以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図1における図面奥側及び図2における左方を「前方」とし、図1における図面手前側及び図2における右方を「後方」とし、図1における右方及び図2における図面奥側を「車外側」とし、図1における左方及び図2における図面手前側を「車内側」とする。
図1〜3に示すように、ドアラッチ装置1は、自動車のリヤドア(以下、ドアと記す)の後端内側に取り付けられると共に、ドアを閉状態に保持するための噛合ユニット2と、噛合ユニット2に組み付けられる操作ユニット3とを備える。なお、図3は、噛合ユニット2の図示を省略している。
噛合ユニット2の合成樹脂製のボディ4内には、車体側のストライカ5と係合可能なラッチ6と、当該ラッチ6に係合可能なラチェット7が回動可能に収容される。ボディ4の前面には、ラチェット7と一体的に回動可能なオープンレバー71(図4、5、6参照)が枢支される。ドアが閉じられると、図1に示すように、ストライカ5がラッチ6に係合すると共にラチェット7がラッチ6に係合してラッチ6のオープン方向(図1において時計方向)への回動を阻止することによりドアを閉状態に保持する。
主に図3に明示されるように、操作ユニット3は、ボディ4の前面に取り付けられる平面視略L字状の合成樹脂製のケーシング8と、ケーシング8の車内側(図3において下側)を向く開口を閉塞する合成樹脂製のカバー9とを備え、ケーシング8とカバー9との間の収容空間には、モータ10と、モータ10の駆動により回転可能なウォームホイール11と、ロックレバー12と、第1リフトレバー13と、第2リフトレバー14と、インサイドレバー15と、連係レバー16と、チャイルドプールレバー17とが設けられる。さらに、ケーシング8の後面(図3において上面であって、噛合ユニット2のボディ4の前面に対向する面)には、アウトサイドレバー18が設けられる。なお、図4、5、6においては、操作ユニット3の内部構造を明示するためカバー9は省略されている。
カバー9の側面上部には、図2、3に明示されるように、インサイドレバー15の後述の連結部151をカバー9から車内側外部へ露出させるための後述の支軸81を中心とする円弧状の組み付け孔93が連結部151の移動方向に沿って設けられる。組み付け孔93の後端部には、組み付け孔93の幅(図2において上下方向の幅)よりも幅広であって、カバー9のケーシング8への組付けに際し、インサイドレバー15の連結部151が余裕をもって通過し得る大きさの拡幅孔部93aが設けられる。拡幅孔部93aは、インサイドレバー15が後述のセット位置(図11参照)にあるときの連結部151と重なる領域に設けられる。
なお、拡幅孔部93aは、ドアラッチ装置1の使用状態で、待機位置とオープン位置との間を移動するインサイドレバー15の連結部151が移動し得ない位置に設けられる。
カバー9の下部には、ロックレバー12の後述の連結部121及び連結部121に連結されるドアの車内側ロック操作部材をなすロックノブの操作力を伝達可能なロッドまたはケーブルにより形成される操作力伝達部材19の端部を隠蔽する合成樹脂製の蓋部材91が開閉可能に連結される。蓋部材91は、ケーシング8とカバー9との間の収容空間に各部品を組み付ける作業中は開放され、操作力伝達部材19をロックレバー12の連結部121に連結した後に閉鎖される。なお、図2、3においては、蓋部材91が閉鎖された状態を示す。
ケーシング8及びカバー9の上部には、合成樹脂製のルーフカバー24が取り付けられる。ルーフカバー24は、ドアラッチ装置1がドア内に取り付けられた状態において、ドア内に浸入した雨水がケーシング8の上部とカバー9の上部間の隙間からケーシング8とカバー9間の収容空間に浸入するのを防止するためのもので、ケーシング8及びカバー9の上面全体及び組み付け孔93を含む側面上部を覆うように取り付けられる。なお、ルーフカバー24の取り付けは、インサイドレバー15の連結部151にロッドまたはケーブルにより形成される操作力伝達部材21を連結した後に行われる。
ロックレバー12、インサイドレバー15及び連係レバー16は、それぞれが独立して回動し得るようにケーシング8とカバー9との間にケーシング8に設けられた車内方向を向く支軸81により枢支される。なお、支軸81に対しては、ロックレバー12、軸受184、連係レバー16及びインサイドレバー15の順序で積層され、カバー9によってケーシング8を閉塞した後、締結部材185が支軸81に螺合することで、ケーシング8とカバー9とは互いに固定される。また、チャイルドプルーレバー17は、ケーシング8とカバー9との間にケーシング8に設けられた車内方向を向く支軸84により枢支される。すなわち、ロックレバー12、インサイドレバー15、連係レバー16及びチャイルドプルーフレバー17は、全て同一方向(ケーシング8に対して車内側から車外側へ向く方向)からケーシング8に対して組み付けられる。
ロックレバー12は、ロックノブの操作及びモータ10の駆動によるウォームホイール11の回動に基づいて、ケーシング8に設けられたアンロック用ストッパ部(図示略)に当接する図4に示すアンロック位置と、アンロック位置から反時計方向へ所定角度回動してケーシング8に設けられたロック用ストッパ部(図示略)に当接する図5に示すロック位置とに回動可能であって、ケーシング8に支持されたばね20の付勢力によって各位置に弾性保持される。
ロックレバー12の下端部に設けられる連結部121は、操作力伝達部材19を介してロックノブに連結される。これにより、車内側からのロックノブのロック、アンロック操作は、操作力伝達部材19を介して連結部121に伝達され、ロックレバー12は、ばね20の付勢力に抗して図4に示すアンロック位置及び図5に示すロック位置に回動する。
ロックレバー12の上部に設けられた車内側へ突出する突部122は、第1リフトレバー13に設けられた上下方向の長孔131に摺動可能に係合することにより、ロックレバー12と第1リフトレバー13とを連結する。
さらにロックレバー12には、前方へ延出する第1、2係合アーム123、124が設けられる。第1係合アーム123と第2係合アーム124は、互いにウォームホイール11の両側の回転面を挟むように支軸81の軸線方向へ互いに離間するとともに、回転方向にも互いに所定角度離間するように形成される。
第1係合アーム123は、回転面がウォームホイール11の一方の回転面(カバー9に対向する面)に近接対向し、ウォームホイール11の一方の回転面に設けられる第1係合突部111、112に対して当接可能である。第2係合アーム124は、回転面がウォームホイール11の他方の回転面(ケーシング8に対向する面)に近接対向し、ウォームホイール11の他方の回転面に設けられる第2係合突部113、114に対して当接可能である。なお、第2係合突部113、114は、第1係合突部111、112と同一形状で、対称位置に設けられるため、符号を括弧書きで示し図示は省略する。
ウォームホイール11は、ケーシング8とカバー9との間にケーシング8に一体的に設けられた車内方向を向く支軸82により枢支されるとともに、モータ10の回転軸に止着されたウォーム101に噛合してモータ10の回転により正逆転する。
例えば、図4に示すように、ロックレバー12がアンロック位置にある場合には、ロックレバー12の第1係合アーム123は、ウォームホイール11の第1係合突部111、112の回動軌跡外に位置し、第2係合アーム124は、ウォームホイール11の第2係合突部113、114の回動軌跡内に位置する。
図4に示すアンロック状態において、ロックノブがロック操作されると、ロックレバー12は、アンロック位置から図5に示すロック位置へ移動して停止する。この場合、図4に示す位置に停止しているウォームホイール11の各係合突部111、112、113、114は、ロックレバー12における第1、2係合アーム123、124の回動軌跡外に位置しているため、ロックレバー12がアンロック位置からロック位置へ回動しても、ロックレバー12の回動はウォームホイール11に対して伝達されない。よって、ウォームホイール11は逆転することはない。従って、ロックノブのロック操作は、ウォームホイール11、モータ10を逆転させる抵抗を受けることなく軽力で行うことができる。
図5に示すように、ロックレバー12がロック位置にある場合には、ロックレバー12の第1係合アーム123は、ウォームホイール11の第1係合突部111、112の回動軌跡内に位置し、第2係合アーム124はウォームホイール11の第2係合突部113、114の回動軌跡外に位置する。
図5に示すロック状態において、ロックノブがアンロック操作されると、ロックレバー12は、ロック位置から図4に示すアンロック位置へ移動して停止する。この場合にも、ウォームホイール11の各係合突部111、112、113、114は、ロックレバー12の第1、2係合アーム123、124の回動軌跡外に位置しているため、ウォームホイール11は逆転しない。従って、この場合もロックノブのアンロック操作を軽力で行うことができる。
図4に示すアンロック状態において、車内に設けられた操作スイッチまたは携帯用の操作スイッチがロック操作されると、モータ10がロック方向へ回転し、ウォームホイール11は、図4に示す位置から時計方向へ回動する。これにより、先ず第2係合突部113が第2係合アーム124の内側部に当接することで、ロックレバー12はロック方向(反時計方向)へ回動する。そして、ロックレバー12がロック位置に移動すると、ウォームホイール11の第2係合部113がロックレバー12の第2係合アーム124から外れて、第1係合突部112が第1係合アーム123の先端部に当接して、ウォームホイール11はその位置に停止する。
また、図5に示すロック状態において、操作スイッチがアンロック操作された場合には、モータ10がアンロック方向へ回転し、ウォームホイール11がロック方向と反対方向のアンロック方向(反時計方向)へ回動すると、ウォームホイール11の第1係合突部112がロックレバー12の第1係合アーム123の内側部に当接することで、ロックレバー12はアンロック方向(計方向)へ回動する。そして、ロックレバー12がアンロック位置に移動すると、ウォームホイール11の第1係合部112が第1係合アーム123から外れて、第2係合突部113が第2係合アーム124の先端部に当接して、ウォームホイール11はその位置に停止する。
アウトサイドレバー18は、ケーシング8の下部に後方へ突出する支軸83により枢支されると共に、車内側を向く端部に設けられる作動端部181には、第1、2リフトレバー13、14の下部が所定角度前後方向へ揺動可能に連結され、また、同じく車外側の端部に設けられた車外連結部182には、上下方向を向く操作力伝達部材(図示略)を介してドアの車外側に設けられる車外側開操作ハンドルをなすアウトサイドハンドルに連結される。これにより、アウトサイドハンドルが車外側から開操作されると、アウトサイドレバー18は、支軸83の周りに設けられたばねの付勢力に抗して、待機位置(例えば図1参照)からオープン方向(図1において時計方向)へ所定角度回動する。
第1リフトレバー13は、下部に設けた鼓状の軸受孔132にアウトサイドレバー18の作動端部181が挿入されることによって作動端部181を中心に前後方向へ所定角度回動可能に枢支されるとともに、上下方向の長孔131にロックレバー12の突部122が摺動可能に係合されることでロックレバー12に連結される。
ロックレバー12がロック位置からアンロック位置、またはその逆へ回動すると、第1リフトレバー13は、ロックレバー12と共に図4に示すアンロック位置から図5に示すロック位置、またはその逆へ揺動する。また、アウトサイドレバー18が待機位置からオープン方向へ回動すると、第1リフトレバー13は、ロックレバー12がロック位置にあるときにはロック位置からオープン方向(上方)へ移動し、また、ロックレバー12がアンロック位置にあるときにはアンロック位置からオープン方向(上方)へ移動する。
第2リフトレバー14は、アウトサイドレバー18の作動端部181、すなわち第1リフトレバー13と同軸上に、第1リフトレバー13と第2リフトレバー14との間に作用するばね23の付勢力の範囲内で第1リフトレバー13と一体的に図4に示すアンロック位置及び図5に示すロック位置に移動可能に支持される。また、アウトサイドレバー18の待機位置からオープン方向への回動に伴って、第1リフトレバー13と共に第2リフトレバー14もオープン方向(上方)へ移動する。
第2リフトレバー14には、ラチェット7と一体的に回動可能なオープンレバー71に当接可能な解除部141が設けられる。これにより、第2リフトレバー14が第1リフトレバー13と共にアンロック位置からオープン方向へ移動すると、解除部141がオープンレバー71の回動端部に下側から当接することによりオープンレバー71をオープン方向へ回動させ、ラチェット7をラッチ6から離脱させてドアを開けることができる。しかし、第2リフトレバー14が第1リフトレバー13と共にロック位置からオープン方向へ移動した場合には、解除部141は、オープンレバー71の前方を横切るように移動することにより、オープンレバー71の回動端部に対して空振りしてドアを開けることはできない。
なお、本文中で使用される施解錠機構は、ロックレバー12、第1、2リフトレバー13、14により構成されるものであり、また、施解錠機構のロック状態及びアンロック状態は、ロックレバー12、第1、2リフトレバー13、14がロック位置及びアンロック位置にある状態を示す。なお、施解錠機構は、本実施形態に限定されるものでなく、第1リフトレバー13と第2リフトレバー14とを一体形成した構成でも良い。
チャイルドプルーフレバー17は、ケーシング8とカバー9間に車内方向を向く支軸84により枢支され、後端部に設けられて車内側へ突出する凸状の操作部172が手動操作されることにより、例えば図4に示すアンロック位置及びアンロック位置から時計方向へ所定角度回動した例えば図6に示すロック位置に回動することができる。操作部172は、ドアを開けたときのみ、手動操作が可能なようにカバー9の下部に設けられた長孔92及びドアのインナパネルに設けられる長孔(図示略)から車内側へ露出する。
チャイルドプルーフレバー17の前部には、支軸81を略中心とする円弧状の長孔171が設けられ、同じく操作部172よりも支軸84寄り側の回転面には、先端にカバー9側に向けて突出する突部173を設けて車内外方向へ弾性変形可能な舌片部174が設けられる。チャイルドプルーフレバー17は、カバー9をケーシング8に取り付けた状態において、突部173がカバー9の内面に設けられた凹凸部(図示略)に弾性係合することによってアンロック位置及びロック位置に弾性的に保持される。換言すると、カバー9によりケーシング8を閉塞し、チャイルドプルーフレバー17に対して弾性力を付与しない限り、チャイルドプルーフレバー17は、ケーシング8に設けた支軸84に枢支された状態にあっては、ドアラッチ装置1の組み立て作業工程での振動等によって簡単に位置がずれてしまう。
チャイルドプルーフレバー17の長孔171には、鍔付きピンによって形成されるフローティング部材22が前後方向へ摺動可能に係合される。
なお、本発明に係わるチャイルドプルーフロック機構は、本実施の形態においてはチャイルドプルーフレバー17及びフローティング部材22により構成されるが、本実施の形態に限定されるものではない。例えば、フローティング部材22をリンク等に変更しても良い。
インサイドレバー15は、上端部にカバー9の組み付け孔93を通ってカバー9外に露出し得るように車内側へクランク状に折曲形成された連結部151を有し、この連結部151にインサイドハンドルの操作力を伝達可能なケーブル等の操作力伝達部材21の端部が連結されることによって、インサイドハンドルの開操作に基づいて例えば図4に示す待機位置からオープン方向(反時計方向)へ所定角度回動する。さらに、操作力伝達部材21の端部を連結部151に連結しない状態での各部品のケーシング8への組付けに際しては、インサイドレバー15は、インサイドハンドルの操作に基づかないで待機位置からオープン方向と反対方向へ所定角度回動したセット位置(図11参照)に移動可能である。
インサイドレバー15におけるチャイルドプルーフレバー17の長孔171と車内外方向へ重合する回転面には、略T字状の制御孔152が設けられ、この制御孔152には、フローティング部材22が摺動可能に係合される。主に図7に明示されるように、制御孔152は、上下方向(放射方向)を向く係合孔部152aと、係合孔部152aの上部から後方へ延出し支軸81を中心とする円弧状の空振り孔部152bと、係合孔部152aの上部から前方(空振り孔部152bと反対方向)へ延出する規制孔部152cとから形成される。
連係レバー16は、ケーシング8とカバー9との間に支軸81(ロックレバー12及びインサイドレバー15と同軸)に枢支されると共に、チャイルドプルーフレバー17の長孔171及びインサイドレバー15の制御孔152に互いに重合する回転面には、上下方向(放射方向)を向く長孔161が設けられる。
長孔161には、チャイルドプルーフレバー17の回動に伴って、フローティング部材22が上下方向へ摺動し得るように係合される。
フローティング部材22は、図8に示すように、チャイルドプルーフレバー17がアンロック位置にあるときには、インサイドレバー15における制御孔152の係合孔部152aに進入し係合孔部152aの内縁に対してインサイドレバー15の回動方向へ係合可能な位置にあり、図9に示すように、チャイルドプルーフレバー17がロック位置で、かつインサイドレバー15が待機位置にあるときには、制御孔152の係合孔部152aから外れた上方位置にあり、図10に示すように、チャイルドプルーフレバー17がロック位置で、かつインサイドレバー15がオープン方向へ回動したときには、制御孔152の空振り孔部152bへ相対的に移動し、図11に示すように、チャイルドプルーフレバー17がロック位置で、かつインサイドレバー15がセット位置にあるときには、制御孔152の規制孔部152cに対して上下方向(チャイルドプルーフレバー17の回動方向)へ係合可能な位置にある。
なお、本文中で使用されるチャイルド機構のアンロック状態は、チャイルドプルーフレバー17がアンロック位置にあって、フローティング部材22が制御孔152の係合孔部152aに進入した状態を示し、同じくロック状態は、チャイルドプルーフレバー17がロック位置にあって、フローティング部材22が制御孔152の係合孔部152aから外れた位置にある状態を示す。
なお、本発明に係わる保持手段は、本実施の形態においてはインサイドレバー15に設けられる制御孔152に連続して設けられる規制孔部152cと、制御孔152及び規制孔部152cに摺動可能に係合するフローティング部材22とを含み、インサイドレバー15をセット位置とすることによって、フローティング部材22が規制孔部152cに係合してチャイルドプルーフレバー17をロック位置に保持する構成であるが、本実施の形態の構成に特定されるものではない。例えば、チャイルドプルーフレバー17をアンロック位置とした状態で、インサイドレバー15をセット位置とすることによって、チャイルドプルーフレバー17をアンロック位置に保持するように、フローティング部材22が規制孔部152cに係合する構成とする。この場合は、規制孔部152cを係合孔部152aの上端から反時計方向へ延出する構成に代えて、規制孔部152cを係合孔部152aの下端から反時計方向へ延出する構成とする。
例えば図8に示すように、施解錠機構及びチャイルドプルーフロック機構が共にアンロック状態の場合には、インサイドレバー15と連係レバー16との連係関係は接続状態にある。従って、インサイドハンドルの開操作に基づいて、インサイドレバー15が待機位置からオープン方向(図8に示す矢示方向(反時計方向))へ回動すると、制御孔152の係合孔部152aがフローティング部材22に対して回動方向に係合し、フローティング部材22もインサイドレバー15と共にオープン方向(反時計方向)へ回動する。インサイドレバー15のオープン方向への回動は、フローティング部材22、長孔161を介して連係レバー16へ伝達され、連係レバー16はインサイドレバー15と共にオープン方向へ回動する。連係レバー16の回動は、連係レバー16の前部に設けたオープン作用部162がアウトサイドレバー18の被オープン作用部183に対して下側から回動方向へ当接することで、アウトサイドレバー18に伝達される。そして、アウトサイドレバー18が待機位置からオープン方向へ回動すると、第2リフトレバー14の解除部141がオープンレバー71の回動端部に当接することにより、オープンレバー71をオープン方向へ回動させ、ラチェット7をラッチ6から離脱させてドアを開けることができる。
図9に示すように、施解錠機構がアンロック状態で、チャイルドプルーフロック機構がロック状態の場合には、インサイドレバー15と連係レバー16との連結は切断状態にある。従って、インサイドハンドルの開操作に基づいて、インサイドレバー15が待機位置からオープン方向(図9に示す矢示A方向(反時計方向))へ回動しても、図10に示すように、制御孔152の空振り孔部152bがフローティング部材22に対して空振りするため、フローティング部材22はその位置から動くことはない。よって、インサイドレバー15のオープン方向への回動は、連係レバー16に伝達されないため、施解錠機構がアンロック状態であっても車内からはドアを開けることはできない。
次に、インサイドレバー15、連係レバー16、チャイルドプルーフレバー17及びフローティング部材22の組付け要領について説明する。
先ず、予めロックレバー12をケーシング8の支軸81に組み付けた状態で、連係レバー16、インサイドレバー15の順番でケーシング8の支軸81に取り付けた軸受184に車内側から組み付ける。次に、チャイルドプルーフレバー17をケーシング8の支軸84に同様に車内側から組み付ける。なお、この場合、フローティング部材22は、予め連係レバー16の長孔161に組み付けられ、インサイドレバー15、チャイルドプルーフレバー17の組付け時に、制御孔152及び長孔171内に挿入される。
続いて、連係レバー16、インサイドレバー15及びチャイルドプルーフレバー17をケーシング8に仮組みした状態で、図9に示すように、チャイルドプルーフレバー17をロック位置とする。この状態で、図11に示すように、インサイドレバー15をオープン方向と反対方向へ回動させてセット位置にセットする。これにより、フローティング部材22は、インサイドレバー15における制御孔152の規制孔部152cの上下縁に係合する。これにより、チャイルドプルーフレバー17は、組立て作業工程時における振動等によって、ロック位置から他の位置に妄りに動くことがないように保持される。従って、インサイドレバー15をセット位置に止めている限り、チャイルドプルーフレバー17はロック位置から動くことはないので、組み立て作業中に、各レバー15、16,17が組立て時の正規の位置から妄りに動くようなことはない。
続いて、インサイドレバー15をセット位置に止めて、チャイルドプルーフレバー17をロック位置に保持した状態で、カバー9を車内側、すなわち各レバー15、16、17の組付け方向(図3に示す矢示B方向)と同じ方向からケーシング8に取り付け、ケーシング8を閉塞する。この場合、セット位置にあるインサイドレバー15の連結部151は、カバー9における拡幅孔部93aと合致する位置にあるため、カバー9を組付け方向(矢示B方向)に対して直交する方向へずらすことなく、カバー9をケーシング8に対して真直ぐに組み付けることで、インサイドレバー15の連結部151を拡幅孔部93aを通過させてカバー9外に露出させることができる。これと同時に、チャイルドプルーフレバー17はロック位置に保持されているため、チャイルドプルーフレバー17の操作部172をカバー9の長孔92を通してカバー9外に確実に露出させることができる。
次に、カバー9をもって、ケーシング8を閉塞し、チャイルドプルーフレバー17に対してアンロック位置及びロック位置に弾性保持するための弾性力を付与した状態、すなわちチャイルドプルーフレバー17の突部173をカバー9の内面に設けられた凹凸部に弾性的に当接させた状態で、チャイルドプルーフレバー17を弾性力に抗して図11に示すロック位置からアンロック位置へ回動させる。これにより、チャイルドプルーフレバー17の回動面に設けた車外側へ突出する突部175がインサイドレバー15の被当接部153に下側から当接することで、インサイドレバー15は、チャイルドプルーフレバー17のロック位置からアンロック位置への回動に伴ってセット位置から待機位置へ回動する。そして、フローティング部材22は、チャイルドプルーフレバー17のロック位置からアンロック位置への回動及びインサイドレバー15のセット位置から待機位置へ回動に伴って、インサイドレバー15の制御孔152の規制孔部152cから図8に示すように係合孔部152a内に進入する。
通常、ドアラッチ装置1をカーメーカ等の納入先に納入する形態は、チャイルドプルーフロック機構はアンロック状態、インサイドレバー15は待機位置にそれぞれ設定される。本実施の形態のように、チャイルドプルーフレバー17をロック位置からアンロック位置へ移動にさせる単一の作業で、インサイドレバー15も同時に待機位置に移動させることができるようにすることによって、ドアラッチ装置1の組み立て作業をより効率的に行なうことができる。
インサイドレバー15が待機位置に移動すると、インサイドレバー15の連結部151は、組み付け孔93に沿って前方へ移動し、拡幅孔部93aから組み付け孔93の中央付近に移動する。そして、この状態で、カバー9の組み付け孔93の中央付近から露出したインサイドレバー15の連結部151に操作力伝達部材21の端部を連結した後、ルーフカバー24をケーシング8及びカバー9の上部に取り付け、カバー9における組み付け孔93、拡幅孔部93a及び連結部151を隠蔽する。
なお、ドアラッチ装置1をドア内に取り付けた使用形態においては、連結部151は、インサイドハンドルの操作に基づくインサイドレバー15の作動に伴って組み付け孔93に沿って移動するが、拡幅孔部93aに対応する位置へは移動しない。よって、インサイドレバー15の作動時に、連結部151が拡幅孔部93aの縁に対して作動方向へ引っ掛かってインサイドレバー15の作動に悪影響を及ぼすようなことはない。
図12〜14は、本発明に係わる他の実施形態を示し、図12は、インサイドレバー15がセット位置にある状態を示し、図13は、インサイドレバー15が待機位置にある状態を示し、図14は、覆い部94付近を拡大した斜視図を示す。なお、図12、13は、ルーフカバー24を開放した状態を示す。
他の実施形態においては、前記実施形態の構成に加えて、カバー9の車内側を向く側面に拡幅孔部93aを車内側から覆う覆い部を94を一体的に形成したものであって、覆い部94を追加した以外については前記実施形態と同一である。よって、前記実施形態と相違する点についてのみ説明し、同一部分についての説明は省略する。
覆い部94は、拡幅孔部93aを車内側から覆うとともに、上下部及び後部は閉塞され、前部、すなわちインサイドレバー15が待機位置からオープン方向へ移動するときの、連結部151の移動方向側は開口している。図12に示すように、インサイドレバー15がセット位置にあって、連結部151が拡幅孔部93aにある場合には、覆い部94は連結部151を車内側から覆い、また、図13に示すように、インサイドレバー15が待機位置にあって、連結部151が組み付け孔93の中央付近にある場合には、連結部151は、覆い部94から露出して操作力伝達部材21の連結作業を可能にする。
上述により、インサイドレバー15がセット位置にある場合には、図12に明示されるように、連結部151は覆い部94により覆われるため、操作力伝達部材21の端部を連結部151に連結することはできない。これにより、操作力伝達部材21を連結部151に連結する作業を、インサイドレバー15が待機位置にあるときに行うように作業工程指示している場合にあっては、操作力伝達部材21の連結作業の誤作業を確実に防止することができる。なお、ルーフカバー24は、操作力伝達部材21を待機位置にあるインサイドレバー15の連結部151に連結した後に閉鎖される。
さらに、組み付け孔93の端部である拡幅孔部93aは覆い部94により覆われているため、ドアラッチ装置1をドア内に取り付けた使用形態において、ドア内に浸入した大量の雨水がドアラッチ装置1の上部に掛かってルーフカバー24とカバー9間の隙間に浸入したとしても、当該浸入した雨水は覆い部94によって堰止められる。これにより、雨水が拡幅孔部93aを通ってケーシング8内に浸入することを阻止することができる。
上述により、本実施の形態においては、ケーシング8と、ケーシング8を閉塞するカバー9と、ケーシング8とカバー9間に支持され、インサイドハンドルの操作に基づいて待機位置からオープン方向へ作動可能であるとともに、ケーシング8への組付けに際し、待機位置からオープン方向と反対方向へ移動したセット位置に移動可能なインサイドレバー15と、ケーシング8とカバー9間に支持され、インサイドレバー15のオープン方向への作動を噛合ユニット2へ第2リフトレバー14を介して伝達可能な連係レバー16と、ケーシング8とカバー9間に支持され、インサイドレバー15と連係レバー6との連係関係を解除可能なロック状態及び接続可能なアンロック状態に切替可能なチャイルドプルーフロック機構(チャイルドプルーフレバー17及びフローティング部材22)と、インサイドレバー15がセット位置にあるときにはチャイルドプルーフロック機構(チャイルドプルーフレバー17及びフローティング部材22)をロック状態またはアンロック状態に保持し、インサイドレバー15のセット位置から待機位置への移動によりチャイルドプルーフロック機構(チャイルドプルーフレバー17及びフローティング部材22)の保持を解除可能な保持手段(制御孔152の規制孔部152c及びフローティング部材22)とを備えることによって、インサイドレバー15、チャイルドプルーフレバー17及びカバー9のケーシング8への取り付けに際し、チャイルドプルーフレバー17の動きを止めて、カバー9のケーシング8に対する取り付け作業の効率化を図ることができる。