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JP5023255B2 - Cyp2c8の薬物代謝能の検査方法、該方法に用いられるプローブおよび検査キット。 - Google Patents

Cyp2c8の薬物代謝能の検査方法、該方法に用いられるプローブおよび検査キット。 Download PDF

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Description

本発明は、CYP2C8の薬物代謝能の検査方法、および、該検査方法に用いられるプローブ並びに検査キットに関し、更に詳しくは、薬物代謝酵素であるCYP2C8をコードするCYP2C8遺伝子の多型である、IVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型の有無を検出することにより、CYP2C8の薬物代謝能を検査する検査方法、および、該検査方法に用いられるプローブ並びに検査キットに関する。
薬物は、疾患の種類および症状等に応じて投与される。このとき、個々の患者の薬物に対する反応性に差違があることが、広く一般に知られており、薬物応答性の個体差は、個々人の薬物作用点における薬物感受性の個体差によるといわれていた。更に近年においては、薬物代謝能に関する個体差の寄与が大きいと考えられており、その解析が盛んに行われるようになっている。
通常、投与された薬物は、肝臓の薬物代謝酵素によって、より高度な極性化を受けて体外に排出される。このような薬物代謝酵素としては、薬物、発癌物質、毒物のような外因性の化学物質、および、ステロイド、脂肪酸等の内因性化合物等の酸化的代謝を触媒する、ヘム蛋白質であるチトクロムP450(CYP)を挙げることができる。ヒト肝臓中には、20種以上のCYP分子種が含まれていることが知られている。
CYPは多くの薬物の代謝に関与し、薬物の体内動態の律速段階を触媒する酵素となっていることが多い。従って、薬物の薬効と安全性を知るためには、特定の薬物が、どのCYP分子種により代謝されるのか、また、代謝に有効なCYP分子種の活性を阻害若しくは誘導しないか等について正確に知ることが重要である。
最近の遺伝子解析の進歩に伴い、CYPの活性の個体差が遺伝的要因によって、かなり規定されていることが知られてきた。一塩基多型(SNPs)等の遺伝子多型により、CYPの代謝活性が弱められたり増強されたりする事象の報告が、その好例である(非特許文献1および2)。
Ingelman-Sundberg M. et al., Trends Pharmacol.Sci. 20:342-349 (1999) Ingelman-Sundberg M., Trends Pharmacol.Sci. 25:193-200 (2004)
CYP2C8遺伝子は、9個のエクソンから構成されており、肝臓のみならず、腎臓、副腎、脳、子宮等を含む多くの組織で発現されている遺伝子であり(非特許文献3)、抗がん剤パクリタキセル(非特許文献4および5)、抗てんかん薬カルバマゼピン(非特許文献6)、糖尿病薬レパグリニド(非特許文献7)、非ステロイド性抗炎症剤イブプロフェン(非特許文献8)、抗不整脈薬アミオダロン(非特許文献9)等の治療薬の代謝に重要な役割を果たしている。
Klose T.S. et al., J.Biochem.Mol.Toxicol. 13:289-295 (1999) Rahman A. et al., Cancer Res. 54:5543-5546 (1994) Sonnichsen D.S. et al., J.Pharmacol.Exp.Ther. 275:566-575 (1995) Kerr B.M. et al., Biochem.Pharmacol. 47:1969-1979 (1994) Bidstrup T.B. et al., Br. J. Clin. Pharmacol. 56:305-314 (2003) Hamman M.A.et al., Biochem. Pharmacol. 54:33-41 (1997) Ohyama K. et al., Drug.Metab.Dispos. 28:1303-1310 (2000)
これらの薬物の体内代謝において、CYP2C8は解毒代謝や活性代謝物の生成を担っており、CYP2C8の代謝能の変化は、体内における前記薬物の濃度変化を招き、該薬物の有効性や副作用の発現に影響を与えると考えられる。従って、CYP2C8の代謝能に関係する遺伝子多型を調べ、患者のCYP2C8活性を予測することは、薬物の有効性確保や副作用回避のために重要である。
CYP2C8については、CYP2C8が触媒するパクリタキセルの6α-水酸化活性、並びに、ロシグリタゾンのN-脱メチル化およびp-水酸化活性に個体差があることが、ヒト肝臓パネルのミクロソーム画分における活性測定により明らかとなっており、その活性の違いは、最大で38倍であったとの報告がなされている(非特許文献5および非特許文献10)。この活性の個体差の原因としては、遺伝因子の関与が考えられており、具体的には、CYP2C8遺伝子の多型が考えられる。近年、アミノ酸置換を引き起こす多型を中心に報告数が増加している。
Baldwin S.J. et al., Br.J.Clin.Pharmacol. 48:424-432 (1999)
世界的に権威あるウェブサイトであるCYPアリル命名委員会のホームページ(http://www.cypalleles.ki.se/)上には、今までのCYPの遺伝子多型に関する報告が情報として公開されている(非特許文献11)。
CYP2C8の遺伝子多型で、最初に、白人および黒人から発見され報告された、CYP2C8*2(Ile269Phe)およびCYP2C8*3(Arg139Lys,Lys399Arg)については代謝活性の変化が報告されているものの(非特許文献12)、日本人では未だ見出されていない。
"The Human Cytochrome P450(CYP) Allele Nomenclature Committee","CYP2C8 allele nomenclature"、[online]、[平成18年11月14日検索]、インターネット<URL:http://www.cypalleles.ki.se/cyp2c8.htm> Dai D. et al., Pharmacogenetics, 11:597-607(2001)
また、CYP2C8*4(Ile264Met)も白人から発見されて報告されたが(非特許文献13)、糖尿病薬であるレパグリニドの体内動態解析の結果、活性変化を引き起こさないことが示唆されている(非引用文献14)。
Bahadur N. et al., Biochem. Pharmacol. 64:1579-1589 (2002) Niemi M. et al., Clin. Pharmacol. Ther. 74:380-387 (2003)
一方本発明者等は、日本人からCYP2C8*5-*10および*12-*14の9種類のCYP2C8の遺伝多型を見出し、報告した(非特許文献15〜17)。
Soyama A. et al., Drug Metab. Pharmacokinet. 17:374-377 (2002) Hichiya H et al., Drug Metab. Dispos. 33:630-636 (2005) Nakajima Y. et al., Clin. Pharmacol. Ther. 80:179-191, (2006)
このうち、CYP2C8*5(475delA)は、翻訳開始コドンから475番目のアデニン(A)が欠失することによりフレームシフトを起こし、その結果として、コドン159番目以降のアミノ酸の置換を引き起こし、更にコドン176番目のアミノ酸までで翻訳を終止させる(177番目が終止コドンとなる)多型である。また、CYP2C8*7(Arg186Stop)は、コドン186番目で翻訳を終止させる多型である。これら2多型は、共に、酵素として活性に必要な基質認識部位およびヘム結合部位が欠失する未成熟な酵素しか生成しないので、CYP2C8の活性を消失させる。
CYP2C8*8(Arg186Gly)は、パクリタキセルの6α-水酸化活性を大幅に低下させることが、in vitroの解析で明らかとなっている。しかしながら、CYP2C8の活性消失または活性低下を招く遺伝子多型である、CYP2C8*5,*7および*8の日本人における発生頻度は合計0.004であり、その他の活性変化が不明な*12-*14を合わせても0.007と頻度は低いので、前記したアミノ酸置換を引き起こす多型のみで、日本人のCYP2C8活性の個体差を説明することはできない。
そこで本発明者等は、日本人のCYP2C8活性の個体差をもたらす遺伝子について、更に鋭意研究を重ねた結果、比較的発生頻度の高いCYP2C8遺伝子のハプロタイプである*IGが、CYP2C8の活性を低下させること、更に、IVS3-21T>A多型およびIVS4+151G>A多型が、該ハプロタイプを検出するためのタグとして有用であることを見出し、本発明を完成した。
従って本発明の第1の目的は、CYP2C8遺伝子の多型であるIVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型の有無を検出することによって、CYP2C8の薬物代謝能を検査する方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、前記CYP2C8の薬物代謝能を検査する方法に用いられるプローブを提供することにある。
本発明の第3の目的は、前記プローブを用いたCYP2C8遺伝子の多型の有無を検出するための検査キット、および、CYP2C8遺伝子の多型であるIVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型の有無を検出することを特徴とする薬物代謝能の検査キットを提供することにある。
本発明の上記の諸目的は、CYP2C8遺伝子の多型であるIVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型の有無を検出することを特徴とする、CYP2C8の薬物代謝能の検査方法、該検査方法に使用されるプローブおよび検査キットによって達成された。
本発明によれば、遺伝子診断によって、薬物代謝酵素であるCYP2C8遺伝子の多型により該酵素の活性が低下するという薬物代謝異常を容易に検出することができるため、CYP2C8により代謝される薬物を医薬品として投与する場合に、予め被験者の薬物代謝能を予測し、薬物の投与量を調節することによって薬物の有効性を確保すると共に、副作用の発現を回避することができる。
本発明における第1の発明は、CYP2C8遺伝子の多型である、IVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型の有無を検出することによるCYP2C8の薬物代謝能の検査方法であり、第2の発明は、該薬物がパクリタキセル、カルバマゼピン、レパグリニド、イブプロフェンまたはアミオダロンである薬物代謝能の検査方法である。
薬物代謝酵素CYP2C8をコードするCYP2C8遺伝子(NCBI,NT030059.12)は、第10番染色体長腕の23.33に位置し、9個のエクソンから構成されている(図1参照)。
一般的に「多型」とは、遺伝子を構成しているDNA配列の個体差であり、その頻度が1%以上ある状態をいうが、本発明においては、その発生頻度が1%未満の塩基の変化についても「多型」として取り扱う。「多型」には、一個の塩基が他の塩基に変わっている一塩基多型や、挿入/欠失型多型、マイクロサテライト多型等がある。
本発明で検出するCYP2C8遺伝子の多型である、IVS3-21T>A多型およびIVS4+151G>A多型は、CYP2C8遺伝子のイントロン上に存在する一塩基多型である。
図1に示すように、IVS3-21T>A多型は、CYP2C8遺伝子の第3イントロン上に存在し、エクソン4の5'側から数えて21番目の塩基であるチミン(T)がアデニン(A)に変化したものである。
一方、IVS4+151G>A多型は、CYP2C8遺伝子の第4イントロンに存在し、エクソン4の3'末端側から数えて151番目の塩基であるグアニン(G)がアデニン(A)に変化したものである(図1)。
本発明における多型の有無を検出する方法としては、公知の方法により適宜実施することができるが、例えば、被験者の末梢血白血球、肝臓、腎臓、副腎、脳、子宮等の細胞からCYP2C8遺伝子を含むDNAまたはRNAを調製し、一塩基多型の解析を行なうことによりIVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型の有無を検出することができる。
上記の一塩基多型の解析方法としては、既に公知の一塩基多型の解析方法を用いることができるが、例えば、ダイレクト・シークエンシング法、一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)解析、制限酵素断片長多型(RFLP)解析、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)法、DNAチップ/マイクロアレイ法、マトリクス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析(MALDI-TOF/MS)法、TaqMan法、インベーダー法等が挙げられる。
IVS3-21T>A多型の一塩基多型の解析については、多型部位の両側の塩基にTとAの繰り返しが多いため、ダイレクト・シークエンシング法が特に好ましく用いられる。
ダイレクト・シークエンシング法は、目的とする遺伝子にハイブリダイズするプライマーを用いて、単離したDNAまたはRNAを鋳型としたPCR等によって多型を含む塩基を増幅し、ダイプライマー法やダイターミネーター法等のサイクルシークエンシング法により、増幅したDNAの塩基配列を決定する方法である(Kwok P.Y. and Duan S., Methods Mol. Biol. 212: 71-84 (2003)参照)。
例えば、CYP2C8遺伝子にハイブリダイズするプライマーを用いて、単離したDNAを鋳型として、多型を含む塩基をPCR増幅した後、サイクルシークエンシング法により増幅したDNAの塩基配列を決定することができる。
このようにして決定したDNAの塩基配列を対照と比較して、CYP2C8遺伝子の遺伝子多型を検出する。
一般に、健常人のCYP2C8遺伝子の配列は正常であると考えられることから、上記の「対照と比較する」とは、通常、健常人のCYP2C8遺伝子の配列と比較することを意味する。しかしながら、本発明においては、GenBankに野生型として登録されているCYP2C8遺伝子の配列(NT_030059.12またはNM_000770.3)と比較してもよい。
一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)解析とは、二本鎖DNA断片を一本鎖に解離させると、各鎖はその塩基配列に依存した独自の高次構造を形成するという性質を利用した方法である。この解離したDNA鎖を用いて、変性剤を含まないポリアクリルアミドゲル中で電気泳動を行なうと、それぞれの高次構造の差に応じて、相補的な、同じ鎖長の一本鎖DNAがゲル内の異なる位置に移動する。一塩基の置換・欠失・挿入によってもこの一本鎖DNAの高次構造は変化し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動において異なる移動度を示す。従って、この移動度の変化を検出することによりDNA断片に点突然変異や欠失、あるいは挿入等による変異が存在することを検出することができる(Tahira T. et al., Methods Mol. Biol. 212: 37-46 (2003)参照)。
制限酵素断片長多型(RFLP)解析とは、点突然変異による多型の配列が特定の制限酵素によって認識されるサイトである場合には、変異によりサイトが消失したり出現したりすることを利用して、一塩基多型を検出する方法である。
例えば、CYP2C8遺伝子のIVS3-21またはIVS4+151の塩基を含む領域のDNAを特定の制限酵素を用いて処理した後、サザンブロットハイブリダイゼーションを行なうこと等によって解析を行なうことができる。
上記特定の制限酵素は、変異を検出することができる限り、特に制限されることはないが、例えば、IVS4+151G>A多型の解析用として、制限酵素MnlI等を挙げることができる。
アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)法とは、変異が存在すると考えられる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを作製し、これと試料DNAの間でハイブリダイゼーションを行わせると、一塩基置換を含む変異が存在する場合には、ハイブリッド形成の効率が低下する。それを、サザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップにインターカレーションすることにより消光する性質を利用する方法等により検出する方法である。また、リボヌクレアーゼAミスマッチ切断法による検出も可能である。
本発明においては、上記の変異が存在すると考えられる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとして、本発明のプローブを用いることができるが、それに限定されるものではない。
DNAチップ/マイクロアレイ法とは、被検者から調製した多型部位を含むDNA、および該DNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された基板を用意し、次いで前記DNAと該基板を接触させ、該DNA試料と基板に固定されたヌクレオチドプローブとのハイブリダイズの有無またはその強度の差を検出して、前記多型の有無を判定する方法である(Lindroos K. et al., Methods Mol. Biol. 212: 149-165 (2003)等参照)。
上記検出は、例えば、予めDNA試料を蛍光色素等で標識しておき、蛍光シグナルをスキャナー等で読み取ることによって行なうことができる。
なお、一般にDNAチップは、高密度に基板にプリントされた何千ものヌクレオチドで構成されている。通常これらのDNAは非透過性の基板の表層にプリントされる。基板の表層は、一般的にはガラスであるが、透過性の膜、例えばニトロセルロースメンブレンを使用することもできる。基板としては平面状のものだけではなく、ビーズ等を使用するなどの方法もある。
本発明において、上記のDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブとして、本発明のプローブを用いることができるが、これに制限されるものではない。
マトリクス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析(MALDI-TOF/MS)法とは、対象とする多型部位の直前の塩基までを有するプライマーを用意し、これを、該多型部位を含むDNAとハイブリダイズさせる。その後、該多型部位に該当する複数のダイデオキシ塩基を加え、さらに酵素的に一塩基伸長させ、得られた一塩基伸長したプライマーの分子量をMALDI-TOF/MSにより解析する。伸長した塩基の分子量が異なるため、一塩基伸長したプライマーの分子量も異なることとなる。これにより、前記多型部位の塩基を判定することが可能となる(Storm N. et al., Methods Mol. Biol. 212: 241-262 (2003)参照)。
TaqMan法(登録商標)とは、5'末端を2種類の異なる蛍光色素で標識し、3'末端を消光物質で標識したTaqManプローブを2種、対象とする多型部位の塩基に相補的となるように作製し、該多型を含む領域を増幅するように設計したプライマーおよびTaq DNAポリメラーゼを用いてPCRを行う方法である。該PCRに伴い、前記多型部位の塩基と相補的な塩基を有するプローブは切断され、蛍光色素が消光物質と遊離し、前記DNAがホモ接合体であれば1種類の蛍光が検出され、ヘテロ接合体であれば2種類の蛍光が同時に検出される。この蛍光の種類や強度により、対象となった多型を判定するものである(Livak K.J. Methods Mol. Biol. 212: 129-147 (2003)参照)。
インベーダー(登録商標)法とは、PCR反応を用いずに多型を検出する方法であり、ミスマッチ部分(フラップ配列)と多型部位配列を含むシグナルプローブと、多型部位がオーバーラップするインベーダーオリゴとを、多型部位を有するDNAに結合させた後、Cleavase(登録商標)と呼ばれる特別な酵素を作用させると、シグナルプローブの多型部位の塩基が該DNAの配列と相補的な時だけ、この酵素でフラップ配列が切断される。切断されたフラップ配列は、シグナルを生成するFRETプローブ(蛍光色素と消光物質を有する)にインベーダーオリゴとなって作用する結果、FRETプローブは切断されて消光物質と蛍光色素が遊離し、蛍光を発する。この蛍光の種類・強度により、対象となった多型を判定する(Lyamichev V. and Neri B. Methods Mol. Biol. 212: 229-240 (2003)参照)。
これらの方法によって、被験者の細胞からCYP2C8遺伝子のIVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型が検出された場合には、該被験者は、薬物代謝酵素CYP2C8の活性が低く、薬物代謝能が低いことが分かる。
本発明の薬物代謝能の検出方法によって薬物代謝能を検出できる薬物は、薬物代謝酵素CYP2C8によって代謝される薬物である限り、特に制限されることはない。具体的には、パクリタキセル、カルバマゼピン、レパグリニド、イブプロフェンおよびアミオダロン等が例示される。本発明は、特にパクリタキセルの代謝能の検出に有効である。
本発明における第3の発明は、CYP2C8遺伝子のIVS3-21またはIVS4+151の塩基を含む配列部分を有する、CYP2C8遺伝子の多型を検出するためのプローブ、第4の発明は、CYP2C8遺伝子の多型であるIVS3-21T>AまたはIVS4+151G>Aを検出するためのプローブである。
本発明におけるプローブは、公知の方法により適宜作製することができ、CYP2C8遺伝子のIVS3-21またはIVS4+151の塩基を含む配列部分を有する限り、特に制限されることはない。ここで、CYP2C8遺伝子のIVS3-21またはIVS4+151の塩基を含む配列部分とは、CYP2C8遺伝子のIVS3-21またはIVS4+151の塩基を含む、10〜50塩基の配列部分をいう。特に、15〜25塩基程度の配列が、特異性および結合性の点から好ましい。
CYP2C8遺伝子の多型であるIVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型の有無を検出するためには、本発明のプローブに含まれるIVS3-21の塩基は、チミン(T)またはアデニン(A)、また、IVS4+151の塩基は、グアニン(G)またはアデニン(A)であることが必要である。
また、本発明においては、これらのプローブと相補的な塩基配列を有するプローブを使用することも可能である。
本発明のプローブは、上記の検査方法に用いることができる。また、検出を容易にするために、適宜、公知の方法で標識して用いることが可能であり、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光色素等で標識して用いることができる。
本発明における第5の発明は、前記プローブを有するCYP2C8遺伝子の多型の有無を検出するための検査キット、第6の発明はCYP2C8遺伝子の多型であるIVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型の有無を検出するCYP2C8の薬物代謝能の検査キットであり、第7の発明は、CYP2C8遺伝子のIVS3-21またはIVS4+151の塩基を含む配列部分を有するプローブからなるCYP2C8の薬物代謝能の検査キット、第8の発明はパクリタキセル、カルバマゼピン、レパグリニド、イブプロフェンおよびアミオダロンの薬物代謝能を検出するための検査キットである。
CYP2C8遺伝子の多型の有無を検出する、本発明の検出キットは、CYP2C8遺伝子のIVS3-21またはIVS4+151の塩基を含む配列を増幅するためのプライマー、シークエンシング用プライマー、本発明のプローブ、DNAの抽出試薬、精製試薬、制限酵素、PCR増幅用試薬等の中から適宜組み合わせて検査キットとすることができるが、特に本発明のプローブを組み合わせて検査キットとすることが好ましい。
CYP2C8遺伝子の多型であるIVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型の有無を検出する本発明のCYP2C8の薬物代謝能の検査キットは、CYP2C8遺伝子のIVS3-21またはIVS4+151の塩基を含む配列を増幅するためのプライマー、シークエンシング用プライマー、本発明のプローブ、DNAの抽出試薬、精製試薬、制限酵素、PCR増幅用試薬等の中から適宜組み合わせて検査キットとすることができる。
特に、薬物代謝酵素CYP2C8の活性を低下させる、比較的発生頻度の高いCYP2C8のハプロタイプである*IGの検出タグとして使用可能な一塩基多型を検出し得る、本発明のプローブを組み合わせて検査キットとすることが好ましい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
<CYP2C8遺伝子の配列決定>
CYP2C8遺伝子のゲノム配列(NCBI,NT030059.12)に基づいてCYP2C8遺伝子全領域を増幅するため、下記表1の「1st PCR」に示すCYP2C8遺伝子に特異的なプライマー(全長増幅用プライマー)を設計した。なお、全領域が長いため、プロモーター領域(転写制御領域)からエクソン5までと、エクソン6から9までとに2分割して、PCR増幅した。
437人分の日本人由来ゲノムDNA(200ng)について、CYP2C8遺伝子の全長を増幅した。全長増幅用のフォワードプライマーとリバースプライマー各0.2μMと、Z-Taq(1.25ユニット;タカラバイオ株式会社製)を用いて、全量100μLの系で増幅した。この際のPCRの条件は、[熱変性98℃,5秒;アニーリング55℃,5秒;伸張反応72℃,190秒」×30サイクルとした。
CYP2C8遺伝子のゲノム配列(NCBI,NT030059.12)に基づいて、上記表1の「2nd PCR」に示す配列を有するエクソン増幅用のプライマーを設計した。
上で得られたCYP2C8遺伝子の1st PCR産物、エクソン増幅用のフォワードプライマーとリバースプライマー各0.2μM、Ex-Taq(1.25ユニット;タカラバイオ株式会社製)を用いて、各エクソンを含むDNA断片を全量50μLの系で増幅した。この際のPCR条件は、熱変性94℃,5分、[熱変性94℃,30秒;アニーリング60℃,1分;伸張反応72℃,2分]×30サイクル、伸張反応72℃,7分とした。
得られたPCR増幅産物5μLに、PCR Product Pre-Sequencing Kit(USB Co., Cleveland, OH, USA)のExonuclease I 0.2μLと、Shrimp alkaline phosphatase 0.2μL、更に、滅菌精製水を1.6μLを加えて、37℃で15分、80℃で15分処理し、その後4℃に冷却し、シークエンス解析のための前処理を行なった。
CYP2C8のゲノム配列(NCBI,NT030059.12)に基づいて、上記表1の「Sequencing」に示す配列を有する、各エクソンについてのシークエンス用のプライマーを設計した。なお、記載のないプロモーター領域、エクソン4,7,8および9については、2nd PCRに用いたプライマーセットを用いて、シークエンス解析を行った。
PCR Product Pre-Sequencing Kit(USB Co.)で処理した2nd PCR増幅産物の両鎖について、上記シークエンス用プライマーおよびABI BigDye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて、直接塩基配列を決定した。
具体的には、PCR Product Pre-Sequencing Kit(USB Co.)で処理した2nd PCR増幅産物6.4μLに、1μMのプライマー1.6μL、ABI BigDye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)2μL、5x Sequencing buffer(Applied Biosystems)3μL、滅菌精製水7μLを加え合計20μLとした後、熱変性96℃,1分、[熱変性96℃,10秒;アニーリング50℃,5秒;伸張反応60℃,4分]×25サイクル行い、その後、4℃に冷却した。
DyeEx96 plate(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて、過剰な色素を除去した後、ABI Prism 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems)を用いて、溶出液の全量20μLを分析した。その際、溶出液に滅菌精製水25μLを加え、94℃で2分間、ヒートショックを行った。
上記方法により、日本人437人分のゲノムDNAについて、薬物代謝酵素CYP2C8遺伝子領域の配列解析を行い、計40種の多型を見いだした。その結果を表2に示す。このうちアミノ酸置換を引き起こすものは、CYP2C8*5(475delA)、CYP2C8*6(Gly171Ser)、CYP2C8*7(Arg186Stop)、CYP2C8*8(Arg186Gly)、CYP2C8*9(Lys247Arg)、CYP2C8*10(Lys383Asn)、CYP2C8*12(del 461Val)、CYP2C8*13(Ile223Met)およびCYP2C8*14(Ala238Pro)の9種類であった。なお、これらの多型の発生頻度は、CYP2C8*5とCYP2C8*6が0.002であり、それ以外は0.001であった。
<CYP2C8遺伝子の連鎖不平衡解析及びハプロタイプ解析>
実施例1で得られた40種の多型のうち、頻度が0.03以上の多型15種について、市販のソフトウェアSNPAlyze (株式会社ダイナコム製)を用いて、連鎖不平衡解析を行った。
2種の多型同士間の連鎖不平衡を|D'|値で、上記ソフトウエアを用いて解析した場合、105種のコンビネーション中89種(85%)において、|D'|値が0.9以上と高い値を示した。また、r2値(r2値)でも中程度から強い連鎖不平衡が数種認められ、解析したCYP2C8遺伝子全領域を通じて比較的強い連鎖不平衡が認められた。この結果から、解析した領域(約33kb)は、一つの連鎖不平衡ブロックの中にあると考えられるため、ハプロタイプを一つのブロックとして解析した。なお、|D'|値およびr2値については、「ヒトゲノムの連鎖分析」(J. オット著,五條堀孝 監訳、安田徳一 訳;講談社刊;156-162頁)の記載に基づき算出した。
ハプロタイプとは、染色体上の多型同士の連鎖を表すものである。医薬品の有効性・副作用等のフェノタイプとの相関性については、1カ所の多型を用いる場合よりも、ハプロタイプを用いた場合の方が、フェノタイプとより高い相関を示すことが知られている(Judson R. et al., Pharmacogenomics 1:15-26 (2000))。
CYP2C8遺伝子領域で見いだされた40種の多型を用いてハプロタイプを解析したが、多型が全てホモザイゴートの場合、もしくは1カ所の多型部位のみヘテロザイゴートの場合は、確実にそのハプロタイプが存在するとして決定した。その他は、ハプロタイプ推定の標準法である、Expectation-Maximizationアルゴリズムに基づくソフトウェアLDSUPPORT(Kitamura Y. et al., Ann. Hum. Genet. 66:183-193 (2002))によって推定した。
ハプロタイプ名は、アミノ酸置換を有しないものは*1、アミノ酸置換を有するものはCYPアリル命名委員会のホームページ(http://www.cypalleles.ki.se/)の命名に従って、*5-*10,*12-*14とした。また、*1でも上記ホームページ上に存在するものは、番号と大文字のアルファベットの組み合わせで表記し、それ以外は番号と小文字のアルファベットの組み合わせで表記した。
図2および図3(図2の続き)に、ハプロタイプ解析の結果を示す。
なお、1検体のみから見いだされた非常にまれなハプロタイプについては、*1の場合は"others"としてまとめ、アミノ酸置換を有するものの場合は"?"をつけて表した。これは非常にまれなハプロタイプの場合、推定結果が若干の曖昧さを有する可能性があるためである。
次いで2検体以上から見いだされたハプロタイプについて、公開されているソフトウェアNetwork 4.1.1.2 (fluxus-engineering社製)を用い、ハプロタイプ相互の関係を示すネットワーク解析を行った。その結果を図4に示す。
本解析の結果、図2および図3(図2の続き)に示されるように、多数を占める*1ハプロタイプは6種のグループハプロタイプ(*IA,*IB,*ID,*IE,*IG,および*IJ)に分類できることが判明した。なお、グループ化されなかった5種のまれな*1ハプロタイプは、"*1 others"としてまとめた。
<CYP2C8*1グループハプロタイプとパクリタキセル(PTX)の薬物動態関連値との相関解析>
遺伝子多型解析を行った437名分の検体のうち、199名分は抗がん剤パクリタキセル(PTX)を、単位体表面積(m2)あたり175-210mg投与されていた。
そこで、本PTX投与検体群におけるPTXの薬物動態関連値と上記CYP2C8*1ハプロタイプとの相関解析を行った。
解析に用いたPTXの薬物動態関連値は、PTXのクリアランス(CL)値、PTXのAUC(area-under concentration-time curve)値、PTXの代謝物である6α-水酸化PTX(6α-OH-PTX)とC3’-p-水酸化PTX(3'-p-OH-PTX)のAUC値、および、これら2種のPTXの代謝物から生成する6α-,C3'-p-二水酸化PTX(diOH-PTX)のAUC値である。CYP2C8については、PTXから6α-OH-PTXへの変換反応、及び、3'-p-OH-PTXからdiOH-PTXへの変換反応を触媒していることが知られている(図5参照)。
PTXおよびその代謝物の測定法、薬物動態関連値の算出法、並びに、薬物動態関連値については、既に開示した(Nakajima Y. et al., Clin. Pharmacol. Ther. 80:179-191, 2006)通りであり、その概略を下記に示す。
なお、統計解析については、Prism v.4.00 (GraphPad Software Inc., San Diego, CA, USA)、または、SAS v.8.2 (SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を用いて解析を行った。
−血漿中のPTXおよび代謝物の測定−
血漿中のPTXおよび代謝物は、内部標準物質としてドセタキセルを添加後、固層抽出し、高速液体クロマトグラフ/質量分析装置(Agilent 1100 series LC/MSD; Agilent Technologies, Palo Alto, CA, USA)による解析に供した。この際、カラムは、2.1 mm x 12.5 mmのZORBAX Eclipse XDB-C18カラム(Agilent Technologies)を用い、60℃で分析した。移動相は、水:メタノール:テトラヒドロフラン:ギ酸-アンモニア緩衝液(pH 6.0)(47.5 : 50 : 2.5 : 0.1)を用い、溶出物は、波長230 nmにおける吸収によって検出した。
−薬物動態関連値の算出法−
薬物動態関連値の中、各AUC値は、0時間から最終検体採取時間である投与終了後9時間までの値として、台形法により算出した。
PTXのクリアランス値は、2コンパートメントモデルを用いて無限時間まで外挿したAUC値で投与量を除して算出し、さらに体表面積で除した。これらの解析は市販のWinNonlin v.3.3 (Pharsight, Mountain View, CA, USA)を用いて行った。
−薬物動態関連値−
全199名の患者におけるPTXのクリアランスの中央値は7.73 L/h/m2、PTXのAUCの中央値は18.50 h×mg/mL、6a-OH-PTXのAUCの中央値は1.606 h×mg/mL、3'-p-OH-PTXのAUCの中央値は0.407 h×mg/mL、diOH-PTXのAUCの中央値は0.252 h×mg/mLであった。
アミノ酸置換を引き起こす多型を有するハプロタイプの頻度が低いため、*1グループハプロタイプを中心に解析した。3患者以上から見いだされた*1グループハプロタイプとの相関をクラスカル-ワリス検定により統計解析したところ、PTXのCL値、AUC値、6α-OH-PTXおよびdiOH-PTXのAUC値については、各ディプロタイプ(ハプロタイプの組み合わせ)間で有意な差は認められなかった(クラスカル-ワリス検定でp>0.05)。
これに対し、3'-p-OH-PTXのAUC値については有意な差(クラスカル-ワリス検定でp=0.014)が認められた(図6)。さらに詳しく解析した結果、3'-p-OH-PTXのAUC値は、*ID/*IDと*IG/*IDの患者間(マン-ホイットニーのU検定でp<0.05)、および、*IE/*IEと*IG/*IEの患者間(マン-ホイットニーのU検定でp<0.001)で、有意な差が認められた(図6)。なお、本ゲノム解析で検出した*IGの患者は、ヘテロザイゴートのみであった。
次に、各グループ内で有意な差が認められなかったため、*IGのヘテロザイゴートを*IG/*non-*IGグループとし、それ以外の*I/*Iディプロタイプをnon-*IG/non-*IGグループとして、解析を行なった。
図7に示すとおり、*IG/*non-*IGグループの患者では、non-*IG/non-*IGグループの患者に比べて、3'-p-OH-PTXのAUC値(中央値)が約2.5倍であった(マン-ホイットニーのU検定でp<0.001)。CYP2C8は、3'-p-OH-PTXの消失に関与していることから、*IG-グループハプロタイプを有する患者では、CYP2C8の活性が低いことが明らかとなった。
本発明者等は、PTXの代謝に関わるもう一方のP450酵素CYP3A4の遺伝子多型を解析し、CYP3A4*16Bハプロタイプが3'-p-OH-PTX生成に影響することを報告している(Nakajima Y. et al., Clin. Pharmacol. Ther. 80:179-191,2006)。そこで、今回の解析におけるCYP3A4*16Bハプロタイプの影響を除くために、CYP3A4*16Bを有する患者を除いて同様の解析を行った。その結果、CYP2C8*IG/*non-*IGグループの患者とnon-*IG/non-*IGグループの患者間で、3'-p-OH-PTXのAUC値の有意差が相変わらず認められた(マン-ホイットニーのU検定でp<0.001)。
また本発明者らは、性差も3'-p-OH-PTX生成に影響することを報告している(Nakajima Y. et al., Clin. Pharmacol. Ther. 80:179-191, 2006)。従って、今回の解析における男女差の影響を除くために、女性患者を除いて同様の解析を行った。CYP2C8の*IG/*non-*IGグループの患者とnon-*IG/non-*IGグループの患者間で、3'-p-OH-PTXのAUC値の有意差が相変わらず認められた(マン-ホイットニーのU検定でp<0.001)。従って、今回認められたCYP2C8*IGグループハプロタイプの影響は、CYP3A4*16及び性差による影響とは無関係であることが確認された。
最後に、*IGグループハプロタイプ中の多型につき検討した。*IGグループハプロタイプは、イントロン多型のみから構成されているが(図2および3参照)、この中でIVS3-21T>AおよびIVS4+151G>Aは、*IGグループハプロタイプにほぼ特異的に存在するため、*IGグループハプロタイプの存在を確認するためのタグとなりうる多型である。
その中でもIVS3-21T>Aは、*IDグループハプロタイプに分類した*1tハプロタイプにも存在するが、*1t/*1dディプロタイプを有する患者は、属する*ID/*IDディプロタイプグループ内で3'-p-OH-PTXのAUC値は2番目に高い値を有していた(図6,矢印)。また、IVS3-21T>Aを有する患者群は、IVS3-21T>Aを有しない患者群に比べて、3'-p-OH-PTXのAUC値が有意に高かった(マン-ホイットニーのU検定でp<0.001)。
IVS3-21T>A多型は、mRNAを生成する際のスプライシングに重要と思われる領域に存在することから、IVS3-21T>AがCYP2C8活性の低下に関与している可能性が考えられる。
一方、同じくCYP2C8がその生成に関与する6α-OH-PTXのAUC値に変化は認められなかったが、これは、本反応に他の酵素が関与している可能性が考えられる。
以上の結果より、CYP2C8において頻度0.03という比較的頻度の高いハプロタイプ(CYP2C8*IGグループハプロタイプ)が、CYP2C8の活性を低下させることが明らかとなった。このことから、本ハプロタイプを有する患者では、CYP2C8活性が低いことが予想されるため、CYP2C8により代謝される薬物の投与前に、本グループハプロタイプを検出するタグとなるIVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型を調べることにより、CYP2C8により代謝される薬物の投与量を調節し、有効性を確保したり、副作用の発現を抑制することが可能である。
CYP2C8遺伝子のIVS3-21T>A多型およびIVS4+151G>A多型の位置を示す図である。 CYP2C8遺伝子のハプロタイプ構造を示す図である。 CYP2C8遺伝子のハプロタイプ構造を示す図である(図2の続き)。 2検体以上から検出したハプロタイプを用いたCYP2C8遺伝子のハプロタイプのネットワーク解析結果を示す概念図である。各円の大きさは各ハプロタイプの頻度を表し、囲いは*1ハプロタイプのグループを示す。 パクリタキセルの代謝経路を示す図である。 3'-p-OH-PTXのAUC値に対するCYP2C8ディプロタイプの影響を表した図である。アミノ酸置換を有しない*1ハプロタイプは、グループハプロタイプ(*I)を用いて表した。*ID/*IDグループにおける矢印は、IVS3-21T>Aを有する*1tハプロタイプを持つ患者を示す。 *Iグループハプロタイプのみを有する患者について、*IGをヘテロザイゴートで有する患者(*IG/non-*IG)と有しない患者(non-*IG/non-*IG)に分類した場合における、3'-p-OH-PTXのAUC値に対するCYP2C8ディプロタイプの影響を示した図である。

Claims (8)

  1. CYP2C8遺伝子の多型であるIVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型の有無を検出することを特徴とする、CYP2C8の薬物代謝能の検査方法。
  2. 前記薬物が、パクリタキセル、カルバマゼピン、レパグリニド、イブプロフェンまたはアミオダロンである、請求項1に記載されたCYP2C8の薬物代謝能の検査方法。
  3. CYP2C8遺伝子のIVS3-21またはIVS4+151の塩基を含む配列部分を有する、CYP2C8遺伝子の多型を検出するためのプローブ。
  4. 前記CYP2C8遺伝子の多型が、IVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型である、請求項3に記載されたプローブ。
  5. 請求項3または4に記載されたプローブを有することを特徴とする、CYP2C8遺伝子の多型の有無を検出するための検査キット。
  6. CYP2C8遺伝子の多型であるIVS3-21T>A多型またはIVS4+151G>A多型の有無を検出することを特徴とする、CYP2C8の薬物代謝能の検査キット。
  7. CYP2C8遺伝子のIVS3-21またはIVS4+151の塩基を含む配列部分を有するプローブからなることを特徴とする、請求項6に記載されたCYP2C8の薬物代謝能の検査キット。
  8. 前記薬物が、パクリタキセル、カルバマゼピン、レパグリニド、イブプロフェンまたはアミオダロンである、請求項6または7に記載されたCYP2C8の薬物代謝能の検査キット。
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