以下、この発明による指示体検出装置の実施の形態を、図を参照しながら、以下の順序で説明する。
1.第1の実施の形態:基本構成例
2.第2の実施の形態:検出モードの切り替えを行わない例
3.第3の実施の形態:2つの検出モードを並行して実行する例
4.第4の実施の形態:拡散符号としてアダマール符号を用いる場合の改良構成例
5.第5の実施の形態:検出むらを除去する例
6.第6の実施の形態:増幅回路の自動利得制御
7.第7の実施の形態:大型のセンサ部の場合の例
8.第8の実施の形態:変調された拡散符号を用いる構成例
9.第9の実施の形態:拡散符号の他の供給方法
10.第10の実施の形態:受信導体の選択方法
11.第11の実施の形態:センサ部の他の構成例
[第1の実施の形態:基本構成例]
この実施の形態の指示体検出装置は、指示体の指示入力面との接触および指示体による指示入力面の押圧を検出するだけでなく、指示入力面上の空間における指示体の位置、指示体の指示入力面での接触位置および押圧位置(指示体座標位置)をも検出する。この例において、指示入力面上の空間における指示体の位置とは、指示入力面に接触せずに離隔した空間位置にある指示体の位置のことであり、この例では、指示体から指示入力面に対して垂線を下ろしたときの指示入力面の座標位置と、指示体の指示入力面からの離隔距離とから特定される。
なお、この明細書において、指示入力面とは離隔した空間位置に指示体が存在する状態をホバーリング状態と称することとする。そして、この明細書において、指示体から指示入力面に対して垂線を下ろした方向をZ軸方向とし、指示入力面における座標位置は、互いに直交するX軸方向およびY軸方向の位置により定めるものとする。
また、指示体としては、以下の説明では、ユーザの指を主として用いる場合を説明するが、前述した静電ペン等を指示体として用いることもできる。
また、以下に説明する実施の形態は、指示入力面に同時に存在する複数の指示体、例えば複数本の指をも検出することが可能な例である。
さらに、以下に説明する実施の形態は、指示入力面上における指示体の位置検出を、高速に行えるように工夫された構成を備える。
<第1の実施の形態の指示体検出装置の全体構成例:図1>
図1は、この第1の実施の形態の指示体検出装置1の全体の構成例を示すブロック図である。この実施の形態の指示体検出装置1は、検出センサの例であるセンサ部100と、送信部200と、受信部300と、送信部200及び受信部300の動作を制御する制御回路40とから構成される。以下、各部の構成について説明する。
制御回路40は、この実施の形態の指示体検出装置1の各部を制御するための回路であり、例えばマイクロコンピュータを搭載して構成されている。この制御回路40は、図1に示すように、送信部200の後述する送信信号供給回路21と、送信導体選択回路22と、クロック発生回路23とに接続されていると共に、受信部300の後述する受信導体選択回路31、増幅回路32、位置検出回路34とに接続されている。
そして、制御回路40は、後述するように、クロック発生回路23から出力されるクロック信号CLKに基づき、スタート信号ST、送信ロード信号Stload及び受信ロード信号Srloadを適宜生成及び出力して、上記各部の動作タイミングを制御する。
<センサ部100の説明>
〔センサ部100の構成例:図1−図2〕
センサ部100について、図1および図2を参照して説明する。なお、図2(A)は、図1のセンサ部100におけるX軸方向断面図であり、図2(B)は、図1のセンサ部100におけるY軸方向断面図である。
センサ部100は、送信部200に接続される複数個の第1の電極と、受信部300に接続される複数個の第2の電極とを備えると共に、後述する感圧材を備える。以下の説明では、第1の電極は、送信導体と称し、複数の第1の電極からなる一群は、送信導体群11と称する。この実施の形態では、送信導体群11は、例えば64個の送信導体11Y1〜11Y64からなる。また、この実施の形態では、第2の電極は、受信導体と称し、複数の第2の電極からなる一群は、受信導体群12と称する。受信導体群12は、例えば128個の受信導体12X1〜12X128からなる。
なお、この明細書中で送信導体の説明において、送信導体群11中の64本の送信導体11Y1〜11Y64のいずれであるかを区別する必要のないときには、送信導体11Yと称することにする。同様に、受信導体の説明において、受信導体群12中の128本の受信導体12X1〜12X128のいずれであるかを区別する必要のないときには、受信導体12Xと称することにする。
送信導体11Yは、指示入力面100Sの横方向(X軸方向)に延伸する直線状(板状)の導体である。この例では、送信導体11Yが、図2に示す下側基板16上に、図1に示すように、センサ部100の縦方向(Y軸方向)において、等間隔ずつ隔てて64本配列されることにより、送信導体群11が形成される。
また、受信導体12Xは、指示入力面100Sの縦方向(Y軸方向)に延伸する直線状(板状)の導体である。この例では、受信導体12Xが、図2に示す上側基板17の下側に、図1に示すように、センサ部100の横方向(X軸方向)において、等間隔ずつ隔てて128本配列されることにより、受信導体群12が形成される。
上側基板17の上側面が、指や静電ペンなどの指示体により指示操作入力が行われる指示入力面100Sとされている。
下側基板16と上側基板17とは、Z軸方向に所定の距離だけ隔てられている。そして、送信導体11Yと受信導体12XもZ軸方向に所定の距離だけ間隔を空けて互いに対向すると共に、送信導体11Yと受信導体12Xとは、延伸方向が互いに直交するように配置される。
上述のように構成されるので、複数本の送信導体11Yのそれぞれと、複数本の受信導体12Xのそれぞれとは、この例では、Z軸方向に所定の距離だけ間隔を空けた状態で、互いに直交する方向に交叉する。この明細書では、送信導体11Yと受信導体12Xとの交叉点をクロスポイントと称する。指示入力面100Sにおけるクロスポイントの座標位置は、指示体による指示入力の検出座標位置となる。
なお、直線状に形成された送信導体11Yと受信導体12Xとを直交するように配置した場合を例示して説明したが、送信導体11Yおよび受信導体12Xの形状は、実施の態様に応じて適宜設定される。また、送信導体11Yと受信導体12Xとは直交以外の角度、例えば、送信導体11Yと受信導体12Xとが斜めに交差する構成としても良い。また、送信導体11Y及び受信導体12Xの少なくとも一方を曲線状あるいは同心円状に形成した導体で構成してもよい。例えば複数の送信導体11Yをそれぞれ径の異なる円形状に形成し、これを同心円状に配置すると共に、複数の受信導体12Xを前記同心円の中心から放射状に延伸した直線形状の複数の導体により形成し、その複数の直線形状の導体を周方向に等角間隔で配置するようにしても良い。
また、電気特性上、受信導体12Xの幅は送信導体11Yの幅より細く形成すると良い。浮遊容量が減ることにより、受信導体12Xに混入するノイズを低減できるからである。
そして、送信導体11Yおよび受信導体12Xのそれぞれの配列間隔(ピッチ)は、例えば、ともに3.2mmとなるように形成される。なお、送信導体11Yおよび受信導体12Xの本数およびピッチはこれに限定されず、センサ部100のサイズや必要とする検出精細度等に応じて適宜設定される。
下側基板16および上側基板17は、例えば透明の合成樹脂等からなるシート状(フィルム状)の基板を用いる。上側基板17は、指示体により押圧されたときに押圧方向に弾性変位可能な材料で構成される。下側基板16は、弾性変位をする必要がないことから、ガラス基板や銅箔パターン基板で構成されていても良い。
送信導体11Yおよび受信導体12Xは、例えば、銀パターンやITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜からなる透明電極膜、あるいは銅箔等で形成される。送信導体群11および受信導体群12の電極パターンは、例えば、次のように形成することができる。まず、上述した材料等で形成された電極膜を、例えば、スパッタ法、蒸着法、塗布法等により基板16および基板17上にそれぞれ形成する。次いで、形成した電極膜をエッチングして、所定の電極パターンの送信導体群11および受信導体群12をそれぞれ形成する。なお、送信導体11Yおよび受信導体12Xを銅箔で形成する場合には、銅箔エッジングの他、例えばインクジェットプリンタを用いて、銅粒子を含むインクをガラス板等上に吹き付けて所定の電極パターンを形成することもできる。
そして、感圧材は、第1の抵抗体と第2の抵抗体とからなる構成とされている。すなわち、図2に示すように、下側基板16上の送信導体11Y上には、第1の抵抗体(以下、送信抵抗体という)13Yが積層して形成される。また、上側基板17の下側の受信導体12X上には、第2の抵抗体(以下、受信抵抗体という)14Xが積層して形成される。送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとは、指示入力面100Sに直交する方向において、僅かの空隙15の分だけ離隔されて設けられる。
この例では、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとにおいて、空隙15を介して対向している面のそれぞれには、図2に示すように、極微な凹凸が形成されている。後述するように、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとが接触した状態における送信導体11Yと受信導体12X間の抵抗値は、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xのこの凹凸が形成されている両対向面の接触面積に応じた値となる。
なお、図示は省略するが、センサ部100の周縁部の下側基板16と上側基板17との間には、空隙15を維持するようにするためのスペーサ部材が設けられている。つまり、下側基板16と上側基板17とは、このスペーサ部材を介して接合されている。
送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xは、指示体による押圧位置(X−Y座標位置)の検出感度および押圧力の検出感度を上げるために、送信導体11Yおよび受信導体12Xのそれぞれに対応して、分離した複数個からなる送信抵抗体および受信抵抗体として形成される。
すなわち、送信抵抗体13Yは、図2(B)に示すように、送信導体11Yのそれぞれを覆うと共に、隣接する送信抵抗体13Y同士が、空隙15Yにより離隔されて電気的に独立の状態となるように形成される。送信導体11Yを覆うように送信抵抗体13Yが設けられることにより、送信導体11Yと送信抵抗体13Yのそれぞれは、電気的に接続されている。
同様に、受信抵抗体14Xは、図2(A)に示すように、受信導体12Xのそれぞれを覆うと共に、隣接する受信抵抗体14Y同士は、空隙15Xにより離隔されて電気的に独立の状態となるように形成される。受信導体12Xを覆うように受信抵抗体14Xが設けられることにより、受信導体12Xと送信抵抗体14Xのそれぞれは、電気的に接続されている。
なお、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xは、図60に示したように、基板16および基板17の一面の全体に設けるようにしても良い。ただし、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xの双方を基板16および基板17の一面の全体に設けると、指示体の検出時に分解能が落ちるので、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xのいずれか一方は、上述の例のように分離された複数の抵抗体の構成とした方が良い。
送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xは、例えばITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)やATO(アンチモンドープ酸化スズ)などの透明な抵抗膜で構成される。なお、指示体検出装置1が表示画面の前面に配する必要のない用途に用いられる場合には、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xを構成する材料は、透明の抵抗膜材料に限られるものではないことは言うまでもない。
この発明の指示体検出装置は、液晶パネル等の表示装置とを一体構成することができるものであるが、その場合は、センサ部100は、液晶パネル上に重ねられて設けられるものである。
〔センサ部100における指示体検出の原理説明:図3−図10〕
この実施の形態では、送信部200からセンサ部100の送信導体11Yのそれぞれに対して後述する送信信号が供給される。この送信信号は、電圧信号として送信導体11Yに供給される。この送信信号(電圧信号)は送信導体11Yと受信導体12Xとの間の静電容量Coに供給される。当該静電容量Coには、指示体の有無に応じて変化する電流が流れ、この電流が受信導体12Xに流れる。
また、後述するように、指示体により指示入力面100Sに押圧力が印加されて、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとが接触する状態のときには、前記押圧力に応じて送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとの接触面積が変わる。そして、送信導体11Yに供給された送信信号(電圧信号)により、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとの接触面積に応じた電流が受信導体12Xに流れる。
受信導体12Xに流れる電流は、受信信号として受信部300に供給される。受信部300は、信号検出回路を構成するもので、電流信号として受信した受信信号を電圧信号に変換し、後述するようにして指示体検出結果を得るようにする。なお、以下に説明する原理説明では、簡単のため、同一の送信信号が、64本の送信導体11Y1〜11Y64に、順次に送信タイミングをずらして供給される場合を想定する。
<指示体が指示入力面から離隔した状態から接触までの検出;静電結合方式、図3−図5>
この場合に、センサ部100の上側基板17の表面である指示入力面100S上に指などの指示体が存在しないときには、送信導体11Yに供給された送信信号(電圧信号)により、受信導体12Xと送信導体11Yとのクロスポイントにおける静電容量Coに電流が流れる。その電流は受信導体12Xに流れて、受信部300に受信信号(電流信号)として供給される。これは、指示入力面100Sの全てのクロスポイントにおいて同様となるので、指示入力面100S上に指などの指示体が存在しないときには、受信導体12X1〜12X128の全てから、図4(A)に示すように、同レベル(同じ電流値)の受信信号が受信部300に供給される。
なお、図4(A)は、任意の1本の送信導体11Yと交叉する128本の受信導体12X1〜12X128についての128個のクロスポイントに流れる電流、すなわち、各受信導体12X1〜12X128から得られる受信信号を示すものである。指示入力面100S上に指などの指示体が存在しないときには、その他の全ての送信導体11Yと128本の受信導体12X1〜12X128とのクロスポイントにおいても同様に、図4(A)に示すように、受信導体12Xから受信部300に供給される受信信号は、同レベルとなる。
一方、図3に示すように、指示入力面100S上において、指示体18の例としての指が、指示入力面100Sとは離隔した近接位置に置かれたり、指示入力面100Sと接触する位置に置かれて指示入力されると、その指示入力位置においては、指示体18と受信導体12Xとの間での結合により静電容量Cfa、Cfbが生じる。すると、指示体18による指示入力位置に対応するクロスポイントにおいては、送信信号(電圧信号)により静電容量Coに流れる電流の一部が、静電容量Cfa、Cfbを通じて消失するようになる。
すなわち、センサ部100の指示入力面100S上に指示体18が存在する場合には、図3に示すように、当該指示体18による指示入力位置の送信導体11Yは、受信導体12Xだけでなく、指示体18を介してグラウンドと静電結合した状態となる。この状態では、図3において矢印で示すように、送信信号に応じて送信導体11Yに接続される送信抵抗体13Yから出た電気力線は、受信抵抗体14Xを通じて受信導体12Xに収束するのみではなく、その一部が指示体18にも収束する。そのため、送信信号に応じて受信導体12Xに流れる電流の一部が指示体18を介してグラウンドに分流する。その結果、図4(B)に示すように、指示体18による指示入力位置の受信導体12Xに流れる電流は、指示体18が存在しないときの値ref(これを基準値とする)よりも減少する。
この基準値refよりも減少する電流変化を検出することで、指示入力面100Sに対して離隔した位置から接触位置までの指示体18による指示入力面100S上での指示入力位置を検出する。そして、その減少する電流変化が生じたクロスポイントの位置を検出することにより、指示入力面100Sに対して離隔した位置から接触位置までの指示体18による指示入力位置を検出する。指示体18による指示入力位置の検出については、後で詳述する。
以上のように、指示体18が指示入力面100Sとは離隔したホバーリング状態から指示入力面100Sと接触する状態までの間に存在する場合においては、この実施の形態では、静電結合方式により、指示体検出がなされる。
この静電結合方式において受信導体12Xから得られる電流信号としての受信信号は、受信部300において、電圧信号に変換される。図5は、静電結合方式における電流−電圧変換回路(以下、I/V変換回路という)の基本構成例を示す図である。
すなわち、静電結合方式において受信導体12Xからの受信信号(電流信号)に対して設けられるI/V変換回路は、図5に示すように、演算増幅器51の入出力端間に検出用コンデンサ52が接続されて構成される。なお、実際的には、検出用コンデンサ52には並列に直流バイアス用の抵抗53が接続されるものである。
<指示体による指示入力面への押圧力の検出;抵抗膜方式、図6−図8>
上述した、指示体が指示入力面から離隔した状態から接触までの指示体入力面に押圧力が印加されていない状態においては、送信抵抗体13と受信抵抗体14とは、空隙15を隔てて離隔した状態であり、これら送信抵抗体13と受信抵抗体14とを通じて電流が流れることはない。したがって、指示体入力面100Sに指示体18による押圧力が印加されていない状態では、図7(A)に示すように、送信抵抗体13と受信抵抗体14とを通じて電流は流れず、受信導体12Xに流れる電流は一定(=基準値ref)となる。
図6に示すように、指示体18により、指示入力面100Sに対して、接触している状態からさらに、押圧力が印加されると、その押圧力が印加された上側基板17の部位が変位させられ、その部位の受信抵抗体14Xと送信抵抗体13Yの両対向面が接触する状態になる。
すると、送信導体11Yに供給された送信信号(電圧信号)により、押圧力が印加された位置の受信導体12Xに、接触した受信抵抗体14Xと送信抵抗体13Yにより形成される可変抵抗VRの抵抗値を介して電流が流れることになる。すなわち、押圧力が印加された位置においては、送信導体11Yから受信導体12Xに対して、当該押圧力が印加された部位の受信抵抗体14Xと送信抵抗体13Yとの接触部分の可変抵抗VRの抵抗値に応じた電流が流れる(図7(B)参照)。
受信抵抗体14Xと送信抵抗体13Yとの接触部分の可変抵抗VRの抵抗値は、その接触面積が大きくなるほど小さくなり、可変抵抗VRを流れる電流は、接触面積が大きくなるほど大きくなる。前述したように、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとが接触する面は、極微な凹凸が形成されており、指示体18による指示入力面100Sに対する押圧力が大きくなればなるほど前記凹凸間の空隙がなくなって、受信抵抗体14Xと送信抵抗体13Yとの接触面積は、大きくなる。
したがって、指示体18により、指示入力面100Sに対して押圧力が印加されると、その押圧力が印加された部位では、前記可変抵抗VRを通じて送信導体11Yから受信導体12Xに電流が流れ始め、その電流量は、押圧力に応じて大きくなる。つまり、押圧力が印加されていないときには送信抵抗体13と受信抵抗体14とは接触していないため、可変抵抗VRを通じた電流は流れず、受信導体12Xから得られる電流は基準値refとなっているが、押圧力が印加されて送信抵抗体13と受信抵抗体14とが接触する状態になると、前記可変抵抗VRを通じて電流が流れて、受信導体12Xから得られる電流は、基準値refよりも増加する方向に変化する。
この基準値refよりも増加する方向の電流変化を検出することで、指示体18によって指示入力面100Sに印加された押圧力を検出する。そして、基準値refよりも増加する方向の電流変化が生じたクロスポイントの位置を検出することにより、指示入力面100Sに対して指示体18により押圧力が印加された指示入力位置を検出する。
以上のように、指示体18による指示入力面100Sへの押圧力を伴う指示入力については、抵抗膜方式により、指示体の検出がなされる。
この抵抗膜方式において受信導体12Xから得られる電流も、静電結合方式の場合と同様に、受信部300において、電圧に変換される。ただし、抵抗膜方式の場合には、電流検出用の素子が、コンデンサではなく抵抗とされる点が静電結合方式の場合と異なる。
図8は、抵抗膜方式におけるI/V変換回路の基本構成例を示す図である。抵抗膜方式において受信導体12Xから受信部300に供給される受信信号(電流信号)に対して設けられるI/V変換回路は、図8に示すように、演算増幅器51の入出力端間に検出用抵抗54が接続されて構成される。
以上説明したように、この実施の形態では、センサ部100では、静電結合方式の指示体検出(ホバーリング検出を含む)と、抵抗膜方式の指示体検出(押圧検出を含む)が可能である。
制御回路40は、受信部300に供給される受信信号(電流信号)の変化に基づいて、受信部300で実行する指示体の検出処理を、静電結合方式あるいは抵抗膜方式のいずれの方式で実行するかを判断する。具体的には、制御回路40は、受信導体12Xから受信部300に供給される受信信号について、基準値refよりも減少する方向に電流変化が生じたときには、受信部300で静電結合方式で指示体検出をするように制御し、基準値refよりも増加する方向に電流変化が生じたときには、受信部300で抵抗膜方式で指示体の検出をするように制御する。なお、制御回路40ではなく、受信部300に、いずれの指示体検出方式で指示体の検出を実行するかの判定手段を設けて、受信部300での指示体検出方式をいずれにするかを制御するようにしても良い。
なお、この明細書の以下の説明において、静電結合方式での指示体検出モードを、キャパシティブタッチ検出モードと称し、抵抗膜方式での指示体検出モードを、レジスティブタッチ検出モードと称することとする。
<この実施の形態で用いるI/V変換回路の構成例>
この実施の形態では、I/V変換回路は、上述した静電結合方式と抵抗膜方式の両方の指示体検出方式を可能にする構成とする必要がある。静電結合方式と抵抗膜方式の両方の指示体検出方式を可能にするI/V変換回路の構成例について、以下に説明する。
〔第1の構成例:図9〕
図9に、この実施の形態で用いるI/V変換回路の第1の構成例を示す。このI/V変換回路の第1の構成例においては、静電結合方式と抵抗膜方式とをスイッチ回路55により切り替える。
すなわち、この第1の構成例においては、演算増幅器51の入出力端間には、外部からの切替制御信号SW1により端子Cと端子Rとに切り替え可能なスイッチ回路55と、静電結合方式における検出用コンデンサ52と、抵抗膜方式における検出用抵抗54とが設けられる。
そして、このスイッチ回路55の端子C側と、演算増幅器51の出力端との間には、静電結合方式における検出用コンデンサ52が接続される。なお、検出用コンデンサ52には、直流バイアス抵抗53が接続されている。また、このスイッチ回路55の端子R側と、演算増幅器51の出力端との間には、抵抗膜方式における検出用抵抗54が接続される。
この第1の構成例においては、指示体検出装置1は、キャパシティブタッチ検出モードと、レジスティブタッチ検出モードの2つの指示体検出モードを備えている。そして、切替制御信号SW1は、制御回路40または受信部300において、前述した静電結合方式あるいは抵抗膜方式のいずれの指示体検出方式で指示体検出処理を実行するかの判定手段の判定結果から生成されて、スイッチ回路55に供給される。すなわち、制御回路40または受信部300は、センサ部100から入力される電流信号に基づいて切替制御信号SW1を生成する。
そして、キャパシティブタッチ検出モードにおいては、スイッチ回路55は、この切替制御信号SW1により、端子C側に切り替えられ、演算増幅器51の入出力端間に検出用コンデンサ52を接続する。
また、レジスティブタッチ検出モードにおいては、スイッチ回路55は、切替制御信号SW1により、端子R側に切り替えられ、演算増幅器51の入出力端間に検出用抵抗54を接続する。
なお、図9の例では、スイッチ回路55は、演算増幅器51の入力端側に設けたが、演算増幅器51の出力端側に設けても勿論よい。
〔第2の構成例:図10〕
この第2の構成例は、キャパシティブタッチ検出モードと、レジスティブタッチ検出モードの2つのモードに共用できるI/V変換回路の一例である。すなわち、キャパシティブタッチ検出モードと、レジスティブタッチ検出モードとに応じた切り替えを不要とした例である。
図10に、この実施の形態で用いるI/V変換回路の第2の構成例を示す。このI/V変換回路の第2の構成例においては、演算増幅器51の入出力端間に、静電結合方式の検出用コンデンサ52と、抵抗膜方式の検出用抵抗54とを並列に接続する構成とする。
この場合、図5に示したように、検出用コンデンサ52には、直流バイアス用抵抗53が接続されている。したがって、抵抗膜方式の検出用抵抗54が検出用コンデンサ52の直流バイアス用抵抗53と等しい抵抗値であれば、第1の構成例のようなモード切り替えスイッチ回路55は不要となる。すなわち、この場合、検出用抵抗54の抵抗値Rが、検出用コンデンサ52の静電容量をCとしたとき、
R≒1/jωC
を満足する場合に、I/V変換回路は、この第2の構成例とすることができる。
この第2の構成例では、キャパシティブタッチ検出モードと、レジスティブタッチ検出モードとの切り替えは、基本的に不要になる。なお、いずれの検出モードで指示体検出を行ったかを検知して、そのモード検出結果を出力するようにする場合には、第1の構成例と同様に、制御回路40または受信部300で、いずれの検出方式で指示体検出を行うかを判定し、その判定結果を出力するようにする。
<指示体の指示入力位置(クロスポイント位置)を検出するための構成部分の説明>
この実施の形態では、静電結合方式の指示体検出の場合と、抵抗膜方式の指示体検出の場合とで、指示体の指示入力位置の検出の仕方に関しては、全く同様の検出処理動作がなされる。
送信導体11Yのそれぞれと受信導体12Xのそれぞれとの全てのクロスポイントにおいて、静電結合方式の指示体検出と抵抗膜方式の指示体検出を実行すれば、いずれのクロスポイントで指示体による指示入力がなされたかの位置検出が可能である。
この場合には、1個(1種類)送信信号を全てのクロスポイントの送信導体に順次に供給するようにすると共に、受信部300において、送信信号が送信導体に供給されたクロスポイントの受信導体からの受信信号について指示体検出を行なうことにより、指示体による指示入力位置の検出が可能である。しかし、このようにしたのでは、多数のクロスポイントの一つ一つ毎に指示体検出を実行することになるため、指示入力面100Sの全てのクロスポイントについての指示体検出の結果を得られるまでに長時間がかかり、実用上好ましくない。
一方、送信信号を送信導体11Yの本数分だけ複数個用意すると共に、受信部300において受信導体12Xのそれぞれに対してI/V変換回路を設けて、指示体検出を行うように構成することも考えられる。この場合には、全ての送信導体11Yに、受信部300で弁別可能な異なる送信信号を同時に供給すると共に、受信部300において、全ての受信導体からの受信信号を、それぞれのI/V変換回路により同時に電圧信号に変換して、指示体検出をする。受信部300では、複数のI/V変換回路からの受信信号を同時に処理することで、指示入力面100Sの全てのクロスポイントについての指示体検出結果が得られるので、非常に高速に処理結果が得られる。
しかし、そのようにした場合には、ハードウエア構成が膨大になり、コスト高となると共に、指示体検出装置が大型になってしまうという問題がある。
この実施の形態では、この問題点にかんがみ、ハードウエア規模が膨大にならないことを考慮しながら、高速に指示体検出結果が得られるように、送信部200および受信部300を構成している。
すなわち、この実施の形態では、送信導体群11の複数本の送信導体11Yは、それぞれ同数の複数本の送信導体11Yからなる複数個のグループに分割し、それぞれのグループ毎に、異なる送信信号を割り当てる。以下の説明においては、複数本の送信導体11Yからなるグループを送信ブロックと称することとする。異なる送信信号としては、後述するように、この実施の形態では、符号が異なる拡散符号が用いられる。
この実施の形態では、複数個の送信ブロックのそれぞれに含まれる複数本の送信導体11Yから選択した1本の送信導体11Yに、前記異なる送信信号を同期させて同時に供給する。そして、各送信ブロックにおいて、選択する1本の送信導体を切り替えて、切り替え後の送信導体11Yのそれぞれに、送信ブロック毎に異なる送信信号を同期させて同時に供給する動作を繰り返す。送信ブロック内の全ての送信導体11Yへの送信信号の供給が終了したら、当該送信ブロック内で最初に選択した送信導体11Yを選択する状態に戻り、以上の処理を繰り返す。
これにより、受信導体12Xのそれぞれには、複数個の送信ブロックからの異なる送信信号(電圧信号)に応じた電流が多重された状態で流れることになる。そして、後述するように、受信部300は、この受信導体12Xのそれぞれからの電流信号のそれぞれを、送信信号の送信タイミングに同期して検出することができるように構成される。
すなわち、この実施の形態では、送信信号として符号が異なる拡散符号を用いるので、受信部300では、その異なる拡散符号のそれぞれについての相関値を、同時並列的に検出するようにする。そして、その検出した相関値に基づいて、受信導体12Xを流れる電流の変化を検出することにより、指示体により指示入力面100S上のいずれのクロスポイントにおいて指示入力されたかどうかの検出出力を得るようにする。
制御回路40は、上述のような送信部200および受信部300での動作を実現するために、各送信ブロック内の複数本の送信導体11Yについての前述した切り替えタイミングに同期して、受信部300における受信導体12Xについての切り替えタイミングを制御する。
以上のように構成することにより、送信ブロックの数をN(Nは2以上の整数)とすると、全てのクロスポイントを順次にサーチする場合のN倍の速度(処理時間が1/N)で、指示体検出処理が可能となる。
〔送信部200の構成例:図11−図13〕
上述の機能を満足するために、この実施の形態の送信部200は、送信信号供給回路21と、送信導体選択回路22と、クロック発生回路23とを備えて構成される。
この実施の形態では、図11に示すように、64本の送信導体11Y1〜11Y64は、例えば4本ずつからなる16個の送信ブロックTB1〜TB16に分割される。したがって、送信信号供給回路21は、16個の異なる送信信号を発生する必要があるが、この例では、送信信号として、16個の異なる拡散符号が用いられる。
なお、異なる拡散符号としては、一つの拡散符号を1チップ分あるいは複数チップ分ずつ位相をずらしたものを用いることもできる。
特にこの例においては、送信ブロック数に合わせて、図12に示すような16行×16列のアダマール行列を考え、このアダマール行列を構成する各行(各列でも同じ)の16チップのアダマール符号を、16個の拡散符号C1〜C16として用いる。この16個のアダマール符号は、互いに直交関係を有する符号列である。
この例の送信信号供給回路21は、図11に示すように、16個の拡散符号生成回路2101,2102,・・・,2116からなる。拡散符号生成回路2101,2102,・・・,2116は、互いに直交するアダマール符号からなる拡散符号C1,C2,・・・,C16をそれぞれ発生する
拡散符号生成回路2101,2102,・・・,2116には、それぞれクロック発生回路23からクロック信号CLKが入力される。なお、クロック発生回路23から出力されたクロック信号CLKは、タイミング信号として制御回路40にも入力される。
各拡散符号生成回路2101,2102,・・・,2116は、制御回路40の制御に基づき、クロック発生回路23から供給されたクロック信号CLKに同期して1チップ毎に、拡散符号C1,C2,・・・,C16を出力する。この例では、各拡散符号生成回路2101,2102,・・・,2116は、それぞれクロック信号CLKの1周期毎に、拡散符号の1チップのデータを生成することで、クロック信号CLKの16周期分で、それぞれ16チップPN1,PN2,・・・,PN16からなる拡散符号C1,C2,・・・,C16を生成する。すなわち、この拡散符号生成回路2101,2102,・・・,2116は、クロック信号CLKの16周期分毎に、16チップPN1,PN2,・・・,PN16からなる拡散符号C1,C2,・・・,C16をそれぞれ、周期的に繰り返し、生成する。
なお、以下の説明においては、便宜上、クロック信号CLKの16周期分である16チップPN1,PN2,・・・,PN16分を、拡散符号C1,C2,・・・,C16の1周期分と称することとする。
拡散符号生成回路2101,2102,・・・,2116は、生成した拡散符号C1,C2,・・・,C16を送信導体選択回路22に供給する。
なお、この送信信号供給回路21は、ROMなどからなる不揮発性メモリに、拡散符号C1,C2,・・・,C16のデータを予め保持しておき、その不揮発性メモリの読み出しアドレスを制御することで、複数個の拡散符号C1,C2,・・・,C16を出力する構成にしてもよい。
送信導体選択回路22は、図11に示すように、16個の送信ブロックTB 1 〜TB 16 のそれぞれに対応する16個のスイッチ回路2201〜2216からなる。スイッチ回路2201〜2216のそれぞれは、1入力4出力のスイッチ回路である。これらのスイッチ回路2201〜2216のそれぞれには、対応する拡散符号生成回路2101〜2116のそれぞれからの拡散符号C1,C2,・・・,C16が入力される。そして、スイッチ回路2201〜2216のそれぞれは、対応する送信ブロックTB 1 〜TB 16 のそれぞれを構成する4本の送信導体11Yのうちの1本の送信導体を選択的に前段の拡散符号生成回路2101〜2116に接続して、拡散符号を供給する。
スイッチ回路2201は、送信ブロックTB 1 に対応するものであり、当該スイッチ回路2201に入力される拡散符号C1を供給する送信導体として、送信ブロックTB 1 の4本の送信導体11Y1,11Y2,11Y3,11Y4を1本ずつ順次に切り替える。また、スイッチ回路2202は、送信ブロックTB 2 に対応するものであり、当該スイッチ回路2202に入力される拡散符号C2を供給する送信導体として、送信ブロックTB 2 の4本の送信導体11Y5,11Y6,11Y7,11Y8を1本ずつ順次に切り替える。その他のスイッチ回路2203〜2216のそれぞれについても同様であり、それぞれに入力される拡散符号を供給する送信導体として、対応する送信ブロックTB 3 〜TB 16 のそれぞれ内の4本の送信導体を1本ずつ順次に切り替える。
これらスイッチ回路2201〜2216には、制御回路40から切替制御信号SW2が供給される。制御回路40は、クロック信号CLKからこの切替制御信号SW2を生成する。制御回路40は、拡散符号の1周期分であるクロック信号CLKの16周期分を1周期とするパルス信号として切替制御信号SW2を生成する。
スイッチ回路2201〜2216は、この切替制御信号SW2により、クロック信号CLKの16周期分毎に、拡散符号を供給する送信導体11Yを切り替えられる。すなわち、スイッチ回路2201〜2216は、切替制御信号SW2により、それぞれが選択中の送信導体11Yに16チップからなる拡散符号の1周期分を供給し終わった後、次の送信導体11Yに切り替える。
このときのスイッチ回路2201〜2216の切り替え動作例を図13に示す。この図13の例においては、スイッチ回路2201〜2216により、最初に、16本の送信導体11Y4,11Y8,・・・,11Y60,11Y64が選択される。そして、このスイッチ回路2201〜2216により選択された送信導体11Y4,11Y8,・・・,11Y60,11Y64に、拡散符号C1,C2,・・・,C15,C16のそれぞれが供給される。
この状態で、クロック信号CLKの16周期分が経過すると、拡散符号C1,C2,・・・,C15,C16のそれぞれの1周期分が、16本の送信導体11Y4,11Y8,・・・,11Y60,11Y64に供給し終わる。そして、この時点において、切替制御信号SW2により、スイッチ回路2201〜2216のそれぞれは、選択する送信導体11Yを、この例ではインデックス番号が小さくなる隣りの送信導体に切り替えられる。
そして、各送信ブロックTB 1 〜TB 16 内の最小インデックス番号の送信導体Y1,Y5,…,Y57およびY61がスイッチ回路2201〜2216により選択され、拡散符号C1〜C16の供給が行われた後は、再度、各送信ブロック内の最大インデックス番号の送信導体11Y4,11Y8,・・・,11Y60,11Y64がスイッチ回路2201〜2216により選択される。上記切り替え動作が各送信ブロック内で繰り返されることで、すべての送信導体11Yに対し拡散符号C1〜C16が供給される。
以上のようにして、送信部200においては、複数個の送信ブロックにおいて、同期して、送信導体11Yの切り替えがなされることにより、送信ブロック毎に異なる複数個の拡散符号が、複数本の送信導体11Yに同時に供給される。したがって、送信信号をセンサ部100の全送信導体に供給する時間が、1本ずつの送信導体に送信信号を供給する場合の送信ブロック数分の1にすることができるので、センサ部100の全送信導体に供給する時間を短縮することができる。
そして、全ての送信導体11Yに対して異なる送信信号を用意する場合に比べると、送信信号をセンサ部100の全送信導体に供給する時間は遅くなるが、送信信号とされる複数の拡散符号は、送信ブロック数の分の1にすることができるので、その分だけ回路規模を、比較的小規模にすることが可能である。
なお、スイッチ回路2201〜2216の切替動作の手順は上述の例に限定されない。例えば、各送信ブロック内での送信導体11Yの切り替えは、拡散符号の1周期分毎に行うようにしたが、拡散符号の複数周期分毎に行っても良い。また、拡散符号は、1チップを、送信ブロック内の送信導体数分のクロック信号CLKの周期毎に発生するようにして生成し、各送信ブロック内での送信導体11Yの切り替えは、クロック信号CLKの1周期分毎に行うようにしてもよい。
〔受信部300の構成例:図14−図22〕
受信部300は、受信導体12Xのそれぞれから得られる受信信号(電流)を増幅すると共に、前述した電流変化を検出する信号処理をすることにより、指示体の検出を行うようにする。
ここで、各受信導体12Xから得られた受信信号に対して上記の信号処理を順次に行うと、その完了までに長時間を要してしまう。そこで、各受信導体12Xに上記の信号処理を行う専用の処理回路を設けて、全ての受信信号について同時に信号処理を行うようにして高速化を実現することが考えられる。しかし、それでは回路規模やコストの問題があって現実的はない。
そこで、この実施の形態では、受信部300においては、複数本の受信導体12Xで、処理回路を共用するように構成することにより、回路規模を小規模にするようにしている。すなわち、受信導体群12の複数本の受信導体12Xを、それぞれ同数の複数本の受信導体12Xからなる複数個のグループに分割し、それぞれのグループに対して、増幅器およびI/V変換回路等を設けるようにする。以下の説明においては、複数本の受信導体12Xからなるグループを検出ブロックと称することとする。
この例では、受信導体群12を構成する複数の受信導体12X1〜12X128は、図14に示すように、8本ずつからなる16個の検出ブロックDB1〜DB16に分割される。そして、16個の検出ブロックDB1〜DB16のそれぞれに含まれる8本の受信導体12Xから、1本の受信導体12Xを順次に切り替え選択して受信部300の処理を実行する。このように構成することにより、全ての受信導体12Xからの受信信号を1本ずつ順次に処理する場合に比べて、検出ブロック数分の1の処理時間で全ての受信導体12Xについての処理が可能になり、処理速度が高速になる。
受信部300は、図1に示すように、受信導体選択回路31と、増幅回路32と、A/D(Analog to Digital)変換回路33と、位置検出回路34とを備えて構成される。位置検出回路34は、A/D変換回路33からの出力から、指示体検出出力を得る検出手段を構成するものである。この実施形態では、送信信号に互いに符号が異なる複数個の拡散符号を用いているので、位置検出回路34は、この互いに符号が異なる複数個の拡散符号を検出するための演算処理回路35と、指示体検出出力を出力する出力回路36とからなる。
相関値算出回路35については、後で詳述する。出力回路36は、相関値算出回路35で検出された相関値出力に基づいて、指示体の指示入力位置およびホバーリング状態あるいは押圧力に応じた出力を得、指示体検出装置1の出力信号として送出する。
〔受信導体選択回路31の構成例:図14、図15〕
この実施の形態では、前述したように、受信導体群12を構成する複数の受信導体12X1〜12X128は、8本ずつからなる16個の検出ブロックDB1〜DB16に分割される。
そして、受信導体選択回路31は、図14に示すように、16個の検出ブロックDB1〜DB16に対応する16個のスイッチ回路3101〜3116を備えて構成される。スイッチ回路3101〜3116のそれぞれは、8入力1出力のスイッチ回路である。これらのスイッチ回路3101〜3116のそれぞれには、対応する検出ブロックDB 1 〜DB 16 のそれぞれの8本の受信導体12Xからの受信信号が入力される。そして、スイッチ回路3101〜3116のそれぞれは、対応する検出ブロックDB 1 〜DB 16 のそれぞれの8本の受信導体12Xのうちの1本を選択して、後段の増幅回路32のI/V変換回路3201〜3216に接続して、受信信号を供給する。
具体的には、スイッチ回路3101は、検出ブロックDB 1 に対応するものであり、当該検出ブロックDB 1 の8本の受信導体12X1,12X2,・・・,12X8を1本ずつ順次に切り替える。また、スイッチ回路3102は、検出ブロックDB 2 に対応するものであり、当該検出ブロックDB 2 の8本の受信導体12X9,12X10,・・・,12X16を1本ずつ順次に切り替える。その他のスイッチ回路3103〜3116のそれぞれについても同様であり、対応する検出ブロックDB 3 〜DB 16 のそれぞれ内の8本の受信導体を1本ずつ順次に切り替える。
これらスイッチ回路3101〜3116には、制御回路40から切替制御信号SW3が供給される。制御回路40は、クロック信号CLKからこの切替制御信号SW3を生成する。制御回路40は、クロック信号CLKの16×4周期分(拡散符号の4周期分)を1周期とするパルス信号として切替制御信号SW3を生成する。
スイッチ回路3101〜3116は、この切替制御信号SW3により、クロック信号CLKの16×4周期分毎に、選択する受信導体12Xを切り替えられる。すなわち、スイッチ回路3101〜3116のそれぞれは、全ての送信導体11Yに16種の拡散符号が供給し終わる毎に、対応する検出ブロックDB 1 〜DB 16 の受信導体を、次の受信導体12Xに切り替える。
そして、スイッチ回路3101〜3116のそれぞれからの出力信号S1〜S16は、増幅回路32に供給される。
このときのスイッチ回路3101〜3116の切り替え動作例を図15に示す。この図15の例においては、スイッチ回路3101,3102,・・・,3116は、最初に、16本の受信導体12X1,12X9,・・・,12X121を選択して、それら受信導体12X1,12X9,・・・,12X121に得られる受信信号を、出力信号S1,S2,・・・,S16として増幅回路32に出力する。
この状態で、クロック信号CLKの16×4周期分が経過すると、拡散符号C1,C2,・・・,C15,C16のそれぞれの1周期分が、全ての送信導体11Yに供給し終わる。そして、この時点において、切替制御信号SW3により、スイッチ回路3101〜3116のそれぞれは、選択する受信導体11Xを、インデックス番号が大きくなる隣りの受信導体を選択する状態に切り替えられる。
そして、各検出ブロックDB 1 〜DB 16 内の最大インデックス番号の受信導体12X8,12X16,…,12X120および12X128がスイッチ回路2201〜2216により選択され、拡散符号C1〜C16の供給が行なわれた後は、再度、各検出ブロック内の最小インデックス番号の受信導体12X1,12X9,・・・,12X121がスイッチ回路3101〜3116により選択される。上記切り替え動作が各検出ブロック内で繰り返されることで、すべての受信導体12Xからの受信信号を得ることができる。
以上のようにして、受信導体選択回路31のスイッチ回路3101〜3116のそれぞれから得られる検出ブロックDB 1 〜DB 16 内の1本ずつの受信導体12Xからの受信信号(電流信号)が、出力信号S1,S2,・・・,S16として、増幅回路32に出力される。
なお、スイッチ回路3101〜3116において、選択されていない受信導体12Xは、任意の基準電位又はグラウンドに接続することが好ましい。このように、スイッチ回路3101〜3116において、選択されていない受信導体12Xを任意の基準電位又はグラウンドに接続することで、選択されていない受信導体12Xにノイズを退避させることができるので、ノイズ耐性を向上させることができる。また、送信信号の回り込みを低減することもできる。さらに、受信導体12Xの切り替え動作の手順は上述の例に限定されない。その変形例については後で詳述する。
〔増幅回路32の構成例:図14〕
増幅回路32は、検出ブロックDB 1 〜DB 16 のそれぞれに対応する16個のI/V変換回路3201,3202,・・・,3216からなる。
この実施形態では、I/V変換回路3201〜3216のそれぞれとして、図9に示したキャパシティブタッチ検出モードと、レジスティブタッチ検出モードとで、検出用コンデンサ52と検出用抵抗54とをスイッチ回路55により切り替える構成のものを用いる場合を例として説明する。なお、図14では、I/V変換回路3201のみについて、その内部回路を示したが、他のI/V変換回路3202〜3216のそれぞれの内部回路も、I/V変換回路3201の内部回路と全く同様であるので図示は省略する。
受信導体選択回路31からの出力信号S1,S2,・・・,S16は、それぞれ、増幅回路32の、対応する検出ブロック用のI/V変換回路3201,3202,・・・,3216のそれぞれに供給される。
各I/V変換回路3201〜3216は、受信導体選択回路31のスイッチ回路3101〜3116のそれぞれから、各検出ブロックDB 1 〜DB 16 の出力信号(電流信号)S1、S2、・・・、S16を電圧信号に変換し、増幅して出力する。このI/V変換回路3201〜3216において電圧信号に変換された出力信号S1、S2、・・・、S16は、A/D変換回路33に入力される。
この実施の形態の指示体検出装置1は、キャパシティブタッチ検出モードとレジスティブタッチ検出モードとを備え、制御回路40は、そのモード管理およびモード切り替え制御をする。
制御回路40は、後述するように、受信部300からの情報に基づいて、指示体をキャパシティブタッチ検出モードとレジスティブタッチ検出モードのいずれの検出モードで検出するかを判定し、その判定結果に応じてモード切替制御信号SW1を生成する。そして、制御回路40は、生成したモード切替制御信号SW1を、各I/V変換回路3201〜3216のスイッチ回路55に供給して、モード切り替えを行う。
〔A/D変換回路33の構成例:図16〕
A/D変換回路33は、検出ブロック数、すなわち、16個のA/D変換器3301〜3316を備える。I/V変換回路3201〜3216において電圧信号に変換された出力信号S1、S2、・・・、S16は、各A/D変換器3301,3302,・・・,3316に供給されて、クロック信号CLKのタイミングでサンプリングされる。そして、A/D変換器3301,3302,・・・,3316のそれぞれは、サンプリング値のそれぞれを、nビット(nは2以上の整数)、例えば8ビットのデジタルサンプルデータに変換して出力する。
A/D変換回路33から出力された出力信号S1、S2、・・・、S16のデジタルサンプルデータは、位置検出回路34の演算処理回路35に供給される。したがって、このデジタルサンプルデータは、それぞれセンサ部100の送信導体11Yに供給された拡散符号の各チップに応じた信号となる。ただし、出力信号S1、S2、・・・、S16のそれぞれを得る各受信導体12Xには、16種の拡散符号が同期して同時に16本の送信導体11Yに供給されることにより得られる電流が多重されて流れるので、拡散符号の各チップに対応する出力信号S1、S2、・・・、S16のデジタルサンプルデータは、16種の拡散符号の各チップの値が合成(加算)されたものとなっている。
なお、A/D変換回路33は、16個のA/D変換器3301〜3316からなる場合のみではなく、1個あるいは、16以外の複数個のA/D変換器であっても実施可能である。
〔位置検出回路34の構成例:図16〕
位置検出回路34は、A/D変換回路33から供給されたデジタルサンプルデータから、指示体検出を行う検出手段を構成するものである。この位置検出回路34は、送信信号に互いに符号が異なる複数個の拡散符号を用いているので、この互いに符号が異なる複数個の拡散符号を検出するための演算処理回路35と、指示体検出結果を出力する出力回路36とからなる。
演算処理回路35については、後で詳述する。出力回路36は、演算処理回路35の相関値算出回路3501〜3516で検出された相関値に基づいて、指示体の指示入力位置およびホバーリング状態あるいは押圧力に応じた出力を得、指示体検出装置1の出力信号として送出する。
演算処理回路35は、検出ブロック数、すなわち、16個の相関値算出回路3501,3502,・・・,3516からなり、出力信号S1、S2、・・・、S16のデジタルサンプルデータが、相関値算出回路3501,3502,・・・,3516にそれぞれ供給される。
相関値算出回路3501,3502,・・・,3516は、その詳細は後述するが、それぞれ拡散符号の1周期分に対応する出力信号S1、S2、・・・、S16のデジタルサンプルデータを保持するためのシフトレジスタを備える。そして、出力信号S1、S2、・・・、S16のデジタルサンプルデータは、クロック信号CLKに同期して、相関値算出回路3501,3502,・・・,3516のそれぞれのシフトレジスタに、拡散符号の1周期分ずつ保持される。
そして、相関値算出回路3501,3502,・・・,3516は、このシフトレジスタに保持された出力信号S1、S2、・・・、S16のデジタルサンプルデータと、相関値演算用符号とを相関演算して、両者の相関値を出力する。
そして、相関値算出回路3501,3502,・・・,3516のそれぞれで算出された相関値は、出力回路36に供給される。
この出力回路36は、記憶回路36Mと位置算出回路361とからなる。出力回路36は、相関値算出回路3501,3502,・・・,3516のそれぞれで算出された相関値を、記憶回路36Mに書き込んで一時保持する。そして、記憶回路36Mに記憶された相関値は位置算出回路361に供給される。位置算出回路361は、記憶回路36Mの相関値データから所定の出力形式の出力データを生成して出力する。出力回路36における処理および出力データについては、後述する。
<位置算出回路361の例>
位置算出回路361は、記憶回路36Mに記憶されている全ての相関値と基準値refとを比較し、この基準値refと異なる相関値が得られたクロスポイントを検出する。
すなわち、位置算出回路361は、基準値refと異なる相関値が得られたクロスポイントを検出すると、その相関値が記憶された記憶回路36Mのアドレス位置から、対応するクロスポイントの座標位置を検出する。このように、位置算出回路361は、各相関値と基準値refとを比較することで、各クロスポイントについて独立に指示体検出が可能であるので、指示入力面100Sに対して同時に複数の指示体による指示入力がなされた場合においても、その複数の指示体を同時に検出することが可能である。例えば、10本の指で、同時に指示入力面100Sにタッチする場合には、その10本の指の全ての入力指示位置を、位置算出回路361が検出することが可能である。
また、例えば指を寝かせて複数のクロスポイントに跨るように指示入力面に接触させた場合などにおいては、それらの複数のクロスポイントにおいて、指示体の検出を示す相関値が得られる。したがって、位置算出回路361は、指の指示入力状態に応じた指示体検出結果を得ることができる。
なお、基準値refと異なっている相関値が得られたクロスポイントが複数あり、これらが隣接する場合には、指示体検出出力としては、その複数のクロスポイントが占める面積も算出するようにするとよい。
また、位置算出回路361は、記憶回路361Mに記憶された相関値のうち基準値refを超える相関値があるか否かにより、この記憶回路361Mに記憶された相関値がキャパシティブタッチ検出モードによる指示体の検出結果であるか、または、レジスティブタッチ検出モードによる指示体の検出結果であるかを判定し、その判定結果を、例えばフラグとして出力する。したがって、出力されたフラグがキャパシティブタッチ検出モードを示していれば、指示体は、指示入力面100Sから離隔あるいは接触している状態であることを示している。また、出力されたフラグがレジスティブタッチ検出モードを示していれば、指示体は、指示入力面100Sを押圧している状態であることを示している。
そして、位置算出回路361は、記憶回路361Mに記憶された相関値が基準値ref以下の場合、すなわち、記憶回路361Mに記憶された相関値がキャパシティブタッチ検出モードによる指示体の検出結果であると判定したときには、この実施の形態では、ホバーリング状態の検出も行う。また、位置算出回路361は、記憶回路361Mに記憶された相関値が基準値よりも大きい場合、すなわち、記憶回路361Mに記憶された相関値がレジスティブタッチ検出モードでの指示体の検出結果であると判定したときには、指示体による押圧力の検出も行う。
〔送信導体および受信導体の切り替えタイミングの例の説明:図17〕
次に、図17を参照しながら、送信導体11Yの切り替えタイミングおよび受信導体12Xの切り替えタイミングを説明する。
前述したように、それぞれ16チップからなる16種の拡散符号C1〜C16は、クロック信号CLK(図17(B)参照)の16周期分で、同期して生成される。送信導体選択回路22のスイッチ回路2201〜2216は、制御回路40からの切替制御信号SW2(図17(C)参照)により、このクロック信号CLKの16周期毎に切り替えられる。
16個の拡散符号C1〜C16は、このスイッチ回路2201〜2216の切り替えにより、16個の送信ブロックTB1〜TB16のそれぞれの1本ずつの送信導体に、同期して同時に供給される。そして、16個の拡散符号C1〜C16は、クロック信号CLKの16×4周期で、16個の送信ブロックTB1〜TB16のそれぞれ内の4本の送信導体11Yの全てに供給される。すなわち、16種の拡散符号C1〜C16は、クロック信号CLKの16×4周期で、センサ部100の全ての送信導体11Yに対して供給される。
すなわち、16個の拡散符号C1〜C16は、16個の検出ブロックDB 1 〜DB 16 のそれぞれ1本ずつの受信導体から出力信号を得るクロック信号CLKの16×4周期の期間において、送信導体11Yの全てに供給される。そして、16個の検出ブロックDB 1 〜DB 16 のそれぞれで選択される1本ずつの受信導体が、クロック信号CLKの16×4周期毎に切り替えられることにより、拡散符号C1〜C16は、センサ部100の全ての送信導体11Yに供給される。そして、以上の動作が繰り返される。
一方、受信導体選択回路31では、スイッチ回路3101〜3116のそれぞれが、制御回路40からの切替制御信号SW3(図17(A)参照)により、クロック信号CLKの16×4周期毎に切り替えられる。図17(A)に示すように、このスイッチ回路3101〜3116の切り替えにより、クロック信号CLKの16×4周期の期間において、16個の検出ブロックDB 1 〜DB 16 のそれぞれ1本ずつの受信導体から受信信号が得られる。
この拡散符号C1〜C16が同期して同時に供給されるクロック信号CLKの16周期分、つまり、拡散符号の1周期分の期間において、受信導体選択回路31により選択された各受信導体からの16個の出力信号S1〜S16は、それぞれ各A/D変換器3301〜3316によりクロック信号CLKのタイミングでサンプリングされ、そのサンプリング値がデジタルサンプルデータに変換される。そして、このデジタルサンプルデータは、相関値算出回路3501〜3516の各シフトレジスタに、並列に書き込まれる(図17(D)参照)。
以上のような送信導体11Yおよび受信導体12Xの選択切り替え制御によれば、受信導体12Xの選択切り替え制御回数を少なくすることができ、受信導体12Xからの出力信号に重畳されてしまう可能性のあるスイッチング時のノイズを少なくすることできる。
〔相関値算出回路3501〜3516の構成例:図18−図19〕
次に、相関値算出回路3501〜3516の構成例について説明する。16個の相関値算出回路3501〜3516は同一の構成を有するので、ここでは、出力信号S1の相関値演算処理を行う相関値算出回路3501の場合として、図18を参照して、その構成例を説明する。
相関値算出回路3501は、制御回路40の制御に基づいて、A/D変換器3301から出力された出力信号S1のデジタルサンプルデータと、16個の拡散符号C1〜C16との相関値を算出するための回路である。この相関値算出回路3501は、図1に示すように、A/D変換回路33と制御回路40と、出力回路36とに接続されている。
そして、この相関値算出回路3501は、信号遅延用のバッファ回路を構成するシフトレジスタ35aと、拡散符号Ck(k=1,2,・・・,16)の数と同数(16個)の相関器35b1,35b2,35b3,・・・,35b16と、この相関器35b1〜35b16のそれぞれに相関値演算用符号Ck´(k=1,2,・・・,16)を供給する相関値演算用符号生成回路35c1,35c2,35c3,・・・,35c15,35c16と、相関値記憶回路35dとを備える。
シフトレジスタ35aは、A/D変換器3301から出力されたデジタルサンプルデータを一時的に保持し、この保持されたデータを各相関器35b1〜35b16に同時に供給するための回路である。
このシフトレジスタ35aは、拡散符号Ckの符号長(チップ数)と同数(16個)のD−フリップフロップ回路35a1,35a2,35a3,・・・,35a15,35a16から構成される。このD−フリップフロップ回路35a16,35a15,35a14,・・・35a3,35a2,35a1は、シフトレジスタ35aの各段のデータラッチ回路を構成するもので、この順番でA/D変換回路33側から直列接続して構成される。なお、D−フリップフロップ回路35a16,35a15,・・・35a1のそれぞれは、図18では、簡単のため1個のD−フリップフロップ回路で示されているが、実際上は、A/D変換器3301からのデジタルサンプルデータのビット数分からなる。
そして、このD−フリップフロップ回路35a16〜35a1のそれぞれの出力端子は、隣接する次段のD−フリップフロップ回路(例えばD−フリップフロップ回路35a16であれば、D−フリップフロップ回路35a15)と、相関器35b1〜35b16とに接続される。すなわち、D−フリップフロップ回路35a1〜35a16からの出力信号はすべての相関器35b1〜35b16に入力される。
シフトレジスタ35aの各段を構成するD−フリップフロップ回路35a1〜35a16のそれぞれの出力は、前述したように、拡散符号の各チップのデータに対応する出力信号S1のデジタルサンプルデータである。以下、この16個のD−フリップフロップ回路35a1〜35a16からの16チップ分の出力信号を、それぞれ出力信号PS1,PS2,PS3,・・・,PS15,PS16と称する。
相関器35b1〜35b16のそれぞれは、出力信号S1と拡散符号Ckの相関値を算出する回路である。すなわち、各相関器35b1〜35b16は、シフトレジスタ35aを構成するD−フリップフロップ回路35a1〜35a16のそれぞれから出力された出力信号S1のデジタルサンプルデータPS1〜PS16と、相関値演算用符号生成回路35c1〜35c16のそれぞれから入力された相関値演算用符号C1′〜C16′の各チップのそれぞれとを乗算して、出力信号S1と拡散符号Ckの相関値を算出する。
各相関値演算用符号生成回路35c1〜35c16は、相関器35b1〜35b16のそれぞれが相関演算を行うための相関値演算用符号C1′〜C16′のそれぞれを、各相関器35b1〜35b16に供給するための回路である。各相関値演算用符号生成回路35c1〜35c16は、相関器35b1〜35b16のうちの対応する相関器に接続される。
相関値演算用符号C1′〜C16′は、送信信号である拡散符号C1〜C16に対応する符号であり、特殊な符号列、例えばアダマール符号を用いる場合には、送信信号供給回路21からの拡散符号C1〜C16を利用することもできる。その場合には、相関値演算用符号生成回路35c1〜35c16は、送信信号供給回路21の拡散符号発生回路2101〜2116のそれぞれからの拡散符号C1〜C16を受けるレジスタの構成とされる。そして、拡散符号発生回路2101〜2116のそれぞれから出力された拡散符号C1〜C16は、クロック信号CLKのタイミングで、そのレジスタの構成の相関値演算用符号生成回路35c1〜35c16に、相関値演算用符号C1′〜C16′として書き込まれる。
なお、拡散符号生成回路2101〜2116のそれぞれと同様に、相関値演算用符号生成回路35c1〜35c16は、ROMなどで構成し、拡散符号C1〜C16に対応する相関値演算用符号C1′〜C16′を発生するようにすることもできる。
以下、相関値演算用符号C1′〜C16′のそれぞれの16チップのデータを、生成コードPN1′,PN2′,PN3′,・・・,PN15′,PN16′と称する。
相関器35b1〜35b16のそれぞれは、シフトレジスタ35aに、拡散符号の1周期分のデジタルサンプルデータPS1〜PS16が書き込まれたタイミング(後述する受信ロード信号Srload参照)で、相関演算を開始する。
そして、相関器35b1は、D−フリップフロップ回路35a1〜35a16のそれぞれからの出力信号PS1〜PS16と相関値演算用符号C1′のPN1′〜PN16′とを、同じチップ同士で乗算して合算し、相関値を算出する。同様に、相関器35b2は、D−フリップフロップ回路35a1〜35a16のそれぞれからの出力信号PS1〜PS16と相関値演算用符号C2′のPN1′〜PN16′とを、同じチップ同士で乗算して合算し、相関値を算出する。以降同様にして、16個の相関器35b1〜35b16において、出力信号S1のデジタルサンプルデータPS1〜PS16と、相関値演算用符号C1′〜C16′の生成コードPN1′〜PN16′とを、同じチップ同士で乗算して合算し、相関値を算出する。そして、相関器35b1〜35b16は、算出した相関値を相関値記憶回路35dに出力する。
そして、相関器35b1〜35b16のそれぞれにおいて、シフトレジスタ35aに保持された出力信号S1のデジタルサンプルデータと、相関値演算用符号C1′〜C16′との相関演算がなされると、出力信号S1が得られる受信導体上に指示体18が存在しない場合には一定の値の相関値が得られ、また、出力信号S1が得られる受信導体上に指示体が存在する場合には、この一定の値の相関値とは異なる値の相関値が得られる。
相関値記憶回路35dは、相関器35b1〜35b16における相関演算で得られた相関値を一時的に記憶するための記憶部である。この相関値記憶回路35dは、相関器35b1〜35b16と同数の複数のレジスタ35d1〜35d16から構成される。
図11に示したように、送信ブロックTB 1 〜TB 16 のそれぞれが、4本ずつの送信導体11Yで構成され、送信ブロックTB 1 〜TB 16 の各1本の送信導体11Yがスイッチ回路2201〜2216で切り替えられるので、64本の送信導体群11は、拡散符号C1〜C16が同期して同時に供給される16本の送信導体11Yの組の4組で構成される。
そして、図17において説明したように、その4組の送信導体11Yが、スイッチ回路2201〜2216により、拡散符号の1周期分毎に切り替えられる。したがって、拡散符号の4周期分で、4組の送信導体11Yの全てに対して拡散符号C1〜C16の供給がなされる。
このため、1つの受信導体12Xからの受信信号について相関演算をすると、それぞれ16本の送信導体11Yからなり位置が互いに異なる4組の送信導体11Yについての4つの相関値が得られる。そして、これに対応して相関値記憶回路35dを構成する16個のレジスタ35d1〜35d16のそれぞれは、4つの領域を備える。この4つの領域には、位置が互いに異なる4組の、それぞれ16本の送信導体11Yについて得られた相関値が記憶される。
出力回路36の位置算出回路361は、記憶回路36Mに記憶された相関値から、指示体の位置検出や押圧力の検出、ホバーリング状態の検出などを行って、出力データを生成し、出力する。
次に、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれにおけるデータ処理を、図19のタイミングチャートを参照しながら説明する。
ここで、図19(A)は、クロック生成回路23から発生するクロック信号CLKの信号波形である。このクロック信号CLKは、その1周期が、拡散符号Ckの1チップ長に相当する。
図19(B)は、センサ部100の全クロスポイントのサーチのスタートタイミングを示すスタート信号STである。制御回路40は、このスタート信号STを、センサ部100の全クロスポイントについての指示体検出が終了するまでの区間に相当する周期で、かつ、クロック信号CLKに同期して、繰り返し発生させる。すなわち、全クロスポイントについてのサーチに要する時間は、一の送信導体11Yに対し拡散符号を供給するのに要する時間(クロック信号CLKの16周期分)と、各送信ブロックTB 1 〜TB 16 を構成する送信導体の数と、各検出ブロックDB 1 〜DB 16 を構成する受信導体の数を乗算した値に相当するので、制御回路40は、スタート信号STをクロック信号CLKの16×4×8周期毎に繰り返し発生することになる。
図19(C)は、制御回路40から送信導体選択回路22および受信導体選択回路31に供給される送信ロード信号Stloadの信号波形である。この送信ロード信号Stloadは、その周期が拡散符号Ckの符号長(拡散符号Ckの1周期分=クロック信号CLKの16周期分)に設定されたパルス信号である。制御回路40は、最初の送信ロード信号Stloadをスタート信号STよりもクロック信号CLKの1周期分だけ遅れて発生させ、その後、拡散符号Ckの1周期分毎に繰り返し発生させる。
図19(D)は、制御回路40から相関値算出回路35に供給される受信ロード信号Srloadの信号波形である。この受信ロード信号Srloadは、その周期が、拡散符号Ckの符号長(拡散符号Ckの1周期分=クロック信号CLKの16周期分)に設定されたパルス信号である。制御回路40は、この受信ロード信号Srloadを送信ロード信号Stloadよりもクロック信号CLKの1周期分だけ遅れて出力するようになっている。
図19(E)は、送信信号供給回路21から送信導体11Yに対して送信される拡散符号Ckの送信出力のタイミングチャートである。
図19(F)は、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれのシフトレジスタ35aにセットされる16チップ分の出力信号(PS1,PS2,・・・,PS16)のタイミングチャートである。また、図19(G)は、シフトレジスタ35aにセットされた出力信号に乗算して合算する相関値演算用符号Ck´の生成コード(PN1´,PN2´,・・・,PN16´)である。さらに、図19(G)は、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれの相関値出力のタイミングチャートである。
クロック発生回路23から出力されたクロック信号CLK(図19(A)参照)が入力されると、制御回路40はこのクロック信号CLKに同期してスタート信号ST(図19(B)参照)を発生し、位置検出回路34の出力回路36に供給する。
そして、制御回路40は、スタート信号STよりもクロック信号CLKの1周期分遅れたタイミングで送信ロード信号Stload(図19(C)参照)を発生し、この送信ロード信号Stloadの発生タイミングに同期して拡散符号の1周期毎の切替制御信号SW2を生成し、送信導体選択回路22に供給する。また、制御回路40は、この送信ロード信号Stloadの発生タイミングに同期して、スタート信号STの発生タイミングを基準にした拡散符号の4周期毎の切替制御信号SW3を生成し、受信導体選択回路31に供給する。
そして、制御回路40は、送信ロード信号Stload発生の1クロック周期後、受信ロード信号Srload(図19(D)参照)を発生し、位置検出回路34の演算処理回路35の相関値算出回路3501〜3516のそれぞれに供給する。
相関値算出回路3501〜3516は、受信ロード信号Srloadのタイミングに基づいて、前述した相関演算を実行して、相関値を出力回路36に出力する。
出力回路36の記憶回路36Mは、各相関値算出回路3501〜3516から出力される相関値を、制御回路40からのクロック信号CLKおよび受信ロード信号Srloadのタイミングに基づいて、記憶回路36Mの予め定められた番地に記憶する。予め定められた番地とは、各クロスポイント毎に定められた記憶回路36M上の番地である。
送信導体選択回路22は、送信ロード信号Stloadがハイレベルであって、かつクロック信号CLKの立ち上がりタイミング(図19中の時点t0)で、16本の送信導体11Yへ16種の拡散符号C1〜C16の供給を開始する。そして、送信導体選択回路22は、切替制御信号SW2によってスイッチ回路2201〜2216が切り替えられることにより、拡散符号C1〜C16を供給する16本の送信導体11Yを切り替える。ここで、切替制御信号SW2によるスイッチ回路2201〜2216の切替時点は、送信ロード信号Stloadがハイレベルであって、かつクロック信号CLKの立ち上がりタイミング(例えば、図19中の時点t2および時点t4)である。
送信導体選択回路22により選択された各送信導体11Yには、クロック信号CLKの立ち上がりタイミングで、拡散符号C1〜C16のnチップ目の符号が供給される。すなわち、時点t1においては各拡散符号C1〜C16の1チップ目の符号が送信導体11Yに供給される。以降、クロック信号CLKの1クロック毎に、2チップ目、3チップ目・・・というように、拡散符号C1〜C16のnチップ目の符号が送信導体11Yに供給される(図19(E)参照)。
そして、次の送信ロード信号Stloadのハイレベルのタイミングで、かつ、クロック信号CLKの17回目の立ち上がりタイミングでは、選択されていた16本の送信導体11Yへの拡散符号C1〜C16の供給が完了しているので、送信導体選択回路22は、このタイミングで、選択する送信導体11Yを次の送信導体11Yに切り替える。以降、同様に、送信導体選択回路22は、送信ロード信号Stloadの立ち上がりタイミングで送信導体11Yを切り替える。
そして、送信導体選択回路22は、送信ロード信号Stloadの4回目のパルスが入力されると、最初に戻り、上記切り替え動作を繰り返す。
一方、受信導体選択回路31は、最初の送信ロード信号Stloadがハイレベルであって、かつクロック信号CLKの立ち上がりタイミングで、最初に受信を行う16本の受信導体12Xを選択する(図14の状態)。以降、受信導体選択回路31は、送信ロード信号Stloadのパルスが4回発生する毎に、切替制御信号SW3によってスイッチ回路3101〜3116が切り替えられることにより、選択される16本の受信導体12Xを切り替える。
そして、受信導体選択回路31は、送信ロード信号Stloadの33回目のパルスがハイレベルで、かつクロック信号CLKの立ち上がりのタイミングで、最初の選択切り替え状態(図4の状態)に戻り、上記切り替え動作を繰り返す。
なお、受信導体選択回路31のスイッチ回路3101〜3116が切り替えを行うことによる過渡現象によるノイズ発生を防止するために、切替制御信号SW3の切り替え周期をクロック信号CLKの16×4+m周期分(m:自然数)として、1クロック分の余裕期間を設けるようにしてもよい。
受信導体選択回路31を通じて16本の受信導体12Xから得られた受信信号は、増幅回路32で信号レベルが増幅され、A/D変換回路33のA/D変換器3301〜3316のそれぞれにおいて、クロック信号CLKの立ち上がりのタイミングで、デジタルサンプルデータに変換されて出力される。
そして、A/D変換器3301〜3316のそれぞれから出力されるデジタルサンプルデータは、対応する相関値算出回路3501〜3516のそれぞれに入力される。このデジタルサンプルデータは、前述したように、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれのシフトレジスタ35aの初段のD−フリップフロップ回路35a16から順に入力される(図19(F)参照)。
そして、受信ロード信号Srloadのパルスがハイレベルで、かつクロック信号CLKの立ち上がりのタイミング(図19においては、時点t3)で、出力信号PS1〜PS16(図18参照)が、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれのシフトレジスタ35aにセットされる。したがって、このタイミングでは、相関器35b1〜35b16には、出力信号PS1〜PS16が供給されている状態になる。
一方、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれにおいては、同様にして、受信ロード信号Srloadのパルスがハイレベルで、かつクロック信号CLKの立ち上がりのタイミング(図19においては、時点t3)から、相関値演算用符号生成回路35c1〜35c16から16種類の相関値演算用符号C1′〜C16′の各生成コードPN1´〜PN16´(図19(G)参照)が、相関器35b1〜35b16に供給される。
相関器35b1〜35b16のそれぞれは、この受信ロード信号Srloadがハイレベルで、かつクロック信号CLKのパルスの立ち上がりタイミングで、この相関値演算用符号C1′〜C16′の各生成コードPN1´〜PN16´と、シフトレジスタ35aにセットされた出力信号PS1〜PS16との相関演算を実行する。
そして、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれの相関器35b1〜35b16は、それぞれの演算結果の相関値を、相関値記憶回路35dのレジスタ35d1〜35d16に一時記憶する(図19(H)参照)。
そして、相関値記憶回路35dのレジスタ35d1〜35d16に一時記憶された相関値は、出力回路36の記憶回路36Mに記憶される。
〔相関器35b1〜35b16の構成例:図20〕
次に、相関器35b1〜35b16の構成例について、図20を参照して詳述する。相関器35b1〜35b16は全く同様の構成を有するものであり、図20は、そのうちの一つである相関器35b1の場合として構成例を示したものである。
相関器35b1は、図20に示すように、16個の乗算器35f1,35f2,・・・,35f16と、加算器35gとで構成される。この実施の形態において乗算器35f1〜35f16を16個としたのは、16チップの拡散符号Ckの相関を求めるためである。従って、乗算器の数は、拡散符号Ckのチップ数に応じて、設けられる数が異なる。
それぞれの乗算器35f1〜35f16には、シフトレジスタ35aの各段からの出力信号PS1〜PS16と、相関値演算用符号Ck′の各生成コードPN1′〜PN16′とが供給される。この乗算器35f1〜35f16のそれぞれは、同一のチップ位置同士の信号を乗算して、乗算信号を得る。乗算器35f1〜35f16において算出された乗算信号は、加算器35gに供給される。加算器35gは、乗算器35f1〜35f16から供給された乗算信号を加算して相関値を得る。この相関値は、相関値記憶回路35dのレジスタ35d1(図18参照)に記憶される。なお、使用する符号によっては、乗算器35f1〜35f16は、加算器又は減算器を用いてもよい。
〔制御回路40による検出モード制御と、出力回路36における位置検出処理〕
前述したように、記憶回路36Mには、センサ部100の全クロスポイントの相関値が一時記憶されるが、制御回路40は、この記憶回路36Mに一時記憶された相関値に基づいて、検出モードをキャパシティブタッチ検出モードとするか、レジスティブタッチ検出モードとするかを決定する。そして、決定した検出モードに応じて、制御回路40は、I/V変換回路3201〜3216の切り替えスイッチ回路55を切り替えるようにする。
<制御回路40による検出モード切り替え:図21−図24>
指示体18は、センサ部100の指示入力面100Sにない状態から指示入力面100Sに離隔して存在する状態→指示入力面100Sに接触する状態→指示入力面100Sを押圧する状態という順番で、指示入力面100Sに対する変化をすると考えられる。そこで、この実施の形態では、制御回路40は、初期状態では、切替制御信号SW1により、I/V変換回路3201〜3216の切り替えスイッチ回路55を検出用コンデンサ52側に切り替え、キャパシティブタッチ検出モードとする。
図21(A)に示すように、指示体がセンサ部100の指示入力面100Sにないときには、送信導体11Yは受信導体12Xとのみ静電結合するから、送信導体11Yに送信信号を供給すると、各クロスポイントの受信導体12Xには、同様の電流信号が流れる。
したがって、図21(B)に示すように、演算処理回路35の相関値算出回路3501〜3516のそれぞれからは、いずれも一定の相関値(基準値ref)が得られる。なお、図21(B)は、相関値算出回路3501〜3516のいずれか一つの相関値出力を示すものである。
そして、例えば図22(A)に示すように、拡散符号C3が供給される送信導体11Y9と受信導体12X124とのクロスポイントに指示体18が、例えば接触したときには、前述したように指示体18と受信導体12X124との間の静電容量分を通じて、送信信号が分流して、受信導体12X124から得られる電流信号が減少する。
このため、指示体18が接触している受信導体12X124からの電流信号の信号レベルは、送信導体11Y9に供給されている拡散符号C3において減少する。つまり、図22(B)に示すように、送信導体11Y9と受信導体12X124とのクロスポイントに対応する相関値は、図21に示した指示体18が指示入力面100S上にないときの相関値(基準値)refよりも、減少する方向へ変化する。
一方、図22(A)に示す、拡散符号C3が供給される送信導体11Y9と受信導体12X124とのクロスポイントにおいて、指示体18により押圧力が印加されると、そのクロスポイントにおいて送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとが接触し、その接触面積に応じた電流が流れ始める。その結果、受信導体12X124から得られる出力信号S16の電流信号が増加する。
このため、図22(C)に示すように、指示体18が接触している受信導体12X124からの電流信号の信号レベルは、送信導体11Y9に供給されている拡散符号C3において増加する。つまり、送信導体11Y9と受信導体12X124とのクロスポイントに対応する相関値は、前記基準値refよりも、増加する方向へ変化する。
したがって、位置算出回路361は、出力回路36の記憶回路36Mの全クロスポイントの相関値を参照し、基準値refよりも減少している相関値のクロスポイントが存在している場合には、制御回路40キャパシティブタッチ検出モードを維持する。
そして、位置算出回路361が出力回路36の記憶回路36Mの全クロスポイントの相関値を参照し、基準値refよりも増加している相関値を検出すると、制御回路40は、切替制御信号SW1により、I/V変換回路3201〜3216の切り替えスイッチ回路55を検出用抵抗54側に切り替え、レジスティブタッチ検出モードに切り替える。
したがって、記憶回路36Mに記憶された全ての相関値のうち、基準値ref以上のものがあるが否かにより、制御回路40は、検出モードを切り替えることができる。
しかし、基準値refは、指示体検出装置1毎の固体差や環境要因(温度等)などに起因するばらつきにより、変化してしまうことがある。
そこで、この実施の形態では、指示体18がセンサ部100の指示入力面100Sにないときに相関値算出回路3501〜3516で得られる相関値(=ref)を予め記憶しておく。以下、この相関値をオフセット値という。
そして、相関値を記憶回路36Mに記憶する際に、それぞれの相関値算出回路3501〜3516で算出された相関値から、このオフセット値(=ref)を減算した値を、各クロスポイントの相関値として記憶する。
このようにすれば、キャパシティブタッチ検出モードで得られる相関値は、指示体18がセンサ部100の指示入力面100Sにないときには全てゼロになる。そして、指示体18がセンサ部100の指示入力面100S上にあって、かつ、ホバーリング状態にある、あるいは接触しているクロスポイントの相関値は負の値となる。また、センサ部100の指示入力面100S上にある指示体18により指示入力面100Sから押圧力が印加されると、その押圧力が印加されているクロスポイントを構成する受信導体12Xから得られる相関値は正の値となる。
そして、位置算出回路361は、記憶回路36Mに記憶されている相関値を参照し、この記憶回路36Mに記憶されている相関値に正の値を示す相関値または負の値を示す相関値があるか否かを検出する。制御回路40は、キャパシティブタッチ検出モードにおいて、位置算出回路361が正の値を示す相関値を検出したときには、検出モードをレジスティブタッチ検出モードに切り替える。また、制御回路40は、レジスティブタッチ検出モードにおいて、位置検出回路361が正の値示す相関値を検出できなかったときには、検出モードをキャパシティブタッチ検出モードに切り替える。
ここで、位置算出回路361が正の値を示す相関値を検出したときの検出モードがレジスティブタッチ検出モードであるとき、および位置算出回路361が負の値を示す相関値を検出したときの検出モードがキャパシティブタッチ検出モードであるときは、制御回路40はその検出モードを維持する。
なお、レジスティブタッチ検出モードにおいて算出された相関値を記憶回路36Mに書き込むに際して、前述した基準値refに相当する値の減算は、必ずしも行わなくてもよい。レジスティブタッチ検出モードにおいて得られる相関値は、キャパシティブタッチ検出モードにおいて得られる相関値に比べて格段に大きい。このため、レジスティブタッチ検出モードにおいて算出された相関値は、減算処理をしなくても押圧力が印加されたクロスポイントに対応する相関値を検出することができるからである。
記憶回路36Mに記憶された相関値が正の値になっているかどうかは、スレッショールド値をゼロとして、相関値とスレッショールド値を比較するようにすればよいが、より確実に判定するために、相関値と比較するスレッショールド値は、ゼロよりも若干大きい値にすると良い。ノイズ分などに反応しないようにするためである。
図23および図24は、この実施の形態の指示体検出装置1における検出モード切り替え処理を含む全体の処理動作の流れを示すフローチャートである。
この図23および図24からなるフローチャートの処理は、制御回路40からのスタート信号STにより開始する。そして、スタート信号STが発生する毎に、指示入力面100Sの全クロスポイントについての1回分の処理動作を実行する。
先ず、制御回路40が、スタート信号STを出力した後、クロック信号CLKの1周期後に発生させた送信ロード信号Stloadが送信信号供給回路21に供給されると、送信信号供給回路21は、送信ロード信号Stloadおよびクロック信号CLKに同期した16種の拡散符号C1〜C16を生成すると共に、送信導体選択回路22に供給を開始する(ステップS101)。
次に、制御回路40は、検出モードとしてキャパシティブタッチ検出モードを選択し、切替制御信号SW1により、I/V変換回路3201〜3216の切り替えスイッチ回路55を検出用コンデンサ52側に切り替える(ステップS102)。
次に、制御回路40は、クロック信号CLKに基づいて生成した切替制御信号SW3により、受信導体選択回路31のスイッチ回路3101〜3116を切り替え制御して、検出ブロックDB1〜DB16のそれぞれのうちから1本の受信導体12Xを選択させる(ステップS103)。
また、制御回路40は、送信ロード信号Stloadに同期して生成した切替制御信号SW2により、送信導体選択回路22のスイッチ回路2201〜2216を切り替え制御して、送信ブロックTB 1 〜TB 16 のそれぞれのうちから1本の送信導体11Yを選択させる(ステップS104)。
以上により、16種の拡散符号C1〜C16は、送信導体選択回路22で選択された16本の送信導体11Yに同時に同期して供給される(ステップS105)。すると、受信導体選択回路31で選択された16本の受信導体12Xからは、受信信号として出力信号S1〜S16として得る。この出力信号S1〜S16は、増幅回路32およびA/D変換回路33を通じて演算処理回路35の相関値算出回路3501〜3516のそれぞれに供給される(ステップS106)。
次に、相関値算出回路3501〜3516は、それぞれ、デジタルサンプルデータと相関値演算用符号C1´〜C16´とを相関演算し、その結果得られた相関値を相関値記憶回路35dを通じて出力回路36の記憶回路36Mに書き込む(ステップS107)。
制御回路40は、選択された受信導体12Xとクロスポイントを構成する送信導体11Yの全てに対して拡散符号の供給を行ったか否か判別する(ステップS108)。ステップS108で、拡散符号の供給を終了していないと判別したときには、ステップS104に戻り、このステップS104以降の処理を繰り返す。送信ブロックは4本の送信導体12Yで構成されているので、選択される複数の送信導体の組は4組である。したがって、ステップS108では、ステップS104〜ステップS107の処理を4回繰り返したか否かを判別する。
そして、ステップS108で、受信導体選択回路31により選択された受信導体12Xとクロスポイントを構成する送信導体11Yの全てに対して拡散符号の供給を終了したと判別したときには、受信導体12Xの全てから出力信号が得られたか否か判別する(ステップS109)。このステップS109で、受信導体12Xの全てから出力信号が得られていないと判別したときには、ステップS103に戻り、このステップS103以降の処理を繰り返す。検出ブロックは8本の受信導体12Xで構成されているので、選択される複数の受信導体の組は8組である。したがって、ステップS109では、ステップS103〜ステップS108の処理を8回繰り返したか否かを判別する。
ステップS109で、送信導体11Yの全てに対して送信信号の供給を行うと共に、受信導体12Xの全てから出力信号が得られたと判別したときには、記憶回路36Mに記憶されている相関値を参照し、基準値ref以上の相関値があるか否か判別する(図24のステップS111)。
ステップS111で、記憶回路36Mに記憶されている相関値のうち、基準値ref以上の相関値がないと判別したときには、制御回路40は、そのときの検出モードはキャパシティブタッチ検出モードであるか否か判別する(ステップS112)。そして、このステップS112で、そのときの検出モードが、キャパシティブタッチ検出モードであると判別したときには、制御回路40は、出力回路36を制御して、指示体の位置検出処理をして、その検出結果を出力させる(ステップS113)。また、ステップS112で、そのときの検出モードがキャパシティブタッチ検出モードではないと判別したときには、ステップS102に戻り、制御回路40は、切替制御信号SW1をI/V変換回路3201〜3216のそれぞれのスイッチ回路55に供給して各スイッチ回路55を、検出用コンデンサ52側に切り替えて、キャパシティブタッチ検出モードに切り替える。そして、制御回路40は、このステップS103以降の処理を繰り返す。
また、ステップS111で、記憶回路36Mに記憶されている相関値のうち、基準値ref以上の相関値があると判別したときには、制御回路40は、そのときの検出モードがレジスティブタッチ検出モードであるか否か判別する(ステップS114)。このステップS114で、そのときの検出モードがレジスティブタッチ検出モードであると判別したときには、制御回路40は、出力回路36を制御して、指示体の位置検出処理をして、その検出結果を出力させる(ステップS113)。また、ステップS114で、そのときの検出モードがレジスティブタッチ検出モードではないと判別したときには、制御回路40は、切替制御信号SW1をI/V変換回路3201〜3216のそれぞれのスイッチ回路55に供給し、各スイッチ回路55を、検出用抵抗54側に切り替えて、レジスティブタッチ検出モードに切り替える(ステップS115)。そして、制御回路40は、処理をステップS103に戻し、このステップS103以降の処理を繰り返す。
<ホバーリング検出:図25〜図27>
図25〜図27を参照しながら、ホバーリング状態の検出手法について説明する。ホバーリングの検出は、次のようにして行うことができる。図25(A)に示すように、キャパシティブタッチ検出モードにおいて、指示体18がセンサ部100の指示入力面100Sに接触しているときには、図25(B)に示すように、接触中心位置のクロスポイントの相関値が最大の相関値PKになると共に、当該接触中心位置のクロスポイントの周囲の比較的狭い面積範囲のクロスポイントが負極性の相関値を呈する。
一方、図26(A)に示すように、キャパシティブタッチ検出モードにおいて、指示体18がセンサ部100の指示入力面100Sから離隔しているときには、図26(B)に示すように、指示体18の直下位置のクロスポイントの相関値が最大の相関値PKになると共に、当該指示体18の直下位置のクロスポイントの周囲の比較的広い面積範囲のクロスポイントが負極性の相関値を呈する。
すなわち、図25(B)および図26(B)は、指示入力面100S上における指示体18の接触中心位置あるいは直下位置のクロスポイントを中心とした周辺クロスポイントの相関値のレベル変化を示す曲線(以下、相関値のレベル曲線という)400となっている。
図25および図26のようになるのは、次のように説明することができる。まず、図25(A)に示すように、指示体18がセンサ部100の指示入力面100Sに接触している状態においては、前述したように、送信導体11Yに供給される送信信号(電圧信号)に応じた電気力線のうちの比較的多くが指示体18(例えば指)に収束する。これにより、指示体18が受信導体12X上に無いときに当該受信導体12Xに流れる電流のうちの、その指示体18に収束する電気力線の分の電流が指示体18を介してグラウンドに分流する。また、指示体18と受信導体12Xとは接触しているから、静電結合する受信導体12Xの範囲は狭い。その結果、図25(B)に示すように、相関値のレベル曲線400は、レベル変化をする幅(面積)が狭く、比較的大きいピーク値PKが得られる曲線となる。
これに対し、図26(A)に示すように、指示体18がセンサ部100の指示入力面100Sと離隔している状態(ホバーリング状態)においては、指示体18が接触している場合に比べ、指示体18と受信導体12Xとが静電結合する範囲が広くなると共に、指示体18との結合度が低くなり、当該受信導体12Xへ流れる電流のうち、指示体18を通じてグラウンドに分流する電流も少なくなる。そして、指示体18と受信導体とが静電結合する範囲は、指示体18と指示入力面100Sとの間の離隔距離が大きくなれば、より広くなり、その結果、指示体18が受信導体12X上に無いときに当該受信導体12Xへ流れる電流のうち指示体18を通じてグラウンドに分流する電流は、指示体18と指示入力面100Sとの間の離隔距離が大きくなれば、より少なくなる。
したがって、図26(B)に示すように、指示体18がホバーリング状態にあるときには、相関値のレベル曲線400は、レベル変化をする幅(面積)が、指示体18と指示入力面100Sとの離隔距離に応じて広くなり、ピーク値PKは、指示体18と指示入力面100Sとの離隔距離に応じて小さくなる。
以上のことから、相関値のレベル曲線400の傾きθと、相関値のレベル曲線のピーク値PKとの比を求め、この比から、ホバーリング状態の検出出力を得る。この場合に、相関値のレベル曲線400の傾きθと相関値のレベル曲線のピーク値PKとの比と、所定の閾値とを比較することで、指示体18が指示入力面100Sに接触しているかどうかを識別する。そして、ホバーリング状態であると識別したときには、その比の値から、指示体18と指示入力面100Sとの離隔距離を識別する。
次に、相関値のレベル曲線400の傾きθと相関値のレベル曲線のピーク値PKとの比を求める演算の具体例について説明する。
指示体18が、図26(A)のように指示入力面100Sから離隔した状態で、ある時刻に得られた相関値のレベル値をマッピングすると、例えば、図27に示すような分布となる。なお、この図27には、3×3のクロスポイントで得られた相関値レベル値を示しており、その相関値レベル値は正規化されていると共に、便宜上、正の値としている。
この図27に示す例においては、中央のクロスポイントで相関値レベルの最大値「100」が得られ、その左右上下に位置するクロスポイントで相関値レベル値「50」が得られている。また、中央のクロスポイントの斜め左上、斜め右上、斜め左下、斜め右下のクロスポイントで相関値レベル値「20」が得られている。したがって、この相関値のレベル曲線のピーク値PKは「100」である。
相関値のレベル曲線400における傾きは、ピーク値PKと、そのピーク値PKが得られたクロスポイントに隣接する他のクロスポイントにおける相関値レベル値との差を求めることで得ることができる。例えば、この図27の例の場合には、相関値のレベル曲線400のピーク値PKは中央グリッドの「100」なので、エッジの傾きは100−50=50となる。
したがって、図27の例の相関値のレベル曲線400の傾きとピーク値との比は、(相関値のレベル曲線の傾き)/(ピーク値PK)=50/100=0.5となる。ここで、ホバーリング状態か接触状態かの判別の閾値を、例えば0.7とすると、図27に示す例においては、位置算出回路361は、指示体18がホバーリング状態にある、と判定する。また、相関値のレベル曲線400の傾きとピーク値PKとの比が、例えば0.9の場合には、位置算出回路361は、指示体18がセンサ部100の指示入力面に接触状態である、と判定する。
上述の例においては、指示体18について、ホバーリング状態と接触状態の判定のために閾値を1つ設けた場合を例示して説明したが、この発明はこれに限定されない。例えば、指示体18について、ホバーリング状態と接触状態の判定のための閾値のほかに、ホバーリング状態の程度(センサ部100の指示入力面100Sと指示体との離隔距離)を判定するための閾値を、さらに1個あるいは複数個設定するようにしてもよい。その場合の閾値は、ホバーリング状態と接触状態の識別のための閾値よりも小さい値となることは言うまでもない。
なお、上記の説明では、相関値のレベル曲線(相関値レベル値のマッピングデータ)に基づいて、直接、ホバーリング状態の判定を行う場合を例示して説明したが、この発明はこれに限定されない。相関値のレベル曲線を非線形処理し、非線形処理後の特性に基づいてホバーリング状態を判定してもよい。
例えば、相関値のレベル曲線に対して、非線形処理として対数変換を行う場合を例示して説明する。非線形処理を行わない場合、指示体18がセンサ部100の指示入力面に接触することにより得られた相関値のレベルは、指示体18と指示入力面100Sとが接触する部分では極端に大きく、指示体18が指示入力面100Sから離隔しているところでは極端に小さくなる。それゆえ、指示体19が指示入力面100Sから僅かに離隔している状態を含めた認識処理を行おうとする場合、相関値レベルが上記2つの場合で極端に違うので正確な認識が困難である。
そこで、相関値のレベル曲線に対して、所定の信号変換処理、例えば対数変換を行うと、相関値が小さいレベルの部分を浮き立たせ、相関値レベルが大きい部分を抑えることができる。すなわち、対数変換後の相関値のレベル曲線においては、ピーク部の形状がブロード化し、その最大値が抑制される。この場合、指示体18の接触状態と非接触状態との境界付近の相関値のレベル値の変化が連続的となり、指示体18が指示入力面100Sから僅かに浮いている状態であっても、容易にホバーリング状態を認識することができ、認識特性を向上させることができる。
<押圧力(指圧)の検出>
位置算出回路361が、記憶回路36Mに記憶されている相関値を参照した結果、相関値が基準値ref以上であるクロスポイントがあると判別したときには、そのクロスポイントは、指示入力面100Sを通じて指示体18から押圧力が印加されている部分である。
そして、前述したように、この実施の形態のセンサ部100においては、押圧力に応じて、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとの接触面積が変わる。すなわち、押圧力が大きくなるほど、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとの接触面積が大きくなり、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとの間で形成される可変抵抗の抵抗値が小さくなる。もっとも、押圧力がある一定以上になると、接触面積の変化がなくなり、リミッタがかかることになる。
そして、受信導体12Xから得られる電流信号の電流値は、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとの間で形成される可変抵抗の抵抗値に応じて変化し、押圧力が大きくなるほど、受信導体12Xから得られる電流信号の電流値は大きくなる。
したがって、押圧力が印加されたクロスポイントの受信導体12Xから得られた出力信号のデジタルサンプルデータは、リミッタがかかるまでの押圧力に比例して、大きなデジタル値となる。そのため、そのデジタルサンプルデータについての相関値も、押圧力に応じた正の値となる。
以上のように、位置算出回路361は、記憶回路36Mに記憶された相関値のうちから、値が基準値ref以上である相関値を検出すると、そのアドレス位置から、対応するクロスポイントの座標位置を判定すると共に、その相関値の大きさに応じた押圧力の検出出力を出力する。
なお、上述の実施の形態では、記憶回路36Mに相関値を書き込む際に、オフセット値をそれぞれの相関値から減算するようにした。しかし、この発明はこれに限られない。例えば記憶回路36Mには、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれで算出された相関値をそれぞれ記憶しておき、位置算出回路361で位置検出する際に、オフセット値をそれぞれの相関値から減算するようにしても良い。その場合には、位置算出回路361が、前述したステップS111の判別処理を行い、その判別結果を制御回路40に通知するようにする。そして、位置算出回路361は、制御回路40の制御指示に応じて指示体検出結果の出力データを出力するようにする。
なお、位置算出回路361の処理は、制御回路40が備えるマイクロコンピュータでソフトウエア処理として実行するようにしても良い。
以上のように、この実施の形態では、出力回路36は、位置算出回路361を備え、記憶回路36Mに書き込まれた相関値を上述のように処理して、指示体の検出結果を得るようにしている。すなわち、指示体18により指示入力されたクロスポイントに対応する座標、指示入力された面積、ホバーリング状態、押圧力、検出モードに応じたフラグ、多数の指示体についての指示体検出結果などを、位置算出回路361で生成して、出力データとして出力するようにしている。
しかし、この位置算出回路361の処理動作は、この実施の形態の指示体検出装置1が接続される装置、例えばパーソナルコンピュータなどにおいて実行させるようにすることもできる。その場合には、出力回路36は、位置算出回路361は備えず、記憶回路36Mの記憶内容を、例えばビットマップデータなどに変換して、出力データとして出力するようにする。あるいは、出力回路36は、記憶回路36Mの記憶内容を、そのまま、出力データとして出力するようにしてもよい。
上述の第1の実施の形態では、記憶回路36Mに記憶された相関値に応じて制御回路40が、キャパシティブタッチ検出モードとレジスティブタッチ検出モードとを切り替えるようにしたが、この発明はこれに限られない。例えば手動により、キャパシティブタッチ検出モードとレジスティブタッチ検出モードとを切り替えるようにすることも、勿論できる。
すなわち、制御回路40に対して、例えば、スライドスイッチを接続し、そのスライドスイッチにより、キャパシティブタッチ検出モードとレジスティブタッチ検出モードとを手動で指定して切り替えるようにしても良い。その際に、スライドスイッチにより、「自動モード切り替え」を選択することができるようにしても良い。その場合には、ユーザは、上述の実施の形態のような自動モード切り替えが選択できると共に、必要に応じて、キャパシティブタッチ検出モードとレジスティブタッチ検出モードとのいずれかのみを選択するように切り替えることができる。
また、上述の実施の形態では、送信抵抗体13Yは、送信導体11Yに沿って形成し、受信抵抗体14Xは、受信導体12Xに沿って形成するようにしたが、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xのそれぞれを、送信導体11Yまたは受信導体12Xと同じ方向に形成するようにしても良い。また、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xを、送信導体11Yと受信導体12Xとのクロスポイントに対応する領域毎に、島状に設けるように形成しても良い。さらに、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xは、前述もしたように、下側基板16および上側基板17の一面全体に渡って、形成するようにしても良い。
また、送信抵抗体11Yまたは受信抵抗体12Xの一方は、送信導体11Yまたは受信導体12Xに沿って形成し、他方は、下側基板16または上側基板17の一面全体に渡って形成するようにしても良い。また、送信抵抗体11Yまたは受信抵抗体12Xの一方は、送信導体11Yと受信導体12Xとのクロスポイントに対応する領域毎に島状に設け、他方は、下側基板16または上側基板17の一面全体に渡って、あるいは、送信導体11Yまたは受信導体12Xに沿って形成してもよい。
上述した第1の実施の形態の指示体検出装置においては、制御回路40は、検出モードをキャパシティブタッチ検出モードとするか、レジスティブタッチ検出モードとするかを判別して、増幅回路32のI/V変換回路3201〜3216のそれぞれのスイッチ回路55を切り替えるようにした。
しかし、図10を用いて説明したように、抵抗膜方式の検出用抵抗54が検出用コンデンサ52の直流バイアス用抵抗53とほぼ等しいインダクタンス値であれば、増幅回路32のI/V変換回路においては、モード切り替えスイッチ回路55は不要となる。
なお、この第1の実施の形態においては、記憶回路36Mに記憶された相関値と基準値refとを比較することで検出モードをレジスティブタッチ検出モードまたはキャパシティブタッチ検出モードのいずれかに切り替える場合を例示して説明したが、この発明はこれに限られない。例えば、各I/V変換回路毎に検出モードをレジスティブタッチ検出モードまたはキャパシティブタッチ検出モードのいずれかに切り替えるようにしても良い。このようにすれば、複数の指示体が指示入力面100S上にあり、一の指示体がホバーリング状態または接触状態にあり、他の一の指示体が指示入力面に対し押圧力を印加している場合であっても、適切にその指示体を検出することができる。
[第2の実施の形態:検出モードの切り替えを行わない例、図28−図29]
上述した第1の実施の形態の指示体検出装置においては、制御回路40は、検出モードをキャパシティブタッチ検出モードとするか、レジスティブタッチ検出モードとするかを判別して、増幅回路32のI/V変換回路3201〜3216のそれぞれのスイッチ回路55を切り替えるようにした。
しかし、例えば、指示体18がセンサ部100の指示入力面100S上に持ち来たらされて指示入力面100Sに接触し、さらに指示入力面100Sを押圧する状態に変位する速度が速い場合、I/V変換回路3201〜3216毎に制御回路40がモードを切り替えることでは、その変位速度に対応できないおそれがある。
そこで、第2の実施の形態の指示体検出装置は、上述した第1の実施の形態の構成において、図10の構成のI/V変換回路を増幅回路32に用い、スイッチ回路を用いたモード切り替えを不要にする。以下に説明する第2の実施の形態において、増幅回路32以外の構成は、第1の実施の形態と同様であり、第1の実施の形態と同一部分には、同一番号を付して、その詳細な説明は省略する。後述する他の実施の形態についても同様である。
図28は、この第2の実施の形態の場合における増幅回路32の構成例を説明するための図である。
この図28に示すように、この第2の実施の形態の指示体検出装置においては、増幅回路32は、検出ブロックDB1〜DB16のそれぞれに対応する16個のI/V変換回路3201´,3202´,・・・,3216´からなる。このI/V変換回路3201´〜3216´のそれぞれは、図10に示したように、演算増幅器51の入出力端間に、静電結合方式の検出用コンデンサ52と、抵抗膜方式の検出用抵抗54とを並列に接続した構成のI/V変換回路からなる。
I/V変換回路3201´〜3216´は、検出モードに応じた切り替えスイッチ回路55が存在しない。したがって、この第2の実施の形態では、制御回路40は、第1の実施の形態の場合のI/V変換回路3201〜3216への切替制御信号SW1を発生する必要はない。このため、制御回路40は、第1の実施の形態のように、相関値算出回路3501〜3516で算出された相関値を参照して、検出モードをキャパシティブタッチ検出モードにすべきか、レジスティブタッチ検出モードにすべきかの判定処理も不要となる。そして、その他は、第1の実施の形態と同様に構成される。
次に、図29のフローチャートを参照して、この第2の実施の形態の指示体検出装置における全体の処理動作の流れの例を説明する。
この図29のフローチャートは、制御回路40からのスタート信号STにより開始する。そして、スタート信号STが発生する毎に、指示入力面100Sの全クロスポイントについての1回分の処理動作を実行する。
先ず、制御回路40が、スタート信号STを出力した後、クロック信号CLKの1周期後に発生させた送信ロード信号Stloadが送信信号供給回路21に供給されると、送信信号供給回路21は、送信ロード信号Stloadおよびクロック信号CLKに同期した16種の拡散符号C1〜C16を生成すると共に、送信導体選択回路22への供給を開始する(ステップS201)。
次に、制御回路40は、送信ロード信号Stloadに基づいて生成した切替制御信号SW3により、受信導体選択回路31のスイッチ回路3101〜3116を切り替え制御して、検出ブロックDB 1 〜DB 16 のそれぞれのうちから1本の受信導体12Xの選択を行う(ステップS202)。
また、制御回路40は、送信ロード信号Stloadに基づいて生成した切替制御信号SW2により、送信導体選択回路22のスイッチ回路2201〜2216を切り替え制御して、送信ブロックTB 1 〜TB 16 のそれぞれのうちから1本の送信導体11Yの選択を行う(ステップS203)。
以上により、16種の拡散符号C1〜C16は、送信導体選択回路22で選択された16本の送信導体11Yに同時に同期して供給される(ステップS204)。そして、受信導体選択回路31は、この受信導体選択回路31で選択した16本の受信導体12Xからの受信信号を、出力信号S1〜S16として得る。この出力信号S1〜S16は、増幅回路32およびA/D変換回路33を通じて演算処理回路35の相関値算出回路3501〜3516のそれぞれに供給される(ステップS205)。
次に、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれにおいて、デジタルサンプルデータと、相関値演算用符号C1´〜C16´との相関演算がなされ、その結果得られた相関値は、相関値記憶回路35dを通じて出力回路36の記憶回路36Mに書き込まれる(ステップS206)。
制御回路40は、選択した受信導体12Xとクロスポイントを構成する送信導体11Yの全てに対して拡散符号Ckの供給を行ったか否か判別する(ステップS207)。ステップS207で、拡散符号Ckの供給を終了していないと判別したときには、ステップS203に戻り、このステップS203以降の処理を繰り返す。選択される複数の送信導体の組は4組であるので、ステップS207では、ステップS203〜ステップS206の処理を4回繰り返したか否かを判別する。
そして、ステップS207で、選択した受信導体12Xとクロスポイントを構成する送信導体11Yの全てに対して拡散符号の供給を終了したと判別したときには、受信導体12Xの全てから出力信号が得られたか否か判別する(ステップS208)。ステップS208で、送信導体11Yの全てに対して送信信号の供給を行うと共に、受信導体12Xの全てから出力信号が得られてはいないと判別したときには、ステップS202に戻り、このステップS202以降の処理を繰り返す。選択される複数の受信導体の組は8組であるので、ステップS208では、ステップS202〜ステップS207の処理を8回繰り返したか否かを判別する。
ステップS208で、送信導体11Yの全てに対して送信信号の供給を行うと共に、受信導体12Xの全てから出力信号が得られたと判別したときには、制御回路40は、出力回路36を制御して、指示体の位置検出処理をして、その検出結果を出力させる(ステップS209)。その後、制御回路40は、処理をステップS202に戻し、このステップS202以降の処理を繰り返す。
この第2の実施の形態では、制御回路40は、検出モードを管理および切り替え制御する必要がないので、回路構成が簡単になる。しかし、前述したように、位置算出回路361は、記憶回路36Mに記憶されている相関値が基準値refよりも大きいか否かにより、静電結合方式と、抵抗膜方式のいずれの検出方式で検出された指示体であるかを判定し、その判定結果を指示体検出結果の出力データに反映することができることは、第1の実施の形態と同様である。
また、第1の実施の形態における指示体検出装置は、検出モードを切り替え制御するので、指示体18の指示入力面100Sとの接触状態あるいはホバーリング状態と、指示体18による指示入力面100Sの押圧状態とを同時に検出することが困難な場合がある。
これに対して第2の実施の形態における指示体検出装置は、指示入力面100S上の指示体18について、静電結合方式と抵抗膜方式のいずれの検出方式でも同時に検出可能である。このため、第2の実施の形態の指示体検出装置は、指示入力面100S上の或るクロスポイントにおいて指示体18の接触による指示入力がなされ、他のクロスポイントにおいて指示体18による押圧入力がなされたとしても、それを同時に検出しやすい。
[第3の実施の形態]
この第3の実施の形態も、I/V変換回路3201〜3216毎に制御回路40がモードを切り替えることでは、指示体18の変位速度に対応できないおそれがある問題を解決する例である。この第3の実施の形態においては、キャパシティブタッチ検出モードと、レジスティブタッチ検出モードとを、並行して行うようにする。
<第1の構成例:図30−図32>
この第3の実施の形態の第1の構成例においては、キャパシティブタッチ検出モードの指示体検出処理と、レジスティブタッチ検出モードの指示体検出処理とを、時分割で実行することで、両検出モードを並行して行うようにする。この第3の実施の形態の第1の構成例においては、第1の実施の形態と同様に、増幅回路32のI/V変換回路3201〜3216は、図9に示した構成とする。そして、制御回路40は、切替制御信号SW1により、I/V変換回路3201〜3216のそれぞれのスイッチ回路55を切り替える構成を有する。
位置検出回路34は、図30に示すように、演算処理回路35と、出力回路360とで構成される。そして、演算処理回路35と、出力回路360との間に、モード切り替え回路37を設ける。また、この第3の実施の形態では、出力回路360の構成を、第1の実施の形態の位置検出回路34とは異なる構成とする。なお、その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
図30に示すように、この例の出力回路360は、記憶回路36Mおよび位置算出回路361の他に、記憶回路36Mと同様に、センサ部100におけるクロスポイントの全てに対応の記憶番地を有する構成のキャパシティブタッチ検出モード用メモリ362およびレジスティブタッチ検出モード用メモリ363と、合成処理回路364とを備える。
そして、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362およびレジスティブタッチ検出モード用メモリ363の出力端は合成処理回路364の2つの入力端とに接続され、また、合成処理回路364の出力端は記憶回路36Mの入力端に接続されている。
モード切り替え回路37は、検出ブロックDB 1 〜DB 16 のそれぞれに対応する16個のスイッチ回路3701〜3716からなる。これらスイッチ回路3701〜3716のそれぞれの入力端は、演算処理回路35の16個の相関値算出回路3501〜3516のそれぞれの出力端と接続される。
スイッチ回路3701〜3716のそれぞれはC側端(出力端)とR側端(出力端)とを備える。そして、スイッチ回路3701〜3716のそれぞれのC側端は、キャパシティブタッチ検出モード用メモリの入力端に接続される。スイッチ回路3701〜3716のそれぞれのR側端は、レジスティブタッチ検出モード用メモリ363の入力端に接続される。そして、スイッチ回路3701〜3716のそれぞれは、制御回路40からの切替制御信号SW1により、I/V変換回路3201〜3216はそれぞれ、スイッチ回路55における切り替えと同期して、キャパシティブタッチ検出モードのときには、C側出力端に、レジスティブタッチ検出モードのときには、R側出力端に、それぞれ切り替えられる。
この第3の実施の形態の第1の構成例では、キャパシティブタッチ検出モードとレジスティブタッチ検出モードとを時分割で切り替えるので、切替制御信号SW1は、この2つの検出モードを切り替える制御信号として用いられる。制御回路40は、この例では、キャパシティブタッチ検出モードでのセンサ部100の全クロスポイントについての指示体検出を終了した時点になると、検出モードをレジスティブタッチ検出モードに変更する。そして、制御回路40は、切替制御信号SW1を、I/V変換回路3201〜3216のスイッチ回路55およびスイッチ回路3701〜3716に供給して、当該スイッチ回路55およびスイッチ回路3701〜3716のそれぞれをR側端に切り替える。
また、制御回路40は、レジスティブタッチ検出モードでのセンサ部100の全クロスポイントについての指示体検出を終了した時点になると、検出モードをキャパシティブタッチ検出モードに変更する。そして、制御回路40は、切替制御信号SW1を、I/V変換回路3201〜3216のスイッチ回路55およびスイッチ回路3701〜3716に供給して、当該スイッチ回路55およびスイッチ回路3701〜3716のそれぞれをC側端に切り替える。以降、制御回路40は、キャパシティブタッチ検出モードまたはレジスティブタッチ検出モードの一方の検出モードでのセンサ部100の全クロスポイントについての指示体検出を終了した時点になる毎に、他方の検出モードに切り替えるように制御する。
そして、上記のようにスイッチ回路3701〜3716がC側端に切り替えられるので、キャパシティブタッチ検出モードのときには、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれで算出された相関値は、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362に書き込まれる。
また、上記のようにスイッチ回路3701〜3716がR側端に切り替えられるので、レジスティブタッチ検出モードのときには、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれで算出された相関値は、レジスティブタッチ検出モード用メモリ363に書き込まれる。
そして、合成処理回路364は、キャパシティブタッチ検出モードとレジスティブタッチ検出モードとの両検出モードのペアが終了する毎に、つまり、スタート信号STの2周期分毎に、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362の記憶内容と、レジスティブタッチ検出モード用メモリ363の記憶内容とを合成する。
合成処理回路364の合成処理は、例えば、次のようにして行なう。すなわち、合成処理回路364は、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362の記憶内容を参照し、基準値refより小さくなっている相関値を探す。そして、合成処理回路36は、基準値refより小さく相関値を検知したときには、その相関値を、記憶回路36Mにおいて、当該相関値が書き込まれていたキャパシティブタッチ検出モード用メモリ362の番地と同じ番地に書き込む。
また、合成処理回路364は、レジスティブタッチ検出モード用メモリ363の記憶内容を参照し、基準値ref以上である相関値を探す。そして、合成処理回路36は、基準値ref以上である相関値を検知したときには、その相関値を、記憶回路36Mにおいて、当該相関値が書き込まれていたキャパシティブタッチ検出モード用メモリ362の番地と同じ番地に書き込む。
そして、合成処理回路364は、記憶回路36Mのその他の番地には、指示体なしを意味する相関値(=基準値ref)を書き込むようにする。なお、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362およびレジスティブタッチ検出モード用メモリ363への相関値の書き込みに際して、それぞれの相関値からオフセット値を減算する場合には、基準値ref=0であるのは、前述の実施形態と同様である。
制御回路40は、記憶回路36Mへの全クロスポイントの相関値の書き込みが完了したら、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362およびレジスティブタッチ検出モード用メモリ363の記憶内容を、次の相関値の記憶のためにクリアしておく。
そして、この第3の実施の形態の第1の構成例では、位置算出回路361は、記憶回路36Mの全クロスポイントの記憶内容が書き換えられた時点、つまり、スタート信号STの2周期毎に、記憶回路36Mの記憶内容について、前述した第1の実施の形態の場合と全く同様の処理をして、出力データを生成して出力するようにする。
この第3の実施の形態の第1の構成例における全体の処理動作の流れの例を、図31およびその続きである図32のフローチャートを参照しながら説明する。
制御回路40は、この図31および図32からなるフローチャートの処理を1番目のスタート信号STの発生時点から開始する。そして、制御回路40は、2番目のスタート信号STを発生する毎に検出モードを切り替えながら、指示入力面100Sの全クロスポイントについての1回分ずつの処理動作を実行する。そして、制御回路40は、スタート信号STの2個ごとに、出力回路36で位置検出処理を行なうように制御し、指示体検出の出力データを出力させるように制御する。
先ず、制御回路40が、スタート信号STを出力した後、クロック信号CLKの1周期後に発生させた送信ロード信号Stloadが送信信号供給回路21に供給されると、送信信号供給回路21は、送信ロード信号Stloadおよびクロック信号CLKに同期した16種の拡散符号C1〜C16を生成すると共に、送信導体選択回路22への供給を開始する(ステップS301)。
次に、制御回路40は、検出モードとしてキャパシティブタッチ検出モードを選択し、切替制御信号SW1により、I/V変換回路3201〜3216の切り替えスイッチ回路55を検出用コンデンサ52側に切り替えると共に、スイッチ回路3701〜3716をC側端に切り替える(ステップS302)。
次に、制御回路40は、送信ロード信号Stloadに基づいて生成した切替制御信号SW3により、受信導体選択回路31のスイッチ回路3101〜3116を切り替え制御して、検出ブロックDB 1 〜DB 16 のそれぞれのうちから1本の受信導体12Xの選択を行う(ステップS303)。
また、制御回路40は、送信ロード信号Stloadに基づいて生成した切替制御信号SW2により、送信導体選択回路22のスイッチ回路2201〜2216を切り替え制御して、送信ブロックTB 1 〜TB 16 のそれぞれのうちから1本の送信導体11Yの選択を行う(ステップS304)。
以上により、16種の拡散符号C1〜C16は、送信導体選択回路22で選択された16本の送信導体11Yに同時に同期して供給される(ステップS305)。そして、受信導体選択回路31は、この受信導体選択回路31で選択された16本の受信導体12Xからの受信信号を、出力信号S1〜S16として得る。この出力信号S1〜S16は、増幅回路32およびA/D変換回路33を通じて演算処理回路35の相関値算出回路3501〜3516のそれぞれに供給される(ステップS306)。
次に、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれにおいて、デジタルサンプルデータと、相関値演算用符号C1´〜C16´との相関演算がなされ、その結果得られた相関値は、相関値記憶回路35dを通じて出力回路36のキャパシティブタッチ検出モード用メモリ362に書き込まれる(ステップS307)。
制御回路40は、選択された受信導体12Xとクロスポイントを構成する送信導体11Yの全てに対して拡散符号の供給を行ったか否か判別する(ステップS308)。ステップS308で、拡散符号の供給を終了していないと判別したときには、ステップS304に戻り、このステップS304以降の処理を繰り返す。送信ブロックは4本の送信導体12Yで構成されているので、選択される複数の送信導体の組は4組である。したがって、ステップS308では、ステップS304〜ステップS307の処理を4回繰り返したか否かを判別する。
そして、ステップS308で、選択した受信導体12Xとクロスポイントを構成する送信導体11Yの全てに対して拡散符号の供給を終了したと判別したときには、受信導体12Xの全てから出力信号が得られたか否か判別する(ステップS309)。ステップS309で、受信導体12Xの全てから出力信号が得られていないと判別したときには、ステップS303に戻り、このステップS303以降の処理を繰り返す。検出ブロックは8本の受信導体12Xで構成されているので、選択される複数の受信導体の組は8組である。したがって、ステップS309では、ステップS303〜ステップS308の処理を8回繰り返したか否かを判別する。
ステップS309で、送信導体11Yの全てに対して送信信号の供給を行うと共に、受信導体12Xの全てから出力信号が得られたと判別したときには、制御回路40は、次のスタート信号STを発生し、検出モードをレジスティブタッチ検出モードに切り替える。すなわち、制御回路40は、切替制御信号SW1により、I/V変換回路3201〜3216の切り替えスイッチ回路55を検出用抵抗54側に切り替えると共に、スイッチ回路3701〜3716をR側端に切り替える(図32のステップS311)。
次に、制御回路40は、送信ロード信号Stloadに基づいて生成した切替制御信号SW3により、受信導体選択回路31のスイッチ回路3101〜3116を切り替え制御して、検出ブロックDB 1 〜DB 16 のそれぞれのうちから1本の受信導体12Xの選択を行う(ステップS312)。
また、制御回路40は、送信ロード信号Stloadに基づいて生成した切替制御信号SW2により、送信導体選択回路22のスイッチ回路2201〜2216を切り替え制御して、送信ブロックTB 1 〜TB 16 のそれぞれのうちから1本の送信導体11Yの選択を行う(ステップS313)。
以上により、16種の拡散符号C1〜C16は、送信導体選択回路22で選択された16本の送信導体11Yに同時に同期して供給される(ステップS314)。そして、受信導体選択回路31は、この受信導体選択回路31で選択した16本の受信導体12Xからの受信信号を、出力信号S1〜S16として得る。この出力信号S1〜S16は、増幅回路32およびA/D変換回路33を通じて演算処理回路35の相関値算出回路3501〜3516のそれぞれに供給される(ステップS315)。
次に、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれにおいて、デジタルサンプルデータと、相関値演算用符号C1´〜C16´との相関演算がなされ、その結果得られた相関値は、相関値記憶回路35dを通じて出力回路36のレジスティブ検出モードメモリ363に書き込まれる(ステップS316)。
制御回路40は、選択した受信導体12Xとクロスポイントを構成する送信導体11Yの全てに対して拡散符号の供給を行ったか否か判別する(ステップS317)。ステップS317で、拡散符号の供給を終了していないと判別したときには、ステップS313に戻り、このステップS313以降の処理を繰り返す。選択される複数の送信導体の組は4組であるので、ステップS317では、ステップS313〜ステップS316の処理を4回繰り返したか否かを判別する。
そして、ステップS317で、選択した受信導体12Xとクロスポイントを構成する送信導体11Yの全てに対して拡散符号の供給を終了したと判別したときには、送信導体11Yの全てに対して送信信号の供給を行うと共に、受信導体12Xの全てから出力信号が得られたか否か判別する(ステップS318)。ステップS318で、送信導体11Yの全てに対して送信信号の供給を行うと共に、受信導体12Xの全てから出力信号が得られていないと判別したときには、ステップS312に戻り、このステップS312以降の処理を繰り返す。選択される複数の受信導体の組は8組であるので、ステップS318では、ステップS312〜ステップS317の処理を8回繰り返したか否かを判別する。
ステップS318で、送信導体11Yの全てに対して送信信号の供給を行うと共に、受信導体12Xの全てから出力信号が得られと判別したときには、出力回路36の合成処理回路364は、前述したように、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362とレジスティブタッチ検出モード用メモリ363の記憶内容を参照すると共に合成して、その合成結果を記憶回路36Mに書き込む。そして、位置算出回路361は、記憶回路36Mの記憶内容について、前述したような位置検出処理および指示体検出結果の出力データの生成処理を行い、生成した出力データを出力する(ステップS319)。
制御回路40は、ステップS319の次には、ステップS302に戻り、再度、キャパシティブタッチ検出モードによる指示体検出を開始する。そして、制御回路40は、上述したステップS302以降の処理を繰り返す。
こうして、この第3の実施の形態の第1の構成例においては、スタート信号STの2周期単位で、指示体検出結果の出力データが得られる。
なお、以上の第3の実施の形態の第1の構成例においては、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362、レジスティブタッチ検出モード用メモリ363および記憶回路36Mの3個のメモリを用いるようにした。しかし、記憶回路36Mに、重ね書き(オーバーライト)可能なメモリを用いると共に、以下のような構成とすることにより、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362とレジスティブタッチ検出モード用メモリ363とを省略して、1個のメモリ(つまり、記憶回路36M)のみを用いる構成とすることもできる。
すなわち、位置検出回路34は、スタート信号STの2周期単位の前半において、キャパシティブタッチ検出モードとレジスティブタッチ検出モードのうちの一方の検出モードでの指示体検出の相関値の算出を行い、算出した相関値を記憶回路36Mに書き込む。
そして、位置検出回路34は、スタート信号STの2周期単位の後半において、他方の検出モードでの指示体検出の相関値の算出を行う。また、位置検出回路34は、算出した相関値の記憶回路36Mへの書き込みに際して、算出した相関値と基準値refとを比較参照し、その比較参照結果に基づいて、記憶回路36Mへ書き込みを実行するかどうかを決定する。
すなわち、新たに書き込もうとする他方の検出モードで算出した相関値が基準値refと等しい値であるときには、その相関値は記憶回路36Mの対応する番地には書き込まない。また、新たに書き込もうとする他方の検出モードで算出した相関値が、基準値refとは異なる値であるときには、記憶回路36Mの対応アドレスに既に書き込まれている相関値を参照し、その相関値が基準値refに等しい場合には、新たに書き込もうとする相関値を重ね書き(オーバーライト)により書き込みを実行する。もしも、その対応番地の相関値が指示体の存在を示す基準値refとは異なる値になっているときには、その書き込み済みの相関値を残し、新たに書き込もうとする相関値の書き込みは行わない。
以上のように記憶回路36Mに対する、2つの検出モードの算出結果の書き込みを制御することにより、出力回路36に設ける全クロスポイント分のメモリは、記憶回路36Mの1個で済むものである。
なお、上述の構成例1では、キャパシティブタッチ検出モードと、レジスティブタッチ検出モードとを、スタート信号ST毎に切り替えるようにしたが、検出モードの切り替えタイミングは、これに限られるものではない。例えば、クロック信号CLKの1周期の区間を、キャパシティブタッチ検出モード用とレジスティブタッチ検出モード用とに2分割して、クロック信号CLKの1/2周期毎に、キャパシティブタッチ検出モードとレジスティブタッチ検出モードとを交互に切り替えるようにしても良い。なお、その場合には、受信部300の回路は、上述の実施の形態の2倍のクロックレートで動作するように構成する。
また、16種の拡散符号を複数の送信導体に同期して同時に供給する期間を、拡散符号の2周期分とし、その前半の1周期と、後半の1周期とで、キャパシティブタッチ検出モードとレジスティブタッチ検出モードとを交互に切り替えるようにしても良い。
<第2の構成例:図33>
第3の実施の形態の第2の構成例は、キャパシティブタッチ検出モードの指示体検出処理と、レジスティブタッチ検出モードの指示体検出処理とを、時分割で実行するのではなく、常に並行して行うようにする。
図33は、この第3の実施の形態の第2の構成例の場合の指示体検出装置の受信部300の構成例を示すものである。なお、その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
この図33に示すように、この第2の構成例においては、受信部300には、キャパシティブタッチ検出モード用として、増幅回路32Cと、A/D変換回路33Cと、演算処理回路35Cとが設けられ、また、レジスティブタッチ検出モード用として、増幅回路32Rと、A/D変換回路33Rと、演算処理回路35Rとが設けられる。また、位置検出回路34には、第1の構成例と同様に出力回路360が設けられる。
この第2の構成例における受信導体選択回路31´は、前述の第1の実施の形態で図14を用いて説明した16個のスイッチ回路を、キャパシティブタッチ検出モード用と、レジスティブタッチ検出モード用との2組を備える。すなわち、受信導体選択回路31´において、スイッチ回路3101C〜3116Cは、キャパシティブタッチ検出モード用であり、また、スイッチ回路3101R〜3116Rは、レジスティブタッチ検出モード用である。
そして、スイッチ回路3101C〜3116Cは、前述したように、対応する検出ブロックDB1〜DB16の受信導体のうちの選択している1本の受信導体からの出力信号(電流信号)S1C〜S16Cを出力する。また、スイッチ回路3101R〜3116Rも、同様に、対応する検出ブロックDB1〜DB16の受信導体のうちの選択している1本の受信導体からの出力信号(電流信号)S1R〜S16Rを出力する。ただし、スイッチ回路3101C〜3116Cとスイッチ回路3101R〜3116Rとでは、同時に同じ受信導体は選択しないように、制御回路40からの切り替え制御信号により切り替えられる。
すなわち、例えば、検出ブロックDB1からの1本の受信導体を選択するスイッチ回路3101Cと、スイッチ回路3101Rの場合を例にとると、スイッチ回路3101Cが、受信導体12X1を選択するときには、スイッチ回路3101Rは、1本ずれた位置の受信導体12X2を選択し、次に、スイッチ回路3101Cが、受信導体12X2を選択するときには、スイッチ回路3101Rは、1本ずれた位置の受信導体12X3を選択し、・・・というように、スイッチ回路3101Cとスイッチ回路3101Rとが切り替えられる。
増幅回路32Cおよび増幅回路32Rのそれぞれは、前述の第1の実施の形態の増幅回路32と同様に、受信導体選択回路31´の出力信号(電流信号)S1C〜S16CおよびS1R〜S16Rのそれぞれを、増幅すると共に、電圧信号に変換する16個のI/V変換回路(図示は省略)を備える。この場合、増幅回路32Cの16個のI/V変換回路のそれぞれは、図5に示した静電結合方式用の構成とする。また、増幅回路32Rの16個のI/V変換回路のそれぞれは、図8に示した抵抗膜方式用の構成とする。
そして、受信導体選択回路31´の出力信号S1C〜S16Cは、増幅回路32Cの16個のI/V変換回路に入力され、また、出力信号S1R〜S16Rは、増幅回路32Rに入力される。
A/D変換回路33Cおよび33Rのそれぞれは、前述の第1および第2の実施の形態におけるA/D変換回路33と同様に、増幅回路32Cおよび33Rの16個のI/V変換回路の出力信号を、クロック信号CLKに同期するデジタルサンプルデータに変換する16個のA/D変換器を備える。
この例では、増幅回路36Cの16個のI/V変換回路の出力端は、A/D変換回路33Cの16個のA/D変換器のそれぞれの入力端に接続される。また、増幅回路36Rの16個のI/V変換回路の出力端は、A/D変換回路33Rの16個のA/D変換器のそれぞれの入力端に接続される。
演算処理回路35Cおよび35Rのそれぞれは、前述の第1および第2の実施の形態における演算処理回路35と同様に、入力側に、拡散符号の16チップ分に対応する16段のシフトレジスタを備える16個の相関値算出回路を備える。
この例では、A/D変換回路33Cの16個のA/D変換器のそれぞれの出力端は、演算処理回路35Cの16個の相関値算出回路のそれぞれの入力端に接続される。また、A/D変換回路33Rの16個のA/D変換器のそれぞれの出力端は、演算処理回路35Rの16個の相関値算出回路のそれぞれの入力端に接続される。
そして、演算処理回路35Cの16個の相関値算出回路のそれぞれの出力は、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362に供給され、また、演算処理回路35Rの16個の相関値算出回路のそれぞれの出力は、レジスティブタッチ検出モード363に供給される。
以上のように構成されているので、受信導体選択回路31´の出力信号S1C〜S16Cのそれぞれは、増幅回路32Cの16個のI/V変換回路のそれぞれで増幅され、電圧信号に変換される。この増幅回路32Cの16個のI/V変換回路のそれぞれからの出力信号は、A/D変換回路33Cが備える16個のA/D変換器のそれぞれにおいて、デジタルサンプルデータに変換される。
そして、このA/D変換回路33Cからのデジタルサンプルデータのそれぞれは、演算処理回路35Cの16個の相関値算出回路のそれぞれが備えるシフトレジスタに転送保持される。
そして、演算処理回路35Cの16個の相関値算出回路において、前述したように、それぞれのシフトレジスタに保持されたデジタルサンプルデータと、16個の相関値演算用符号とが相関演算され、算出された相関値は、出力回路360のキャパシティブタッチ検出モード用メモリ362に書き込まれる。
こうして、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362には、静電結合方式による指示体の検出結果として、センサ部100の全クロスポイントの相関値が、スタート信号STの1周期分の期間において書き込まれる。
これと並行して、レジスティブタッチ検出モード用メモリ363にも、抵抗膜方式による指示体の検出結果として、センサ部100の全クロスポイントの相関値がスタート信号STの1周期分の期間において書き込まれる。
すなわち、受信導体選択回路31の出力信号S1R〜S16Rのそれぞれは、増幅回路32Rの16個のI/V変換回路でそれぞれ増幅されると共に電圧信号に変換される。この増幅回路32Rからの出力信号は、A/D変換回路33Rが備える16個のA/D変換器において、デジタルサンプルデータに変換される。
そして、このA/D変換回路33Rからのデジタルサンプルデータは、それぞれ演算処理回路35Rの16個の相関値算出回路がそれぞれ備えるシフトレジスタに転送保持される。
そして、演算処理回路35Rの16個の相関値算出回路において、前述したように、それぞれのシフトレジスタに保持されたデジタルサンプルデータと、16個の相関値演算用符号とを相関演算し、算出された相関値を、出力回路360のレジスティブタッチ検出モード用メモリ363に書き込む。
こうして、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362およびレジスティブタッチ検出モード用メモリ363に、センサ部100の全クロスポイントに対応する相関値が書き込まれると、合成処理回路364は、前述の第3の実施の形態の第1の構成例の場合と同様にして、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362およびレジスティブタッチ検出モード用メモリ363に記憶されている相関値について合成処理を行う。そして、合成処理回路364は、前述の第3の実施の形態の第1の構成例の場合と同様にして、合成処理した後の相関値を記憶回路36Mに書き込む。
こうして、記憶回路36Mには、スタート信号STの1周期毎に、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362およびレジスティブタッチ検出モード用メモリ363に記憶されている相関値の合成処理結果の相関値が書き込まれる。
位置算出回路361は、制御回路40からの制御信号に応じて、スタート信号STの1周期毎に、記憶回路36Mに記憶された相関値から、位置検出処理および指示体検出の出力データを、生成して出力する。
なお、以上の第3の実施の形態の第2の構成例においても、第1の構成例と同様に、記憶回路36Mに、重ね書き(オーバーライト)可能なメモリを用いると共に、キャパシティブタッチ検出モードで算出された相関値と、レジスティブタッチ検出モードで算出された相関値とを、以下のように合成処理することにより、キャパシティブタッチ検出モード用メモリ362とレジスティブタッチ検出モード用メモリ363とを省略して、1個の全クロスポイント対応のメモリ(つまり、記憶回路36M)のみを用いる構成とすることもできる。
すなわち、合成処理回路364は、演算処理回路35Cからの相関値の出力と演算処理回路35Rからの相関値の出力とを合成処理した後、記憶回路36Mに書き込む。
この場合、合成処理回路364は、同一のクロスポイントについて、演算処理回路35Cからのキャパシティブタッチ検出モードで算出された相関値と、演算処理回路35Rからのレジスティブタッチ検出モードで算出された相関値とを比較参照し、その比較参照結果に基づいて、書き込む相関値を決定する。
すなわち、同一のクロスポイントにおいて、キャパシティブタッチ検出モードで算出された相関値と、レジスティブタッチ検出モードで算出された相関値とがいずれも基準値refに等しい値であるときには、当該クロスポイントの相関値として、基準値refを記憶回路36Mに書き込む。
また、同一のクロスポイントにおいて、キャパシティブタッチ検出モードで算出された相関値が基準値ref以下の値、あるいは、レジスティブタッチ検出モードで算出された相関値が基準値refより大きい値というように、2つの相関値の一方が、基準値refからそれぞれの検出モードに応じた方向に異なる値であったときには、その相関値を当該クロスポイントの相関値として、記憶回路36Mに書き込む。
この第3の実施の形態の第2の構成例によれば、指示体検出結果は、第1の実施の形態と同様に、スタート信号STの1周期毎に得られる。そして、指示入力面100S上の複数の異なるクロスポイントにおける指示体の検出ができると共に、接触あるいはホバーリング状態の指示体と、クロスポイントを押圧している指示体とを、同時に検出することができる。
[第4の実施の形態:拡散符号としてアダマール符号を用いる場合の改良構成例]
この第4の実施の形態は、第1の実施の形態の指示体検出装置の改良例である。
第1の実施の形態の指示体検出装置においては、送信部200からの送信信号を送信導体11Yに供給し、この送信導体11Yと空間的に交叉する受信導体12Xから、送信信号(電圧信号)に応じた受信信号(電流信号)を得る。そして、指示体が指示入力面100S上にないときの受信信号の電流値と、ホバーリング状態や接触状態などの指示体が指示入力面100S上にあるときの受信信号の電流値とが異なることから、その受信信号の電流変化を検出することにより、指示入力面100S上における指示体の検出をする。
この場合に、キャパシティブタッチ検出モードにおいて受信導体12Xから得られる受信信号は、低レベルであるので、増幅回路32のI/V変換回路では、十分にゲイン(増幅利得)が大きく採れるようにすることが重要である。
ところで、上述の実施の形態では、複数の送信信号を、複数の送信導体に同時に供給し、受信部300で、その複数の送信信号に対応する受信信号成分を分離して検出することにより、高速の指示体検出を行うことができるように構成している。
そして、上述の実施の形態では、複数の送信信号として拡散符号を用いるようにし、特に、拡散符号として、互いに直交していて、互いの分離度が高いアダマール符号を用いている。例えば、上述の実施の形態においては、図34(A)にも示すように、16行×16列のアダマール行列を生成し、このアダマール行列の各行のアダマール符号を、16個の拡散符号C1〜C16として用いるようにしている。
そして、上述の実施形態では、16個の拡散符号C1〜C16を、16本の送信導体11Yに同期して同時に供給するようにしている。すなわち、図34(A)において、16個の拡散符号C1〜C16は、各チップPN1,PN2,・・・,PN16のそれぞれを16本の送信導体に同期して同時に供給する。
したがって、この16本の送信導体11Yと交叉する1本の受信導体12Xからは、16個の拡散符号C1〜C16の各チップPN1,PN2,・・・,PN16のそれぞれのデータが加算されたものに相当する信号が、受信信号として得られる。つまり、図34(A)のアダマール行列の列方向の同じチップ位置のデータが加算されたものに等しい電流信号が、受信導体12Xのそれぞれから、送信信号である拡散符号C1〜C16の1チップ毎に得られることになる。
この図34(A)の例の16個のアダマール符号からなる拡散符号C1〜C16は、一番上の行の拡散符号C1の16個のチップは、全て「1」となるが、その他の拡散符号C2〜C16の16個のチップは、8個の「1」と8個の「−1」とからなっている。
そして、図34(A)のアダマール行列は対称行列であり、行方向の符号列と、列方向の符号列は、同じである。したがって、列方向の符号列もアダマール符号であり、図34(A)から判るように、16種の拡散符号C1〜C16の最初のチップPN1のタイミングでは、1本の受信導体12Xからは、16個の「1」が加算されたものに相当する電流信号が得られることになる。また、16個の拡散符号C1〜C16の2番目以降のチップPN2〜PN16のそれぞれのタイミングでは、1本の受信導体12Xからは、8個の「1」と8個の「−1」とが加算されたゼロレベルの電流信号が得られる。
増幅回路32のI/V変換回路の増幅利得は、全てのチップのタイミングで、飽和することなく、検出すべき電流信号のレベルに応じた出力信号が得られるように設定される必要がある。このため、拡散符号C1〜C16として、図34(A)の16チップのアダマール符号を用いる場合には、増幅回路32のI/V変換回路の増幅利得は、最初のチップPN1のタイミングにおける16個の「1」が加算されたものに相当する電流信号についても、飽和することがないような比較的小さい増幅率に設定する必要がある。しかし、そのように小さい増幅率に設定したのでは、増幅回路32のI/V変換回路の増幅利得として、静電結合方式における低レベルの電流変化を検出するためには、不十分となるおそれがある。
そこで、この第4の実施の形態においては、図34(A)に示す16行×16列のアダマール行列のうちの、16個の拡散符号C1〜C16で全て「1」となる最初の1チップPN1を使用しない15チップからなる16個の拡散符号MC1〜MC16(図34(B)参照)を、送信信号供給回路21から発生する拡散符号として用いるようにする。
すなわち、この16個の拡散符号MC1〜MC16は、図34(B)から判るように、図34(A)の16チップの拡散符号C1〜C16の2番目以降のチップPN2〜PN16を、その15チップPN1〜PN15とするものである。したがって、この16個の拡散符号MC1〜MC16の15チップPN1〜PN15の各チップのタイミングでは、8個の「1」と8個の「−1」とが、8本の送信導体11Yに供給される状態になる。そのため、当該8本の送信導体と交叉する1本の受信導体12Xには、8個の「1」と8個の「−1」とが加算されたゼロレベルの電流信号が得られることなり、16チップの場合のように、先頭のチップのタイミングで大きなレベルの電流信号となってしまうことがない。
したがって、この第4の実施の形態の指示体検出装置においては、増幅回路32のI/V変換回路の増幅利得を大きく設定することが可能となる。
ところが、送信信号供給回路21から発生する16個の拡散符号として、この例のように、16×16のアダマール行列において全てが「1」となる列に対応する先頭のチップを用いない拡散符号MC1〜MC16を用いた場合には、次のような問題が発生することが判明した。以下、この問題を、簡単のため、4×4のアダマール行列の場合を例にとって説明する。なお、この問題は、静電結合方式の指示体検出において生じる。
図35および図36は、4×4のアダマール行列の各行のアダマール符号の全てをチップとして用いる拡散符号C1〜C4を、4本の送信導体11Y1〜11Y4に同期して同時に供給し、1本の受信導体12X1から得られた受信信号(電流信号)と拡散符号C1〜C4のそれぞれとの相関値を得る場合を示す図である。
図35は、指示体が指示入力面100S上にない場合を示しており、図36は、指示体18が送信導体11Y2と受信導体12X1とのクロスポイントに例えば接触している場合を示している。なお、図35および図36では、前述の例に合わせて、受信信号と拡散符号C1〜C4のそれぞれとの相関値を得る相関値演算用符号は、拡散符号C1´〜C4´と記載している。
そして、以下の説明においては、指示体18が指示入力面100S上にない状態において、拡散符号C1〜C4を各送信導体11Yに印加したときに、4本の送信導体11Y1〜11Y4のそれぞれと交叉する受信導体12X1から、4本の送信導体11Y1〜11Y4に供給される送信信号に応じたD1〜D4の信号レベルが得られるものとしている。
そして、図35および図36においては、受信導体12X1から得られた受信信号は、演算増幅器51と検出用コンデンサ52からなるI/V変換回路を備える増幅回路32を通じてA/D変換回路33に供給される。そして、受信導体12X1から得られた受信信号は、A/D変換回路33においてデジタルサンプルデータに変換されて、拡散符号C1〜C4の4チップに対応した出力信号PS1,PS2,PS3,PS4とされ、相関値算出回路のシフトレジスタ35aに保持される。
そして、このシフトレジスタ35aに保持された拡散符号の4チップに対応した出力信号PS1〜PS4と、相関値演算用符号C1´〜C4´とが相関器35bに供給されて、相関演算がなされる。
先ず、図35に示すように、指示体18が指示入力面100S上にない状態における出力信号PS1,PS2,PS3,PS4の値と、相関値とについて説明する。
前述したように、拡散符号C1〜C4の最初のチップは、すべて「1」であるので、出力信号PS1の値は、図35の左下に示すような大きな値となる。したがって、前述もしたように、拡散符号C1〜C4として、4チップのアダマール符号を用いる場合には、増幅回路32のI/V変換回路の増幅利得は、上述の最初のチップPS1のタイミングにおける4個の「1」が加算されたものに相当する大きな値の電流信号についても、飽和することがないような比較的小さい増幅率に設定する必要がある。このため、そのように小さい増幅率に設定したのでは、増幅回路32のI/V変換回路の増幅利得として、静電結合方式における低レベルの電流変化を検出するためには、不十分となるおそれがある。なお、2チップ目以降に対応する出力信号PS2,PS3,PS4の値は、ゼロになる。
そして、シフトレジスタ35aに保持された出力信号PS1〜PS4と、相関値演算用符号C1´〜C4´のそれぞれとの4個の相関値は、出力信号PS1がゼロでない値をとるので、図35の右下に示すように、全て所定の値となる。この場合、送信導体11Y1〜11Y4と受信導体12X1とのクロスポイントの静電結合容量が全て等しいとすれば、D1=D2=D3=D4となるので、前述したように、指示体18が指示入力面100S上にない状態における相関値は、全て等しい値(前述した基準値ref)となる。
次に、図36に示すように、指示体18が送信導体11Y2と受信導体12X1とのクロスポイントに例えば接触している状態における出力信号PS1,PS2,PS3,PS4の値と、相関値とについて説明する。
この場合には、指示体18が送信導体11Y2と受信導体12X1とのクロスポイントに接触しているので、信号レベルD2が減少する。このため、出力信号PS1,PS2,PS3,PS4のそれぞれの値は、図36の左下に示すように、当該信号レベルD2の減少分が反映されたものとなる。
そして、シフトレジスタ35aに保持された出力信号PS1〜PS4と、相関値演算用符号C1´〜C4´のそれぞれとの4個の相関値は、図36の右下に示すような値となる。すなわち、拡散符号C2に対応する相関値演算用符号C2´のみについての相関値が、基準値refよりも信号レベルD2の減少分に応じた分だけ小さくなり、他の3個の相関値は、基準値refとなる。
この場合に、デジタルサンプルデータPS1,PS3,PS4のそれぞれに表れていた信号レベルD2の減少分が反映された成分は、相関値演算用符号C1´,C3´,C4´との相関値の演算の際に相殺されるので相関値には表れず、相関値は基準値refとなる。また、拡散符号C2に対応する相関値演算用符号C2´についての相関値は、信号レベルD2の減少分に正確に応じた分だけ、基準値refよりも小さくなる。
したがって、前述したように、算出された相関値から、指示体18が指示入力面100S上にない状態における相関値である基準値refを減算すると、拡散符号C2に対応する相関値演算用符号C2´のみについての相関値が、信号レベルD2の減少分に正確に応じた負の値となる。
次に、4×4のアダマール行列の各行のアダマール符号の最初の1チップを用いる場合の増幅回路32のI/V変換回路の増幅利得が小さくなる問題を解消するためには、前述したように、前記最初の1チップを用いない拡散符号MC1〜MC4を用いればよい。
4×4のアダマール行列の各行のアダマール符号の最初の1チップを用いない拡散符号MC1〜MC4を、4本の送信導体11Y1〜11Y4に、同期して同時に供給し、1本の受信導体12X1から得られた受信信号と拡散符号MC1〜MC4のそれぞれとの相関値を得る場合について、図37および図38を参照して説明する。なお、図37および図38では、前述の例に合わせて、受信信号と拡散符号MC1〜MC4のそれぞれとの相関値を得る相関値演算用符号は、拡散符号MC1´〜MC4´と記載している。
すなわち、図37および図38は、それぞれ図35および図36のそれぞれと対応する図であり、図37は、指示体18が指示入力面100S上にない場合を示しており、図38は、指示体18が送信導体11Y2と受信導体12X1とのクロスポイントに例えば接触している場合を示している。
この図37および図38においては、受信導体12X1から得られた受信信号は、増幅回路32を通じてA/D変換回路33に供給され、拡散符号MC1〜MC4の3チップに対応した出力信号PS2,PS3,PS4とされ、相関値算出回路のシフトレジスタ35aに保持される。
そして、このシフトレジスタ35aに保持された出力信号PS2〜PS4と、相関値演算用符号MC1´〜MC4´とが相関器35bに供給されて、相関演算がなされる。
先ず、図37に示すように、指示体18が指示入力面100S上にない状態における出力信号PS2,PS3,PS4の値と、相関値とについて説明する。
前述したように、拡散符号MC1〜MC4の各チップに対応する出力信号PS2,PS3,PS4の値はゼロになる。そして、シフトレジスタ35aに保持された出力信号PS2〜PS4と、相関値演算用符号MC1´〜MC4´のそれぞれとの4個の相関値も、図37の右下に示すように、全てゼロとなる。すなわち、この場合には、相関値の基準値refはゼロとなり、相関値もゼロとなる。
次に、図38に示すように、指示体18が送信導体11Y2と受信導体12X1とのクロスポイントに例えば接触している状態における出力信号PS2,PS3,PS4の値と、相関値とについて説明する。
この場合には、指示体18が送信導体11Y2と受信導体12X1とのクロスポイントに接触しているので、信号レベルD2が減少する。このため、出力信号PS2,PS3,PS4のそれぞれの値は、図38の左下に示すように、当該信号レベルD2の減少分が反映されたものとなり、ゼロとはならない。
そして、シフトレジスタ35aに保持された出力信号PS2〜PS4と、相関値演算用符号C1´〜C4´のそれぞれとの4個の相関値は、図38の右下に示すような値となる。すなわち、拡散符号C2に対応する相関値演算用符号C2´についての相関値が、ゼロよりも信号レベルD2の減少分に応じた分だけ小さくなると共に、他の3個の相関値が、ゼロよりも、信号レベルD2の減少分に応じた分(オフセットと称する)だけずれたものとなる。
この場合に、4個の相関値の平均レベルがゼロになる。そして、4個の相関値は、指示体の接触状態やホバーリングの状態に応じて、ゼロを平均値として上下に変動するものとなる。
そのため、指示体18が接触している本来のクロスポイントに対応する拡散符号についての相関値を基準レベルref=ゼロとして検出した場合、静電結合方式により検出された指示体が存在するクロスポイントで得られる負極性の相関値は、前記オフセットの分だけ小さくなり、指示体の検出が正しくできないおそれがあるという問題を生じてしまうのである。
この問題を解決するためには、図38の例で説明すると、出力信号PS2,PS3,PS4と相関値演算用符号C1´,C3´,C4´との相関値に表れるオフセット分を、算出された相関値から減算して較正すればよい。そうすれば、指示体位置検出に用いる相関値refを、オフセット分を排除した状態でゼロとすることができるので、負の相関値を正しく検出できるからである。
出力信号PS2,PS3,PS4と相関値演算用符号C1´,C3´,C4´との相関値に表れる前記オフセット分は、図38の例であれば、指示体18が送信導体11Y2と受信導体12X1とのクロスポイントに接触して信号レベルD2が減少することにより生じる。そして、このオフセット分は、指示体18により接触など指示入力されていない他の送信導体11Y1,11Y3,11Y4を通じた拡散符号についての相関値から正しく検出することができる。
しかし、ここで注意すべきは、オフセット分を検出する送信導体11Yは、指示入力面100Sにおいて、指示体18により接触などの指示入力がなされたときに、当該指示体18により、接触などの指示入力がなされていない位置の送信導体11Yであるということである。したがって、このことを満足するためには、常に、オフセット分を検出する送信導体11Yは、指示体18により接触などの指示入力がなされない状態にしなければならないことである。
そのための一方策としては、互いに符号が異なる複数個の拡散符号のうちの任意の1つの拡散符号は、指示体18による接触などの指示入力を検出しないようにマスク処理などを施した送信導体11Yから得るようにすればよい。
しかし、送信導体11Yに対してそのようなマスク処理を施すことは、困難である。また、マスク処理を施すことが可能であるとしても、センサ部100の構造が複雑になり、コスト高となってしまうおそれがある。
そこで、この第4の実施の形態では、互いに符号が異なる複数個の拡散符号のうちの任意の1つの拡散符号を送信導体11Yには供給せずに、直接、受信導体12Xの出力信号に供給するようにする。このようにすれば、その拡散符号は、指示体18により接触など指示入力されるクロスポイントを介することなく、受信導体12Xの出力信号に加えることができ、その拡散符号の相関値としてオフセット分を検出することができるからである。そして、検出したオフセット分により、相関値算出回路で算出した相関値を較正することで、常に正しく指示体の検出をすることが可能になる。
前述した第1の実施の形態の指示体検出装置に、この第4の実施の形態を適用した場合の要部の構成を、図39および図40に示す。この第4の実施の形態の構成は、16種の拡散符号C1〜C16のうちの拡散符号C1を、オフセット分を検出するための拡散符号に用いた場合の例である。なお、第1の実施の形態と同じ構成部分には、同じ参照番号を付して、その詳細な説明は省略する。
図39は、この第4の実施の形態の場合におけるセンサ部100´、送信部200´、および受信部300´の増幅回路32までの部分の構成例を示す図である。また、図40は、この第4の実施の形態の場合における位置検出回路34´の構成例を示す図である。その他の部分は、第1の実施の形態と同様に構成される。
図39に示すように、この第4の実施の形態のセンサ部100´は、第1の実施の形態のセンサ部100における送信ブロックTB1の4本の送信導体11Y1〜11Y4を有しない。したがって、第4の実施の形態のセンサ部100´は、送信導体数は60本となる。なお、受信導体群12については、検出ブロックDB1〜DB16の構成を含めて、この第4の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様である。
そして、この第4の実施の形態においては、送信ブロックTB1が存在しないことから、送信導体選択回路22´は、第1の実施の形態の場合の送信導体選択回路22におけるスイッチ回路2201を有しない。
そして、図39に示すように、送信信号供給回路21の拡散符号生成回路2102〜2116からの15種の拡散符号C2〜C16のそれぞれが、送信導体選択回路22´を通じて送信ブロックTB2〜TB16のそれぞれの1本ずつの送信導体11Yに同期して同時に供給される。
この第4の実施の形態では、送信信号供給回路21の拡散符号生成回路2101からの拡散符号C1は、それぞれコンデンサ3801,3802,・・・,3816を介して、受信導体選択回路31からの出力信号S1〜S16のそれぞれに加えられて、増幅回路32のI/V変換回路3201,3202,・・・,3216のそれぞれに供給される。
この場合、コンデンサ3801,3802,・・・,3816の容量は、例えば送信導体11Yと受信導体12Xとのクロスポイントにおける静電容量Coに選定されている。つまり、拡散符号C1は、指示体18が存在しない状態におけるクロスポイントと同じ静電容量Coを通じて増幅回路のI/V変換回路3201,3202,・・・,3216のそれぞれに供給される。
したがって、増幅回路32のI/V変換回路3201,3202,・・・,3216のそれぞれに入力される出力信号S1〜S16は、16個の拡散符号C1〜C16の全てが多重された信号に対応した信号となる。
この出力信号S1〜S16のそれぞれは、第1の実施の形態の場合と同様にして、増幅回路32のI/V変換回路3201,3202,・・・,3216のそれぞれで電圧信号に変換され、増幅された後、A/D変換回路33のA/D変換器3301〜3316でデジタルサンプルデータに変換される。
そして、A/D変換器3301〜3316のそれぞれから出力されたデジタルサンプルデータは、図40に示すように、位置検出回路34の演算処理回路35の対応する相関値算出回路3501〜3516に供給される。この相関値算出回路3501〜3516は、それぞれ図18に示した第1の実施の形態の場合と全く同様の構成を備えるものであり、入力されたデジタルサンプルデータは、それぞれシフトレジスタ35aに、出力信号PS1〜PS16として保持される。
前述したように、各相関値算出回路3501〜3516は、それぞれシフトレジスタ35aに保持された出力信号PS1〜PS16と、16個の拡散符号C1〜C16との相関演算を行い、算出された相関値が出力回路36´に供給される。後述するように、シフトレジスタ35aに保持された出力信号PS1〜PS16と、16個の拡散符号C1〜C16との16個の相関値のうち、拡散符号C1についての相関値は、オフセット値を示すものとなる。
この第4の実施の形態においては、図40に示すように、出力回路36´は、記憶回路36M´と、位置算出回路361と、オフセット除去回路365とを備えて構成されている。
記憶回路36M´は、センサ部100´の送信導体数×受信導対数=60×128個のクロスポイントの相関値を記憶する記憶回路である。位置算出回路361は、第1の実施の形態と同様の構成を備えるもので、この第4の実施の形態では、この記憶回路36M´に記憶された相関値から、指示体の検出結果を出力データとして生成する。
オフセット除去回路365は、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれの相関値記憶回路35dからの出力を受けてオフセットの除去を行うための減算回路501〜516を備えている。
そして、オフセット除去回路365の各減算回路501〜516は、それぞれ記憶回路36M´に接続され、各減算回路501〜516でオフセット値が除去された相関値のそれぞれを記憶回路36M´に転送する。記憶回路36M´は、この転送されてきた相関値を記憶する。
また、オフセット除去回路365は制御回路40に接続されている。オフセット除去回路365の各減算回路501〜516の構成は、全て同一であるので、図41に、減算回路501の場合として、その構成例を示す。
減算回路501は、15個の減算器50a2〜50a16から構成される。15個の減算器50a2〜50a16の一方の入力端は、それぞれ相関値算出回路3501の相関値記憶回路35dの対応するレジスタ35d2〜35d16の出力端のそれぞれに接続されている。
また、各減算器50a2〜50a16の他方の入力端は、相関値算出回路3501の相関値記憶回路35dのレジスタ35d1の出力端に接続されている。
そして、各減算器50a2〜50a16は、レジスタ35d2〜35d16からの相関値から、レジスタ35d1からの相関値(オフセット値)を減算する。
第1の実施の形態と同様に、受信導体選択回路31が、16個の検出ブロックDBのそれぞれの1本の受信導体12Xが選択されている状態において、15個の拡散符号C2〜C16は、15本ずつの送信導体11Yの4組に、1周期分毎に供給される。そして、16個の検出ブロックDB 1 〜DB 16 のそれぞれで1本の受信導体12Xが選択されている状態において、拡散符号の4周期分で、15種の拡散符号C2〜C16が、全ての送信導体11Yに供給される。
したがって、受信導体選択回路31からの16個の出力信号S1〜S16のそれぞれは、15個の拡散符号C2〜C16の各チップの成分が加算されたような信号となる。そして、拡散符号C1は、コンデンサ3801〜3816のそれぞれを通じて、この受信導体選択回路31からの16個の出力信号S1〜S16のそれぞれ加算されることにより、増幅回路32の各I/V変換回路3201,3202,・・・,3216に入力される出力信号S1〜S16のそれぞれは、16個の拡散符号C1〜C16の全てが加算されたような信号となる。
前記拡散符号の4周期分の最初の1周期においては、15個の拡散符号C2〜C16が、それぞれ15本の送信導体11Y8,11Y12,・・・,11Y60に供給される。そして、受信導体選択回路31からの16個の出力信号S1〜S16のそれぞれに対して、拡散符号C1が、コンデンサ3801〜3816のそれぞれを通じて加算される。
この出力信号S1〜S16のそれぞれは、前述したように増幅回路32を介してA/D変換回路33に供給されて、それぞれデジタルサンプルデータに変換され、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれのシフトレジスタ35dに保持される。そして、相関値算出回路3501〜3516のそれぞれにおいて、出力信号S1〜S16のそれぞれのデジタルサンプルデータと、拡散符号C1〜C16のそれぞれとの相関値が算出される。
この場合、前述したように、拡散符号C1は、センサ部100´の送信導体11Yには供給されないので、当該拡散符号C1についての相関値は、受信導体選択回路31で選択されている受信導体12Xと、15本の送信導体11Y8,11Y12,・・・,11Y60とのクロスポイントのそれぞれについてのオフセット値となる。
このオフセット値は、相関値算出回路3501〜3516の各相関値記憶回路35dのレジスタ35d1から得られる。つまり、相関値記憶回路35dのレジスタ35d1には、オフセット値が保持される。そして、このレジスタ35d1からのオフセット値はオフセット除去回路365に供給され、各減算回路501〜516において減算器50a2〜50a16のそれぞれに供給される。
そして、オフセット除去回路365の減算回路501〜516のそれぞれでは、それぞれの減算器50a2〜50a16において、レジスタ35d2〜35d16からの相関値から、レジスタ35d1からのオフセット値を減算して除去する。そして、減算回路501〜516のそれぞれからのオフセット値が除去された相関値が、記憶回路36M´に供給されて記憶される。
受信導体選択回路31で選択されている受信導体12Xと、他の15本の送信導体の組についても、上述と同様の処理動作がなされる。そして、15本の送信導体の4組についての処理動作が終了すると、受信導体選択回路31で選択されている受信導体12Xが、検出ブロックDB1〜DB16のそれぞれにおいて、他の1本の受信導体に切り替えられ、上述の動作が繰り返される。
以上のようにして、この第4の実施の形態においては、互いに符号が異なる複数個のアダマール符号で全て「1」となる最初の1チップを用いない拡散符号を用いるので、増幅回路32の増幅利得を大きくすることができる。
しかも、この第4の実施の形態においては、互いに符号が異なる複数個のアダマール符号で全て「1」となる最初の1チップを用いない拡散符号を用いても、その場合の問題点を解決して、アダマール符号の全てのチップを用いる場合と同様にして、指示体を正しく検出できるようになる。
<較正用信号の合成方法の他の例>
ところで、上記の例においては、受信導体12Xからの出力信号と相関値のオフセットの較正用信号(キャリブレーション用信号)とをA/D変換回路33に入力する前、すなわちアナログ信号の段階で合成する場合を例示して説明した。このように、キャリブレーション用信号と受信導体12Xからの出力信号とをアナログ信号の段階で合成する場合、コンデンサ3801〜3816を設けるのみで実現できるので、回路構成を簡素化できる点で優れる。
しかしながら、このコンデンサ3801〜3816は、送信導体11Yと受信導体12Xとのクロスポイントに形成されるコンデンサと同程度の容量値に設定する必要がある。この送信導体11Yと受信導体12Xとのクロスポイントに形成されるコンデンサの容量は、例えば約0.5pF程度の非常に小さい容量となるので、実際の回路基板に実装するのが非常に困難である。また、上述の例においては、キャリブレーション用信号と受信導体12Xからの出力信号とをアナログ信号の段階で合成するので、誤差が生じやすい、という問題もある。
そこで、このキャリブレーション用信号の合成方法の他の例においては、キャリブレーション用信号をA/D変換回路33の出力信号、すなわち、デジタル信号に変換された受信信号と合成するようにする。
図42は、オフセット値を得るためのキャリブレーション用信号としての拡散符号をA/D変換回路33の出力信号に加算するようにした場合の構成例を示す図である。この図42の例も、オフセット値を得るためのキャリブレーション用信号に、拡散符号C1を用いる。
この例においては、A/D変換回路33の出力側に加算回路39を設ける。この加算回路39は、A/D変換回路33のA/D変換器3301〜3316のそれぞれの出力端が一方の入力端に接続される加算器3901〜3916を備える。
そして、送信信号供給回路21の拡散符号発生回路2101からの拡散符号C1は、コンデンサ38を介してI/V変換回路3220に供給される。この場合、コンデンサ38の容量は、送信導体11Yと受信導体12Xとのクロスポイントにおける静電容量Coに選定されている。また、I/V変換回路3220は、増幅回路32の各I/V変換回路3201〜3216と同様に構成されている。つまり、拡散符号C1は、指示体18が存在しない状態におけるクロスポイントの静電容量Coを通じてI/V変換回路3220に供給される。
そして、A/D変換回路33のA/D変換器3301〜3316のそれぞれと同様にして、I/V変換回路3220の出力信号はA/D変換器3320により、クロック信号CLKに同期したデジタルサンプルデータに変換される。そして、A/D変換器3320からのデジタルサンプルデータは、加算回路39の加算器3901〜3916のそれぞれに供給される。
加算回路39の加算器3901〜3916のそれぞれは、A/D変換器3301〜3316からのデジタルサンプルデータと、A/D変換器3320からのデジタルサンプルデータとを加算する。そして、加算回路39の加算器3901〜3916のそれぞれの加算出力は位置検出回路34に供給される。その他の構成は、上述の第4の実施の形態の構成と同様である。
上述したように、このキャリブレーション用信号の合成方法の他の例においては、キャリブレーション信号と受信導体12Xからの出力信号とは、デジタル信号で合成される。したがって、キャリブレーション用信号を供給するために設けられたコンデンサ38に、例えば、8pFのコンデンサを用い、A/D変換器3320において、4ビット分のデータを桁落としすることで、アナログ信号で合成する場合よりも高い精度で信号合成を可能にすることができる。
なお、上述の第4の実施の形態においては、キャリブレーション用信号は、1つの拡散符号を用いる例を説明したが、1つの拡散符号を用いる場合に限定されない。例えば、2つ以上の拡散符号をキャリブレーション用信号として供給するようにしても良い。
以上は、第4の実施の形態を第1の実施の形態に適用した場合について説明したが、第4の実施の形態は、第2の実施の形態や第3の実施の形態にも適用できることは言うまでもない。
[第5の実施の形態:検出むらの除去、図43−図47]
この第5の実施の形態は、上述の第1〜第4の実施の形態における送信部200、200´および受信部300、300´の部分の変形例である。
前述もしたように、指示体18としては、ユーザの指のみではなく、ペンなども用いることができる。そして、この実施の形態の指示体検出装置では、抵抗膜方式により指示体18による押圧力の検出も可能となっている。
ところで、ペンなどの指示体18によれば、図43(A),(B)に示すように、2本の受信導体12Xm,12Xm+1の間の点を指示入力することも可能となる。しかし、このように、2本の受信導体12Xm,12Xm+1の間の点を指示入力した場合、その指示入力点の、2本の受信導体12Xm,12Xm+1の間の位置に応じて、2本の受信導体12Xm,12Xm+1の出力信号から算出される指示体の検出出力(相関値)が変化してしまう。
すなわち、ペンの指示体18の指示入力点が、図43(A)のように、2本の受信導体12Xm,12Xm+1のうち、受信導体12Xm側に近い場合には、図43(C)に示すように、受信導体12Xmの出力信号から得られる指示体検出出力(相関値)Imが大きく、受信導体12Xm+1の出力信号から得られる指示体検出出力(相関値)Im+1が小さくなる。これに対して、ペンの指示体18の指示入力点が、図43(B)のように、2本の受信導体12Xm,12Xm+1のうち、受信導体12Xm+1側に近い場合には、図43(D)に示すように、受信導体12Xmの出力信号から得られる指示体検出出力(相関値)Imが小さく、受信導体12Xm+1の出力信号から得られる指示体検出出力(相関値)Im+1が大きくなる。
このため、例えば、ペンの指示体18を、指示入力面100Sを押圧しながら直線を描くように受信導体の延伸方向に沿った方向に移動させた場合、図44に示すように、その指示体の検出出力に応じて検出される線60は、太さにむらが生じたり、揺らいでしまったりするものとなってしまうという問題がある。
図43、図44の説明は、2本の受信導体の間の点位置を指示体18により指示入力した場合であるが、2本の送信導体の間の点位置を指示体18により指示入力した場合においても、同様の問題が生じする。この第5の実施の形態は、以上の問題を解決した例である。
<第1の例>
図45は、この第5の実施の形態の第1の例の要部の基本的概念を説明するための図である。この第5の実施の形態の第1の例においては、拡散符号Ckは、2本の送信導体11Yn,11Yn+1に同時に供給される。また、2本の受信導体12Xm,12Xm+1から得られる受信信号(電流信号)は、それぞれI/V変換回路61,62を通じて増幅器63に供給され、この増幅器63で加算されるようにする。
このようにすれば、増幅器63から得られる信号S mix についての指示体検出出力(相関値)は、指示体検出出力(相関値)Imと指示体検出出力(相関値)Im+1とを加算したのと等価の指示体検出出力(相関値)となる。すなわち、ペンの指示体18の指示入力点が、図43(A)のように、2本の受信導体12Xm,12Xm+1のうち、受信導体12Xm側に近い場合には、図43(E)に示すような指示体検出出力(相関値)I mix が得られる。また、ペンの指示体18の指示入力点が、図43(B)のように、2本の受信導体12Xm,12Xm+1のうち、受信導体12Xm+1側に近い場合にも、図43(F)に示すような指示体検出出力(相関値)I mix が得られる。
したがって、ペンの指示体18を、指示入力面100Sを押圧しながら直線を描くように移動させた場合には、その指示体検出出力に応じて検出される線は、太さにむらが生じたり、揺らいでしまったりすることのないものとなる。
なお、この第5の実施の形態における受信部300においては、受信導体選択回路31´のスイッチ回路3101´〜3116´のそれぞれは、図46に示すように、それぞれ2本ずつの受信導体を選択するようなスイッチ回路の構成となる。そして、スイッチ回路3101´〜3116´のそれぞれは、2本ずつの受信導体を、1本ずつずらして選択する。すなわち、スイッチ回路3101´〜3116´のそれぞれは、2本の受信導体12Xm,12Xm+1の次には、2本の受信導体12Xm+1,12Xm+2、その次には、2本の受信導体12Xm+2,12Xm+3、というように、1本ずつずらして切り替えるようにする。
この第5の実施の形態の場合、図46において点線で囲んで示すように、検出ブロックを構成する受信導体で、サフィックスが最も大きい受信導体については、隣りの検出ブロックでサフィックスが最小の先頭の受信導体との加算を行うように、スイッチ回路3101´〜3116´のそれぞれを構成する。
また、図示は省略するが、送信部200の送信導体選択回路22´についても、それぞれの拡散符号Ckを供給する2本の送信導体を、1本ずつ切り替えるようにする。すなわち、2本の送信導体11Yn,11Yn+1の次には、2本の送信導体11Yn+1,11Yn+2、その次には、2本の送信導体11Yn+2,11Yn+3、というように、1本ずつずらして切り替えるようにする。また、上述した検出ブロックの場合と同様に、送信ブロックで、隣接するものの送信導体は、2つのブロックで共用して使用する。
<第2の例>
図47は、この第5の実施の形態の第2の例の要部の基本的概念を説明するための図である。この第5の実施の形態の第2の例においては、拡散符号Ckは、3本の送信導体11Yn−1,11Yn,11Yn+1に同時に供給する。また、3本の受信導体12Xm−1,12Xm,12Xm+1から得られる受信信号を、それぞれI/V変換回路64,65,66を通じて差動増幅器67に供給し、この差動増幅器67で合成するようにする。この第2の例の場合、中央の受信導体12Xmが注目受信導体であり、その注目受信導体からの受信信号が差動増幅器67の非反転入力端子に供給される。そして、中央の受信導体12Xmの両隣の受信導体12Xm−1,12Xm+1から得られる受信信号は、差動増幅器67の反転入力端子に供給される。
この第2の例においては、差動増幅器67の出力信号として、受信導体から得られる受信信号に対して耐ノイズ性を向上させた出力信号を得ることができる。そして、差動増幅器67の非反転入力端子に供給される中央の注目受信導体12Xmからの受信信号を、両隣の受信導体12Xm−1,12Xm+1から得られる受信信号の2倍にした、特に耐ノイズ性を向上させることができる。
なお、この第2の例の場合にも、受信部の受信導体選択回路は、3本ずつの受信導体を、1本ずつずらして選択するようにする。また、送信部の送信導体選択回路でも、3本の送信導体を、1本ずつずらして選択するようにする。そして、検出ブロックや送信ブロックの隣接する導体同士では、受信導体や送信導体をオーバーラップして用いるようにするのは、第1の例と同様である。
なお、この第5の実施の形態は、上述した実施の形態の全てに適用可能である。
[第6の実施の形態:増幅回路の自動利得制御]
ところで、第1の実施の形態の指示体検出装置1は、安定して相関演算を行えるように電気信号に変換された受信信号は、その信号レベルを増幅器において所定の信号レベルに増幅された後、A/D変換回路33においてデジタルサンプルデータに変換されて相関値算出回路34に入力される。
ノイズが受信信号よりも大きい場合、ノイズが混在した受信信号の信号レベルを一義的に増幅してしまうと、ノイズも増幅されてしまい、A/Dコンバータがクリップしてしまい、受信信号を適切に検出することができなくなってしまう、という問題がある。
しかしながら、受信信号の信号レベルを増幅しないと、例えば、ホバーリング状態にある指示体を検出するときには受信信号の信号レベルの変化が極く小さくなり、指示体18を検出できない、という問題が発生する。第6の実施の形態は、この問題を解決したものであり、増幅回路32の部分に特徴がある。
以下、図48及び図49を参照して、この第6の実施の形態を説明する。図48は、この第6の実施の形態における受信部330の概略ブロック構成図、図49は後述する利得値設定回路を構成する絶対値検波回路の回路構成図である。
この第6の実施の形態に示す受信部330と、第1の実施の形態における受信部300とを比較すると、その相違点は、増幅回路32の代わりに、自動利得制御機能を備える増幅回路510を用いている点である。その他は、第1の実施の形態の場合と同一の構成であり、当該同一の構成については同一の番号を付してその説明は省略する。なお、図48の増幅回路510には、簡単のため、出力信号S1〜S16のうちの一つの出力信号についての内部回路を示した。実際的には、出力信号S1〜S16のそれぞれについて、図48の増幅回路510の内部回路が設けられるものである。
図48に示すように、この例の増幅回路510は、I/V変換回路511と、利得調整回路512と、利得値設定回路513を備える。I/V変換回路511は、上述したI/V変換回路3201〜3216と同様の構成を有するものであり、この例では、このI/V変換回路511の出力端は、利得調整回路512の入力端に接続されている。
利得調整回路512は、入力された信号の信号レベルを適宜所定の信号レベルに増幅又は減少させるための回路である。この利得調整回路512は、利得値設定回路513からの制御信号に基づいてその出力信号レベルの制御をおこなう。この際、利得調整回路513と扱う信号エネルギー成分の信号強度には、検出すべき信号(拡散符号)成分だけでなくノイズ等も含まれるので、利得制御回路512は、信号全体のエネルギー成分の信号強度に基づいてゲイン値を設定する。
この利得調整回路512の出力信号は、A/D変換回路33に供給されてデジタルサンプルデータに変換される。このA/D変換回路33からのデジタルサンプルデータは、位置検出回路34に供給されると共に、この例では、利得値設定回路513に供給される。
利得値設定回路513は、A/D変換回路33からのデジタルサンプルデータに基づいて利得調整回路512を制御するための制御信号を生成し、その制御信号を利得調整回路512の制御信号入力端に供給する。この利得値設定回路512は、絶対値検波回路514と、利得値設定回路515とを備える。
絶対値検波回路514は、A/D変換回路33からのデジタルサンプルデータのエネルギー成分の信号強度を検出する。なお、A/D変換回路33から出力されるデジタルサンプルデータには、検出すべき信号(拡散符号)成分だけでなくノイズ等の不要な信号成分も含まれるので、絶対値検波回路514では、ノイズ等の不要な信号成分を含む検出信号全体のエネルギー成分の信号強度が検出される。
自動利得制御回路515は、絶対値検波回路514において検出された信号強度に基づいて、利得調整回路512の利得を制御する制御信号を生成し、利得調整回路512に供給する。
絶対値検波回路514は、例えば図49に示すような構成例を有する。すなわち、図48の例では、絶対値検波回路514は、自乗乗算器5141と、この自乗乗算器5141の出力端子に接続された積分器5142とを備える。
自乗乗算器5141は、A/D変換回路33の出力信号を自乗演算し、演算後の自乗演算出力信号を積分器5142に出力する。積分器5142は、自乗乗算器5141からの自乗演算出力信号を時間的に積分し、その積分出力信号を絶対値検波出力として得る。そして、積分器5142は、その積分出力信号を自動利得制御回路515に供給する。
この第6の実施の形態においては、上述のようにして、検出すべき信号(拡散符号)成分だけでなくノイズ等も含まれる信号のエネルギー成分の信号強度を検出し、その信号強度に基づいて、利得調整回路512の利得値を制御して、その出力レベルを所定レベルとするように自動利得制御する。したがって、利得調整回路512に入力される信号にノイズ等が重畳されていても、当該入力信号に対して、適切に自動利得制御をすることができる。
なお、絶対値検波回路514で絶対値検波出力を得る手法としては、検出すべき信号成分及びノイズを含む信号のレベルを検出できれば任意の方法を用いることができる。例えば、上述した手法以外では、絶対値検波回路514の入力信号のレベルの絶対値を積分する手法等を用いることができる。また、絶対値検波処理には、A/D変換後のデジタル信号処理及びA/D変換前のアナログ信号処理のいずれを用いてもよい。
なお、この第6の実施の形態は、上述した実施の形態の全てに適用可能である。
[第7の実施の形態:センサ部の他の構成例、図50−図54]
第7の実施の形態として、センサ部の他の構成例を説明する。
<センサ部の変形例1>
上述の実施の形態のセンサ部100の感圧材は、図2に示したように、指示入力面100Sに直交する方向に送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとを、所定の空隙15を空けて、配設した構成であって、空隙15を介して対向している送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xの面には、図2に示したように、極微な凹凸が形成されていた。
しかしながら、センサ部100の感圧材の構成としては、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xにおいて、極微な凹凸が形成されている面を、互いに対向する面とする場合に限られるものではない。
このセンサ部の変形例1は、その場合の一例である。図50に、この変形例1のセンサ部500の要部を示す。図50(A)は、このセンサ部500におけるX軸方向断面図であり、図50(B)は、同じく、Y軸方向断面図である。なお、前述した実施の形態と同一部分には、同一参照符号を付して、その説明は省略する。後述するセンサ部の他の変形例においても同様とする。
図50の例においては、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xにおいて、空隙15を介して互いに対向する面は、鏡面状とされるが、送信導体11Yと接触する送信抵抗体13Yの面および受信導体12Xと接触する受信抵抗体14Xの面は、図50(A)、(B)に示すように、極微な凹凸が形成されている。
この図50(A)、(B)に示す例においても、指などの指示体18により指示入力面100Sが押下されたときには、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとの対向面が接触すると共に、送信導体11Yと送信抵抗体13Yとの接触面積、また、受信導体12Xと受信抵抗体14Xとの接触面積が、指示体18による押圧力に応じて変化する。したがって、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとが接触した状態における送信導体11Yと受信導体12X間の抵抗値は、指示体18による指示入力面100Sに対する押圧力に応じたものとなり、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
また、センサ部500の構成としては、図50(C)、(D)に示すように、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xにおいて、極微な凹凸が形成されている面を、互いに対向する面とすると共に、送信導体11Yと接触する送信抵抗体13Yの面および受信導体12Xと接触する受信抵抗体14Xの面とするようにしても良い。
この図50(C)、(D)に示す例においても、図50(A)、(B)に示す例と同様にして、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとが接触した状態における送信導体11Yと受信導体12X間の抵抗値は、指示体18による指示入力面100Sに対する押圧力に応じたものとなる。したがって、この図50(C)、(D)に示す例においても、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
なお、図50においては、送信抵抗体13Yは、送信導体11Yに沿って形成し、受信抵抗体14Xは、受信導体12Xに沿って形成するようにしたが、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xのそれぞれを、送信導体11Yまたは受信導体12Xと同方向に形成するようにしても良い。また、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xを、送信導体11Yと受信導体12Xとのクロスポイントに対応する領域毎に、島状に設けるように形成しても良い。さらに、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xは、前述もしたように、下側基板16および上側基板17の一面全体に渡って、形成するようにしても良い。
また、送信抵抗体11Yまたは受信抵抗体12Xの一方は、送信導体11Yまたは受信導体12Xに沿って形成し、他方は、下側基板16または上側基板17の一面全体に渡って形成するようにしても良い。また、送信抵抗体11Yまたは受信抵抗体12Xの一方は、送信導体11Yと受信導体12Xとのクロスポイントに対応する領域毎に島状に設け、他方は、下側基板16または上側基板17の一面全体に渡って、あるいは、送信導体11Yまたは受信導体12Xに沿って形成してもよい。
<センサ部の変形例2>
以上の実施の形態のセンサ部では、感圧材は、送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとからなるものとしたが、1個の抵抗体からなるものとして構成することもできる。図51(A)、(B)は、感圧材を1個の抵抗体により構成する第1の例を示すものである。図51(A)は、この変形例2のセンサ部600におけるX軸方向断面図であり、図51(B)は、同じく、Y軸方向断面図である。
すなわち、図51(A),(B)に示すように、下側基板16上の送信導体11Yと、上側基板17の下側の受信導体12Xとの間の空間に、矩形状の抵抗体19を、各クロスポイントのそれぞれに対して設ける。この抵抗体19としては、上述の例の送信抵抗体13Yや受信抵抗体14Xと同様のものを用いる。
この図51(A),(B)の例では、下側基板16上の送信導体11Y上に、抵抗体19を配設する。この例では、抵抗体19は、図示のように、極微な凹凸が形成されている面側が送信導体11Y側となり、極微な凹凸が形成されていない面側が受信導体12X側となるように配設される。そして、この場合、抵抗体19と受信導体12Xとの間は、僅かな空隙が存在する状態とされる。
なお、図示は省略するが、センサ部600の周縁部の下側基板16と上側基板17との間には、図示のような空隙を生じた状態で、抵抗体19が配設されるように維持するようにするためのスペーサ部材が設けられている。つまり、下側基板16と上側基板17とは、このスペーサ部材を介して接合されている。
この図51(A)、(B)に示す例においても、指示体18により指示入力面100Sが押圧されたときには、抵抗体19と受信導体12Xとが接触すると共に、送信導体11Yと抵抗体19との接触面積が、指示体18による押圧力に応じて変化する。したがって、抵抗体19と受信導体12Xとが接触した状態における送信導体11Yと受信導体12X間の抵抗値は、指示体18による指示入力面100Sに対する押圧力に応じたものとなり、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
なお、抵抗体19は、図51(C)に示すように、受信導体12Xと対向する面側も、極微な凹凸が形成されている面とするようにしても良い。
また、抵抗体19は、図51(D)に示すように、受信導体12Xと対向する面側を極微な凹凸が形成されている面とすると共に、送信導体11Yと接触する面側は、極微な凹凸が形成されていない面とするようにしても良い。この場合には、抵抗体19は、下側基板16およびこの下側基板16上の送信導体11Yに対して積層して構成することができる。
なお、図51においては、抵抗体19は、各クロスポイント位置に対応して互いに分離された矩形状のものとしたが、この例の場合も、複数の送信導体および受信導体に共通に、基板16および基板17の一面の全体に設けるようにしても良い。また、抵抗体19は、送信導体11Yまたは受信導体12Xのいずれかに沿って形成するようにしても良い。
<センサ部の変形例3>
上述したセンサ部の感圧材の例は、抵抗体と抵抗体との接触面積、あるいは、抵抗体と導電体との接触面積に応じた抵抗値が得られるようにしたものである。センサ部に用いる所定の抵抗特性を有する感圧材としては、これに限られるものではない。このセンサ部の変形例3は、そのような感圧材の一例として、可変抵抗弾性体例えば可変抵抗ゴムを用いる場合の例である。
この例で用いる可変抵抗弾性体は、例えば特許文献5(特開平6−192485号公報)に記載されているように、内部に、例えばカーボンブラックや金属粉などの導電粒子が微小な間隔で均等に分散した多孔質ゴムからなる可変抵抗ゴムである。この可変抵抗ゴムの電気抵抗と荷重との関係を図52に示す。この可変抵抗ゴムに荷重がかかっていないときには、導電粒子同士は、微小な間隔で分散しているので、この図52に示すように、その抵抗値は非常に大きいものとなる。
そして、可変抵抗ゴムに荷重がかかると、可変抵抗ゴムは弾性偏倚し、導電粒子は鎖状あるいは塊状となって、それらが部分的に接触し合うようになり、可変抵抗ゴムは、導電性を有するものとなる。そして、可変抵抗ゴムは、図52に示すように、荷重が大きくなればなるほど、導電粒子が鎖状あるいは塊状となる度合いが多くなるので、その電気抵抗値が小さくなる特性を有する。
図53(A)、(B)は、この変形例3のセンサ部700の一例を示すもので、感圧材を1個の抵抗体により構成する第2の例を示すものである。図53(A)は、このセンサ部700におけるX軸方向断面図であり、図53(B)は、同じく、Y軸方向断面図である。
このセンサ部700においては、可変抵抗ゴムからなる感圧抵抗部材を、感圧材として用いる。そして、送信抵抗体13Yおよび受信抵抗体14Xの代わりに、送信導体11Yと受信導体12Xとのクロスポイントの部分に、矩形状の可変抵抗ゴムからなる感圧抵抗部材130を設ける。
この場合、指示入力面100Sに対して指示体18による押圧荷重がかかっていない状態においては、感圧抵抗部材130に対しては、感圧抵抗部材130は、送信導体11Yと受信導体12Xとの交叉点に位置するように構成されている。
以上のような構成とされたこのセンサ部700においては、指などの指示体18により指示入力面100Sに対して押圧荷重が加えられると、その押圧荷重がかかったクロスポイント位置の感圧抵抗部材130が弾性偏倚して、当該感圧抵抗部材130の電気抵抗値が小さくなる。
したがって、このセンサ部700においては、指示入力面100Sに対して指示体18による押圧荷重がかかっていない状態においては、感圧抵抗部材130の電気抵抗が非常に大きいために、感圧抵抗部材130を介した電流は殆ど流れない。すなわち、センサ部700の指示体入力面100Sに対して指示体18による押圧荷重がかかっていない状態においては、感圧抵抗部材130は、送信導体11Yと受信導体12Xとの間を絶縁するための絶縁材として機能する。
そして、指示体18により指示入力面100Sに対して押圧荷重が加えられると、その押下荷重に応じて感圧抵抗部材130の電気抵抗値が小さくなるので、押下荷重に応じた電流が、感圧抵抗部材130を介して送信導体11Yと受信導体12Xとの間に流れる。
この電流を監視することにより、上述の実施の形態と同様にして、この変形例3においても、抵抗膜方式による指示体検出が可能となる。
なお、図53においては、感圧抵抗部材130は、各クロスポイント位置に対応して互いに分離された矩形状のものとしたが、この例の場合も、複数の送信導体11Yおよび受信導体12Xに共通に、基板16および基板17の一面の全体に設けるようにしても良い。また、感圧抵抗部材130は、送信導体11Yまたは受信導体12Xのいずれかに沿って形成するようにしても良い。
<センサ部の変形例4>
上述の例のセンサ部は、全て、下側基板16と上側基板17との2枚の基板間において、送信導体、受信導体、感圧材を備える構成の場合である。しかし、1枚の基板上において、送信導体、受信導体、感圧材を形成する構成とすることもできる。このセンサ部の変形例4は、基板を1枚のみ用いる構成のセンサ部の例である。
この変形例4のセンサ部800の一例を図54に従って説明する。ここで、図54(A)は、このセンサ部800の一つのクロスポイント部分におけるX軸方向断面図、図54(B)は、この変形例4のセンサ部の斜視図をそれぞれ示す。なお、この図54においては、基板160の一方の面上に形成された送信導体、受信導体および感圧材を覆って保護する保護層及び保護シートの記載は省略してある。
このセンサ部800は、図54(A)に示すように、基板160と、複数の送信導体11Y及び複数の受信導体12Xと、感圧抵抗部材131と、金属層110とからなる。
このセンサ部800は、基板160の一方の面上において、送信導体11Yと受信導体12Xとが実質的に交叉する構造を備える。この例では、受信導体12Xは、上述の実施の形態と同様に、Y軸方向に延伸される線状の導体で構成されている。しかし、送信導体11Yは、X軸方向に連続した線状の導体とはなっておらず、受信導体12Xの部分で切断されたような送信導体片11Ybtが、金属層110により接続された構造となっている。すなわち、送信導体11Yのそれぞれは、X軸方向に直線状に並べられた送信導体片11Ybtが金属層110により接続されて、1本の送信導体の構成とされている。
そして、金属層110および送信導体片11Ybtが基板160上に印刷パターンなどにより形成されている。また、受信導体12Xは、金属層110と重なる部分を除き、基板160に対して設けられる。そして、受信導体12Xと金属層110との交叉部分には、変形例3のセンサ部700と同様の感圧抵抗部材131からなる感圧材が設けられる。
この変形例4のセンサ部800における、基板160、送信導体11Y、受信導体12Xは、上記第1の実施の形態と同様の材料で形成することができる。すなわち、第1の実施の形態と同様に、基板160は透過性を有する周知のガラス基板の他、合成樹脂で形成されたシート状(フィルム状)基材を用いてもよい。送信導体11Yおよび受信導体12Xは、例えば、ITO膜からなる透明電極膜で形成される。
また、金属部110は、高導電率を有する金属材料、例えば、Mo(モリブデン)等で形成することができる。金属層110と送信導体片との接触面積は微小であるので、これらの電気抵抗を小さくするため、金属層110には高導電率を有する金属材料を用いることが好ましい。
この変形例4のセンサ部800においても、センサ部の指示体入力面に対して指示体による押圧荷重がかかっていない状態においては、感圧抵抗部材131の電気抵抗が非常に大きいために、感圧抵抗部材130を介した電流は殆ど流れない。すなわち、センサ部800の指示体入力面100Sに対して指示体18による押圧荷重がかかっていない状態においては、感圧抵抗部材131は、送信導体11Yと受信導体12Xとの間を絶縁するための絶縁材として機能する。
そして、指示体18により指示入力面100Sに対して押圧荷重が加えられると、その押下荷重がかけられたクロスポイントにおいて、当該押圧荷重に応じて感圧抵抗部材130の電気抵抗値が小さくなる。このため、押下荷重に応じた電流が、送信導体11Yの送信導体片11Ybt→金属層110→感圧抵抗部材131→受信導体12Xというように流れる。
したがって、この変形例4のセンサ部800においても、上述した変形例3のセンサ部700と同様の作用効果が得られる。
この変形例4のセンサ部800では、例えばガラス基板からなる基板は1枚でよく、センサ部の厚さをより薄くすることができる。また、このセンサ部800では、送信導体11Y及び受信導体12Xを実質的に一層で構成することができるので、より安価なセンサ部を提供することできる。
なお、図54の例では、送信導体11Yを導体片と金属層とからなるものとしたが、送信導体11Yは線状の導体として、受信導体12Xを導体片と金属層とからなるものとしても良い。
なお、図54においては、感圧抵抗部材131は、各クロスポイント位置に対応して互いに分離された矩形状のものとしたが、感圧抵抗部材131は、送信導体11Yまたは受信導体12Xのいずれかに沿って形成するようにしても良い。
<センサ部の変形例5>
クロスポイント静電結合方式を採用した指示体検出装置では、通常、指示体を操作する面側、すなわちセンサ部を上方から見た場合、複数の受信導体及び送信導体が交叉し、導体パターンが存在する領域と存在しない領域がある。各導体はITO膜等の透明電極膜で形成されるが、導体パターンが存在する領域の光透過率は、導体パターンが存在しない領域のそれに比べて低下する。その結果、センサ部上では光透過率のむらが生じる。利用者によってはこの光透過率のむらが気になることがある。この変形例5では、このようなセンサ部上での光透過率のむらを解消する構成を説明する。
図55に、この変形例5のセンサ部900の概略構成を示す。このセンサ部900では、送信導体911及び受信導体912が存在しない領域に、例えば導体と同じ材料からなる第1透明電極膜913及び第2透明電極膜914を設ける。それ以外の構成は、上述のセンサ部と同様の構成となるので、その説明は省略する。
図56(A)に、センサ部900の送信導体911及び第1透明電極膜913の構成を示す。この変形例5では、送信導体911と同じ面であって、互いが近傍に配置された2つの送信導体911の間に矩形状の第1透明電極膜913を配置する。この第1透明電極膜913は、送信導体911と接触しないように、送信導体911間の寸法よりも多少小さな寸法を有しており、送信導体911とは多少の空隙を介して離隔されている。一方、第1透明電極膜913の送信導体911の延伸方向の寸法は、互いが近傍に配置された受信導体912間の寸法に1本の受信導体912の導体幅を加算した寸法よりも多少小さく設定される。そして、第1透明電極膜913は、互いが近傍に位置する2本の受信導体912の間に、それぞれの受信導体912の導体幅の略1/2の位置まで延伸された位置関係をもって配置される。
また、図56(B)に、センサ部900の受信導体912及び第2透明電極膜914の構成を示す。第2透明電極膜914は、受信導体912が配置される同一の面に配置され、その寸法は第1透明電極膜913の寸法を規定する場合と同様のアプローチが適用できる。すなわち、第2透明電極膜914は、受信導体912と接触しないように、受信導体912間の寸法よりも多少小さな寸法を有しており、受信導体912とは多少の空隙を介して離隔されている。一方、第2透明電極膜914の受信導体912の長さ方向の寸法は、互いが近傍に配置された送信導体911を部分的に覆うように設定される。
第1透明電極膜913および第2透明電極膜914の寸法および配置は、例えば指示体を操作する面側(上方側)からセンサ部900を見た際に、送信導体911、受信導体912、第1透明電極膜913、及び第2透明電極膜914の重畳関係が、電気的絶縁を維持しつつ均質となるような構成とすることで、センサ部900全体に対し、透過率のむらが抑制された、均質な光学特性を保持できるようにしている。
センサ部900の基板の各面に形成する導体及び透明電極膜をそれぞれ図56(A)及び(B)のように配置すると、センサ部900を上方から見たとき、図55に示すように、導体パターンが存在する領域にも、導体と同じ材料からなる第1透明電極膜913及び第2透明電極膜914が形成される。その結果、センサ部900上における透過率のむらが抑制される。
なお、透過率のむらを抑制するための第1透明電極膜913及び第2透明電極膜914の形状は矩形に限定されない。センサ部900を上方から見たときに、送信導体911及び受信導体912から成る導体パターンと、第1透明電極膜913及び第2透明電極膜914との重畳関係が光学的に均質であればよく、第1透明電極膜913及び第2透明電極膜914の形状は送信導体911及び受信導体912から成る導体パターンの形状に関連して適宜決定される。例えば、この変形例5のセンサ部900では、矩形状の複数の透明電極膜を送信導体911あるいは受信導体912が延伸される方向に沿って所定間隔で配置した場合を例示して説明したが、その複数の透明電極膜を1枚の電極膜として形成してもよい。
また、第1透明電極膜913及び第2透明電極膜914を、送信導体911間および受信導体912間に配置したときには、送信導体911と第1透明電極膜との間、および、受信導体912と第2透明電極膜との間での容量結合が生じ、隣り合う送信導体911間および隣り合う受信導体912間が、その容量結合を通じて橋渡しされてしまう問題となる。この問題を軽減するため、第1透明電極膜913には、X軸方向に平行な複数個のスリットを形成して、隣り合う送信導体911間に等価的に複数個のコンデンサが直列に接続されて存在するようにすると良い。また、第2透明電極膜914には、Y軸方向に平行な複数のスリットを形成して、隣り合う受信導体912間に等価的に複数個のコンデンサが直列に接続されて存在するようにすると良い。また、第1透明電極膜913及び第2透明電極膜914に、X軸方向に平行な複数のスリットと、Y軸方向に平行な複数のスリットを形成して、第1透明電極膜913及び第2透明電極膜914をマトリックス状に分割するようにしても良い。
また、この変形例5の構成は、上述の実施の形態のセンサ部及びセンサ部の変形例1〜6にも適用することができる。さらに、例えば、光透過率むら防止用の透明電極膜が所定領域に形成された基板を別途用意し、その基板をセンサ部に追設するようにしてもよい。また、上述したように、フィルム状の基材を採用しても良い。
<センサ部の変形例6>
上述の第1の実施の形態のセンサ部100の感圧材は、図2に示したように、指示入力面100Sに直交する方向に送信抵抗体13Yと受信抵抗体14Xとを、所定の空隙15を空けて配設した構成であった。このセンサ部の変形例6は、空隙15に設けられる感圧材の構成が前述の例とは異なる。この変形例6のセンサ部1000の構成例を、図57および図58を参照して説明する。図57(A)は、この変形例6のセンサ部1000におけるX軸方向断面図であり、図57(B)は、センサ部1000におけるY軸方向断面図である。
この変形例6においては、空隙15において送信導体11Yが配設された下側基板16の上には、ゲル状の抵抗体1001が配設される。そして、このゲル状の抵抗体1001の上には、格子状スリット部材1002が配設される。この場合、格子状スリット部材1002と受信導体12Xとは、Z方向に所定の距離だけ隔てられる状態とされる。
格子状スリット部材1002は、図58の斜視図に示すように、Z方向に、高さhを有する矩形状スリット1003を有する。この矩形状スリット1003は、送信導体11Yおよび受信導体12Xの配列間隔に対応して形成されている。そして、この矩形状スリット1003の中心位置が、送信導体11Yと受信導体12Xとのクロスポイントの直下と成るように、格子状スリット部材1002が配設されている。
この変形例6のセンサ部1000において、指示体18が指示入力面100Sに接触している位置を検出する処理動作は、前述の例と同様である。
この変形例6のセンサ部1000において、指示体18により指示入力面100Sに押圧力が印加されると、当該押圧力が印加された指示体入力面100Sの部位が撓むことにより、当該部位において上側基板17が格子状スリット部材1002をゲル状の抵抗体1001側に押圧偏倚させる。
すると、押圧力が印加された部位に対応するクロスポイントでは、ゲル状の抵抗体1001が矩形状スリット1003から盛り上がるように変化し、当該クロスポイントの受信導体12Xに接触するようになる。そして、ゲル状の抵抗体1001と受信導体12Xとの接触面積は、指示体18により指示入力面100Sに対して印加された押圧力に応じたものとなる。
したがって、この変形例6のセンサ部1000においても、第1の実施形態のセンサ部100と同様にして指示体の検出(押圧力の検出を含む)ができる。