上記従来の音響ミキサーにおいては、前記シーンコール後にも、ユーザはフェーダを自由に変位させることができるが、ユーザがフェーダを変位させたことにより、その後の設定バランスが崩れてしまう場合がある。この場合、ユーザが意図的にフェーダを変位させたものであれば問題はないが、そうでない場合には、設定バランスの崩れが問題になると同時に、設定バランスが崩れた状態を元に戻すことは難しい。また、ユーザが、前記設定バランスの崩れた状態を元に戻そうとしてフェーダを操作した場合、このフェーダの操作により、設定バランスがより大きくずれてしまうこともある。
前記シーンコール以外の場合でも、フェーダ(可動操作器)が特定の機能に用いられる場合には、操作子の位置として好ましい位置が存在する場合もあり、また、操作子の位置として避けることが好ましい位置が存在する場合もある。このことは、前記音響ミキサーにおける信号の出力レベルに限らず、音響ミキサーにより付与される音響効果をフェーダで制御する場合も同様な問題が発生する。また、音響ミキサーばかりではなく、電子楽器を含む楽音信号を生成する楽音信号発生装置においても、楽音信号の出力レベル、効果などを可動操作器で制御する場合には、同様な問題が発生する。さらには、音響ミキサー、楽音信号発生装置などの楽音信号を扱う装置以外でも、同種の問題が発生することもある。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、ユーザが可動操作器の操作子の位置を所定の位置に設定し易くしたパラメータ設定装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、手動操作により変位する操作子の位置を表す信号を出力する可動操作器を備え、操作子の位置に応じて制御パラメータを設定するパラメータ設定装置において、操作子の手動操作に対して抵抗力を付与する抵抗力付与手段と、可動操作器から操作子の位置を表す信号を入力し、操作子が目標位置から離れるに従って手動操作に対する抵抗力が連続的に大きくなり、または操作子が回避位置に近づくに従って手動操作に対する抵抗力が連続的に大きくなるように、抵抗力付与手段による抵抗力の付与を制御する抵抗力制御手段であって、前記操作子の位置に対する抵抗力を複数の異なる特性で変化させるための複数の変化特性制御データを記憶する制御データ記憶手段を有する抵抗力制御手段とを設け、制御データ記憶手段に記憶されている複数の変化特性制御データのうちのいずれかを選択して、同選択した変化特性制御データを用いて抵抗力付与手段による抵抗力の付与を制御するようにしたことにある。
操作子は、例えばフェーダまたは回転操作子で構成され、音響ミキサーおよび楽音信号発生装置の制御パラメータを設定するのに適しているとともに、その他の装置における制御パラメータの設定にも利用される。音響ミキサーおよび楽音信号発生装置においては、例えば、信号の出力レベルを制御するための制御パラメータ、信号に付与される効果を制御するための制御パラメータの設定に利用される。また、パラメータ設定装置内に複数の可動操作器を設けるとともに、複数の可動操作器に対応させて複数の抵抗力付与手段を設けるようにし、抵抗力制御手段は、複数の抵抗力付与手段による抵抗力の付与を独立して制御できるようにするとよい。
上記のように構成した本発明においては、抵抗力制御手段が、操作子が目標位置から離れるに従って手動操作に対する抵抗力が連続的に大きくなるように、抵抗力付与手段による抵抗力の付与を制御する場合には、ユーザは、操作子が目標位置から離れるに従って操作子を変位させ難くなる。したがって、この場合には、ユーザは操作子の目標位置からのずれ量を感知できるとともに、操作子を操作した場合には操作子の操作が目標位置から離れる方向の操作であるか、目標位置に近づく方向の操作であるかを認識できる。その結果、ユーザは、操作子を目標位置に変位させ易くなるとともに、操作子を目標位置から離れる方向に変位させ難くなる。また、ユーザが操作子を意図的に目標位置から離れる方向に変位させる場合には、同方向への変位をユーザに確実に認識させることもできる。
また、抵抗力制御手段が、操作子が回避位置に近づくに従って手動操作に対する抵抗力が連続的に大きくなるように、抵抗力付与手段による抵抗力の付与を制御する場合には、ユーザは、操作子が回避位置に近づくに従って操作子を変位させ難くなる。したがって、この場合には、ユーザは操作子の回避位置からのずれ量を感知できるとともに、操作子を操作した場合には操作子の操作が回避位置に近づく方向の操作であるか、回避位置から離れる方向の操作であるかを認識できる。その結果、ユーザは、操作子を回避位置を避けて変位させ易くなるとともに、操作子を回避位置に変位させ難くなる。また、ユーザが操作子を意図的に回避位置に近づく方向に変位させる場合には、同方向への変位をユーザに確実に認識させることもできる。
また、操作子の位置に対する抵抗力を複数の異なる特性で変化させるための複数の変化特性制御データを制御データ記憶手段に記憶させる場合、可動操作器の複数の機能に対応させて複数の変化特性制御データを制御データ記憶手段内に記憶させておき、または可動操作器が利用される複数の状況に対応させて複数の変化特性制御データを制御データ記憶手段内に記憶させておくとよい。そして、制御データ記憶手段内に記憶されている複数の変化特性制御データのうちから、指定される機能または状況に応じて1つの変化特性制御データを選択する選択手段を抵抗力制御手段内に設けて、選択手段によって選択された変化特性制御データに応じて抵抗力付与手段による抵抗力の付与を制御するようにするとよい。ここで、可動操作器の機能とは、信号の出力レベルを制御するための制御パラメータの設定機能、信号に付与される効果を制御するための制御パラメータの設定機能など、制御パラメータで異なる対象を制御することを意味する。また、可動操作器が利用される状況とは、同一の機能の範囲内において、可動操作器が利用される環境、場面、タイミングなどを意味する。
これによれば、前記機能および状況のいずれか一方または両方の変化により、可動操作器の使用状態が変化した場合でも、同使用状態に応じて、ユーザが、操作子を目標位置に変位させ易くするとともに、操作子を目標位置から離れる方向に変位させ難くしたり、操作子を回避位置から離れる方向に変位させ易くするとともに、操作子を回避位置に変位させ難くしたりすることができる。
また、本発明の他の特徴は、前記パラメータ設定装置において、さらに、操作子の位置を目標位置に自動的に設定する自動設定手段を設けたことにある。この場合も、可動操作器の複数の機能に対応させて複数の目標位置を表す目標位置データを目標位置記憶手段内に記憶させておき、または可動操作器が利用される複数の状況に対応させて複数の目標位置を表す目標位置データを目標位置記憶手段内に記憶させておくとよい。そして、目標位置記憶手段内に記憶されている複数の目標位置データのうちから、指定される機能または状況に応じて1つの目標位置データを選択する選択手段を自動設定手段内に設けて、選択手段によって選択された目標位置データに応じて可動操作器の位置を自動的に設定するようにするとよい。
これによれば、ユーザは、操作子を操作しなくても、操作子は適当な目標位置に自動的に設定されるので、パラメータ設定装置の使い勝手が良好になる。また、ユーザは、この目標位置から操作子を適宜変位させて、ユーザの意思を混じえた設定も可能である。特に、前記のように、可動操作器の機能または可動操作器が利用される状況に応じて操作子の位置を目標位置に設定するようにすれば、操作子の位置が前記機能または状況に応じた適当な位置に自動的に設定されるので、パラメータ設定装置の使い勝手がより良好になる。
さらに、本発明の実施にあたっては、電子楽器の発明に限定されることなく、同電子楽器に適用されるコンピュータプログラムおよび方法の発明としても実施し得るものである。
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明すると、図1は、本発明に係るパラメータ設定装置を含む装置全体のハードウェア構成を示すブロック図である。この装置は、バス10に接続された可動操作器部21、その他の操作子部22、表示器23および利用装置部24を備えている。
可動操作器部21は、図2に示すように、複数の可動操作器40A,40Bを備えている。可動操作器40Aは、直線的に変位する操作子41(フェーダ)を備えている。可動操作器40Bは、回転変位する操作子41を備えている。これらの可動操作器40A,40Bは、楽音信号、音声信号などの信号の出力レベル(ミキシングレベル)を調整したり、前記信号に付与される音響効果の各種制御要素(変調信号のレベルまたは周波数、信号の周波数特性)を調整するために利用される。
可動操作器40Aについて、図3の概略縦断面図を用いて簡単に説明しておく。可動操作器40Aは、ユーザによって操作される操作子41を備えている。操作子41は、駆動ブロック42の上面に固着されてハウジング43の上方に突出している。駆動ブロック42は、ハウジング43内側部の下部に両端を固定したガイドロッド44の外周上に同ロッド44の軸線方向に変位可能に組み付けられている。ハウジング43内には、ガイドロッド44の一端近傍位置に電動アクチュエータとしての電動モータ45が収容されている。電動モータ45は減速器を内蔵しており、同モータ45の回転は減速器を介して回転軸45aに伝達される。回転軸45aの上端部外周上には、回転軸45aと一体回転する駆動プーリ46が組み付けられている。
駆動プーリ46の外周面上には、図3,4に示すように、環状に形成したゴム製のベルト47が一端部にて巻き回されている。ベルト47の他端部は、従動プーリ48の外周面上に巻き回れている。従動プーリ48は、ハウジング43の内側面から一体的に突出した支持プレート43aを回転可能に貫通した回転支持体51の上面に固定されている。駆動ブロック42は、その上部にてベルト47に固定されていて、ベルト47の回転と一体的にガイドロッド44の軸線方向に変位する。したがって、電動モータ45の回転に連動して、駆動ブロック42および操作子41は変位する。また、操作子41を手動操作することによっても、駆動ブロック42および操作子41は変位する。
駆動ブロック42には、磁気センサ52が組み付けられている。磁気センサ52は、駆動ブロック42および操作子41の位置を検出するためのものであり、ガイドロッド44に固着された図示しない帯状の磁性部材に対向している。磁性部材は、ガイドロッド44の軸線方向に延設して設けられており、N極とS極を交互に磁化した2列の磁性パターンからなる。一方の磁性パターンは、他方の磁性パターンに対してπ/2だけずれている。磁気センサ52は、駆動ブロック42の変位により、互いにπ/2だけ位相の異なる2列のパルス信号を出力する。このパルス列信号は、駆動ブロック42および操作子41の位置の計算に用いられる。この位置の計算は、実際には、後述するCPU31によるプログラム処理により実行される。この場合、操作子41は、その作動開始時に初期位置に設定されて、この初期位置からの変位量および変位方向により、駆動ブロック42および操作子41の位置は計算される。なお、この磁気センサ52に代えて、光センサを利用することも可能である。
可動操作器40Bについては、図面を用いた詳しい説明は省略するが、この可動操作器40Bの操作子41は、電動モータの回転力により減速器を介して回転駆動される。手動操作により、操作子41を回転させることも可能である。また、この可動操作器40B内にも回転位置センサ(例えば、ロータリエンコーダ)が内蔵されており、操作子41の回転位置が検出されるようになっている。
その他の操作子部22は、複数のオン・オフ式の複数の操作子からなり、装置全体の動作の制御、制御データの生成などに利用される。表示器40は、表示画面上に文字、図形などを表示するためのもので、液晶ディスプレイ(LCD)によって構成されている。
利用装置部24は、可動操作器部21で設定されたパラメータを利用する装置であり、例えば音響ミキサー、電子楽器などである。なお、この電子楽器は、少なくとも楽音信号生成回路を含み、鍵盤などの演奏操作子を含むこともある。これらの音響ミキサーおよび電子楽器においては、可動操作器部21で設定されたパラメータは、複数の系統またはチャンネルの楽音信号、音声信号などの出力レベルを制御する制御パラメータ、楽音信号、音声信号などに付与される効果を制御するための制御パラメータ、楽音信号、音声信号などの周波数特性を制御する制御パラメータとして利用される。なお、利用装置は、音響ミキサーおよび電子楽器に限定されるものではなく、前記可動操作器部21で設定されたパラメータを利用できるものであれば、どのような装置であってもよい。
また、この装置は、バス10にそれぞれ接続されたCPU31、ROM32、RAM33、記憶装置34およびインターフェース回路35も備えている。CPU31、ROM32およびRAM33は、コンピュータ部を構成する。CPU31は、後述するプログラムを実行する。ROM32は、各種プログラムおよびデータを記憶する。RAM33は、各種データの一時的な記憶装置として機能する。記憶装置34は、フラッシュメモリ、ハードディスクなどの書き込み可能な不揮発性の大容量の記録媒体と、同記録媒体に対するドライブユニットとからなる。記憶装置34は、各種プログラムおよび各種データを記憶する。これらのデータおよびプログラムは、予め記憶装置34に記憶されていてもよいし、インターフェース回路35を介して外部から取り込んでもよい。インターフェース回路35は、外部機器、インターネットなどの接続を実現するものである。
次に、上記のように構成した実施形態のパラメータ設定に関する部分について、図2を用いて説明する。図2は、図1のハードウェアとの協働により、CPU31によるプログラム処理によって実現されるパラメータ設定に関する部分を機能ブロック図により示している。なお、図2において、電動モータ45は、複数の可動操作器40A,40B内の電動モータにそれぞれ対応する。また、位置センサ52は、図1の磁気センサ52を含み、複数の可動操作器40A,40Bの各操作子41の位置をそれぞれ検出して、検出した位置を表す検出信号をそれぞれ出力するセンサを示す。なお、この図2の機能ブロック図においては、複数の可動操作器40A,40Bの数は利用装置24内の制御対象の数に等しく、複数の操作子41の位置に応じて、利用装置24内の複数の制御対象が固定的に制御される。
複数の操作子41の位置を表す信号は、パラメータ設定部B11に供給される。パラメータ設定部B11は、プログラム処理により実現されるもので、位置センサ52からの複数の検出信号に応じて複数の制御パラメータをそれぞれ生成して利用装置24に出力する。この制御パラメータの生成においては、操作子41の位置を表す信号をそのまま出力してもよいが、同位置を予め記憶された特性に従って変換して出力してもよい。これにより、複数の操作子41の位置に応じて、利用装置24内の制御対象である複数の要素が制御される。
複数の操作子41は、目標位置変位制御部B12によって目標位置に自動的に変位されるようになっている。目標位置変位制御部B12も、プログラム処理により実現されるもので、位置センサ52から複数の操作子41の位置を表す信号をそれぞれ入力するとともに、目標位置記憶部B13に記憶されている目標位置を表す目標位置データを入力して、前記位置が前記目標位置に一致するように、電動モータ45の回転をフィードバック制御する。目標位置記憶部B13は、図1のRAM33に設けられた一時記憶部であり、後述する処理により目標位置データが記憶される。また、この目標位置変位制御部B12は、前記目標位置記憶部B13への目標位置データの更新の際、すなわち目標位置への変位指示に応答して動作するものである。それ以外の状態では、目標位置変位制御部B12が電動モータ45を駆動制御して、操作子41を変位させることはない。そして、目標位置変位制御部B12が電動モータ45を駆動制御していない状態では、ユーザの操作により操作子41は変位する。
一方、前記操作子41の手動による操作に対しては、操作抵抗力制御部B14により、操作子41の位置に応じた抵抗力(反力)が付与されるようになっている。操作抵抗力制御部B14も、プログラム処理により実現されるもので、位置センサ52から複数の操作子41の位置を表す信号を入力する。そして、操作抵抗力制御部B14は、抵抗力記憶部B15に記憶されている抵抗力であって、前記位置に対応した抵抗力を表す抵抗力データを抵抗力記憶部B15から読み出して、電動モータ45を制御することにより反力を付与する。抵抗力記憶部B15も、図1のRAM33に設けられた一時記憶部であり、後述する処理により抵抗力データが記憶される。
次に、操作抵抗力制御部B14による抵抗の付加方法(第1の抵抗力付与方法)について説明する。抵抗力記憶部B15には、複数の抵抗力テーブルが記憶されるようになっている。複数の抵抗力テーブルは、操作子41の位置に対して複数の異なる特性で変化する複数種類の抵抗力をそれぞれ記憶するものである。これらの複数種類の抵抗力は、利用装置24によって利用される制御パラメータの種類、すなわち複数の可動操作器40A,40Bにそれぞれ割り当てられている。図5(A)〜(E)の実線は、それぞれ異なる種類の抵抗力の変化特性を示している。
図5(A)〜(E)において、横軸は操作子41の位置を示すもので、操作子41の最小位置を「0」とし、操作子41の「0」から最大位置までの変化位置を「0」から線形的に増加する正の値で表している。操作子41の最小位置とは、可動操作器40Aでは操作子41が図示最下位置まで変位している位置であり、可動操作器40Bでは操作子41の図示最左回転位置まで回転している位置である。操作子41の最大位置とは、可動操作器40Aでは操作子41が図示最上位置まで変位している位置であり、可動操作器40Bでは操作子41の図示最右回転位置まで回転している位置である。一方、図5(A)〜(E)の縦軸は、操作子41に付与される抵抗力を示している。抵抗力の正の値は、操作子41の最大位置の方向に、絶対値の大きさに比例した力を操作子41に付与することを意味する。抵抗力の負の値は、操作子41の最小位置の方向に、絶対値の大きさに比例した力を操作子41に付与することを意味する。抵抗力が「0」であるときには操作子41に力を付与しない。
しかし、この抵抗力に基づいて電動モータ45が操作子41に付与する力は、操作子41がプーリ46,48とベルト47との間の静止摩擦力、駆動ブロック52とガイドロッド44との間の静止摩擦力、およびその他の静止摩擦力の合計値より小さな値の範囲内、すなわち操作子41が変位を開始しない範囲内の大きさの力である。これにより、操作子41に前記抵抗力を付与しても操作子41は変位しない。そして、操作子41を変位させようとする場合には、ユーザは前記摩擦力に前記抵抗力を加えた値よりも大きな力を付与する必要がある。したがって、操作抵抗力制御部B14による電動モータ45の制御により、ユーザの操作子41の操作に対する抵抗力が付与されることになる。
より、具体的に説明すると、図5(A)の実線は、操作子41の位置が最小位置から中央位置付近に向かうに従って、抵抗力が絶対値の大きな正の値から連続的かつ滑らかに「0」に向かい、かつ操作子41の位置が中央位置付近から最大位置に向かうに従って、抵抗力が「0」から連続的かつ滑らかに絶対値の大きな負の値に向かう特性を示している。なお、この場合の目標位置は、中央位置を示す。この場合、操作子41の位置が最小位置と中央位置付近との間にあれば、操作子41を中央位置に変位させる方向の力が操作子41に付与され、この力は、操作子41の位置が中央位置から最小位置に向かうに従って大きくなる。操作子41の位置が中央位置付近と最大位置との間にあれば、操作子41を中央位置に変位させる方向の力が操作子41に付与され、この力は、操作子41の位置が中央位置から最大位置に向かうに従って大きくなる。したがって、前記図5(A)の実線の特性によれば、ユーザが操作子41を中央位置付近から最小位置または最大位置に向かって変位させようとすると、中央位置から遠ざかるに従って大きな抵抗力が操作子41の操作に付与される。逆に、ユーザが操作子41を最小位置または最大位置から中央位置付近に向かって変位させようとすると、中央位置から遠ざかるに従って大きな補助力が操作子41の操作に付与される。
図5(B)の実線は、操作子41の位置が最小位置付近から最大位置に向かうに従って、抵抗力が「0」から連続的かつ滑らかに絶対値の大きな負の値に向かう特性を示している。なお、この場合の目標位置は、最小位置付近の値を示す。この場合、操作子41の位置が最小位置付近以外では、操作子41を最小位置に変位させる方向の力が操作子41に付与され、この力は、操作子41の位置が最小位置付近から最大位置に向かうに従って大きくなる。最小位置付近では、抵抗力は「0」である。したがって、前記図5(B)の実線の特性によれば、ユーザが操作子41を最小位置付近から最大位置に向かって変位させようとすると、最小位置付近から遠ざかるに従って大きな抵抗力が操作子41の操作に付与される。逆に、ユーザが操作子41を最小位置に向かって変位させようとすると、最小位置から遠ざかるに従って大きな補助力が操作子41の操作に付与される。
図5(C)の実線は、操作子41の位置が最大位置付近から最小位置に向かうに従って、抵抗力が「0」から連続的かつ滑らかに絶対値の大きな正の値に向かう特性を示している。なお、この場合の目標位置は、最大位置付近の値を示す。この場合、操作子41の位置が最大位置付近以外では、操作子41を最大位置に変位させる方向の力が操作子41に付与され、この力は、操作子41の位置が最大位置付近から最小位置に向かうに従って大きくなる。最大位置付近では、抵抗力は「0」である。したがって、前記図5(C)の実線の特性によれば、ユーザが操作子41を最大位置付近から最小位置に向かって変位させようとすると、最大位置付近から遠ざかるに従って大きな抵抗力が操作子41の操作に付与される。逆に、ユーザが操作子41を最大位置に向かって変位させようとすると、最大位置から遠ざかるに従って大きな補助力が操作子41の操作に付与される。
前記のように、抵抗力が図5(A)〜(C)の実線の特性に従えば、ユーザは操作子41の目標位置からのずれ量を感知できるとともに、操作子41を操作した場合には操作子41の位置が目標位置から離れる方向の操作であるか、目標位置に近づく方向の操作であるかを認識できる。その結果、ユーザは、操作子41を目標位置に変位させ易くなるとともに、操作子を目標位置から離れる方向に変位させ難くなる。また、ユーザが操作子41を意図的に目標位置から離れる方向に変位させる場合には、同方向への変位をユーザに確実に認識させることがきる。
図5(D)の実線は、操作子41の位置が最小位置から中央位置に向かうに従って、抵抗力が「0」から連続的かつ滑らかに絶対値の大きな負の値に向かい、かつ操作子41の位置が中央位置から最大位置に向かうに従って、抵抗力が絶対値の大きな正の値から連続的かつ滑らかに「0」に向かう特性を示している。なお、この場合には、回避位置は、中央位置を示す。この場合、操作子41の位置が最小位置と中央位置付近との間にあれば、操作子41を最小位置に変位させる方向の力が操作子41に付与され、この力は、操作子41の位置が最小位置から中央位置に向かうに従って大きくなる。操作子41の位置が中央位置と最大位置との間にあれば、操作子41を最大位置に変位させる方向の力が操作子41に付与され、この力は、操作子41の位置が中央位置から最大位置に向かうに従って小さくなる。したがって、前記図5(D)の実線の特性によれば、ユーザが操作子41を最小位置または最大位置から中央位置に向かって変位させようとすると、中央位置に近づくに従って大きな抵抗力が操作子41の操作に付与される。逆に、ユーザが操作子41を中央位置から最小位置または最大位置に向かって変位させようとすると、中央位置から遠ざかるに従って小さな補助力が操作子41の操作に付与される。
図5(E)の実線は、操作子41の位置が最小位置から最大位置に向かうに従って、抵抗力が絶対値の大きな正の値から連続的かつ滑らかに「0」に向かう特性を示している。なお、この場合の回避位置は、最小位置付近の値を示す。この場合、操作子41の位置が最大位置以外では、操作子41を最大位置に変位させる方向の力が操作子41に付与され、この力は、操作子41の位置が最大位置から最小位置に向かうに従って大きくなる。最大位置では、抵抗力は「0」である。したがって、前記図5(E)の実線の特性によれば、ユーザが操作子41を最大位置から最小位置に向かって変位させようとすると、最大位置から遠ざかるに従って大きな抵抗力が操作子41の操作に付与される。逆に、ユーザが操作子41を最大位置に向かって変位させようとすると、最大位置から遠ざかるに従って大きな補助力が操作子41の操作に付与される。
前記のように、抵抗力が図5(D),(E)の実線の特性に従えば、ユーザは操作子41の回避位置からのずれ量を感知できるとともに、操作子41を操作した場合には操作子41の位置が回避位置に近づく方向の操作であるか、回避位置から離れる方向の操作であるかを認識できる。その結果、ユーザは、操作子41を回避位置を避けて変位させ易くなるとともに、操作子41を回避位置に変位させ難くなる。また、ユーザが操作子41を意図的に回避位置に近づく方向に変位させる場合には、同方向への変位をユーザに確実に認識させることがきる。
次に、前記目標位置記憶部B13および抵抗力記憶部B15に目標位置データおよび抵抗力テーブルを記憶させる動作について説明する。この記憶動作には第1ないし第3の方法がある。第1の方法は、操作子41の目標位置および抵抗力を固定的に制御する方法である。この場合、抵抗力・目標位置記憶部B21に、予め複数の可動操作器40A,40Bにそれぞれ対応した1組の目標位置データおよび抵抗力テーブルを予め記憶しておく。この抵抗力・目標位置記憶部B21は、記憶装置34の所定記憶エリアに設けられており、目標位置データおよび抵抗力テーブルは、本装置の製品出荷時に記憶されたり、インターフェース回路35を介して外部から取り込んで記憶されたり、本装置の使用時にユーザによって生成または選択されて記憶されたりする。
そして、本装置の作動開始時(すなわち、電源投入時)またはユーザによるその他の操作子部22による指示時に、抵抗力・目標位置記憶部B21内の目標位置データおよび抵抗力テーブル(図5(A)〜(E)の実線を参照)が目標位置記憶部B13および抵抗力記憶部B15に転送される。また、これと同時に、目標位置変位制御部B12および操作抵抗力制御部B14には指示がなされ、目標位置変位制御部B12および操作抵抗力制御部B14の作動を開始させて、両制御部B12,B14に前述した動作を実行させる。これにより、複数の可動操作器40A,40Bの複数の操作子41は、前記目標位置データに従って、目標位置まで自動的に変位する。また、複数の操作子41には、前記抵抗力テーブルに従った抵抗力がそれぞれ付与される。なお、目標位置データは、全ての複数の操作子41に対して用意されているわけではなく(例えば、図5(D)(E)の実線のような回避位置が設定される場合には用意されておらず)、この場合には、目標位置変位制御部B12による操作子41の目標位置への変位制御は実行されない。この目標位置への変位制御を実行しないことに関しては、後述する第2および第3の方法においても同じである。
前記目標位置記憶部B13および抵抗力記憶部B15に目標位置データおよび抵抗力テーブルを記憶させる第2の方法について説明する。第2の方法は、操作子41の目標位置および抵抗力をユーザによる選択指示に応じて異なる態様で制御する方法である。この場合、前記第1の動作と同様な目標位置データおよび抵抗力テーブルが複数組用意されていて、抵抗力・目標位置記憶部B22には複数種類の目標位置データおよび抵抗力テーブルが記憶されている。この抵抗力・目標位置記憶部B22も、記憶装置34の所定記憶エリアに設けられており、目標位置データおよび抵抗力テーブルの記憶方法に関しても前記第1の記憶動作の場合と同じである。ただし、複数種類の目標位置データおよび抵抗力テーブルは、それぞれ可動操作器40A,40Bを含む本装置の使用環境、使用場面(シーン)、使用タイミングなどの状況にそれぞれ対応した異なるデータ群である。
そして、この場合には、プログラム処理により実現される選択指示入力部B23および抵抗力・目標位置選択部B24が用意されている。選択指示入力部B23は、その他の操作子部22を用いたユーザの選択指示を入力して、抵抗力・目標位置選択部B24に前記選択指示を伝達する。抵抗力・目標位置選択部B24は、前記選択指示に応答して、抵抗力・目標位置記憶部B22内に記憶されている複数種類の目標位置データおよび抵抗力テーブルのうちから、1種類の目標位置データおよび抵抗力テーブルを選択して、目標位置記憶部B13および抵抗力記憶部B15にそれぞれ記憶させる。そして、この記憶動作と同時に、目標位置変位制御部B12および操作抵抗力制御部B14にも指示がなされ、目標位置変位制御部B12および操作抵抗力制御部B14の作動を開始させて、両制御部B12,B14に前述した動作を実行させる。これにより、複数の可動操作器40A,40Bの複数の操作子41は、前記目標位置データに従って、目標位置まで自動的に変位する。また、複数の操作子41には、前記抵抗力テーブルに従った抵抗力がそれぞれ付与される。その結果、この第2の方法によれば、可動操作器40A,40B内の操作子41は、本装置の使用状況に応じて種々の目標位置に設定切り換えされるとともに、同操作子41に対する抵抗力も本装置の使用状況に応じて種々に設定される。
前記目標位置記憶部B13および抵抗力記憶部B15に目標位置データおよび抵抗力テーブルを記憶させる第3の方法について説明する。第3の方法は、ユーザにより操作子41の目標位置および回避位置が設定され、この設定された目標位置および回避位置に応じて抵抗力テーブルが自動的に設定されるようにした方法である。この場合、プログラム処理によって実現される目標・回避位置入力部B25および抵抗力演算部B26が用意されている。目標・回避位置入力部B25は、ユーザにより指定された目標位置または回避位置を表す目標位置データおよび回避位置データを入力して、目標位置データおよび回避位置データを抵抗力演算部B26に入力するとともに、目標位置データを目標位置記憶部B13に供給する。この場合、ユーザは、その他の操作子部22を操作することにより、複数の可動操作器40A,40Bに対して操作子41の目標位置または回避位置を入力する。
抵抗力演算部B26は、前記入力された目標位置データまたは回避位置データに基づいて、可動操作器40A,40Bのそれぞれに対して操作子41の抵抗力を表す抵抗力データを記憶した抵抗力テーブルを作成して、抵抗力記憶部B15に記憶する。この各操作子41の抵抗力データは、前述した図5(A)〜(E)の実線に示すように操作子41の位置に応じて変化する抵抗力を表すものである。抵抗力演算部B26は、予め記憶されているパラメータを用いて、目標位置データに対しては、図5(A)〜(C)の実線に示すように、目標位置から遠ざかるに従って大きな操作反力が作用し、目標位置に近づくに従って大きな補助力が作用するように、操作子41に対する抵抗力を位置に対応させて計算する。回避位置データに対しては、図5(D)(E)の実線に示すように、回避位置に近づくに従って大きな操作反力が作用し、回避位置から遠ざかるに従って大きな補助力が作用するように、操作子41に対する抵抗力を位置に対応させて計算する。
そして、この場合にも、前記目標位置記憶部B13および抵抗力記憶部B15へのデータ記憶と同時に、目標位置変位制御部B12および操作抵抗力制御部B14にも指示がなされ、目標位置変位制御部B12および操作抵抗力制御部B14の作動を開始させて、両制御部B12,B14に前述した動作を実行させる。これにより、複数の可動操作器40A,40Bの複数の操作子41は、前記目標位置データに従って、目標位置まで自動的に変位する。また、複数の操作子41には、前記抵抗力テーブルに従った抵抗力がそれぞれ付与される。その結果、この第3の方法によれば、ユーザが目標位置および回避位置を指定することにより、可動操作器40A,40B内の操作子41には、ユーザが指定した目標位置および回避位置に適した抵抗力が自動的に付与される。
なお、上記説明においては、操作子41には、図5(A)〜(E)の実線で示すように、位置に応じて連続的かつ滑らかに変化する抵抗力が付与されるようにした。しかし、この抵抗力は、連続的に変化するものであれば、図5(A)〜(E)の破線で示すように、階段状に変化するような特性にしてもよい。また、抵抗力の大きな領域では、図5(A)〜(E)の破線で示すように、抵抗力を小さく変動させるような特性にするとよい。これによれば、ユーザがこの領域で操作子41を操作すると、断続的に抵抗力が変化するために、ユーザは、操作子41の位置が推奨されていない領域であることを認識し易くなる。
また、上記説明では、可動操作器40A,40Bの各操作子41には、常時抵抗力を付与するようにした、すなわち電動モータ45に対する通電を常時行うようにした。しかし、これに代えて、操作子41に対する接触を検知するセンサを設けて、ユーザが操作子41に接触したときにのみ、電動モータ45に対する通電を行って抵抗力を付与するようにしてもよい。
また、上記説明では、可動操作器40A,40Bの各操作子41には、同操作子41を変位させない範囲内の大きさで変位操作に対する抵抗力を付与するようにした。しかし、この抵抗力では不足する場合には、操作子41が目標位置から遠ざかる方向に変位したこと、または回避位置の方向に変位したことを、位置センサ52の検出信号に基づいて検知して、この変位検知時に、操作子41を操作方向と反対方向に変位させるように電動モータを制御して、操作子41の操作に対して抵抗力を付与するようにしてもよい。
(第2の抵抗力付与方法)
上記説明では、操作子41の操作に抵抗力を与えるために、操作子41が変位しない範囲内の大きさで、電動モータ45に一方への回転力を与えるようにした第1の抵抗力付与方法について説明した。しかし、これに代えて、可動操作器40A、40Bの各操作子41に対する第2および第3の抵抗力付与方法を採用することもできる。第2の抵抗力付与方法は、電動モータ45の固定子側に、同モータ45の回転子の回転を阻止する静止磁界を付与する方法である。この静止磁界の大きさは抵抗力に比例する。この場合、図6(A)〜(C)の実線で示すように、操作子41の目標位置が与えられる場合には、目標位置付近では小さく、かつ目標位置から遠ざかるに従って連続的かつ滑らかに大きくなるように変化する静止磁界(抵抗力)が付与されるように、電動モータ45を通電制御する。また、図6(D)(E)の実線で示すように、操作子41の回避位置が与えられる場合には、回避位置から遠い位置では小さく、回避位置に近づくに従って連続的かつ滑らかに大きくなるように変化する静止磁界(抵抗力)が付与されるように、電動モータ45を通電制御する。
これによっても、目標位置付近または回避位置から遠い位置では操作子41を変位操作し易く、目標位置から遠い位置ほどまたは回避位置付近では操作子41を変位操作し難くなるという上記第1の抵抗力付与方法と同様な効果が期待される。しかし、この第2の抵抗力付与方法では、目標位置から遠い位置または回避位置付近に一旦変位してしまった操作子41に関しては、目標位置の方向または回避位置から遠ざかる方向にも、操作子41を変位操作し難くなる。したがって、この場合には、操作子41が目標位置に近づく方向または回避位置から遠ざかる方向へ変位したことが検出された場合には、前記静止磁界(抵抗力)を解除するようにするとよい。
また、この第2の抵抗力付与方法においても、図6(A)〜(E)の破線で示すように、抵抗力が階段状に変化するような変化特性にしてもよい。また、抵抗力の大きな領域では、図6(A)〜(E)の破線で示すように、抵抗力を小さく変動させるような特性にしてもよい。また、電動モータ41に常時通電することを避けるために、操作子41に対する接触を検知するセンサを設けて、ユーザが操作子41に接触したときにのみ、電動モータ45に対する通電を行って抵抗力を付与するようにしてもよい。さらには、抵抗力の不足を回避するために、操作子41が目標位置から遠ざかる方向に変位したこと、または回避位置の方向に変位したことを、位置センサ52の検出信号に基づいて検知して、この変位検知時に、操作子41を操作方向と反対方向に変位させるように電動モータを制御して、操作子41の操作に対して抵抗力を付与するようにしてもよい。
(第3の抵抗力の付与方法)
次に、第3の抵抗力付与方法について説明する。第3の抵抗力付与方法は、電動モータ45によるベルト47の回転に機械的な抵抗力を付与する方法である。図7に示すように、可動操作器40A内に、電動のリニアアクチュエータ53を配置する。そして、リニアアクチュエータ53により駆動ロッド54を上方へ押し上げ、駆動ロッド54の上端面に固定した摩擦部材55を回転支持体51に押し付けて、従動プーリ48の回転に対して抵抗力を付与する。そして、この場合にも、リニアアクチュエータ53を電気制御して、駆動ロッド54を押し上げる力を、操作子41の位置に応じて図6(A)〜(C)の実線で示すように制御する。
これによっても、前記第2の抵抗力付与方法と同様に、目標位置付近または回避位置から遠い位置では操作子41を変位操作し易く、目標位置から遠い位置ほどまたは回避位置付近では操作子41を変位操作し難くなるという上記第1の抵抗力付与方法と同様な効果が期待される。しかし、この第2の抵抗力付与方法でも、目標位置から遠い位置または回避位置付近に一旦変位してしまった操作子41に関しては、目標位置の方向または回避位置から遠ざかる方向にも、操作子41を変位操作し難くなる。したがって、この場合には、操作子41が目標位置の方向または回避位置から遠ざかる方向への変位が検出された場合には、回転支持体51に対する摩擦部材55の当接を解除するとよい。
また、回転支持体55の回転に対して抵抗力を付与するのに代えて、ベルト47の一部に摩擦部材を当接させて、ベルト47の回転に対して抵抗力を付与するようにしてもよい。回転支持体51またはベルト47でなくても、ベルト47の回転に関係して変位する部材であれば、その部材の変位に対する抵抗力を付与するようにしてもよい。
また、この第3の抵抗力付与方法においても、図6(A)〜(E)の破線で示すように、抵抗力が階段状に変化するような変化特性にしてもよい。また、抵抗力の大きな領域では、図6(A)〜(E)の破線で示すように、抵抗力を小さく変動させるような特性にしてもよい。また、電動モータ41に常時通電することを避けるために、操作子41に対する接触を検知するセンサを設けて、ユーザが操作子41に接触したときにのみ、リニアアクチュエータ53に対する通電を行って抵抗力を付与するようにしてもよい。さらには、この第3の抵抗力付与方法と、上記第1または第2の抵抗力付与方法を併用するようにしてもよい。
(操作子の機能切り換えを付加した変形例)
次に、複数の可動操作器40A,40Bの機能を切り換えて利用するようにした変形例について、図8の機能ブロック図を用いて説明する。図8の機能ブロック図は、上記図2の機能ブロック図の一部を変形したものである。この場合、複数の可動操作器40A,40Bの数は、利用装置24内の制御対象の数よりも多く、利用装置24内の複数の制御対象グループのうちから選択された一つの制御対象グループに属する複数の制御対象に対して、複数の可動操作器40A,40Bがそれぞれ利用される。ここで、利用装置24内の制御対象とは、複数の信号の出力レベル、信号に付与される効果に利用される複数の制御要素などである。
この装置においては、抵抗力・目標値記憶部B21,B22は上記実施形態の場合と同様に構成されるとともに同様の機能を発揮する。しかし、この抵抗力・目標値記憶部B21は、複数の機能(複数組の制御対象グループ)のそれぞれに対して、上述した複数の可動操作器40A,40Bにそれぞれ対応した1組の目標位置データおよび抵抗力テーブルを記憶している。抵抗力・目標値記憶部B22は、複数の機能(複数組の制御対象グループ)のそれぞれに対して、図2の場合と同様な状況に応じた複数組の目標位置データおよび抵抗力テーブルをそれぞれ記憶している。これらの目標位置データおよび抵抗力テーブルの記憶方法については上述したとおりである。
また、この装置は、プログラム処理により実現される機能切り換え指示入力部B31および状況切り換え指示入力部B32を備えている。機能切り換え指示入力部B31は、その操作子部22を用いてユーザにより指定された機能(1組の制御対象グループ)を入力して、指定された機能を表す信号を利用装置24、パラメータ設定部B11および選択部B33,B34にそれぞれ供給する。状況切り換え指示入力部B32は、その操作子部22を用いてユーザにより指定された状況(環境、場面、タイミングなど)を入力して、指定された状況を表す信号を選択部B34に供給する。パラメータ設定部B11は、位置センサ52からの複数の可動操作器40A,40B内の各操作子41の位置に応じて、前記指定機能により複数の可動操作器40A,40Bにそれぞれ割り当てられている複数の制御対象のための制御パラメータを生成する。利用装置24は、前記パラメータ設定部B11により生成された制御パラメータを用いて、前記指定機能により複数の可動操作器40A,40Bにそれぞれ割り当てられている複数の制御対象を制御する。
選択部B33は、前記指定機能を表す信号に応じて、抵抗力・目標値記憶部B21に記憶されている1組の目標位置データおよび抵抗力テーブルを選択して、目標位置記憶部B13および抵抗力記憶部B15に記憶させる。選択部B34は、前記指定機能および指定状況を表す信号に応じて、抵抗力・目標値記憶部B22に記憶されている1組の目標位置データおよび抵抗力テーブルを選択して、目標位置記憶部B13および抵抗力記憶部B15に記憶させる。他の点については、上述した図2の機能ブロック図の場合と同じである。すなわち、操作子41の目標位置および抵抗力は、目標位置記憶部B13に記憶された目標位置データおよび抵抗力記憶部B15に記憶された抵抗力テーブルに基づいて、目標位置変位制御部B12および操作抵抗力制御部B14によりそれぞれ制御される。その結果、この変形例によれば、上記実施形態の場合に対して、操作子41の目標位置および抵抗力が、前述した機能および状況の両者の切り換えに応じて適宜制御されるようになる。
(音響ミキサーに適用した具体例)
次に、本発明を音響ミキサーに適用した具体的実施形態について説明しておく。図9は、図1の利用装置部24内の回路例を示している。この利用装置部24は、複数の入力回路61−1〜61−n、信号処理回路62および複数の出力回路63−1〜63−nを備えている。入力回路61−1〜61−nのそれぞれは、外部から複数のアナログ信号およびディジタル信号を入力する。アナログ信号に関しては、ディジタル信号に変換して出力する。信号処理回路62は、ディジタル形式の複数の信号処理チャンネルを有している。各信号処理チャンネルは、イコライザ回路、レベル調整回路などからなり、入力ディジタル信号の周波数特性、信号レベルなどをそれぞれ調整して出力する。なお、信号処理回路62内の信号処理チャンネルの数は、入力回路61−1〜61−nにて入力可能の信号の数よりも少ない。例えば、入力回路61−1〜61−nのそれぞれが入力可能な信号数にほぼ等しい。
また、出力回路63−1〜63−nのそれぞれは、複数のディジタル信号およびアナログ信号をそれぞれ出力する。アナログ信号出力に関しては、信号処理回路62からのディジタル信号をアナログ信号に変換して出力する。入力回路61−1〜61−nと信号処理回路63の間、信号処理回路62と出力回路63−1〜63−nの間には、接続回路64、65がそれぞれ接続されている。接続回路64は、入力回路61−1〜61−nからの入力信号を信号処理回路63の複数の信号処理チャンネルに選択接続する。接続回路65は、信号処理回路63の複数の信号処理チャンネルの出力信号を出力回路63−1〜63−nに選択接続する。
この装置の操作パネルには、図10に示すような操作部70が設けられている。操作部70は、信号処理回路62の信号処理チャンネルにそれぞれ対応したエリアに分けられている。各エリアには、回転操作子71−1〜71−mおよびフェーダ72−1〜72−mに加え、その他の操作子および表示器が設けられている。回転操作子71−1〜71−mは、パンを調整するものであり、上記実施形態の可動操作器40Bのように電動モータによって自動的に駆動されるようにしてもよいが、本変形例ではユーザによる操作のみによって変位するものとする。フェーダ72−1〜72−mは、信号レベルを調整するもので、上記実施形態の可動操作器40Aの操作子41に対応する。
また、この変形例においては、図1のその他の操作子部22には、場面、状況などに応じて、操作部70による調整の対象となる入力信号、およびフェーダ72−1〜72−mの目標位置を指定するためのシーン設定操作子も設けられている。このシーン設定操作子の指定は、上記実施形態における機能および状況を同時に指定することに対応する。そして、この場合も、上記図8の変形例の場合と同様に、複数の機能ごとに複数の状況(場面)に応じた目標値データおよび抵抗力テーブルを記憶した抵抗力・目標位置記憶部B22が記憶装置34に設けられている。また、この変形例においては、記憶装置34内に、図11に示すパネル操作処理プログラムが記憶されている。
このように構成した変形例においては、電源スイッチの投入により、本装置の作動を開始させると、CPU31は、パネル操作処理プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行し始める。パネル操作処理プログラムは、図11のステップS10にて開始され、CPU31は、操作部70を含む操作パネルの操作子のうちのいずれかの操作子も操作されなければ、ステップS11にて「No」と判定してステップS23のこのプログラムの実行を一旦終了する。一方、いずれかの操作子が操作されると、ステップS11にて「Yes」と判定して、ステップS12以降の処理を実行する。
いま、シーン設定操作子が操作されたとする。この場合、CPU31は、ステップS12にて「Yes」と判定し、ステップS13にて操作部70内のフェーダ位置を初期化する。このフェーダ位置の初期化においては、電動モータ45を駆動制御することによりフェーダ72−1〜72−mを予め決められた初期位置(例えば、最小位置)に移動させる。また、この初期化では、RAM33内のフェーダ72−1〜72−mの位置を表す位置データを、フェーダ72−1〜72−mの最小位置を表す値に初期設定する。次に、ステップS14にて、前記シーン設定操作子によって指定されたシーンにより、フェーダ72−1〜72−mを含む操作部70の各エリアの機能割り当てを行う。具体的には、CPU31は、図9の接続回路64を制御して、入力回路61−1〜61−nに入力される信号を、前記指定された機能に応じて信号処理回路62の信号処理チャンネルに選択的に入力させる。また、これと同時に、指定された機能に応じて接続回路65を制御して、信号処理回路62にて処理された複数の信号を、出力回路63−1〜63−nのうちのいずれの出力回路に出力するかも指定する。
前記ステップS14の処理後、CPU31は、ステップS15にて、前記指定されたシーン(状況)に応じてフェーダ72−1〜72−mを目標位置に移動する。この場合、上記変形例で説明したように、抵抗力・目標位置記憶部B22から前記指定されたシーンによって特定される機能および状況に対応した目標位置データを読み出し、電動モータ45を駆動制御することにより、フェーダ72−1〜72−mを目標位置データによって表された目標位置に移動する。また、前記RAM33内に初期設定したフェーダ72−1〜72−mの位置を表す値に、位置センサ52からのフェーダ72−1〜72−mの移動量を加味して、フェーダ72−1〜72−mの位置を計算し、同計算した位置に応じて電動モータ45をフィードバック制御する。なお、この処理は、図8の目標位置記憶部B13および目標位置変位制御部B12の処理に対応する。
次に、CPU31は、ステップS16にて、前記指定されたシーン(状況)に応じてフェーダ72−1〜72−mの操作抵抗力を設定制御する。この場合も、上記実施形態で説明したように、抵抗力・目標位置記憶部B22から前記指定されたシーンによって特定される機能および状況に対応した抵抗力テーブル内からフェーダ72−1〜72−mの位置に応じた抵抗力データを読み出して、上述した第1ないし第3の抵抗力付与方法のいずれかまたはそれらの組み合わせにより、フェーダ72−1〜72−mの位置に応じた抵抗力をフェーダ72−1〜72−mに付与する。なお、この処理は、図8の抵抗力記憶部B15および操作抵抗力制御部B12の処理に対応する。
一方、フェーダ72−1〜72−mが操作されると、CPU31は、ステップS17にて「Yes」と判定し、ステップS18にて、フェーダ72−1〜72−mの位置を計算する。この計算処理においては、前述した場合と同様に、RAM33内に記憶されていてフェーダ72−1〜72−mの現在位置を表す位置データに、位置センサ52からのフェーダ72−1〜72−mの移動量を加味することによりフェーダ72−1〜72−mの位置を計算し、RAM33内の位置データを更新しておく。そして、CPU31は、ステップS19にて、前記計算したフェーダ72−1〜72−mの位置に応じて、前記指定された機能に関する制御パラメータを計算して、信号処理回路62に出力する。なお、この処理は、図8のパラメータ設定部B11の処理に対応する。この制御パラメータの設定処理により、信号処理回路62は、供給された制御パラメータに応じて入力された信号を処理して出力するようになる。
前記ステップS19の処理後、CPU31は、ステップS20,S21の処理により、操作されたフェーダ72−1〜72−mが抵抗力を付与すべきものであることを条件に、操作されたフェーダ72−1〜72−mに操作抵抗力を付与する。この操作抵抗力付与は、前記ステップS16と同様に行われる。さらに、シーン操作子およびフェーダ72−1〜72−m以外の操作子が操作された場合には、ステップS22の処理により、操作された操作に関する処理が実行される。
上記説明からも理解できるように、この変形例でも、上記図8の変形例の場合と同様に、フェーダ72−1〜72−mには、それらの目標位置に対する位置に応じた操作抵抗力が付与される。またシーン(機能および状況)の変更より、フェーダ72−1〜72−mは目標位置に自動設定されるとともに、前記抵抗力もシーンに応じて変更される。その結果、この変形によっても、上記図8の変形例と同様な効果が期待される。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
21…可動操作器部、24…利用装置、31…CPU、34…記憶装置、40A,40B…可動操作器、41…操作子、45…電動モータ、47…ベルト、51…回転支持体、53…リニアアクチュエータ、55…摩擦部材、B11…パラメータ設定部、B12…目標位置変位制御部、B13…目標位置記憶部、B14…操作抵抗力制御部、B15…抵抗力記憶部、B21,B22…抵抗力・目標位置記憶部、B23…選択指示入力部、B24…抵抗力・目標位置選択部、B25…目標・回避位置入力部、B26…抵抗力演算部、B31…機能切り換え指示入力部、B32…状況切り換え指示入力部、B33,B34…選択部