以下、本発明に係るメモリカード用ソケットの実施形態について図面を用いて説明する。尚、以下の説明では、特に断りが無い限り図1中の矢印a−bを上下方向、矢印c−dを左右方向、矢印e−fを前後方向と定めるものとする。本実施形態は、図1,2に示すように、厚みが極めて薄いステンレス金属板に打ち抜き加工且つ曲げ加工を施すことにより形成されたベースシェル1と、このベースシェル1と同様に厚みが極めて薄いステンレス金属板に打ち抜き加工且つ曲げ加工を施すことによって形成され、ベースシェル1上に被着することで前面にカード挿入口3aが開口する扁平な箱状のソケット本体3をベースシェル1とで構成するカバーシェル2と、ソケット本体3の後部内に装着されるコンタクトブロック4と、コンタクトブロック4の前方側のソケット本体3内に前後方向に移動自在に配置されるL字型の樹脂成形品から成るスライダ5とを主要な構成要素としたものである。
ベースシェル1は、図5(a),(b)に示すように、矩形板状の金属板の左右両側に上方向に折り曲げて形成した側片6a,6bを設けたもので、前後端が開放されている。ベースシェル1の後端には上方向に突出する突出片9が所定間隔で左右方向に4つ折り曲げ形成され、ベースシェル1の左端には上方向に突出する突出片9が所定間隔で前後方向に3つ折り曲げ形成されており、これらの突出片9をコンタクトブロック4の樹脂製の基体7の下面に開口した圧入溝8(図7(b)参照)に下方から圧入することで、ベースシェル1の上面にコンタクトブロック4が圧入固定されるようになっている。
また、ベースシェル1の後端よりやや前方には、コンタクトブロック4に保持される後述の各コンタクト10…を逃がすための孔11…を複数形成してある。
また、ベースシェル1の前側縁の右端には、メモリカードMCの通過位置よりも外側位置から上側方向に突出し、更にその先端側が後側方向に突出する側面視略L字形の支持片12が折り曲げ形成されており、支持片12の上面に設けた係合孔12aに後述するカムピン16の一端側の軸部16bが係入され、支持片12に対してカムピン16が回動自在に軸支されている。また、ベースシェル1の右側縁には、後述するスライダ5の凹溝27に嵌ってスライダ5をガイドする突条部13,13が前後方向に並べて切り起こしによって形成されている。また、ベースシェル1の前側縁の左側には、後述する基体7の側部7b前端部と係合する係合片1aが折り曲げ形成されている。
コンタクトブロック4は、図7に示すように、ベースシェル1及びカバーシェル2の後側辺に沿って配置されて、ソケット本体3の後面を閉塞する側部7aと、該側部7aの左端部から前方に突出し、ベースシェル1の側片6bに沿って配置される側部7bとが一体に形成された略L字形の樹脂成形品から成る基体7を有し、側部7aの前面右端にはスライダ5を前方に付勢するコイルばね14の一端側を保持する丸棒状のばね受け突起7cが突設されるとともに、側部7aの上面右端には矩形状の嵌合突起7eが突設されている。また側部7bには、側部7aとの連結部位からメモリカードMCのスライド方向に沿って延び、メモリカードMCの裏面に対向する段部7dを一体に備えている。また側部7a前面の上側の角部には、後述するカバーシェル2の突出片20と係合する係合凹部17が左右方向に間隔を空けて3箇所設けられている。また側部7a後面の上側の角部には、後述するカバーシェル2の曲げ片19と係合する係合凹部18が左右方向の略全体に亘って形成されている。
更に基体7の側部7aには、メモリカードMCの後部裏面に複数(SDメモリカード(登録商標)では9つ)並行形成したI/O接触面(図示せず)に夫々対応接触する9本のコンタクト10…が圧入固定され、各コンタクト10…の接触側を側部7aの前方に突出させている。また側部7bの上面に設けた圧入溝33,34,35には、固定接点41a,42aを有する共通端子板30と、共通端子板30に設けた固定接点41aとともにメモリカードMCの装着検出用接点を構成する可動接点を具備した可動接点板31Aと、共通端子板30に設けた固定接点42aとともにメモリカードMCのライトプロテクトスイッチ100の位置検出用接点を構成する可動接点を具備した可動接点板31Bとが上側より圧入固定されている。尚、各コンタクト10…の半田付け端子10aは側部7aの後面から上方に突出し、後述する共通端子板30の半田付け端子30a、及び可動接点板31A,31Bの半田付け端子(表面実装用端子)31d,31dは側部7bの外側面から上方に突出している。
共通端子板30は、図1に示すように、弾性を有する帯板状の板金に打ち抜き加工及び曲げ加工を施すことにより形成されており、長手方向の一端側の上側縁からは上方に向かって側面視略L字形の半田付け片30aが突設されている。また、長手方向の中間部及び他端側の上側縁には、長手方向の一端側にはダボ形状を有する固定接点41a,42aが設けられるとともに長手方向の中間部が外側方向に屈曲させられた固定接点板41,42の長手方向他端側が連結されている。この共通端子板30を基体7の圧入溝33に圧入固定すると、固定接点板41,42において固定接点41a,42aが形成された側の端部が側部7bに設けた凹欠部36,36内に配置される。
次に、可動接点板31A,31Bについて説明する。尚、可動接点板31A,31Bは同一の形状に形成されているので、可動接点板31Aについて図1を用いて説明し、可動接点板31Bについては説明を省略する。可動接点板31Aは弾性を有する金属板に打ち抜き加工及び曲げ加工を施すことにより形成され、基体7に設けた圧入溝34内に圧入固定される矩形板状の圧入片31aと、圧入片31aの幅方向一端側の上側部より側方に突出し先端側を略U字形に湾曲させた帯板状の接触ばね部31bと、ソケット本体3の厚み方向における圧入片31aの一方の側縁から延長形成された側面視略L字形の半田付け端子31dとを備えている。接触ばね31bには、先端側に設けた湾曲部分の手前寄りの部位に固定接点41aと接触するVノッチ(図示せず)が形成されており、このVノッチが形成された部位から固定接点41a,42aが接離する可動接点が構成されている。尚、各可動接点板31A,31Bを基体7の上面に開口する圧入溝34,35に圧入すると、各可動接点板31A,31Bの接触ばね31bの先端側に設けた湾曲部が、側部7bの凹欠部36を通してソケット本体3の内側方向に突出する(図9参照)。
一方、カバーシェル2は、図6に示すように矩形板状の金属板の後縁を主表面に対して略垂直な方向、即ち下側方向に折り曲げて曲げ片19を形成したもので、曲げ片19よりもやや前端寄りには主表面に対して略垂直な方向、即ち下側方向に突出する3つの突出片20を折り曲げ形成してある。また、カバーシェル2の後部右側には、基体7の嵌合突起7eが嵌合する嵌合孔2bが貫設されており、カバーシェル2の右端縁の前面部には、下向きに突出する略L字形の溶接片2aが折り曲げ形成されている。
更に、カバーシェル2の前面側にはメモリカードMCの表面に弾性接触させてメモリカードMCを押さえるとともに、SDIOタイプのカードに対してはSDIOカードの上面に設けられたグランド端子に弾接する弾接ばね片21,21が打ち抜き加工及び曲げ加工を行うことにより形成されるとともに、前面側の右端部には、ベースシェル1の支持片12に対向する部位にカムピン16の一端側の軸部16bを押さえて、軸部16bの脱落を防止する押さえ片22が切り起こしによって形成され、更にカムピン16の他端部の軸部16aを押さえて、軸部16aの先端を後述するガイド溝15bの凹凸面15cに当接させる略T字形の弾接ばね片23が打ち抜き加工及び曲げ加工を行うことにより形成されている。また、カバーシェル2の右端部の後部寄りには、メモリカードMCの装着時にメモリカードMCのロック用凹所101に係合して抜けを防止するロック体24が打ち抜き加工及び曲げ加工を行うことにより形成されている。ロック体24は細長い帯板状であって、ベースシェル1の側片6aと略並行し後端部がカバーシェル2に連結されるとともに前端部が内側方向に屈曲されたレバー片24aと、レバー片24aの前端部から前方に向かって延長形成され、先端側が内側方向に向かって略円弧状に湾曲した係合片24bとで構成される(図6(b)参照)。
スライダ5は樹脂成形品であって、図8に示すように、メモリカードMCの右側縁に当接する側部5aと、側部5aの後端部から側方に突出してメモリカードMCの前側縁に当接する側部5bとで略L字形に形成されており、側部5aと側部5bとで囲まれる入り隅には、メモリカードMCの前部右側の角部を落として形成された傾斜カット部102と当接する傾斜面を前面に備える当接部5cが形成されている。尚、当接部5cには、後述する係合部5eが切り欠いて形成されている。また、側部5aの内側面(図8(a)中の左側面)には、当接部5cからメモリカードMCのスライド方向に沿って延び、メモリカードMCの裏面に対向する段部5dを一体に備えている。
一方、側部5aの下面には、後端部から中央部にかけて外側と下側と後側とが開口した断面略円弧状の細溝26を形成してあり、この細溝26には上述したコイルばね14の他端部が収められ、細溝26の前端内面がコイルばね14の弾発力を受ける面となっている。また、側部5aの下面には、前後両側及び下側が開口し、ベースシェル1の突条部13,13が係入される凹溝27が前後方向に沿って形成されている。即ち、組立完了時にはスライダ5は、ベースシェル1の主平面と側片6aと突条部13,13とカバーシェル2の主平面によって移動方向が規制され、ベースシェル1の支持片12に側部5aの前端部が当接することで前方方向へのそれ以上の移動が規制されている。そして、スライダ5はコイルばね14によって前方方向へ付勢されており、メモリカードMCがソケット本体3内に挿入されてメモリカードMCのI/O接触面が各コンタクト10…に接触する位置とメモリカードMCがソケット本体3から取り外し可能となる位置との間でスライドする。尚、側部7bには、スライダ5をスライドさせる際に各コンタクト10…とスライダ5とが衝合するのを防ぐために、各コンタクト10…を避ける前後面及び下面が開口した溝部28が複数(図示では2つ)設けられている。
また、側部5aの前側部の上面には、カムピン16の軸部16aが移動自在に係入されるハートカム溝部15が形成され、ハートカム溝部15よりも後側にはカバーシェル2に設けたロック体24が挿入される凹溝25が形成されている。ハートカム溝部15は、図8(a),(d)に示すように、ハートカム15aと、ハートカム15aの周部に形成されたガイド溝15bとで構成され、カムピン16の軸部16aをガイド溝15bに係入し、スライダ5の前後移動に伴い、ガイド溝15bとガイド溝15bの底面に形成した凹凸面15cとで、カムピン16の軸部16aのガイド溝15b内での相対的な移動がガイドされるようになっている。尚、ハートカム15aの前部には、前側に開放された凹部15dが形成されており、スライダ5の最後部位置への移動後のメモリカードMCの押し込み力の解除時にカムピン16の軸部16aが凹部15dに嵌り込むことで、スライダ5の前方方向への移動を規制し、スライダ5を所定位置に保持している。また、側部5aの上面に設けた凹溝25の右側端面には、ソケット本体3の内側方向に突出する張出部29が前側部に形成してあり、スライダ5が上記所定位置まで移動すると、張出部29がロック体24のレバー片24aを押圧して、ロック体24の先部(係合片24b)をメモリカードMCのロック用凹所101内に係入させるとともに、メモリカードMCの取出位置までスライダ5が移動した状態では張出部29がロック体24から離れることによって、ロック体24が初期位置に戻り、係合片24bの先部がロック用凹所101から退出するようになっている。
以下、本実施形態の組立方法について説明する。先ず、各コンタクト10…を基体7の後面に開口する圧入用孔(図示せず)に圧入するとともに、基体7の側部7bに設けた圧入溝33に共通端子板30を圧入した後、側部7bに設けた圧入溝34,35にそれぞれ可動接点板31A,31Bを圧入固定する。この時、側部7bに設けた後側の凹欠部36には、固定接点板41及び可動接点板31Aの接触ばね部31bが接触ばね部31bを内側にして対向配置されるとともに、側部7bに設けた前側の凹欠部36には、固定接点板42及び可動接点板31Bの接触ばね部31bが接触ばね部31bを内側にして対向配置される。
そして、各コンタクト10…、共通端子板30及び可動接点板31A,31Bを基体7に保持させてコンタクトブロック4を組み立てた後、このコンタクトブロック4の基体7をベースシェル1の上面に載置し、ベースシェル1の突出片9を基体7の下面に開口する圧入溝8に圧入することによって、基体7をベースシェル1に固定する。このとき、基体7の側部7bの前端部がベースシェル1の係合片1aと係合し、側部7bの前端部の位置ずれを規制している。そして、基体7のばね受け突起7cにコイルばね14の一端側を挿入保持させた状態で、コイルばね14の他端側を細溝26に挿入させるとともに、ベースシェル1の突条部13を凹溝27内に嵌入させるようにしてスライダ5をベースシェル1上に載置した後、カムピン16の一端側の軸部16bをベースシェル1の支持片12に設けた係合孔12aに係入させるとともに、カムピン16の他端側の軸部16aをスライダ5のハートカム溝部15内に係入させる。その後、基体7の嵌合突起7eをカバーシェル2の嵌合孔2b内に嵌合させた状態で、ベースシェル1の両側片6a,6bの先端部間にカバーシェル2を橋架する形で載置し、ベースシェル1とカバーシェル2との接合部位(カバーシェル2の左右の側縁とベースシェル1の両側片6a,6bの先端部との突き合わせ部)をレーザ溶接により接合することで、前部にカード挿入口3aが開口した箱状のソケット本体3が形成され、メモリカード用ソケットの組立が完了する(図2参照)。尚、ベースシェル1の前側縁から折り曲げ形成された支持片12の上面には、側方に向かって突出する幅狭の溶接片12bが突設されており、この溶接片12bにカバーシェル2の溶接片2aの下向き段部を衝合させて、レーザ溶接により接合することで支持片12がカバーシェル2に連結されるため、支持片12の強度を高めることができる。この組立状態では、スライダ5はコイルばね14により付勢されて前方へ押し動かされ、側部5aの前端部がベースシェル1の支持片12に衝合することによって、スライダ5のそれ以上の前方への移動が規制される。また、この状態ではカムピン16の一端がガイド溝15bの後端の位置A(図8(a)参照)に移動している。
ここで、ベースシェル1の支持片12と、基体7の側部7bとの間がカード挿入口3aに対応し、スライダ5の側部5aと側部7bとの段部5d,7dよりも上側の内側縁間の寸法をメモリカードMCの両側の最大幅寸法よりやや大きく設定し、またベースシェル1の上面と段部5d,7dの上向き面との間の寸法を、ベースシェル1の上面に裏面側を載せた状態のメモリカードMCの裏面両側縁に前後方向の全長に亘って形成している下向き段部103(図3及び図4参照)の下向き面の高さ寸法よりやや小さい寸法に設定し、且つ側部5a,7bの段部5d,7dより下側の内側縁間の寸法をメモリカードMCの下向き段部103より下方の両側幅の寸法よりやや大きく設定してある。
これによりメモリカードMCの裏面(I/O接触面が形成された面)側をベースシェル1の上面側に載せる状態では、メモリカードMCの下向き段部103が側部5a,7bの段部5d,7d上を通過することができて上記カード挿入口3aからのメモリカードMCの挿入を可能とし、逆にメモリカードMCの表面(I/O接触面が形成された面と反対側の面)をベースシェル1の上面側に向けた場合には、メモリカードMCのベースシェル1側となった両側部が両段部5d,7dの内側縁間を通過できず、メモリカードMCの表裏方向の間違いによる誤挿入を防止するようになっている。
また、ベースシェル1において右端のコンタクト10に対応して設けた右端の孔11の前側の両側縁には、切り起こしによって押し上げ部11aが形成されている(図5(b)参照)。つまり、メモリカードMCの前後方向が正規の方向でカード挿入口3aに挿入される場合には、メモリカードMCの裏面に設けたI/O接触面へ誘い込む溝(図示せず)の開口を介して各コンタクト10…が接触位置へ移動することができるが、前後方向を逆にしてメモリカードMCが挿入されようとした場合には、挿入方向の前面部に押し上げ部11aが衝合してそれ以上の移動を規制し、各コンタクト10…の先端部がメモリカードMCの挿入側の前面に当たって破損されるのを防ぐようになっている。
更に、図5(b)に示すように、左端の孔11の前側の右側縁、左端から2番目の孔11の前側の右側縁、左端から4番目の孔11の前側の左側縁、左端から5番目の孔11の前側の右側縁においても切り起こしによって押し上げ部11aが形成されている。これは、厚み寸法及び幅寸法がメモリカードMCの寸法よりも小さい規格の異なるメモリカードMS(図10(c),(d)参照)を誤って挿入した際に、当該メモリカードMSの挿入方向側の端部、具体的には、メモリカードMSのI/O接触面において各コンタクト10…と対応する部位間を絶縁するための肉厚のリブ(図示せず)が各コンタクト10…の先端部と衝合して各コンタクト10…が破損するのを防ぐためである。即ち、メモリカードMSを誤って挿入した際に、当該メモリカードMSの前記リブが前記押し上げ部11aと衝合し、更にメモリカードMSを押し込んだ際に押し上げ部11aによってメモリカードMSの前記リブが上方へと逃がされることで、各コンタクト10…とメモリカードMSの前記リブとが衝合するのを回避することができ、各コンタクト10…が破損するのを防ぐことができる。
尚、押し上げ部11aは、右端の孔11以外の孔11においては上記効果を奏することができる配置であれば何れの孔11に設けても構わないが、メモリカードMSの挿入角度に依らず、メモリカードMSの前記リブが必ず何れかの押上げ部11aと衝合するように配置するのが望ましい。
次に、本実施形態のメモリカード用ソケットにメモリカードMCを挿抜する動作について説明する。メモリカードMCを装着していない状態では、コイルばね14の弾発力を受けて側部5aの前端部がベースシェル1の支持片12と衝合する位置までスライダ5が前方へ移動している。この状態では、ロック体24の係合片24bが凹溝25内に退避しており、係合片24bの先端部が側部5aの内側面よりも内側へ突出しないようになっている。
この状態からメモリカードMCを前後方向及び表裏方向を正規の方向に向けてソケット本体3のカード挿入口3a内に挿入すると、メモリカードMCがスライダ5の側部5aと基体7の側部7bとの間に挿入されて、メモリカードMCの下面両側部の下向き段部103,103が両側部5a,7bに設けた段部5d,7dの上側に載ることになる。そして、メモリカードMCをソケット本体3内に更に挿入すると、メモリカードMCの前端部の右側に設けた傾斜カット部102がスライダ5の当接部5cに衝合してスライダ5を後方へ押すことになる。その後、スライダ5に加わるコイルばね14の弾発力に抗してメモリカードMCを更に内側へ押し入れると、メモリカードMCの移動に伴ってスライダ5が後退することになる。このスライダ5の後退により、カムピン16の軸部16aはハートカム溝部15のガイド溝15b底部の凹凸面15cによってガイドされながら、ガイド溝15b内を図8(a)中の下側へ移動し、図8(a)中の位置Bに移動することになる(実際には、スライダ5が後方へ移動することによって、カムピン16の軸部16aがガイド溝15b内を前方(図8(a)中の下方)へ移動することになる)。そして、スライダ5の側部5bの後面がコンタクトブロック4の基体7の前面に当たる位置に近い位置までメモリカードMCを押し込むと、カムピン16の軸部16aがガイド溝15bの前端部に当たる位置Cに至ることになり、それ以上の押し込みができなくなる。またこの時、スライダ5の後方移動に伴って、凹溝25の内側端面に設けた張出部29がロック体24のレバー片24aと当接し、レバー片24aをソケット本体3の内側方向へ撓ませるので、ロック体24の係合片24bが側部5aの内側面よりも内側方向に突出し、メモリカードMCのロック用凹所101に係入することで、メモリカードMCをロックしてメモリカードMCの脱落が防止される。
そして、この位置でメモリカードMCに加えていた押し込み力を解除すると、コイルばね14の弾発力を受けてスライダ5がメモリカードMCと共に前方へ戻りかけるが、カムピン16の軸部16aがガイド溝15bに案内されながらハートカム15aの凹部15dに嵌り込む位置Dまで移動することになる。したがって、カムピン16の軸部16aがハートカム15aの凹部15dに当接することで、これ以上のスライダ5の前方移動が規制され、ロック体24によりロックされたメモリカードMCもその位置でソケット本体3内に留まることになる。
さて、メモリカードMCが押し込みにより所定位置へ移動すると、基体7の側部7aから前方に突出する各コンタクト10…の先端部がメモリカードMCの裏面に形成した対応するI/O接触面に順次接触することになる。また、基体7の側部7bの内側面から内側方向に突出する可動接点板31Aが、メモリカードMCの先端部によって押されて共通端子板30と接触することにより、可動接点板31Aと共通端子板30との間(つまり装着検出用接点)が導通するので、このスイッチ信号を利用して外部の検出回路(図示せず)によりメモリカードMCが正規の位置に挿入されたことを検出することができる。
また、可動接点板31Bに対応するメモリカードMCの一側面には、ライトプロテクトスイッチ100の摘み104が露出する凹部105が設けてあり、摘み104の凹部105内の移動位置により、可動接点板31Bの先端部が摘み104に乗り上げるか、又は凹部105内に落ち込むことになり、それに応じて可動接点板31Bと共通端子板30との間(つまり、ライトプロテクトスイッチ100の位置検出用接点)がオン/オフするから、このスイッチ信号を利用して外部の検出回路(図示せず)によりメモリカードMCがライトプロテクト状態にあるか否かを検出することができる。尚、メモリカードMCの規格では、厚み方向の寸法公差に対して幅方向の寸法公差が小さくなっており、可動接点板31A,31Bの接触ばね部31bは、メモリカードMCの幅方向からカード表面或いはライトプロテクトスイッチに当接しているので、寸法のばらつきが大きい厚み方向からカード表面或いはライトプロテクトスイッチに当接させる場合に比べて、接触安定性を向上させることができる。
以上のようにして装着されたメモリカードMCをソケットから取りだす際は、先ずソケット本体3のカード挿入口3aより外部に露出するメモリカードMCの端部を挿入方向に押し、メモリカードMCと共にスライダ5を挿入方向へ移動させる。この移動によってカムピン16の軸部16aがハートカム15aの凹部15dから離脱するとともに、ガイド溝15bにガイドされて凹部15dより右側前方に出て、ガイド溝15b内の位置Eに移動する。
その後、メモリカードMCの押し込み力を解除すると、スライダ5はコイルばね14の弾発力により前方へ移動することになる。スライダ5が前方へ移動すると、スライダ5の移動に伴ってカムピン16の軸部16aはガイド溝15bにガイドされながら、ハートカム15aの右側のガイド溝15b内の位置Fを通って、ガイド溝15bの後端部の位置Aまで移動する。また、スライダ5の前方方向への移動に伴い、スライダ5の張出部29がロック体24のレバー片24aから離れるため、レバー片24aを撓める力がなくなってレバー片24aが初期位置に戻り、係合片24bの先端部が側部5aの凹溝25内に退避するため、係合片24bとロック用凹所101との係合状態が解除され、メモリカードMCのロックが解除される。また、メモリカードMCの端部がソケット本体3のカード挿入口3aから外部へ大きく露出するので、メモリカードMCをソケット本体3から取り出すことが可能になる。
以下、本実施形態の要旨であるスライダ5の係合部5e及びベースシェル1の押し上げ部11aについて説明する。先ず、図10(b)に示すように、係合部5eが設けられていない従来のスライダ5が配設されたソケット本体3に、規格の異なるメモリカードMSを挿入した場合について説明する。従来のスライダ5では、規格の異なるメモリカードMSを挿入した際に、メモリカードMSの挿入方向側における角部がスライダ5の当接部5cにガイドされて溝部28に嵌り込んでしまう(図10(d)参照)。このため、その状態でメモリカードMSを押し込むと、溝部28の上壁が押し上げ部11aによってメモリカードMSを上方へ逃がすのを阻害し、メモリカードMSの前記角部、即ち、メモリカードのI/O接触面において端子間を絶縁するために設けられた肉厚のリブがコンタクト10の上方に逃げることができずにコンタクト10の先端部と衝合するため、コンタクト10を破損してしまう。
そこで、本実施形態では、図10(a)に示すように、スライダ5の当接部5cにおいて、メモリカードMSの前記角部が係合する係合部5eを切り欠いて形成している。係合部5eは、メモリカードMSの前記角部が係合した際に、右端の孔11に設けられた押し上げ部11aとメモリカードMSの前記リブとが衝合するようにメモリカードMSを位置決めする(図10(c)参照)。
而して、本実施形態では、厚み寸法及び幅寸法がメモリカードMCの寸法よりも小さい規格の異なるメモリカードMSを挿入した際に、メモリカードMSの前記角部が当接部5cにガイドされて係合部5eに位置決めされるため、メモリカードMSの前記角部の溝部への嵌り込みを防ぐことができる。また、係合部5eは、右端の孔11に設けられた押し上げ部11aとメモリカードMSの前記リブとが衝合するようにメモリカードMSを位置決めするので、メモリカードMSを押し込んでも押し上げ部11aによってメモリカードMSの前記リブが上方へと逃がされてコンタクト10との衝合を避けることができ、コンタクト10の破損を防ぐことができる。ここで、係合部5eはスライダ5を切り欠いて形成できるとともに、押し上げ部11aもベースシェル1から切り起こして形成できることから、従来例のように誤挿入防止用の別部材を設ける必要がなく、したがって簡単な構成で且つコストを抑えつつ規格の異なるメモリカードMSが誤挿入された場合にコンタクト10が破損するのを防止することができる。
尚、本実施形態では、図10(c)に示すように、係合部5eと対応する溝部28の内側左右両側縁に肉厚の補強部5fを形成している。而して、当該補強部5fによってスライダ5が補強されるとともに、メモリカードMSが挿入された際に補強部5fとメモリカードMSの前記角部が衝合することから、メモリカードMSが溝部28に嵌り込むのをより確実に防ぐことができる。
また、本実施形態では、右端の孔11に対応する押し上げ部11aを孔11の前側の左右両側縁から上方に突出させているが、図11に示すように、孔11の前端部から後方且つ上方に傾斜するように突出させても構わない。この場合にも、規格の異なるメモリカードMSを誤って挿入した際に、該メモリカードMSの前記角部が押し上げ部11aに押し上げられるためにコンタクト10の破損を防止することができる。
尚、本実施形態では、メモリカードとしてSDメモリカード(登録商標)を例に説明を行ったが、ソケット内に挿入される部位の大きさがSDメモリカード(登録商標)と同様の大きさに形成されるとともに、SDメモリカード(登録商標)と同様の端子配列を有し、I/OインタフェースやPHSモジュールやGPSモジュール等の機能部を搭載したSDIOカードを装着して使用することができる。即ち、本実施形態のメモリカード用ソケットは、SDメモリカード(登録商標)及びSDIOカードの両方に対応したものである。また、本実施形態では、規格の異なるメモリカードとしてメモリースティックデュオ(登録商標)を例に説明を行ったが、厚み寸法及び幅寸法が不一致な他の規格の異なるメモリカードに対しても本発明の効果を奏することができるのは言うまでもない。勿論、SDメモリカード(登録商標)とは規格の異なるメモリカード用ソケットに対して本発明の技術的思想を適用しても構わないことは言うまでもない。