以下、本発明を具体化した燃焼器の第1乃至第3実施形態について、図面を参照して説明する。まず、第1実施形態の燃焼器1について、図1乃至図5を参照して説明する。
はじめに、燃焼器1の構造について説明する。図1乃至図3に示すように、燃焼器1は略直方体状の筐体2を備えている。筐体2は、前壁5、右側壁6、左側壁7、背壁8及び底壁9を備え、開口する上面を塞ぐように平面視長方形状の支持板3が取り付けられている。支持板3の四隅には貫通孔(図示外)が各々設けられ、これらに対応する筐体2の上部の開口端の四隅にはネジ孔(図示外)が各々設けられている。従って、支持板3を筐体2の開口端に載置し、貫通孔を介してネジ孔に固定ネジ10を締め付けることで、支持板3が筐体2の開口端に隙間無く固定される。
そして、図1,図3,図4に示すように、前壁5の幅方向中央の上部には、筐体2の内側に水平に貫通する円形状の燃料ガス供給口12が設けられている。燃料ガス供給口12には、燃料ガス供給管(図示外)の下流側一端部が接続される。さらに、図4に示すように、筐体2の内側には、燃料ガス供給管から燃料ガス供給口12を介して供給される燃料ガスを一時的に貯留するための燃料ガス室15が設けられている。
また、支持板3の中央には、極細の管状に形成され、先端に微小火炎(マイクロフレーム)を各々形成する100本のマイクロバーナ20が、平面視10×10(図2参照)の配列形態で、各先端側を上方に突出した状態で等間隔で支持されている。マイクロバーナ20は、支持板3の中央に平面視10×10の配列形態で設けられた100個の貫通孔(図示外)に各々挿入され、接着剤で固定されている。そして、これら100本のマイクロバーナ20の各先端の高さが揃えられ、平坦な加熱面である燃焼部25が支持板3の中央に形成されている。なお、燃焼部25の加熱面は平面に限らず、曲面であってもよい。即ち、マイクロバーナ20の各先端の高さを変えること、もしくは、支持板3を曲面にして、マイクロバーナ20をその曲面の法線方向に向かって支持することによって種々の形状に変更可能である。また、加熱する対象物の形状に合わせてもよい。
さらに、図4に示すように、筐体2の燃料ガス室15では、各マイクロバーナ20の下半分が支持板3の裏面から鉛直下方に各々突出されている。従って、燃料ガス供給口12から筐体2内に供給されて燃料ガス室15に貯留された燃料ガスは、各マイクロバーナ20の下側から内側を流れて先端から噴出する。そして、その燃料ガスが噴出する先端に点火することで、半球状のマイクロフレームが形成される。
次に、マイクロバーナ20について説明する。図1,図5に示すように、マイクロバーナ20は、本実施形態では内径0.7mmの管状に形成された極細のバーナである。そして、このマイクロバーナ20の先端には、輝炎を含まない半球状の微小火炎、所謂「マイクロフレーム」が形成される。なお、輝炎とは、ろうそくの炎など、燃料が分解してできた細かい炭素粒(すす)が光っている炎のことをいう。
ここで、マイクロフレームについて説明する。図5に示すように、マイクロフレーム(MF)は、マイクロバーナ20の先端に形成される輝炎を含まない半球状の微小火炎である。マイクロフレームは、一般には数mm程度の火炎を形成し、スケールダウンに伴って拡散力が輸送過程を支配する点に特徴がある。通常の火炎(層流火炎)は、向きによって浮力の影響を受けて変形するが、マイクロフレームは変形しない。つまり、どの方向に向けても常に半球状を保持することができる。このマイクロフレームのサイズは保炎可能な最小サイズであるため、火炎体積に占める発熱体積が最も大きく、所謂「火炎片」又は「火炎塊」ともいえる。さらに、マイクロフレームは一般的な火炎のような乱流を起こさず、スケールも小さいので、燃え残りやすすといった有害物の発生が少ないといった特性を有する。
そして、本実施形態では、このようなマイクロフレームを形成できるマイクロバーナ20について、以下の関係式を満たすものとする。
無次元数であるフルード数をFr、レイノルズ数をRe、燃料ガスの噴出速度をU(m/sec)、管内径をL(m)、重力加速度をg(m/sec2)、動粘性係数ν(m2/sec)とした場合に、
・Fr=U(Lg)−1/2>1、かつ
・Re=ULν−1<100
また、マイクロバーナ20の材質としては、耐熱性が高く、熱伝導率の低い材質(例えば、ステンレス等)が挙げられる。好ましくはアルミナ主体のファインセラミックスが効果的である。ファインセラミックスを用いた場合、火炎のマイクロバーナ20への熱損失を低くすることができる。
さらに、マイクロバーナ20の表面を白金触媒でコーティングしてもよい。これにより、素反応過程で生じた水素がマイクロバーナ20の先端から上流に向かってしみ出し、バーナ先端部の外周面に塗布された白金触媒と反応する。このときの触媒燃焼反応による発熱によって断熱壁の効果を生じるので、消炎領域を狭くでき、火炎の安定化を促進できる。
次に、上記構造からなる燃焼器1の使用方法について説明する。まず、図1に示す燃焼器1の燃料ガス供給口12に、ガス栓(図示外)に接続された燃料ガス供給管(図示外)の下流側一端部を接続する。この燃料ガス供給管には、管内における燃料ガス流量を調整できる調整弁(図示外)が設けられている。この調整弁を調節することによって、マイクロバーナ20における燃料ガスの噴出速度U(m/sec)が調整される。なお、燃料ガスには、メタン、ブタン、プロパン等が利用可能である。
次いで、ガス栓を開き、燃料ガス供給管を介して、燃焼器1の筐体2内に燃料ガスを供給する。燃料ガスは筐体2の燃料ガス供給口12を介して燃料ガス室15(図4参照)に流入する。燃料ガス室15に貯留された燃料ガスは、燃料ガス供給管からの燃料ガスの送り込み圧によって、各マイクロバーナ20の下端側から内側に流入する。すると、各マイクロバーナ20の先端から燃料ガスが噴出するので、点火装置(図示外)によって全てのマイクロバーナ20に点火する。なお、点火装置はライターや、給湯器等で使用されるイグナイタ等が利用可能である。すると、各マイクロバーナ20の先端に半球状のマイクロフレームが各々形成され、平坦な加熱面である燃焼部25が形成される。
そして、燃焼器1の燃焼部25に対して、加熱する対象物を上側から近づけることによって加熱できる。燃焼部25では、100個のマイクロフレームが形成されているが、何れも半球状であるため、その表面近傍にまで対象物を近づけることができる。これにより、マイクロフレームの火炎面から発せられる熱を対象物に効率良く伝達できる。また、加熱対象物の運搬ができない場合や、ある物体の特定部位を加熱したい場合等は、マイクロフレームは向きを変えても半球状を常時保持できるので、燃焼器1を手に持って、加熱対象物やその特定部位に燃焼部25を近づけて加熱することもできる。また、マイクロフレームの向きを変えてもガス噴出速度Uは一定のままでよいので、無駄なガス消費も生じない。従って、従来のような載置型の燃焼器や、噴射バーナ等に比べて、使い勝手が良く、無駄なガス消費の生じない燃焼器1を提供できる。
以上説明したように、第1実施形態である燃焼器1は、上面が開口する筐体2を備え、その開口する上面を塞ぐように支持板3が固定されている。この支持板3の中央には、先端にマイクロフレームを形成する100本のマイクロバーナ20が、各先端側を上方に突出した状態で支持され、平坦な加熱面である燃焼部25を形成している。マイクロバーナ20は、本実施形態では内径0.7mmの管状の極細バーナである。このマイクロバーナ20の先端には、輝炎を含まない半球状のマイクロフレームが形成される。マイクロフレームは、一般には数mm程度の火炎を形成し、スケールダウンに伴って拡散力が輸送過程を支配する点に特徴がある。従って、マイクロバーナ20の向きを変えてもマイクロフレームは変形せず、どの方向に向けても常に半球状を保持する。また、一般的な火炎のような乱流を起こさず、スケールも小さいので、燃え残りやすすといった有害物の発生が少ない。
このようなマイクロバーナ20を複数備えた燃焼器1を使用する場合、点火された燃焼部25に対して、上側から加熱する対象物を近づけることで加熱対象物を加熱できる。燃焼部25では、100個のマイクロフレームが形成されているが、何れも半球状であるため、その表面近傍にまで加熱対象物を近づけることができる。従って、マイクロフレームの火炎面から発せられる熱を加熱対象物に効率良く伝達できる。また、燃焼器1を手に持って、加熱対象物の上面や側面などの加熱対象面の特定部位に、加熱対象面と平行に燃焼部25を近づけて加熱することもできる。これは、マイクロフレームは向きを変えても拡散優位であるので、半球状を常時保持できるからである。また、マイクロフレームの向きを変えても燃料ガス噴出速度Uは一定のままでよいので、無駄なガス消費も生じない。従って、従来のような載置型の燃焼器や、噴射バーナ等に比べて、使い勝手が良く、無駄なガス消費の生じない燃焼器1を提供できる。
次に、互いに隣り合うバーナの火炎同士が干渉するのを防止するために、バーナ間隔と、バーナの長さとについてそれぞれ検討した。ここでは、3つの試験を行い、バーナ間隔と、バーナの長さとについての最適条件を求めた。各試験の内容は以下の通りである。
・第1試験・・・燃料流量を変えながら火炎の干渉現象を生じるバーナ間隔を調べるための試験。
・第2試験・・・燃焼器において火炎が干渉しないバーナ間隔を調べるための試験。
・第3試験・・・燃焼器において火炎が干渉しないバーナ高さを調べるための試験。
以下、第1乃至3試験について順次説明する。
まず、第1試験について、図6,図7を参照して説明する。第1実施形態である燃焼器1(図1参照)で形成される火炎は拡散火炎(図5参照)である。よって、互いに隣り合うマイクロバーナ20同士の間隔が狭いと、各マイクロバーナ20にそれぞれ形成される火炎と火炎が接近する。この場合、火炎間に酸素不足が生じるため、火炎間に存在していた火炎面が消失し、火炎が合体するという干渉現象が生じる。そこで、第1試験では、図6に示すバーナ間隔測定装置400を用いることによって、燃料流量を変えながら火炎の干渉現象を生じるバーナ間隔について調べた。なお、「バーナ間隔」とは、互いに隣り合うマイクロバーナの中心軸間の距離からマイクロバーナの外径を差し引いた距離をいう。
ここで、バーナ間隔測定装置400の構成について説明する。図6に示すように、バーナ間隔測定装置400は、2点間の距離を精密に測定するデジタルノギス401を備えている。デジタルノギス401の測定物支持部には、2本のマイクロバーナ20が固定され、一方のマイクロバーナ20に対して他方のマイクロバーナ20が接離可能になっている。さらに、バーナ間隔測定装置400には、燃料ガスを貯留するボンベ402と、該ボンベ402に配管410を介して接続されたレギュレータ403と、該レギュレータ403の下流側に配管411を介して接続され、燃料ガスの流量を調節するマスフローコントローラ404とが各々設けられている。マスフローコントローラ404には分岐配管412が接続され、2流路に分岐する下流側の2つの端部が2本のマイクロバーナ20,20に各々接続されている。
このような構成からなるバーナ間隔測定装置400では、ボンベ402から供給される燃料ガスが、レギュレータ403、マスフローコントローラ404によって流量が調整されて、マイクロバーナ20,20にそれぞれ供給される。そして、各マイクロバーナ20の先端に点火し、球状火炎であるマイクロフレームをそれぞれ形成させる。この状態で、デジタルノギス401によって、2本のマイクロバーナ20同士の間隔を徐々に狭めたり、離したりして火炎が干渉するバーナ間隔について検討を行った。なお、検討は、マイクロバーナ1本あたりの燃料流量を変えながら行った。また、第1試験では、マイクロバーナ20の外径を1.0mm、内径0.7mmに調整し、燃料ガスはメタンを使用した。
次に、第1試験の結果について、図7を参照して説明する。図7では、「●」はマイクロバーナ20を近づけていった場合のデータを示し、「▲」はマイクロバーナ20を離していった場合のデータを示している。図7に示すように、燃料流量が多ければ多いほど、干渉を起こさないバーナ間隔は長くなる傾向を示した。なお、マイクロバーナ20を近づけていった場合と、離していった場合とでは、データに大きな差異は見られなかった。
図6に示すように、第1試験の測定環境では、マイクロバーナ20の先端よりも下側には、燃焼器1の支持板3(図1参照)のような壁面が存在しておらず、マイクロバーナ20は2本のみであって、さらに燃料がメタンという極めて理想的なものである。図7に示すように、このような環境下において、球状火炎を確実に形成できる燃料流量は4SCCMであった(図中点線)。つまり、火炎の干渉を防ぐには、少なくとも1.5mm以上のバーナ間隔が必要であることがわかった。また、バーナ間隔=3.0mmにおいて、互いに隣り合う火炎が干渉せずに、球状のマイクロフレームが形成される流量範囲は、4.0〜15.5SCCMであった(図7中のRが示す範囲)。
次に、第2試験について、図8を参照して説明する。第2試験では、第1実施形態と同様の燃焼器を用いて、火炎が干渉しないバーナ間隔について検討を行った。なお、以下の説明において、燃焼器において、マイクロバーナの支持板から突出する先端までの距離を、「マイクロバーナの高さ」又は「バーナ高さ」と呼ぶ。
第2試験では、バーナ間隔に起因する火炎の干渉現象を検討するために、マイクロバーナ20の高さを6.0mmと十分に大きくした。そして、バーナ外径を0.50mm、1.0mm、2.0mm、3.0mmの4種類のマイクロバーナを作成し、バーナ間隔を2.0mm、3.0mm、4.0mmにそれぞれ調整した12種類の燃焼器を作成した。そして各燃焼器において、火炎の干渉現象が無かったものを「○」、干渉現象を生じたものを「×」としてそれぞれ評価した。なお、燃料流量はそれぞれのバーナ外径に応じて、最も小さな球面形状のマイクロフレームが形成されるように調整した。
次に、第2試験の結果について説明する。図8に示すように、バーナ間隔=2.0mmでは、バーナ外径によらず何れも「×」であり、干渉現象を生じた。バーナ間隔=3.0では、バーナ外径によらず何れも「○」であり、干渉現象は生じなかった。バーナ間隔=4.0mmでは、バーナ外径によらず何れも「○」であり、干渉現象は生じなかった。
これらの結果より、何れのマイクロバーナのバーナ外径においても火炎の干渉を防ぐためには、バーナ間隔が少なくとも3.0mm以上必要であることがわかった。これは、火炎の消炎距離や火炎帯厚さなどの火炎特性が主要因となって、干渉限界が決定されたためと推測される。
次に、第3試験について、図9〜図12を参照して説明する。第3試験では、第1実施形態と同様の燃焼器を用いて、火炎が干渉しないマイクロバーナの高さについて検討を行った。
第3試験では、マイクロバーナの高さに起因する火炎の干渉現象を検討するために、マイクロバーナのバーナ間隔を3.0mmに固定した。そして、バーナ外径を0.50mm、1.0mm、2.0mm、3.0mmの4種類のマイクロバーナを作成し、バーナ高さを0mm、2.0mm、3.0mm、4.0mm、5.0mm、6.0mmにそれぞれ調整した24種類の燃焼器を作成した。そして各燃焼器において、火炎の干渉現象が無かったものを「○」、干渉現象を生じたものを「×」としてそれぞれ評価した。なお、マイクロバーナ1本あたりの燃料流量はそれぞれのバーナ外径に応じて、最も小さな球面形状のマイクロフレームが形成されるように調整した。
次に、第3試験の結果について説明する。図9に示すように、バーナ高さ=0mmでは、バーナ外径によらず何れも「×」であり、干渉現象を生じた。図10に示す写真のように、個々の火炎が干渉してしまい、1つの火炎と同じような燃焼状態となった。バーナ高さ=2.0mmでは、バーナ外径によらず何れも「×」であり、干渉現象を生じた。図11に示す写真のように、複数の火炎が干渉して合体してしまった。バーナ高さ=3.0mmでは、バーナ外径によらず何れも「○」であり、干渉現象は生じなかった。図12に示す写真のように、全ての火炎が独立し、良好な燃焼状態を確保できた。バーナ高さ=4.0mmでは、バーナ外径によらず何れも「○」であり、干渉現象は生じなかった。バーナ高さ=5.0mmでは、バーナ外径によらず何れも「○」であり、干渉現象は生じなかった。バーナ高さ=6.0mmでは、バーナ外径によらず何れも「○」であり、干渉現象は生じなかった。
これらの結果より、何れのマイクロバーナのバーナ外径においても火炎の干渉を防ぐためには、バーナ高さが少なくとも3.0mm以上必要であることがわかった。
以上の第1,2,3試験の各結果より、少なくともバーナ間隔が3.0mm以上であって、バーナ高さが3.0mm以上であれば、火炎の干渉現象を起こさずに、良好なマイクロフレームを形成できることが実証された。
次に、第2実施形態である燃焼器100について、図13を参照して説明する。第1実施形態では、燃焼部25においてマイクロバーナ20の間隔を詰めて密集の程度を増した場合には酸素不足を生じる場合がある。この場合、マイクロフレームが保持できず、隣り合う火炎と合体してしまう不都合が生じる。そこで、第2実施形態の燃焼器100では、内筒と外筒とからなる二重管構造のマイクロバーナ40を備え、酸化剤ガス(酸素又は空気)を強制的に供給可能な構造にすることで、燃焼部に密集するマイクロバーナの酸素不足を解消できる点に特徴がある。
図13に示すように、燃焼器100は、第1実施形態の燃焼器1の筐体2(図1乃至4参照)を基本構造とする筐体30を備えている。筐体30の内側には、支持板33及び底壁32と平行な面を有し、筐体30の高さ方向中段位置に配置された隔壁35が設けられている。筐体30の前壁31の上段には、隔壁35の上側に貫通する酸化剤ガス供給口54が設けられ、その酸化剤ガス供給口54にはパイプ57が挿入されている。パイプ57には、酸素製造装置(図示外)の酸化剤ガス供給管(図示外)の下流側一端部が接続される。他方、前壁31の下段には、隔壁35の下側に貫通する燃料ガス供給口55が設けられ、その燃料ガス供給口55にはパイプ58が挿入されている。パイプ58には、ガス栓(図示外)に接続された燃料ガス供給管(図示外)の下流側一端部が接続される。
さらに、筐体30の内側において、隔壁35の上側には、酸化剤ガス供給口54を介して筐体30内に供給された酸素や空気などの酸化剤ガスを一時的に貯留するための酸化剤ガス室51が設けられている。隔壁35の下側には、燃料ガス供給口55を介して筐体30内に供給された燃料ガスを一時的に貯留するための燃料ガス室52が設けられている。
そして、支持板33には、二重管構造を備えた複数のマイクロバーナ40が、各先端側を上方に突出した状態で等間隔で支持されている。マイクロバーナ40は、内筒41と、その周りを径方向に取り囲む外筒42とから構成される。内筒41は、支持板33と隔壁35とを貫通し、燃料ガス室52まで下端側が延設されている。他方、外筒42は、支持板33のみを貫通し、酸化剤ガス室51まで下端側が延設されている。さらに、内筒41の内側には燃料ガス流路45が形成され、内筒41と外筒42とに挟まれる間には酸化剤ガス流路46が形成されている。
このような構造を備える燃焼器100では、燃料ガス供給管から供給された燃料ガスは、燃料ガス供給口55を介して燃料ガス室52に流入する。燃料ガス室52に貯留された燃料ガスは、燃料ガス供給管からの燃料ガスの送り込み圧によって、マイクロバーナ40の内筒41の下端側から燃料ガス流路45に流入する。すると、内筒41の先端から燃料ガスが噴出され、点火されることによって、マイクロフレームが形成される。一方、酸化剤ガス供給管から供給された酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給口54を介して酸化剤ガス室51に流入する。酸化剤ガス室51に貯留された酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給管からの送り込み圧によって、マイクロバーナ40の外筒42と内筒41との間の酸化剤ガス流路46に流入する。すると、内筒41の先端に形成されたマイクロフレームの周囲を取り囲むようにして酸化剤ガスが強制的に供給される。これにより、内筒41の先端で酸素不足になるのを防止できる。従って、マイクロバーナ40を密集させても、酸素を十分に供給できるので、隣り合うマイクロフレーム同士が合体しない。よって、より多くのマイクロバーナ40を密集させることができるので、発熱密度の大きい燃焼器100を提供できる。
以上説明したように、第2実施形態の燃焼器100は、二重管構造を有するマイクロバーナ40を備えている。マイクロバーナ40は内筒41と外筒42とから構成され、内筒41の内側には燃料ガス流路45が形成され、内筒41と外筒42とに挟まれる間には酸化剤ガス流路46が形成されている。一方、筐体30の内側には、隔壁53で仕切られた酸化剤ガス室51及び燃料ガス室52が設けられている。燃料ガス室52に流入した燃料ガスは、マイクロバーナ40の内筒41の下端側から燃料ガス流路45に流入し、内筒41の先端から噴出される。従って、内筒41の先端にマイクロフレームが形成される。一方、酸化剤ガス室51に流入した酸化剤ガスは、外筒42と内筒41との間の酸化剤ガス流路46に流入し、内筒41の先端に形成されたマイクロフレームの周囲を取り囲むように供給される。これにより、内筒41の先端で酸素不足になるのを防止できる。つまり、マイクロバーナ40を密集させても、隣り合うマイクロフレーム同士が合体しないので、より多くのマイクロバーナ40を密集させることができる。従って、発熱密度の大きい燃焼器100を提供できる。
次に、第2実施形態の第1変形例である燃焼器160について、図14を参照して説明する。燃焼器160は、燃焼器100と同様の構造を備えるが、マイクロバーナ170の構造が第1実施形態のマイクロバーナ40の構造と異なっている。つまり、マイクロバーナ40は二重管構造(図13参照)であるが、燃焼器160のマイクロバーナ170は1本の管である。
図14に示すように、燃焼器160は筐体162を備えている。筐体162の内側には、天壁である燃焼面形成板163と平行な面を有し、筐体162の高さ方向中段位置に配置された隔壁165が設けられている。隔壁165の上側には酸化剤ガス室166が設けられ、隔壁165の下側には燃料ガス室167が設けられている。
燃焼面形成板163には、複数の貫通穴164が所定位置に各々設けられている。それら貫通穴164には、複数のマイクロバーナ170が各先端を上方に突出した状態で挿入され、その下端側は隔壁165を貫通して燃料ガス室167まで延設されている。即ち、マイクロバーナ170は隔壁165に支持されている。さらに、貫通穴164と、マイクロバーナ170の外周面との間には所定の隙間169が形成されている。隙間169は、酸化剤ガス室166と連通している。
このような構造を備える燃焼器160においても、燃料ガス室167に流入した燃料ガスは、燃料ガス供給管からの燃料ガスの送り込み圧によって、マイクロバーナ170の下端側から流入する。すると、マイクロバーナ170の先端から燃料ガスが噴出され、点火されることで、マイクロフレームが形成される。一方、酸化剤ガス室166に流入した酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給管からの送り込み圧によって、マイクロバーナ170と貫通穴164の内縁との隙間169から流出し、マイクロバーナ170の先端に形成されたマイクロフレームの周囲を取り囲むようにして酸化剤ガスが強制的に供給される。これにより、マイクロバーナ170の先端で酸素不足になるのを防止できる。従って、マイクロバーナ170を密集させても、酸素を十分に供給できるので、隣り合うマイクロフレーム同士が合体しない。よって、より多くのマイクロバーナ170を密集させることができるので、発熱密度の大きい燃焼器160を提供できる。
ところで、酸化剤ガス室166に供給される酸素又は空気と、燃料ガス室167に供給される燃料ガスを混合した際の混合比において燃料ガスが過剰であると、例えば、密に多数配置されたマイクロバーナにおいて、中心部のマイクロバーナ先端部で酸素不足が生じ、火炎の干渉現象を引き起こす。従って、量論混合比と比べて等しいか、又は燃料希薄となるような流量比で供給される必要がある。
一方、マイクロバーナ170の先端から噴出される酸素又は空気の流速が大き過ぎると、吹き消えが生じる。つまり、酸素又は空気の流速が増加すると、火炎基部の希薄化と火炎基部での流速増加が起こるからと推測される。この吹き消え限界は、マイクロバーナ170の高さに対しては依存性は低いが、貫通穴164の内径の変化に対しては依存性は高い。そこで、空気と燃料ガスとの混合比が量論混合比と比べて等しいか、又は燃料希薄となるような流量比で供給するために、マイクロバーナ170の高さと、貫通穴164の内径とを変化させて、マイクロフレームを保炎可能な当量比について調べた。これを第4試験として以下説明する。
第4試験について、図15を参照して説明する。第4試験では、マイクロバーナのバーナ外径を1.0mm、内径を0.7mmに固定した。そして、貫通穴164の内径を1.2mm、1.3mm、1.4mmの3種類を設定すると共に、バーナ高さを1mm、2.0mm、3.0mm、4.0mm、5.0mm、6.0、7.0mm、8.0mmにそれぞれ変えて検討を行った。なお、図15では、「◆」が貫通穴164の内径=1.2mm、「■」が貫通穴164の内径=1.3mm、「▲」が貫通穴164の内径=1.4mmのデータを各々示している。
次に、第4試験の結果について説明する。空気と燃料ガスとの混合比が量論混合比と等しい、若しくは燃料希薄となる条件とするには、当量比が1以下であることが必要とされる。図15に示すように、貫通穴164の内径=1.2mmの燃焼器では、何れも当量比が1を超えた。貫通穴164の内径=1.3mmの燃焼器では、バーナ高さ=2mmの燃焼器のみ当量比が1となった。貫通穴164の内径=1.4mmの燃焼器では、バーナ高さに関わらず、当量比が全て1以下であった。これはマイクロバーナの内径面積と、マイクロバーナの外周面と貫通穴164の内縁部との隙間169の面積との比(以下、面積比と呼ぶ。)に起因するものである。なぜなら、吹き消えを生じさせる空気流速よりも小さい流速で、混合比が量論混合比または燃料希薄となるように燃料流量に応じた空気流量を供給するには、隙間面積がバーナ内径面積に比べ、十分に大きい必要があるからである。そこで、各条件の面積比をそれぞれ算出したところ、貫通穴164の内径=1.2mmの条件における面積比は0.90、貫通穴164の内径=1.3mmの条件における面積比は1.4、貫通穴164の内径=1.4mmの条件における面積比は2.0であった。
以上の結果より、空気と燃料ガスとの混合比が量論混合比と等しい条件でマイクロフレームを保炎できる条件は、バーナ内径面積に対する(マイクロバーナの外周と貫通穴の内縁との)隙間の面積比が少なくとも2.0倍以上であることがわかった。
次に、第2実施形態の第2変形例である燃焼器ユニット260について、図16乃至図18を参照して説明する。図16に示す燃焼器ユニット260は、第1変形例である燃焼器160の筐体を内側に曲げ、2つの燃焼器を併せて筒状にした点に特徴を有する。
燃焼器ユニット260の構造について説明する。図16に示すように、燃焼器ユニット260は、断面U字状に形成された燃焼器260Aと燃焼器260Bとからなり、筒状のユニットを形成する。その筒体の内周面がマイクロバーナ270による燃焼面となっている。例えば、筒状の被加熱物Pを加熱する場合は、燃焼器ユニット260の内側に被加熱物Pを上から挿入すればよい。
次に、燃焼器260Aの構造について説明する。なお、燃焼器260A,260Bは互いに同じ構造であるので、ここでは燃焼器260Aの構造のみ説明する。図17に示すように、燃焼器260Aは、第1変形例である燃焼器160(図14参照)と同様の構造を備え、燃焼器160の筐体162(図14参照)を略U字状に折り曲げたような筐体262を備える。図18に示すように、筐体262の内側には、内周面である燃焼面形成板263と平行な面を有し、筐体262の高さ方向中段位置に配置された隔壁265が設けられている。隔壁265の上側(径方向内側)には酸化剤ガス室266が設けられ、隔壁265の下側(径方向外側)には燃料ガス室267が設けられている。
燃焼面形成板263には、複数の貫通穴264が所定位置に各々設けられている。それら貫通穴264には、複数のマイクロバーナ270が各先端を、筐体262の径方向内側に突出した状態で挿入され、その下端側は隔壁265を貫通して燃料ガス室267に連通している。即ち、マイクロバーナ270は隔壁265に支持されている。さらに、貫通穴264と、マイクロバーナ270の外周面との間には所定の隙間269が形成されている。隙間269は、酸化剤ガス室266と連通している。
このような構造を備える燃焼器260Aにおいて、燃料ガス室267に流入した燃料ガスは、燃料ガス供給管からの燃料ガスの送り込み圧によって、マイクロバーナ270の下端側から流入する。すると、マイクロバーナ270の先端から燃料ガスが噴出され、点火されることで、マイクロフレームが形成される。一方、酸化剤ガス室266に流入した酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給管からの送り込み圧によって、マイクロバーナ270と貫通穴264の内縁との隙間269から流出し、マイクロバーナ270の先端に形成されたマイクロフレームの周囲を取り囲むようにして酸化剤ガスが強制的に供給される。これにより、マイクロバーナ270の先端で酸素不足になるのを防止できる。従って、マイクロバーナ270を密集させても、酸素を十分に供給できるので、隣り合うマイクロフレーム同士が合体しない。よって、より多くのマイクロバーナ270を密集させることができるので、発熱密度の大きい燃焼器260Aを提供できる。
そして、燃焼器260Aは、内側に湾曲する燃焼面を備えているので、例えば、図16に示す被加熱物Pのような曲面を有するものを加熱するのに適している。例えば、被加熱物Pを加熱する場合、平面状の燃焼面では、マイクロバーナの先端に形成される火炎と、被加熱物Pの表面との距離が場所によって異なる。これにより、加熱ムラができるため、被加熱物Pを回転させる等の手間が必要であった。そこで、燃焼器260Aでは、内側に湾曲する燃焼面を備えているので、被加熱物Pのような曲面を有するものであっても加熱ムラが少なく均一に加熱することができる。そして、図16に示すように、このような燃焼器260Aと、同様の燃焼器260Bとを互いに合わせて筒状のユニットを組むことで、円筒状の燃焼面を形成できる。従って、パイプ状の被加熱物Pを加熱する場合は、燃焼器ユニット260の内側に挿入することで、被加熱物Pの位置を変えることなく、表面を均一にムラなく加熱できる。
なお、第2変形例の燃焼器260A,260Bは内側に湾曲する燃焼面を備えているが、被加熱物を取り囲むような形状であればこれに限定されない。例えば、図19に示す第3変形例である燃焼器280のように、平面視多角形の筒状の筐体282を備えたものでもよい。この場合、マイクロバーナの長さをそれぞれ調整することで、被加熱物Pの表面までの距離を均一にできるので加熱ムラを小さくできる。
また、燃焼器ユニット260は、2つの燃焼器260A、260Bを合わせて筒状にしているが、燃焼器自体を筒状に形成してもよい。
次に、第3実施形態である燃焼器200について、図20、図21を参照して説明する。図20は、燃焼器200の断面図(第3実施形態)であり、図21は、コントローラ60のCPUによる火力制御処理のフローチャートである。第3実施形態は、第1実施形態の変形例であり、図20に示す燃焼部125の火力を3段階で切り替えできる点に特徴がある。なお、燃焼器200は、第1実施形態の燃焼器1の構造を基本に備えているので、同じ部材に関しては同符号を付して説明する共に、異なる点を中心に説明する。
まず、燃焼器200の構造について説明する。図20に示すように、燃焼器200は、第1実施形態の燃焼器1(図4参照)と同様の筐体2を備えている。筐体2の内側には、支持板3及び底壁9と平行な面を有し、筐体2の高さ方向中段位置に配置された隔壁70が設けられている。筐体2の前壁5の上段には、隔壁70の上側に貫通する第1燃料ガス供給口75が設けられている。その第1燃料ガス供給口75には、第1燃料ガス供給管92の下流側一端部が接続されている。他方、前壁5の下段には、隔壁70の下側に貫通する第2燃料ガス供給口76が設けられている。その第2燃料ガス供給口76には、第2燃料ガス供給管93の下流側一端部が接続されている。
そして、筐体2の内側において、隔壁70の上側には、第1燃料ガス供給口75から筐体2内に供給された燃料ガスを一時的に貯留するための第1燃料ガス室71が設けられている。隔壁70の下側には、第2燃料ガス供給口76から筐体2内に供給された燃料ガスを一時的に貯留するための第2燃料ガス室72が設けられている。
また、支持板3には、長さが互いに異なる2種類のマイクロバーナ81,82が、平面視9×9の配列形態で、各先端側を上方に突出した状態で等間隔で支持されている。マイクロバーナ81は、支持板3と隔壁70とを貫通すると共に、第2燃料ガス室72まで下端側が延設されている。他方、マイクロバーナ82は、マイクロバーナ81よりも短く、支持板3のみを貫通し、第1燃料ガス室71まで下端側が延設されている。そして、これら81本のマイクロバーナ81,82の各先端の高さが揃えられて、平坦な加熱面である燃焼部125が支持板3の中央に形成されている。そして、燃焼部125を構成する81本のマイクロバーナは、27本のマイクロバーナ81からなる第1バーナ群と、残り54本のマイクロバーナ82からなる第2バーナ群とに分類されている。
また、第1燃料ガス供給管92には、管内の燃料ガス流量を所定流量に調整するための第1圧力調整弁111と、その第1圧力調整弁111よりも上流側に配置され、管内の流路を開閉する第1電磁弁112とが各々設けられている。また、第2燃料ガス供給管93にも、同様の第2圧力調整弁113と、その第2圧力調整弁113よりも上流側に配置され、管内の流路を開閉する第2電磁弁114とが各々設けられている。
さらに、筐体2の背壁8の外面には、燃焼器200の動作を制御するためのコントローラ60が固定されている。コントローラ60は、中央演算処理装置であるCPUと、各種プログラムを記憶するROMと、プログラム処理中のデータを一時的に記憶する読み書き可能なRAM等を備えている。このコントローラ60には、燃焼器200を操作するための操作部62が設けられている。操作部62には、燃焼スイッチ(図示外)と、燃焼部125の火力を「大」「中」「小」の3段階に切り替え可能な火力切替スイッチ(図示外)とが各々設けられている。そして、燃焼スイッチ及び火力切替スイッチは、コントローラ60のCPUに何れも電気的に接続されている。
さらに、コントローラ60のCPUには、第1燃料ガス供給管92に設けられた第1圧力調整弁111及び第1電磁弁112と、第2燃料ガス供給管93に設けられた第2圧力調整弁113及び第2電磁弁114とが電気的に各々接続されている。従って、コントローラ60では、操作部62の操作に基づき、第1圧力調整弁111、第1電磁弁112、第2圧力調整弁113及び第2電磁弁114が各々制御されるようになっている。
次に、コントローラ60のCPUによる燃焼器200の火力制御処理について、図21のフローチャートを参照して説明する。まず、燃焼スイッチがオフの状態では、第1電磁弁112と第2電磁弁114とは何れも閉じられている。そして、燃焼スイッチがユーザにオンされたか否かが判断される(S1)。オンされていない場合は(S1:NO)、S1に戻って、引き続き燃焼スイッチが監視される。
次いで、燃焼スイッチがオンされた場合(S1:YES)、第1バーナ群及び第2バーナ群を構成する全てのマイクロバーナ81,82に点火するため、第1電磁弁112と第2電磁弁114の両方が開かれる(S2)。すると、第1燃料ガス供給管92、第2燃料ガス供給管93の両方に燃料ガスが流れる。このとき、第1圧力調整弁111及び第2圧力調整弁113が各々制御され、第1燃料ガス供給管92及び第2燃料ガス供給管93における燃料ガス流量が調整される。これにより、マイクロバーナ81,82における燃料ガス噴出量がU(m/sec)となるように各々調整される。
そして、燃料ガスは、筐体2の第1燃料ガス供給口75と第2燃料ガス供給口76とを介して、第1燃料ガス室71と第2燃料ガス室72とに各々流入する。第1燃料ガス室71に貯留された燃料ガスは、第1燃料ガス供給管92からの燃料ガスの送り込み圧によって、マイクロバーナ82の下端側から内側に流入する。他方、第2燃料ガス室72に貯留された燃料ガスは、第2燃料ガス供給管93からの燃料ガスの送り込み圧によって、各マイクロバーナ81の下端側から内側に流入する。すると、各マイクロバーナ81,82の先端から燃料ガスが噴出する。ここで、点火装置(図示外)によって全てのマイクロバーナ81,82に点火する。これにより、各マイクロバーナ81,82の先端に半球状のマイクロフレームが各々形成され、平坦な加熱面である燃焼部125が形成される。
次に、操作部62の火力切替スイッチが「大」、「中」、「小」の何れであるか判断される(S3,S4)。火力が「大」の場合(S3:YES)、第1電磁弁112及び第2電磁弁114の両方が開状態とされる(S5)。これにより、第1バーナ群及び第2バーナ群の何れにもマイクロフレームが形成されるので、燃焼部125にて最大の火力が得られる。
また、火力切替スイッチが「中」の場合(S3:NO、S4:YES)、第1電磁弁112は開状態、第2電磁弁114は閉状態とされる(S6)。これにより、第2燃料ガス室72に燃料ガスが供給されないので、マイクロバーナ81は消火され、マイクロバーナ82のみが燃焼を継続する。このとき、81本のマイクロバーナ81,82のうち、54本のマイクロバーナ82のみが燃焼を継続するので、火力が「中」となる。
また、火力切替スイッチが「小」の場合(S3:NO、S4:NO)、第1電磁弁112は閉状態、第2電磁弁114は開状態とされる(S7)。これにより、第1燃料ガス室71に燃料ガスが供給されないので、マイクロバーナ82は消火され、マイクロバーナ81のみが燃焼を継続する。このとき、81本のマイクロバーナ81,82のうち、27本のマイクロバーナ82のみが燃焼を継続するので、火力が「小」となる。
次に、燃焼スイッチがオフされたか否かが判断される(S8)。燃焼スイッチがオフされた場合は(S8:YES)、第1電磁弁112及び第2電磁弁114の両方とも閉状態とされる(S10)。これにより、第1燃料ガス室71及び第2燃料ガス室72に供給されていた燃料ガスが停止されるため、全てのマイクロバーナ81,82が消火され、処理が終了する。
ところで、燃焼スイッチがまだオフされていない場合(S8:NO)、火力の変更があったか判断される(S9)。つまり、操作部62の火力切替スイッチがユーザによって切り替えられたか否かが判断される。火力切替スイッチの切り替えがない間は(S9:NO)、S8に戻り、燃焼スイッチの監視と、火力切替スイッチの監視とが継続される。
ここで、火力の変更があった場合(S9:YES)、変更する前の火力が「大」であったか否かが判断される(S11)。つまり、第1電磁弁112及び第2電磁弁114の両方とも開状態の場合は、火力は「大」であったと判断される。変更前の火力が「大」であった場合(S11:YES)、全てのマイクロバーナ81,82が燃焼中である。そして、火力の切り替えは、「大」から「中」、又は「大」から「小」の何れかである。従って、火力が「中」に切り替えられた場合は(S3:NO、S4:YES)、第2電磁弁114のみが閉状態とされ(S6)、27本のマイクロバーナ81が消火される。また、火力が「小」に切り替えられた場合は(S3:NO、S4:NO)、第1電磁弁112のみが閉状態とされ(S7)、54本のマイクロバーナ82が消火される。その後、燃焼スイッチのオフと、火力切替スイッチの切り替えとが同様に監視される(S8,S9)。
また、変更前の火力が「中」又は「小」であった場合(S11:NO)、マイクロバーナ81又は82が消火されている。そして、火力の切り替えは、「中」から「大」、「中」から「小」、「小」から「大」、又は「小」から「中」の何れかである。つまり、消火されているマイクロバーナを点火させる必要がある。そこで、第1電磁弁112及び第2電磁弁114の何れも一旦開状態とされる(S12)。そして、変更前に燃焼していたマイクロバーナに対応するガス供給管の圧力調整弁が所定の開度よりも瞬間的に大きく開かれる(S13)。
例えば、マイクロバーナ81が消火され、マイクロバーナ82のみが燃焼していた場合は、第1圧力調整弁111が所定の開度よりも瞬間的に大きく開かれる。すると、第1燃料ガス室71にガスが一気に流入するため、マイクロバーナ82の先端におけるガス噴出量が瞬間的に増える。このとき、マイクロバーナ82の先端に形成されていたマイクロフレームが瞬間的に変形して左右に燃え広がる。つまり、通常の層流火炎に戻るため、火移り現象によって、その近傍にあるマイクロバーナ81の先端に再点火される。これにより、全てのマイクロバーナ81,82が点火された状態に戻る。その後、第1圧力調整弁111はすぐに所定の開度に戻されるため、マイクロバーナ82の先端におけるガス噴出量が所定量に戻り、マイクロフレームが再度形成される。
そして、火力が「大」に切り替えられた場合は(S3:YES)、第1電磁弁112及び第2電磁弁114の両方がそのまま開状態とされ(S5)、全てのマイクロバーナ81,82が点火された状態で維持される。また、火力が「中」に切り替えられた場合は(S3:NO、S4:YES)、第2電磁弁114のみが閉状態とされ(S6)、27本のマイクロバーナ81が消火される。また、火力が「小」に切り替えられた場合は(S3:NO、S4:NO)、第1電磁弁112のみが閉状態とされ(S7)、54本のマイクロバーナ82が消火される。その後、燃焼スイッチのオフと、火力切替スイッチの切り替えとが各々監視され(S8,S9)、燃焼スイッチがオフされた場合は(S8:YES)、第1電磁弁112及び第2電磁弁114の両方とも閉状態とされる(S10)。これにより、第1燃料ガス室71及び第2燃料ガス室72に供給されていた燃料ガスが停止されるため、全てのマイクロバーナ81,82が消火され、処理が終了する。
以上説明したように、第3実施形態の燃焼器200では、筐体2の内側が、隔壁70によって第1燃料ガス室71と第2燃料ガス室72とに仕切られている。そして、支持板3に設けられた燃焼部125は、第1バーナ群を構成する複数のマイクロバーナ81と、第2バーナ群を構成するマイクロバーナ82とで構成されている。マイクロバーナ81の下端部は第2燃料ガス室72まで延設され、マイクロバーナ82の下端部は第1燃料ガス室71まで延設されている。第1燃料ガス室71には、第1燃料ガス供給口75を介して燃料ガスが供給される。第2燃料ガス室72には第2燃料ガス供給口76を介して燃料ガスが供給される。第1燃料ガス供給口75に接続された第1燃料ガス供給管92には第1電磁弁112が設けられ、第2燃料ガス供給口76に接続された第2燃料ガス供給管93には第2電磁弁114が設けられている。
さらに、筐体2には、燃焼器200の動作を制御するためのコントローラ60と、燃焼器200の操作を行う操作部62とが設けられている。コントローラ60のCPUには、操作部62と、第1電磁弁112及び第2電磁弁114が各々接続されている。このような構成によって、コントローラ60は、操作部62に設けられた火力切替スイッチの切り替えに基づいて、第1電磁弁112及び第2電磁弁114の開閉の制御を行う。これにより、マイクロバーナ81,82の点火本数を量子的に制御できるので、燃焼部125における火力の調節を速やかに行うことができる。また、火力の切り替えによって、マイクロバーナ81,82の各先端に形成される火炎の形状が変化しないので、燃焼部125の加熱面を保持できる。
なお、本発明は上記第1、第2、第3実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。第1実施形態では、筐体2の支持板3上のマイクロバーナ20は、平面視10×10の配列形態で互いに等間隔で支持されているが、例えば、図22に示す変形例のように、筐体2の支持板220上にXY平面を仮想し、マイクロバーナ20の各先端をXY方向に連続する正三角形の各頂点に各々配置してもよい。
また、第3実施形態の燃焼器200の燃焼部125では、平面視9×9の配列形態でマイクロバーナ81,82が配列されているが、例えば、第1燃料ガス室に接続したマイクロバーナを密集させて配置し、その周囲に第2燃料ガス室に接続したマイクロバーナを配置してもよい。このような燃焼器において、小さな鍋を加熱する場合、被加熱面が小さいので、第1燃料ガス室のみに燃料ガスを送ればよい。これに対し、大きな鍋を加熱する場合、被加熱面が大きいので、第1燃料ガス室および第2燃料ガス室に燃料ガスを送ればよい。つまり、被加熱面の大きさに合わせて燃焼部の発熱面積を自由に調節できる。
また、第3実施形態の燃焼器200では、第1電磁弁112及び第2電磁弁114の開閉を燃焼スイッチの切り替えに基づいてコントローラ60が制御しているが、コントローラを用いずに、手動で操作可能な開閉弁を第1燃料ガス供給管92及び第2燃料ガス供給管93に各々設けてもよい。
また、本発明の燃焼器を用いて発電することも可能である。例えば、図23に示す発電装置300は、本発明の燃焼器を用いたものである。発電装置300は、熱を電気に変換することができる平板状の熱電変換素子(ゼーベック素子)130を備えている。熱電変換素子130は、熱を電気に変換する素子であり、熱電素子の一種である。これは、2種類の異なる金属又は半導体を接合して、両端に温度差を生じさせると起電力が生じる「ゼーベック効果」を利用したものである。よって、この熱電変換素子130の上面には、温度差を生じさせるためのヒートシンク140が固定されている。ヒートシンク140は、熱電変換素子130の上面に接着された放熱板141と、当該放熱板141の上面に立設され、放熱面積を増大させるための突起状の複数の凸部142とから構成されている。また、熱電変換素子130の下面には、燃焼部25よりも十分大きい断熱材である平面視長方形状の支持板150が接着されている。この支持板150の中央には、熱電変換素子130の下面よりもやや小さい穴が設けられている。これにより、熱電変換素子130の下面は熱せられても、その上面や放熱板141が燃焼部25からの対流によって熱せられるのを避けることができる。
そして、図23に示す発電装置300は、第1実施形態の燃焼器1の構造(図1参照)を備えている。この筐体2の右側壁6の外面中央には、上側が開口する有底筒状の差し込み部64が設けられている。その右側壁6の反対側である左側壁(図示外)の外面中央にも、同じ構造の差し込み部(図示外)が設けられている。そしてこれら差し込み部64には、L字状に屈折された左右一対の支持フレーム65,66の各後端部が差し込まれる。支持フレーム65,66の各先端部には、熱電変換素子130の一端部を把持するための断面コの字型の把持部67,68が各々設けられている。なお、支持フレーム65,66の形状は互いに対象になっている。
これら支持フレーム65,66を、筐体2の左右の差し込み部64に差し込んで支持させると、燃焼部25上において、各マイクロバーナ20の先端よりも所定間隔を開けた位置で、把持部67,68が互いに対向する。ここで、この把持部67,68の内側に対して、熱電変換素子130を上面に備えた支持板150の両端部を各々差し込む。これにより、燃焼部25の平坦な加熱面に対して、支持板150を介して、熱電変換素子130を平行に配置できる。そして、上述したように、各マイクロバーナ20の先端にはマイクロフレームが形成されるため、それらの表面に近接させて熱電変換素子130を配置できる。これにより、マイクロフレームの火炎面から発せられる熱が熱電変換素子130に対して良好に伝達されるので、熱損失も少ない。
そして、熱電変換素子130に接続された2本の出力線131から電気を取り出すことができるので、小型発電装置として利用することができる。なお、熱電変換素子130を支持する構造については、これには限定されず、例えば、熱電変換素子130を直接支持するような構造にしてもよい。さらに、枠形状のフレーム上に断熱材で囲まれた熱電変換素子130を載置し、筐体2に取り付けるようにしてもよい。
また、発電装置300は、第1実施形態の燃焼器1の構造(図1参照)を備えているが、例えば、燃焼器100(図13参照)、燃焼器160(図14参照)、燃焼器200(図20参照)、燃焼器ユニット260(図16参照)、燃焼器280(図19参照)の構造に置き換えてもよい。図示しないが、燃焼器100,160,200については、図23に示す発電装置300と同様の構成になる。燃焼器ユニット260、燃焼器280の場合は、熱電変換素子が筒体の内側に配置されるように支持する支持フレームを筐体に設ければよい。