以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1〜図19は本発明の実施の形態を示すものであり、図1はFM・CW型レーダー装置を用いた車両制御装置のブロック図、図2はレーダー装置の送受信手段および周波数分析手段の構成を示す図、図3は物体が接近しているときの送受信波の波形およびピーク周波数を示す図、図4はピーク周波数検出手段で検出されたピーク周波数を示す図、図5はTime1における作用説明図、図6はTime2における作用説明図、図7はTime3における作用説明図、図8はメインルーチンのフローチャート、図9はメインルーチンのステップS8のサブルーチンのフローチャート、図10はメインルーチンのステップS9のサブルーチンのフローチャート、図11はメインルーチンのステップS10のサブルーチンのフローチャート、図12はメインルーチンのステップS11のサブルーチンのフローチャート、図13はメインルーチンのステップS12のサブルーチンのフローチャート、図14はメインルーチンのステップS13のサブルーチンのフローチャート、図15はステップS8の作用の説明図、図16はステップS9の作用の説明図、図17はステップS9を実施した後の各メモリの状態を示す図、図18はステップS10の作用の説明図、図19は本発明の効果の説明図である。
図1および図2に示すように、FM・CW型レーダー装置Rは、送受信手段M1と、周波数分析手段M3と、今回アップビートメモリM4Aと、今回ダウンビートメモリM4B、アップグルーピング手段M5Aと、ダウングルーピング手段M5Bと、今回アップグループメモリM6Aと、今回ダウングループメモリM6Bと、前回アップグループメモリM7Aと、前回ダウングループメモリM7Bと、今回ペアリング確定手段M8と、今回検知メモリM9と、次回予測手段M10と、今回予測メモリM11と、フィードバック手段M12と、今回出力判定手段M13と、今回出力メモリM14とを備える。周波数分析手段M3には車速センサやヨーレートセンサよりなる車両状態判定手段M2が接続され、今回出力メモリM14には自動制動装置等の車両制御手段M15が接続される。
今回アップビートメモリM4A、今回ダウンビートメモリM4Bアップグルーピング手段M5A、ダウングルーピング手段M5B、今回アップグループメモリM6A、今回ダウングループメモリM6B、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bは、本発明のピーク周波数検出手段M16を構成し、今回出力メモリM14は本発明の物体情報出力手段を構成する。
次に、図2〜図4に基づいて、FM・CW型レーダー装置Rの送受信手段M1および周波数分析手段M3について説明する。
図2に示すように、送受信手段M1は、タイミング信号生成回路1、FM変調制御回路2、発振器3、アンプ4、サーキュレータ5および送受信アンテナ6で構成される。タイミング信号生成回路1から入力されるタイミング信号に基づいて、FM変調制御回路2により発振器3の発振作動が変調制御され、図3(A)に実線で示すように周波数が三角波状に変調され、発振器3からの変調された送波信号がアンプ4およびサーキュレータ5を介して送受信アンテナ6に入力され、送受信アンテナ6からFM・CW波が送信される。送受信アンテナ6の前方に先行車等の物体が存在すると、該物体で反射された反射波が送受信アンテナ6で受信される。この反射波は、例えば、前方の物体が接近してくる場合には、図3(A)に破線で示すように出現するものであり、送信波が直線的に増加する上昇側では送信波よりも低い周波数で送信波から遅れて出現し、また送信波が直線的に減少する下降側では送信波よりも高い周波数で送信波から遅れて出現する。
周波数分析手段M3は、ミキサ7、アンプ8、アンプ9およびA/Dコンバータ10で構成される。送受信アンテナ6で受信した受信波はサーキュレータ5を介してミキサ7に入力され、またミキサ7にはサーキュレータ5からの受信波の他に発振器3から出力される送波信号から分配された送波信号がアンプ8を介して入力される。ミキサ7では送信波および受信波が混合されることにより、図3(B)に示すように、送信波が直線的に増加する上昇側でピーク周波数fupが生成され、また送信波が直線的に減少する下降側でピーク周波数fdnを有するビート信号が生成される。前記ミキサ7で得られたビート信号はアンプ9で必要なレベルの振幅に増幅された後に、A/Dコンバータ10でA/D変換される。
一般的に、送受信手段M1が送信する複数のビームに対応して複数の上昇側ピーク周波数fupおよび複数の下降側ピーク周波数fdnが生成されるため、それらの上昇側ピーク周波数fupのうち、周波数および角度が相互に近いデータ同士をアップグルーピング手段M5Aでまとめたものを、新たに上昇側ピーク周波数fupとしてピーク周波数検出手段M16の今回アップグループメモリM6Aに記憶し(図4(A)参照)、それらの下降側ピーク周波数fdnのうち、周波数および角度が相互に近いデータ同士をダウングルーピング手段M5Bまとめたものを、新たに下降側ピーク周波数fdnとしてピーク周波数検出手段MM16の今回ダウングループメモリM6Bに記憶する(図4(B)参照)。
次に、図5〜図7に基づいて、従来の技術の問題点と、それを解決する本願発明の概略とを説明する。
図5に示すTime1において、時速80km/hで走行する自車の前方40mの位置を先行車Aが時速80km/hで走行し、自車の前方88mの位置を先行車Bが時速40km/hで走行している状況を想定する。このとき、自車および先行車Aの相対速は0km/hであって自車に対する先行車Aの位置は変化せず、自車および先行車Bの相対速は−40km/hであって自車は先行車Bに接近しつつある。
従来のロジックでは、自車および先行車Aは相対速が無いため、今回アップグループメモリM6Aに記憶された先行車Aの上昇側ピーク周波数fup=Aupと、今回ダウングループメモリM6Bに記憶された先行車Aの下降側ピーク周波数fdn=Adnとは一致する。一方、自車および先行車Bは−40km/hの相対速を有するため、今回アップグループメモリM6Aに記憶された先行車Bの上昇側ピーク周波数fup=Bupと、今回ダウングループメモリM6Bに記憶された先行車Bの下降側ピーク周波数fdn=Bdnとは一致しない。そしてTime1では、先行車Aについては上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Adnとが継続ペアリング(1) として正しくペアリングされており、先行車Bについては上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとが継続ペアリング(2) として正しくペアリングされている。
このTime1では、本発明のロジックは、上記従来のロジックと同じである。
図6に示すTime2は、Time1から1サイクルの時間が経過した状態に対応するものである。相対速が無い自車および先行車Aの位置関係は変化していないが、−40km/hの相対速を有する先行車Bは自車に接近するため、先行車Bの上昇側ピーク周波数Bupおよび下降側ピーク周波数Bdnは共に低い側にシフトし、先行車Bの上昇側ピーク周波数Bupは、先行車Aの上昇側ピーク周波数Aupよりも僅かに低くなる。
このように、先行車Bの上昇側ピーク周波数Bupと先行車Aの上昇側ピーク周波数Aupとの大小関係が逆転しても、その差は小さいため、継続ペアリング(1) として上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Adnとがミスペアリングされ、継続ペアリング(2) として上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Bdnとがミスペアリングされる。しかしながら、ミスペアリングによる相対速および距離の誤差は小さいため、この時点ではミスペアリングが発生したことは分からない。
このTime2では、本発明のロジックは、上記従来のロジックと同じである。
図7に示すTime3は、Time2から更に1サイクルの時間が経過した状態に対応するものである。相対速が無い自車および先行車Aの位置関係は変化していないが、−40km/hの相対速を有する先行車Bは更に自車に接近するため、先行車Bの上昇側ピーク周波数Bupおよび下降側ピーク周波数Bdnは共に更に低い側にシフトし、先行車Bの上昇側ピーク周波数Bupは、先行車Aの上昇側ピーク周波数Aupよりもかなり低くなる。
この場合には、上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Adnとのミスペアリングおよび上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Bdnとのミスペアリングは発生せず、上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Adnとの正しいペアリングおよび上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとの正しいペアリングが行われる。しかしながら、Time2の上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数BdnとのペアリングからTime3の上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとのペアリングへの引き継ぎができないため、Time2の上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Bdnとのペアリングは外挿処理となって依然として出力されてしまい、所定サイクルが経過して外挿処理が終了するまで間違ったターゲットデータによる制御が行われる。更に、上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとの正しいペアリングが新規のターゲットと見なされるため、次回に引き継がれてノイズでないことが確認されるまでターゲットデータとして出力されない。
このように、本来ならば、車速が低い先行車Bに対する車間距離を適正に保つべく、直ちに自車の減速制御を開始すべきところ、従来のロジックでは先行車Bが自車に更に接近してから自車の減速制御が開始されることになり、ギクシャクした減速が行われる可能性がある。
それに対して本発明のロジックでは、上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Adnとの正しいペアリングおよび上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとの正しいペアリングが行われるだけでなく、後述する「前回ペアリングフィードバック処理」により、前回(Time2)の間違ったペアリングを修正することにより、上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとのペアリングも正しく引き継ぎ処理されてターゲットデータとして出力される。その結果、車速の低い先行車Bに対する車間距離を適正に保つための自車の減速制御が速やかに開始され、スムーズな減速が行われる。
以下、上記Time3における本発明のロジックを中心に、図8〜図14のフローチャートおよび図15〜図18の説明図に基づいて詳細に説明する。
図8のメインルーチンのフローチャートのステップS1で車両状態判定手段M2により車速およびヨーレートを検知してレーダー装置Rの周波数分析手段M3に送信し、ステップS2で車速およびヨーレートに基づいて送受信手段M1から送信したアップビート信号が物体で反射したアップビート反射をFFT(高速フーリエ変換)処理し、その上昇側ピーク周波数および反射レベルをピーク周波数号検出手段M16の今回アップビートメモリM4Aに記憶する。続くステップS3でアップグルーピング手段M5Aにより今回アップビートメモリM4Aのピーク周波数と角度が近いデータ同士をまとめるグルーピングを行い、そのグルーピングの結果を今回アップグループメモリM6Aに記憶した後、ステップS4で今回アップグループメモリM6Aのピークデータの確定フラグをOFFにする。
同様に、ステップS5で送受信手段M1から送信したダウンビート信号が物体で反射したダウンビート反射をFFT(高速フーリエ変換)処理し、その下降側ピーク周波数および反射レベルを今回ダウンビートメモリM4Bに記憶する。続くステップS6でダウングルーピング手段M5Bにより今回ダウンビートメモリM4Bのピーク周波数と角度が近いデータ同士をまとめるグルーピングを行い、そのグルーピングの結果を今回ダウングループメモリM6Bに記憶した後、ステップS7で今回ダウングループメモリM6Bのピークデータの確定フラグをOFFにする。
続くステップS8でペアリングサブフローを実行し、ステップS9で今回ペアリング候補選定サブフローを実行し、ステップS10で前回ペアリングフィードバックサブフローを実行し、ステップS11で今回新規ペアリング確定サブフローを実行し、ステップS12で外挿処理サブフローを実行し、ステップS13で出力判定サブフローを実行する。ステップS8〜S13のサブフローの内容は、後から詳細に説明する。
続くステップS14で今回アップグループメモリM6Aのデータを前回アップグループメモリM7Aに移動するとともに、ステップS15で今回ダウングループメモリM6Bのデータを前回ダウングループメモリM7Bに移動した後、ステップS16で今回検知メモリM9のデータから次回予測データを算出して今回予測メモリM11に記憶する。そしてステップS17で今回出力メモリM14のデータを車両制御手段M15に出力し、車間距離制御や衝突被害軽減制御のための自動制動等を実行する。
次に、図9に基づいて前記ステップS8の「ペアリングサブフロー」の具体的内容を説明する。
先ずステップS21で今回アップグループメモリM6Aからアップビートピーク信号のピーク周波数および反射レベルを読み出し、ステップS22で今回ダウングループメモリM6Bから、前記アップビートピーク信号との角度差が±1.0°以内のダウンビートピーク信号のピーク周波数および反射レベルを読み出す。続くステップS23でアップビートピーク信号の反射レベルおよびダウンビートピーク信号の反射レベルの差が5dB以下であれば、それらが同一物体から反射波である可能性が高いと判断し、ステップS24で前記アップビートピーク信号および前記ダウンビートピーク信号をペアリングの対象とし、そのペアから距離候補および相対速候補を算出する。
続くステップS25で前記距離候補が2m以上で150m以下であり、かつステップS26で前記相対速候補が−55m/sec以上で55m/sec以下であれば、ステップS27で前記距離候補および相対速候補の両方のデータを今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bにそれぞれ追加する。
アップビートピーク信号の反射レベルおよびダウンビートピーク信号の反射レベルの差が5dB以下のものを選択するのは、反射レベルの差が5dBを超える場合には、それらが別物体から反射波である可能性が高いからである。距離候補が2m以上で150m以下のものを選択するのは、自車が物体に2m未満の距離に接近することはなく、また物体の距離がレーダー装置Rの検知可能距離(約100m)よりも大きい150mを超えることはないからである。相対速候補が−55m/sec以上で55m/sec以下のものを選択するのは、自車および物体の相対速の絶対値が55m/sec(約200km/h)を超えることはないからである。
そしてステップS28で角度差が±1.0°以内の全てのダウンビートピーク信号を呼び出すまで、前記ステップS22〜ステップS27を繰り返し、ステップS29で全てのアップビートピーク信号を呼び出すまで、前記ステップS21〜ステップS28を繰り返す。
図15は、ステップS8を実施した後の今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bの状態を示すもので、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのそれぞれには、ペアリング候補Aup−Adnのデータ(相対速=2km/h、距離=42m、確定フラグ=OFF)と、ペアリング候補Bup−Bdn(相対速=−38km/h、距離=62m、確定フラグ=OFF)と、ペアリング候補Aup−Bdnのデータ(相対速=−30km/h、距離=70m、確定フラグ=OFF)と、ペアリング候補Bup−Adn(相対速=−10km/h、距離=40m、確定フラグ=OFF)とが記憶されている。
次に、図10に基づいて前記ステップS9の「今回ペアリング候補選定サブフロー」の具体的内容を説明する。
先ずステップS41で今回予測メモリM11から今回予測ターゲット情報を読み出す。図1から明らかなように、今回検知メモリM9に記憶されている今回ターゲット情報(つまり、現在正しいターゲットとして認識されているターゲットの情報)を、次回予測手段M10が1サイクル後の次回予測ターゲット情報に変換し、その次回予測ターゲット情報が今回予測メモリM11に記憶されている。今回ターゲット情報から次回予測ターゲット情報への変換は、今回の自車に対する先行車Aあるいは先行車Bの相対速が維持されていると仮定した場合に、今回の自車に対する先行車Aあるいは先行車Bの距離が、次回(1サイクル後)にどのように変化するかを算出することで行われる。
続くステップS42で今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bの確定フラグ=OFFのピークデータのうちに、前記ステップS41で今回予測メモリM11から読み出した今回予測ターゲット情報に引き継ぎ可能なもの(相対速および距離の誤差が所定範囲内のもの)が存在するか否かを判断し、存在すればステップS43で今回ペアリング確定手段M8(図1参照)により前記引き継ぎ可能なものを今回ペアリングとして確定し、その距離候補および相対速候補を算出して今回検知メモリM9(図1参照)に記憶する。
続くステップS44で今回予測メモリM11のターゲット情報に含まれる引き継ぎカウンタを1インクリメントし、それを今回検知メモリM9の今回検知データに記憶し、ステップS45で今回ペアリングとして確定した、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのピークデータの確定フラグをONし、そしてステップS46で今回データに引き継いだ今回予測ターゲット情報を今回予測メモリM11から削除するとともに、その組み合わせを構成する前回アップグループメモリM7Aと前回ダウングループメモリM7Bのピークデータの距離候補および相対速候補を削除する。
一方、前記ステップS42で今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bの確定フラグ=OFFのピークデータのうちに、前記ステップS41で今回予測メモリM11から読み出した今回予測ターゲット情報に引き継ぎ可能なものが存在しなければ、ステップS47でフィードバック手段M12(図1参照)が引き継ぎ候補の無い今回予測ターゲットのペアリング組み合わせを構成する前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7B(図1参照)のピークデータの確定フラグをOFFする。前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのピークデータは、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのピークデータを、1サイクルが経過した後に移動したものである。そしてステップS48でフィードバック手段M12が引き継ぎ候補の無い今回予測ターゲットのペアリング組み合わせを構成する前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのピークデータの距離候補および相対速候補を削除する。
そしてステップS49で全ての今回予測メモリM11のターゲット情報を読み出すまで、前記ステップS41〜ステップS48を繰り返す。
図16は、ステップS9の作用を示すもので、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのデータは、前回(Time2)の今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのデータを、今回(Time3)に備えて予め移動したものである。前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのデータのうち、実際に出力されているものは、ペアリング候補Aup′−Bdn′のデータ(相対速=−35km/h、距離=78m、確定フラグ=ON)と、ペアリング候補Bup′−Adn′(相対速=−2km/h、距離=38m、確定フラグ=ON)とであり、それらは共にTime2でミスペアリングされたものである。
今回予測メモリM11に記憶されているデータは、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのうちで、実際に出力されているペアリング候補Aup′−Bdn′のデータ(相対速=−35km/h、距離=78m、確定フラグ=ON)と、ペアリング候補Bup′−Adn′(相対速=−2km/h、距離=38m、確定フラグ=ON)とから、今回のデータを予測したものである。具体的には、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのペアリング候補Aup′−Bdn′のデータ(相対速=−35km/h、距離=78m)から予測された継続ペアリング(2) のデータ(相対速=−35km/h、距離=70m)であり、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのペアリング候補Bup′−Adn′のデータ(相対速=−2km/h、距離=38m)から予測された継続ペアリング(1) のデータ(相対速=−2km/h、距離=37m)である。
前記ステップS42では、今回予測メモリM11のデータが今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのデータに引き継がれているか否かを判断しており、今回予測メモリM11の継続ペアリング(1) のデータ(相対速=−2km/h、距離=37m)のデータが、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのペアリング候補Aup−Adnのデータ(相対速=−2km/h、距離=42m)に引き継がれている(ステップS42でYES)。一方、今回予測メモリM11の継続ペアリング(2) のデータ(相対速=−35km/h、距離=70m)は、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bの何れのペアリング候補にも引き継がれていない(ステップS42でNO)。
図17は、ステップS9の実施後の各メモリの状態を示すもので、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのデータについては、引き継ぎ先の無い今回予測データ(今回予測メモリM11の継続ペアリング(2) )に対応するペアリング候補Aup′−Bdn′のデータ(相対速=−35km/h、距離=78m)の確定フラグをONからOFFに変更され(ステップS47参照)、かつ今回予測メモリM11の引き継ぎ先の無い継続ペアリング(2) に対応するペアリング候補Aup′−Bdn′の相対速候補および距離候補のデータ(相対速=−35km/h、距離=78m、確定フラグON)が削除される(ステップS48参照)。
今回予測メモリM11については、継続ペアリング(1) のデータが今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのペアリング候補Aup−Adnのデータ(相対速=2km/h、距離=42m)に引き継がれているため、その継続ペアリング(1) のデータが今回予測メモリM11から削除される(ステップS46参照)。
今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bについては、今回予測メモリM11の継続ペアリング(1) が引き継がれたペアリング候補Aup−Adnの組み合わせが確定するため、その確定フラグがOFFからONに変更される(ステップS45参照)。またペアリング候補Aup−Adnのデータの組み合わせの確定に伴ってペアリング候補Aup−Bdnの組み合わせ存在しないことが確定するため、その確定フラグがOFFからONに変更される(ステップS45参照)。
今回検知メモリM9については、組み合わせが確定したペアリング候補Aup−Adnのデータに対応する継続ペアリング候補(1) のデータが記憶され(ステップS43参照)、その際に今回予測メモリM11のデータの含まれる引き継ぎカウンタが「40」から「41」にインクリメントされる(ステップS44参照)。
次に、図11に基づいて前記ステップS10の「前回ペアリングフィードバックサブフロー」の具体的内容を説明する。
先ずステップS61で前回アップグループメモリM7Aの確定フラグ=OFFのピークデータ、つまりペアリング候補Bup′−Bdn′のデータを読み出し(図17の前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7B参照)、ステップS62でその距離候補および相対速候補から今回予測データを算出する。続くステップS63で今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bに、引き継ぎ可能な距離候補および相対速候補を持つ確定フラグ=OFFのピークデータが存在するか否かを判定し、存在すればステップS64で今回ペアリングとして確定し、距離候補および相対速候補を算出して今回検知メモリM9に記憶する。そしてステップS65で今回アップグループメモリM6Aと今回ダウングループメモリM6Bの確定フラグをOFFからONに変更するとともに、ステップS66で今回データに引き継いだペアリング組み合わせの前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのピークデータの確定フラグをOFFからONに変更する。
続くステップS67で今回データに引き継いだペアリング組み合わせの今回アップグループメモリM6Aのピークデータから生成したターゲット情報が今回予測メモリM11に存在するか否かを判定し、存在すればステップS68で今回データに引き継いだペアリング組み合わせの前回アップグループメモリM7Aのピークデータから生成した今回予測メモリM11のターゲット情報を削除する。前記ステップS63がNOである場合には、ステップS69で全ての距離候補および相対速候補を読み出すまで前記ステップS62およびステップS63を繰り返す。そしてステップS70で全ての前回アップグループメモリM7Aの確定フラグ=OFFのピークデータを読み出すまで、前記ステップS61〜ステップS69を繰り返す。
図18は、ステップS10の実施後の各メモリの状態を示すもので、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bについては、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bの確定フラグ=OFFのデータ(図17の前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7B参照)であるペアリング候補Bup′−Bdn′のデータ(相対速=−40km/h、距離=62m)から生成した今回予測データが、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのペアリング候補Bup−Bdnのデータ(相対速=−38km/h、距離=62m)に引き継がれたことで、ペアリング候補Bup−Bdnの組み合わせが確定して今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのペアリング候補Bup−Bdnのデータの確定フラグがOFFからONに変更される(ステップS65参照)。ペアリング候補Bup−Bdnのデータの確定に伴い、ペアリング候補Bup−Adnの組み合わせが存在しないことが確定するため、ペアリング候補Bup−Adnの確定フラグがOFFからONに変更される(ステップS65参照)。
前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bについては、そのペアリング候補Bup′−Bdn′のデータ(相対速=−40km/h、距離=62m)から生成した今回予測データが今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのペアリング候補Bup−Bdnのデータに引き継がれたことで、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのペアリング候補Bup′−Bdn′のデータ確定フラグがOFFからONに変更される(ステップS66参照)。
今回予測メモリM11については、今回データに引き継いだペアリング組み合わせの前回アップグループメモリM7Aのピークデータから生成したターゲット情報が今回予測メモリM11に有ることから、今回予測メモリM11のターゲット情報は削除される(ステップS68参照)。
今回検知メモリM9については、今回ペアリングとして確定した今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのピークデータ(ペアリング候補Bup−Bdn)が有ることから、そのピークデータが継続ペアリング(2) として今回検知メモリM9に記憶される(ステップS64参照)。
次に、図12に基づいて前記ステップS11の「今回新規ペアリング確定サブフロー」の具体的内容を説明する。
先ずステップS81で今回アップグループメモリM6Aの確定フラグ=OFFのピークデータを読み出し、ステップS82でペアリング対象となる確定フラグ=OFFの今回ダウングループメモリM6Bのピークデータが有る場合には、ステップS83で反射レベル差が一番少ない今回ダウングループメモリM6Bのピークデータを、今回ペアリング確定手段M8(図1参照)が今回ペアリングとして確定し、距離候補および相対速候補を算出して今回検知メモリM9に記憶する。続くステップS84で今回ペアリングが確定した今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのピークデータの確定フラグをOFFからONに変更し、ステップS85で全ての今回アップグループメモリM6Aの確定フラグ=OFFのピークデータを読み出すまで、前記ステップS81〜ステップS84を繰り返す。
本実施の形態では、今回アップグループメモリM6Aの確定フラグ=OFFのデータが存在しないため、ステップS11の処理は行われない。
次に、図13に基づいて前記ステップS12の「外挿処理サブフロー」の具体的内容を説明する。
先ずステップS101で今回予測メモリM11のターゲット情報を読み出し、ステップS102で引き継ぎフラグ≧1であって今回初めて検知された新規ターゲットでなく、かつステップS103で外挿フラグ≦5で外挿回数が5回以下であれば、ステップS104で今回検知メモリM9に今回検知データとして記憶し、ステップS105で外挿カウンタを1インクリメントし、今回検知メモリM9の今回検知データに記憶する。そしてステップS106で全ての今回予測メモリM11のターゲット情報を読み出すまで、前記ステップS101〜ステップS105を繰り返す。
本実施の形態では、今回予測メモリM11にはターゲット情報が無いため、ステップS12の処理は行われない。
次に、図14に基づいて前記ステップS13の「出力判定サブフロー」の具体的内容を説明する。
先ずステップS121で今回検知メモリM9のターゲット情報を読み出し、ステップS122で引き継ぎフラグ≧1であって今回初めて検知された新規ターゲットでなければ、ステップS123で今回出力判定手段M13(図1参照)がターゲット情報を今回出力メモリM14に記憶する。そしてステップS124で全ての今回検知メモリM9のターゲット情報を読み出すまで、前記ステップS121〜ステップS123を繰り返す。
本実施の形態では、今回ペアリングが確定したターゲットは共に引き継ぎされたターゲットであるために出力対象となり、今回出力メモリM14に記憶される。
このようにステップS8〜ステップS13のサブルーチンが実行されると、図8のメインルーチンのフローチャートに戻り、次回の準備処理として既に説明したステップS14〜ステップS16が実行され、最後にステップS17で今回出力メモリM14のターゲットデータが車両制御手段M15の制御ECUに出力される。
以上のように、図6に示すTime2でミスペアリングが発生した後、図7に示すTime3でミスペアリングが解消し、上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Adnとの正しいペアリングおよび上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとの正しいペアリングが行われても、従来はTime2の上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数BdnとのペアリングからTime3の上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとのペアリングへの引き継ぎができないため、Time2の上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Bdnとのペアリングは外挿処理となって出力され、所定サイクルが経過して外挿処理が終了するまで間違ったターゲットデータによる制御が行われ、また上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとの正しいペアリングが新規のターゲットと見なされるため、次回に引き継がれてノイズでないことが確認されるまでターゲットデータとして出力されない問題があった。
それに対し、本実施の形態では、ステップS10の「前回ペアリングフィードバック処理」により前回のミスペアリングを修正するため、上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Bdnとのミスペアリングが外挿処理となって出力されることが防止され、かつ上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとの正しいペアリングが新規ターゲットになって保留されることなく即座に出力されるため、従来に比べて制御の応答性が向上する。よって、図7に示すような状況でも、自車に接近する先行車Bに対する減速制御を遅滞なく開始することが可能となり、図19に示すようにぎくしゃくした減速が回避されて快適性が向上する。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施の形態では前回相対関係から今回相対関係を予測し、前回相対関係と予測した今回相対関係とを比較して同一の物体に基づくものか否かを判定しているが、対象物との相対速がほぼ等しい場合には前記予測処理を省略し、前回相対速と今回相対速とを直接比較して同一の物体に基づくものか否かを判定することができる。