JP5021865B2 - 潤滑油組成物、作動流体及び冷凍装置 - Google Patents
潤滑油組成物、作動流体及び冷凍装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5021865B2 JP5021865B2 JP2001051323A JP2001051323A JP5021865B2 JP 5021865 B2 JP5021865 B2 JP 5021865B2 JP 2001051323 A JP2001051323 A JP 2001051323A JP 2001051323 A JP2001051323 A JP 2001051323A JP 5021865 B2 JP5021865 B2 JP 5021865B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- acid
- lubricating oil
- wire
- ester compound
- refrigerant
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Landscapes
- Lubricants (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、潤滑性及び低温流動性に優れたエステル系潤滑油に関するものである。特には、ハイドロフルオロカーボン冷媒を使用する冷凍装置用潤滑油組成物及び冷凍装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エステル系潤滑油は、その優れた特性から、作動油、軸受油、空気圧縮機油などに使用されている。特に、ハイドロフルオロカーボン冷媒を用いる冷凍装置用潤滑油として、相溶性、電気絶縁性、熱安定性などに優れる点から、ポリオールエステル系の潤滑油が広く用いられるようになってきている。
【0003】
従来、冷蔵庫、空調装置などの冷凍装置用潤滑油としてはナフテン系、パラフィン系などの鉱油、アルキルベンゼン、ポリαオレフィンなどの合成油が知られており、圧縮機摺動部における摩擦、摩耗、焼き付き防止などのために用いられている。
【0004】
冷凍装置用潤滑油に要求される特性としては、冷媒との接触を伴うため冷媒に対する安定性が優れていること、冷媒との溶解性に優れていることなどが挙げられる。従来、冷媒としては塩素を含有するフロン冷媒が多く使用されていた。例えば、R11(トリクロロモノフルオロメタン)やR12(ジクロロジフルオロメタン)などのクロロフルオロカーボン類や、R22(モノクロロジフルオロメタン)などのハイドロクロロフルオロカーボン類が用いられてきた。これらの塩素を含有する冷媒に対しては、ナフテン系鉱物油、パラフィン系鉱物油、アルキルベンゼン系合成油、ポリαオレフィン系合成油等が使用されてきた。
【0005】
しかし、これらの塩素含有フロン冷媒は、成層圏のオゾン層を破壊するため、国際的にその使用が規制されるようになってきており、これに替わる代替フロン冷媒として、R134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)等の塩素を含有しないハイドロフルオロカーボンが用いられるようになりつつある。ハイドロフルオロカーボン冷媒に対しては、PAGなどのポリエーテル系合成油あるいはポリオールエステル系合成油が提案されている。
【0006】
特にポリオールエステル系潤滑油は、ハイドロフルオロカーボン冷媒との相溶性に優れ、また、電気絶縁性、熱安定性などに優れることから、ハイドロフルオロカーボン冷媒を用いる冷凍装置用潤滑油として、最も適したものと考えられるようになってきている。
しかし、一方、ポリオールエステル系潤滑油は、使用条件によっては、潤滑性及び低温流動性が必ずしも十分とは言えない場合があることが指摘された。
【0007】
塩素を含有しない冷媒の場合、塩素の極圧効果(潤滑性向上)が望めないため、冷凍装置の軸受、ピストン、シール部等で潤滑不良が生じやすく、エネルギー損失、摩耗増大、焼き付きなどを引き起こしたり、冷媒や潤滑油の分解を促進し、腐食を引き起こす原因となったりする。このような問題に対処するため、従来から硫黄系やリン系など各種の耐摩耗性向上剤を添加することが行われてきた。しかし、従来、用いられてきた添加剤は、潤滑性向上の添加効果が小さい、安定性が悪い、冷媒との溶解性が小さい、金属材料に対して腐食性を有するなどの問題のあるものが多く、冷凍装置用としては必ずしも十分とは言えない場合があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、エステル系潤滑油の潤滑性及び低温流動性を改善することである。
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリオールエステル化合物またはコンプレックスエステル化合物を主成分とする潤滑油組成物に、炭素数5〜10のネオペンチルポリオールと炭素数4〜5のカルボン酸及び炭素数7〜9の分岐カルボン酸からなるポリオールエステル化合物を添加することにより、潤滑油組成物の潤滑性、低温流動性が大幅に向上するとともに、密閉型圧縮機においてモータに使用されている特定のエナメル被覆線と絶縁フィルムに損傷等を与えないことも見出した。
【0010】
この知見に基づき本発明は、
1.以下の(A)成分のエステル化合物を0.1〜50重量%配合したことを特徴とする、以下の(B)成分のエステル化合物を主成分とする潤滑油組成物
(A)成分:ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリストール及びジペンタエリストールから選ばれる1種以上のネオペンチルポリオールと、ペンタン酸及びイソペンタン酸の少なくとも一方と、3,5,5−トリメチルへキサン酸と、からなるポリオールエステル化合物
(B)成分:ネオペンチルグリコール又及びペンタエリスリトールの少なくとも一方と、2−エチルヘキサン酸と、を原料として得たポリオールエステル化合物
【0012】
3. 上記1または2に記載の潤滑油組成物とハイドロフルオロカーボン冷媒からなる冷凍装置用作動流体
【0013】
4. 少なくとも圧縮機、凝縮器、膨張機構及び蒸発器を有し、上記3に記載の冷凍装置用作動流体を用いることを特徴とする冷媒圧縮式冷凍装置
【0014】
5. 上記4に記載の圧縮機は密閉型で、エナメル被覆線と絶縁フィルムとを備えたモータを有し、前記エナメル被覆線がポリエステル線、上層ポリアミドイミド/下層ポリエステルイミド線及びポリアミドイミド線のいずれか1種のエナメル被覆線からなり、前記絶縁フィルムがポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミドイミドコートポリエステル、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルエーテルケトンのいずれか1種の絶縁フィルムからなる冷媒圧縮式冷凍装置
を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の潤滑油組成物は、以下の(A)成分のエステル化合物を(B)成分のエステル化合物に配合したものである。
(A)成分: 炭素数5〜10のネオペンチルポリオールと炭素数4〜5のカルボン酸及び炭素数7〜9のカルボン酸とからなるポリオールエステル化合物
(B)成分: 炭素数15以下の多価アルコール1種類以上と炭素数5〜18の1価脂肪酸1種類以上とを原料として得たポリオールエステル化合物またはコンプレックスエステル化合物
【0016】
以下、本発明の各構成要素について詳しく記載する。
(A)成分
(A)成分のポリオールエステル化合物を添加することにより、エステル混合物の潤滑性、低温流動性が大幅に向上させることが可能である。
多価アルコールとしては、ネオペンチルポリオール、すなわち、ネオペンチル構造を有した炭素数5〜10のものが使用される。具体的には、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスルトール、ジペンタエリスルトール等を挙げることができる。
【0017】
一方、カルボン酸としては、炭素数4〜5のものと炭素数7〜9のものとを併用する。
炭素数4〜5のカルボン酸としては、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸が挙げられ、炭素数7〜9のカルボン酸としては、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸等が挙げられる。
【0018】
好ましくは、炭素数4〜5のカルボン酸が直鎖のカルボン酸であり、炭素数7〜9のカルボン酸が分岐カルボン酸であるようなポリオールエステルを用いる。
なお、炭素数4〜5のカルボン酸と炭素数7〜9のカルボン酸の割合は、1/9〜5/5好ましくは1/9〜4/6である。炭素数4〜5のカルボン酸の割合が多すぎると合成されたエステルの加水分解安定性が低下するため好ましくない。
【0019】
(A)成分のポリオールエステルを添加したエステル混合物は、厳しい潤滑条件下でも、(A)成分のエステル化合物が選択的に摺動面に吸着し、金属/金属接触による摩耗を低減させる。つまり、(A)成分の炭素数4〜5の部分で金属表面に強く吸着し、炭素数7〜9の部分で吸着膜として金属/金属接触を妨げると考えられる。炭素数4〜5の部分の原料として直鎖カルボン酸が好ましいのは分岐カルボン酸よりも強く吸着するからであり、炭素数7〜9の部分の原料として分岐カルボン酸が好ましいのは、加水分解安定性、低温流動性に優れるからである。炭素数が10以上になるとエステルの低温流動性が悪くなる。一方、炭素炭素数3以下になると加水分解安定性が悪くなる。
【0020】
(A)成分のポリオールエステルは、カルボン酸の炭素数の異なるものの組合せであり、低温流動性に優れている。このポリオールエステルを添加することにより、低温流動性に劣るエステルの特性を改善することが可能である。
【0021】
(A)成分のポリオールエステルの添加量は、配合する(B)成分のエステルの特性により適宜決定することができる。0.1〜50重量%、好ましくは1.0〜10重量%、より好ましくは1.0〜5重量%程度配合すれば良い。
配合量が少なすぎると、潤滑性向上効果が小さく、一方、配合量が多すぎると有機材料への影響が大きくなり、かつ加水分解安定性が低下するため好ましくない。
【0022】
(B)成分
本発明の(B)成分は、炭素数15以下の多価アルコール1種類以上と炭素数5〜18の1価脂肪酸1種類以上とを原料として得たポリオールエステル化合物またはコンプレックスエステル化合物であり、潤滑油組成物の主成分である。
炭素数15以下の多価アルコールとしては、2価アルコール、3価アルコール、4価以上のアルコールのいずれも使用することが可能である。
【0023】
2価アルコールの例としては、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,2-ブタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ブタンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0024】
3価のアルコール例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、3-メチル-1,3,5-ペンタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、5-エチル-4,5,6-ノナントリオール、1,2,4-ブタントリオールなどが挙げられる。
【0025】
4価以上のアルコール例としては、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールの縮合物、グリセリンの縮合物、エリトリット、アラビトール、ソルビトール、アンニトール、ソルビタンなどが挙げられる。
【0026】
一方、1価脂肪酸としては、炭素数5〜18の脂肪酸を使用すればよい。1価脂肪酸の例としては、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸などがある。本発明においては、これら1価脂肪酸の1種類以上を適宜混合して、前記多価アルコールとの間でエステル反応を生ぜしめ、各種潤滑油に要求される望ましい物理特性を満足するエステルを得ることができる。
【0027】
なお、本発明のポリオールエステルまたはコンプレックスエステルを主成分とする潤滑油組成物は、全酸価が0.1mgKOH/g以下、好ましくは0.05mgKOH/g以下、また水酸基価は10mgKOH/g以下、好ましくは5mgKOH/g以下のものが耐加水分解性の観点から求められる。これらの値が大きいエステル化合物は、吸湿性が高く、加水分解しやすく、また、有機材料への影響も大きい。従って、多価アルコールとカルボン酸との反応に際しては、多価アルコールの未反応水酸基の残存量を減少させるのに十分な反応時間をとり、かつ未反応カルボン酸を反応後に除去するとともにエステルの精製を行うことが好ましい。
【0028】
冷蔵庫などのハーメチックタイプの冷凍装置における使用を考えると、精製後の体積抵抗率は1×1012Ω・cm(25℃)以上とすることが望ましい。
【0029】
また、本発明の潤滑油組成物には、さらに、下記のような添加剤を配合しても構わない。
摩耗防止剤:硫黄系、リン系、チオリン酸亜鉛系など。
酸化防止剤:フェノール系、アミン系、リン系など。
金属不活性化剤:ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、ジチオカルバメートなど。
酸捕捉剤:エポキシ化合物、カルボジイミド化合物など。
油性剤:高級脂肪酸類、アルコールなど
その他、公知の潤滑油用添加剤。
【0030】
本発明の用途は、一般的なエステル潤滑油として、作動油、軸受油、空気圧縮機油などに使用できるが、特にハイドロフルオロカーボン冷媒を用いる冷凍装置用潤滑油として適している。
【0031】
ハイドロフルオロカーボン冷媒は、具体的には、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R-134)、ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)等の炭素、水素、フッ素からなるハイドロフルオロカーボン冷媒、あるいはこれらの混合冷媒(例えば、R-407C(R-32:R-125:R-134a=23:25:52)等)が挙げられる。
【0032】
本発明の潤滑油組成物は、これらの冷媒と混合されることにより作動流体となり、冷凍装置の潤滑をつかさどる。本発明の冷凍装置用潤滑油組成物とハイドロフルオロカーボン冷媒とを5:95〜80:20の割合で混合することにより作動流体として使用することが可能である。この範囲を外れ、油が少ない場合には、潤滑不良になる危険性があり、油が多すぎる場合には、効率が低下するため好ましくない。
【0033】
そして、本発明の冷凍装置用作動流体は、少なくとも圧縮機、凝縮器、膨張機構及び蒸発器を有する冷媒圧縮式冷凍装置用の作動流体として用いることができる、例えば、冷凍機、空調機、冷蔵庫等への適用が可能である。
【0034】
この冷凍機においては、一般には密閉式のロータリー形或いはレシプロ形の圧縮機が用いられるが、これらの冷媒圧縮機のモータ部の電気絶縁システム材料である絶縁フィルムとしては、ガラス転移温度50℃以上の結晶性プラスチックフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドイミド、ポリイミドあるいは、ガラス転移温度の低いフィルム上にガラス転移温度の高い樹脂層を被覆する複合フィルムなどを用いることができる。これらは、引張強度特性、電気絶縁特性の劣化現象が生じにくく、実用上問題のないものである。
【0035】
同様にモータ部に使われるマグネットワイヤも、ガラス転移温度120℃以上のエナメル被覆、例えば、ポリエステルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の単一層、あるいはガラス転移温度の低いものを下層に、ガラス転移温度の高いものを上層に複合したエナメル被膜などを用いることができる。これらも、前記フィルム同様に、加水分解による被膜の劣化、亀裂の発生、軟化、膨潤、絶縁破壊電圧の低下等が少なく、実用面での信頼性の向上に役立つものである。
【0036】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
I.潤滑性評価
(A)成分のエステルとして、以下のポリオールエステルを準備した。いずれも、40℃の粘度が32mm2/sとなるようカルボン酸の混合比を調整した。
A1:ペンタエリスリトールと、ペンタン酸(20モル%)と3,5,5-トリメチルヘキサン酸(80モル%)の混合酸とのエステル
A2:ペンタエリスリトールと、イソペンタン酸(20モル%)と3,5,5-トリメチルヘキサン酸(80モル%)の混合酸とのエステル
A3:ペンタエリスリトールと、ペンタン酸(30モル%)と2-エチルヘキサン酸(70モル%)の混合酸とのエステル
【0037】
また、(B)成分のエステルとして
B1:ネオペンチルグリコール(50モル%)とペンタエリスリトール(50モル%)の混合アルコールと2-エチルヘキサン酸とのエステルを準備した。
これらのエステルの性状を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
Falex試験
A1〜A3とB1との混合エステルについて潤滑性の評価をFalex摩耗試験で行った。なお、参考としてA1、A2、A3をそれぞれ単独で用いた場合についても試験を行った。
試験方法は、ASTM 2670に準拠し、以下の条件で行い、ピンとブロックの摩耗量で評価した。
試験条件:
ピン材質 AISI 3135(Fe)
ブロック材質 AISI C-1137(Fe)
油温 60℃
回転数 290[rpm]
慣らし 445[N] / 5[min]
本試験 1334[N] / 60[min]
Falex試験結果を表2に示す。A1、A2、A3を含む本発明のポリオールエステル冷凍機油はいずれも摩耗低減に効果があった。特に直鎖のC5酸であるペンタン酸を使用したポリオールエステルであるA1とA3が摩耗低減の効果が大きかった。なお、比較例I−1,I−2,I−3のA1、A2、A3をそれぞれ単独で用いた場合も潤滑性は良好であったが、これらは短鎖の酸からなるエステルであるため、単独使用では加水分解安定性が悪く実際の使用に耐えるものではなかった。
【0040】
【表2】
【0041】
II.低温流動性試験
低温流動性について評価するために、前記A1と、(B)成分のエステルとして、
B2:ネオペンチルグリコール(20モル%)とペンタエリスリトール(80モル%)の混合アルコールと2-エチルヘキサン酸のエステル
を準備した。B2の40℃の動粘度は32mm2/sであった。
A1とB2との混合物について、低温流動性を評価した。評価はサンプル瓶に入れた油を−35℃の恒温槽で静置し、4時間後の状態を観察して行った。低温流動性評価試験結果を表3に示す。なお、比較例II−1として挙げたA1単独の場合も低温流動性は良好であったが、前述したように、A1単独使用では加水分解安定性が悪く実際の使用に耐えるものではなかった。
【0042】
【表3】
【0043】
III.冷媒との相溶性
冷凍装置の作動流体には冷媒と油の相溶性が求められることから、冷媒としてR134aとR407Cを選択し、JIS K2211の相溶性試験に準じ、油/冷媒=2/8の場合の二層分離温度を測定した。
相溶性について評価するために、前記A1と、(B)成分のエステルとして、
B3:ペンタエリスリトールと2-エチルヘキサン酸のエステル
を準備した。B3の40℃の動粘度は45mm2/sであった。
A1とB3との混合物について、相溶性の評価結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
本発明の混合エステルは二層分離温度が下がり、冷媒との相溶性が良くなるため、作動流体として適している。
なお、比較例III−1として挙げたA1単独の場合も相溶性は良好であったが、前述したように、A1単独使用では加水分解安定性が悪く実際の使用に耐えるものではなかった。
【0046】
IV.エナメル被覆線適合性評価
エナメル被覆線の適合性を試験するために、A成分として、
A4:ペンタエリスリトールと、ペンタン酸(60モル%)と3,5,5-トリメチルヘキサン酸(40モル%)の混合酸とのエステル
と前記II.低温流動性試験で用いたB2成分を準備し、B2にA4を配合した潤滑油について評価した。
【0047】
上記潤滑油中の水分を50ppm以下と500ppmに調整し、この7mlとR134a冷媒3ml及びポリアミドイミド被覆のエナメル線(長さ;90mm)3本を、試験管に入れて密封し、175℃で14日間エージングした後の潤滑油のASTM色(JIS K2580)、外観、全酸価(JIS K2501)、フロック点(JIS K2211)をそれぞれ測定した。この結果を表5に示した。
【0048】
【表5】
【0049】
この結果から、潤滑油にエナメル線の影響は全く見られず、上記被覆のエナメル線が潤滑油によって全く変化を受けなかったことは明らかである。
【0050】
V. 絶縁フィルム適合性評価
上記のIV.エナメル被覆線適合性評価において、エナメル線に代えてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製、X-10、9mm×90mm)3枚を、またエージング温度を150℃にした以外は、全く同様の操作を行った。この結果を表6に示した。
【0051】
【表6】
この結果から、潤滑油に絶縁フィルムの影響は全く見られず、上記絶縁フィルムが潤滑油によって全く変化を受けなかったことは明らかである。
【0052】
【発明の効果】
本発明の、炭素数5〜10のネオペンチルポリオールと炭素数4〜5のカルボン酸及び炭素数7〜9のカルボン酸とからなるポリオールエステル化合物を0.1〜50重量%配合した、炭素数15以下の多価アルコール1種類以上と炭素数5〜18の1価脂肪酸1種類以上とを原料として得たポリオールエステル化合物またはコンプレックスエステル化合物を主成分とする潤滑油組成物は、従来のエステル系潤滑油では必ずしも十分とは言えなかった潤滑性、低温流動性を大きく改善することができる。このため、種々の潤滑油用途に最適である。特に、冷媒との相溶性にも優れ、また、特定のエナメル被覆線及び特定の絶縁フィルムに損傷等を与えないため、ハイドロフルオロカーボン冷媒を用いる冷凍装置用として最適である。
Claims (4)
- 下記(A)成分のエステル化合物を0.1〜50重量%配合したことを特徴とする下記(B)成分のエステル化合物を主成分とする潤滑油組成物。
(A)成分:ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリストール及びジペンタエリストールから選ばれる1種以上のネオペンチルポリオールと、ペンタン酸及びイソペンタン酸の少なくとも一方と、3,5,5−トリメチルへキサン酸と、からなるポリオールエステル化合物
(B)成分:ネオペンチルグリコール及びペンタエリスリトールの少なくとも一方と、2−エチルヘキサン酸と、を原料として得たポリオールエステル化合物 - 請求項1に記載の潤滑油組成物とハイドロフルオロカーボン冷媒からなる冷凍装置用作動流体。
- 少なくとも圧縮機、凝縮器、膨張機構及び蒸発器を有し、請求項2に記載の冷凍装置用作動流体を用いることを特徴とする冷媒圧縮式冷凍装置。
- 圧縮機は密閉型で、エナメル被覆線と絶縁フィルムとを備えたモータを有し、前記エナメル被覆線がポリエステル線、上層ポリアミドイミド/下層ポリエステルイミド線及びポリアミドイミド線のいずれか1種のエナメル被覆線であり、前記絶縁フィルムがポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミドイミドコートポリエステル、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルエーテルケトンのいずれか1種の絶縁フィルムである請求項3に記載の冷媒圧縮式冷凍装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001051323A JP5021865B2 (ja) | 2000-03-09 | 2001-02-27 | 潤滑油組成物、作動流体及び冷凍装置 |
Applications Claiming Priority (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000064525 | 2000-03-09 | ||
JP2000064525 | 2000-03-09 | ||
JP2000-64525 | 2000-03-09 | ||
JP2001051323A JP5021865B2 (ja) | 2000-03-09 | 2001-02-27 | 潤滑油組成物、作動流体及び冷凍装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001323291A JP2001323291A (ja) | 2001-11-22 |
JP5021865B2 true JP5021865B2 (ja) | 2012-09-12 |
Family
ID=26587077
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001051323A Expired - Lifetime JP5021865B2 (ja) | 2000-03-09 | 2001-02-27 | 潤滑油組成物、作動流体及び冷凍装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5021865B2 (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6774093B2 (en) * | 2002-07-12 | 2004-08-10 | Hatco Corporation | High viscosity synthetic ester lubricant base stock |
CN103695129B (zh) * | 2009-01-26 | 2017-01-18 | 科聚亚公司 | 包含多醇酯润滑剂的工作流体 |
JP2013014673A (ja) | 2011-07-01 | 2013-01-24 | Idemitsu Kosan Co Ltd | 圧縮型冷凍機用潤滑油組成物 |
EP3029085B1 (en) * | 2013-07-31 | 2018-06-27 | FUJIFILM Corporation | Compex polyester composition, lubricant composition, lubricant, and production method for complex polyester composition |
JP2015172205A (ja) * | 2015-06-02 | 2015-10-01 | 出光興産株式会社 | 圧縮型冷凍機用潤滑油組成物 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH03227397A (ja) * | 1989-11-29 | 1991-10-08 | Asahi Denka Kogyo Kk | 冷凍機用潤滑剤 |
CN1119316C (zh) * | 1995-09-25 | 2003-08-27 | 花王株式会社 | 酯化合物作为润滑油基础油的应用 |
JP4564111B2 (ja) * | 1998-09-02 | 2010-10-20 | Jx日鉱日石エネルギー株式会社 | 冷凍機油 |
-
2001
- 2001-02-27 JP JP2001051323A patent/JP5021865B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2001323291A (ja) | 2001-11-22 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100743179B1 (ko) | 냉동장치용 윤활유 조성물, 작동유체 및 냉동장치 | |
JP2967574B2 (ja) | 冷凍装置 | |
KR101445419B1 (ko) | 냉동기용 윤활유 조성물 | |
JP5689428B2 (ja) | 冷凍機油組成物及びその製造方法、冷凍機用作動流体組成物 | |
JP3142321B2 (ja) | 冷凍機油組成物 | |
JP2850983B2 (ja) | 潤滑油 | |
KR102209170B1 (ko) | 윤활유 기유, 냉동기유 및 냉동기용 작동 유체 조성물 | |
JPH03128991A (ja) | 潤滑油 | |
KR101580319B1 (ko) | 냉매용 냉동기유 | |
JP2020158786A (ja) | 耐摩耗添加剤、冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物 | |
JP5248960B2 (ja) | 冷凍機油および冷凍機用作動流体ならびに冷蔵庫 | |
JP2001226690A (ja) | 冷凍装置用潤滑油組成物及び冷凍装置 | |
JP5021865B2 (ja) | 潤滑油組成物、作動流体及び冷凍装置 | |
JP5248959B2 (ja) | 冷凍機油および冷凍機用作動流体ならびに冷蔵庫 | |
EP4180508B1 (en) | Use of a composition for a refrigerating machine oil, and working fluid composition for a refrigerating machine oil | |
WO2017065134A1 (ja) | 冷凍機油、冷凍機用組成物、及び冷凍機 | |
JPH09302373A (ja) | 冷凍機油組成物 | |
JP2004067836A (ja) | 冷凍機用潤滑油組成物 | |
JPH09310086A (ja) | 冷凍機油組成物 | |
KR960010990B1 (ko) | 냉매압축기 | |
JP2000154943A (ja) | 冷凍装置 | |
JPH1036873A (ja) | 冷凍機油組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20040209 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20040312 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20070725 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20071119 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20101202 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20110228 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20110308 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20110509 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20120221 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120508 |
|
A911 | Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20120516 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20120612 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20120615 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5021865 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150622 Year of fee payment: 3 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |