本発明は、主鎖末端および/または側鎖末端に一般式(1):
(式中、X1は、塩素原子、フッ素原子、−OH、−OR1(R1は、酸素原子、ハロゲン原子を含んでも良い炭素数1〜10の炭化水素基である))
で示される構造を有するビニリデンフルオライド系含フッ素エラストマーに、温度25℃、水溶媒中の塩基定数Kbが1×10-6以下である一般式(2):
(式中、R2は、水素原子、または、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基には、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子を含んでもよく、R3は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子を含んでも良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である)
で示されるアミン化合物を作用させて主鎖末端および/または側鎖末端に一般式(3):
(式中、R2、R3は、前記と同様である)
で示される部位を導入する工程を含む含フッ素エラストマーの製造方法に関する。
本発明で用いる含フッ素エラストマーとしては、主鎖末端および/または側鎖末端に一般式(1):
(式中、X1は、塩素原子、フッ素原子、−OH、−OR1(R1は、酸素原子、ハロゲン原子を含んでも良い炭素数1〜10の炭化水素基である))で示される構造を有するVdF系含フッ素エラスマーであればよい。
一般式(1)のX1としては、これらの中でも、禁水条件で取り扱わなくても良いことから−OH、−OR1が好ましく、アミン化合物とのアミド化反応の反応性に富むことから塩素原子、フッ素原子が好ましい。
VdF系含フッ素エラストマーに、一般式(1)で示される構造を導入する方法としては、X1が−OH、−OR1の場合、含フッ素エラストマー重合時に、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を有する単量体を共重合する方法や、後述するようなヨウ素移動重合などで得られる含フッ素エラストマーのヨウ素末端に単量体を付加させる方法があげられる。
また、X1が−OHの場合、特開平11−269225号公報に記載されているように、ビニリデンフルオライド含有含フッ素エラストマーを塩基および過酸化物で処理する方法によりカルボキシル基を導入する方法も好適に用いることができ、X1が−OR1の場合、対応するアルコール(R1OH)を用いて、末端−COOHをエステル化する方法も好適に用いることができる。
X1が、塩素原子である場合は、カルボキシル基を有する含フッ素エラストマーに、五塩化リン、三塩化リン、塩化ホスホリル、塩化チオニル、塩化スリフリルなどを作用させて、酸クロライド基とすることができ、X1が、フッ素原子である場合は、カルボキシル基を含有する含フッ素エラストマーにフッ化シアヌルを作用させる方法や酸クロライド基を含有する含フッ素エラストマーにフッ化亜鉛、フッ化銀を作用させる方法で、酸フルオライド基とすることができる。
ここで、VdF系フッ素エラストマーとは、VdF由来の構造単位を含むものであればよく、特に限定されるものではない。
VdF系フッ素エラストマーとしては、VdF系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴムがあげられる。
ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴムとしては、下記一般式(6)で表されるものが好ましい。
―(M1)―(M2)―(N1)― (6)
(式中、構造単位M1はビニリデンフルオライド(m1)由来の構造単位であり、構造単位M2は含フッ素エチレン性単量体(m2)由来の構造単位であり、構造単位N1は単量体(m1)および単量体(m2)と共重合可能な単量体(n1)由来の繰り返し単位である)
一般式(6)で示されるビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴムの中でも、構造単位M1を45〜85モル%、構造単位M2を55〜15モル%含むものが好ましく、より好ましくは構造単位M1を50〜80モル%、構造単位M2を50〜20モル%である。構造単位N1は、構造単位M1と構造単位M2の合計量に対して、0〜10モル%であることが好ましい。
含フッ素エチレン性単量体(m2)としては、1種または2種以上の単量体が利用でき、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体があげられるが、これらのなかでも、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)が好ましい。
単量体(n1)としては、単量体(m1)および単量体(m2)と共重合可能なものであれば、いかなるものでもよいが、たとえばエチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどがあげられる。
また、単量体(n1)としては、架橋部位を与える単量体が好ましい。
このような架橋部位を与える単量体としては、たとえば、一般式(7):
CY1 2=CY1Rf 1CHR5−X1 (7)
(式中、Y1は水素原子、フッ素原子または−CH3、Rf 1は1個以上のエーテル型酸素原子を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状のフルオロもしくはパーフルオロアルキレン基、またはフルオロもしくはパーフルオロオキシアルキレン基、もしくはパーフルオロポリオキシアルキレン基、R5は水素原子またはメチル基、X1はヨウ素原子または臭素原子)で示されるヨウ素含有単量体、臭素含有単量体、一般式(8)〜(19):
CY2 2=CY2(CF2)n−X2 (8)
(式中、Y2は水素原子またはフッ素原子、nは1〜8の整数である)
CF2=CFCF2Rf 2−X2 (9)
(式中、Rf 2は
であり、nは0〜5の整数である)
CF2=CFCF2(OCF(CF3)CF2)m
(OCH2CF2CF2)nOCH2CF2−X2 (10)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数である)
CF2=CFCF2(OCH2CF2CF2)m
(OCF(CF3)CF2)nOCF(CF3)−X2 (11)
(式中、mは0〜5の整数、nは0〜5の整数である)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))mO(CF2)n−X2 (12)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜8の整数である)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))m−X2 (13)
(式中、mは1〜5の整数)
CF2=CFOCF2(CF(CF3)OCF2)nCF(−X2)CF3 (14)
(式中、nは1〜4の整数)
CF2=CFO(CF2)nOCF(CF3)−X2 (15)
(式中、nは2〜5の整数)
CF2=CFO(CF2)n−(C6H4)−X2 (16)
(式中、nは1〜6の整数)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))nOCF2CF(CF3)−X2 (17)
(式中、nは1〜2の整数)
CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)−X2 (18)
(式中、nは0〜5の整数)、
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2)n−X2 (19)
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数である)
(一般式(8)〜(19)中、X2は、カルボキシル基(−COOH基)またはアルコキシカルボニル基(−COOR1基(R1は、前記と同様である))
で示されるカルボキシル基またはアルコキシカルボニル基含有単量体、
一般式(20):
CH2=CH−(CF2)nX3 (20)
(式中、nは2〜8の整数)
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2)n−X3 (21)
(式中、mは、0〜5の整数、nは、1〜3の整数)
(一般式(20)、(21)中、X3はヨウ素原子または臭素原子)
で示されるヨウ素含有単量体、臭素含有単量体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
たとえば特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのヨウ素含有単量体、特開平4−217936号公報記載のCF2=CFOCF2CF2CH2Iなどのヨウ素含有単量体、特開平4−505341号公報に記載されている臭素含有単量体、特開平4−505345号公報、特開平5−500070号公報に記載されているようなシアノ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アルコキシカルボニル基含有単量体などがあげられる。
一般式(8)〜(19)で表される単量体を共重合することで、含フッ素エラストマーの主鎖末端および/または側鎖末端に、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基を導入することができ、該基が一般式(2)で示されるアミン化合物と反応することができる。
このようなVdF系フッ素ゴムとして、具体的には、VdF−HFP系ゴム、VdF−HFP−TFE系ゴム、VdF−CTFE系ゴム、VdF−CTFE−TFE系ゴムなどが好ましくあげられる。
また、本発明で用いる含フッ素エラストマーとしては、前記VdF系フッ素ゴム、TFE/プロピレン/VdF系フッ素ゴム、エチレン/HFP/VdF系フッ素ゴムのほかに、TFE/プロピレン系フッ素ゴム、エチレン/HFP系フッ素ゴム、エチレン/HFP/TFE系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、またはフルオロホスファゼン系フッ素ゴムなどがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組合わせて用いることができる。
TFE/プロピレン系フッ素ゴムとしては、下記一般式(22)で表されるものが好ましい。
―(M3)―(M4)―(N2)― (22)
(式中、構造単位M3はテトラフルオロエチレン(m3)由来の構造単位であり、構造単位M4はプロピレン(m4)由来の構造単位であり、構造単位N2は単量体(m3)および単量体(m4)と共重合可能な単量体(n2)由来の繰り返し単位である)
一般式(22)で示されるTFE/プロピレン系フッ素ゴムの中でも、構造単位M3を40〜70モル%、構造単位M4を60〜30モル%含むものが好ましく、より好ましくは構造単位M3を50〜60モル%、構造単位M4を50〜40モル%含むものである。構造単位N2は、構造単位M3と構造単位M4の合計量に対して、0〜40モル%であることが好ましい。
単量体(n2)としては、単量体(m3)および単量体(m4)と共重合可能なものであればいかなるものでもよいが、架橋部位を与える単量体であることが好ましい。たとえば、ビニリデンフルオライド、エチレンなどがあげられる。
また、下記一般式(23)で表されるパーフルオロフッ素ゴムも併用することができる。
―(M5)―(M6)―(N3)― (23)
(式中、構造単位M5はテトラフルオロエチレン(m5)由来の構造単位であり、構造単位M6はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(m6)由来の構造単位であり、構造単位N3は単量体(m5)および単量体(m6)と共重合可能な単量体(n3)由来の繰り返し単位である)
一般式(23)で示されるパーフルオロフッ素ゴムの中でも、構造単位M5を50〜90モル%、構造単位M6を10〜50モル%含むものが好ましく、より好ましくは構造単位M5を50〜80モル%、構造単位M6を20〜50モル%含むものであり、さらに好ましくは構造単位M5を55〜70モル%、構造単位M6を30〜45モル%含むものである。構造単位N3は、構造単位M5と構造単位M6の合計量に対して、0〜5モル%であることが好ましく、0〜2モル%であることがより好ましい。これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(m6)としては、たとえばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
また、単量体(n3)としては、単量体(m5)および単量体(m6)と共重合可能なものであればいかなるものでもよいが、架橋部位を与える単量体が好ましい。
このような架橋部位を与える単量体としては、たとえばビニリデンフルオライド、一般式(8)〜(21)で表される単量体などがあげられ、たとえば特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのヨウ素含有単量体、特開平4−217936号公報記載のCF2=CFOCF2CF2CH2Iなどのヨウ素含有単量体、特開平4−505341号公報に記載されている臭素含有単量体、特開平4−505345号公報、特開平5−500070号公報に記載されているようなシアノ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アルコキシカルボニル基含有単量体などがあげられる。これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
かかるパーフルオロフッ素ゴムの具体例としては、国際公開第97/24381号パンフレット、特公昭61−57324号公報、特公平4−81608号公報、特公平5−13961号公報などに記載されているフッ素ゴムなどがあげられる。
含フッ素エラストマーとしては、前記したもののほかに、熱可塑性フッ素ゴムを含むゴム組成物としても用いることができる。
本発明で用いるフッ素ゴムは数平均分子量1000〜500000のものが好ましく用いられる。
一方、フッ素ゴムは、常温で流動性を有するものであると、複雑な形状の成形品を容易に得ることができ、また、現場施工型の成形が可能となる点で好ましい。上記「常温」とは、0〜50℃を意味する。
具体的には、常温で流動性を有するフッ素ゴムとは、常温における粘度が0.1〜2000Pa・sであることが好ましく、1〜1000Pa・sであることがより好ましい。粘度が、0.1Pa・s未満であると、ポリマー鎖が短すぎて架橋しにくい傾向があり、2000Pa・sを超えると、常温で流動性を有しない場合があり、複雑な形状の成形品を得ることが困難になる傾向がある。
さらに、常温で流動性を有するフッ素ゴムは、常温におけるムーニー粘度が5〜100であるものが好ましく、50〜75であることがより好ましい。ムーニー粘度が、5未満であると、ポリマー鎖が短すぎて架橋しにくい傾向があり、100を超えると、常温で流動性を有しない場合があり、複雑な形状の成形品を得ることが困難になる傾向がある。前記ムーニー粘度は、JIS K 6300(1994年)に準拠して、ムーニー粘度計MV2000(モンサント社製)を用いて測定して得られる値である。
そして、常温で流動性を有するフッ素ゴムは、数平均分子量が500〜20000であることが好ましく、900〜10000であることがより好ましい。数平均分子量が500未満であると、架橋による3次元網目構造の形成が困難となる傾向があり、20000を超えると、常温で流動性を有しない場合があり、複雑な形状の成形品を得ることが困難になる傾向がある。数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(東ソー(株)製 HLC−8020、ポリスチレン標準)により求めた値である。
以上説明したフッ素ゴムは、常法により製造することができるが、得られる重合体は分子量分布が狭く、分子量の制御が容易である点、末端にヨウ素原子を導入することができる点から、フッ素ゴムの製造法として公知のヨウ素移動重合法が好ましい。たとえば、実質的に無酸素下で、ヨウ素化合物、好ましくはジヨウ素化合物の存在下に、前記含フッ素エラストマーを構成する単量体と、要すれば架橋部位を与える単量体を加圧下で撹拌しながらラジカル開始剤の存在下、水媒体中で乳化重合や溶液重合を行なう方法があげられる。使用するヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式(24):
R6IxBry (24)
(式中、xおよびyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R6は炭素数1〜16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1〜3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で示される化合物などをあげることができる。このようなヨウ素化合物を用いて得られる含フッ素エラストマーの末端には、ヨウ素原子または臭素原子が導入される。
一般式(24)で表される化合物としては、たとえば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン、1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、CF2Br2、BrCF2CF2Br、CF3CFBrCF2Br、CFClBr2、BrCF2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF2CF2CF2Br、BrCF2CFBrOCF3、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタン、2−ブロモ−3−ヨードパーフルオロブタン、3−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、2−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨード置換体、ならびに(2−ヨードエチル)および(2−ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合せて使用することもできる。
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、ジヨードメタンなどが好ましい。
本発明で使用するラジカル重合開始剤は、従来から含フッ素エラストマーの重合に使用されているものと同じものであってよい。これらの開始剤には有機および無機の過酸化物ならびにアゾ化合物がある。典型的な開始剤として過硫酸塩類、過酸化カーボネート類、過酸化エステル類などがあり、好ましい開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)があげられる。APSは単独で使用してもよく、またサルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤と組み合わせて使用することもできる。
乳化重合に使用される乳化剤としては、広範囲なものが使用可能であるが、重合中におこる乳化剤分子への連鎖移動反応を抑制する観点から、フルオロカーボン鎖、またはフルオロポリエーテル鎖を有するカルボン酸の塩類が望ましい。乳化剤の使用量は、添加された水の約0.05〜2重量%が好ましく、とくに0.2〜1.5重量%が好ましい。
本発明で使用するモノマー混合ガスは、カルブ(G.H.Kalb)ら、アドヴァンシーズ・イン・ケミストリー・シリーズ(Advances in Chemistry Series.),129,13(1973)に記載されるように、爆発性を有するので、重合装置には着火源となるスパークなどが発生しないように工夫する必要がある。
重合圧力は、広い範囲で変化させることができる。一般には、0.5〜7MPaの範囲である。重合圧力は、高い程重合速度が大きくなるため、生産性の向上の観点から、0.8MPa以上であることが好ましい。
前記一般式(24)で表される化合物の添加量としては、得られる含フッ素エラストマーの全重量の0.0001〜15重量%であればよい。
さらに、本発明においては、前述のようなフッ素ゴムからなる組成物を用いることもできる。
本発明で用いるアミン化合物としては、一般式(2):
示されるアミン化合物であり、さらに、温度25℃、水溶媒中の塩基定数Kbが1×10-6以下であるものである。
式中、R2は、水素原子、または、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基には、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子を含んでもよく、たとえば、水素原子、炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1〜10のアルコール、炭素数1〜10の不飽和炭化水素基などをあげることができ、メチル基、エチル基、アリル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などが好ましい。
芳香族炭化水素基とは、炭素原子のみで芳香族環状構造を形成したもの、炭素原子と窒素原子、硫黄原子、酸素原子などのヘテロ原子とから芳香族環状構造を形成したものであっても良く、さらには短環構造、多環構造(縮合環)であっても良く、それらの環状構造の任意の位置が置換基で置換されたものであっても良い。
R3は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基には、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子を含んでもよい。
また、R3としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子を含んでも良い芳香族炭化水素基であることが好ましい。
R3としては、たとえば、アリール基、官能基置換アリール基であり、フェニル基、官能基置換フェニル基であり、不飽和基を構造に含む置換基を持つフェニル基などをあげることができる。
一般式(2)で示される化合物としては、一般式(25):
(式中、R7、R8、R9は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、芳香族基)で示される化合物、官能基置換アニリン、N−フェニル−3−アミノ−1−プロペン、p−アミノスチレン、N−メチル−p−アミノスチレン、
など末端に不飽和結合を有するアミン化合物、一般式(26):
(式中、R10は炭素数2〜5の脂肪族アルキル基である)で示される水酸基を有する化合物があげられる。
N−置換アニリンとしては、N−アリルアニリンなどをあげることができる。
一般式(26)で示される化合物としては、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルプロパノールアミン、N−フェニル−n−ブタノールアミンなどをあげることができる。
これらの中でも、入手が容易である点から、N−置換アニリンであることが好ましく、N−アリルアニリンがより好ましい。
架橋点としての耐熱性に優れ、硬化反応としてのヒドロシリル化反応の反応性に富むことから官能基置換アニリンが好ましく下記の構造の化合物が好ましい。
本発明で用いるアミン化合物の塩基定数Kbは、1×10-6以下であり、1×10-7以下であることが好ましく、1×10-8以下であることがより好ましい。下限値としては、特に限定されるものではないが、1×10-14以上であることが好ましい。Kbが、前記範囲内にあることで、含フッ素エラストマー中のビニリデンフルオライド部分との反応性を抑えることができるため好ましい。
ここで、塩基定数Kbとは、塩基の解離平衡に対する平衡定数を示し、Kbが小さいほど、弱塩基であることを示す。
一般式(2)で示されるアミン化合物の添加量としては、含フッ素エラストマーの一般式(1)で示される部位の含有量の1〜100倍モル量であることが好ましく、1〜50倍モル量であることがより好ましい。1倍モル量未満であると、全ての末端が変換されない傾向があり、100倍モル量をこえてもアミン化合物のコストが上昇するだけで、メリットはない。
一般式(1)で示される基を有する含フッ素エラストマーに、一般式(2)で示されるアミン化合物を添加してアミド化することにより、含フッ素エラストマーの主鎖末端および/または側鎖末端に、
(式中、R2、R3は、前記と同様である)
で示される部位を導入することができる。
アミド化の方法としては、特に限定されるものではなく、通常用いられている方法であればよい。具体的には、たとえば、日本化学会編第4版実験化学講座22 137−173頁 丸善(株)に記載されている方法を用いることができる。
また、一般式(1)のX1が−OHである場合は、加熱し、脱水させる方法も可能であるが、前記文献に示される縮合剤を用いる方法が好ましい。
本発明は、下記一般式(4)で示される含フッ素エラストマーに関する。
式中、Mはビニリデンフルオライド系含フッ素エラストマーであり、前記したビニリデンフルオライド系含フッ素エラストマーであれば好適に用いることができる。
Bは一般式(5):
式中、R2は、水素原子、または、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基には、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子を含んでもよく、R4は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子を含んでもよい芳香族炭化水素基であり、官能基置換のアリール基、特に官能基置換フェニル基であることが、含フッ素エラストマーの官能基の耐熱性に優れ、合成が容易である点から好ましい。
R2の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基としては、炭素数1〜20ものであることが好ましく、R4の芳香族炭化水素基としては、炭素数1〜20のものであることが好ましい。
aは1以上の整数である。
また、含フッ素エラストマーの数平均分子量は、500〜500000であることが好ましく、3000〜500000であることがより好ましい。数平均分子量が、500未満では主鎖末端を用いた硬化反応を行った場合に架橋密度が上がり過ぎる傾向があり、500000をこえると含フッ素エラストマーの粘度が高すぎて架橋剤との混合が困難となる傾向がある。
次に、本発明の硬化性組成物について説明する。
本発明の硬化性組成物は、主鎖末端および/または側鎖末端に、一般式(5)で示される部位を有する含フッ素エラストマーと架橋反応可能な化合物を含むことが、充分に架橋された硬化体を得る点から好ましい。
架橋反応可能な化合物としては、含フッ素エラストマーと反応しうる官能基を分子中に複数有する多官能化合物が好ましくあげられる。多官能化合物としては、架橋を充分に行う点から、1分子あたりの官能基の保有数が少なくとも2以上、必要に応じて3以上である多官能化合物を用いることが好ましい。
また、硬化性組成物が充分に架橋するためには、前記含フッ素エラストマーが有する架橋部位に応じた多官能化合物を用いることが好ましい。以下、該多官能化合物の具体例をあげるが、該多官能化合物は1種または2種以上を用いてもよい。
架橋性部位が−OHの場合、多官能化合物としては、酸無水物、ポリエポキシ化合物、ポリイソシアナート化合物などが好ましくあげられる。
ポリイソシアナート化合物としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートなどがあげられる。上記ポリイソシアナート化合物は、プレポリマーや架橋温度を選択することができるブロック型であってもよい。ポリエポキシ化合物としては、ノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型などがあげられる。酸無水物としては、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロフラン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などがあげられる。
架橋性部位が不飽和結合である場合は、不飽和結合がヒドロシリル化反応により3次元網目構造に寄与することができる点から、多官能性化合物としては、特に2個以上のSi−H基を有する化合物であることが好ましい。
上記2個以上の−SiH基を有する化合物としては、通常、一般式(27):
R11 bHcSiO(4-b-c)/2 (27)
(式中、R11は、脂肪族不飽和結合を除く、炭素数1〜10、とくに1〜8の置換または非置換の1価炭化水素基である)で示される化合物があげられる。このような1価炭化水素基としては、たとえば、トリフルオロプロピル基などのハロゲンで置換されたアルキル基、アルキル基、フェニル基などがあげられる。これらのなかでも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、とくにメチル基、フェニル基が好ましい。
一般式(27)において、bは、0≦b<3であることが好ましく、0.6<b<2.2であることがより好ましく、1.5≦b≦2であることがさらに好ましく、cは、0<c≦3であることが好ましく、0.002≦c<2であることがより好ましく、0.01≦c≦1であることがさらに好ましい。また、b+cは、0<b+c≦3であることが好ましく、1.5<b+c≦2.7であることがより好ましい。
上記2個以上の−SiH基を有する化合物は、1分子中のケイ素原子数が好ましくは2〜1000個、より好ましくは2〜300個、さらに好ましくは4〜200個のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサンなどのシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、R11 2(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、任意にR11 3SiO1/2単位、R11 2SiO2/2単位、R11(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2またはR11SiO3/2単位を含むシリコーン樹脂などをあげることができる。
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、たとえば一般式(28)で表される化合物、一般式(28)においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基などで置換した化合物などがあげられる。
(式中、dは、2以上の整数を表す。)
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、一般式(29)で表される化合物、一般式(29)においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基などで置換した化合物などがあげられる。
(式中、eは、1以上の整数を表し、fは、2以上の整数を表す。)
分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、たとえば下記式で表される化合物、下記式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基などで置換した化合物などがあげられる。
分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、たとえば一般式(30)で表される化合物、一般式(30)においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基などで置換した化合物などがあげられる。
(式中、eは、1以上の整数を表し、fは、2以上の整数を表す。)
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンとしては、たとえば一般式(31)で表される化合物、一般式(31)においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基などで置換した化合物などがあげられる。
(式中、eは、1以上の整数を表す。)
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、たとえば一般式(32)で表される化合物、一般式(32)においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基などで置換した化合物などがあげられる。
(式中、eは、1以上の整数を表す。)
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、たとえば一般式(33)で表される化合物、一般式(33)においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基などで置換した化合物などがあげられる。
(式中、gおよびhは、それぞれ、1以上の整数を表す。)
このような化合物は、公知の方法により製造することができ、たとえばオクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/もしくはテトラメチルシクロテトラシロキサンと、末端基となり得るトリオルガノシリル基またはジオルガノハイドロジェンシロキシ基を含む化合物とを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸などの触媒の存在下、−10〜40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。上記トリオルガノシリル基を含む化合物としては、たとえばヘキサメチルジシロキサンなどがあげられ、上記ジオルガノハイドロジェンシロキシ基を含む化合物としては、たとえば1,3−ジハイドロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどがあげられる。
上記1分子中に2個以上のSi−H基を有する化合物は、本発明の含フッ素エラストマーとの相溶性、分散性および架橋後の均一性を考慮すると、また、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロオキシアルキル基、1価のパーフルオロアルキル基、2価のパーフルオロオキシアルキレン基または2価のパーフルオロアルキレン基を有し、かつ、2個以上、好ましくは3個以上のSi−H基を有するものが好ましい。このパーフルオロオキシアルキル基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキレン基、パーフルオロアルキレン基としては、特に下記一般式で表されるものをあげることができる。
1価のパーフルオロアルキル基としては、一般式(34):
CkF2k+1− (34)
(式中、kは、1〜20、好ましくは2〜10の整数を表す。)であり、
2価のパーフルオロアルキレン基としては、一般式(35):
−CkF2k− (35)
(式中、kは1〜20、好ましくは2〜10の整数を表す。)であり、
1価のパーフルオロオキシアルキル基としては、一般式(36)または(37):
(式中、nは、1〜5の整数を表す。)
2価のパーフルオロオキシアルキレン基としては、一般式(38):
(式中、mは、1〜50の整数を表し、nは、1〜50の整数を表す。m+nは、2〜100を満足する。)、または一般式(39):
−(CF2O)m−(CF2CF2O)n−CF2− (39)
(式中、mおよびnは、それぞれ、1〜50の整数を表す。)
上記パーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキル基、パーフルオロアルキレン基またはパーフルオロオキシアルキレン基とケイ素原子とをつなぐ2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、アルキレン基とアリーレン基とを組み合わせた基、これらの基にエーテル結合酸素原子、アミド結合、カルボニル結合などを介在させた基などであってよく、たとえば、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2OCH2−、−CH2CH2CH2−NH−CO−、−CH2CH2CH2−N(Ph)−CO−(式中、Phは、フェニル基を表す。)、−CH2CH2CH2−N(CH3)−CO−、−CH2CH2CH2−O−CO−などの炭素数2〜12のものがあげられる。
また、上記1分子中に2個以上の−SiH基を有する化合物における1価または2価の含フッ素置換基、すなわち、パーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキル基、パーフルオロアルキレン基またはパーフルオロオキシアルキレン基を含有する1価の有機基以外のケイ素原子に結合した1価の置換基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基などのアラルキル基;これらの基の水素原子の少なくとも一部が塩素原子、シアノ基などで置換された、たとえばクロロメチル基、クロロプロピル基、シアノエチル基などの炭素数1〜20の非置換または置換の炭化水素基があげられる。
上記1分子中に2個以上の−SiH基を有する化合物としては、環状、鎖状、三次元網状またはそれらの組み合わせの何れでもよい。上記1分子中に2個以上の−SiH基を有する化合物のケイ素原子数は、特に制限されるものではないが、通常2〜60、好ましくは3〜60、より好ましくは3〜30である。
上記1分子中に2個以上の−SiH基を有する化合物としては、たとえば下記の化合物があげられる。下記式でMeはメチル基、Phはフェニル基を表す。なお、これらの化合物は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(式中、mは、1〜20、平均10の整数を表し、nは、1〜10、平均6の整数を表す。)
(式中、Sは、
を表し、nは、1〜30の整数を表し、mは、1〜30の整数を表す。n+mは、2〜60、平均2〜50を満足する。)
(式中、Sは、
を表し、nは、1〜30の整数を表し、mは、1〜30の整数を表す。n+mは、2〜60、平均2〜50を満足する。)
(式中、nは、2〜60、平均3〜50の整数を表す。)
(式中、nは、2〜60、平均3〜50の整数を表す。)
(式中、nは、2〜60、平均3〜50の整数を表す。)
また、架橋部位が、不飽和結合を少なくとも1つ有する炭素数2〜10の炭化水素基である含フッ素エラストマーと1分子中に2個以上のSi−H基を有する化合物からなる硬化性組成物の場合、ヒドロシリル化反応の反応性の点から、ヒドロシリル化反応触媒を加えることが好ましい。
ヒドロシリル化反応触媒としては、含フッ素エラストマーと1分子中に2個以上のSi−H基を有する化合物との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)を促進するものであれば特に限定されず、たとえば白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族元素よりなる付加反応触媒(周期律表8族金属、8族金属錯体、8族金属化合物などの8族金属系触媒)をあげることができ、なかでも、比較的入手しやすい点で、白金系触媒が好ましい。
白金系触媒は、通常、付加硬化型の硬化に使用される公知のものでよく、たとえば米国特許第2,970,150号明細書に記載の微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載の塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号明細書および米国特許第159,662号明細書に記載の白金と炭化水素との錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載の塩化白金酸とオレフィンとの錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書および米国特許第3,814,780号明細書に記載の白金とビニルシロキサンとの錯化合物などがあげられる。より具体的には、白金の単体(白金黒);塩化白金酸;塩化白金酸とエチレンなどのオレフィンとの錯体;塩化白金酸とアルコールまたはビニルシロキサンとの錯体;シリカ、アルミナ、カーボンなどの担体上に担持された白金などがあげられる。
上記パラジウム系触媒は、パラジウム、パラジウム化合物、塩化パラジウム酸などからなり、また、上記ロジウム系触媒は、ロジウム、ロジウム化合物、塩化ロジウム酸などからなり、たとえば、RhCl(PPh3)3、RhCl(CO)(PPh3)2、RhCl(C2H4)2、Ru3(CO)12、IrCl(CO)(PPh3)2、Pd(PPh3)4(Phは、フェニル基を表す。)などがあげられる。
上記ヒドロシリル化反応触媒としては、また、ルイス酸、コバルトカルボニルなどであってもよい。
また、反応抑制剤を用いることが好ましい。反応抑制剤としては、たとえば、ベンゾトリアゾール;アクリロニトリル;N,N−ジアリルアセトアミド、N,N−ジアリルベンズアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−o−フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−m−フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−p−フタル酸ジアミドなどのアミド化合物;イオウ;リン;窒素;アミン化合物;イオウ化合物;リン化合物;スズ;スズ化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン;ハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物などがあげられる。
上記反応抑制剤としては、また、たとえば、1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサン、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノールなどのアセチレンアルコール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、米国特許第3,445,420号明細書において配合物(4)として例示される化合物、特公昭54−3774号公報において成分(ニ)として例示される化合物などのアセチレン化合物などであってもよい。
本発明の含フッ素エラストマーの架橋部位と架橋反応可能な化合物の添加量は、含フッ素エラストマー100重量部に対して、0.05〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがより好ましい。0.05重量部未満であると、充分に架橋を行うことができない傾向があり、10重量部を超えると、添加量に見合った程度にしか架橋反応が進行しない傾向がある。
本発明の硬化性組成物は、反応を促進するため、受酸剤を予め添加することも可能である。受酸剤としては、たとえば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化鉛等の金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;合成ハイドロタルサイト等を用いることができる。受酸剤の使用量は、含フッ素エラストマー100重量部に対し1〜30重量部であることが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は、加工助剤としての機能も期待できる点から、先述した本発明の製造方法により得られる含フッ素エラストマーに含まれないその他の含フッ素エラストマーを含んでいてもよい。
そして、本発明の硬化性組成物は、必要に応じて含フッ素エラストマーからなる硬化性組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、老化防止剤、オゾン劣化剤、紫外線吸収剤などを配合することができ、前記のものとは異なる常用の架橋剤や架橋助剤を1種またはそれ以上配合してもよく、各成分を、通常のエラストマー用加工機械、たとえば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混合することにより調製することができる。このほか、密閉式混合機を用いる方法やエマルジョン混合から共凝析する方法によっても調製することができる。このようにして得られた硬化性組成物は常法に従って架橋、成形される。すなわち、圧縮成形、射出成形、押し出し成形、カレンダー成形または溶剤に溶かしてディップ成形、コーティング等により成形される。
架橋条件は、成形方法や成形品の形状により異なるが、おおむね、100℃〜300℃で数秒〜5時間の範囲である。また、架橋物の物性を安定化させるために二次架橋を行ってもよい。二次架橋条件としては、150℃〜300℃で30分〜48時間程度である。
また、本発明の製造方法により得られた含フッ素エラストマーが低分子量であり、常温で流動性を有する場合、プラネタリーミキサーや卓上のミキサーで混合すればよい。この時、反応の促進のため、温度を50℃以上に加温してもよい。さらに、硬化性組成物は50℃以上の温度で3時間以上反応させておくことが好ましい。
常温で流動性を有する硬化性組成物は、通常、200℃以下の温度でホットメルトガン等の押出しガンによる加工、LIMS(Liquid Injection Molding System)成形機による射出成形や押出し成形、室温〜200℃で型に流し込んで行う成形等を行うことができる。
硬化性組成物を架橋させる方法としては、架橋部位の種類によっては、上記以外の方法を用いることができる。
本発明の成形品は、以下に示す分野で好適に用いることができる。
半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル、フィールドエミッションディスプレイパネル、太陽電池基板等の半導体関連分野では、O(角)リング、パッキン、シール材、チューブ、ロール、コーティング、ライニング、ガスケット、ダイアフラム、ホース等があげられ、これらはCVD装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、酸化拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、排気装置、薬液配管、ガス配管に用いることができる。具体的には、ゲートバルブのOリング、シール材として、クォーツウィンドウのOリング、シール材として、チャンバーのOリング、シール材として、ゲートのOリング、シール材として、ベルジャーのOリング、シール材として、カップリングのOリング、シール材として、ポンプのOリング、シール材、ダイアフラムとして、半導体用ガス制御装置のOリング、シール材として、レジスト現像液、剥離液用のOリング、シール材として、ウェハー洗浄液用のホース、チューブとして、ウェハー搬送用のロールとして、レジスト現像液槽、剥離液槽のライニング、コーティングとして、ウェハー洗浄液槽のライニング、コーティングとしてまたはウェットエッチング槽のライニング、コーティングとして用いることができる。さらに、封止材・シーリング剤、光ファイバーの石英の被覆材、絶縁、防振、防水、防湿を目的とした電子部品、回路基盤のポッティング、コーティング、接着シール、磁気記憶装置用ガスケット、エポキシ等の封止材料の変性材、クリーンルーム・クリーン設備用シーラント等として用いられる。
自動車分野では、ガスケット、シャフトシール、バルブステムシール、シール材およびホースはエンジンならびに周辺装置に用いることができ、ホースおよびシール材はAT装置に用いることができ、O(角)リング、チューブ、パッキン、バルブ芯材、ホース、シール材およびダイアフラムは燃料系統ならびに周辺装置に用いることができる。具体的には、エンジンヘッドガスケット、メタルガスケット、オイルパンガスケット、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、バルブステムシール、マニホールドパッキン、オイルホース、酸素センサー用シール、ATFホース、インジェクターOリング、インジェクターパッキン、燃料ポンプOリング、ダイアフラム、燃料ホース、クランクシャフトシール、ギアボックスシール、パワーピストンパッキン、シリンダーライナーのシール、バルブステムのシール、自動変速機のフロントポンプシール、リアーアクスルピニオンシール、ユニバーサルジョイントのガスケット、スピードメーターのピニオンシール、フートブレーキのピストンカップ、トルク伝達のO−リング、オイルシール、排ガス再燃焼装置のシール、ベアリングシール、EGRチューブ、ツインキャブチューブ、キャブレターのセンサー用ダイアフラム、防振ゴム(エンジンマウント、排気部等)、再燃焼装置用ホース、酸素センサーブッシュ等として用いることができる。
航空機分野、ロケット分野および船舶分野では、ダイアフラム、O(角)リング、バルブ、チューブ、パッキン、ホース、シール材等があげられ、これらは燃料系統に用いることができる。具体的には、航空機分野では、ジェットエンジンバルブステルシール、燃料供給用ホース、ガスケットおよびO−リング、ローテーティングシャフトシール、油圧機器のガスケット、防火壁シール等に用いられ、船舶分野では、スクリューのプロペラシャフト船尾シール、ディーゼルエンジンの吸排気用バルブステムシール、バタフライバルブのバルブシール、バタフライ弁の軸シール等に用いられる。
プラント等の化学品分野では、ライニング、バルブ、パッキン、ロール、ホース、ダイアフラム、O(角)リング、チューブ、シール材、耐薬品用コーティング等があげられ、これらは医薬、農薬、塗料、樹脂等化学品製造工程に用いることができる。具体的には、化学薬品用ポンプ、流動計、配管のシール、熱交換器のシール、硫酸製造装置のガラス冷却器パッキング、農薬散布機、農薬移送ポンプのシール、ガス配管のシール、メッキ液用シール、高温真空乾燥機のパッキン、製紙用ベルトのコロシール、燃料電池のシール、風洞のジョイントシール、耐トリクレン用ロール(繊維染色用)、耐酸ホース(濃硫酸用)、ガスクロマトグラフィー、pHメーターのチューブ結合部のパッキン、塩素ガス移送ホース、ベンゼン、トルエン貯槽の雨水ドレンホース、分析機器、理化学機器のシール、チューブ、ダイアフラム、弁部品等として用いることができる。
医薬品等の薬品分野では、薬栓等として用いることができる。
現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野および塗装設備等の塗装分野では、ロール等があげられ、それぞれフィルム現像機・X線フィルム現像機、印刷ロールおよび塗装ロールに用いることができる。具体的には、フィルム現像機・X線フィルム現像機の現像ロールとして、印刷ロールのグラビアロール、ガイドロールとして、塗装ロールの磁気テープ製造塗工ラインのグラビアロール、磁気テープ製造塗工ラインのガイドロール、各種コーティングロール等として用いることができる。さらに、乾式複写機のシール、印刷設備の印刷ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品、塗布、塗装設備の塗布ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品、プリンターのインキチューブ、ロール、ベルト、乾式複写機のベルト、ロール、印刷機のロール、ベルト等として用いることができる。
またチューブを分析・理化学機分野に用いることができる。
食品プラント機器分野では、ライニング、バルブ、パッキン、ロール、ホース、ダイアフラム、O(角)リング、チューブ、シール材、ベルト等があげられ、食品製造工程に用いることができる。具体的には、プレート式熱交換器のシール、自動販売機の電磁弁シール等として用いることができる。
原子力プラント機器分野では、パッキン、Oリング、ホース、シール材、ダイアフラム、バルブ、ロール、チューブ等があげられる。
鉄板加工設備等の鉄鋼分野では、ロール等があげられ、鉄板加工ロール等に用いることができる。
一般工業分野では、パッキング、Oリング、ホース、シール材、ダイアフラム、バルブ、ロール、チューブ、ライニング、マンドレル、電線、フレキシブルジョイント、ベルト、ゴム板、ウェザーストリップ、PPC複写機のロール、ロールブレード、ベルト等があげられる。具体的には、油圧、潤滑機械のシール、ベアリングシール、ドライクリーニング機器の窓、その他のシール、六フッ化ウランの濃縮装置のシール、サイクロトロンのシール(真空)バルブ、自動包装機のシール、空気中の亜硫酸ガス、塩素ガス分析用ポンプのダイアフラム(公害測定器)、印刷機のロール、ベルト、酸洗い用絞りロール等に用いられる。
電気分野では、具体的には、新幹線の絶縁油キャップ、液封型トランスのベンチングシール、油井ケーブルのジャケット等として用いられる。
燃料電池分野では、具体的には、電極、セパレーター間のシール材や水素・酸素・生成水配管のシール等として用いられる。
電子部品分野では、具体的には、放熱材原料、電磁波シールド材原料、エポキシ等のプリント配線板プリプレグ樹脂の変性材、電球等の飛散防止材、コンピューターのハードディスクドライブのガスケット等に用いられる。
現場施工型の成形に用いることが可能なものとしては特に限定されず、たとえば、自動車エンジン用メタルガスケットのコーティング剤、エンジンのオイルパンのガスケット、複写機・プリンター用のロール、建築用シーリング剤、磁気記録装置用のガスケット、クリーンルーム用フィルターユニットのシーリング剤、プリント基盤のコーティング剤、電気・電子部品の固定剤、電気機器リード線端子の絶縁防湿処理、電気炉等のオーブンのシール、シーズヒーターの末端処理、電子レンジの窓枠シール、CRTウェッジおよびネックの接着、自動車電装部品の接着、厨房、浴室、洗面所等の目地シール等があげられる。
本発明の硬化用組成物は、クリーン性を活かし、磁気記録装置(ハードディスクドライブ)用のガスケット、半導体製造装置やウェハー等のデバイス保管庫等のシーリング材等のクリーン設備用シール材に特に好適に用いられる。
本発明の硬化用組成物は、耐薬品性、ガス低透過性、難燃性等の特性を活かし、燃料電池セル電極間やその周辺配管等に用いられるパッキン等の燃料電池用のシール材等にも特に好適に用いられる。