以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
(冷却装置1の構成)
図1は、冷却装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、冷却装置1は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を備える。蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、たとえば、車両の車内の冷暖房を行なうために、車両に搭載される。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を用いた冷房は、たとえば、冷房を行なうためのスイッチがオンされた場合、または、自動的に車両の室内の温度を設定温度になるように調整する自動制御モードが選択されており、かつ、車室内の温度が設定温度よりも高い場合に行なわれる。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を用いた暖房は、たとえば、暖房を行なうためのスイッチがオンされた場合、または、自動制御モードが選択されており、かつ、車室内の温度が設定温度よりも低い場合に行なわれる。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12と、第一熱交換器としての熱交換器14と、第二熱交換器としての熱交換器15と、減圧器の一例としての膨張弁16と、第三熱交換器としての熱交換器18と、室内凝縮器としての熱交換器13と、を含む。
圧縮機12は、車両に搭載されたモータまたはエンジンを動力源として作動し、冷媒ガスを断熱的に圧縮して過熱状態冷媒ガスとする。圧縮機12は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の作動時に流通する冷媒を吸入圧縮して、高温高圧の気相冷媒を吐出する。圧縮機12は、冷媒通路21に冷媒を吐出することで、蒸気圧縮式冷凍サイクル10に冷媒を循環させる。
熱交換器14,15は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流れる冷媒と熱交換器14,15の周囲の空気との間で熱交換するためのフィンと、を含む。熱交換器14,15は、冷媒と外気の間で熱交換を行ない、圧縮機12において圧縮された過熱状態冷媒ガスを外部媒体へ等圧的に放熱させて冷媒液とする。熱交換器14,15における冷却風と冷媒との熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。外気は、車両の走行によって発生する自然の通風によって熱交換器14,15に供給されてもよい。または外気は、コンデンサファンもしくはエンジン冷却用のラジエータファンなどの図示しない冷却ファンからの強制通風によって、熱交換器14,15に供給されてもよい。
膨張弁16は、高圧の液相冷媒を小さな孔から噴射させることにより膨張させて、低温・低圧の霧状冷媒に変化させる。膨張弁16は、凝縮された冷媒液を減圧して、気液混合状態の湿り蒸気とする。なお、冷媒液を減圧するための減圧器は、絞り膨張する膨張弁16に限られず、毛細管であってもよい。
膨張弁16は、膨張弁16出口の冷媒と熱交換器18出口の冷媒との圧力差と、ばね力と、のつりあいで弁の開度が決定される、温度式膨張弁であってもよい。温度式膨張弁は、熱交換器18出口の冷媒の過熱度が一定になるようにその弁開度が制御される。たとえば、熱交換器18出口の冷媒の過熱度が大きいと冷媒の圧力差が大きくなるが、この場合、弁開度が大きくなり冷媒の流量を増大することにより、冷媒の過熱度を小さくできる。逆に、熱交換器18出口の冷媒の過熱度が小さいと、弁開度が小さくなり冷媒の流量を減少することにより、冷媒の過熱度を大きくできる。膨張弁16は、温度式膨張弁に限られず、電気式の膨張弁を採用してもよい。
熱交換器13,18は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流れる冷媒と熱交換器13,18の周囲の空気との間で熱交換するためのフィンと、を含む。熱交換器13,18は、ダクト90内に配置され、ダクト90内を流れる空調用空気と冷媒との間で熱交換する。熱交換器13,18を経由して蒸気圧縮式冷凍サイクル10を循環する冷媒と、空調用空気と、の熱交換によって、空調用空気の温度が調節される。空調用空気は、外気であってもよく、車両の室内の空気であってもよい。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、圧縮機12に対し上流側の冷媒の経路に設けられたアキュムレータ85を含む。アキュムレータ85は、圧縮機12の吸入する冷媒の状態を一定に保つために設けられている。アキュムレータ85は、アキュムレータ85へ流入する冷媒が気液二相混合状態である場合、冷媒を気液分離し、冷媒液をアキュムレータ85内に溜め、飽和蒸気状態の気相冷媒を圧縮機12に戻す機能を有する。アキュムレータ85は、気体状の冷媒蒸気のみを圧縮機12へ吸入させ、冷媒液が圧縮機12へ流入するのを防止する役割を果たす。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、冷媒通路21〜29を備える。冷媒通路21は、圧縮機12と熱交換器13とを連通する。冷媒は、冷媒通路21を経由して、圧縮機12と熱交換器13との間を、圧縮機12から熱交換器13へ向かって流れる。冷媒通路22は、熱交換器13と熱交換器14とを連通する。冷媒は、冷媒通路22を経由して、熱交換器13と熱交換器14との間を、熱交換器13から熱交換器14へ向かって流れる。冷媒通路23,24は、熱交換器14と熱交換器15とを連通する。冷媒は、冷媒通路23,24を経由して、熱交換器14と熱交換器15との間を、熱交換器14と熱交換器15との一方から他方へ向かって流れる。
冷媒通路25は、熱交換器15と膨張弁16とを連通する。冷媒は、冷媒通路25を経由して、熱交換器15と膨張弁16との間を、熱交換器15から膨張弁16へ向かって流れる。冷媒通路25には、冷媒通路25を開閉可能な開閉弁44が設けられている。開閉弁44は、その開閉を切り換えることにより、冷媒通路25の連通と遮断とを切り替え、冷媒通路25を経由する冷媒の流通を可能または不可能にする。
冷媒通路26は、膨張弁16と熱交換器18とを連通する。冷媒は、冷媒通路26を経由して、膨張弁16と熱交換器18との間を、膨張弁16から熱交換器18へ向かって流れる。冷媒通路27は、熱交換器18と膨張弁16とを連通する。冷媒は、冷媒通路27を経由して、熱交換器18と膨張弁16との間を、熱交換器18から膨張弁16へ向かって流れる。
冷媒通路28は、膨張弁16とアキュムレータ85とを連通する。冷媒は、冷媒通路28を経由して、膨張弁16とアキュムレータ85との間を、膨張弁16からアキュムレータ85へ向かって流れる。冷媒通路29は、アキュムレータ85と圧縮機12とを連通する。冷媒は、冷媒通路29を経由して、熱交換器18と圧縮機12との間を、アキュムレータ85から圧縮機12へ向かって流れる。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12、熱交換器13,14,15、膨張弁16および熱交換器18が、冷媒通路21〜29によって連結されて構成される。なお、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒としては、たとえば二酸化炭素、プロパンやイソブタンなどの炭化水素、アンモニア、フロン類または水などを用いることができる。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路上に配置された気液分離器80を含む。気液分離器80は、気液分離器80に流入する冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する。気液分離器80の内部には、液相冷媒である冷媒液と、気相冷媒である冷媒蒸気と、が蓄蔵されている。気液分離器80には、冷媒通路23,24と、後述する冷媒通路33とが連結されている。
熱交換器14で凝縮された冷媒は、飽和液と飽和蒸気とが混合した気液二相状態の湿り蒸気の状態にある。熱交換器14から流出した冷媒は、冷媒通路23を通って気液分離器80へ供給される。冷媒通路23から気液分離器80へ流入する冷媒は、気液分離器80の内部において気相と液相とに分離される。気液分離器80は、冷媒を液体状の冷媒液とガス状の冷媒蒸気とに分離して、一時的に蓄える。気液分離器80は、その内部に液状の冷媒である冷媒液を一時的に貯留する蓄液器としての機能を有する。
熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒の経路は、熱交換器14と気液分離器80とを連通する第一経路としての冷媒通路23と、気液分離器80と熱交換器15とを連通する第二経路としての冷媒通路24と、を含む。冷媒通路23には、第一流量調整弁としての流量調整弁42が設けられている。冷媒通路23は、熱交換器14と流量調整弁42とを連通する冷媒通路23aと、流量調整弁42と気液分離器80とを連通する冷媒通路23bと、を含む。冷媒通路24には、第二流量調整弁としての流量調整弁43が設けられている。冷媒通路24は、気液分離器80と流量調整弁43とを連通する冷媒通路24aと、流量調整弁43と熱交換器15とを連通する冷媒通路24bと、を含む。
熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒の経路はまた、第三経路としての冷媒通路33と、第四経路としての冷媒通路34と、第五経路としての冷媒通路35と、を含む。冷媒通路33は、気液分離器80と冷却部30の入口側とを連通する。冷媒通路34は、冷却部30の出口側と冷媒通路23aとを連通する。冷媒通路35は、冷却部30の出口側と冷媒通路24bとを連通する。冷却部30は、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒の経路上に設けられている。冷媒通路33を経由して、気液分離器80から冷却部30へ向かう液状の冷媒が流れる。冷却部30を通過した冷媒は、冷媒通路35を経由して冷媒通路24bへ戻り、または、冷媒通路34を経由して冷媒通路23aへ戻る。
気液分離器80で気液分離された冷媒液は、冷媒通路33を経由して、気液分離器80の外部へ流出する。冷媒通路33の端部は、気液分離器80内に液相の冷媒が溜められる冷媒液貯留部に接続されており、液相冷媒の気液分離器80からの流出口を形成する。気液分離器80で気液分離された冷媒蒸気は、冷媒通路23または冷媒通路24を経由して、気液分離器80の外部へ流出する。冷媒通路23,24の端部は、気液分離器80内に気相の冷媒が溜められる冷媒蒸気貯留部に接続されており、その一方が気液分離器80への冷媒の流入口を形成し、他方が気液分離器80からの気相冷媒の流出口を形成する。冷媒通路23,24は、気液分離器80で分離された気相冷媒が気液分離器80から流出するための通路を形成する。
気液分離器80の内部では、冷媒液が下側、冷媒蒸気が上側に溜まる。冷媒通路23,24の端部は、気液分離器80の天井部に連結されている。冷媒通路33の端部は、気液分離器80の底部に連結されている。冷媒通路23,24のいずれか一方を経由して気液二相状態の冷媒が気液分離器80の内部へ供給され、冷媒通路23,24の他方を経由して気液分離器80の天井側から冷媒蒸気のみが気液分離器80の外部へ送り出され、冷媒通路33を経由して気液分離器80の底側から冷媒液のみが気液分離器80の外部へ送り出される。これにより、気液分離器80は、気相冷媒と液相冷媒との分離を確実に行なうことができる。
冷却装置1は、熱交換器14,15の間に、並列に接続された二つの冷媒の経路を備える。より詳細には、冷却装置1は、熱交換器14と気液分離器80との間に並列に接続された二つの冷媒の経路と、熱交換器15と気液分離器80との間に並列に接続された二つの冷媒の経路と、を備える。
冷却部30は、熱交換器14と熱交換器15との間において並列に接続された複数の冷媒の経路のうちの、一方に設けられている。冷却部30は、車両に搭載される電気機器であるEV(Electric Vehicle)機器31と、冷媒が流通する配管である冷却通路32と、を含む。EV機器31は、発熱源の一例である。冷却通路32の入口側の端部は、冷媒通路33に接続される。冷却通路32の出口側の端部は、冷媒通路34、35に連通する。
冷媒通路23は、熱交換器14と気液分離器80との間に並列に接続された冷媒の経路のうちの一方を構成する。気液分離器80と冷却部30とを連通する冷媒通路33と、冷却部30に含まれる冷却通路32と、冷却部30の出口側と冷媒通路23aとを連通する冷媒通路34とは、熱交換器14と気液分離器80との間に並列に接続された冷媒の経路のうちの他方を構成する。冷媒通路33は、冷却部30よりも上流側の冷媒の経路であり、冷媒通路33を経由して冷却部30へ冷媒が流入する。冷媒通路33は、液相の冷媒が気液分離器80から冷却部30に流れるための通路である。冷媒通路34は、冷却部30よりも下流側の冷媒の経路であり、冷媒は、冷却部30から流出して冷媒通路34へ流れ込む。冷媒通路34は、冷却部30から冷媒通路23に冷媒を戻すための通路である。
冷媒通路24は、熱交換器15と気液分離器80との間に並列に接続された冷媒の経路のうちの一方を構成する。気液分離器80と冷却部30とを連通する冷媒通路33と、冷却部30に含まれる冷却通路32と、冷却部30の出口側と冷媒通路24bとを連通する冷媒通路35とは、熱交換器15と気液分離器80との間に並列に接続された冷媒の経路のうちの他方を構成する。冷媒通路35は、冷却部30よりも下流側の冷媒の経路であり、冷媒は、冷却部30から流出して冷媒通路35へ流れ込む。冷媒通路35は、冷却部30から冷媒通路24に冷媒を戻すための通路である。
気液分離器80から流出した冷媒液は、冷媒通路33を経由して、冷却部30へ向かって流れる。冷却部30へ流通し、冷却通路32を経由して流れる冷媒は、発熱源としてのEV機器31と冷媒との温度差に応じて、EV機器31から熱を奪って、EV機器31を冷却させる。冷却部30は、気液分離器80において気液分離された飽和液状態の冷媒を用いて、EV機器31を冷却する。冷却部30において、冷却通路32内を流通する冷媒と、EV機器31と、が熱交換することにより、EV機器31は冷却され、冷媒は加熱される。
気液分離器80の内部には、飽和液状態の冷媒液が貯留されている。気液分離器80は、その内部に液状の冷媒である冷媒液を一時的に貯留する蓄液器として機能する。気液分離器80内に所定量の冷媒液が溜められることにより、負荷変動時にも気液分離器80から冷却部30へ流れる冷媒の流量を維持できる。気液分離器80が液だめ機能を有し、負荷変動に対するバッファとなり負荷変動を吸収できるので、EV機器31の冷却性能を安定させることができる。
冷却部30は、冷却通路32においてEV機器31と冷媒との間で熱交換が可能な構造を有するように設けられる。本実施の形態においては、冷却部30は、たとえば、EV機器31の筐体に冷却通路32の外周面が直接接触するように形成された冷却通路32を有する。冷却通路32は、EV機器31の筐体と隣接する部分を有する。当該部分において、冷却通路32を流通する冷媒と、EV機器31との間で、熱交換が可能となる。
EV機器31は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路の一部を形成する冷却通路32の外周面に直接接続されて、冷却される。冷媒とEV機器31とが直接熱交換してもよく、または、冷媒とEV機器31を流れる水や油などの二次冷媒とが熱交換してもよい。冷却通路32の外部にEV機器31が配置されるので、冷却通路32の内部を流通する冷媒の流れにEV機器31が干渉することはない。そのため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の圧力損失は増大しないので、圧縮機12の動力を増大させることなく、EV機器31を冷却することができる。
代替的には、冷却部30は、EV機器31と冷却通路32との間に介在して配置された任意の公知の伝熱装置を備えてもよい。この場合EV機器31は、冷却通路32の外周面に伝熱装置を介して接続され、EV機器31から冷却通路32へ伝熱装置を経由して熱伝達することにより、冷却される。伝熱装置として、たとえばウィック式などのヒートパイプを使用することができる。EV機器31をヒートパイプの加熱部とし冷却通路32をヒートパイプの冷却部とすることで、冷却通路32とEV機器31との間の熱伝達効率が高められるので、EV機器31の冷却効率を向上できる。
伝熱装置によってEV機器31から冷却通路32へ確実に熱伝達することができるので、EV機器31と冷却通路32との間に距離があってもよく、EV機器31に冷却通路32を接触させるために冷却通路32を複雑に配置する必要がない。その結果、EV機器31の配置が制限されることがなく、EV機器31の配置の自由度を向上することができる。
EV機器31は、電力の授受によって発熱する電気機器を含む。電気機器は、たとえば、直流電力を交流電力に変換するためのインバータ、回転電機であるモータジェネレータ、蓄電装置であるバッテリ、バッテリの電圧を昇圧させるための昇圧コンバータ、バッテリの電圧を降圧するためのDC/DCコンバータなどの、少なくともいずれか一つを含む。バッテリは、リチウムイオン電池あるいはニッケル水素電池等の二次電池である。バッテリに代えてキャパシタが用いられてもよい。
冷媒通路34には、冷媒通路34を開閉可能な開閉弁37が設けられている。開閉弁37は、その開閉を切り換えることにより、冷媒通路34の連通と遮断とを切り替え、冷媒通路33を経由する冷媒の流通を可能または不可能にする。開閉弁37は、冷却部30から流出する冷媒の経路である冷媒通路34に設けられ、冷媒通路34を開閉可能な、第一開閉弁としての機能を有する。
冷媒通路35には、冷媒通路35を開閉可能な開閉弁38が設けられている。開閉弁38は、その開閉を切り換えることにより、冷媒通路35の連通と遮断とを切り替え、冷媒通路35を経由する冷媒の流通を可能または不可能にする。開閉弁38は、冷却部30から流出する冷媒の経路である冷媒通路35に設けられ、冷媒通路35を開閉可能な、第二開閉弁としての機能を有する。
開閉弁37と開閉弁38とは、冷却部30から冷媒通路34を経由して熱交換器14へ向かう冷媒の流れと、冷却部30から冷媒通路35を経由して熱交換器15へ向かう冷媒の流れと、を切り替える、第二切替弁としての切替弁36を構成する。なお、二つの開閉弁37,38によって切替弁36が構成される例に限られず、たとえば冷媒通路34,35の分岐点に接続された三方弁を設け、当該三方弁がその開閉設定の切替により切替弁36として機能してもよい。
流量調整弁42は、熱交換器14と気液分離器80との間に並列に接続された冷媒の経路のうち、冷却部30を経由しない方の一方の経路を形成する冷媒通路23に設けられている。流量調整弁42は、その弁開度を変動させ、流量調整弁42を経由して流れる冷媒の圧力損失を増減させる。これにより、流量調整弁42は、冷却部30を経由することなく気液分離器80と熱交換器14との間を直接流れる冷媒の流量と、冷却通路32を含むEV機器31の冷却系を経由して流れる冷媒の流量と、を任意に調節する。
流量調整弁42の弁開度を大きくすれば、気液分離器80から熱交換器14へ流れる冷媒のうち、冷媒通路23を経由して熱交換器14へ直接流れる流量が大きくなり、冷媒通路33を経由して冷却通路32へ流れEV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなる。流量調整弁42の弁開度を小さくすれば、気液分離器80から熱交換器14へ流れる冷媒のうち、冷媒通路23を経由して熱交換器14へ直接流れる流量が小さくなり、冷却通路32へ流れEV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなる。
流量調整弁43は、気液分離器80と熱交換器15との間に並列に接続された冷媒の経路のうち、冷却部30を経由しない方の一方の経路を形成する冷媒通路24に設けられている。流量調整弁43は、その弁開度を変動させ、流量調整弁43を経由して流れる冷媒の圧力損失を増減させる。これにより、流量調整弁43は、冷却部30を経由することなく気液分離器80と熱交換器15との間を直接流れる冷媒の流量と、冷却通路32を含むEV機器31の冷却系を経由して流れる冷媒の流量と、を任意に調節する。
流量調整弁43の弁開度を大きくすれば、気液分離器80から熱交換器15へ流れる冷媒のうち、冷媒通路24を経由して熱交換器15へ直接流れる流量が大きくなり、冷媒通路33を経由して冷却通路32へ流れEV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなる。流量調整弁43の弁開度を小さくすれば、気液分離器80から熱交換器15へ流れる冷媒のうち、冷媒通路24を経由して熱交換器15へ直接流れる流量が小さくなり、冷却通路32へ流れEV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなる。
流量調整弁42,43の弁開度を大きくするとEV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなり、EV機器31の冷却能力が低下する。流量調整弁42,43の弁開度を小さくするとEV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなり、EV機器31の冷却能力が向上する。流量調整弁42,43を使用して、EV機器31に流れる冷媒の量を最適に調節できるので、EV機器31を適切に温度制御することができ、EV機器31の過熱および過冷却を確実に防止することができる。加えて、EV機器31の冷却系の冷媒の流通に係る圧力損失および冷媒を循環させるための圧縮機12の消費電力を、確実に低減することができる。
熱交換器13,18は、空調用空気が流通するダクト90の内部に配置されている。ダクト90は、ダクト90に空調用空気が流入する入口であるダクト入口91と、ダクト90から空調用空気が流出する出口であるダクト出口92と、を有する。ダクト90の内部の、ダクト入口91の近傍には、ファン93が配置されている。
ファン93が駆動することにより、ダクト90内に空気の流れが発生する。ファン93が稼働すると、ダクト入口91を経由してダクト90の内部へ空調用空気が流入する。ダクト90内の空調用空気の流れの上流側に熱交換器18が配置され、下流側に熱交換器13が配置される。ダクト90へ流入する空気は、外気であってもよく、車両の室内の空気であってもよい。図1中の矢印97は、熱交換器18を経由して流れる空調用空気の流れを示す。矢印98は、ダクト出口92を経由してダクト90から流出する空調用空気の流れを示す。
ダクト90の内部には、ダクト90の内部空間を二つの空間に仕切る隔壁部94が配置されている。隔壁部94は、ダクト90内の空気の流れ方向に沿って延在し、ダクト90内を流れる空調用空気の流れを二つの流れに分離する。熱交換器18は、隔壁部94に対し空調用空気の流れの上流側に配置されている。熱交換器13は、隔壁部94によって仕切られた二つの空間のうちの一方に配置されている。
隔壁部94の上流側には、ダンパ96が設けられている。ダンパ96は、隔壁部94によって仕切られた二つの空間の各々へ流れる空調用空気の流量を調整する流量調整部としての機能を有する。隔壁部94の上流側の端部に、ダンパ96を駆動するアクチュエータ95が設けられている。ダンパ96は、アクチュエータ95によって一端が支持され、当該一端を軸として両方向に回転可能である。ダンパ96の配置に応じて、空調用空気が熱交換器13を経由して流れる場合と、空調用空気が熱交換器13をバイパスして流れる場合と、が切り換えられて、ダクト出口92での空調用空気の温度が調節される。
図1に示すダンパ96の配置では、熱交換器13へ流れる空調用空気の流れをダンパ96が遮蔽している。そのため、空調用空気は熱交換器13を通過せずにダクト90内を流れる。この場合、熱交換器13で空調用空気が加熱されることが防止され、空調用空気が低温に保たれる。一方、後述する図4に示すダンパ96の配置では、ダンパ96は空調用空気の流れを熱交換器13へ導く。この場合、熱交換器13において、圧縮機12で断熱圧縮された冷媒から空調用空気へ熱伝達され、空調用空気は加熱される。
熱交換器13を通過する空調用空気の流量を調節するための流量調整部は、ダンパ96に限られるものではない。たとえば、ロールスクリーン状の流量調整部をダクト90内に設置し、スクリーンの巻取り量を変化させることにより、ダクト90内の空調用空気の流れを制御してもよい。
冷却装置1はまた、第一切替弁としての三方弁41を含む。熱交換器13と熱交換器14とを連通する冷媒通路22は、熱交換器13と三方弁41とを連通する冷媒通路22aと、三方弁41と熱交換器14とを連通する冷媒通路22bと、を含む。冷却装置1はまた、三方弁41に連結された冷媒通路71と、冷媒通路71を流れる冷媒を減圧する膨張弁76と、膨張弁76で絞り膨張された冷媒が流れる冷媒通路72,73,74とを備える。三箇所の配管接続口を有する三方弁41は、冷媒通路22aと、冷媒通路22bと,冷媒通路71とに連結されている。冷媒通路22aは、三方弁41の第一の配管接続口に接続されている。冷媒通路22bは、三方弁41の第二の配管接続口に接続されている。冷媒通路71は、三方弁41の第三の配管接続口に接続されている。
冷媒通路73,74は、冷媒通路72から分岐する冷媒の経路である。第一の分岐路としての冷媒通路73は、冷媒通路72と冷媒通路25とを連通する。冷媒通路73には、冷媒通路73を開閉可能な開閉弁77が設けられている。開閉弁77は、その開閉を切り換えることにより、冷媒通路73の連通と遮断とを切り替え、冷媒通路73を経由する冷媒の流通を可能または不可能にする。第二の分岐路としての冷媒通路74は、冷媒通路72と冷媒通路26とを連通する。冷媒通路74には、冷媒通路74を開閉可能な開閉弁78が設けられている。開閉弁78は、その開閉を切り換えることにより、冷媒通路74の連通と遮断とを切り替え、冷媒通路74を経由する冷媒の流通を可能または不可能にする。
冷媒通路71,72,73は、熱交換器13と熱交換器14との間の冷媒の経路である冷媒通路22と、熱交換器15と膨張弁16との間の冷媒の経路である冷媒通路25と、を連通する。冷媒通路71,72,74は、冷媒通路22と、膨張弁16と熱交換器18との間の冷媒の経路である冷媒通路26と、を連通する。
三方弁41は、冷媒通路22aと冷媒通路22bとの連通状態を切り替え、かつ冷媒通路22aと冷媒通路71との連通状態を切り替える。三方弁41は、冷媒通路22aと冷媒通路22bとが連通し冷媒通路22aと冷媒通路71とが非連通の第一の状態と、冷媒通路22aと冷媒通路71とが連通し冷媒通路22aと冷媒通路22bとが非連通の第二の状態と、を切り替える。
圧縮機12で断熱圧縮された冷媒は、冷媒通路21、熱交換器13、冷媒通路22aを経て三方弁41に至る。冷媒は、三方弁41から冷媒通路22bを経由して、熱交換器14へ流れる。また冷媒は、三方弁41から冷媒通路71、膨張弁76、冷媒通路72,73、冷媒通路25を順に経由して、熱交換器15へ流れる。また冷媒は、三方弁41から冷媒通路71、膨張弁76、冷媒通路72,74、冷媒通路26を順に経由して、熱交換器18へ流れる。三方弁41は、その開閉を切り替えることにより、熱交換器13から熱交換器14へ向かう冷媒の流れと、熱交換器13から熱交換器15および/または熱交換器18へ向かう冷媒の流れと、を選択的に切り替える、経路選択部としての機能を有する。
膨張弁76は、膨張弁16と異なる他の減圧器としての機能を有し、冷媒通路71を流れる冷媒を減圧する。膨張弁76は、冷媒通路71を流れる冷媒を絞り膨張させ、冷媒の圧力を低下させる。これにより、冷媒通路71内を流れる冷媒と比較して、冷媒通路72を流れる冷媒が、より低圧になる。膨張弁76は、電子膨張弁であってもよい。または、他の減圧器は開度調整機能を有していなくてもよく、膨張弁76に換えて細径のキャピラリーチューブが設けられてもよい。
冷却装置1はまた、冷媒通路22bと冷媒通路28とを連通する冷媒通路61を備える。第六経路としての冷媒通路22bは、冷媒通路23とともに、熱交換器14に流出入する冷媒の経路を構成する。冷媒通路61には、冷媒通路61を開閉可能な開閉弁64が設けられている。開閉弁64は、その開閉を切り換えることにより、冷媒通路61の連通と遮断とを切り替え、冷媒通路61を経由する冷媒の流通を可能または不可能にする。
冷媒通路61にはまた、逆止弁66が設けられている。逆止弁66は、冷媒通路61の、開閉弁64よりも冷媒通路28に近接する側に設けられている。逆止弁66は、冷媒通路28から開閉弁64へ向かう冷媒の流れを禁止する。逆止弁66は、熱交換器18から冷媒通路27,28を経由して流れる冷媒が、冷媒通路61へ流入することを防止し、冷媒通路28からアキュムレータ85へ確実に冷媒を流すために、設けられている。
冷却装置1はさらに、連通路51を備える。連通路51は、三方弁41と熱交換器14とを連通する冷媒通路22bと、冷却部30の出口側と、を連通する。連通路51には、連通路51を開閉可能な開閉弁52が設けられている。開閉弁52は、その開閉を切り換えることにより、連通路51の連通と遮断とを切り替え、連通路51を経由する冷媒の流通を可能または不可能にする。
開閉弁52を開閉して冷却部30から流出する冷媒の経路を切り換えることにより、EV機器31を冷却した後の冷媒を、連通路51および冷媒通路22bを経由して熱交換器14へ流すことができる。つまり、冷却部30から流出した冷媒は、冷媒通路34,23aを経由して熱交換器14へ流れることができ、冷媒通路35,24bを経由して熱交換器15へ流れることができ、さらに、連通路51および冷媒通路22bを経由して熱交換器14へ流れることが可能である。
連通路51に開閉弁52を設ける構成に替えて、冷媒通路34,36および連通路51の分岐点に四箇所の配管接続口を有する四方弁を設けてもよい。この場合、冷媒通路34,36および連通路51をそれぞれ四方弁の配管接続口に接続し、四方弁の開閉設定を切り替えることにより、冷却部30から流出する冷媒の経路として、冷媒通路34、冷媒通路35および連通路51のいずれかの経路のうちの一つを任意に選択することができる。
流量調整弁42,43は、開度調整が可能な仕様の弁であり、たとえば電動弁であってもよい。開閉弁37,38,44,52,64,77,78は、全開と全閉との切替が可能な仕様の弁であればよく、たとえば電磁弁であってもよい。
(第1の運転モード)
本実施の形態の冷却装置1は、第1〜第5の5つの運転モードによって、発熱源であるEV機器31を冷却することが可能である。図1には、冷却装置1が第1の運転モードに設定されている状態が図示されている。図2は、冷却装置1の運転モード毎の圧縮機および弁の設定を示す図である。
図2には、冷却装置1が異なる5つの運転モードのいずれかで運転される場合の、各運転モードにおける圧縮機12の運転状況、ならびに、流量調整弁42,43、三方弁41および開閉弁37,38,44,52,64,77,78の開度の設定が示されている。図2にはさらに、冷却装置1の運転モード毎の、冷媒によるEV機器31の温度調節作用およびエアコンを用いた車室内の空調の状態が示されている。
図2中に示す運転モードのうち、第1の運転モードは、車両の車内の冷房用のエアコンが運転中の、車室内の冷房および除湿を行なう場合の運転モードである。なお、図1および後述する図4,6,8,11において、実線で示される冷媒の経路に冷媒が流れ、点線で示される冷媒の経路には冷媒が流れない。
第1の運転モードのとき、車室内の冷房のために、膨張弁16および熱交換器18を含む経路に冷媒を流通させる必要があるので、圧縮機12は運転状態である。流量調整弁42は、冷媒通路23を流れる冷媒の圧力損失を最小にするように、全開にされる。流量調整弁43は、冷却部30を流れる冷媒の流量を調整し、EV機器31の冷却のために十分な冷媒が冷却部30へ流れるように、弁開度を調整されている。三方弁41は、冷媒通路22aと冷媒通路22bとを連通させ、冷媒通路22a,22bの両方に対し冷媒通路71が非連通とされるように、開閉を切り替えられている。
開閉弁37は閉とされ、冷媒通路34が遮断される。開閉弁38は開とされ、冷媒通路35が連通状態とされる。開閉弁52は閉とされ、連通路51が遮断される。切替弁36および開閉弁52は、冷却部30から流出する冷媒が冷媒通路35へ流れ冷媒通路34および連通路51へは流れないように、開閉を切り替えられている。開閉弁44は開とされ、冷媒通路25が連通状態とされる。開閉弁64,77,78はいずれも閉とされ、冷媒通路61,73,74が遮断される。
冷媒は、圧縮機12と熱交換器14,15と膨張弁16と熱交換器18とが冷媒通路21〜29によって順に接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
図1に示す冷房運転中は、ダクト90から流出する空調用空気の温度を低く保つことが必要とされる。そのため、ダンパ96を操作して、空調用空気が熱交換器13を通過しないように、ダクト90内の空調用空気の経路を設定する。このようにすれば、空調用空気が熱交換器13で加熱されて冷房能力が低下することを抑制できるので、車両の室内を効率的に冷却することができ、冷房能力を確保することができる。
図3は、第1の運転モードにおける蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図3中の横軸は、冷媒の比エンタルピーを示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力を示す。比エンタルピーの単位はkJ/kgであり、絶対圧力の単位はMPaである。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。
図3中には、熱交換器14の出口の冷媒通路23から気液分離器80を経由して冷媒通路33へ流れ、冷却部30へ流入してEV機器31を冷却し、冷却部30から冷媒通路35を経由して熱交換器15の入口の冷媒通路24bへ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点における冷媒の熱力学状態が示される。
図3に示すように、アキュムレータ85から飽和蒸気状態の冷媒が圧縮機12へ吸入され、圧縮機12において冷媒は等比エントロピー線に沿って断熱圧縮される。圧縮機12で圧縮されるに従って冷媒の圧力と温度とが上昇し、冷媒は、圧縮機12の出口において高温高圧の過熱度の大きい過熱蒸気になる。
圧縮機12において断熱圧縮された高温高圧の過熱蒸気状態の冷媒は、熱交換器14へと流れ、熱交換器14において冷却される。圧縮機12から吐出された高圧の気相冷媒は、熱交換器14において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器14における外気との熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。熱交換器14へ入った高圧の冷媒蒸気は、熱交換器14において等圧のまま過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になる。
気液二相状態の冷媒は、気液分離器80において、飽和蒸気状態の冷媒蒸気と飽和液状態の冷媒液とに気液分離される。気液分離器80から飽和液状態の冷媒が流出し、冷媒通路33を経由して冷却部30の冷却通路32へ流れ、EV機器31を冷却する。冷却部30において、熱交換器14で凝縮され気液分離器80で気液分離された飽和液状態の液冷媒に熱を放出することで、EV機器31が冷却される。EV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。冷媒は、EV機器31から潜熱を受け取って一部気化することにより、冷却部30の出口において、飽和液と飽和蒸気とが混合した気液二相状態の湿り蒸気となる。
冷却部30から流出した冷媒は、冷媒通路35,24bを経由して、熱交換器15に流入する。冷媒の湿り蒸気は、熱交換器15において周囲に放熱し外気と熱交換して冷却されることにより再度凝縮され、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却された過冷却液になる。冷媒は、熱交換器15において、飽和温度以下にまで冷却される。その後冷媒は、冷媒通路25を経由して膨張弁16に流入する。膨張弁16において、過冷却液状態の冷媒は絞り膨張され、比エンタルピーは変化せず温度と圧力とが低下して、低温低圧の気液混合状態の湿り蒸気となる。
膨張弁16から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路26を経由して熱交換器18へ流入する。熱交換器18のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。熱交換器18は、その内部を流通する霧状冷媒が気化することによって、熱交換器18に接触するように導入された空調用空気の熱を吸収する。熱交換器18は、膨張弁16によって減圧された冷媒を用いて、冷媒の湿り蒸気が蒸発して冷媒ガスとなる際の気化熱を、車両の室内へ流通する空調用空気から吸収して、車両の室内の冷房を行なう。熱が熱交換器18に吸収されることによって温度が低下した空調用空気が車両の室内に再び戻されることによって、車両の室内の冷房が行なわれる。
冷媒は、熱交換器18のチューブ内を流通する際に、フィンを経由して周囲の空調用空気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって加熱され、等圧のまま蒸発する。冷房運転時には、熱交換器18において高温の空調用空気と冷媒とが熱交換することにより空調用空気が冷却され、空調用空気の温度が低下し、冷媒は空調用空気からの熱伝達を受けて加熱される。
車室内の必要な冷房能力に応じて、熱交換器18における冷媒と空調用空気との熱交換量が変化する。熱交換器18において、全ての冷媒が過熱蒸気になるまで加熱されてもよく、全ての冷媒が乾き飽和蒸気になるまで加熱されてもよく、または、熱交換器18の出口で冷媒は湿り飽和蒸気状態であってもよい。熱交換器18から流出する冷媒が液相の冷媒を含む場合、アキュムレータ85内に冷媒液が貯留され、気体状態の冷媒蒸気のみが圧縮機12に吸入され、冷媒液が圧縮機12へ流入することが防止される。図3には、湿り飽和蒸気状態の冷媒がアキュムレータ85で気液分離され、アキュムレータ85から乾き飽和蒸気状態の冷媒が流出して冷媒通路29を経由して圧縮機12に流れるときの、冷媒の状態が図示されている。
冷媒はこのようなサイクルに従って、圧縮、凝縮、絞り膨張、蒸発の状態変化を連続的に繰り返す。なお、上述した蒸気圧縮式冷凍サイクルの説明では、理論冷凍サイクルについて説明しているが、実際の蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、圧縮機12における損失、冷媒の圧力損失および熱損失を考慮する必要があるのは勿論である。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10の運転中に、冷媒は、蒸発器として作用する熱交換器18において蒸発する際に気化熱を車両の室内の空気から吸収して、車室内の冷房を行なう。加えて、熱交換器14で凝縮され気液分離器80で気液分離された高圧の液冷媒が冷却部30へ流通し、EV機器31と熱交換することでEV機器31を冷却する。冷却装置1は、車両に搭載された発熱源であるEV機器31を、車両の室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。なお、EV機器31を冷却するために必要とされる温度は、少なくともEV機器31の温度範囲として目標となる温度範囲の上限値よりも低い温度であることが望ましい。
熱交換器18において被冷却部を冷却するために設けられた蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、EV機器31の冷却が行なわれるので、EV機器31の冷却のために、専用の水循環ポンプまたは冷却ファンなどの機器を設ける必要はない。そのため、EV機器31の冷却のために必要な構成を低減でき、装置構成を単純にできるので、冷却装置1の製造コストを低減することができる。加えて、EV機器31の冷却のためにポンプや冷却ファンなどの動力源を運転する必要がなく、動力源を運転するための消費動力を必要としない。したがって、EV機器31の冷却のための消費動力を低減することができ、低動力でEV機器31を冷却することができる。
熱交換器14では、冷媒を湿り飽和蒸気の状態にまで冷却すればよく、気液分離器80で気液分離された飽和液状態の冷媒液が冷却部30へ供給される。EV機器31から蒸発潜熱を受け取り一部気化した湿り蒸気の状態の冷媒は、熱交換器15で再度冷却される。湿り蒸気状態の冷媒を凝縮させ完全に飽和液にするまで、冷媒は一定の温度で状態変化する。熱交換器15はさらに、車両の室内の冷房のために必要な程度の過冷却度にまで、液相冷媒を過冷却する。冷媒の過冷却度を過度に大きくする必要がないので、熱交換器14,15の容量を低減することができる。したがって、車室用の冷房能力を確保でき、かつ、熱交換器14,15のサイズを低減することができるので小型化され車載用に有利な、冷却装置1を得ることができる。
冷却装置1の設計段階で熱交換器14,15の仕様を決定する際には、EV機器31の最大発熱量を設計値として用いる。EV機器31が最大発熱量未満の熱量を発生する通常発熱時には、熱交換器14,15の能力に余裕ができる。そのため、最大発熱量のEV機器31を冷却しない状態になると、熱交換器14,15において、冷媒がより多くの空気と熱交換できるようになる。これは、熱交換器14,15が見かけ上大きくなり、熱交換器14,15の温度効率φcが高くなったと考えることができる。
熱交換器14,15における空気側の放熱能力Qcaは、熱交換器の温度効率φc、空気比熱Ca、空気重量風量Gea、および、冷媒温度Terから吸入空気温度Teaを減じた差(Ter−Tea)に比例する。必要な放熱能力Qcaは変わらず、また空気比熱Ca、空気重量風量Geaおよび吸入空気温度Teaは外気温度および車速に従って決まるので、温度効率φcが高くなった分、冷媒温度Terが低くなることになる。モリエル線図を参照すると、冷媒が気液二相状態のとき冷媒の温度と圧力とは線形の関係にあり、冷媒の圧力変化に従って冷媒の温度が変化する。つまり、熱交換器14,15での冷媒温度Terが低くなるとは、熱交換器14,15を流れる冷媒の圧力が低くなることを意味する。
熱交換器14,15での冷媒の圧力が下がり、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の高圧が降下する結果、圧縮機12の出口での冷媒の圧力が相対的に低くてもよいことになる。そのため、圧縮機12で冷媒を断熱圧縮するための動力を低減することができ、さらなる省動力化を達成することができる。したがって、車両の燃費を向上することができる。特に電気自動車においては、省動力化により、直接電費を向上することができる。
気液分離器80から熱交換器15へ向かって流れる冷媒の経路として、冷却部30を通過しない経路である冷媒通路24と、冷却部30を経由してEV機器31を冷却する冷媒の経路である冷媒通路33,35および冷却通路32と、が並列に設けられる。冷媒通路33,35を含むEV機器31の冷却系は、冷媒通路24に対し並列に接続されている。そのため、気液分離器80から流出した冷媒の一部のみが、冷却部30へ流れる。冷媒通路24に設けられた流量調整弁43の開度調整によって、気液分離器80から冷媒通路24へ流れる冷媒と、冷却部30を流れる冷媒と、の流量が適切に調整される。この流量調整により、EV機器31の冷却のために必要な量の冷媒が冷却部30へ流れ、EV機器31は適切に冷却される。
熱交換器14から冷却部30を経由せず熱交換器15へ流れる冷媒の経路と、熱交換器14から冷却部30を経由して熱交換器15へ流れる冷媒の経路と、を並列に設け、一部の冷媒のみを冷媒通路33,35へ流通させることで、EV機器31の冷却系に冷媒が流れる際の圧力損失を低減することができる。全ての冷媒が冷却部30に流れないので、冷却部30を経由する冷媒の流通に係る圧力損失を低減することができ、それに伴い、冷媒を循環させるための圧縮機12の運転に必要な消費電力を低減することができる。
膨張弁16を通過した後の低温低圧の冷媒をEV機器31の冷却に使用すると、熱交換器18における車室内の空気の冷却能力が減少して、車室用の冷房能力が低下する。これに対し、本実施の形態の冷却装置1では、蒸気圧縮式冷凍サイクル10において、圧縮機12から吐出された高圧の冷媒は、第一の凝縮器としての熱交換器14と、第二の凝縮器としての熱交換器15と、の両方によって凝縮される。圧縮機12と膨張弁16との間に二段の熱交換器14,15を配置し、EV機器31を冷却する冷却部30は、熱交換器14と熱交換器15との間に設けられている。熱交換器15は、冷却部30から膨張弁16に向けて流れる冷媒の経路上に設けられている。
EV機器31から蒸発潜熱を受けて加熱された冷媒を熱交換器15において十分に冷却することにより、膨張弁16の出口において、冷媒は、車両の室内の冷房のために本来必要とされる温度および圧力を有する。そのため、熱交換器18において冷媒が蒸発するときに外部から受け取る熱量を十分に大きくできるので、熱交換器18を通過する空調用空気を十分に冷却できる。このように、冷媒を十分に冷却できる熱交換器15の放熱能力を定めることにより、車室内の空気を冷却する冷房の能力に影響を与えることなく、EV機器31を冷却することができる。したがって、EV機器31の冷却能力と、車室用の冷房能力との両方を、確実に確保することができる。
熱交換器14から冷却部30へ流れる冷媒は、EV機器31を冷却するときに、EV機器31から熱を受け取り加熱される。冷却部30において冷媒が飽和蒸気温度以上に加熱され冷媒の全量が気化すると、冷媒とEV機器31との熱交換量が減少してEV機器31を効率よく冷却できなくなり、また冷媒が配管内を流れる際の圧力損失が増大する。そのため、EV機器31を冷却した後に冷媒の全量が気化しない程度に、熱交換器14において十分に冷媒を冷却し、十分な量の液相の冷媒を気液分離器80に供給するのが望ましい。
具体的には、熱交換器14の出口における冷媒の状態を飽和液に近づけ、典型的には熱交換器14の出口において冷媒が飽和液線上にある状態にする。このように冷媒を十分に冷却できる能力を熱交換器14が有する結果、熱交換器14の冷媒から熱を放出させる放熱能力は、熱交換器15の放熱能力よりも高くなる。放熱能力が相対的に大きい熱交換器14において冷媒を十分に冷却することにより、EV機器31から熱を受け取った冷媒を湿り蒸気の状態に留めることができ、冷媒とEV機器31との熱交換量の減少を回避できるので、EV機器31を十分に効率よく冷却することができる。EV機器31を冷却した後の湿り蒸気の状態の冷媒は、熱交換器15において効率よく再度冷却され、飽和温度を下回る過冷却液の状態にまで冷却される。したがって、車室用の冷房能力とEV機器31の冷却能力との両方を確保した、冷却装置1を提供することができる。
蒸気圧縮式冷凍サイクル10に冷媒を循環させ、冷却部30へ流れる飽和液状態の冷媒が蒸発する潜熱によってEV機器31から熱が奪われるので、EV機器31を効率よく冷却することができる。加えて、膨張弁16で低温低圧の霧状にされた冷媒を熱交換器18に供給して空調用空気を冷却できるので、車室の冷房能力および除湿能力を確保することができる。
(第2の運転モード)
図4は、第2の運転モードにおける冷却装置1の動作を示す模式図である。図2および図4を参照して、第2の運転モードは、車両の車内の暖房用のエアコンが運転中の、車室内の暖房能力を増大する一方除湿は行わない場合の運転モードである。
第2の運転モードのとき、車室内の暖房のために、熱交換器13を含む経路に冷媒を流通させる必要があるので、圧縮機12は運転状態である。流量調整弁42は、冷却部30を流れる冷媒の流量を調整し、EV機器31の冷却のために十分な冷媒が冷却部30へ流れるように、弁開度を調整されている。流量調整弁43は、冷媒通路24を流れる冷媒の圧力損失を最小にするように、全開にされる。三方弁41は、冷媒通路22aと冷媒通路71とを連通させ、冷媒通路22a,71の両方に対し冷媒通路22bが非連通とされるように、開閉を切り替えられている。
開閉弁37は開とされ、冷媒通路34が連通状態とされる。開閉弁38は閉とされ、冷媒通路35が遮断される。開閉弁52は閉とされ、連通路51が遮断される。切替弁36および開閉弁52は、冷却部30から流出する冷媒が冷媒通路34へ流れ冷媒通路35および連通路51へは流れないように、開閉を切り替えられている。開閉弁64,77は開とされ、冷媒通路61,73が連通状態とされる。開閉弁44,78は閉とされ、冷媒通路25,74が遮断される。
冷媒は、圧縮機12と熱交換器13と膨張弁76と熱交換器15,14とが冷媒通路21,22a,71,72,73,25,24,23,22b,61,29によって順に接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
暖房運転中は、ダクト90から流出する空調用空気の温度を高くすることが必要とされる。そのため、図4に示すようにダンパ96を操作して、空調用空気が熱交換器13を通過するように、ダクト13内の空調用空気の経路を設定する。このようにすれば、圧縮機12で断熱圧縮された高温高圧の冷媒と空調用空気との熱交換によって空調用空気を加熱でき、車両の室内を効率的に暖めることができるので、車室内の暖房能力を確保することができる。
図5は、第2の運転モードにおける蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図5中の横軸は、冷媒の比エンタルピーを示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力を示す。比エンタルピーの単位はkJ/kgであり、絶対圧力の単位はMPaである。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。
図5中には、熱交換器15の出口の冷媒通路24から気液分離器80を経由して冷媒通路33へ流れ、冷却部30へ流入してEV機器31を冷却し、冷却部30から冷媒通路34を経由して熱交換器14の入口の冷媒通路23aへ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点における冷媒の熱力学状態が示される。
図5に示すように、アキュムレータ85から飽和蒸気状態の冷媒が圧縮機12へ吸入され、圧縮機12において冷媒は等比エントロピー線に沿って断熱圧縮される。圧縮機12で圧縮されるに従って冷媒の圧力と温度とが上昇し、冷媒は、圧縮機12の出口において高温高圧の過熱度の大きい過熱蒸気になり、熱交換器13へ流れる。
熱交換器13へ入った高圧の冷媒蒸気は、熱交換器13において冷却され、等圧のまま過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却液になる。熱交換器13は、圧縮機12において圧縮された過熱状態冷媒ガスを、空調用空気へ等圧的に放熱させて冷媒液とする。圧縮機12から吐出された気相冷媒は、熱交換器13において空調用空気に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器13における熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。暖房運転時には、熱交換器13において低温の空調用空気と冷媒とが熱交換し、冷媒から空調用空気へ伝熱することにより空調用空気が加熱され、空調用空気の温度が上昇し、冷媒は空調用空気へ放熱し冷却される。
熱交換器13で液化した高圧の液相冷媒は、冷媒通路22a,71を経由して膨張弁76に流入する。膨張弁76において、過冷却液状態の冷媒は絞り膨張され、冷媒の比エンタルピーは変化せず温度と圧力とが低下して、低温低圧の気液混合状態の湿り蒸気となる。
膨張弁76において温度が下げられた冷媒は、冷媒通路72,73を経由して熱交換器15へ流れる。熱交換器15のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して外気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって等圧のまま蒸発する。熱交換器15における外気との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。熱交換器15において潜熱を受け取って一部の冷媒が気化することにより、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合が増加する。
気液二相状態の冷媒は、気液分離器80において、飽和蒸気状態の冷媒蒸気と飽和液状態の冷媒液とに気液分離される。気液分離器80から飽和液状態の冷媒が流出し、冷媒通路33を経由して冷却部30の冷却通路32へ流れ、EV機器31を冷却する。冷却部30において、気液分離器80で気液分離された飽和液状態の液冷媒に熱を放出することで、EV機器31が冷却される。EV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。冷媒は、EV機器31から潜熱を受け取って一部気化することにより、冷却部30の出口において、飽和液と飽和蒸気とが混合した気液二相状態の湿り蒸気となる。
冷却部30から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路34、23aを経由して熱交換器14へ流入する。熱交換器14のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して外気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって等圧のまま蒸発し、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合が増加する。
熱交換器14において、全ての冷媒が過熱蒸気になるまで加熱されてもよく、全ての冷媒が乾き飽和蒸気になるまで加熱されてもよく、または、熱交換器14の出口で冷媒は湿り飽和蒸気状態であってもよい。熱交換器14から流出する冷媒が液相の冷媒を含む場合、アキュムレータ85内に冷媒液が貯留され、気体状態の冷媒蒸気のみが圧縮機12に吸入され、冷媒液が圧縮機12へ流入することが防止される。図5には、湿り飽和蒸気状態の冷媒がアキュムレータ85で気液分離され、アキュムレータ85から乾き飽和蒸気状態の冷媒が流出して冷媒通路29を経由して圧縮機12に流れるときの、冷媒の状態が図示されている。冷媒はこのようなサイクルに従って、圧縮、凝縮、絞り膨張、蒸発の状態変化を連続的に繰り返す。
本実施の形態の冷却装置1は、冷房運転時と暖房運転時とで蒸気圧縮式冷凍サイクル10内の冷媒の流れを切り換える三方弁41を備える。暖房運転時に、熱交換器13は、その内部を流通する冷媒蒸気が凝縮することによって、熱交換器13に接触するように導入された空調用空気へ熱を加える。熱交換器13は、圧縮機12で断熱圧縮された高温高圧の冷媒を用いて、冷媒ガスが凝縮して冷媒の湿り蒸気となる際の凝縮熱を、車両の室内へ流通する空調用空気へ放出して、車両の室内の暖房を行なう。熱交換器13から熱を受け取ることによって温度が上昇した空調用空気が車両の室内に流入することによって、車両の室内の暖房が行なわれる。
冷却装置1は、冷房運転時と暖房運転時との両方の場合に、車両の室内へ流通する空調用空気の温度を適切に調節できる。そのため、冷却装置1のコストを低減することができ、加えて、冷却装置1を小型化することができる。また冷媒は、暖房運転時に、冷却部30へ流通し、EV機器31と熱交換することでEV機器31を冷却する。冷却装置1は、車両に搭載された発熱源であるEV機器31を、車両の室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。
したがって、車両の室内の優れた暖房性能を維持しつつ、EV機器31を適切に冷却できる、車室用の暖房能力とEV機器31の冷却能力との両方を確保した冷却装置1を提供することができる。冷却部30において、EV機器31は膨張弁76で絞り膨張された後の低温低圧の冷媒と熱交換するので、EV機器31の冷却能力をより向上できる。
暖房運転時に冷媒は、冷却部30においてEV機器31から吸熱することにより加熱され、熱交換器14において外気から吸熱することによりさらに加熱される。冷却部30と熱交換器14との両方で冷媒を加熱することにより、EV機器31の廃熱を室内の暖房に有効利用できるので、成績係数が向上し、暖房運転時の圧縮機12での冷媒の断熱圧縮のための消費動力を低減することができる。
冷却装置1は、一台の気液分離器80を備える。この一台の気液分離器80を使用して、冷房運転時と暖房運転時との両方において、気液二相状態にある冷媒を気液分離し、気液分離器80で分離された液相冷媒である冷媒液のみが冷却部30に供給されてEV機器31を冷却する。この液相冷媒は、過不足の全くない真に飽和液状態の冷媒である。そのため、気液分離器80から液相の冷媒のみを取り出し冷却部30へ流すことにより、気液分離器80の上流側に配置された熱交換器15の能力を最大限に活用してEV機器31を冷却することができるので、EV機器31の冷却能力を向上させた冷却装置1を提供することができる。
気液分離器80の出口で飽和液の状態にある冷媒をEV機器31を冷却する冷却通路32に導入することにより、冷却通路32を含むEV機器31の冷却系を流れる冷媒のうち、気相状態の冷媒を最小限に抑えることができる。そのため、EV機器31の冷却系を流れる冷媒蒸気の流速が早くなり圧力損失が増大することを抑制でき、冷媒を流通させるための圧縮機12の消費電力を低減できるので、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の性能の悪化を回避することができる。
気液分離器80内に所定量の冷媒液が溜められることにより、冷房運転と暖房運転との切り換え時にも気液分離器80から冷却部30へ流れる冷媒の流量を維持できる。気液分離器80が液だめ機能を有することにより、冷暖房切換の際に熱交換器14,15から気液分離器80へ流れる冷媒の流量が一時的に低下する冷媒流量の変動を吸収できる。したがって、冷暖房の切り換え時に冷却部30への冷媒供給量が不足することを回避でき、EV機器31の冷却性能を安定させることができる。
気液分離器80から熱交換器14へ向かって流れる冷媒の経路として、冷却部30を通過しない経路である冷媒通路23と、冷却部30を経由してEV機器31を冷却する冷媒の経路である冷媒通路33,34および冷却通路32と、が並列に設けられる。冷媒通路33,34を含むEV機器31の冷却系は、冷媒通路23に対し並列に接続されている。そのため、気液分離器80から流出した冷媒の一部のみが、冷却部30へ流れる。冷媒通路23に設けられた流量調整弁42の開度調整によって、気液分離器80から冷媒通路23へ流れる冷媒と、冷却部30を流れる冷媒と、の流量が適切に調整される。この流量調整により、EV機器31の冷却のために必要な量の冷媒が冷却部30へ流れ、EV機器31は適切に冷却される。
熱交換器15から冷却部30を経由せず熱交換器14へ流れる冷媒の経路と、熱交換器15から冷却部30を経由して熱交換器14へ流れる冷媒の経路と、を並列に設け、一部の冷媒のみを冷媒通路33,34へ流通させることで、EV機器31の冷却系に冷媒が流れる際の圧力損失を低減することができる。全ての冷媒が冷却部30に流れないので、冷却部30を経由する冷媒の流通に係る圧力損失を低減することができ、それに伴い、冷媒を循環させるための圧縮機12の運転に必要な消費電力を低減することができる。
上述した通り、EV機器31が最大発熱量未満の熱量を発生する通常発熱時には、熱交換器14,15が見かけ上大きくなり、熱交換器14,15の温度効率φcが高くなったと考えることができる。熱交換器14,15における空気側の冷房能力Qeaは、熱交換器の温度効率φc、空気比熱Ca、空気重量風量Gea、および、吸入空気温度Teaから冷媒温度Terを減じた差(Tea−Ter)に比例する。必要な冷房能力Qeaは変わらず、また空気比熱Ca、空気重量風量Geaおよび吸入空気温度Teaは外気温度および車速に従って決まるので、温度効率φcが高くなった分、冷媒温度Terが高くなることになる。熱交換器14,15での冷媒温度Terが高くなるとは、熱交換器14,15を流れる冷媒の圧力が高くなることを意味する。
熱交換器14,15での冷媒の圧力が上がり、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の低圧が上昇する結果、圧縮機12入口の冷媒の圧力が高くなる。そのため、圧縮機12の出口で所定の冷媒圧力を得るために圧縮機12で冷媒を断熱圧縮するための動力を低減することができ、さらなる省動力化を達成することができる。したがって、車両の燃費を向上することができる。特に電気自動車においては、省動力化により、直接電費を向上することができる。
(第3の運転モード)
図6は、第3の運転モードにおける冷却装置1の動作を示す模式図である。図2および図6を参照して、第3の運転モードは、車両の車内の暖房用のエアコンが運転中の、暖房能力が若干小さくなるものの車室内の除湿が可能になる場合の運転モードである。
第3の運転モードのとき、車室内の暖房のために、熱交換器13を含む経路に冷媒を流通させる必要があるので、圧縮機12は運転状態である。流量調整弁42は、冷却部30を流れる冷媒の流量を調整し、EV機器31の冷却のために十分な冷媒が冷却部30へ流れるように、弁開度を調整されている。流量調整弁43は、冷媒通路24を流れる冷媒の圧力損失を最小にするように、全開にされる。三方弁41は、冷媒通路22aと冷媒通路71とを連通させ、冷媒通路22a,71の両方に対し冷媒通路22bが非連通とされるように、開閉を切り替えられている。
開閉弁37は開とされ、冷媒通路34が連通状態とされる。開閉弁38は閉とされ、冷媒通路35が遮断される。開閉弁52は閉とされ、連通路51が遮断される。切替弁36および開閉弁52は、冷却部30から流出する冷媒が冷媒通路34へ流れ冷媒通路35および連通路51へは流れないように、開閉を切り替えられている。開閉弁64,77,78はいずれも開とされ、冷媒通路61,73,74が連通状態とされる。開閉弁44は閉とされ、冷媒通路25が遮断される。
冷媒は、圧縮機12と熱交換器13と膨張弁76と熱交換器15,14とが冷媒通路21,22a,71,72,73,25,24,23,22b,61,29によって順に接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。冷媒はまた、圧縮機12と熱交換器13と膨張弁76と熱交換器18とが冷媒通路21,22a,71,72,74,26〜29によって順に接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。膨張弁76を通過した冷媒は、熱交換器15,14と熱交換器18とに並列に流れる。
図7は、第3の運転モードにおける蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図7中の横軸は、冷媒の比エンタルピーを示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力を示す。比エンタルピーの単位はkJ/kgであり、絶対圧力の単位はMPaである。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。
図7中には、図5にも示した冷却部30へ流入してEV機器31を冷却する冷媒の熱力学状態に加えて、圧縮機12で断熱圧縮され、熱交換器13で凝縮され、膨張弁76で絞り膨張され、熱交換器18で蒸発する冷媒の熱力学状態が示される。EV機器31を冷却する冷媒、および、圧縮機12から膨張弁76へ至る冷媒の状態は第2の運転モードと同じであるので、その説明は繰り返さず、以下では、第3の運転モードに特徴的な、膨張弁76から熱交換器18へ向かう冷媒の状態について説明する。
膨張弁76において減圧され温度が下げられた冷媒は、冷媒通路72へ流れる。冷媒は冷媒通路72から分岐して冷媒通路73,74へ流れ、一部の冷媒は冷媒通路74,26を経由して熱交換器18へ流れる。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を循環する冷媒の一部が分岐して熱交換器18へ流れ、熱交換器18のチューブ内には、空調用空気の露点温度よりも低温の湿り蒸気状態の冷媒が流入する。熱交換器18は、その内部を流通する霧状冷媒が気化することによって、熱交換器18に接触するように導入された空調用空気の熱を吸収し、空調用空気の温度を低下させる。冷媒は、熱交換器18のチューブ内を流通する際に、フィンを経由して周囲の空調用空気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって加熱され、等圧のまま蒸発し、冷媒の乾き度が増大する。
熱交換器18の出口で、冷媒は湿り飽和蒸気状態である。その後冷媒はアキュムレータ85へ流れる。アキュムレータ85内に冷媒液が貯留され、気体状態の冷媒蒸気のみが圧縮機12に吸入され、冷媒液が圧縮機12へ流入することが防止される。
以上説明した第3の運転モードでは、ダクト90内を流通する空調用空気は、熱交換器18において冷媒に熱を放出することで冷却される。空調用空気の温度が露点温度以下にまで下げられることにより、空調用空気に含まれる水蒸気が凝結し、空調用空気に含まれる水蒸気量が低下する。その後空調用空気は、熱交換器13において冷媒から熱を受け取り加熱される。熱交換器18で冷却された後の空調用空気を、熱交換器13で加熱することにより、空調用空気の湿度が低下する。このようにして、乾燥した空調用空気が車両の室内に導入されるので、暖房運転に加えて、車室内の除湿が可能になる。
第3の運転モードでは、熱交換器18で空調用空気の温度が一旦下げられるため、第2の運転モードと比較して暖房能力が低下するものの、車室内を除湿できる点で有利である。車両に搭載される冷却装置1の場合、車窓のくもり除去などのための除湿機能が必須になる。本実施の形態によると、冷暖房機能に加えて除湿機能を備え、さらにEV機器31を適切に冷却できる冷却装置1を、簡単な構成で実現することができる。
(第4の運転モード)
図8は、第4の運転モードにおける冷却装置1の動作を示す模式図である。図2および図8を参照して、第4の運転モードは、車両の車内の暖房用のエアコンが運転中の、車室内の除湿能力をより高める場合の運転モードである。
第4の運転モードのとき、車室内の暖房のために、熱交換器13を含む経路に冷媒を流通させる必要があるので、圧縮機12は運転状態である。流量調整弁42は、冷媒通路23を流れる冷媒の圧力損失を最小にするように、全開にされる。流量調整弁43は全閉にされ、冷媒通路24が遮断される。三方弁41は、冷媒通路22aと冷媒通路71とを連通させ、冷媒通路22a,71の両方に対し冷媒通路22bが非連通とされるように、開閉を切り替えられている。
開閉弁37,38はいずれも閉とされ、冷媒通路34,35の両方が遮断される。開閉弁52は開とされ、連通路51が連通状態とされる。切替弁36および開閉弁52は、冷却部30から流出する冷媒が連通路51へ流れ冷媒通路34および冷媒通路35へは流れないように、開閉を切り替えられている。開閉弁78は開とされ、冷媒通路74が連通状態とされる。開閉弁44,64,77はいずれも閉とされ、冷媒通路25,61,73が遮断される。
冷媒は、圧縮機12と熱交換器13と膨張弁76と熱交換器18とが冷媒通路21,22a,71,72,74,26〜29によって順に接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。冷媒はまた、冷却部30と熱交換器14とが冷媒通路23、気液分離器80、冷媒通路33、連通路51、冷媒通路22bによって接続された冷媒循環流路内を循環する。
図9は、図8に示す冷却装置1の一部構成を示す模式図である。上述した三方弁41、流量調整弁42,43および開閉弁37,38,52,64の開閉設定により、冷却部30と熱交換器14とを循環する冷媒の流れが発生する。すなわち、熱交換器14から、冷媒通路23、気液分離器80および冷媒通路33を順に経由して冷却部30へ至り、さらに連通路51、冷媒通路22を順に経由して熱交換器14へ戻る、閉じられた環状の経路が形成される。この環状の経路を経由して、熱交換器14と冷却部30との間に冷媒を循環させることができる。
冷媒は、EV機器31を冷却するとき、EV機器31から蒸発潜熱を受けて蒸発する。EV機器31との熱交換により気化された冷媒蒸気は、連通路51および冷媒通路22を順に経由して、熱交換器14へ流れる。熱交換器14において、車両の走行風または冷却ファンからの通風により、冷媒蒸気は冷却されて凝縮する。熱交換器14で液化した冷媒液は、冷媒通路23を経由して気液分離器80へ流れる。気液分離器80で気液分離された液状の冷媒が、冷媒通路33を経由して冷却部30へ戻る。
このように、冷却部30と熱交換器14とを経由する環状の経路によって、EV機器31を加熱部とし熱交換器14を冷却部とする、ヒートパイプが形成される。したがって、圧縮機12の動力を必要とせずに冷却部30へ冷媒を供給できるので、EV機器31を確実に冷却することができる。
図9には、地面100が図示されている。EV機器31を冷却する冷却部30は、地面100に対して垂直な鉛直方向において、熱交換器14よりも下方に配置されている。熱交換器14と冷却部30との間に冷媒を循環させる環状の経路において、冷却部30が下方に配置され、熱交換器14が上方に配置される。熱交換器14は、冷却部30よりも高い位置に配置される。
この場合、冷却部30で加熱され気化した冷媒蒸気は、環状の経路内を上昇して熱交換器14へ到達し、熱交換器14において冷却され、凝縮されて液冷媒となり、重力の作用により環状の経路内を下降して冷却部30へ戻る。つまり、冷却部30と、熱交換器14と、これらを連結する冷媒の経路とによって、サーモサイフォン式のヒートパイプが形成される。ヒートパイプ運転時には、熱交換器14で液化した冷媒の位置ヘッドが冷媒循環量に影響を与えるので、熱交換器14を冷却部30よりも高い位置に配置することでEV機器31から熱交換器14への熱伝達効率を向上でき、EV機器31の冷却能力をより向上できる。したがって、蒸気圧縮式冷凍サイクル10が停止しているときにも、動力を加えることなく、EV機器31をより効率よく冷却することができる。
図10は、第4の運転モードにおける蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図10中の横軸は、冷媒の比エンタルピーを示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力を示す。比エンタルピーの単位はkJ/kgであり、絶対圧力の単位はMPaである。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。
図10中には、図7にも示した膨張弁76から熱交換器18へ向かう冷媒の熱力学状態が実線で示され、さらに、熱交換器14、気液分離器80および冷却部30を接続する冷媒の経路によって形成される閉ループ内を循環する冷媒の熱力学状態が点線で示される。空調用空気の暖房および除湿を行なうための冷媒の状態は第3の運転モードと同じであるので、その説明は繰り返さず、以下では、第4の運転モードに特徴的な、熱交換器14と冷却部30とを循環する冷媒の状態について説明する。
熱交換器14に流入した冷媒は、車両の走行風または冷却ファンからの通風により、熱交換器14のチューブ内を流通する際に周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器14における外気との熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。冷媒は、熱交換器14において凝縮潜熱を放出し等圧のまま徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になる。気液二相状態の冷媒は、冷媒通路23を経由して気液分離器80へ流れ、気液分離器80において、飽和蒸気状態の冷媒蒸気と飽和液状態の冷媒液とに気液分離される。
気液分離器80から飽和液状態の冷媒が流出し、冷媒通路33を経由して冷却部30の冷却通路32へ流れ、EV機器31を冷却する。冷却部30において、熱交換器14で凝縮され気液分離器80で気液分離された飽和液状態の液冷媒に熱を放出することで、EV機器31が冷却される。EV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、等圧のまま徐々に蒸発して、冷媒の乾き度が増大する。典型的には、冷却部30において、全ての冷媒が乾き飽和蒸気になるまで冷媒とEV機器31との熱交換が行なわれる。EV機器31との熱交換により一部または全部が気化された冷媒は、冷却部30から流出して連通路51および冷媒通路22を順に経由して、熱交換器14へ戻る。
図6に示す第3の運転モードでは、膨張弁76で減圧された低温低圧の冷媒の一部のみが熱交換器18へ流れる。これに対し、第4の運転モードでは、膨張弁76で減圧された低温低圧の冷媒の全部が熱交換器18へ流れる。熱交換器18に流れる冷媒の量が増大することにより、暖房能力は第3の運転モードと比較してより低下するものの、熱交換器18において空調用空気をさらに冷却できるので、空調用空気の除湿能力が向上する。第4の運転モードで冷却装置1を運転することにより、車室内の空気をさらに除湿することができるので、早期かつ確実な除湿が可能になる。
圧縮機12によって駆動される冷媒は冷却部30へ流れないが、熱交換器14を凝縮器、冷却部30を蒸発気とするループ式のヒートパイプが作動することによって、EV機器31は確実に冷却される。EV機器31の冷却のために圧縮機12の動力は必要なく、無動力でEV機器31を冷却できる。
したがって、より優れた除湿機能を備え、さらにEV機器31を適切に冷却できる冷却装置1を、簡単な構成で実現することができる。EV機器31を無動力で冷却可能であるので、圧縮機12の消費動力を低減して、一層の省電費化および快適性向上を達成することができる。
(第5の運転モード)
図11は、第5の運転モードにおける冷却装置1の動作を示す模式図である。図2および図11を参照して、第5の運転モードは、車両の車内の暖房用のエアコンが停止中に、無動力でEV機器31を冷却する場合の運転モードである。
第5の運転モードのとき、車室内の空調が停止され、空調用空気を加熱または冷却する必要がないので、圧縮機12は停止状態である。流量調整弁42は、冷媒通路23を流れる冷媒の圧力損失を最小にするように、全開にされる。流量調整弁43は全閉にされ、冷媒通路24が遮断される。三方弁41は、冷媒通路22aと冷媒通路71とを連通させ、冷媒通路22a,71の両方に対し冷媒通路22bが非連通とされるように、開閉を切り替えられている。
開閉弁37,38はいずれも閉とされ、冷媒通路34,35の両方が遮断される。開閉弁52は開とされ、連通路51が連通状態とされる。切替弁36および開閉弁52は、冷却部30から流出する冷媒が連通路51へ流れ冷媒通路34および冷媒通路35へは流れないように、開閉を切り替えられている。開閉弁64は閉とされ、冷媒通路61が遮断される。その他の開閉弁44,77,78の開閉は任意である。
冷媒は、冷却部30と熱交換器14とが冷媒通路23、気液分離器80、冷媒通路33、連通路51、冷媒通路22bによって接続された冷媒循環流路内を循環する。
第4の運転モードと同様に、冷却部30と熱交換器14とを経由する環状の経路によって、EV機器31を加熱部とし熱交換器14を冷却部とする、ヒートパイプが形成される。この環状の経路を経由して、圧縮機12を動作することなく、熱交換器14と冷却部30との間に冷媒を循環させることができる。
そのため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10が停止しているとき、すなわち車両用の冷房が停止しているときにも、圧縮機12を起動する必要なく、EV機器31を確実に冷却することができる。EV機器31を無動力で冷却可能であり、EV機器31の冷却のために圧縮機12を常時運転する必要がないことにより、圧縮機12の消費動力を低減して一層の省電費化および快適性向上を達成することができ、加えて、圧縮機12を長寿命化できるので圧縮機12の信頼性を向上することができる。
第4および第5の運転モードでの冷却装置1の運転中に、閉ループ状の冷媒の経路内の冷媒の量が不足して冷媒の位置ヘッドが十分に確保できない場合には、三方弁41を切り替えて冷媒通路22aと冷媒通路22bとを連通させた状態で圧縮機12を短時間のみ運転する追い込み運転を行なう。この追い込み運転により、熱交換器13,18に溜まった冷媒をくみ上げて閉ループ経路に供給し、閉ループ内の冷媒量を増加させ、ヒートパイプの冷媒量を確保する。その結果、EV機器31の冷却に必要な冷却能力が得られる冷媒の位置ヘッドを確保できるので、ヒートパイプの熱交換処理量を増大でき、冷媒量の不足のためにEV機器31の冷却が不十分となることを回避することができる。
なお、これまでの実施の形態においては、EV機器31を例として車両に搭載された電気機器を冷却する冷却装置1について説明した。電気機器としては、少なくとも作動によって熱を発生させる電気機器であれば、インバータ、モータジェネレータなどの例示された電気機器に限定されるものではなく、任意の電気機器であってもよい。冷却の対象となる電気機器が複数個ある場合においては、複数の電気機器は、冷却の目標となる温度範囲が共通していることが望ましい。冷却の目標となる温度範囲は、電気機器を作動させる温度環境として適切な温度範囲である。
さらに、本発明の冷却装置1により冷却される発熱源は、車両に搭載された電気機器に限られず、熱を発生する任意の機器、または任意の機器の発熱する一部分であってもよい。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。