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JP5315614B2 - ニッケル酸化鉱石の前処理方法 - Google Patents

ニッケル酸化鉱石の前処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、ニッケル酸化鉱石の前処理方法に関し、さらに詳しくは、ニッケル酸化鉱石から湿式製錬法によりニッケル等の有価金属を回収する際に、浸出工程等に固形物濃度が高いニッケル酸化鉱石のスラリー(以下、鉱石スラリーと呼称する場合がある。)を効率的に供給するため、鉱石スラリーの沈降速度を向上させ、固液分離する際の沈降濃縮に要する時間を短縮すること、或いは鉱石スラリーの降伏応力を低下させ、流送する際の鉱石スラリーの固形物濃度を高めることができるニッケル酸化鉱石の前処理方法に関する。
従来、リモナイト鉱等に代表される低ニッケル含有量のニッケル酸化鉱石からニッケル、コバルト等の有価金属を回収する湿式製錬法として、HPAL(High Pressure Acid Leaching)法等の硫酸浸出法が行なわれている。例えば、硫酸浸出法では、まず、原料鉱石を水中で解砕し、次いで粉砕してスラリー化した後、この鉱石スラリー中の余剰の水分をシックナー等の固液分離設備を用いて除去して濃縮し、固形物濃度の高い濃縮物スラリーを得る。次いで、この濃縮物スラリーを、オートクレーブ等の加圧容器を用いた加圧浸出工程に供給し、高温下、硫酸で浸出して、浸出液を得る。その後、得られた浸出液から、ニッケル、コバルト等の有価金属が回収される。
ここで、原料鉱石のスラリー化は、設備の損傷及び鉱石スラリーの流送負荷の原因となる一定の大きさ以上の鉱石を除去するため、粉砕され、さらに容易に流送することができるように、固形物濃度の低いスラリー(以下、低濃度スラリーと呼称する場合がある。)状態で篩の網目を通過される。しかしながら、元々のニッケル酸化鉱石に含まれるニッケル品位が1〜2重量と低いため、この低濃度スラリーのニッケル濃度は非常に低いので、そのままのスラリー濃度で浸出工程等の後工程を行なうと生産性が悪い。また、同じニッケル量を生産する場合、低濃度スラリーのままでは、巨大なオートクレーブ等の浸出設備が必要となり、設備投資の面から見ても非常に不利である。すなわち、浸出設備に供給される鉱石スラリーの固形物濃度を高濃度に濃縮すれば、余分の水分を持ち込まないので、容量の小さいオートクレーブを用いて効率的にニッケル濃度の高い浸出液が得られるため有利である。
したがって、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬法において、浸出用の原料として、固形物濃度の高いスラリー(以下、高濃度スラリーと呼称する場合がある。)を調製する方法が求められていた。
その一つの方法は、前述したように、一旦低濃度スラリーを調製し、その後スラリーを高濃度化する方法(A)である。一般に、スラリーを高濃度化する手段としては、フィルタープレスによる濃縮又はシックナーによる沈降濃縮が行われているが、ニッケル酸化鉱石から湿式製錬法によりニッケル等を回収するプロセスにおいては、大量の鉱石スラリーを取り扱うため、一基あたりのスラリー処理量が少ないフィルタープレスは適さない。そのため、一基あたりのスラリー処理量が多い大型のシックナーを使用した沈降濃縮による固液分離が採用されていた。
ところが、天然資源であるニッケル酸化鉱石からなる鉱石スラリーの沈降特性は、原料鉱石の変動により一定ではなくバラついており、シックナーによる沈降濃縮においても、固形物濃度又は沈降濃縮に要する時間に差が生じたり、或いは浮遊粒子が全く沈降せず固液分離が行えないという問題を有していた。
これらの問題の主たる原因は、ニッケル酸化鉱石の主成分の一つであるゲーサイト(Fe(OH))の帯電に起因するものであると考えられている。すなわち、ニッケル酸化鉱石中に含まれるシリカ(SiO)の加水分解又は植物性の有機酸により発生したHイオンが鉱石粒子の表面が帯電し、そのため鉱石粒子間に静電気的反発が起こり、微細粒子は重力に抗して沈降しないためである。
この解決策として、従来技術では、微細粒子の表面電荷に見合った凝集剤、例えば、鉱石スラリーが正帯電ならばアニオン系凝集剤を使用し、微細粒子表面の電荷を中和し粒子を凝集させて凝集塊を形成することにより、沈降を促進させる方法が取られていた。しかしながら、この方法では、微細粒子の表面電荷が大きい鉱石の場合には、使用する凝集剤量が増大しコスト増となっていた。さらに、凝集剤によって形成された凝集塊は、体積が大きくなり、逆に鉱石スラリーの沈降濃縮を抑制するという弊害も引き起こしていた。
また、鉱石スラリーを50℃以上に加温することにより、沈降性を改善する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、鉱石スラリーの沈降特性は向上し、高濃度の濃縮物が得られるが、多量の鉱石スラリーを所定時間加熱するためのコスト上の課題がある。
したがって、ニッケル酸化鉱石の高濃度スラリーを得る方法として、一旦低濃度スラリーを調製し、その後スラリーを高濃度化する方法(A)において、このような問題点を解決し、鉱石スラリーの沈降速度を向上させ、固液分離を促進して沈降濃縮に要する時間を短くすることができる方法が望まれていた。
ところで、上記方法(A)においては、鉱石スラリーの沈降濃縮が、真密度、粒子の表面帯電の程度等の鉱石個々の沈降特性に左右されるため、沈降濃縮時間を延長しても一定の固形物濃度までしか濃縮しないという限界がある。この解決策として、高濃度スラリーを調製する方法として、低濃度スラリーからの濃縮ではなく、鉱石から直接高濃度スラリーを調製する方法(B)が考えられる。しかしながら、方法(B)においては、高濃度スラリーの流送に関しての問題が発生する。すなわち、鉱石スラリーは非ニュートン流体に属しており、高濃度になるほどスラリーの持つ降伏応力、即ちスラリーが流れ始めるまでに要する力が大きくなる。この降伏応力が大きくなる理由としては、スラリーの粒子間に存在する水分の低下により潤滑が悪くなりスラリーの粘度が上昇することと、粒子間が狭くなったことにより水素結合などの内部結合力が増加し、この結合を分解させる余分な力が必要になることとが考えられる。
この場合、高濃度スラリーの流送に関して、次の問題が発生する。例えば、スラリー流送設備に使用されるポンプに関して、一般的に使用される安価で一定量の送液性能を持つ遠心式ポンプで流送可能なスラリーの降伏応力は100Pa程度と言われており、この降伏応力を超えるスラリーの流送はポンプの停止又は配管閉塞を招くという問題がある。このため、降伏応力が100Paを超えるスラリーでは、希釈などを行ってスラリーの降伏応力を100Pa以下に調整することが行われる。しかしながら、この際、必要とする希釈の程度の判断が困難であり、過剰に希釈してしまうなどの問題が発生していた。また、希釈を行わずにそのまま流送するため、動力が大きく定量性のあるポンプを利用する場合には、設備コストが増加してしまうという問題がある。
したがって、ニッケル酸化鉱石の高濃度スラリーを得る方法として、鉱石から直接高濃度スラリーを調製する方法(B)において、高濃度スラリーの流送に際して、スラリーを過剰に希釈せずに流送するため、鉱石スラリーの降伏応力を低下させ、流送する際の鉱石スラリーの固形物濃度を高めることができる方法が望まれていた。
このような状況から、ニッケル酸化鉱石のスラリーの沈降速度を向上させ、固液分離する際の沈降濃縮に要する時間を短縮すること、又は鉱石スラリーの降伏応力を低下させ、流送する際の鉱石スラリーの固形物濃度を高めることができるニッケル酸化鉱石の前処理方法が求められている。
特開2003−231928号公報(第1頁、第2頁)
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、ニッケル酸化鉱石から湿式製錬法によりニッケル等の有価金属を回収する際に、浸出工程等に固形物濃度が高い鉱石スラリーを効率的に供給するため、鉱石スラリーの沈降速度を向上させ、固液分離する際の沈降濃縮に要する時間を短縮すること、或いは鉱石スラリーの降伏応力を低下させ、流送する際の鉱石スラリーの固形物濃度を高めることができるニッケル酸化鉱石の前処理方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、固形物濃度が高い鉱石スラリーを形成するニッケル酸化鉱石の前処理方法について、鋭意研究を重ねた結果、鉱石スラリーのpHを等電点近傍に調整したところ、鉱石スラリーの沈降速度又は降伏応力の制御を行ない、浸出工程等に固形物濃度が高い鉱石スラリーを効率的に供給することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、固形物濃度が40〜60重量%であるニッケル酸化鉱石の水性スラリーに、中和剤を添加して、pHを前記水性スラリーpHと等電点との差の絶対値が水素イオン濃度で5×10−6mol/L以下である範囲に調整することにより、鉱石スラリーの降伏応力を100Pa以下に制御した後、鉱石スラリーを流送することを特徴とするニッケル酸化鉱石の前処理方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、前記中和剤は、苛性ソーダ又は硫酸であることを特徴とするニッケル酸化鉱石の前処理方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、前記等電点は、pH値が5〜9であることを特徴とするニッケル酸化鉱石の前処理方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1〜いずれかの発明において、前記調整後の鉱石スラリーは、ニッケル酸化鉱石の硫酸浸出法の原料として供給されることを特徴とするニッケル酸化鉱石の前処理方法が提供される。
本発明のニッケル酸化鉱石の前処理方法は、ニッケル酸化鉱石から湿式製錬法によりニッケル等の有価金属を回収する際に、浸出工程等に固形物濃度が高い鉱石スラリーを効率的に供給するため、鉱石スラリーの沈降速度を向上させ、固液分離する際の沈降濃縮に要する時間を短縮すること、或いは鉱石スラリーの降伏応力を低下させ、流送する際の鉱石スラリーの固形物濃度を高めることができるので、その工業的価値は極めて大きい。例えば、一旦低濃度スラリーを調製しその後スラリーを高濃度化する方法(A)において、低濃度スラリーの沈降速度を向上させ、シックナーなどによる高濃度化のための固液分離を促進することができる。また、鉱石から直接高濃度スラリーを調製する方法(B)において、高濃度スラリーを取り扱う際に過剰に希釈することなく流送することができる。
以下、本発明のニッケル酸化鉱石の前処理方法を詳細に説明する。
本発明のニッケル酸化鉱石の前処理方法は、ニッケル酸化鉱石の水性スラリーに、中和剤を添加して、pHを等電点近傍に調整することにより、鉱石スラリーの沈降速度又は降伏応力を制御することを特徴とする。
本発明において、ニッケル酸化鉱石の水性スラリーのpHを等電点近傍に調整することに重要な意義を有する。これにより、鉱石スラリーの沈降速度又は降伏応力を制御することができる。例えば、沈降速度の制御としては、鉱石スラリーの沈降速度を向上させ、固液分離する際の沈降濃縮に要する時間を短縮すること、或いは降伏応力の制御としては、鉱石スラリーの降伏応力を低下させ、流送する際の鉱石スラリーの固形物濃度を高めることができる。
ここで、まず、鉱石スラリーの沈降速度と等電点の関係について説明する。
一般に、鉱石スラリー中の微細粒子の表面電荷は、ゼーター電位で表される。ゼーター電位とは、溶媒中で粒子表面に吸着したイオン対により形成される電気二重層付近の電位であり、その値の絶対値が大きいと静電気的反発力が発生し、粒子同士の凝集が生じにくくなり、沈降性が低下するといわれている。したがって、ゼーター電位の絶対値の大きさで沈降性の評価が行えること、またゼーター電位の絶対値が零となる、すなわち粒子間の静電気的反発が解消されるpH値、いわゆる等電点(等電位点)で沈降速度が最も向上することが推察される。なお、ゼーター電位の測定には、種々の方法があるが、濃厚なスラリーでは、超音波による方法が好ましい。この方法では、ニッケル酸化鉱石のようにさまざまな鉱物が存在し、かつ数十重量%の濃度を有するスラリーにおいてもゼーター電位を測定することができる。例えば、前記リモナイト鉱では、鉱物種等の組成により、鉱石スラリーのpHは5〜8であるが、ゼーター電位は+200〜−150mVと大きく変動するので、等電点もpH値で5〜9と大きく変動する。
これらについて、図を用いて、具体的に説明する。図1は、鉱石スラリーのpHと等電点の差の絶対値と、下記[メスシリンダーによる沈降試験]での2時間静置後の浮遊粒子濃度(SS濃度)の関係をプロットしたものである。
[メスシリンダーによる沈降試験]
リモナイト鉱を固形物濃度10重量%になるように水に投入して得た等電点の異なる鉱石スラリーを、メスシリンダーに入れ、ガラス製ペラにて回転数200rpmで1時間撹拌して、固形分の分散とスラリーの均一化を行ない、鉱石スラリーのpHを測定した。続いて、撹拌を停止後、2時間静置した後、上澄みを抜き出し、ろ過後乾燥して浮遊粒子の重量を求め、上澄み中の浮遊粒子濃度(mg/L)を算出した。なお、鉱石スラリーの等電点は、超音波を用いたゼーター電位の測定により求めた。
図1より、スラリーの等電点とpHの差の絶対値が大きくなるにつれ、SS濃度が上昇すること、及びスラリーの等電点とpHの差の絶対値が所定値より小さい場合にSS濃度が最小になることが分かる。
すなわち、この等電点近傍では、鉱石スラリーに含まれる微細粒子の表面電荷が零になり、そのため鉱石粒子間に静電気的反発が解消されることが示唆される。ここで、等電点近傍とは、図1において、スラリーpHと等電点との差の絶対値が水素イオン濃度で約3×10−6mol/L以下である範囲であり、pH値により異なるが、例えば等電点のpH値の±1の範囲である。
したがって、鉱石スラリーのpHを等電点近傍に調整することによって、帯電していた微細粒子の表面電荷が中和され、微細粒子同士の静電気的反発が減少するので、沈降が促進され、さらに凝集剤を添加した際には、凝集剤による粒子表面電荷の中和がより効果的に行われ、微細な浮遊粒子が凝集して沈降速度が向上するものと思われる。
次に、鉱石スラリーの降伏応力と等電点の関係について説明する。
ニッケル酸化鉱石から直接高濃度スラリーを調製する方法(B)に際し、鉱石スラリーのpHが等電点から離れると降伏応力が高くなること、及び等電点で降伏応力が最も低下することが分かった。
これらについて、図を用いて、具体的に説明する。図2は、鉱石スラリーのpHと等電点の差の絶対値と、下記[動粘度測定]での降伏応力の関係をプロットしたものである。
[動粘度測定]
リモナイト鉱を固形物濃度40、45、及び52重量%になるように水に投入して得た等電点の異なる鉱石スラリーを、ガラス製ペラにて回転数200rpmで1時間撹拌して、固形分の分散とスラリーの均一化を行ない、鉱石スラリーのpHを測定した。続いて、動粘度測定装置(Physica社製、MCR301)を用いて、降伏応力を測定した。なお、鉱石スラリーの等電点は、超音波を用いたゼーター電位の測定により求めた。
図2より、スラリーの等電点とpHの差の絶対値が大きくなるにつれ、降伏応力が上昇すること、スラリーの等電点とpHの差の絶対値が小さい場合に降伏応力が最小になること、及び、スラリー濃度を40重量%に下げることにより降伏応力が下がり、一般的な遠心式ポンプで流送可能な100Pa以下となることが分かる。
すなわち、上記したように、この等電点近傍では、鉱石スラリーに含まれる微細粒子の表面電荷が零になり、そのため鉱石粒子間に静電気的反発が解消されることが示唆される。ここで、等電点近傍とは、図2において、スラリーpHと等電点との差の絶対値が水素イオン濃度で約5×10−6mol/L以下である範囲であり、pH値により異なるが、例えば等電点のpH値の±1.5の範囲である。
したがって、等電点近傍における降伏応力の低下は、鉱石スラリー中の微細粒子の表面電荷が小さくなり粒子間の静電気的反発が少なくなることにより凝集しやすくなったことと、これにより粗粒子が生成されたことにより、粒子全体の表面積が低下し粒子間の水分供給が増えて潤滑が良くなったこととにより、スラリーが流れやすくなったことによるものと推察される。
本発明に用いるニッケル酸化鉱石の水性スラリーの固形物濃度は、特に限定されるものではなく、鉱石スラリーの沈降速度を制御する際には、ニッケル酸化鉱石の性状等により選ばれるが、一旦低濃度スラリーを調製しその後スラリーを高濃度化する方法(A)において、低濃度スラリーを形成する際の調製コスト等から5〜15重量%であることが好ましい。
本発明に用いるニッケル酸化鉱石の水性スラリーの固形物濃度は、特に限定されるものではなく、鉱石スラリーの降伏応力を制御する際には、ニッケル酸化鉱石の性状等により選ばれるが、鉱石から直接高濃度スラリーを調製する方法(B)において、高濃度スラリーを形成する際の調製コスト、動粘度等から20〜60重量%であることが好ましい。
本発明に用いる中和剤としては、特に限定されるものではなく、鉱石スラリーのpHと等電点によって、アルカリ性又は酸性中和剤が選定されるが、アルカリ性中和剤としては、通常は、消石灰又は苛性ソーダが用いられ、澱物発生が少ない苛性ソーダが好ましい。すなわち、消石灰は安価であるが硫酸を使用するプロセスでは、工程液中の硫酸イオンと反応して石膏の生成とそれによる配管のスケールの発生があり、この除去に余分な処理が増えるので適さない。また、塩基性のニッケル酸化鉱石も用いることができる。さらに、酸性中和剤としては、浸出剤と同様のものが好ましい。例えば、硫酸浸出では、硫酸が用いられる。
本発明においてpHを等電点近傍に調整する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、事前に、使用する鉱石スラリーを用いてゼーター電位のpH依存性を測定して所望の等電点を求めておき、鉱石スラリーをそのpHに調整する方法、或いは、鉱石スラリーのゼーター電位を測定しながら、その値が零になるように中和剤の添加量を調整する方法等が用いられる。
本発明において得られる調整後の鉱石スラリーは、特に限定されるものではなく、ニッケル酸化鉱石から湿式製錬法によりニッケル等の有価金属を回収するプロセスにおいて、鉱石の前処理として一旦低濃度スラリーを調製しその後スラリーを高濃度化する方法(A)では、固液分離設備において、効果的に沈降濃縮が行なわれ、また、鉱石から直接高濃度スラリーを調製する方法(B)では、浸出工程へ問題なく供給することができる。これらの中で、特に、ニッケル酸化鉱石の硫酸浸出法の原料として好ましく用いられる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(実施例1(参考例)
まず、リモナイト鉱(Ni:1.1重量%、Fe:50.6重量%、SiO:1.5重量%)を水に投入し、固形物濃度10重量%の鉱石スラリーを得た。得られた鉱石スラリーのpHは、5.8であった。次いで、苛性ソーダ水溶液を添加して、鉱石スラリーのpHを、この鉱石スラリーの等電点であるpH5.8に調整した。なお、鉱石スラリーの等電点は、超音波を用いたゼーター電位の測定により求めた。その後、この鉱石スラリーを用いて、下記[メスシリンダーによる沈降試験]により上澄み中の浮遊粒子濃度を求めた。その結果、上澄み中の浮遊粒子濃度はほぼ0%であった。
(比較例1)
実施例1で得られたpHが未調整の鉱石スラリーを用いて、下記[メスシリンダーによる沈降試験]により上澄み中の浮遊粒子濃度を求めた。その結果、上澄み中の浮遊粒子濃度は0.04%(400mg/L)であった。
[メスシリンダーによる沈降試験]
鉱石スラリーを、メスシリンダーに入れ、ガラス製ペラにて回転数200rpmで1時間撹拌して、固形分の分散とスラリーの均一化を行った。続いて、撹拌を停止後、2時間静置した後、上澄みを抜き出し、ろ過後乾燥して上澄み中の浮遊粒子濃度(mg/L)を求めた。
以上の結果より、実施例1では、鉱石スラリーのpHを等電点に調整して本発明の方法で行われたので、比較例1に比べて、上澄み中の浮遊粒子濃度が低下し、沈降速度が大幅に向上したことが分かる。
(実施例2)
まず、実施例1と同様のリモナイト鉱を水に投入し、固形物濃度45.0重量%の鉱石スラリーを得た。得られた鉱石スラリーのpHは、5.2であった。次いで、苛性ソーダ水溶液を添加して、鉱石スラリーのpHを、この鉱石スラリーの等電点であるpH7.7に調整した。なお、鉱石スラリーの等電点は、超音波を用いたゼーター電位の測定により求めた。その後、この鉱石スラリーを用いて、動粘度測定装置(Physica社製、MCR301)を用いて、降伏応力を測定した。この結果、鉱石スラリーの降伏応力は、40Paであった。
(実施例3)
まず、実施例1と同様のリモナイト鉱を水に投入し、固形物濃度45.5重量%の鉱石スラリーを得た。得られた鉱石スラリーのpHは、5.6であった。次いで、苛性ソーダ水溶液を添加して、鉱石スラリーのpHを、この鉱石スラリーの等電点であるpH7.3に調整した。なお、鉱石スラリーの等電点は、超音波を用いたゼーター電位の測定により求めた。その後、この鉱石スラリーを用いて、動粘度測定装置(Physica社製、MCR301)を用いて、降伏応力を測定した。この結果、鉱石スラリーの降伏応力は、90Paであった。
(実施例4)
まず、実施例1と同様のリモナイト鉱を水に投入し、固形物濃度45.8重量%の鉱石スラリーを得た。得られた鉱石スラリーのpHは、5.8であった。次いで、苛性ソーダ水溶液を添加して、鉱石スラリーのpHを、この鉱石スラリーの等電点であるpH7.1に調整した。なお、鉱石スラリーの等電点は、超音波を用いたゼーター電位の測定により求めた。その後、この鉱石スラリーを用いて、動粘度測定装置(Physica社製、MCR301)を用いて、降伏応力を測定した。この結果、鉱石スラリーの降伏応力は、30Paであった。
(比較例2)
まず、実施例1と同様のリモナイト鉱を水に投入し、固形物濃度44.1重量%の鉱石スラリーを得た。得られた鉱石スラリーのpHは、5.9であった。その後、この鉱石スラリーを用いて、動粘度測定装置(Physica社製、MCR301)を用いて、降伏応力を測定した。この結果、鉱石スラリーの降伏応力は、180Paであった。
(比較例3)
まず、実施例1と同様のリモナイト鉱を水に投入し、固形物濃度45.6重量%の鉱石スラリーを得た。得られた鉱石スラリーのpHは、5.7であった。その後、この鉱石スラリーを用いて、動粘度測定装置(Physica社製、MCR301)を用いて、降伏応力を測定した。この結果、鉱石スラリーの降伏応力は、450Paであった。
(比較例4)
まず、実施例1と同様のリモナイト鉱を水に投入し、固形物濃度45.9重量%の鉱石スラリーを得た。得られた鉱石スラリーのpHは、5.6であった。その後、この鉱石スラリーを用いて、動粘度測定装置(Physica社製、MCR301)を用いて、降伏応力を測定した。この結果、鉱石スラリーの降伏応力は、170Paであった。
以上の結果より、実施例2〜4では、鉱石スラリーのpHを等電点に調整して本発明の方法で行われたので、降伏応力が大幅に低下したことが分かる。これに対して、比較例2〜4では、pHを等電点に調整することが行われなかったので、降伏応力が高い。
以上より明らかなように、本発明の方法によれば、ニッケル酸化鉱石のスラリーのpHが等電点と大きく離れている場合には、鉱石スラリーのpHを等電点近傍に調整することにより、鉱石スラリーの沈降速度を向上させ、固液分離を促進させることができる。また、直接高濃度に調製した鉱石スラリーのpHが等電点から離れている場合で、かつ鉱石スラリーの降伏応力が一般的なスラリー送液設備に使用される遠心式ポンプの流送可能範囲である100Paを超えてしまった際には、鉱石スラリーのpHを等電点付近に調整することにより、鉱石スラリーを過剰に希釈することなく高濃度で流送することができる。
以上より明らかなように、本発明のニッケル酸化鉱石の前処理方法によれば、ニッケル酸化鉱石から湿式製錬法によりニッケル等の有価金属を回収する際に、浸出工程等に固形物濃度が高い鉱石スラリーを効率的に供給することができるので、特にニッケル酸化鉱石の湿式製錬分野で利用される鉱石の前処理方法として好適である。
鉱石スラリーのpHと等電点の差の絶対値と、メスシリンダーによる沈降試験での2時間静置後の浮遊粒子濃度(SS濃度)の関係をプロットした図である。 鉱石スラリーのpHと等電点の差の絶対値と、動粘度測定での降伏応力の関係をプロットした図である。

Claims (4)

  1. 固形物濃度が40〜60重量%であるニッケル酸化鉱石の水性スラリーに、中和剤を添加して、pHを前記水性スラリーpHと等電点との差の絶対値が水素イオン濃度で5×10−6mol/L以下である範囲に調整することにより、鉱石スラリーの降伏応力を100Pa以下に制御した後、鉱石スラリーを流送することを特徴とするニッケル酸化鉱石の前処理方法。
  2. 前記中和剤は、苛性ソーダ又は硫酸であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル酸化鉱石の前処理方法。
  3. 前記等電点は、pH値が5〜9であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル酸化鉱石の前処理方法。
  4. 前記調整後の鉱石スラリーは、ニッケル酸化鉱石の硫酸浸出法の原料として供給されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のニッケル酸化鉱石の前処理方法。
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