以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1に、本発明における角膜内皮撮影装置の一実施形態としての装置光学系10を示す。装置光学系10は、被検眼Eの前眼部を観察する観察光学系12を挟んで、一方の側に撮像照明光学系14および位置検出光学系16が設けられ、他方の側に位置検出照明光学系18および撮像光学系20が設けられた構造とされている。なお、特に本実施形態においては、撮像照明光学系14および位置検出照明光学系18を含んで、照明光学系が構成されている。
観察光学系12は、被検眼Eに近い位置から順にハーフミラー22、対物レンズ24、ハーフミラー26、コールドミラー27、および光電素子としてのCCD28が光軸O1上に設けられて構成されている。また、被検眼Eの前方には、複数(本実施形態においては、2つ)の観察用光源30,30が配設されている。観察用光源30,30は、赤外光束を発する例えば赤外LEDなどが用いられる。そして、コールドミラー27は、赤外光を透過せしめる一方、可視光を反射するようにされており、観察用光源30,30から発せられて被検眼Eの前眼部で反射された反射光束が、対物レンズ24およびコールドミラー27を通して、CCD28上で結像されるようになっている。
撮像照明光学系14は、被検眼Eに近い位置から順に投影レンズ32、コールドミラー34、スリット36、集光レンズ38、撮像用光源40が設けられて構成されている。撮像用光源40は可視光束を発する例えばLED等が用いられる。コールドミラー34は、赤外光を透過せしめる一方、可視光を反射するようにされている。そして、撮像用光源40から発せられた光束は、集光レンズ38およびスリット36を通してスリット光束とされて、コールドミラー34により反射された後に投影レンズ32を通して、角膜Cに対して斜め方向から照射されるようになっている。
位置検出光学系16は、その光軸の一部が撮像照明光学系14の光軸と一致せしめられており、被検眼Eに近い位置から順に投影レンズ32、コールドミラー34、ラインセンサ44が設けられて構成されている。そして、後述する観察用光源54から照射されて角膜Cで反射された光束が、投影レンズ32、コールドミラー34を通して、ラインセンサ44上に結像されるようになっている。
一方、位置検出照明光学系18は、被検眼Eに近い位置から順に対物レンズ46、コールドミラー48、集光レンズ52、および位置検出用光源としての観察用光源54が設けられて構成されている。観察用光源54は、例えば赤外LEDなどの赤外光源が好適に採用される。そして、観察用光源54から発せられた赤外光束が、角膜Cに対して斜めから照射されるようになっている。なお、観察用光源54は、例えばハロゲンランプや可視光LEDなどの可視光源と赤外フィルタを組み合わせることによって構成しても良い。但し、観察用光源54は、必ずしも赤外光源とされる必要は無く、ハロゲンランプや可視光LEDなどの可視光源を用いても良い。可視光源を用いる場合には、その照度は撮像用光源40の照度よりも小さくされることが好ましい。これにより、アライメント等、観察用光源54による光束を照射せしめる際の被検者の負担を軽減することが出来る。
撮像光学系20は、その光軸の一部が位置検出照明光学系18の光軸と一致せしめられており、被検眼Eに近い位置から順に対物レンズ46、コールドミラー48、スリット56、変倍レンズ58、合焦レンズ60、コールドミラー27、CCD28が設けられて構成されている。そして、撮像用光源40から照射されて角膜Cで反射された光束が、対物レンズ46を介してコールドミラー48で反射された後に、スリット56によって平行光束とされて、変倍レンズ58、合焦レンズ60を介して、コールドミラー27で反射されてCCD28上に結像されるようになっている。
また、観察光学系12上に設けられるハーフミラー22は、固視標光学系64、アライメント光学系66の一部を構成している。
固指標光学系64は、被検眼Eに近い位置から順にハーフミラー22、投影レンズ68、ハーフミラー70、ピンホール板72、固視標光源74が設けられて構成されている。固視標光源74は例えばLEDなどの可視光を発する光源であり、固視標光源74から発せられた光束は、ピンホール板72、ハーフミラー70を透過した後、投影レンズ68によって平行光束とされて、ハーフミラー22によって反射されて被検眼Eに照射される。
アライメント光学系66は、被検眼Eに近い位置から順にハーフミラー22、投影レンズ68、ハーフミラー70、絞り76、ピンホール板78、集光レンズ80、アライメント光源82が設けられて構成されている。アライメント光源82からは赤外光が発せられるようになっており、かかる赤外光は集光レンズ80により集光されてピンホール板78を通過し、絞り76に導かれる。そして、絞り76を通過した光はハーフミラー70に反射されて、投影レンズ68によって平行光束とされた後に、ハーフミラー22によって反射されて被検眼Eに照射される。
また、観察光学系12上に設けられたハーフミラー26は、アライメント検出光学系84の一部を構成している。
アライメント検出光学系84は、被検眼Eに近い位置から順にハーフミラー26、位置検出可能なアライメント検出センサ88が設けられて構成されている。そして、アライメント光源82から照射されて、角膜Cで反射された光束が、ハーフミラー26で反射されて、アライメント検出センサ88に導かれるようになっている。
このような構造とされた装置光学系10は、図2に示す角膜内皮撮影装置100に収容されている。角膜内皮撮影装置100は、ベース102の上に本体部104が設けられており、かかる本体部104の上にケース106が前後左右および上下動可能に設けられて構成されている。ベース102には、電源装置が内蔵されていると共に、操作スティック108が設けられており、かかる操作スティック108を操作してケース106を駆動せしめることが出来るようにされている。また、本体部104には、後述する各制御回路などが収容されていると共に、例えば液晶モニタなどからなる画像表示手段としての表示画面110が設けられている。
さらに、図3に示すように、角膜内皮撮影装置100には、ケース106を駆動せしめることによって、装置光学系10を被検眼Eに対して接近乃至は離隔方向に移動せしめる駆動手段が設けられている。これらの駆動手段は例えばラック・ピニオン機構などによって構成されており、本実施形態においては、装置光学系10を図3における上下方向のX方向に駆動せしめるX軸駆動機構112、図3における紙面と垂直のY方向に駆動せしめるY軸駆動機構114、図3における左右方向のZ方向に駆動せしめるZ軸駆動機構116が設けられている。
また、角膜内皮撮影装置100には、装置光学系10による角膜像の撮像の作動制御を行なう撮像制御手段としての撮像制御回路117が設けられている。そして、X軸駆動機構112、Y軸駆動機構114、Z軸駆動機構116は、それぞれ、撮像制御回路117に接続されて、撮像制御回路117からの駆動信号に基づいて駆動せしめられるようにされている。また、アライメント検出センサ88は、XYアライメント検出回路118に接続されており、かかるXYアライメント検出回路118は、撮像制御回路117に接続されている。また、ラインセンサ44は、Zアライメント検出回路120に接続されており、かかるZアライメント検出回路120は、撮像制御回路117に接続されている。これにより、アライメント検出センサ88およびラインセンサ44の検出情報が、撮像制御回路117に入力されるようになっている。
さらに、角膜内皮撮影装置100には、CCD28が受像した画像が入力されて、かかる画像をもとに光量制御可否判定する光量制御回路122が設けられている。光量制御回路122は、撮像用光源40に接続されて、光量制御回路122からの信号に基づいて撮像用光源40の光量制御が行われるようになっている。また、CCD28が受像した画像が入力されて、かかる画像を取捨選択する画像選択回路124が設けられていると共に、かかる画像選択回路124によって選択された画像を記憶する記憶手段としての記憶装置126が設けられている。
次に、このような構造とされた角膜内皮撮影装置100において、撮像制御回路117が実行する角膜内皮の撮像手順の概略を図4に示し、以降、順に説明する。
先ず、S1において、被検眼Eに対して、装置光学系10のX方向およびY方向の位置合わせ(XYアライメント)を行う。かかるXYアライメント時には、固視標光源74から照射された固視標光が被検眼Eに導かれる。そして、被検者にかかる固視標光を固視させることによって、被検眼Eの光軸方向を、観察光学系12の光軸O1の方向と一致させることが出来る。かかる状態下で、観察用光源30、30から照射されて、被検眼Eの前眼部で反射された光束がCCD28上に導かれる。これにより、図5に示すように、表示画面110上に、被検眼Eの前眼部が表示される。
さらに、表示画面110上には、例えばスーパーインポーズ信号などによって生成された、矩形枠形状のアライメントパターン128が、被検眼Eに重ねて表示される。それと共に、アライメント光源82から被検眼Eに向けて照射された光束が、被検眼Eの前眼部で反射されて、CCD28に導かれることによって、表示画面110に、点状のアライメント光130として表示されるようになっている。そして、操作者は操作スティック108を操作することによって、装置光学系10を駆動せしめて、アライメント光130がアライメントパターン128の枠内に入るように、装置光学系10の位置を調節する。
また、アライメント光源82から照射されて、被検眼Eの前眼部で反射された光束の一部は、ハーフミラー26で反射されて、アライメント検出センサ88に導かれるようになっている。なお、アライメント光源82からは被検者に認識されない赤外光束が照射されることによって、被検者の負担が軽減されている。ここにおいて、アライメント検出センサ88は、アライメント光130がアライメントパターン128の枠内に入ると、アライメント光130のX方向の位置とY方向の位置を検出することが出来るようにされている。かかるX方向位置とY方向位置は、XYアライメント検出回路118に入力される。XYアライメント検出回路118は、X方向の位置情報に基づいて観察光学系12の光軸O1が被検眼Eの光軸に近づくようにX軸駆動機構112を駆動すると共に、Y方向の位置情報に基づいて観察光学系12の光軸O1が被検眼Eの光軸に近づくようにY軸駆動機構114を駆動せしめる。これにより、装置光学系10の被検眼Eに対するXY方向の位置合わせが行われる。なお、かかるXYアライメントは、撮像中も適宜のタイミングで実施される。
次に、S2において、Z軸駆動機構116を駆動せしめて、装置光学系10を、被検眼Eに対して接近する方向に前進作動せしめる。そして、観察用光源54を発光せしめて、観察用光源54から照射された赤外光束を、被検眼Eの角膜Cに対して斜め方向から照射すると共に、角膜Cから反射された光束を、ラインセンサ44によって受光する。特に本実施形態においては、観察用光源54から照射される光束が赤外光束とされていることから、被検者の負担が軽減されている。
そして、観察用光源54からの赤外光束は、角膜Cの上皮細胞や角膜実質、角膜内皮など、角膜Cの各層毎に異なる反射光量をもって反射せしめられる。図6に概略的に示すように、観察用光源54からの赤外光束Lは、空気と角膜Cとの境界面となる上皮細胞eでまず反射される。また、上皮細胞eを透過した光束の一部は角膜実質sや角膜内皮enで反射される。そして、上皮細胞eで反射された反射光束e’の光量が最も多く、角膜内皮enで反射された反射光束en’の光量は相対的に小さく、角膜実質sで反射された反射光束s’の光量が最も小さくなる。また、前房aは房水で満たされていることから、前房aでは赤外光束Lは殆ど反射されることはない。
これらの反射光束は、ラインセンサ44に検出されて、ラインセンサ44には、図7のような光量分布が検出される。図7において、光量の最も多い第一ピーク部131は、角膜上皮からの反射光を示す。次に光量の多い第二ピーク部132は、角膜内皮からの反射光を示す。そして、撮像制御回路117は、Z軸駆動機構116を駆動せしめて、ラインセンサ44によって検出された角膜上皮の位置から人眼の生理学的な角膜厚みのばらつきを考慮した所定距離:D1だけ、装置光学系10を角膜Cに接近する方向に前進駆動せしめる。なお、角膜上皮からの移動距離は、例えば1000〜1500μmの範囲内で適宜に設定される。これにより、装置光学系10における撮像光学系20の合焦位置は、角膜Cにおける内皮細胞よりも後方に位置せしめられる。そして、かかる角膜上皮から所定距離:D1だけ後方の位置が、装置光学系10の反転位置とされる。
次に、装置光学系10が反転位置に位置せしめられると、S3において、Z軸駆動機構116が反対方向に駆動せしめられて、装置光学系10はZ軸上で被検眼Eから離隔する方向に後退作動せしめられる。ここにおいて、装置光学系10は、反転位置から後退作動が開始されて、撮像が終了するまでの間に、後退速度が変化せしめられるようになっている。図8に、装置光学系10の後退作動における移動速度の変化を示す。
先ず、前述のように、装置光学系10は、反転位置(図8中、P1)から、後退作動が開始される。かかる後退作動は、例えば、500μm〜3000μm/sec,より好適には2000μm/sec前後の比較的早い速度で行われる。そして、S4において、角膜内皮細胞位置から所定距離:D2(図7参照)だけ後方の位置(図8中、P2)に到達した時点から、観察用光源30,30を消灯せしめると共に、撮像用光源40の発光を開始する。なお、本実施形態においては、角膜内皮細胞からの所定距離:D2は、予め定められた、ラインセンサ44によって検出される光量分布が第二ピーク部132よりもやや小さい所定の閾値となる位置からの離隔距離とされている。また、所定距離:D2の具体値としては、ラインセンサ44の検出精度や被検眼Eの位置ずれ等を考慮して確実に角膜内皮細胞を捉えられるように、或る程度余裕のある値が好ましいが、所定距離:D2が大きくなると撮像用光源40の発光時間が長くなって、被検者の負担を増加せしめることから、所定距離:D2は、200〜500μmの範囲内の値が好適に採用される。
そして、装置光学系10を比較的速い速度で後退作動せしめつつ、CCD28によって角膜Cの内皮細胞からの反射光が検出された時点(図8中、P3)から、装置光学系10の減速が開始される。そして、S5において、光量制御可否判定が行われる。かかる光量制御可否判定は、CCD28によって受像された撮影像(画像)を光量制御回路122に入力することによって行われる。そして、光量制御回路122の判定結果に基づき、撮像用光源40の撮影光量の制御が行われる。内皮細胞からの反射光の検出は、例えば、図9に示すように、CCD28によって撮像された画像133における1本以上(本実施形態においては、5本)の適当な水平線:l1〜l5上の画素の輝度値から、所定値以上の輝度値を有する画素の数に基づいて、角膜内皮細胞からの反射光を検出したと判定する。本実施形態においては、画像133における各画素の輝度値を輝度値1〜輝度値255の255階調(輝度値1が最も暗く、輝度値255が最も明るい)で検出し、内皮反射光のムラを考慮して、画像133上の5本の水平線:l1〜l5上の各画素の輝度値を検出する。そして、水平線:l1〜l5上の各画素において輝度値が25〜255になる画素数をカウントする。なお、輝度値25〜255は、目視で明らかな反射光を認識できる程度の光量である。そして、水平線:l1〜l5においてカウントされた画素数の平均値、或いは、水平線:l1〜l5においてカウントされた画素数のうちの最大値が、角膜内皮上での距離に換算して略30μmにおける反射光量と対応する位置が減速開始点(図8中、P3)とされる。
そして、S6において、CCD28によって検出される角膜内皮像の連続的撮像が開始される。かかる連続的撮像は、所定の時間間隔(例えば、1/30秒)ごとにCCD28によって受像された撮影像(画像)を画像選択回路124に入力することによって行われる。これにより、時間と位置が異ならされた複数の角膜像が画像選択回路124に入力される。そして、かかる連続的撮像と共に、画像選択回路124によって、入力された画像の取捨選択および記憶装置126への記憶が行われるようになっている。
次に、後述する比較的遅い速度に達した時点(図8中、P4)から、装置光学系10はかかる一定の比較的遅い速度で後退作動せしめられる。そして、減速が完了した時点から、更に所定範囲(図8中、P4〜P6)に亘って、S6における連続的撮像および画像の取捨選択が行われる。なお、かかるP4〜P6の範囲内に、角膜内皮細胞との合焦位置(図8中、P5)も含まれることとなる。
ここにおいて、S5における減速が完了する比較的遅い移動速度は、低速で移動しつつ連続的撮像を行う範囲(図8中、P4〜P6)とCCD28による画像の取り込み時間や撮像枚数等を考慮して適宜に決定される。例えば、低速で移動して連続的撮像を行なう範囲としては、被検眼Eの微動などを考慮して、200μm以上の範囲が好適に採用され得る。そして、CCD28の画像取り込み時間が1枚あたり1/30秒で、連続的撮像の範囲が200μmとすると、10枚撮像する場合には600μm/sec、20枚撮像する場合には300μm/sec、30枚撮像する場合には200μm/sec、40枚撮像する場合には150μm/sec、50枚撮像する場合には100μm/secに設定される。従って、連続的撮像によって確実に角膜内皮撮影像を取得するためには、100〜300μm/secの速度が好適に採用される。このように、本実施形態においては、CCD28による画像取り込み時間が略一定とされて、装置光学系10の移動速度が変化せしめられることによって、連続的撮像による撮像枚数が調節されているが、例えば、装置光学系10の移動速度を一定にして、角膜内皮からの反射光の検出に基づいて、CCD28による画像取り込み時間の間隔を異ならせることによって、撮像枚数を調節することなどしても良いし、それら移動速度や取り込み時間の両方を制御する等しても良い。
そして、低速移動および連続的撮像の開始位置(図8中、P4)から、所定距離(例えば、本実施形態においては200μm)だけ後退移動した時点(図8中、P6)で、加速が開始されて、装置光学系10は、減速が開始される前の速度にまで加速せしめられる。なお、かかる加速開始位置の決定基準としては、移動距離のみならず、例えば、前述の角膜内皮反射光の検出手順と同様の方法に従って、角膜内皮反射光が検出されなくなった段階で加速を開始したり、撮像開始から所定時間が経過した段階で加速を開始したりしても良いし、それらを適宜に組み合わせて用いるなどしても良い。
また、装置光学系10が加速せしめられて、減速が開始される前の比較的速い速度に達すると(図8中、P7)、S7において、被検眼Eの微動などを考慮して、例えば100μm程度後退せしめられた後に、後退作動を停止すると共に、撮像用光源40を消灯して、撮像を終了する(図8中、P8)。
なお、図10から図14に、装置光学系10が後退移動せしめられる過程で各位置において撮像された角膜内皮細胞像を示す。先ず、図10は、CCD28によって角膜内皮からの反射光が受光された付近(図8中、P3付近)における角膜内皮細胞像である。かかる位置では、画面の殆どの領域には前房相当部134が撮像されて、角膜内皮細胞136は画面右端に少し確認出来る程度である。前房相当部134は、照射光が前房で透過されて殆ど反射光が得られないことから、暗く撮像される。図11は、低速移動が開始された付近(図8中、P4付近)における角膜内皮細胞像である。かかる位置では、P3付近(図10)に比して、角膜内皮細胞136の左端部がより画面の左側に位置せしめられて、角膜内皮細胞136がより大きく撮像されている。図12は、角膜内皮細胞との合焦位置付近(図8中、P5付近)における角膜内皮細胞像である。かかる位置において、角膜内皮細胞136が最も大きく撮像される。なお、画面右端には、角膜実質138が、角膜内皮細胞136よりも暗く撮像される。そして、図13は、装置光学系10の低速移動が終了される付近(図8中、P6付近)における角膜内皮細胞像である。かかる位置では、P5付近(図12)に比して、角膜内皮細胞136の右端部が画面の左側に位置せしめられて、角膜内皮細胞136がより小さくなると共に、画面右端に角膜上皮140が撮像される。図14は、装置光学系10の低速移動後の加速が終了した付近(図8中、P7付近)における角膜内皮細胞像である。かかる位置では、角膜内皮細胞136は画面左端に僅かに撮像されるのみであり、角膜上皮140が大きく撮像される。このように、角膜内皮細胞像は、角膜内皮の後方から角膜内皮との合焦位置に行くに連れて、次第に大きく撮像されて、角膜内皮との合焦位置で最も大きく撮像される。そして、角膜内皮との合焦位置(内皮合焦位置)から更に後退移動せしめられるに連れて、次第に小さく撮像されることとなる。
また、図15から図19には、図10から図14の各角膜内皮細胞像における輝度分布が示されている。これら図15〜図19に示された輝度分布図によれば、角膜内皮細胞136が比較的高い輝度で撮像される一方、画像上で角膜内皮細胞136の左右両側に位置せしめられる前房相当部134と角膜実質138が何れも低い輝度で撮像されると共に、角膜上皮140が極めて高い輝度で撮像されることが明らかである。
さらに、連続的な撮影においては、上述の如く、内皮合焦位置に近づくに従って角膜内皮細胞136が次第に大きく撮像されることから、図15〜図17に示されているように、合焦位置に近づくに従って撮像の輝度が高く(撮像が明るく)なる。そして、合焦位置を過ぎると、図17〜図19に示されているように、撮像の輝度が一旦低下した後、急激に上昇する。即ち、角膜上皮140の撮像は極めて輝度が高く、内皮合焦位置を過ぎると角膜上皮140が次第に大きく撮像されるからである。
ここにおいて、本実施形態では、内皮合焦位置からの距離と撮像の輝度値の変化の相関性に着目して、光量制御可否判定および画像の取捨選択を自動的に実行するようになっている。
以下に、S5における光量制御回路122での光量制御可否判定方法について説明する。なお、本実施形態における光量制御回路122は、図20にブロック図で示されているように、画像データ取得回路142と、輝度情報取得手段としての輝度情報取得回路144と、第一の撮像状態判定回路146と、境界位置確認回路148と、第二の撮像状態判定回路150と、第三の撮像状態判定回路152と、を備えている。
図21には、S5における処理がフローチャートによって示されている。即ち、本実施形態では、光量制御回路122による光量制御可否判定と、撮像用光源40の光量制御の各処理が、S5において実行される。
より詳細には、先ず、S51において、CCD28によって角膜を撮影すると共に、画像データ取得回路142がCCD28によって撮影された角膜撮影画像133の画像データを取得する。
次に、S52において、画像データ取得回路142が取得した撮影画像133の所定領域における各画素の輝度情報を、輝度情報取得回路144が取得する。特に本実施形態では、図9に示されているように、撮影画像133の水平方向に延びる一条乃至は複数条のライン(本実施形態では、l1〜l5の5つの水平線)上の画素について輝度情報を取得する。これにより、後述する第一の撮像状態判定回路146において処理される輝度情報のデータ量を抑えて、処理速度の向上を図ることが出来る。なお、本実施形態においては画像上の左右方向に延びる水平線上に位置する画素の輝度情報を取得しているが、上下方向や斜め方向等、他の方向に延びるライン上の画素について輝度情報を取得するようになっていても良い。
次に、S53において、輝度情報取得回路144で取得された輝度情報を第一の撮像状態判定回路146で処理して、撮影画像133の撮像状態を判定する。第一の撮像状態判定回路146は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えば、輝度情報取得回路144によって取得された撮影画像133の輝度情報を用いて、撮影前に予め設定された輝度値の第一閾値よりも高い輝度値を有する画素が撮影画像133上に存在するか否かを判定するようになっている。なお、予め設定される輝度値の第一閾値は、合焦時に角膜内皮細胞を撮影した画像の輝度値を基準として設定されている。
ここで、第一の撮像状態判定回路146において第一閾値よりも高い輝度の画素が検出されなかった場合には、撮影画像133には、角膜内皮像が撮影されていないものと推測される。それ故、撮像状態が悪い(有用ではない)画像であると評価されて、再びS51の処理が行われる。
一方、第一の撮像状態判定回路146において第一閾値よりも高い輝度の画素が検出された場合には、撮像状態が良好であると評価される。この場合には、S54において、撮影画像133上で第一閾値を超える輝度を有する画素が存在する領域と存在しない領域の境界を境界位置確認回路148によって検出する。すなわち、図22に示されているように、第一閾値を超える輝度を有する画素において、水平方向で撮影画像133の左端に位置する画素を検出することにより、第一閾値よりも高い輝度の画素が存在する撮影画像133上での境界を検出することが出来る。なお、本実施形態では、図23に示されているように、ライン上の各画素に対して画像中で左側から何番目の画素であるかを示す位置番号(X1,X2,X3・・・Xn)が付されており、図22に示されているように、撮影画像上において第一閾値(La)よりも高い輝度を有する画素のうちで最左端に位置する画素の位置番号(Xa)を取得することによって、上記境界を特定することが出来るようになっている。
そして、S55において、検出された境界(図22,23におけるXa)上に位置する画素が、予め設定された画像上の領域(図22におけるRl)の範囲内に位置せしめられているかどうかを、第二の撮像状態判定回路150で判定する。これによって、角膜構造の中で前房aと角膜内皮enの撮影画像133上での境界を検出して、角膜内皮enの撮像の画像上での左右方向位置を判定することが出来る。
ここで、第二の撮像状態判定回路150によって境界(図22におけるXa)上に位置する画素が所定の領域(図22におけるRl)の範囲内に位置せしめられていないと判定された場合には、再びS51の処理が行われる。
一方、第二の撮像状態判定回路150によって境界(図22におけるXa)上に位置する画素が所定の領域(図22におけるRl)の範囲内に位置せしめられていると判定された場合には、S56において、輝度情報取得回路144で取得された輝度情報を第三の撮像状態判定回路150で処理して、撮影画像133の撮像状態をさらに判定する。第三の撮像状態判定回路152は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えば、輝度情報取得回路144によって取得された撮影画像133の輝度情報を用いて、撮影前に予め設定された輝度値の第二閾値(例えば、本実施形態においては輝度値250;図22におけるLb)よりも高い輝度値を有する画素が撮影画像133上に存在するか否かを判定するようになっている。
ここで、第三の撮像状態判定回路152において第二閾値よりも高い輝度の画素が検出されなかった場合には、撮影画像133は、飽和輝度のない良好な画像であると評価されて、S57における、撮像用光源40の減光は行われない。
一方、第三の撮像状態判定回路152において第二閾値よりも高い輝度の画素が検出された場合には、撮影画像133は、飽和輝度のある撮像状態が悪い(有用ではない)画像であると評価されて、S57において、第三の撮像状態判定回路152の結果に基づいた撮像用光源40の減光が行われる。
撮像用光源40の減光方法としては、撮像用光源40の発光時間を短くしたり、PWMによる制御を行ったり、CCD28の感度を下げたりすること等により行われる。
以上より明らかなように、第一〜第三の撮像状態判定回路146,150,152を含んで、本実施形態における画像評価手段が構成されている。また、本実施形態では、第一〜第三の撮像状態判定回路146,150,152によって画像の撮像状態を評価すると共に、評価結果に基づいて撮像用光源40の光量を制御するようになっている。
さらに、S6における画像選択回路124での画像の取捨選択方法については、本出願人による特願2006−298457号を参照されたい。
このような構造とされた角膜内皮撮影装置100においては、角膜像を連続的に撮像することによって、合焦状態に至るまでの角膜内皮細胞画像そのものからの輝度情報を取得するため正確な輝度情報の検出を可能とし、さらに、撮影画像における撮像状態の評価結果に基づいて光量制御を行うため、正確な光量制御が可能である。
さらに、本実施形態では、特定の水平線:l1〜l5上に位置する画素の輝度値を利用することにより、撮影画像の撮像状態を迅速に評価することが出来るとともに、複数条の水平線:l1〜l5上に位置する画素の輝度値を利用することにより、撮像状態を高精度に評価することが出来る。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
例えば、前記実施形態においては、光量制御可否判定を行った後に連続的撮像が開始されているが、連続撮像により得られる各撮影画像において光量制御可否判定を行い、適宜のタイミングで撮像用光源40の光量制御を行うようにしても良い。これにより、さらにより精度の高い角膜内皮細胞像を得ることができる。
また、S56において、撮影前に予め設定された輝度値の第二閾値よりも高い輝度値を有する画素が撮影画像133上に存在するか否かを判定し、S57において、撮像用光源40の減光を行っているが、前記実施形態に具体的に示されたものに限定されるものではない。
例えば、第一閾値La、第二閾値Lb、第一閾値Laを超える輝度値を有する画素における平均輝度値(図17におけるBr)を利用することにより、撮像状態を評価することもできる。即ち、S56において、第一閾値La及び第二閾値Lb、平均輝度値Brとの関係を求める。S57において、S56の結果に基づいて撮像用光源40の光量制御を行う。具体的には、|Lb−Br|>|Br−La|となる場合には、撮像用光源40の増光が行われ、Br>Lbとなる場合には、撮像用光源40の減光が行われる。|Lb−Br|<|Br−La|となる場合には、撮像用光源40の光量制御は行わない。これにより、より適切な光量制御を可能とし、精度の高い角膜内皮細胞像を得ることができる。
また、前記実施形態においては、撮影画像133上の特定の水平線:l1〜l5上に位置する画素の輝度値を利用することにより、撮影画像133の撮像状態を評価しているが、撮影画像133上の角膜内皮細胞像全体の平均輝度値を算出することにより撮像状態を評価することもできる。
さらに、前記実施形態においては、画像評価手段として第一〜第三の撮像状態判定回路146,150,152を採用しているが、画像評価手段としては、画像上の所定領域に位置する画素の輝度情報を利用したものであれば良い。
10:装置光学系、12:観察光学系、14:撮像照明光学系、16:位置検出光学系、18:位置検出照明光学系、20:撮像光学系、28:CCD、30:観察用光源、40:撮像用光源、44:ラインセンサ、54:観察用光源、64:固視標光学系、66:アライメント光学系、74:固視標光源、82:アライメント光源、84:アライメント検出光学系、88:アライメント検出センサ、110:表示画面、122:光量制御回路、124:画像選択回路、126:記憶装置、133:画像、142:画像データ取得回路、144:輝度情報取得回路、146:第一の撮像状態判定回路、148:境界位置確認回路、150:第二の撮像状態判定回路、152:第三の撮像状態判定回路