以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る固体撮像装置1の概略構成図である。本実施形態に係る固体撮像装置1は、受光部10、信号読出部20、行選択部30、列選択部40、溢れ出し防止部50および制御部60を備える。また、X線フラットパネルとして用いられる場合、固体撮像装置1の受光面10の上にシンチレータパネルが重ねられる。
受光部10は、M×N個の画素部P1,1〜PM,NがM行N列に2次元配列されたものである。画素部Pm,nは第m行第n列に位置する。ここで、M,Nそれぞれは2以上の整数であり、mは1以上M以下の各整数であり、nは1以上N以下の各整数である。各画素部Pm,nは、PPS方式のものであって、共通の構成を有している。
第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれは、第m行選択用配線LV,mにより行選択部30および溢れ出し防止部50と接続されている。第n列のM個の画素部P1,n〜PM,nそれぞれの出力端は、第n列読出用配線LO,nにより、信号読出部20に含まれる積分回路Snと接続されている。
信号読出部20は、N個の積分回路S1〜SNおよびN個の保持回路H1〜HNを含む。各積分回路Snは共通の構成を有している。また、各保持回路Hnは共通の構成を有している。
各積分回路Snは、読出用配線LO,nと接続された入力端を有し、この入力端に入力された電荷を蓄積して、その蓄積電荷量に応じた電圧値を出力端から保持回路Hnへ出力する。N個の積分回路S1〜SNそれぞれは、放電用配線LRにより制御部60と接続されている。
各保持回路Hnは、積分回路Snの出力端と接続された入力端を有し、この入力端に入力される電圧値を保持し、その保持した電圧値を出力端から出力用配線Loutへ出力する。N個の保持回路H1〜HNそれぞれは、保持用配線LHにより制御部60と接続されている。また、各保持回路Hnは、第n列選択用配線LH,nにより制御部60と接続されている。
行選択部30は、行選択用配線LV,1〜LV,Mそれぞれの一端と接続されている。図面上では、行選択部30は、受光部10の左方に設けられている。行選択部30は、受光部10における各画素部Pm,nに含まれる読出用スイッチの開閉動作を制御する行選択制御信号Vsel(m)を行毎に順次に行選択用配線LV,mへ出力して、その行選択用配線LV,mにより接続された画素部において読出用スイッチを閉じることにより、該画素部に含まれるフォトダイオードで発生した電荷を読出用配線LO,nへ出力させる。M個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)は順次に有意値とされる。行選択部30は、M個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)を順次に有意値として出力するためにシフトレジスタを含む。
列選択部40は、第n列選択制御信号Hsel(n)を第n列選択用配線LH,nへ出力して、この第n列選択制御信号Hsel(n)を保持回路Hnに与える。N個の列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)も順次に有意値とされる。列選択部40は、N個の列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)を順次に有意値として出力するためにシフトレジスタを含む。
溢れ出し防止部50は、行選択用配線LV,1〜LV,Mそれぞれの他端と接続されている。図面上では、溢れ出し防止部50は、受光部10の右方に設けられている。溢れ出し防止部50は、受光部10における各画素部Pm,nに含まれる読出用スイッチの開閉動作を制御する溢れ出し防止信号を何れかの行選択用配線LV,mへ出力して、その行選択用配線LV,mにより接続された画素部において読出用スイッチを閉じることにより、該画素部に含まれるフォトダイオードで発生した電荷が該画素部の外へ溢れ出すことを防止する。
制御部60は、固体撮像装置1の全体の動作を制御するものである。制御部60は、行選択部30、列選択部40および溢れ出し防止部50それぞれに対し、これらの動作を制御する制御信号を与える。制御部60は、放電制御信号Resetを放電用配線LRへ出力して、この放電制御信号ResetをN個の積分回路S1〜SNそれぞれに与える。また、制御部60は、保持制御信号Holdを保持用配線LHへ出力して、この保持制御信号HoldをN個の保持回路H1〜HNそれぞれに与える。
制御部60は、以上のように、行選択部30または溢れ出し防止部50を介して受光部10における第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSW1の開閉動作を制御するとともに、列選択部40を介して又は直接に信号読出部20における電圧値の保持動作および出力動作を制御する。これにより、制御部60は、受光部10におけるM×N個の画素部P1,1〜PM,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値をフレームデータとして信号読出部20から繰り返し出力させる。
図2は、本実施形態に係る固体撮像装置1に含まれる画素部Pm,n,積分回路Snおよび保持回路Hnそれぞれの回路図である。ここでは、M×N個の画素部P1,1〜PM,Nを代表して画素部Pm,nの回路図を示し、N個の積分回路S1〜SNを代表して積分回路Snの回路図を示し、また、N個の保持回路H1〜HNを代表して保持回路Hnの回路図を示す。すなわち、第m行第n列の画素部Pm,nおよび第n列読出用配線LO,nに関連する回路部分を示す。
画素部Pm,nは、フォトダイオードPDおよび読出用スイッチSW1を含む。フォトダイオードPDのアノード端子は接地され、フォトダイオードPDのカソード端子は読出用スイッチSW1を介して第n列読出用配線LO,nと接続されている。フォトダイオードPDは、入射光強度に応じた量の電荷を発生し、その発生した電荷を接合容量部に蓄積する。読出用スイッチSW1は、行選択部30から第m行選択用配線LV,mを通った第m行選択制御信号が与えられる。第m行選択制御信号は、受光部10における第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSW1の開閉動作を指示するものである。
この画素部Pm,nでは、第m行選択制御信号Vsel(m)がローレベルであるときに、読出用スイッチSW1が開いて、フォトダイオードPDで発生した電荷は、第n列読出用配線LO,nへ出力されることなく、接合容量部に蓄積される。一方、第m行選択制御信号Vsel(m)がハイレベルであるときに、読出用スイッチSW1が閉じて、それまでフォトダイオードPDで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷は、読出用スイッチSW1を経て、第n列読出用配線LO,nへ出力される。
第n列読出用配線LO,nは、受光部10における第n列のM個の画素部P1,n〜PM,nそれぞれに含まれる読出用スイッチSW1と接続されている。第n列読出用配線LO,nは、M個の画素部P1,n〜PM,nのうちの何れかの画素部に含まれるフォトダイオードPDで発生した電荷を、該画素部に含まれる読出用スイッチSW1を介して読み出して、積分回路Snへ転送する。
積分回路Snは、アンプA2,積分用容量素子C2および放電用スイッチSW2を含む。積分用容量素子C2および放電用スイッチSW2は、互いに並列的に接続されて、アンプA2の入力端子と出力端子との間に設けられている。アンプA2の入力端子は、第n列読出用配線LO,nと接続されている。放電用スイッチSW2は、制御部60から放電用配線LRを経た放電制御信号Resetが与えられる。放電制御信号Resetは、N個の積分回路S1〜SNそれぞれに含まれる放電用スイッチSW2の開閉動作を指示するものである。
この積分回路Snでは、放電制御信号Resetがハイレベルであるときに、放電用スイッチSW2が閉じて、積分用容量素子C2が放電され、積分回路Snから出力される電圧値が初期化される。放電制御信号Resetがローレベルであるときに、放電用スイッチSW2が開いて、入力端に入力された電荷が積分用容量素子C2に蓄積され、その蓄積電荷量に応じた電圧値が積分回路Snから出力される。
保持回路Hnは、入力用スイッチSW31,出力用スイッチSW32および保持用容量素子C3を含む。保持用容量素子C3の一端は接地されている。保持用容量素子C3の他端は、入力用スイッチSW31を介して積分回路Snの出力端と接続され、出力用スイッチSW32を介して電圧出力用配線Loutと接続されている。入力用スイッチSW31は、制御部60から保持用配線LHを通った保持制御信号Holdが与えられる。保持制御信号Holdは、N個の保持回路H1〜HNそれぞれに含まれる入力用スイッチSW31の開閉動作を指示するものである。出力用スイッチSW32は、列選択部40から第n列選択用配線LH,nを通った第n列選択制御信号Hsel(n)が与えられる。第n列選択制御信号Hsel(n)は、保持回路Hnに含まれる出力用スイッチSW32の開閉動作を指示するものである。
この保持回路Hnでは、保持制御信号Holdがハイレベルからローレベルに転じると、入力用スイッチSW31が閉状態から開状態に転じて、そのときに入力端に入力されている電圧値が保持用容量素子C3に保持される。また、第n列選択制御信号Hsel(n)がハイレベルであるときに、出力用スイッチSW32が閉じて、保持用容量素子C3に保持されている電圧値が電圧出力用配線Loutへ出力される。
制御部60は、受光部10における第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれの受光強度に応じた電圧値を出力するに際して、放電制御信号Resetにより、N個の積分回路S1〜SNそれぞれに含まれる放電用スイッチSW2を一旦閉じた後に開くよう指示した後、行選択部30から出力される第m行選択制御信号Vsel(m)により、受光部10における第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSW1を所定期間に亘り閉じるよう指示する。制御部60は、その所定期間に、保持制御信号Holdにより、N個の保持回路H1〜HNそれぞれに含まれる入力用スイッチSW31を閉状態から開状態に転じるよう指示する。そして、制御部60は、その所定期間の後に、列選択部40から出力される列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)により、N個の保持回路H1〜HNそれぞれに含まれる出力用スイッチSW32を順次に一定期間だけ閉じるよう指示する。制御部60は、以上のような制御を各行について順次に行う。
次に、本実施形態に係る固体撮像装置1の動作について説明する。本実施形態に係る固体撮像装置1では、制御部60による制御の下で、M個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M),N個の列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N),放電制御信号Resetおよび保持制御信号Holdそれぞれが所定のタイミングでレベル変化することにより、受光面10に入射された光の像を撮像してフレームデータを得ることができる。
図3は、本実施形態に係る固体撮像装置1の動作を説明するタイミングチャートである。この図には、上から順に、(a) N個の積分回路S1〜SNそれぞれに含まれる放電用スイッチSW2の開閉動作を指示する放電制御信号Reset、(b) 受光部10における第1行のN個の画素部P1,1〜P1,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSW1の開閉動作を指示する第1行選択制御信号Vsel(1)、(c) 受光部10における第2行のN個の画素部P2,1〜P2,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSW1の開閉動作を指示する第2行選択制御信号Vsel(2)、および、(d) N個の保持回路H1〜HNそれぞれに含まれる入力用スイッチSW31の開閉動作を指示する保持制御信号Hold が示されている。
また、この図には、更に続いて順に、(e) 保持回路H1に含まれる出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第1列選択制御信号Hsel(1)、(f) 保持回路H2に含まれる出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第2列選択制御信号Hsel(2)、(g) 保持回路H3に含まれる出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第3列選択制御信号Hsel(3)、(h) 保持回路Hnに含まれる出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第n列選択制御信号Hsel(n)、および、(i) 保持回路HNに含まれる出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第N列選択制御信号Hsel(N) が示されている。
第1行のN個の画素部P1,1〜P1,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードPDで発生し接合容量部に蓄積された電荷の読出しは、以下のようにして行われる。時刻t10前には、M個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M),N個の列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N),放電制御信号Resetおよび保持制御信号Holdそれぞれは、ローレベルとされている。
時刻t10から時刻t11までの期間、制御部60から放電用配線LRに出力される放電制御信号Resetがハイレベルとなり、これにより、N個の積分回路S1〜SNそれぞれにおいて、放電用スイッチSW2が閉じて、積分用容量素子C2が放電される。また、時刻t11より後の時刻t12から時刻t15までの期間、行選択部30から第1行選択用配線LV,1に出力される第1行選択制御信号Vsel(1)がハイレベルとなり、これにより、受光部10における第1行のN個の画素部P1,1〜P1,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSW1が閉じる。
この期間(t12〜t15)内において、時刻t13から時刻t14までの期間、制御部60から保持用配線LHへ出力される保持制御信号Holdがハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H1〜HNそれぞれにおいて入力用スイッチSW31が閉じる。
期間(t12〜t15)内では、第1行の各画素部P1,nに含まれる読出用スイッチSW1が閉じており、各積分回路Snの放電用スイッチSW2が開いているので、それまでに各画素部P1,nのフォトダイオードPDで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷は、その画素部P1,nの読出用スイッチSW1および第n列読出用配線LO,nを通って、積分回路Snの積分用容量素子C2に転送されて蓄積される。そして、各積分回路Snの積分用容量素子C2に蓄積されている電荷の量に応じた電圧値が積分回路Snの出力端から出力される。
その期間(t12〜t15)内の時刻t14に、保持制御信号Holdがハイレベルからローレベルに転じることにより、N個の保持回路H1〜HNそれぞれにおいて、入力用スイッチSW31が閉状態から開状態に転じ、そのときに積分回路Snの出力端から出力されて保持回路Hnの入力端に入力されている電圧値が保持用容量素子C3に保持される。
そして、期間(t12〜t15)の後に、列選択部40から列選択用配線LH,1〜LH,Nに出力される列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)が順次に一定期間だけハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H1〜HNそれぞれに含まれる出力用スイッチSW32が順次に一定期間だけ閉じて、各保持回路Hnの保持用容量素子C3に保持されている電圧値は出力用スイッチSW32を経て電圧出力用配線Loutへ順次に出力される。この電圧出力用配線Loutへ出力される電圧値Voutは、第1行のN個の画素部P1,1〜P1,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードPDにおける受光強度を表すものである。
続いて、第2行のN個の画素部P2,1〜P2,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードPDで発生し接合容量部に蓄積された電荷の読出しが以下のようにして行われる。
時刻t20から時刻t21までの期間、制御部60から放電用配線LRに出力される放電制御信号Resetがハイレベルとなり、これにより、N個の積分回路S1〜SNそれぞれにおいて、放電用スイッチSW2が閉じて、積分用容量素子C2が放電される。また、時刻t21より後の時刻t22から時刻t25までの期間、行選択部30から第2行選択用配線LV,2に出力される第2行選択制御信号Vsel(2)がハイレベルとなり、これにより、受光部10における第2行のN個の画素部P2,1〜P2,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSW1が閉じる。
この期間(t22〜t25)内において、時刻t23から時刻t24までの期間、制御部60から保持用配線LHへ出力される保持制御信号Holdがハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H1〜HNそれぞれにおいて入力用スイッチSW31が閉じる。
そして、期間(t22〜t25)の後に、列選択部40から列選択用配線LH,1〜LH,Nに出力される列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)が順次に一定期間だけハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H1〜HNそれぞれに含まれる出力用スイッチSW32が順次に一定期間だけ閉じる。
以上のようにして、第2行のN個の画素部P2,1〜P2,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードPDにおける受光強度を表す電圧値Voutが電圧出力用配線Loutへ出力される。
以上のような第1行および第2行についての動作に続いて、以降、第3行から第M行まで同様の動作が行われて、1回の撮像に得られる画像を表すフレームデータが得られる。また、第M行について動作が終了すると、再び第1行から同様の動作が行われて、次の画像を表すフレームデータが得られる。このように、一定周期で同様の動作を繰り返すことで、受光部10が受光した光の像の2次元強度分布を表す電圧値Voutが電圧出力用配線Loutへ出力されて、繰り返してフレームデータが得られる。
ところで、第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSW1が閉じている期間において、第m行の各画素部Pm,nのフォトダイオードPDで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷は、その画素部Pm,nの読出用スイッチSW1および第n列読出用配線LO,nを経て、積分回路Snの積分用容量素子C2に転送される。この際に、第m行の各画素部Pm,nのフォトダイオードPDの接合容量部の蓄積電荷が初期化される。
しかし、或る第m行選択用配線LV,mが途中の位置で断線している場合には、その第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nのうち行選択部30に対し断線位置より遠いところにある画素部は、行選択部30から第m行選択制御信号Vsel(m)が伝えられず、読出用スイッチSW1が開いたままであり、積分回路Snへ電荷を転送することができないので、この電荷転送に因るフォトダイオードPDの接合容量部の蓄積電荷の初期化をすることができない。このままでは、これらの画素部において光入射に応じてフォトダイオードで発生した電荷は、該フォトダイオードの接合容量部に蓄積されていく一方であり、飽和レベルを越えると両隣の行の画素部へ溢れ出して、連続した3行の画素部について欠陥ラインを生じさせることになる。
本実施形態に係る固体撮像装置1は、このような問題に対処すべく溢れ出し防止部50を備えている。行選択部30は行選択用配線LV,1〜LV,Mそれぞれの一端と接続されているのに対して、溢れ出し防止部50は行選択用配線LV,1〜LV,Mそれぞれの他端と接続されている。すなわち、第m行選択用配線LV,mは、行選択部30と溢れ出し防止部50との間に延在していて、受光部10における第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれる読出用スイッチSW1と接続され、これら読出用スイッチSW1の開閉動作を制御する信号をこれら読出用スイッチSW1へ伝える。読出用スイッチSW1の開閉動作を制御する信号は、行選択部30からは行選択制御信号Vsel(m)として与えられ、溢れ出し防止部50からは溢れ出し防止信号として与えられる。
溢れ出し防止部50から出力される溢れ出し防止信号は、第m行選択用配線LV,mへ出力されて画素部Pm,nの読出用スイッチSW1の開閉動作を制御する点で、行選択部30から出力される行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)と同じである。
しかし、行選択部30から出力される行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)は、受光部10における各画素部Pm,nから電荷を読み出すための信号である。これに対して、溢れ出し防止部50から出力される溢れ出し防止信号は、受光部10において行選択用配線LV,1〜LV,Mのうち何れかの行選択用配線が断線しているときに、その断線している行選択用配線に接続される画素部のうち行選択部30に対し断線位置より遠いところにある画素部において読出用スイッチSW1を閉じることにより、該画素部に含まれるフォトダイオードPDで発生した電荷が該画素部の外へ溢れ出すことを防止するための信号である。
したがって、行選択部30から出力される行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)は、行毎に順次に一定周期で出力される。これに対して、溢れ出し防止部50から出力される溢れ出し防止信号は、その断線している行選択用配線へ選択的に出力され、或いは、その断線している行選択用配線およびこれに隣接する行選択用配線それぞれへ出力される。溢れ出し防止部50から出力される溢れ出し防止信号は、断線していない行選択用配線へは必ずしも出力される必要はない。
溢れ出し防止部50から出力される溢れ出し防止信号は、行選択部30から行選択用配線への行選択制御信号の出力と異なるタイミングで出力されてもよい。例えば、行選択部30から行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)が一通り出力されて1フレーム分の電圧値Voutが信号読出部20から出力された後であって、次の1フレーム分の電圧値Voutが信号読出部20から出力される前であるのが好ましい。この場合、複数本の行選択用配線が断線している場合には、これら複数本の行選択用配線に対して同時に溢れ出し防止部50から溢れ出し防止信号が出力されるのが好ましい。
また、溢れ出し防止部50から出力される溢れ出し防止信号は、行選択部30から行選択用配線への行選択制御信号の出力と同一タイミングで出力されてもよい。すなわち、断線している第m行選択用配線LV,mに対して、行選択部30から行選択制御信号Vsel(m)が出力されるタイミングと同じタイミングで、溢れ出し防止部50から溢れ出し防止信号が出力される。この場合には、断線している第m行選択用配線LV,mに接続されているN個の画素部Pm,1〜Pm,Nのうち、行選択部30に対し断線位置より近いところにある画素部に対しては行選択部30から行選択制御信号Vsel(m)が与えられ、これと同一タイミングで、行選択部30に対し断線位置より遠いところにある画素部に対しては溢れ出し防止部50から溢れ出し防止信号が与えられる。
したがって、断線している第m行選択用配線LV,mに接続されているN個の画素部Pm,1〜Pm,Nの全てにおいて同一タイミングで読出用スイッチSW1が閉じるので、それまでに各画素部Pm,nのフォトダイオードPDで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷は、その画素部Pm,nの読出用スイッチSW1および第n列読出用配線LO,nを通って、信号読出部20へ転送される。そして、第m行のN個の画素部Pm,1〜Pm,Nそれぞれに含まれるフォトダイオードPDにおける受光強度を表す電圧値Voutが、信号読出部20から電圧出力用配線Loutへ出力される。
このように、本実施形態に係る固体撮像装置1では、何れかの行選択用配線が断線している場合であっても、その断線している行選択用配線に対して行選択部30と反対側に設けられている溢れ出し防止部50から、断線に因り行選択部30と接続されていない画素部に対して溢れ出し防止信号が与えられる。これにより、断線に因り行選択部30と接続されていない画素部においても、溢れ出し防止部50から与えられる溢れ出し防止信号により読出用スイッチSW1が閉じて、光入射に応じてフォトダイオードで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷は、飽和レベルに達する前に放電されて、隣の画素部へ溢れ出すことがない。したがって、この固体撮像装置1では、従来のような補正処理を行う必要がなく、解像度が高い画像を得ることができる。
特に、行選択部30から行選択用配線へ行選択制御信号を出力するタイミングと同一のタイミングで溢れ出し防止部50から該行選択用配線へ溢れ出し防止信号を出力する場合には、その溢れ出し防止信号が到達する画素部からも電荷を読み出すことができる。その行選択用配線における断線が1箇所のみであれば、断線が無い場合と同様にして、受光部10が受光した光の像の2次元強度分布を表す電圧値Voutが信号読出部20から電圧出力用配線Loutへ出力される。
次に、本実施形態に係る固体撮像装置1に含まれる行選択部30および溢れ出し防止部50それぞれの構成例について説明する。
図4は、行選択部30および溢れ出し防止部50の第1構成例を示す図である。この図に示される第1構成例では、図1における行選択部30としての行選択部30Aは、P個のシフトレジスタ311〜31Pを含む。また、図1における溢れ出し防止部50としての溢れ出し防止部50Aは、P個のシフトレジスタ511〜51Pを含む。各シフトレジスタ31pおよび各シフトレジスタ51pは、共通の構成を有していて、図5に示されるようにQビットのシフトレジスタである。ここで、P,Qは2以上の整数であり、pは1以上P以下の整数であり、また、以下に登場するqは1以上Q以下の整数である。PとQとの積は行数Mに等しい。
図5は、シフトレジスタ31pの構成を示す図である。シフトレジスタ31pは、Q個のフリップフロップ321〜32Qが直列的に接続されて構成されている。シフトレジスタ31pに含まれるフリップフロップ32qの出力端子は、第m行選択用配線LV,(p-1)Q+qに接続されている。シフトレジスタ31pに含まれる初段のフリップフロップ321の入力端子は、制御部60からスタート信号Start(p)が入力される。シフトレジスタ31pに含まれる最終段のフリップフロップ32Qの出力端子は、エンド信号End(p)を制御部60へ出力する。
シフトレジスタ31pでは、制御部60からスタート信号Start(p)のパルスが初段のフリップフロップ321の入力端子に入力されると、Q個のフリップフロップ321〜32Qそれぞれに入力されるクロック信号に同期して、Q個のフリップフロップ321〜32Qそれぞれの出力端子から順次にパルスが行選択制御信号として出力される。そして、最終段のフリップフロップ32Qの出力端子から出力されるパルスは、エンド信号End(p)として制御部60へも出力される。
行選択部30Aでは、P個のシフトレジスタ311〜31Pに対して順次にスタート信号Start(p)のパルスが入力されて、行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)が順次に一定周期で行選択用配線へ出力される。
溢れ出し防止部50Aでは、P個のシフトレジスタ511〜51Pに対して順次にスタート信号Start(p)のパルスが入力されて、各々の行選択用配線へ溢れ出し防止信号が出力されてもよい。また、P個のシフトレジスタ511〜51Pのうち断線している行選択用配線と接続されているシフトレジスタ51pに対してのみスタート信号Start(p)のパルスが入力されてもよい。後者の場合には、消費電力が小さいので好適である。また、後者の場合には、行選択用配線の両端からの行選択制御信号および溢れ出し防止信号それぞれの入力タイミングがずれた場合に生じる行選択部30Aまたは溢れ出し防止部50Aへの突入電流の影響が小さいので、この点でも好適である。
図6は、行選択部30および溢れ出し防止部50の第2構成例を示す図である。この図に示される第2構成例では、図1における行選択部30としての行選択部30Bは、Mビットのシフトレジスタ33およびM個のデジタルバッファ341〜34Mを含む。また、図1における溢れ出し防止部50としての溢れ出し防止部50Bは、Mビットのシフトレジスタ53およびM個の3ステートバッファ541〜54Mを含む。
行選択部30Bでは、制御部60からスタート信号のパルスが入力されると、クロック信号に同期して、行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)が順次に一定周期で出力される。行選択制御信号Vsel(m)は、デジタルバッファ34mを経て第m行選択用配線LV,mへ出力される。
溢れ出し防止部50Bでは、制御部60からスタート信号のパルスが入力されると、クロック信号に同期して、溢れ出し防止信号が行毎に順次に一定周期で出力される。第m行選択用配線LV,mに対応して出力された溢れ出し防止信号は、3ステートバッファ54mに入力され、制御部60から与えられるイネーブル信号Enableがハイレベルであれば3ステートバッファ54mから第m行選択用配線LV,mへ出力される。しかし、イネーブル信号Enableがローレベルであれば、3ステートバッファ54mの出力端子はハイインピーダンス状態とされる。
したがって、この溢れ出し防止部50Bでは、断線している行選択用配線へ溢れ出し防止信号が選択的に出力され得る。また、断線していない行選択用配線に対応する3ステートバッファ54mの出力端子をハイインピーダンス状態とすることにより、行選択部30Bまたは溢れ出し防止部50Bへの突入電流の影響が小さい。
本実施形態に係る固体撮像装置1はX線CT装置において好適に用いられ得る。そこで、本実施形態に係る固体撮像装置1を備えるX線CT装置の実施形態について次に説明する。
図7は、本実施形態に係るX線CT装置100の構成図である。この図に示されるX線CT装置100では、X線源106は被写体に向けてX線を発生する。X線源106から発生したX線の照射野は、1次スリット板106bによって制御される。X線源106は、X線管が内蔵され、そのX線管の管電圧、管電流および通電時間などの条件が調整されることによって、被写体へのX線照射量が制御される。X線撮像器107は、2次元配列された複数の画素部を有するCMOSの固体撮像装置を内蔵し、被写体を通過したX線像を検出する。X線撮像器107の前方には、X線入射領域を制限する2次スリット板107aが設けられる。
旋回アーム104は、X線源106およびX線撮像器107を対向させるように保持して、これらをパノラマ断層撮影の際に被写体の周りに旋回させる。また、リニア断層撮影の際にはX線撮像器107を被写体に対して直線変位させるためのスライド機構113が設けられる。旋回アーム104は、回転テーブルを構成するアームモータ110によって駆動され、その回転角度が角度センサ112によって検出される。また、アームモータ110は、XYテーブル114の可動部に搭載され、回転中心が水平面内で任意に調整される。
X線撮像器107から出力される画像信号は、AD変換器120によって例えば10ビット(=1024レベル)のデジタルデータに変換され、CPU(中央処理装置)121にいったん取り込まれた後、フレームメモリ122に格納される。フレームメモリ122に格納された画像データから、所定の演算処理によって任意の断層面に沿った断層画像が再生される。再生された断層画像は、ビデオメモリ124に出力され、DA変換器125によってアナログ信号に変換された後、CRT(陰極線管)などの画像表示部126によって表示され、各種診断に供される。
CPU121には、信号処理に必要なワークメモリ123が接続され、さらにパネルスイッチやX線照射スイッチ等を備えた操作パネル119が接続されている。また、CPU121は、アームモータ110を駆動するモータ駆動回路111、1次スリット板106bおよび2次スリット板107aの開口範囲を制御するスリット制御回路115,116、X線源106を制御するX線制御回路118にそれぞれ接続され、さらに、X線撮像器107を駆動するためのクロック信号を出力する。
X線制御回路118は、X線撮像器107により撮像された信号に基づいて、被写体へのX線照射量を帰還制御することが可能である。
以上のように構成されるX線CT装置100において、X線撮像器107は、本実施形態に係る固体撮像装置1の受光部10,信号読出部20,行選択部30,列選択部40,溢れ出し防止部50および制御部60に相当し、受光部10の前面にシンチレータパネルが設けられている。
X線CT装置100は、本実施形態に係る固体撮像装置1を備えていることにより、欠陥ライン近傍においても解像度が高い断層画像を得ることができる。特に、X線CT装置では、短期間に多数(例えば300)のフレームデータを連続的に取得するとともに、固体撮像装置1の受光部10への入射光量がフレーム毎に変動するので、欠陥ライン上の画素部から隣接ライン上の画素部へ溢れ出す電荷の量はフレーム毎に変動する。このようなX線CT装置において、本実施形態に係る固体撮像装置1を備えることにより、フレームデータに対して有効な補正をすることができる。