JP5106730B2 - 光硬化型樹脂組成物及び該組成物を用いた光ファイバ素線及び光ファイバテープ心線 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、温水浸漬下、高温高湿雰囲気下及びジェリー浸漬下で、十分な強度を保持し(温水耐久性、湿熱耐久性、耐ジェリー性が良く)、長期間の放置後も水素ガスの発生量が少なく、且つ被覆層の除去が容易にできる光硬化型樹脂組成物、及びそれを用いた光ファイバ素線及び光ファイバテープ心線(以下、光ファイバと総称する)に関する。なお、「耐ジェリー性」とは、光ファイバ素線及び光ファイバテープ心線が敷設される際に用いられる緩衝剤(ジェリー)に対する耐性のことを言う。ジェリーは炭化水素系の高級アルコール等にシリカ等を添加した粘調の液体であり、光ファイバはその中に浸積される。したがって、光ファイバに用いられる光硬化型樹脂組成物の硬化膜は「ジェリー」に対する耐性が必要であり、これを「耐ジェリー性」と称している。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバは大容量情報の伝送媒体として実用化され、現在、光ファイバケーブルによる広帯域情報通信網が建設されつつある。
【0003】
光ファイバの製造方法には、プリフォームロッドと呼ばれるガラス母材を電気炉等で溶融紡糸して外径約125μmにし、紡糸と同時に、ガラス上に光硬化型樹脂組成物を塗布し、これを硬化させて単層の樹脂被膜を形成してガラスを被覆する方法と、紡糸したガラス上に光硬化型樹脂組成物を塗布し、場合によりこれを硬化させて一次被覆層とし、次いで二次被覆層を塗布した後、紫外線を照射して2層構造の光硬化型樹脂組成物による硬化被膜を形成して外径約245μmの繊維状に成形する方法とがある。2層被覆におけるガラス上への光硬化型樹脂組成物の塗布及び硬化工程は、一次被覆工程、及び二次被覆工程を別のダイスで塗布する場合と、同時に塗布し硬化させるデュアルコート法の2種類がある。
【0004】
単層被覆の場合、樹脂被覆層のヤング率は、0.5から数10kg/mm2である。また、2層被覆の場合、一次被覆層は、通常ヤング率0.01から1.0kg/mm2の柔軟な被覆層であり、二次被覆層は、通常、ヤング率20から200kg/mm2の比較的堅い被覆層である。これらの被覆層を設ける工程は、導波路であるガラスをチリ、ホコリ、湿気から保護し、ガラスの破断を防止し、更に光ファイバーの外部からかかる力によりガラスが微少変形(マイクロベンド)して光の伝送損失を生じるのを防止する目的で行うものであり、光ファイバを製造する上では重要な工程である。
【0005】
光ファイバを被覆するための光硬化型樹脂組成物には、上記の伝送損失、及び破断強度の低下を防止する機能のみでなく、光ファイバが敷設された場合に、光ファイバが十分その性能を維持するための機能が必要である。つまり、光硬化型樹脂組成物の硬化被膜が高温高湿雰囲気下における湿熱耐久性を有し光ファイバのガラス心材の破断強度を低下させないこと、温水浸漬下において温水耐久性を有し、且つ、ジェリー浸漬下において耐ジェリー性を有し破断強度を低下させないこと、及び、高温(及び高湿)雰囲気下において水素ガスの発生量が少ないこと、等である。
【0006】
以上の光硬化型樹脂組成物の硬化被膜に要求される特性を改良するために、これまで種々の技術が提案されてきている。例えば、特開昭59−92947においては、アミノ基を有するシランカップリング剤を含む組成物が、特開2000−086936には、オキシラン環を有するシランカップリング剤を含む組成物が提案されている。しかしながら、これらの技術においても前記の課題を解決できていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、被覆層が容易に除去でき(被覆層の除去性が良く)、温水浸漬下、高温高湿雰囲気下、ジェリー浸漬下において光ファイバのガラス心材の初期破断強度を維持でき(温水耐久性、湿熱耐久性及び耐ジェリー性が良い)、水素ガスの発生が少ない光硬化型樹脂組成物、及びそれを用いた光ファイバ素線及び光ファイバテープ心線を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者等は、このような状況に鑑み上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、少なくともラジカル重合性オリゴマー(A)とラジカル重合性モノマー(B)と光重合開始剤(C)とを含有する光硬化型樹脂組成物であり、前記組成物が、更に、アルコキシシラン化合物(a)及び塩基性化合物(b)とを含有し、前記アルコキシシラン化合物(a)の含有量が組成物全体に対し0.01重量%以上、0.5重量%未満であり、前記組成物のpHが7未満であり、前記アルコキシシラン化合物(a)が、メルカプト基を有するシランカップリング剤である光硬化型樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記光硬化型樹脂組成物の硬化被膜により被覆された光ファイバ素線を提供するものである。また、更に、本発明は、前記光ファイバ素線の複数を束ねた光ファイバテープ心線を提供するものである。
【0010】
光硬化型樹脂組成物を光ファイバ用ガラス心材の被覆樹脂として用いる際に、従来の技術においては、より低エネルギー量の紫外線を照射して樹脂の硬化被膜とガラスとの密着性を発現するために比較的多量のアルコキシシラン化合物用いてきた。その場合、未反応のアルコキシシラン化合物が残留し、これが徐々にガラス表面と反応することになる。その結果、硬化した樹脂がガラスと必要以上に結合することになり、光ファイバ同士を接合する際、被覆剤を完全に剥離することを困難としていた。本発明の光硬化型樹脂組成物においては、低エネルギー量の紫外線を照射する場合においても塩基性化合物(b)が存在することにより、アルコキシシラン化合物(a)とガラスとの化学的な結合反応が効率的に行われる。したがって、従来の技術と比較してアルコキシシラン化合物(a)の含有量が全組成物に対して0.01重量%以上、0.5重量%未満という少ない量であっても、本発明の光硬化型樹脂組成物による硬化被膜は光ファイバの製造初期からガラス表面に強固に密着し、また、製造後長期間を経ても硬化被膜の状態は変化せず、ガラス心材を種々の環境条件から長期間保護することが可能となる。
【0011】
なお、本発明の光硬化型樹脂組成物は多層系の光ファイバ樹脂被膜として用いる場合、ガラス心材と直に接する一次被覆層のみに用いても良いし、一次被覆層のみではなく二次被覆層以降にも用いても良い。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明を実施する上で選択可能な各種構成要件等について、以下に詳しく説明する。本発明の光硬化型樹脂組成物に含有される必須の成分であるアルコキシシラン化合物(a)とは、アルコキシシリル基を1つ以上含む化合物をいう。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリス(βメトキシエトキシ)シリル基等があるが、これらの中でもトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基を有することが好ましい。トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基を有するアルコキシシラン化合物(a)を含有する光硬化型樹脂組成物は、放置安定性が良く、光ファイバのガラス心材の初期破断強度が長期間ほとんど変化しない。アルコキシシラン化合物(a)としては、アルコキシシリル基とアルコキシシリル基以外の反応性基を持つシランカップリング剤(a−1)と反応性基を有さないアルコキシシラン化合物(a−2)がある。
【0013】
シランカップリング剤(a−1)としては、以下の化合物が挙げられる。ビニル基含有シラン(a−1−1)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン等がある。
【0014】
エポキシ基含有シラン(a−1−2)としては、例えば、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等がある。
【0015】
メタクリロキシ基又はアクリロキシ基含有シラン(a−1−3)としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等がある。
【0016】
アミノ基含有シラン(a−1−4)としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−4,5−ジヒドロイミダゾロ−1−イル−プロピルトリエトキシシラン、N−[2−(ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン等がある。
【0017】
メルカプト基含有シラン(a−1−5)としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が、イソシアナト基含有シラン(a−1−5)としては、例えば、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン等がある。
【0018】
反応性基を有さないアルコキシシラン化合物(a−2)としては、テトラメトキシオルソシリケート、テトラエトキシオルソシリケート、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等がある。又、イソシアナート基を持つオリゴマー又はポリマーに、アミノ基含有シラン(a−1−4)を反応させた化合物、水酸基を持つオリゴマー又はポリマーに、イソシアナート基含有シラン(a−1−5)を反応させた化合物、エポキシ基を持つオリゴマー又はポリマーに、アミノ基含有シラン(a−1−4)を反応させた化合物、カルボン酸基を持つオリゴマー又はポリマーに、アミノ基含有シラン(a−1−4)又はエポキシ基含有シラン(a−1−2)を反応させた化合物、ラジカル重合性モノマーとメタクリロキシ基又はアクリロキシ基含有シラン(a−1−3)のラジカル共重合体等がある。
【0019】
アルコキシシラン化合物(a)としては、メルカプト基含有シラン(a−1−5)あるいはエポキシ基含有シラン(a−1−2)を用いると温水雰囲気下の光ファイバの強度維持(温水耐久性)と被覆層の除去性(被覆除去性)の両方が良好となる。エポキシ基含有シラン(a−1−2)は、温水耐久性を得る上で有用であるが、メルカプト基含有シラン(a−1−5)は前記二つの特性を得る上でより効果的である。メルカプト基含有シラン(a−1−5)を単独で用いることにより前記二つの特性を向上させることができるが、メルカプト基含有シラン(a−1−5)とエポキシ基含有シラン(a−1−2)を併用することが特に好ましい。メルカプト基含有シラン(a−1−5)、エポキシ基含有シラン(a−1−2)は、それぞれ、2種以上の同系のシランを併用して良い。
【0020】
アルコキシシラン化合物(a)は、全組成物100重量%に対し、0.01以上、0.5重量%未満含有することが重要である。0.01重量部より少ないと、温水雰囲気下、ジェリー浸漬下で、光ファイバのガラス心材の強度が低下してしまう(温水耐久性、耐ジェリー性が劣る)。0.5重量%以上添加すると、光ファイバを接続する際、被覆層の除去が難しい(被覆層の除去性が悪い)。
【0021】
本発明の光硬化型樹脂組成物における必須成分である塩基性化合物(b)としては、ラジカル重合性基を有する塩基性化合物であることが好ましい。また、分子量が400〜4000の塩基性化合物であることも好ましいが、ラジカル重合性基を有し、分子量が400〜4000の塩基性化合物であることが特に好ましい。
【0022】
更に、塩基性化合物(b)としては、分子内にウレタン結合やアミド結合等を有する化合物も挙げられるが、本発明で用いる塩基性化合物(b)としては、分子内にアミノ基を有する化合物であることが好ましい。そのような化合物としては、以下に例示する(b−1)〜(b−5)の化合物がある。
【0023】
(b−1)ラジカル重合性の基を持たないアミン類:例えば、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等のアルキル1級アミン、ジオレイルアミン等のアルキル2級アミン、ジメチルラウリルアミン等のアルキル3級アミン、オレイルプロピレンジアミン等のアルキルジアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン等のモルフォリン類等。
【0024】
(b−2)ラジカル重合性基を持ったアミン類:例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン等。
【0025】
(b−3)光増感剤として有用な芳香族アミン類:例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアEPA)、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル(日本化薬社製カヤキュアDMBI)、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等。
【0026】
(b−4)光安定化剤として有用なヒンダードアミン類、即ち、2,2,6,6テトラメチルピペリジル基、又は1−アルキル−2,2,6,6テトラメチルピペリジル基を持つ化合物:例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゼル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシルエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔16−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1.3.5−トリアジン−2,4−ジイル〕、〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、(ミックスド1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド〔1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカシ〕ジエチル〕ジエチル1−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等がある。これら(b−4)の化合物の具体的な例としては、例えば、分子量が400〜4000のものとしては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製チヌビン144(分子量685.0)、チヌビン292(分子量508.8)、チヌビン123(分子量737.2)、チヌビン440(分子量435.6)、チヌビン622LD(分子量3100〜4000)、チヌビン765(分子量509)、CHIMASSORB 119L(分子量2286)、CHIMASSORB 2020FDL(分子量2600〜3400)、CHIMASSORB 944LD(分子量2000〜3100)、三共株式会社社製サノールLS−770(分子量480.7)、サノールLS−2626(分子量722.1)、サノールLS−744(分子量261.4)、サノールLS−944(分子量>2000)、旭電化工業(株)社製アデカスタブLA−52(分子量847.2)、アデカスタブLA−57(分子量791.1)、アデカスタブLA−62(分子量約900)、アデカスタブLA−67(分子量約900)、アデカスタブLA−63(分子量約2000)、アデカスタブLA−68(分子量約1900)、アデカスタブLA−77(分子量481)等がある。また、ラジカル重合性基をもつヒンダードアミン類としては、アデカスタブLA−87(分子量225.3)、アデカスタブLA−82(分子量239.4)等が、ラジカル重合性基を持たず、分子量が400未満のヒンダードアミンとしては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアルコール(分子量157)、1−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアルコール(分子量171)等がある。
【0027】
(b−5)重合禁止剤として有用な芳香族アミン類:例えば、N,N−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン等、がある。
【0028】
以上の中で、塩基性化合物(b)としてはヒンダードアミン類であることが好ましく、したがって、本発明に用いる塩基性化合物(b)としてはラジカル重合性基をもつヒンダードアミン類、あるいは分子量が400〜4000であるヒンダードアミン類を用いることが、より好ましく、ラジカル重合性基を有し、且つ分子量が400〜4000の範囲にあるヒンダードアミン類を用いることが特に好ましい。ラジカル重合性基を持たず分子量が400未満のヒンダードアミン類を用いると、温水耐久性、湿熱耐久性、被覆層の除去性は良好であるが、光ファイバを長期間、高温雰囲気下、高温高湿雰囲気下に置くと、水素ガスが発生しやすいという欠点がある。また、数平均分子量が4000以上のヒンダードアミン類を用いると、温水雰囲気下で光ファイバのガラス心材の強度が低下しやすい(温水耐久性が劣る)。
【0029】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、組成物中に必須の成分であるアルコキシシラン化合物(a)と塩基性化合物(b)を含有し、更に、組成物のpHが7未満であることが重要である。pHが7より高いと、高温高湿雰囲気下で、光ファイバのガラス心材の強度が低下してしまう(湿熱耐久性が劣る)。なお、組成物のpHは、エタノール/イオン交換水(20ml/5ml)の混合溶液に、組成物1gを加えてpHメータを用いて測定した。
【0030】
なお、塩基性化合物(b)を含まずに、アルコキシシラン化合物(a)のみを含み、pHが7未満である光硬化型樹脂組成物により被覆した光ファイバガラス心材は、温水雰囲気下に長期間置かれることにより強度が低下してしまう(温水耐久性が劣る)。塩基性化合物(b)の添加量は、全組成物100重量%に対し、0.01重量%以上であることが好ましく、組成物のpHが7未満に維持できる量を限度として加えることが重要である。
【0031】
本発明の光重合型樹脂組成物で用いるラジカル重合性オリゴマー(A)としては、末端にビニル基、アクリル基、メタクリル基等ラジカル重合性不飽和基を有する分子量500以上の化合物であることが好ましい。そのようなラジカル重合性オリゴマーとしては、ビニルエーテル、ポリオール(A1)とポリイソシアネート(A2)と末端にラジカル重合性不飽和基と水酸基とを含有する化合物(A3)から合成されるウレタンアクリレート、あるいはグリシジルエーテル化合物と(メタ)アクリル酸等の重合性不飽和基を有するカルボン酸類との反応生成物であるエポキシアクリレート等がある。
【0032】
上記ポリオール(A1)としては、多塩基酸と多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、テトラヒドロフラン、アルキル置換テトラヒドロフラン等の環状エーテルの重合体またはこれらの2種以上の共重合体であるポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。これらのなかでは、数平均分子量が400から20,000のポリオールを用いたウレタンアクリレートが好ましく、中でも数平均分子量が2,000〜12,000のポリオールを用いたウレタンアクリレートを含む組成物は、ヤング率が低く、ガラスとの密着力が強く、湿熱耐久性に優れた光ファイバが得られ、特に好ましい。
【0033】
またポリイソシアネート(A2)としては、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4 −ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトレメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等のポリイソシアネートが使用される。これらのなかでは、分子量500未満のポリイソシアネートを用いたウレタンアクリレートを含む組成物は、粘度が低くなり、塗工性がよく、光硬化型樹脂組成物として、特に好ましい。
【0034】
次に、末端にラジカル重合性不飽和基と水酸基とを有する化合物(A3)としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0035】
また、(A3)として、末端にラジカル重合性不飽和基と水酸基とを有するイソシアヌル酸誘導体も有用である。前記イソシアヌル酸誘導体としては、例えば、イソシアヌル酸にγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、D−グルコノ−1,4−ラクトン、1,10−フェナントレンカルボラクトン、4−ペンテン−5−オリド、12−ドデカノリド等のラクトン類、あるいはエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドやテトラヒドロフラン等の環状エーテルを付加させ、生じた水酸基を(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の重合性不飽和基を有するカルボキシル化合物を脱水縮合あるいはエステル交換反応により反応させたものが通常用いられる。この場合、イソシアヌル酸誘導体と環状エーテルの付加物が有する水酸基を1モル以上残す割合で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等と反応させるのが好ましい。
【0036】
ラジカル重合性オリゴマー(A)としては、上記ラジカル重合性オリゴマーを単独で用いても、複数のオリゴマーを混合して用いても良い。なかでも、プロピレンオキシドの重合体、1,2−ブチレンオキシドの重合体、プロピレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体、1,2−ブチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体から製造されるポリオールのウレタンアクリレートであって、数平均分子量が3,000〜20,000、好ましくは数平均分子量5,000〜15,000のものを含有するラジカル重合性オリゴマー(A)は、組成物の粘度が低いため塗工性が良好で、また硬化性が高いので特に好ましい。
【0037】
ラジカル重合性オリゴマー(A)は、全組成物100重量%に対し、20〜90重量%含有するのが好ましく、なかでも、30〜80重量%含有すると高速硬化性に優れ、硬化物が強靭となるので特に好ましい。
【0038】
次に本発明の光硬化型樹脂組成物に用いるラジカル重合性モノマー(B)としては、例えば、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンサクシネート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、3−アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]アッシドホスフェート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシアルキル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、モルホリン(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム等の単官能モノマーがある。
【0039】
これらのなかでは、それが単独重合した場合の重合体が20℃以下のTgを有する単官能モノマーと単独重合した場合の重合体が50℃以上のTgを有する単官能モノマーを併用した組成物は、組成物の硬化性が良く、且つ、その被覆ファイバの被覆層の除去が容易にでき、有効である。
【0040】
単独重合した場合の重合体が20℃以下のTgを有する単官能モノマーとしては、ラウリルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラウリルアルコールエトキシアクリレート、エポキシステアリルアクリレート、2-(1-メチル-4-ジメチル)ブチル-5-メチル-7-ジメチルオクチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート、フェノールポリアルコキシアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、ノニルフェノールポリプロピレンオキサイド変性アクリレート、ブトキシポリプロピレングリコールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールラクトン変性アクリレート、ラクトン変性2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート等が挙げられる。
【0041】
単独重合した場合の重合体が50℃以上のTgを有するモノマーとしては、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルピリジン、モルホリン(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、ビニルカルバゾール、ビニルホルムアミド等がある。
【0042】
更に、単官能モノマーの中で、ガラスとの密着性が上げ、温水耐久性、湿熱耐久性及び耐ジェリー性を改善する効果のあるモノマーとしては、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、アクリル酸ダイマー、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシアルキルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルオキシエチルアクリレート、イソボルニルオキシエチルアクリレート等のアクリレート類、アクリロイルモルホリン、ダイアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド類、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニルアミド類、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、クロルフェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ラウリルマレイミド等のマレイミド類等がある。
【0043】
単官能モノマーと、2官能モノマー及び/又は多官能モノマーとを併用した組成物は、組成物の硬化性が良く、且つ、その被覆ファイバの被覆層の除去が容易にでき、有効である。
【0044】
2官能モノマーとして、例えば2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートのジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、2,2′−ジ(ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリレート、2,2′−ジ(ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールのジ(メタ)アクリレート、2,2′−ジ(グリシジルオキシフェニル)プロパンの(メタ)アクリル酸付加物等がある。
【0045】
多官能モノマーとして、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、トリメリット酸のトリ(メタ)アクリレートと、トリアリルトリメリット酸、トリアリルイソシアヌレート等がある。
【0046】
ラジカル重合性モノマー(B)として、特に、組成物の硬化性が良く、且つ、温水耐久性、湿熱耐久性及び耐ジェリー性が良く、その被覆ファイバの被覆層の除去が容易である組成物を与えるために、単独重合した場合の重合体が20℃以下のTgを有する単官能モノマーと単独重合した場合の重合体が50℃以上のTgを有するモノマーを併用し、且つ、上述の温水耐久性、湿熱耐久性及び耐ジェリー性を改善する効果のあるモノマーを含み、多官能モノマーを加えることが有効である。
【0047】
ラジカル重合性モノマー(B)は、本発明の光硬化型樹脂組成物を特定粘度に調整し、ファイバーのガラス心材への塗工適正を最適にする目的で加えるもので、全組成物100重量%に対し、通常5〜70重量%を含有させることが好ましい。なかでも、10〜60重量%含有することが硬化性に優れ、温水耐久性、湿熱耐久性及び耐ジェリー性が優れ、その被覆ファイバの被覆層の除去が容易である組成物を得るために、特に好ましい。
【0048】
また、紫外線等により本発明の光硬化型樹脂組成物を硬化させる場合には、上記の成分以外に光重合開始剤(C)を更に加える。
【0049】
光重合開始剤(C)としては、例えば4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン及びベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル及びベンジル誘導体、ベンゾイン及びベンゾイン誘導体、ベンゾインアルキルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2、6ージメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール等がある。
【0050】
これらのなかでは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2、6ージメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾールの群から選ばれる1種または2種類以上の化合物を混合して用いると、組成物の硬化性が上がり、特に好ましい。
【0051】
上記光重合開始剤(C)は、本発明の光ファイバー被覆用組成物を、紫外線等の活性エネルギー線で本発明の光硬化型樹脂組成物を硬化させるために添加するもので、全組成物100重量%に対し0.1〜10重量%含有させることが好ましい。なかでも、未反応溶出分が少なく、且つ、硬化性が優れる点で、0.5〜6重量%を含有することが特に好ましい。
【0052】
更に、本発明の光硬化型樹脂組成物には、上記の成分以外に、その他の添加剤(D)を加えても良い。その他の添加剤(D)としては、ヒドロキノン、メトキノン等の重合禁止剤、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤、亜燐酸エステル系の脱色剤、シリコーンオイル等の消泡剤、離型剤、レベリング剤、顔料等がある。特に、酸化防止剤を添加すると光ファイバの耐久性を高めるので好ましい。
【0053】
酸化防止剤としては、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル残基または3-メチル-6-t-ブチルフェニル残基を有する化合物であれば何れでも良いが、たとえばテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、n-オクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のヒンダードフェノール酸化防止剤、ジトリデシル-3,3'-チオジプロピオネート、ジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ビス[2-メチル-4-{3-n-アルキル(C12またはC14)チオプロピオニルオキシ}-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等の硫黄系酸化防止剤等がある。
【0054】
酸化防止剤の添加量は、組成物100重量%に対し、0.1〜5重量%の範囲が好ましい。
【0055】
本発明の光硬化型樹脂組成物においては次の物性を有することにより、加工性が良好となり、また、光ファイバーの伝送特性も良好となるので好ましい。
【0056】
粘度:B型粘度計での粘度(25℃)は、1,000〜10,000cPであることが好ましい。1,000cP未満、あるいは10,000cPを越えると、光ファイバを高速で製造する際に、光ファイバの外径の変動や光硬化型樹脂組成物が均一に塗工されず、ガラス心材が露出した部分が発生する等の(高速塗工性が悪い)不具合が起きる。
【0057】
ヤング率:本発明の光硬化型樹脂組成物を1次被覆用組成物として用いる場合、前記樹脂組成物の硬化物のヤング率が、0.05〜1.0kg/mm2であることが好ましい。0.05kg/mm2未満の場合、樹脂被覆後の光ファイバを巻き取る際に、光ファイバーの被覆層が破損しやすく、また、1.0kg/mm2を越えると外部から圧力がかかった場合、伝送特性がわるくなる。
【0058】
【実施例】
次に実施例、比較例および光硬化型樹脂組成物調整例等により本発明をより具体的に説明する。
【0059】
1.以下にラジカル重合性オリゴマー(A)の合成例、各実施例及び比較例で用いるラジカル重合性モノマー(B)を記載する。
<単官能のラジカル重合性モノマー(B)>
B1:ノニルフェノールエチレンオキシド1モル変性アクリレート(17℃)
B2:2エチルヘキシル−エチレンオキサイド2モル変性アクリレート(−65℃)、
B3:炭素数14の分岐高級アルコールアクリレート(共栄社化学社製ライトアクリレートIM−A(−56℃)、
B4:イソボルニルアクリレート(94℃)
B5:N−ビニルカプロラクタム(135℃)
B6:N−アクリロイルモルホリン(130℃)
B7:N−ビニルピロリドン(175℃)
ただし、( )内の温度はそれぞれの単量体を単独重合した場合の重合体のTgを示す。
<2官能のラジカル重合性モノマー(B)>
B8:ビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物のジアクリレート
<多官能のラジカル重合性モノマー(B)>
B9:ペンタエリスリトールトリアクリレート
を用いた。
【0060】
2.次に、ラジカル重合性オリゴマー(A)の合成例を以下に記載する。
(合成例1)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコに、数平均分子量8,000のポリプロピレングリコールを800g(0.10モル)、2,4-トリレンジイソシアネート34.6g(0.20モル)を仕込み、撹拌しながら昇温して60℃に達した時点で30分間その温度に保持した。その後、オクチル酸スズ0.04g(ポリウレタン中、46ppm)を添加し、さらに60℃で2時間反応させた。次に、t-ブチルハイドロキノン0.09g(ポリウレタン中、103ppm)、2-ヒドロキシエチルアクリレート23.8(0.206モル)を仕込み、オクチル酸スズ0.04g(ポリウレタン中、46ppm)を加えた。70℃で9時間反応させ、数平均分子量約8,600のラジカル重合性オリゴマー(A1)を得た。
【0061】
(合成例2)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコに、水酸基価:32mgKOH/gのポリ1,2−ブチレンオキシド(数分子量3506)を1052g(0.3モル)、2,4-トリレンジイソシアネートを69.2g(0.4モル)を仕込み、撹拌しながら昇温し60℃に保った。60℃になって30分後、オクチル酸スズ0.02gを添加しさらに60℃で2時間反応させた。次にt-ブチルハイドロキノン0.11g、2-ヒドロキシエチルアクリレート23.2g(0.2モル)を加え、70℃で6時間反応させラジカル重合性オリゴマー(A2:数平均分子量=11442)を得た。
【0062】
(合成例3)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコに、水酸基価22mgKOH/gの1,2−ブチレンオキシド/テトラヒドロフラン共重合体(テトラヒドロフラン85モル%、数平均分子量5100)1020g(0.2モル)、イソホロンジイソシアネート66.3g(0.3モル)を仕込み、撹拌しながら昇温し60℃に保った。60℃になって30分後、ジブチルチンジラウレート0.02gを添加しさらに60℃で2時間反応させた。次にt-ブチルハイドロキノン0.1g、4−ヒドロキシブチルアクリレート28.8g(0.2モル)を仕込み、ジブチルチンジラウレート0.03gを加え、70℃で6時間反応応させラジカル重合性オリゴマー(A3:数平均分子量=11151)を得た。
【0063】
(合成例4)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコに、数平均分子量2000のポリプロピレングリコール2000g(1.0モル)、2,4-トリレンジイソシアネート348g(2.0モル)を仕込み、撹拌しながら昇温し、60℃に保った。60℃になって30分後、ジブチルスズラウレート0.14g(ポリウレタン中、50ppm)を添加し、さらに60℃で、2時間反応させた。次に、t-ブチルハイドロキノン0.28g(ポリウレタン中、100ppm)、2-ヒドロキシエチルアクリレート238g(2.06モル)、を仕込み、ジブチルスズラウレート0.14g(ポリウレタン中、50ppm)を加えた。70℃で1時間反応させ、ラジカル重合性モノマー( B4 )862gを加えた。さらに8時間反応させて、数平均分子量約2,580のラジカル重合性オリゴマー(A’1)とラジカル重合性モノマー(B4)の重量比率30/10の混合物を得た。
【0064】
(合成例5)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコに、数平均分子量2000のポリプロピレングリコール2000g(1.0モル)、イソホロンジイソシアネート335g(2.0モル)を仕込み、撹拌しながら昇温し、60℃に保った。60℃になって30分後、ジブチルスズラウレート0.14g(ポリウレタン中、50ppm)を添加し、さらに60℃で、2時間反応させた。次に、t-ブチルハイドロキノン0.28g(ポリウレタン中、100ppm)、2-ヒドロキシエチルアクリレート238g(2.06モル)、を仕込み、ジブチルスズラウレート0.14g(ポリウレタン中、50ppm)を加えた。70℃で1時間反応させ、ラジカル重合性モノマー( B4 )862gを加え、さらに8時間反応させ、数平均分子量約2,580のラジカル重合性オリゴマー(A’2)とラジカル重合性モノマー(B4)の重量比率30/10の混合物を得た。
【0065】
(合成例6)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコに、2ーヒドロキシプロピルアクリレート791g(6.09モル)、2,4-トリレンジイソシアネート174g(1.0モル)、t-ブチルハイドロキノン0.13g(ポリウレタン中、100ppm)を仕込み、撹拌しながら昇温し、55℃に保った。1時間後、2,4-トリレンジイソシアネート174g(1.0モル)を加え、70℃で、1.5時間反応させた。60℃まで冷却し、2,4-トリレンジイソシアネート174g(1.0モル)を加えた。70℃、1時間反応後、ジブチルスズラウレート0.11g(ポリウレタン中、80ppm)を添加し、70℃で、10時間反応させ、数平均分子量434のラジカル重合性オリゴマー(A’3)を得た。
【0066】
(合成例7)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコに、2ーヒドロキシプロピルアクリレート791g(6.09モル)、イソホロンジイソシアネート168g(1.0モル)、t-ブチルハイドロキノン0.13g(ポリウレタン中、100ppm)を仕込み、撹拌しながら昇温し、55℃に保った。1時間後、2,4-トリレンジイソシアネート174g(1.0モル)を加え、70℃で、1.5時間反応させた。60℃まで冷却し、イソホロンジイソシアネート168g(1.0モル)を加えた。70℃、1時間反応後、ジブチルスズラウレート0.11g(ポリウレタン中、80ppm)を添加し、70℃で、10時間反応させ、数平均分子量434のラジカル重合性オリゴマー(A’4)を得た。
【0067】
(合成例8)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコに、数平均分子量484のビスフェノールA系エポキシアクリレート484g(1.0モル)、2,4-トリレンジイソシアネート174g(1.0モル)を仕込み、撹拌しながら昇温し、60℃に保った。60℃になって30分後、ジブチルスズラウレート0.04g(ポリウレタン中、50ppm)を添加し、さらに60℃で、2時間反応させた。次に、t-ブチルハイドロキノン0.08g(ポリウレタン中、100ppm)、ヒドロキシエチルアクリレート119g(1.03モル)を仕込み、ジブチルスズラウレート0.04g(ポリウレタン中、50ppm)を加えた。70℃で1時間反応後、ラジカル重合性モノマー(B4)194gを加え、さらに8時間反応させ、数平均分子量約780のラジカル重合性オリゴマー(A’5)とラジカル重合性モノマー(B4)の重量比率40/10の混合物を得た。
【0068】
3.以下に各光硬化型樹脂組成物調整例で用いる光重合開始剤(C)を記載する。
C1:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、
C2:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ーフェニルホスフィンオキサイド
C3:3,6−ビス(2−メチルー2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール
C4:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1
C5:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
C6:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
【0069】
4.以下に各光硬化型樹脂組成物調整例で用いる添加剤(D)を記載する。
<酸化防止剤>
AO1:3,9−ビス[2−{3−(t−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピルニルオキシ}−1、1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン
AO2:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
AO3:テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
<紫外線吸収剤>
UV1:2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール
【0070】
5.以下に各光硬化型樹脂組成物調整例で用いるアルコキシシラン化合物(a)を記載する。
a1:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
a2:γ−グルシドキシプロピルトリメトキシシラン
a3:β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
a4:γ−メタクロキシプロピルトリメトキシシラン
a5:N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
【0071】
6.以下に各光硬化型樹脂組成物調整例で用いる塩基性化合物(b)を記載する。
b1:ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート(分子量508.8)
b2:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製チヌビン622LD(分子量3800、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジルエタノールの重合物
b3:ジメチルアミノエチルアクリレート(ラジカル重合性基をもつ塩基性化合物、分子量143)
b4:2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアルコール
(分子量157)
b5:ラウリルアミン(分子量185)
【0072】
7.基本組成物の調製
撹拌機を備えた容器に、表1にしめす配合比率(重量%)で各成分を配合し、55℃で1時間、撹拌混合して基本組成物P1〜P4、S1〜S3を得た。
【0073】
【表1】
【0074】
8.光硬化型樹脂組成物の調製
撹拌機を備えた容器に、表2、表3、表4に示す配合比率(重量%)で、表1に記載の基本組成物P1〜P4、及びS1〜S3に、アルコキシシラン化合物(a)、塩基性化合物(b)を配合し、55℃で1時間、撹拌混合した。その後、混合後1ミクロンのフィルターで濾過後、光硬化型樹脂組成物P1−1〜P1−12、P2−1〜P2−2、P3−1〜P3−2、P4−1〜P4−2(以上一次被覆用樹脂組成物)、S1−1〜S1−2、S2−1、S3−1(以上二次被覆用樹脂組成物)として、光ファイバーの製造に供した。なお、光硬化型樹脂組成物のpHは、エタノール/イオン交換水(20ml/5ml)の混合溶液に、組成物1gを加え、pHメータで測定した。
【0075】
各光硬化型樹脂組成物について、以下に記載した方法により、粘度、照射量200mJ/cm2 における引張弾性率(YM)と引張破壊伸び(EL)、引張破壊強度(TS)、と硬化性を測定した。測定結果を表2、表3中に示す。
(1)粘度:以下Vと略す
JIS K7117に基づき、B型粘度計により、No.4ロータ、回転数60rpmで、25±0.5℃における粘度(単位:mPa・s)を測定した。
(2)引張弾性率:以下、YMと略す
光硬化型樹脂組成物を、ガラス板上に、200±50μmの厚みに塗工し、窒素雰囲気下、120W/cmのメタルハライドランプにより、200mJ/cm2照射し、硬化塗膜を得た。この塗膜を遊離し、JIS K−7113に準拠し、23℃50%RHの条件下で、引張速度1mm/min、標線間25mmにおける2.5%割線弾性率を測定し、引張弾性率(kg/mm2)とした。
(3)引張破壊伸び:以下ELと略す
光硬化型樹脂組成物を、ガラス板上に、200±50μmの厚みに塗工し、窒素雰囲気下、120W/cmのメタルハライドランプにより、200mJ/cm2照射し、硬化塗膜を得た。この塗膜を遊離し、JIS K−7113に準拠し、23℃50%RHの条件下で、引張速度50mm/min、標線間25mmにおける引張破壊伸び(%)を測定した。
(4)引張破壊強度:以下TSと略す
光硬化型樹脂組成物を、ガラス板上に、200±50μmの厚みに塗工し、窒素雰囲気下、120W/cmのメタルハライドランプにより、200mJ/cm2照射し、硬化塗膜を得た。この塗膜を遊離し、JIS K−7113に準拠し、23℃50%RHの条件下で、引張速度50mm/min、標線間25mmにおける引張破壊強度(kg/mm2)を測定した。
(5)硬化性:以下Sと略す
上述の引張弾性率の測定方法において、膜厚を40±10μmとし、照射量を50mJ/cm2 、500mJ/cm2 に変更し、塗膜を作成し、引張弾性率YMを測定し、YM50、YM500を得、硬化性(%)=(YM50/YM500)×100を算出した。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
9.光ファイバ素線及び光ファイバテープ心線の製造
(実施例1)
線引装置を用いて次のようにして光ファイバ素線を作製した。光ファイバ母材の先端を加熱した線引炉に挿入し、溶融線引して、コア径が8μm、外径が125μmのシングルモード光ファイバ(Ge−SM)を得た。これを一次被覆用の光硬化型樹脂組成物を入れたダイスに通してその樹脂組成物を硬化後37.5μmとなるように光ファイバのガラス心材に塗布、続いてこれに紫外線照射装置により、紫外線を照射して硬化させた。次に一次被覆層を形成した光ファイバを、二次被覆用の光硬化型樹脂組成物を入れたダイスに通してその樹脂組成物を硬化後22.5μmとなるように光ファイバに塗布、続いてこれに紫外線照射装置により、紫外線を照射して硬化させた。
【0080】
一次被覆用の光硬化型樹脂組成物として一次被覆用樹脂組成物(P1−3)を、二次被覆用の光硬化型樹脂組成物として二次被覆用樹脂組成物(S1−1)を被覆し、245μm径の光ファイバ素線を作製した。光ファイバ素線の伝送損失は、1.55μmで、0.18dB/kmであった。
【0081】
次に、この光ファイバ素線の外周に厚さ約5μmのウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂からなる着色層を施し、光ファイバ着色心線を作製した。更に、この光ファイバ着色心線を4本並行に束ねて並べ、被覆樹脂により一体化した4心の光ファイバテープ心線を作製した。その際に使用した被覆樹脂は、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂である。
【0082】
(実施例2〜8、実施例(参考例)9、実施例10及び比較例1〜8)表3、表4に示す光硬化型樹脂組成物を一次被覆用樹脂及び二次被覆用樹脂として用い、実施例1と同様にして、光ファイバ素線及び光ファイバテープ心線を作製した。光ファイバ心線の伝送損失を表5、表6に示す。
【0083】
(特性の評価)
(1)温水耐久性:実施例1〜10、比較例1〜8で製造した光ファイバ素線約2mをコイル状に束ね、85℃温水中に放置、60日劣化後に取り出して、ガラス強度試験を行った。ガラス強度測定は、オートグラフ(島津製作所製)を用い、標線500mm、引張速度25mm/分の条件で行った。一条件当たり15本の強度測定を行い、中央値をその条件におけるガラス強度とした。劣化前のガラス強度に対する劣化後の強度の保持率を表5、表6に示す。保持率が95%以上を○、95〜85%を△、85%以下を×とした。
(2)湿熱耐久性:温水耐久性測定の放置条件を85%RHの雰囲気下に変更する以外は同様にして劣化後のガラス強度を測定した。初期の破断強度に対する保持率を、表5、表6に示す。保持率が95%以上を○、95〜85%を△、85%以下を×とした。
(3)一次被覆樹脂層の除去性:実施例1〜10、比較例1〜8で製造した光ファイバテープ心線の被覆樹脂層の除去を行い、一次被覆樹脂層のファイバガラス心材からの除去性をチェックした。被覆樹脂の除去は90℃に保持した加熱式リムーバーJR−4A(住友電工製)を用いて、被覆樹脂の除去する長さを25mmとして行った。テープ心線を構成している光ファイバ素線から被覆樹脂層を除去し、アルコールを染み込ませた布でガラス表面を1回だけ力を込めずに軽く拭き取り、ガラス上に残留する被覆樹脂層の有無を目視にて観察した。この評価は各実施例、比較例とも10サンプルずつ行い、ガラス心材上に何も残留しない場合を「良好」、1回だけの拭き取りでも被覆樹脂層のカスが取れない場合を「不良」として、「不良」となる割合を求める事により行った。結果は、百分率を用いて表5及び表6に示した。表中の数字は「不良率」であり、単位は%である。なお、評価結果を判りやすくするため、表中には「不良率」が、20%以下となった場合を○、30〜70%となった場合を△、80%以上となった場合を×として「不良率」と共に併記した。
(4)水素ガス発生量:実施例1〜10、比較例1〜8で製造した光ファイバ素線を、ヘッドスペースボトルに入れ、80℃の雰囲気下に30日間放置し、発生する水素ガス量をガスクロマトグラフィー法で測定した。水素ガスの発生量を、表5、表6に示す。水素ガスの発生量が1μl/g以下を○、1〜10μl/gを△、10μl/g 以上を×とした。
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
表5及び表6から、本発明の光硬化型樹脂組成物を一次被覆樹脂組成物として用いた各実施例(実施例1〜10)においては、温水耐久性、湿熱耐久性、被覆除去性、水素ガス発生量が良好となった。この効果は、実施例1〜7の結果に表れているとおり、アルコキシシラン化合物(a)がメルカプト基を有するシランカップリング剤(a1)及び/又はエポキシ基を有するシランカップリング剤(a2又はa3)であり、塩基性化合物(b)として分子量が400以上のヒンダードアミンを用いると顕著である。
【0087】
一方、本発明の光硬化型樹脂組成物よりもpHが高い値(pH=7.0)を示す比較例4の光硬化性樹脂組成物を用いると湿熱耐久性に問題が生じる。また、被覆除去性は、アルコキシシラン化合物(a)の含有量が0.5重量%である比較例5、及びアミノ基を有するシランカップリング剤(a5)を用いた比較例6の光硬化性樹脂組成物を用いた光ファイバは被覆除去性が劣った。アルコキシシラン化合物(a)及び塩基性化合物(b)を含まない比較例1、及び塩基性化合物(b)を含まない比較例2及び比較例3の光硬化性樹脂組成物を用いた光ファイバは温水耐久性、水素ガス発生量において本発明の光硬化性樹脂組成物を用いた光ファイバと比較して劣っていた。また、アルコキシシラン化合物(a)を含まない比較例7、及び比較例8の光硬化性樹脂組成物を用いた光ファイバは温水耐久性において本発明の光硬化性樹脂組成物を用いた光ファイバと比較して劣っていた。
【0088】
【発明の効果】
本発明の光硬化型樹脂組成物によれば、被覆層が容易に除去でき(被覆層の除去性が良く)、温水浸漬下、高温高湿雰囲気下、ジェリー浸漬下において光ファイバのガラス心材の初期破断強度を維持でき(温水耐久性、湿熱耐久性及び耐ジェリー性が良い)、水素ガスの発生が少ない光硬化型樹脂組成物、及びそれを用いた光ファイバ素線及び光ファイバテープ心線を提供することができる。
Claims (6)
- 少なくともラジカル重合性オリゴマー(A)とラジカル重合性モノマー(B)と光重合開始剤(C)とを含有する光硬化型樹脂組成物であり、前記組成物が、更に、アルコキシシラン化合物(a)及び塩基性化合物(b)とを含有し、前記アルコキシシラン化合物(a)の含有量が組成物全体に対し0.01重量%以上、0.5重量%未満であり、前記組成物のpHが7未満であり、前記アルコキシシラン化合物(a)が、メルカプト基を有するシランカップリング剤である光硬化型樹脂組成物。
- 前記塩基性化合物(b)が、ラジカル重合性基をもつ塩基性化合物である請求項1記載の光硬化型樹脂組成物。
- 前記塩基性化合物(b)の分子量が400〜4000である請求項1又は2のいずれか1項に記載の光硬化型樹脂組成物。
- 前記塩基性化合物(b)がヒンダードアミン類である請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の光硬化型樹脂組成物。
- 光硬化型樹脂組成物の硬化被膜により被覆された光ファイバ素線であり、当該光硬化型樹脂組成物が請求項1、2、3又は4のいずれか1項に記載の光硬化型樹脂組成物である光ファイバ素線。
- 複数の光ファイバ素線を束ねた光ファイバテープ心線であり、当該光ファイバ素線が請求項5記載の光ファイバ素線である光ファイバテープ心線。
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