本発明は、電子写真方式、静電記録方式を用いた画像形成装置、及び、画像形成装置に適用される像加熱装置に関するものである。
従来、電子写真方式の複写機、プリンタ等の画像形成装置の多くは、像加熱装置としての加熱定着装置として、熱効率、安全性が良好な接触加熱型の熱ローラ定着方式の装置や、省エネルギータイプのフィルム加熱方式の装置を採用している。
熱ローラ定着方式の加熱定着装置は、加熱用回転体としての加熱ローラ(定着ローラ)と、これに圧接させた加圧用回転体としての弾性ローラとを基本構成とし、次のようにして未定着画像を被加熱材としての記録材に永久画像として熱圧定着させるものである。
すなわち、一対のローラ(加熱ローラ、弾性ローラ)を回転させて該両ローラ対の圧接ニップ部である定着ニップ部に未定着画像(以下、トナー画像と記す)を形成担持させた被加熱材としての記録材を導入して定着ニップ部で挟持搬送させる。このようにして記録材が定着ニップ部を通過することで、加熱ローラからの熱と定着ニップ部の加圧力にてトナー画像が記録材に永久画像として熱圧定着される。ここで、記録材としては、転写材(転写材シート)、静電記録紙、エレクトロファックス紙、印字用紙等を例示することができる。
また、フィルム加熱方式の加熱定着装置は、例えば特許文献1〜4公報等に提案されている。
フィルム加熱方式では、固定配置されたセラミックヒータ等の加熱体に、加熱用回転体としての耐熱性フィルム(可撓性スリーブ)を、加圧用回転体(弾性加圧ローラ)で密着させて摺動搬送させる。そして、該フィルムを挟んで加熱体と加圧用回転体とで形成される圧接ニップ部である定着ニップ部にトナー画像を像担持した記録材を導入してフィルムと一緒に搬送させる。これにより、フィルムを介して付与される加熱体からの熱と定着ニップ部の加圧力によってトナー画像が記録材上に永久画像として定着される。
図7を用いてフィルム加熱方式の加熱定着装置の概略構成について説明する。
フィルム加熱定着装置は、加熱部材(加熱体、以下ヒータと記す)211と、加圧回転体(以下、加圧ローラと記す)220を有する。ここで、ヒータ211は、ステイホルダ(支持体)212に固定支持されている。加圧ローラ220は、ヒータ211に対して、耐熱性の薄肉フィルム(以下、定着フィルムと記す)213を挟んで所定のニップ幅のニップ部(定着ニップ部)Nが形成されるように圧接して設けられている。
ヒータ211は通電により所定の温度に加熱・温調される。定着フィルム213は、不図示の駆動手段又は加圧ローラ220の回転力により、定着ニップ部Nにおいてヒータ211面に密着・摺動しつつ、図7に示す矢印aの方向に搬送移動される部材である。定着フィルム213は、円筒状、エンドレスベルト状、又はロール巻きの有端ウェブ状に設けられている。
定着フィルム213は内部の加熱用ヒータ211及びステイホルダ212に摺擦しながら回転するため、ヒータ211及びステイホルダ212の表面に耐熱性グリース等の潤滑
剤を少量介在させてある。これにより、定着フィルム213はスムーズに回転することが可能となる。
ヒータ211が所定の温度に加熱・温調され、定着フィルム213が矢印の方向に搬送移動された状態において、定着ニップ部Nの定着フィルム213と加圧ローラ220との間に未定着トナー像tが形成担持された記録材Pが導入される。すると、記録材Pは定着フィルム213の面に密着して定着フィルム213と一緒に定着ニップ部Nで挟持搬送される。
この定着ニップ部Nにおいて、記録材P・トナー像tがヒータ211により定着フィルム213を介して加熱されて記録材P上のトナー像tが加熱定着される。定着ニップ部Nを通った記録材部分は定着フィルム213の面から剥離して搬送される。
加熱部材としてのヒータ211には一般にセラミックヒータが使用される。これは、セラミック基板2111の面(定着フィルム213と対面する側の面)に基板長手方向に沿って通電発熱抵抗層2112をスクリーン印刷等で形成具備させ、さらに通電発熱抵抗層形成面を薄肉ガラス保護層2113で覆ってなるものである。ここで、基板長手方向は、加圧ローラ220の軸方向であり、図7の図面(断面)に対して垂直な方向である。また、セラミック基板2111は、アルミナ等の電気絶縁性・良熱伝導性・低熱容量の基板である。また、通電発熱抵抗層2112は、銀パラジューム(Ag/Pb)・Ta2N等で構成されている。
このヒータ211は、通電発熱抵抗層2112に通電がなされることにより通電発熱抵抗層2112が発熱してヒータ全体が急速昇温する。このヒータ211の昇温が、ヒータ背面に配置された温度検知手段214により検知され、不図示の通電制御部へフィードバックされる。通電制御部は、温度検知手段214で検知されるヒータ温度が所定のほぼ一定温度(定着温度)に維持されるように、通電発熱抵抗層2112に対する通電を制御する。すなわちヒータ211は所定の定着温度に加熱・温調される。
定着フィルム213は、定着ニップ部Nにおいてヒータ211の熱を効率よく被加熱材としての記録材Pに与えるため、厚みは20〜70μmとかなり薄くしている。この定着フィルム213はフィルム基層、プライマー層、離型性層の3層構成で構成されており、フィルム基層側がヒータ側であり、離型性層側が加圧ローラ側である。フィルム基層はヒータ211のガラス保護層2113より絶縁性の高いポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等であり、耐熱性、高弾性を有している。また、フィルム基層により定着フィルム213全体の引裂強度等の機械的強度を保っている。プライマー層は厚み2〜6μm程度の薄い層で形成されている。離型性層は定着フィルム213に対するトナーオフセット防止層であり、離型性の良好なPFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂を厚み10μm程度に被覆して形成してある。
加圧ローラ220は、芯金221の上に耐熱ゴム又は耐熱ゴムを発泡して弾性層222を形成し、その上に接着層223を介して離型性の良好なフッ素樹脂をチューブ被覆又はコーティング塗工した離型層224として形成して構成されている。ここで、芯金221はAl、Fe等から構成されている。また、弾性層222を形成する耐熱ゴムは、絶縁性のシリコーンゴムやフッ素ゴム等により構成されている。離型層224を形成するフッ素樹脂は、PFA、PTFE、FEP等により構成されている。
また、ステイホルダ212は、例えば耐熱性プラスチック製部材より形成され、ヒータ211を保持するとともに定着フィルム213の搬送ガイドも兼ねている。
このような薄い定着フィルム213を用いたフィルム加熱方式の加熱装置においては、弾性層222を有している加圧ローラ220は、ヒータ211に圧接することで、ヒータ211の高い剛性のためにヒータ211の扁平下面にならって扁平になる。このことで、所定幅の定着ニップ部Nが形成される。このように構成されることで、定着ニップ部Nのみの加熱によりクイックスタート可能な加熱定着を実現している。
特開昭63−313182号公報
特開平2−157878号公報
特開平4−44075号公報
特開平4−204980号公報
近年の画像形成装置の高速化に伴い、上記従来例で示したフィルム加熱方式の加熱定着装置の定着フィルムとして、高熱伝導性を有する金属薄肉フィルムが採用されている。特に、特開2003−275834号公報で開示されている回転塑性加工法であるスピニング加工法によって製造された金属薄肉フィルムは、熱伝導性、耐久性(強度)に優れ、広く採用されている。
しかしながら、上記スピニング加工法により製造された金属フィルムは、スピニング加工時にフィルム内面に図8に示すようなスパイラル(螺旋)状の溝Mが出来てしまい、このスパイラル状の溝に起因して以下のような問題が生ずることが懸念される。
図8のようなスパイラル状の溝を有する金属フィルムは、回転摺動させると、スパイラル状の溝に沿って一定方向に移動する、つまり、一定方向に寄る性質を有する。この寄る性質により、金属フィルムは加熱定着装置内の両端部に設けられたフランジ等のフィルム位置規制部材(以下、フランジと記す)に突き当たり、規制されることとなる。
この両端のフランジの間隔は、金属フィルムの長さや各種部品の公差を考慮して、金属フィルム長よりも若干広めに設定されている。したがって、金属フィルムが寄る側では、金属フィルム端部とフランジが隙間なく密着した状態となり、反対側は金属フィルム端部とフランジに隙間が空いた状態となる。このため、金属フィルム寄り側はグリスのしみ出しが殆どなく、金属フィルム寄り側と反対側は隙間からグリスのしみ出しがおき易い。
また、金属フィルム内面のスパイラル状の溝は、金属フィルムの回転運動によりグリス等の潤滑剤を搬送する作用をもち、グリスを長手方向の金属フィルムが寄る方向と逆方向に移動させる。したがって、金属スリーブの寄る側と反対側の端部はグリスがよりしみ出し易い。
これらの理由から、従来のPIフィルム等を用いた構成よりも、グリスがしみ出しやすい傾向がある。
このグリスのしみ出しは、出力画像品質に影響を与える。つまり、従来例で示したフィルム加熱方式の加熱定着装置では、定着フィルムを長手方向端部より導電性弾性リング(ゴム輪)等の導通手段を介して接地又はバイアス印加することで、定着フィルムがトナーと逆極性となるのを防ぎ、オフセット画像を防止している。したがって、この導電性弾性リングにグリスが付着した場合、金属フィルムとの電気的接続が不安定となり、オフセット画像等の画像不良が発生することが懸念される。
この導電性弾性リングへのグリス付着に起因するオフセットを防止する為に、定着フィルムへの導通手段としての導電性弾性リングの変わりに、グリス付着の影響を受け難い導
電ブラシを採用することも考えられる。しかし、この場合には、コストが大幅にアップしてしまうことが懸念される。
また、導電性弾性リングにクリーニングパット等のクリーニング部材を当接する等の方法も考えられるが、装置が大型化したり、コストアップしてしまうことが懸念される。
本発明は、スピニング加工法によって製造された可撓性スリーブを使用する際に、内面の螺旋形状による可撓性スリーブの片寄り及びグリスの搬送作用によるグリスしみ出しに起因するオフセットを防止し、良好な画像を得ることを目的とする。
上記目的を達成するために本発明にあっては、
ヒータに摺動する可撓性スリーブであって、スピニング加工法により製造されることで前記ヒータに摺動する面に螺旋状の溝を有する金属製の可撓性スリーブと、加圧ローラとの間に形成されたニップ部に、現像剤像が形成された記録材を通過させることにより、前記記録材上の現像剤像を加熱する像加熱装置において、
前記可撓性スリーブに接触するように設けられた導電性弾性部材を有し、前記可撓性スリーブが記録材に形成された現像剤像と逆極性となることを防止する導通手段を備え、
前記導電性弾性部材は、前記加圧ローラの軸方向の端部のうち、前記可撓性スリーブが前記軸方向に片寄る片寄り側の端部に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、スピニング加工法によって製造された可撓性スリーブを使用する際に、内面のスパイラル形状による可撓性スリーブの片寄り及びグリスの搬送作用によるグリスしみ出しに起因するオフセットを防止し、良好な画像を得ることが可能となる。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
(1)画像形成装置
図1は、本発明の実施例1に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
図1において、1は像担持体としての感光ドラムであり、OPC、アモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基盤上に形成されている。
感光ドラム1は図1に示す矢印Rの方向に回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ2によって一様帯電される。次に、画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビームEによる走査露光が施され、静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置4で現像、可視化される。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
可視化されたトナー像(現像剤像)は、転写装置としての転写ローラ5により、所定のタイミングで搬送された記録材P上に感光ドラム1上から転写される。このとき、記録材Pは感光ドラム1と転写ローラ5に一定の加圧力で挟持搬送される。この未定着のトナー
像が転写された記録材Pは、像加熱装置としての加熱定着装置6へと搬送され、加熱定着装置6を通過することで永久画像として定着される。一方、感光ドラム1上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置7により感光ドラム1表面より除去される。
以上の動作を繰り返すことで、次々と画像形成を行うことができる。尚、本実施例の画像形成装置は、600dpi、22枚/分(LTR縦送り:プロセススピード約150mm/sec)のプリント速度でプリントを行うことができる。
(2)加熱定着装置
図2は、本実施例の加熱定着装置6の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。図3は、本実施例の加熱定着装置6の要部を示す概略図であり、(a)は定着フィルム13の層構成を示す断面図であり、(b)は定着フィルム13の接地方法を示す図である。
図2に示すように、加熱定着装置6は、加熱手段としての定着部材10と、加圧ローラ(加圧回転体、加圧部材)20とを有している。そして、定着部材10は、ヒータ(加熱体、発熱体)としての加熱ヒータ11と、加熱ヒータ11に摺動する可撓性スリーブとしての定着フィルム13と、断熱ステイホルダ12とを有している。
本実施例の定着フィルム13は、スピニング加工法により製造されることで内面(加熱ヒータ11に摺動する面)に図8に示すようなスパイラル状(螺旋状)の溝Mを有する熱容量の小さな金属スリーブ(フィルム)である。定着フィルム13は、図3(a)に示すようにSUS等の薄い金属製素管(SUS製素管)131の表面に直接又はプライマー層を介してPFA、PTFE、FEP等の離型層133をコーティング又はチューブ被覆した複合層フィルムである。ここで、金属製素管131は、その一部が定着フィルム13表面に露出する露出部を有し離型層133の下層に設けられた導電層である。また、離型層133は、加圧ローラ20に接触する最外層に設けられた樹脂層である。また、SUSはステンレス鋼であり、PFAはテトラフルオロエチレン パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であり、PTFEは、ポリテトラフルオロエチレンであり、FEPは、テトラフルオロエチレン ヘキサフルオロプロピレン共重合体である。
金属製素管131の表面に直接離型層133を形成する場合は、表面にブラスト処理等の表面処理を施してあっても良い。定着フィルム13は、クイックスタートを可能とするために100μm以下の厚みが好ましく、また、長寿命の加熱定着装置6を構成するために十分な強度を持ち、耐久性に優れたフィルムとして、20μm以上の厚みが必要である。
よって、定着フィルム13の厚みとしては、20μm以上100μm以下が最適である。尚、本実施例では、外径18mm、厚さ27μmのSUS製素管に厚さ15μmのPFAチューブを熱溶着により被覆した定着フィルム13を用いている。定着フィルム13は、加熱ヒータ11に対して摺擦(摺動)可能に設けられている。
また、定着フィルム13は、オフセット等の画像不良を防止するために、整流素子(セルフバイアス素子)としてのダイオード101を介して接地されている。本実施例では、接地方法として、次のような方法を適用している。それは、図2(b)、図3(b)に示すように、定着フィルム13端部の表面に金属製素管131を露出させ、加圧ローラ20の端部に設けられた導電性弾性部材としての導電性弾性リング31と接触させている。
ここで、導電性弾性リング31は、本実施例の特徴として、加圧ローラ20の軸方向の端部のうち、定着フィルム13が加圧ローラ20の軸方向に片寄る片寄り側の端部に配置
されている。定着フィルム13が回転摺動する場合には、スパイラル状の溝Mに沿って図8に示す矢印Y方向(一定方向)に移動する、つまり、一定方向に寄る性質を有する。加圧ローラ20の軸方向の端部のうち、この寄り側に導電性弾性リング31が設けられている。
そして、導電性弾性リング31をダイオード101及び安全抵抗102を介して接地させている。このようにして、定着フィルム13が記録材P上のトナーと逆極性となるのを防ぎ、オフセット画像を防止している。ここで、導電性弾性リング31、ダイオード101及び安全抵抗102は、導通手段を構成している。なお、定着フィルム13は、ダイオード101を介することなく接地されるものであってもよい。また、バイアス印加手段を設け、定着フィルム13にバイアスを印加することで、定着フィルム13が記録材P上のトナーと逆極性となるのを防ぐことにより、オフセット画像を防止することもできる。
加熱ヒータ11は、定着フィルム13の内部に具備されたヒータであり、高熱伝導であるAl2O3又はAlN基板111上に銀パラジウム等からなる通電発熱抵抗層112を形成し、更にその上から薄肉ガラス保護層113で覆ってなるものである。この加熱ヒータ11の通電発熱抵抗層112が形成されている面又は背面を定着フィルム13に接触させることにより記録材P上のトナー像を溶融、定着させるニップ部の加熱を行う。
断熱ステイホルダ12は加熱ヒータ11を保持し、ニップ部と反対方向への放熱を防ぐためのホルダであり、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等により形成されている。そして、断熱ステイホルダ12には定着フィルム13が余裕をもってルーズに外嵌されていて、定着フィルム13は図2(a)に示す矢印の方向に回転自在に配置されている。
また、定着フィルム13は内部の加熱ヒータ11および断熱ステイホルダ12に摺擦しながら回転するため、加熱ヒータ11および断熱ステイホルダ12と、定着フィルム13との間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。このため、加熱ヒータ11および断熱ステイホルダ12の表面に耐熱性グリース等の潤滑剤を少量介在させてある。これにより、定着フィルム13はスムーズに回転することが可能となる。
加圧ローラ20は、芯金21の上に耐熱ゴム又は耐熱ゴムを発泡して弾性層22を形成し、その上に接着層23としてプライマー処理されて接着性をもつRTVシリコーンゴムを塗布し、更に離型層24を形成して構成されている。ここで、芯金21は、Al、Fe等から構成されている。また、弾性層22を形成する耐熱ゴムは、絶縁性のシリコーンゴムやフッ素ゴム等により構成されている。また、離型層24は、加圧ローラ20において最外層に設けられた導電層を構成しており、PFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂にカーボン等の導電剤を分散させたチューブを被覆又はコーティング塗工して構成される。なお、以下の説明において、長手方向とは、加圧ローラ20の軸方向をいうものとする。
離型層24は、定着フィルム13や記録材Pとの摺擦によるチャージアップを防止するために、抵抗値が、109Ω/□以下であることが好ましい。また一方で、転写電荷のリークにより、記録材のトナー保持力が低下することによるオフセットを防止するために、離型層24は、106Ω/□以上の抵抗値であることが好ましい。
本実施例では、ローラ外径は18mm、ローラ硬度は40°(Asker−C 600g加重)の加圧ローラを使用している。
加圧ローラ20は、定着部材10の方向に不図示の加圧手段により、長手方向両端部から加熱定着に必要なニップ部を形成するべく十分に加圧(圧接)されている。そして、加
圧ローラ20は、長手方向端部から芯金21を介して不図示の回転駆動により、図2(a)に示す矢印方向に回転駆動される。これにより、定着フィルム13は、断熱ステイホルダ12の外側を図2(a)に示す矢印方向に従動回転する。なお、定着フィルム13の内部に不図示の駆動ローラを設け、駆動ローラを回転駆動することにより、定着フィルム13を回転させ、加圧ローラ20を従動回転させてもよい。
このようにして、未定着のトナー像が形成(担持)された記録材Pは、定着部材10(定着フィルム13)と加圧ローラ20との間に形成されたニップ部で挟持搬送されることにより加熱される。これにより、記録材上のトナー像は永久画像として記録材Pに定着される。
次に、具体的な実験例について説明する。
図4は、加熱定着装置の比較例を示す概略構成図であり、本実施例に対し、加圧ローラ20の軸方向の反対側に導電性弾性リング31を設けた場合について示している。
表1は、本実施例のように定着フィルム13寄り側に導電性弾性リング31を設けた場合と、図4のように反対側に導電性弾性リング31を設けた場合で、耐久によるオフセット画像レベルの比較を行った結果を示している。尚、オフセットの確認は、低温・低湿環境及び高抵抗紙(Xx(Xerox社製)4200放置紙)を用いて行った。
表1より定着フィルム13が寄る側と反対側に導通性弾性リング31を設けた場合、5千枚まではグリスのしみ出しが少なく、オフセット画像の発生も見られないことがわかる。しかし、1万枚通紙付近からグリスのしみ出し量が多くなり、導電性弾性リング31にグリスが付着し始め、オフセット画像が発生し始めることがわかった。
これに対して、本実施例の構成では、75万枚通紙してもグリスしみ出しによる導電性弾性リング31の汚れはなく、オフセット画像のない良好な画像が得られた。尚、本実施例では、金属スリーブの表層を絶縁PFAチューブ、加圧ローラの表層を導電PFAチューブの構成について説明したが、金属スリーブの表層が導電性、加圧ローラ表層が絶縁性の構成においても同様の効果が得られる。
以上のように、本実施例では、定着フィルム13としてスピニング加工により製造された金属フィルムを使用する構成において、内面のスパイラル状の溝によりフィルムが片寄る側に導電性弾性リング31を設けている。このような構成によって、定着フィルム内面の摺動グリスがしみ出し、導電性弾性リング31に付着し、定着フィルムとの電気接点不良を起こすことにより発生するオフセット画像を防止することができる。このように、本実施例によれば、導電性弾性リング31のグリス付着等に起因するオフセット画像を防止することができ、良好な出力画像を得ることができる。
本発明の実施例2では、図5に示すように導電性弾性リング31としてシリコーンゴムの発泡体を使用する構成について説明する。
図5は、本実施例の導電性弾性リング31について説明するための概略構成図であり、同図(a)には平面図及び側面図を示しており、同図(b)には、導電性弾性リング31(発泡体)の表面の拡大図を示している。尚、本実施例の画像形成装置のプロセススピードは180mm/s、30枚/分(LTR縦送り)、本体寿命15万枚とした。本実施例においては、実施例1に対して異なる構成部分について述べることとし、実施例1と同様の構成部分については、その説明を省略する。
前記実施例1の構成では、画像形成装置の寿命が7万枚程度であれば、装置寿命にわたって十分なオフセット防止効果が得られるが、装置寿命が10万枚を超えると、導電性弾性リング31に紙粉やトナーが付着することが懸念される。導電性弾性リング31に紙粉やトナーが付着した場合には、定着フィルム13との接続不良が起こり、オフセット画像が発生することが懸念される。
そこで、本実施例のように、導電性弾性リング31として導電性シリコーンゴムの発泡体を使用することによって、発泡セル内に紙粉やトナー等を吸収できる為、定着フィルム13との電気的接続は長期的に保持できる。したがって、導電性弾性リング31のコストは若干上昇するものの前記実施例1の場合よりも長期にわたってオフセット画像の発生を防止することができる。
表2に本実施例の構成と前記実施例1の構成で耐久によるオフセット画像レベルの比較行った結果を示す。尚、オフセットの確認は、前記実施例と同様に低温・低湿環境及び高抵抗紙(Xx(Xerox社製)4200放置紙)を用いて行った。
表2より、前記実施例1のように導電性弾性リング31として導電性シリコーンゴムを使用した場合には、次のようなことがわかる。すなわち、前記実施例1では、7万5千枚まではオフセット画像の発生はないが、10万枚通紙付近から導電性弾性リング31に紙粉等の汚れが付着し始め、定着フィルムとの接触が不安定となりオフセットが発生し始めることがわかる。
これに対して、本実施例の構成では、15万枚通紙しても、導電性弾性リング31に紙粉やトナー等の汚れの付着は見られず、定着フィルム13との接触が保たれ、オフセット画像の発生は見られなかった。尚、本実施例では導電性弾性リング31として導電性シリコーンゴムの発泡体を使用した例について説明したが、導電性フッ素ゴムの発泡体を使用した場合でも同様の効果が得られる。
以上のように、導電性弾性リング31として導電性のシリコーンゴム又はフッ素ゴムの発泡体を使用することによって、導電性弾性リング31のグリス付着だけでなく、紙粉やトナー等の付着も低減することができる。したがって、定着フィルム13との電気接点不良に起因するオフセット画像の発生を長期にわたって防止することができる。
図6は、本発明の実施例3の導電性弾性リング31について説明するための概略構成図である。
本実施例では、図6のように導電シリコーンゴムの上(表層)に導電性のPFAチューブ32を被覆した導電性弾性リング31を使用する構成について説明する。尚、本実施例の画像形成装置のプロセススピードは200mm/s、35枚/分(LTR縦送り)、本体寿命200万枚とした。本実施例においては、実施例1,2に対して異なる構成部分について述べることとし、上記実施例と同様の構成部分については、その説明を省略する。
本実施例のように、導電性弾性リング31表層に導電性のPFAチューブ等のフッ素樹脂を被覆することにより、離型性が向上し、前記実施例2の構成より更に長期にわたって定着フィルム13との接触部の耐久性を確保することができる。
表3に本実施例の構成と前記実施例2の構成で耐久によるオフセット画像レベルを比較した結果を示す。尚、オフセットの確認は、前記実施例と同様に低温・低湿環境及び高抵抗紙(Xx4200放置紙)を用いて行った。
表3より、前記実施例2のように導電性弾性リング31として導電性シリコーンゴムの発泡体を使用した場合には、次のようなことがわかる。すなわち、前記実施例2では、15万枚まではオフセット画像の発生はないが、20万枚通紙付近から導電性弾性リング31に紙粉やトナー等の汚れが付着し始め、定着フィルム13との接触が不安定となりオフセットが発生し始めることがわかる。
これに対して、本実施例の構成では、25万枚通紙しても、導電性弾性リング31に紙粉やトナー等の汚れの付着は見られず、定着フィルム13との接触が保たれオフセット画像の発生は見られなかった。尚、本実施例では導電性弾性リング31に導電性PFAチューブを被覆した場合について説明したが、導電性のPTFE、FEP等のチューブを被覆した構成や導電性のフッ素樹脂をコーティングした構成でも同様の効果が得られた。
以上のように、導電性弾性リング31の表層に導電性のフッ素樹脂チューブを被覆又はコーティングすることによって、導電性弾性リング31へのグリス付着だけでなく、紙粉やトナー等の付着も低減することができる。したがって、定着フィルム13との電気接点
不良に起因するオフセット画像の発生を長期にわたって防止することができる。
本発明の実施例1に係る画像形成装置の概略構成図。
本発明の実施例1に係る加熱定着装置の概略構成図であり、(a)は断面図、(b)は正面図。
本発明の実施例1に係る加熱定着装置の要部を示す概略構成図であり、(a)は定着フィルムの層構成を示す図、(b)は定着フィルムの接地方法を示す図。
実施例1において加熱定着装置の比較例を示す概略構成図。
実施例2の導電性弾性リングの概略構成を示す図。
実施例3の導電性弾性リングの概略構成を示す図。
従来のフィルム加熱定着装置の概略構成図。
スピニング加工法により製造された金属フィルムを示す図。
符号の説明
6 加熱定着装置
10 定着部材
11 加熱ヒータ
13 定着フィルム
20 加圧ローラ
31 導電性弾性リング
101 ダイオード
102 安全抵抗