JP4860056B2 - 徐放性農薬粒剤およびその施用方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、徐放性農薬粒剤およびその施用方法に関する。さらに詳しくは、農薬活性成分を含有する核粒剤に、熱可塑性樹脂、および鉄粉または銅粉からなる被膜物質が被覆された徐放性農薬粒剤およびその施用方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来より、農薬粒剤においては、農薬活性成分による農作物への薬害が問題となっており、また農作業の省力化の面から農薬活性成分の効果の持続性が課題となっている。これらの点を解決すべく、農薬活性成分が水中へ溶出する量を制御することのできる農薬粒剤の研究が種々行われている。
【0003】
例えば、農薬活性成分を含む核を熱可塑性樹脂被膜で被覆してなる粒剤(特公平01−5002号公報)、農薬活性成分を含む核に被覆層を設けて活性成分を徐放化する際の被膜むらを防く手段を施した粒剤(特公平01−4483号公報)、農薬活性成分を含む核を水不溶性オリゴマーまたはポリマーで被覆した粒剤(特公平02−57047号公報)、スルホニルウレア系除草活性成分と活性炭とパラフィンワックスと鉱物質担体との混合物よりなる粒剤(特開昭63−35504号公報)、粒状の泡ガラスから可溶性アルカリ分を溶出させてピンホールを生じさせた後、泡ガラス粒のピンホールに香料、肥料、除草剤の液体を含浸させた泡ガラスよりなる農薬(特開昭63−176337号公報)、固体状の農薬活性成分の粒子表面に直接に疎水性物質の微粉体を付着または固定化してなる農薬(特開平01−316302号公報)が挙げられる。
【0004】
さらに、水中非崩壊性の農薬粒剤の表面に疎水性油状液体を含浸させ、疎水性微粉で被覆してなる粒剤(特開平02−286602号公報)、ベントナイトが凝集した形で水中で好ましい状態で崩壊し得る、ベントナイト、農薬活性成分および塩化カルシウムからなる粒剤(特開平03−106802号公報)、殺虫活性成分を含む吸収性微粉体等を非吸油性粒状担体の表面に被覆してなる粒剤(特開平03−7202号公報)、ポリグリセリン脂肪酸エステルと農薬活性成分とを含む粉状混合物を造粒することにより得られた粒状物であって、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBを変化させる制御手段を施した粒剤(特開平05−237号公報)、農薬活性成分を含む吸収性微粉体または農薬活性成分で非吸油性の粒状担体を被覆する際、被覆用の接着剤として水溶性接着剤と水不溶性接着剤との混合物を用いてなる粒剤(特開平04−352701号公報)、セルロース粉体を10%以上含有する不活性粒状担体によって農薬活性成分を被覆してなる粒剤(特開平05−17302号公報)、農薬活性成分とベントナイトを必須成分として含み、かつポバール、酢酸ビニル樹脂エマルション等と水との混合物をバインダーとして含む組成物を非崩壊性粒に被覆してなる粒剤(特開平05−906号公報)、農薬活性成分を含有する粒状担体の表面に二重の被覆層を形成してなる重層被覆された粒状農薬(特開平06−9303号公報、特開平06−9304号公報、特開平06−72805号公報、特開平06−80514号公報)などが挙げられる。
【0005】
しかしながら、上記の従来技術に係る農薬粒剤は製造方法が煩雑であったり、また農薬活性成分の農作物に対する薬害軽減効果や防除効果などの点で必ずしも満足できるものではなく、特に、生育初期の農作物に該農薬粒剤を施用した場合において、農作物に対する薬害は強く発現し、防除効果は持続性を有しないなどの問題があった。
【0006】
したがって、簡便な製造方法で製造することができ、かつ生育初期の農作物に施用したとしても農薬活性成分の農作物に対する薬害を軽減でき、さらに本来の防除効果を低下させることなく効果の持続性を図ることができる農薬粒剤の開発が望まれていた。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、農薬粒剤から農薬活性成分が溶出する場合に、初期溶出を抑え、一定期間経過後に徐々に該活性成分の溶出を開始する新規な農薬粒剤および該粒剤を用いた施用方法を提供することを目的とする。
【0008】
【発明の概要】
本発明に係る徐放性農薬粒剤は、
農薬活性成分を含有する核粒剤(A)に被膜物質(B)が被膜されてなり、
被膜物質(B)が
(b1)熱可塑性樹脂100重量部に対して
(b2)鉄粉または銅粉1〜100重量部
からなることを特徴としている。
【0009】
熱可塑性樹脂(b1)が、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはウレタン樹脂より選ばれることが望ましい。
農薬活性成分が3−アリルオキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(プロベナゾール)であることも望ましい。
本発明に係る徐放性農薬粒剤の施用方法は、
農薬活性成分が3−アリルオキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(プロベナゾール)である上記徐放性農薬粒剤を稲種子の播種時に施用することを特徴としている。
【0010】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る徐放性農薬粒剤およびその施用方法ついて具体的に説明する。
本発明に係る徐放性農薬粒剤は、農薬活性成分を含有する核粒剤に被膜物質が被膜されてなる。まず、核粒剤について説明する。
【0011】
なお、本発明における重量%および重量比は、全組成物の乾物重量から算出される。
核粒剤(A)
本発明で用いられる核粒剤は、その製造粒径が通常0.6〜2.0mm、好ましくは0.8〜1.5mmであることが望ましい。
【0012】
核粒剤の調製方法は特に限定されるものではなく、従来知られた方法で調製することができる。具体的には、以下の工程1〜3によって調製することが好ましい。
工程1:農薬活性成分、非晶質シリカ、界面活性剤、結合剤および担体ならびに所望ならばその他の補助剤を一緒にハンマーミルで混合し、固体粉末状の原料組成物を得る。
【0013】
工程2:この粉末状の原料組成物に、適当量の水を添加し混練した後、その混練物をバスケット型押し出し造粒機に入れて造粒し、粒状の組成物を得る。
工程3:この粒状の組成物を流動乾燥させ、さらに目標の粒度分布を有するように篩別して核粒剤を得ることができる。
また、本発明で用いられる核粒剤は、農薬活性成分、その他の添加剤(界面活性剤、結合剤、担体、その他の成分など)からなる。
【0014】
以下に、核粒剤に用いる農薬活性成分、その他の添加剤について説明する。
〔農薬活性成分〕
本発明に係る徐放性農薬粒剤に含まれる農薬活性成分は、殺虫活性成分が1種以上および/または殺菌活性成分が1種以上、または除草活性成分が1種以上からなる。
【0015】
本発明に用いられる農薬活性成分の含量は、特に限定されるものではないが、一般的には製剤全量の0.01〜90重量%、好ましくは、0.1〜60重量%が望ましい。農薬活性成分の種類により、10アール当たりの必要な施用量となるように適当な含量で配合すればよい。
そのような殺虫活性成分、殺菌活性成分、除草活性成分としては特に限定されるものではないが、以下のものを挙げることができる。なお、これらの農薬活性成分名は、「農薬ハンドブツク1994年版」(社団法人日本植物防疫協会発行)に記載の一般名である。
【0016】
本発明に用いられる農薬活性成分としては、下記の殺菌活性成分であるプロベナゾールを用いることが好ましい。
殺虫活性成分
本発明に用いられる殺虫活性成分としては、CYAP、MPP、MEP、ECP、ピリミホスメチル、ダイアジノン、キナルホス、イソキサチオン、ビリダフェンチオン、クロリピリホスメチル、クロルピリホス、ESP、バミドチオン、マラソン、PAP、ジメトエート、ホルモチオン、チオメトン、エチルチオメトン、ホサロン、PMP、DMTP、プロチオホス、スルプロホス、プロフェノホス、ピラクロホス、DDVP、モノクロトホス、BRP、CVMP、ジメチルビンホス、CVP、プロパホス、アセフェート、イソフェンホス、DEP、EPN、エチオン、NAC、MTMC、MIPC、BPMC、PHC、XMC、エチオフェンカルブ、ベンダイオカルブ、ピリミカーブ、カルボスルファン、ベンフラカルブ、メソミル、オキサミル、チオジカルブ、アラニカルブ、アレスリン、レスメトリン、テフルトリン、ビフェントリン、ペルメトリン、シペルメトリン、シハロトリン、シフルトリン、フェンプロパトリン、トラロメトリン、シクロプロトリン、フェンバレレート、フルシトリネート、フルバリネート、エトフェンプロックス、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ、ジフルベンズロン、テフルベンズロン、クロルフルアズロン、フルフェノクスロン、テブフェノジド、デプロフェジン、フェノキシカルブ、ベンゾエピン、イミダクロプリド、メタアルデヒド、イソプロチオラン、DBEDC、除虫菊、デリス、硫酸ニコチン、マシン油、DCV、BT、CPCBS、ケルセン、フェニソブロモレート、テトラジホン、BPPS、キノメチオネート(キノキサリン系)、アミトラズ、ベンゾメート、フェノチオカルブ、へキシチアゾクス、酸化フェンブタスズ、ジエノクロル、フェンピロキシメート、デブフェンピラド、フルアジナム、ピリダベン、クロフェンテジン、DPC(ジノカプ)、ミルベメクチン、ビアラホス、DCIP、メチルイソチオシアネート、ダゾメット、モナクロスポリウム・フィマトパガム、スタイナーネマ・カーポカプサエ、ベノミル、エトプロホス、メスルフェンホス、ホスチアゼート、塩酸レバミゾール、カーバム、カーバムナトリウムなどが挙げられる。
【0017】
殺菌活性成分
本発明に用いられる殺菌活性成分としては、無機銅(硫酸銅、生石灰、塩基性硫酸銅カルシウム、塩基性硫酸銅、塩基性塩化銅、水酸化第二銅、銅アンモニウム錯塩)、有機銅、ノニルフェノールスルホン酸銅、DBEDC、テレフタル酸銅、硫黄、ジネブ、マンネブ、マンゼブ、アンバム、ポリカーバメート、有機硫黄二ッケル塩、プロピネブ、ジラム、チウラム、チアジアジン、キャプタン、スルフェン酸系、TPN、フサライド、IBP、EDDP、トルクロホスメチル、ピラゾホス、ホセチル、チオファネートメチル、ベノミル、カルベンダゾール、チアベンダゾール、イプロジオン、ビンクロゾリン、プロシミドン、フルオルイミド、オキシカルボキシン、メプロニル、フルトラニル、テクロフタラム、ペンシクロン、メタラキシル、オキサジキシル、トリアジメホン、ビテルタノール、ミクロブタニル、ヘキサコナゾール、プロピコナゾール、ジフェノコナゾール、イプコナゾール、イミベンコナゾール、トリフルミゾール、プロクロラズ、ペフラゾエート、フェナリモル、ピリフェノックス、トリホリン、有機ひ素(MAF、MAFA)、ジチアノン、キノキサリン系、DPC、ジメチリモール、フルスルファミド、ベンチアゾール、ジクロメジン、トリアジン、フェリムゾン、フルアジナム、ジエトフェンカルブ、プロベナゾール、イソプロチオラン、トリシクラゾール、ピロキロン、オキソリニック酸、イミノクタジン酢酸塩、プロパモカルブ塩酸塩、アルギン酸ナトリウム、ブラストサイジンS、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシンA、ストレプトマイシン、オキシテトラサイクリン、ミルディオマイシン、マシン油、カーバム、PCNB、ヒドロキシイソキサゾール、エクロメゾール、ダゾメット、クロロネブ、メタスルホカルブ、メチルイソチオシアネートなどが挙げられる。
【0018】
除草活性成分
本発明に用いられる除草活性成分としては、2,4PA、MCP、MCPB、MCPP、トリクロビル、フェノチオール、クロメプロップ、ナプロアニリド、フェノキサプロップエチル、フルアジホップ、キザロホップエチル、CNP、クロメトキシニル、ビフェノックス、IPC,フェンメディファム、MBPMC、ベンチオカーブ、オルソベンカーブ、エスプロカルブ、モリネート、ジメピペレート、ビリブチカルブ、DCPA、アラクロール、ブタクロール、プレチラクロール、メトラクロール、テニルクロール、ブロモブチド、メフェナセツト、ナプロパミド、ジフェナミド、プロピザミド、イソキサベン、アシュラム、DCMU、リニュロン、シデュロン、ダイムロン、メチルダイムロン、カルブチレート、イソウロン、チアザフルロン、エチジムロン、テブチウロン、ベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、フルザスルフロン、チフェンスルフロンメチル、イマゾスルフロン、メトスルフロンメチル、CAT、アトラジン、シメトリン、アメトリン、プロメトリン、ジメタメトリン、シアナジン、へキサジノン、メトリブジン、ターバシル、ブロマシル、レナシル、PAC、ベンタゾン、ダゾメット、ピリデート、オキサジアゾン、ピラゾレート、ピラゾキシフェン、ベンゾフェナッブ、パラコート、ジクワット、トリフルラリン、ベスロジン、プロジアミン、ペンディメタリン、MDBA、MDBAナトリウム塩、ピクロラム、イマザピル、イマザキンアンモニウム塩、ジチオピル、TCTP、DPA、テトラピオン、ピペロホス、アミプロホスメチル、ブタミホス、SAP、グリホサート、グリホサートアンモニウム塩、グリホサートトリメシウム塩、グリホサートナトリウム塩、ビアラホス、グルホシネート、アイオキシニル、DBN、DCBN、アロキシジム、セトキシジム、ACN、クロルフタリム、シンメチリン、ベンフレセート、カーバム、マレイン酸ヒドラジド、塩素酸塩、シアン酸塩などが挙げられる。
【0019】
〔その他の添加剤〕
界面活性剤
本発明に用いられる界面活性剤としては、農薬製剤に常用される非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤および両性界面活性剤が用いられ、特に限定されるものではないが、具体的には以下に例示される界面活性剤から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0020】
本発明に用いられる非イオン界面活性剤としては、アルキルエーテル、ポリオキシエチルンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ホリオキシエチレンアルキレンアリールフェニル工一テル、ポリオキシエチレンアルキレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックホリマーなどが挙げられる。
【0021】
陰イオン界面活性剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩ジアルキルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェートなどがが挙げられる。
陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩アルキルベタイン、アミンオキサイドなどが挙げられる。
【0022】
結合剤
本発明に用いることができる結合剤は特に限定されないが、次の結合剤、例えば、ポリビニルアルコール、澱粉、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルビロリドン、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カルシウムなどを使用することができる。
【0023】
担体
本発明に用いることができる担体は特に限定されないが、クレー、珪石、タルク、ベントナイト、炭酸カルシウム、軽石、ケイソウ土、バーミキユライト、パーライト及び結晶質シリカなどが挙げられ、これらのうちから選ばれる1種以上を用いることができる。
【0024】
その他の成分
また、本発明に用いることができる物理性改良剤としてはヒマシ油、ゴマ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、綿実油、大豆油などの植物油などが挙げられる。
本発明の粒剤には、上記の農薬活性成分、界面活性剤、結合剤、担体以外に、農薬活性成分の安定化剤、固結剤、顔料、色素などの成分を配合してもよい。
【0025】
被膜物質(B)
本発明に係る徐放性農薬粒剤は、上述の核粒剤(A)に、上述の被膜物質(B)が被覆されてなる。
該農薬粒剤は、核粒剤(A)100重量部に対して、被膜物質(B)が0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜10重量部被覆されてなることが望ましい。本発明において被膜物質とは、固体状物質を指す。
【0026】
上記数値範囲にあることによって、農薬粒剤から農薬活性成分の初期溶出を抑え、一定期間経過後に徐々に該活性成分の溶出を開始する徐放性農薬粒剤を得ることができる。
本発明において初期溶出とは、農薬粒剤を水中に投入してから5日経過後までの農薬活性成分の水中溶出を指し、一定期間経過後の「一定期間」とは、同様に農薬粒剤を水中に投入してから5日経過するまでの期間を指すものである。
【0027】
本発明に用いられる被膜物質(B)は、熱可塑性樹脂(b1)、鉄粉または銅粉(b2)およびその他の成分を含有してなる。
被膜物質(B)は、熱可塑性樹脂(b1)100重量部に対し、鉄粉または銅粉(b2)1〜100重量部、好ましくは20〜100重量部、さらに好ましくは30〜100重量部であることが望ましい。
【0028】
熱可塑性樹脂(b1)、鉄粉または銅粉(b2)が上記範囲にあることによって、農薬粒剤から農薬活性成分の初期溶出を抑え、ある一定期間経過後に徐々に該活性成分の溶出を開始する徐放性農薬粒剤を得ることができる。
以下、本発明に用いられる被膜物質の組成物である熱可塑性樹脂、金属粉、その他の成分について説明する。
【0029】
〔熱可塑性樹脂(b1)〕
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(b1)は、被膜物質(B)全体の45〜99.5重量%からなる。
そのような熱可塑性樹脂(b1)としては、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−アクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン−アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン−塩化ビニル共重合体樹脂などが挙げられ、好ましくはスチレン−アクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、さらに好ましくは酢酸ビニル共重合体樹脂を用いることが望ましい。本発明に用いられる熱可塑性樹脂(b1)は、上記の樹脂から選ばれてなる。
【0030】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(b1)は、上記の樹脂から選ばれる1種以上からなる。
〔鉄粉または銅粉(b2)〕
本発明で用いられる鉄粉または銅粉(b2)のような金属粉は、水分子の存在により酸化が促進され、体積が大きくなり、被膜形成物質を壊す特性を有するため好ましい。特に体積膨張が著しい鉄粉を用いることが望ましい。ニッケル、クロム、アルミニウムなどのように金属全体に錆が進展しにくく体積膨張の小さい金属の粉は、本発明の目的から好ましくない。
【0031】
本発明で用いられる鉄粉または銅粉(b2)の添加量は、被膜物質中における上記重量比および熱可塑性樹脂の添加量から求められる。
このような鉄粉または銅粉は、使用する農薬活性成分の種類やその使用量、熱可塑性樹脂の種類やその使用量などにより、適宜選択し使用される。また、鉄粉または銅粉の粒子の大きさは粒径で10〜1000μmで、好ましくは10〜100μmである。
【0032】
〔その他の成分〕
また、本発明に用いられる被覆物質おいては、熱可塑性樹脂(b1)、および鉄粉または銅粉(b2)以外に添加金属粉の酸化を促進する固体有機酸等を添加することもできる。
上記固体有機酸としては、例えば、コハク酸、DL−リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。
【0033】
徐放性農薬粒剤
本発明に係る徐放性農薬粒剤は、該粒剤から水中へ農薬活性成分が溶出する場合に、初期溶出を抑え、さらに、一定期間経過後に徐々に該活性成分の溶出を開始するものである。
本発明において「初期溶出」とは、農薬粒剤を水中に投入してから5日経過後までの農薬活性成分の水中溶出を指し、一定期間経過後の「一定期間」とは、同様に農薬粒剤を水中に投入してから5日経過するまでの期間を指す。
【0034】
本発明に係る金属粉を含有した農薬粒剤は、農薬活性成分の水中溶出率が、水中投入時から5日目まで(初期溶出)は15%以下、好ましくは10%以下であり、かつ、15日後〜77日後に、好ましくは15日後〜63日後に100%であることが望ましい。
本発明において「徐放性農薬粒剤」とは、上述の溶出パターンを示す農薬粒剤を指すものである。
【0035】
農薬活性成分の水中溶出率が上記範囲にあることにより、農作物が生育初期の段階において本発明に係る徐放性農薬粒剤を施用しても、農薬活性成分の本来の防除効果を低下させることなく効果の持続性を図ることができ、農薬活性成分の農作物に対する薬害を軽減することができる。
農薬活性成分の水中溶出率が、水中投入から5日目まで(初期溶出)において15%より大きくなると、農作物が生育初期の段階においては薬害が発現し、
また、初期溶出が上記範囲内であったとしても、該水中溶出率が14日目までに100%となると農薬活性成分の効果の持続性を保つことができず、
さらに、初期溶出が上記範囲内であったとしても、該水中溶出率が77日目以降に100%となると、農薬活性成分の本来の防除効果を低下させることとなり好ましくない。
【0036】
このような農薬活性成分の水中溶出率の測定法は、次のように行なった。
1000ミリリットル容の大きさのビーカーに、3度硬水を500m1入れ(水深6cm)、本発明の徐放性農薬粒剤を均一に水中に散粒する。ビーカーを20℃の暗室に放置し、一定期間毎に、3か所(水深5cm)より採水し、採水した水の中に含まれるプロベナゾール濃度を液体クロマトグラフィーで測定して、ビーカー中の3度硬水に溶出した農薬活性成分の溶出量を算定した。
【0037】
供試粒剤中に含まれる農薬活性成分が、ビーカー中の水500m1に完全に溶出した時の溶出量を100とし、一定時間ごとに測定した溶出量から農薬活性成分の溶出率を算出した。
本発明に係る徐放性農薬粒剤の調製方法は特に限定されないが、上述の方法で得られた核粒剤の表面に、熱可塑性樹脂エマルションと金属粉の混合物を吹き付け、乾燥・篩別することによって製造することできる。
【0038】
上記徐放性農薬粒剤は、核粒剤の表面に熱可塑性樹脂エマルションと金属粉の混合物を吹き付けることで製造され、核粒剤内部に該混合物(水溶液)の一部が含浸するため、乾燥後、被覆物質は核粒剤と完全に分離されて形成されているものではなく、被覆物質の一部は核粒剤内部で形成される。また、核粒剤に被覆される被覆物質の膜厚は特に限定されず、使用する熱可塑性樹脂の種類、徐放性農薬粒剤の使用場面、徐放性農薬粒剤の製造条件や核粒剤の組成などに応じて変化するものである。
【0039】
徐放性農薬粒剤の施用方法
本発明に係る徐放性農薬粒剤の施用方法は、特に限定されるものではなく、通常の農薬粒剤が施用される方法において使用することができる。そのような方法としては、イネの播種時に施用する方法、水田施用において農薬粒剤を田植えと同時に水面施用する方法、水田施用において農薬粒剤を田植え後に水面施用する方法が挙げられる。
【0040】
本発明の徐放性農薬粒剤は、農薬活性成分としてプロベナゾールを用いることが好ましく、そのような徐放性農薬粒剤は上記施用方法を用いることができ、特にイネの播種時に施用する方法に用いることが有用である。
ここでイネの播種時とは、具体的に、稲の育苗箱施用または水田施用において被覆農薬粒剤を種子と同時に施用する場合、またはあらかじめ育苗培土に徐放性農薬粒剤を混和して使用する場合を指すものである。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、農薬粒剤から農薬活性成分の初期溶出を抑え、ある期間経過後に徐々に該活性成分の溶出を開始する徐放性農薬粒剤および該粒剤を用いた施用方法を提供することができる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例、比較例で「部」とあるのはすべて重量部を意味する。
【0043】
【実施例1】
農薬活性成分(殺菌剤)としてプロベナゾール原体24.0部、非晶質シリカとしてホワイトカーボン5.0部、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.2部、結合剤としてポリビニルアルコール2.0部、担体としてクレー67.5部を共にハンマーミルて混合粉砕して均一な粉末混合物98.7部を得た。
【0044】
これに適量の水を添加しよく混練した。得られた混練物をバスケツト型押し出し造粒機で造粒し、流動乾燥した後、篩別により整粒をし、本発明の徐放性農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
得られた核粒剤の表面に、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(ポリゾールAP−4710(昭和高分子(株)の商品名)の固形分)1.0部と鉄粉(試薬)0.3部を混合した液体をスプレーコーティングし、再度乾燥篩別することにより本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
【0045】
農薬粒剤中の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0046】
【実施例2】
実施例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を65.5部に減量し、粉末混合物96.7部を得た。
得られた粉末混合物を実施例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして本発明の徐放性農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0047】
実施例1記載のスチレン−アクリル酸エステル共重合体を3.0部とし、実施例1と同様に、上記核粒剤にスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより本発明の徐放性農薬粒剤を調製した。
徐放性農薬粒剤の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0048】
【実施例3】
実施例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を63.5部に減量し、粉末混合物94.7部を得た。
得られた粉末混合物を実施例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして本発明の徐放性農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0049】
実施例1に記載のスチレン−アクリル酸エステル共重合体を5.0部とし、実施例1と同様に、上記核粒剤にスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより本発明の徐放性農薬粒剤を調製した。
徐放性農薬粒剤の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0050】
【実施例4】
実施例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を67.79部とし、粉末混合物98.99部を得た。
得られた粉末混合物を実施例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして本発明の徐放性農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0051】
実施例1に記載の鉄粉の含量を0.01部とし、実施例1と同様に、上記核粒剤にスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより本発明の徐放性農薬粒剤を調製した。
徐放性農薬粒剤の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0052】
【実施例5】
実施例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を67.7部とし、粉末混合物98.9部を得た。
得られた粉末混合物を実施例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして本発明の徐放性農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0053】
実施例1に記載の鉄粉の含量を0.1部とし、実施例1と同様に、上記核粒剤にスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより本発明の徐放性農薬粒剤を調製した。
徐放性農薬粒剤の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0054】
【実施例6】
実施例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を67.3部に減量し、粉末混合物98.5部を得た。
得られた粉末混合物を実施例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして本発明の徐放性農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0055】
実施例1に記載の鉄粉の含量を0.5部とし、実施例1と同様に、上記核粒剤にスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより本発明の徐放性農薬粒剤を調製した。
徐放性農薬粒剤の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0056】
【実施例7】
実施例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を66.8部に減量し、粉末混合物98.0部を得た。
得られた粉末混合物を実施例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして本発明の徐放性農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0057】
実施例1に記載の鉄粉の含量を1.0部とし、実施例1と同様に、上記核粒剤にスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより本発明の徐放性農薬粒剤を調製した。
徐放性農薬粒剤の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0058】
【実施例8】
実施例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を66.8部に減量し、粉末混合物98.0部を得た。
得られた粉末混合物を実施例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして本発明の徐放性農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0059】
実施例1に記載の鉄粉を銅粉(試薬)1.0部とし、実施例1と同様に、上記核粒剤にスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより本発明の徐放性農薬粒剤を調製した。
徐放性農薬粒剤の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0060】
【実施例9】
実施例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を67.4部に減量し、粉末混合物98.6部を得た。
得られた粉末混合物を実施例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして本発明の徐放性農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0061】
得られた核粒剤の表面に、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(ポリゾールAP−4710(昭和高分子(株)の商品名)の固形分)1.0部、鉄粉(試薬)0.3部、さらにクエン酸0.1部を混合した液体をスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
徐放性農薬粒剤中の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0062】
【実施例10】
実施例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を66.7部に減量し、粉末混合物97.9部を得た。
得られた粉末混合物を実施例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして本発明の徐放性農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0063】
得られた核粒剤の表面に、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(ポリゾールAP−4710(昭和高分子(株)の商品名)の固形分)1.0部、鉄粉(試薬)1.0部、さらにクエン酸0.1部を混合した液体をスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
徐放性農薬粒剤中の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0064】
【実施例11】
実施例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を65.5部に減量し、粉末混合物96.7部を得た。
得られた粉末混合物を実施例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして本発明の徐放性農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0065】
得られた核粒剤の表面に、酢酸ビニル共重合体(ポリゾールSH−502(昭和高分子(株)の商品名)の固形分)3.0部、鉄粉(試薬)0.3部を混合した液体をスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
徐放性農薬粒剤中の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0066】
【実施例12】
実施例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を64.8部に減量し、粉末混合物96.0部を得た。
得られた粉末混合物を実施例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして本発明の徐放性農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0067】
得られた核粒剤の表面に、ウレタン樹脂(スーパーフレックス126(第一工業製薬(株)の商品名)の固形分)3.0部、鉄粉(試薬)1.0部を混合した液体をスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより本発明の徐放性農薬粒剤を得た。
徐放性農薬粒剤中の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0068】
【比較例1】
殺菌剤としてプロベナゾール原体24.0部、非晶質シリカとしてホワイトカーボン5.0部、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.2部、結合剤としてポリビニルアルコール2.0部、担体としてクレー68.8部を共にハンマーミルで混合粉砕して均一な粉末混合物100.0部を得た。これに適量の水を添加しよく混練した。得られた混練物をバスケット型押し出し造粒機で造粒し、流動乾燥した後に篩別により整粒をして農薬粒剤を調製した。
【0069】
農薬粒剤中の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0070】
【比較例2】
比較例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を67.8部に減量し、粉末混合物99.0部を得た。
得られた粉末混合物を比較例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして被覆農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0071】
得られた核粒剤の表面に、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(ポリゾールAP−4710(昭和高分子(株)の商品名)の固形分)1.0部の液体をスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより被覆農薬粒剤を得た。
被膜農薬粒剤中の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0072】
【比較例3】
比較例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を66.3部に減量し、粉末混合物97.5部を得た。
得られた粉末混合物を比較例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして被覆農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0073】
得られた核粒剤の表面に、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(ポリゾールAP−4710(昭和高分子(株)の商品名)の固形分)1.0部と鉄粉(試薬)1.5部を混合した液体をスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより被覆農薬粒剤を得た。
農薬粒剤中の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0074】
【比較例4】
比較例1で調製された粉末混合物に含まれるクレーの含量を66.8部に減量し、粉末混合物98.0部を得た。
得られた粉末混合物を比較例1と同様にして造粒、乾燥および整粒をして被覆農薬粒剤の核となる核粒剤を得た。
【0075】
得られた核粒剤の表面に、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(ポリゾールAP−4710(昭和高分子(株)の商品名)の固形分)1.0部とニッケル粉(試薬)1.0部を混合した液体をスプレーコーティングし、再度、乾燥篩別することにより被覆農薬粒剤を得た。
農薬粒剤中の各成分の含量(重量%)は後記の表−1に要約して示される。
【0076】
次に、試験例1〜3により本発明の徐放性農薬粒剤が農薬活性成分の徐放性を示すこと、さらに活性成分の防除効果が低減せずに薬害軽減作用を示すことを例証する。
試験例1(農薬活性成分の水中溶出試験)
1000mlの大きさのビーカーに3度硬水500m1を入れ(水深6cm)、実施例1〜12および比較例1〜4に準じて調製した徐放性農薬粒剤42mgを均一に水中に散粒する。ビーカーを20℃の暗室に放置し、一定期間毎に水深5cmの深さ3か所より採水し、該水試料中のプロベナゾール濃度を液体クロマトグラフィーで測定してビーカー中の水に溶出した全体のプロベナゾール溶出量を算定した。
【0077】
供試粒剤中のプロベナゾール全量がビーカー中の水500m1に完全に溶出した時のプロペナゾール濃度は20ppmであり、一定時間ごとに測定した溶出量から溶出率を算出した。得られた試験結果を次の表−1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜12で得た本発明の徐放性農薬粒剤は、水中に投入してから2日〜7日後に、農薬活性成分であるプロペナゾールが水中に溶出を開始し、そして該活性成分が溶出を開始すると、農薬活性成分は15日後〜77日後には完全に水中に溶出することが確認された。つまり、実施例1〜12で得た本発明の徐放性農薬粒剤は、農薬活性成分が溶出の抑制、特に初期溶出の抑制を受け、二次曲線的な溶出パターンを示すことが確認された。
【0080】
これに対して、比較例1の粒剤は、水中に投入後直ちに活性成分の溶出を開始し、水中投入してから5日後には農薬活性成分の溶出率が52%を示し、初期の溶出抑制は全く認められなかった。
鉄粉の混入しない比較例2および比較例4の粒剤は、農薬活性成分が溶出を開始するのが遅く、比較例2は水中に投入してから5日後まで農薬活性成分の水中溶出は認められず(0%)、比較例4は水中投入してから5日後に1%の該成分の水中溶出を示し、溶出抑制は確認された。しかしながら、農薬活性成分の溶出が強く抑制されているため、水中投入77日後においても活性成分が完全に(100%)溶出しなかった。
【0081】
また、鉄粉を必要以上に多量に入れた比較例3の粒剤は、必要量の鉄粉を含有する粒剤(実施例)と比べ初期の溶出抑制が認められず、さらに、水中投入14日後には溶出率が100%を示し、該成分の溶出に持続性は認められなかった。
次の試験例2および3により、プロベナゾールを活性成分とした本発明の徐放性農薬粒剤を水稲育苗に使用する育苗培土に混和処理した場合に、プロベナゾールによる水稲薬害を軽減あるいは防止する効果を有することを証明する。また、イネいもち病を長期間にわたって防除する効果を有することを証明する。
【0082】
試験例2(水稲苗生育への影響)
従来慣用の育苗用培土4リットルに対して、本発明の徐放性農薬粒剤を100gおよび50gを加えてよく混和した。実施例1〜3の徐放性農薬粒剤が混和された育苗培土を、標準育苗箱(横30cm×縦60cm×高さ3cm)1箱あたりに、床土として3リットル相当量を充填し、その床土の上に通常の種子消毒と予備処置をした稲種子(品種:日本晴)を播種し、さらに先の農薬粒剤混和培土を標準育苗あたり1リットル相当量覆土した。
【0083】
上記育苗箱を32℃の出芽器庫内で2日間静置し、播種した稲種子の出芽を促した。出芽処理後の育苗箱は、ガラス温室内に移動して育苗管理を行なった。
稲種子の出芽率は、標準育苗箱の1/10面積の育苗箱を用いて各育苗箱あたり400粒播種し、播種2日後および7日後に出芽数を確認して算出した。出芽方法は上記条件に準じて行なった。
【0084】
なお本試験は、1試験区あたり1/10育苗箱1箱とし、5反復で実施し、その平均値を算出した。結果は表−2に示す。
播種後の育苗箱内の水稲苗生育は、標準育苗箱を用いて、1箱あたり180gを播種した。出芽方法は上記条件に準じて行なった。
出芽処理後の育苗箱は、1日間20℃の自然光を50%遮光した人工気象室で緑化処理した後、透明アクリル樹脂製の温室内に移動した。播種後21日間育苗管理し、草丈、葉令および根張り程度を調査した。なお本試験は、1試験区あたり標準育苗箱1箱として、3反復行った。
【0085】
草丈は、各試験区より1サンプルを1個体として計100サンプルについて計測し、3反復の平均値を算出し、無処理区を100とした場合の比率(%)を示した。葉令は、各試験区より1サンプル1個体として計100サンプルについて計測し、3反復の平均値を算出した。また、根張り程度は、播種21日後に無処理区との対比でその程度を達観的に調査した。結果は表−2に示す。
【0086】
比較のため、前記のプロベナゾールを含むが、初期溶出制御のない粒剤(比較例1)を上記と同様に処理して比較区とし、プロベナゾールを含む粒剤を全く処理していない試験区を無処理区とした。
【0087】
【表2】
【0088】
上記表−2の結果から判るように、実施例1〜3の初期溶出が抑制された徐放性農薬粒剤が処理された育苗箱においては(発明区)、播種された籾の出芽率は90%以上を示し、無処理区との発芽率に大差はなかった。また、播種後の苗生育も無処理区との生育差はなく、播種21日後では、本田に移植できる健全な苗が得られた。
【0089】
これに対して、初期溶出抑制の処理が施されていないプロベナゾール粒剤(比較例1)を施用した比較区では、発明区および無処理区と比べて稲生育は劣り、苗生育は不良であり、薬害を生じたことが明らかであった。
試験例3(イネいもち病防除効果)
従来慣用の育苗用培土4リットルに対して本発明の徐放性農薬粒剤を50g加えてよく混和した。該農薬粒剤が混和された育苗培土を、標準育苗箱(横30cm×縦60cm×高さ3cm)1箱あたりに、床土として3リットル相当量を充填し、その床土上に通常の種子消毒と予備処置をした稲種子(品種:コシヒカリ)を播種し、さらに先の農薬粒剤混和培土を標準育苗あたり1リットル相当量覆土した。
【0090】
上記育苗箱は32℃の出芽器庫内で2日間静置することにより出芽を促した。出芽処理後の育苗箱は、ビニール温室内に移動して、播種後21日間育苗管理した。
例年いもち病が自然発生する水田に、1区の面積が60m2(3m×20m)の試験区を作り、上記方法で育苗した稚幼苗を田植機で移植した。
【0091】
イネいもち病の発病調査は、移植50日後および60日後に、各試験区150株について各株の上位3葉の病斑数を調査した。
なお、比較のために、比較例1の方法で調製した初期溶出抑制の処理が施されていないプロベナゾール粒剤を処理した稚幼苗および比較例2の方法で金属粉を含まないで調製したプロベナゾール粒剤を処理した稚幼苗を同様に移植した(比較区)。
各処理区の効果は、プロベナゾール粒剤を処理しない稚幼苗移植区(無処理区)の病斑数との対比から防除価(%)を算出した。結果は表−3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
表−3の結果から判るように、本発明の徐放性農薬粒剤(実施例1〜3)を用いた発明区において、水田移植後長期間にわたり、自然感染によるイネいもち病の発病がほぼ完全にまたは実質的に防除されたことが示された。
これに対して、比較区(比較例1および2)では、いもち病に対する防除効果は不充分であった。
Claims (3)
- 農薬活性成分を含有する核粒剤(A)に被膜物質(B)が被覆されてなり、
被膜物質(B)が
(b1)熱可塑性樹脂100重量部に対し
(b2)鉄粉または銅粉が1〜100重量部
からなり、
熱可塑性樹脂(b1)が、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体またはウレタン樹脂より選ばれる
ことを特徴とする徐放性農薬粒剤。 - 農薬活性成分が3−アリルオキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(プロベナゾール)であることを特徴とする請求項1に記載の徐放性農薬粒剤。
- 請求項2に記載の徐放性農薬粒剤を稲種子の播種時に施用することを特徴とする徐放性農薬粒剤の施用方法。
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