積が1000μLより多いと、ハイドロゲルの架橋密度が高すぎて、房水中に投与したときに分解速度が遅すぎる場合があり、好ましくない。また、グルタルアルデヒドの添加容積が1μLより少ないと、十分な架橋密度が得られず、房水中に投与した場合に分解速度が速すぎるため、所望の徐放作用が得られない場合があり好ましくない。なお、ゼラチンハイドロゲルの架橋は、成形前のゼラチン溶液を架橋剤水溶液と混合することにより行ってもよい。
グルタルアルデヒド溶液には、可溶化剤等の適宜な添加剤を添加していてもよい。前記可溶化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノアレートなどのエステル−エーテル型界面活性剤を例示することができる。可溶化剤の添加量としては0.01〜1重量%(例えば、0.1重量%)が好ましい。架橋反応時間としては、冷却下(約4℃)で架橋反応を行なう場合であれば、通常0.5〜96時間、好ましくは3〜48時間(例えば、24時間)の範囲である。室温(約24℃)で架橋反応を行なう場合であれば、通常0.2〜48時間、好ましくは2〜30時間である。
架橋反応終了後は、適宜な反応停止剤を添加することにより架橋反応を停止するのが好ましい。反応停止剤は架橋剤の種類に応じて適宜選択すればよいが、架橋剤としてグルタルアルデヒドを使用する場合であれば、グリシン、アラニン、アルギニン等のアミノ酸類を使用することができる。これらのなかで、グリシンを好適に使用できる。具体的には、グルタルアルデヒド溶液とゼラチンハイドロゲルとを遠心分離等の方法により分離し、回収したゼラチンハイドロゲルをグリシン水溶液中に再懸濁して撹拌すればよい。架橋反応停止に使用するグリシン水溶液の濃度は、通常25〜200mM(例えば、100mM)であり、ゼラチンハイドロゲルをグリシン水溶液中に再懸濁して撹拌する際のグリシン水溶液の好ましい温度は4〜40℃であり、0.5〜12時間程度撹拌することが好ましい。このようにして得られたゼラチンハイドロゲルはグルタルアルデヒドのアルデヒド残基をブロックし、房水中に投与してbFGFを徐放するための担持体として好適に使用できる。
また、ゼラチンは熱処理又は紫外線、電子線、γ線等のエネルギー線照射によっても架橋できる。
本発明で使用されるゼラチンハイドロゲル粒子は、例えば国際公開第94/27630号に記載された方法、すなわち、ゼラチン水溶液にオリーブオイルなどの油剤を加えて200〜600rpmで撹拌してW/Oエマルジョンとし、これに化学的架橋剤水溶液(以下、架橋溶液ともいう)を添加する方法、或いは、予め200〜600rpmで撹拌した油剤中にゼラチン水溶液を滴下してW/Oエマルジョンとした後、遠心分離などによってゼラチン粒子を回収、乾燥し、乾燥ゼラチン粒子を化学的架橋剤水溶液に懸濁させてゼラチンハイドロゲル粒子を得る方法により製造することができる。得られたゼラチンハイドロゲル粒子は減圧乾燥、好ましくは凍結乾燥して使用に供する。製法や原料の相違により、分子量、含水率などの物性において異なる場合があるが、そのいずれでもよい。
ゼラチンハイドロゲル粒子の粒子径は、前房内への投与が可能であり、投与対象の視界を妨げたり、眼圧上昇を招く等のリスクを回避する観点から、膨潤時に約2〜約50μm(好ましくは約12〜約20μm)となるものが好ましい。粒子の直径が約2μmより小さいと房水とともに前房内から流出する場合があるため好ましくない。約50μmより大きい粒子は、眼圧上昇を招く場合があるため好ましくない。膨潤度は、ゼラチンハイドロゲル粒子の含水率や架橋度によって決まるから、膨潤時に約2〜約50μmとなる粒子は、前記製法によって得られたゼラチンハイドロゲル粒子から、含水率や架橋度に応じて、膨潤時に約2〜約50μmとなる適宜所望の粒子径を選定し、これをふるい分けなどの手法によって分別取得するか、或いは、前記製法を、所期の膨潤度に対応する架橋度(含水率)が得られるような条件下に実施して、さらにふるい分けなどの手法によって分別取得することによって得ることができる。
本明細書において粒子径とは、通常の方法で、水で膨潤した粒子の顕微鏡写真から最低400個以上の粒子の粒子径を測定して平均を算出することにより得られる値をいう。
ゼラチンハイドロゲル粒子の形状は、真球ないし略球形であることが望ましいが、長球状、円筒状、或いは不整形であってもよい。
前房内に投与されたゼラチンハイドロゲル粒子は、前房水をとりまく眼組織に付着し、加水分解酵素等によって徐々に分解されるものと考えられる。これにより、ゼラチンハイドロゲルに予め担持されたbFGFが、ゼラチンハイドロゲルの分解とともに徐放される。その分解速度は主としてゲルの含水率によって調節される。含水率とは、湿潤時のゲル全重量に対するゼラチンハイドロゲル中の水分重量の割合をいい、これが大きいほどゼラチンハイドロゲルの架橋度が小さく、ゼラチンハイドロゲル粒子は分解吸収されやすくなる。通常約80〜約99.9w/w%の範囲のものを用いることができるが、より好ましくは、約90〜約99.8w/w%、特に好ましくは約95〜約98w/w%である。粒子の含水率が約80w/w%より小さいとゼラチンハイドロゲル粒子の分解に長時間を要しbFGFの徐放速度が遅くなり十分なbFGF濃度が維持できない場合がある。また、粒子の含水率が約99.9w/w%より大きいと、粒子の形状を保つことができなかったり、bFGFが徐放されなかったりする場合がある。角膜内皮細胞の増殖促進或いは角膜内皮損傷に関連する疾患の治療を目的とする場合、約1日〜2月程度の範囲で、ゼラチンハイドロゲルの分解及びこれに伴うbFGFの徐放期間を制御することが可能であるが、例えば、およそ2週間以内に分解する程度のものが好ましい。
ゼラチンハイドロゲルにbFGFを担持させるには、bFGF水溶液をゼラチンハイドロゲルに滴下して含浸させるか、ゼラチンハイドロゲルをbFGF水溶液中に懸濁して再膨潤させる。本明細書において「担持」とは、bFGFが、ゼラチンハイドロゲル分子とbFGFとの間の、クーロン力、水素結合、疎水性相互作用、静電気等の相互作用によりゼラチンハイドロゲルに固定され、ゼラチンハイドロゲル中にbFGFが分散して含まれることを意味する。
ゼラチンハイドロゲルに含有させることができるbFGFの量は、ゼラチンハイドロゲルの含水率等により異なるが、ゼラチンハイドロゲル1mg(乾燥重量)あたり約0.12〜約0.98μgが可能である。本発明においては、好ましくはゼラチンハイドロゲル1mgあたり約0.20〜約0.80μgとなるように調製される。
本発明で使用されるbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子は、必要に応じて医薬として許容し得る一般的な添加剤(安定化剤、保存剤、可溶化剤、pH調整剤、増粘剤等)とともに製剤化されて、角膜内皮細胞増殖促進剤又は角膜内皮損傷に関連する疾患の治療剤として使用される。該添加剤は公知のものが使用できる。さらに、徐放効果を調節する各種添加剤(アミノ酸、アミノ基或いはリン酸基、硫酸基、SH基、カルボキシル基などを持つ糖、脂質などの低分子物質或いは高分子物質など)やbFGFの効果を高める作用やbFGFの分解・失活を抑制する作用などを有する他の活性成分も含ませることができる。このような他の活性成分としては、当該作用を有する限り特に制限されず、多糖、脂質、糖脂質、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、薬物として利用できる各種低分子化合物又は高分子化合物などのいかなる低分子物質或いは高分子物質でもよい。
本発明の剤の剤型は、前房内に投与可能であるものである限り特に制限されるものではないが、通常は、bFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子そのもの、或いはbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子の懸濁物として製剤化される。後者の場合、bFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子が、医薬として許容し得る無菌の水性溶媒(注射用水、生理食塩水、各種緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、HEPES緩衝液、Tris緩衝液等)等)中に分散される。当該製剤中のbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子の濃度は、前房内に投与可能であるものである限り特に制限されず、治療目的の疾患、患者の年齢、体重、投与量等に応じて適宜調整することができるが、好ましくは製剤全体におけるbFGFの濃度として、約0.001〜約500μg/mLの範囲、より好ましくは約0.1〜約200μg/mLの範囲とすることができる。
本発明の剤は、安全であり、哺乳動物に対して投与することができる。哺乳動物としては、上述のものを例示することができる。
本発明の剤は、前房内に投与されることを特徴とする。前房内へ投与することにより、前房内へbFGFが徐放され、角膜内皮細胞へbFGFが持続的に供給され、角膜内皮細胞の増殖が促進される。また、前房内へ投与することにより、角膜以外の臓器へのbFGFの影響を最小限に抑制することも可能となる。前房内への投与は、通常注射により行われる。前房の体積は比較的小さい(房水の体積としてヒトでは約350μL(約300〜約400μL)、ウサギでは約250μL(約200〜約300μL))ので、前房内への投与に際しては、好ましくはまず前房から注射器で一定量の房水を抜き取り、その後、抜き取った房水と同等の体積の本発明の剤を前房内に注入する。眼の機能に悪影響がない投与量であれば、前房から房水を抜き取らずに本発明の剤を注入することもできる。
本発明の剤は、角膜内皮細胞増殖促進剤や角膜内皮損傷に関連する疾患の治療剤として有用である。ここで、角膜内皮損傷に関連する疾患としては、例えば、水疱性角膜症(例えば内眼手術後、レーザー虹彩切開術後、ぶどう膜炎後、又は外傷後の水疱性角膜症)、先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィー、フックス角膜内皮ジストロフィー、滴状角膜、後部多形性角膜ジストロフィー、虹彩角膜内皮症候群又は角膜移植後の移植不全等を挙げることができる。なかでも、水疱性角膜症の治療剤として有用である。
本発明の角膜内皮細胞増殖促進剤又は角膜内皮損傷に関連する疾患の治療剤の投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、bFGFとして、通常成人患者1つの眼あたり通常約20〜約600ng、好ましくは約30〜約300ng、より好ましくは45〜100ng(例えば約70ng)である。投与量が約20ng以下であると、角膜内皮細胞増殖を促進する効果が十分に発揮されない可能性があり、また投与量が約1000ng以上であると角膜の混濁、血管新生、炎症等の副作用が生じるリスクが高くなる。bFGFの投与量を房水体積に基づいて換算すると、ヒトであれば房水1μLにつき、bFGFとして約0.06〜約1.7ng、好ましくは約0.086〜約0.86ng、より好ましくは約0.13〜約0.29ngである。上述のように、ヒトの房水体積は約300〜約400μLであるので、1つの眼あたりbFGFとして約70ngの用量は、房水1μLにつき約0.18〜約0.23ngの用量に相当する。1回の投与で効果が不十分であった場合は、該投与を複数回行うことも可能である。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、下記実施例で、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)は、日水製薬株式会社製ダルベッコPBS(−)粉末を指定の使用方法に従って調製、処理したものである。
(調製例1)ゼラチンハイドロゲル粒子の調製
牛骨由来のI型コラーゲンをアルカリ処理して得られた等電点4.9、分子量99000kDaであるゼラチン(新田ゼラチン株式会社製)を使用し、下記の手順によりゼラチン粒子を調製した。
予め40℃に加温したゼラチン水溶液(10重量%、10mL)を、40℃に加温したオリーブオイル(和光純薬株式会社製、300mL)中に、400rpmの速度で撹拌下10分間かけて分散させて油中水乳剤を得た。得られた油中水乳剤を氷で急冷し、さらに30分間撹拌した。
次いで、遠心分離によりオリーブオイルを除き、ゼラチン粒子をアセトンに再懸濁した。遠心分離(5000rpm、4℃、5分間)により回収し、目開き75μmのステンレスメッシュを通した後、目開き30μmのステンレスメッシュを使用して粒径により分画した。次に、4℃にて風乾し、ゼラチン粒子を得た。
0.1重量%ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(東京化成工業株式会社製:商品名『Tween80』)/DDWにグルタルアルデヒドを最終濃度0.125重量%となるように加え、4℃に冷却することにより架橋溶液を調製した。
風乾後のゼラチン粒子(25mg)を架橋溶液(25mL)中に分散し、25重量%グルタルアルデヒド水溶液(62.5125μL)を加え、4℃にて24時間撹拌してゼラチン粒子を化学架橋した。遠心分離(5000rpm、4℃、5分間)により架橋溶液を除いてゼラチンハイドロゲル粒子を回収し、100mMグリシン/超純水中1mg/mLとなるように再懸濁し、37℃で1時間激しく撹拌し、グルタルアルデヒドのアルデヒド残基をブロックした。
上記のようにして得られたゼラチンハイドロゲル粒子を蒸留水50mLで3回洗浄し、遠心分離により回収し、凍結乾燥した。
光学顕微鏡による観察により測定された凍結乾燥後のゼラチンハイドロゲル粒子(以下、MSともいう)の形状は球状であり、平均粒子径は15μmであった。また、マウス背部皮下におけるゼラチンハイドロゲル粒子のin vivo分解吸収性を調べたところ、2週間で分解吸収されていた。
(実施例1)正常ウサギへの投与
(bFGF含有ゼラチンハイドロゲル粒子PBS懸濁液(検体)の調製)
bFGF(2mg)にPBS(1mL)を加え、0.2重量%のbFGF/PBS溶液を調製した。調製例1で調製したMS(2mg)に、上記bFGF/PBS溶液(10μL)を加え、室温で2時間膨潤させbFGF含有ゼラチンハイドロゲル粒子とした。その後、bFGF含有ゼラチンハイドロゲル粒子をPBS(1990μL)で懸濁し、検体とした。以下、こうして得られたbFGF含有ゼラチンハイドロゲル粒子の懸濁液をFGF−MS−a(FGF−MS)と称す。
(コントロールゼラチンハイドロゲル粒子PBS懸濁液の調製)
調製例1で調製したMS(2mg)をPBS(2000μL)で懸濁し、検体とした。以下C−MS(コントロールMS)と称す。
(投与方法)
全身麻酔下で、手術用顕微鏡を用いてC−MSとFGF−MS−aの各検体(100μL)を30G針で正常日本白色ウサギ(2〜2.5kg、5匹)の前房内に投与した。投与後2、4、6、8及び10日に、細隙灯顕微鏡を用いた前眼部の観察及び圧平式眼圧計(ニューマトノメーター モデル30クラシック、ライカート社製)で眼圧測定を行った。C−MS投与群とFGF−MS−a投与群とに投与された1眼あたりのbFGFとMSの量を表1に示す。
(結果)
図1に、正常ウサギに各検体を投与して6日目の前眼部写真を示す。FGF−MS−a投与群では投与翌日から強い眼表面炎症が認められ、3日後には角膜混濁、血管新生が認められた。このことから、該投与群では高濃度のbFGFが徐放されていたと考えられる。またC−MS投与群では、特記すべき所見はなかった。
図2に、正常ウサギにC−MS投与後の眼圧の経時的な変化を示す。投与後の眼圧上昇は認められなかったので、前房内に投与されたゼラチンハイドロゲル粒子は線維柱帯への目詰まりすることのない安全な薬物担体であると考えられた。
(調製例2)
bFGFとPBSの使用量を下記表2に示す量に変えた他は、実施例1の(bFGF含有ゼラチンハイドロゲル粒子PBS懸濁液(検体)の調製)と同じ操作を行い、FGF−MS−b、FGF−MS−c、FGF−MS−d、FGF−MS−e、FGF−MS−f、およびFGF−MS−gを調製した。
(実施例2)至適投与量の検討
(方法)
検体として調製例2で調製したFGF−MS−b、FGF−MS−c及びFGF−MS−e、並びに実施例1で調製したC−MSを用いた。
全身麻酔下で、ヘパリンを1000IU/kg体重となるように正常日本白色ウサギ(2〜2.5kg、6匹)に耳静脈より投与した。投与20分後、液体窒素で冷却したステンレスプローブ(直径7mm)を角膜表面へ15秒接触させ、経角膜冷凍凝固による角膜内皮障害モデルを作成した。その後、実施例1と同様にして各検体を前房内に投与した。各検体中、1眼あたりの投与量に含まれるbFGFの量は上記表2に示す通りである。また、MSの投与量は、bFGF投与群、C−MS投与群とも0.1mg/眼である。
投与2日後に細隙灯顕微鏡を用いて前眼部の観察を行った。その後、ウサギを安楽死させ、眼球を摘出した。角膜を採取し、アリザリン染色を行った。
(結果)
図3に、角膜内皮障害モデルにC−MS、FGF−MS−b、FGF−MS−c、FGF−MS−eを投与した翌日の写真を示す。また、表3及び表4に各群の角膜内皮欠損面積を示す。図4に、C−MS投与群、FGF−MS−e投与群、及び未治療群での角膜内皮欠損面積を示す。表3、4及び図4から明らかなように、bFGF含有ゼラチンハイドロゲル粒子の投与により欠損面積が減少した。この結果からbFGF含有ゼラチンハイドロゲル粒子の角膜内皮損傷に対する有効性が明らかになった。
(実施例3)ゼラチンハイドロゲル粒子の有用性の検討
(方法)
実施例2と同様に角膜内皮障害モデルを作成し、実施例1と同様にして下記検体をそれぞれ前房内に投与した。
C−MS:bFGFを含有しないゼラチンハイドロゲル粒子投与bFGF−solution:担持体を使用せず、30ng/眼のbFGF(溶液)を前房内に投与した。
FGF−MS−e:調製例2で調整したFGF−MS−eを前房内に投与した。
投与2日後にウサギを安楽死させ、眼球を摘出した。角膜を採取し、アリザリン染色を行った。
(結果)
表5に、C−MS、bFGF−solution、FGF−MS−e投与群の角膜内皮欠損面積及びその平均値を示す(単位mm)。図5は、その平均値±S.D.を示す。この結果から、bFGFをゼラチンハイドロゲル粒子に担持させることにより角膜内皮損傷に対する治療効果が増強されることが示唆された。
(実施例4)至適投与量範囲の検討
(方法)
45ng/眼、70ng/眼及び100ng/眼の用量におけるbFGFゼラチンハイドロゲル粒子の角膜内皮損傷に対する効果を検討した。実施例2と同様に角膜内皮障害モデルを作成した。その後、調製例2で調製した、FGF−MS−b、f、g及び実施例1で調製したC−MSを実施例1と同様にして各検体を前房内に投与した。また、投与2日後、ウサギを安楽死させ、眼球を摘出した。角膜を採取し、アリザリン染色を行った。
(結果)
図6には、C−MS投与群の欠損面積を100%としたときの他検体投与群の角膜内皮欠損面積の割合を示す。図6から明らかなように、bFGFの用量依存的にbFGFゼラチンハイドロゲルは角膜内皮創傷の治癒を促進した。
(実施例5)角膜内皮創傷治癒促進効果
(方法)
調製例2で調製したFGF−MS−e及びC−MSを検体とした。全身麻酔下で、ヘパリンを1000IU/kg体重となるように正常日本白色ウサギ(2〜2.5kg、4匹)に耳静脈より投与した。投与20分後、液体窒素で冷却したステンレスプローブ(直径7mm)を角膜表面へ15秒接触させ、経角膜冷凍凝固による角膜内皮障害モデルを作成した。その後、実施例1と同様にして各検体の前房内投与を行った。
投与2日後に細隙灯顕微鏡を用いた前眼部の観察を行った。その後、ウサギを安楽死させ、眼球を摘出した。角膜はPFA(パラホルムアルデヒド)固定した後、アリザリン染色及びKi67免疫染色を行った。
(結果)
図7に、各検体投与2日後の前眼部の写真を示す。C−MS投与群では角膜の混濁が認められ、瞳孔縁が非常に不明瞭であった。一方、FGF−MS−e投与群では角膜混濁は認められず、瞳孔縁がはっきりと認識できた。またスリット光を斜め前方から照射してできた光学切片の観察から、C−MS投与群では角膜の厚みが増しており、角膜浮腫を起こしていると思われた。これと比較して、FGF−MS−e投与群では角膜の厚みは薄く、角膜浮腫は認められなかった。また、各群において角膜血管新生は認められなかった。図8に、各検体投与2日後のアリザリン染色した角膜内皮面を示す。C−MS投与群に比べてFGF−MS−e投与群では角膜内皮の損傷部位が小さくなっていた。図9に、C−MS投与群の角膜内皮欠損面積を100%としたときのFGF−MS−e投与群の角膜内皮欠損面積の割合を示す。解析の結果、C−MS投与群と比較し、FGF−MS−e投与群で有意な修復促進効果が認められた。図10には、各検体投与2日後のKi67染色した角膜内皮面を示す。FGF−MS−e投与群の角膜内皮欠損部付近にKi67陽性細胞が認められ、角膜内皮細胞が増殖していることが示唆された。
実施例1〜5より、角膜内皮障害を起こした患者に対し、bFGF含有ゼラチンハイドロゲル粒子(0.2mg)を前房内投与することで、角膜内皮欠損部位の早期修復が可能であることが明らかになった。角膜内皮欠損部位付近にはKi67陽性の角膜内皮細胞が確認できたことから、角膜内皮欠損修復時に細胞が増殖していることが示唆された。ゼラチンハイドロゲル投与による眼圧上昇を認めなかった。
本発明によれば、角膜内皮細胞の増殖を持続的に促進することができる。本発明によれば、角膜内皮損傷に関連する疾患の治療に有用なbFGF製剤を提供することができる。

Claims (3)

  1. bFGFを担持したゼラチンハイドロゲルを含むbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子を含有し、前房内へ、bFGF投与量として1つの眼あたり30〜300ng投与されることを特徴とする、角膜血管新生を生じさせずに角膜内皮細胞増殖促進するための剤。
  2. bFGFを担持したゼラチンハイドロゲルを含むbFGF徐放性ゼラチンハイドロゲル粒子を含有し、前房内へ、bFGF投与量として1つの眼あたり30〜300ng投与されることを特徴とする、角膜血管新生を生じさせずに角膜内皮損傷治療するための剤。
  3. 角膜内皮損傷が水疱性角膜症における角膜内皮損傷である、請求項記載の剤。
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