JP5356282B2 - 受容体型チロシンホスファターゼPtprzの活性測定用試薬及びその用途 - Google Patents
受容体型チロシンホスファターゼPtprzの活性測定用試薬及びその用途 Download PDFInfo
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Description
[1]以下の配列(配列番号1)、即ち
からなる、Ptprzの基質モチーフ。
[2]-2位のアミノ酸残基がD(アスパラギン酸)及びE(グルタミン酸)以外のアミノ酸残基である、[1]に記載の基質モチーフ。
[3]-2位のアミノ酸残基がA(アラニン)、N(アスパラギン)、P(プロリン)又はV(バリン)である、[1]に記載の基質モチーフ。
[4]以下の配列(配列番号2)、即ち
を含む、Ptprzの基質ペプチド。
[5]-2位のアミノ酸残基がD(アスパラギン酸)及びE(グルタミン酸)以外のアミノ酸残基である、[4]に記載の基質ペプチド。
[6]-2位のアミノ酸残基がA(アラニン)、N(アスパラギン)、P(プロリン)又はV(バリン)である、[4]に記載の基質ペプチド。
[7]+1位のアミノ酸残基がS(セリン)である、[4]〜[6]のいずれか一項に記載の基質ペプチド。
[8]前記配列として、配列番号3〜6のいずれかの配列を含む、[4]に記載の基質ペプチド。
[9]前記配列のカルボキシ末端に少なくとも一つのアミノ酸残基が連結されている、[4]〜[8]のいずれか一項に記載の基質ペプチド。
[10]カルボキシ末端に連結されているアミノ酸残基がD(アスパラギン酸)、E(グルタミン酸)、G(グリシン)又はF(フェニルアラニン)である、[9]に記載の基質ペプチド。
[11]前記配列のアミノ末端に少なくとも一つのアミノ酸残基が連結されている、[4]〜[10]のいずれか一項に記載の基質ペプチド。
[12]アミノ末端に連結されているアミノ酸残基がV(バリン)、G(グリシン)又はA(アラニン)である、[11]に記載の基質ペプチド。
[13]5個〜12個の残基からなる、[4]〜[12]のいずれか一項に記載の基質ペプチド。
[14]5個〜9個の残基からなる、[4]〜[12]のいずれか一項に記載の基質ペプチド。
[15]配列番号3〜38のいずれかのアミノ酸配列からなる、[4]に記載の基質ペプチド。
[16]リン酸化チロシンのアナログが、クマリン誘導体である、[4]〜[15]のいずれか一項に記載の基質ペプチド。
[17]リン酸化チロシンのアナログがホスホクマリン−アミノ−プロピオン酸(phosphocoumaryl-amino-propionic acid)である、[4]〜[15]のいずれか一項に記載の基質ペプチド。
[18]以下のステップ(1)及び(2)を含む、Ptprz活性測定法:
(1)[4]〜[17]のいずれか一項に記載の基質ペプチドに対して試料を作用させるステップ;
(2)前記基質ペプチドの脱リン酸化を検出するステップ。
[19]試料がPtprz又はPtprz類似分子である、[18]に記載のPtprz活性測定法。
[20]以下のステップ(i)及び(ii)を含む、Ptprz活性調節物質のスクリーニング法:
(i)被験物質の存在下、[4]〜[17]のいずれか一項に記載の基質ペプチドに対してPtprzを作用させるステップ;
(ii)前記基質ペプチドの脱リン酸化を検出し、検出結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
[21]被験物質の非存在下でPtprzを作用させた場合と比較して前記基質ペプチドの脱リン酸化レベルが高いときに、被験物質がPtprzの脱リン酸化作用を促進すると判断し、被験物質がPtprzの活性促進に有効であると判定する、[20]に記載のスクリーニング法。
[22]被験物質の非存在下でPtprzを作用させた場合と比較して前記基質ペプチドの脱リン酸化レベルが低いときに、被験物質がPtprzの脱リン酸化作用を抑制すると判断し、被験物質がPtprzの活性抑制に有効であると判定する、[20]に記載のスクリーニング法。
DAIZS(配列番号3。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
ENIZS(配列番号4。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EPIZI(配列番号5。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EVVZV(配列番号6。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
DAIZS(図3Dに示したGit1の-3位〜+1位の配列に対応する。配列番号7。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
DDAIZS(図3Dに示したGit1の-4位〜+1位の配列に対応する。配列番号8。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EDDAIZS(図3Dに示したGit1の-5位〜+1位の配列に対応する。配列番号9。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
LEDDAIZS(図3Dに示したGit1の-6位〜+1位の配列に対応する。配列番号10。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
DAIZSV(図3Dに示したGit1の-3位〜+2位の配列に対応する。配列番号11。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
DDAIZSV(図3Dに示したGit1の-4位〜+2位の配列に対応する。配列番号12。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EDDAIZSV(図3Dに示したGit1の-5位〜+2位の配列に対応する。配列番号13。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
LEDDAIZSV(図3Dに示したGit1の-6位〜+2位の配列に対応する。配列番号14。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
ENIZS(図3Dに示しp190たの-3位〜+1位の配列に対応する。配列番号15。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EENIZS(図3Dに示したp190の-4位〜+1位の配列に対応する。配列番号16。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EEENIZS(図3Dに示したp190の-5位〜+1位の配列に対応する。配列番号17。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
NEEENIZS(図3Dに示したp190の-6位〜+1位の配列に対応する。配列番号18。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
ENIZSV(図3Dに示したp190の-3位〜+2位の配列に対応する。配列番号19。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EENIZSV(図3Dに示したp190の-4位〜+2位の配列に対応する。配列番号20。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EEENIZSV(図3Dに示したp190の-5位〜+2位の配列に対応する。配列番号21。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
NEEENIZSV(図3Dに示したp190の-6位〜+2位の配列に対応する。配列番号22。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EPIZI(図3Dに示したMagi1の-3位〜+1位の配列に対応する。配列番号23。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
GEPIZI(図3Dに示したMagi1の-4位〜+1位の配列に対応する。配列番号24。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
PGEPIZI(図3Dに示したMagi1の-5位〜+1位の配列に対応する。配列番号25。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EPGEPIZI(図3Dに示したMagi1の-6位〜+1位の配列に対応する。配列番号26。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EPIZIG(図3Dに示したMagi1の-3位〜+2位の配列に対応する。配列番号27。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
GEPIZIG(図3Dに示したMagi1の-4位〜+2位の配列に対応する。配列番号28。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
PGEPIZIG(図3Dに示したMagi1の-5位〜+2位の配列に対応する。配列番号29。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EPGEPIZIG(図3Dに示したMagi1の-6位〜+2位の配列に対応する。配列番号30。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EVVZV(図3Dに示したPISTの-3位〜+1位の配列に対応する。配列番号31。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
FEVVZV(図3Dに示したPISTの-4位〜+1位の配列に対応する。配列番号32。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EFEVVZV(図3Dに示したPISTの-5位〜+1位の配列に対応する。配列番号33。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
IEFEVVZV(図3Dに示したPISTの-6位〜+1位の配列に対応する。配列番号34。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EVVZVA(図3Dに示したPISTの-3位〜+2位の配列に対応する。配列番号35。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
FEVVZVA(図3Dに示したPISTの-4位〜+2位の配列に対応する。配列番号36。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
EFEVVZVA(図3Dに示したPISTの-5位〜+2位の配列に対応する。配列番号37。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
IEFEVVZVA(図3Dに示したPISTの-6位〜+2位の配列に対応する。配列番号38。Zはリン酸化チロシン又はリン酸化チロシンのアナログ)
(1)本発明の基質ペプチドに対して試料を作用させるステップ
(2)前記基質ペプチドの脱リン酸化を検出するステップ
(i)被験物質の存在下、本発明の基質ペプチドに対してPtprzを作用させるステップ
(ii)前記基質ペプチドの脱リン酸化を検出し、検出結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ
(a)被験物質の非存在下でPtprzを作用させた場合と比較して前記基質ペプチドの脱リン酸化レベルが高いときに、被験物質がPtprzの脱リン酸化作用を促進すると判断し、被験物質がPtprzの活性促進に有効であると判定する。
(b)被験物質の非存在下でPtprzを作用させた場合と比較して前記基質ペプチドの脱リン酸化レベルが低いときに、被験物質がPtprzの脱リン酸化作用を抑制すると判断し、被験物質がPtprzの活性抑制に有効であると判定する。
(1)プラスミド
ラット由来Git1 (G protein-coupled receptor kinase-interactor 1)、マウス由来Magi1 (membrane associated guanylate kinase, WW and PDZ domain containing 1)及びマウス由来PIST (protein interacting specifically with Tc10)の各分子を哺乳類細胞に発現させるためのプラスミドpFLAG-Git1及びpFLAG-Magi1を文献(Methods, 35, 54-63, 2005)記載の方法に従って調製した。また、これらのプラスミドを鋳型にして、特定のチロシン残基をフェニルアラニンに置換した発現プラスミドをQuickChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社)を用いて作製した。
HEK293T細胞は10%正常牛血清を含むダルベッコ(DMEM)培地を用いて37℃、5% CO2条件下で培養した。HEK293T細胞への発現プラスミド導入は常法のリン酸カルシウム法で行った。
HEK293T細胞にプラスミドを導入して36時間後、培地を無血清培地であるOPTI-MEM(インビトロジェン社)に交換し、Na3VO4(バナジン酸ナトリウム、シグマ社)を終濃度100μMで加え、20分間静置し、基質分子のリン酸化を誘導した。バナジン酸は非特異的にチロシンホスファターゼを阻害する。
バナジン酸処理後、培養液を除去した培養細胞にプロテアーゼインヒビターカクテル(complete EDTA-free, ロッシュ社)を含む細胞溶解バッファー(10 mM Tris-HCl, pH7.4, 150 mM NaCl, 1% TritonX100, 1 mM Na3VO4, 10 mM NaF)を加え、氷上で30分間溶解、10,000 gで15分間の遠心分離を行い、細胞抽出液を得た。この細胞抽出液に抗FLAG抗体結合ビーズ(ANTI-FLAG M2 agarose, シグマ社)を加え、4℃で1時間混合、FLAGタグタンパク質をビーズ上に吸着させた。ビーズへの非特異的吸着は、TBST (10 mM Tris-HCl, pH7.4, 150 mM NaCl, 0.01% Tween 20)で十分に洗浄した。pFLAG-Git1及びpFLAG-Magi1由来の発現タンパク質には、FLAGタグがN末端に付加されている。
FLAG-Git1タンパク質及びFLAG-Magi1タンパク質のチロシンリン酸化の程度は、ウエスタンブロット法で解析した。SDS-PAGE用のサンプルバッファーをFLAGタンパク質を吸着したビーズに加え、100℃で5分間の加熱処理で溶出させた。SDS-PAGEによる分離後、セミドライ法によってPVDF膜上に転写した。この転写膜を1%BSAを含むTBSTバッファーで1時間ブロッキングした後、PVDF膜上に保持されたタンパク質をリン酸化チロシンを認識するPY20モノクローナル抗体に西洋ワサビペルオキダーゼ(HRP)を結合させた検出用抗体(GE healthcare社)と反応させた。FLAGタンパク質の検出にはFLAG M2モノクローナル抗体(シグマ社)とHRP結合抗マウス抗体(検出用2次抗体、GEヘルスケア社)を用いた。HRPの発色基質にはECL plus(GEヘルスケア社)を用いた。化学発光の検出にはX線フィルム(コダック社)を用いた。
グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)とラットPtprzの細胞内全領域の融合タンパク質であるGST-PtprzICRを文献(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 2001, 6593-6598)に記載されている方法で調製した。上述の免疫沈降ビーズサンプルをPTPアッセイ用バッファー(25 mM HEPES, pH 6.8, 50 mM NaCl, 5 mM EDTA, 1 mM DTT, 50μg/ml 牛血清アルブミン)で平衡化した後、ウエスタンブロットで一定のリン酸化シグナルを与えるビーズ量を算出・調整した。この免疫沈降ビーズ懸濁液20μlに1μgのGST-PtprzICRもしくはGST(陰性対照)を加え、37℃で20分間の脱リン酸化反応を行った。反応停止はSDS-PAGEサンプルバッファーの添加によって行った。脱リン酸化反応の陽性コントロールとして、1 mUのアルカリホスファターゼ(AP, 東洋紡社)を用いた。APを酵素とする場合、免疫沈降ビーズサンプルは、APアッセイ用バッファー(100 mM Tris-HCl, pH 9.5, 00 mM NaCl, 50 mM MgCl2, 50μg/ml 牛血清アルブミン)で平衡化しておいた。
Ptprzの脱リン酸化サイトと同定されたGit1の554番目のチロシン残基(相対位置0)から、アミノ基(N)末端側の4残基(相対位置-4から-1)、カルボキシル(C)末端側の2残基(相対位置+1から+2)からなる人工ペプチド(7アミノ酸残基)を合成した。脱リン酸化をモニターするために、リン酸化チロシンに代えて、これを模倣するアミノ酸誘導体phosphocoumaryl-amino-propionic acid (pCAP)を導入した人工ペプチド(pCAPペプチド)を合成した。pCAPは脱リン酸化されると蛍光を生じる化合物である(Mitara. S., and Barrios, AM., Bioorg. Med. Chem. Lett.. 15, 5142-5145, 2005、WO 2007/014326)。pCAP誘導体の合成及びpCAP導入ペプチドの合成は文献(Bioorg. Med. Chem. Lett.. 15, 5142-5145, 2005 )に基づき行った。合成したペプチドは、全て逆相クロマトグラフィー法によって精製した(純度90%以上)。
塩強度を変化させずpH条件を検討できる3コンポーネントバッファー(50 mM, Tris 50 mM Bis-Tris, 100 mM acetate)を基本バッファーとした(J. Bio. Chem. 275, 18201-18209,2001及びMethods in Enzumology, 87, 405-426)。測定当日、目的pHに調整済みの基本バッファーにDTT (5 mM)及び Briji35(0.01 %)を括弧内の終濃度で加え、アッセイ用バッファーとした。これに終濃度50 μMで各pCAPペプチドを加え、使用時まで遮光・氷上で保存した。本基質溶液は蛍光測定用の石英キュベットにいれた後、蛍光分光光度計(F-4500,日立)にセット、測定チャンバー内の温度(30℃)と平衡化させるため10分間以上静置した。十分に温度が平衡化した後、前述のGST-PtprzICRを終濃度5 nMで加え、ピペッティングにより混合し、脱リン酸化反応を開始させた。蛍光測定は文献(AM., Bioorg. Med. Chem. Lett.. 15, 5142-5145, 2005 )に基づき、励起波長(334 nm)及び放出波長(460nm)で行った。脱リン酸化レベルは、pCAP残基の脱リン酸化に伴う蛍光強度の増加速度で評価した。
(1)Git1及びMagi1におけるPtprzの脱リン酸化サイトの同定
Git1、Magi1及びPISTは、酵母Substrate-trapping systemと名付けた酵母スクリーングシステムを用い、Ptprzの基質として単離された(Methods, 35, 54-63, 2005)。これら分子中には複数個のチロシンリン酸化サイトが存在するとされている(Phospho Site Plus, http://www.phosphosite.org)が、Ptprzの脱リン酸化サイトは不明であった。Git1においてリン酸化修飾を受ける可能性のある10個のチロシン残基(Y)について、リン酸化修飾を受けないようにフェニルアラニン(F)に置換したYF変異体を発現するプラスミドを作製した(図1A)。これらプラスミドをHEK細胞に導入し、Git1及びYF変異体を発現させ、バナジン酸処理でリン酸化を誘導した。その結果、野生型Git1(Git1-WT)が顕著にリン酸化される条件下において、10個全てのチロシン残基をフェニルアラニン置換すると(Git1Y10F)リン酸化が検出されず、392、554又は607番目をチロシン残基に戻すとリン酸化されることが判明した(図1B)。この結果より、Git1の主要なリン酸化サイトは392番目、554番目、607番目のチロシン残基と判断した。
Git1の配列をもとに人工基質ペプチドを調製し、Ptprzの酵素アッセイ系の構築を行った。アッセイ条件を検討した結果、Ptprzの酵素としての至適pHはpH6.5-7.0と非常に狭いことが判明した(図3A)。このことは、Ptprzの酵素アッセイ系としては、最も酵素活性が高いpH6.5が望ましく、またpH変化を引き起こす化合物や操作はPtprzの酵素活性に強い影響を及ぼすことを示している。
以上の通り、Ptprzの良好な基質となるモチーフを決定することができた。基質モチーフの情報は、Ptprzの活性を測定するためのアッセイ法やPtprzの活性促進剤又は活性雄抑制剤をターゲットとしたスクリーニング法の構築に有用である。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
Claims (14)
- 以下の配列、即ち
(a)配列番号3で表される基質モチーフを有し、該基質モチーフからなる配列のアミノ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結されるとともにカルボキシ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結され、かつPtprz基質活性を維持するアミノ酸配列、
(b)配列番号5で表される基質モチーフを有し、該基質モチーフからなる配列のアミノ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結されるとともにカルボキシ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結され、かつPtprz基質活性を維持するアミノ酸配列、
(c)配列番号6で表される基質モチーフを有し、該基質モチーフからなる配列のアミノ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結されるとともにカルボキシ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結され、かつPtprz基質活性を維持するアミノ酸配列、
よりなる群から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなる基質ペプチドを含む、Ptprz活
性測定用試薬。 - 前記基質ペプチドが、配列番号12〜14、28〜30、36〜38のいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のPtprz活性測定用試薬。
- 前記基質ペプチドが、前記(b)及び(c)よりなる群から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のPtprz活性測定用試薬。
- 前記基質ペプチドのアミノ酸配列中におけるリン酸化チロシンのアナログが、クマリン誘導体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のPtprz活性測定用試薬。
- 前記リン酸化チロシンのアナログがホスホクマリン−アミノ−プロピオン酸(phosphocoumaryl-amino-propionic acid)である、請求項4に記載のPtprz活性測定用試薬。
- 以下のステップ(1)及び(2)を含む、Ptprz活性測定法:
(1)以下の配列、即ち
(a)配列番号3で表される基質モチーフを有し、該基質モチーフからなる配列のアミノ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結されるとともにカルボキシ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結され、かつPtprz基質活性を維持するアミノ酸配列、
(b)配列番号5で表される基質モチーフを有し、該基質モチーフからなる配列のアミノ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結されるとともにカルボキシ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結され、かつPtprz基質活性を維持するアミノ酸配列、
(c)配列番号6で表される基質モチーフを有し、該基質モチーフからなる配列のアミノ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結されるとともにカルボキシ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結され、かつPtprz基質活性を維持するアミノ酸配列、
よりなる群から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなる基質ペプチドに対して試料を作用させるステップ;
(2)前記基質ペプチドの脱リン酸化を検出するステップ。 - 前記試料がPtprz又はその一部であってPtprz酵素活性を有する分子である、請求項6に記載のPtprz活性測定法。
- 前記ステップ(1)をpH6.5〜7.0の条件下で実施する、請求項6又は7に記載のPtprz活性測定法。
- 前記基質ペプチドが、前記(b)及び(c)よりなる群から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項6〜8のいずれか一項に記載のPtprz活性測定法。
- 以下のステップ(i)及び(ii)を含む、Ptprz活性調節物質のスクリーニング法:
(i)被験物質の存在下、以下の配列、即ち
(a)配列番号3で表される基質モチーフを有し、該基質モチーフからなる配列のアミノ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結されるとともにカルボキシ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結され、かつPtprz基質活性を維持するアミノ酸配列、
(b)配列番号5で表される基質モチーフを有し、該基質モチーフからなる配列のアミノ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結されるとともにカルボキシ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結され、かつPtprz基質活性を維持するアミノ酸配列、
(c)配列番号6で表される基質モチーフを有し、該基質モチーフからなる配列のアミノ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結されるとともにカルボキシ末端に1〜5個のアミノ酸残基が連結され、かつPtprz基質活性を維持するアミノ酸配列、
よりなる群から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなる基質ペプチドに対してPtprz又
はその一部であってPtprz酵素活性を有する分子を作用させるステップ;
(ii)前記基質ペプチドの脱リン酸化を検出し、検出結果に基づき前記被験物質の有効性を判定するステップ。 - 前記ステップ(i)をpH6.5〜7.0の条件下で実施する、請求項10に記載のスクリーニング法。
- 前記基質ペプチドが、前記(b)及び(c)よりなる群から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項10又は11に記載のスクリーニング法。
- 前記被験物質の非存在下でPtprz又はその一部であってPtprz酵素活性を有する分子を作用させた場合と比較して前記基質ペプチドの脱リン酸化レベルが高いときに、前記被験物質がPtprzの脱リン酸化作用を促進すると判断し、前記被験物質がPtprzの活性促進に有効であると判定する、請求項10〜12のいずれか一項に記載のスクリーニング法。
- 前記被験物質の非存在下でPtprz又はその一部であってPtprz酵素活性を有する分子を作用させた場合と比較して前記基質ペプチドの脱リン酸化レベルが低いときに、前記被験物質がPtprzの脱リン酸化作用を抑制すると判断し、前記被験物質がPtprzの活性抑制に有効であると判定する、請求項10〜12のいずれか一項に記載のスクリーニング法。
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