概要
本発明者は、プロテアソーム阻害物質を用いて細胞タンパク質分解を減少させるか、または阻害することにより、不完全なリボソーム産物(defective ribosomal product)(DRiP)および短寿命タンパク質(short lived protein)(SLiP)(ならびにそれらの免疫原性断片)の「小胞(bleb)」、すなわち本明細書においてDRibble(DRiPs in blebs)と呼ばれる構造体中への細胞蓄積および分泌が起こることを確認した。プロテアソーム阻害物質によって誘導されたオートファジーの後に細胞(腫瘍細胞または病原体感染細胞などの)から放出されるDRibbleは、オートファジー体(body)中にDRiPおよびSLiP(ならびにそれらの断片)を蓄積し、かつ、クロスプライミングを介して、強い免疫性(抗腫瘍または抗病原体など)を誘導し得ることが、本明細書において示される。開示されるDRibbleは、免疫療法において、例えば、腫瘍(もしくは病原体)の退縮を媒介するか、または腫瘍(もしくは病原体)の再発を防止するのに必要とされる閾値レベルを上回るレベルで、腫瘍を有する宿主(または病原体に感染した宿主)において十分な数の腫瘍反応性または病原体反応性のエフェクター/記憶T細胞を産生させるために、使用することができる。同様に、インビボでのDRibbleの形成(例えば、プロテアソーム機能を阻害する作用物質およびオートファジーを誘導する作用物質の投与による)も、免疫療法において使用することができる。
例えば、腫瘍由来のDRibble、ならびに腫瘍由来DRibbleを負荷されたAPC(樹状細胞のような)は、インビトロおよびインビボの両方において、生きた腫瘍細胞または死滅させた腫瘍細胞と共にインキュベートされたAPCよりも効率的に、腫瘍反応性のCTLおよびHTLを活性化することができる。特定の例において、対象にDRibbleを投与すると(例えば、単離されたDRibble集団として、DRibbleを産生する細胞の集団として、またはDRibbleを負荷された樹状細胞として)、CD4細胞およびCD8細胞の生成が増加し、かつ、1種または複数種のIL-6、IL-12、およびTNF-αなどの炎症性サイトカインまたは炎症性ケモカインの産生が促進される。肺癌の動物モデルにおいて、DRibbleを負荷された樹状細胞(DC)の方が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を産生するように操作された全腫瘍細胞ワクチンと比べて、定着した腫瘍の退縮を媒介するのに有意に効果的であることも、示される。同様に、肺癌の動物モデルにおいて、化学療法剤(抗OX40抗体のような)の存在下の腫瘍由来DRibbleの方が、化学療法剤単独と比べて、十分に定着した腫瘍の退縮を媒介するのに有意に効果的であることも示される。
これらの観察結果に基づいて、腫瘍特異的DRiP(もしくはSLiP)抗原または病原体特異的DRiP(もしくはSLiP)抗原に対する免疫応答を刺激する方法が、開示される。特定の例において、このような方法は、癌対象において、CD4+腫瘍特異的T細胞およびCD8+腫瘍特異的T細胞の両方の急速な増殖を誘導するか、または、対象(病原体に感染した対象のような)において、CD4病原体特異的T細胞およびCD8病原体特異的T細胞の両方の大規模な増殖を誘導する。
1種または複数種のDRiP(またはSLiP)、例えば、腫瘍特異的DRiPまたは病原体特異的DRiPなど免疫原性のDRiP断片またはSLiP断片に対する免疫応答を刺激または増強するための方法が提供される。特定の例において、この方法は、細胞のアポトーシスを実質的に誘導しない量のプロテアソーム阻害物質と細胞を、細胞がDRibbleを産生するのに十分な条件下で接触させる段階、およびDRiPを抗原提示細胞(APC)によって提示させ、それによって1種または複数種のDRiP(DRiP抗原のような)に対する免疫応答を刺激する段階を含む。いくつかの例において、細胞はまた、オートファジーを誘導する量の作用物質、例えばラパマイシン、または細胞を飢餓状態にする培地(HBSS培地のような)と接触させられる。特定の例において、細胞はまた、プロテアソーム阻害物質の存在下でDRibble産生を増強するのに十分な量の、タンパク質のグリコシル化を減少させる作用物質、例えばツニカマイシンと接触させられる。
これらの細胞は、例えば、プロテアソーム阻害物質を対象に投与することによって、インビボでプロテアソーム阻害物質および他の作用物質と接触させることができる。別の例において、細胞は、エクスビボで(例えば、組織培養物中で)プロテアソーム阻害物質と接触させられ、結果として生じるDRibbleが、インビボでAPCと接触させられる(例えば、治療的な量のDRibbleを対象に投与することによって)か、または結果として生じる処理細胞もしくはそれらから単離されたDRibbleが、エクスビボでAPCと接触させられ、結果として生じる負荷されたAPCが、治療的な量で対象に投与される。
特定の例において、この方法は、単離されたDRibbleまたはDRibbleを負荷されたAPCを対象に投与する段階を含む。DRibbleは、所望のDRiPおよびその断片を含み、それによって、対象における1種または複数種のDRiPに対する免疫応答を刺激する細胞から得られる。いくつかの例において、この方法は、プロテアソームの活性を阻害し(および、いくつかの例においてはオートファジーを誘導し)、かつ、細胞(処理細胞と呼ばれる)にDRibbleを産生させるのに十分な量のプロテアソーム阻害物質(および、いくつかの例においては、さらに、オートファジーを誘導する量の作用物質)と接触させた細胞を対象に投与する段階を含む。これらの細胞は、所望のDRiPを含み、それによって、対象における1種または複数種のDRiPに対する免疫応答を刺激する。
1つの例において、対象は腫瘍を有し、かつ、DRibbleは同じタイプの腫瘍細胞から得られるか、または、処理細胞は同じタイプのものである。例えば、対象が乳癌に罹患している場合には、DRibbleは、乳癌細胞(例えば、同じ対象に由来する乳癌細胞、もしくは別の対象、例えば乳癌細胞株に由来する乳癌細胞)から得られるか、または処理細胞が乳癌細胞である。しかしながら、良性腫瘍細胞のような非悪性腫瘍細胞もまた、DRibbleの供給源として使用することができる。別の例において、DRibbleは、病原体に感染した細胞から得られる。
特定の例において、処理細胞、単離されたDRibble、またはDRibbleを負荷されたAPCは、免疫賦活薬(アジュバント、例えばモノホスホリルリピドA(MPL)、CpG、もしくは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)のようなサイトカインなど)、抗腫瘍化学療法剤(例えばTaxotere)、T細胞共刺激分子に対する抗体(例えば抗OX40抗体)、腫瘍細胞もしくは間質細胞の阻害性リガンドを阻害する作用物質(例えば、PD-1シグナル伝達を阻害する作用物質)、またはそれらの組合せなど他の作用物質と組み合わせて投与される。いくつかの例において、対象にリンパ球枯渇(lymphodepletion)剤が投与された後に、処理細胞、DRibble、またはDRibbleを負荷されたAPCが投与される。
特定の例において、方法は、対象における腫瘍細胞に対する免疫応答を刺激する方法である。例えば、この方法は、細胞にDRibbleを産生させるのに十分な量のプロテアソーム阻害物質(および、いくつかの例においては、さらに、オートファジーを誘導する作用物質)に腫瘍細胞を曝露する段階を含んでよく、これらの腫瘍細胞は、対象中に存在するのと同じタイプの腫瘍細胞である。いくつかの例において、これらの処理された腫瘍細胞は、例えば、全細胞腫瘍調製物として、対象に投与され、それによって、1種または複数種の腫瘍DRiPに対する免疫応答が刺激される。他の例において、結果として生じるDRibbleが単離され、それによって、単離されたDRibbleの集団が作製され、かつ、対象に投与され、それによって、1種または複数種の腫瘍DRiPに対する免疫応答が刺激される。いくつかの例において、単離されたDRibbleは、対象由来の末梢血単核細胞(PBMC)から得られるAPC(樹状細胞のような)と共に、APCが1種または複数種のDRiPを提示するのに十分な条件下、エクスビボでインキュベートされ、それによって、DRibbleを負荷されたAPCが作製される。このような例において、結果として生じるDRibbleを負荷されたAPCは、対象に投与され、それによって、1種または複数種の腫瘍DRiPに対する免疫応答が刺激される。
皮下(s.c)、皮内(i.d.)、静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)、または筋肉内(i.m.)など任意の適切な投与方法を使用することができる。特定の例において、処理細胞、単離されたDRibble、またはDRibbleを負荷されたAPCを含むもののような、開示される免疫原性組成物は、ある期間に渡って、例えば、少なくとも180日間の期間に渡って、少なくとも2回、例えば少なくとも3回投与される。
細胞、例えば哺乳動物細胞によってDRibbleを産生させるための方法が提供される。このような方法は、DRibble産生を刺激するため、例えば、細胞によるDRibble産生を増加させるために使用することができる。特定の例において、この方法は、DRibbleを産生させるのに十分な量および条件下で、可逆的プロテアソーム阻害物質のようなプロテアソーム阻害物質と細胞を接触させる段階を含む。いくつかの例において、細胞はまた、細胞によるDRibble産生を増強するのに十分な条件下で、ラパマイシンのようなオートファジーを誘導する作用物質、または細胞を飢餓状態にする培地と接触させられる。いくつかの例において、細胞はまた、細胞によるDRibble産生を増強するのに十分な条件下で、ツニカマイシンのような、タンパク質のグリコシル化を減少させる作用物質と接触させられる。この方法は、いくつかの例において、例えば、細胞全体および大型細胞片からDRibbleを実質的に分離することによって、結果として生じるDRibbleを回収する段階をさらに含む。いくつかの例において、細胞によって分泌されるDRibbleが収集される。あるいは(または、さらに)、細胞内のDRibbleが、回収され得る。特定の例において、回収されるDRibbleは、少なくとも純度50%、例えば少なくとも純度90%にまで単離される。
DRibbleは、免疫原性DRiPが望まれる任意の細胞から産生させることができる。1つの例において、細胞は、乳癌細胞、黒色腫細胞、腎細胞癌細胞、または肝臓癌細胞などの腫瘍細胞である。別の例において、細胞は、ウイルス、細菌、原生動物、真菌、またはその組合せなど1種または複数種の病原体に感染した細胞である。いくつかの例において、細胞は、1種または複数種のインフルエンザウイルスタンパク質のような1種または複数種の病原性抗原をコードしている核酸分子を含むプラスミドまたはウイルスベクターでトランスフェクトされた細胞である。
特定の例において、DRibbleを産生させる方法は、細胞におけるタンパク質分解を実質的に阻害するのに十分な条件下、例えば、少なくとも4時間、例えば、少なくとも6時間、少なくとも24時間、または少なくとも48時間、腫瘍細胞をプロテアソーム阻害物質と接触させる段階を含む。いくつかの例において、DRibbleを産生させる方法は、細胞のオートファジーを実質的に誘導するのに十分な条件下、例えば、少なくとも4時間、例えば、少なくとも6時間、少なくとも24時間、または少なくとも48時間、オートファジーを誘導する作用物質と腫瘍細胞を接触させる段階をさらに含む。DRibbleの単離または精製が望ましい場合には、細胞を沈殿させるのに十分であるがDRibbleを沈殿させない条件下(例えば、低速の遠心分離)で、腫瘍細胞を遠心分離することができる。結果として生じる、DRibbleを含む上清を収集し、かつ、DRibbleを沈殿させるのに十分な条件下(例えば、高速の遠心分離)で遠心分離する。次いで、例えば、抗原提示細胞(APC)に負荷するために、または免疫原性組成物を作製するために、DRibbleを含む沈殿物を収集する。
開示される方法を用いて産生される単離されたDRibble、および単離されたDRibbleを含む免疫原性組成物もまた、本発明の開示によって提供される。
免疫原性組成物を産生するための方法が開示される。特定の例において、この方法は、単離されたDRibbleを樹状細胞(DC)のようなAPCと接触させ、それによって、DRibbleを負荷されたAPCを含む免疫原性組成物を作製する段階を含む。この方法は、免疫原性組成物を形成する段階に先立って、DRibbleを負荷されたAPCをDRibbleから単離する段階をさらに含んでよい。このような方法によって産生された免疫原性組成物もまた、本発明の開示によって提供される。
本開示の前述および他の目的、特徴、および利点は、添付図面に関連して続く以下の詳細な説明からより明らかになると考えられる。
いくつかの態様の詳細な説明
略語および用語
以下の用語および方法の説明は、本発明の開示をより良く説明するため、かつ、本発明の開示の実施に際して当業者を導くために、提供される。単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈において特に指示がない限り、1つまたは複数を意味する。例えば、「オートファジー誘導因子を含む」という用語は、単一または複数のオートファジー誘導因子を含み、「少なくともオートファジー誘導因子を含む」という語句と同義であるとみなされる。「または(or)」という用語は、文脈において特に指示がない限り、記載された代替の要素の単一の要素または2つもしくはそれ以上の要素の組合せを意味する。本明細書において使用される場合、「含む(comprise)」は、「含む(include)」を意味する。したがって、「AまたはBを含む(comprising A or B)は、「A、B、またはAおよびBを含む(including A, B, or A and B)」を意味し、付加的な要素を除外しない。
他に説明されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
APC 抗原提示細胞
CM 完全培地
CTL 細胞障害性Tリンパ球
DC 樹状細胞
DRiP 不完全なリボソーム産物
DRibble 小胞中の不完全なリボソーム産物
ER 小胞体
ERAD ER関連分解
GM-CSF 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
HTL ヘルパーTリンパ球
IFN-γ インターフェロンγ
MHC 主要組織適合遺伝子複合体
PBMC 末梢血単核細胞
PD-1 プログラムドデス(programmed death)-1
SLiP 短寿命タンパク質
アジュバント:本明細書において開示される免疫原(処理細胞、単離されたDRibble、またはDRibbleを負荷されたAPCなど)は、アジュバントと組み合わせて使用され得る。アジュバントは、免疫原性物質と組み合わせて使用された場合に、結果として生じる免疫応答を増強するか、またはそうでなければ改変もしくは変更する、作用物質である。いくつかの例において、アジュバントは、免疫原性物質によって対象中で誘導される抗体の力価を上昇させる。別の例において、抗原性物質が多価性の抗原性物質である場合には、アジュバントは、対象中で誘導される抗体が特異的に結合する特定のエピトープ配列を改変する。
本明細書において開示される免疫原(腫瘍細胞または病原体感染細胞に由来するDRibbleのような)のいずれかと共に使用され得る例示的なアジュバントには、フロイント不完全アジュバント(IFA)、フロイント完全アジュバント、B30-MDP、LA-15-PH、モンタニド、サポニン、水酸化アルミニウム(Amphogel, Wyeth Laboratories, Madison, NJ)のようなアルミニウム塩、ミョウバン、脂質、スカシ貝タンパク質、ヘモシアニン、エデスチン、MF59マイクロエマルジョン、マイコバクテリア抗原、ビタミンE、非イオン性ブロックポリマー、ムラミルジペプチド、ポリアニオン、両親媒性物質、ISCOM(欧州特許EP 109942において開示されているもののような、免疫を刺激する複合体)、植物油、カーボポル(Carbopol)、酸化アルミニウム、油エマルジョン(Bayol FまたはMarcol52など)、細菌毒素(炭疽菌(B. anthracis)防御抗原、大腸菌(E. coli)熱不安定性毒素(LT)、コレラ毒素、破傷風毒素/トキソイド、ジフテリア毒素/トキソイド、P.アエルギノーサ(aeruginosa)外毒素/トキソイド、百日咳毒素/トキソイド、およびウェルチ菌(C. perfringens)外毒素/トキソイドなど)、細菌壁タンパク質、および他の生成物(細胞壁およびリポ多糖(LPS)など)、ならびにそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
1つの例において、アジュバントは、免疫活性化、例えば、T細胞、B細胞、単球、樹状細胞、およびナチュラルキラー細胞による先天性免疫応答または適応免疫応答を刺激するDNAモチーフを含む。免疫活性化を刺激するDNAモチーフの具体的な非限定的例には、米国特許第6,194,388号、同第6,207,646号、同第6,214,806号、同第6,218,371号、同第6,239,116号、同第6,339,068号、同第6,406,705号、および同第6,429,199号に記載されているような、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、ならびにGM-CSF、またはIL-2、IL-7、IL-15、およびIL-21など他の免疫調節性サイトカインが含まれる。
1つの例において、アジュバントは、ssRNA一本鎖オリゴリボヌクレオチド(ORN)のような、ssRNAまたはdsRNAを含む。例えば、アジュバントは、HIV由来のGUに富むRNA
を含んでよい。
別の例において、合成アジュバントは、R848(TLR7/8リガンド)(3M pharmaceutical)またはα-galcer(NKT細胞リガンド)を含む。
投与:本明細書において開示される免疫原性組成物またはプロテアソーム阻害物質組成物などの作用物質を任意の効果的な経路で対象に提供するか、または与えること。例示的な投与経路には、経口経路、注射経路(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、および静脈内など)、舌下経路、直腸経路、経皮経路、鼻腔内経路、膣経路、および吸入経路が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
抗体:抗原に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子。免疫グロブリン分子およびその免疫学的に活性な部分が含まれる。免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε、およびμ定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεに分類され、順番に、免疫グロブリンクラスのIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEをそれぞれ定義する。
抗原:哺乳動物中に注射または吸収される組成物を含む、哺乳動物における抗体の産生またはT細胞応答を刺激し得る物質。抗原は、異種免疫原によって誘導されるものを含む、特異的な体液性免疫または細胞性免疫の産生物と反応する。「抗原」という用語は、関連する抗原エピトープすべてを含む。1つの例において、抗原は、DRiPもしくはSLiP(またはその免疫断片)、またはDRiPもしくはSLiPを含むDRibbleである。標的抗原とは、例えば、腫瘍退縮または感染症の治療などの治療的効果を達成するために、それに対する免疫応答が望まれる抗原である。
抗原提示細胞(APC):MHCクラスI分子またはクラスII分子に結合される抗原をその表面上に有し、かつ、本発明の文脈における抗原をT細胞に対して提示する、細胞。APCには、単球、マクロファージ、樹状細胞、B細胞、およびランゲルハンス細胞が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらの細胞のうち、樹状細胞およびB細胞が、専門のAPCとみなされている。
抗原特異的T細胞:特定の抗原を認識するCD8+リンパ球またはCD4+リンパ球。一般に、抗原特異的T細胞は、MHC分子によって提示されている特定の抗原に特異的に結合するが、同じMHC分子によって提示されている他の抗原には特異的に結合しない。
オートファジー:細胞質および細胞小器官の両方が、二重膜ベシクルであるオートファゴソーム内に包み込まれ、かつ、分解のためにリソソームと融合される、細胞の再利用経路。オートファジーは、細胞生存および細胞死において役割を果たしており、かつ、発生、加齢、神経変性、および癌、ならびに、細胞内病原体に対する先天性防御、(内因性抗原のMHC II拘束性抗原プロセシングのような)獲得免疫、およびウイルス複製に関係があるとされている。
オートファジーの速度は、細胞がオートファジー誘導因子に接触させられた場合、上昇する。例えば、オートファジーは、例えばHBSS培地中でのインキュベーションによって細胞が栄養飢餓に供された場合、および、細胞小器官増殖をもたらす刺激を受ける場合にも、増大する。例えば、長期間、プロテアソーム機能の妨害を阻害する作用物質と細胞を接触させることにより、オートファジーを誘導することができる(例えば、20nM〜1000nMのVelcade中で細胞をインキュベーションすることによる)。同様に、ラパマイシン、タモキシフェン、IFN-γ、およびビンブラスチンなどの作用物質も、オートファジーを誘導することができる。1つの例において、細胞は、細胞によるオートファジーの誘導をもたらす虚血性条件下でインキュベートされる。
癌:分化の喪失、増殖速度の上昇、周辺組織の浸潤を伴う特徴的な退形成をきたし、転移することができる悪性新生物。
化学療法:癌治療において、化学療法とは、腫瘍細胞または癌細胞など急速に増殖する細胞を死滅させるか、またはその複製を減速させるための1種または複数種の作用物質の投与を意味する。特定の例において、化学療法とは、対象における腫瘍細胞の数を、少なくとも10%、少なくとも20%、または少なくとも50%など有意に減少させる1種または複数種の抗腫瘍剤の投与を意味する。細胞障害性の抗腫瘍性化学療法剤には、5-フルオロウラシル(5-FU)、アザチオプリン、シクロホスファミド、(フルダラビン(Fludarabine)のような)代謝拮抗薬、ならびに、エトポシド(Etoposide)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、メトトレキサート、ビンクリスチン(Vincristine)、カルボプラチン、cis-白金、および(タキソールのような)タキサンなど他の抗腫瘍薬が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
減少させる:何かの質、量、または強度を低減させること。
1つの例において、療法は、例えば、その療法を実施しない場合の応答と比べて、腫瘍(腫瘍のサイズ、腫瘍の数、腫瘍の転移、もしくはそれらの組合せなど)、または腫瘍に関連した1種もしくは複数種の症状を減少させる。特定の例において、療法は、その療法の後に、腫瘍のサイズ、腫瘍の数、腫瘍の転移、またはそれらの組合せを、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、またはさらに少なくとも90%、減少させる。このような減少は、本明細書において開示される方法を用いて測定することができる。
1つの例において、療法は、例えば、その療法を実施しない場合と比べて、病原体感染の発生率、または病原体感染に関連した1種もしくは複数種の症状を減少させる。特定の例において、病原体感染の発生率または症状が、その療法の後に減少し、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、またはさらに少なくとも90%減少する場合には、療法は、病原体感染の発生率、または病原体感染に関連した1種もしくは複数種の症状を減少させる。このような減少は、本明細書において開示される方法を用いて測定することができる。
樹状細胞(DC):外来の抗原を認識し、プロセシングし、かつT細胞に提示することによって、ナイーブT細胞を刺激する能力を有する、抗原提示細胞。樹状細胞の1つの具体的な例は、ランゲルハンス細胞、すなわち皮膚中に内在する樹状細胞の種である。
DRiP(Defective ribosomal product):翻訳のエラー、または正しく翻訳されたがミスフォールドされたタンパク質に起因し、ER関連タンパク質分解(ERAD)のような品質管理システムに供された、ペプチド。DRiPは、タンパク質の合成およびフォールディングにつきものの欠陥が原因で、エントロピー的に産生される。DRiPは、合成から30分以内にプロテアソームによって分解される新規に合成されたタンパク質の3分の1を占め得る。DRiPは、MHCクラスI分子と結合するペプチドの主要な供給源を提供する。いくつかの例において、DRiPへの言及は、その免疫原性断片を含む。
DRibble(DRiPs in Blebs):細胞によって形成される、DRiPまたはSLiPが満たされた構造体。この形成は、細胞がプロテアソーム阻害物質に曝露された場合に増強され得る。ベシクルなどのこのような構造体は、いくつかの例において、プロテアソーム阻害物質に曝露された細胞によって分泌され、その結果、例えば遠心分離を用いて、培養上清からDRibbleを単離することが可能になる。特定の例において、DRibbleは、オートファジー体である。
エピトープ:特異的な免疫応答を誘発する化学基またはペプチド配列などの抗原決定基。抗体は、特定の抗原エピトープに結合するか、または、T細胞は、特異的なMHC分子に結合された特定の抗原エピトープと反応する。いくつかの例において、エピトープは、6個、7個、8個、9個、もしくは10個のアミノ酸など6個〜10個のアミノ酸からなる最小配列をMHCクラスIに対して有するか、または、MHCクラスIIに対して(約100個のアミノ酸からなる最大配列のような)さらに長い配列を有する。特定の例において、エピトープは、腫瘍関連抗原または病原体関連抗原中に存在する。
増強する:何かの質、量、または強度を改善すること。
1つの例において、療法を実施しない場合の免疫機能と比べて、免疫系が、感染または腫瘍と戦う際により効果的である場合、その療法は免疫系を増強する。例えば、療法を実施した場合に、対象の生存期間が延長される場合、対象の腫瘍サイズが縮小する場合、対象における腫瘍転移が減少する場合、対象の感染症が治療される場合、またはそれらの組合せの場合、その療法は、免疫系を増強することができる。
特定の例において、腫瘍特異的T細胞によって分泌されるIFN-γの量が、療法の後に増加し、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、またはさらに少なくとも90%増加する場合、その療法は、免疫系を増強する。このような増強は、本明細書において開示される方法を用いて、例えば、ELISAアッセイ法またはフローサイトメトリーを用いて、IFN-γ分泌の量を決定することによって、測定することができる。
特定の例において、リンパ球の数が、療法の後に増加し、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、またはさらに少なくとも90%増加する場合、その療法は、免疫系を増強する。このような増強は、当技術分野において公知の方法を用いて、例えば、療法前後のリンパ球数をフローサイトメトリーによって決定することによって、測定することができる。
別の特定の例において、療法は、腫瘍または病原体感染細胞などの細胞からのDRibbleの産生または分泌を増強し、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、またはさらに少なくとも90%増加させる。このような増強は、当技術分野において公知の方法を用いて、例えば、療法前後のDRibbleの量を決定することによって、測定することができる。
さらに別の例において、療法は、対象における腫瘍特異的T細胞の出現率を増強し、例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも90%増加させる。特定の例において、療法を実施しない場合、腫瘍特異的T細胞の出現率は、検出不可能であるか、または0.1%未満であるのに対し、効果的な療法を実施する場合、T細胞の数は、少なくとも0.1%、例えば少なくとも10%であり、このパーセンテージは、哺乳動物から得られる生物試料のような試料中のT細胞の総数に相関している。
回収する:収集すること。例えば、分泌されたDRibbleを回収する場合、その方法は、例えば遠心分離によって、細胞からDRibbleを分離する段階を含み得る。
免疫応答:免疫、例えば、B細胞、T細胞、マクロファージ、単球、または多形核球(polymorphonucleocyte)など免疫系の細胞の、対象中の免疫原性物質に対する応答の変化。応答は、腫瘍特異的または病原体特異的なDRiPまたはSLiPなど特定の抗原に対して特異的でよい(「抗原特異的応答」)。特定の例において、免疫応答は、CD4+応答またはCD8+応答などT細胞応答である。別の例において、応答はB細胞応答であり、免疫原性物質に対する特異的抗体の産生をもたらす。
いくつかの例において、このような免疫応答は、免疫原性物質または免疫原性物質の供給源からの対象の保護を提供する。例えば、応答は、ヒト対象または動物対象などの対象を、病原体による感染から保護し得るか、または、病原体による感染症の進行の邪魔をし得る。別の例において、この応答は、例えば、腫瘍転移の邪魔をすることによって、腫瘍を有する対象を治療し得る。免疫応答は、活性であり、かつ対象の免疫系の刺激を含んでよく、または、受動的に獲得された免疫に起因する応答でよい。
特定の例において、免疫応答の増大または増強は、対象が病原体感染症または腫瘍などの疾患を退治する能力の増大である。
免疫:免疫原性物質に曝露された際に防御応答を始めることができる状態。防御応答は、抗体に媒介されてもよく、または免疫細胞に媒介されてもよく、かつ、特定の病原体または腫瘍を対象としてよい(病原体または腫瘍に特異的なDRiPなど)。免疫は、能動的に獲得させるか(例えば、天然に、もしくはDRibbleを含む組成物のような薬学的組成物中で、免疫原性物質に曝露させることによって)、または、受動的に獲得させる(例えば、抗体、もしくはインビトロで刺激し、増殖させたT細胞を投与することによって)ことができる。
免疫原:対象における抗体産生またはT細胞応答の刺激のような、対象の免疫系による免疫応答を刺激または誘発することができる作用物質(化合物、組成物、または物質などの)。免疫原性物質には、DRibble中に存在するもののようなDRiPおよびSLiPが含まれるが、それらに限定されるわけではない。免疫原性組成物の1つの具体的な例はワクチン(DRibbleを含むワクチンのような)である。
免疫原性:免疫原が体液性免疫応答または細胞性免疫応答を誘導する能力。免疫原性は、例えば、適切なMHC分子(MHCクラスI分子もしくはクラスII分子など)に結合する能力、およびT細胞応答を誘導する能力またはB細胞もしくは抗体の応答を誘導する能力、例えば、所与のエピトープに対する測定可能な細胞障害性T細胞応答もしくは血清抗体応答を誘導する能力によって測定することができる。免疫原性のアッセイ法は、当技術分野において周知であり、例えば、Paul, Fundamental Immunology、第3版、243-247(Raven Press, 1993)およびその中に引用される参考文献に記載されている。
免疫学的に有効な用量:疾患または病態、例えば、腫瘍、病原体による感染、または感染症の重症度、程度、または継続期間を、予防、治療、低減、または減弱させると考えられる、治療的有効量の免疫原(DRibbleまたはDRibble形成を促進する作用物質で処理された細胞など)。
免疫賦活薬:本明細書において開示される免疫原は、免疫賦活薬と組み合わせて使用され得る。免疫賦活薬は、抗原に対する免疫応答を刺激することができる作用物質である。1つの例はアジュバントである。他の具体例には、抗CTLA-4抗体(madarex)または抗OX-40抗体などT細胞の増殖および生存の共刺激抗体が含まれる。
感染:競合的代謝、毒素、細胞内複製、または抗原抗体応答が原因で局所的な細胞損傷を引き起こし得る、対象における病原体の侵入および増殖。
感染症:感染性病原体によって引き起こされる任意の疾患。特定の例において、これは、少なくとも1つのタイプの感染性病原体によって引き起こされる疾患である。別の例において、これは、少なくとも2つの異なるタイプの感染性病原体によって引き起こされる疾患である。感染症は、任意の身体の系に影響を及ぼし、急性(短時間作用性)または慢性(長時間作用性)であり、発熱を伴って、もしくは発熱を伴わずに発生し、任意の年齢集団を襲い、かつ互いに重複し得る。
インターフェロンγ(IFN-γ):特異的抗原または分裂促進性刺激に応答して、Tリンパ球によって産生されるタンパク質。天然のIFN-γペプチドおよび核酸分子、ならびに完全または部分的なIFN-γ生物活性を保持しているIFN-γ断片および変異体が含まれる。IFN-γの配列は、公的に入手可能である(例えば、例示的なIFN-γ mRNA配列は、Gen Bankアクセッション番号:BC070256、AF506749、およびJ00219から入手可能であり、例示的なIFN-γタンパク質配列は、Gen Bankアクセッション番号:CAA00226、AAA72254、および0809316Aから入手可能である)。
機能的なIFN-γを測定する方法は公知であり、イムノアッセイ法が含まれるが、それに限定されるわけではない。例えば、IFN-γを認識する抗体が公的に入手可能であるため、IFN-γを産生する細胞を検出するためにELISAおよびフローサイトメトリーを使用することが可能になる。別の方法は、活性化されたT細胞による腫瘍標的の死滅化のレベルを測定する、細胞障害性アッセイ法である(例えば、Hu et al., J. Immunother. 27:48-59, 2004、およびWalker et al., Clin. Cancer Res. 10:668-80, 2004を参照されたい)。
単離された:「単離された」生物学的構成要素(血液成分のような血液学的材料の一部分、またはDRibbleのような細胞の一部分など)は、その構成要素が天然に存在する場である生物(または細胞)の他の生物学的構成要素から実質的に分離されているか、または精製されている。
単離された細胞とは、その細胞が天然に存在する場である生物の他の生物学的構成要素から実質的に分離されているか、または精製されているものである。例えば、単離された末梢血単核細胞(PBMC)とは、赤血球または多核細胞など他の血液細胞から実質的に分離されているか、または精製されている、PBMCの集団である。
単離されたDRibbleとは、細胞全体および大型細胞片など他の生物学的構成要素から実質的に分離されているか、または精製されているものである。
リンパ球枯渇剤:哺乳動物に投与された場合に、哺乳動物中の機能的なリンパ球の数を減少させることができる、化学的な化合物または組成物。このような作用物質の1つの例は、1種または複数種の抗腫瘍性化学療法剤である。特定の例において、対象にリンパ球枯渇剤を投与すると、少なくとも50%、T細胞が減少する。特定の例において、リンパ球枯渇剤は、免疫原投与後のCTLおよびHTLの増殖および存続を増強するために、免疫原(DRibbleを含む免疫原性組成物のような)を投与する前に、対象に投与される。
悪性:退形成、浸潤、および転移の特性を有する細胞。
新生物:細胞の異常な増殖。
病原体:疾患をもたらす病原因子。例には、ウイルス、細菌、真菌、および原生動物などの微生物、例えば、インフルエンザ、リステリア(Listeria)、およびHIVが含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの例において、病原体は、細胞を感染させ、それらからDRibbleを産生させるのに使用される。
薬学的物質または薬物:単独で、または別の治療物質もしくは薬学的に許容される担体と組み合わせて対象に投与された場合に、所望の治療効果または予防効果を誘導することができる、化学的な化合物または組成物。特定の例において、薬学的物質は、例えば、腫瘍サイズ(腫瘍の体積のような)を縮小させること、もしくは腫瘍細胞の数を減少させること、腫瘍の転移を減少させること、またはそれらの組合せによって、腫瘍を治療する。特定の例において、薬学的物質は、ウイルスのような病原体による感染症を治療(例えば予防)する。
薬学的に許容される担体:本開示において有用な薬学的に許容される担体(ビヒクル)は、従来のものである。Remington 's Pharmaceutical Sciences、E. W.Martin著、Mack Publishing Co., Easton, PA, 第15版(1975)では、本明細書において提供される1種または複数種の免疫原性組成物のような1種または複数種の治療物質の薬学的送達に適した組成物および製剤を記載している。
一般に、担体の性質は、使用される個々の投与様式に依存すると考えられる。例えば、非経口製剤には、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、デキストロース水溶液、またはグリセロールなどの薬学的かつ生理学的に許容される液体をビヒクルとして含む注射用液剤が含まれ得る。生物学的に中性な担体の他に、投与される薬学的組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など少量の非毒性補助物質、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウラート、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、およびオレイン酸トリエタノールアミンも含んでよい。
プログラムドデス-1(PD-1):免疫機能に対する負の調節因子として機能して、活性化されたリンパ球を抑制する、活性化されたリンパ球の表面上で発現される受容体。腫瘍細胞は、PD-1を利用して、宿主の免疫応答から逃れることができる。PD-1リガンドのPD-L1(B7-H1としても公知)およびPD-L2(B7-DCとしても公知)とPD-1受容体との相互作用は、T細胞応答を制限し、終結させ、かつ/または減弱させるように機能し、かつ、T細胞トレランスを調節し得る。PD-1によって媒介される負の調節性シグナルを阻害すると、腫瘍細胞に対する免疫応答が促進され得る。
PD-1またはPD-L1もしくはPD-L2に特異的な抗体(例えば、PD-1抗ヒトPD-1)およびsiRNA分子など、PD-1機能の阻害物質は公知である。例えば、米国特許第7,029,674号、同第6,808,710号、または米国特許出願公開第20050250106号および同第20050159351号で開示されているPD-1生物活性(またはそのリガンド)の阻害物質を、本明細書において提供される方法で使用することができる。
プロテアソーム:除去するためにタグ化されたもののようなタンパク質、例えば、損傷またはミスフォールドされたタンパク質、およびユビキチン化によってタグ化されたタンパク質を分解する、細胞の核および細胞質ゾル中に存在する高分子複合体。
プロテアソーム阻害物質:ユビキチン化タンパク質のような細胞内タンパク質を分解する、プロテアソームを介した異化経路を低減させ、およびいくつかの例においては消失させ得る作用物質。特定の例において、このようなプロテアソーム阻害物質は、MHCクラスI抗原プロセシング経路を妨害する。プロテアソーム阻害物質は、可逆性(例えばMG132)または不可逆性(ラクタシスチンおよびエポキソミシンなど)であり得る。
プロテアソーム阻害物質の具体例は、ペプチジルボロン酸エステルおよびペプチジルボロン酸化合物である。例示的なプロテアソーム阻害物質には、カルボベンジルオキシ-L-ロイシル-L-ロイシル-L-ロイシナール(MG-132)、カルボベンジルオキシ-L-ロイシル-L-ロイシル-L-ノルバリナール(MG-115)、エポキソミシン、N-ベンジルオキシカルボニル-L-ロイシル-L-ロイシル-L-ロイシルボロン酸(MG-262)、N-ベンジルオキシカルボニル-Ile-Glu(O-t-ブチル)-Ala-ロイシナール(PSIおよびそのエポキシド)、N-アセチル-Leu-Leu-ノルロイシナール(MG-101、ALLN、またはカルパイン阻害物質I)、MLN519、N-ピラジンカルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸(ボルテゾミブ、PS-341、またはVelcade(登録商標))、ラクタシスチン(Calbiochem-Novobiochem Co., La Jolla, CA)、PS-273、N-アセチル-Leu-Leu-Met(ALLMまたはカルパイン阻害物質II)、N-トシル-Lysクロロメチルケトン(TLCK)、N-トシル-Pheクロロメチルケトン(TPCK)、ピロリジンジチオカルバマート(PDTC)、[2S,3S]-トランス-エポキシスクシニル-L-ロイシルアミド-3-メチルブタンエチルエステル(EST)、およびペントキシフィリン(PTX)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
精製された:「精製された」という用語は、絶対的な純度を要求しない。もっと正確に言えば、相対的な用語として意図される。したがって、例えば、精製された細胞とは、その細胞が、生物内部のような天然環境中の細胞よりも純粋であるものである。同様に、精製されたDRibbleとは、そのDRibbleが、細胞内部または培地内などの天然環境中のDRibbleよりも純粋であるものである。
特定の例において、精製されたDRibble集団とは、少なくとも75%純粋、少なくとも80%純粋、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも97%純粋、少なくとも98%純粋、または少なくとも99%純粋であるDRibble集団を意味する。1つの例において、実質的に精製されたDRibble集団は、少なくとも95%のDRibbleから構成され、すなわち、DRibble集団は、約5%未満の全細胞または大型細胞片を含む。DRibble集団の純度は、サイズに基づいて、または特定の免疫応答を刺激する能力に基づいて、対照と比べて測定することができる(例えば、ELISAアッセイ法によって測定されるように)。
短寿命タンパク質(SLiP):特定の例において、免疫原性であり、かつT細胞によって認識される、半減期の短い正常タンパク質。1つの例において、SLiPは、AUGの代わりにCUGのような通常と異なる開始コドンを用いて翻訳される。SLiPは、ウイルス(例えば、HIVおよび他のレトロウイルス)ならびに腫瘍細胞において同定されている。SLiPの1つの具体例は、DRiPである。いくつかの例において、SLiPへの言及は、その免疫原性断片を含む。
特異的に結合する:免疫反応する特定の抗原/エピトープに対して単一の結合親和性で実質的または完全に選択的に結合すること。例には、抗原および(腫瘍または病原体に特異的なDRiPまたはSLiPなどの)標的抗原と選択的に免疫反応するT細胞が含まれる。特異的結合の具体例において、標的抗原に特異的なT細胞上のT細胞受容体は、MHC複合体のようなAPC上に提示された標的抗原を特異的に認識し、かつ反応し、この結合は、T細胞受容体と標的抗原決定基との非ランダムな結合反応である。特定の例において、標的抗原に特異的なT細胞の所望の結合特異性は、標的抗原に特異的なT細胞上のT細胞受容体が、標的抗原を提示しているAPCに結合するが、無関係の抗原には結合せず、したがって、2種の異なる抗原を識別する能力の基準ポイントから決定される。
増殖を刺激する:細胞の成長または複製を増大させること。例えば、抗原特異的T細胞の数を、例えばDRibbleまたはDRibbleを産生させるのに十分な量のプロテアソーム阻害物質で処理された腫瘍細胞を投与された対象において、増加させること。
対象:生きている多細胞性の脊椎動物生物。ヒトおよび非ヒト哺乳動物(実験室用対象または獣医学的対象など)を含むカテゴリー。
治療的有効量:単独で、または薬学的に許容される担体または1種もしくは複数種の付加的な治療物質と共に、所望の応答を誘導する作用物質の量。DRibbleを含む免疫原性組成物のような治療物質は、例えば標的抗原に対して、防御的免疫応答を刺激する治療的有効量で投与される。
治療物質の有効量は、例えば、疾患(腫瘍または病原体感染症などの)に罹患している対象の生理学的状態の改善について分析することによって、免疫応答の増大についての分析のような多くの様々な方法で決定することができる。有効量はまた、様々なインビトロ、インビボ、またはインサイチューのアッセイ法によって決定することもできる。
治療物質は、単回投与で、または数回の投与で、例えば、治療経過中に週1回、月1回、もしくは2ヶ月に1回、投与することができる。しかしながら、有効量は、適用される供給源、治療される対象、治療される病態の重症度およびタイプ、ならびに投与様式に依存し得る。
1つの例において、これは、対象の感染症の症状を部分的もしくは完全に緩和するか、または病原体による感染を減少させるのに十分な量である。治療は、疾患の進行を一時的に減速させることのみを含み得るが、疾患の進行を持続的に停止させるか、または逆行させること、ならびに、そもそも疾患を予防することも含み得る。例えば、薬学的調製物は、感染症の1種または複数種の症状を減少させることができ、例えば、薬学的調製物が無い場合の量と比べて、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも98%、またはさらに少なくとも100%、症状を減少させることができる。
別の例において、これは、対象の腫瘍の症状を部分的または完全に緩和するのに十分な量である。治療は、腫瘍の進行を一時的に減速させることのみを含み得るが、腫瘍の進行を持続的に停止させるか、または逆行させることも含み得る。例えば、薬学的調製物は、腫瘍の1種または複数種の症状(腫瘍のサイズもしくは腫瘍の数など)を減少させることができ、例えば、薬学的調製物が無い場合の量と比べて、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも98%、またはさらに少なくとも100%、症状を減少させることができる。
形質導入された:形質導入された細胞とは、分子生物学技術によって、核酸分子(病原体抗原をコードするベクターのような)を導入された細胞である。形質導入という用語は、ウイルスベクターによるトランスフェクション、プラスミドベクターによる形質転換、ならびにエレクトロポレーション、リポフェクション、およびパーティクルガン加速による裸DNAの導入を含む、それらを用いて細胞に核酸分子を導入することができる技術すべてを包含する。このような方法は、当技術分野においてルーチンである。
処理細胞:所望の応答に十分な量および条件下で、所望の作用物質と接触させられた細胞。1つの例において、処理細胞は、細胞にDRibbleを産生させるのに十分な条件下でプロテアソーム阻害物質と共にインキュベートされた腫瘍細胞または病原体感染細胞であり、かつ、その細胞がオートファジーを受ける条件下でオートファジー誘導因子と共に細胞をインキュベートする段階がさらに含まれてよい。
疾患を治療すること:「治療」とは、感染症または腫瘍の徴候または症状のような、疾患または病理学的状態の徴候または症状を改善する治療的介入を意味する。治療はまた、感染症または腫瘍などの病態の寛解または治癒を誘導し得る。特定の例において、治療は、例えば、感染症または腫瘍の発達(例えば転移)を予防するなど、疾患の完全な発達を阻害することによって疾患を予防することを含む。疾患の予防は、感染症または腫瘍を完全に無くすことを要求しない。例えば、少なくとも50%の減少が十分であり得る。
腫瘍:新生物。固形腫瘍および血液学的腫瘍を含む。
血液学的腫瘍の例には、急性白血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、ならびに骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄性白血病および慢性リンパ性白血病など)を含む白血病、骨髄異形成症候群、および脊髄形成異常症、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病、すべての形態の非ホジキンリンパ腫など)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ならびに重鎖病が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
肉腫および癌腫などの固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、および他の肉腫、滑膜性腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、膀胱癌、黒色腫、ならびにCNS腫瘍(神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、メナンギオーマ(menangioma)、髄膜腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫など)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
腫瘍関連抗原(TAA):腫瘍細胞に対する腫瘍特異的T細胞に規定された免疫応答または抗体を刺激することができる腫瘍抗原。1つの例において、TAAは、治療しようとする対象の腫瘍中に存在する標的抗原である。
ツニカマイシン:タンパク質上のいくつかのアスパラギン(Asn)残基へのドリコールリン酸供与分子由来の14残基のコアオリゴ糖の転移を防ぐことによって、新規に合成されたタンパク質のグリコシル化を妨害する抗生物質。グリコシル化を妨害し、したがって、DRibble産生を増強するのに使用され得る別の抗生剤は、ブレフェルディンAである。
十分な条件下:所望の活性を可能にする任意の環境を説明するのに使用される語句。
1つの例において、所望の活性を与えるのに十分なプロテアソーム阻害物質の存在下で、細胞(腫瘍細胞または標的病原体に感染した細胞など)を培養する段階を含む。特定の例において、所望の活性は、処理細胞によるDRibbleの産生である。他の特定の例において、所望の活性は、細胞によるDRibbleの分泌をさらに含む。
別の例において、所望の活性を与えるのに十分なDRibbleの存在下でAPCを培養する段階を含む。特定の例において、所望の活性は、TAAまたは病原体抗原、例えばウイルス関連抗原(VAA)など、APCによるDRiP抗原の提示である。
別の例において、所望の活性を与えるのに十分な、処理細胞、単離されたDRibble、またはDRibbleを負荷されたAPCを対象に投与する段階を含む。特定の例において、所望の活性は、DRiP抗原またはSLiP抗原を提示しているAPCとプライミングされたT細胞との結合である。
単位用量:免疫原性作用のような所望の作用を個別にまたは集合的にもたらすように算出された所定の量の活性材料を含む、物理的に個別の単位。単一の単位用量または複数の単位用量が、免疫原性作用のような所望の作用を提供するために使用され得る。
ワクチン:疾患または他の病理学的状態に対して能動免疫のような免疫を与えるために、ヒトのような哺乳動物に投与され得る免疫原性組成物。ワクチンは、予防的または治療的に使用され得る。したがって、ワクチンは、感染の可能性を減少させるか、または疾患もしくは病態の症状の重症度を低下させるか、または疾患もしくは病態(腫瘍のような)の進行を制限するために、使用され得る。
1つの例において、ワクチンは、腫瘍細胞または病原体感染細胞から得られた、単離されたDRibbleを含む。別の例において、ワクチンは処理細胞(プロテアソーム阻害物質で処理された全細胞腫瘍組成物のような)を含む。
ベクター:宿主細胞中に導入され、それによって、形質転換された宿主細胞をもたらす、核酸分子。ベクターは、複製起点のような、宿主細胞においてそれが複製することを可能にする核酸配列を含んでよい。ベクターはまた、1種または複数種の選択マーカー遺伝子および当技術分野において公知の他の遺伝子エレメントも含んでよい。ベクターには、グラム陰性細菌細胞およびグラム陽性細菌細胞において発現させるためのプラスミドを含む、プラスミドベクターが含まれる。例示的なベクターには、大腸菌(E.coli)およびサルモネラ(Salmonella)において発現させるためのものが含まれる。ベクターには、レトロウイルス、オルソポックスウイルス、アビポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カプリポックスウイルス、スイポックスウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、αウイルス、バキュロウイルス、シンドビス(Sindbis)ウイルス、ワクシニアウイルス、およびポリオウイルスのベクターなどのウイルスベクターも含まれるが、それらに限定されるわけではない。特定の例において、ベクターは、リステリアペプチドのような1種または複数種の病原体抗原をコードする核酸分子を含む。
ウイルス関連抗原(VAA):ウイルス特異的なT細胞に規定された免疫応答を刺激することができるウイルス抗原。
免疫応答を刺激する方法
APCによる抗原取込みは、細胞に関連した抗原または特定の抗原の食作用、可溶性タンパク質の飲作用、および受容体を介したエンドサイトーシスを介して、発生する。内在化された抗原の大多数は、交差提示のために、プロテアソーム依存性のER関連タンパク質分解経路(ERAD)を使用する。しかしながら、いくつかの抗原は、エンドソームプロテアーゼによって処理され、かつ、液胞経路を介して交差提示され、かつ、輸送体関連タンパク質(TAP)およびプロテアソームから独立に作働され得る。プロテアソーム阻害物質によって細胞タンパク質分解が低減または阻害される場合、細胞はDRiPを蓄積し、かつ「小胞」構造体(DRibble)中に分泌することが、本明細書において示される。プロテアソームのこの阻害により、オートファジー、ならびにDRibbleと呼ばれるオートファジー体中への短寿命タンパク質(DRiPおよびSLiP)の分泌が誘導されることが提唱されている。予想外に、本発明者は、DRiPおよびSLiP(ならびにそれらの免疫原性断片)を含むこれらのDRibbleが、交差提示のための前駆体または刺激因子として作用することを観察した。交差提示された抗原は、理想的には、高レベルで発現され、安定であり、かつ長い半減期を有する。一方、DRiPおよびSLiPは、短寿命タンパク質であり、高レベルで合成された場合でも、交差提示のためにDCに送達され得る前に、それらは急速に破壊される(例えば腫瘍細胞によって)。したがって、DRiPおよびSLiPのプロテアソームによる分解を阻害すると、DCのような宿主の専門APCによる、例えば、腫瘍細胞または病原体に感染した細胞に対するこれらの短寿命タンパク質の交差提示が大きく増加し得る。
これらの観察結果に基づいて、本出願は、1種または複数種のDRiPまたは他のSLiP、例えばそれらの免疫原性断片に対する免疫応答を刺激する方法を提供する。開示される方法は、クロスプライミングのために、DRiPまたはSLiP(ならびにそれらの免疫原性断片)を使用してよい。特定の例において、この方法は、例えば、細胞のアポトーシスを実質的に誘導しない量の1種または複数種のプロテアソーム阻害物質と細胞を、細胞にDRibbleを形成させるのに十分な条件下で接触させる段階、および次いで、APCによってそのDRiPを提示させ、それによって1種または複数種のDRiPに対する免疫応答を刺激する段階を含む。DRibbleは、長期のプロテアソーム阻害の際に細胞(腫瘍細胞または標的病原体に感染した細胞など)から放出されるオートファジー体であると提唱されている。細胞は、例えば、治療しようとする対象に1種または複数種のプロテアソーム阻害物質を投与することによって、1種または複数種のプロテアソーム阻害物質とインビボで接触させることができる。他の例において、細胞は、1種または複数種のプロテアソーム阻害物質とエクスビボで接触させられる。例えば、腫瘍細胞または病原体感染細胞を1種または複数種のプロテアソーム阻害物質と共にエクスビボでインキュベートし、かつ、処理細胞または処理細胞から単離したDRibbleを治療的有効量で対象に投与することができる。あるいは、腫瘍または病原体感染細胞を1種または複数種のプロテアソーム阻害物質と共にエクスビボでインキュベートし、処理細胞からDRibbleを単離し、そのDRibbleをAPCと共にインキュベートし、かつ、処理されたAPCを治療的有効量で対象に投与することができる。
細胞は、単独、または1種もしくは複数種の他の作用物質と組み合わせた、1種または複数種のプロテアソーム阻害物質と接触させることができる。例えば、細胞は、ヌクレオシドトランスロカーゼI阻害物質のような、グリコシル化を減少させるか、またはさらに阻害する1種または複数種の作用物質と接触させてもよい。このような作用物質の例には、ムレイドマイシン、リポシドマイシン、ツニカマイシンおよびブレフェルディン(Brefeldin)Aなどの抗生物質、またはそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるわけではない。特定の例において、プロテアソーム阻害物質およびグリコシル化を減少させる作用物質の両方と細胞を接触させると、作用物質のいずれか単独の場合に比べて、細胞によるDRibble産生は増加する。別の例またはさらなる例において、細胞は、アジュバント(CpG、MLAなど)またはサイトカイン、例えばGM-CSFなどの免疫賦活薬とも接触させられる。別の例またはさらなる例において、細胞は、細胞のオートファジーを誘導するのに十分な量のオートファジー誘導因子とも接触させられる。このような作用物質は、細胞によるオートファジーを誘導する。オートファジー誘導因子の例には、細胞を飢餓状態にする培地(HBSS培地のような)およびラパマイシンが含まれる。別の例またはさらなる例において、細胞は、NH4Clのような、リソソームの媒介によるタンパク質分解を阻害する作用物質とも接触させられる。
1種または複数種のプロテアソーム阻害物質(単独、または本明細書において説明する他の作用物質と組み合わせた)と細胞を接触させる段階は、インビボまたはエクスビボで実施することができる。例えば、細胞が対象中に存在する場合には、細胞をプロテアソーム阻害物質と接触させる段階は、治療的有効量のプロテアソーム阻害物質を対象に投与し、それによって、1種または複数種のDRiP抗原に対する免疫応答を刺激する段階を含み得る。特定の例において、プロテアソーム阻害物質は、細胞のアポトーシスを実質的にもたらさない量で、例えば、致死未満量のプロテアソーム阻害物質が対象に投与される。
別の例において、細胞は、1種または複数種のプロテアソーム阻害物質(単独、または本明細書において説明する他の作用物質と組み合わせた)とエクスビボで接触させられる。例えば、腫瘍細胞または病原体に感染した細胞など培養状態の細胞を、1種または複数種のプロテアソーム阻害物質(単独、または本明細書において説明する他の作用物質と組み合わせた)の存在下、細胞によるタンパク質分解を実質的に減少させるのに十分な条件下でインキュベーションし、それによってDRibbleを産生させることができる。産生されたDRibbleは、1種もしくは複数種のDRiP(もしくはSLiP)に対する免疫応答を刺激する治療的量で対象に投与することができるか、または、本明細書において説明するようにAPCに負荷するのに使用することができる。あるいは、処理細胞を、例えば、全細胞腫瘍免疫原性組成物として、DRiPに対する対象の免疫応答を刺激するのに十分な量で、対象に直接投与することもできる(最初にDRibbleを単離せずに)。
同様に、APCによってDRiPを提示させる段階は、インビボまたはエクスビボで実施することができる。例えば、エクスビボ、例えば組織培養で産生させたDRibbleを、APCがDRibbleを負荷し、かつDRiPを提示するのを可能にするのに十分な条件下、エクスビボでAPC(DCのような)と共にインキュベートすることができる。DRiPを提示できる、DRibbleを負荷されたAPCは、DRiPに対する対象の免疫応答を刺激するのに十分な量で、対象に投与することができる。別の例において、DRibbleを負荷されたAPCは、腫瘍反応性のT細胞を刺激し、かつ増殖させるのに十分な条件下で、対象由来のT細胞と共に培養される。結果として生じる腫瘍反応性T細胞を、対象の腫瘍または病原体感染症を治療するのに十分な用量で対象に投与することができる。別の例において、エクスビボで産生されたDRibbleは、1種または複数種のDRiP(またはSLiP)に対する免疫応答を刺激するために、対象に投与される。例えば、プロテアソーム阻害物質を対象に投与することによって、DRibbleをインビボで産生させた場合には、DRiPは、インビボでAPCによって提示される。同様に、プロテアソーム阻害物質で処理された細胞が対象に投与される場合にも、DRiPは、インビボでAPCによって提示される。
特定の例において、方法は、対象における腫瘍に対する免疫応答を刺激する方法である。このような例において、方法は、プログラムドデス-1(PD-1)ならびにそのリガンドPD-1L1およびPD-1L2など腫瘍または間質の阻害性分子の活性を低下させるか、または阻害する治療的有効量の作用物質の対象への投与をさらに含んでよい。例えば、このような作用物質は、腫瘍浸潤T細胞の数を有意に増加させ(例えば、少なくとも20%または少なくとも50%の増加)、それによって、腫瘍の治療を促進する量で投与することができる。特定の例において、方法は、腫瘍浸潤T細胞の数を有意に増加させる、治療的有効量の、PD-1、PD-1L1、PD-1L2に特異的な抗体もしくはsiRNA分子またはそれらの組合せの対象への投与を含む。特定の例において、この方法は、治療的有効量の、PD-1、PD-1L1、PD-1L2に特異的な抗体もしくはsiRNA分子またはそれらの組合せの対象への投与を含む。他の例またはさらなる例において、方法はまた、プロテアソーム阻害物質、またはDRibbleもしくはDRibbleを負荷されたAPCを含む免疫原性組成物を投与する前に、対象中の機能的リンパ球の数を有意に減少させる段階も含んでよい。例えば、1種または複数種のリンパ球枯渇剤を対象に投与して、対象中に存在する機能的リンパ球の数を減少させることができる。別の例またはさらなる例において、方法は、例えば、対象から予め得た機能的リンパ球の投与によって、リンパ球が枯渇した対象の免疫系を再構成する段階を含む。さらに別の例において、方法は、リンパ球枯渇剤を投与する前に、対象から血液細胞を得る段階を含む。
腫瘍に対する免疫応答の刺激
特定の例において、この方法は、腫瘍由来のDRiPのような腫瘍に対する免疫応答を刺激する方法である。非限定的な腫瘍には、下垂体腺腫および胃腸管腺腫性ポリープなどの良性腫瘍が含まれる。例示的な悪性腫瘍には、乳癌、肺癌、腎細胞癌、または肝臓癌が含まれるが、それらに限定されるわけではない。特定の例において、腫瘍は乳癌である。
腫瘍細胞はDRiPを産生するが、DRiPは、プロテアソームによって急速に分解されるため、効率的に交差提示されない。大半の腫瘍細胞は、表面でMHCクラスI分子を発現するが、クラスII分子は発現しないため、かつ、交差提示は、長寿命タンパク質に有利であり、DRiPおよびSLiPを逃すため、腫瘍細胞によって提示されるはるかに多数の抗原レパートリーは、APCによって交差提示されない。一方、(例えばオートファジー誘導因子と組み合わせた)プロテアソーム阻害物質との接触により、腫瘍細胞によって産生されたDRibbleは、APCによって負荷され、それによって、APCによる腫瘍由来DRiPの交差提示が可能になる。
したがって、特定の例において、方法は、腫瘍細胞(乳癌細胞、肺癌細胞、腎臓癌細胞、もしくは肝臓癌細胞、または良性腫瘍細胞など)によってDRibbleが産生されるのに十分な量で、治療的有効量のプロテアソーム阻害物質を(単独で、またはオートファジー誘導因子、ツニカマイシン、NH4Cl、免疫賦活薬、もしくはそれらの組合せなど他の作用物質と組み合わせて)対象に投与し、それによって、1種または複数種の腫瘍由来DRiPに対する免疫応答を刺激する段階を含む。特定の例において、プロテアソーム阻害物質は、プロテアソーム阻害物質による腫瘍の顕著なアポトーシスを引き起こさない量のような、致死未満量で投与される。いくつかの例において、この方法は、ラパマイシンまたはその類似体CCI-779、ビンブラスチン、タモキシフェン、IFN-γなど治療的有効量のオートファジー誘導因子の投与をさらに含む。さらに別の例において、この方法は、PD-1のような腫瘍もしくは間質細胞の阻害性分子を減少させるか、または阻害する治療的有効量の作用物質の投与をさらに含む。
別の例において、方法は、DRibbleまたはDRibbleを負荷されたAPCをエクスビボで作製する段階、および、次いで、1種または複数種の腫瘍由来DRiPに対する免疫応答を刺激するのに十分な量で、単離されたDRibbleまたはDRibbleを負荷されたAPCを対象に投与する段階を含む。このような例において、DRibbleは、例えば、前述の方法を用いて、対象中に存在するのと同じタイプの腫瘍細胞から産生される。例えば、対象が乳癌に罹患している場合には、DRibbleは乳癌細胞から産生される。いくつかの例において、DRibbleを産生させるのに使用される腫瘍細胞は、治療しようとする対象から得られる。したがって、いくつかの例において、この方法は、免疫原性組成物を対象に投与する前に、腫瘍細胞を含む試料を対象から得る段階を含んでよい。この方法は、腫瘍細胞の生存能力、成長、または増殖を可能にするのに十分な条件下で、腫瘍細胞を培養する段階をさらに含んでよい。しかしながら、上記のように、すべての初代腫瘍細胞が培養状態で良好に増殖するわけではない。結果として、いくつかの例において、DRibbleを産生させるのに使用される腫瘍細胞は、対象の腫瘍と同じ細胞タイプの腫瘍細胞株から得られる。
特定の例において、方法は、対象における腫瘍細胞に対する免疫応答を刺激する方法である。いくつかの例において、この方法は、対象中に存在する腫瘍細胞と同じタイプである腫瘍細胞によってDRibbleが産生されるのに十分な条件下で、腫瘍細胞をプロテアソーム阻害物質にエクスビボで曝露する段階を含む。いくつかの例において、腫瘍細胞はまた、オートファジー誘導因子と共にインキュベートされる。いくつかの例において、腫瘍細胞は、治療しようとする同じ対象から得られる。結果として生じる処理された腫瘍細胞を、例えば単独で、またはアジュバントもしくは他の免疫賦活剤または抗腫瘍剤の存在下で、治療用量で対象に投与し、それによって、1種または複数種のDRiPに対する免疫応答を刺激することができる。あるいは、DRibbleを、処理された腫瘍細胞から単離し、かつ、例えば単独で、またはアジュバントもしくは他の免疫賦活剤または抗腫瘍剤の存在下で、治療用量で対象に投与し、それによって、1種または複数種のDRiPに対する免疫応答を刺激する。いくつかの例において、結果として生じるDRibbleは、対象由来の末梢血単核細胞(PBMC)から得られたAPCと共に、APCが1種または複数種のDRiPを提示するのに十分な条件下でインキュベートされ、それによって、DRibbleを負荷されたAPCが作製される。結果として生じるDRibbleを負荷されたAPCは、治療用量で対象に投与され(単独で、または免疫賦活剤もしくは抗腫瘍剤など別の治療物質の存在下で)、それによって、1種または複数種のDRiPに対する免疫応答が刺激される。
開示される方法を用いて、1種または複数種の腫瘍を有する対象を治療することができる。例えば、プロテアソーム阻害物質、処理された腫瘍細胞、単離されたDRibble、またはDRibbleを負荷されたAPCの投与により、腫瘍のサイズ、腫瘍の数など腫瘍の1種もしくは複数種の症状を軽減するか、または腫瘍の転移を防止することができる。
リンパ球枯渇および再構成
腫瘍反応性T細胞の初期の活性化に加えて、これらの活性化T細胞のインビボでの長期の存続も、実現することができる。例えば、腫瘍反応性のCTLおよびHTLの初期の増殖および後期の存続を増大させるために、治療的有効量のプロテアソーム阻害物質、処理された腫瘍細胞、単離されたDRibble、DRibbleを負荷されたAPC、またはそれらの組合せ(2種もしくはそれ以上のこれらの作用物質を含む免疫原性組成物のような)を投与する前に、単独で、または組み合わせて、対象のリンパ球を実質的に枯渇させる1種または複数種の作用物質を対象に投与することができる。リンパ球枯渇剤は、対象においてリンパ球枯渇を実現するのに十分な条件下で投与される。特定の例において、リンパ球枯渇剤の投与後に、対象中のリンパ球の数が少なくとも50%、例えば少なくとも90%減少している場合、対象は、実質的にリンパ球が枯渇している。
特定の例において、プロテアソーム阻害物質の投与、または処理された腫瘍細胞、単離されたDRibble、もしくはDRibbleを負荷されたAPCのワクチン接種の前に、腫瘍を有する対象中の白血球総数を有意に減少させると、より強力な免疫応答が誘発され、かつ、リンパ球枯渇剤が投与されなかった場合よりも、より多くの腫瘍細胞が破壊される。
1つの例において、リンパ球枯渇剤は、1種または複数種の抗腫瘍性化学療法剤のような抗腫瘍性化学療法剤である。このような作用物質および投薬量は公知であり、かつ、治療しようとする対象に応じて、治療担当医が選択することができる。リンパ球枯渇剤の例には、フルダラビン、シクロホスファミド、またはそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
特定の例において、方法は、対象のリンパ球を枯渇させ、続いて、対象の免疫系を再構成する段階をさらに含む。例えば、リンパ球枯渇およびプロテアソーム阻害物質または他の免疫原性組成物の投与の前に、血液細胞(単球およびマクロファージなど)を、例えば、白血球搬出法を用いることによって、対象から得る。単離された細胞は、対象に細胞を導入するのに適した時点まで、凍結することができる。例えば、解凍したリンパ球を、免疫原性組成物が投与されるのと同じ時点、または、プロテアソーム阻害物質もしくは他の免疫原性組成物の投与の少し前もしくは少し後に、対象に投与することができる。このような免疫系の再構成は、特定の例において、免疫系の刺激を増強し得る。
病原体に対する免疫応答の刺激
特定の例において、方法は、病原体由来のDRiPのような病原体に対する免疫応答を刺激する方法である。病原体の例には、HIV、インフルエンザ、およびリステリアなどの、ウイルス、細菌、原生動物、および真菌が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
したがって、特定の例において、この方法は、治療的有効量のプロテアソーム阻害物質(例えば、治療的有効量のオートファジー誘導因子と組み合わせた)、処理された病原体感染細胞、単離されたDRibble、DRibbleを負荷されたAPC、またはそれらの組合せを対象に投与し、それによって、1種または複数種の病原体由来DRiPに対する免疫応答を刺激する段階を含む。処理された病原体感染細胞、単離されたDRibble、またはDRibbleを負荷されたAPCの産生は、標的病原体に感染した細胞が使用される以外は、腫瘍に関して上述した方法を用いて、実現することができる。例えば、DRibbleは、前述の方法を用いて、1種または複数種の所望の病原体に感染した細胞(または1種もしくは複数種の病原体特異的抗原をコードするベクターで形質導入された細胞)から産生することができる。DRibbleがエクスビボで産生される例において、プロテアソーム阻害物質と接触させられる細胞は、対象となる病原体に依存し得る。理想的には、細胞は、病原体に感染させることができるものである。
特定の例において、治療的有効量のプロテアソーム阻害物質は、(単独で、または他の作用物質、例えば、オートファジー誘導因子もしくは細胞中のタンパク質のグリコシル化を減少させる作用物質、例えばツニカマイシンもしくはブレフェルディンAと組み合わせて)、感染症に罹患している対象に投与される。例えば、(例えばオートファジー誘導因子と組み合わせて)投与されるプロテアソーム阻害物質の量は、対象の病原体感染細胞によるDRibbleの産生を可能にし、それによって、対象における病原体に対する免疫応答を刺激するのに十分な量でよい。
開示される方法を用いて、例えば、病原体による対象の感染を予防することによって、または、感染症のような対象中に存在する感染症を治療することによって、対象を治療することができる。1つの例において、対象の治療は、例えば、対象の将来の感染または将来の感染症を予防するために、予防的である。別の例において、治療は、嘔吐、下痢、発熱、もしくは悪寒の軽減など、感染症に関連した1種もしくは複数種の症状を軽減する段階、または機能的リンパ球の数を増加させる段階を含む。
処理された病原体感染細胞、単離されたDRibble、またはDRibbleを負荷されたAPCが対象に投与される例において、使用されるDRibbleまたはDRibbleを負荷されたAPCは、治療される感染症に依存すると考えられる。すなわち、使用されるDRibbleまたはDRibbleを負荷されたAPCは、治療される感染症に対応すると考えられる。細菌によって引き起こされる感染症の具体例には、結核(結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に起因する);イヌ糸状虫(ジロフラリア・イミチス(Dirofilaria immitis)に起因する);胃障害(ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)に起因する);腸障害(大腸菌(Escherichia coli)に起因するもののような);肺障害(インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)に起因するもののような);ならびに肺炎(肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)に起因するもののような)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
ウイルスによって引き起こされる感染症の具体例には、サイトメガロウイルス(CMV)肺炎、腸炎、および網膜炎;エプスタイン・バー(Epstein-Barr)ウイルス(EBV)リンパ増殖性疾患;水痘/帯状疱疹(水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella zoster virus)(VZV)に起因する);HSV-1粘膜炎およびHSV-2粘膜炎;HSV-6脳炎、BKウイルス出血性膀胱炎;ウイルス性インフルエンザ;呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に起因する肺炎;AIDS(HIVに起因する);子宮頸癌(ヒトパピローマウイルスに起因する);ならびに、A型肝炎、B型肝炎、またはC型肝炎が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
原生動物によって引き起こされる感染症の具体例には、マラリア(熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に起因する);トリパノソーマ病およびシャガス病(クルーズ・トリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)に起因する);トキソプラズマ;リーシュマニア症およびカラアザール(リーシュマニア(Leishmania)に起因する);ジアルジア症(ジアルジア(Giardia)に起因する);クリプトスポリジウム(Cryptosporidium);バランチジウム症(大腸バランチジウム(Balantidium coli)に起因する);糞線虫症(糞線虫(Strongyloides stercoralis)に起因する);鞭虫属(Trichuris)、鉤虫、およびストロンギロイデス属(Strongyloides)などの回虫;ならびに毛頭虫症(毛頭虫症(Capillariasis)に起因する)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
真菌によって引き起こされる感染症の具体例には、鵞口瘡(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に起因する);クリプトコックス血症(cryptococcemia)(クリプトコッカス(Cryptococcus)に起因する);ヒストプラスマ症(ヒストプラスマ(Histoplasma)に起因する)、およびアスペルギルス症(アスペルギルス(Aspergillus)種に起因する)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
APC
APCは、MHCクラスI分子またはクラスII分子に結合された表面抗原をT細胞に提示する細胞である。APCには、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、B細胞、およびランゲルハンス細胞が含まれるが、それらに限定されるわけではない。特定の例において、APCは、DCである。対象からAPCを得るか、または作製する方法は、当技術分野において公知である。1つの例において、APCは、哺乳動物由来の血液試料から得られる。例えば、血液試料から得られる単球を培養して、DCを作製することができる。
特定の例において、APC(またはその前駆体)は、免疫原性組成物を投与する前に免疫応答を刺激しようとする対象から得られる。例えば、この方法は、APCを得るため、または作製するために使用される末梢血単核細胞(PBMC)を対象から単離する段階を含んでよい。特定の例において、プロテアソーム活性を阻害するのに十分な量のプロテアソーム阻害物質と接触させられた細胞(腫瘍細胞または病原体に感染した細胞など)から単離されたDRibbleは、APCが1種または複数種のDRiPを提示するのに十分な条件下でAPCと共にインキュベートされ、それによって、DRibbleを負荷されたAPCが作製される。DRibbleを負荷されたAPCを、対象(腫瘍を有する対象または感染症に罹患している対象など)に投与し、それによって、1種または複数種のDRiPに対する免疫応答を刺激することができる。あるいは、処理細胞または処理細胞から単離されたDRibbleを対象に投与し(したがって、細胞またはDRibbleをインビボでAPCに接触させ)、それによって、1種または複数種のDRiPに対する免疫応答を刺激することもできる。
投与
任意の投与様式が、プロテアソーム阻害物質、オートファジー誘導因子、処理細胞、単離されたDRibble、DRibbleを負荷されたAPC、および本明細書において開示される(リンパ球枯渇剤のような)他の組成物などの治療物質を投与するために使用され得る。プロテアソーム阻害物質、オートファジー誘導因子、処理細胞、単離されたDRibble、DRibbleを負荷されたAPC、および他の組成物は、治療的有効量で対象に投与される。治療担当医のような当業者は、適切な投与経路を決定することができる。1つの例において、免疫原性組成物の投与は、皮下または皮内である。別の例において、リンパ球枯渇剤の投与は、静脈内である。
プロテアソーム阻害物質、オートファジー誘導因子、ならびに開示される処理細胞、単離されたDRibble、およびDRibbleを負荷されたAPCは、治療的有効量で対象に投与される。特定の例において、治療的有効量のプロテアソーム阻害物質、オートファジー誘導因子、処理細胞、単離されたDRibbleもしくはDRibbleを負荷されたAPC(またはそれらの組合せ)は、単一の単位用量で投与される。別の例において、治療的有効量のプロテアソーム阻害物質、オートファジー誘導因子、処理細胞、単離されたDRibble、またはDRibbleを負荷されたAPCは、少なくとも2つの単位用量、例えば、少なくとも3つの単位用量、4つの単位用量、または5つの単位用量で、少なくとも60日、少なくとも90日、少なくとも180日、または少なくとも365日の期間に渡って投与される。
DRibbleを産生する方法
本発明の開示は、DRibbleを産生するための方法を提供する。このような方法を使用して、細胞によるDRibbleの産生を刺激し、かつ、いくつかの例において、増強することができる。DRibbleは、哺乳動物細胞のような、DRiPまたはSLiPを産生する任意のタイプの細胞から産生させることができる。このような細胞の例には、腫瘍細胞、および1種または複数種の病原体に感染した細胞が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
特定の例において、この方法は、細胞におけるタンパク質分解を実質的に阻害する条件のような、DRibbleを産生させるのに十分な条件下で、十分な量のプロテアソーム阻害物質と標的細胞を接触させる(例えば、インキュベートする)段階を含む。例えば、細胞は、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、または少なくとも24時間、例えば、4時間〜24時間、6時間〜24時間、12時間〜24時間、または12時間〜18時間、プロテアソーム阻害物質と接触させることができる。いくつかの例において、この方法は、細胞のオートファジーを誘導するのに十分な条件下で、十分な量のオートファジー誘導因子と標的細胞を接触させる(例えば、インキュベートする)段階をさらに含む。例えば、細胞は、プロテアソーム阻害物質の前、最中、または後に、オートファジー誘導因子と接触させることができる。特定の例において、細胞は、少なくとも4時間(例えば、少なくとも6時間または少なくとも24時間)、プロテアソーム阻害物質と接触させ、続いて、少なくとも4時間、例えば、少なくとも12時間または少なくとも18時間、オートファジー誘導因子と接触させることができる。
細胞はまた、細胞によるDRibble産生を刺激するか、またはさらに増強するのに十分な条件下で、十分な量のプロテアソーム阻害物質、およびタンパク質のグリコシル化を減少させる1種または複数種の作用物質(例えば、ムレイドマイシン、ツニカマイシン、リポシドマイシン、またはそれらの組合せなどのヌクレオシドトランスロカーゼI阻害物質)の両方のような、他の作用物質と接触させることもできる。1つの例において、細胞は、細胞によるDRibble産生を刺激するか、またはさらに増強するのに十分な条件下で、十分な量のプロテアソーム阻害物質(例えば、少なくとも20nMのVelcade)、オートファジー誘導因子(ラパマイシンまたはHBSSなど)、およびNH4Clと接触させられる。
DRibbleは、インビボ、エクスビボ、またはインビボの方法およびエクスビボの方法の両方の組合せによって、産生され得る。例えば、DRibbleは、例えば、DRibbleを産生させるのに十分な量(腫瘍細胞または病原体に感染した細胞におけるタンパク質分解を実質的に阻害する量のような)で、治療的有効量の1種または複数種のプロテアソーム阻害物質を(単独で、またはオートファジー誘導因子もしくはツニカマイシンなどの他の作用物質と組み合わせて)対象に投与することによって、インビボで産生することができる。前述したように、投与されるプロテアソーム阻害物質の量は、特定の例において、腫瘍細胞のような細胞のアポトーシスを有意に誘導しない用量である。別の例において、DRibbleは、例えば、DRibbleを産生させるのに十分な量(細胞におけるタンパク質分解を実質的に阻害する量のような)で、十分な量の1種または複数種のプロテアソーム阻害物質を(単独で、またはオートファジー誘導因子もしくはツニカマイシンなどの他の作用物質と組み合わせて)、培養状態で増殖中の細胞と共にインキュベートすることによって、エクスビボで産生することができる。
いくつかの例において、この方法は、細胞によって産生されたDRibbleを回収する段階をさらに含む。例えば、細胞によって産生されたDRibbleを細胞から分離し、次いで収集することができる。特定の例において、細胞および細胞片からDRibbleを分離することにより、少なくとも50%純粋、例えば、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、または少なくとも99%純粋な集団のような、単離されたDRibbleの集団が得られる。
精製されたDRibble集団をエクスビボで産生する1つの具体的な例示的方法は、約6時間〜24時間のインキュベーションのような、細胞におけるタンパク質分解を実質的に阻害するのに十分な条件下で、プロテアソーム阻害物質を含む十分な量の組成物と細胞を接触させる段階を含む。続いて、これらの細胞は、オートファジー誘導因子と共に約6時間〜24時間インキュベーションするような、細胞においてオートファジーを誘導するのに十分な条件下で、インキュベートされる。結果として生じる細胞およびDRibbleは、細胞を沈殿させるがDRibbleは沈殿させない条件下で、遠心分離される。DRibbleを含む上清は、DRibbleを沈殿させるのに十分な条件下で遠心分離される。結果として生じる、精製されたDRibble集団を含む沈殿を収集する。DRibbleは、直ちに使用するか、または後で使用するために凍結保存することができる。
腫瘍細胞由来のDRibble
1つの例において、DRibbleは、血液学的腫瘍または固形腫瘍に由来する細胞のような腫瘍細胞によって産生される。このようなDRibbleを用いて、腫瘍に対する免疫応答を直接的または間接的に刺激することができる(下記を参照されたい)。1つの例において、腫瘍由来のDRibbleはインビボで産生させられ、それによって、対象における腫瘍に対する免疫応答が刺激される。別の例において、腫瘍由来のDRibbleはエクスビボで産生され、かつ、腫瘍由来のDRibbleは、対象に直接投与されるか、または対象に投与されるAPCに負荷するのに使用され、それによって、対象における腫瘍に対する免疫応答が刺激される。いくつかの例においてDRibbleは単離されないが、代わりに、プロテアソーム阻害物質(および、いくつかの例においては、さらにオートファジー誘導因子)で処理され、したがって、DRibbleを産生している全腫瘍細胞が免疫原性組成物として対象に投与され、投与される細胞の数は、免疫応答を誘導するのに、および、いくつかの例において、対象における腫瘍の退縮を引き起こすのに十分な数である。
特定の例において、細胞は、哺乳動物癌細胞のような哺乳動物腫瘍細胞である。特定の例において、細胞は、ヒト癌細胞である。いくつかの例において、腫瘍細胞は、治療しようとする対象から得られ、かつ、DRibbleは、エクスビボでこれらの細胞から作製される。腫瘍細胞は、外科的に摘出された腫瘍から、または生検試料(腫瘍の針吸引物のような)からなど、当技術分野において公知の方法を用いて、対象から得ることができる。例えば、腫瘍細胞は、対象から得、かつ、当技術分野において公知の組織培養法を用いて、初代培養物として増殖させることができる。理想的には、初代腫瘍細胞が、培養状態で良好に成長および増殖することができるか、または、得られる腫瘍試料が、十分な数(少なくとも細胞100万個のような)の細胞がDRibble作製のために使用され得るくらい大きい。培養状態で良好に成長するか、または多数の細胞を有する大きなサイズの腫瘍を産生する傾向があり、その結果、初代培養物が使用され得る腫瘍の例には、白血病、リンパ腫、黒色腫、肺癌、卵巣癌、胃癌、および結腸癌、ならびに腎細胞癌が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
しかしながら、一部の初代腫瘍細胞は、培養状態で成長または増殖することが困難である。このような例において、対象中に存在するのと同じタイプの腫瘍の樹立細胞株を使用することができるか、または、DRibbleをインビボで産生させることができる。培養状態で成長するのが困難である細胞を有する腫瘍の例には、乳癌および前立腺癌が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、対象が、培養状態で良好に成長しない細胞を有する乳癌に罹患している場合、DRibbleは、別の対象から樹立された乳癌細胞株から作製することができる。このような細胞株の例は当技術分野において公知であり、乳癌に対するMDA-MB-231(下記の実施例22を参照されたい)ならびに前立腺癌に対するPC3およびLNCapなどである。
感染細胞由来のDRibble
別の例において、DRibbleは、1種もしくは複数種の病原体に感染した哺乳動物細胞、または病原性抗原をコードする核酸分子を含むベクター(プラスミドベクターもしくはウイルスベクターなど)に感染した細胞から産生させられる。このようなDRibbleを用いて、病原体に対する免疫応答を直接的または間接的に刺激することができる(下記を参照されたい)。1つの例において、感染細胞から得られるDRibbleがインビボで産生させられ、それによって、対象における病原体に対する免疫応答が刺激される。別の例において、感染細胞から得られるDRibbleはエクスビボで産生され、かつ、それらのDRibbleは、対象に直接投与されるか、または対象に投与されるAPCに負荷するのに使用され得、それによって、対象における病原体に対する免疫応答が刺激される。いくつかの例において、DRibbleは単離されないが、代わりに、プロテアソーム阻害物質(および、いくつかの例においては、さらにオートファジー誘導因子)で処理され、したがって、DRibbleを産生している病原体感染細胞全体が免疫原性組成物として対象に投与され、投与される細胞の数は、免疫応答を誘導するのに、および、いくつかの例において、対象における感染症を治療するか、または病原体に対する予防的防御を提供するのに十分な数である。
例示的な病原体には、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、およびそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、ウイルスには、プラス鎖RNAウイルスおよびマイナス鎖RNAウイルスが含まれる。例示的なプラス鎖RNAウイルスには、ピコルナウイルス(Picornavirus)(例えば、アフトウイルス科(Aphthoviridae)(例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)))、カルジオウイルス科(Cardioviridae);エンテロウイルス科(Enteroviridae)(コクサッキーウイルス(Coxsackie virus)、エコーウイルス(Echovirus)、エンテロウイルス(Enterovirus)、およびポリオウイルス(Polio virus)など)、ライノウイルス科(Rhinoviridae)(ライノウイルス(Rhinovirus));ヘパトウイルス科(Hepataviridae)(A型肝炎ウイルス);トガウイルス(Togavirus)(例には、風疹;アルファウイルス(西部ウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、およびベネズエラウマ脳炎ウイルスなど)が含まれる);フラビウイルス(Flavivirus)(例には、デング熱ウイルス、西ナイルウイルス、および日本脳炎ウイルスが含まれる);ならびに、コロナウイルス(Coronavirus)(例には、ウルバーニ(Urbani)株のようなSARSコロナウイルスが含まれる)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例示的なマイナス鎖RNAウイルスには、オルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(Rhabdovirus)(例えば狂犬病ウイルス)、およびパラミクソウイルス(Paramyxovirus)(例には、麻疹ウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルスが含まれる)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
ウイルスには、DNAウイルスも含まれる。DNAウイルスには、ヘルペスウイルス(例えば、水痘帯状疱疹ウイルス、例えばオカ(Oka)株、サイトメガロウイルス、ならびに単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
別のグループのウイルスには、レトロウイルスが含まれる。レトロウイルスの例には、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)(例えば、亜型C型)、HIV-2、ウマ伝染性貧血ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、およびトリ肉腫ウイルスが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
別のタイプの病原体は、細菌である。細菌は、グラム陰性またはグラム陽性に分類することができる。例示的なグラム陰性細菌には、大腸菌(K-12およびO157:H7)ならびに志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例示的なグラム陽性細菌には、炭疽菌(Bacillus anthracis)、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、淋菌、連鎖球菌性髄膜炎(Streptococcal meningitis)、および結核菌(Mycobacterium tuberculosis)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
原生動物および真菌もまた、病原体のタイプである。例示的な原生動物には、マラリア原虫(Plasmodium)、リーシュマニア、アカントアメーバ(Acanthamoeba)、ジアルジア、エントアメーバ(Entamoeba)、クリプトスポリジウム、イソスポラ(Isospora)、バランチジウム(Balantidium)、トリコモナス(Trichomonas)、トリパノソーマ(Trypanosoma)、ネグレリア(Naegleria)、およびトキソプラズマ(Toxoplasma)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例示的な真菌には、カンジダ・アルビカンス、クリプトコッカス、コクシジオイデス・イミチス、およびブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
感染細胞由来のDRibbleをエクスビボで産生するために、病原体を用いて細胞を感染させ(例えばインビトロで)、それらの感染細胞を用いて、DRibbleを産生させることができる。感染させる個々の細胞型は、使用する病原体に依存してよい。特定の病原体に細胞を感染させる方法は、公知である。一般に、方法は、病原体が細胞に感染するのに十分な条件下で、病原体による感染が可能な細胞をインキュベートする段階を含む。特定の例において、病原体は、37℃で少なくとも30分間、例えば少なくとも60分間、培地中で細胞と共にインキュベートされる。細胞に感染しなかった病原体は、細胞を洗浄することによって除去することができる。特定の例が本明細書において提供されるが、当業者は、細胞および病原体の他の組合せが使用され得ることを理解すると考えられる。
1つの例において、細菌の結核菌が、例えば、Li et al., Infect. Immun. 70:6223-30, 2002に記載されている方法を用いて、(PBMCから得られるマクロファージのような)マクロファージを感染させるのに使用され得る。別の例において、原生動物のマラリア原虫(熱帯熱マラリア原虫のような)が、赤血球または肝細胞を感染させるのに使用される。別の例において、真菌のヒストプラスマまたはクリプトコッカスが、巨核球を感染させるのに使用される。別の例において、HIVが、上皮細胞またはリンパ球を感染させるのに使用される。
次いで、感染細胞は、例えば、タンパク質分解を実質的に阻害し、それによって、細胞がDRibbleを生成することが可能になるのに十分な条件下で、十分な量のプロテアソーム阻害物質(単独で、またはオートファジー誘導因子もしくはツニカマイシンなどの他の作用物質の存在下で)と共にインキュベートされる。
プロテアソーム阻害物質
プロテアソーム阻害物質は当技術分野において公知であり、可逆性または不可逆性のものが含まれる。プロテアソーム阻害物質の具体例には、MG132、ALLN、およびPS341(Velcade(登録商標))が含まれるが、それらに限定されるわけではない。このような阻害物質は、細胞におけるタンパク質分解を実質的に阻害し、例えば、そのような分解を少なくとも90%阻害し、それによって、細胞によるDRibbleの形成が可能になる濃度および条件下で使用される。特定の例において、プロテアソーム阻害物質は、例えば、プロテアソーム阻害物質の不在下でのアポトーシスの量と比べて、細胞のアポトーシスを実質的に誘導しない濃度、例えば、10%を超える細胞にアポトーシスを誘導しない濃度のような致死未満量で使用される。例えば、これは、腫瘍細胞のアポトーシスを引き起こすためにプロテアソーム阻害物質が投与される場合の、腫瘍を有する対象に一般に投与されるプロテアソーム阻害物質の量と対照的である。一方、本出願において使用されるプロテアソーム阻害物質の濃度は、これらの濃度より低く、その結果、腫瘍細胞はDRibbleを産生し、続いて、腫瘍特異的T細胞によって死滅させられ得る。
特定の例において、DRibbleは、少なくとも6時間(少なくとも8時間、少なくとも12時間、またはさらに少なくとも16時間など、例えば、一晩の処理)、細胞を1種または複数種のプロテアソーム阻害物質と接触させる段階によって作製される。適切な濃度およびインキュベーション条件は、公知の方法を用いて、当業者が決定することができる。
オートファジー誘導因子
オートファジー誘導因子は、当技術分野において公知である。オートファジー誘導因子の具体例には、(例えば、HBSS中でのインキュベーションによる)細胞の栄養飢餓、虚血性条件下での細胞のインキュベーション、タモキシフェン、ラパマイシン(例えば、1nM〜100nM)、ビンブラスチン(例えば、5mg/kg体重〜100mg/kg体重の硫酸ビンブラスチン、例えば50mg/kg体重の硫酸ビンブラスチン)、およびIFN-γ(例えば、10U/ml〜1000U/ml)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。このような誘導因子は、細胞におけるオートファジーを実質的に誘導し、それによって、細胞によるオートファジー体の形成が可能になる濃度および条件下で使用される。オートファジーが誘導されたかどうかを判定する方法は当技術分野において公知であり、具体的な方法が、本明細書において提供される(例えば、実施例2および実施例6を参照されたい)。
特定の例において、DRibbleは、少なくとも6時間(例えば、少なくとも48時間)、細胞を1種または複数種のプロテアソーム阻害物質と接触させ、続いて、少なくとも6時間(例えば、少なくとも18時間)、その細胞を1種または複数種のオートファジー誘導因子と接触させることによって作製される。適切な濃度およびインキュベーション条件は、公知の方法を用いて、当業者が決定することができる。
DRibbleの回収
DRibbleの回収は、例えば、分泌されたDRibbleを収集することによって、細胞を溶解させ、かつ細胞内DRibbleを収集することによって、またはそれらの組合せによって、細胞からDRibbleを分離する段階を含んでよい。
例えば、細胞によって細胞培養培地中に分泌されたDRibbleを単離することができる。1つの例において、遠心分離が使用される。例えば、細胞および培地は、細胞全体および大型細胞片を沈殿させるのに十分であるが、DRibbleは沈殿させない条件下で(例えば、低速遠心分離によって)遠心分離される。細胞全体の沈殿物は、細胞内DRibbleを得るために使用することができる(下記を参照されたい)。結果として生じる、DRibbleを含む上清を、DRibbleを沈殿させるのに十分な条件下(例えば、高速の遠心分離)で遠心分離する。
1つの例において、前述の低速および高速の遠心分離を用いて得られるDRibble沈殿物は、パーコール(Percoll)のコロイド密度勾配における超遠心分離によってさらに精製される。例えば、沈殿物は、PBS中22.5%Nycodenz(1.127g/ml)7mlの上部にPBS中33% Percoll 21mlの不連続勾配の上部に重ね、かつ、SW28ローター中、72,000gで30分間、遠心分離してよい。オートファジー体は、下側の界面に集められるのに対し、アポトーシス小体または遊離ミトコンドリアは、試験管の底に沈殿すると考えられる。ERおよび形質膜の砕片など他の軽い膜は、上側の界面に集められると考えられる。DRibbleはオートファジー体であると予想される。
細胞内DRibbleもまた、例えば、細胞を溶解させ、かつ他の細胞片からDRibbleを実質的に分離することによって、得ることができる。
特定の例において、結果として生じる実質的に単離されたDRibble集団は、少なくとも70%純粋、例えば、少なくとも80%純粋、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、またはさらに少なくとも99%純粋である。DRibbleは、直ちに使用するか、または使用するまで(例えば、-20℃もしくは-80℃で)凍結保存することができる。1つの例において、単離されたDRibbleは、DMSOの存在下で保存される。
単離されたDRibble
本発明の開示はまた、開示される方法を用いて作製された、単離されたDRibbleも提供する。特定の例において、単離されたDRibble集団は、実質的に精製されており、例えば、少なくとも70%純粋、少なくとも80%純粋、少なくとも90%純粋、またはさらに少なくとも95%純粋である。このようなDRibbleは、免疫原性組成物であり得る。1つの例において、単離されたDRibble集団は、例えば、少なくとも10%のDMSOの存在下で凍結される。
単離されたDRibbleは、キットの一部分であり得る。例えば、キットは、腫瘍細胞から得られたDRibbleを含む1つまたは複数の容器、ならびに、フルダラビン、シクロホスファミド、またはそれらの組合せなど1種または複数種の化学療法剤またはリンパ球枯渇剤を含む1つまたは複数の他の容器を含み得る。
1つの例において、キットは、単離されたDRibble、およびPD-1のような腫瘍細胞または間質細胞の阻害性分子を阻害する作用物質を含む。例えば、このようなキットは、単離されたDRibble、および1種もしくは複数種のPD-1、PD-1L1、またはPDI-L2を認識する抗体またはsiRNAを含み得る。
免疫原性組成物
免疫原性組成物およびそのような組成物を産生する方法が、本出願によって提供される。免疫原性組成物とは、対象におけるT細胞応答、例えば、TAAまたは(VAAのような)病原体関連抗原に対するT細胞応答の発生の刺激のように、対象の免疫系による免疫応答を刺激または誘発することができるものである。例示的な免疫原性組成物には、ワクチンが含まれる。1つの例において、免疫原性組成物は、細胞によるDRibble産生を刺激するのに十分な量のプロテアソーム阻害物質で処理された腫瘍細胞もしくは病原体感染細胞、単離されたDRibble、DRibbleを負荷されたAPC、またはそれらの組合せを含む。
開示される免疫原性組成物は、1種もしくは複数種の薬学的に許容される担体、(アジュバントのような)免疫賦活薬、抗腫瘍性化学療法剤、またはそれらの組合せなど他の作用物質を含み得る。アジュバントには、結果として生じる免疫応答を強化し得る作用物質が含まれる。アジュバントは当技術分野において公知であり、具体例には、フロイント不完全アジュバント(IFA)、フロイント完全アジュバント、細菌毒素、および核酸分子が含まれるが、それらに限定されるわけではない。免疫賦活薬の1つの具体例は、GM-CSFのようなサイトカインである。1つの特定の例において、アジュバントは、ssRNA一本鎖オリゴリボヌクレオチドのようなssRNAである。
1つの例において、免疫原性組成物は、本明細書において説明する方法(例えば、プロテアソーム阻害物質およびオートファジー誘導因子と共にインキュベーション)を用いて、処理細胞の集団を産生し、次いで、それらの処理細胞を含む組成物を調製することによって、作製される。
1つの例において、免疫原性組成物は、本明細書において説明する方法を用いて、単離されたDRibbleの集団を産生し、次いで、それらの単離されたDRibbleを含む組成物を調製することによって、作製される。
1つの例において、免疫原性組成物を作製する方法は、単離されたDRibbleの集団をAPCと接触させ、それによって、DRibbleを負荷されたAPCを含む免疫原性組成物を作製する段階を含む。特定の例において、DRibbleを負荷されたAPCは、例えば、負荷されたAPCを洗浄することによって、DRibbleから単離され、それらの単離されたDRibbleを負荷されたAPCが、免疫原性組成物を形成する。
実施例1
プロテアソーム阻害物質を用いた、DRibbleの調製
本実施例では、腫瘍細胞からのDRibbleの産生を刺激するために使用される方法を説明する。当業者は、固形腫瘍または液状腫瘍を有する対象から得られる腫瘍細胞のような他の腫瘍細胞を使用できることを理解すると考えられる。同様に、20nM〜1000nMのVelcadeと共に6時間〜48時間インキュベーションするなど、他のプロテアソーム阻害物質も使用され得る。当業者はまた、同様の方法を用いて、HIVのような1種または複数種の標的病原体に感染した細胞からDRibbleを産生させ得ることも理解すると考えられる。
8〜12週齢の雌のC57BL/6(H-2b)マウス(Jackson Laboratory, ME)を使用した。B16F10および3LLは、それぞれ、雌のC57BL/6マウスに由来する自然発症のマウス黒色腫細胞株およびルイス肺癌細胞株である。RM1は、胎仔前立腺上皮に由来するマウス前立腺癌である。RM1-Ovaは、オボアルブミンをコードするプラスミドを用いた安定なトランスフェクションによってオボアルブミンを発現するRM1細胞株である。
腫瘍細胞株を、プラスチック上で、完全培地(CM)、すなわち0.1mM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L-グルタミン、50μg/ml硫酸ゲンタマイシン、およびμM 2-ME(Aldrich, Milwaukee, WI)ならびに10% FBS(Life Technologies, Grand Island, NY)を添加したRPMI 1640(Bio Whittaker, Walkersville, MD)中で培養した。腫瘍細胞は、トリプシン処理によって週に2回〜3回、回収し、T-150培養フラスコ中で維持した。
腫瘍由来のDRibbleを調製するために、約80%コンフルエントな培養腫瘍細胞を含むT-150フラスコ1つ(フラスコ当たり約3000万個の細胞)を可逆性プロテアソーム阻害物質MG132(5μg/ml)またはALLN(5μg/ml)で24時間処理して、ユビキチン化タンパク質のプロテアソームによる分解をブロックした。図1Aに示したように、ALLNの存在下で腫瘍細胞をインキュベーションすると、前核空胞の形成およびDRiPを含む小胞(DRibble)の分泌が誘導された。48時間後に、培養上清を50mlコニカル試験管中に収集し、かつ、低速遠心分離(250gで10分間)によって全腫瘍細胞および大型細胞片を除去した(図1B)。結果として生じる上清を、高速でさらに遠心分離(10,000gで15分間)して、DRibbleを沈殿させた。PBS(20ml)中に再懸濁させ、かつ前述の高速で沈殿させることによって、沈殿物(DRibbleを含む、図1Cを参照されたい)を1回洗浄した。洗浄した沈殿物をPBS 300μl中に再懸濁し(DRibble 10μl=細胞100万個)、かつ液体窒素中で急速凍結させ、使用するまで少量ずつ-80℃で保存した。
MG-132(5μg/ml)およびツニカマイシン(5μg/ml)の組合せは、MG-132(図1E)もしくはツニカマイシン(図1F)のいずれか単独、または処理無し(図1D)と比べて、DRibble産生を有意に増加させた(図1G)。いくつかの例において、単独またはMG-132と組み合わせたツニカマイシン(5μg/ml)を腫瘍細胞と共にインキュベートした以外は前述のようにして、3LL腫瘍細胞を処理した。
DRibbleのサイズは、Malvern Zetasizer Nano機器(Particle Technology Lab, Ltd., Downers Grove, IL)を用いて決定した。強度重み付け分布に基づくと、DRibbleの平均サイズは約230nMであり、エキソソーム(70nM)より有意に大きかった。これは、DRibbleがエキソソームではないことを示唆する。
実施例2 プロテアソーム阻害物質はオートファジーを誘導する
本実施例では、プロテアソーム阻害物質の存在下での腫瘍細胞のインキュベーションがオートファジーをもたらすことを実証するために使用される方法を説明する。
オートファジー阻害物質3-メチルアデノシン(3-MA)およびオートファジー誘導因子ラパマイシンを使用して、オートファジーを調節し、かつ、V-GFP-TfR-OVA融合物(変異ユビキチン、GFP(緑色蛍光タンパク質)、トランスフェリン受容体の膜貫通ドメイン、およびニワトリオボアルブミンを含むペプチド)を発現するヒト293T腫瘍細胞に対するそれらの影響を観察した。さらに、10mM NH4Clを用いて、リソソームを介したタンパク質分解を阻害した。V-GFP-TfR-OVAを発現する細胞を、処理しないか、10mM 3-MAで24時間処理するか、10mM 3-MAおよび1μM Velcadeで24時間処理するか、50nMラパマイシンで24時間処理するか、50nMラパマイシンおよび1μM Velcadeで24時間処理するか、10mM NH4Clで24時間処理するか、または1μM Velcadeおよび10mM NH4Clで24時間処理した。細胞溶解物を、SDSを含む試料溶解用緩衝液中に沈殿細胞を再懸濁することによって調製し、かつ、抗GFP抗体を用いるウェスタンブロット解析に供した。
未処理の対照細胞と比べて、完全長の融合タンパク質および融合タンパク質の短断片の両方とも、3-MA処理によって増加し、かつ、3-MAおよびVelcadeの両方の組合せは、短断片の安定化により大きな効果をもたらした。したがって、プロテアソームおよびオートファジーの両方とも、DRiPおよびSLiPの分解に関与している。Velcade処理では、ラパマイシンの存在下で短断片の量が少し増加し、大半のDRiPが機能的なプロテアソームの不在下でオートファジーによって分解される可能性が高いことが示唆される。より短い断片のさらに大きな安定化効果が、NH4ClならびにNH4ClおよびVelcadeによって誘導され、オートファジーおよびプロテアソームによりDRiPが分解されることが示唆された。しかしながら、VelcadeをNH4Clと共に使用しても、完全長タンパク質およびDRiPの両方のラパマイシンに誘導された分解を救済できないことは予想外であった。下記の実施例に示すように、完全なタンパク質またはDRiPもまた、基質としての機能を果たし得るものの、DRibble中に存在する完全なタンパク質およびDRiPの分解産物の方が、交差提示のためのより効率的な基質である。したがって、オートファジーは、DRiPの蓄積およびDRiPのより小型の断片への前消化をもたらし、APCへの提示を可能にすると思われる。
Velcadeがオートファジーを誘導したか確認するために、LC-3のウェスタンブロット解析を実施した。LC3はオートファジーマーカーであり、LC3-I非脂質付加型からPE結合型LC3-IIに変換する。293Tを1μM Velcadeで一晩処理し、かつ、細胞溶解物全体を、抗LC3ポリクローナル抗体を用いるウェスタンブロット解析に供した。対照細胞からはLC3-I型のみが検出されたのに対し、プロテアソーム阻害は、LC3-Iおよび新規に生成されるLC3-IIの両方の増加をもたらし、Velcadeが293T細胞においてオートファジーを誘導したことが実証された。
これらの結果は、プロテアソーム機能を阻害すると、DRiPの蓄積および細胞オートファジーの活性が誘導されることを実証する。
実施例3 プロテアソーム機能の阻害により、短寿命タンパク質の交差提示が増加する
本実施例では、短寿命OVAの分解を妨害することにより、インビボでの交差提示が増加することを実証するために使用される方法を説明する。生来の分解メカニズムの存在下では、短寿命タンパク質ではなく、長寿命タンパク質がインビボで効率的に交差提示された。
B3Z OVAに特異的なハイブリドーマ細胞を刺激することができる、長寿命型OVAまたは短寿命型OVAのいずれかを発現する細胞株を使用して、それらがナイーブなOT-I Tg T細胞にオボアルブミン(OVA)を交差提示できるか判定した。ユビキチン様の分子であるSumoを、N末端の切断されたOVA(41-386)と融合させた。構築物は、ドミナントなCD4エピトープおよびCD8エピトープを含み、かつ、それらの提示を、OT-II TCR Tg T細胞およびOT-I TCR Tg T細胞によってモニターした。融合タンパク質(Sumo-M-OVAおよびSumo-R-OVA(M-OVAは少なくとも4時間の半減期を有し、R-OVAは10分未満の半減期を有する))をコードするcDNAを、バイシストロン性のレンチウイルスベクターpWPI中にクローニングし、かつ293T細胞中にトランスフェクトして、レンチウイルス上清液を作製した。GFP発現は、Sumo-X-OVA融合タンパク質と同じ発現カセット中のIRESの制御下にある。Sumo-R-OVAをトランスフェクトされた293T細胞におけるOVA発現は、Sumo-M-OVAをトランスフェクトされた細胞より約10倍少ない。ウイルス上清液を用いて、B16F10黒色腫細胞およびB78H1黒色腫細胞に形質導入した。GFP発現に基づいて判断したところ、70%超の腫瘍細胞が形質導入された。
OT-Iマウス由来のナイーブな脾臓細胞500万個をCFSEで標識した後、B6マウス中に養子移入し、続いて、Sumo-M-OVAレンチウイルスベクターまたはSumo-R-OVAレンチウイルスベクターのいずれかを用いて形質導入された生きた腫瘍細胞(F10細胞またはB78H1細胞)1×106個を接種した。MG-132(5μM)を腫瘍細胞に24時間添加した後、放射線照射して、プロテアソーム活性およびR-OVAの分解を妨害した。腫瘍注入後10日目に、脾臓を回収し、かつ、ゲートをかけられたCD8+T細胞におけるCFSE蛍光をフローサイトメトリーによって決定した。
図2Aに示すように、ベクターのみを形質導入した腫瘍細胞(F10およびB78H1の両方)は、CFSE希釈を誘導しなかった。Sumo-M-OVAを形質導入された、両方のタイプの腫瘍細胞は、OT-I T細胞の著しい増殖を引き起こした。Sumo-R-OVAに対する応答は、異なる腫瘍細胞に対して異なっていた。これは、R-GFPに関して認められるように、F10腫瘍細胞およびB78H1腫瘍細胞におけるR-OVAの半減期が異なることが原因である可能性が高い。図2B(1番右のパネル)に示すように、F10-Sumo-R-OVA細胞のプロテアソーム機能を妨害すると、OVAの交差提示の効率が劇的に増加した。
これらの結果により、タンパク質抗原の半減期が、交差提示にとって重要であるが、腫瘍抗原の直接提示には重要ではないことが実証される。したがって、細胞(腫瘍細胞、または標的病原体に感染した細胞など)におけるプロテアソーム機能を阻害することにより、短寿命タンパク質(DRiPおよびSLiPなど)の分解を防止し、かつ、それらの効率的な交差提示をもたらすことができる。
実施例4 RMA腫瘍細胞のプロテアソーム機能を阻害すると、インビボでのGag特異的T細胞の交差提示が増加する
本実施例では、RMA腫瘍細胞のプロテアソーム機能を阻害することにより、gagタンパク質の交差提示が増加し得ることを実証するために使用される方法を説明する。
短寿命タンパク質の交差提示の失敗の例は、MuLVのgag、すなわちレトロウイルスによって誘導された腫瘍(FBL-3、RMA、MBL-2、RBL-5)に対するドミナントな抗原である。ドミナントエピトープは、翻訳の開始コドンとして通常と異なるCUGを用いて翻訳された代替のより大型のgag遺伝子産物(gPr75gag)のリーダーペプチドに由来する。FBL-3またはRMA-S/DC融合細胞が、腫瘍特異的T細胞免疫を誘導するのに対し、TAPを欠損したRMA細胞(RMA-S)は、誘導に失敗する。CUGでの開始は、gPr75gagタンパク質のN末端アミノ酸としてLeuをもたらす。Leuは、タイプ1の主要な不安定残基であり、合成後にユビキチン-プロテアソーム経路によって媒介される急速な分解を受ける。
gPr75gagの分解が妨害された場合にgag特異的T細胞がプライミングされ得るかを実証するために、RMA腫瘍細胞(1000万個)を、プロテアソーム阻害物質の5μM MG132で24時間処置したマウス、または処置しなかったマウスに注射した。7日後に、ER/Golgiの遮断薬(ブレフェルディンA)の存在下で6時間、無関係なDb結合ペプチドまたはgagのドミナントエピトープのいずれかで膵臓細胞を再刺激した。次いで、細胞内IFN-γを産生したCD8T細胞のパーセンテージを、細胞内染色、ならびにCD3、CD8、およびIFN-γに対する抗体を用いたフローサイトメトリー解析によって決定した。
プロテアソーム阻害物質による処理をしない場合、RMAで免疫化したマウスに由来するCD8T細胞は、バックグラウンドレベルのIFN-γ(0.44%)しか産生しなかったのに対し、MG132で処理をした場合、バックグラウンド(0.29%)より有意に高いパーセンテージのIFN-γ産生細胞(1.74%)が誘導された。
したがって、腫瘍細胞(または標的病原体に感染した細胞)のプロテアソーム機能を阻害することにより、短寿命タンパク質(DRiPおよびSLiPなど)の分解を減少させるか、または防止し、それによって、インビボでのそれらの効率的な交差提示促進することができる。
実施例5 交差提示におけるオートファジーの役割
本実施例では、交差提示におけるオートファジーの役割を実証するために使用される方法を説明する。
V-GFP-TfR-OVAを発現する293T腫瘍細胞を、実施例2で説明したように処理し、かつ、放射線照射(15,000ラド)後にインビトロで交差提示させるための抗原供給源として使用した。腫瘍細胞100万個をDC200万個と共に6時間インキュベートした後、OVAタンパク質由来のペプチドを認識する、OT-Iトランスジェニックマウスに由来するCFSE標識したナイーブT細胞を添加した。CFSE標識の希釈によって示されるOT-I分裂を読み出しとして使用した。
図3に示すように、交差提示は、より多くのDRiPを蓄積させるためにVelcadeが含まれたかどうかを問わず、腫瘍細胞の3-MA処理によって大幅に減少した。一方、オートファジー誘導因子のラパマイシンは、ウェスタンブロットによって検出された抗原レベル(実施例2)は未処理の対照細胞のレベルよりずっと低かったにもかかわらず、腫瘍細胞の交差提示を大きく増大させた。NH4Clは、タンパク質レベルを上昇させ、かつ、交差提示の中程度の増大を誘導した。NH4Clの存在下でのラパマイシンは、最も高レベルの交差提示を誘導したが、抗原レベルは最低であることが見出された。
これらの結果は、腫瘍細胞(または標的病原体に感染した細胞)のオートファジー活性が交差提示に関与していることを示唆する。
したがって、DRiPおよびSLiPは、プロテアソーム系およびオートファジー系の両方によって分解され得、かつ、それらの交差提示は、プロテアソーム活性を減少させ、かつオートファジーを増大させることによって、増大され得る。
実施例6 DRibbleは、分泌性のオートファジー体である
本実施例では、DRibbleが、細胞から放出されるオートファジー体であることを実証するために使用される方法を説明する。前述の実施例において示されるように、プロテアソーム阻害物質と共に細胞をインキュベーションすると、オートファジーが誘導され、かつ、DRibbleのサイズおよび形態は、活性なオートファジーを受ける細胞中に存在するオートファゴソームに似ている。
293T腫瘍細胞を、Ub-M-GFP-OVA融合タンパク質、GFP-LC3融合タンパク質、またはGFP-LC3タンパク質およびtdTomato-Ubタンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクトした。24時間後に、トランスフェクトされた細胞を1μM Velcadeで処理した。GFP-OVA融合タンパク質またはGFP-LC3融合タンパク質を用いて、蛍光顕微鏡検査法によって、DRibble中の抗原またはオートファジー膜を可視化した。GFP-LC3融合プラスミドおよびtdTomato-Ub融合プラスミドの同時トランスフェクションを用いて、LC3で装飾したDRibbleの内側でのユビキチン化DRiPの蓄積を可視化した。
Velcadeで処理をすると、GFP-OVAまたはGFP-LC3に関して陽性な、細胞に結合した斑点が形成された。これらの斑点状構造体の多くは、遊離の粒子であるか、または細胞にゆるく結合していた。tdTomato-Ub(dsRED蛍光タンパク質のオレンジ変異体)を用いてユビキチン化タンパク質をタグ化したところ、ユビキチン化タンパク質は、GFP-LC3陽性のベシクル中に封入されていることが判明した。これらの結果により、DRibbleが分泌性オートファジー体であることが示唆される。
ウェスタンブロット解析によるDRibbleタンパク質の特徴付けによっても、DRibbleが、ユビキチン化タンパク質を含む分泌性オートファジー体であることが示唆される。Velcade処理後に、様々な種類のGFP-OVA融合タンパク質を発現する293T細胞株から作製したDRibbleから、溶解物(10μg)を調製した。この溶解物を、GFP、LC3、カルレチキュリン、HSP90α(細胞質ゾル)、およびユビキチンに対する抗体でプローブした。
Velcade処理により、DRibble中に多量のGFP-OVA融合タンパク質が生じた。より多量の融合タンパク質の短断片が、Velcadeで処理した細胞から作製されたDRibble中に存在していた。抗Ub抗体を用いて検出すると、他のユビキチン化タンパク質もまた、存在していた。DRibbleがオートファジー体であるという概念と一致して、プロセシングされたLC3-IIタンパク質のみが、DRibbleの溶解物から検出された。さらに、HSP90α、HSP94(Grp94)、およびカルレチキュリンも、DRibble中で検出された。
要約すれば、プロテアソーム機能およびオートファジーの活性化を長期に渡って阻害すると、完全なタンパク質、DRiP、HSP90、カルレチキュリン、ユビキチン化タンパク質、およびプロセシングされたLC3-IIを含むオートファジー体(DRibble)が放出される。
実施例7 樹状細胞はDRibbleを取込み、かつ炎症誘発性サイトカインを放出する
本実施例では、単離されたDRibbleをDCに取込ませるために使用される方法、およびそのようなDCによって産生されるサイトカインの解析を説明する。
DCは、Flt3リガンドおよびGM-CSFをコードするプラスミドDNAの水力学的注入によって作製した。1日目に、HBSS 2ml中のFlt3リガンドをコードするプラスミドDNA 2μgをマウスに静脈注射し、続いて、10日後に、GM-CSFをコードする同量のプラスミドDNAを静脈注射した。15日目に、注射したマウスの膵臓からDCを回収した。典型的には、脾臓細胞の30%〜50%がDCであった(CD11cおよびMHC II陽性)。
DRibbleは、実施例1で説明した方法を用いて、293T細胞から調製した。DRibble(3μl/ml)を、1×106個のDC細胞と共に2時間インキュベートした。いくつかの例において、10μg/mlの抗CD40抗体を単独で、またはIFN-γ(100ng/ml)と組み合わせて、DC細胞と共にインキュベートした。結果として生じるDRibbleを負荷されたDCを、ELISAを用いて、サイトカイン分泌について解析した。
DRibbleは、用量依存的な様式で、DCがIL-6およびIL-12p40を放出するように刺激したが(図4)、IL-10およびIL-12p70の放出は刺激しなかった。IL-12 p70は、抗CD40抗体(10μg/ml)およびIFN-γ(100ng/ml)の両方の存在下で、DRibbleに刺激されたDCによって産生されるのみであった。腫瘍細胞、またはトランスフェクトされた腫瘍細胞に由来するベシクル/DRibbleの取込み後の、DCによるIFN-αおよびIL-12 p40の産生は、自然感染を模倣するアプローチに相当し得る。実験の結果により、DCによるDRibbleのエンドサイトーシスが、カルレチキュリン/LRP相互作用を使用し得ることも示唆される。
要約すれば、DRibbleはDCを活性化して炎症誘発性サイトカインを放出させ、かつ、スカベンジャー受容体を介して、DCに内在化され得る。DCによるIL-12 p70の産生は、抗CD40抗体およびIFN-γを用いて調節することができる。さらに、TRP-1 TCRトランスジェニックT細胞、またはα-GalCerを有するNKT細胞からの強力な同族補助(cognate help)を提供する作用物質も、サイトカイン産生を増強するために使用することができる。
実施例8 DRibbleは、交差提示のための抗原供給源を提供する
本実施例では、DRibbleおよび全腫瘍細胞が、インビトロおよびインビボで交差提示をするための抗原を提供する能力を比較するために使用される方法を説明する。
DRibbleは、Sumo-M-OVA、gp100、またはTRP-1を発現する293T細胞を0.05μM Velcadeで24時間処理することによって作製し、かつ、実施例7で説明した方法を用いて、DC中に負荷した。比較する場合、負荷されるDRibbleの量は、DC上に負荷される同数の腫瘍細胞から推論する。OVAおよびgp100タンパク質、またはTRP-1ペプチドを陽性対照として使用した。DC単独(CM)、およびGFPベクターを発現する293T細胞から作製したDRibbleを陰性対照として使用した。洗浄後、DCを用いて、養子移入後にインビトロまたはインビボで、OT-IおよびOT-II TCR Tgマウス(OVAモデルの場合)、pmel-1(gp100モデルの場合)、またはTRP-1 TCR Tgマウスに由来するCFSE標識したナイーブT細胞を刺激した。T細胞のCFSEプロファイルは、5日目(インビトロ)および7日目(インビボ)に決定した。
図5Aに示すように、DRibbleを負荷されたDCは、OT-I T細胞、OT-II T細胞、pmel-1 T細胞、およびナイーブT細胞の有意なCFSE希釈を誘導したが、放射線照射された全腫瘍細胞は、誘導しなかった。さらに、TRP-1プラスミドDNAをトランスフェクトされた293T細胞に由来するDRibbleは、TCRがTRP-1黒色腫抗原に特異的であるトランスジェニックマウスからのナイーブなCD4 T細胞の増殖を促進することができた。
図5Bに示すように、GFPベクターを用いて形質導入された293T細胞から作製したDRibbleを負荷されたDC、またはDCを含まずDRibbleのみを含む培養物は、対照の完全培地(CM)のみにおいて観察されたレベルを上回るいかなるCFSE希釈も誘導せず、DRibbleに誘導されるT細胞増殖が抗原特異的であることが示唆された。
インビボでのOVA、腫瘍細胞、およびDRibbleの交差提示の相対的効率を比較するために、トランスジェニックOT-IナイーブT細胞をCFSEで標識し、かつB6マウス中に養子性に移入し、次いで、マウスに、OVA(10μg/ml)、腫瘍細胞(腫瘍とDCの比は3:1)、M-OVAを発現する293T細胞から調製したDRibble(10μl=細胞106個=タンパク質総量5μg)を負荷されたDCをワクチン接種した。ワクチン接種後7日目に、CFSE希釈により、DRibbleがインビボでナイーブなOT-I T細胞の分裂を誘導する能力が少なくともOVAと同等に良く、腫瘍細胞より優れていることが示唆された(図5B)。
力価測定を実施して、OT-Iモデルおよびpmel-Iモデルの両方を用いた交差提示アッセイ法における、DRibbleおよび精製OVAタンパク質の効率を比較した。腫瘍細胞105個または0.5μg/mlのタンパク質総量に等しい、1μl/mlのDRibbleを負荷されたDCは、1μg/mlの精製OVAタンパク質より有意に優れていた。形質導入された293T細胞の溶解物全体中のOVAの量は、約10ng/106細胞であった。DRibble中のOVAの絶対量は、1ng/μl DRibbleを超えない可能性が高い。DRibble 1μlは可溶性OVAタンパク質1μgより優れていたため、DRibbleは、交差提示用の抗原供給源として可溶性OVAより少なくとも1000倍効率的であった。gp100/pmel-1の系において、DRibble 3μl(このDRibble調製物中のタンパク質は0.6μg)は、組換えgp100タンパク質3μgと同じくらい、ナイーブなpmel-1 T細胞の増殖を促進するのに優れていた。黒色腫抗原をトランスフェクトされた細胞から単離されたDRibbleも、黒色腫特異的T細胞を刺激するにあたって、全腫瘍細胞または組換えタンパク質よりも優れていることが判明した。
要約すると、DRibbleの交差提示は、CD4 T細胞およびCD8 T細胞の両方に対して、全腫瘍細胞または精製タンパク質より効率的であった。
実施例9 GM-CSFによるT細胞の感作
本実施例では、実施例1において作製したDRibbleを用いて、DRibbleを負荷されたDCでナイーブな腫瘍反応性T細胞を感作する方法を説明する。
骨髄に由来する樹状細胞(DC)を、以下のようにして調製した。C57BL/6(H-2b)マウス由来の骨髄細胞を、以前に公開されているプロトコール(J. Exp. Med. 176(6):1693 -70, 1992)に従って、顆粒球コロニー刺激因子(GM-CSF)を含む完全培地中で培養した。手短に言えば、骨髄の単細胞懸濁液をマウスの大腿骨から作製し、かつ、50ng/mlの組換えマウスGM-CSF(PeproTech)を含む完全培地1ml当たり細胞100万個の濃度で、細菌用ペトリ皿中で培養した。3日目および6日目に、新鮮なGM-CSFを補充した培地をそれらの皿に添加し、かつ、通常、CD11c+樹状細胞の50%を超える、非接着細胞およびゆるく接着した細胞を9日目に回収し、細胞1000万個ずつに分けて、使用するまで液体窒素中で凍結した。一般に、このプロセスによって作製されたDCは、MHC IIならびに共刺激分子(CD80およびCD86)の発現に関するフローサイトメトリー解析によって判断されるように、未成熟DCおよび成熟DCの両方を含むと考えられる。
ナイーブな腫瘍反応性T細胞を、以下のようにして、DRibbleを負荷された樹状細胞で感作した。凍結したDCを解凍し、かつ、完全培地(CM)1ml当たり細胞200万個の濃度で培養した。DCにDRibbleを負荷し、かつ、10μl/mlのDRibble、50ng/mlのGM-CSF、および1μg/mlのMPL(モノホスホリルリピドA、リピドAの非毒性誘導体)を6時間添加することによって、同時に活性化した。対照として、別のグループのDCも、放射線照射したF10腫瘍細胞と共に(2×106個のDC細胞および4×106個のF10細胞)6時間インキュベートした。
次いで、DC(200万個)を洗浄し、かつ、10mlのCMに溶かした、ナイーブなマウスに由来する2000万個の脾臓細胞を、垂直に立てた培養管中で2日〜3日間刺激するのに使用した。ナイーブな脾臓細胞を、骨髄由来のDCのみ、もしくはF10腫瘍細胞と共にプレインキュベートしたDC、またはF10腫瘍に由来するDRibble(2×106個のDCおよび10μgのDRibble、4×106個のF10に相当)で、2日間刺激した。次いで、培養管を遠心分離し、細胞をHBSSで1度洗浄した。洗浄後、10ng/mlのIL-7および5ng/mlのIL-15を含む新鮮なCMを細胞に添加して、感作されたT細胞を水平な状態でさらに3日〜6日間増殖させた。必要な場合には、同じ量のIL-7およびIL-15を含む新鮮な培地を3日目に添加した。
実施例10 Flt3を用いたT細胞の感作
本実施例では、Flt3リガンドを用いてDCを作製するのに使用され得る方法を説明する。この方法は、実施例9で説明した方法の代替方法として使用することができる。
DCは、Flt3リガンドおよびGM-CSFをコードするプラスミドDNAの水力学的注入によって作製する。1日目に、HBSS 2ml中のFlt3リガンドをコードするプラスミドDNA 0.5μg〜100μg(例えば、1μg〜20μg)を哺乳動物に静脈注射し、続いて、10日後に、GM-CSFをコードする同量のプラスミドDNAを静脈注射する。DCは、15日目に、例えば、注射した哺乳動物の脾臓から回収することができる。
Flt3リガンドを用いて作製したDCは、少なくとも4種の主要な集団(CD11b+ミエロイドDC、B220+pDC、CD8+リンパ系DC、および未知の3重陰性DC)を含む。インビトロの交差提示アッセイ法において、DRibbleは、DCの4種の異なるサブセットすべてによって交差提示され、かつ、それらはすべて、OT-I応答およびOT-II応答を効率的に刺激した。
DCのどのサブセットがインビボでの交差提示に関与しているかを決定するために、DiD標識したOVA-DRibbleをナイーブなマウスに皮内注射することができる。24時間後、流入領域リンパ節を回収し、かつ、CD11c、CD11b、B220、CD8、F4/80、CD40、およびCD80に対する抗体を用いたマルチカラーフローサイトメトリー解析に供する。9色のパネルを、Dako CyAmフローサイトメーターを用いて、Flt3リガンドによって作製したDCの異なるサブセットを識別するのに使用することができる。DiD陽性DCもまた、分別することができ、かつ、インビトロでOT-I T細胞およびOT-II T細胞を刺激して、単離後のそれらの交差提示能力を確認するのに使用することができる。対照の293T DRibbleを注射したマウスに由来するDCは、陰性対照として使用することができる。
実施例11 DRibbleによって刺激され、かつ増殖させられたT細胞の腫瘍特異的応答
本実施例では、DRibbleによって刺激され、かつ増殖させられたT細胞に対する腫瘍特異的応答を測定するために使用される方法を説明する。当業者は、IFN-γを測定する他の方法を使用できること、および免疫応答の他の指標を測定できることを認識すると考えられる。
IFN-γの腫瘍特異的産生を測定するために、DRibbleを負荷されたDCを用いて刺激され、かつ増殖させられたT細胞(2×105個)(実施例9を参照されたい)を、放射線照射した腫瘍細胞(3,000個〜30,000個の細胞)で24時間、再刺激した。腫瘍細胞には、F10黒色腫、Lewis肺腫瘍(3LL)、MCA線維肉腫、またはマウス前立腺癌細胞(MPR4およびMPR3)が含まれた。多数の腫瘍細胞が使用される試験では、104個の腫瘍細胞が使用された(図7Aおよび図7B)。F10細胞および3LL細胞においてMHCクラスII発現を誘導するために、MHCクラスIIトランス活性化因子(CIITA)を含むプラスミドまたはレトロウイルスベクターを腫瘍細胞にトランスフェクトした。CMのみを用いて培養したT細胞は、対照として使用した。再刺激は、96ウェルプレートの3つのウェルで実施した。例えば、105個のT細胞を、CM 200μl中で104個の腫瘍細胞と混合し、かつ、18時間培養した。上清を収集し、かつ、IFN-γのレベルを ELISA(ebioscience、CA)によって決定した。
図6に示すように、黒色腫DRibbleを負荷されたDCは、インビトロで腫瘍CD8 T細胞を誘導する。アポトーシス小体、エキソソーム、および腫瘍細胞の凍結解凍溶解物と比べて、DCをDRibbleと共にインキュベートした場合に最大のT細胞活性化が誘導されたため、これにより、DRibbleが交差提示のための前駆体を含むことが示唆される。
図7Aおよび図7Bに示すように、IFN-γの顕著な産生が、F10腫瘍細胞に由来するDRibbleをT細胞刺激に使用した場合、F10細胞の存在下で観察されたが、他の腫瘍細胞の場合は観察されなかったため、この効果は腫瘍特異的であった(図7A)。逆に、3LL腫瘍細胞に由来するDRibbleは、3LLに特異的なT細胞のみを刺激し、増殖させた(図7B)。
実施例12 DRibbleを負荷された樹状細胞の投与後の腫瘍退縮
本実施例では、腫瘍を有する哺乳動物へのDRibbleを負荷されたDCの投与のインビボ効果を示すために使用される方法を説明する。当業者は、他の腫瘍用に、または他の哺乳動物を治療するために同様の方法を使用できることを理解すると考えられる。さらに、同様の方法を用いて、DRibbleを負荷されたDCの代わりにDRibbleを哺乳動物に投与することもできる。
DRibbleを負荷された樹状細胞を用いたワクチン接種の治療的有効性を実証するために、皮下腫瘍モデルを使用した。乳腺の近くに4×105個の培養3LL腫瘍細胞を皮下(s.c.)注射したナイーブなC57BL6マウスを4つの群に分けた(1群当たりマウス5匹)。対照のマウスには、3日目に5mg/kgのドセタキセルを腹腔内投与した。第2群のマウスは、3日目にドセタキセルで処置し(5mg/kg、腹腔内)、かつ、5日目に、マウスGM-CSFを産生する放射線照射済み3LL腫瘍細胞を皮下投与した(2×106細胞、1μg GM-CSF/106細胞/24時間)。第3群には、3日目にドセタキセルを与え(5mg/kg、腹腔内)、かつ、5日目に、1μg/mL MPLで6時間活性化した3LL腫瘍細胞2×106個に由来するDRibbleを負荷された樹状細胞2×106個を両方の側腹部に皮下注射した(部位当たり100万個)。第4群には、5日目に、第3群と同じワクチンおよび付加的な抗CD4枯渇GM-CSF産生抗体を与えた。
注射した3LL細胞の用量では、腫瘍は通常、接種後5日〜7日目に触知可能であった。腫瘍増殖は、2日毎または3日毎に、デジタルカリパスを用いて測定した。腫瘍面積は、最長の腫瘍寸法と最小の寸法を掛けることによって算出した。
図8Aに示すように、3LL-DRibbleを負荷されたDCは、CD4の補助の有無に関わらず、完全な腫瘍退縮を誘導したのに対し、GM-CSF遺伝子を改変した全腫瘍細胞ワクチンは、有意に低い有効性を示した(腫瘍増殖を遅延させることしかできなかった)。生き残っているマウスは、2回目の腫瘍接種にも耐えた。CD8 T細胞が、この防御を媒介する主要なエフェクターT細胞であることが判明した。
DRibbleの効果が特異的であり、かつ、腫瘍の転移を減少させ得ることを実証するために、播種性F10黒色腫を有するマウスに、F10 DRibbleまたは3LL DRibbleを負荷されたDCを投与した。C57B6マウスにF10黒色腫細胞2×105個を静脈内投与した。F10黒色腫細胞は、静脈注射後に、体全体に広まる。転移は、腎臓、消化管、リンパ節、胸壁、卵巣、および肺において見出される。4日後に、F10または3LLに由来するDRibbleを負荷されたDC(DC細胞2×106個)を静脈内投与した。図8Bに示すように、F10 DRibbleを投与すると、これらの器官における転移物の形成が有意に減少したが(肺および転移総数の差異が有意であった。t検定によるp<0.05)、3LL DRibbleの投与では、有意に減少しなかった。これらのデータにより、DRibbleによって誘導される応答が腫瘍特異的であることが実証される。
要約すれば、DRibbleを負荷されたDCの投与の方が、全腫瘍ワクチンより効率的に腫瘍退縮を実現し得る。DRibble(例えば、10μg〜100μgのDRibble)の投与により、腫瘍退縮が実現し、かつ生存期間が延長すると予想される。DRibbleの有効性を高めるために、DRibbleまたはDRibbleを負荷されたDC細胞の最適用量は、当技術分野においてルーチンな方法を用いて特定することができる。
実施例13 DRibbleを負荷されたDCによる進行腫瘍の治療
本実施例では、進行腫瘍を治療するために使用される方法を説明する。当業者は、哺乳動物の他の進行腫瘍を治療するために同様の方法を使用できることを理解すると考えられる。さらに、同様の方法を用いて、DRibbleを負荷されたDCの代わりにDRibbleを哺乳動物に投与することもできる。
より進行した腫瘍量を有するマウスを治療するために、3LL細胞(細胞5×104個)の投与後6日〜9日目に、マウスを4種の異なる群に分けた(1群当たりマウス6匹〜7匹)。第1群(3LL/単独)、すなわち対照群は、いかなる処置も受けなかった。第2群には、150μgの抗OX40抗体(OX40を認識する抗体、抗肺癌剤として使用されている。例えば、Kjaergaard et al., J. Immunol. 167:6669-77, 2001を参照されたい)を与えた。第3群には、3LL-DRibbleを負荷された樹状細胞を与えた。第4群には、(ワクチンに誘導される免疫応答を追加刺激するための)ワクチン接種のすぐ後に、3LL-DRibbleを負荷された樹状細胞および抗OX40抗体150μgを与えた(腹腔内)。
図9に示すように、マウスの8日間定着させた3LL腫瘍は、共刺激性の抗OX40抗体と組み合わせて3LL細胞由来のDRibbleでパルスしたDCを与えたマウスにおいて退縮した。図6A〜図6Cに示すように、DRibbleを負荷されたDCの投与により、6日間定着させた腫瘍を有するマウスの半数(6匹中3匹)が治癒され、かつ、9日間の腫瘍を有するマウス6匹のうち1匹が治癒された。さらに、DRibbleおよび抗OX40抗体で処置したマウスにおいて12日間定着させた3LL腫瘍(12日間腫瘍モデル)は、マウス7匹中6匹において腫瘍を消失させるのに効果的であった(図10D)。
B6マウスに3LL細胞2×105個を皮下(s.c.)注入した。腫瘍注入後12日目に、DRibbleを負荷されたDC細胞(腫瘍細胞2×106個に相当)、CpG、および骨髄由来DC上に負荷された(1×106個/ml、37℃で6時間)ポリI:C(2.5μg/ml)をマウスにワクチン接種した。CpGおよびポリI:Cは、それぞれTLR9およびTLR3を活性化する。Balb/cマウスにEMT-6細胞(乳癌)2×105個を皮下注入した。腫瘍注入後7日目に、Taxotere(5mg/kg)をマウスに投与した。8日目に、マウスに、他の処置をしないか(対照)、抗マウスOX40抗体100μg、EMT-6腫瘍細胞由来のDRibbleを負荷されたDC(2×106個の細胞)、またはEMT-6腫瘍細胞由来のDRibbleを負荷されたDCと抗OX40抗体の組合せを与えた。
図11A〜図11Gに示すように、DRibbleを負荷されたDCを投与された、進行腫瘍を有するマウスは、ワクチンを与えられなかった対照と比べて有意に生存が延長し(p<0.05)(カプラン・マイヤープロットおよびログランク和検定)、かつ、約20%のマウスが治癒された。ポリI:CおよびCpGの細胞内ターゲティングによってTLR3およびTLR9を同時に誘発することにより、それぞれ、通常のDCによってIL-12およびIFN-αが産生されたが、腫瘍細胞に由来する腫瘍関連抗原のより効率的な交差提示ももたらされた。
実施例14 DRibbleおよびPD-1阻害物質を用いた腫瘍の治療
本実施例では、(例えば、DRibbleを産生する処理細胞、単離されたDRibble単独、またはDRibbleを負荷されたDCとして)DRibbleを投与することによって腫瘍を治療するために使用できる方法、およびPD-1シグナル伝達を減少させるか、または阻害する作用物質を説明する。特定の例において、腫瘍は、大型腫瘍または十分に定着した腫瘍である。PD-1シグナル伝達の具体的な阻害物質を説明するが、当業者は、PD-1、PD-1L1、およびPD-1L2に特異的なsiRNA分子など他の作用物質を使用できることを認識すると考えられる。
上記の実施例に示したように、DRibbleをベースとする組成物は、T細胞の媒介による抗腫瘍性免疫を誘導するうえで、全腫瘍細胞ワクチンより優れている。DRibbleをベースとするワクチンは、小型腫瘍の退縮を単独で媒介したが、大型の十分に定着した腫瘍は進行が遅れただけであり、かつ、少数のマウスしか、完全に治癒されなかった(実施例13を参照されたい)。これは、腫瘍もしくは間質細胞の阻害性リガンド、例えばPD-1リガンドの発現のような、腫瘍微小環境中の免疫抑制メカニズムに起因する可能性がある。腫瘍部位におけるPD-1の抑制的役割と一致して、十分に定着した大型F10腫瘍から分離された細胞(腫瘍細胞、間質線維芽細胞、およびAPCを含む)は、高レベルのPD-1L1(B7H1)を発現した。腫瘍消化物中の大半の細胞は、低レベルのPD-1L2(B7DC)を発現したのに対し、細胞の小さなサブセットは、高レベルのPD-1L2を発現した(これらは、腫瘍に関連した樹状細胞またはマクロファージである可能性が高い)。
PD-1、PD-1L1、およびPD-1L2に対する抗体は、PD-1シグナル伝達を妨害するのに使用することができる。10日〜12日間定着させたF10腫瘍(腫瘍は、約50mm2〜100mm2であると考えられる)を有するマウスに、放射線照射し、かつ、実施例8で説明したように、pmel-1 T細胞およびTRP-1 TCR T細胞を養子移入し、次いで、gp100タンパク質およびTRP-1タンパク質を発現する293T細胞に由来するDRibbleを、(例えば、皮下または皮内に)投与する。3日後および6日後にワクチン接種を繰り返し、かつ、最終のワクチン接種後3日目に、抗体を腹腔内投与する。血液中のpmel-1 T細胞およびTRP-1 TCR T細胞の両方の数をモニターし、かつ、それらのIFN-γ産生能力を、ペプチド刺激および細胞内染色によって測定する。腫瘍を回収し、消化する。腫瘍中のpmel-1 T細胞およびTRP-1 T細胞の数を決定し、かつIFN-γ産生能力も測定する。
PD1活性を阻害する抗体(抗PD-L1のような)を使用すると、腫瘍浸潤T細胞の数および機能性の両方が増大し、それによって、例えば、生存期間を延長させることによって、腫瘍の治療が促進されることが予想される。さらに、DRibble単独またはDRibbleを負荷されたDCは、腫瘍を有するマウスにおけるpmel-1 T細胞およびTRP-1 T細胞の顕著な増殖を誘導し、それによって、腫瘍を有するマウスの生存を有意に延長することが予想される。
実施例15 プロテアソーム阻害物質およびオートファジー誘導因子を用いた、DRibbleの作製
本実施例では、プロテアソーム阻害物質およびオートファジー誘導因子の両方の存在下でDRibbleを作製するために使用できる方法を説明する。当業者は、固形腫瘍または液状腫瘍を有する対象から得られる腫瘍細胞のような他の腫瘍細胞を使用できることを理解すると考えられる。同様に、他のプロテアソーム阻害物質および他のオートファジー誘導因子も、使用することができる。当業者はまた、同様の方法を用いて、HIVのような1種または複数種の標的病原体に感染した細胞からDRibbleを産生させ得ることも理解すると考えられる。
実施例2〜実施例5および実施例20において開示するように、プロテアソーム阻害物質およびオートファジー誘導因子の両方で細胞を処理すると、DRiPおよびSLiPの交差提示が増強され、このようなアプローチを用いてDRibbleの収量を増加させ得ることが示唆された。例えば、NH4Clによるリソソーム酸性化の妨害と組み合わせて、例えば、プロテアソーム阻害後にオートファジーを誘導すると、全腫瘍細胞の交差提示活性が増大した。
腫瘍細胞(例えば、治療しようとする対象中に存在する同じ腫瘍タイプの)または病原体に感染した細胞を、最大の細胞生存率を維持しつつ、プロテアソーム活性の阻害を可能にする条件下、ならびにオートファジーを誘導する条件下で、(可逆性のプロテアソーム阻害物質のような)プロテアソーム阻害物質の存在下でインキュベートする。プロテアソーム阻害物質およびオートファジー誘導因子中でのインキュベーションは、順次または同時に実施してよい。1つの例において、細胞は、オートファジー誘導因子の前に、プロテアソーム阻害物質と共にインキュベートされる。別の例において、細胞は、オートファジー誘導因子の後に、プロテアソーム阻害物質と共にインキュベートされる。
いくつかの例において、リソソームを介したタンパク質分解もまた、(例えば、10mM NH4Clを用いて)阻害される。いくつかの例において、細胞はまた、カスパーゼ活性化の阻害物質のような、アポトーシスを減少させるか、または阻害する作用物質の存在下でインキュベートされる。パンカスパーゼ阻害物質(Z-VAD-fmk、例えば5μM)を用いて、プロテアソーム阻害物質の存在下でカスパーゼ活性化を阻害することができる。
例示的な条件には、少なくとも20nMのVelcade(例えば、20nM〜1000nMのVelcade)中で6時間〜48時間の細胞のインキュベーションが含まれる。その前、最中、または後に、これらの細胞を、1nM〜100nMのラパマイシンと共に、10U/ml〜1000U/mlのIFN-γと共に、5mg/kg体重〜100mg/kg体重の硫酸ビンブラスチンと共に一晩インキュベーション、または(HBSSのような)栄養飢餓下など、オートファジーを誘導する条件下でインキュベートする。特定の例において、細胞を、プロテアソーム阻害物質の存在下で少なくとも6時間(例えば、少なくとも48時間)インキュベートし、続いて、一晩栄養飢餓にして、オートファジーを誘導する。別の例において、細胞を、HBSS中で2時間インキュベートした後(栄養飢餓)、(Velcadeのような)プロテアソーム阻害物質を添加する(合計24時間〜48時間のインキュベーションの間)。
処理細胞を対象に直接投与することができる。あるいは、その後、例えば、実施例1または実施例16において説明する遠心分離法を用いて、結果として生じるDRibbleを単離し、次いで、対象に投与してもよく、または、エクスビボでAPC細胞を刺激するのに使用してもよい。
実施例16 勾配超遠心分離によるDRibbleの単離
本実施例では、腫瘍細胞または病原体に感染した細胞などの細胞からDRibbleを単離するために使用することができる勾配超遠心分離法を説明する。特定の例において、このような方法により、分画遠心分離を用いて得られるより純粋なDRibble集団が得られる。
DRibbleを沈殿させ、かつ、結果として生じる沈殿物を、例えば、ホモジナイズした細胞からオートファゴソームを精製するための方法を用いて(Stromhaug et al., Biochem. J., 335(Pt 2), 217-24, 1998)、パーコールのコロイド密度勾配における超遠心分離によって分画する。手短に言えば、少なくともプロテアソーム阻害物質で処理した後(例えば、1μMのVelcadeで6時間〜48時間)、高速遠心分離によって、(標的腫瘍細胞または標的病原体に感染した細胞などの)細胞の清澄化した上清からDRibbleを沈殿させる。いくつかの例において、これらの細胞は、オートファジーを誘導するもの、リソソーム酸性化を妨害するもの、アポトーシスを減少させるもの、またはそれらの組合せなど他の作用物質と共にインキュベートされる。沈殿をPBSで2回洗浄し、PBS5ml中に再懸濁し、かつ、PBS中22.5%Nycodenz(1.127g/ml)7mlの上部にPBS中33% Percoll 21mlの不連続勾配の上部に重ね、かつ、SW28ローター中、72,000gで30分間、遠心分離する。オートファジー体は、下側の界面に集められるのに対し、アポトーシス小体または遊離ミトコンドリアは、試験管の底に沈殿すると考えられる。ERおよび形質膜の砕片など他の軽い膜は、上側の界面に集められると考えられる。DRibbleは、1種または複数種のプロテアソーム阻害物質の存在下で細胞から放出されたオートファジー体であると予想されるため、いくつかの例において、オートファジー体を単離する(かつ、次いで、本明細書において開示する方法において使用することができる)。
3つの画分に由来する等量のタンパク質を、GFP(抗原に対するマーカー)、LC3(オートファゴソームマーカー)、HSP90およびGAPDH(細胞質ゾルhspおよび酵素)、カルレチキュリンおよびGrp94(ER hsp)、Grp78(ミトコンドリアhsp)、ly-HSP73およびカテプシンB(リソソームhspおよびプロテアーゼ)、ならびにプロテアソームサブユニット(20Sおよび19S)およびプロテアソーム活性化因子(REGおよびPA200)に対する抗体を用いるウェスタンブロット解析に供することができる。細胞溶解物全体に由来する等量のタンパク質を用いて、特定の構成要素の濃縮があるかどうか判定することができる。
さらに、3つの各画分を、交差提示アッセイ法のための抗原供給源として使用して、交差提示活性がオートファジー体の画分のみで見出されるかを判定することができる。
実施例17 全細胞腫瘍免疫賦活剤
本実施例では、DRibbleまたはDRibbleを負荷されたDC細胞の代替として(または、これらに追加して)使用することができる、全細胞腫瘍免疫賦活性組成物を作製するために使用できる方法を説明する。当業者は、同様の方法を用いて、例えば、病原体に感染した細胞または病原体抗原をコードするベクターを腫瘍細胞の代わりに使用することによって、全細胞病原体免疫賦活剤を調製できることを理解すると考えられる。
全腫瘍細胞は、Velcadeのようなプロテアソーム阻害物質と共にインキュベートし、かつ、いくつかの例においては、さらにオートファジー誘導因子と共にインキュベートする。腫瘍細胞は、治療しようとする対象から得ることができるか、または、(組織培養細胞もしくは別の対象に由来するような)同じ腫瘍タイプの別の供給源から得ることができる。腫瘍細胞を獲得し、培養する方法は、当技術分野においてルーチンである。
腫瘍細胞を、最大の細胞生存率を維持しつつ、プロテアソーム活性の阻害を可能にする条件下、かつ、いくつかの例においては、さらにオートファジーを誘導する条件下で、プロテアソーム阻害物質(可逆性のプロテアソーム阻害物質のような)の存在下でインキュベートする。プロテアソーム阻害物質およびオートファジー誘導因子中でのインキュベーションは、順次または同時に実施してよい。1つの例において、細胞を、オートファジー誘導因子の前に、プロテアソーム阻害物質と共にインキュベートする。別の例において、細胞を、オートファジー誘導因子の後に、プロテアソーム阻害物質と共にインキュベートする。
特定の例において、腫瘍細胞を、少なくとも2時間、例えば、少なくとも6時間、例えば2時間〜6時間、プロテアソーム阻害物質と共にインキュベートし、続いて、細胞中でオートファジーを誘導する条件下で一晩インキュベートする。いくつかの例において、リソソームを介したタンパク質分解もまた、(例えば、10mM NH4Clのような1mM〜50mMのNH4Clを用いて)阻害する。いくつかの例において、細胞はまた、カスパーゼ活性化の阻害物質のような、アポトーシスを減少させるか、または阻害する作用物質の存在下でインキュベートされる。パンカスパーゼ阻害物質(Z-VAD-fmk、例えば5μMのZ-VAD-fmk)を用いて、プロテアソーム阻害物質の存在下でカスパーゼ活性化を阻害することができる。
例示的な条件には、少なくとも20nMのVelcade(例えば、20nM〜1000nMのVelcade)中で少なくとも6時間の細胞のインキュベーションが含まれる。その前、最中、または後に、これらの細胞を、1nM〜100nMのラパマイシンと共に、10U/ml〜1000U/mlのIFN-γと共に、硫酸ビンブラスチンと共に一晩インキュベーション、または(HBSSのような)栄養飢餓下など、オートファジーを誘導する条件下でインキュベートする。特定の例において、細胞を、プロテアソーム阻害物質の存在下で少なくとも6時間(例えば、少なくとも48時間)インキュベートし、続いて、一晩栄養飢餓にして、オートファジーを誘導する。別の例において、細胞を、HBSS中で2時間インキュベートした後(栄養飢餓)、(Velcadeのような)プロテアソーム阻害物質を添加する(合計24時間〜48時間のインキュベーションの間)。
処理細胞は、対象の腫瘍を治療するのに十分な量のような、免疫応答を誘導するのに十分な量で対象に直接投与することができる。1つの例において、2000万〜3億個の処理細胞を、例えば、免疫賦活薬またはPD-1阻害物質など他の作用物質の存在下で、投与する(実施例14を参照されたい)。
実施例18 DRibbleを負荷されたDCまたはDRibble単独のT細胞への交差提示
本実施例では、単離されたDRibbleが、リンパ球を枯渇させた対象において黒色腫に特異的なT細胞の大規模な増殖を誘導し、それによって腫瘍退縮を媒介し得ることを実証するために使用できる方法を説明する。
ナイーブなCD45.1+コンジェニックB6マウスにF10黒色腫細胞(2×105個)を接種し、かつ6日目に放射線照射する(500ラド)。翌日、放射線照射済マウスに、104個〜105個のナイーブなGFP+ pmel-1 T細胞のみ、またはTRP-1 TCRトランスジェニックマウス由来の同数のナイーブT細胞との組合せを養子移入し、かつ、7日目、10日目、および12日目に、2×106個のDC、ペプチドでパルスされた2×106個のDC(陽性対照)、組換えタンパク質、ならびにgp100タンパク質およびTRP-1タンパク質の両方を発現する293T細胞から作製された様々な量のDRibble(1μg〜100μg)を負荷された2×106個のDCをワクチン接種する。ワクチン接種は、2週間後に繰り返す。
pmel-1 T細胞およびTRP-1の数は、フローサイトメトリーによって追跡する。腫瘍の発達は、週に3回測定する。pmel-1 T細胞は、GFPおよびCD8抗体によって追跡し、TRP-1 TCR T細胞は、CD45.2抗体およびCD8抗体によって追跡する。
組換えgp100タンパク質、黒色腫由来の内因性抗原、またはgp100およびTRP-1をトランスフェクトされた293T細胞が、養子移入されたpmel-1 T細胞およびTRP-1 T細胞をクロスプライミングする能力を、決定することができる。図12Aに示すように、DRibbleでパルスしたDC(10μl/ml)は、精製されたgp100タンパク質(10μg/ml)と少なくとも同等に、皮下にF10腫瘍を有するマウスにおけるpmel-1 T細胞増殖を刺激した。さらに、DRibbleのみを負荷されたDC、DRibbleおよびα-GalCer(NKTリガンド)、抗CD40およびIFN-γの存在下でDRibbleを負荷されたDCのワクチン有効性を決定することができる。
図13は、皮内投与された単離DRibbleをインビボでDCに標的化し、外因性DC無しでナイーブなT細胞の増殖を刺激できることを実証する。
投与されるDRibbleの最適量を特定するために、様々な量のgp100/TRP-1-DRibbleを、ナイーブなトランスジェニックT細胞を養子移入されたマウスに様々な経路(静脈内、皮内、皮下など)を介して送達する。CFSE標識したpme-1ナイーブT細胞およびTRP-1 TCRナイーブT細胞の増殖は、ルーチンな方法および本明細書において提供される方法を用いてモニターすることができる。最も大規模なT細胞増殖をインビボでもたらす用量および経路を、F10腫瘍を有するマウス(または腫瘍を有する他の対象)において使用することができる。次いで、前述したように、腫瘍増殖およびT細胞応答を追跡する。
実施例19 タンパク質の交差提示
本実施例では、インビボで腫瘍細胞によって合成される長寿命タンパク質および短寿命タンパク質の交差提示の効率を比較するために使用できる方法を説明する。長寿命タンパク質はインビボでDCによって効率的に交差提示されるが、短寿命タンパク質はそうではないと予想される。
LCMVのgp33および黒色腫抗原gp100を発現する腫瘍モデルを作製することができる。2つの型のgp33およびgp100を作製する。一方の半減期は長く、他方の半減期は短い。Db拘束性gp33エピトープ(KAVYNFATM)は、P14 TCRトランスジェニックマウス(Taconic, Germantown, NY)由来のT細胞によって認識される。黒色腫gp100に対するTCR Tgマウスは市販されている。
細胞株293T、B78H1、およびβKOS(β2mノックアウトマウスから作製された線維肉腫細胞株)を使用することができる。293Tはヒト腎臓細胞株であり、通常、他の細胞株と比べて、より高いレベルの抗原発現が観察される。マウスT細胞の活性化は、交差提示を介する。B78H1(TAPおよびN末端則を欠く。したがって、N末端則を標的とする短寿命タンパク質のプロテアソームによる分解およびER中へのペプチド移行は無い)、βKOS(β2mノックアウト。したがって、ER中でのMHCクラスIおよびペプチドの複合体形成は無い)を、Agドナー細胞として使用して、プロテアソームの基質、プロテアソームの生成物、ER中に輸送されたペプチド、またはMHC I/ペプチド複合体が、交差提示のための供給材料であるか判定することができる。これらのモデル抗原の効果的な交差提示は、これらのモデル抗原を発現する腫瘍を有するマウス中に養子移入したナイーブなTCR Tg T細胞のCFSE希釈に基づいて測定する。
OVA、gp100、およびTRP-1を発現する細胞株は、ルーチンな方法を用いて作製する。放射線照射した293T-M-GFP-OVAまたは293T-R-GFP-OVAを、Agドナー細胞として(または、非293T細胞と共に)使用する。腫瘍細胞は、放射線照射した後、100万個〜500万個のナイーブなTCR Tg T細胞を予め養子移入したコンジェニックマウス中に皮下注入する。交差提示の指標として、ワクチン接種されたリンパ節(LN)および脾臓に由来するTg T細胞のCFSE希釈を、腫瘍注入後5日目および14日目にフローサイトメトリーによってモニターする。OT-Iマウス、P14マウス、およびpmel-1マウスに由来するCD8T細胞は、MHC I拘束性の交差提示を調査するのに使用されるのに対し、OT-IIマウスおよびTRP-1 TCR Tgマウスに由来するCD4T細胞は、MHC II拘束性の交差提示を検査するのに使用される。
プロテアソームによる短寿命タンパク質の分解を阻害すると交差提示が増大することを実証するために、以下の方法を使用することができる。短半減期型のモデル抗原を発現する腫瘍細胞を、0.05μMのVelcadeで6時間、12時間、24時間、48時間、および72時間処理し、かつ放射線照射する。これらの腫瘍細胞を、前述したように、交差提示アッセイ法のためのAgドナー細胞として使用する。
腫瘍由来タンパク質のインビボでの交差提示における内因性DCの役割を実証するために、以下の方法を使用することができる。CD11cプロモーター駆動性のジフテリア毒素(DT)を有するTgマウスを用いて、腫瘍接種後に一時的に内因性DCを枯渇させる。このようなモデルは、Jackson研究所から入手可能である(B6.FVB-Tg(CD11c-DTR-EGFP)57Lan/J)。TAP1依存性の交差提示を確認するために、TAP1欠損マウスをレシピエントマウスとして使用する。
インビボでの交差提示は、内因性DCおよびMHC I抗原の交差提示に依存しているが、MHC II抗原には依存しておらず、樹状細胞のTAP1に依存しているが、腫瘍細胞のTAPには依存していないと予想される。
実施例20 HSP90は、DRiPおよびSLiPのオートファジーに関与している
本実施例では、DRiPおよびSLiPのオートファジーにおけるHSP90の役割を実証するために使用される方法を説明する。
すべてではなくても大半のミスフォールドタンパク質または異常なタンパク質は、プロテアソームによって分解される。ゲルダナマイシンまたはラジシオール(radiciol)(17-AAD)などのHSP90阻害物質の存在下で、ミスフォールドまたは切断されたタンパク質(DRiP)は、シャペロン補助因子CHIP、または他のE3ユビキチンリガーゼを伴うプロセスにおいて、それらを分解するためのプロテアソームへと標的化される。
腫瘍由来抗原の交差提示におけるHSP90の役割を実証するために、V-GFP-TfR-OVA融合タンパク質を発現する293T細胞を、1μMのVelcade(6時間)、10μMのラジシオール(17-AAD、HSP90阻害物質)(16時間)、17-AAD(16時間)およびVelcade(16時間のうち最後の6時間)で処理し、かつ、等量(溶解物10μg)の各試料中の融合タンパク質のレベルを、抗GFP抗体を用いたウェスタンブロットによって解析した。交差提示は、実施例5において説明したようにして解析する。
VelcadeはGFP-TfR-OVA融合タンパク質の短断片を劇的に増加させたのに対し、HSP90阻害物質はそれらを減少させた。17-AADに続いてVelcadeで処理した場合は、これらのより短い断片の蓄積が回復した。これらの結果により、HSP90の結合した短断片が効率的なプロテアソーム基質であったこと、およびこれらの短断片が真のDRiPである可能性が高いことが示唆される。
17-AADで処理した細胞を、交差提示のための供給源として使用した場合、交差提示は減少した。驚くべきことに、Velcadeの添加により、DRiPは救出されたが、交差提示は救出されなかった。いっそう顕著な17-AADの阻害効果が、未処理細胞と比べて、Velcade処理細胞において観察された。同じ現象が、オートファジー阻害物質の3-MAで観察された。この結果により、HSP90がDRiPのオートファジーに関与していることが示唆される。Velcadeの存在下でプロテアソーム機能を阻害すると、DRiPが救出され、かつ、オートファジーが誘導されず、3-MAおよびVelcadeの効果が模倣され、したがって、オートファゴソーム中にDRiPは蓄積せず、その後にDRibbleとして放出されなかった。
交差提示基質に対する担体としてHSP90αを特定するために、HSP90αに対するsiRNAを用いて、V-GFP-TfR-OVA融合タンパク質を発現する293T細胞をトランスフェクトすることができる。細胞をVelcadeで処理し、かつ、本明細書において説明する方法を用いて、上清からDRibbleを調製する。ルシフェラーゼおよびHSP90βに対するsiRNAを陰性対照として使用する。オートファジーに対するHSP90ノックダウンの影響は、LC3のウェスタンブロット解析およびトランスフェクトされた細胞におけるGFP-LC3またはtdTomato-LC3の斑点形成に基づいて、決定する。DRiPは、ウェスタンブロット解析によって検査する。GFP-Ub融合タンパク質またはtdTomato-Ub融合タンパク質を用いて、凝集したユビキチン化タンパク質をタグ化し、かつ、共焦点顕微鏡解析によって、Ub陽性凝集体に対するHSP90の阻害効果を検査することができる。HSP90をノックダウンされた細胞から単離されたDRibbleを、OT-I細胞およびOT-II細胞を用いたインビトロの交差提示アッセイ法のための抗原供給源として使用する。HSP90αは、ユビキチン化DRiPのオートファジーならびにプロテアソームを阻害された腫瘍細胞からのDRibble中のDRiPの蓄積および放出に関与しているが、HSP90βは関与していないと予想される。
実施例21 DRiPおよびSLiPの交差提示におけるフォールディングされた完全なタンパク質の役割
本実施例では、DRiPの交差提示におけるフォールディングされた完全なタンパク質または凝集したDRiPの寄与を決定するために使用できる方法を説明する。フォールディングされた完全なタンパク質および凝集したDRiPの両方とも、DRibble中に存在し、かつ、それらのどちらも、交差提示され得る。
交差提示におけるこれら2種の異なるタンパク質画分の相対的な寄与を決定するために、ジギトニンを用いてDRibbleを透過処理して、ジギトニンの不溶性の性質によってDRibbleの内部にミスフォールドされたDRiPを残しつつ、可溶性のGFP融合タンパク質を放出させる。このような方法は、細胞質ゾル酵素であるGAPDHの両方のオートファジーを検出するのに使用されている(Lorenz et al., Nat. Methods 3:205-10, 2006)。M-GFP-OVAまたはV-GFP-TfR-OVAを発現する293Tから作製したDRibbleを、氷上で10分間、20μMのジギトニンで処理する。透過処理後、次いで、DRibbleを沈殿させ、かつ、上清および沈殿物の両方をウェスタンブロット解析に供して、可溶性抗原および他の構成要素の放出を決定する。V-GFP-TfR-OVAは膜結合型タンパク質であるため、ジギトニンで処理した際に減少は観察されず、一方、細胞質ゾルM-GFP-OVAは減少すると予想される。ジギトニン処理後、DRibbleを交差提示アッセイ法のために使用する。DRiPが主要な抗原供与体である場合には、交差提示活性は最小限しか低下しないと予想される。
実施例22 転移性乳癌の治療
いくつかの新規の有効な化学療法薬およびホルモン療法薬が最近開発されているにもかかわらず、転移性乳癌は依然として90%超の症例において、不治の疾患である。本実施例では、単離されたDRibble、腫瘍由来DRibbleを負荷されたDCの投与によって、またはDRibbleを産生する(例えば、プロテアソーム阻害物質、オートファジー誘導因子、もしくは両方との接触によって)腫瘍細胞を用いて、転移性乳癌を治療するために使用できる方法を説明する。当業者は、同様の方法を用いて、本明細書において開示する方法によってこのような腫瘍細胞を処理することにより、任意のタイプの腫瘍を治療できることを理解すると考えられる。さらに、当業者は、DCの代替として、他のAPCを使用できることも理解すると考えられる。さらに、当業者は、DRibbleを負荷されたDCを投与する代わりに、DRibbleを産生する処理された腫瘍細胞またはそのような細胞から単離されたDRibbleを対象に投与できることも理解すると考えられる。当業者は、PD-1阻害物質の投与のような他の治療法を対象に施してよいことを理解すると考えられる。
一般に、本方法は、骨髄非破壊的なリンパ球枯渇の誘導、および自己末梢血単核細胞(PBMC)輸注による再構成に続いて、以前に治療されていない転移性乳癌を有する対象に、乳癌細胞株由来のDRibbleを負荷された自己DC(または、単離されたDRibbleもしくはDRibbleを産生する処理された乳癌細胞)をワクチン接種する段階を含む。一般的なスキームを図14に示す。
例えば、少量の乳癌腫瘍を外科的に除去し、培養状態で増殖させ、かつ、治療前後の腫瘍細胞に対する対象の免疫応答を後で測定するために、凍結する。対象は、白血球搬出も受ける。結果として生じるWBCを凍結し、後で対象に戻す。これらの細胞のうち一部を用いて、DCを作製することができる。腫瘍細胞を収集し、白血球搬出を実施した後に、治療的有効量のフルダラビンおよびシクロホスファミドを静脈中に化学療法注入して、対象を処置する。6日目に、対象の凍結させた白血球を対象の静脈内に注入する。翌日、DRibbleを負荷されたAPC(または単離されたDRibbleもしくはDRibbleを産生する処理された腫瘍細胞)を含むワクチンを、例えば、腹部の皮膚下に最大4回注射して、投与する。少なくとも13週毎にX線およびスキャンを実施して、腫瘍をモニターする。
対象の判定基準
ステージIVの乳癌に罹患しており、かつ過去18ヶ月の間に化学療法も放射線療法も受けていない対象(20名〜24名の対象)が選択される(ホルモン療法および抗体療法の治療歴は許容される)。理想的には、対象は18歳以上であり、平均余命は3ヶ月を超え、かつ、ECOGパフォーマンスステータスは2以下である(カルノフスキーの指標が60%以上、表1を参照されたい)。
さらに、対象は、理想的には、正常な器官および骨髄機能を有する。例えば、WBCは3,000/uL以上、絶対好中球数は1,500/uL以上、絶対リンパ球数は500/uL超、血小板数は100,000/uL以上、Hgbは10g/dl以上(このレベルに到達するように患者に輸液してよい)、Hctは24%以上、全ビリルビンは2未満(ジルベール病が原因である場合を除く)、AST(SGOT)/ALT(SGPT)は3未満であり、クレアチニンは2mg/dl未満である。ベースラインのCBCを、処置前の14日以内に実施する。理想的には、対象は、2000を超えるWBC、50,000を超える血小板数、8を超えるHgb、および24を超えるHctを有する。
理想的には、対象は、HIV-1、HIV-2、B型肝炎表面抗原、C型肝炎抗体、HTLV1およびHTLV2、ならびに梅毒に関して陰性である。対象は、CMVおよびEBVに対して陽性または陰性でよく、かつ、リウマチ因子は43ユニット/μL未満であり、抗核抗体値は11ユニット/μL未満でよい。患者が外科手術を最近受けた場合には、その外科手術の影響から完全に回復していることが理想的である。
理想的には、対象は以下の者ではない:妊娠中または授乳中の女性;3週間以内に化学療法を受けたか、または2週間以内に放射線療法を受けた対象;(2週間以内の補充ステロイドおよび吸入ステロイド以外の)ステロイド療法を受けている対象;放射線療法および/または外科手術で治療され、かつ治療後1ヶ月以降に安定であることが示されている場合を除いて、脳転移が公知である対象;多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、または重症筋無力症の既往歴を有する者;任意の形態の原発性免疫不全または続発性免疫不全(HIV血清陽性、C型肝炎血清陽性、もしくはB型肝炎抗原陽性など)に罹患している対象;非限定的に、活動性感染症、活動性の出血(喀血もしくはGI出血など)、症候性うっ血性心不全、不安定狭心症、心臓不整脈、気管支痙攣、高血圧、高血糖、または高カルシウム血症を含む、制御不能な介入疾患に罹患している患者。翌3ヶ月の間に補充ステロイド以外の全身コルチコステロイドを要する可能性がある対象は、考慮に入れないことが理想的である。
ベースライン白血球搬出
対象は、リンパ球枯渇開始から2週間以内に、再構成および免疫モニタリングのためのPBMCを得るために、白血球搬出を受ける。少なくとも1×1010個のPBMCを得る。約10リットルの血液を、3時間〜6時間に渡って処理する。中央値の7.7リットルを処理する2.5時間の白血球搬出から得られるPBMC収量の中央値は、8.35×109個のPBMCであった。このうち25%は単球である。
100ml生理食塩水(NS)中グルコン酸カルシウム(10ml)を、処置の間、0.5ml/分または30ml/時で注入する。末梢の経路が不適切である対象には、超音波で直接導いて、血液透析カテーテルを一時的に留置することができる。カテーテルは、白血球搬出処置の後に取り除く。
フェレーシス後、適合させたMNCプロトコールを用いたエルトリエーションによって、生成物をリンパ球および単球の画分に分離する(Rouard et al., Transfusion 43:481-7, 2003)。造血前駆細胞の処理、保管、および再輸注のためのARC標準手順に従って、リンパ球を処理し、かつ後で自己再輸注をするために凍結する。再輸注の時に、生成物の試料を、分画を伴う(with differential)CBC用に使用して、各対象中に再輸注されるリンパ球数を決定する。
軽度の症候性低カルシウム血症が白血球搬出の間に起こる場合(唇/顔のチクチク感、四肢のしびれ感、筋痙攣)、必要に応じて、内服用Tumを与える。好中球が減少し、かつ発熱する対象には、セフタザジム(ceftazadime)またはイミペネムを用いた経験的な抗生物質治療を実施してよい。対象が症候性貧血である場合、またはHgbが8g/dl未満である場合には、赤血球濃厚液輸血を実施する。血小板輸血は、血小板数が10,000μL未満に落ちた場合、または出血の徴候が存在する場合にはより高いレベルでも、実施してよい。
CMV陽性対象およびCMV陰性対象のどちらも、絶対リンパ球数が500/μL未満まで減少した場合は、CMV予防を受けてよく(バルガンシクロビル900mgを1日1回経口摂取)、リンパ球数が一貫してこのレベルを上回るようになるまで継続してよい。
重篤な感染症を伴い好中球が減少している対象、または長期の顆粒球減少症に罹患している対象に、G-CSF(granulocyte-colony stimulating factor)を投与することができる。
ベースラインのCBCは、処置から3日以内に実施することができる。理想的には、ワクチンを与えられる対象のWBCは3,000以上であり、血小板数は100,000以上であり、Hgbは8g/dl以上であり、Hcは24%を上回る。
化学療法
DRibbleに曝露されたDC(または、単離されたDRibbleもしくはDRibbleを産生する処理された腫瘍細胞)を用いた免疫刺激およびPBMCの輸注の前に、初期の養子免疫療法試験に基づくガイドラインに従って、化学療法を実施してよい(Dudley et al. Science 298:850-4, 2002; RosenbergおよびDudley, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 :14639-45, 2004)。手短に言えば、連続した2日間(7日前および6日前)、それぞれの日に30分間に渡ってシクロホスファミド60mg/Kg/日を静脈内投与し、続いて、5日間(5日前、4日前、3日前、2日前、および1日前)、30分間に渡ってフルダラビン25mg/m2/日を対象に静脈内投与する。例えば、悪心を防ぐために、治療担当医の裁量で水分補給および制吐薬(デキサメタゾンを除く)を使用してよい。
シクロホスファミド(2-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ-2H-1,3,2オキサザホスホリン2-オキシド一水和物)は、分子式C7H15Cl2N2O2P・H2Oおよび分子量279.1の合成抗腫瘍薬である。凍結乾燥されたCYTOXAN(登録商標)(注射用のシクロホスファミド、USP)は、シクロホスファミド(無水)100mg当たりマンニトール75mgを含み、滅菌水または生理食塩水で還元することができる。例えば、CYTOXAN(登録商標)を、約150ccの生理食塩水中に希釈し、30分〜60分間に渡って静脈内注入する。余分な量のIV液は、膀胱毒性を予防するのに寄与することがある。還元させたシクロホスファミドは冷蔵下で6日間安定であるが、保存剤を含んでおらず、したがって、6時間以内に使用するのが理想的である。
CYTOXAN(登録商標)錠剤(シクロホスファミド錠剤、USP)は、経口使用向けであり、25mgまたは50mgのシクロホスファミド(無水)を含む。シクロホスファミドは、経口投与後に良く吸収され、バイオアベイラビリティは75%を超える。不変の薬物の消失半減期は3時間〜12時間である。
リン酸フルダラビン(FAMP)(9H-プリン-6-アミン,2-フルオロ-9-(5-O-ホスホノ-D-アラビノフラノシル)(分子式;C10H13FN5O7P)は、抗ウイルス剤ビデラビン(viderabine)の合成ヌクレオチド類似体である。文献では、リン酸フルダラビン、2-フルオロ-Ara-AMP、2-フルオロアデニンアラビノシド-5-ホスファート、2-FAMPとも呼ばれている。注射する場合、リン酸フルダラビン50mgを無菌注射用水USP 2ml中に溶解する。結果として生じる溶液は、25mg/mlのリン酸フルダラビンを含む。この薬物を、5%デキストロース注射液USPまたは0.9%塩化ナトリウム液USPでさらに希釈してよい。例えば、注射用のFludaraは、無菌注射用水USPを無菌的に添加することによって、非経口用途用に調製すべきである。最終製品のpH範囲は7.2〜8.2である。結果として生じるリン酸フルダラビン溶液を、100ccまたは125ccの5%デキストロース注射液USPまたは0.9%塩化ナトリウム液USP中に希釈し、かつ、結果として生じる溶液を、30分間に渡って対象に静脈経由で投与することができる。
注射用に還元したFludaraは、抗菌性保存剤を含まず、したがって、還元から8時間以内に使用すべきである。フルダラビンは、治療当日にANCが1500以上であり、かつ血小板数が100,000以上でなければ、投与しないのが理想的である。
DRibbleおよびDRibbleを負荷された樹状細胞(DC)の調製
MDA-MB-231細胞バンクから作製されるDRibble(Dols et al. Hum.Gene Ther. 14:1117-23, 2003)を調製する。以前に、多数の公知の抗原(Her2、サイクリング(Cycling)B1)を発現する乳癌ワーキングセルバンク(MDA-MB-231)が、乳癌に罹患している女性36名にワクチン接種するために使用され、最高108個の細胞が安全に投与された(Dols et al. Hum. Gene Ther. 14:1117-23, 2003)。自己由来の乳癌細胞株を樹立することは困難であるため、DRibbleは、このセルバンクから作製してよい。当業者は、自己由来の乳癌細胞の数が十分である場合、またはこれらの細胞を培養で増殖させることができる場合には、これらの細胞からDRibbleを作製できることを理解すると考えられる。
MDA-MB-231細胞からのDRibble作製は、20nMのVelcade(登録商標)(ボルテゾミブ)(プロテアーゼ阻害物質)で一晩処理することにより、誘導する。いくつかの例において、これは、飢餓条件下で(例えばHBSSの存在下で)実施する。所望の場合は、このような処理細胞を、続いてDRibbleを単離せずに、(対象を免疫刺激するために)対象に投与することができる。所望の場合は、以下のようにしてDRibbleを単離することができる。低速で遠心分離した後、結果として生じるDRibbleを、9,000rpm(10,000g)で15分間遠心分離することによって、上清から回収する。結果として生じる、DRibbleを含む沈殿物をPBSで3回洗浄して、プロテアーゼ阻害物質を除去する。1% NP-PBS中に溶解した後、タンパク質含有量をRCA法によって決定する。DRibbleをPBSで希釈して、最終濃度を1mg/mlとし、一定分量に分けて-80℃で凍結する。所望の場合は、DRibbleは、(例えば、10μg、100μg、もしくは1mgなど1μg〜1,000μgの濃度で)対象を直接的に免疫刺激するのに使用することができ、または(DCのような)APCに負荷するのに使用し、かつ負荷されたAPCを後述するように対象に投与することができる。
単球は、閉鎖系の分離システムElutra(登録商標)(Gambro BCT)を用いて、アフェレーシス生成物から濃縮する。遠心分離の速度を一定に保ちつつ、流速を段階的に高めながら、画分を収集した。この手順の典型的な純度および収率は、それぞれ90%および70%を超える。
単球画分(CellGro(登録商標)DC培地(CellGenix USA)250ml中1×109個〜2×109個)をセルファクトリー(Nalge Nunc)中で6日間培養する。予想される収量は、2億個〜3億個の未成熟DCである。GM-CSF(100U/ml)およびIL-4(10ng/ml)を用いて単球を6日間培養して、DCを作製する。凍結する前にDCを洗浄して、GM-CSFおよびIL-4を除去する。
DC培養の6日目に、DCを回収し、DC培地中に1ml当たり細胞5×106個で再懸濁させ、かつ、乳癌細胞株MDA-MB-231(上記を参照されたい)に由来する10μg/ml〜50μg/mlのDRibbleと共に6時間インキュベートする。DRibbleと共にインキュベーションした後、DCをPBS中で2回洗浄し、かつ25×106個の一定分量で凍結する。予想される収量は、2億個の抗原負荷DCである。
ワクチン接種
0日目(フルダラビンの最終投与後1日目)に開始して、DRibbleを負荷されたDC合計20×106個(または単離されたDRibble 1μg〜1000μgもしくはDRibbleを産生する処理された腫瘍細胞少なくとも2000万個(例えば2000万個〜2億個))を皮下投与して対象を免疫化した後、PBMCを輸注する。手短に言えば、前述のように調製した、DRibbleを負荷されたDC(または単離されたDRibbleもしくはDRibbleを産生する処理された腫瘍細胞)を、(前もって凍結されている場合には)37℃のドライバスで急速解凍し、PBSで2回洗浄し、かつ、注射用生理食塩水2ml中に再懸濁させる。2つのツベルクリン注射器中の合計体積2mLのDCを、2箇所の離れた部位の皮下組織中にDC 10×106個の1ml注射剤2つ分として投与するために使用する。注射剤は解凍から2時間以内に投与する。ワクチン接種は、四肢すべての間で循環させてよい。腹部および側腹部もまた、使用することができる。各ワクチン接種後に、対象を15分間観察する。
中止の条件が満たされた場合(下記を参照されたい)を除いて、ワクチン接種を2週毎に繰り返して、合計5回のワクチン接種を実施する。ワクチン投与に起因し得るグレード2を上回る任意の急性の全身的毒性が生じる場合は、対象に再処置しない。対象には、皮膚発疹、発熱、倦怠感、アデノパシー、および局所的反応を含む、ワクチンに一般に関連するグレード2の毒性に対するワクチンを与え続ける。潰瘍形成または無菌性膿瘍など重度の局所的毒性が発生する場合には、後続のワクチン中のDC数を初回量の50%まで減少させる。より低用量でも毒性が再発する場合には、ワクチンを中止する。不明な視覚的変化が臨床的に検出された場合には、ワクチンが網膜内部の色素細胞に対する応答を誘導した可能性があるため、ワクチンを中止する。
自己免疫疾患(炎症性関節炎、血管炎、心膜炎、糸球体腎炎、結節性紅斑などの)の徴候が発生する場合には、臨床状況によって要求されるように、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド、または他の免疫抑制薬剤を含む、適切な医学的処置を提供し、かつ、ワクチン接種を中止する。
自己末梢血単核細胞の輸注
0日目に、対象に、前もって凍結しておいた自己PMBCも注入する。前投薬は、PBMC輸注の30分前のアセトアミノフェン(650mg)およびジフェンヒドラミン(50mg)の経口投与を含んでよい。注入するPBMCの最小限の数は、4×109個である。1つの例において、注入するPBMCの最大限の数は、1011個である。PBMCは、各50cc注射器に対して5分間かけて、静注(IV push)する。細胞輸液は、フィルター無しの輸血に適した大量静注(large bore IV)ラインを通して与える。
PBMC輸注前の4時間およびPBMC輸注後の4時間〜6時間、対象に水分補給して、腎不全からの保護を助ける。水分補給は、少なくとも100ml/時間の尿量を保証するように調整する。水分補給は、1リットル当たりD5W1/2NS + 20mEq KCl + 50mEq NaHCO3を150ml/時間の速度で注入することによって、実現する。
ベースライン、20cc注入後、および輸注の最後にバイタルサインを測定する。その後、30分毎に2時間、次いで1時間毎に4時間、バイタルサインを測定する。再輸注後の日から、好中球が少なくとも1,000/μLに回復し、かつリンパ球が少なくとも500/μLに回復するまで、対象の感染をモニターする。
治療法の持続期間
有害事象に起因する治療の遅延がない場合、治療は、下記のうち1つまたは複数が起こるまで継続してよい:疾患の進行(進行の認められない対象は、少なくとも1年間治療を継続してよい);治療のさらなる実施を妨げる介入疾患;許容できない有害事象;対象が治療の終結を決断;または、対象の病態の変化により、対象がさらなる治療を受容できなくなる。特定の例において、治療を、例えば2週間毎、例えば、最長で数年間(例えば、最長5年間)、繰り返す。
対象が以下の毒性のいずれかを経験する場合には、対象にそれ以上ワクチン接種を施さない:グレード3のアレルギー/免疫学、グレード3の溶血、グレード3の心臓、グレード3の凝血、グレード3の内分泌、グレード3の胃腸管、グレード4の感染、グレード3の代謝、グレード3の神経学、グレード3の眼、グレード3の肺、およびグレード3の腎臓。
PBMCの2回目の収集
所望の場合は、対象は、例えば、5回目のワクチン接種後約2週目に、免疫機能の解析のために2回目の単核細胞収集を受けてよい。この収集物は、対象に再輸注するために処理する必要がない。ワクチン接種後約2週目に、PBMC収集のために白血球搬出を2時間〜3時間かけて実施する。PBMCは、1ml/分、カラーグラム(colorgram)3%未満で、かつ最短でも2時間かけて、収集する。この手順は、静脈内への水分補給を必要とせず、かつ、一般に、十分に許容される。
臨床的評価
以前の癌既往歴および治療法を含む、完全な病歴を得る。身長、体重、およびバイタルサインを含む、全面的な身体検査を実施する。
腫瘍は、以下のように評価することができる。転移性疾患の公知の部位のX線撮影による病期評価を、1日目の化学療法から4週間以内に実施する。さらに、造影剤を用いた頭部MRIおよび造影剤を用いない頭部MRIを実施することもできる。
各白血球搬出手順の前に、CBCパラメーターを評価する。
5回目のワクチン接種後約2週目に、抗腫瘍応答を評価するために、病期を再診断する画像調査を対象に受けさせてよい。病期診断は、2回ワクチンを追加する毎に(2ヶ月毎)繰り返す。疾患が安定しているか、またはより良い対象は、1年間ワクチン接種を続けてよい(最高で合計16回のワクチン)。
ワクチン接種がすべて完了した後、存命中、長期の毒性および生存について、3ヶ月毎に対象を追跡してよい。
腫瘍を解析するための方法
最初に5回ワクチン接種した後、次いでワクチン接種2回毎(2ヶ月毎)に、対象の応答を再評価することができる。ベースラインのスキャンに加えて、目標の応答が最初に記録されてから4週間〜8週間後に、確認スキャンを実施することができる。
応答および進行は、参照により組み入れられる、固形腫瘍の効果判定規準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(RECIST)委員会(JNCI 92(3):205-16, 2000)によって提案されている国際基準を用いて評価することができる。腫瘍病変の最長径(一次元の測定)のみの変化が、RECIST基準で使用される。病変は、下記に提供する基準を用いて、測定可能であるか、または測定不可能である。可測性に関して「評価可能」という用語は使用しない。
ワクチンに対する病変応答の評価
標的病変の場合、完全奏効(CR)は、標的病変すべての消失である。部分奏功(PR)では、標的病変の最長径(LD)の和が、ベースラインLD和を基準として、少なくとも30%減少している。進行(PD)は、治療開始以降に記録された最小LD和を基準として、標的病変のLD和の少なくとも20%の増加の観察、または1つもしくは複数の新しい病変の出現である。安定(SD)は、治療開始以降の最短LD和を基準として、PRと認定するには縮小が十分でもなく、PDと認定するには増大が十分でもない観察結果である。
非標的病変の場合、完全奏効(CR)は、非標的病変すべての消失および腫瘍マーカーレベルの正常化である。不完全奏功は、安定(SD)の観察、1つもしくは複数の非標的病変の残存、および/または正常限界値を上回る腫瘍マーカーレベルの維持であり得る。進行(PD)は、1つもしくは複数の新しい病変の出現、および/または既存の非標的病変の明白な進行である。
PRまたはCRの状態に割り当てるために、腫瘍測定値の変化を、効果の判定基準が最初に満たされた後の4週間目〜8週間目の間に実施する反復評価によって、確認することができる。SDの場合、追跡検査の測定値が、6週間〜8週間の最短間隔で、研究登録後少なくとも1回、SD基準を満たすことが理想的である。
全体的応答の持続期間を、CRまたはPR(最初に記録された方のどちらでもよい)に対応する測定基準が満たされた時点から、(治療開始以降に記録された最小測定値を進行性疾患の基準として考えて)再発性疾患または進行性疾患が客観的に記録される最初の日まで、測定する。
全般的なCRの持続期間を、CRに対応する測定基準が最初に満たされた時点から、再発性疾患が客観的に記録される最初の日まで、測定する。
安定は、治療開始時から、治療開始以降に記録された最小測定値を基準として考えて、進行に対応する測定基準が満たされるまで、測定する。
すべての対象の治療に対する応答を評価する。各対象を以下のカテゴリーのうち1つに割り付ける:1)完全奏効2)部分奏功、3)安定、4)進行、5)悪性疾患に起因する早期の死亡、6)毒性に起因する早期の死亡、7)他の原因による早期の死亡、または9)不明(評価不能、データ不十分)。応答カテゴリー4〜9の対象は、治療に応答していないとみなす(疾患進行)。
エンドポイント(免疫パラメーター、毒性パラメーター、腫瘍応答)
毒性パラメーターは、主として、顆粒球およびリンパ球の計数(1マイクロリットル当たりの細胞数)によって測定する。リンパ球200個/μLおよび好中球1000個/μLを上回る値に戻るまでの時間の長さを決定する。
Tリンパ球応答を特徴付けるために使用できるいくつかのアッセイ法が、当技術分野において公知である。これらのアッセイ法から得られるデータは、典型的には、文献中でしばしば「2パラメーターヒストグラム」と呼ばれる対数目盛の二変数散布図として表示される。縦および横の基準線(目盛を定めた統計学的「カーソル」)により、分布図は4つの象限に分けられ、陽性/陽性事象は、右上の象限に示される。免疫パラメーターに関する、1つの主要エンドポイントまたは判定基準測定は、細胞内IFN-γを産生する、ゲートをかけられたCD8+Tリンパ球の総数に対するCD8+T細胞数(パーセンテージとして表される)によって表されるパーセンテージ値(または出現率)である。解析は、患者内(対象内)のスコアの相互比較(ワクチン前の出現率対ワクチン後の出現率のような)を含んでよい。これらは、連続したランダムな変数、典型的には、0.05%〜5.0%まで変動する小さな数値であると考えられる。
抗腫瘍免疫応答を、治療の前および後(例えば、初回ワクチン接種後60日目)に測定する。治療前後の白血球除去(leukophoresis)産物に由来するT細胞を、MACSビーズを用いて、ネガティブ選択によって単離する。T細胞を、細胞内部でのサイトカインの蓄積を可能にするGolgi遮断薬の存在下で、ワクチン用に使用するDRibble/DC、または入手可能な場合には自己由来の腫瘍細胞で刺激する。
T細胞によるIFN-γ産生は、CD4抗体およびCD8抗体による細胞表面染色の後に細胞内染色技術によって測定することができる。例えば、特異的腫瘍細胞(乳癌)および非特異的腫瘍細胞(前立腺細胞または黒色腫細胞など)で刺激したT細胞を、CD4、CD8、およびIFN-γに対する標識抗体で染色することができる。フローサイトメトリーを用いてこれらのシグナルを検出して、刺激の存在下または非存在下でのIFN-γを産生するCD4 T細胞およびCD8 T細胞のパーセンテージを決定する。腫瘍特異的応答は、CD8 細胞およびCD4 細胞が乳房腫瘍細胞の存在下ではIFN-γを産生するが、非特異的な腫瘍細胞の存在下では産生しない場合である。
実施例23 プロテアソーム阻害物質の投与による腫瘍の治療
本実施例では、対象(ヒト対象または動物対象など)の腫瘍を治療するために使用できる方法であって、1種または複数種のプロテアソーム阻害物質を対象に投与し、それによって、インビボでDRibbleを産生させる段階を含む方法を説明する。いくつかの例において、この方法はまた、(ラパマイシンのような)オートファジーを誘導する作用物質のような、治療的有効量の他の作用物質の投与も含む。
腫瘍を有する対象に、Velcade(登録商標)のような1種または複数種のプロテアソーム阻害物質を、対象における腫瘍によるDRibbleの産生を刺激するか、または増強するのに十分な量で投与する。特定の例において、プロテアソーム阻害物質は、腫瘍細胞のアポトーシスを有意に引き起こさないが、その代わりにT細胞を介した免疫応答を可能にして腫瘍を治療する量で投与する。特定の例において、対象に、1mg/m2/投与以下のVelcade(登録商標)、例えば、0.1mg/m2/投与以下または0.01mg/m2/投与以下のVelcade(登録商標)を投与する。
プロテアソーム阻害物質に加えて、例えばプロテアソーム阻害物質の投与の前、最中、または後の時点に、他の治療物質を対象に投与してもよい。例えば、ツニカマイシンまたはタンパク質のグリコシル化を減少させる他の作用物質を、例えば、対象における腫瘍細胞によるDRibbleの産生を増強するために、プロテアソーム阻害物質と組み合わせて(または、プロテアソーム阻害物質の投与のすぐ前もしくはすぐ後の時点に)致死未満量で投与することができる。別の例またはさらなる例において、サイトカインのような免疫賦活薬またはアジュバントを、例えば、対象におけるDRibbleの形成の後に、腫瘍由来のDRiPに対する免疫応答を増強するために、対象に投与する。さらに別の例において、PD-1シグナル伝達を阻害する1種または複数種の作用物質(抗体またはsiRNA分子など)を、治療的有効量で対象に投与する(実施例14を参照されたい)。さらに別の例において、オートファジーを誘導する1種または複数種の作用物質を対象に投与する。例えば、20mg/kgのCCI-779を静脈内輸注によって(例えば、1回または複数回、例えば1回〜5回で)投与することができる。さらに別の例において、これら他の治療物質の組合せを投与する。
実施例24 腫瘍由来DRibbleの投与による腫瘍の治療
本実施例では、対象の腫瘍を治療するために使用できる方法であって、エクスビボで産生した腫瘍細胞由来DRibbleの投与を含む方法を説明する。
腫瘍細胞は、治療しようとする対象から得てよく、または、別の対象(組織培養細胞株のような)から得られる同じ腫瘍タイプのものでよい。腫瘍細胞を得る方法は、当技術分野において公知である。腫瘍細胞は、標準的な組織培養法を用いて、細胞の生存能力を援助する条件下で培養する。細胞は、5μg/mlのMG132もしくはALLM、または20nM〜1000nMのVelcade(登録商標)などのプロテアソーム阻害物質の存在下、プロテアソームを介したタンパク質分解を妨害し、それによって腫瘍細胞にDRibbleを産生させるのに十分な条件下でインキュベートする。例えば、腫瘍細胞は、37℃で、6時間〜48時間、例えば一晩、プロテアソーム阻害物質と共に培養してよい。
特定の例において、腫瘍細胞をまた、例えば、細胞を飢餓状態にさせるか、または腫瘍細胞のオートファジーを促進する量のラパマイシン、NH4Cl、もしくはそれらの組合せ中で細胞をインキュベートすることによって、オートファジーを促進する条件下でインキュベートする。例えば、プロテアソーム阻害物質で処理した腫瘍細胞を、細胞を飢餓状態にする条件(例えば、HBSS培地中で一晩インキュベーション)または10nM〜100nMのラパマイシンもしくは10mMのNH4Clの存在下でのインキュベーションなどオートファジーを促進する条件下で、続いてインキュベートすることができる。
これらの細胞は、DRibble産生を増強するのに十分な致死未満の条件下で、ツニカマイシンまたはグリコシル化を減少させる(ブレフェルディンAのような)他の作用物質と共に同時インキュベートしてよい。例えば、細胞は、5μg/mlのMG132もしくはALLM、または20nM〜1000nMのVelcade(登録商標)の存在下、5μg/mlのツニカマイシンと組み合わせて、37℃で6時間〜48時間、インキュベートすることができる。
腫瘍細胞によって産生されるDRibbleは、以下のようにして回収することができる。細胞および培養上清を収集し、かつ、低速遠心分離(250gで10分間)によって全細胞および大型細胞片を除去する。結果として生じる上清を、高速でさらに遠心分離(10,000gで15分間)して、DRibbleを沈殿させる。(DRibbleを含む)沈殿物を、PBS(20ml)中に再懸濁させ、かつ前述のように高速で沈殿させることによって、1度洗浄する。洗浄した沈殿物をPBS 300μl中に再懸濁し(DRibble 10μl=細胞100万個)、かつ液体窒素中で急速凍結させ、使用するまで少量ずつ-80℃で保存する。あるいは、実施例16で説明した超遠心分離法を使用することができる。
腫瘍由来のDRibbleは、1用量当たりDRibble 1mg〜1000mgの濃度で対象に直接投与することができる。対象には、DRibble組成物に対する対象の応答に応じて、複数回の投与を実施してよい。1つの例において、2週間毎、(少なくとも6ヶ月間または少なくとも12ヶ月間など)少なくとも3ヶ月の期間に渡って、対象にDRibbleを与える。別の例において、2週間毎に1ヶ月間、次いで、1ヶ月毎に少なくとも1年間、対象にDRibbleを与える。
DRibble組成物に加えて、他の治療物質を、DRibble投与の最中、前、または後の時点に対象に与えてよい。例えば、免疫賦活薬、(化学療法剤のような)抗腫瘍剤、またはそれらの組合せも、対象に投与してよい。
さらに別の例において、PD-1シグナル伝達を阻害する1種または複数種の作用物質(抗体またはsiRNA分子など)を、治療的有効量で対象に投与する(実施例14を参照されたい)。
実施例25 DRibbleを負荷されたAPCの投与による腫瘍の治療
本実施例では、対象の腫瘍を治療するために使用できる方法であって、エクスビボで産生した腫瘍細胞由来DRibbleを負荷されたAPCの投与を含む方法を説明する。
DRibbleは、実施例1、実施例15、または実施例16で説明した方法を用いて腫瘍細胞から産生し、かつ、エクスビボで樹状細胞に負荷するのに使用する。樹状細胞は、実施例22で説明したようにしてPBMCから得る。DC培養の6日目に、DCを回収し、DC培地中に1ml当たり細胞5×106個で再懸濁させ、かつ、10μg/ml〜50μg/mlのDRibbleと共に6時間インキュベートする。DRibbleと共にインキュベーションした後、DCをPBS中で2回洗浄し、25×106個の一定分量で凍結してよい。予想される収量は、2億個の抗原負荷DCである。
投与時、DRibbleを負荷されたDCを、必要な場合には37℃で急速解凍し、かつ、PBSで2回洗浄し、注射用生理食塩水2ml中に再懸濁する。DRibbleを負荷されたDC組成物は、DRibbleを負荷されたDC 20×106個の用量で、例えば、2箇所の離れた部位の皮下組織中にDC 10×106個の1ml注射剤2つ分として、対象に直接投与する。対象には、組成物に対する対象の応答に応じて、複数回の投与を実施してよい。1つの例において、2週毎、3ヶ月間に渡って、組成物を対象に投与する。
DRibbleを負荷されたDC組成物に加えて、他の治療物質を、DRibbleを負荷されたDC組成物の投与の最中、前、または後の時点に対象に与えてよい。例えば、免疫賦活薬(アジュバントのような)、抗腫瘍剤(化学療法剤のような)、またはそれらの組合せも、対象に投与してよい。
さらに別の例において、PD-1シグナル伝達を阻害する1種または複数種の作用物質(抗体またはsiRNA分子など)を、治療的有効量で対象に投与する(実施例14を参照されたい)。
実施例26 プロテアソーム阻害物質およびオートファジー誘導因子と接触させた腫瘍細胞の投与による腫瘍の治療
本実施例では、対象の腫瘍を治療するために使用できる方法であって、対象中に存在するのと同じタイプの腫瘍細胞を、プロテアソームを阻害する1種または複数種の作用物質、およびオートファジーを誘導する1種または複数種の作用物質と接触させる段階を含む方法を説明する。
腫瘍細胞を、プロテアソームを阻害する1種または複数種の作用物質、およびオートファジーを誘導する1種または複数種の作用物質の存在下でインキュベートする。腫瘍細胞は、対象中に存在するのと同じタイプのものである。例えば、対象が肺癌に罹患している場合、腫瘍細胞は同じタイプの肺癌である。いくつかの例において、腫瘍細胞は、対象、例えば生検材料から得られる。さらに別の例において、腫瘍細胞は、別の対象から得られる。腫瘍細胞を得る方法は、当技術分野において公知である。
1つの例において、腫瘍細胞を、プロテアソームを阻害する1種または複数種の作用物質、およびオートファジーを誘導する1種または複数種の作用物質の存在下で、エクスビボでインキュベートする。例えば、対象中に存在する腫瘍細胞と同じタイプを、プロテアソームを阻害する1種または複数種の作用物質、およびオートファジーを誘導する1種または複数種の作用物質の存在下で培養する。プロテアソームを阻害する1種または複数種の作用物質、およびプロテアソームを阻害する1種または複数種の作用物質と共のインキュベーションは、同時に、または順番に実施してよい。このような作用物質は、腫瘍細胞によるオートファジーおよびDRibble産生を刺激するか、または増強するのに十分な量で使用する。
腫瘍細胞は、標準的な組織培養法を用いて、細胞の生存能力を援助する条件下で培養する。特定の非限定的な例において、500万個〜2000万個の腫瘍細胞(例えば1000万個の細胞)を、20nM〜1000nMのVelcadeの存在下で少なくとも6時間インキュベートし、洗浄し、次いで、HBSS培地中で一晩インキュベートする(これにより、細胞は飢餓状態になる)。所望の場合は、(例えば、アリコート当たり細胞20×106個で)、使用する前に、処理された腫瘍細胞を凍結保存してよい。投与時に、処理された腫瘍細胞のDRibbleを負荷されたDCを、必要な場合には、37℃で急速解凍し、PBSで2回洗浄し、かつ、治療しようとする対象に注射するために生理食塩水2ml中に再懸濁させる。処理された腫瘍細胞(2000万個〜3億個、例えば500万個〜2000万個または2000万個〜2億個の細胞)を、(例えば、皮内注射もしくは皮下注射によって、またはポンプによって)対象に投与する。対象には、組成物に対する対象の応答に応じて、複数回の投与を実施してよい。1つの例において、2週間毎、(少なくとも6ヶ月または少なくとも12ヶ月など)少なくとも3ヶ月の期間に渡って、対象に組成物を与える。別の例において、2週間毎、次いで1ヶ月毎に1年間、対象に組成物を投与する。別の例において、毎週、例えば、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、または少なくとも12ヶ月間、組成物を対象に投与する。具体的な投薬量および投与計画は、熟練した臨床家が決定することができる。
処理された腫瘍細胞に加えて、腫瘍細胞投与の最中、前、または後の時点に、他の治療物質を対象に与えてよい。例えば、(アジュバントのような)免疫賦活薬、(化学療法剤のような)抗腫瘍剤、またはそれらの組合せも、対象に投与してよい。
実施例27 病原体感染細胞からのDRibbleの作製
本実施例では、病原体(または病原体抗原をコードするベクター)にエクスビボで感染させた細胞を処理して、DRibbleを作製するのに使用できる方法を説明する。本開示および他の公知の方法を用いて、具体的な病原体および細胞を本実施例において説明するが、当業者は、細胞および病原体の他の組合せをルーチンな方法によって使用できる。
ウイルス
1つの例において、腎臓細胞株293(ATCC)を、例えばアデノウイルスベクターの形態でアデノウイルスに感染させる。293T細胞は、37℃で4時間、M.O.I値10で、組換えアデノウイルスに感染させる。
別の例において、ヒトT細胞を、例えばHIVベクターの形態でHIVに感染させる。細胞(例えば、2×105個〜2×106個の細胞)を、37℃で少なくとも24時間のような、HIVによる細胞感染を可能にするのに十分な条件下で、少なくとも20、例えば、少なくとも50または少なくとも100の感染多重度(MOI)で感染させる。
細菌
別の例において、マクロファージを、結核菌(M. tuberculosis)のような細菌に感染させる。結核菌(H37Rv株(ATCC 27294)またはErdman株(ATCC 35801)など)を、細菌懸濁液を23ゲージの針に10回通過させ、かつその懸濁液を短時間、ボルテックス攪拌することによって、細菌108個/mlに調整する。懸濁液を15mlポリスチレンチューブ中で5分間静置し、かつ、上層5mlを取り出し、接種物として使用する。接種物は、チール・ネールゼン技術によって染色し、かつ光学顕微鏡によって観察して、分散された調製物が使用されていることを確認することができる。細菌の生存率は、LIVE-DEADアッセイ法(Molecular Probes, Eugene, OR)によって確認することができる。単球由来マクロファージは、ルーチンな方法を用いて、PBMCから得ることができる。例えば、Ficoll-Histopaque(Sigma Chemicals, St.Louis, MO)勾配を用いてヘパリン添加血から単離したPBMCを、20%自己血清を添加したRPMI 1640の存在下で、(例えば24ウェル組織培養皿中で)増殖させる。単球は、3日〜4日後に、成熟してマクロファージになる。マクロファージ単層(例えば、約5×105個の細胞)を、37℃で少なくとも1時間、10%自己血清を含むRPMI 1640中で、結核菌(細菌約5×105個〜5×106個/単層)と共にインキュベートする。単層を洗浄して、未結合の細胞外細菌を除去することができる。
真菌
別の例において、マクロファージを、ヒストプラスマ(Histoplasma)細胞のような真菌に感染させる。約102個〜105個の菌糸体粒子を、37℃で少なくとも12時間、例えば24時間のような、真菌による細胞感染を可能にするのに十分な条件下で、1×105個の細胞に曝露する。
原生動物
別の例において、ルーチンな方法を用いて、赤血球をマラリア原虫のような原生動物に感染させる(例えば、TragerおよびJensen, Science 193:673-5, 1976を参照されたい)。例えば、1%寄生虫血および2%赤血球の培養物を、37℃〜38℃、低酸素雰囲気(1%〜5%O2、3%〜7%CO2、N2でバランスをとる)で、18時間〜24時間のような、原生動物による赤血球感染を可能にするのに十分な条件下で、インキュベートする。所望の場合は、当技術分野において公知の標準的方法を用いて(例えば、5%ソルビトールまたは1.5μg/mlのアフィディコリンを用いて)、原生動物を同調させてよい。
DRibbleの産生
次いで、感染細胞をプロテアソーム阻害物質に曝露する。例えば、培養した感染細胞(例えば、約3000万個の細胞)をALLMもしくはMG132(5μg/ml)または20nM〜1000nMのVelcade(登録商標)で6時間〜48時間処理して、プロテアソームを介したタンパク質分解を妨害することができる。さらに、ツニカマイシン(例えば5μg/ml)またはタンパク質グリコシル化を減少させる他の作用物質を、感染細胞と共に同時インキュベートして、DRibble産生を増強してもよい。いくつかの例において、次いで、細胞を、(例えば、リソソーム機能を低下させる10mMのNH4Clの存在下での)HBSS培地中または10nM〜100nMのラパマイシン中でのインキュベーションのような、オートファジーを誘導する条件に、12時間〜24時間曝露する。
プロテアソーム阻害物質(および、いくつかの例において、オートファジー誘導因子)に細胞を曝露した後、例えば、実施例28で説明するように、DRibbleを産生する細胞を対象に投与して、病原体またはベクターにコードされた抗原ペプチドに対して対象を免疫刺激する。
いくつかの例において、DRibbleは、以下のようにして回収する。培養上清を収集し、かつ、低速遠心分離(250gで10分間)によって全細胞および大型細胞片を除去する。結果として生じる上清を、高速でさらに遠心分離(10,000gで15分間)して、DRibbleを沈殿させる。(DRibbleを含む)沈殿物を、PBS(20ml)中に再懸濁させ、かつ前述のように高速で沈殿させることによって、1度洗浄する。洗浄した沈殿物をPBS 300μl中に再懸濁し(DRibble 10μl=細胞100万個)、かつ液体窒素中で急速凍結させ、使用するまで少量ずつ-80℃で保存する。
結果として生じるDRibbleは、例えば、実施例28で説明するように、感染症を治療するために対象に投与するか、またはエクスビボでAPCを刺激するために使用することができ、かつ、DRibbleで刺激したAPCを対象に投与することができる。
実施例28 感染を治療するための免疫賦活剤の投与
本実施例では、実施例27で説明した免疫賦活剤(処理細胞、単離されたDRibble、またはDRibbleで刺激したAPC)を用いることによって、病原体に対する免疫応答を刺激する方法を説明する。DRibbleは、対象に直接投与することができるか、またはAPCに負荷するのに使用し、かつ負荷されたAPCを対象に投与することができる。このような方法は、将来の病原体感染症を予防するか、もしくはその重症度を軽減するために予防的に使用することができるか、または、病原体感染症に罹患している対象を治療するのに使用することができる。
1つの例において、病原体は、プロテアソーム阻害物質、オートファジー誘導因子、または両方と共にインキュベーションすることにより、DRibbleを産生する細胞(または、ペプチド抗原を発現する形質導入細胞)に感染した。例えば、少なくとも1000万個のこのような処理細胞(少なくとも2000万個または少なくとも5000万個など、例えば1000万個〜2億個または2000万個〜3億個の処理細胞)を、単独で、または薬学的に許容される担体もしくは抗微生物化合物(抗ウイルス剤もしくは抗菌剤など)のような治療物質の存在下で、対象に投与することができる。別の例において、アジュバントまたは他の免疫賦活薬の存在下で、処理細胞を投与する。例示的な非限定的投与様式には、皮下投与、皮内投与、静脈内投与、および腹腔内投与が含まれる。
1つの例において、DRibbleは、対象に直接投与する。例えば、1μg〜1,000μg(10μg、100μg、または1mgなど)のDRibbleを、単独で、または薬学的に許容される担体もしくは抗微生物化合物(抗ウイルス剤もしくは抗菌剤など)のような治療物質の存在下で、対象に投与することができる。別の例において、DRibbleは、アジュバントまたは他の免疫賦活薬の存在下で投与する。例示的な非限定的投与様式には、皮下投与、皮内投与、静脈内投与、および腹腔内投与が含まれる。
別の例において、DRibbleは、APCに負荷するのに使用し、これは、対象に投与された場合にインビボでナイーブT細胞を刺激する。本実施例はAPCとしてDCの使用を説明するが、当業者は、他のAPCを使用できることを理解すると考えられる。DCは、実施例22で説明したようにして、対象から得たPBMCから作製することができる。あるいは、実施例9または実施例10で一般的に説明したように、骨髄由来のDCを調製することもできる。
DRibbleを負荷された樹状細胞は、実施例22で説明したように調製する。手短に言えば、培地1ml当たり細胞200万個〜600万個で培養したDCを、10μl/ml〜100μl/mlのDRibbleと共に少なくとも6時間インキュベートする。
結果として生じるDRibbleを負荷されたAPCは、対象に投与する前に洗浄してよい。DRibbleを負荷されたAPCは、単独で、または薬学的に許容される担体の存在下で、対象に投与することができる。別の例において、アジュバントまたは他の免疫賦活薬の存在下で、DRibbleを負荷されたAPCを投与する。例示的な非限定的投与様式には、皮下投与、静脈内投与、皮内投与、および腹腔内投与が含まれる。1つの例において、DRibbleを負荷されたAPC 5×106個〜50×106個を、例えば1つまたは複数の単位用量で投与する。
実施例29 プロテアソーム阻害物質の投与による感染症の治療
本実施例では、対象(ヒト対象または動物対象など)の感染症を治療するために使用できる方法であって、治療的有効量の1種または複数種のプロテアソーム阻害物質、オートファジー誘導因子、または両方を対象に投与し、それによって、インビボでDRibbleを産生させ、かつ対象を治療する段階を含む方法を説明する。
感染症に罹患している対象に、Velcade(登録商標)のようなプロテアソーム阻害物質を、対象における病原体感染細胞によるDRibbleの産生を刺激するか、または増強するのに十分な量で投与する。特定の例において、プロテアソーム阻害物質は、感染細胞のアポトーシスを有意に引き起こさないが、その代わりにT細胞を介した免疫応答を可能にして感染症を治療する量で投与する。特定の例において、対象に、1mg/m2/投与以下のVelcade(登録商標)、例えば、0.1mg/m2/投与以下または0.01mg/m2/投与以下のVelcade(登録商標)を投与する。
プロテアソーム阻害物質に加えて、例えばプロテアソーム阻害物質の投与の前、最中、または後の時点に、他の治療物質を対象に投与してもよい。例えば、ツニカマイシンまたはタンパク質のグリコシル化を減少させる他の作用物質を、例えば、対象における感染細胞によるDRibbleの産生を増強するために、プロテアソーム阻害物質と組み合わせて(または、プロテアソーム阻害物質の投与のすぐ前もしくはすぐ後の時点に)致死未満量で投与することができる。別の例またはさらなる例において、サイトカインのような免疫賦活薬を、例えば、感染細胞由来のDRiPに対する免疫応答を増強するために、対象に投与する。特定の例において、アジュバントは、対象におけるDRibble形成の後に投与する。
さらに別の例において、オートファジーを誘導する1種または複数種の作用物質を対象に投与する。例えば、20mg/kgのCCI-779を静脈内輸注によって(例えば、1回または複数回、例えば1回〜5回で)投与することができる。さらに別の例において、これら他の治療物質の組合せを投与する。
開示される本発明の原理を適用することができる多くの考え得る態様に鑑みて、例示される態様は、本発明の例にすぎず、本発明の範囲を限定するものとしてみなすべきではないことが、認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって規定される。したがって、本発明者は、これらの特許請求の範囲の範囲および精神に収まるすべてを本発明者の発明として主張する。