第1発明に係るレーザ加工装置によれば、加工対象面に対してレーザ光を照射して、所望の加工パターンに加工可能なレーザ加工装置であって、レーザ光を発生させるためのレーザ発振部と、前記レーザ発振部より出射されるレーザ光を作業領域内において走査させるためのレーザ光走査部として、前記レーザ発振部から照射されるレーザ光の光軸方向の焦点位置を調整可能なZ軸スキャナと、前記Z軸スキャナを透過するレーザ光を、X軸方向に走査させるためのX軸スキャナ及びY軸方向に走査させるためのY軸スキャナと、を備えるレーザ光走査部と、前記レーザ発振部および前記レーザ光走査部を制御するためのレーザ駆動制御部と、所望の加工パターンに加工する加工条件として、レーザ光出力条件と、XY座標平面上での加工パターンと、その3次元形状を設定するための加工条件設定部と、前記加工条件設定部で設定された加工パターンのXY座標位置と、該XY座標を加工パターンの3次元形状に対して鉛直方向に投影したZ座標位置との対応関係を関連付けて記憶するための対応関係記憶部と、前記加工条件設定部で設定された加工パターンを構成する空間座標において、前記レーザ光走査部のX軸方向及び/又はY軸方向への移動量に対するZ軸方向の相対的な移動量の比率に応じて、加工対象面における加工量を一定値に近付けるように、前記加工条件設定部で設定された加工条件を自動的に補正するための加工量補正手段と、を備え、前記加工条件設定部が、3次元形状の設定を行うための加工パターンを加工対象面に正射影で貼り付けるための3次元形状データ入力手段と、基本図形を平面状に展開した展開図に加工パターンを貼り付ける基本図形指定手段とを備えており、前記対応関係記憶部が、前記3次元形状データ入力手段により入力された3次元形状に対して、加工パターンのXY座標を鉛直方向に投影したものと、対応するXY座標との対応関係を関連付けて記憶するものであり、前記加工量補正手段が、XY座標平面上を前記X軸スキャナ及び/又はY軸スキャナで走査する際の移動制御の基本となる、予め設定された基本移動単位に基づいて、前記加工条件設定部で設定された加工パターンの各XY座標データを、前記X軸スキャナ及び/又はY軸スキャナによる加工順序に従って分解し、分解された各基本移動単位におけるZ座標の移動量を算出し、前記レーザ駆動制御部が、前記算出されたZ座標の移動量に応じて、該Z座標に対応するXY座標上の基本移動単位区間における前記X軸スキャナ及び/又はY軸スキャナの走査速度を調整するように、前記対応関係記憶部に記憶された各XY座標データに基いて前記X軸スキャナ及び/又はY軸スキャナを制御すると共に、前記対応関係記憶部に記憶された各XY座標データに対応する各Z座標データを読み出し、読み出されたZ座標データの位置に焦点が合うように前記Z軸スキャナを制御することができる。これにより、レーザ光走査部が加工対象面上を走査する際、Z軸スキャナのZ方向への移動量に応じて、加工量補正手段で補正された補正加工条件でレーザ光走査部を駆動するよう、レーザ駆動制御部で制御できる。この結果、Z軸方向への移動量の大小によらず、加工量が一定となるように補正加工条件を自動演算して補正するため、高低差のある加工対象面であっても加工品質を均質に維持できる。また、Z座標の移動量が大きいXY座標上の基本移動単位区間のX・Y軸スキャナの走査速度が、変化量が小さい区間のXY座標上の基本移動単位区間のX・Y軸スキャナの走査速度よりも遅くなるように、これらX・Y軸スキャナの走査を制御することができ、またこのようなX・Y軸スキャナの制御によって、各XY座標データに対応するZ座標データの位置に焦点を合わせるZ軸スキャナの応答速度を一致させることができる結果、Z座標の移動量に拘わらずZ軸スキャナをX・Y軸スキャナと同じタイミングで所定位置に移動させることができ、一定の加工結果を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのレーザ加工装置、レーザ加工方法を例示するものであって、本発明はレーザ加工装置、レーザ加工方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
本明細書においてレーザ加工装置とこれに接続される操作、制御、入出力、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232x、RS−422、RS−423、RS−485、USB、PS2等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x、OFDM方式等の無線LANやBluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらに加工パターンのデータ保存や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。
以下の実施の形態では、本発明を具現化したレーザ加工装置の一例として、レーザマーカについて説明する。ただ、本明細書においてレーザ加工装置は、その名称に拘わらずレーザ応用機器一般に利用でき、例えばレーザ発振器や各種のレーザ加工装置、穴あけ、マーキング、トリミング、スクライビング、表面処理等のレーザ加工や、レーザ光源として他のレーザ応用分野、例えばDVDやBlu−ray(登録商標)等の光ディスクの高密度記録再生用光源や通信用の光源、印刷機器、照明用光源、ディスプレイ等の表示装置用の光源、医療機器等において、好適に利用できる。
また、本明細書においては加工の代表例として印字について説明するが、上述の通り印字加工に限られず、溶融や剥離、表面酸化、切削、変色等のレーザ光を使ったあらゆる加工処理においても利用できる。また印字とは文字や記号、図形等のマーキングの他、上述した各種の加工も含む概念で使用する。さらに本明細書において加工パターンは、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットや数字、記号、絵文字、アイコン、ロゴ、バーコードや2次元コード等のグラフィック等、さらに直線、曲線等の図形も含める意味で使用する。特に本明細書において文字又はシンボルで指す文字とは、OCR等、光学式の読み取り装置で読み取り可能なキャラクターを意味し、アルファベットや漢字、ひらがな、カタカナの他、数字や記号も含む概念である。またシンボルとは、バーコードや2次元コードを意味する。
図1はレーザ加工装置100を構成するブロック図を示す。この図に示すレーザ加工装置100は、レーザ制御部1とレーザ出力部2と入力部3とを備える。
(入力部3)
入力部3はレーザ制御部1に接続され、レーザ加工装置を操作するための必要な設定を入力してレーザ制御部1に送信する。設定内容はレーザ加工装置の動作条件や具体的な印字内容等である。入力部3はキーボードやマウス、コンソール等の入力デバイスである。また、入力部3で入力された入力情報を確認したり、レーザ制御部1の状態等を表示する表示部82を別途設けることもできる。表示部82はLCDやブラウン管等のモニタが利用できる。またタッチパネル方式を利用すれば、入力部と表示部を兼用することもできる。これによって、コンピュータ等を外部接続することなく入力部でレーザ加工装置の必要な設定を行うことができる。またこの入力部3は、所望の加工パターンに加工する加工条件として、レーザ光出力条件と加工パターンを設定するための加工条件設定部としても機能する。
(レーザ制御部1)
レーザ制御部1は、レーザ駆動制御部4とメモリ部5とレーザ励起部6と電源7とを備える。メモリ部5は入力部3から入力された各種設定内容を保持する。レーザ駆動制御部4はレーザ発振部50およびレーザ光走査部9を制御する。具体的には、必要時にメモリ部5から設定内容を読み込み、印字内容に応じた印字信号に基づいてレーザ励起部6を動作させてレーザ出力部2のレーザ媒質8を励起する。メモリ部5はRAMやROM等の半導体メモリが利用できる。またメモリ部5はレーザ制御部1に内蔵する他、挿抜可能なPCカードやSDカード等の半導体メモリカード、カード型ハードディスク等のメモリカードを利用することもできる。メモリカードで構成されるメモリ部5は、コンピュータ等の外部機器で容易に書き換え可能であり、コンピュータで設定した内容をメモリカードに書き込み、レーザ制御部1にセットすることで、入力部をレーザ制御部に接続することなく設定を行うことができる。特に半導体メモリはデータの読み込み・書き込みが高速で、しかも機械的動作部分がないため振動等に強く、ハードディスクのようなクラッシュによるデータ消失事故を防止できる。
メモリ部5は設定情報やフォントデータを記憶する。設定情報は印字する文字やマークの種類、大きさ、印字位置、印字方向等の情報を含む。入力部3やレーザ加工データ設定装置180、コンピュータその他の外部機器190からコントローラ1Aに与えられた設定情報は、一旦メモリ部5に記憶される。コントローラ1Aのレーザ駆動制御部4は電源起動時又は設定変更時に、設定情報を読み出して展開情報を生成する。つまり、印字内容に関する設定情報とフォントデータからレーザ光がたどるべき軌跡を規定する線分データ及びレーザ制御データからなる展開情報を生成する。生成された展開情報は、印字実行指令(トリガ信号)に従って、コントローラ1Aからマーキングヘッド150(図10等)に転送される。マーキングヘッド150では、受信した展開情報に含まれる線分データに基づいてガルバノミラーが制御されると共に、レーザ制御データに基づいてレーザのON/OFF制御が行われる。こうして、加工対象物の表面にレーザ光で印字加工が行われる。
図1の例では、メモリ部5は設定情報用メモリ5a、基本文字線分情報用メモリ5b、展開情報用メモリ5cを含む。設定情報用メモリ5aは、バッテリバックアップされたSRAM又はEEPROMのような不揮発性メモリで構成され、電源OFF時にも記憶内容を保持することができる。設定情報用メモリ5aに記憶される設定情報は、印字する文字又はマークの種類、大きさ、位置、方向等の印字内容の情報を含む。また基本文字線分情報用メモリ5bもバッテリバックアップされたSRAM又はEEPROMのような不揮発性メモリで構成される。基本文字線分情報用メモリ5bには、印字に使用される各種文字やマーク等の基本文字や基本線分の情報(基本文字線分情報)が記憶されている。この基本文字線分情報を印字内容の共通データとして管理することにより、各設定情報の情報量を少なくすることができる。したがって、設定情報から展開情報を生成するときに、基本文字線分情報用メモリ5bに記憶された基本文字線分情報が参照される。さらに展開情報用メモリ5cには、電源OFF時に記憶内容が消えるが低コストで多くの情報を記憶できるDRAM等の揮発性メモリが使用されている。設定情報及び基本文字線分情報から生成された展開情報が一時的に展開情報用メモリ5cに記憶され、印字の際に参照される。展開情報は、印字加工のためにレーザ光がたどるべき軌跡を規定する線分データとレーザのON/OFF制御のためのレーザ制御データを含む複数ビットからなる時系列のデータである。
さらにこのメモリ部5は、加工条件設定部で設定された加工パターンの3次元形状に関して、XY座標位置とZ座標位置との対応関係を関連付けて記憶するための対応関係記憶部としても機能する。ここでは設定情報用メモリ5aが、対応関係記憶部に相当する。
さらにレーザ駆動制御部4は、設定された印字を行うようレーザ媒質8で発振されたレーザ光Lを印字対象物(ワーク)WK上で走査させるため、レーザ出力部2のレーザ光走査部9を動作させる走査信号をレーザ光走査部9に出力する。電源7は、定電圧電源として、レーザ励起部6へ所定電圧を印加する。印字動作を制御する印字信号は、そのHIGH/LOWに応じてレーザ光LのON/OFFが切り替えられ、その1パルスが発振されるレーザ光Lの1パルスに対応するPWM信号である。PWM信号は、その周波数に応じたデューティ比に基づいてレーザ強度が定められるが、周波数に基づいた走査速度によってもレーザ強度が変化するよう構成することもできる。
またレーザ駆動制御部4は、加工条件設定部で設定された加工パターンを構成する空間座標において、レーザ光走査部のX軸方向及び/又はY軸方向への移動量に対するZ軸方向の相対的な移動量の比率に応じて、加工対象面における加工量を一定値に近付けるように、加工条件設定部で設定された加工条件を自動的に補正するための加工量補正手段として機能させることもできる。
(レーザ励起部6)
レーザ励起部6は、光学的に接合されたレーザ励起光源10とレーザ励起光源集光部11を備える。レーザ励起部6の内部の一例を図2の斜視図に示す。この図に示すレーザ励起部6は、レーザ励起光源10とレーザ励起光源集光部11をレーザ励起部ケーシング12内に固定している。レーザ励起部ケーシング12は、熱伝導性の良い銅等の金属で構成され、レーザ励起光源10を効率よく外部に放熱する。レーザ励起光源10は半導体レーザ(Laser Diode:LD)や励起ランプ等で構成される。図2の例では、複数の半導体レーザダイオード素子を直線状に並べたレーザダイオードアレイを使用しており、各素子からのレーザ発振がライン状に出力される。レーザ発振はレーザ励起光源集光部11の入射面に入射されて、出射面から集光されたレーザ励起光として出力される。レーザ励起光源集光部11はフォーカシングレンズ等で構成される。レーザ励起光源集光部11からのレーザ励起光は光ファイバケーブル13等によりレーザ出力部2のレーザ媒質8に入射される。レーザ励起光源10とレーザ励起光源集光部11、光ファイバケーブル13は、空間あるいは光ファイバを介して光学的に結合されている。
(レーザ出力部2)
レーザ出力部2は、レーザ発振部50を備える。レーザ光Lを発生させるレーザ発振部50は、レーザ媒質8と、レーザ媒質8が放出する誘導放出光の光路に沿って所定の距離を隔てて対向配置された出力ミラー及び全反射ミラーと、これらの間に配されたアパーチャ、Qスイッチ19等を備える。Qスイッチ19はレーザ媒質8から出射されるレーザの光軸上に位置するよう一方の端面に面して配設されている。Qスイッチ19を用いることで連続発振を尖頭出力値(ピーク値)の高い高速繰返しパルス発振に変えることが可能となる。またQスイッチ19には、これに印加するRF信号を生成するQスイッチ制御回路が接続されている。このレーザ発振部50は、レーザ媒質8が放出する誘導放出光を、出力ミラーと全反射ミラーとの間での多重反射により増幅し、Qスイッチ19の動作により短周期にて通断しつつアパーチャによりモード選別して、出力ミラーを経てレーザ光Lを出力する。レーザ媒質8は光ファイバケーブル13を介してレーザ励起部6から入射されるレーザ励起光で励起されて、レーザ発振される。レーザ媒質8はロッド状の一方の端面からレーザ励起光を入力して励起され、他方の端面からレーザ光Lを出射する、いわゆるエンドポンピングによる励起方式を採用している。
(レーザ媒質8)
上記の例では、レーザ媒質8としてロッド状のNd:YVO4結晶を用いた。また固体レーザ媒質の励起用半導体レーザの波長は、このNd:YVO4の吸収スペクトルの中心波長である808nmに設定した。ただ、この例に限られず他の固体レーザ媒質として、例えば希土類をドープしたYAG、LiSrF、LiCaF、YLF、NAB、KNP、LNP、NYAB、NPP、GGG等も用いることもできる。また、固体レーザ媒質に波長変換素子を組み合わせて、出力されるレーザ光Lの波長を任意の波長に変換できる。また、固体レーザ媒質としてバルクに代わってファイバーを発振器として利用した、いわゆるファイバーレーザにも適用可能である。さらに、固体レーザ媒質を使用せず、言い換えるとレーザ光を発振させる共振器を構成せず、波長変換のみを行う波長変換素子を使用することもできる。この場合は、半導体レーザの出力光に対して波長変換を行う。
波長変換素子としては、例えばKTP(KTiPO4)、有機非線形光学材料や他の無機非線形光学材料、例えばKN(KNbO3)、KAP(KAsPO4)、BBO(β−BaB2O4)、LBO(LiB3O5)や、バルク型の分極反転素子(LiNbO3(Periodically Polled Lithium Niobate :PPLN)、LiTaO3等)が利用できる。また、Ho、Er、Tm、Sm、Nd等の希土類をドープしたフッ化物ファイバを用いたアップコンバージョンによるレーザの励起光源用半導体レーザを用いることもできる。このように、本実施の形態においてはレーザ発生源として様々なタイプを適宜利用できる。
さらにまた、レーザ発振部50は、固体レーザに限られず、CO2やヘリウム−ネオン、アルゴン、窒素等の気体を媒質として用いる気体レーザを利用することもできる。例えば炭酸ガスレーザを用いた場合のレーザ発振部は、レーザ発振部の内部に炭酸ガス(CO2)が充填され、電極を内蔵しており、レーザ制御部から与えられる印字信号に基づいて、レーザ発振部内の炭酸ガスを励起し、レーザ発振させる。
(2方向励起方式)
固体レーザ媒質を励起する構成としては、固体レーザ媒質を励起する励起光を一方の端面のみから入射して励起させ、他方の端面からレーザ光を出射する、いわゆるエンドポンピングによる1方向励起方式が利用できる。また、固体レーザ媒質の前後の端面から各々励起光を照射する2方向励起方式も採用できる。2方向励起においては、各端面に励起光源であるLDを各々配置する構成の他、単一のLDからの励起光を光ファイバ等で分岐して、固体レーザ媒質の両端面からポンピングする構成等が利用できる。
特に固体レーザ媒質を励起するレーザ加工装置では、量子効率の限界から、励起パワーのうち3割〜4割が熱となり失われてしまう。そのため極限的な性能を発揮させるためには、強励起により顕在化する熱複屈折や熱レンズ、熱複レンズ、更には熱による破壊等の様々な熱問題を解決する必要がある。特にLD励起固体レーザ加工装置においては、固体レーザ媒質の励起光吸収に伴う発熱が結晶そのものにレンズ効果を誘起し、熱レンズを生じさせる。熱レンズはレーザ共振器の安定性を著しく阻害し、共振器の設計の大きな障害となる。2方向励起方式を採用することで、このような問題を軽減できる。また2方向励起方式においては、レーザ励起部として一の励起光源を使用し、これを分岐して各端面から投入する構成とすることで、熱レンズ等の発生を抑制することもできる。加えて、励起波長に対する安定性や立ち上がり特性の改善の効果も得られる。
(レーザ光走査部9)
レーザ発振部50で得られたレーザ発振は、レーザ光走査部9により走査される。レーザ光走査部9を図3〜図5に示す。これらの図において、図3はレーザ加工装置のレーザ光走査部9の構成を示す斜視図を、図4は図3を逆方向から見た斜視図を、図5は側面図を、それぞれ示している。これらの図に示すレーザ加工装置は、レーザ光Lを発生させるレーザ発振部50と光路を一致させたZ軸スキャナを内蔵するビームエキスパンダ53と、X軸スキャナ14aと、X軸スキャナ14aと直交するよう配置されたY軸スキャナ14bとを備える。このレーザ光走査部9は、レーザ発振部50より出射されるレーザ光LをX軸スキャナ14a、Y軸スキャナ14bで作業領域WS内で2次元的に走査させ、さらにZ軸スキャナ14cで高さ方向にワーキングディスタンスすなわち焦点距離を調整することができ、3次元状に印字加工が可能となる。なお、X軸スキャナ、Y軸スキャナ、Z軸スキャナは、互いに入れ替えても同様に機能できることはいうまでもない。例えばZ軸スキャナを出射したレーザ光をY軸スキャナで受けるよう構成したり、あるいはX軸スキャナでY軸を制御し、Y軸スキャナでZ軸を制御するよう配置してもよい。また図において集光レンズであるfθレンズは図示を省略している。
レーザ加工装置においては一般に、第2のミラー(Y軸スキャナ)で反射されたレーザ光を作業領域に照射させるよう集光するために、第2のミラーと作業領域の間には、fθレンズと呼ばれる集光レンズを配置している。fθレンズは、Z軸方向の補正を行う。具体的には、図6(a)に示すように、作業領域WSの端部に近付くほど焦点位置を伸ばし、ワークの加工対象面上に位置させる補正である。レーザ光の焦点位置は円弧状の軌跡となるため、加工対象面が平面の場合、鉛直下の位置、図6(a)において加工対象面を示す平面WMの中心で焦点位置が合うように設定すると、中心から離れるほど、すなわち作業領域WSの周辺に近付くほど焦点位置が加工対象面から遠ざかり(レーザ光L’)、焦点が合わず加工精度が低下する。そこで、図6(b)に示すように作業領域WSの端部に近付くほどレーザ光Lの焦点位置が長くなるよう、fθレンズで補正する。仮想的に加工対象面の平面WMが、WM’で示す凸状曲面の補正面となるよう変換することで、レーザ光Lの焦点位置を平面WM上に位置させることができる。
レーザマーカにおいて、例えばスポット径を約50μmより小さいビームを形成したい場合は、fθレンズを配置することが好ましい。一方、上述の小スポット径よりも大きい、スポット径が約100μm程度(通常良く使用されるスポット径)のビーム径を採用する場合は、Z軸スキャナ側のビームエキスパンダに備えられたZ軸集光レンズをZ軸方向に移動させることにより、fθレンズが行うべきZ軸方向の補正を、補正制御として行うことができる。これにより、スポット径が大きい場合はfθレンズを省略することも可能となる。上述した図6(a)の例では、fθレンズが行うべきZ軸方向の補正を、Z軸スキャナの補正制御に行わせている。一方、スポット径が小さい場合は、Z軸スキャナによる補正では焦点位置の調整が不十分となるため、上述の通りfθレンズを用いる。本実施の形態では、レーザ光のスポット径として小スポット、標準、ワイドスポットの3種類を用意しており、この内の小スポットタイプのみ、fθレンズで作業領域WS端部の歪みを矯正し、標準及びワイドスポットではfθレンズを使用せず、Z軸スキャナで補正している。
Z軸スキャナのビームエキスパンダに備えられたZ軸集光レンズでZ軸方向の補正制御を行う場合も、上述したfθレンズによる補正と同様の補正を行う。図6(b)で説明した補正面WM’の高さ、すなわちZ座標は、XY座標によって一義的に決定される。このため、XY座標毎に、補正後のZ座標を関連付けておくことで、X・Y軸スキャナの移動に従いZ軸スキャナを関連付けられたZ座標に移動させれば、常に焦点位置での加工が可能となる。関連付けのデータは、後述する図11等に示す記憶部5Aで保存する。あるいはレーザ加工装置のレーザ制御部に備えられたメモリ部5に保存、転送することもできる。これによって、作業領域内におけるXY座標の移動に追従して、補正後のZ座標が決定されるので、作業領域内でほぼ均一に焦点位置が調整されたレーザ光を照射できる。
各スキャナは、光を反射する反射面として全反射ミラーであるガルバノミラーと、ガルバノミラーを回動軸に固定して回動するためのガルバノモータと、回動軸の回転位置を検出して位置信号として出力する位置検出部を備える。またスキャナは、スキャナを駆動するスキャナ駆動回路52に接続される。スキャナ駆動回路52はレーザ駆動制御部4に接続され、スキャナを制御する制御信号をレーザ駆動制御部4から受けて、これに基づいてスキャナを駆動する。例えばスキャナ駆動回路52は、制御信号に基づいてスキャナを駆動する駆動電流を調整する。またスキャナ駆動回路52は、制御信号に対する各スキャナの回転角の時間変化を調整する調整機構を備える。調整機構は、スキャナ駆動回路52の各パラメータを調整する可変抵抗等の半導体部品で構成される。
(Z軸スキャナ14c)
Z軸スキャナ14cはレーザ光Lのスポット径を調整し、これによって焦点距離を調整するビームエキスパンダ53を構成している。すなわち、ビームエキスパンダで入射レンズと出射レンズとの相対距離を変化させることでレーザ光のビーム径を拡大/縮小し、焦点位置も変化させることができる。ビームエキスパンダ53は、小スポットへの集光を効果的に行わせるため、図3に示すようにガルバノミラーの前段に配置され、レーザ発振部50から出力されるレーザ光Lのビーム径を調整すると共に、レーザ光Lの焦点位置を調整可能としている。Z軸スキャナ14cがワーキングディスタンスを調整する方法を、図7〜図9に基づいて説明する。図7、図8はレーザ光走査部9の側面図であり、図7はレーザ光Lの焦点距離を長くする場合、図8は焦点距離を短くする場合をそれぞれ示している。また図9はZ軸スキャナ14cの正面図及び断面図を示している。これらの図に示すように、Z軸スキャナ14cはレーザ発振部50側に面する入射レンズ16と、レーザ出射側に面する出射レンズ18を含んでおり、これらのレンズ間の距離を相対的に変化可能としている。図7〜図9の例では、出射レンズ18を固定し、入射レンズ16を光軸方向に沿って駆動モータ等で摺動可能としている。図9は出射レンズ18の図示を省略して、入射レンズ16の駆動機構を示している。この例では、コイルと磁石によって軸方向に可動子を摺動可能とし、可動子に入射レンズ16を固定している。ただ、入射レンズ側を固定して出射レンズ側を移動可能としたり、入射レンズ、出射レンズを共に移動可能とすることもできる。
図7に示すように、入射レンズ16と出射レンズ18との間の距離を近付けると、焦点位置が遠ざかり、焦点距離(ワーキングディスタンス)が大きくなる。逆に図8に示すように入射レンズ16と出射レンズ18との距離を離すと、焦点位置が近付き焦点距離が小さくなる。
なお、3次元加工、すなわちワークの高さ方向への加工が可能なレーザ加工装置は、上記図7、図8のようにZ軸スキャナを調整する方式の他、例えば物理的に集光レンズを移動させる、あるいはレーザ出力部やマーキングヘッド自体を移動可能とする等、他の方式を利用することも可能である。
この例では、Z軸スキャナは、Qスイッチ19から出射されたレーザ光の焦点位置を光軸方向に調整可能な焦点位置調整手段として機能し、またX軸スキャナ、Y軸スキャナは、Z軸スキャナから出射されたレーザ光を2次元的に走査するレーザ光2次元走査系として機能する。
(ディスタンスポインタ)
また、3次元加工可能なレーザマーカの作業領域の中心に焦点位置を調整するために、レーザ光を作業領域WS内に走査させる際の照射位置を示すガイドパターンを表示することができる。図3〜図4に示すレーザマーカのレーザ光走査部9は、ディスタンスポインタとして、ガイド用光源60と、ガイド用光源60からのガイド光Gをレーザ光走査部9の光軸と一致させるためのガイド光光学系の一形態としてハーフミラー62を備えると共に、ポインタ光調整系として、ポインタ光Pを照射するためのポインタ用光源64と、Y軸スキャナ14bの裏面に形成された第3のミラーとしてポインタ用スキャナミラー14dと、ポインタ用スキャナミラー14dで反射されたポインタ用光源64からのポインタ光Pをさらに反射させて焦点位置に向かって照射する固定ミラー66とを備えている。このディスタンスポインタは、レーザ光の焦点位置を示すポインタ光Pをポインタ用光源64から照射し、ガイド光Gで表示されるガイドパターンのほぼ中心に、ポインタ光Pを照射するよう調整することで、レーザ光の焦点位置が指示される。
なお、上記の例ではレーザ光走査部9に、レーザ光の焦点距離を調整可能な機構を設けることで3次元加工を可能としている。ただ、ワークを載置するステージの位置を上下方向に調整可能とすることで、レーザ光の焦点がワークの作業面で結ぶようにステージの高さを調整する制御を行うことでも、同様に3次元加工を行うこともできる。また、ステージをX軸あるいはY軸方向に移動可能とすることで、レーザ光走査部の該当するスキャナを省略できる。これらの構成は、ワークをライン上に搬送する形態でなく、ステージ上に載置して加工する形態において好適に利用できる。
(レーザマーカのシステム構成)
次に図10に、3次元印字可能なレーザマーカのシステム構成を示す。この図に示すレーザ加工システムは、レーザ出力部2を構成するマーキングヘッド150と、マーキングヘッド150と接続されてこれを制御するレーザ制御部1を構成するコントローラ1Aと、コントローラ1Aとデータ通信可能に接続され、コントローラ1Aに対して印字パターンを3次元のレーザ加工データとして設定するレーザ加工データ設定装置180とを備える。マーキングヘッド150とコントローラ1Aとで、レーザ加工装置100を構成する。レーザ加工データ設定装置180は、図10の例においてはコンピュータにレーザ加工データ設定プログラムをインストールして、レーザ加工データ設定機能を実現させている。レーザ加工データ設定装置は、コンピュータの他、タッチパネルを接続したプログラマブルロジックコントローラ(PLC)や、その他専用のハードウェア等を利用することもできる。またレーザ加工データ設定装置は、レーザ加工装置の動作を制御する制御装置として機能させることもできる。例えば、一のコンピュータにレーザ加工データ設定装置としての機能と、レーザ出力部を備えるマーキングヘッドのコントローラとしての機能を統合してもよい。さらにレーザ加工データ設定装置は、レーザ加工装置と別部材で構成する他、レーザ加工装置に統合することもでき、例えばレーザ加工装置に組み込まれたレーザ加工データ設定回路等とすることもできる。
さらにコントローラ1Aには、必要に応じて各種外部機器190を接続できる。例えばライン上に搬送されるワークの種別、位置等を確認するイメージセンサ等の画像認識装置、ワークとマーキングヘッド150との距離に関する情報を取得する変位計等の距離測定装置、所定のシーケンスに従って機器の制御を行うPLC、ワークの通過を検出するPDセンサその他各種のセンサ等を設置し、これらとデータ通信可能に接続できる。
(レーザ加工データ設定装置)
平面状の印字データを3次元状に印字するための設定情報であるレーザ加工データは、レーザ加工データ設定装置180により設定される。図11は、レーザ加工データ設定装置180の一例としてブロック図を示している。この図に示すレーザ加工データ設定装置180は、各種設定を入力するための入力部3と、設定内容や演算後のレーザ加工データを表示するための表示部82と、各種設定データを記憶するための記憶部5Aとを備える。また記憶部5Aは、複数の加工パラメータの組み合わせを関連付けて保持した参照テーブル5Bを含む。また参照テーブル5Bは、熱レンズ効果による光軸方向の焦点位置補正量を、レーザ光出力条件に対応させて予め記録した補正量記憶手段、加工条件設定部で設定された加工パターンの3次元形状に関して、XY座標位置とZ座標位置との対応関係を関連付けて記憶するための対応関係記憶部としても機能する。表示部82は、加工対象面のイメージを3次元的に表示可能な加工イメージ表示部83と、加工イメージ表示部83に加工対象面のイメージを3次元的に表示させる際に、マーキングヘッドのイメージを表示可能なヘッドイメージ表示手段84を備える。
入力部3は、所望の加工パターンで加工する加工条件である、レーザ光出力条件と加工パターンを設定するための加工条件設定部3Cとして、ワークの印字面の3次元形状を示すプロファイル情報を入力するための加工面プロファイル入力手段3Aと、印字パターン情報を入力するための加工パターン入力手段3Bと、作業領域内に複数の加工ブロックを設定し、加工ブロック毎に加工パターンを設定可能な加工ブロック設定手段3Fの他、ブロック設定手段3Fで設定された複数の加工ブロックを纏めた加工グループを設定するためのグループ設定手段、加工対象面上に配置される加工パターンの位置を調整可能な加工パターン位置調整手段の機能を実現する。加工面プロファイル入力手段3Aはさらに、加工対象面を表す基本図形を指定するための基本図形指定手段3aと、加工対象面を表す3次元形状データを外部から入力するための3次元形状データ入力手段3b、3次元形状データ入力手段3bで入力された3次元形状データに対して、加工条件設定部で設定された3次元加工パターンの加工位置を位置決めするための位置決め手段3cの機能を実現する。記憶部5Aは、図1のメモリ部5に相当し、入力部3で設定されたプロファイル情報や印字パターン情報等の情報を記憶する。このような記憶部5Aには、固定記憶装置等の記憶媒体や半導体メモリ等が利用できる。表示部82は、専用のディスプレイを設ける他、システムに接続されたコンピュータのモニタを利用してもよい。
(演算部80)
一方、レーザ加工装置100のコントローラ1Aは、入力部3から入力された情報に基づいてレーザ加工データを生成する加工データ生成部80K等を構成する演算部80を備える。演算部80は、加工条件設定部3Cで設定された加工条件に基づいて、実際の加工を行うための加工データを生成するための加工データ生成部80K、加工条件設定部3Cで設定されたレーザ光出力条件に基づいて発生する熱レンズ効果に起因する光軸方向の焦点位置のずれを焦点位置補正量として特定する補正量特定手段80B、加工条件設定部で設定された加工パターンを構成する空間座標において、レーザ光走査部のX軸方向及び/又はY軸方向への移動量に対するZ軸方向の相対的な移動量の比率に応じて、加工対象面における加工量を一定値に近付けるように、加工条件設定部で設定された加工条件を自動的に補正するための加工量補正手段80M、表示部82に3次元のレーザ加工データを表示する際に加工対象面上にレーザ加工データを配置する初期位置を決定する初期位置設定手段、作業領域においてレーザ光を照射できず加工できない、あるいは加工が不良となる加工不良領域を検出する加工不良領域検出手段、加工不良領域検出手段で検出された加工不良領域に対して、加工可能な領域と異なる態様にて表示するためのハイライト処理を行うハイライト処理手段、加工条件設定部3Cで加工パターンを設定する際、加工不良領域を含む領域に何らかの加工が行われるよう設定されていることを検出して、警告を発するための設定警告手段の機能を実現する。また必要に応じて、加工不良領域における加工条件を加工可能となるように調整する加工条件調整手段、印字面に印字パターンを仮想的に一致させるように、印字パターン情報を平面状から3次元空間座標データに変換する座標変換手段等の機能を実現させることもできる。この演算部80はFPGAやLSI等で構成される。
また図11の例では、レーザ加工データ設定装置180を専用のハードウェアで構成したが、これらの部材はソフトウェアでも実行できる。特に、図10に示すように汎用のコンピュータにレーザ加工データ設定プログラムをインストールして、レーザ加工データ設定装置180として機能させることもできる。また図11の例では、レーザ加工データ設定装置180とレーザ加工装置100とを個別の機器としたが、図12に示すようにこれらを一体的に統合することもできる。
加工データ生成部80Kは、レーザ加工装置100のコントローラ1A側に配置している。ただ、図13に示すように加工データ生成部80Kをレーザ加工データ設定装置180側に設けてもよい。例えば汎用のコンピュータにレーザ加工データ設定プログラムをインストールして、レーザ加工データ設定装置180として機能させるコンピュータで加工データ生成部80Kの機能を実現している。あるいは、加工データ生成部をレーザ加工装置100側とレーザ加工データ設定装置180側に各々設けることにより、レーザ加工装置100、レーザ加工データ設定装置180のいずれにおいてもレーザ加工データを生成可能としたり、レーザ加工データの受け渡しや編集、表示を各々で可能とできる。
(レーザ加工データ設定プログラム)
次に、レーザ加工データ設定プログラムを用いて、加工条件設定部3Cから入力された文字情報に基づいて加工パターンを生成する手順を、図14〜図16のユーザインターフェース画面に基づいて説明する。なおこれらのプログラムのユーザインターフェース画面の例において、各入力欄や各ボタン等の配置、形状、表示の仕方、サイズ、配色、模様等は適宜変更できることはいうまでもない。デザインの変更によってより見やすく、評価や判断が容易な表示としたり操作しやすいレイアウトとすることもできる。例えば詳細設定画面を別ウィンドウで表示させる、複数画面を同一表示画面内で表示する等、適宜変更できる。またこれらのプログラムのユーザインターフェース画面において、仮想的に設けられたボタン類や入力欄に対するON/OFF操作、数値や命令入力等の指定は、プログラムを組み込んだコンピュータに接続された入力部3で行う。本明細書において「押下する」とは、ボタン類に物理的に触れて操作する他、入力部によりクリックあるいは選択して擬似的に押下することを含む。入力部等を構成する入出力デバイスはコンピュータと有線もしくは無線で接続され、あるいはコンピュータ等に固定されている。一般的な入力部としては、例えばマウスやキーボード、スライドパッド、トラックポイント、タブレット、ジョイスティック、コンソール、ジョグダイヤル、デジタイザ、ライトペン、テンキー、タッチパッド、アキュポイント等の各種ポインティングデバイスが挙げられる。またこれらの入出力デバイスは、プログラムの操作のみに限られず、レーザ加工装置等のハードウェアの操作にも利用できる。さらに、インターフェース画面を表示する表示部82のディスプレイ自体にタッチスクリーンやタッチパネルを利用して、画面上をユーザが手で直接触れることにより入力や操作を可能としたり、または音声入力その他の既存の入力手段を利用、あるいはこれらを併用することもできる。
レーザ加工データ設定プログラムは、3次元レーザ加工データの編集が可能である。ただ、3次元データの編集が不得手なユーザを考慮し、平面上での設定のみ可能で、3次元上での編集ができない「2D編集モード」を用意し、3次元レーザ加工データの加工が可能な「3D編集モード」と切り替え可能としてもよい。このような複数の編集モードを備える場合は、現在の編集モードを示す編集モード表示欄270と、編集モードを切り替える編集モード切替ボタン272を備える。図14の例では、レーザ加工データ設定プログラムの起動時は「2D編集モード」とし、画面右上に設けられた編集モード表示欄270に、現在の編集モードが「2D編集中」であることを表示させている。操作が比較的容易な2次元編集モードを起動時のデフォルト編集モードとして設定することにより、3次元レーザ加工データの編集が不得手なユーザであっても戸惑うことなく操作できる。また、起動時の編集モードはユーザが変更可能に構成することもでき、操作を習熟したユーザが編集モードを切り替えることなく3次元レーザ加工データの編集が可能となるよう設定することもできる。
また編集モード表示欄270の右側に設けられた編集モード切替ボタン272には、3D編集モードに切り替え可能であることを示す「3D」の文字が表示されている。この状態から、編集モード切替ボタン272を押下すると、「3D編集モード」に切り替えられると共に、編集モード表示欄270の表示が「3D編集中」に変更される。さらに編集モード切替ボタン272は3D編集モードから2D編集モードに切り替え可能であることを示す「2D」の文字が表示される。このように、3D表示や編集を制限又は排除した「2D編集モード」を設けることで、ユーザが2次元的加工面に対する加工データの設定・編集を行いたい場合、2次元的加工面に対する加工データの設定・編集のみが行えるユーザインターフェースを提供することで、ユーザインターフェースの簡素化とそれに伴う操作性の向上を図ることができる。また、ユーザが3次元的加工平面に対する加工データの設定・編集を行いたい場合においても、いきなり不慣れな3D表示を行うのではなく、上述したこれまで慣れ親しんだ「2D編集モード」にて2次元的加工面に対する加工データの設定・編集を行い、この「2D編集モード」にて設定・加工された2次元加工データを「3D編集モード」にて更に、所望の3次元加工データに加工・編集し直す工程をとることにより、「3D編集モード」も、ユーザにとって判り易いユーザインターフェースとそれに伴う操作性の向上を図ることができる。
加工条件設定部3Cの一例を、図14に基づいて説明する。図14は、レーザ加工データ設定プログラムのユーザインターフェース画面の一例を示しており、画面の左側にワーク上に印字される加工パターンのイメージを表示する編集表示欄202、右側に具体的な加工条件として各種データを指定する印字パターン入力欄204を設けている。印字パターン入力欄204では、設定項目を選択するタブとして「基本設定」タブ204h、「形状設定」タブ204i、「詳細設定」タブ204jを切り替えることができる。図14の例では「基本設定」タブ204hが選択されており、ここには加工種類指定欄204aと、文字データ指定欄204d、文字入力欄204b、詳細設定欄204cを設けている。加工種類指定欄204aは、加工パターンの種別として、文字列やシンボル、ロゴ、模様、図等のイメージを含めた印字パターン、若しくは加工機としての動作を行うかを指定する。図14の例では、加工種類指定欄204aからラジオボタンで文字列、ロゴ・図、加工機動作の別を選択する。また文字データ指定欄204dは、文字データの種別を指定する。ここでは文字、バーコード、2次元コード、RSS・コンポジットコード(Composite Code:CC)のいずれかをプルダウンメニューから選択する。さらに選択された文字データの種別に応じて、さらに詳細な種別を種別指定欄204qで選択する。例えば文字を選択した場合はフォントの種別、バーコードを選択した場合は、CODE39、ITF、2 of 5、NW7、JAN、Code 28等のバーコード種別、2次元コードを選択した場合は、QRコード、マイクロQRコード、DataMatrix等の2次元コード種別、RSS・コンポジットコードを選択した場合は、RSS-14、RSS-14 CC-A、RSS Stacked、RSS Stacked CC-A、RSS Limited、RSS Limited CC-A等のRSSコード種別、又はRSSコンポジットコード種別を指定する。文字入力欄204bでは、印字したい文字情報を入力する。入力された文字は、文字データ指定欄204dで文字を選択した場合、そのまま文字列として印字される。一方、シンボルが指定された場合は、選択されたシンボルの種別に従って入力された文字列がエンコードされた加工パターンが生成される。加工パターンの生成は、加工条件設定部3Cで行う他、加工データ生成部で行ってもよい。この例では演算部80が行っている。また詳細設定欄204cは、タブを切り替えて「印字データ」タブ204e、「サイズ・位置」タブ204f、「印字条件」タブ204g等、印字条件の詳細を指定する。「印字条件」タブ204gでは印字パワーやスキャンスピード等を設定する。
なお加工種類指定欄204aから加工機動作を選択すると、加工種別がプルダウンメニューから選択できるようになり、定点、直線、破線、左回り円・楕円、右回り円・楕円、トリガON中定点等が選択できる。加工機動作では、加工パターンとして文字入力欄に代わって線分座標指定欄が設けられ、直線や円弧等の軌跡を座標で指定する。またレーザ加工装置は文字列に限らず、ロゴや図等のイメージデータの印字も可能である。
(加工ブロック設定手段3F)
以上のようにして、一つの印字ブロックに関する印字パターン情報を設定する。また、印字ブロックを複数設定することもできる。すなわち、加工領域において複数の印字ブロックを設定し、異なる印字条件で印字加工を行うことができる。印字ブロックは、一のワーク又は加工(印字)対象面に対して複数設定する他、加工領域内に存在する複数のワークに対して各々設定することもできる。
加工ブロックの設定は、加工ブロック設定手段3Fで行う。図14の例では、加工ブロック設定手段3Fの一形態として、印字パターン入力欄204の上欄にブロック番号選択欄216が設けられる。ブロック番号選択欄216にはブロック番号を表示する番号表示欄と、番号指定手段として、「>」ボタン、「>>」ボタン、「<」ボタン、「<<」ボタンが設けられる。「>」ボタンを押下すると、ブロック番号が1インクリメントされて、新たな印字ブロックの設定が可能となる。また、設定済みの印字ブロックの設定を変更する際も、同様に「>」ボタンを操作してブロック番号を選択し、該当する印字ブロックの設定を呼び出すことができる。また「>>」ボタンを押下すると最終のブロック番号にジャンプする。さらに「<」ボタンを押下するとブロック番号が1つ戻り、「<<」ボタンを押下すると先頭のブロック番号にジャンプする。さらに、ブロック番号選択欄216の数値表示欄に直接数値を入力してブロック番号を指定することもできる。このようにして、ブロック番号選択欄216で印字ブロックを選択し、各印字ブロックについて印字パターン情報を指定する。この例では、ブロック番号を0〜255まで設定可能としている。
また印字ブロックの配置について、配置位置の調整(中心軸に対するセンタリング、右寄せ、左寄せ等)、複数の印字ブロックが重複した場合の重ね順や、位置合わせ等のレイアウトを設定することもできる。さらに各印字ブロックの配置を座標等で指定することもできる。例えば加工パターン位置調整手段を構成する「サイズ・位置」タブ204fからブロック座標のX座標、Y座標を数値で指定する。またこの画面から、文字サイズとして文字高さ、文字幅、文字間隔等を指定できる。さらにブロック形状として、横書き、縦書きの別や、3次元印字の際の円柱内周、外周の別等を指定する。
(印字ブロックの設定一覧表)
このようにして設定された印字ブロックの設定項目を一覧表示させることもできる。図14の例では、図15に示すようにメニューの「編集」から「ブロック一覧」を選択することで、図16のブロック一覧画面217が別ウィンドウで表示される。この一覧画面から、設定済みの印字ブロックを削除したり、複写して新たな印字ブロックを追加することができる。また所望の印字ブロックを選択して、設定項目を調整するように構成してもよい。
(ディレイ動作)
一般にレーザ励起部6やQスイッチ19、X軸スキャナ14aやY軸スキャナ14bなどは応答速度に優れる一方で、Z軸スキャナ14cはこれらに比べ応答速度が遅く、レーザ駆動制御部から動作命令を受けてから、指示された動作をZ軸スキャナが完了するまでの間、遅れ時間が生じる。特に複数の加工ブロック毎にレーザパワーやQスイッチ周波数等の加工条件を変化させる場合は、加工ブロック毎にZ軸スキャナを動作させることになり、前後する加工ブロック間での移動距離が大きい場合は、このような遅れ時間が顕在化する。このため、仮に動作命令を受けてから直ちに各部材の動作を実行させると、Z軸スキャナによる焦点位置の調整が終了していない段階からレーザ光の照射が開始されることとなって、加工開始部分では焦点位置がずれた状態で加工されることとなり、加工品質が低下することがある。そこで、Z軸スキャナの動作に要する時間を予め考慮した上で各部材を動作させるようにディレイ動作を行うことで、このような問題を解消できる。
具体的には、Z軸スキャナの遅れ時間はZ軸スキャナに固有であって、移動の開始位置と終了位置の座標位置や移動距離、あるいは加工パターンが決まれば、遅れ時間を演算できる。よって、加工パターンに応じてZ軸スキャナの遅れ時間をレーザ駆動制御部等で演算すると共に、演算された遅れ時間分だけ、レーザ光の出力開始を待機するようにレーザ駆動制御部を制御することで、焦点位置が正確に調整された状態での加工が行われ、高品質な加工結果を維持できる。
(ワークのプロファイル情報)
次に図14に戻り、ワークのプロファイル情報を設定する手順について説明する。図14の例では、平面状のワークに印字する例を示している。このレーザ加工データ設定プログラムでは、加工対象面が平面状に限られず、3次元形状の加工対象面の設定も可能である。ワークの加工対象面の3次元形状に関するプロファイル情報は、図11の加工面プロファイル入力手段3Aから設定される。プロファイル情報を指定する方法としては、以下のような方法が考えられる。
(1)3次元形状を入力可能なプログラム上から、ワークを作画して指定する方式
(2)ワークの形状を特定するためのパラメータを、対話形式でユーザに入力させる方式
(3)基本図形を選択する方式
また、対話形式に限られず、基本図形を選択して基本図形に関するパラメータを指定する方式としてもよい。すなわち、予め用意された円柱状、円錐状、球状等の基本図形をユーザに選択させ、選択された基本図形を特定するパラメータを提示して、ユーザに数値を入力させることで、容易に2次元形状から3次元形状に変換できる。基本図形でワークを擬似的に表現することにより、指定が容易かつ正確に行える利点がある。
(4)ワークの形状に予め作成された3Dデータのデータファイルを入力して変換する方式
予め3次元CAD等の別プログラムで作成されたワークのデータファイルを変換して利用するものである。この方法では、既に作成されたデータを利用できるので、ワークの形状指定作業を大幅に省力化できる。読み込み可能なデータファイル形式は、DXF、IGES、STEP、STL、GKS等、各種の汎用的なフォーマットが利用できる。またDWG等、特定のアプリケーションの専用フォーマットを直接入力して変換することもできる。
(5)2次元情報に高さ情報を直接指定する
(6)ワークの形状を実際にイメージセンサ等の画像認識装置で読み込んで取得する方式
以上の内、ここでは(3)と(4)の方法を採用している。具体的には、予め用意された基本図形から選択する手段と、3次元形状を記録したファイルを入力する手段が利用できる。さらに3次元形状データ入力手段3bに入力された3次元形状データに対して、加工条件設定部で設定された3次元加工パターンの加工位置を位置決めするための位置決め手段3cと備えることができる。この様子を、図17〜図19に基づいて説明する。図14の画面から、印字パターン入力欄204の設定項目を選択するタブを「基本設定」タブ204hから「形状設定」タブ204iに切り替えると図17に示す画面となり、プロファイル情報の入力方法を選択するプロファイル入力選択手段として、プロファイル指定欄205が表示される。図17のプロファイル指定欄205では、基本図形、ZMAP、加工機動作のいずれかをラジオボタンで選択する。
(基本図形指定手段3a)
基本図形から選択する方法では、予め用意された基本図形の形状を選択する。基本図形としては、平面、円柱、球、円錐等がある。図17の例では基本図形指定手段3aの一形態としてプロファイル指定欄205で基本図形が、その下欄に設けられた形状選択欄206で「平面」が、それぞれ選択されている。ここで、図18に示すように円柱を選択すると、編集表示欄202の2次元表示が平面状から円柱状に切り替えられる。すなわち、円柱状のワークに印字されるQRコードのXY座標平面図が表示されるため、QRコードの右側に向かうほど横幅が狭くなるよう変形して表示される。
(3D表示)
また、加工対象面を立体的に表示することもできる。この例では、加工イメージ表示部として編集表示欄202の表示形式を、2次元状の表示と3次元状の表示とを切り替え可能としている。図18の画面に設けられた表示切替ボタン(3D)207を押下すると、図19に示すように編集表示欄202が3次元表示に切り替えられ、加工対象面の3次元形状が立体的に確認できる。なお図19の画面から表示切替ボタン(2D)207を押下すると、図18の画面に切り替えられる。このように、表示切替ボタン207を押下する毎に、2D表示と3D表示が切り替えられ、またこれに応じて表示切替ボタン207の表示も、他方の表示形態を示す2Dと3Dとに切り替えられる。また図19の3D表示画面においても、図18の2D表示画面と同様に、加工パターンの領域は、枠Kで囲まれて表示される。
また図19の例では、2D表示と3D表示の表示切替ボタン207は、フローティングツールバーに設けられている。フローティングツールバーは任意の位置に移動可能である。またフローティングツールバーの表示/非表示を切り替えたり、通常のツールバーに組み込むよう構成してもよい。
(3D表示画面の視点の変更)
3D表示画面においては、任意の視点に変更することが可能である。図18に示すQRコードを円柱状のワークに印字する印字面を様々な視点から3D表示画面に表示させた例を、図20〜図27に示す。図18の2D表示画面から、フローティングツールバーの表示切替ボタン(3D)207を押下すると、図19の3D表示画面に切り替えられる。この3D表示画面からスクロールバー209を操作することで、図20〜図27に示すように3次元表示画面の視点を自由に変更できる。図20は、作業領域を斜め上方から見た斜視図であり、図21は、図20の状態から作業領域を回転させて、ワークを裏側から表示した例を示している。視点の変更には、スクロールバーを用いる他、マウスで3D表示画面上の任意の点をドラッグすること等によってワークを回転させるように構成してもよい。
また、フローティングツールバーに設けられた「スクロールバーの移動/回転切替」を押下すると、スクロールバーの用途がワークの回転から、画面の移動に切り替えられる。図20の画面から水平方向のスクロールバーを操作すると、図22や図23に示すように、3次元表示の表示角度を維持したまま、視野を左右に平行移動できる。また垂直方向のスクロールバーを操作すると、図24に示すように上下方向に視野を移動できる。このように、スクロールバーを画面の移動と回転に切り替えて使用することで、3D表示の操作に不慣れなユーザでも比較的簡単に視野を変更できる。
さらに、3D表示画面を規定の視点からの表示に切り替えることもできる。図20の例では、フローティングツールバーに、「表示位置」変更欄207Bが設けられ、ここで視点をXY平面等、規定の表示に変更できる。例えば図25はXY平面で印字面を表示した例を示しており、図18に示す2D表示画面と対応する平面図が表示される。また図26はYZ平面、図27はZX平面における表示例を、それぞれ示している。また、各画面からもスクロールバーを操作する等して表示の視点を変更することもできる。このように、3次元表示においても、規定の方向から見た表示画面に速やかに切り替えることができ、表示の変更、復帰や確認の際等に有益である。
(3次元ビューワ260)
上記の例では、編集表示欄202を2次元表示と3次元表示のいずれかに切り替えている。ただ、同じワークの2次元表示と3次元表示を並べて表示させたい場合もある。このような要求に応えるため、別ウィンドウで開く3次元ビューワ260を用意している。図28に、3次元ビューワ260を表示させた例を示している。上記図18の例では、3次元ビューワ260を開くための3次元別画面呼出手段として、2画面表示ボタン207Cをフローティングツールバーに設けている。図18のように編集表示欄202で2次元表示させている状態で、2画面表示ボタン207Cを押下すると、図28に示すように3次元ビューワ260が別ウィンドウで表示される。3次元ビューワ260はドラッグして任意の位置に配置可能である。またウィンドウサイズも変更できる。さらに、3次元ビューワ260で表示されるワークWの姿勢や角度の変更、回転等の操作を可能としてもよい。これらの3次元表示においては、グリッドやスケールを表示させており、視点の把握を容易にしている。これらグリッドやスケール表示をON/OFFすることもできる。
なお、図19に示すように編集表示欄202で3次元表示させている状態では、さらに3次元表示画面を開く必要がないので、3次元ビューワ260を呼び出すフローティングツールバーの2画面表示ボタン207Cはグレーアウトされ、選択できないようになっており、誤操作を防止している。ただ、2次元表示を別画面で表示させたい場合に、別途2次元ビューワ欄を表示可能とすることもできる。なおこれらの表示は一例であり、各欄のレイアウトや大きさ、位置関係等は任意に変更可能であることは言うまでもない。例えば設定欄を含めた各欄を別ウィンドウで表示させてもよい。このように表示部82に、加工対象面の3次元形状イメージを表示させる加工イメージ表示部83として、編集表示欄202や3次元ビューワ260等が利用できる。
(3次元形状データ入力手段3b)
一方、予め3次元CAD等でワークの形状を規定する3次元形状データを作成しておき、このデータファイルをして入力する例を、図29〜図34に示す。この方法では、外部から入力された3次元形状データに、2次元の印字パターン情報を貼り付ける。まず、図29の画面から文字入力欄204bに文字列「ABCDEFGHIJKLM」を入力し、さらに図30の画面で3次元形状データ入力手段3bであるプロファイル指定欄205からZMAPを選択すると、形状選択欄に代わってZMAPファイル名入力欄292が表示される。ここでZMAPファイルとは、3次元形状データファイルの一であり、XY座標毎に高さ方向のZ座標情報を一有するファイル形式である。ZMAPファイル名入力欄292の右側に設けられた「参照」ボタン293を押下すると、図31に示すファイル選択画面294が表示され、ここから印字対象のワーク形状を規定したZMAPファイルを選択する。なお、ZMAPファイルは、予め作成されているものとする。これにより、図32に示すようにZMAPファイル名入力欄292にZMAP(この例ではdolphin.M3D)が指定される。この状態で、編集表示欄202には文字列「ABCDEFGHIJKLM」をZMAPファイルで規定される3次元形状データに貼り付けた状態が表示されている。
また、この状態からフローティングツールバーの左端に設けられた表示切替ボタン(3D)207を押下すると、図33に示すように編集表示欄202が2次元表示から3次元表示に切り替えられ、加工対象面の3次元形状が立体的に確認できる。この図に示すように、ZMAPファイルに含まれる3次元形状データ上の指定された位置に文字列「ABCDEFGHIJKLM」が貼り付けられた状態が3次元的に表示される。これにより、加工イメージ表示部においてワークの印字面での印字状態を2次元的及び3次元的に確認できる。
さらに、ZMAPを指定した段階でフローティングツールバーの右端に設けられた「ZMAP表示」欄207Dのチェックボックスが選択可能に切り替わる(図32参照)。図33の状態から、「ZMAP表示」欄207DのチェックボックスをONにすると、図34に示すように編集表示欄202の3次元表示された印字対象面に、ZMAPファイルで規定される3次元形状データが重ねて表示される。これにより、印字対象面のみならず、ワークの全体形状を含めて3次元的に表示できるので、ユーザは印字の全体像を視覚的に確認できる。
なお、印字パターンである文字列を、ワークの形状を規定するZMAPに貼り付ける際は、図33及び図34に示すように、印字パターンを3次元の印字対象面に正射影し、一方向(この例では上面)から印字対象面を見た場合に印字パターンが正しく再現するように構成している。すなわち、図29の編集表示欄202で文字列「ABCDEFGHIJKLM」を2次元表示している状態から、3次元形状に変換(図33、図34)しても、その平面図は図32に示すように変化しない。ここでは、印字パターンが有する平面情報(XY座標)をそのまま使用し、印字パターンのXY座標と対応するZMAPのXY座標位置における高さ情報(Z座標)を、印字パターンの3次元情報として付加している。この手法では高さ情報のみZMAPを参照し、平面情報はそのまま使用するため、2次元の印字パターンを3次元に変換する際のデータ処理が容易であり、軽負荷で高速化が図れる利点が得られる。特にワークの形状が複雑である際には、この手法が処理能力や速度の面で有利となる。また、印字結果を一方向から視認する用途においては、正確な形状が再現できる利点も得られる。例えば、バーコード等のシンボルを曲面に印字した場合でも、読み取り方向を正確に設定することで、バーコードの端部でナロー幅が変化して読み取りエラーが生じる恐れを解消できる。またOCRにおいても同様に文字の歪みを低減して、読み取り率の高い高精度な印字が実現できる。
一方、上述した基本図形を用いた3次元レーザ加工データへの変換方法では、基本図形を平面状に展開した展開図に印字パターンを貼り付ける方式としている。すなわち、編集表示欄202における印字パターンの2次元表示は、図17、図18のように変化する。この場合は、視認方向が一方向に決まっていない場合等に好適であり、例えば製品の製造年月日やシリアル番号等の文字列を印字する際に、ユーザが判読しやすい印字を行える。
以上のように、基本図形指定手段3aによる基本図形の指定と、3次元形状データ入力手段3bによるZMAPファイルの指定とを、プロファイル指定欄205で切り替えることができ、プロファイル指定欄205は基本図形指定手段3aと3次元形状データ入力手段3bの切替手段として機能する。
(ZMAPデータの作成)
次に、予め作成した汎用的な3次元形状データファイルからZMAPデータを作成する手順を説明する。3次元形状データファイルを作成する手段としては、3D−CADプログラムや3D−CGプログラム等が利用できる。これらの3次元形状データ作成プログラムで作成され、保存されるデータ形式としては、DXF、IGES、STEP、STL、GKS等の汎用的なフォーマットや、DWG、DWF、CDR、AI等、特定のアプリケーションの専用フォーマット等がある。本実施の形態では、STL(Stereo Lithography)ファイル形式を利用している。STLはすべての面を3角形の平面で構築したデータであり、扱いやすいという利点がある。よって、3D−CADプログラム等により、ワークの形状を規定するSTLデータを予め作成しておく。なおレーザ加工データ設定プログラムに、STL等の3次元形状データ作成機能を持たせてもよい。
このようにして作成されたSTLデータを、レーザ加工データ設定プログラムに読み込む。プログラムの編集メニューから「ZMAP作成」を選択すると、図35に示すZMAP作成画面300が表示される。ZMAP作成画面300は、左欄に3次元形状データを3次元的に示すためのビューワ画面301、右欄にビューワ画面301に表示される3次元形状データの姿勢を調整する調整欄302を設けている。この画面から、ファイルメニューの「STLファイルを開く」を選択すると、STLファイルの選択ダイヤログボックスが開くので、作成済みのSTLファイルの保存先を指定して、所望のワークの形状を規定するSTLファイルを選択する。図36に、STLファイルを開いた状態のZMAP作成画面300を示す。この状態では、右欄上に設けられた「STL表示」ボタン303が押下された状態となり、ビューワ画面301にSTLファイルが表示されていることを示している。STLファイルを開いた状態でのビューワ画面301における3次元形状データの初期位置は、この例では3次元形状データの頂点が原点に位置するように設定されている。なお、初期位置を任意に設定可能としてもよい。
次に、STLファイルを操作し、ZMAPに変形したい姿勢を決定する。ここでは図36の右欄に設けられた調整欄302で、STLファイルで規定される3次元形状データの座標や回転角を調整する。例えば座標調整欄304でX座標方向に−60mm移動させると、図37に示すようにビューワ画面301で表示される3次元形状データが平行移動される。同様にZ座標方向に調整して、図38の状態から図39(Z座標10mm)、図40(Z座標−10mm)に示すように3次元形状データを高さ方向に垂直移動させることも、図41に示すようにY座標方向(Y座標50mm)を調整することもできる。これら座標位置の指定は、座標調整欄304の数値入力欄から数値を直接入力する他、右側に設けられた矢印ボタン305を押下することでも操作できる。矢印ボタン305は、十字状に配置されたボタン305aでXY座標を調整し、その下でZ座標調整欄304の右側に設けられた上下矢印ボタン305bでZ座標を調整する。これによってユーザは視覚的に3次元形状データを移動できる。
さらに、回転角調整欄306から回転角度を指定することで、ビューワ画面301で表示される3次元形状データを回転できる。回転角調整欄306には、X回転、Y回転、Z回転欄が各々設けられ、数値若しくはスライダにより回転角度を指定する。図42はX回転、図43はY回転、図44はZ回転の例を、それぞれ示している。
さらに加えて、ビューワ画面301に印字可能領域を示すこともできる。調整欄302に設けられた印字領域表示欄307でX方向、Y方向、Z方向のチェックボックスをONにすることにより、印字可能領域のそれぞれの方向における境界面KMを表示できる。図45にX方向、図46にY方向、図47にZ方向における境界面KMを表示する例を、それぞれ示す。またこれらの境界面KMは、複数を同時に表示することも可能である。これによって、印字可能な領域内に3次元形状データが適切に配置されているかどうかを、ユーザは視認しながら調整できる。
またZMAP作成画面300においても、画面の回転やスクロールによる視点変更が可能で、スクロールバーにより操作する。「回転/スクロール」ボタン308を押下することで、スクロールバーの機能を3次元形状データの回転と画面スクロールに切り替えて利用できる。
なお、ZMAP作成画面300に、STLファイルの簡易的な変形機能を持たせてもよい。例えばSTLファイルの拡大/縮小率の変更、トリミング、等を持たせることもできる。
このようにして、3次元形状データの姿勢を決定すると、ZMAPに変換する。図38の画面から、ZMAP作成画面300の右欄に設けられた「ZMAP表示」ボタン310を押すと、「ZMAPに変換します。よろしいですか?」等の確認ダイヤログボックスが表示され、「OK」を押下するとSTLファイルからZMAPファイルへの変換が実行され、図48のようにZMAPデータが生成される。ZMAPファイルでは、高さ情報を一点のみ持つため、ビューワ画面301で表示される3次元形状データのXY座標面以下のデータがカットされ、上半面のみの形状となる。レーザ加工装置ではワークの裏側にレーザ光を照射できないので、ワークの片面のみ、すなわち上半面のみのデータとすれば足りる。
なお、ワークの裏面に印字したい場合は、図42に示すように、3次元形状データを回転させて裏面が上側となる姿勢に調整し、この状態でZMAPに変換する。図42の例では図37の状態から回転角を180°させた状態で、ZMAPに変換し、図49に示すZMAPデータを得ている。このように、ワークを回転させることでワークの裏面の印字も可能となる。
ZMAP表示中は、「ZMAP表示」ボタン310が押下された状態となり、ビューワ画面301での表示がZMAP表示に切り替えられていることを示す。このように、ファイル変換を実行するボタンに、ビューワ画面301で表示される表示内容を示す機能を兼用させている。また、ZMAP表示中に「STL表示」ボタン301を押下すると、ZMAPの表示が変換前のSTLに戻る。これにより、変換前のSTLファイルに戻ることができ、操作のやり直しや再設定、再保存も可能となる。
変換されたZMAPで規定される3次元形状データが正しくワークの加工面を表現していることをビューワ画面301で確認した後、このZMAPファイルを保存する。具体的にはファイルメニューの「ZMAPとして保存」を選択し、所望の保存場所に名前を付けて保存する。
このようにして作成されたZMAPデータをワークの印字面を示す3次元形状データとして指定することで、印字パターンを3次元形状に変換することができる。次に、指定されたZMAPデータに基づいて印字パターンを3次元形状に変換する手順を説明する。
(印字パターンを3次元形状に変換する手順)
図49に示すように、文字入力欄204bに文字列「ABCDEFGHIJKLM」を入力し、さらに図32の画面でプロファイル指定欄205からZMAP(dolphin.M3D)を選択し、ZMAPファイル名入力欄292から上記で作成されたZMAPファイルを指定する。この結果、印字パターンである文字列「ABCDEFGHIJKLM」が3次元形状に変換され、図32にはXY平面における印字パターンが表示される。この状態で表示切替ボタン(3D)207を押下すると、図33に示すように編集表示欄202が2次元表示から3次元表示に切り替えられ、印字対象面の3次元形状が立体的に確認できる。これらの図に示すように、観察方向(上面)から見た印字パターンが図32と等しくなるように、文字列が印字対象面に写像されるよう変形される。
さらに、「ZMAP表示」欄207DのチェックボックスをONにすると、図34に示すように編集表示欄202に印字対象面の3次元形状に加えて、ZMAPファイルで規定されるワークの3次元形状が重ねて表示される。同様に、3次元形状データとして図49のZMAPファイルを選択した場合、図50に示すように印字パターンが3次元形状に変形される。このように、ユーザは印字対象面のみ、あるいはワークの全体形状の3次元表示を切り替えて設定作業を行える。ユーザはこの状態から、印字パターンを3次元形状データのどの位置に貼り付けるかを調整する。
(作業領域の設定時の3次元表示)
作業領域(印字エリア)を3次元形状のワークに設定し、ワーク形状を含めた印字エリアを3次元的に表示する場合、ここでは以下のようにして印字エリアがワークに対して適切な印字可能な位置にあることを目視できるよう構成している。
まずワークについては、レーザマーカのマーキングヘッドの出射位置からレーザ光を出射した場合、レーザ光と印字対象面とのなす角度が所定の角度範囲(適切に印字が可能と判断できる所定の角度範囲)にある場合と、印字は可能であるものの、印字品質の低下のおそれがある場合(上記所定角度以下または未満の場合)とで、印字対象面に対する色分けを行う。具体的には、適切に印字が可能と判断できる角度範囲には着色を行わず、印字は可能であるものの、印字品質の低下のおそれがある角度範囲には赤色に着色している。これにより、設定された印字エリアが適切な範囲のみに設定されているか、または印字エリアのどの部分が赤色(印字品質低下のおそれがある角度範囲)になっているかを、3次元表示画面から目視により判断できる。
また、マーキングヘッドのレーザ出射位置からワークに設定されている印字エリアを見て、ワークの加工面(印字エリア設定領域)が裏側に位置する場合、印字不可能と判断し、ワークに設定された印字エリア(印字内容)を3次元表示画面上で非表示としている。これにより、ユーザはワークに対して自らが設定した印字エリアがどのような状態(位置関係等)にあるかを速やかに把握でき、その印字エリアの位置修正等も容易に行うことができる。
また、3次元表示画面で表示させる手段に限られず、何らかの方法で「最適な印字状態を提供できる角度範囲」、印字品質低下角度範囲を示す「印字不良領域」、「印字不可能領域」等を目視できる手法が適宜採用できる。例えば、「最適な印字状態を提供できる角度範囲」、「印字不良領域」、「印字不可能領域」等に該当することをテキストでユーザインターフェース画面上に表示したり、音声や警告音、ダイヤログボックス等を利用することもできる。またいずれかの項目のみを表示させることも可能で、例えば印字品質を問わず印字ができれば良いユーザに対しては、「印字不可能領域」に対する情報のみを提供すれば足りる。
(レーザ加工データの設定手順)
以上のレーザ加工データ設定プログラムを用いて、加工条件設定部3Cから印字条件を設定して加工データ生成部80Kが加工パターンを生成する手順を説明する。まず加工パターンを設定する。ここでは、加工条件設定部3Cから文字列を入力し、さらにエンコードするシンボルの種別を指定する。図14の例では、加工種類指定欄204aで文字列を選択し、文字入力欄204bから文字列として「ABCDE」を入力すると共に、文字データ指定欄204dの「文字データの種類」欄から、種別として「文字」を選択し、またフォントの種別を指定している。このようにして指定された情報に基づき、演算部80は加工パターンを生成する。ここでは文字列が選択されているので、文字の印字パターンのイメージが編集表示欄202に表示される。
なお、この例では加工条件設定部3Cから入力された文字情報に基づいて、演算部80が自動的に加工パターンを生成しているが、直接シンボルを入力することも可能である。例えば、既に作成されたシンボルの画像データを加工条件設定部で選択して入力したり、他のプログラムで作成したシンボルを加工条件設定部から貼り付ける等の手段が採用できる。
次に加工条件設定部3Cからプロファイル情報を入力する。図14の例では、印字パターン入力欄204のタブを「基本設定」タブ204hから「形状設定」タブ204iに切り替えて、プロファイル指定欄から基本図形を選択する。これにより、編集表示欄202の表示が指定した形状に切り替えられる。また、編集表示欄202の表示形式を3D表示に切り替えると、加工対象面の3次元形状が立体的に確認できる。なお形状の指定は文字列すなわち印字ブロック毎に設定可能であるが、複数文字列に一括して形状を指定してもよい。
このように、印字パターン情報を指定し、この加工パターンの平面図を編集表示欄202で表示させた後、プロファイル情報を指定して3次元の加工パターンに変換して編集表示欄202で確認することで、加工パターンの変化を視覚的に確認できる。なお、上記手順は、順序を入れ替えてもよい。すなわち、先に加工対象面の形状を指定した後、印字パターン情報を指定することもできる。
以上のようにして、加工データとして3次元空間座標データが得られた後、必要に応じて調整作業が行われる。例えばレイアウトの調整や高さ方向(z方向)への微調整が挙げられる。微調整には、プログラムのユーザインターフェース上に設けられたスライダの調整やマウスのホイール回転等の手段が利用できる。
以上の手順で最終的なレーザ加工データが生成され設定作業が終了した後、得られたレーザ加工データをレーザ加工データ設定プログラムから、図10に示すレーザ加工装置のコントローラ1Aに転送する。転送の実行には、レーザ加工データ設定プログラムの画面左下に設けられた「転送・読出し」ボタン215を押下する。これにより記憶部5Aからコントローラ1A内のメモリ部5に設定データが転送され、展開されて設定内容が切り替えられ、新たな印字条件が反映される。メモリ部5で展開されたレーザ加工データやその他の加工条件は、加工動作時に参照される。
レーザ加工装置では、レーザ加工データに基づいて印字加工を行う。また実際の加工開始に先立って、テスト印字を行わせてもよい。これにより、所望の印字パターンの印字が得られるかどうかを事前に確認することができる。またテスト印字結果に基づいて、さらにレーザ加工データを再設定することもできる。
以上の例では、一のワークに一の印字パターンを指定する例を説明したが、同様の手順を繰り返すことにより一のワークに複数の印字パターンを指定することもできる。また、レーザ加工データ設定プログラムの一画面にワークを一のみを表示する構成に限られず、一画面に複数のワークを表示させて、それぞれのワークに印字パターンを指定することもできる。
(デフォーカス量の設定)
以上の加工データ生成部80Kは、加工条件設定部3Cで設定された加工条件に基づいて、3次元状の加工対象面と一致する基本設定条件となるように加工データを生成している。ただ、意図的に加工対象面と一致しないようにデフォーカス量を設定することも可能である。
意図的に特定のデフォーカス量を印字面に対して設定するには、印字面に対してフォーカスが合う基本設定条件に対して、デフォーカス量を指定する。図51に、このような設定を行う加工パラメータ設定画面の一例を示す。図51において、加工パラメータ設定欄204nにデフォーカス値を指定するデフォーカス設定欄204oが設けられており、ユーザが所望の値を入力する。デフォーカス値として、例えばプラスの値を入力すれば、焦点位置が印字面よりも設定された値分、レーザ加工装置に対して離れた位置に設定される。逆にマイナスの値として入力すれば、印字面よりさらに設定された値だけ焦点位置がレーザ加工装置に対して近い位置に設定される。
また、加工条件を設定する際の設定項目として、レーザ光のデフォーカス量としてのスポット径、ワークの材質等の加工パラメータを設定することもできる。この際、指定された一の加工パラメータの変更に追従させて他の加工条件を自動的に変更することにより、ユーザは特定の設定項目のみを変化させた条件出しが容易に行える。図51に示すレーザ加工データ設定プログラムの画面においては、画面右側の「詳細設定」タブ204jの下段において、ワーキングディスタンス、デフォーカス量、スポット径、加工対象ワークの設定欄が設けられている。ワーキングディスタンスは、レーザ加工装置によって決まるため、通常は自動で設定される。デフォーカス量は、レーザ光の焦点位置(ワーキングディスタンス)からのオフセット量を指定する。またスポット径は焦点位置のスポット径を基準として比率で指定される。さらに、加工対象ワークは、加工対象のワークの材質や加工目的を、選択肢204kから選択することで、選択されたワークの加工に適したレーザ光のパワー密度に調整される。この例では、鉄への黒色印字、ステンレスへの黒色印字、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂といったワークの材質、及び樹脂溶着、表面粗しといった加工目的が列挙されており、ユーザは所望の加工目的に応じてラジオボタンを選択する。
これらの設定項目は、相互に関連している。すなわち、デフォーカス量を調整することにより、レーザ光のパワー密度を調整できるが、同時にスポット径も変化する。またワークの材質や加工目的を選択すると、目的に合致したレーザ光のパワー密度が選択されるため、デフォーカス量やスポット径が変化することになる。このため、スポット径を一定に維持しつつレーザ光のパワー密度を調整したい場合には、従来はデフォーカス量を設定するのみならず、スポット径が変化しないような加工パラメータの組み合わせを探すべく、レーザ光の出力値や走査速度といった他の設定項目を調整する必要があった。この作業は、実際にワークにレーザ光を走査して加工した結果を見ながら各項目値を調整するという試行錯誤を繰り返して、最適な加工パラメータの組み合わせを見つけ出すものであるため、極めて煩雑で手間がかかる。
そこで、予め一の加工パラメータに対応して変更すべき他の加工パラメータ値の組み合わせを参照テーブル5Bに登録しておき、一の加工パラメータを調整する際には、参照テーブル5Bを参照して該当する他の加工パラメータの組み合わせを抽出し、この値を自動設定することによって、必要な設定項目のみを変化させることを可能としている。具体的には、図51の画面からデフォーカス量やスポット径、加工対象ワークのいずれか一を設定すると、他の設定項目には対応する値が自動的に入力される。また、この状態からデフォーカス量を変更しても、スポット径や加工対象ワークが一定に維持されるよう、他の加工パラメータ(例えばレーザ出力や走査速度)等が自動的に調整される。これにより、ユーザは所望の項目のみを速やかに変更できるので、所望の加工結果に極めて容易に調整することができる。
(デフォーカス量の連続変化)
さらに、加工パラメータをレーザ加工中に連続的に変化させることもできる。これによって、ワーク表面の彫り込み加工において傾斜面を形成したり、ワーク表面に筆書き調のロゴを印字加工することができる。このような加工を行うには、レーザ光のデフォーカス量やスポット径を連続的に変化させるように設定することで実現できる。この際も、上記と同様にデフォーカス量やスポット径の連続変化に追従させるように、加工データ生成部80Kが他の加工パラメータも連続的に調整し、指定された設定項目のみが連続変化するように自動調整される。この結果、加工位置や大きさといった、変更を要しない設定項目は従前の値を維持するような加工が行われ、ユーザが望む設定項目のみを変化させるような加工条件を容易に設定できる。
図52に、このようなレーザ加工の連続変化を設定する加工パラメータ設定欄204lの一例を示す。図52の例では、加工パラメータ設定欄204lに設けられた「連続変化を行う」欄のチェックボックスをONにすると、連続変化の設定画面に切り替えられる。ここでは、連続変化を行う範囲を座標位置で指定する。また、変化させたい設定項目のチェックボックスをONにすると、範囲の入力欄が表示され、数値を指定可能となる。図52の例では、デフォーカス量のチェックボックスを選択することでデフォーカス設定欄204mが表示されており、開始位置のデフォーカス量と終了位置のデフォーカス量を指定する。指定されたデフォーカス量は、指定された範囲内において、均等に連続変化するように自動設定される。また、開始値または終了値のみを指定し、変化の増分・減分や変化率を指定することもできる。また、デフォーカス量を設定すると、スポット径の欄も対応する数値が参照テーブル5Bから参照されて、入力欄に自動的に入力される。このように、いずれかの設定項目が指定されると、他の設定項目にも自動的に対応値が入力されるので、ユーザは各設定項目の加工パラメータ同士の相関関係を意識することなく、必要な項目のみを設定するだけで所望の加工条件に変更することが可能となる。
以上のようにして、加工対象のワークの材質、加工パターン、仕上げ状態、加工時間等の設定項目について、レーザ光のビーム径を自由に変化させることにより、簡単に短時間で変更できる。
(設定の保存・読み込み)
さらに、一旦設定された加工条件の加工パラメータを設定データとして保存し、必要時に呼び出すこともできる。例えば、ファイルメニューから「名前をつけて保存」を選択し、任意の名称をつけて設定情報を保存しておくことで、将来同じワークに同じ加工を行う際に、保存された設定データを呼び出すことで、段取り替えに要する時間や手間を大幅に簡略化できる。また、よく使われる設定については、予め登録しておくことにより、これを利用すれば初心者でも容易に加工条件の設定を行える。また登録・保存されたデータの設定条件をベースにして調整を行うことによって、設定の手間を大幅に省力化できる。このように、設定情報の再利用を可能とすることでも、設定作業の省力化に大きく貢献できる。
以上のように、レーザ加工データ設定プログラムを用いたレーザ加工データ設定方法の基本的な流れは、先ず2次元設定用ユーザインターフェースを用いて、2次元状の印字パターン情報として、印字文字列やレイアウトなどを設定し、次いで3次元設定用ユーザインターフェースで、印字パターンを3次元形状に変換するための3次元情報やレイアウトを設定するという手順になる。この手順を具体的に説明すると、先ず2次元設定用ユーザインターフェースでの設定は、印字対象の文字列、バーコード、2次元コード、あるいはユーザ規定の図形等を規定する情報と、それらの大きさ、文字毎の傾き、線幅など平面的なレイアウトに関するデータを入力する。データ入力に関しては、直接数値入力することや、加工イメージ表示部で2次元状に表示させたイメージ上から直接編集することも可能である。例えばサイズ調整やレイアウト等をマウス操作により調整できる。これらの設定は、2次元表示にて行うことができる。
(加工条件)
加工条件には、加工の内容を示す加工パターン情報と、加工パターンを加工対象面の形状に応じて3次元状に変形する3次元形状情報が含まれる。加工パターンは、文字列やバーコード、2次元コード等のシンボル、あるいはロゴ等のイメージデータである。またパレット印字等の一括加工モードにおいては、製造年月日やシリアル番号等の変数を加工パターンに含めてもよい。変数は、加工日時等、加工時に指定する所定値の他、シリアル番号等のように加工位置や加工順序等に応じてインクリメントする値等が利用される。このような情報をワークに付加することで、トレーサビリティに対応した3次元印字が実現できる。なおX軸スキャナ及びY軸スキャナによる加工順序は、加工パターンに依存する。例えば、入力部を用いて文字を加工パターンとして入力する場合は、フォントによってその書き順は予め設定される。一方、外字入力の場合は、線分単位で書き順をユーザが指定することができる。
以上のようにしてレーザ加工条件設定プログラムやレーザ加工条件設定装置で設定された加工条件は、記憶部5A(図11)に保持されており、加工条件設定後にはコントローラ1Aのメモリ部5(図1)に転送されて展開され、加工動作時に参照される。
(熱レンズ効果補正機能)
またレーザマーカは、熱レンズ効果により生じた焦点位置のずれを、レーザ光の焦点位置を光軸方向に調整可能な焦点位置調整手段で補正する熱レンズ効果補正機能を備えている。具体的には、加工条件設定部3Cで設定された加工条件から、発生する熱レンズ効果を修正するための焦点位置補正量を補正量特定手段80Bが特定し、この焦点位置補正量に応じてレーザ駆動制御部が焦点位置を調整するようZ軸スキャナを制御してレーザ光を走査する。これにより、熱レンズ効果が発生しても加工品質を低下させることなく、高品質な加工を維持できる信頼性の高いレーザ加工が実現される。補正量特定手段80Bによる焦点位置補正量は、レーザマーカの設定時に、加工条件設定部3Cで設定された加工条件に従って自動演算される。この焦点位置補正量に従い、レーザ光照射時には補正された焦点位置で加工するよう、レーザ駆動制御部によりレーザ光走査部9が制御される。
このように、焦点位置の調整機能を有するZ軸スキャナを、3次元加工に利用するのみならず、設定時の熱レンズ効果の補正にも利用することができる。特に熱レンズ効果の補正は、従来は手作業でレーザマーカのワーキングディスタンスを、熱レンズ効果による焦点位置のずれに応じて現場で調整する必要があり、極めて手間がかかっていた。また、レーザパワーやQスイッチ周波数などのレーザ加工条件を変更すると、焦点位置のずれの程度も変化するため、これに応じて一々再設定を行う必要があった。さらに、レーザマーカは加工ブロック毎にレーザパワーやQスイッチ周波数などの加工条件を変更することができるようになっているものが多いが、加工条件の変更は熱レンズ効果の程度も変化させるため、複数の加工ブロック に対して連続的にレーザ光を照射する場合は、すべての加工ブロックにおいて正確な焦点位置の調整を行うことができず、その結果加工品質が加工ブロック毎に一定しないという結果を招いていた。本実施の形態によれば、加工位置の調整を加工ブロック毎に変化させることもできるので、このような問題も解消でき、極めて高品質な加工が実現される。
以下、熱レンズ効果補正機能を図53に基づいて説明する。図53は熱レンズ効果によって焦点位置が変動する様子を示しており、図53(b)を基準として、図53(a)はレーザパワーが大きい、又はQスイッチ周波数が小さい場合に、実線で示すように焦点距離が長く伸びる状態を、図53(c)はレーザパワーが小さい、又はQスイッチ周波数が大きい場合、実線で示すように焦点距離が短くなる状態を、それぞれ示している。
例えばYVO4やYAGのような固体レーザにおいては、固体レーザ媒質が熱を帯びると熱レンズ効果が発生し、焦点位置が本来の位置からずれる現象が生じる。焦点位置のずれ量は、レーザ発振器内部に滞留する熱量に比例する。これは、(投入パワー)−(レーザ平均出力)と等価であり、投入パワーはレーザパワーの設定値、レーザ平均出力はQスイッチ周波数の関数であるから、焦点位置のずれ量ΔVspotはΔVspot=f(P、Q)で表現できる。ここでPはパワー設定値、QはQスイッチ関連パラメータ(Qスイッチ周波数、ON/OFFデューティ等)である。
一方でレーザマーカは、光軸方向に焦点位置を調整できるレーザ光走査部9としてZ軸スキャナを搭載している。そこで、Z軸スキャナを利用して、このずれ量を相殺するように制御する。例えば、図53(a)に実線で示すようにレーザパワーが大きい、Qスイッチ周波数が小さい、又はON/OFFデューティ比が大きくなる場合は、焦点位置が遠くなるように変化する。よってこれを補正するために、図53(a)に破線で示すように、Z軸スキャナを制御して焦点位置を手前側、すなわちスポット径を細くするように調整する。逆に図53(c)に実線で示すようにレーザパワーが小さい、Qスイッチ周波数が大きい、又はON/OFFデューティ比が小さくなる場合は、焦点距離が短くなるので、図53(c)に破線で示すように焦点位置を近付けるよう、すなわちスポット径が太くするようにZ軸スキャナを制御する。
また、レーザ発振部そのものではなく、LBO等の波長変換素子においても、固体レーザ媒質と同様に熱レンズ効果が発生するため、このような熱レンズ効果補正機能は有効である。また波長変換素子はその内部を通過したビームの強度により広がり角が変化するので、これを補正するためにも同様に焦点位置調整手段であるZ軸スキャナを利用できる。
さらにCO2レーザ等、固体レーザ媒質を使用しないレーザ加工装置においても、外部のレンズ等の光学素子が、これを通過するレーザビームのパワーにより加熱されると、光学素子の熱膨張やひずみ等により焦点位置が変化することが生じる。このような場合の補正においても、焦点位置調整手段であるZ軸スキャナを利用できる。
(熱平衡状態までの遷移期間)
また、レーザパワーやQスイッチ周波数を変更した後、熱レンズ効果が熱平衡状態に至る時間が長い設計も考えられる。例えば固体レーザ媒質が大きい場合、固体レーザ媒質が熱容量の大きな部材と接触している場合などが考えられる。この場合は、焦点位置補正量を動的に変更することで、このような過渡的な期間においても適切な補正を行うことができる。例えば、時間変化を考慮した焦点位置補正量としてΔVspot=f”(P、Q、t)(t:時間)で表現できる。
さらに熱レンズ効果の程度は固体レーザ媒質による個体差がある場合も考えられる。この場合には関数f”(P、Q、t)の係数や定数を個体毎に調整し補正することもできる。加えて、経時変化も考慮して焦点位置補正量を調整することもできる。
(デフォーカス量の重畳)
また、Z軸スキャナを備える3次元加工が可能なレーザマーカは、上述のとおり焦点位置を意図的にずらして加工するデフォーカス機能を備える。すなわち、ユーザが加工条件設定部3C、具体的には図52のデフォーカス設定欄204mから、加工ブロック毎に光軸方向のスポット位置を変更して、スポット径を大きくして太字で印字したり、スポット径を小さくして細く印字することが可能である。このような場合においても、上述した焦点位置補正量を加味した制御を行う。具体的には、ユーザの所望のスポット位置をΔYspotとすると、この値を焦点位置補正量に加算したΔYspot+ΔVspotを焦点位置として制御する。このように、デフォーカスが設定されている場合は、このデフォーカス量をオフセットして焦点位置調整手段を制御することで、適切な加工が実現される。
(焦点位置に応じたディレイ量制御)
また焦点位置の調整量に伴って、上述したディレイ動作も変更するよう制御することもできる。上述のとおり加工ブロック毎に加工条件を変化させる場合は、加工ブロック毎にZ軸スキャナを動作させることになる。この際のZ軸スキャナの移動量は、その前段の加工ブロックの加工パターン、及び焦点位置補正量に依存する。したがって、前後する加工ブロック間での差を考慮して、ディレイ量すなわち遅れ時間を変化させるよう制御することで、実際のZ軸スキャナの移動量に応じた適切なディレイ動作を実行できる。
(補正量特定手段80B)
次に、補正量特定手段80Bで熱レンズ効果による光軸方向の焦点位置補正量を決定する手順を説明する。焦点位置補正量の特定は、予めレーザ加工条件に応じて熱レンズ効果によるずれ量、すなわち焦点位置補正量を記録した補正量記憶手段の一形態である参照テーブルを参照することで、容易に決定できる。補正量特定手段80Bは、加工条件設定部3Cで設定されたレーザ光出力条件、例えばレーザパワー、Qスイッチ周波数、ON/OFFデューティ等のパラメータ値に応じた焦点位置情報を、2次元配列のテーブルデータとして補正量記憶手段に記憶しておき、ここからパラメータ値に応じて対応する焦点位置補正量を読み出すことができる。これにより、補正量特定手段80Bの処理を負荷を軽減し、高速化が図られる。
あるいは、テーブルを利用することなく、設定されたレーザ加工条件から演算により求めることもできる。この場合は、レーザ光出力条件に応じて発生する熱レンズ効果による焦点位置のずれ量を演算するための演算式を、予め補正量特定手段80Bに設定しておき、この演算式に基づいて補正量特定手段80Bが各レーザ加工条件毎の焦点位置補正量を演算する。この方法であれば、テーブルなどの記憶素子を用いることなく、焦点位置補正量を適切に決定できる。また、複数の演算式を用意しておき、切り替えて用いることもできる。演算式としては、ΔVspot=aP−f’(Q)+c(a、b、cは定数;Pはレーザパワー;QはQスイッチ関連パラメータ(Qスイッチ周波数、ON/OFFデューティ等))等に設定できる。この演算式を用いることで、P、Qのパラメータ値変更に伴いΔVspotが計算でき、この値に基づいてワーク上に焦点が合うようにZ軸スキャナをリアルタイムに制御することができる。
さらにいずれの場合も、補正量記憶手段や補正量特定手段80Bは、コントローラ1A側に配置することができる。例えば図1のメモリ部5に設けられた展開情報用メモリ5cに、このような焦点位置補正量を保持させておき、加工時に参照する。
(加工条件設定データの流れ)
図54に、ユーザによる加工条件設定の入力から加工開始までの処理におけるデータの流れを説明したブロック図を示す。図54において、印字設定の入力値401は、図11等の加工条件設定部3Cで設定され記憶部5Aに記憶された加工条件の設定情報に相当する。ここでは、レーザパワーやQスイッチ周波数、デフォーカス量ΔYspotなどをユーザが図14の画面から入力する。また、基本文字線分情報402は、図1の基本文字線分情報用メモリ5bに記憶された情報である。これらの情報から文字座標情報403、印字パワー・スピード等情報404及び加工後文字線分情報405が展開処理によって生成される。これらの情報を含む展開情報は、図1の展開情報用メモリ5cに相当する印字時参照メモリ406に記憶される。そして、印字時参照メモリ406に記憶された展開情報は、印字開始指令に伴ってコントローラ部のレジスタ407及びFIFOメモリ408に渡される。
(焦点位置補正量を決定する手順)
次に、Z軸スキャナに与える焦点位置補正量を決定する手順を、図55のフローチャートに基づいて説明する。まずステップS1で、加工条件を設定する。具体的には、ユーザが加工条件設定部3Cから、レーザ光出力条件として、Qスイッチ19から出射されるレーザパワー、Qスイッチ周波数又はQスイッチのON/OFFのデューティ比を設定する。また必要に応じて、ステップS2でデフォーカス量ΔYspotを設定する。次いでステップS3で、加工パターンの位置情報を設定する。これによって、加工位置のXYZ座標が決定される。その他、システム情報、設定共通情報及びブロック情報を含む設定情報が入力される。このようにして設定情報が入力されると、ステップS4で加工データが演算される。この段階で焦点位置補正量が補正量特定手段80Bにより加味されて、最終的なZ座標位置であるZ=z(x,y)+ΔYspot+f(P,Q)が決定される。そして印字情報の展開処理が行われ、印字順が決定される。このとき、図54に示した文字座標情報403、印字パワー・スピード等情報404及び加工後文字線分情報405が生成される。より具体的には、ユーザの入力した文字サイズ、助走長、太線幅にしたがって、基本文字線分情報で定義された文字の拡大縮小、助走線分の付加、及び太線化処理(必要な場合)を実行する。このようにして生成された展開情報は、印字時参照メモリ406(展開情報用メモリ5c)に一旦格納される。この後、ユーザが印字開始指令を入力するのを待つ。
印字実行指令の入力があれば、ステップS5で、印字データが出力され、印字処理の実行に移る。この際、必要に応じて時間、日付、ランク等の更新文字の決定をした後、展開情報がレジスタ407及びFIFOメモリ408に転送される。印字内容に更新文字が含まれない場合は、印字時参照メモリ406から読み出した展開情報がそのままレジスタ407及びFIFOメモリ408に転送される。更新文字は、時間、日付、ランク、シリアル番号等の印字文字であり、例えば複数のワークに印字するシリアル番号が1ずつ増加するような場合に相当する。更新文字がある場合は、加工条件設定入力の際にユーザが明示的に指示し、印字に使用される可能性のある文字(例えば数字の0から9)の全部について、展開処理が行われる。時間及び期限の印字に関しては、印字開始指令が入力された時点で計算される。上記のようにして展開情報がレジスタ407及びFIFOメモリ408に渡されると、印字が開始される。具体的には、レジスタ407及びFIFOメモリ408に展開情報の蓄積が完了した時点で、あるいはFIFOメモリ408に空き領域が無くなった時点でハードウェア内部の印字開始命令が発行され、印字が開始される。FIFOメモリ408に空き領域が無くなった時点で展開情報に残りがある場合は、展開情報の転送が一旦中断され、印字の実行に伴ってFIFOメモリ408の空き領域が半分になった時点で展開情報の転送が再開される。
以上のように、本実施の形態によれば熱レンズ効果の較正をはじめとする焦点位置の制御に、既存のZ軸スキャナを利用するため、安価にかつ簡易な構成で実現できる。特に加工ブロック毎に加工条件を変更したい場合などには極めて有効である。
(加工量補正機能)
さらにこのレーザ加工装置は、加工対象面の高低差に応じて加工条件を自動的に補正することで、このような高低差によらず加工品質を一定に保持する加工量補正を備えている。この機能について、以下図56〜図61に基づいて説明する。3次元加工が可能なレーザ加工装置では、XY座標に対応したZ座標を関連付けしたデータをメモリ部に保持しておき、XY座標の制御時にこのメモリ部に格納されたZ座標を参照することで、XYZ座標を決定している。これにより、XY座標の制御のみでZ座標も出力される。またXYZ方向への変化分に応じて、加工対象面に照射されるエネルギー密度が均一になるように、レーザ光走査部の走査速度を変化させる。ここではメモリ部からの読み出し時間を制御することで、X・Y・Z軸スキャナの走査速度を制御する。例えば、ZMAPを用いて3次元加工パターンを指定する場合、ZMAPメモリ410(図61)にZ座標を格納する。ZMAPメモリ410は、XY座標411に対応するZ座標412を関連付けた対応関係記憶部として機能する。このZMAPメモリ410は、加工条件設定時には記憶部5A(図11)に保持されており、加工条件設定後にはコントローラ1Aのメモリ部5(図1)に展開されて、加工時に参照される。この方法であれば、Z座標を含めた3次元データを、2次元データとほぼ同様に扱うことができるので内部処理を簡素化できる。
例えば、図56に示すレーザ加工データ設定プログラムのユーザインターフェース画面では、2次元状の、すなわちXY座標設定画面で加工データを表示させた例を示している。この画面では、加工パターンは印字文字「A」であり、2次元状である。従って、図56の画面を3次元表示に切り替えても、図57に示すようにX・Y平面上に、平面状の加工パターンが表示される。この場合のZ座標は0である。この状態で、予めXY座標に関連付けられたZ座標のデータが、ZMAPメモリから参照される。これにより、Z座標を含めた3次元の加工データが生成され、図58に示すように3次元状に表示される。図58の例では、説明を単純にするため加工面を傾斜面としている。ここではZ座標Z=aY(aは定数)で表現される。
(対応関係記憶部)
また、この例に対応する対応関係記憶部として、ZMAPメモリ410のメモリ空間を図59に示す。この図に示すよう、XY座標に応じてテーブル状にZ座標情報が格納されている。図59の例では、図56などに示す印字文字「A」について、座標(x、y)=(0x80,0x7f)の位置におけるZ座標は、この位置のセルに格納されたメモリ値を参照することで決定される。
この方法では、Z座標を簡単に決定できるので、レーザ加工装置内部でのデータ処理を簡素化できる利点が得られる。反面、XY座標の制御のみでZ座標を求めようとすると、Z座標すなわち高さ方向の距離の差が反映されないため、高低差が大きい場合と小さい場合とで加工の際の相対的な走査速度が変わってしまうという問題がある。すなわち、XY平面上で距離が同じであっても、Z軸方向の距離が異なれば、加工すべき線分の長さが変わる。例えば、図60(a)、(b)に示すように、高低差がある加工パターンでは、高低差の大きい方(図60(b))が当然、移動距離が長くなる。図58、図59の例では、傾斜面の横方向、すなわち傾斜角度と交差するY軸方向への移動であれば、高低差がないものの、傾斜面の縦方向、すなわち傾斜角度に沿うX軸方向への移動であれば、高低差が生じるためZ軸スキャナの移動量が大きくなる。移動量が大きくなると、相対的に走査速度が速くなるため、加工対象面に照射されるレーザ照射パワーの密度が低下し、濃度や太さ、深さといった加工の程度に不均一が生じることとなる。(なお、レーザ照射パワーとは、レーザ発振部におけるレーザ光の出力でなく、最終的に加工対象面に照射されるレーザ光の出力を指す。)
(補正走査速度)
そこで、このような高低差による加工の不均一を是正すべく、加工の程度を左右するパラメータ(加工量制御パラメータ)すなわち加工量を補正して、補正加工量を決定すると共に、この補正加工量に基づいて加工を制御する。まず補正加工量の一例として、X・Y軸スキャナの走査速度を加工量補正手段80Mで補正走査速度に補正して制御する場合を考える。ここでは、単純なXY座標のみの制御でなく、XYZ座標の移動量Δx、Δy、Δzを考慮して移動速度を決定し、これにより高低差の変化による相対的な距離又は走査速度の差を低減するような制御を行う。図61に、加工量補正制御の処理を説明したブロック図を示す。ここでは、既に加工条件として加工パターンの3次元データを設定済みとする。まず設定された加工パターンのXY座標411から、ZMAPメモリ410を参照して各XY座標411に関連付けられたメモリ空間に対応するZ座標412を決定する。これらのXYZ座標データは、FIFOメモリ408に格納される。一方で、FIFOメモリ408に格納されたXYZ座標データから、基本移動単位毎の移動量Δx、Δy、Δzを加工量補正手段80Mで演算する。すなわち、XY座標上における加工位置の移動分Δx、Δyに伴い、XY座標の基本移動単位に対するZ座標の変化量ΔZを計算する。演算されたΔx、Δy、Δzデータは、FIFOメモリ408に展開されて、加工量補正手段80MによりこれらΔx、Δy、Δzを加味した補正加工量が演算される。具体的には、Z軸スキャナの移動量Δz又は走査速度を基準として、Z軸スキャナによる焦点位置の移動にX・Y軸スキャナを追随させるように、X・Y軸スキャナの走査速度が演算される。演算された各スキャナの走査速度に従って、FIFOメモリ408から各スキャナに対して制御命令(ここでは座標位置の更新情報409)を送出する。
ここでは、FIFOメモリ408からX・Y軸スキャナへの動作命令が送出されるタイミングを調整することで、スキャナの動作速度を調整している。すなわち、従来は一定のタイミングで各スキャナに対して動作命令を送出していたが、本実施の形態ではX・Y軸スキャナに対する動作命令の送出タイミングをZ軸スキャナと独立させて可変とすることで、結果的にX・Y軸スキャナの走査速度を制御できる。このような制御により、実際の加工対象面上における走査速度の均一化を図ることができ、全体として均一な品質で加工を行うことができる。
なお、この例では応答特性がX・Y軸スキャナに比べ相対的に劣るZ軸スキャナの移動量又は走査速度を基準として、X・Y軸スキャナ側をこれに合わせるよう走査速度を落とす制御を行っている。ただ、この構成に限られず、例えば高速なZ軸スキャナを使用する場合は、X軸又はY軸スキャナの走査に応じてZ軸スキャナの走査速度を速めるような制御も可能である。また、X軸スキャナとY軸スキャナの応答特性が異なる場合は、これらの移動量を合わせるように、いずれかのスキャナの走査速度を制御することもできる。
(基本図形)
また上記の例ではXY座標位置とZ座標位置とを関連付けた対応関係記憶部としてZMAPメモリ410を使用したが、これに限らず予め定められた円柱、円錐、球面などの、XYZ座標が一義的に決まる基本図形の座標情報を対応関係記憶部として利用しても、同様の結果を得ることができる。
さらには、ZMAPデータに限られず、上述の通り他のデータフォーマットで記録された3次元データファイルも利用できる。例えば3次元CAD等の別プログラムで作成された加工対象面のデータファイルとして、DXF、IGES、STEP、STL、GKS等、各種の汎用的なフォーマットや、DWG等、特定のアプリケーションの専用フォーマットを利用できる。これらのデータファイルをレーザ加工データ設定プログラムで取り込んだ後、必要に応じてプログラムで扱える適切なデータ形式に変換して、対応関係記録部を構築できる。この方法では、既に作成されたデータを利用できるので、加工対象面の形状指定作業を大幅に省力化できる。このようなデータの読み込み手段として、上述の通り3次元形状データ入力手段3bと、入力された3次元形状データに対して位置決めするための位置決め手段3cと備えることで、3次元形状データの入力と位置合わせ作業を適切に行える。
いずれの方法による場合も、加工量補正手段80Mは対応関係記憶部からこの加工パターンを読み込んで補正量を決定することができ、これにより3次元形状の均質な加工を実行できる。
(その他の補正加工量)
このように、XY座標上の基本走査移動単位に対して、Z座標上の移動量を算出し、算出された移動量に基づいて実際の加工対象面上における走査速度が一定となるようにレーザ光走査部の移動速度を制御することで、Z座標の移動量によらず、加工深さや太さ、濃度といった加工品質を均一にすることができる。ここでは補正加工量として、スキャナの走査速度を補正走査速度に調整することで、加工量が高低差に拘わらず一定となるよう制御する例を説明したが、補正加工量としてこれに代わって、あるいはこれに加えて、レーザパワーやQスイッチ周波数、スポット径等のパラメータを調整することでも同様の結果を得ることができる。また、移動すべき距離が定まっているので、走査時間も走査速度と同義として扱うことができる。
(レーザ照射パワー制御)
(補正レーザ照射パワー)
例えば、加工対象面の傾斜により走査速度が相対的に速くなり、レーザ照射パワー密度が相対的に低下する場合は、低下分に相当するレーザ照射パワーを付加することで、被照射位置におけるレーザ光のエネルギー密度を同等として加工対象面に照射することができ、加工結果の均一化を図ることができる。具体的には、エネルギー密度が高いほど深い加工となり、低いほど浅い加工となる。エネルギー密度は、次式で表現できる。
エネルギー密度[W=J/S]=レーザ照射パワー[W]/照射面積[mm2]
すなわち単位時間、単位面積あたりに照射されるレーザ照射パワーの大きさがエネルギー密度となる。ここで、照射面積は、次式で表現できる。
照射面積[mm2]=速度[mm/s]*時間[S]*レーザビームスポット径[mm]
上式に従い、Z方向の変化量ΔZに応じて、各加工位置における加工品質が均一となるようにレーザ照射パワーを調整する。これにより、Z軸方向の変化によって実際の加工面上における走査速度が変化することで発生する加工品質のむらを抑制できる。
なお、レーザビームのスポット径を調整することでも、同様にエネルギー密度を調整することができる。ただ、この方法ではZ軸方向の変化量によってスポット径が変化してしまう上、デフォーカス量をユーザが調整できるため、制御が複雑になる。
このように加工量補正手段80Mは、補正加工量として、レーザ光走査部の走査速度の他、レーザ照射パワーやスポット径といったパラメータを調整することでも加工量を一定に近づけるよう制御できる。
(補正加工量の決定方法)
補正走査速度の制御は各ΔZに応じた走査速度データを予め補正加工量記憶部に記憶し、ΔZが算出された時にこれを加工量補正手段80Mで読み出して決定することができる。補正加工量記憶部は記憶部5Aの参照テーブル5Bとして、2次元配列のメモリテーブルデータが利用できる。これにより、安価な構成で補正加工量を容易に決定でき、また加工量補正手段80Mの処理を低負荷とし、高速化できる。あるいは、このようなテーブルを設けることなく、加工量補正手段80Mが演算で補正加工量を決定することもできる。この場合は、加工量補正手段80Mが理論式や曲線データから走査速度データを求める。
(補正加工量の決定タイミング)
また補正加工量を決定するタイミングとしては、テーブルを設けない場合は、レーザ光走査部を走査しながら加工量補正手段80Mでリアルタイムに決定する。あるいは、上述の通り3次元形状データに加工パターンが既に位置決めされ、印字順序が当初から定まっている場合は、予め補正加工量を加工量補正手段80Mで算出して補正加工量記憶部やメモリ部に保持しておき、加工動作時に随時補正加工量を読み出すことができる。これらの詳細については後述する。
なお上記の例では、FIFOメモリ408からレーザ光走査部に出力される座標位置データの送出タイミングを変更することで、X・Y軸スキャナの走査速度を変化させている。ただ、本発明はX・Y軸スキャナの走査速度を変化させるための手法を構成に限定せず、例えば、X・Y軸スキャナのガルバノミラーを回転させるガルバノモータの回転速度を直接制御し、遅く回転させることもできる。
(基本移動単位)
X・Y軸スキャナを移動させる単位は、予め基本移動単位として設定される。すなわち基本移動単位は、XY座標上の座標位置を特定、演算、更新する最小単位となる。この基本移動単位をベースにして、Z座標の移動量が算出される。
基本移動単位は、XY座標の分解能を最小として、任意に設定できる。例えばXY座標の分解能(例えば65536画素×65536画素)とXY座標の基本移動単位を一致させる。この場合は、XY座標上を一画素移動する毎にZ座標の変化量を算出して制御する。この方法であれば細かくΔZを算出して、各区間の補正加工量を制御できるため、高い加工品質が得られる。
あるいは、これよりも大きい基本移動単位を設定できる。例えば2画素分、10画素分といった複数画素で基本移動単位を設定すると、処理量を低減できるので、加工品質よりも加工速度を優先したい場合には好適である。さらに基本移動単位はデフォルトで既定値を設定したり、ユーザが任意の値に調整可能とすることもできる。
(XY座標の移動方向に基づく基本移動単位の制御)
またX・Y軸スキャナの走査速度はZ座標の変化量とは別に、XY座標上での移動方向によって変更することもできる。具体的には、XY座標単独の移動と、X座標、Y座標を同時に移動する、すなわち斜め方向に移動した場合とで、異なる基本移動単位を設定することができる。例えばXY座標上で縦又は横にそれぞれ移動したときは移動単位として1を設定し、斜めに移動したときは移動単位として1.41、あるいはこれを近似した1.5に各々設定する。このようにXY座標の移動方向に応じて基本移動単位を2通りに設定することで、縦横斜めの基本移動単位を正方形状に近似できる。また、斜めに移動したときでも移動単位として1を設定して、基本移動単位を1通りに統一しておくことも可能であることはいうまでもない。
なお基本移動単位を2通りに設定すると、XYの移動方向に応じて場合分けした補正走査速度や補正レーザ照射パワーを算出しなければならないため、演算処理が複雑化する。そこで、斜めに移動した場合にも同一の移動量に近似できるように、例えば縦横に移動した場合は、3画素分(1+1+1=3)を基本移動単位とし、斜めに移動した場合には2画素分(1.5+1.5=3)を基本移動単位とするように設定することもできる。これにより、後述する図67、図70に示すようにXY平面での移動量を均一とした円形状に近似することができる。
(Z座標の移動量の算出方法)
以上のようにして決定されるXY座標上の基本移動単位に従って、Z座標の移動量が演算される。すなわち、Z座標の移動量を、XY座標上の基準となる基準移動単位に対して算出することで、Z座標の変化に応じたX・Y軸スキャナの補正加工量を適切に設定できる。次に、補正加工量としてZ座標の移動量を算出する具体的な方法として、2つの例を説明する。
(1)各XY座標にZ座標を個々に格納
補正加工量記憶部に、各XY座標に対応するZ座標を格納する。具体的には、XY座標(例えば65536画素×65536画素)の各座標位置が各々Z座標を格納している場合は、XY座標の移動に基づいて対応するZ座標を読み出して、Z方向の移動量を算出する。
(2)加工面をブロック単位に分割
各画素に個別にZ座標を格納する方法では、分解能が高くなる程、補正加工量記憶部に必要なメモリ量が大きくなる。そこで、加工面をブロック単位に分割して、ブロック単位でZ座標を決定する構成としてもよい。例えば、65536画素×65536画素を有するXY座標を、256画素×256画素の大きさのブロックに分割し、256個×256個の各ブロックにZ座標を算出する異なる平面式を割り当てる。そして加工対象のXY座標位置が所属するブロックの平面式に基づいて、Z座標を近似的に算出する。この方法によれば、Z座標を演算で求める上、ブロック単位で平面式を保持すれば足りるので、必要なメモリ量を大幅に低減できる。
このように、Z座標の移動量の算出は印字パターンを設定し、設定された加工パターンのXY座標上におけるZ座標上の加工位置が決まった時点で算出可能となる。したがって、加工しながらリアルタイムにZ座標の移動量を算出する以外にも、加工パターンを設定した時点で予め移動量も算出しておき、これを保持しておくことで、加工時に読み出されるZ座標に応じて制御することもできる。
(補正加工量の制御)
XY座標の基本移動単位を1通りとした場合には、Z座標の変化量に基づいて制御対象の補正加工量を決定する。2通りの場合はXYの移動方向によって場合分けした上で、Z座標の変化量に基づいて補正加工量を決定する。
(1)XY座標上における走査速度(時間)の制御
加工量制御パラメータを制御する基準となる区間として、座標位置情報を更新する単位を単位区間Δとする。XY座標の単位区間Δを走査位置が移動するのに要する走査時間(距離が定まっているので走査速度と同義)を制御する。具体的には、ΔXYZをXY座標の単位区間Δにおける加工対象面上の実際の印字距離として定義し、tを上記走査時間として定義すると、
ΔXYZ/t=定数
となるように各ΔXYZ区間における走査時間tを制御する。ΔXYZ/tは印字表面上での印字位置の移動速度を示す。したがってこれが一定となるようにtを制御すれば、加工対象面上での印字位置の移動速度を一定にすることができる。走査速度は、上述の通りFIFOメモリ408からレーザ光走査部に出力する座標データの更新タイミングを変更することで制御する。またこれに加えて、レーザのON/OFFを制御するQスイッチも同時に制御することで、より均一な印字が可能となる。
(2)レーザ照射パワーの制御
一方、レーザ照射パワーの制御によっても補正加工量を調整できる。ここではΔXYZが大きいほど、レーザ照射パワーPを大きくするように制御する。具体的には、
P/ΔXYZ=定数
となるように各ΔXYZ区間におけるレーザ照射パワーPを制御する。この方法でも各照射位置におけるエネルギー密度を一定とすることができる。レーザ照射パワーの制御は、励起光源であるLD電流を制御することにより行う。またレーザ光のスポット径やQスイッチ周波数の制御でも同様の効果が得られる。例えば走査速度が速くなると印字ドットの密度が粗くなり、遅くなると濃くなる。このため、走査速度の変化に合わせてQスイッチ周波数も変化させることで、印字ドットの密度を一定に保つことができる。
(加工量制御パラメータ)
このように、加工対象面上でのエネルギー密度を一定にするための加工量制御パラメータとして、加工対象面に照射するレーザ照射パワー、加工対象面上での走査速度又は距離(走査速度×時間)が挙げられる。XYZ情報に応じて、これらの加工量制御パラメータを調整して制御することにより、加工位置によらずエネルギー密度を一定にできる。また、レーザ光走査部の動作に関して、X・Y軸スキャナがほぼ同じ駆動特性を持ち、Z軸スキャナの駆動特性が異なる場合、X・Y軸スキャナの制御パラメータとZ軸スキャナの制御パラメータを分離することによって、より最適な加工量制御パラメータの制御が可能となる。
(加工量制御パラメータの制御)
以下、これらの方法の組み合わせも含めた詳細について説明する。加工量制御パラメータを、X・Y・Z軸スキャナの制御に組み合わせることで、加工量を補正するパターンとしては以下の6つが考えられる。
(1)補正走査速度
XYZ軸方向への移動量を算出し、算出された移動量に応じて走査速度を制御する。また基本移動単位として、(A)XYがX軸方向のみ、Y軸方向のみへそれぞれ移動した場合の基本移動単位と、(B)XY軸の両方が移動した場合、すなわちXY軸上を斜めに移動した場合の基本移動単位とを異なる値に設定することもでき、この場合にはZ軸方向への移動量が同じでも、異なるXYZ移動量となる。
ここで、図62に示すような蒲鉾形の背面を加工対象面WS’として、レーザ光を走査する場合の移動量を考える。ZMAPを利用してXY座標に対応したZ座標を決定する場合の、X・Y平面での移動量に対応したX・Z平面における実際のレーザ光走査部の軌跡と、単位区間Δの移動に要した時間t及びレーザ照射パワーのイメージを、図63に示す。ここでは走査速度を調整した補正走査速度を、加工量制御パラメータとして制御する。まずXY平面での単位区間Δにおける移動量Δxyに応じてZ方向への移動量すなわち高低差Δzを算出する。そして、各単位区間Δにおける加工対象面上の実際の走査速度(Δxyz/Δt)が均一になるように、各単位区間Δの加工時間Δtを調整する。これにより、XYZ方向を考慮した加工対象面上での走査速度を、位置によらず一定に維持できる。この例では、各単位区間Δでのレーザ照射パワーは一定に維持しつつ、Z軸スキャナの走査速度を基準として、X・Y軸スキャナの走査速度を制御する。図63に示す例では、加工対象面の端部に近い程、高低差Δzが大きくなるため、加工に要する時間Δtも大きくなり、t3>t2>t1となる。
また、この場合の加工量補正制御の処理を、図64のブロック図に示す。この図は、図61の機能ブロック図に対応する。ここではXYZ座標413がFIFOメモリ408に格納される。また加工量補正手段80MがXYZ方向の各変化分ΔX、ΔY、ΔZを決定すると共に、この値に応じて加工量(ここではXYZ方向を考慮した加工対象面上での走査速度)が均一になるように、X・Y軸スキャナの走査速度をスキャナ駆動制御部で変化させる。すなわち、FIFOメモリ408からの補正後のXYZ座標位置414の読み出しタイミングを制御して、XYZ軸スキャナの走査速度を制御する。また必要に応じて、ΔX、ΔY、ΔZに基づいて加工量補正手段80MがQスイッチ周波数を制御し、レーザ出力の周波数制御も行う。
(2)補正レーザ照射パワー
XYZ軸方向への移動量を算出し、算出された移動量に応じてレーザ照射パワーを制御する。この方法は、上記(1)において制御する加工量制御パラメータを、レーザ照射パワーに変更したものである。図65に、このような制御の流れを示す。ここではXYZ座標413がFIFOメモリ408に格納されており、XYZの変化分に応じてエネルギー密度が均一になるようにレーザ照射パワーを変化させる。具体的には、XYZ座標413が図64と同様にFIFOメモリ408に格納されて、補正後のXYZ座標位置414がレーザ光走査部に出力される。一方、加工量補正手段80MがXYZ方向の各変化分ΔX、ΔY、ΔZを決定すると共に、この値に応じて加工量(ここでは加工対象面上でのレーザ照射パワー)が均一になるように、補正レーザ照射パワー、具体的にはLD電流を調整する。このようにして、X・Y・Zの変化分に応じて補正レーザ照射パワーを変化させ、加工量が一定になるよう制御する。
(3)補正走査速度(X・Y軸スキャナ)+補正レーザ照射パワー(Z軸スキャナ)
上記(1)、(2)の例では、X・Y軸スキャナとZ軸スキャナの制御に、同じ加工量制御パラメータを用いているが、X・Y軸スキャナとZ軸スキャナとで加工量制御パラメータを変化させることもできる。まず(3)として、X・Y軸スキャナについては補正走査速度を、Z軸スキャナについては補正レーザ照射パワーを、それぞれ加工量制御パラメータとしている。すなわちXY座標の移動量に基づいてXY座標上の走査速度を制御し、かつZ座標の移動量に基づいてレーザ照射パワーを制御する。
ここではX・Y軸スキャナについて、縦横方向への移動と、斜め方向への移動に応じて場合分けしている。X・Y軸スキャナの基本移動単位をXY座標の分解能と一致させる場合は、斜め方向には正方形のセル状の対角線方向に移動するため、XY座標上をやや長い距離移動することになる。この場合、基本移動単位を2通りに設定し、各々の移動方向に応じた場合分けをすることにより精度の高い制御が可能となる。一方、基本移動単位を分解能よりも大きくした場合は、複数画素で基本移動単位を構成する。この場合、X・Y軸スキャナの移動を縦横同時に行って斜めに移動させると、正方形のセル状の対角線上の軌跡となるため、縦横に比べ移動距離が増すことになる。したがって、単位区間Δで比較した場合は相対移動速度が縦横に比べ、斜め方向への移動が速くなる。速度の不均一は、加工むらの原因となる。そこで、相対的な加工量を一致させるべく、相対速度を一定にする。ここでは、X・Y軸スキャナの縦横方向への走査速度を、斜め方向よりも遅くなるように制御する。例えば縦横と斜めとの比率を1:1.5に近似すると、斜め方向への移動を基準として縦横方向への移動速度を1/1.5倍とする。
この制御を、図66に基づいて説明する。ここではXY座標、Z座標が異なるメモリ空間に格納される。まずXY座標411をFIFOメモリ408に格納した後、変化量Δx、Δyを加工量補正手段80Mで算出し、補正走査速度を決定する。これによりXY座標の変化、具体的には縦横・斜めの移動方向に応じて加工量が均一になるように走査速度を制御できる。また必要に応じて加工量補正手段80MがQスイッチ周波数を制御し、レーザ出力の周波数制御も行う。
一方で、ZMAPメモリ410を参照してXY座標411に対応するZ座標412を読み出し、レーザ光走査部に対してXYZ座標位置の更新データを送出する。この際、単位区分の変化量ΔZを算出し、これに応じて補正レーザ照射パワー、具体的にはLD電流を調整する。このように、補正後のX・Y軸スキャナの走査速度でエネルギー密度が均一になるように、Zの変化分に応じたレーザ照射パワーを変化させる。このようにX・Y軸スキャナとZ軸スキャナの制御を分離し、異なる加工量制御パラメータに基づいて制御することもできる。
(4)距離一定(X・Y軸スキャナ)+補正走査速度(Z軸スキャナ)
上記(3)の例では、X・Y軸スキャナの移動方向に応じた場合分けを行っているが、X・Y軸スキャナの移動量を方向によらず一定に維持することもできる。(4)では、XY座標の移動量は、縦横斜めのどの方向に対しても同じ距離の線分ベクトルとなるように制御され、Z座標の移動量のみに基づいて走査速度を制御する。この場合の図62に示す加工対象面に対するレーザ光を走査する場合の移動量を図67及び図68に示す。図67は、XY平面におけるX・Y軸スキャナの縦、横、斜め方向への基本移動単位を、図68はX・Z平面における加工対象面上のレーザ光の軌跡、基本移動単位の移動に要した時間t及びレーザ照射パワーのイメージを、それぞれ示す。
図67に示すように、X・Y方向への移動量は常に線分ベクトルになるように規定される。すなわち、XY平面上における縦横方向への基本移動単位と、斜め方向への基本移動単位がほぼ一致するように制御される。例えば縦横方向への基本移動単位を3画素、斜め方向への基本移動単位を2画素として円状の線分ベクトル圏内に近似する。これにより、いずれの方向への基本移動単位も等しくなり、斜め方向移動の場合分けを不要とできる。このような制御を実現するために、XY平面上での走査速度Δxy/Δtxyを均一とするように移動距離の変化量Δxyを算出する。
次にZ方向への変化量Δzを求め、さらにXY平面上での走査速度(Δxy/Δtxy)*Z方向への走査速度(Δz/Δtz)が均一になるように、単位区間Δの加工時間Δtzを算出する。この結果、単位時間Δtz=f(Δxy/Δtxy,Δz)となる。この場合も図63と同様に、加工対象面の端部に近付き高低差Δzが大きくなる程、Δtは大きくなり、t3>t2>t1となる。また、各単位区間Δでのレーザ照射パワーは一定に維持される。このようにして、X・Y軸スキャナを移動距離、Z軸スキャナを補正走査速度の加工量制御パラメータに基づいて制御する。
図69に、このような制御の流れを示す。ここではXY座標、Z座標が異なるメモリ空間に格納され、さらにXYは線分ベクトルになるよう分割され、Z方向の変化量ΔZに応じて補正走査速度を決定する。具体的にはXY座標411からZMAPメモリ410を参照してZ座標412を読み出し、XYZ座標をFIFOメモリ408に格納する。この際、単位区分の変化量ΔZを算出し、これに応じて加工量、具体的にはZ軸スキャナの補正走査速度を決定する。また必要に応じて加工量補正手段80MがQスイッチ周波数を制御し、レーザ出力の周波数制御も行う。この方法によれば、XY平面での移動距離が線分ベクトルで規定されるため、X・Y軸スキャナの移動方向に応じた場合分けが不要で、制御を簡素化できる。
(5)距離一定(X・Y軸スキャナ)+補正レーザ照射パワー(Z軸スキャナ)
(5)では、(4)と同じくX・Y軸スキャナの移動を線分ベクトルで規定し、Z座標の移動量のみに基づいてレーザ照射パワーを制御する。この様子を、図70及び図71に基づいて説明する。ここでは、図67と同様にXY平面上での走査速度Δxy/Δtxyを均一とするように、移動距離の変化量Δxyを算出する。
次に、図68の走査速度に代わって、レーザ照射パワーを制御する。具体的には、図71に示すように、Z方向への変化量Δzを求め、さらにXY平面上での走査速度(Δxy/Δtxy)*Z方向のレーザ照射パワーの変化量(ΔP/Δz)が均一になるように、単位区間Δのレーザ照射パワーの変化量ΔPを算出する。ここでは単位区間Δのレーザ照射パワーの変化量ΔPは、ΔP=f(Δxy/Δtxy,Δz)で表現できる。図71に示すように、加工対象面の端部に近付き高低差Δzが大きくなる程、ΔPは大きくなり、P3>P2>P1となる。なお、レーザ光走査部の走査速度は一定に維持される。このようにして、X・Y軸スキャナを移動距離、Z軸スキャナを補正レーザ照射パワーの加工量制御パラメータに基づいて制御する。
図72に、このような制御の流れを示す。ここでは図69と同様に、XY座標、Z座標が異なるメモリ空間に格納され、さらにXYは線分ベクトルになるよう分割され、Z方向の変化量ΔZに応じて補正レーザ照射パワーを決定する。具体的にはXY座標411からZMAPメモリ410を参照してZ座標412を読み出し、XYZ座標をFIFOメモリ408に格納する。この際、単位区分の変化量ΔZを算出し、これに応じて加工量、具体的には補正レーザ照射パワーを決定する。この方法によれば、XY平面での移動距離が線分ベクトルで規定されるため、X・Y軸スキャナの移動方向に応じた場合分けが不要で、制御を簡素化できる。
(6)補正レーザ照射パワー(X・Y軸スキャナ)+補正走査速度(Z軸スキャナ)
(6)ではXY座標の移動量に基づいてXY座標上のレーザ照射パワーを制御し、Z座標の移動量に基づいて走査速度を制御する。ここでも、XY座標、Z座標が異なるメモリ空間に格納され、XYの変化分に応じてエネルギー密度が均一になるようにレーザ照射パワーを制御し、さらにそのパワーでエネルギー密度が均一になるようにZの変化分に応じてX・Y軸スキャナの走査速度を変化させる。
図73に、このような制御の流れを示す。まずXY座標411からZMAPメモリ410を参照してZ座標412を読み出し、XYZ座標をFIFOメモリ408に格納する。またXY方向の変化分ΔX、ΔYを加工量補正手段80Mで決定し、この値に応じて加工量(ここでは加工対象面上でのレーザ照射パワー)が均一になるように、補正レーザ照射パワーを演算し、LD電流を調整するパワー制御を行う。例えばX・Y軸スキャナが斜めに移動すると、LD電流を縦横移動時の1.5倍にする。
一方、Z方向の変化分ΔZを加工量補正手段80Mで決定し、この値に応じて加工量(ここではXYZ方向を考慮した加工対象面上での走査速度)が均一になるように、レーザ光走査部を制御する。例えばFIFOメモリ408からの座標位置データの読み出しタイミングを制御して、XYZ軸スキャナの走査速度をスキャナ駆動制御部で変化させる。また必要に応じて、ΔZに基づいて加工量補正手段80MがQスイッチ周波数を制御し、レーザ出力の周波数制御も行う。このようにして、X・Y軸スキャナを補正走査速度、Z軸スキャナを補正レーザ照射パワーの加工量制御パラメータに基づいて制御する。