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JP5448381B2 - ヨウ素迅速放出材およびその製造方法 - Google Patents

ヨウ素迅速放出材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、水と接触したときのヨウ素放出速度が速いヨウ素放出材およびその製造方法に係わり、特にポリビニルアセタール系多孔質体にヨウ素を緩やかな結合によって吸着させて、水に対して極めて短時間にヨウ素を放出させることができるようにしたヨウ素迅速放出材およびその製造方法に関する。
ヨウ素は水にほとんど溶けず、常温で固体の結晶であるが、昇華性を有する。また、ヨウ素は強い殺菌作用を有するので、傷口の消毒薬として、或いはうがい薬として汎用されている。通常、ヨウ素をエタノールに溶解し、添加剤としてヨウ化カリウムを含むヨードチンキとするかまたは、ポリビニルピロリドンと複合化して水溶液中のヨウ素濃度を上昇させると同時に安定化せしめたポピドンヨード液が用いられている。これらの薬液の使用は歴史的に古く、それぞれ医療用途および一般家庭用途に広く普及している。これらの薬液には一般に高濃度のヨウ素が含まれている。しかし、ヨウ素の殺菌作用は遊離したヨウ素によるところが大きく、遊離ヨウ素は低濃度でも大きな殺菌力を有する。
遊離したヨウ素は、水溶液中でヨウ化物イオン(I)、二原子ヨウ素(I2)、三ヨウ化物イオン(I3 )、五ヨウ化物イオン(I5 )、次亜ヨウ素酸(HIO)、次亜ヨウ素酸イオン(IO)、ヨウ素酸イオン(IO3−)などのタイプで存在する。これらの中で最も殺菌力が高いのは二原子ヨウ素(I2)と考えられており、一般にこれを遊離ヨウ素と呼んでいる。ところが、この遊離ヨウ素は、前記の通り水に対して難溶性であるが故に、系外に揮発したり、結晶化して析出したりと、安定して水中に溶存し難いのである。このためヨウ化カリウムまたはポリビニルピロリドンなどによって溶解度を高める必要があった。
一方、前記のようにヨウ素を溶液状態で供給するのではなく、合成樹脂等に吸着させて流通させ、必要時にヨウ素水を調製して使用するという方法が提案されている(特許文献1および2)。この方法は、エチレン−ビニルアルコール系樹脂またはABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂に100〜600重量%のヨウ素を吸着させ、このヨウ素吸着樹脂から継続的に放出されるヨウ素によって長期間安定したヨウ素溶液を提供しようというものである。しかし、この方法は、ヨウ素の放出速度が比較的遅いため、短時間で使用できるような状態にする場合には不向きであった。特に、従来の傷口消毒に使用するような場合には、何時必要になるか予測することは不可能であるために、緊急性の要望を満たすことは困難であった。
また、アセタール化ポリビニルアルコールとヨウ素を複合化した組成物(特許文献3)が提案されているが、該文献5頁左下欄に記載されているように、ヨウ素はゆっくりと放出されることを前提としており、急速なヨウ素放出材を意図していない。ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステルなどにヨウ素を吸着させた抗微生物材料(特許文献4)も提案されているが、該公報15頁に記載されているように時間単位での放出を検討しているものであり、これも極めて短時間でヨウ素を放出することを想定したものではない。さらに、イオン交換樹脂とヨウ素を吸収させた物質(特許文献5)が提案されているが、これは血液、血液フラクション及び他のタンパク質含有溶液をカラム内を通過させることにより殺菌するものであり、少量のタンパク質含有溶液をヨウ素を吸着した充填剤の詰まったカラム内に流すことによって、溶液と充填剤との接触面積を多くすることにより消毒しようとするものである。この方法では大量のヨウ素水を得ることは全くの目的外であり、ヨウ素がどの程度放出されるのかも示されていない。さらには、ヨウ素化されたアガロースなどの元素状ヨウ素含有物質(特許文献6)なども提案されているが、ヨウ素を徐放する高分子粒子と、ヨウ素を吸着しうる高分子粒子の混合物を液体と接触させ、殺菌と同時に過剰のヨウ素を除去する方法を提案するものであり、これはポリビニルアセタールをヨウ素の捕捉用に用いているものである。
特開平9−67216号公報 特開平10−165960号公報 特開平2−299662号公報 特表平9−509876号公報 特表2000−514045号公報 特表2003−512136号公報
本発明は、上述した従来技術において全く考慮されていなかった、新しい用途を課題として検討した結果なされたものであり、その目的とするところは、ヨウ素放出速度が速く、水と接触させたときに極めて短時間で消毒に用いうるヨウ素水を調製することができ、さらには製造後の保存安定性を向上させうる、ヨウ素迅速放出材およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のアセタール化度のポリビニルアセタール系多孔質体にヨウ素を吸着させる前に特定の湿潤剤を含浸させるか、ヨウ素吸着処理後に湿潤剤を含浸させること、或いはヨウ素吸着処理時の固体ヨウ素と空間との体積比を適宜調整することによりヨウ素とポリマー間を適当な結合力にすることによって、得られたヨウ素放出材を水と接触させて極めて短時間にヨウ素水が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、(a)アセタール化度55〜80モル%のポリビニルアセタール系多孔質体に、該多孔質体に対して1〜50重量%のグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の湿潤剤を含浸させる工程、(b)前記多孔質体に対して10〜400重量%の固体ヨウ素を、前記含浸後の多孔質体とともに容器内に密閉する工程、(c)容器内を30〜100℃で加熱してヨウ素を吸着させる工程、とを有することを特徴とするヨウ素迅速放出材の製造方法に係わる。このように多孔質体に湿潤剤が含浸されていると、ヨウ素の吸着効率が優れているだけでなく、ヨウ素を迅速に放出することができる状態で吸着することが可能である。
前記工程(c)の後に、(d)ヨウ素吸着後の多孔質体に対して1〜100重量%のグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の湿潤剤をさらに含浸させる工程、を追加しても良い。ヨウ素吸着処理後にさらに湿潤剤を再含浸させることによりヨウ素迅速放出材の保存安定性がより向上するからである。
(削除)
さらに、本発明は、前記工程(b)において、固形物の体積(多孔質体及び固体ヨウ素の総体積):空気層の体積比が10:90〜65:35で容器内に密閉し、容器内を30〜100℃で加熱してヨウ素を気化せしめることにより前記多孔質体にヨウ素を短時間で吸着させることを特徴とするヨウ素迅速放出材の製造方法に関する。前記反応容器内における特定の体積比率でヨウ素を吸着させることによって、多孔質体とヨウ素とを適度な結合力にすることができ、後述するヨウ素の放出を迅速に行わせることができる。
前記体積比率によれば、固体ヨウ素は一旦気化したのち多孔質体に吸着するので、気化可能な体積が大きすぎると多孔質体へ吸着されずに気体状態で存在し、小さすぎると気化する量が少ないために吸着速度が遅くなる傾向があり、適度な比率で処理することが望ましい。
こうして得られる本発明のヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は、好適には0.07〜3mg/secであることが特徴である。ここで、本発明における前記ヨウ素放出速度とは、ヨウ素迅速放出材0.5gを、100mlバイアル瓶(内径約35mm、高さ約120mm)に入れ、室温下で水100mlを加えて密栓し、10秒間静置した後、直ちに該ヨウ素迅速放出材を取り出し、接触開始から10秒以内に放出されたヨウ素濃度を測定して求めた値と定義する。
本発明のヨウ素放出材の製造方法によれば、極めて短時間、具体的には30秒以内、より好ましくは10秒以内に消毒に用うる濃度のヨウ素水を調製することができる、ヨウ素迅速放出材が製造される。前記製造に際しては、特別な機械設備を必要とすることなく、簡易な製造方法であってコストが安い。しかも、本発明により得られるヨウ素迅速放出材は、乾燥状態では安定であり、ヨウ素の昇華速度を抑え、そのまま素手で取り扱うことが出来るため安全性に優れている。
また、ヨウ素を吸着させた後の放出材に、湿潤剤処理を施すことによって保存期間の安定性をさらに向上させることができることも特徴である。そして、ヨウ素迅速放出材と水との接触により直ちに消毒に必要なヨウ素水が得られることから、緊急時、災害時などにその機能を充分に発揮するだけでなく、介護施設や家庭用としても常備するのに好適である。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のヨウ素迅速放出材の製造にあたり、ヨウ素を吸着する基材としてポリビニルアセタール系多孔質体を用いる。多孔質体であることにより水との接触面積を多くし、吸着したヨウ素の放出効率を向上させるためである。該多孔質体の気孔率は50〜95%が好ましく、特に好ましくは60〜93%である。気孔率が前記範囲より低いと目的とする迅速なヨウ素の放出が得難くなり、前記範囲以上では、多孔質体の機械的強度が低下する場合がある。また気孔の径は40〜1000μm、好ましくは50〜800μmである。気孔径が前記未満である場合には、水と接触させたときの水の浸透性が悪くなり、所望のヨウ素の放出速度が得難くなる場合があり、また気孔径が前記より大きくなると、多孔質体の機械的強度が低下する場合がある。
前記ポリビニルアセタール系多孔質体は、アセタール化度が50〜90モル%のものが適当であり、好ましくは55〜80モル%である。90モル%より多くなるとヨウ素の吸着量が不十分となり、50モル%より低くなると、耐水性が劣るからである。また、ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールにアセトアルデヒドを縮合反応させて得られるが、ホルムアルデヒドや、ブチルアルデヒドなどを用いることも可能である。ホルムアルデヒドを用いると、ガラス転移温度が高くなり、耐熱性に優れることが知られている。またブチルアルデヒドを使用すると、溶剤に対する溶解性に優れるので高アセタール化度のものが得られるが、耐熱性に劣るようになる。なお、ポリビニルアセタール系多孔質体としては、例えばアイオン株式会社製のベルイーターDシリーズまたはベルクリンを用いることができる。
前記ポリビニルアセタール系多孔質体を適当な形状に加工する。例えばシート状、棒状、球状など加工できる限り任意の形態が可能である。以下の工程(ヨウ素を吸着させる工程など)後に、所望の形状にすることもできるが、多量のヨウ素を吸着させてから取り扱うよりも、前もって適当な形状にしておく方が作業性に優れ、実際使用する各放出材の表面に均一に吸着できるからである。好ましい形態の一つはシート状の小片であり、例えば10×10mm平方で厚みが2〜5mmのものが用いられる。
本発明のヨウ素迅速放出材の製造方法の一つとして、前記ポリビニルアセタール系多孔質体に湿潤剤を含浸させ(工程(a))てからヨウ素を吸着させる方法がある。この場合の湿潤剤の具体例としては、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、酸化エチレン・酸化プロピレンブロック共重合体、アルキルポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビトールエステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ポリグリセリンエステルおよび脂肪酸ショ糖エステルからなる一群が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前記ポリビニルアセタール系多孔質体が上記湿潤剤を含むことにより、本発明のヨウ素迅速放出材製造のワーキングレンジが著しく広くなり製造が容易になるとともにその保存時の熱に対する安定性が著しく向上する。この理由は未だ明らかではないが、上記湿潤剤がヨウ素とポリビニルアセタール系多孔質体とが過度に強固に結合するのを抑制する効果があるためではないかと考えられる。
前記湿潤剤の含浸方法は、例えば湿潤剤を直接多孔質体の表面に接触させて圧縮する方法や、湿潤剤水溶液中で多孔質体を圧搾して吸い込ませたのち乾燥する方法、或いは過剰の湿潤剤を不織布等で吸い取ることもできる。その他、含浸後の多孔質体を遠心分離することによって過剰の湿潤剤を除去してもよい。工程(a)における湿潤剤は、ポリビニルアセタール系多孔質体に対して1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%とする。含有量が1重量%より少ない場合には、多孔質体の表面を均一に被覆することが困難なために、含浸させることによる効果(水と接触させたときの素早いヨウ素の放出)が得難くなり、また50重量%より多くしてもそれ以上の効果は少なく、経済的にも不利である。
前記湿潤剤の中で好ましいのはグリセリン、エチレングリコールおよびポリエチレングリコール(ポリエチレングリコールは分子量200〜350万のものを用いることができ、好ましくは分子量200〜3000である。)であり、特に好ましいのはグリセリンであり、これらは経済性、操作性、ヨウ素の放出性、保存安定性などの面で優れた効果を発揮する。また、これらは、ヨウ素とともに放出されて、得られるヨウ素水中に浸出し、傷口の消毒に使用されたとしても安全性の高い物質だからである。なお、ヨウ素水中のヨウ素と複合体を形成してヨウ素を安定化する効果を有する場合もある。
前記のようにして湿潤剤をポリビニルアセタール系多孔質体に含浸させたのち、これを固体ヨウ素とともに容器に密封する(工程(b))。このとき固体ヨウ素は前記多孔質体に対して10〜400重量%とする。固体ヨウ素はその全量が基本的に密閉容器内で気化して、前記多孔質体に吸着されるから、密封する際の量を調整することにより、吸着量も必然的に決定されるため、所望量を添加すれば良い。勿論、添加固体ヨウ素の全量が気化する前に反応を終了させることも可能であるが、残存する固体ヨウ素の分別や、気相中にあるヨウ素蒸気の問題などを考慮すれば、全量反応させることが望ましい。このように、反応後に不要な成分が生じないことは、本発明の最大の特徴である。通常、化合物を製造する工程では何らかの不純物や、副反応物、未反応原料などの残留により、精製工程や、分別工程などが必要とされることが多いのであるが、本発明の製造方法では、そのような別工程を敢えて設けることなく製造することができるので、製造コストの著しい削減を可能にするものである。ポリビニルアセタール系多孔質体に対するヨウ素の吸着量は10重量%より少ないと水と接触した時のヨウ素放出速度が不十分となり、400重量%より多くなるとヨウ素吸着量を達成するために加熱する時間が長時間となる。好ましいヨウ素吸着量は30〜300重量%であり、特に好ましいヨウ素吸着量は30〜200重量%である。
こうして容器に密封したのち、容器ごと乾燥器など加熱可能な機械に入れ、30〜100℃、好ましくは50〜90℃で加熱することによりヨウ素を気化させる(工程(c))。この時の温度条件としては、固体ヨウ素を50〜100重量%添加した場合について例示すれば、90℃で1〜2時間、80℃で5〜10時間、60℃では6〜24時間程度とされるが、これ以上の時間加熱しても特に差し支えない。ただし製造コストに直接影響するために、必要最小限の温度および時間を選択することが望ましい。なお、この時の設定温度はあまり高いとポリビニルアセタール系多孔質体が劣化するおそれがあるので100℃を超える温度は適当でなく、また30℃より低いとヨウ素の気化が非常に遅いために製造に長時間を要するので好ましくない。
上記によって得られるヨウ素迅速放出材をそのまま製品とすることもできるが、これに再度、湿潤剤を含浸させることもできる(工程(d))。このとき使用される湿潤剤は工程(a)にて使用したものと同様であって、具体的には、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、酸化エチレン・酸化プロピレンブロック共重合体、アルキルポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビトールエステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ポリグリセリンエステルおよび脂肪酸ショ糖エステルからなる一群が挙げられる。工程(d)ではヨウ素吸着後の多孔質体に対して1〜100重量%の湿潤剤を作用させることができる。この濃度は工程(a)に比較して高いのであるが、工程(a)後には加熱工程(c)が施されるため、その際の湿潤剤の蒸気圧等を考慮したものである。工程(a)と工程(d)で使用される湿潤剤は同一であっても良く、それぞれ異なっていても良い。またこの時の湿潤剤も単独または2種以上を混合して使用することも可能である。
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グリセリン等の湿潤剤は、液状のものはそのまま用いてポリビニルアセタール多孔質体を含浸することもできるが、水と混合して水溶液の状態で用いるのが好ましい。グリセリンの場合を例示すると、グリセリンの10〜90重量%水溶液として用いるのが好ましい。特に好ましくは30〜70重量%水溶液である。
工程(d)または(C‘)における含浸方法としては、ヨウ素を吸着したポリビニルアセタール多孔質体のチップをピンセットで湿潤剤につけた後、不織布等で過剰の湿潤剤を吸い取っても良く、複数のヨウ素を吸着したポリビニルアセタール多孔質体を湿潤剤の液に浸した後、遠心分離機にかけて過剰の湿潤剤を除いても良い。また、ポリビニルアセタール多孔質体チップの表面に湿潤剤の液を付着させた後、ピンセットなどを用い、チップをシャーレなどの滑らかな表面にこすりつけ湿潤剤を多孔質体の内部に浸透せしめる方法も有効である。
ヨウ素を吸着させた後の多孔質体に、湿潤剤を含浸させること(工程(d)の追加または工程(c’))の効果は、ヨウ素迅速放出材の長期間の保存安定性がさらに向上するだけでなく、仮に保存温度が高くなり過ぎた場合でも所望のヨウ素を迅速に放出する機能を維持することである。また、工程(a)〜工程(c)により製造された放出材に比べても、ヨウ素の放出速度がより速いことも特徴である。
こうして得られるヨウ素迅速放出材は、水と接触させたときのヨウ素の放出が従来技術と比較して極めて速いことが特徴である。特に、本発明ではヨウ素放出速度を以下のように定義した。すなわち、ヨウ素迅速放出材0.5gを、100mlバイアル瓶(内径約35mm、高さ約120mm)に入れ、室温下で水100mlを加えて密栓し、10秒間静置した後、直ちに該ヨウ素迅速放出材を取り出し、接触開始から10秒以内に放出されたヨウ素濃度を測定して求めた値と定義する。本発明のヨウ素迅速放出材については、ヨウ素放出速度が0.07〜3mg/secである。大量のヨウ素水を得たい場合や、高濃度のヨウ素水を得たい場合には、ヨウ素迅速放出材と接触させる水との比率を適宜調整すれば良い。また、本発明でのヨウ素放出速度は、測定条件によるバラツキを考慮して、水との接触方法について単純にヨウ素迅速放出材を水中に浸漬するだけとしたが、実際の用法においては、浸漬した状態で全体を振盪・攪拌させることにより、より速くヨウ素を放出させることも可能である。水との接触時間は通常3秒〜20秒程度が適当であるが、ヨウ素濃度を特に高めたい場合あるいは水の容量が多い場合は接触時間をさらに長くしても差し支えない。
湿潤剤を添加しないで、ヨウ素を吸着させる方法もある。その場合の留意点について以下に説明する。まず第一に、多孔質体とヨウ素を容器内で密封するが、このときの容器内での固形物(多孔質体と固体ヨウ素をあわせたもの)と空気部分との体積比(固形物:空気)が10:90〜65:35であることが特徴である。このような比率にすることにより気化したヨウ素が多孔質体に素早く吸着されることとなるからである。この比率は特に好ましくは15:85〜55:45である。固形物の比率が10より低いと製造上経済的に不利となる。また固形物の比率が65より多くなるとヨウ素の吸着が遅くなると同時に不均一となり良好な製品が得られなくなる。また、この比率を前記湿潤剤を用いた場合の製造方法(具体的には工程(b)または工程(a’))に適用することも無論可能である。前記湿潤剤を用いた場合には、これを用いない場合に比較してヨウ素を吸着させる工程における諸条件、例えばこの体積比や以下に述べる熱履歴などを厳密に管理しなくても、ヨウ素迅速放出材が得られるため、品質管理上有利であると言える。
湿潤剤を用いない製造方法の場合の第二の留意点として、固体ヨウ素を気化せしめて多孔質体に吸着させる際の温度および時間を厳密に管理する必要があることである。具体的には、50〜100重量%のヨウ素を多孔質体に吸着させる場合には、60℃でトータルの加熱時間6〜24時間、70℃では4〜12時間、80℃で5〜10時間、90℃では1〜2時間である。この加熱時間は連続して加熱する場合を言うが、その間に温度を低下させる場合にはより長時間の熱処理、反対に上昇させる場合にはより短時間の熱処理となることは言うまでもない。仮に前記加熱時間を越えて吸着させる場合でも、直ちにヨウ素が放出され難くなるわけではないが、超過時間に比例してヨウ素と多孔質体との結合強度が増して、ヨウ素放出速度が低下するため、所望(ヨウ素放出速度を0.07〜3mg/sec)のヨウ素迅速放出材が得難くなる。なお、温度管理に失敗しない方法としては、吸着させたいヨウ素の比率で混合し、添加された固体ヨウ素が目視できなくなるところで加熱を終了させるような方法で行うこともできる。
ところで、ポリビニルアセタール以外のポリマーにヨウ素を吸着させるという従来技術として、例えばABS樹脂にヨウ素を吸着させる場合、加熱時間が長くなるとヨウ素は樹脂の表面から内部に拡散することにより、ヨウ素徐放性の材料としては使用できる。これに対し、ポリビニルアセタール系多孔質体の場合は加熱時間が長くなると水と接触したときの初期のヨウ素放出が著しく遅くなるのみならず、経時的な徐放性も著しく低下する。この理由は明らかではないが、ポリビニルアセタールの場合ヨウ素の分布が変化するためではなく、ヨウ素との結合状態が変化してヨウ素が放出されにくくなるものと考えられる。一方、ABS樹脂の場合、ヨウ素が表面に吸着しているときには、乾燥状態においてヨウ素の昇華性が強く、素手で取り扱うことは困難であるにもかかわらず、水と接触した時のヨウ素放出速度は、本発明の方法により製造されたポリビニルアセタール系多孔質体に比較して極めて遅い。これに対してポリビニルアセタール系多孔質体は前記の通り加熱工程の適正な管理によって、乾燥状態でのヨウ素の昇華性が少なく、水と接触した時のヨウ素放出速度は著しく速いことが特徴なのである。
また、ABS樹脂の場合、例えば成形用のペレットを用いてこれに100重量%のヨウ素を吸着せしめた場合、70℃で10時間加熱してヨウ素を吸着せしめた後、さらに追加の熱処理を行わないと、ペレットからのヨウ素の昇華性が著しく、素手で扱うことは困難である。しかも、前記方法によるABS樹脂ペレットのヨウ素放出速度は本発明に規定する方法に従えば、3mg/時のオーダーである。また前記ペレットを100℃で24時間熱処理し、素手で取り扱えるようにしたものにおいては、ヨウ素放出速度は4mg/日のオーダーとなり、本発明のポリビニルアセタール系多孔質体とは比較にならないほどヨウ素放出速度が遅い。従って、本発明の目的とするヨウ素を迅速に放出して緊急時に対応できるような消毒液を作成する用途には不向きであったのである。
さて、本発明の湿潤剤を含浸させておく製造方法では、ポリビニルアセタール系多孔質体に対して混合する固体ヨウ素の量は吸着させたい量に設定することが好ましい。予定量以上に固体ヨウ素を添加して、適当な時間経過後に固体ヨウ素が残存したまま多孔質体を取り出すことによって吸着させる量を調整することも可能であるが、固体ヨウ素は昇華性であるために吸着後の多孔質体を取り出す操作中に昇華したヨウ素を吸引するおそれがあり、作業環境上注意を要するからである。
以上の製造方法により得られたヨウ素迅速放出材は外観が黒色を呈しているが、固体ヨウ素のように昇華するヨウ素が少ないために短時間では素手で取り扱っても皮膚が汚れることがない。従って固体ヨウ素とは比較にならない程取り扱いが容易で、安全である。しかも、水と接触すると極めて速やかにヨウ素を放出して簡単にヨウ素水を製造することができる。該放出材のヨウ素放出速度は、前記の通り0.07〜3mg/secという速さであり、ヨウ素の水に対する溶解度の点から過濃度になることはないので、適正な濃度のヨウ素水が得られるのである。
本発明のヨウ素迅速放出材からヨウ素水を調製するには、具体例として以下のような方法が用いられる。前記ポリビニルアセタール系多孔質体を適当な大きさ、例えば厚さ4〜5mmのシート状物を10×10mmに裁断して、前記いずれかの製造方法によりヨウ素迅速放出材を製造する。100mlのガラスバイアル瓶に前記放出材を1〜10個程度入れ、これに水道水を加えて蓋をし、数秒から数十秒振とうする。これだけで、水道水からヨウ素濃度30〜300ppmのヨウ素水が得られる。遊離ヨウ素の殺菌効力は高いため、このヨウ素水は各種細菌、真菌およびウイルスに対して十分な消毒効果を発揮する。得られたヨウ素水は使い切った後、再び水道水を満たして同様に製造することができ、数回〜数十回繰り返して再調製することができる。従って、災害時の緊急消毒用や、病院などの施設、家庭内における簡易的な消毒用として極めて有用である。
また、本発明のヨウ素迅速放出材を用いたヨウ素水の調製方法として、例えば着脱自在のノズル付きキャップを有する容量120ml程度の容器を用いることもできる。ノズルを利用することによって容器内のヨウ素水を目的とする部位に正確に噴射することができ、より使い勝手の良い使用が可能となる。容器としては、他に容器内圧をポンプ等により高めて噴射する方式のものなどを用いることもできる。いずれにしても、本発明のヨウ素迅速放出材と水とを接触させて数秒から数十秒で消毒可能な濃度のヨウ素水が得られるので、非常に簡便で操作性に優れた簡易消毒用液剤の調製に利用できるのである。この他上記本発明のヨウ素迅速放出材を1〜2リットルの水と接触せしめると数分〜数十分で消毒に使用できる濃度のヨウ素水を大量に調製することが出来る。このようなヨウ素水は老人施設などにおける手指や器具の消毒に有用である。
以下に具体的な例を示しつつ本発明の製造方法について説明する。
(参考例1)
厚さ4mmのポリビニルアセタールスポンジ(商品名:ベルイーターF(D)、アイオン(株)製)を10×10mmの大きさに裁断し、この10.1g(裁断片160個)と、ヨウ素(フレーク状、日本天然ガス(株)製)5.2gを容量400mlのガラス製バイアルに入れて混合し、密栓した。ここで固形物:空気の体積比は40:60であった。これを90℃のオーブン中で時々容器を振盪しながら1.5時間加熱した。この時外観上固体ヨウ素は消失していた。反応後のポリビニルアセタールスポンジの重量測定からヨウ素吸着量は50重量%であることが判った。ヨウ素を吸着させたスポンジは手で触れても指が汚れるようなことはなく、取り扱い易い状態であった。また得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.35mg/secであった。
(比較例1)
参考例1で得られた50重量%のヨウ素を吸着させたスポンジをさらに90℃のオーブン中で3時間加熱した。反応後のスポンジの重量測定からヨウ素の吸着量に変化は無かった。しかし、得られたヨウ素放出材のヨウ素放出速度は0.03mg/secであった。
(参考例2)
参考例1と同様のポリビニルアセタールスポンジ10.1gとヨウ素10.3gを同様のバイアル瓶に入れて混合、密栓し(ここで固形物:空気の体積比は42:58であった)、参考例1と同様にして80℃で時々振盪しながら5時間加熱した。この時目視により固体ヨウ素は消失していた。反応後のポリビニルアセタールスポンジの重量測定からヨウ素吸着量は100重量%であることが判った。ヨウ素を吸着させたスポンジは手で触れても指が汚れるようなことはなく、取り扱い易い状態であった。得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.45mg/secであった。
(参考例3)
参考例1と同様のポリビニルアセタールスポンジ10.4gと、ヨウ素2.7gを同様のバイアル瓶に入れて混合、密栓し(ここで固形物:空気の体積比は39:61であった)、80℃で時々振とうしながら1時間加熱した。この時目視により固体ヨウ素が実質的に消失したことが確認された。反応後のポリビニルアセタールスポンジの重量測定からヨウ素吸着量は25重量%であった。また得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.2mg/secであった。
(比較例2)
参考例3で得られた25重量%のヨウ素を吸着させたスポンジをさらに80℃のオーブン中で3時間加熱した。反応後のスポンジの重量測定からヨウ素の吸着量に変化は無かった。しかし、得られたヨウ素放出材のヨウ素放出速度は0.04mg/secであった。
(参考例4)
参考例1と同様のポリビニルアセタールスポンジ10.1gとヨウ素3.2gを同様のバイアル瓶に入れて混合、密栓し(ここで固形物:空気の体積比は39:61であった)、参考例1と同様にして65℃で時々振盪しながら3時間加熱し、80℃に昇温して1時間加熱した。この時目視により固体ヨウ素は消失していた。反応後のポリビニルアセタールスポンジの重量測定からヨウ素吸着量は30重量%であることが判った。ヨウ素を吸着させたスポンジは手で触れても指が汚れるようなことはなく、取り扱い易い状態であった。また、得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.25mg/secであった。
(比較例3)
参考例4で得られた30重量%のヨウ素を吸着させたスポンジをさらに80℃のオーブン中で4時間加熱した。反応後のスポンジの重量測定からヨウ素の吸着量に変化は無かった。しかし、得られたヨウ素放出材のヨウ素放出速度は0.04mg/secであった。
参考例1〜4および比較例1〜3で得られたヨウ素を吸着させたスポンジの小片各8個を100mlのバイアル瓶に入れ、80mlの水道水を注ぎ、蓋をした。容器を把持して10秒振盪し、内容液を他の容器に移し、スポンジを残したバイアル瓶には再び水道水80mlを注いで、同様に振盪し、更に内容液を別の容器に移した。このようなサイクルを5回繰り返し、各液のヨウ素濃度を測定した結果を表1に示す。
Figure 0005448381
表1の結果より、参考例1〜4で得られたヨウ素を吸着させたスポンジにおいては1回目から5回目までのヨウ素水製造において、消毒に充分な濃度のヨウ素水が得られたが、比較例1〜3で得られたヨウ素水濃度はいずれも消毒には不十分な濃度であった。また、比較例1〜3で得られたヨウ素を吸着させたスポンジを1時間および5時間浸漬した後のヨウ素濃度を測定したが、ほとんど上昇しておらず、このことから比較例1〜3においてヨウ素の放出が少ないのはポリビニルアセタールスポンジ内に吸着されたヨウ素の分布に起因するものではなく、ポリビニルアセタールとヨウ素の結合状態の違いによるものと推察される。
(実施例1)
厚さ4mmのポリビニルアセタールスポンジ(商品名:ベルイーターF(D)、アイオン(株)製)を10×10mmの大きさに裁断した。この10.1g(裁断片160個)を、ポリエチレングリコール1000(和光純薬(株)製試薬1級)10部と水10部との混合液に30分浸漬した後、よく絞り60℃で乾燥した。重量の増加から、ポリエチレングリコール1000の含有量は13.8重量%であった。このポリエチレングリコール1000を含むポリビニルアセタールスポンジ11.7gと参考例1と同様のヨウ素5.3gを参考例1と同様のバイアル瓶にいれて混合し(ここで固形物:空気の体積比は37:63であった)、60℃のオーブン中で時々容器を振盪しながら5時間加熱し、次いで80℃に昇温して2時間加熱した。この時外観上固体ヨウ素は消失していた。反応後のポリビニルアセタールスポンジの重量測定からヨウ素吸着量は50重量%であることが判った。また得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.35mg/secであった。
(参考例5)
ポリエチレングリコール1000を含浸させないこと以外は、実施例1と同様にしてヨウ素を吸着させた。反応後のポリビニルアセタールスポンジの重量測定からヨウ素吸着量は50重量%であることが判った。また、得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.35mg/secであった。
(実施例2)
実施例1で得られたヨウ素50重量%を吸着させたスポンジを、さらに80℃で24時間継続して加熱した。このスポンジの重量変化はなく、従ってヨウ素吸着量にも変化はなかった。また、得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.35mg/secであった。
(比較例4)
参考例5で得られたヨウ素50重量%を吸着させたスポンジを、さらに80℃で24時間継続して加熱した。このスポンジの重量変化はなく、従ってヨウ素吸着量にも変化はなかった。しかし、得られたヨウ素放出材のヨウ素放出速度は0.04mg/secであった。
実施例1〜2、参考例5、比較例4で得られたヨウ素を吸着させたスポンジの小片各8個を100mlのバイアル瓶に入れ、80mlの水道水を注ぎ、蓋をした。容器を把持して10秒振盪し、内容液を他の容器に移し、スポンジを残したバイアル瓶には再び水道水80mlを注いで、同様に振盪し、更に内容液を別の容器に移した。このようなサイクルを5回繰り返し、各液のヨウ素濃度を測定した結果を表2に示す。
Figure 0005448381
実施例1については、5回とも消毒に適したヨウ素水が得られた。実施例2は加熱時間を延長したものであるが、得られるヨウ素水は実施例1と同様の結果であった。それに対して比較例4は、エチレングリコール1000を含有しない場合であるが、加熱時間が延長されたことにより、得られるヨウ素水のヨウ素濃度がかなり低下してしまうことが判る。
(実施例3)
参考例1と同様のポリビニルアセタールスポンジを10×10mmの大きさに裁断した。この10.1g(裁断片160個)を、エチレングリコール(和光純薬(株)製試薬特級)10部と水10部との混合液に30分浸漬した後、よく絞り60℃で乾燥した。重量の増加から、エチレングリコールの含有量は13.9重量%であった。このエチレングリコールを含むポリビニルアセタールスポンジ11.5gと参考例1と同様のヨウ素5.3gを参考例1と同様のバイアル瓶にいれて混合し、60℃のオーブン中で時々容器を振盪しながら5時間加熱し、次いで80℃に昇温して2時間加熱した。この時外観上固体ヨウ素は消失していた。反応後のポリビニルアセタールスポンジの重量測定からヨウ素吸着量は50重量%であることが判った。また、得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.35mg/secであった。
(実施例4)
実施例3で得られたヨウ素50重量%を吸着させたスポンジを、さらに80℃で24時間継続して加熱した。このスポンジの重量変化はなく、従ってヨウ素吸着量にも変化はなかった。また、得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.35mg/secであった。
(実施例5)
参考例1と同様のポリビニルアセタールスポンジを10×10mmの大きさに裁断した。この10.1g(裁断片160個)を、グリセリン(和光純薬(株)製試薬特級)10部と水10部との混合液に30分浸漬した後、よく絞り60℃で乾燥した。重量の増加から、グリセリンの含有量は12.8重量%であった。このグリセリンを含むポリビニルアセタールスポンジ11.6gと参考例1と同様のヨウ素5.3gを参考例1と同様のバイアル瓶にいれて混合し、60℃のオーブン中で時々容器を振盪しながら5時間加熱し、次いで80℃に昇温して2時間加熱した。この時外観上固体ヨウ素は消失していた。反応後のポリビニルアセタールスポンジの重量測定からヨウ素吸着量は50重量%であることが判った。また、得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.35mg/secであった。
(実施例6)
実施例5で得られたヨウ素50重量%を吸着させたスポンジを、さらに80℃で24時間継続して加熱した。このスポンジの重量変化はなく、従ってヨウ素吸着量にも変化はなかった。また、得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.35mg/secであった。
実施例3〜6で得られたヨウ素を吸着させたスポンジの小片各8個を100mlのバイアル瓶に入れ、80mlの水道水を注ぎ、蓋をした。容器を把持して10秒振盪し、内容液を他の容器に移し、スポンジを残したバイアル瓶には再び水道水80mlを注いで、同様に振盪し、更に内容液を別の容器に移した。このようなサイクルを5回繰り返し、各液のヨウ素濃度を測定した結果を表3に示す。
Figure 0005448381
本発明の湿潤剤を含むスポンジ(実施例3〜6)は、加熱時間が仮に長時間に及ぶ処理をしたとしても、ヨウ素を短時間で放出することができるものである。実際上は、加熱処理は短ければ短いほどコストダウンに繋がるので、不必要に長時間加熱することはないが、温度管理が少々適当であっても、得られるヨウ素迅速放出材は、所望の機能を充分に発揮する事が出来るものであることが判る。また保存時に一時的に高温にさらされても劣化しにくいため、長期保存の場合有利となる。
(実施例7)
実施例5と同様のグリセリン12.8重量%を含有するポリビニルアセタールスポンジ11.4g(裁断片150個)と(参考例1と同様のヨウ素10.5gを参考例1と同様のバイアル瓶に入れて混合し、70℃のオーブン中で時々容器を振盪しながら10時間加熱し、次いで80℃に昇温して5時間加熱した。反応後のポリビニルアセタールスポンジの重量測定からヨウ素吸着量は、スポンジに対して100.3重量%であることが判った。また、得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.45mg/secであった。
(実施例8)
実施例5と同様のグリセリン12.8重量%を含有するポリビニルアセタールスポンジ11.4g(裁断片150個)と参考例1と同様のヨウ素15.9gを参考例1と同様のバイアル瓶に入れて混合し、80℃のオーブン中で時々容器を振盪しながら20時間加熱した。反応後のポリビニルアセタールスポンジの重量測定からヨウ素吸着量は、スポンジに対して149.6重量%であることが判った。また、得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.6mg/secであった。
(実施例9)
実施例5と同様のグリセリン12.8重量%を含有するポリビニルアセタールスポンジ11.4g(裁断片150個)と参考例1と同様のヨウ素21.2gを参考例1と同様のバイアル瓶に入れて混合し、80℃のオーブン中で時々容器を振盪しながら10時間加熱し、次いで60℃で4日加熱した。反応後のポリビニルアセタールスポンジの重量測定からヨウ素吸着量は、スポンジに対して198.9重量%であることが判った。また、得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.7mg/secであった。
実施例7で得られたヨウ素を吸着させたスポンジの場合小片4個、実施例8および9で得られたスポンジの場合は小片2個、を100mlのバイアル瓶に入れ、80mlの水道水を注ぎ、蓋をした。容器を把持して10秒振盪し、内容液を他の容器に移し、スポンジを残したバイアル瓶には再び水道水80mlを注いで、同様に振盪し、更に内容液を別の容器に移した。このようなサイクルを5回繰り返し、各液のヨウ素濃度を測定した結果を表4に示す。
Figure 0005448381
いずれのヨウ素迅速放出材からも、消毒に充分な濃度のヨウ素が極めて短時間に放出されることが判る。
(実施例10)
参考例1と同様のグリセリン12.8重量%を含有するポリビニルアセタールスポンジ11.5gとヨウ素30.8gを同様のバイアル瓶に入れて混合、参考例1と同様の装置を用いて60℃で時々振盪しながら35時間加熱した。この時目視により固体ヨウ素は消失していた。反応後のポリビニルアセタールスポンジの重量測定からヨウ素吸着量は306重量%(対ポリビニルアセタール)であることが判った。ヨウ素を吸着させたスポンジは手で触れても指が汚れるようなことはなく、取り扱い易い状態であった。また、得られたヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度は0.82mg/secであった。
(参考例6)
参考例1と同様のポリビニルアセタールスポンジ10.2g(裁断片160個)とヨウ素15.3gを容量400mlのバイアル瓶に入れて混合し、密栓し(ここで固形物:空気の体積比は43:57であった)た。これを60℃のオーブンに入れ時々振蕩しながら25時間加熱した。外観上ヨウ素は完全に消失した。重量増加から計算したヨウ素吸着量は147重量%(対ポリビニルアセタール)であった。次にグリセリン70重量%水溶液(グリセリンは実施例5と同様)を調製しビーカーに入れた。前記ヨウ素を吸着した裁断片のうち一部をピンセットでつまんでグリセリン水溶液に浸漬し、不織布で過剰のグリセリン液を拭いとった(工程(c’))。重量増加から計算したグリセリン付着量は15.8重量%(対ヨウ素吸着後の裁断片)であった。20mlのガラス製バイアル瓶にグリセリンを含浸しない未処理の裁断片(比較例5)とグリセリンを含浸した裁断片((参考例6))各5個を入れて密封したものをそれぞれ2個準備し、各1個は40℃のオーブンに入れ、各1個は室温で保存した。8ヶ月後ヨウ素放出速度を測定した。結果を表5に示した。
Figure 0005448381
表5の結果から、グリセリンを含浸させないものについては、40℃で8ヶ月保存すると、室温保存に比較してヨウ素放出速度が大幅に低下した。
(実施例11)
実施例5と同様の、グリセリン12.8重量%を含有するポリビニルアセタールスポンジ10.3g(裁断片145個)とヨウ素15.5gを400mlのバイアル瓶に入れて密栓し混合した。これを60℃のオーブンに入れ時々振蕩しながら25時間加熱した。外観上ヨウ素は完全に消失した。重量増加から計算したヨウ素吸着量は162.5重量%(対ポリビニルアセタール)であった。次にグリセリン50重量%水溶液を調製しシャーレに入れた。前記ヨウ素を吸着した裁断片のうち一部をピンセットでつまんでグリセリンを付着させ、次いで空のシャーレの底にこすりつけてグリセリンをスポンジの内部に浸透させ、不織布で過剰のグリセリン液を拭いとった(工程(d))。重量増加から計算したグリセリン付着量は12.6重量%(対ヨウ素吸着後の裁断片)であった。20mlのバイアル瓶に工程(d)を施した裁断片と、ヨウ素吸着処理までで終了した裁断片各5個を入れて密封したものをそれぞれ2個準備し、各1個は40℃のオーブンに入れ、各1個は室温で保存した。8ヶ月後ヨウ素放出速度を測定した。結果を表6に示した。
Figure 0005448381
表6の結果から、工程(d)を施したものは、それを施していないものに比較して元々のヨウ素放出速度が速いこと、高温での長期保管に対して安定性が高いことが示された。なお、グリセリンが全く含浸されていない比較例5に比べれば、ヨウ素吸着反応前にグリセリンを含浸させておいたものの方が遙かにヨウ素放出速度の低下が少ないことも判る。
実施例11と同様にして調製した裁断片を用いて、バイアル瓶に裁断片各5個を入れて密封したものを(工程(d)の有り・無しで)それぞれ2個準備し、各1個は60℃のオーブンに入れ、各1個は室温で保存した。2ヶ月後ヨウ素放出速度を測定し、その結果を表7に示した。
Figure 0005448381
表7の結果より、工程(d)を施したものは、それを施していないものに比較して、高温での長期保管に対して、より安定性が高いことが示された。従って、ヨウ素迅速放出材としてはヨウ素吸着後に湿潤剤を含浸させることによって、高温保存であっても機能を維持する効果が高いことが判る。
本発明の製造方法により、ヨウ素を安定に固定するとともに、水と接触させた場合に高濃度のヨウ素水が短時間で得ることが出来るので、緊急時、災害時などにその機能を充分に発揮するだけでなく、介護施設や家庭用としても常備するのに好適であるヨウ素迅速放出材を提供することができる。

Claims (4)

  1. (a)アセタール化度55〜80モル%のポリビニルアセタール系多孔質体に、該多孔質体に対して1〜50重量%のグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の湿潤剤を含浸させる工程、(b)前記多孔質体に対して10〜400重量%の固体ヨウ素を、前記含浸後の多孔質体とともに容器内に密閉する工程、(c)容器内を30〜100℃で加熱してヨウ素を吸着させる工程、とを有することを特徴とするヨウ素迅速放出材の製造方法。
  2. (d)前記工程(c)の後、ヨウ素吸着後の多孔質体に対して1〜100重量%のグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の湿潤剤をさらに含浸させる工程、を有することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 前記工程(b)において、固形物の体積(多孔質体及び固体ヨウ素の総体積):空気層の体積比が10:90〜65:35で容器内に密閉することを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法により得られるヨウ素迅速放出材のヨウ素放出速度が、0.07〜3mg/secであることを特徴とするヨウ素迅速放出材。
    (ヨウ素放出速度:ヨウ素迅速放出材0.5gを、100mlバイアル瓶(内径約35mm、高さ約120mm)に入れ、室温下で水100mlを加えて密栓し、10秒間静置した後、直ちに該ヨウ素迅速放出材を取り出し、接触開始から10秒以内に放出されたヨウ素濃度を測定して求めた値と定義する。)
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