JP4962754B2 - 抗腫瘍剤、腫瘍細胞増殖抑制剤、免疫賦活剤及び食品 - Google Patents
抗腫瘍剤、腫瘍細胞増殖抑制剤、免疫賦活剤及び食品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4962754B2 JP4962754B2 JP2005284739A JP2005284739A JP4962754B2 JP 4962754 B2 JP4962754 B2 JP 4962754B2 JP 2005284739 A JP2005284739 A JP 2005284739A JP 2005284739 A JP2005284739 A JP 2005284739A JP 4962754 B2 JP4962754 B2 JP 4962754B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- glucosylceramide
- trans
- cells
- extraction
- immunostimulant
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)
- Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
Description
スフィンゴ脂質は長鎖アミノアルコールであるスフィンゴイド塩基のアミノ基に脂肪酸が結合したセラミド骨格を基本骨格とし、動物、植物、真菌およびある種の細菌類に至るまでの広い範囲で膜脂質として存在している。セラミドは各種スフィンゴ脂質の疎水性部分を構成しており、それに様々な親水性基が結合して主要な複合スフィンゴ脂質(分子中にリン、硫黄、アミノ酸、糖などを含むスフィンゴ脂質)となる。
近年まで、スフィンゴ脂質の供給源の主なものは、ウシやヒツジ等の動物の脳神経組織であった。しかし、食品や医薬品原料として利用する場合、その安全性に問題がある。
さらにα型のモノグリコシルセラミド類がナチュラルキラーT細胞の活性を高めることが報告され(非特許文献4参照。)、海綿由来のα−ガラクトシルセラミドがin vitroで、又は動物への腹腔内投与によりナチュラルキラーT細胞の活性を高めることが報告されている(非特許文献5参照。)。
また、乳由来のラクトシルセラミドをマウスに腹腔内投与することにより、脾臓細胞のIFN-γの産生が増強されることが報告されている(例えば特許文献1参照。)。
B細胞は、抗体を使って細菌やウイルスを攻撃するもので、これを液性免疫という。IgEという抗体の一種が関与するアレルギー性疾患は、この液性免疫が過剰に反応する結果、発生する。一方、ウイルス感染細胞やガン細胞など自分の細胞に隠れている異常を発見して、Tリンパ球やNK細胞などが直接攻撃する免疫の仕組みを細胞性免疫という。細胞性免疫はガンに対する生体防御に重要な役割を果たすが、調節が狂って正常な自分の細胞を攻撃すると慢性関節リュウマチなどの自己免疫疾患の発病に関連する。
Th1細胞とTh2細胞とのバランスの異常が、アレルギー性疾患や自己免疫疾患やガンなどの病気の発生に密接に関連していることが最近の研究で明らかになってきた。
現在、機能性食品が注目されている中、安全に摂取でき且つ優れた効果を発揮できる有効成分が求められ、種々の疾病の予防や治療に有用であることが期待されている。
従って本発明は、植物又は真菌から抽出されるβ−グルコシルセラミド画分を有効成分として含有する抗腫瘍剤である。本発明の抗腫瘍剤はより詳しくは、腫瘍細胞増殖抑制剤である。
従って本発明は、植物又は真菌から抽出されるβ−グルコシルセラミド画分を有効成分として含有する免疫賦活剤である。本発明の免疫賦活剤の免疫賦活は、IFN産生増強及び/又はIL-2産生増強によるものである。本発明の免疫賦活剤の免疫賦活はまた、細胞性免疫の制御によるものである。本発明の免疫賦活剤はさらに、ウイルス感染や細菌感染に対する自然免疫増強を促すものである。
植物から抽出されるβ−グルコシルセラミド画分は具体的に、スフィンゴイド塩基部位として4-トランス,8-シス-スフィンガジエニンを含むβ−グルコシルセラミド、スフィンゴイド塩基部位として4-トランス,8-トランス-スフィンガジエニンを含むβ−グルコシルセラミド、スフィンゴイド塩基部位として8-シス-スフィンゲニンを含むβ−グルコシルセラミド、スフィンゴイド塩基部位として8-トランス-スフィンゲニンを含むβ−グルコシルセラミド、スフィンゴイド塩基部位として4-ヒドロキシ-8-シス-スフィンゲニンを含むβ−グルコシルセラミド、及びスフィンゴイド塩基部位として4-ヒドロキシ-8-トランス-スフィンゲニンを含むβ−グルコシルセラミドから選ばれる少なくとも1種を含有するものである。真菌から抽出されるβ−グルコシルセラミド画分は具体的に、スフィンゴイド塩基部位として9-メチル-4-トランス,8-トランス-スフィンガジエニンを含むβ−グルコシルセラミド、及びスフィンゴイド塩基部位として4-トランス,8-トランス-スフィンガジエニンを含むβ−グルコシルセラミドから選ばれる少なくとも1種を含有するものである。
本発明はまた、上記抗腫瘍剤又は腫瘍細胞増殖抑制剤を配合した食品に向けられている。本発明はさらに、上記免疫賦活剤を配合した食品に向けられている。
本発明の免疫賦活剤は、人体が摂取するのに安全性が高く、IFN-γ産生能及び/又はIL-2産生能を増強させることができる。本発明の免疫賦活剤は、免疫システムのバランスが崩れることによる病気の発生を予防するのに有用である。また、そのような病気の治療に使用することもできる。本発明の免疫賦活剤は、細菌やウイルス感染により誘発されるサイトカイン産生を増強するので、自然免疫力を高めることができる。本発明の免疫賦活剤の有効成分は日常摂取できる食品に配合することができ、このような食品により免疫賦活が期待され、また、ウイルス感染や細菌感染に対する抵抗力を付与することが期待できる。
使用する抽出溶媒としては、有機溶剤、及び有機溶剤と水との混合物が挙げられ、具体的にはエタノール、含水エタノール、メタノール、含水メタノール、ヘキサン、アセトン、クロロホルム、クロロホルム−メタノール混液、ベンゼン、イソプロパノールなどがある。中でも好ましくはエタノール及び含水エタノール(エタノール含量が70〜99容量%程度)が挙げられる。抽出溶媒として2種以上を使用することができる。
なお、抽出操作は一回に限定されず、抽出残さに新鮮な溶媒を再度添加し、抽出操作を繰り返して施すことができ、10回程度まで、好ましくは3回まで連続抽出をしてもよい。
酵母の例として、サッカロマイセス属、具体的にサッカロマイセス・クルイヴェリ(Saccharomyces kluyveri)など、クルイヴェロマイセス属、具体的にクルイヴェロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クルイヴェロマイセス・サーモトレランス(Kluyveromayces thermotolerans)、クルイヴェロマイセス・ワルティ(Kluyveromayces waltii)、クルイヴェロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クルイヴェロマイセス・ウィッケルハミ(Kluyveromyces wickerhamii)など、チゴサッカロマイセス属、具体的にチゴサッカロマイセス・シドリ(Zycosaccharonyces cidri)、チゴサッカロマイセス・フェルメンタティ(Zygosaccharomyces fermentati)などがある。
また、カビの例として、アスペルギルス属、具体的にアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)など、リゾープス属、具体的にリゾープス・オリゼ(Rhizopus oryzae)などがある。
また、キノコとしては食用できるキノコであれば特に制限はなく、子実体、菌糸体のいずれも使用することができる。キノコの例としてマイタケ(Grifola frondosa)、シイタケ(Lentinus edodes)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、エリンギ(Pleurotus eryngii)、タモギタケ(Pluerotus cornucopiae)、エノキダケ(Flammulina velutipes)、ナメコ(pholiota nameko)、ツクリタケ(Agaricus bisporus)などがある。
抽出原料としては、これらの材料の粉砕物が好ましく使用できる。中でも好ましくは、送風乾燥粉砕物、熱風乾燥粉砕物、スプレードライ物、フレンチプレス乾燥物、凍結乾燥粉砕物などが使用される。
なお、抽出操作は一回に限定されず、抽出残さに新鮮な溶媒を再度添加し、抽出操作を繰り返して施すことができ、10回程度まで、好ましくは3回まで連続抽出をしてもよい。
こうして得られた抽出物から適当な精製手段によりβ−グルコシルセラミド画分を得ることができる。例えば、該抽出物をシリカゲルカラムにてクロロホルム−メタノールを用いて数回精製し、固形油脂状のβ−グルコシルセラミド画分を得ることができる。
こうして得られたβ−グルコシルセラミド画分におけるβ−グルコシルセラミドを定量するには、例えばHPLC−光散乱検出器を使用することができる。実際、上記の抽出操作により、β−グルコシルセラミドを80〜99質量%程度含有するβ−グルコシルセラミド画分を得ることができる。
植物から抽出されるβ−グルコシルセラミドの中で、米、トウモロコシに主に存在するのは、スフィンゴ塩基部位が4-トランス,8-シス-スフィンガジエニン、大豆には4-トランス,8-トランス-スフィンガジエニン、小麦及びライ麦には8-シス-スフィンゲニンのものである。4-トランス,8-シス-スフィンガジエニン及び8-シス-スフィンゲニンは、植物に特徴的に存在するスフィンゴイド塩基であることが知られている。また、4-トランス,8-トランス-スフィンガジエニンは植物や真菌に特徴的に存在するスフィンゴイド塩基であることが知られている。
9-メチル-4-トランス,8-トランス-スフィンガジエニンは、真菌に特徴的に存在するスフィンゴイド塩基であることが知られている。また、4-トランス,8-トランス-スフィンガジエニンは真菌や植物に特徴的に存在するスフィンゴイド塩基であることが知られている。
植物由来β−グルコシルセラミドの分子種の例:
真菌由来β−グルコシルセラミドの分子種の例:
なお、以下の表1に示されるトウモロコシグルコシルセラミド画分におけるデータは、後述の実施例の[トウモロコシからのβ−グルコシルセラミド画分の抽出と精製]で得られたβ−グルコシルセラミド画分の分析結果である。
上記のβ−グルコシルセラミド画分は、そのまま上記抗腫瘍剤、腫瘍細胞増殖抑制剤又は免疫賦活剤として摂取することができる。本発明の抗腫瘍剤、腫瘍細胞増殖抑制剤又は免疫賦活剤はまた、有効成分の他に添加剤を含んでもよい。本発明の抗腫瘍剤、腫瘍細胞増殖抑制剤又は免疫賦活剤は経口投与することが望ましい。
また、有効成分であるβ−グルコシルセラミド画分を適当な助剤とともに任意の形態に製剤化して、経口投与が可能な抗腫瘍剤、腫瘍細胞増殖抑制剤、又は免疫賦活剤とすることができる。そのような剤形として例えば錠剤、軟・硬カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤(粉剤)、液剤(水溶液、油性製剤、シロップ、ドライシロップなど)、ガムなどが挙げられる。経口投与の剤形のほか、坐薬、軟膏、クリームなどに製剤化することも可能である。
本発明の免疫賦活剤の摂取量は、年齢、病状や一般状態などによって変化し得るが、有効成分として、成人の場合約0.1〜10,000mg/日が適当であり、好ましくは1〜5,000mg/日である。本発明の免疫賦活剤における有効成分であるβ−グルコシルセラミド画分の含有量は、剤形などに応じて適宜変更され得、特に制限されないが、通常経口投与されるとき、0.1〜50.0質量%が適当である。
本発明の抗腫瘍剤、腫瘍細胞増殖抑制剤あるいは免疫賦活剤の製剤化に用いられる界面活性剤、賦形剤、滑沢剤、佐剤及び医薬的に許容し得る被膜形成物質などの例として以下のものがある。
製剤の溶解、溶出を良好にするために、界面活性剤、例えばアルコール、エステル類、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタンの脂肪酸エステル類、硫酸化脂肪アルコール類などの1種又は2種以上を添加することができる。
また、賦形剤として、例えば蔗糖、乳糖、デンプン、結晶セルロース、マンニット、軽質無水珪酸、アルミン酸マグネシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、合成珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの1種又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
懸濁剤、湿潤剤のような佐剤としては、例えばココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、乳酸カルシウム、ベニバナ油、大豆リン脂質などを含有させることができる。また、被膜形成物質としてはセルロース、糖類などの炭水化物誘導体として酢酸フタル酸セルロース(CAP)、アクリル酸系共重合体、二塩基酸モノエステル類などのポリビニル誘導体として、アクリル酸メチル・メタアクリル酸共重合体、メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸共重合体が挙げられる。
また、上記被膜形成物質をコーティングするに際し、通常使用されるコーティング剤、例えば可塑剤のほか、コーティング操作時の薬剤相互の付着防止のための各種添加剤を添加することによって被膜形成剤の性質を改良したり、コーティング操作をより容易にすることができる。
本発明の抗腫瘍剤又は腫瘍細胞増殖抑制剤が有効なガンは特に限定されるものではないが、中でも癌腫が特に挙げられ、具体的に頭頸部の癌(喉頭癌、咽頭癌、舌癌など)、肺癌、乳癌、肝臓癌、食道癌、胃癌、大腸癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌などが挙げられる。その他、白血病などの血液のガンにも有効であると考えられる。
本発明の抗腫瘍剤、腫瘍細胞増殖抑制剤あるいは免疫賦活剤の有効成分を配合させる食品の種類はいかなるものであってもよく、例えばパン、麺、シリアル、菓子、ビスケット、ホットケーキ、錠果等の穀粉や澱粉を主体とする食品、チョコレート、ゼリー、グミ、バター、マーガリン、ジャム、チーズ、ヨーグルト、アイスクリーム、乳飲料、ジュース、ドレッシング、ドリンク、健康食品などが挙げられる。β−グルコシルセラミド画分を食品に配合させる方法としては、各種食品に応じてその製造過程で適宜の段階で配合すればよい。
酵母菌体は Saccharomyces kluyveri NBRC10847株を用いた。酵母乾燥菌体20kgより、エタノール120リットルで70℃にて4時間、撹拌抽出し、濾過して得られた抽出液を減圧乾固した。得られた抽出物をシリカゲルカラム(富士シリシア化学(株)製、商品名:BW−820MH)にてクロロホルム−メタノールを用いて4回精製し、β−グルコシルセラミド画分19.9g得た。これは白色の固形油脂状であった。
移動相は、A液:クロロホルム,B液:メタノール−水(95:5;v/v)の2液を用いて、下記グラジエント溶媒系を設定した。
その結果、上記β−グルコシルセラミド画分においてβ−グルコシルセラミドの含量が95%以上であることが判った。
粉砕したトウモロコシ胚芽200kgより、エタノール1200リットルで70℃にて3時間撹拌抽出し、得られた抽出液を減圧乾固した。得られた抽出物を、シリカゲルカラム(富士シリシア化学(株)製、商品名:BW−820MH)にてクロロホルム−メタノールを用いて5回精製し、β−グルコシルセラミド画分を19.2g得た。これは白色の固形油脂状であった。
移動相は、A液:クロロホルム,B液:メタノール−水(95:5;v/v)の2液を用いて、下記グラジエント溶媒系を設定した。
その結果、上記β−グルコシルセラミド画分においてβ−グルコシルセラミドの含量が91.3%であることが判った。
上記のトウモロコシから得られたβ−グルコシルセラミド画分をマウスに経口にて投与して試験を行った。
1.実験動物、被検物質の調製及び群構成
4週齢のICR系マウス(SPF)(日本SLC(株))30匹を用いた。マウスは購入後、1週間の予備飼育の後、コントロール群(第1群、0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)投与)、トウモロコシβ−グルコシルセラミド20mg/日 投与群(第2群)、トウモロコシβ−グルコシルセラミド50mg/日 投与群(第3群)の3群に分け、各群10匹とした(下記表5参照)。
固形飼料(MF:オリエンタル酵母(株))と滅菌蒸留水をそれぞれ自由摂取とした。
腫瘍細胞株としてEhrlich腫瘍細胞株を用い、マウスの鼠径部皮下に2×106細胞/マウスとなるように移植した。腫瘍細胞移植日を0日とした。
β−グルコシルセラミド画分及び0.5% CMCは、腫瘍移植前1週間及び移植後2週間、1日1回、ゾンデを用いて経口投与した。腫瘍容積を腫瘍移植後6日間、11日目及び14日目に測定した。腫瘍移植後14日目にマウスを解剖して腫瘍を摘出した後、腫瘍重量を測定した。
コントロール群の体重変化に比べて、β-グルコシルセラミド摂取群の体重に有意な差は見られなかった。
腫瘍容積は、コントロール群の腫瘍容積増加に比べて、β-グルコシルセラミド(20 mg/マウス)群が11日目および14日目に腫瘍容積の抑制傾向を示したが、統計的に有意な差ではなかった。一方、β-グルコシルセラミド(50 mg/マウス)群は6日目、11日目および14日目の全ての測定時において、有意な腫瘍容積の抑制を示した。特に14日目において、対照群が2034±172 mm3を示したのに対し、β-グルコシルセラミド(50 mg/マウス)群は1060±130 mm3を示し、顕著な抑制作用であった(p<0.001)。
腫瘍重量(14日目)に関しては、対照群が1.86±0.22 gを示したのに対し、β-グルコシルセラミド(20 mg/マウス)群およびβ-グルコシルセラミド(50 mg/マウス)群はそれぞれ、1.39±0.24 gおよび0.91±0.14 gの重量を示した。β-グルコシルセラミド(20 mg/マウス)群の腫瘍重量は有意な抑制でなかったが、β-グルコシルセラミド(50 mg/マウス)群は有意な抑制を示した(p<0.01)。
試験14日目の結果を以下に示す。
腫瘍容積および腫瘍重量は群毎の平均値±標準誤差を算出した。また、コントロール群に対する各群の統計的有意を検定するため、等分散であることを確認した後、Fisher’s PLSD法である多重比較検定を行い群間の比較を行った。統計的有意差はp<0.05の場合を有意であるとした。
1.被験物質およびその調製方法
被験物質として、上記のトウモロコシから得られたβ−グルコシルセラミド画分を使用した。
β−グルコシルセラミド画分に0.5% CMCを加えて懸濁し超音波処理した後、β−グルコシルセラミドの濃度100 mg/ml(純度換算)の懸濁液を作製した。
一方、コントロールは0.5% CMCとした。
2.実験動物
4週齢の雄性BALB/c系マウス(SPF)(日本チャールスリバー(株))を7日間予備飼育の後、実験に供した。マウスは3匹/ケージとしてそれぞれ固形飼料(MF、オリエンタル酵母工業(株))と滅菌蒸留水を自由に与えた。
3.投与方法及び群構成
下記表7の群構成により、1群(コントロール群)には0.5% CMC を0.5ml/日/マウス、2群(試験群)にはβ−グルコシルセラミドの濃度100 mg/ml(純度換算)の懸濁液を0.5ml/日/マウス(すなわち、50mg(純度換算)/日/マウス)で、毎日、1日1回、マウス用経口ゾンデを用いて14日間、強制経口投与した。
上記14日間の投与後、翌日に、各群のマウスから脾臓を摘出し約5mlの氷冷したHanks液(大日本製薬(株))の入ったシャーレに移し、脂肪組織を取り除いた。この脾臓をつぶし、ピペッティングして均一な細胞浮遊液とし、ナイロンメッシュでろ過した。遠心管に移した細胞浮遊液を遠心し、氷冷したHanks液で洗浄した。洗浄後、細胞ペレットを10%FCS添加RPMI 1640培地(大日本製薬(株))に浮遊させ、細胞数を3×106個/mlに調整後、96穴培養プレート(住友ベークライト(株))に180μl分注した。
このプレートの各well(各n=3を使用)にLPS(リポポリサッカライド、3、30、300および3000 ng/ml、Sigma社)またはPBS(−)をそれぞれ20μl加えて72時間培養し、遠心後の培養上清をサイトカイン測定に供した。なお、サイトカインはマウスIL-2(Endogen社)およびIFN-γ(Endogen社)測定キットを用いて ELISA法にて測定した。
得られた各種データは群毎の平均値±標準誤差で示した。IFN-γ産生については、コントロール群(0.5% CMC投与群)に対する試験群の統計的有意を検定するためにt検定を行った。IL-2産生については、コントロール群(0.5% CMC投与群)に対する試験群、又はLPS無刺激群とLPS刺激群の統計的有意を検定するため、分散分析(ANOVA)を行った後、Fisher's PLSD法である多重比較検定を行い群間の比較を行った。統計的有意差はp<0.05の場合を有意であるとした。
6.試験結果
その結果、培養後の検体において、β-グルコシルセラミドが有意にIFN-γの産生を促進していることが示された。その促進効果を表すグラフを図1に示す。また、IFN-γの測定値(pg/ml)を以下の表8に示す。
β-グルコシルセラミドはIL-2を促進させる傾向も示した。LPS(0.003-3.0mg/ml)の刺激により、IL-2の産生はβ-グルコシルセラミドで有意に促進された。その促進効果を表すグラフを図2に示す。また、IL-2の測定値(pg/ml)を以下の表9に示す。
β-グルコシルセラミドにはそれ自身でサイトカイン産生を増強する作用と、細菌などの侵入によりサイトカインの産生が誘発されると、その産生を増強する作用を有すると考えられる。従って、β-グルコシルセラミドの免疫賦活効果により、細菌などの病原体が生体に侵入した場合においては、リンパ球などによるサイトカイン産生を増強し、病原体の増殖抑制に寄与すると考えられる。
[実施例1]
錠果及び錠剤の製造
卵殻カルシウム108g、ピロリン酸第二鉄2g、アスコルビン酸40g、微結晶セルロース40g、還元麦芽糖285g、β−グルコシルセラミド画分25gをミキサーによって常法により混和した後、打錠し、錠果及び錠剤を製造した。
[実施例2]
ビスケットの製造
小麦粉120g、β−グルコシルセラミド画分2.4g、砂糖35g、ショートニング15g、全卵粉1.5g、食塩1g、炭酸水素ナトリウム0.6g、炭酸アンモニウム0.75g、水20gを用いて、常法によりドウを作成し、成形、焙焼してビスケットを製造した。
パンの製造
小麦粉3kg、β−グルコシルセラミド画分3g、イースト60g、イーストフード3g、砂糖150g、食塩60g、ショートニング150g、脱脂粉乳60g、水2070gを用いて、常法によりドウを作成し、成形、焙焼してパンを製造した。
[実施例4]
中華麺の製造
準強力小麦粉100質量部に対して、1質量部のβ−グルコシルセラミド画分、34質量部の水、1質量部の食塩及び1質量部のかんぷんを加えたものを、12分間混捏した後、麺機にて数回圧延、成形して、中華麺の生麺帯、生麺線を得た。
[実施例5]
パン(ロールパン)の製造
以下の組成(単位:質量部)により常法に従って、ロールパンを製造した。
強力粉 80
薄力粉 20
β−グルコシルセラミド画分 0.5
ドライイースト 1
食塩 2
砂糖 8
無塩バター 8
卵 17
水 46
サプリメントの製造
以下の組成(単位:質量%)を使用して打錠し、錠剤であるサプリメントを製造した。
マルチトール 35.0
デキストリン 20.0
β−グルコシルセラミド画分 15.0
卵殻カルシウム 10.0
食物繊維 10.0
ビタミンミックス 5.0
ショ糖脂肪酸エステル 5.0
Claims (3)
- 植物又は真菌から抽出されるβ−グルコシルセラミド画分を有効成分として含有する経口摂取用の免疫賦活剤。
- β−グルコシルセラミド画分が、スフィンゴイド塩基部位として4-トランス,8-シス-スフィンガジエニンを含むβ−グルコシルセラミド、スフィンゴイド塩基部位として4-トランス,8-トランス-スフィンガジエニンを含むβ−グルコシルセラミド、スフィンゴイド塩基部位として8-シス-スフィンゲニンを含むβ−グルコシルセラミド、スフィンゴイド塩基部位として8-トランス-スフィンゲニンを含むβ−グルコシルセラミド、スフィンゴイド塩基部位として4-ヒドロキシ-8-シス-スフィンゲニンを含むβ−グルコシルセラミド、及びスフィンゴイド塩基部位として4-ヒドロキシ-8-トランス-スフィンゲニンを含むβ−グルコシルセラミドから選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1記載の経口摂取用の免疫賦活剤。
- β−グルコシルセラミド画分が、スフィンゴイド塩基部位として9-メチル-4-トランス,8-トランス-スフィンガジエニンを含むβ−グルコシルセラミド、及びスフィンゴイド塩基部位として4-トランス,8-トランス-スフィンガジエニンを含むβ−グルコシルセラミドから選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1記載の経口摂取用の免疫賦活剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005284739A JP4962754B2 (ja) | 2005-04-25 | 2005-09-29 | 抗腫瘍剤、腫瘍細胞増殖抑制剤、免疫賦活剤及び食品 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005127104 | 2005-04-25 | ||
JP2005127104 | 2005-04-25 | ||
JP2005284739A JP4962754B2 (ja) | 2005-04-25 | 2005-09-29 | 抗腫瘍剤、腫瘍細胞増殖抑制剤、免疫賦活剤及び食品 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2006328041A JP2006328041A (ja) | 2006-12-07 |
JP4962754B2 true JP4962754B2 (ja) | 2012-06-27 |
Family
ID=37550111
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005284739A Active JP4962754B2 (ja) | 2005-04-25 | 2005-09-29 | 抗腫瘍剤、腫瘍細胞増殖抑制剤、免疫賦活剤及び食品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4962754B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN106999508A (zh) * | 2014-10-01 | 2017-08-01 | 兴人生命科学株式会社 | 作为真菌感染疫苗的真菌葡萄糖神经酰胺 |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010229080A (ja) * | 2009-03-27 | 2010-10-14 | 株式会社岡安商店 | iNKT細胞活性化剤 |
JP2011173813A (ja) * | 2010-02-23 | 2011-09-08 | Obihiro Univ Of Agriculture & Veterinary Medicine | PPARα発現促進剤 |
JP5967754B2 (ja) * | 2011-05-02 | 2016-08-10 | 興人ライフサイエンス株式会社 | 酵母エキス抽出残渣の利用法 |
JP6261031B2 (ja) * | 2012-10-30 | 2018-01-17 | 興人ライフサイエンス株式会社 | トルラ酵母由来グルコシルセラミドの大腸癌抑制剤としての利用 |
JP6172700B2 (ja) * | 2012-10-30 | 2017-08-02 | 興人ライフサイエンス株式会社 | トルラ酵母由来グルコシルセラミドの線維芽細胞増殖促進剤としての利用 |
-
2005
- 2005-09-29 JP JP2005284739A patent/JP4962754B2/ja active Active
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN106999508A (zh) * | 2014-10-01 | 2017-08-01 | 兴人生命科学株式会社 | 作为真菌感染疫苗的真菌葡萄糖神经酰胺 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2006328041A (ja) | 2006-12-07 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR101705548B1 (ko) | 아피오스 추출물 또는 아피오스 발효 추출물을 유효성분으로 포함하는 면역증강용 조성물 | |
JP5001830B2 (ja) | 免疫賦活用組成物 | |
JPWO2016039356A1 (ja) | 抗炎症剤 | |
JPWO2006093267A1 (ja) | 免疫調節作用を有する発酵組成物 | |
KR20160056772A (ko) | 차가버섯, 상황버섯 및 꽃송이버섯의 복합버섯 균사체의 생산방법 | |
KR100887854B1 (ko) | 관절염의 예방제 또는 치료제 | |
JP2004307453A (ja) | 血管新生阻害剤及びその利用 | |
JP4962754B2 (ja) | 抗腫瘍剤、腫瘍細胞増殖抑制剤、免疫賦活剤及び食品 | |
Mallick et al. | Antitumor properties of a heteroglucan isolated from Astraeus hygrometricus on Dalton’s lymphoma bearing mouse | |
JP4776163B2 (ja) | 大腸ガン抑制剤及びそれを含む食品 | |
JP5095912B2 (ja) | 免疫増強剤 | |
JP4506079B2 (ja) | 血管新生阻害剤 | |
Wu et al. | Bioactive ingredients and medicinal values of Grifola frondosa (Maitake). Foods 2021; 10: 95 | |
JP4681801B2 (ja) | 血管新生阻害剤およびその製造方法 | |
KR102752140B1 (ko) | 청각 추출물 및 아라키돈산을 유효성분으로 포함하는 면역 증진용 식품 조성물 | |
Park et al. | Antimetastatic effect of glycoprotein isolated from rice bran on colon 26-M3. 1 cell line | |
KR101523140B1 (ko) | 길경 유래의 다당류를 유효성분으로 포함하는 수지상세포 성숙화 유도용 조성물 | |
JP4783550B2 (ja) | 大腸ガン抑制剤及びそれを含む食品 | |
KR102243712B1 (ko) | 청각 추출물 및 홍삼 추출물을 포함하는 선천성 면역 증진용 조성물 | |
KR101418745B1 (ko) | 락토바실러스 플랜타럼 시알엔비-22를 이용한 발효인삼의 추출물을 함유하는 아토피 피부염의 예방 또는 치료용 조성물 | |
Jaseera et al. | Microbial EPS as Immunomodulatory Agents | |
Santa et al. | Agaricus brasiliensis-enriched functional product promotes in mice increase in HDL levels and immunomodulate to Th1 CD4+ T subsets. A. brasiliensis functional product and biological benefits. | |
TWI838990B (zh) | 腸管免疫賦活劑、IgA産生促進劑及基因表現促進劑 | |
JP5761679B2 (ja) | パパイア発酵物を有効成分とする末梢血単核球細胞の活性調節用組成物 | |
JPWO2011108275A1 (ja) | イムノグロブリンa分泌促進剤 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20080926 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20111107 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120106 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20120305 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20120314 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 4962754 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150406 Year of fee payment: 3 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |