以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。なお、図面において、実質的に同一の構成、動作、および効果を表す要素については、同一の符号を付す。また、以下において記述される数字は、すべて本発明を具体的に説明するために例示したものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるスイッチング電源制御ICである半導体装置およびこれを用いたスイッチング電源装置の一構成の回路を示すブロック図である。また、図2は実施の形態1におけるスイッチング電源制御ICである半導体装置の一構成を示すブロック図である。
実施の形態1について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1、図2に示すように、スイッチング電源制御ICである半導体装置3は、スイッチング素子1とスイッチング素子1のスイッチング動作を制御する制御部2から構成されている。スイッチング素子1と制御部2を実装する構成には、二つとも一つの半導体チップに含まれる構成と、それぞれが個別の半導体チップに含まれる構成がある。また、半導体装置3は、外部入力端子として、スイッチング素子1の入力端子(ドレイン端子)、補助電源電圧VCCを入力する補助電源端子(CC端子)、内部回路用の電源電圧VDDが現れる内部電源端子(DD端子)、帰還電圧VFDが現れるフィードバック端子(FB端子)、スイッチング素子1の出力端子でもある制御部2の接地端子(ソース端子)の5つの端子を備えている。補助電源電圧VCCは補助直流電圧とも呼ばれ、補助電源端子CCは補助直流電圧端子とも呼ばれる。フィードバック端子は、帰還電圧端子とも呼ばれる。
スイッチング素子1には、MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が使用できる。実施の形態1では、スイッチング素子1には、nチャンネル型MOSトランジスタが使用される。またスイッチング素子1は、2個以上の上述のようなトランジスタにより構成してもよい。このような複数構成も含める意味で、スイッチング素子1は、スイッチング部とも呼ばれる。
トランス31は、1次巻線31aと2次巻線31bと補助巻線31cとを有している。1次巻線31aと2次巻線31bの極性は逆になっており、当該スイッチング電源装置はフライバック型となっている。トランス31は、交流電圧を変換する構成を総称してトランス部とも呼ばれる。スイッチング素子1は、入力直流電圧VINをスイッチングし、トランス31は、スイッチングされた入力直流電圧VINを1次巻線31aに入力し、2次巻線31bに出力交流電圧、および補助巻線31cに補助交流電圧を生成する。
補助巻線31cには、ダイオード21とコンデンサ22とで構成される補助電源部20が接続される。つまり、補助巻線31cは2次巻線31bと同じ極性になっており、補助電源部20は、スイッチング素子1のスイッチング動作によって、補助巻線31cに発生する交流電圧(補助交流電圧)を整流かつ平滑化して、出力電圧VOに大略比例する補助電源電圧VCC(以下、CC端子電圧VCCという)を生成し、CC端子へ印加する。補助電源部20は補助直流電圧生成部とも呼ばれ、補助電源電圧VCCは補助直流電圧とも呼ばれる。
フォトカプラ32は、制御信号を2次側から1次側へ伝達するための制御信号伝達回路であり、フォトトランジスタ32a、フォトダイオード32bから構成される。
FB端子とソース端子の間には、抵抗24とフォトカプラ32のフォトトランジスタ32aが直列に接続され、半導体装置3は、このフォトトランジスタ32aに流れる電流、つまりFB端子から流れる電流の変化により、出力電力の供給を調節し、出力電圧VOを所定の値に制御する。FB端子から流れる電流が多くなれば、制御部2は出力電力が減少するようにスイッチング素子1を制御し、出力電圧VOが大きくならないようにする。FB端子から流れる電流が少なくなれば、制御部2は出力電力が増加するようにスイッチング素子1を制御し、出力電圧VOが小さくならないようにする。
2次巻線31bには、ダイオード41とコンデンサ42とで構成される出力電圧生成部40が接続される。つまり、出力電圧生成部40は、スイッチング素子1のスイッチング動作によって2次巻線31bに発生する交流電圧(2次交流電圧)を整流かつ平滑化して、出力電圧VO(第2の直流電圧)を生成し負荷48へ印加する。出力電圧生成部40は出力直流電圧生成部とも呼ばれ、2次交流電圧は出力交流電圧とも呼ばれ、出力電圧VOは出力直流電圧とも呼ばれる。
シャントレギュレータ45と抵抗46、47は出力電圧VOの検出を行い、シャントレギュレータ45は、その出力電圧VOに応じてシャントレギュレータ45に流れる電流を変化させ、フォトカプラ32のフォトダイオード32bに流す電流を変化させる。出力電圧VOが高くなれば、シャントレギュレータ45に流れる電流およびフォトダイオード32bに流れる電流は多くなり、出力電圧VOが低くなれば、シャントレギュレータ45に流れる電流およびフォトダイオード32bに流れる電流は少なくなる。
また、図2において、レギュレータ5は、CC端子から内部電源端子DDおよびコンデンサ23へ電流を供給し、半導体装置3の内部回路用の電源電圧を表すDD端子電圧VDD(内部電源電圧VDD)を所定値に安定化する。それとともに、レギュレータ5は、CC端子電圧VCC(補助電源電圧VCC)の値が所定値より低い時には、ドレイン端子からCC端子へ電流を供給する役割を果たす。
すなわち、レギュレータ5は、スイッチング素子1のスイッチング動作(以下、発振とする)開始前には、ドレイン端子から定電流源4を通じ、CC端子を介して補助電源部20のコンデンサ22へも電流を供給して、CC端子電圧VCCを上昇させる。そして、CC端子電圧VCCが発振可能電圧VCCONに達した時に、発振制御回路6からNAND回路18への出力を表す発振制御信号S6を、信号レベルがローレベルの信号(以下、ローレベル信号という)から信号レベルがハイレベルの信号(以下、ハイレベル信号という)へ切り替え、スイッチング素子1の発振を開始させる。
そして、スイッチング素子1のスイッチング動作開始後は、ドレイン端子からCC端子への電流供給が停止し、CC端子には補助巻線31cから補助電源部20を介して電流が供給されるようになる。しかしCC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下すると、発振制御信号S6をハイレベル信号からローレベル信号へ切り替え、スイッチング素子1のスイッチング動作を停止させる。発振制御信号がハイレベルの場合、発振状態レベルとも呼び、ローレベルの場合、停止状態レベルとも呼ぶ。発振禁止電圧VCCOFFおよび発振可能電圧VCCONを、それぞれ補助直流電圧VCCにおける所定値という意味で、単に補助電圧値とも呼ぶ。
発振制御回路6は、前述したように起動時に、レギュレータ5においてCC端子電圧VCCが発振可能電圧VCCON以上になった時に、発振制御信号S6の信号レベルをローレベル信号からハイレベル信号に切り替えることにより、スイッチング素子1の発振開始を可能にする。それとともに、スイッチング素子1が発振している間に、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下する時に、発振制御信号S6の信号レベルをハイレベル信号からローレベル信号に切り替えることにより、スイッチング素子1の発振を禁止させる働きも備える。
発振制御信号S6がハイレベル信号の場合、スイッチング素子1が実際に発振する状態(発振状態)になるかどうかは、発振制御信号S6以外のNAND回路18に入力する信号の論理状態に依存する。発振制御信号S6がローレベル信号の場合、スイッチング素子1は無条件に発振を停止する状態(停止状態)になる。この意味で制御部2は、発振制御信号S6がハイレベル信号の場合、スイッチング素子1を発振可能状態に設定し、発振制御信号S6がローレベル信号の場合、スイッチング素子1を発振禁止状態に設定する。スイッチング素子1が発振可能状態の場合、スイッチング素子1はNAND回路18に入力する信号の論理状態に依存して、発振状態または停止状態になり、スイッチング素子1が発振禁止状態の場合、スイッチング素子1は停止状態になる。
タイマー間欠発振制御回路7は、発振制御回路6を介してCC端子電圧VCCを検出し、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下する回数を4回までカウントする機能を備える。タイマー間欠発振制御回路7は、発振開始後、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下する前までは、NAND回路18への出力を表す発振制御信号S7をハイレベル信号とし、スイッチング素子1を発振可能状態に設定する。CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下した後には、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下した回数が1ないし3回目の時には、発振制御信号S7をローレベル信号として、スイッチング素子1を発振禁止状態に設定する。CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下した回数が0回、あるいは4回目の時には、発振制御信号S7をハイレベル信号として、スイッチング素子1を発振可能状態に設定する。また、スイッチング素子1が発振状態の間は、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下した回数を0回に戻す。
このようにタイマー間欠発振制御回路7は、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFに低下すると、所定期間、発振制御信号S7をローレベルにし、スイッチング素子1を発振禁止状態にする。その後、CC端子電圧VCCが発振可能電圧VCCONに上昇すると、発振制御回路6は発振制御信号S6をハイレベルにし、スイッチング素子1は再び発振状態になる。
VDDラッチ停止回路8は、DD端子にレギュレータ2から所定値以上の電流が流入した場合に、ラッチ停止回路10に停止信号を出力する。VFBラッチ停止回路9は、FB端子電圧VFBが所定値VFBOLまで上昇するとラッチ停止回路10に停止信号を出力する。VDDラッチ停止回路8およびラッチ停止回路10は、まとめて単に停止回路とも呼ばれる。VFBラッチ停止回路9およびラッチ停止回路10は、まとめて単に停止回路とも呼ばれる。所定値VFBOLは、帰還電圧値とも呼ばれる。
ラッチ停止回路10は、通常動作状態では、NAND回路18への出力を表す発振制御信号S10をハイレベル信号とし、発振可能状態に設定している。しかし、VDDラッチ停止回路8、あるいはVFBラッチ停止回路9から停止信号が入力されると、発振制御信号S10をローレベル信号とし、スイッチング素子1を発振禁止状態に設定し続ける。この機能により、スイッチング素子1は停止状態となりラッチ停止する。このラッチ停止は、CC端子電圧VCCが低下し、DD端子への電流供給がなくなり、DD端子電圧が所定値以下になるまで解除しない。具体的には、入力直流電圧VINが低下し、ドレイン端子の電圧が低下するまで、スイッチング素子1が再度、発振可能状態になることはない。
ここで、レギュレータ5、発振制御回路6、タイマー間欠発振制御回路7、VDDラッチ停止回路8、VFBラッチ停止回路9、およびラッチ停止回路10は、発振制御信号生成部を構成する。発振制御信号生成部は、補助直流電圧VCCに基づいて発振制御信号を生成し、補助直流電圧VCCが補助電圧値VCCOFF以下になると、発振制御信号を停止状態レベルにし、スイッチング素子1のスイッチング動作を停止する。VFBラッチ停止回路9およびラッチ停止回路10は、FB端子電圧VFBが帰還電圧値VFBOL以上になると、発振制御信号S10を停止状態レベルにする。発振制御信号生成部は、発振制御信号S10が停止状態レベルの場合、FB端子電圧VFBが帰還電圧値VFBOL未満になっても、停止状態レベルを維持する。
フィードバック信号制御回路11は、FB端子を介して流出する電流が大きくなると低くなり、小さくなると高くなる電圧信号を、クランプ回路12に出力する。また、このフィードバック信号制御回路11は、外部から電流を要求されない、つまり図1に示すフォトトランジスタ32aが電流を流さない場合にも、所定の電流を流出させる機能を備えている。FB端子を介して流出する電流は、帰還電流とも呼ばれる。
クランプ回路12は、フィードバック信号制御回路11から出力される電圧信号の最大値をクランプ電圧VCL以下に制限し、この制限された信号を表す目標信号S12を比較器15に出力する。これにより、目標信号S12はクランプ電圧VCL以下となる。フィードバック信号制御回路11から出力される電圧信号は、クランプ電圧VCLより低い電圧の信号であれば、変化することなく目標信号S12となる。クランプ回路12は、クランプ電圧VCLにより、スイッチング素子1に流れるドレイン電流IDを上限電流値ILIMIT以下に制限する。クランプ回路12は、スイッチング素子1に過電流が流れるのを保護するため、過電流保護回路とも呼ばれる。
ILIMIT低下回路13は、CC端子電圧VCCを検出し、CC端子電圧VCCが発振可能電圧VCCONより低い時に発振禁止電圧VCCOFFに近づくほど、クランプ回路12のクランプ電圧VCLを低下させ、結果的に上限電流値ILIMITを低下させる機能を果たす。
ここで、フィードバック信号制御回路11、クランプ回路12、およびILIMIT低下回路13は、目標信号生成部を構成する。
ドレイン電流検出回路14は、ドレイン電流IDを検出し、ドレイン電流IDに比例した電圧を表すドレイン電流信号S14を比較器15に出力する。比較器15は、ドレイン電流信号S14が、目標信号S12以上になった時に、RSフリップフロップ回路17のリセット端子へ、ハイレベルを表す比較結果信号S15を出力する。
パルス発生回路16は、所定周期のパルス電圧信号(以下、CLOCK信号S16という)をRSフリップフロップ回路17のセット端子に出力する。RSフリップフロップ回路17には、リセット端子に比較結果信号S15が入力され、セット端子にCLOCK信号S16が入力される。RSフリップフロップ回路17は、CLOCK信号S16の立ち上がりから、比較結果信号S15がハイレベルになるまでの間、CLOCK信号S16の周期ごとにハイレベル信号となる発振信号S17をNAND回路18に出力する。発振信号S17がハイレベルの場合、動作状態レベルとも呼び、ローレベルの場合、非動作状態レベルとも呼ぶ。
NAND回路18およびゲートドライバ19は、各発振制御信号S6、S7、S10と発振信号S17に基づいて、駆動信号S19を生成する。各発振制御信号が全てハイレベルである時(発振可能状態)、駆動信号S19はCLOCK信号S16の周期ごとにスイッチング素子1をオンにし、発振させる。すなわち、発振制御信号生成部は、発振信号S17を継続させる発振状態レベルと発振信号S17を停止させる停止状態レベルのいずれかのレベルを採る発振制御信号S6、S7、S10を生成し、補助直流電圧VCCが補助電圧値VCCOFF以下になると、発振制御信号S6、S7、S10を停止状態レベルにし、スイッチング素子1のスイッチング動作を停止させる。
ここで、パルス発生回路16、RSフリップフロップ回路17、NAND回路18、およびゲートドライバ19は、駆動信号生成部を構成する。また、目標信号生成部、ドレイン電流検出回路14、比較器15、パルス発生回路16、およびRSフリップフロップ回路17は、発振信号生成部を構成する。すなわち、発振信号生成部は、出力直流電圧VOに基づいて、周期的に動作状態レベルと非動作状態レベルを繰り返す発振信号S17を生成し、発振信号S17に基づいてスイッチング素子1をスイッチングする。
これらの構成により、FB端子を介する流出電流によりドレイン電流IDのピーク値(以下、IDPという)を制御する、いわゆる電流モードのパルス幅変調方式(PWM:Pulse Width Modulation)による制御が実現される。ここでドレイン電流IDは、CLOCK信号S16の各周期において変化するが、ピーク値IDPはドレイン電流IDが最大となる値のことである。すなわち、FB端子を介する流出電流が多くなると、目標信号S12は低下するため、発振信号S17はピーク値IDPが低下するように生成される。逆にFB端子を介する流出電流が少なくなると、目標信号S12は上昇するため、発振信号S17はピーク値IDPが上昇するように生成される。また、クランプ回路12は、ピーク値IDPの上限電流値ILIMITを設定する働きをする。
ドレイン電流検出回路14は、ドレイン電流IDのピーク値を表すピーク値信号S14を検出するという意味で、ピーク値信号検出回路とも呼ばれる。上限電流値ILIMITは、目標信号S12の上限値を表すという意味で、上限目標値ILIMITとも呼ばれる。すなわち、発振信号生成部は、動作状態レベルにおいて、スイッチング素子1に流れるスイッチング電流のピーク値を表すピーク値信号S14を検出するピーク値信号検出回路14と、出力直流電圧VOに基づいて、ピーク値信号S14の目標値を表す目標信号S12を生成する目標信号生成部と、を含み、ピーク値信号S14と目標信号S12に基づいて、発振信号S17を生成する。目標信号生成部は、補助直流電圧VCCに基づいて、上限目標値ILIMITを設定し、目標信号S12を上限目標値ILIMIT以下に制限する。
図1に示すスイッチング電源装置は、図2に示す半導体装置3を使用し、スイッチング素子1を流れるドレイン電流IDのピーク値IDPが所定値になったところを過負荷と検出し、ラッチ停止させる過負荷保護を実現する回路構成の例である。
このスイッチング電源装置は、出力電圧VOのわずかな変化をシャントレギュレータ45が検出し、フォトダイオード32bおよびフォトトランジスタ32aに流れる電流とFB端子を介して流出する電流が変化し、スイッチング素子1を流れるドレイン電流IDのピーク値IDPを変化させることにより、出力電力が変化しても出力電圧VOをほぼ所定値になるように制御している。
すなわち、通常負荷状態においては、負荷が軽くなり出力電圧VOが高くなると、フォトダイオード32bおよびフォトトランジスタ32aに流れる電流とFB端子を介して流出する電流が増加し、目標信号S12が低下するため、発振信号S17はピーク値IDPが低下するように生成される。逆に、負荷が重くなり出力電圧VOが低くなると、フォトダイオード32bおよびフォトトランジスタ32aに流れる電流とFB端子を介して流出する電流が減少し、目標信号S12が上昇するため、発振信号S17はピーク値IDPが上昇するように生成される。このように、ピーク値IDPの変動が出力電圧VOの変動を打ち消すように動作するため、通常負荷状態において、出力電圧VOは負荷の変動によらず安定化される。
さらに負荷が重くなると、出力電力が大きくなり、ドレイン電流のピーク値IDPが大きくなる。このピーク値IDPが上限電流値ILIMITに達すると、これ以上負荷を重くしても、制御部2とスイッチング素子1は出力電力を大きくすることができない。このために出力電圧VOが低下するが、これによりフォトカプラ32のフォトダイオード32bとフォトトランジスタ32aに電流が流れなくなる。
前述したように、フォトトランジスタ32aが電流を流さない場合にもFB端子を介して所定の電流が流出するため、この電流がコンデンサ26にチャージされる。このため、FB端子電圧VFBが上昇し、最終的にはこのFB端子電圧VFBが所定値VFBOLまで上昇し、スイッチング素子1のスイッチング動作はラッチ停止する。つまり、ドレイン電流のピーク値IDPが所定値になり、出力電力が所定値に達した状態よりも負荷を重くした状態である過負荷状態時には、FB端子電圧VFBが上昇し、ラッチ停止をする。一方、通常負荷状態では、出力電圧VOは低下せず、フォトトランジスタ32aには電流が十分流れるため、FB端子電圧VFBは所定値VFBOL以下となる。
ここで、FB端子を介して流出する電流に対して、コンデンサ26の容量をある程度大きくすることで、過負荷状態が所定時間続いた時にのみラッチ停止させるタイマーラッチを実現させることも可能である。また、シャントレギュレータ45とフォトカプラ32で構成される帰還部30は出力電圧VOに対して敏感であり、ドレイン電流のピーク値IDPが上限電流値ILIMITに達して出力電圧VOがわずかに低下するだけで、フォトトランジスタ32aは電流を流さなくなる。このため、ドレイン電流のピーク値IDPが上限電流値ILIMITに達することで、過負荷保護が作動すると考えることができる。
ここで、帰還部30は、各抵抗46、47と、シャントレギュレータ45と、各抵抗43、44と、フォトカプラ32と、各抵抗24、25と、コンデンサ26を含む。また、帰還部30およびフィードバック信号制御回路11は、帰還信号生成部を構成する。すなわち、帰還信号生成部は、出力直流電圧VOの低下に応じて上昇する帰還電圧VFBを生成する
(実施の形態1の変形例1)
実施の形態1の変形例1では、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。その他の構成、動作、および効果は、実施の形態1と同等であるので、省略する。
図3に示す実施の形態1におけるスイッチング電源装置の変形例1は、図2に示す半導体装置3を使用し、補助巻線31cの平滑電圧、つまりCC端子電圧VCCが所定値と以下となったところを過負荷と検出し、自己復帰型の過負荷保護を実現する回路構成の例である。
図3に示した回路構成は、電圧クランプ回路90を、図1に示した回路構成のFB端子とソース端子間に追加した構成となっている。図1の帰還部30は、電圧クランプ回路90を含むことにより帰還部30Aとなる。また、図4は自己復帰型の過負荷保護の動作を表すタイミングチャートであり、CC端子電圧VCCの時間経過を示している。
この電圧クランプ回路90は、INとOUTの2つの端子を有し、その端子間の電位差を所定値未満にする働きをする。具体的には、FB端子電圧VFBを所定値VFBOL未満にする働きをする。前述したように、負荷が重くなりドレイン電流ピーク値IDPが上限電流値ILIMITに達する時には、FB端子電圧VFBが上昇する。しかし、図3の回路構成では電圧クランプ回路90の働きにより、FB端子電圧VFBが所定値VFBOLよりも低い電圧に抑えられるため、スイッチング電源制御ICである半導体装置3が備えるラッチ停止型の過負荷保護は作動しない。すなわちこの場合、発振制御信号生成部は、発振制御信号S10を停止状態レベルにしない。
ここで、図4に示すように、発振可能状態においてスイッチング素子1は発振状態にあるが、通常負荷状態から過負荷状態になると、ピーク値IDPは上限電流値ILIMITに達する。さらに負荷が重くなると、CC端子電圧VCCは、出力電圧VOの低下とともに低下する。そして、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFF(発振停止点)まで低下すると、スイッチング素子1は発振禁止状態に設定され、スイッチング動作は停止状態になる。さらに、レギュレータ5がドレイン端子からCC端子への電流供給を始めるため、CC端子電圧VCCは発振可能電圧VCCONまで上昇する。
前述したように、半導体装置3は、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFに低下した回数を、4回まで数えることができるタイマー間欠発振制御回路7を備えている。そのカウント回数が0回、あるいは4回の場合は、スイッチング素子1は発振を可能とする発振可能状態に設定され、そのカウント回数が1ないし3回の場合は、スイッチング素子1の発振を禁止する発振禁止状態に設定される。また、スイッチング素子1が発振状態の場合はそのカウント回数を0回とする。このため、発振状態中にCC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下し、停止状態になった後、再びCC端子電圧VCCが上昇して発振可能電圧VCCONまで上昇しても、前述のカウント回数が1回となっているために発振は開始しない。
CC端子電圧VCCが発振可能電圧VCCONに達した時点で、レギュレータ5は、ドレイン端子からCC端子への電流供給を停止し、CC端子には補助巻線31cから電流が供給されるようになる。しかし発振は停止したままなので、CC端子電圧VCCは発振禁止電圧VCCOFFまで低下する。図4に示すように、その後CC端子電圧VCCは下降、上昇を繰り返すが、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下する回数が4回になるまでは、発振しない。そして、その回数が4回になった時点で発振可能状態となり、CC端子電圧VCCが発振可能電圧VCCONまで上昇すると発振が再開し(発振開始点)、発振状態になる。しかし過負荷状態のためCC端子電圧VCCは発振禁止電圧VCCOFF(発振停止点)まで低下し、スイッチング素子1は再び発振禁止状態に設定されるとともに停止状態に入る。
つまり、過負荷時には補助巻線31cの平滑電圧が低下することにより、CC端子電圧VCCの上昇、下降を繰り返す図4に示すような動作になり、スイッチング素子1が発振状態となる期間を所定の割合に減らすことができる。そして、このようにしてトランス31の2次側へ供給されるエネルギーを減らすことができ、タイマー間欠動作という方式の過負荷の保護を実現する。
また、この保護が作動している間に過負荷状態が解決し、再び出力電圧VOが上昇すると、補助巻線31cの平滑電圧も上昇し、CC端子電圧VCCは低下しなくなることにより、再び正常な電源動作を行うことができる。このため、この過負荷保護は自己復帰型の過負荷保護である。
電源が正常に動作している時のCC端子電圧VCCは、発振禁止電圧VCCOFFよりも高い必要がある。言葉を換えれば、CC端子電圧VCCは発振禁止電圧VCCOFFまで低下しないと、過負荷保護が作動しない。このため、負荷が重くなっていく時に、ピーク値IDPが上限電流値ILIMITと等しくなってから出力電圧VOが低下し、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下するまでの間、出力電流IOが増大する傾向がある。つまり、定電圧制御をすることができる最大の出力電流IOMAXと、過負荷保護が作動する出力電流IOPRTとの間に差が大きく、これを解決するため、半導体装置3は以下の機能を備えている。
ILIMIT低下回路13において、CC端子電圧VCCが発振可能電圧VCCONより低くなった時には、図5に示すように、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFに近づくほど上限電流値ILIMITが単調減少的に低下する機能が設けられている。この機能により、過負荷時にCC端子電圧VCCが発振可能電圧VCCONを下回った時に、スイッチング素子1を流れる電流のピーク値IDPを低くすることにより出力電力が小さくなるために、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下しやすくなる。これにより、前述した定電圧制御をすることができる最大の出力電流IOMAXと、過負荷保護が作動する出力電流IOPRTとの差を小さくすることができる。なお、この機能のため、電源が通常動作時には、CC端子電圧VCCは発振可能電圧VCCONよりも高くしておく必要がある。
このようにして、図1の回路図に電圧クランプ回路90を追加することだけで、ラッチ停止型の過負荷保護の電源から、自己復帰型であるタイマー間欠動作方式の過負荷保護の電源に変更することができる。また、電圧クランプ回路90は、例えば、ツェナー電圧が所定値VFBOL以下のツェナーダイオードを使用することでも実現が可能である。
(実施の形態1の変形例2)
実施の形態1の変形例2では、実施の形態1および実施の形態1の変形例1と異なる点を中心に説明する。その他の構成、動作、および効果は、実施の形態1と同等であるので、省略する。
また、図6に示す実施の形態1におけるスイッチング電源装置の変形例2は、図2に示す半導体装置3を使用し、CC端子とDD端子間に電位差検出回路91を追加することで、過負荷時における補助巻線31cの平滑電圧の上昇を利用した過負荷保護を実現する回路構成の例である。図1の補助電源部20は、電位差検出回路91を含むことにより補助電源部20Aとなる。
電位差検出回路91は、INとOUTの2つの端子を有し、その端子間の電位差が所定値以上になるとINからOUTの端子に電流を流す働きをする。ここで、DD端子はスイッチング動作中にはレギュレータ5により所定の電圧に保たれているため、CC端子電圧VCCが上昇しCC端子とDD端子間の電位差が所定値以上になると、DD端子に電流が流れ込む。DD端子に所定値以上の電流が流れ込むと半導体装置3のVDDラッチ停止回路8の働きにより、スイッチング素子1のスイッチング動作はラッチ停止する。両端子間の電位差を表す信号は、電位差信号とも呼ばれ、電位差信号を検出する電位差検出回路91は、電位差信号検出回路とも呼ばれる。また、上述した所定値は、所定電圧値VPDとも呼ばれる。
補助巻線31cの平滑電圧であるCC端子電圧VCCは、出力電力が増加するにつれて上昇する傾向があるので、図6に示すスイッチング電源装置では、前述した電位差検出回路91の機能とDD端子に電流が流れ込むとラッチ停止する機能により、過負荷保護を実現することができる。つまり、CC端子電圧VCCが過負荷保護を作動させる出力電力の時の電圧まで上昇すると、前述した過電圧保護が作動し、ラッチ停止するようにする。これにより、ラッチ停止型の過負荷保護が実現できる。すなわち、電圧差検出回路91は、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFよりも大きい所定の補助電圧値VCCPD以上になると、電位差信号を検出する。VDDラッチ停止回路8は、電位差信号に基づいて、発振制御信号を停止状態レベルにし、CC端子電圧VCCが補助電圧値VCCPD以下になっても、停止状態レベルを維持する。また、電圧差検出回路91は、CC端子とDD端子間の電位差が、所定電圧値VPD以上になると、電位差信号を検出する
また、ラッチ停止するCC端子電圧VCCOVPを制御IC(この例であれば、半導体装置3)の内部で設定し、そのCC端子電圧VCCがラッチ停止電圧VCCOVPになった時に過負荷保護のラッチ停止をさせる構成もある。この場合には、トランス31の設定のみにより、過負荷保護を作動させたい出力電力時のCC端子電圧VCCがラッチ停止電圧VCCOVPになるように調整しなければならない。しかし、DD端子とCC端子の間に電位差検出回路91を挿入し、DD端子に電流が流れ込むことでラッチ停止させる構成の場合は、過負荷保護を作動させたい出力電力時のCC端子電圧VCCに対して、電位差検出回路91が電流を流す2端子間(IN、OUT)の電位差を調整すれば良い。このため、半導体装置3内部にラッチ停止電圧VCCOVPを設定して、過負荷保護を実現する構成よりも、設計の自由度が大きく広がる。
また、図1、図2、図3に示す実施の形態1の構成では、半導体装置3の内部回路にて設定された上限電流値ILIMITにより、過負荷保護が作動する出力電力が設定される。これに比べて、実施の形態1の変形例2の構成は、トランス31の設計や電位差検出回路91の設定により、ドレイン電流ピーク値IDPが上限電流値ILIMITより小さい出力電力の範囲内であれば、過負荷保護が作動する出力電力を自由に設定することができるという利点がある。なお、電位差検出回路91は、例えば、ツェナーダイオードを使用することでも実現が可能である。また、この場合には、過負荷保護が作動するCC端子とDD端子の電位差と同じツェナー電圧のツェナーダイオードを使用する必要がある。
前述したように、半導体装置3を使用すれば、ラッチ停止型の過負荷保護を実現する図1に示したスイッチング電源装置を構成することができる。それとともに、図1のスイッチング電源装置に電圧クランプ回路90を追加するだけで、自己復帰型の過負荷保護を実現する図3に示した電源とすることができる。また、図1に示したスイッチング電源装置に電位差検出回路91を追加することで、トランス31の設計と電位差検出回路91の内容により、過負荷保護が作動する出力電力を設定できる電源とすることができる。
以上のように、実施の形態1およびその変形例によれば、1種類のスイッチング電源制御IC(半導体装置3)を使用することにより、その半導体装置3の周辺回路のわずかな違いにより、自己復帰型、ラッチ停止型の過負荷保護を選ぶことができる。また、別の部分に簡単な回路を1つ追加することで、過負荷保護が作動する出力電力を半導体装置3により設定された値ではなく、半導体装置3の周辺回路で設定することができる過負荷保護を実現することもできる。つまり、スイッチング電源装置の半導体装置3(制御IC)としての汎用性が高まり、より多くの電源設計者の要望に答えることができる半導体装置3を提供することができる。
また、それらの過負荷保護構成の選択は、とても少ない部品の追加で実現が可能であり、電源設計者にコストアップの負担を与えない。さらに、このように半導体装置3の汎用性が高まるため、この過負荷保護の構成だけのために半導体装置3のラインアップを増やす必要がなくなり、半導体装置3の開発費用を削減することができる。
また、CC端子電圧VCCが所定値以下になると上限電流値ILIMITが低下する機能を持たせることで、定電圧制御を可能とする最大出力電流IOMAXと、補助巻線31cの平滑電圧(補助電源電圧VCC)が低下することにより過負荷保護が作動する時点の出力電流IOPRTとの差を小さくすることができる。これにより、電源部品の電流定格を小さくできるために、コストダウンを図ることができる。
また、定電圧端子であるDD端子に所定値以上の電流が流れることにより過負荷保護が作動する構成において、CC端子とDD端子間の電位差検出回路91により、補助巻線31cの平滑電圧の上昇を利用して過負荷保護が作動する出力電力を設定することができる。このため、トランス31の設計だけにより設定する場合に比べて、過負荷保護が作動する出力電力を設定しやすい。
なお、実施の形態1では、半導体装置3は、ピーク値IDPが上限電流値ILIMITまで大きくなることによってFB端子電圧VFBが上昇してラッチ停止する過負荷保護と、補助巻線31cの平滑電圧(補助電源電圧VCC)が発振禁止電圧VCCOFFまで低下することにより、自己復帰型のタイマー間欠発振動作をする過負荷保護とを実現する構成となっていた。しかし、この2種類の過負荷を検出する構成を使用して、自己復帰、ラッチ停止の過負荷保護を実現できる半導体装置3であれば、他の構成であってもよい。例えば、図7に示すように、ピーク値IDPが上限電流値ILIMITまで大きくなることによってFB端子電圧VFBが所定値VFBOLまで上昇し、発振停止する。その後、FB端子電圧VFBが下降、上昇を繰り返し、4回に1回だけFB端子電圧VFBが下降してきた時に発振開始するようなタイマー間欠動作の過負荷保護を実現することができる。これにより、CC端子電圧VCCの低下を検出しラッチ停止する半導体装置3の過負荷保護に関する代替構成を実現することができる。
また、実施の形態1では、カウント回数が4回に1回だけ発振開始するタイマー間欠動作を行っているが、発振期間を限定して出力電力を抑えられるのであれば、カウント回数がN回(Nは2以上の整数)に1回のタイマー間欠動作を行っても構わない。
さらに、実施の形態1では、ピーク値IDPが上限電流値ILIMITまで大きくなることによってFB端子電圧VFBが上昇し、過負荷保護が作動する動作を実現しているが、半導体装置3に過負荷保護用の端子を追加し、スイッチング素子1に流れる電流のピーク値が所定値以上になると、その過負荷保護用端子の電圧が上昇して所定値以上になると過負荷保護が作動するような構成としても構わない。
なお、CC端子電圧VCCが低下することによる自己復帰型の過負荷保護の実現に関しては、タイマー間欠発振動作構成の他に、過負荷保護時に出力電圧VOが低下するとともに出力電流IOが小さくなる特性を示すフの字型の保護(Foldback Current Limiting)で実現する構成があり、それを採用しても構わない。このフの字型の保護は、例えば、半導体装置3において、レギュレータ5の構成を変更して、CC端子電圧VCCが所定値以下に低下すると、CC端子からではなく、ドレイン端子からDD端子に電流を供給することにより、CC端子電圧VCCが低下してもDD端子電圧VDDが所定値に保たれるように構成する。その上で、図8Aに示すように、CC端子電圧VCCが所定値以下になると、CC端子電圧VCCの低下とともに上限電流値ILIMITが低下するようにILIMIT低下回路13を変更することで、図8Bに示すようなフの字特性の実現が可能である。
このような構成により、過負荷時、出力電圧VOとともにCC端子電圧VCCが低下すると、出力に供給される電力は小さくなるが、過負荷状態における過電流問題は解決される。再び出力電圧VOとCC端子電圧VCCが上昇すれば、通常動作に復帰する。このように自己復帰型の過電流保護が実現される。また、CC端子電圧VCCがさらに低い値まで低下することによりパルス発生回路16の発振周波数を低下させる機能を追加することで、過負荷時の出力へのエネルギーの供給をさらに減らし、より安全なフの字型の過負荷保護を実現することができる。
また、このフの字特性の実現においては、CC端子電圧VCCの低下に応じて上限電流値ILIMITを低下させる構成がなくても、発振周波数foscを低下させる等のように、出力への供給エネルギーを低下させることが出来れば、他の構成でもかまわない。
なお、実施の形態1では、半導体装置3が定電圧端子であるDD端子に所定値以上の電流が流れることによりラッチ停止する機能を有し、CC端子とDD端子間に電位差検出回路91を挿入することにより、ラッチ停止型の過負荷保護を実現しているが、タイマー間欠動作方式など自己復帰型の過負荷保護でも構わない。
なお、実施の形態1では、半導体装置3にCC端子電圧VCCが所定値以下になると上限電流値ILIMITが低下する機能(ILIMIT低下回路13)を持たせることで、定電圧制御を可能とする最大出力電流IOMAXと、補助巻線31cの平滑電圧(CC端子電圧VCC)が低下することにより過負荷保護が作動する時点の出力電流IOPRTとの差を小さくすることを実現している。この時のCC端子電圧VCCと上限電流値ILIMITの変化の関係は、CC端子電圧VCCの低下に対して上限電流値ILIMITが単調減少であれば、図5に示すような比例関係である必要はない。また、上限電流値ILIMITが低下するCC端子電圧VCCを発振可能電圧VCCONとしたが、過負荷保護を作動させるCC端子の発振禁止電圧VCCOFFよりも上の電圧であれば、上限電流値ILIMITが低下するCC端子電圧VCCは発振可能電圧VCCONでなくても構わない。
さらに、CC端子電圧VCCが所定値以下に低下すると、CC端子電圧VCCの低下とともに上限電流値ILIMITを低下させる機能が無い場合でも、発振周波数foscを低下させる等のように、出力への供給エネルギーを低下させることが出来れば、他の構成でもかまわない。
なお、実施の形態1では、シャントレギュレータ45とフォトカプラ32によりFB端子の電流を調整して、ドレイン電流ピーク値IDPを調整する帰還部30を備えているが、例えば、シャントレギュレータの代わりにツェナーダイオードを使用する帰還部30など、帰還部30は上述した構成に限定されない。
なお、図2に示した半導体装置3を使用する実施の形態1では、パルス発生回路16を備え、所定の周波数で発振するPWM制御の電源にて過負荷保護を実現しているが、自励式のリンギングチョークコンバータ(Ringing Choke Converter)など、周波数が一定でなくてもドレイン電流のピーク値IDPに対して出力電力が単調増加する電源であれば、他の制御方式でも構わない。
さらに、PWM制御において、ドレイン電流のピーク値IDPが所定値以上になると、スイッチング素子1と1次巻線31aがスイッチング動作により出力に供給するエネルギーが所定値以上になる。このように図2に示した実施の形態1は、この供給エネルギーが所定値以上になったところで過負荷保護を作動させる機能と、この供給エネルギーに最大値を持たせることにより、負荷が重くなった時に補助巻線31cの平滑電圧が所定値以下に低下したところで過負荷保護を作動させる機能とを備えている。
また、スイッチング素子1と1次巻線31aがスイッチング動作により出力に供給するエネルギーが所定値以上になるところで過負荷を検出する機能を備えていれば、その供給エネルギーをモニタするパラメータは、ドレイン電流ピーク値IDPでなくてもよい。例えば、スイッチング素子1が1周期のスイッチング動作で電流を流す時間TONなどであっても構わない。この場合、発振信号生成部は、出力直流電圧VOに基づいて、スイッチング動作のオン期間の目標値を表す目標信号S12を生成する目標信号生成部を含み、目標信号S12に基づいて、発振信号S17を生成する。目標信号生成部は、補助直流電圧VCCに基づいて、上限目標値ILIMITを設定し、目標信号S12を上限目標値ILIMIT以下に制限する。
さらに、例えば、ドレイン電流のピーク値IDPが一定で、発振周波数を変化させるパルス周波数変調方式(PFM:Pulse Frequency Modulation)による制御に関しても、ドレイン電流ピーク値IDPを発振周波数foscに置き換えれば、出力に供給するエネルギーは、発振周波数foscをパラメータとすることによりモニタすることが可能である。この場合、発振信号生成部は、出力直流電圧VOに基づいて、スイッチング動作の周波数の目標値を表す目標信号S12を生成する目標信号生成部を含み、目標信号S12に基づいて、発振信号S17を生成する。目標信号生成部は、補助直流電圧VCCに基づいて、上限目標値fLIMITを設定し、目標信号S12を上限目標値fLIMIT以下に制限する。
なお、実施の形態1では、スイッチング素子1とその制御部2が同一基板上に形成された半導体装置3による構成としたが、スイッチング素子1と制御部2は別の半導体基板上に形成されても構わない。
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1およびその変形例と異なる点を中心に説明する。その他の構成、動作、および効果は、実施の形態1およびその変形例と同等であるので、省略する。
本発明の実施の形態2のスイッチング電源装置は、実施の形態1の変形例2(図6)において、半導体装置3を、自己復帰型の過負荷保護を実現する半導体装置3Aで置き換えた構成をしている。図9は、実施の形態2の半導体装置3Aの一構成を示すブロック図である。半導体装置3Aは、スイッチング素子1とスイッチング素子1のスイッチング動作を制御する制御部2Aから構成される。
この半導体装置3Aは、図2に示した半導体装置3のVDDラッチ停止回路8をVDD停止回路58に代えて構成している。DD端子に所定値以上の電流が流入する時にのみ、NAND回路18に出力する発振制御信号S58をローレベル信号にする機能を持たせることにより、DD端子に電流が流れ込み過負荷を検出した時にスイッチング素子1を発振禁止状態に設定し、スイッチング素子1を停止状態にする。発振が停止した後は、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下することにより、CC端子電圧VCCの上昇、下降によるタイマー間欠動作が実現する。VDD停止回路58は、発振制御信号生成部に含まれる。
また、CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下した時に、VDD停止回路58の出力信号はローレベルからハイレベルにリセットされる。図10には、このタイマー間欠発振動作のタイミングチャートを示す。発振が停止した後、CC端子電圧VCCは上昇、下降を繰り返す。CC端子電圧VCCが発振禁止電圧VCCOFFまで低下する回数が4回になるまでは、発振の停止が続く。その回数が4回目になりCC端子電圧VCCが発振可能電圧VCCONまで上昇すると、発振が再開する。
発振が再開した時に過負荷状態が継続していれば、CC端子電圧VCCは引き続き上昇して再びDD端子に電流が流れ込む。このため、スイッチング素子1の発振は停止して、再び発振の停止状態に入る。このような動作を繰り返すことにより、タイマー間欠発振動作を示す自己復帰型の過負荷保護を実現することができる。
なお、実施の形態2では、実施の形態1の変形例2におけるスイッチング電源装置(図6)に半導体装置3A(図9)を用いて、CC端子とDD端子間に電位差検出回路91を挿入し、過負荷の検出を行っているが、CC端子電圧VCCとの比較に使われる端子は、定電圧の端子であればDD端子でなくても構わない。例えば、他に定電圧の端子がある場合には、その定電圧端子に電流が流れ込むか、その端子の電圧が上昇すると過負荷保護を実現する機能を付けて、実現することが可能である。
なお、実施の形態2では、半導体装置3AにCC端子電圧VCCが所定値以下になると上限電流値ILIMITが低下する機能(ILIMIT低下回路13)を持たせることで、定電圧制御を可能とする最大出力電流IOMAXと、補助巻線31cの平滑電圧(CC端子電圧VCC)が低下することにより過負荷保護が作動する時点の出力電流IOPRTとの差を小さくすることを実現している。この時のCC端子電圧VCCと上限電流値ILIMITの変化の関係は、CC端子電圧VCCの低下に対して上限電流値ILIMITが単調減少であれば、図5に示すような比例関係である必要はない。
また、実施の形態2では、CC端子電圧VCCが発振可能電圧VCCON以下になると上限電流値ILIMITが低下するとした。しかし、上限電流値ILIMITが低下するCC端子電圧VCCは、発振可能電圧VCCONでなくても、過負荷保護を作動させるCC端子の発振禁止電圧VCCOFFよりも上の電圧であればよい。
さらに、CC端子電圧VCCが所定値以下に低下すると、CC端子電圧VCCの低下とともに上限電流値ILIMITを低下させる機能がなくても、発振周波数foscを低下させる等のように、出力への供給エネルギーを低下させることが出来れば、他の構成でもかまわない。
さらに、このCC端子電圧VCCが所定値以下に低下するとCC端子電圧VCCの低下とともに上限電流値ILIMITが低下する機能がない場合でも、CC端子電圧VCCが所定値以下になると、CC端子の消費電流が大きくなる機能を追加する構成もある。換言すれば、CC端子電圧VCCが所定値以下になると、補助電源部20の内部抵抗が小さくなり、CC端子とDD端子間の消費電流が多くなる。これにより、CC端子電圧VCCの低下を早くして、定電圧制御を可能とする最大出力電流IOMAXと、補助巻線31cの平滑電圧(CC端子電圧VCC)が低下することにより過負荷保護が作動する時点の出力電流IOPRTとの差を小さくすることも実現できる。また、この両方の機能を備えることで、さらに効果を高めることもできる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1、2と異なる点を中心に説明する。その他の構成、動作、および効果は、実施の形態1、2と同等であるので、省略する。
図11は、本発明の実施の形態3におけるスイッチング電源装置の一構成を示すブロック図である。補助巻線フィードバックは、補助巻線31cの平滑電圧(CC端子電圧VCC)を所定値にするように、出力へ供給するエネルギーの量を調整して、定電圧特性を実現するものである。この補助巻線フィードバックの場合、CC端子電圧VCCを所定値にするフィードバックであるために、CC端子電圧VCCの上昇による過負荷検出は不可能である。しかし、スイッチング素子1を流れる電流ピーク値が所定値以上になることによる過負荷の検出と、補助巻線31cの平滑電圧が所定値以下に低下することによる過負荷の検出により、少ない回路の変更で2種類の過負荷保護を実現することが可能となる。実施の形態3では、実施の形態1の半導体装置3に代えて、半導体装置3Bが用いられる。半導体装置3Bは、スイッチング素子1とスイッチング素子1のスイッチング動作を制御する制御部2Bから構成される。
図11の実施の形態3が図1に示した実施の形態1のスイッチング電源装置と比べて異なる点は、二点ある。一点目は、CC端子電圧VCCがフィードバック信号制御回路111に入力され、ドレイン電流ピーク値IDPを設定している点である。二点目は、VFDラッチ停止回路9の代わりにVSDラッチ停止回路109が設けられ、フィードバック信号制御回路111からVSDラッチ停止回路109に信号が出力される点である。VSDラッチ停止回路109は、ドレイン電流ピーク値IDPが所定値以上になった時に、コンデンサ126に電流を流し込み、SD端子電圧VSDが所定値VSDOLPに達した時にスイッチング素子1の発振をラッチ停止にする。所定値VSDOLPは、帰還電圧値とも呼ばれる。
SD端子電圧VSDは、帰還電圧とも呼ぶ。フィードバック信号制御回路111は、目標信号生成部に含まれる。VSDラッチ停止回路109は、発振制御信号生成部に含まれる。また、帰還信号生成部は、トランス31、補助電源部20、フィードバック信号制御回路111、VSDラッチ停止回路109、およびコンデンサ126を含む。VSDラッチ停止回路109およびラッチ停止回路10は、SD端子電圧VSDが帰還電圧値VSOLP以上になると、発振制御信号S10を停止状態レベルにする。発振制御信号生成部は、発振制御信号S10が停止状態レベルの場合、SD端子電圧VSDが帰還電圧値VSOLP未満になっても、停止状態レベルを維持する。発振信号生成部は、CC端子電圧VCCに基づいて、周期的に動作状態レベルと非動作状態レベルを繰り返す発振信号S17を生成し、発振信号S17に基づいてスイッチング素子1をスイッチングする。
図11に示す電圧クランプ回路90が接続されていない状態では、過負荷時にドレイン電流のピーク値IDPが所定値以上になり、SD端子電圧VSDが所定値VSDOLPまで上昇すると、ラッチ停止型の過負荷保護が作動する。電圧クランプ回路90をSD端子とソース端子間に接続する時には、過負荷時には、SD端子電圧VSDが所定値VSDOLPまで上昇する前にクランプされてラッチ停止しない。このため、ドレイン電流のピーク値IDPがその上限電流値ILIMITで制限されることによって、出力電圧VOが低下してCC端子電圧VCCが低下する。これにより、実施の形態1の変形例1におけるスイッチング電源装置(図3)と同様に、タイマー間欠発振動作を示す自己復帰型の過負荷保護を実現させることができる。つまり、図11に示した実施の形態3の構成であれば、電圧クランプ回路90を追加するかどうかだけで、ラッチ停止の過負荷保護か自己復帰型の過負荷保護かを選択することができる。
実施の形態3において、電圧クランプ回路90は、帰還信号生成部に含まれる場合と含まれない場合がある。電圧クランプ回路90が帰還信号生成部に含まれない場合、帰還信号生成部は、出力直流電圧VOの低下に応じて、出力直流電圧VOに大略比例する補助直流電圧VCCも低下し、その低下とともに上昇する帰還電圧VSDを生成する。電圧クランプ回路90が帰還信号生成部に含まれる場合、発振制御信号生成部は、発振制御信号S10を停止状態レベルにしない。
通常負荷状態においては、負荷が軽くなり出力電圧VOが高くなると、出力直流電圧VOに大略比例する補助直流電圧VCCも高くなり、SD端子を介して流出する電流が増加し、目標信号S12が低下するため、発振信号S17はピーク値IDPが低下するように生成される。逆に、負荷が重くなり出力電圧VOが低くなると、補助直流電圧VCCも低くなり、SD端子を介して流出する電流が減少し、目標信号S12が上昇するため、発振信号S17はピーク値IDPが上昇するように生成される。このように、ピーク値IDPの変動が出力電圧VOの変動を打ち消すように動作するため、通常負荷状態において、出力電圧VOは負荷の変動によらず安定化される。SD端子を介して流出する電流は、帰還電流とも呼ばれる。
以上のように本発明の実施の形態によれば、1種類のスイッチング電源制御IC(半導体装置)により、その周辺回路のわずかな違いで、自己復帰型、ラッチ停止型の過負荷保護構成を選ぶことができる。また、別の部分に簡単な回路を1つ追加することにより、過負荷保護が作動する出力電力を、制御ICで設定された値ではなく、周辺回路で設定する値で過負荷保護を作動させる構成を実現することもできる。これにより、スイッチング電源の制御ICとしての汎用性が高まり、より多くの電源設計者の要望に答えることができる。それらの過負荷保護構成の選択は、少ない部品の追加で可能であり、コストアップの負担を与えない。また、汎用性が高まるため、過負荷保護構成だけの制御ICのラインアップを増やす必要がなく、開発費用を削減することもできる。
さらに、CC端子電圧VCCが所定値以下になると、上限電流値ILIMITが低下する機能を持たせることができる。これにより、定電圧制御を可能とする最大出力電流IOMAXと、補助巻線の平滑電圧(CC端子電圧VCC)が低下することにより過負荷保護が作動する時点の出力電流IOPRTとの差を、小さくすることができる。その結果、電源部品の電流定格を小さくでき、コストダウンを図れる。
また、定電圧端子のDD端子に所定値以上の電流が流れると過負荷保護が作動することにより、補助巻線の平滑電圧の上昇を利用して過負荷保護をかけることもできる。これにより、過負荷保護が作動する出力電力を、CC端子とDD端子間の電位差検出回路91で設定可能となる。その結果、トランスの設計だけで設定する場合に比べて、過負荷保護が作動する出力電力を設定しやすくできるという効果を奏する。
本発明に係る半導体装置およびスイッチング電源装置は、自己復帰型、ラッチ停止型のどちらの過負荷保護を必要とする機器の電源に使用することが可能であり、幅広い電子機器に使用することが可能である。
以上、実施の形態におけるこれまでの説明は、すべて本発明を具体化した一例であって、本発明はこれらの例に限定されず、本発明の技術を用いて当業者が容易に構成可能な種々の例に展開可能である。