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JP5458479B2 - 連続発酵によるカダベリンの製造方法 - Google Patents

連続発酵によるカダベリンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、培養を行いながら、微生物または培養細胞の培養液より、目詰まりが生じにくい分離膜である多孔性膜を通して生産物を含む液を効率よく濾過・回収すること、および未濾過液を培養液に戻すことで発酵に関与する微生物濃度を向上させることにより、高い生産性を得ることを特徴とする連続発酵によるカダベリンの製造方法に関するものである。
カダベリンの製造方法に関する技術背景に関して説明する。カダベリンは、石油非依存型のポリマー原料として期待されている。一方、従来、L−リジンを微量のテトラリン過酸化物を含むシクロヘキサノール中で煮沸することにより、カダベリンが得られることが知られている(非特許文献1参照。)。しかしながら、ポリマー原料として用いるためにはL−リジンよりも安価に製造する必要があり、L−リジンを原料にしてカダベリンを製造することは工業化されていなかった。L−リジンよりも安価な原料からカダベリンを製造するためには、微生物によるグルコースからの発酵法が考えられる。例えば、カダベリンの組み換え大腸菌での発酵による製造方法(特許文献1参照。)およびコリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する組換え微生物を用いた発酵法によるカダベリンの製造法(特許文献2参照。)が知られている。
しかしながら、これらのカダベリンの発酵法生産は、バッチ式発酵に関わるもののみであり、いずれのカダベリンの生産方法も生産速度が十分ではなく、更に効率的な生産方法が望まれていた。
須山正,金尾清造,「アミノ酸の脱炭酸(第4報)」,薬学雑誌,1965年,第85巻,第6号,p.531−533 特開2002−223770号公報第5頁 特開2004−222569号公報
そこで本発明の目的は、簡便な操作方法で、長時間にわたり安定して高生産性を維持する連続発酵法によるカダベリンの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、微生物や細胞の分離膜内への侵入が少なく、微生物や細胞を膜間差圧が低い条件で濾過した場合に、膜の目詰まりが著しく抑制されることを見出し、課題であった高濃度の微生物の濾過が長期間安定に維持できることを可能とし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、培養液を分離膜によって濾液と未濾過液に分離し、濾液から所望の発酵生産物を回収するとともに、未濾過液を培養液に保持または還流させる連続発酵方法によるカダベリンの製造方法である。具体的に、本発明の連続発酵法によるカダベリンの製造方法は、カダベリンを生産する能力を有する微生物もしくは培養細胞の培養液を分離膜で濾過し、濾液から生産物を回収するとともに未濾過液を培養液に保持または還流し、かつ、発酵原料を培養液に追加する連続発酵によるカダベリンを製造する方法であって、その分離膜として、平均細孔径が0.01μm以上1μm未満の範囲にある多孔性膜を用い、膜間差圧を0.1から20kPaの範囲として低い膜間差圧で濾過処理することにより、安定に低コストで、発酵生産効率を著しく向上させるカダベリンの製造方法である。
本発明の連続発酵法によるカダベリンの製造方法の好ましい態様によれば、前記の多孔性膜の純水透過係数は2×10−9/m/s/pa以上6×10−7/m/s/pa以下である。
本発明の連続発酵法によるカダベリンの製造方法の好ましい態様によれば、前記の多孔性膜の平均細孔径は0.01μm以上0.2μm未満であり、かつ、該平均細孔径の標準偏差が0.1μm以下であり、そして、その膜表面粗さは0.1μm以下である。
本発明の連続発酵法によるカダベリンの製造方法の好ましい態様によれば、前記の多孔性膜は多孔性樹脂層を含む多孔性膜である。
本発明の連続発酵法によるカダベリンの製造方法の好ましい態様によれば、前記の多孔性膜の膜素材にポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いることである。
本発明の連続発酵法によるカダベリンの製造方法の好ましい態様によれば、前記の微生物は、リジン脱炭酸酵素および/またはリジン・カダベリンアンチポーターの酵素活性を増強している微生物であることである。
本発明の連続発酵法によるカダベリンの製造方法の好ましい態様によれば、前記の微生物は、大腸菌であることである。
本発明の連続発酵法によるカダベリンの製造方法の好ましい態様によれば、前記の微生物は、リジン脱炭酸酵素活性を有し、かつホモセリン栄養要求性またはS−(2−アミノエチル)−L−システイン耐性の少なくともいずれか1つの特徴を有しているコリネ型細菌であり、そのコリネ型細菌が、ホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を欠損していることである。
本発明の連続発酵法によるカダベリンの製造方法の好ましい態様によれば、酸、好ましくはジカルボン酸により培養液のpHを維持することでカダベリンをカダベリン塩、好ましくはカダベリン・ジカルボン酸塩として回収することである。
本発明によれば、簡便な操作条件で、長時間にわたり安定して所望の発酵生産物の高生産性を維持する連続発酵が可能となり、広く発酵工業において、発酵生産物であるカダベリンを低コストで安定に生産することが可能となる。
本発明のカダベリンの製造法により得られたカダベリンもしくはカダベリン・ジカルボン酸塩は、例えば、合成繊維の原料として有用である。
本発明は、微生物もしくは培養細胞の培養液を、分離膜で濾過し、濾液から生産物を回収するとともに未濾過液を培養液に保持または還流し、かつ、発酵原料を培養液に追加する連続発酵によるカダベリンの製造方法であって、分離膜として平均細孔径が0.01μm以上1μm未満の多孔性膜を用い、膜間差圧を0.1から20kPaの範囲として濾過処理することを特徴とする連続発酵によるカダベリンの製造方法である。
本発明で用いられる多孔性膜は、発酵に使用する微生物および培養細胞による目詰まりが起こりにくく、かつ濾過性能が長期間安定に継続するものであることが望ましい。
本発明で使用される多孔性膜は、平均細孔径が0.01μm以上1μm未満の分離膜である。後述するように、多孔性膜としては、多孔質基材の少なくとも一表面に多孔質樹脂層を有する構造のものが好ましく用いられる。多孔質樹脂層が多孔性膜の両面に存在する場合、少なくとも一方の多孔質樹脂層が、上記の平均細孔径の条件を満たしていればよい。平均細孔径がこの範囲内にあると、菌体や汚泥などがリークすることのない高い排除率と高い透水性を両立させることができ、さらに目詰まりしにくく、透水性を長時間保持することが、より高い精度と再現性を持って実施することができる。平均細孔径が、この範囲内にあれば、動物細胞、酵母、糸状菌などを用いた場合、目詰まりが少なく、また、細胞の濾液への漏れもなく安定に連続発酵が実施可能である。また、動物細胞、酵母および糸状菌より小さな細菌類を用いた場合は、0.4μm以下の平均細孔であればよりよく、0.2μm未満の平均細孔であればなお好適に実施可能である。平均細孔径は、小さすぎると透水量が低下することがあるので、通常は0.01μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.02μm以上であり、さらに好ましくは、0.04μm以上である。
ここで、平均細孔径は、倍率10,000倍の走査型電子顕微鏡観察における、9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔すべての直径を測定し、平均することにより求めることができる。平均細孔径の標準偏差σは、0.1μm以下であることが好ましい。平均細孔径の標準偏差σは、上述の9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔数をNとして、測定した各々の直径をXk、細孔直径の平均をX(ave)とした下記の(式1)から算出した。
Figure 0005458479
本発明で用いられる多孔性膜において、培養液の透過性が重要点の一つであり、透過性の指標として、使用前の多孔性膜の純水透過係数を用いることができる。多孔性膜の純水透過係数が、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで透水量を測定し算出したとき、2×10−9/m/s/pa以上であることが好ましく、2×10−9以上6×10−7/m/s/pa以下であれば、実用的に十分な透過水量が得られる。
本発明で用いられる多孔性膜の表面粗さは、分離膜の目詰まりに影響を与える因子であり、好ましくは、その表面粗さが0.1μm以下のときに分離膜の剥離係数や膜抵抗を低下させることができ、より低い膜間差圧で連続発酵が実施可能である。また、表面粗さが低いことで、微生物や培養細胞の濾過において、膜表面で発生する剪断力を低下させることが期待でき、微生物または培養細胞の破壊が抑制され、多孔性膜の目詰まりも抑制されることにより、長期間安定な濾過が可能になると考えられる。
ここで、表面粗さは、下記の原子間力顕微鏡装置(AFM)を使用して、下記の条件で測定することができる。
・装置 原子間力顕微鏡装置(Digital Instruments(株)製Nanoscope IIIa)
・条件 探針 SiNカンチレバー(Digital Instruments(株)製)
走査モード コンタクトモード(気中測定)
水中タッピングモード(水中測定)
走査範囲 10μm,25μm 四方(気中測定)
5μm,10μm 四方(水中測定)
走査解像度 512×512
・試料調製 測定に際し膜サンプルは常温でエタノールに15分浸漬後RO水中に24時間浸漬し洗浄した後風乾し用いた。RO水とは、濾過膜の一種である逆浸透膜(RO膜)を用いて濾過し、イオンや塩類などの不純物を排除した水を指す。RO膜の孔の大きさは、概ね2nm以下である。
膜の表面粗さdroughは、AFMにより各ポイントのZ軸方向の高さから下記の(式2)から算出した。
Figure 0005458479
本発明における多孔性膜は、被処理水の水質や用途に応じた分離性能と透水性能を有するものであり、阻止性能、透水性能や耐汚れ性という分離性能の点からは、多孔質樹脂層を含む多孔性膜であることが好ましい。好ましい多孔性膜は、多孔質基材の表面に、分離機能層として作用とする多孔質樹脂層を有している。多孔質基材は、多孔質樹脂層を支持して分離膜に強度を与える。
本発明で用いられる多孔性膜が、多孔質基材の表面に多孔質樹脂層を有している場合、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透していても、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透していなくてもどちらでも良く、用途に応じて選択される。
多孔質基材の材質としては、有機材料および無機材料等で特に限定されないが、有機繊維が望ましい。好ましい多孔質基材は、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維およびポリエチレン繊維などの有機繊維を用いてなる織布や不織布であり、なかでも、密度の制御が比較的容易であり、製造も容易で安価な不織布が好ましく用いられる。多孔質基材の平均厚みは、好ましくは50μm以上3000μm以下である。
多孔質樹脂層は、上述のように分離機能層として作用するもので、有機高分子膜を好適に使用することができる。有機高分子膜は、基本的に有機ポリマー材料から構成される分離膜のことであり、例えば、有機繊維の不織布やマクロポア構造多孔質有機基材と当該多孔質有機基材の孔径より小さな孔径を有する多孔質樹脂層が複合化された構造を持つ場合が多い。
多孔質樹脂層の材質としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂およびセルローストリアセテート系樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物であってもよい。中でも、溶液による製膜が容易で、物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびポリアクリロニトリル系樹脂が好ましく用いられる。特に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはそれを主成分とするものが最も好ましく用いられる。
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられるが、フッ化ビニリデンの単独重合体の他、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体も好ましく用いられる。このようなビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび三塩化フッ化エチレンなどが例示される。
本発明で用いられる多孔性膜は、平膜であっても中空糸膜であっても良い。多孔性膜が平膜の場合、その厚みは用途に応じて選択されるが、好ましくは20μm以上5000μm以下の範囲であり、より好ましくは50μm以上2000μm以下の範囲で選択される。上述のように、多孔性膜は、多孔質基材と多孔質樹脂層とから形成されていても良い。
多孔性膜が中空糸膜の場合、内径は好ましくは200μm以上5000μm以下の範囲で選択され、膜厚は好ましくは20μm以上2000μm以下の範囲で選択される。また、有機繊維または無機繊維を筒状にした織物や編み物を含んでいても良い。
次にまず、多孔性膜のうち、平膜の作成法の概要の一例を例示して説明する。
多孔質基材の表面に、樹脂と溶媒とを含む原液の被膜を形成すると共に、その原液を多孔質基材に含浸させる。その後、被膜を有する多孔質基材の被膜側表面のみを、非溶媒を含む凝固浴と接触させて樹脂を凝固させると共に、多孔質基材の表面に多孔質樹脂層を形成する。
原液は、樹脂を溶媒に溶解させて調整する。原液の温度は、製膜性の観点から、通常、5〜120℃の範囲内で選定することが好ましい。溶媒は、樹脂を溶解するものであり、樹脂に作用してそれらが多孔質樹脂層を形成するのを促すものである。溶媒としては、N−メチルピロリジノン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N −メチル− 2− ピロリドン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル、シクロヘキサノン、イソホロン、γ −ブチロラクトン、メチルイソアミルケトン、フタル酸ジメチル、プロピレングリコールメチルエーテール、プロピレンカーボネート、ジアセトンアルコール、グリセロールトリアセテート、アセトンおよびメチルエチルケトンなどを用いることができる。なかでも、樹脂の溶解性の高いN−メチルピロリジノン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましく用いられる。これらの溶媒は、単独で用いても良いし2種類以上を混合して用いても良い。原液は、先述の樹脂を好ましくは5重量%以上60重量%以下の濃度で、上述の溶媒に溶解させることにより調製することができる。
また、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびグリセリンなどの溶媒以外の成分を溶媒に添加しても良い。溶媒に非溶媒を添加することもできる。非溶媒は、樹脂を溶解しない液体である。非溶媒は、樹脂の凝固の速度を制御して細孔の大きさを制御するように作用する。非溶媒としては、水や、メタノールおよびエタノールなどのアルコール類を用いることができる。なかでも、非溶媒として、価格の点から水やメタノールが好ましく用いられる。溶媒以外の成分および非溶媒は、混合物であってもよい。
原液には、開孔剤を添加することもできる。開孔剤は、凝固浴に浸漬された際に抽出されて、樹脂層を多孔質にする作用を持つものである。開孔剤を添加することにより、平均細孔径の大きさを制御することができる。開孔剤は、凝固浴への溶解性の高いものであることが好ましい。開孔剤としては、例えば、塩化カルシウムや炭酸カルシウムなどの無機塩を用いることができる。また、開孔剤として、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレン類や、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールおよびポリアクリル酸などの水溶性高分子化合物や、グリセリンを用いることができる。
次に、多孔性膜のうち、中空糸膜の作成法の概要の一例を例示して説明する。
中空糸膜は、樹脂と溶媒からなる原液を二重管式口金の外側の管から吐出すると共に、中空部形成用流体を二重管式口金の内側の管から吐出して、冷却浴中で冷却固化して作製することができる。
原液は、上述の平膜の作成法で述べた樹脂を好ましくは20重量%以上60重量%以下の濃度で、上述の平膜の生成法で述べた溶媒に溶解させることにより調整することができる。また、中空部形成用流体には、通常気体もしくは液体を用いることができる。また、得られた中空糸膜の外表面に、新たな多孔性樹脂層をコーティング(積層)することもできる。積層は中空糸膜の性質、例えば、親水性・疎水性あるいは細孔径等を所望の性質に変化させるために行うことができる。積層される新たな多孔性樹脂層は、樹脂を溶媒に溶解させた原液を、非溶媒を含む凝固浴と接触させて樹脂を凝固させることによって作製することができる。その樹脂の材質は、例えば、上述有機高分子膜の材質と同様のものが好ましく用いられる。また、積層方法としては、原液に中空糸膜を浸漬してもよいし、中空糸膜の表面に原液を塗布してもよく、積層後、付着した原液の一部を掻き取ったり、エアナイフを用いて吹き飛ばしすることにより積層量を調整することもできる。
本発明で用いられる多孔性膜は、支持体と組み合わせることによって膜分離エレメントとして使用することができる。支持体として支持板を用い、その支持板の少なくとも片面に本発明で用いられる多孔性膜を配した多孔性膜エレメントは、本発明で用いられる膜エレメントの好適な形態の一つである。この形態では、膜面積を大きくすることが困難なので、透水量を大きくするために、支持板の両面に多孔性膜を配することも好ましい態様である。
本発明において、微生物や細胞を濾過処理する際の膜間差圧は、微生物や細胞および培地成分が容易に目詰まりしない条件であればよいが、膜間差圧を0.1kPa以上20kPa以下の範囲とすることが重要である。濾過の駆動力としては、培養液と多孔性膜処理水の液位差(水頭差)を利用したサイホンにより多孔性膜に膜間差圧を発生させることが可能であり、また、濾過の駆動力として多孔性膜処理水側に吸引ポンプを設置してもよいし、多孔性膜の培養液側に加圧ポンプを設置することも可能である。膜間差圧は、培養液と多孔性膜処理水の液位差を変化させることで制御することができる、またポンプを使用する場合には吸引圧力により制御することができ、更に培養液側の圧力を導入する気体または液体の圧力によって制御することができる。これら圧力制御を行う場合には、培養液側の圧力と多孔性膜処理水側の圧力差をもって膜間差圧とし、膜間差圧の制御に用いることができる。
また、本発明において使用される多孔性膜は、濾過処理する膜間差圧として0.1kPa以上20kPa以下の範囲で濾過処理することができるものであることが好ましい。また、使用前の純水透過係数が、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで透水量を測定し算出したとき、2×10−9/m/s/pa以上の範囲であることが好ましく、さらに2×10−9/m/s/pa以上6×10−7/m/s/pa以下の範囲にあることが好ましい。
本発明で使用される発酵原料としては、培養する微生物の生育を促し、目的とする発酵生産物であるカダベリンを良好に生産させ得るものであればよいが、炭素源、窒素源、無機塩類、および必要に応じてアミノ酸やビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する通常の液体培地が好ましく用いられる。
上記の炭素源としては、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトースやラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、更には酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類およびリセリンなども使用される。ここで糖分とは、多価アルコールの最初の酸化生成物であり、アルデヒド基またはケトン基をひとつ持ち、アルデヒド基を持つ糖をアルドース、ケトン基を持つ糖をケトースと分類される炭水化物のことを指す。
また上記の窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類および各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。
また上記の無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩およびマンガン塩等を適宜添加することができる。本発明で使用される微生物が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物を標品もしくはそれを含有する天然物として添加する。また、消泡剤も必要に応じて使用することができる。
本発明において、培養液とは、発酵原料に微生物または培養細胞が増殖した結果得られる液のことを言い、追加する発酵原料の組成は、目的とするカダベリンの生産性が高くなるように、培養開始時の発酵原料組成から適宜変更しても良い。
本発明では、培養液中の糖類濃度は5g/L以下に保持されるようにすることが好ましい。その理由は、培養液の引き抜きによる糖類の流失を最小限にするためである。微生物の培養は、通常pH4〜8、温度20〜40℃の範囲で行われることが多い。培養液のpHは、無機の酸あるいは有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、炭酸カルシウムおよびアンモニアガスなどによって、上記範囲内のあらかじめ定められた値に調節される。微生物または培養細胞の培養において、酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、培養を加圧する、攪拌速度を上げる、あるいは通気量を上げるなどの手段を用いることができる。逆に、酸素の供給速度を下げる必要があれば、炭酸ガス、窒素およびアルゴンなど酸素を含まないガスを空気に混合して供給することも可能である。
本発明においては、培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って微生物濃度を高くした後に連続培養(引き抜き)を開始しても良いし、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続培養を行っても良い。適当な時期から原料培養液の供給および培養物の引き抜きを行うことが可能である。原料培養液供給と培養物の引き抜きの開始時期は必ずしも同じである必要はない。また、原料培養液の供給と培養物の引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。原料培養液には、上記に示したような菌体増殖に必要な栄養素を添加し、菌体増殖が連続的に行われるようにすればよい。
培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、培養液の環境が微生物または培養細胞の増殖にとって不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが効率よい生産性を得るのに好ましく、一例として、乾燥重量として5g/L以上に維持することで良好な生産効率が得られる。また、連続発酵装置の運転上の不具合、生産効率の低下を招かなければ、微生物または培養細胞の濃度の上限値は限定されない。
発酵生産能力のあるフレッシュな菌体を増殖させつつ行う連続培養操作は、培養管理上、通常、単一の発酵反応槽で行うことが好ましい。しかしながら、菌体を増殖しつつ生産物を生成する連続培養法であれば、発酵反応槽の数は問わない。発酵反応槽の容量が小さい等の理由から、複数の発酵反応槽を用いることもあり得る。この場合、複数の発酵反応槽を配管で並列または直列に接続して連続培養を行っても発酵生産物の高生産性は得られる。
本発明で使用される微生物や培養細胞は、カダベリンを生産することが可能な微生物や培養細胞であり、例えば、微生物がリジン脱炭酸酵素および/またはリジン・カダベリンアンチポーターの酵素活性を増強している微生物が好ましい。更に好ましくは、微生物がリジン脱炭酸酵素および/またはリジン・カダベリンアンチポーターをコードする遺伝子を組み込んだ組換え微生物が挙げられる。更に好ましくは、組換え微生物がリジン脱炭酸酵素をコードする遺伝子が、1または2種類以上組み込まれている微生物が挙げられる。
本発明では、組換え微生物としては大腸菌およびコリネ型細菌が好ましく、更に好ましくは、リジン脱炭酸酵素活性を有し、かつホモセリン栄養要求性またはS−(2−アミノエチル)−L−システイン耐性の少なくともいずれか1つの特徴を有しているコリネ型細菌が用いられる。更には、ホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を欠損していることが好ましく、遺伝子挿入変異生成によりホモセリンデヒドロゲナーゼ活性を欠損していることが更に好ましい態様である。
本発明では、コリネ型細菌の属が、コリネバクテリウム属およびブレビバクテリウム属からなる群から選ばれた少なくとも1つの属であることが好ましく、特にコリネバクテリア・グルタミカム(Corynebacuterium gulutamicum)が好ましく用いられる。
本発明の連続発酵によるダベリンの製造方法により製造された濾過・分離発酵液に含まれるカダベリンの分離・精製は、濃縮、蒸留および晶析などの従来知られている方法を組み合わせて行うことができる。例えば、特開2004−222569号公報に示される晶析を用いた精製法を好適に用いることができる。
本発明では、連続培養のpH維持の際に用いられる酸によって様々なポリマー原料とすることができ、純度が求められるポリマー原料用途では晶析による精製方法が好ましく用いられる。例えば、塩酸により培養液のpHを維持すると、その濾過液から晶析工程によりカダベリン二塩酸塩を回収することができる。更に好ましくは、連続培養の際にジカルボン酸により培養液のpHを維持し、その濾液から晶析工程によりカダベリン・ジカルボン酸塩を回収することができる。更に好ましくは、そのジカルボン酸は、官能基としては2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族および/または芳香族のジカルボン酸である。更に好ましくは、そのジカルボン酸として、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、コハク酸、イソフタル酸またはテレフタル酸のいずれかを挙げることができる。
本発明の連続発酵によるダベリンの製造方法で用いられる連続発酵装置1つの例は、主に、微生物もしくは培養細胞を保持しカダベリンを製造するための発酵反応槽、および微生物もしくは培養細胞と培養液を濾過分離するための多孔性膜を含む膜分離エレメントから構成される。膜分離エレメントは、発酵反応槽の内部または外部のいずれに設置されてもよい。
本発明の連続発酵によるダベリンの製造方法は、平均細孔径が0.01μm以上1μm未満の多孔性膜を使用し、濾過圧力である膜間差圧が0.1から20kPaの範囲で濾過処理することを特徴としている。そのため、特別に発酵反応槽内を加圧状態に保つ必要がないことから、濾過分離装置と発酵反応槽間で培養液を循環させる動力手段が不要となり、膜分離エレメントを発酵反応槽内部に設置して発酵装置をコンパクト化することが可能である。
本発明の連続発酵によるダベリンの製造方法で用いる連続発酵装置のうち、膜分離エレメントが発酵反応槽の内部に設置された代表的な一例を図1の概要図に示す。
図1は、本発明の連続発酵によるダベリンの製造方法で用いられる連続発酵装置の一つの実施の形態を示す概略側面図である。図1において、連続発酵装置は、内部に膜分離エレメント2を備えた発酵反応槽1と水頭差制御装置3で基本的に構成されている。発酵反応槽1内の膜分離エレメント2には、多孔性膜が組み込まれている。この多孔性膜としては、例えば、国際公開第2002/064240号パンフレットに開示されている膜および膜エレメントを使用することができる。膜分離エレメントについては、追って詳述する。
次に、図1の連続発酵装置による連続発酵の形態について説明する。図1において、培地供給ポンプ7によって培地を発酵反応槽1に連続的もしくは断続的に投入する。培地は投入前に必要に応じて加熱殺菌、あるいは加熱滅菌、あるいはフィルターを用いた滅菌を行うことができる。発酵生産時には、必要に応じて攪拌機5で発酵反応槽1内の培養液を攪拌し、また必要に応じて気体供給装置4によって必要とする気体を供給し、また必要に応じてpHセンサ・制御装置9、およびpH調整溶液供給ポンプ8によって培養液のpHを調整し、また必要に応じて温度調節器10によって培養液の温度を調節することにより生産性の高い発酵生産を行うことができる。ここでは、計装・制御装置による培養液の物理化学的条件の調節に、pHおよび温度を例示したが、必要に応じて溶存酸素やORPの制御、更にはオンラインケミカルセンサーなどの分析装置により培養液中のカダベリンの濃度を測定し、それを指標とした物理化学的条件の制御を行うことができる。また、培地の連続的もしくは断続的投入の形態に関しては、上記計装装置による培養液の物理化学的環境の測定値を指標として、培地投入量および速度を適宜調節することができる。
培養液は、発酵反応槽1内に設置された膜分離エレメント2によって微生物もしくは培養細胞と発酵生産物に濾過・分離され、発酵生産物を装置系から取り出すことができる。また、濾過・分離された微生物もしくは培養細胞は装置系内にとどまることにより装置系内の微生物もしくは培養細胞濃度を高く維持でき、生産性の高い発酵生産を可能としている。ここで、膜分離エレメント2による濾過・分離には発酵反応槽1の水面との水頭差圧によって行い、特別な動力は必要ない。また、必要に応じてレベルセンサ6および水頭差圧制御装置3によって、膜分離エレメント2の濾過・分離速度および発酵反応槽内の培養液量を適当に調節することができる。上記の膜分離エレメントによる濾過・分離には水頭差圧によって行うことを例示したが、必要に応じてポンプ等による吸引濾過、あるいは装置系内を加圧することにより濾過・分離することもできる。
図2は、本発明のカダベリンの製造方法で用いられる他の連続発酵装置の例を説明するための概略側面図である。図2は、膜分離エレメントが、発酵反応槽の外部に設置された連続発酵装置の代表的な例である。
図2において、連続発酵装置は、発酵反応槽1と、膜分離エレメント2を備えた膜分離槽12と、水頭差制御装置3とで基本的に構成されている。ここで、膜分離エレメント2には、多孔性膜が組み込まれている。この多孔性膜を備えた膜分離エレメントとしては、例えば、国際公開第2002/064240号パンフレットに開示されている分離膜および膜分離エレメントを使用することが好適である。また、膜分離槽12は、培養液循環ポンプ11を介して発酵反応槽1に接続されている。
図2において、培地供給ポンプ7によって培地を発酵反応槽1に投入し、必要に応じて、攪拌機5で発酵反応槽1内の培養液を攪拌し、また必要に応じて、気体供給装置4によって必要とする気体を供給することができる。このとき、供給された気体を回収リサイクルして再び気体供給装置4で供給することができる。また必要に応じて、pHセンサ・制御装置9およびよびpH調整溶液供給ポンプ8によって培養液のpHを調整し、また必要に応じて、温度調節器10によって培養液の温度を調節することにより、生産性の高い発酵生産を行うことができる。さらに、装置内の培養液は、培養液循環ポンプ11によって発酵反応槽1と膜分離槽12の間を循環する。発酵生産物を含む培養液は、膜分離エレメント2によって微生物と発酵生産物に濾過・分離され、発酵生産物を装置系から取り出すことができる。また、濾過・分離された微生物は、装置系内にとどまることにより装置系内の微生物濃度を高く維持することができ、生産性の高い発酵生産を可能としている。
ここで、膜分離エレメント2による濾過・分離は、膜分離槽12の水面との水頭差圧によって行うことができ、特別な動力を必要としない。必要に応じて、レベルセンサ6および水頭差圧制御装置3によって、膜分離エレメント2の濾過・分離速度および装置系内の培養液量を適当に調節することができる。必要に応じて、気体供給装置4によって必要とする気体を膜分離槽12内に供給することができる。このとき、供給された気体を回収リサイクルして再び気体供給装置4で膜分離槽12内に供給することができる。
膜分離エレメント2による濾過・分離は、必要に応じて、ポンプ等による吸引濾過あるいは装置系内を加圧することにより、濾過・分離することもできる。また、別の培養槽(図示せず)で連続発酵に微生物または培養細胞を培養し、それを必要に応じて発酵反応槽内に供給することができる。別の培養槽で連続発酵に微生物または培養細胞を培養し、得られた培養液を必要に応じて発酵槽内に供給することにより、常にフレッシュでカダベリンの生産能力の高い微生物または培養細胞による連続発酵が可能となり、高い生産性能を長期間維持した連続発酵が可能となる。
次に、本発明のカダベリンの製造方法で用いられる連続発酵装置で、好ましく用いられる膜分離エレメントについて説明する。
図3に示す膜分離エレメントについて説明する。図3は、本発明で用いられる膜分離エレメントを例示説明するための概略斜視図である。本発明のカダベリンの製造方法で用いられる連続発酵装置では、好ましくは、国際公開第2002/064240号パンフレットに開示されている分離膜および膜分離エレメントを用いることができる。膜分離エレメントは、図3に示されるように、剛性を有する支持板13の両面に、流路材14と前記の分離膜15(多孔性膜)をこの順序で配し構成されている。支持板13は、両面に凹部16を有している。分離膜15は、培養液を濾過する。流路材14は、分離膜15で濾過された濾液を効率よく支持板13に流すためのものである。支持板13に流れた濾液は、支持板13の凹部16を通り、集水パイプ17を介して連続発酵装置外部に取り出される。濾液を取り出すための動力として、水頭差圧、ポンプ、液体や気体等による吸引濾過、あるいは装置系内を加圧するなどの方法を用いることができる。
図4に示す膜分離エレメントについて説明する。図4は、本発明で用いられる別の膜分離エレメントを例示説明するための概略斜視図である。膜分離エレメントは、図4に示すように、中空糸膜(多孔性膜)で構成された分離膜束18と上部樹脂封止層19と下部樹脂封止層20によって主に構成される。分離膜束18は、上部樹脂封止層19および下部樹脂封止層20よって束状に接着・固定化されている。下部樹脂封止層20による接着・固定化は、分離膜束18の中空糸膜(多孔性膜)の中空部を封止しており、培養液の漏出を防ぐ構造になっている。一方、上部樹脂封止層19は、分離膜束18の中空糸膜(多孔性膜)の内孔を封止しておらず、集水パイプ22に濾液が流れる構造となっている。この膜分離エレメントは、支持フレーム21を介して連続発酵装置内に設置することが可能である。分離膜束18によって濾過された濾液は、中空糸膜の中空部を通り、集水パイプ22を介して連続発酵装置外部に取り出される。濾液を取り出すための動力として、水頭差圧、ポンプ、液体や気体等による吸引濾過、あるいは装置系内を加圧するなどの方法を用いることができる。
本発明のカダベリンの製造方法で用いられる連続発酵装置の膜分離エレメントを構成する部材は、高圧蒸気滅菌操作に耐性の部材であることが好ましい。連続発酵装置内が滅菌可能であれば、連続発酵時に好ましくない微生物による汚染の危険を回避することができ、より安定した連続発酵が可能となる。膜分離エレメントを構成する部材は、高圧蒸気滅菌操作の条件である、121℃で15分間に耐性であることが好ましい。膜分離エレメント部材は、例えば、ステンレスやアルミニウムなどの金属、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、PVDF、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂およびポリサルホン系樹脂等の樹脂を好ましく選定することができる。
本発明のカダベリンの製造方法で用いられる連続発酵装置では、膜分離エレメントは、図1のように発酵反応槽内に設置しても良いし、図2のように発酵反応槽外に設置しても良い。膜分離エレメントを発酵反応槽外に設置する場合には、別途、膜分離槽を設けてその内部に膜分離エレメントを設置することができ、発酵反応槽と膜分離槽の間を培養液を循環させながら、膜分離エレメントにより培養液を連続的に濾過することができる。
本発明のカダベリンの製造方法で用いられる連続発酵装置では、膜分離槽は、高圧蒸気滅菌可能であることが望ましい。膜分離槽が高圧蒸気滅菌可能であると、雑菌による汚染回避が容易である。
本発明の連続発酵によるダベリンの製造方法に従って、連続発酵を行った場合、従来のバッチ発酵と比較して、高い体積生産速度が得られ、極めて効率のよい発酵生産が可能となる。ここで、連続培養における生産速度は、次の(式3)で計算される。
・発酵生産速度(g/L/hr)=抜き取り液中の生産物濃度(g/L)×培養液抜き取り速度(L/hr)÷装置の運転液量(L)・・・(式3)
また、バッチ培養での発酵生産速度は、原料炭素源をすべて消費した時点の生産物量(g)を、炭素源の消費に要した時間(h)とその時点の培養液量(L)で除して求められる。
本発明の連続発酵によるダベリンの製造方法によって得られたダベリンは、ポリアミド樹脂の原料に好適に用いられ、得られるポリアミド樹脂は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、溶融紡糸およびフィルム成形などの任意の成形方法により、所望の形状に成形することができ、機械部品などの樹脂成形品、衣料・産業資材などの繊維、および包装・磁気記録などのフィルムとして使用することができる。
以下、本発明のカダベリンの製造方法をさらに具体的に説明するために、図1および図2の概要図に示す連続発酵装置を用いることによる連続的なカダベリンの発酵生産について、実施例を挙げて説明する。
(参考例1)多孔性膜の作製(その1)
樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂を、また溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)をそれぞれ用い、これらを90℃の温度下に十分に攪拌し、下記組成を有する原液を得た。
[原液]
・PVDF:13.0重量%
・DMAc:87.0重量%
次に、上記の原液を25℃の温度に冷却した後、あらかじめガラス板上に貼り付けて置いた、密度が0.48g/cm3で、厚みが220μmのポリエステル繊維製不織布(多孔質基材)に塗布し、直ちに下記組成を有する25℃の温度の凝固浴中に5分間浸漬して、多孔質基材に多孔質樹脂層が形成された多孔性膜を得た。
[凝固浴]
・水 :30.0重量%
・DMAc:70.0重量%
この多孔性膜をガラス板から剥がした後、80℃の温度の熱水に3回浸漬してDMAcを洗い出し、分離膜を得た。多孔質樹脂層表面の9.2μm×10.4μmの範囲内を、倍率10,000倍で走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、観察できる細孔すべての直径の平均は0.1μmであった。次に、上記分離膜について純水透水透過係数を評価したところ、50×10-93/m2/s/Paであった。純水透水量の測定は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。また、平均細孔径の標準偏差は0.035μmで、膜表面粗さは0.06μmであった。
(参考例2)多孔性膜の作製(その2)
重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ-ブチロラクトンとを、それぞれ38重量%と62重量%の割合で170℃の温度で溶解し原液を作製した。この原液をγ-ブチロラクトンを中空部形成液体として随拌させながら口金から吐出し、温度20℃のγ-ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却浴中で固化して中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14重量%、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社、CAP482−0.5)を1重量%、N-メチル-2-ピロリドンを77重量%、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(三洋化成株式会社製、商品名“イオネットT−20C”(登録商標))を5重量%、および水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して原液を調整した。この原液を、上記で得られた中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させた本発明で用いる中空糸膜(多孔性膜)を製作した。得られた中空糸膜(分離膜)の被処理水側表面の平均細孔径は、0.05μmであった。次に、上記の分離膜である中空糸多孔性膜について純水透水量を評価したところ、5.5×10-93/m2・s・Paであった。透水量の測定は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。また、平均細孔径の標準偏差 は0.006μmであった。
[カダベリン濃度のHPLCによる分析方法]
・使用カラム:CAPCELL PAK C18(資生堂)
・移動相:0.1%(w/w)リン酸水溶液:アセトニトリル=4.5:5.5
・検出:UV360nm
・サンプル前処理:分析サンプル25μlに内標として、1,4−ジアミノブタン(0.03M)を25μl、炭酸水素ナトリウム(0.075M)を150μlおよび2,4−ジニトロフルオロベンゼン(0.2M)のエタノール溶液を添加混合し、37℃の温度で1時間保温する。上記の反応溶液50μlを1mlアセトニトリルに溶解後、10,000rpmで5分間遠心した後の上清10μlをHPLC分析した。
下記に示すカダベリンの製造に関する実施例においては、カダベリンを生産させる微生物として、特開2004−222569号公報に記載のコリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株および特開2002−223770号公報に記載の大腸菌CAD1株を用いた。
(実施例1)連続発酵によるカダベリンの製造(その1)
図1の連続発酵装置を稼働させることにより、カダベリン連続発酵系が得られるかどうかを調べるため、表1に示す組成のカダベリン生産培地を用い、この装置の連続発酵試験を行った。培地は、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌して用いた。膜分離エレメント部材には、ステンレスおよびポリサルホン樹脂の成形品を用いた。分離膜には、参考例1で作成したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を主成分とする多孔性膜を用いた。多孔性膜の平均細孔径は上記のとおり0.1μmであり、純水透過係数は50×10-9/m/s/paである。この実施例1における運転条件は、特に断らない限り下記のとおりである。
・発酵反応槽容量:1.5(L)
・使用分離膜:PVDF濾過膜
・膜分離エレメント有効濾過面積:120平方cm
・温度調整:30(℃)
・発酵反応槽通気量:1.5(L/min)空気
・発酵反応槽攪拌速度:800(rpm)
・pH調整:3M HClおよび3M アンモニア水によりpH7.0に調整
・滅菌:膜分離エレメントを含む培養槽、および使用培地は総て121℃、20minの
オートクレーブにより高圧蒸気滅菌
・膜透過水量制御:膜間差圧による流量制御(0.1kPa以上20kPa以下で制御した。膜間差圧20kPa以下は、水頭差制御では2m以内に相当する)。
微生物としてコリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株を用い、培地として表1に示す組成のカダベリン生産培地を用い、生産物であるカダベリンの濃度の評価はHPLC法により測定した。また、グルコース濃度の測定には、“グルコーステストワコーC”(登録商標)(和光純薬社製)を用いた。
Figure 0005458479
まず、コリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株を、試験管で5mlのカナマイシン(25μg/ml)を添加したカダベリン生産培地添加で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を、新鮮なカナマイシン(25μg/ml)を添加したカダベリン生産培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃の温度で、振幅30cmで、180rpmの条件下で培養を行った(前々培養)。
前々培養液を、図1に示した連続発酵装置の1.5Lのカダベリン生産培地に植菌し、発酵反応槽1を付属の攪拌機5によって800rpmで攪拌し、発酵反応槽1の通気量の調整、温度調整およびpH調整を行い、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、カダベリン生産培地の連続供給を行い、連続発酵装置の培養液量を1.5Lとなるよう膜透過水量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるカダベリンの製造を行った。連続発酵試験を行うときの膜透過水量の制御は、水頭差制御装置6により、発酵反応槽水頭を最大2m以内、すなわち膜間差圧が0.1kPa以上20kPa以下となるように適宜水頭差を変化させることで行った。適宜、膜透過濾液中の生産されたカダベリン濃度および残存グルコース濃度を測定した。また、該カダベリンおよび投入グルコースから算出されたカダベリン生産速度を表2に示した。144時間の発酵試験を行った結果、図1に示す連続発酵装置を用いることにより、安定したカダベリンの連続発酵による製造が可能であることを確認することができた。
(実施例2)連続発酵によるカダベリンの製造(その2)
微生物としてTR−CAD1株を用い、発酵培地として表1に示す組成のカダベリン生産培地を用い、図2に示す連続発酵装置用いて連続発酵試験を行った。また、上記カダベリン生産培地は、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌して用いた。膜分離エレメント部材には、ステンレスおよびポリサルホン樹脂の成形品を用いた。分離膜には、参考例2で作成したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を主成分とする多孔性膜を用いた。この実施例2における運転条件は、特に断らない限り下記のとおりである。
[運転条件]
・発酵反応槽容量:1.5(L)
・膜分離槽容量:0.5(L)
・使用分離膜:PVDF濾過膜
・膜分離エレメント有効濾過面積:4000平方cm
・温度調整:30(℃)
・発酵反応槽通気量:1.5(L/min)空気
・発酵反応槽攪拌速度:800(rpm)
・pH調整:3M HClおよび3M アンモニア水によりpH7.0に調整
・培養液循環速度:100ml/min
・滅菌:膜分離エレメントを含む培養槽および使用培地は、総て121℃の温度で20分間のオートクレーブにより高圧蒸気滅菌した。
・膜透過水量制御:膜間差圧による流量制御(0.1kPa以上20kPa以下で制御)。
カダベリンおよびグルコース濃度は、実施例1と同様の方法を用いて評価した。
まず、TR−CAD1株を試験管で5mlのカダベリン生産培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を、新鮮なカダベリン生産培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃の温度で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図2に示した連続発酵装置の2.0Lのカダベリン生産培地に植菌し、発酵反応槽1を付属の攪拌機5によって800rpmで攪拌し、発酵反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整および培養液循環速度調整を行い、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、カダベリン生産培地の連続供給を行い、連続発酵装置の培養液量を2.0Lとなるよう膜透過水量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるカダベリンの製造を行った。連続発酵試験を行うときの膜透過水量の制御は、水頭差制御装置3により、膜間差圧として0.1kPa以上20kPa以下となるように適宜水頭差を変化させることにより行った。適宜、膜透過濾液中の生産されたカダベリン濃度および残存グルコース濃度を測定した。また、該カダベリンおよび投入グルコースから算出されたカダベリン発酵生産性を表2に示した。
(実施例3)連続発酵によるカダベリン・アジピン酸塩の製造
(1)連続発酵
pHの調整方法が、2Mアジピン酸スラリーおよび3Mアンモニア水でpH7.0に維持したこと以外は、実施例1と同様の条件で連続発酵試験を行った。濾液中のカダベリン・アジピン酸塩および投入グルコースから算出されたカダベリン・アジピン酸塩生産速度を表2に示した。150時間の発酵試験を行った結果、連続発酵装置を用いることにより、安定したカダベリン・アジピン酸塩の連続発酵による製造が可能であることを確認することができた。
(2)濾液からのカダベリン・アジピン酸塩結晶の取得
前記濾液に活性炭を対カダベリン重量で30%添加し、26℃の温度で2時間撹拌しながら脱色した。濾紙で活性炭を除去し、得られた溶液をエバポレーター(東京理化社製)で4−5倍濃縮した。次に濃縮液を60℃の温度から徐々に冷却し、結晶を析出させた。この結晶を、デシケーター内で数日間乾燥させた。得られた結晶のX線結晶構造解析を行ったところ、カダベリン・アジピン酸塩・ニ水和物であり、純度99%以上であった。このカダベリン・アジピン酸塩を重合することにより、ポリアミドを得ることができる。
(比較例1)カダベリンのバッチ発酵(その1)
微生物を用いた発酵形態として最も典型的なバッチ発酵を2L容のジャーファーメンターを用いて行い、そのカダベリン生産性を評価した。培地は、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌して用いた。この比較例1では、微生物としてコリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株を用い、生産物であるカダベリンの濃度の評価はHPLCを用いて評価し、グルコース濃度の測定には“グルコーステストワコーC”(登録商標)(和光純薬社製)を用いた。比較例1の運転条件は、下記のとおりである。
・発酵反応槽容量:1.0(L)
・温度調整:30(℃)
・発酵反応槽通気量:1.5(L/min)空気
・発酵反応槽攪拌速度:800(rpm)
・pH調整:3M HClおよび3M アンモニア水によりpH7.0に調整
まず、コリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株を、試験管で5mlのカナマイシン(25μg/ml)を添加したカダベリン生産培地添加で一晩振とう培養した(前々培養)。得られた培養液を、新鮮なカナマイシン(25μg/ml)を添加したカダベリン生産培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃の温度で、振幅30cmで、180rpmの条件下で培養を行った(前培養)。前培養液を、ジャーファーメンターの1.0Lのカダベリン生産培地(グルコース濃度は100g/L)に植菌した。カダベリン生産培地を用い、バッチ発酵を行った。その結果を、実施例1、実施例2および実施例3の連続発酵試験で得られたカダベリン発酵生産性と比較して表2に示す。
Figure 0005458479
これらを比較した結果、図1および図2に示す連続発酵装置を用いることにより、カダベリンの生産速度が大幅に向上することを明らかにすることができた。本発明によって開示された多孔性膜を組み込んだ連続発酵装置を用い、膜間差圧を制御することにより、培養液を多孔性膜によって濾液と未濾過液に分離し、濾液から所望の発酵生産物を回収するとともに、未濾過液を培養液に戻す連続発酵方法を可能とし、微生物量を高く維持しながら、連続発酵によるカダベリンの製造が可能であることが明らかとなった。
(実施例4)連続発酵によるカダベリンの製造(その3)
微生物として大腸菌CAD1株を用い、発酵培地として表3に示す組成のカダベリン発酵培地を用い、図1に示す連続発酵装置用いて連続発酵試験を行った。また、上記カダベリン発酵培地は、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌して用いた。膜分離エレメント部材には、ステンレスおよびポリサルホン樹脂の成形品を用いた。分離膜には、参考例1で作成したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を主成分とする多孔性膜を用いた。この実施例4における運転条件は、特に断らない限り下記のとおりである。
[運転条件]
・発酵反応槽容量:1.5(L)
・使用分離膜:PVDF濾過膜
・膜分離エレメント有効濾過面積:120平方cm
・温度調整:37(℃)
・発酵反応槽通気量:1.5(L/min)空気
・発酵反応槽攪拌速度:800(rpm)
・pH調整:3M HClおよび3M アンモニア水によりpH7.0に調整
・滅菌:膜分離エレメントを含む培養槽、および使用培地は総て121℃、20minの
オートクレーブにより高圧蒸気滅菌
・膜透過水量制御:膜間差圧による流量制御(0.1kPa以上20kPa以下で制御)。
Figure 0005458479
カダベリンおよびグルコース濃度は、実施例1と同様の方法を用いて評価した。
まず、大腸菌CAD1株を試験管で5mlのカダベリン発酵培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を、新鮮なカダベリン発酵培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃の温度で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示した膜一体型連続発酵装置の1.5Lのカダベリン発酵培地に植菌し、発酵反応槽1を付属の攪拌機5によって800rpmで攪拌し、発酵反応槽1の通気量の調整、温度調整およびpH調整を行い、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、カダベリン発酵培地の連続供給を行い、連続発酵装置の培養液量を1.5Lとなるよう膜透過水量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるカダベリンの製造を行った。連続発酵試験を行うときの膜透過水量の制御は、水頭差制御装置3により、膜間差圧として0.1kPa以上20kPa以下となるように適宜水頭差を変化させることにより行った。適宜、膜透過濾液中の生産されたカダベリン濃度および残存グルコース濃度を測定した。また、該カダベリンおよび投入グルコースから算出されたカダベリン発酵生産性を表4に示した。
(実施例5) 連続発酵によるカダベリンの製造(その4)
微生物として大腸菌CAD1株を用い、発酵培地として表3に示す組成のカダベリン発酵培地を用い、図2に示す連続発酵装置用いて連続発酵試験を行った。また、上記カダベリン発酵培地は、121℃の温度で15分間高圧蒸気滅菌して用いた。膜分離エレメント部材には、ステンレスおよびポリサルホン樹脂の成形品を用いた。分離膜には、参考例2で作成したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を主成分とする多孔性膜を用いた。この実施例5における運転条件は、特に断らない限り下記のとおりである。
[運転条件]
・発酵反応槽容量:1.5(L)
・膜分離槽容量:0.5(L)
・使用分離膜:PVDF濾過膜
・膜分離エレメント有効濾過面積:4000平方cm
・温度調整:37(℃)
・発酵反応槽通気量:1.5(L/min)空気
・発酵反応槽攪拌速度:800(rpm)
・pH調整:3M HClおよび3M アンモニア水によりpH7.0に調整
・培養液循環速度:100ml/min
・滅菌:膜分離エレメントを含む培養槽および使用培地は、総て121℃の温度で20分間のオートクレーブにより高圧蒸気滅菌した。
・膜透過水量制御:膜間差圧による流量制御(0.1kPa以上20kPa以下で制御)。
カダベリンおよびグルコース濃度は、実施例1と同様の方法を用いて評価した。
まず、大腸菌CAD1株を試験管で5mlのカダベリン発酵培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を、新鮮なカダベリン発酵培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図2に示した連続発酵装置の2.0Lのカダベリン発酵培地に植菌し、発酵反応槽1を付属の攪拌機5によって800rpmで攪拌し、発酵反応槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整および培養液循環速度調整を行い、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、カダベリン発酵培地の連続供給を行い、連続発酵装置の培養液量を2.0Lとなるよう膜透過水量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるカダベリンの製造を行った。連続発酵試験を行うときの膜透過水量の制御は、水頭差制御装置3により、膜間差圧として0.1kPa以上20kPa以下となるように適宜水頭差を変化させることにより行った。適宜、膜透過濾液中の生産されたカダベリン濃度および残存グルコース濃度を測定した。また、該カダベリンおよび投入グルコースから算出されたカダベリン発酵生産性を表4に示した。
(比較例2)カダベリンのバッチ発酵(その2)
微生物を用いた発酵形態として最も典型的なバッチ発酵を2L容のジャーファーメンターを用いて行い、そのカダベリン生産性を評価した。培地は、121℃の温度15分間高圧蒸気滅菌して用いた。この比較例2では、微生物として大腸菌CAD1株を用い、生産物であるカダベリンの濃度の評価はHPLCを用いて評価し、グルコース濃度の測定には“グルコーステストワコーC”(登録商標)(和光純薬社製)を用いた。比較例2の運転条件は、下記のとおりである。
・発酵反応槽容量:1.0(L)
・温度調整:37(℃)
・発酵反応槽通気量:1.0(L/min)空気
・発酵反応槽攪拌速度:800(rpm)
・pH調整:3M HClおよび3M アンモニア水によりpH7.0に調整
まず、大腸菌CAD1株を、試験管で5mlのカダベリン発酵培地で一晩振とう培養した(前々培養)。得られた培養液を、新鮮なカダベリン発酵培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、37℃の温度で、振幅30cmで、180rpmの条件下で培養を行った(前培養)。前培養液を、ジャーファーメンターの1.0Lのカダベリン発酵培地に植菌した。カダベリン発酵培地を用い、バッチ発酵を行った。その結果を、実施例4および実施例5の連続発酵試験で得られたカダベリン発酵生産性と比較して表4に示す。
Figure 0005458479
これらを比較した結果、図1および図2に示す連続発酵装置を用いることにより、カダベリンの生産速度が大幅に向上することを明らかにすることができた。本発明によって開示された多孔性膜を組み込んだ連続発酵装置を用い、膜間差圧を制御することにより、培養液を多孔性膜によって濾液と未濾過液に分離し、濾液から所望の発酵生産物を回収するとともに、未濾過液を培養液に戻す連続発酵方法を可能とし、微生物量を高く維持しながら、連続発酵によるカダベリンの製造が可能であることが明らかとなった。
図1は、本発明で用いられる連続発酵装置の例を説明するための概略側面図である。 図2は、本発明で用いられる他の連続発酵装置の例を説明するための概略側面図である。 図3は、本発明で用いられる膜分離エレメントの例を説明するための概略斜視図である。 図4は、本発明で用いられる他の膜分離エレメントの例を説明するための概略斜視図である。
符号の説明
1 発酵反応槽
2 膜分離エレメント
3 水頭差圧制御装置
4 気体供給装置
5 攪拌機
6 レベルセンサ
7 培地供給ポンプ
8 pH調整溶液供給ポンプ
9 pHセンサ・制御装置
10 温度調節器
11 培養液循環ポンプ
12 膜分離槽
13 支持板
14 流路材
15 分離膜
16 凹部
17 集水パイプ
18 分離膜束
19 上部樹脂封止層
20 下部樹脂封止層
21 支持フレーム
22 集水パイプ

Claims (12)

  1. カダベリンを生産する能力を有する微生物もしくは培養細胞の培養液を分離膜で濾過し、濾液から生産物を回収するとともに未濾過液を培養液に保持または還流し、かつ、発酵原料を培養液に追加する連続発酵によるカダベリンを製造する方法であって、該分離膜として平均細孔径が0.01μm以上1μm未満の多孔性膜を用い、膜間差圧を0.1から20kPaの範囲として濾過処理することを特徴とする連続発酵によるカダベリンの製造方法。
  2. 多孔性膜の純水透過係数が、2×10−9/m/s/pa以上6×10−7/m/s/pa以下であることを特徴とする請求項1記載の連続発酵によるカダベリンの製造方法。
  3. 多孔性膜の平均細孔径が0.01μm以上0.2μm未満であり、かつ、該平均細孔径の標準偏差が0.1μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の連続発酵によるカダベリンの製造方法。
  4. 多孔性膜の膜表面粗さが0.1μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の連続発酵によるカダベリンの製造方法。
  5. 多孔性膜が多孔性樹脂層を含む多孔性膜である請求項1から4のいずれかに記載の連続発酵によるカダベリンの製造方法。
  6. 多孔性膜の膜素材にポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の連続発酵によるカダベリンの製造方法。
  7. 微生物が、リジン脱炭酸酵素および/またはリジン・カダベリンアンチポーターの酵素活性を増強している微生物であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の連続発酵によるカダベリンの製造方法。
  8. 微生物が、大腸菌であることを特徴とする請求項7に記載の連続発酵によるカダベリンの製造方法。
  9. 微生物が、リジン脱炭酸酵素活性を有し、かつホモセリン栄養要求性またはS−(2−アミノエチル)−L−システイン耐性の少なくともいずれか1つの特徴を有しているコリネ型細菌であることを特徴とする請求項記載の連続発酵によるカダベリンの製造方法。
  10. 連続発酵において酸により培養液のpHを維持することで、培養液中に生産されたカダベリンをカダベリン塩として回収することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の連続発酵によるカダベリンの製造方法。
  11. 連続発酵においてジカルボン酸により培養液のpHを維持することで、培養液中に生産されたカダベリンをカダベリン・ジカルボン酸塩として回収することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の連続発酵によるカダベリンの製造方法。
  12. 請求項1から11のいずれかに記載の方法でカダベリンもしくはその塩を得る工程、およびカダベリンもしくはその塩を原料としてポリアミドを得る工程を含む、ポリアミドの製造方法。
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