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JP5101180B2 - トナー - Google Patents

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JP5101180B2
JP5101180B2 JP2007162910A JP2007162910A JP5101180B2 JP 5101180 B2 JP5101180 B2 JP 5101180B2 JP 2007162910 A JP2007162910 A JP 2007162910A JP 2007162910 A JP2007162910 A JP 2007162910A JP 5101180 B2 JP5101180 B2 JP 5101180B2
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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーに関する。
電子写真技術の発展に伴い、低温定着性及び保存性に優れたトナーが要求されている。そこで、1,2-プロパンジオールを含むアルコール成分と精製ロジンを含むカルボン酸とを縮重合して得られる軟化点が80〜120℃のポリエステルと離型剤を含有してなるトナーが開示されている(特許文献1参照)。
一方で、高速化に伴い耐オフセット性という、低温定着性とは相反する特性を併せもったトナーが必要とされている。そこで、1,2-プロパンジオールを含むアルコール成分と精製ロジンを含むカルボン酸とを縮重合して得られる軟化点が120〜165℃のポリエステルを含有してなるトナーが開示されている(特許文献2参照)。
さらに、粉砕性の観点から、脂肪族アルコールをアルコール成分の主原料とする、軟化点の異なるポリエステルを2種類ブレンドする方法が開示されている(特許文献3参照)。
特開2007−139813号公報 特開2007−137911号公報 特開2002−287427号公報
しかしながら、マシンの高速化・省エネ化・印刷環境条件の多様化に伴い、従来のトナーでは市場の要求に対して不十分であることが判明した。即ち、特許文献1、2、3で用いられる脂肪族アルコールは分子の構造上、分子内にエステル結合が多いため、吸水性が高く、高温高湿時の保存安定性が不十分である。
また、特許文献1、2で用いられている精製ロジンは、ロジンが1価の酸であり、ロジン骨格がポリエステル分子内に取り込まれる量が限られるため、保存性向上には限界がある。さらに、ロジンが1価の酸であるがゆえに、ポリエステル分子が主鎖延長する際に、このモノカルボン酸である、精製ロジンのところで分子延長できず、低分子量物が多く生成されることも保存性が不十分となる一因と考えられる。
一方、脂肪族アルコールをアルコール成分の主原料とする、軟化点の異なるポリエステルを2種類ブレンドする方法でも、粉砕性を維持しつつ、高速印刷における低温定着性、耐オフセット性及び粉砕性の全てを備えることは、困難である。
本発明の課題は、低温定着性、耐オフセット性、粉砕性、内添剤の分散性及び保存性のいずれにも優れるトナーを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決する為に検討を重ねた結果、1,2-プロパンジオールを含有するアルコール成分と、(メタ)アクリル酸変性ロジンを含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステル系樹脂と、1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオールを含有するアルコール成分と、精製ロジンを含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステル系樹脂とを組み合わせて使用することにより、低温定着性、耐オフセット性、粉砕性、内添剤の分散性及び保存性のいずれにも優れるトナーを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、結着樹脂として、ポリエステル系樹脂(A)及び該ポリエステル系樹脂(A)より軟化点が10℃以上高いポリエステル系樹脂(B)を含有してなるトナーであって、前記ポリエステル系樹脂(A)が、1,2-プロパンジオールを2価のアルコール成分中65モル%以上含有するアルコール成分と、(メタ)アクリル酸変性ロジンを含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルユニットを有する樹脂であり、前記ポリエステル系樹脂(B)が、1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオールを2価のアルコール成分中合わせて70モル%以上含有するアルコール成分と、精製ロジンを含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルユニットを有する樹脂であるトナー、に関する。
本発明のトナーは、低温定着性、耐オフセット性、粉砕性、内添剤の分散性及び保存性のいずれにも優れるという優れた効果を奏するものである。
本発明は、結着樹脂として、ポリエステル系樹脂(A)及び該ポリエステル系樹脂(A)より軟化点が10℃以上高いポリエステル系樹脂(B)を含有するトナーであって、前記ポリエステル系樹脂(A)が、1,2-プロパンジオールを2価のアルコール成分中65モル%以上含有するアルコール成分と、(メタ)アクリル酸変性ロジンを含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルユニットを有する(メタ)アクリル酸変性ロジン由来の樹脂であり、前記ポリエステル系樹脂(B)が、1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオールを2価のアルコール成分中合わせて70モル%以上含有するアルコール成分と、精製ロジンを含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルユニットを有する精製ロジン由来の樹脂であるポリエステルであることに、大きな特徴を有する。
本発明におけるポリエステル系樹脂(A)で用いられる(メタ)アクリル酸変性ロジンは2つの官能基を有するロジンであるために、ポリエステルの主鎖の一部として分子鎖を伸ばし、分子量を上げることができる一方、分子量500以下の低分子量成分、すなわち、残存モノマー成分やオリゴマー成分が低減される。さらに、1,2-プロパンジオールを主成分とするアルコール成分は、分子的にコンパクトで反応性が高いため、分子的に嵩高く、反応性の低い(メタ)アクリル酸変性ロジンを用いていても、数平均分子量の大きなポリエステルが得られる。

また、本発明におけるポリエステル系樹脂(B)で保存性に優れる精製ロジンを用いるとともにアルコール成分として分岐型及び直鎖型のプロパンジオールが併用されるため、分岐である1,2-プロパンジオールによりガラス転移点を維持し、直鎖型である1,3-プロパンジオールにより分子鎖に柔軟性が付与されるため、保存性、耐オフセット性を維持したまま低温定着性を維持できる。アクリル酸変性ロジンでは、2つの官能基を有するため、高軟化点ポリエステルに使用すると、分子量が高まるため、保存性、耐オフセット性は改善されるものの、反応が進み低温定着性が損なわれる恐れがある。そこで、本発明では、定着性の観点から、高軟化点ポリエステルの分子量を抑えるために1価の精製ロジンを用いる。
以上の構成により、耐オフセット性と低温定着性という相反する物性を両立しつつ、保存性、粉砕性、内添剤の分散性に優れるという驚くべき効果を奏されるものと推定される。
以下、ポリエステル系樹脂(A)の原料モノマーについて説明する。
ポリエステル系樹脂(A)は、1,2-プロパンジオールを2価のアルコール成分中65モル%以上含有したアルコール成分と(メタ)アクリル酸変性ロジンを含有したカルボン酸成分とを用いる。
本発明におけるポリエステル系樹脂(A)のアルコール成分に用いられる炭素数3の分岐鎖型のアルコールである1,2-プロパンジオールは、炭素数2以下のアルコールと対比して耐オフセット性を維持したまま低温定着性を向上させるのに有効であり、炭素数4以上の分岐鎖型アルコールと対比してガラス転移点の低下に伴う保存性の低下防止に有効である。極めて低い温度での定着が可能となり、粉砕性を維持したまま、保存性が向上するという驚くべき効果が奏される。
アルコール成分には、本発明の効果が損なわれない範囲で、1,2-プロパンジオール以外のアルコールが含有されていてもよいが、1,2-プロパンジオールの含有量は、2価のアルコール成分中、65モル%以上であり、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%であることがさらに好ましい。1,2-プロパンジオール以外の2価のアルコール成分としては、1,3-プロパンジオール、炭素数の異なるエチレングリコール、水素添加ビスフェノールA、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等の脂肪族ジアルコール、ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族アルコールが含有されていてもよいが、ポリエステル系樹脂(A)のアルコール成分は、実質的に脂肪族アルコールのみからなることが好ましい。本明細書において、「実質的に脂肪族アルコールのみからなるアルコール成分」とは、脂肪族アルコールの含有量が、アルコール成分中、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上であるものをいう。
一方、カルボン酸成分には、(メタ)アクリル酸変性ロジンが含有されている。本発明における(メタ)アクリル酸変性ロジンとは、(メタ)アクリル酸で変性されたロジンであり、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、デヒドロアビエチン酸及びレポピマール酸を主成分とするロジンに、(メタ)アクリル酸を付加反応させて得られるものであり、具体的には、ロジンの主成分の中で共役二重結合を有するレポピマール酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸及びパラストリン酸と、(メタ)アクリル酸とによる加熱下でのディールス-アルダー(Diels-Alder)反応を経て得ることができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。従って、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリル酸変性ロジン」は、アクリル酸で変性されたロジン又はメタクリル酸で変性されたロジンを意味する。本発明における(メタ)アクリル酸変性ロジンとしては、ディールス-アルダー(Diels-Alder)反応における反応活性の観点から、立体障害の少ないアクリル酸で変性したアクリル酸変性ロジンが好ましい。
(メタ)アクリル酸によるロジンの変性度〔(メタ)アクリル酸変性度〕は、ポリエステルの分子量を高め、低分子量のオリゴマー成分を低減させる観点から、5〜105が好ましく、20〜105がより好ましく、40〜105がさらに好ましく、60〜105がさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸変性度は、式(I):
Figure 0005101180
(式中、X1は変性度を算出する(メタ)アクリル酸変性ロジンのSP値、X2は(メタ)アクリル酸1モルとロジン1モルとを反応させて得られる(メタ)アクリル酸変性ロジンの飽和SP値、YはロジンのSP値を示す)
により算出される。ここで、SP値とは、後述の環球式自動軟化点試験器で測定される軟化点を意味する。また、飽和SP値とは、(メタ)アクリル酸とロジンの反応を、得られる(メタ)アクリル酸変性ロジンのSP値が飽和値に達するまで反応させたときのSP値を意味する。式(I)の分子は、(メタ)アクリル酸で変性したロジンのSPの上昇度を意味するものであり、式(I)の値が大きいほど変性の度合いが高いことを示す。
(メタ)アクリル酸変性ロジンの製造方法は特に限定されないが、例えば、ロジンと(メタ)アクリル酸を混合し、180〜260℃程度に加熱することで、ディールス-アルダー反応により、ロジンに含まれる共役二重結合を有する酸に(メタ)アクリル酸を付加させて、(メタ)アクリル酸変性ロジンを得ることができる。(メタ)アクリル酸変性ロジンは、そのまま使用してもよく、さらに蒸留等の操作を経て精製して使用してもよい。
本発明における(メタ)アクリル酸変性ロジンに使用されるロジンは、松類から得られる天然ロジン、異性化ロジン、二量化ロジン、重合ロジン、不均化ロジン等の、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、デヒドロアビエチン酸及びレポピマール酸を主成分とするロジンであれば、公知のロジンを特に限定することなく使用できるが、色目の観点から、天然ロジンパルプを製造する工程で副産物として得られるトール油から得られるトールロジン、生松ヤニから得られるガムロジン、松の切株から得られるウッドロジン等の天然ロジンが好ましく、低温定着性の観点からトールロジンがより好ましい。
本発明における(メタ)アクリル酸変性ロジンは、加熱下でのディールス-アルダー反応を経て得られるため臭気の原因となる不純物が低減されており、臭気が少ないものであるが、さらに臭気を低減し保存性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸変性ロジンは精製ロジンを(メタ)アクリル酸で変性して得られるものが好ましく、精製トールロジンを(メタ)アクリル酸で変性して得られるものがより好ましい。
本発明における精製ロジンは、精製工程により不純物が低減されたロジンである。ロジンを精製することにより、ロジンに含まれる不純物が除去される。主な不純物としては、2-メチルプロパン、アセトアルデヒド、3-メチル-2-ブタノン、2-メチルプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、n-ヘキサナール、オクタン、ヘキサン酸、ベンズアルデヒド、2-ペンチルフラン、2,6-ジメチルシクロヘキサノン、1-メチル-2-(1-メチルエチル)ベンゼン、3,5-ジメチル2-シクロヘキセン、4-(1-メチルエチル)ベンズアルデヒド等が挙げられる。本発明においては、これらのうち、ヘキサン酸、ペンタン酸及びベンズアルデヒドの3種類の不純物の、ヘッドスペースGC-MS法により揮発成分として検出されるピーク強度を精製ロジンの指標として用いることができる。なお、不純物の絶対量ではなく揮発成分を指標とするのは、本発明における精製ロジンの使用が、ロジンを使用した従来のポリエステルに対して、臭気を改良できることに起因するものである。
即ち、本発明における精製ロジンとは、後述のヘッドスペースGC-MS法の測定条件において、ヘキサン酸のピーク強度が0.8×107以下であり、ペンタン酸のピーク強度が0.4×107以下であり、ベンズアルデヒドのピーク強度が0.4×107以下であるロジンをいう。さらに、保存性及び臭気の観点から、ヘキサン酸のピーク強度は、0.6×107以下が好ましく、0.5×107以下がより好ましい。ペンタン酸のピーク強度は、0.3×107以下が好ましく、0.2×107以下がより好ましい。ベンズアルデヒドのピーク強度は、0.3×107以下が好ましく、0.2×107以下がより好ましい。
さらに、保存性及び臭気の観点から、上記3種の物質に加え、n-ヘキサナールと2-ペンチルフランが低減されていることが好ましい。n-ヘキサナールのピーク強度は、1.7×107以下が好ましく、1.6×107以下がより好ましく、1.5×107以下がさらに好ましい。また、2-ペンチルフランのピーク強度は1.0×107以下が好ましく、0.9×107以下がより好ましく、0.8×107以下がさらに好ましい。
ロジンの精製方法としては、公知の方法が利用可能であり、蒸留、再結晶、抽出等による方法が挙げられ、蒸留によって、精製するのが好ましい。蒸留の方法としては、例えば特開平7−286139号公報に記載されている方法が利用でき、減圧蒸留、分子蒸留、水蒸気蒸留等が挙げられるが、減圧蒸留によって精製するのが好ましい。例えば、蒸留は通常6.67kPa以下の圧力で200〜300℃のスチル温度で実施され、通常の単蒸留をはじめ、薄膜蒸留、精留等の方法が適用され、通常の蒸留条件下では仕込みロジンに対し2〜10重量%の高分子量物がピッチ分として除去すると同時に2〜10重量%の初留分を同時に除去する。
変性前のロジンの軟化点は、50〜100℃が好ましく、60〜90℃がより好ましく、65〜85℃がさらに好ましい。本発明におけるロジンの軟化点とは、後述記載の方法により、ロジンを一度溶融させ、温度25℃、相対湿度50%の環境下で1時間自然冷却させた際に測定される軟化点を意味する。
さらに、変性前のロジンの酸価は、100〜200mgKOH/gが好ましく、130〜180mgKOH/gがより好ましく、150〜170mgKOH/gがさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸変性ロジンの含有量は、カルボン酸成分中、低温定着性の観点から、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。また、保存性の観点からは、85重量%以下が好ましく、65重量%以下がより好ましく、50重量%以下がさらに好ましい。これらの観点から、(メタ)アクリル酸変性ロジンの含有量は、カルボン酸成分中、5〜85重量%が好ましく、5〜65重量%がより好ましく、10〜50重量%がさらに好ましい。
カルボン酸成分に含有される、(メタ)アクリル酸変性ロジン以外のカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。上記のような酸、これらの酸の無水物、及び酸のアルキルエステルを、本明細書では総称してカルボン酸化合物と呼ぶ。上記の中では、耐久性の観点から、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
次に、ポリエステル系樹脂(B)の原料モノマーについて説明する。
ポリエステル系樹脂(B)は、1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオールを2価のアルコール成分中合わせて70モル%以上含有するアルコール成分と、精製ロジンを含有するカルボン酸成分とを用いる。
本発明におけるポリエステル系樹脂(B)のアルコール成分に用いられる炭素数3の1,2-プロパンジオールは、炭素数2以下のアルコールと対比して低温定着性の向上に有効であり、炭素数4以上のアルコールと対比してガラス転移点の低下に伴う保存性の低下防止に有効である。さらに、本発明におけるポリエステル系樹脂(B)においては、直鎖型の1,3-プロパンジオールに、1,2-プロパンジオールが併用されているため、ポリエステルのガラス転移点を高く保つことができる。また、直鎖型の1,3-プロパンジオールにより、分子鎖に柔軟性が付与されるため、オイルレス定着での耐オフセット性を維持したまま低温定着性を確保することができる。
ポリエステル系樹脂(B)のアルコール成分において、1,2-プロパンジオールと1,3-プロパンジオールのモル比(1,2-プロパンジオール/1,3-プロパンジオール)は、低温定着性と保存性を両立させる観点から、70/30〜99/1であり、好ましくは75/25〜95/5、より好ましくは77/23〜85/15である。
アルコール成分には、本発明の効果が損なわれない範囲で、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール以外のアルコールが含有されていてもよいが、1,2-プロパンジオールと1,3-プロパンジオールの総含有量は、2価のアルコール成分中、70〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましい。1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオール以外の2価のアルコール成分としては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられる。2価のアルコール成分の含有量は、アルコール成分中、70〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましく、実質100モル%がさらに好ましい。
一方、カルボン酸成分には、精製ロジンが含有されている。精製ロジンとしては、ポリエステル系樹脂(A)の項で記載したものと同様のものが使用可能である。
精製ロジンの含有量は、保存性の観点から、カルボン酸成分中、2〜50重量%が好ましく、5〜45重量%がより好ましく、10〜40重量%がさらに好ましい。
精製ロジン以外のカルボン酸成分としては、炭素数2〜4の脂肪族ジカルボン酸化合物が含有されていることが好ましい。炭素数2〜4の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、及びこれらの酸の無水物等が挙げられるが、これらの中でも、コハク酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸及びこれらの酸の無水物からなる群より選ばれた少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸化合物が含有されていることがより好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸化合物は、分子鎖に柔軟性を付与するため、低温定着性の向上に有効であり、本発明においては、前記脂肪族ジカルボン酸化合物のなかでも、イタコン酸が好ましい。
前記脂肪族ジカルボン酸の含有量は、低温定着性の向上及びガラス転移点の低下抑制の観点から、カルボン酸成分中、0.5〜20モル%が好ましく、1〜15モル%がより好ましい。さらに、カルボン酸成分には、本発明の効果が損なわれない範囲で、前記脂肪族カルボン酸化合物及び精製ロジン以外のカルボン酸化合物が含まれていてもよく、保存安定性の確保(即ち、ガラス転移点の確保)の観点から、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が含有されていることが好ましい。芳香族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中、40〜95モル%が好ましく、50〜95モル%がより好ましく、60〜80モル%がさらに好ましい。
本発明におけるポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)には、耐オフセット性向上の観点から、アルコール成分が3価以上の多価アルコールを、及び/又はカルボン酸成分が3価以上の多価カルボン酸化合物を含有していることが好ましい。3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられ、3価以上の多価カルボン酸化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの酸の無水物及びアルキル(炭素数1〜3)エステルが挙げられる。これらの中ではトリメリット酸及びその誘導体(無水物及びアルキル(炭素数1〜3)エステル)が好ましく、ポリエステル系樹脂(A)においては、分岐部位となる又は架橋剤として作用するだけでなく低温定着性の向上にも有効であることから、トリメリット酸及びその誘導体が好ましい。
3価以上の原料モノマー(3価以上の多価アルコール及び3価以上の多価カルボン酸化合物)の含有量は、各樹脂における全原料モノマー中、1〜25モル%が好ましく、3〜23モル%がより好ましく、7〜21モル%がさらに好ましい。
また、耐オフセット性及び保存性を両立する観点から、ポリエステル系樹脂(A)については、3価以上の原料モノマーはカルボン酸成分にのみ含有されていることがより好ましい。本発明において用いられる(メタ)アクリル酸変性ロジンは、2つの官能基を有するロジンであるために、ロジンの低温定着性を損なうことなく3価以上の原料モノマーを使用することができ、低温定着性を維持しつつ、さらに耐オフセット性を向上することができる。これらの観点から、ポリエステル系樹脂(A)の3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)のアルコール成分100モルに対して、0.001〜40モルが好ましく、0.1〜25モルがより好ましく、ポリエステル系樹脂(A)の3価以上の多価アルコールの含有量は、ポリエステル系樹脂(A)のアルコール成分中、0.001〜40モル%が好ましく、0.1〜25モル%がより好ましい。
本発明におけるポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)のアルコール成分とカルボン酸成分との縮重合は、エステル化触媒の存在下で行うことが好ましい。本発明におけるエステル化触媒の好適例としては、チタン化合物及びSn-C結合を有していない錫(II)化合物が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は両者を併用して用いられる。
チタン化合物としては、Ti-O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基を有する化合物がより好ましい。
チタン化合物の具体例としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C3H7O)2〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4H10O2N)2(C3H7O)2〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C5H11O)2〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C2H5O)2〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(OHC8H16O)2〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)2(C18H37O)2〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6H14O3N)(C3H7O)3〕、チタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6H14O3N)3(C3H7O)〕等が挙げられ、これらの中ではチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートが好ましく、これらは、例えばマツモト交商(株)の市販品としても入手可能である。
他の好ましいチタン化合物の具体例としては、テトラ-n-ブチルチタネート〔Ti(C4H9O)4〕、テトラプロピルチタネート〔Ti(C3H7O)4〕、テトラステアリルチタネート〔Ti(C18H37O)4〕、テトラミリスチルチタネート〔Ti(C14H29O)4〕、テトラオクチルチタネート〔Ti(C8H17O)4〕、ジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C8H17O)2(OHC8H16O)2〕、ジミリスチルジオクチルチタネート〔Ti(C14H29O)2(C8H17O)2〕等で挙げられ、これらの中ではテトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートが好ましく、これらは、例えばハロゲン化チタンを対応するアルコールと反応させることにより得ることもできるが、ニッソー社等の市販品としても入手可能である。
チタン化合物の存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1.0重量部が好ましく、0.1〜0.7重量部がより好ましい。
Sn-C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn-O結合を有する錫(II)化合物、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく、Sn-O結合を有する錫(II)化合物がより好ましい。
Sn-O結合を有する錫(II)化合物としては、シュウ酸錫(II)、酢酸錫(II)、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリル酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)等の炭素数2〜28のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II);オクチロキシ錫(II)、ラウロキシ錫(II)、ステアロキシ錫(II)、オレイロキシ錫(II)等の炭素数2〜28のアルコキシ基を有するアルコキシ錫(II);酸化錫(II);硫酸錫(II)等が、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物としては、塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II)等が挙げられ、これらの中では、帯電立ち上がり効果及び触媒能の点から、(R1COO)2Sn(ここでR1は炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表される脂肪酸錫(II)、(R2O)2Sn(ここでRは炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるアルコキシ錫(II)及びSnOで表される酸化錫(II)が好ましく、(R1COO)2Snで表される脂肪酸錫(II)及び酸化錫(II)がより好ましく、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)及び酸化錫(II)がさらに好ましい。
錫(II)化合物の存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1.0重量部が好ましく、0.1〜0.7重量部がより好ましい。
チタン化合物と錫(II)化合物を併用する場合、チタン化合物と錫(II)化合物の総存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1.0重量部が好ましく、0.1〜0.7重量部がより好ましい。
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合は、例えば、前記エステル化触媒の存在下、不活性ガス雰囲気中にて、180〜250℃の温度で行うことができる。
2種のポリエステル系樹脂の軟化点の差は、内添剤の分散性を高め、定着性と耐オフセット性、特に耐高温オフセット性に対する効果を高める観点から、10℃以上である。黒トナー等の無彩色系のトナーにおいては、光沢性を抑える観点から、10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。また、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー等の有彩色系のトナーにおいては、光沢性を高める観点から、10〜30℃が好ましく、15〜30℃がより好ましい。軟化点が低い方のポリエステル系樹脂(A)の軟化点は、定着性の観点から、80〜120℃が好ましく、90〜110℃がより好ましい。一方、軟化点が高い方のポリエステル系樹脂(B)の軟化点は、耐高温オフセット性の観点から、100〜180℃が好ましく、120〜180℃がより好ましく、120〜160℃がさらに好ましい。
ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)のガラス転移点は、定着性、保存性及び耐久性の観点から、45〜75℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。帯電性と環境安定性の観点から、酸価は、1〜80mgKOH/gが好ましく、5〜60mgKOH/gがより好ましく、5〜50mgKOH/gがさらに好ましい。
本発明において、ポリエステル系樹脂(A)及び(B)におけるポリエステルユニットは、結晶性とは異なる非晶質であることが好ましい。本明細書において、非晶質の樹脂とは、軟化点とガラス転移点(Tg)の差が30℃以上である樹脂をいう。
ポリエステル系樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)の重量比は、定着性及び耐久性の観点から、10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、30/70〜70/30がさらに好ましい。
なお、本発明において、結着樹脂が3種以上のポリエステル系樹脂からなる場合には、結着樹脂中の総含有量が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である任意の2種の樹脂が、ポリエステル系樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)の軟化点の関係を満足していればよい。従って、結着樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の結着樹脂として、ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)に相当しないポリエステル系樹脂を含め、公知の結着樹脂、例えば、スチレン−アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の他の樹脂が併用されていてもよい。他の結着樹脂の含有量は、結着樹脂中、1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。
なお、本発明において、ポリエステル系樹脂とは、ポリエステルユニットを有する樹脂をいう。ポリエステルユニットとはポリエステル構造を有する部位を指し、ポリエステル系樹脂には、ポリエステルのみならず、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルも含まれるが、本発明においては、ポリエステル系樹脂(A)及び(B)はいずれもポリエステルであることが好ましい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルや、ポリエステルユニットを含む2種以上の樹脂ユニットを有する複合樹脂が挙げられる。
他の結着樹脂としては、ワックスの分散性の観点から、縮重合系樹脂ユニットと付加重合系樹脂ユニットを有する複合樹脂が好ましく、ポリエステル等の縮重合系樹脂ユニットとビニル系樹脂等の付加重合系樹脂ユニットを有する複合樹脂が、より好ましい。ポリエステル系樹脂(A)と(B)の総重量と、前記複合樹脂の重量との比率(ポリエステル系樹脂(A)+(B)/複合樹脂)は、80/20〜97/3であることが好ましく、85/15〜95/5であることがより好ましい。
複合樹脂におけるポリエステルユニットの原料モノマーとしては、前記ポリエステル系樹脂(A)及び(B)のアルコール成分から1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオールを除くアルコール成分及び前記ポリエステル系樹脂(A)及び(B)のカルボン酸成分から(メタ)アクリル酸変性ロジン及び精製ロジンを除くカルボン酸成分が挙げられる。
一方、ビニル系樹脂ユニットの原料モノマーとしては、スチレン、αメチルスチレン等のスチレン化合物;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が挙げられ、これらの中では、スチレン、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート及びアクリル酸の長鎖アルキル(炭素数12〜18)エステルが好ましく、帯電性の観点から、スチレンが、定着性及びガラス転移点の調整の観点から、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが好ましい。スチレンの含有量は、ビニル系樹脂の原料モノマー中、50〜90重量%が好ましく、75〜85重量%がより好ましい。スチレンの(メタ)アクリル酸のアルキルエステルに対するモノマー重量比(スチレン/(メタ)アクリル酸のアルキルエステル)は、50/50〜95/5が好ましく、70/30〜95/5がより好ましい。
なお、ビニル系樹脂ユニットの原料モノマーの付加重合には、重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて使用してもよい。
本発明においては、ポリエステルユニットの原料モノマーの付加重合系樹脂ユニットの原料モノマーに対する重量比(ポリエステルユニットの原料モノマー/付加重合系樹脂ユニットの原料モノマー)は、連続相がポリエステルユニットであり、分散相が付加重合系樹脂ユニットであることが好ましいことから、50/50〜95/5が好ましく、60/40〜95/5がより好ましい。
本発明において、複合樹脂は、ポリエステルユニットの原料モノマーと付加重合系樹脂ユニットの原料モノマーに加えて、さらにポリエステルユニットの原料モノマー及び付加重合系樹脂ユニットの原料モノマーのいずれとも反応し得る化合物(両反応性モノマー)を用いて得られる樹脂(ハイブリッド樹脂)であることが好ましい。
両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基および第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより一層向上させることができる。両反応性モノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、フマル酸、メタクリル酸、シトラコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、及びこれらのカルボン酸の無水物、アルキル(炭素数1〜2)エステル等の誘導体が挙げられ、これらのなかでは反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらのカルボン酸の誘導体が好ましい。
本発明において、両反応性モノマーのうち、官能基を2個以上有するモノマー(ポリカルボン酸等)及びその誘導体はポリエステルユニットの原料モノマーとして、官能基を1個有するモノマー(モノカルボン酸等)及びその誘導体は付加重合系樹脂ユニットの原料モノマーとして扱う。両反応性モノマーの使用量は、両反応性モノマーを除くポリエステルユニットの原料モノマー100モルに対して、1〜30モルが好ましく、より付加重合系樹脂ユニットの分散性をさらに高める観点から、結着樹脂の製造過程において、付加重合反応後、高温で反応させる方法においては、1.5〜20モルがより好ましく、2〜10モルがさらに好ましく、付加重合反応後、反応温度を一定に保ちつつ両反応性モノマーを多めに使用する方法においては、4〜15モルがより好ましく、4〜10モルがさらに好ましい。
本発明において、複合樹脂は、ポリエステルユニットと付加重合系樹脂ユニットの均一性の観点から、ポリエステルユニットの原料モノマーと付加重合系樹脂ユニットの原料モノマーとを予め混合し、縮重合反応と付加重合反応を同一反応容器中で並行して行うことにより得られる樹脂であることが好ましく、複合樹脂がさらに両反応性モノマーを用いて得られるハイブリッド樹脂である場合には、縮重合系樹脂ユニットの原料モノマー及び付加重合系樹脂ユニットの原料のモノマーの混合物と両反応性モノマーを予め混合し、縮重合反応と付加重合反応を同一反応容器中で並行して行うことにより得られる樹脂であることが好ましい。
本発明において、縮重合反応と付加重合反応の進行及び完結は、時間的に同時である必要はなく、それぞれの反応機構に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させればよい。例えば、ポリエステルユニットの原料モノマー、付加重合系樹脂ユニットの原料モノマー、両反応性モノマー等を混合し、まず、主として付加重合反応に適した温度条件、例えば50〜180℃で付加重合反応により縮重合反応が可能な官能基を有する付加重合系樹脂を形成させた後、次いで反応温度を縮重合反応に適した温度条件、例えば190〜270℃に上昇させた後、主として縮重合反応により縮重合系樹脂を形成させる方法が挙げられる。
本発明のトナーには、さらに、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられる染料、顔料などのすべてが使用可能であり、カーボンブラック;C.I.ピグメント・イエロー1、同3、同74、同97、同98等のアセト酢酸アリールアミド系モノアゾ黄色顔料;C.I.ピグメント・イエロー12、同13、同14、同17等のアセト酢酸アリールアミド系ジスアゾ黄色顔料;C.I.ピグメント・イエロー93、同95などのポリアゾ系黄色顔料;C.I.ピグメント・イエロー180;C.I.ピグメント・イエロー185;C.I.ソルベント・イエロー19、同77、同79、C.I.ディスパース・イエロー164等の黄色染料;C.I.ピグメント・レッド48、同49:1、同53:1、同57、同57:1、同81、同122、同184、同5等の赤色もしくは紅色顔料;C.I.ソルベント・レッド49、同52、同58、同8等の赤色系染料;C.I.ピグメント・ブルー15:3等の銅フタロシアニン及びその誘導体の青色系染顔料;C.I.ピグメント・グリーン7、同36(フタロシアニン・グリーン)等の緑色顔料等が挙げられ、これらは、単独で用いても2種以上混合して用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、モノカラートナー,フルカラートナーのいずれであっても良い。着色剤の含有量は、分散液中のビニル系樹脂及びポリエステルの総量100重量部に対して、1〜15重量部が好ましい。
離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;シリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナバロウワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンラックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等が挙げられる。これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
離型剤の融点は、耐ブロッキング性及び結着樹脂の低温定着性への影響を考慮すると、50〜120℃が好ましく、結着樹脂の軟化点以下であることがより好ましい。離型剤の含有量は、低温オフセットへの効果、帯電性への影響等の影響を考慮すると、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは2〜15重量部、さらに好ましくは2〜10重量部である。
荷電制御剤としては、負帯電性及び正帯電性のいずれのものも使用することができる。負帯電性荷電制御剤としては、例えば、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正帯電性荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。また、樹脂等の高分子タイプのものを使用することもできる。荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜8重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。
本発明の電子写真用トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、結着樹脂、即ち少なくとも軟化点の異なる2種のポリエステル系樹脂を溶融混練する工程を含む溶融混練法により得られる粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、具体的には、前記結着樹脂、着色剤、離型剤等の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機で混合した後、密閉式ニーダー、1軸又は2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級することによりトナーを製造することができる。トナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
さらに、本発明のトナーには、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、樹脂微粒子等の有機微粒子等の外添剤で、外添処理が施されていてもよい。
外添剤としては、埋め込み防止の観点から、比重の小さいシリカが好ましい。シリカは、環境安定性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。疎水化の方法は特に限定されず、疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。疎水化処理剤の処理量は、無機微粒子の表面積当たり1〜7mg/m2が好ましい。
外添剤の個数平均粒径は、帯電性及び感光体への傷防止の観点から、3〜300nmが好ましく、5〜100nmがより好ましい。
外添剤の含有量は、トナー母粒子100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、またはキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
二成分現像剤として用いる場合、本発明において、キャリアとしては、画像特性の観点から、磁気ブラシのあたりが弱くなる飽和磁化の低いキャリアが用いられるのが好ましい。キャリアの飽和磁化は、40〜100Am2/kgが好ましく、50〜90Am2/kgがより好ましい。飽和磁化は、磁気ブラシの固さを調節し、階調再現性を保持する観点から、100Am2/kg以下が好ましく、キャリア付着やトナー飛散を防止する観点から、40Am2/kg以上が好ましい。
キャリアのコア材としては、公知の材料からなるものを特に限定することなく用いることができ、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、銅-亜鉛-マグネシウムフェライト、マンガンフェライト、マグネシウムフェライト等の合金や化合物、ガラスビーズ等が挙げられ、これらの中では、帯電性の観点から、鉄粉、マグネタイト、フェライト、銅-亜鉛-マグネシウムフェライト、マンガンフェライト及びマグネシウムフェライトが好ましく、画質の観点から、フェライト、銅-亜鉛-マグネシウムフェライト、マンガンフェライト及びマグネシウムフェライトがより好ましい。
キャリアの表面は、キャリア汚染低減の観点から、樹脂で被覆されているのが好ましい。キャリア表面を被覆する樹脂としては、トナー材料により異なるが、例えばポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、ポリエステル、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を併用して用いることができるが、トナーが負帯電性である場合には、帯電性及び表面エネルギーの観点から、シリコーン樹脂が好ましい。樹脂によるコア材の被覆方法は、例えば、樹脂等の被覆材を溶剤中に溶解もしくは懸濁させて塗布し、コア材に付着させる方法、単に粉体で混合する方法等、特に限定されない。
トナーとキャリアとを混合して得られる本発明の二成分現像剤において、トナーとキャリアの重量比(トナー/キャリア)は、1/99〜10/90が好ましく、5/95〜7/93がより好ましい。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔ロジンの軟化点〕
(1) 試料の調製
ロジン10gを、170℃で2時間ホットプレートで溶融する。その後、開封状態で温度25℃、相対湿度50%の環境下で1時間自然冷却させ、コーヒーミル(National MK-61M)で10秒間粉砕する。
(2) 測定
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂及びロジンのガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
〔樹脂及びロジンの酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
〔ロジンのSP値〕
溶融した状態の試料2.1gを所定のリングに流し込んだ後、室温まで冷却後、JIS B7410に基づき、下記の条件で測定を行う。
測定機:環球式自動軟化点試験器 ASP-MGK2((株)メイテック製)
昇温速度:5℃/min
昇温開始温度:40℃
測定溶剤:グリセリン
〔ロジンの(メタ)アクリル酸変性度〕
式(I):
Figure 0005101180
(式中、X1は変性度を算出する(メタ)アクリル酸変性ロジンのSP値、X2は(メタ)アクリル酸1モルとロジン1モルとを反応させて得られる(メタ)アクリル酸変性ロジンの飽和SP値、YはロジンのSP値を示す)
により算出する。飽和SP値とは、(メタ)アクリル酸とロジンの反応を、得られる(メタ)アクリル酸変性ロジンのSP値が飽和値に達するまで反応させたときのSP値を意味する。なお、ロジン1モルの分子量は、酸価をx(mgKOH/g)とすると、ロジン1gに対して水酸化カリウム(分子量:56.1)がxmg(x×10-3g)反応していることになるから、式(II):
分子量=56100÷x (II)
により算出することができる。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
〔外添剤の個数平均粒径〕
下記式より求める。
個数平均粒径(nm)=6/(ρ×比表面積(m2/g))×1000
式中、ρは無機微粉末又は外添剤の比重であり、比表面積は原体の、外添剤の場合は疎水化処理前の原体の、窒素吸着法により求められたBET比表面積である。例えば、シリカの比重は2.2であり、酸化チタンの比重は4.2である。
なお、上記式は、粒径Rの球と仮定して、
BET比表面積=S×(1/m)
m(粒子の重さ)=4/3×π×(R/2)3×比重
S(表面積)=4π(R/2)2
から得られる式である。
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
本明細書において、トナーの体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になるトナーの粒径を意味する。
測定機:「コールターマルチサイザーII」(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5重量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させて分散液を得る。
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
<ロジンの精製例>
分留管、還流冷却器及び受器を装備した2000mL容の蒸留フラスコに1000gのトールロジンを加え、1kPaの減圧下で蒸留を行い、195〜250℃での留出分を主留分として採取した。以下、精製に供したトールロジンを未精製ロジン、主留分として採取したロジンを精製ロジンとする。
ロジン20gをコーヒーミル(National MK-61M)で5秒間粉砕し、目開き1mmの篩いを通したものをヘッドスペース用バイアル(20mL)に0.5g測りとった。ヘッドスペースガスをサンプリングして、未精製ロジン及び精製ロジン中の不純物を、ヘッドスペースGC−MS法により分析した結果を表1に示す。
〔ヘッドスペースGC−MS法の測定条件〕
A. ヘッドスペースサンプラー(Agilent社製、HP7694)
サンプル温度: 200℃
ループ温度: 200℃
トランスファーライン温度: 200℃
サンプル加熱平衡時間: 30min
バイヤル加圧ガス: ヘリウム(He)
バイヤル加圧時間: 0.3min
ループ充填時間: 0.03min
ループ平衡時間: 0.3min
注入時間: 1min
B. GC(ガスクロマトグラフィー)(Agilent社製、HP6890)
分析カラム: DB-1(60m-320μm-5μm)
キャリアー: ヘリウム(He)
流量条件: 1mL/min
注入口温度: 210℃
カラムヘッド圧: 34.2kPa
注入モード: split
スプリット比: 10:1
オーブン温度条件: 45℃(3min)-10℃/min-280℃(15min)
C. MS(質量分析法)(Agilent社製、HP5973)
イオン化法: EI(電子イオン化)法
インターフェイス温度: 280℃
イオン源温度: 230℃
四重極温度: 150℃
検出モード: Scan 29-350m/z
Figure 0005101180
<未精製ロジンを使用したアクリル酸変性ロジンの飽和SP値の測定>
分留管、還流冷却器及び受器を装備した1000mL容のフラスコに未精製ロジン(SP値:77.0℃)332g(1モル)とアクリル酸72g(1モル)を加え、160℃から230℃に8時間かけて昇温し、230℃にてSP値が上がらなくなったことを確認した後に、230℃、5.3kPaの減圧下で未反応のアクリル酸及び低沸点物の留去を行い、アクリル酸変性ロジンを得た。得られたアクリル酸変性ロジンのSP値、即ち未精製ロジンを使用したアクリル酸変性ロジンの飽和SP値は110.1℃であった。
<精製ロジンを使用したアクリル酸変性ロジンの飽和SP値の測定>
分留管、還流冷却器及び受器を装備した1000ml容のフラスコに精製ロジン(SP値:76.8℃)338g(1モル)とアクリル酸72g(1モル)を加え、160℃から230℃に8時間かけて昇温し、230℃にてSP値が上がらなくなったことを確認した後に、230℃、5.3kPaの減圧下で未反応のアクリル酸及び低沸点物の留去を行い、アクリル酸変性ロジンを得た。得られたアクリル酸変性ロジンのSP値、即ち精製ロジンを使用したアクリル酸変性ロジンの飽和SP値は110.4℃であった。
<アクリル酸変性ロジンの製造例1>
分留管、還流冷却器及び受器を装備した10L容のフラスコに精製ロジン(SP値:76.8℃)6084g(18モル)とアクリル酸907.9g(12.6モル)を加え、160℃から220℃に8時間かけて昇温し、220℃にて2時間反応させた後、さらに、220℃、5.3kPaの減圧下で蒸留を行い、アクリル酸変性ロジンAを得た。アクリル酸変性ロジンAのSP値は110.4℃、ガラス転移点は57.1℃、アクリル酸変性度は100であった。
<樹脂製造例1〜7>
表2に示すアルコール成分、無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分及びエステル化触媒を、室温の冷水を通水した還流冷却管を上部に装備した98℃の温水を通水した分溜管、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、160℃で2時間縮重合反応させた後、6時間かけて210℃まで昇温し、その後66kPaにて1時間反応を行った。200℃まで冷却した後、表2に示す無水トリメリット酸を投入し、1時間常圧(101.3kPa)で反応させた後に、210℃に昇温し、40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、ポリエステル(樹脂1〜7)を得た。
<樹脂製造例8>
表2に示すアルコール成分、無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分及びエステル化触媒を、室温の冷水を通水した還流冷却管、窒素導入管、脱水管、滴下ロート、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、150℃で2時間かけて、滴下ロートから、表2に示すスチレン、2-エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸及びジ-t-ブチルパーオキサイドの混合物を滴下した後、150℃にて2時間熟成反応を行った。その後、230℃に昇温し、8時間縮重合反応させた。210℃まで冷却した後、表2に示す無水トリメリット酸を投入して、1時間常圧(101.3kPa)で反応させた後に、210℃に昇温し、40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行って、ポリエステルユニットとビニル系樹脂ユニットからなるハイブリッド樹脂(樹脂8)を得た。
Figure 0005101180
<実施例1〜3及び比較例1〜3>
表3に示す結着樹脂、カーボンブラック「MOGUL L」(キャボット社製)4重量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン S-34」(オリエント化学工業社製)1重量部及びポリプロピレンワックス「NP-105」(三井化学社製、融点:105℃)1重量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度を200r/min、ロール内の加熱温度を80℃で溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8.0μmの粉体を得た。
得られた粉体100重量部に、外添剤として「アエロジル R-972」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:DMDS、個数平均粒径:16nm)1.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合して、トナーを得た。
試験例1〔保存性〕
熱保存性の評価ガラス容器にトナーを充填し、60℃の恒温槽にて4時間放置する。このトナーを、24℃に冷却し針入度試験(JIS K2235-1991)にて針入度を測定した。針入度の数値が高いほど、トナーが凝集しておらず保存性に優れることを示す。結果を表3に示す。
〔保存性の評価基準〕
4:針入度が20mm上
3:針入度が15mm以上、20mm未満
2:針入度が10mm以上、15mm未満
1:針入度が10mm未満
試験例2〔低温定着性及び耐オフセット性〕
プリンター「ページプレスト N−4」(カシオ計算機社製、定着:接触定着方式、現像方式:非磁性一成分現像方式、現像ロール径:2.3cm)にトナーを実装し、トナー付着量を0.6mg/cm2に調整して未定着画像を得た。得られた未定着画像を接触定着方式の複写機「AR-505」(シャープ社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した定着機(定着速度:500mm/s)を用いて、定着ロールの温度を100℃から250℃へと10℃ずつ上昇させながら未定着画像を定着させ、定着試験を行った。
各定着温度で得られた画像を、「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社製、幅18mm、JISZ-1522)を貼りつけ、30℃に設定した上記定着機の定着ロールを通過させた後、テープを剥し、テープ剥離前後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定した。両者の比率(剥離後/剥離前)が最初に95%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、以下の評価基準に従って、低温定着性を評価した。また、ホットオフセット発生温度も同時に確認し、以下の評価基準に従って耐オフセット性を評価した。結果を表3に示す。
〔低温定着性の評価基準〕
5:最低定着温度が150℃未満
4:最低定着温度が150℃以上、160℃未満
3:最低定着温度が160℃以上、170℃未満
2:最低定着温度が170℃以上、180℃未満
1:最低定着温度が180℃以上
〔耐オフセット性の評価基準〕
4:ホットオフセット発生温度が240℃以上
3:ホットオフセット発生温度が230℃以上、240℃未満
2:ホットオフセット発生温度が190℃以上、230℃未満
1:ホットオフセット発生温度が190℃未満
試験例3〔ワックス分散性〕
トナーの溶融混練り後のサンプルを透過型電子顕微鏡を用いて、倍率10万倍の視野におけるワックスの分散(長軸と短軸の平均値を分散粒径とする)粒径を50点測定し、その平均値を平均分散粒径とした。結果を表3に示す。
〔ワックス分散性の評価基準〕
4:ワックス平均分散径が0.5μm未満
3:ワックス平均分散径が0.5μm以上、1.0μm未満
2:ワックス平均分散径が1.0μm以上、3.0μm未満
1:ワックス平均分散径が3.0μm以上
試験例4〔粉砕性〕
16メッシュの篩(目開き:1.0mm)は通過するが、22メッシュの篩(目開き:710μm)は通過しない樹脂粉体を得る。分級した樹脂粉体30gを、コーヒーミル(PHILIPS社製、HR−2170タイプ)で10秒間粉砕した後、30メッシュの篩(目開き:500μm)にかけ、通過しない樹脂粉体の重量(A)gを精秤する。この重量から次式により残存率を求め、この操作を3回行って平均値を求めた。結果を表3に示す。
残存率(%)=(A〔g〕/30.0〔g〕)×100
〔粉砕性の評価基準〕
4:平均残存率が10.0%未満である
3:平均残存率が10.0%以上、15.0%未満である
2:平均残存率が15.0%以上、20.0%未満である
1:平均残存率が20.0%以上である
Figure 0005101180
以上の結果より、1,2-プロパンジオールと、(メタ)アクリル酸変性ロジンを使用して得られるポリエステル系樹脂と、1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオールと、精製ロジンを使用して得られるポリエステル系樹脂を併用する実施例のトナーは、比較例のトナーに比べて、低温定着性、耐オフセット性、粉砕性、内添剤の分散性及び保存性のいずれにも優れることが分かる。
本発明のトナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。

Claims (6)

  1. 結着樹脂として、ポリエステル系樹脂(A)及び該ポリエステル系樹脂(A)より軟化点が10℃以上高いポリエステル系樹脂(B)を含有してなるトナーであって、前記ポリエステル系樹脂(A)が、1,2-プロパンジオールを2価のアルコール成分中65モル%以上含有するアルコール成分と、(メタ)アクリル酸変性ロジンを含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルユニットを有する樹脂であり、前記ポリエステル系樹脂(B)が、1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオールを2価のアルコール成分中合わせて70モル%以上含有するアルコール成分と、ヘッドスペースGC−MS法においてヘキサン酸のピーク強度が0.8×10 7 以下であり、ペンタン酸のピーク強度が0.4×10 7 以下であり、ベンズアルデヒドのピーク強度が0.4×10 7 以下である精製ロジンを含有するカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルユニットを有する樹脂である、トナー。
  2. ポリエステル系樹脂(A)中の(メタ)アクリル酸変性ロジンの(メタ)アクリル酸変性度が5〜105である、請求項1記載のトナー。
  3. ポリエステル系樹脂(B)のアルコール成分において、1,2-プロパンジオールと1,3-プロパンジオールのモル比(1,2-プロパンジオール/1,3-プロパンジオール)が70/30〜99/1である、請求項1又は2記載のトナー。
  4. ポリエステル系樹脂(A)及び/又はポリエステル系樹脂(B)の、アルコール成分が3価以上の多価アルコールを、及び/又はカルボン酸成分が3価以上の多価カルボン酸化合物を含有してなる請求項1〜3いずれか記載のトナー。
  5. ポリエステル系樹脂(A)及び/又はポリエステル系樹脂(B)のアルコール成分とカルボン酸成分との縮重合を、チタン化合物及び/又はSn-C結合を有していない錫(II)化合物の存在下で行う、請求項1〜4いずれか記載のトナー。
  6. 結着樹脂として、さらに、縮重合系樹脂ユニットと付加重合系樹脂ユニットとを有する複合樹脂を含有してなる、請求項1〜5いずれか記載のトナー。
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