以下、実施形態に係るボタン式錠装置について説明する。
<1.ボタン式錠装置の適用対象>
まず、本ボタン式錠装置の適用対象となる錠付格納装置の全体構成について説明する。図1は錠付格納装置の全体構成を示す斜視図である。
この錠付格納装置10は、格納装置としてのキャビネット12と、ボタン式錠装置20とを備えている。
キャビネット12は、収納本体部14と、当該収納本体部14に対して開閉自在とされた開閉部材としての扉16a,16bと、引出部18とを備えている。より具体的には、収納本体部14の上半部に収納スペース14aが形成されると共に、収納本体部14の下半部に3つの収納スペース14b,14c,14dが形成されている。収納スペース14aの開口部には、両開きタイプの扉16a,16bが開閉自在に取付けられている。また、各収納スペース14b,14c,14dには、それぞれ引出部18が開閉自在、換言すれば、引出し及び押込自在に設けられている。
上記扉16a,16bを閉じた状態では、扉16a,16bの合せ目部分が重なり合って配設されるようになっており、一方(図1の右方)の扉16aを閉じた状態では、他方(図1の左方)の扉16bを開くことができない構成となっている。また、一方の扉16aには、操作部としての取っ手部17aと、ラッチ機構17bとが取付けられている。ラッチ機構17bは、扉16aに組込まれ、当該扉16aを閉状態に保つようにロックする機構である。このような機構としては、爪部を収納本体部14側に係脱自在に係合させるようにした周知機構を含む種々の構成を採用することができる。取っ手部17aは、扉16aの外面側に姿勢変更自在に取付けられている。この取っ手部17aの姿勢変更に連動して、上記ラッチ機構17bが扉16aを閉状態に保つようにロックし、或は、当該ロック状態を解除する。
そして、扉16a,16bを閉じることで、上記ラッチ機構17bがロック状態になって扉16a,16bが閉じた状態に保たれる。また、この状態で、取っ手部17aを引張るように解除操作することで、上記ラッチ機構17bのロック状態が解除され、扉16aを開くことができるようになる。また、扉16aを開くことで、扉16bも開くことができるようになる。つまり、取っ手部17aは、扉16a,16bのロック状態を解除させるための操作部として機能する。
また、引出部18は、上方に開口する筺状に形成されており、取っ手部19aと、操作レバー19bと、ラッチ機構19cとを有している。
ラッチ機構19cは、引出部18の前面側の部分に組込まれており、引出部18を閉じた状態に保つようにロックする機構である。このような機構としては、爪部を収納本体部14に係脱自在に係合させるようにした周知機構を含む種々の構成を採用することができる。
取っ手部19aは、引出部18を引出し容易にするために設けられた掴み用の部材であり、上記引出部18の前面に設けられている。この取っ手部19aの内側に、上記操作レバー19bが姿勢変更自在に取付けられている。そして、この操作レバー19bの姿勢変更に連動して、上記ラッチ機構19cが引出部18を閉状態に保つようにロックし、或は、当該ロック状態を解除する。つまり、本操作レバー19bは、引出部18のロック状態を解除させるための操作部として機能する。
そして、引出部18を閉じることで、上記ラッチ機構19cがロック状態になって該引出部18が閉じた状態に保たれる。また、この状態で、操作レバー19bを掴んで操作することで、ラッチ機構19cのロック状態が解除され、取っ手部19aを掴んで引出部18を引出せるようになる。
本ボタン式錠装置20は、上記のようなキャビネット12における扉16a,引出部18の外面に取付けられる。より具体的には、図1の2点鎖線で示すように、ボタン式錠装置20は、扉16aにおける取っ手部17aを覆う位置と、各引出部18における取っ手部19a及び操作レバー19bを覆う各位置に取付けられる。
ボタン式錠装置20は、キャビネット12に後付けされる構成であっても、当初から取付けられた構成であってもよい。また、ボタン式錠装置20は、キャビネット12に対して一体不可分に組込まれる構成であってもよい。
<2.ボタン式錠装置>
<2−1.ボタン式錠装置の全体構成>
ボタン式錠装置20の全体構成について説明する。図2はボタン式錠装置を示す分解斜視図であり、図3は可動部材が開可能位置に移動した状態におけるボタン式錠装置を示す概略斜視図であり、図4は可動部材が開不能位置に移動した状態におけるボタン式錠装置を示す概略斜視図である。
このボタン式錠装置20は、装置本体部22と、可動部材40と、ボタン式ロック機構部50とを備えている。
装置本体部22は、上記開閉部材としての扉16aや引出部18の前面に取付けられる部材であり、上記操作部としての取っ手部17a又は操作レバー19bを露出させる窓部25を有している。また、この装置本体部22は、上記可動部材40を開可能位置と開不能位置との間で移動自在に支持している。そして、可動部材40を開可能位置に移動させた状態では(図3参照)、窓部25から取っ手部17a又は操作レバー19bを露出させる一方、可動部材40を開不能位置に移動させた状態では(図4参照)、可動部材40で取っ手部17a又は操作レバー19bを操作不能に覆うようになっている。
より具体的には、装置本体部22は、板状部材24と、一対のガイドレール26とを有している。
板状部材24は、上記取っ手部17a及び操作レバー19bよりも大きな広がりを有する板状部材、ここでは、略方形板状部材に形成されている。また、この板状部材24には、取っ手部17a又は操作レバー19bを露出させる程度の大きさの窓部25、ここでは、板状部材24の一端部側部分に略方形状の窓部25が形成されている。本板状部材24は、当該窓部25を通じて、取っ手部17a又は操作レバー19bを露出させるようにして、扉16aや引出部18の前面に取付固定される。この板状部材24は、強力な接着剤や強力な粘着テープ、ネジ止、溶接等、容易に取外しできない態様で、扉16aや引出部18の前面に取付固定される。
また、この板状部材24のうち窓部25よりも一端部の縁部は他の部分よりも大きな厚みを持つ肉厚部24aに形成されている。この肉厚部24aは、可動部材40が板状部材24の一端部から抜出るのを防止する役割を有している。
また、板状部材24には、第1動作孔24b及び第2動作孔24cが形成されている。これらの第1動作孔24b及び第2動作孔24cは、後に詳述するように、ボタン式ロック機構部50を動作させるための構成として用いられる。
一対のガイドレール26は、上記板状部材24上で、可動部材40を開不能位置と開可能位置との間で移動自在に支持するガイド溝28を有している。より具体的には、ガイドレール26は、棒状部材に形成されており、板状部材24の両側部に当該縁部に沿って、ネジ止等で固定されている。また、一対のガイドレール26のうち互いに対向する側の面に、その長尺方向に沿って延びるガイド溝28が形成されている。各ガイド溝28は、可動部材40が開不能位置に移動する側の端部で閉塞しており、また、可動部材40が開可能位置に移動する側の端部で開放している。これにより、上記可動部材40を、各ガイド溝28に対してその開放端側より装着可能となり、また、閉塞端側からの抜け防止が図られている。
また、各ガイド溝28には、位置規制凹部28aと、抜止め凹部29とが形成されている。位置規制凹部28aは、可動部材40が開不能位置に移動した状態で、後述する抜止め片44がはまり込むように係合可能な位置に形成されている。また、抜止め凹部29は、可動部材40が開可能位置に移動した状態で、後述する抜止め片44がはまり込むように係合可能な位置に形成されている。
可動部材40は、上記装置本体部22に対して着脱自在に取付けられると共に、装置本体部22に取付けられた状態で、取っ手部17a又は操作レバー19bを開動作不能にする開不能位置(図4参照)と、取っ手部17a又は操作レバー19bを開動作可能にする開可能位置(図3及び図5参照)との間で移動自在とされている。
より具体的には、可動部材40は、上記一対のガイドレール26間に配設可能な、扁平な略筺状形状に形成されている。すなわち、一対のガイドレール26を結ぶ方向において、可動部材40は、一対のガイドレール26間寸法よりも僅かに小さい寸法を有している。また、一対のガイドレール26の延在方向において、可動部材40は、上記窓部25を露出及び閉塞可能な寸法、即ち、ガイドレール26の延在方向において、同方向における窓部25の寸法よりも大きく、かつ、同方向において板状部材24の寸法から窓部25の寸法を引いた寸法よりも小さくなっている。
また、可動部材40の両側外面の両端部には、それぞれ当該両側部の延在方向に沿ってガイド突部42が設けられている。各ガイド突部42は、上記ガイド溝28内に沿って移動可能な長尺形状を有している。また、各ガイド突部42の外面には、その延在方向に沿って溝部42gが形成されている。
そして、可動部材40の両側外面の各ガイド突部42を、一対のガイドレール26のガイド溝28内にその解放端部側から挿入することで、各ガイド突部42が一対のガイドレール26のガイド溝28に沿って移動自在に支持される。これにより、可動部材40が板状部材24の一主面上であって一対のガイドレール26間で、上記窓部25を閉塞することで当該窓部25を通じた取っ手部17a又は操作レバー19bの操作を不能にする開不能位置(図4参照)と、窓部25を開放することで取っ手部17a又は操作レバー19bに対する操作を可能にする開可能位置(図3参照)との間で移動自在に支持される。
また、可動部材40には、上記一対のガイドレール26のガイド溝28に向けて付勢されつつ突出する抜止め片44が設けられている(図2参照)。ここでは、可動部材40の両側外面の長手方向略中央部に、それぞれ抜止め片44が設けられている。
抜止め片44は、一端部が狭幅でかつ他端部が広幅な細長い形状に形成されている。そして、抜止め片44の広幅部分45をガイド溝28の解放端部側に向けた姿勢で、抜止め片44の狭幅部分が可動部材40の両側部分に回転自在に軸支されている。抜止め片44の狭幅部分が可動部材40の両側部分に軸支された状態では、抜止め片44の広幅部分45を可動部材40の両側外面から突出させた突出姿勢と、当該広幅部分45を可動部材40の両側外面側に退避させた退避姿勢との間で姿勢変更自在とされている。また、抜止め片44の軸支部分には、当該抜止め片44を突出方向に付勢する付勢手段として、図示省略のねじりコイルバネが取付けられている。
そして、可動部材40が開不能位置と開可能位置との間で移動する際、上記各抜止め片44はそれぞれ一対のガイドレール26のガイド溝28内を移動する。そして、可動部材40が開不能位置に移動した状態では、各抜止め片44は上記突出方向への付勢力により位置規制凹部28aにはまり込むように係合する。これにより、可動部材40が開不能位置に停止保持される。一方、可動部材40が開可能位置に移動した状態では、各抜止め片44はその突出方向への付勢力により上記抜止め凹部29にはまり込むように係合する。これにより、可動部材40が開可能位置に位置決め状に停止保持される。
ここで、上記位置規制凹部28aは、ガイド溝28の延在方向に沿って両端部側から略中央部に向けて徐々に深さ寸法が大きくなる略U字状の凹形状に形成されている。また、抜止め凹部29のうちガイド溝28の延在方向に沿ってその閉塞端側の部分は、その略中央部に向けて徐々に深くなる傾斜ガイド面に形成されている。一方、抜止め凹部29のうちガイド溝28の延在方向に沿ってその解放端側の部分は、ガイド溝28の延在方向に沿って略垂直に落込む抜止め面29bに形成されている。
また、抜止め片44の広幅部分45の端部は、該抜止め片44を突出させた状態で、ガイド溝28の延在方向に沿って略垂直となる当接面45aに形成されている。
そして、本抜止め片44が位置規制凹部28aにはまり込んだ状態で、可動部材40を移動させようとすると、抜止め片44は位置規制凹部28aの傾斜面に接触しつつ退避し、位置規制凹部28aから容易に離脱する。また、本抜止め片44が抜止め凹部29にはまり込んだ状態で、可動部材40をガイド溝の閉塞端側へ移動させようとすると、抜止め片44は傾斜ガイド面に接触しつつ退避し、抜止め凹部29から容易に離脱する。
一方、本抜止め片44が抜止め凹部29にはまり込んだ状態で、可動部材40をガイド溝28の開放端側へ移動させようとすると、抜止め片44の当接面45aが抜止め凹部29の抜止め面29bに当接し、それらの係合状態が維持される。これにより、可動部材40が開可能位置からガイド溝28の解放端側へ移動するのを規制している。
この可動部材40は、次の構成により、抜止め片44と抜止め凹部29との係合を解除して、装置本体部22から取外せるようになっている。
すなわち、本抜止め片44が抜止め凹部29にはまり込んだ状態で、抜止め片44のうちガイド溝28の閉塞端側の部分は、当該閉塞端側に向けて突出寸法が徐々に小さくなる離脱用傾斜面45bとなるように構成されている。そして、抜止め片44は、上記ガイドレール26に沿って前記閉塞端部側から離脱用傾斜面に解除操作力を受けることによって、退避可能に構成されている。
すなわち、取外し用の治具として、直線棒状部を有するものが準備される。そして、その直線棒状部をガイドレール26のガイド溝28の閉塞端側から斜めに挿入し、ガイド突部42の溝部42g内に挿入する。そして、直線棒状部をより深く挿入し、その先端部を抜止め片44の離脱用傾斜面45bに当接させて、強く押込むようにして解除操作力を加える。すると、当該解除操作力を受けて、抜止め片44は、ねじりコイルバネの付勢力に抗して退避する。これにより、抜止め片44と抜止め凹部29との係合が解除され、可動部材40はガイド溝28の開放端側へ移動可能になる。したがって、上記状態で、可動部材40をガイド溝28の開放端側へ移動させることで、当該可動部材40を装置本体部22から取外すことができる。
なお、本実施形態では、可動部材40は、開不能位置で操作部としての取っ手部17aや操作レバー19bを操作不能に覆い、開可能位置で操作部としての取っ手部17aや操作レバー19bを操作可能に露出させる態様で説明したが、必ずしも当該構成に限られない。例えば、可動部材40は、開不能位置でラッチ機構17b,19cの構成要素に当接してラッチ解除不能に規制し、開可能位置で当該規制を解除するものであってもよい。要するに、開不能位置で開閉部材としての扉16a,16bや引出部18の開動作を不能にでき、開可能位置でそれらの開動作を可能にできればよい。
ボタン式ロック機構部50は、押込操作自在な複数(ここでは10個)のボタン52を有しており、上記可動部材40に組込まれている。本ボタン式ロック機構部50は、ボタン52に対する押込操作が加えられない状態で、上記可動部材40を開不能位置にロックしている。そして、上記複数のボタン52のうちの所定の1つ又は複数のボタン52が押込操作されることで、可動部材40を開不能位置に移動させることができるアンロック状態になる。また、可動部材40が開不能位置から開可能位置に移動する迄に、押込操作された各ボタン52を復帰させるようになっている。
<2−2.ボタン式ロック機構部に係る構成>
ボタン式ロック機構部50についてより詳細に説明する。図5はボタン式ロック機構部を示す説明図であり、図6は図5のIV−IV線概略断面図である。
このボタン式ロック機構部50は、複数のボタン52と、ボタン維持プレート60と、ボタン維持プレート移動部材70と、ロックプレート80と、ロック部材90とを有している。ロックプレート80及びロック部材90は、所定の1つ又は複数の組合わせのボタン52の押動操作に応じて、ロック状態からアンロック状態に切り替るボタン式ロック切替機構として機能する。
各ボタン52は、可動部材40の前面から突出する突出位置から押込位置に向けて押込操作自在に配設されている。この各ボタン52には操作者の利便性のために一定の識別符号(例えば、0〜9等の数字やアルファベット等の文字)が割当てられている。その識別符号は、通常、ボタン52の表面等に表示されるが、ここでは省略されている。そして、操作者が予め定められた所定の1つ又は複数のボタン52を押込操作することで、本ボタン式ロック機構部50のロック状態が解除されるようになっている。
ボタン維持プレート60は、押込操作された各ボタン52を一旦押込状態に維持する部材である。また、ボタン維持プレート移動部材70は、可動部材40を開不能位置から開許容位置に向けて移動させる際に、ボタン維持プレート60を移動させることで、当該ボタン維持プレート60による各ボタン52の維持状態を解除させるようになっている。実際の動作状態では、各ボタン52は、本ボタン維持プレート60及びロックプレート80の両方によって押込状態に維持されるので、両方の維持状態が解除されたときに、各ボタン52は元の突出位置に復帰する。
ロックプレート80は、操作者が予め定められた所定の1つ又は複数のボタン52が押込操作されたときのみ、移動禁止位置から移動許容位置に向けて移動可能になる部材である。そして、ロックプレート80が移動許容位置に向けて移動することで、ロック部材90が非ロック姿勢に姿勢変更し、可動部材40が開不能位置から開可能位置に向けて移動可能になる。
<2−2a.ボタンとボタン維持プレートとロックプレートとの相互関係>
まず、複数のボタン52とボタン維持プレート60とロックプレート80との相互関係を中心に説明する。
図7、図8、図11〜図13は解除用として規定されたボタンに関する動作を示す説明図であり、図7は初期状態で1つのボタンとボタン維持プレートとロックプレートとの相互関係を示しており、図8は図7の状態を上方から示しており、図11はボタンを押込んだ状態を示しており、図12はロックプレートを移動許容位置へ移動させた状態を示しており、図13はボタン維持プレートをボタン解除位置へ移動させた状態を示している。また、図9及び図10はボタンを回転させる様子を示す説明図である。また、図14及び図15は解除用として規定されないボタンに関する動作を示す説明図であり、図14は初期状態を示しており、図15はボタンを押込んだ状態を示している。
図5〜図15に示すように、上記可動部材40は、底面側が開口するケーシング41を有しており、そのケーシング41の前面部に各ボタン52に対応するボタン取付孔41hが形成されている。各ボタン52は、当該ボタン取付孔41hで突出位置と押込位置との間で移動自在に設けられている。
ボタン52は、略短円柱状のボタン本体部53と、そのボタン本体部53の裏面側から突出するボタン垂下部54とを有している。本ボタン52は、上記ケーシング41に押込操作自在かつ回転自在に支持されている。ボタン本体部53の基端側周縁部には外方に張出す鍔状の鍔状突出部53aが形成されている。鍔状突出部53aの外周面は、ボタン本体部53の先端側に向けて順次拡開するテーパ状ガイド面53gに形成されている。ボタン垂下部54は、ロックプレート規制部55とボタン回止規制部56とが柱状に連設された構成とされている。ボタン52の押込方向と略直交する面において、ロックプレート規制部55の断面形状は円の一部をその弦に沿って切除した形状を有しており、同面においてボタン回止規制部56は同じく円の一部をその弦に沿って切除した形状を有している。ロックプレート規制部55の切除部分55aとボタン回止規制部56の切除部分56aとは、ボタン52の中心軸を中心にして半回転(180゜)回転させた位置関係にある(図8参照)。なお、切除部分55a,56aは形成後に切除された部分だけでなく、金型成型時に切除状に形成された凹部を含む。上記ロックプレート規制部55の切除部分55aの位置は、後述するように、本ボタン式ロック機構部50のロックを解除するためのボタン52の1つ又は複数の組合わせを規定しており、つまり、本各ボタン52は、その各回転姿勢に応じてロック状態解除用か否かを規定する。
また、可動部材40の底面側で、ボタン52に対向する位置に回転自在かつ上記ボタン52の押込操作方向に沿って移動自在にボタン受部57が設けられている。ボタン受部57は、ボタン回止規制部56の外周部形状に対応するボタン回止凹部57aを有している。上記ボタン回止規制部56はボタン回止凹部57aにボタン52の押込方向に沿って移動自在でかつ回り止状態に保持されるようになっている。また、ボタン回止凹部57aの底部にバネ固定穴57bが形成されている。そして、ボタン52とボタン受部57とを離反方向に付勢してボタン52を突出位置に向けて付勢するボタン付勢部材としてのコイルバネ58が上記バネ固定穴56hと本バネ固定穴57bとの間に圧縮介在配置される。
また、ボタン受部57のうちボタン52とは反対側の部分の中央部にボタン52とは反対側に向けて突出する押込部57cが形成されると共に、当該反対側の部分であって中央部から離れた位置に受部側回止部として回止ピン57dが形成されている。ここでは、上記押込部57cを挟込む2箇所に回止ピン57dが形成されている。
また、この各ボタン受部57をボタン52の反対側から支持する位置に、可動部材40の底面に設けられたベースプレート47が配設されており、このベースプレート47に上記押込部57cを挿入可能な嵌込孔部47cが形成されると共に、回止ピン57dと係合して回止めする嵌込孔部47cが形成されている。そして、各押込部57c及び回止ピン57dを嵌込孔部47c,47dに嵌め込んだ状態で、ボタン受部57がベースプレート47の内面側で回り止状態に支持されている。
また、この状態で、可動部材40の裏面側から、人手で又は所定の治具を用いて押込部57cを押込むと(図9参照)、回止ピン57dと嵌込孔部47dとが離れてそれらの係合が解除離脱される。これにより、ボタン受部57を上記ボタン52と共にボタン52の中心軸周りに回転させることができる。例えば、上記押込部57cを押込んだ状態で、ボタン52の突出部分を摘んで回転させることができる。これにより、上記ロックプレート規制部55の切除部分55aの位置を、ボタン52の中心軸周りに半回転させた位置に配設することができる(図14参照)。
なお、回止ピン57d及び嵌込孔部47dの形成位置は上記例に限らず、ボタン受部57の中心軸周りの回転対称位置(本実施形態では好ましくは180゜回転対称位置)に3箇所以上設けられていてもよく、また、多数の凸部が歯車状に形成されていてもよい。また、ボタン受部57側に孔部又は凹部が形成され、ベースプレート47側に凸部が形成されていてもよい。要するに、ボタン受部57とベースプレート47とが接触した状態で係合してボタン受部57の回止めが図られ、ボタン受部57とベースプレート47とが離反した状態で係合状態が解除されボタン受部57の回転可能になる構成であればよい。
このようにロックプレート規制部55の切除部分55aの位置を変更することで、本ボタン式ロック機構部50のロックを解除するためのボタン52の1つ又は複数の組合わせ規定を変更することができる。ここでは、ロックプレート規制部55の切除部分55aをロックプレート80の移動禁止位置側に向けた姿勢とされたボタン52(図7〜図13参照)が解除用として規定される。また、ロックプレート規制部55の切除部分55aをロックプレート80の移動許容位置側に向けた姿勢とされたボタン(図14及び図15参照)が非解除用として規定される。そして、解除用として規定されたボタン52だけを押込操作することによって後述するロックプレート80が移動許容位置に向けて移動可能になる。
ボタン維持プレート60は、ケーシング41内に収って所定範囲で移動可能な板状に形成されており(図5及び図6参照)、ボタン押込状態維持位置(図5の位置)と、ボタン解除位置(図5よりも右方に移動した状態、図13参照)との間で移動自在に配設されている。また、このボタン維持プレート60は、ボタン維持プレート60の一側部とケーシング41内面との間に圧縮介在するボタン維持プレート付勢部材としてのコイルバネ61によってボタン押込状態維持位置に向けて付勢されている(図5参照)。
このボタン維持プレート60は、ボタン押込状態維持位置で各ボタン52を押込位置に維持すると共に、ボタン解除位置で各ボタン52の維持状態を解除するように構成されている。より具体的には、ボタン維持プレート60のうち各ボタン52に対応する位置に遊挿孔62が形成されている。そして、ボタン維持プレート60がボタン押込状態維持位置にある状態でもボタン解除位置にある状態でも、各ボタン52は当該各遊挿孔62を通って移動自在とされている(図11〜図13参照)。
また、各遊挿孔62に対応してボタン維持バネ片64が設けられている。ボタン維持バネ片64は、各遊挿孔62の周縁部からボタン52の突出方向に向けて立上がると共にその先端部からボタン52の押込方向に向けて遊挿孔62の中央部に向けて傾斜する板バネに構成されている。そして、ボタン維持プレート60がボタン押込状態維持位置にある状態で、ボタン52を押込操作すると、ボタン52の鍔状突出部53aのテーパ状ガイド面53gがボタン維持バネ片64の先端部に当接してその先端部を遊挿孔62の外周側に弾性変形させる。ボタン52をさらに押込むと、ボタン維持バネ片64の先端部が鍔状突出部53aを乗越えるようにして原形に弾性復帰する。すると、ボタン維持バネ片64の先端部が鍔状突出部53aの突出方向側の面に当接して、ボタン52を押込位置に維持する(図11参照)。また、この状態で、ボタン維持プレート60をボタン解除位置に移動させると、つまり、図7の状態から右方向に移動させると、ボタン維持バネ片64の先端部が鍔状突出部53aから外周側へ外れた位置に移動し、ボタン52の維持を解除する(図13参照)。
ロックプレート80は、ケーシング41内に収って所定範囲で移動可能な板状に形成されており(図5及び図6参照)、移動禁止位置(図5の位置)と移動許容位置(図5の位置から右方へ移動した状態、図12及び図13参照)との間で移動自在に配設されている。また、このロックプレート80は、その一側部とケーシング41内面との間に圧縮介在するロックプレート付勢部材としてのコイルバネ81によって移動禁止位置に向けて付勢されている。
このロックプレート80は、上記移動禁止位置でロック部材90の姿勢変更を規制することで可動部材40を開不能位置に維持すると共に、上記移動許容位置でロック部材90の姿勢変更を許容することで可動部材40が開不能位置から開可能位置に向けて移動可能にする。このロックプレート80がロック部材90の姿勢変更を規制し又姿勢変更を許容する構成については後に詳述する。
また、ロックプレート80は、上記各ボタン52の押込操作に応じて上記移動禁止位置から移動許容位置に向けて移動可能になり、移動許容位置で各ボタン52を押込状態に維持可能に構成されている。より具体的には、ロックプレート80のうち各ボタン52に対応する位置に規制孔82が形成されている。各規制孔82は、次の条件を満たす大きさ及び形状に形成されている。すなわち、解除用として規定されたボタン52に関しては、ボタン52が突出位置にある状態で、規制孔82の周縁部がボタン回止規制部56に当接してロックプレート80が移動禁止位置から移動許容位置に移動するのが規制される(図7参照)。また、ボタン52が押込位置にある状態で、規制孔82の周縁部がロックプレート規制部55の切除部分55aに入り込むようにして、ロックプレート80が移動禁止位置から移動許容位置に移動するのを許容する(図11〜図13参照)。一方、非解除用として規定されたボタン52に関しては、ボタン52が突出位置にある状態で、規制孔82の周縁部がボタン回止規制部56の切除部分56aに入り込むようにしてロックプレート80が移動禁止位置から移動許容位置に移動するのを許容する(図14参照)。また、ボタン52が押込位置にある状態では、規制孔82の周縁部がロックプレート規制部55に当接して、ロックプレート80が移動禁止位置から移動許容位置に移動するのを規制する(図15参照)。従って、解除用として規制されたボタン52だけが押込操作された状態で、ロックプレート80は移動禁止位置から移動許容位置に向けて移動可能になる。
また、このロックプレート80は、上記移動許容位置では、規制孔82の周縁部がロックプレート規制部55の切除部分55aに入り込むようにして、ボタン回止規制部56が規制孔82の周縁部に当接する。これにより、各ボタン52を押込状態に維持するようになっている(図12参照)。そして、移動禁止位置に移動することで、前記当接による維持状態が解除され、ボタン52は突出位置に復帰できるようになる。
なお、可動部材40のうち上記コイルバネ61,81とは反対側の側方位置には、スイッチ部49が押込自在に配設されている。スイッチ部49の一端部(図5の上部)の内部はロックプレート80から側方に向けて延びる延設片81Pに当接しており、スイッチ部49の他端部(図5の下部)の内部はボタン維持プレート60から側方に向けて延びる延設片61Pに当接している。そして、スイッチ部49の一端部(図5の上部)を押込むことで、コイルバネ81の付勢力に抗してロックプレート80を移動禁止位置から移動許容位置に移動させることができ、スイッチ部49の他端部(図5の下部)を押込むことで、コイルバネ61の付勢力に抗してボタン維持プレート60をボタン押込状態維持位置からボタン解除位置に移動させることができるようになっている。なお、ボタン維持プレート60及びロックプレート80は、それぞれ別々のボタンその他の押込機構によって移動する構成であってもよい。
<2−2b.ボタン維持プレート移動部材>
ボタン維持プレート移動部材70について説明する。図16はボタン維持プレート及びロック部材を示す概略平面図であり、図17はボタン維持プレートの動作を示す説明図である。
図5、図6、図16及び図17に示すように、ボタン維持プレート移動部材70は、可動部材40を開不能位置から開可能位置に向けて移動させるのに伴いボタン維持プレート60をボタン解除位置に向けて移動させる部材である。より具体的には、ボタン維持プレート60は、ベースプレート47の内面側に取付けられた長尺状の部材である。すなわち、ベースプレート47の内面側に棒状の支持軸部78が支持されている。その支持軸部78の一端部に、ボタン維持プレート移動部材70の一端部が揺動自在に支持されている。ボタン維持プレート移動部材70は、長尺状の本体部71のうちベースプレート47側の側部に略三角状に隆起する摺接凸部72が形成されると共に、その本体部71のうちボタン維持プレート60側の側部に当該ボタン維持プレート60側に突出するプレート作動片73が設けられた構成とされている。
そして、摺接凸部72は、ベースプレート47に形成された孔部47aを通じて可動部材40の裏面側に突出及び退避自在とされている。また、ベースプレート47に形成された孔部47aは、可動部材40を開不能位置に移動させた状態で、装置本体部22の板状部材24の第1動作孔24bと重なり合う位置に配設される。また、可動部材40を開可能位置に移動させた状態では、孔部47aは第1動作孔24bから外れた位置で板状部材24に面する位置に配設される。
また、プレート作動片73は、ロックプレート80に形成された切欠部80hを貫通してボタン維持プレート60に形成された動作受孔部60hに嵌め込まれている。
そして、可動部材40が開不能位置にある状態では、摺接凸部72は、ベースプレート47に形成された孔部47a及び板状部材24の第1動作孔24b内に突出した状態であり、プレート作動片73は、ボタン押込状態維持位置にあるボタン維持プレート60の動作受孔部60hに嵌め込まれた状態となっている(図17の実線参照)。
この状態から可動部材40を開可能位置に移動させると、摺接凸部72が第1動作孔24bから脱し板状部材24の主面に摺接し、ボタン維持プレート移動部材70が前記支持軸部78回りに姿勢変更する(図17の2点鎖線参照)。これにより、プレート作動片73が動作受孔部60hの周縁部に当接してボタン維持プレート60をボタン解除位置に向けて移動させる。
また、可動部材40を開不能位置に移動させると、コイルバネ61の付勢力によりボタン維持プレート60がボタン押込状態維持位置に復帰移動し、これに合わせて、ボタン維持プレート移動部材70も元の姿勢に戻る。
<2−2c.ロック部材>
ロック部材90について説明する。図18〜図21はロック部材の動作を示す図であり、図18はロック部材がロック姿勢から非ロック姿勢に姿勢変更する動作を、図19は同動作をロック部材の先端側から見た状態を、図20及び図21は非ロック姿勢に姿勢変更したロック部材とその移動を規制する部材との関係を、それぞれ示している。
図5、図6、図16、図18〜図21に示すように、ロック部材90は、ロック姿勢と非ロック姿勢との間で姿勢変更自在であり、非ロック姿勢に姿勢変更した後の状態で、ロックプレート80が移動許容位置から移動禁止位置に向けて移動するのを許容するようになっている。ここで、ロック姿勢は、ロックプレート80が移動禁止位置にある状態で装置本体部22に係合して可動部材40の移動を禁止する姿勢であり、非ロック姿勢はロックプレート80が移動許容位置にある状態で装置本体部22との係合を解除して可動部材40の移動を許容する姿勢である。
より具体的には、ロック部材90は、ベースプレート47の内面側に取付けられた長尺状の部材である。すなわち、上記ベースプレート47の内面側に支持された上記支持軸部78の他端部に、ロック部材90の他端部がロック姿勢(図18の実線参照)と非ロック姿勢(図18の2点鎖線参照)との間で揺動自在に支持されている。この支持軸部78の他端部は、このロック部材90の軸挿通孔に遊びを持たせた状態で挿通されており、従って、ロック部材90は支持軸部78に対して所定範囲内で若干傾くことができるようになっている。また、支持軸部78には、ロック部材90が支持軸部78に対して略直交姿勢となるように付勢するロック部材付勢部材としてコイルバネ79が装着されている。これにより、通常状態では、ロック部材90が支持軸部78に対して略直交する姿勢(第1姿勢、図16参照)となっており、コイルバネ79に抗する力を作用させることでロック部材90が支持軸部78に対して傾く姿勢(第2姿勢、図19及び図20参照)になるようになっている。
ロック部材90は、長尺状のロック部材本体部91と、前記ロック部材本体部91のうちベースプレート47側の側部に突出するロック部材摺接凸部92と、前記ロック部材本体部91のうちロックプレート80側の側部に突出するロック当接部93とを有している。
ロック部材摺接凸部92は、中心角略90゜の扇片形状に形成されており、ベースプレート47に形成された孔部47bを通じて可動部材40の裏面側に突出及び退避自在とされている。また、ベースプレート47に形成された孔部47bは、可動部材40を開不能位置に移動させた状態で、装置本体部22の板状部材24の第2動作孔24cと重なり合う位置に配設される。また、可動部材40を開可能位置に移動させた状態では、孔部47bは第2動作孔24cから外れた位置で板状部材24に面する位置に配設される。
また、ロック当接部93は、ロック部材90がロック姿勢にある状態で、ロックプレート80の裏面に対向可能な程度の突出寸法に形成されている。
また、ベースプレート47には、上記ロック部材90がロック姿勢から非ロック姿勢に姿勢変更する際に、前記略直交姿勢(第1姿勢)から傾き姿勢(第2姿勢)に向けて姿勢変更する案内部として、バネ状案内板部48が設けられている。バネ状案内板部48は、バネ性を有する帯状部材であり、ベースプレート47から離反する方向に傾斜する傾斜片48aを有している。傾斜片48aは、ロック部材90の長尺方向と略直交する姿勢で、第1姿勢のロック部材90の先端部と交差する位置に配設されている。また、傾斜片48aは、第1姿勢にあるロック部材90の先端部から第2姿勢にあるロック部材90の先端部に向けて、ロック部材90から順次遠ざかるように傾斜している(図19参照)。上記ロック部材90の先端部は、本傾斜片48aとベースプレート47との間に配設されている。そして、ロック部材90がロック姿勢から非ロック姿勢に姿勢変更する際に、ロック部材90の先端部が傾斜片48aの下面に案内されて、当該ロック部材90が第1姿勢から第2姿勢に姿勢変更するようになっている。また、ロック部材90がロック姿勢から非ロック姿勢に姿勢変更すると、傾斜片48aによる案内から解除されて、コイルバネ79の付勢力により第1姿勢に戻るようになっている。
また、上記ロックプレート80には、姿勢変更許容孔部86が形成されている。姿勢変更許容孔部86は、孔部86aと長孔部86bとが略L字状に連設された孔部である。
孔部86aは、ロックプレート80が移動許容位置にある状態で、第1姿勢であるロック部材90のロック当接部93に対向する位置に形成されている。
また、長孔部86bは、ロックプレート80が移動許容位置及び移動禁止位置にある状態で第2姿勢であるロック部材90のロック当接部93に対向する位置に形成されており、前記孔部86aに隣設してロックプレート80の移動方向に沿って長い長孔に形成されている。
そして、ロック部材90が第1姿勢にある状態で、ロックプレート80が移動禁止位置にあると、ロック当接部93は孔部86aの側方位置でロックプレート80に当接して非ロック姿勢に姿勢変更するのが規制される(図16の一点鎖線参照、図18の実線参照)。また、同第1姿勢で、ロックプレート80が移動許容位置にあると、ロック当接部93は孔部86a内に入り込むようにして当該ロックプレート80と非当接になる(図16の2点鎖線参照)。これにより、ロック部材90は非ロック姿勢に姿勢変更できるようになる(図18の2点鎖線参照)。そして、ロック部材90がロック姿勢から非ロック姿勢に姿勢変更する際、上記バネ状案内板部48により、ロック部材90は第1姿勢から第2姿勢に姿勢変更され、ロック当接部93は、孔部86aから長孔部86bに入り込むようになる(図20参照)。そして、ロック部材90が第2姿勢である状態では、ロック当接部93は長孔部86b内に入り込み移動禁止位置及び移動許容位置のいずれにあるロックプレート80に対しても非当接になる。これにより、ロックプレート80は、ロック部材90を非ロック姿勢にしたまま、移動許容位置から移動禁止位置に復帰移動することができる。そして、ロックプレート80が移動禁止位置に復帰移動することで、ロックプレート80による各ボタン52の押込状態維持が解除され、各ボタン52は突出位置に復帰することができる。
<2−2d.ボタン式錠装置の動作>
ボタン式錠装置20の一連の動作について説明する。
まず、初期状態では、全てのボタン52が突出位置にあり、ボタン維持プレート60はボタン押込状態維持位置にあり、ロックプレート80は移動禁止位置にある(図5〜図8、図14参照)。また、ボタン維持プレート移動部材70は、ボタン維持プレート60をボタン押込状態維持位置に保つ位置にある(図17の実線参照)。さらに、ロック部材90は第1姿勢でロック姿勢にあり、移動禁止位置にあるロックプレート80により非ロック姿勢への姿勢変更を規制されている(図16の一点鎖線、図18の実線参照)。
この状態で、図11に示すように、解除用として規定されたボタン52だけを押込操作する。すると、押込操作されたボタン52だけがボタン維持プレート60によって押込維持に維持される。
なお、誤ったボタン52を押込んでしまったような場合には、スイッチ部49の他端部を押込んで、ボタン維持プレート60をボタン解除位置に移動させると、全てのボタン52が突出位置に復帰し、初期状態にリセットされる。
解除用として規定されたボタン52だけを押込操作した状態で、スイッチ部49の一端部を押込むと、ロックプレート80は移動禁止位置から移動許容位置に移動する(図12参照)。この際、仮に、解除用として規定されたボタン52が押込操作されていないと、そのボタン52のボタン回止規制部56がロックプレート80の規制孔82の周縁部に当接するので、ロックプレート80を移動許容位置に移動させることはできない(図9参照)。また、仮に、非解除用として規定されたボタン52が押込操作されていると、そのボタン52のロックプレート規制部55がロックプレート80の規制孔82の周縁部に当接するので、ロックプレート80を移動許容位置に移動させることはできない(図15参照)。従って、解除用として規定されたボタン52だけを押込操作した状態で、ロックプレート80を移動禁止位置から移動許容位置に移動させることができる。
このようにロックプレート80が移動許容位置に移動すると、ロック部材90のロック姿勢から非ロック姿勢への姿勢変更が許容される。これにより、可動部材40を開不能位置から前記開可能位置に向けて移動させることができる。
そして、スイッチ部49の一端部を押込んだ状態で、可動部材40を開不能位置から前記可能位置に向けて移動させるのに伴い、ボタン維持プレート移動部材70がボタン維持プレート60をボタン解除位置に向けて移動させる(図13、図17の2点鎖線参照)。これにより、ボタン維持プレート60によるボタン52の押込状態の維持が解除される。なお、ボタン維持プレート60がボタン解除位置に移動しただけの状態では、ロックプレート80によってボタン52は押込状態で維持されているので、ボタン52は突出位置に復帰しない。
また、スイッチ部49の一端部を押込んだ状態で、可動部材40を開不能位置から前記可能位置に向けて移動させるのに伴い、ロック部材90がロック姿勢から非ロック姿勢へ姿勢変更すると、ロック部材90は第1姿勢から第2姿勢に姿勢変更し、ロック当接部93は長孔部86b内に入り込む。これにより、ロック部材90を非ロック姿勢に保ったままで、ロックプレート80は移動禁止位置に復帰移動可能になる。
そして、可動部材40が開可能位置に達した状態で、スイッチ部49の一端部の押込を解除すると、コイルバネ61の付勢力によりロックプレート80が移動禁止位置に復帰移動する。すると、ロックプレート80によるボタン52の押込状態の維持が解除される。これにより、各ボタン52はコイルバネ58の付勢力により突出位置に復帰する。
この後、可動部材40を開不能位置に移動させると、ボタン維持プレート移動部材70がボタン維持プレート60をボタン解除位置に向けて移動させる力が解除される。そして、コイルバネ61の付勢力によってボタン維持プレート60がボタン押込状態維持位置に復帰移動し、上記初期状態に戻る。
以上のように構成されたボタン式錠装置によると、押込操作自在な複数のボタン52を有し、これらの複数のボタン52のうち所定の一又は複数のボタン52が押込操作されることで可動部材40を開不能位置にロックした状態から開可能位置に移動可能な状態になると共に、可動部材40が開不能位置から開可能位置に移動する迄に押込み操作されたボタンを復帰させるボタン式ロック機構部50を備えているため、可動部材40を開可能位置に移動させるとボタンが突出位置に復帰する。より具体的には、ロック部材90が非ロック姿勢に姿勢変更することで、可動部材40は開可能位置に移動できるようになる。そして、ロック部材90が非ロック姿勢に姿勢変更した後の状態で、ロックプレート80が移動禁止位置に向けて復帰移動するのを許容するので、各ボタン52は突出位置に復帰できる。従って、機械式のボタン式錠装置20において、可動部材40が開可能位置にある状態で、アンロック状態にするためのボタン52を他人に容易に知られないようにすることができる。また、可動部材40を開可能位置に移動させることで、各ボタン52は突出位置に復帰するため、各ボタン52のリセットし忘れも防止することができる。
また、ロックプレート80を移動禁止位置に向けて付勢するコイルバネ81と、ロックプレート80を移動禁止位置から移動許容位置に向けて移動させるスイッチ部49を備えているため、当該スイッチ部49を押すことで、可動部材40を移動させることができると共委、可動部材40を開可能位置に移動させた状態で、スイッチ部49を離すと、ロックプレート80が移動禁止位置に移動し、ボタン52を復帰させることができる。
また、このボタン式錠装置20は、各ボタン受部57の中心部に押込部57cが形成されると共に、その押込部57cの周囲に受部側回止部として回止ピン57dが形成され、ベースプレート47に押込部57cを挿入可能な嵌込孔部47cが形成されると共に、回止ピン57dと係合して回止めする嵌込孔部47cが形成されている。そして、上記押込部57cを押込むことで、回止ピン57dと嵌込孔部47cとの係合が解除され、ボタン受部57がボタン52と共に回転可能になる。そして、この状態で、例えば、ボタン本体部53を掴んで回転させることができる。このため、特別な治具を用いることなく、容易にボタン52を回転させて、ロック状態解除用か否かを変更することができる。
もっとも、特別な治具を用いてボタン52の回転が可能な構成が付加されていても、上記メリットを奏することができる。
なお、本構成は、本実施形態に係るボタン式錠装置20に限らず、複数のボタン52のうち所定の一又は複数のボタンを押込操作することでロック状態からアンロック状態になるボタン式錠装置において、そのボタン52の回転姿勢に応じてロック状態解除用か否かが規定される全てのタイプに適用し得る。