本発明は、プリント配線板などの電気配線と一体化して使用される光導波路の形成や受発光素子の封止用途に好適に用いられる光硬化型又は熱硬化型のエポキシ樹脂組成物、前記エポキシ樹脂組成物にて形成されるエポキシ樹脂シート、前記エポキシ樹脂組成物にて形成される光伝送を行うための光導波路、前記光導波路を備えた光配線部を具備する光・電気混載配線基板、並びに前記エポキシ樹脂組成物を封止材に用いた電子デバイスに関するものである。
民生機器内部で情報伝送の量や速度の増大が進んできて、従来は長距離通信分野にのみ使用されていた光通信が民生機器内部に使用されようとしている。この用途では低コスト化のために、受発光素子は使用する波長が850nm前後といった、長距離光通信で使用されていた1.3μmや1.55μmとは異なる短波長側の赤外光を使用する表面実装型のVCSELやフォトダイオードなどの開発が進んでいる。
また、光を導く部材として高分子成形体からなるマルチモード光導波路が開発されている。マルチモードの光導波路を形成するために提案されている方法として、液状の硬化性樹脂を用いてコアとなる必要な部分を硬化させ不要部を現像除去し、クラッド樹脂で包み込む方法(特許文献1)や、熱可塑性樹脂シート内に含まれるモノマーの拡散を利用して露光部の屈折率を高める方法(特許文献2)、ポリシランを用いて露光部の屈折率を下げ、屈折率の高い非露光部をコアとする方法(特許文献3)、ドライフィルム等のレジスト材料に採用されている手法の応用により各種のアクリレートをパターン露光し溶剤や水系現像液で現像する方法(特許文献4,特許文献5)等がある。
また、これらの光導波路を経由して光を送受信する受発光素子については、素子の信頼性を高めるために透明な封止材で封止することも行われている。例えばVCSEL(面発光レーザ素子)の発光面を基板側に向けてフリップチップ形式で実装した形態において、透明樹脂でアンダーフィルを用いて封止するものがある。その封止材は透明性を高めるためにエポキシ樹脂の自重合を引き起こすカチオン硬化型のエポキシ樹脂が用いられることが多い。
特許第3063903号公報
特開平1−302308号公報
特開2004−12635号公報
特開2000−081520号公報
特開2003−128737号公報
上記のように光導波路を形成するにあたり、液状の硬化性樹脂を使用する方法では、エポキシ樹脂を光硬化させ非露光部を溶剤で洗い流して現像するものであるが、液状の樹脂を用いているために投影露光する必要があり、大面積化が困難であったり、生産性が悪いという問題があった。
また、熱可塑性樹脂シート内に含まれるモノマーの拡散を利用して露光部の屈折率を高める方法によると、プリント配線板と一体化される工程やその後の半田リフロー工程などで受ける温度において、樹脂自身の耐熱性が低く、導波路部分が変形してしまうという欠点がある。
また、これらはいずれも樹脂、特にコアを包み込む形で形成されるクラッド層が熱膨張係数(CTE)の大きいものであるために、基板とのCTEミスマッチが生じ、温度サイクル性をはじめとする信頼性に問題があった。
これに対し、硬化性樹脂としてポリシランを用いる方法もあるが、露光後のポリシランの露光性をなくすために300℃程度の熱処理が必要となるため、有機物であるプリント配線板がその温度に耐えられず、一体化して使用するのが困難である。
また、ドライフィルム等のレジスト材料に採用されている手法の応用により各種のアクリレートを使用する方法では、樹脂自身の透明性を高くできないので、導波損失が0.3dB/cm程度以上と大きくなってしまうという問題があり、更にCTEも大きいため信頼性に問題がある。
また、受発光素子の封止用途においても、付加型の硬化剤を使用しないカチオン硬化エポキシ樹脂ではフィラーを含まないものが大部分のためCTEが大きく、温度サイクル性をはじめとする信頼性が不充分という問題がある。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、透明性を維持したままCTEを低減して温度サイクル性をはじめとする信頼性が向上した、光伝送に用いられる光導波路の形成や受発光素子用封止材として好適に用いられるエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
また同時に、プリント配線板と一体化して使用できるマルチモード導波路を実用化可能にするため、プリント配線板製造プロセスに導入しやすい加工温度のフィルム材料であって、プリント配線材料に最終的に電子部品や光素子を実装する工程の温度に耐えられる耐熱性があり、かつ、光導波路として形成した際の伝送損失が少ないエポキシ樹脂フィルムを提供することを目的とするものである。
更に本発明は、上記エポキシ樹脂組成物又はエポキシ樹脂フィルムにて形成された光導波路、前記光導波路を備えた光配線部を有する光・電気混載配線基板、並びに上記エポキシ樹脂組成物を封止材として用いた電子デバイスを提供することを目的とするものである。
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、カチオン重合開始剤と、水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンと、無機フィラーとを含するエポキシ樹脂組成物であって、前記無機フィラーが、エポキシ樹脂組成物中の前記無機フィラーを除く成分の硬化物である樹脂硬化物との屈折率差が0.01以下で且つ平均粒子径0.5μm以下であることを特徴とするものである。
上記無機フィラーは、アルコキシシランと、アルコキシチタンアセチルアセトナート又はチタンアセチルアセトナートとの混合物をゾルゲル反応させて得られる無機フィラーであることが好ましい。
また、本発明に係るエポキシ樹脂フィルム1は、上記のようなエポキシ樹脂組成物をフイルム状に成形して成ることを特徴とするものである。
また、本発明に係る光導波路は、上記のようなエポキシ樹脂組成物又はエポキシ樹脂フィルム1を硬化させて形成されたクラッド層2と、無機フィラーを含有しない光硬化性樹脂組成物で形成されたクラッド層よりも屈折率が高いコア4とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明に係る他の光導波路は、上記のようなエポキシ樹脂組成物又はエポキシ樹脂フィルム1を硬化させて形成されたクラッド層2と、平均粒子径100nm以下のシリカ粒子を含有する光硬化性樹脂組成物で形成されたクラッド層2よりも屈折率が高いコア4とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明に係る光・電気混載配線基板は、上記のような光導波路を備えた光配線部と、導体配線24を備えた電気配線部とを一体に具備することを特徴とするものである。
また、本発明に係る電子デバイスは、発光素子又は受光素子と光導波路とを有し、前記発光素子又は受光素子と光導波路との間の隙間が上記のようなエポキシ樹脂組成物により封止されていることを特徴とするものである。
本発明に係るエポキシ樹脂組成物では、含有されている水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンは分子鎖が動きやすくて水酸基を有するので、カチオン硬化系における連鎖移動効果を有し、重合速度(硬化速度)を著しく高めることができる上に、分子量の大きな脂肪族の非グリシジルエーテルのエポキシ樹脂であるためにエポキシ基の反応性は脂環式エポキシと同程度であって硬化系に取り込まれることから、硬化物の吸湿性や耐熱性を悪化させにくくなり、更に、エポキシ樹脂との相溶性が良くて透明性を維持できるものである。また、更に、上記特定の無機フィラーを含有していることから、このエポキシ樹脂組成物の硬化物の透明性を阻害することなく、この硬化物の線膨張係数を低減することができるものである。従って、このエポキシ樹脂組成物を光導波路や光・電気混載配線基板形成用の材料や電子デバイスにおける封止材として好適に用いることができるものである。
特に、上記無機フィラーとして、アルコキシシランと、アルコキシチタンアセチルアセトナート又はチタンアセチルアセトナートとの混合物をゾルゲル反応させて得られる無機フィラーを用いると、このような無機フィラーは屈折率をアモルファスシリカよりも高く調整することができると共に、線膨張率を低く抑えることができ、エポキシ樹脂組成物の硬化物の透明性を維持すると共に線膨張係数を更に低減することができるものである。
また、本発明に係るエポキシ樹脂フィルムは、プリント配線板製造プロセスに導入しやすく、かかるプリント配線板製造プロセスを適用して光導波路や光・電気混載配線基板を作製することが容易となるものである。
また、本発明に係る光導波路は、クラッド層を上記エポキシ樹脂組成物又はエポキシ樹脂フィルムにて形成していることから、クラッド層は無機フィラーにより透明性に悪影響が与えられることなく優れた透明性を有し、クラッド層における光損失が少なって、光導波路全体の導波効率が極めて優れたものとすることができ、且つ光導波路の体積の大部分を占めるクラッド層の線膨張係数を低く抑えることができて、線膨張率が影響する光導波路全体としての温度サイクル特性などの信頼性を高めることができるものである。
更に、コアを無機フィラーを含有しない光硬化性樹脂組成物で形成することで、コアを露光・現像処理等により所望の形状に容易に形成することができると共に、コアの透明性を高くすることができ、特に導波損失の低さが求められる用途には好適である。
また、上記コアを平均粒子径100nm以下のシリカ粒子を含有する光硬化性樹脂組成物で形成する場合には、コアを露光・現像処理等により所望の形状に容易に形成することができると共に、シリカ粒子にいわゆるナノサイズシリカとしての特徴を発現させる事ができ、コアの透明性悪化を抑制しつつ、且つコアの線膨張率を低くすることができて、光導波路の導波損失を著しく悪化させることなく、光導波路の線膨張率が影響する温度サイクル特性などの信頼性を更に向上することができるものである。
また、本発明に係る光・電気混載配線基板は、上記のような光導波路を備えた光配線部を備えることから、プリント配線板工法との親和性が高く、また電子部品や光素子を実装する工程の温度に耐えられる耐熱性を有していて製造しやすく、更に光導波路として低損失であり、且つ部品実装時から使用環境時に亘って高い耐ヒートサイクル性と耐湿信頼性を実現できるものである。
また、本発明に係る電子デバイスは、表面実装型の受発光素子の受光面又は発光面と電極が汚染されることによる受発光効率の悪化や、腐食により電気導通しなくなる等の重大な不具合が生じることを防止して信頼性を高めることができ、また、受発光素子と光導波路との間の隙間における、光導波路側の面や受発光素子側の面が汚染されることを防止して光伝搬の損失や光伝搬が不可能になるなどの不具合を防止することができ、更に屈折率の大きく且つ透明性の高いエポキシ樹脂組成物による封止により、前記隙間における光の反射による損失を著しく低減することが可能となり、しかも線膨張率が小さいエポキシ樹脂組成物にて封止することで電子デバイスが熱サイクルに曝された場合にも熱応力による断線等の接続不良等を防止することができて、熱応力起因の信頼性を向上することができるものである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
〔エポキシ樹脂組成物〕
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、カチオン重合開始剤と、水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンとを含有し、更に樹脂硬化物との屈折率差が0.01以下でかつ平均粒子径が0.5μm以下の無機フィラーを含有する。樹脂硬化物とは、エポキシ樹脂組成物中の前記無機フィラーを除く成分の硬化物を意味する。
エポキシ樹脂としては、透明性を著しく損なわない範囲内であれば、1分子内にエポキシ基を複数有しさえすれば特に限定されるものではなく、市販されている液体エポキシ樹脂や固体エポキシ樹脂を適宜使用することができる。
エポキシ樹脂の具体例としては、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ブロム含有エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができ、これらの中から1種のみ又は2種以上を選んで併用することができる。このうち、透明性が優れるという観点からは、脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
このようなエポキシ樹脂のうち、液状エポキシ樹脂の具体例としては、「セロキサイド2021」や「セロキサイド2081」の商品名でダイセル化学工業株式会社から販売されている2官能のものや、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、固体エポキシの具体例としては、「EHPE3150」の商品名でダイセル化学工業株式会社から販売されている多官能の2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロセキサン付加物などが挙げられる。硬化物の加水分解性を抑え耐湿信頼性を向上させる観点からは、分子骨格にエステル基を持たない脂環式エポキシ樹脂が更に好ましい。
また本発明において、カチオン重合開始剤としては光や熱、電子線等によりルイス酸あるいはブレンステッド酸を発生するもので、透明性を損なわないものであれば特に限定されるものではなく、市販されているものを使用することができる。具体例としては、陰イオンとしてPF6 -、AsF6 -、SbF6 -、SbCl6 2-、BF4 -、SnCl6 -、FeCl4 -、BiCl5 2-などを持つアリールジアゾニウム塩;陰イオンとしてPF6 -、AsF6 -、SbF6 -、SbCl6 2-、BF4 -、ClO4 -、CF3SO3 -、FSO3 -、F2PO2 -、B(C6F5)4 -などを持つジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩等;陰イオンとしてPF6 -、AsF6 -、SbF6 -などを持つジアルキルフェナジルスルホニウム塩、ジアルキル−4−ヒドロキシフェニルスルフォニウム塩等;α−ヒドロキシメチルベンゾインスルホン酸エステルや、N一ヒドロキシイミドスルホネート、α−スルホニロキシケトン、β−スルホニロキシケトン等のスルホン酸エステル;鉄のアレン化合物;シラノーノトアルミニウム錯体;o−ニトロベンジル−トリフェニルシリルエーテル等を例示することができる。これらのカチオン重合開始剤は単独で使用しても良いし、複数を併用しても良い。また、光硬化型のものと熱硬化型のものとを併用しても差し支えない。
カチオン重合開始剤の好ましい添加量は0.5〜3phrであり、更に好ましくは0.6〜1.5phrである。この添加量が過小だと硬化しにくくなり、過剰だと硬化物の耐湿信頼性を損なうという問題が生じるおそれがある。
カチオン重合開始剤が光によって硬化を開始するタイプ(光硬化型)である場合、開始剤が最も効率よく酸を発生する光の波長よりも長い波長の光でも硬化開始するようにするため、いわゆる増感剤を併用することができる。増感剤の具体例として、ベンゾフェノン、アクリジンオレンジ、ペリレン、アントラセン、フェノチアジン、2,4−ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。
また、このようなカチオン硬化系において、重合速度を高め、未反応のエポキシ樹脂の残存を防ぐ目的で、連鎖移動剤を併用することもできる。一般的には多官能アルコール類が使用され、エチレングリコール、ブタンジオール、トリメチロールプロパントリオ二ル、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール等が例示できるが、これらを使用することにより硬化物の吸湿性が高くなったり、耐熱性が低下するという問題が生じるおそれもあるため、これらの問題が引き起こされない範囲で使用することが好ましい。
また、本発明で使用される水酸基を有するエポキシ化ポリプタジエンは、CASナンバー68441−49−6に代表されるものであり、例えば下記構造式に示されるような水酸基を有する液状ポリブタジエンの主鎖内の二重結合をエポキシ化した構造を有するものであって、分子鎖末端に水酸基を有するものもある。このものは「エボリード」の商標でダイセル化学工業株式会社が製造しており、分子鎖内、分子鎖末端に水酸基を有する品番「PB3600」(数平均分子量5900)と、分子鎖内部に水酸基を有する品番「PB4700」などを例示できる。また旭電化工業株式会社製の品番「アデカレジンEPB1200」も挙げられる。
この水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンは、液状であって分子鎖が動きやすくて水酸基を有するので、カチオン硬化系における連鎖移動効果を有し、重合速度(硬化速度)を著しく高めることができる上に、上記多官能アルコールと異なり、分子量の大きな脂肪族の非グリシジルエーテルのエポキシ樹脂であるため、エポキシ基の反応性は脂環式エポキシと同程度であって硬化系に取り込まれることから、硬化物の吸湿性や耐熱性を悪化させにくいものである。更に、エポキシ樹脂との相溶性が良くて透明性を維持できるものである。
この水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンは、組成物中のエポキシ基を有する全ての樹脂中の1〜30重量%の範囲で配合することが好ましい。1重量%を下回ると、重合速度を高める効果が発揮できなくなる。逆に30重量%を越えると、硬化物の耐熱性が低下したり、フイルムのタック性が悪化するという問題が生じてくる。配合量の更に好ましい範囲は、2〜15重量%である。
また、本発明において使用される、樹脂硬化物との屈折率差が0.01以下でかつ平均粒子径が0.5μm以下の無機フィラーは、組成物の硬化物において、透明性を維持したまま、線膨張係数を低減する効果を持つ。屈折率差が0.01よりも大きいと透明性が低下するという問題が生じる。また、平均粒子径が0.5μmより大きいと、本用途で使用される光の波長0.85μmに近づき、或いはこの波長より大きくなり、光の回折や散乱が強くなることにより、微小な屈折率差であっても透明性を低下させるという問題がある。このようなフィラーは各種ガラスを粉砕・溶射して作製したり、ゾルゲル法により作製することができる。
本発明の樹脂組成物を製造するにあたっては、水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエン以外のエポキシ樹脂とカチオン重合開始剤をあらかじめ混合した組成物に、水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンを混合して製造するのが好ましい。この方法で製造すると、得られた樹脂組成物にて均一な硬化物を成形することができ、且つ高いTgを安定して実現できる。この理由は明確ではないが、エポキシ樹脂と水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンの微妙な相溶性の差が影響しているものと推察される。
また、この方法以外に、例えば酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンとその他のエポキシ樹脂を混合したものにカチオン重合開始剤を添加しても良いが、得られる組成物の硬化物が不均一になったりTgが低下するおそれがあるため、上記方法を採用することがより好ましい。
尚、無機フィラーはどの時点で添加しても特に問題はない。
また、本発明の樹脂組成物は室温で液状であっても良く、また室温で固体となる場合には何らかの溶剤に溶解・分散させた状態の、いわゆるワニスの形態であっても良い。ワニスに調製する場合の溶剤は、揮発乾燥可能であって、乾燥後の樹脂組成物において、透明性を悪化させたり、エポキシ樹脂の硬化を阻害させたりしないものであれば、一般的なものを使用できる。
また、本発明では透明性を悪化させない範囲で、上記以外に他のモノマーやポリマーを併用できる。
他のモノマーの例として、オキセタン樹脂を併用しても良い。オキセタン樹脂とは、エポキシ環よりも炭素が1つ多い、飽和炭素原子3個と酸素原子1個からなる4員環を有する化合物であって、東亜合成株式会社が供給している3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(製品名「10XT−212」)や、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(製品名「OXT−101」)、あるいは1,4−ビス{[(3−エチル−3−オギセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(製品名「〇XT−121」)、オキセタニル−シルセスキオキサン(製品名「10X−SQ」)等を例示できる。
このようなオキセタンをエポキシ樹脂と併用すると、透明性の高い硬化物を得ることができると共に、エポキシ樹脂の速い硬化開始速度と、オキセタンの速い重合成長速度という利点が発現して、硬化性の更に優れた組成物を得ることができる。
また、他のポリマーとしては、樹脂やワニスに溶解できるものであれば適宜のものを併用でき、具体例としてはフェノキシ樹脂やポリアミド樹脂、PPE樹脂などが挙げられる。ポリマーではあるがゴム成分とみなされるブチラール樹脂、アクリロニトリルーブタジエンの共重合体の樹脂や、カルボキシル基やアミノ基を有するアクリロニトリルーブタジエンの共重合体の樹脂なども併用できる。
上記のようなエポキシ樹脂に含有させる、樹脂硬化物との屈折率差が0.01以下で且つ平均粒子径0.5μm以下の無機フィラーとしては、アルコキシシランと、アルコキシチタンアセチルアセトナートまたはチタンアセチルアセトナートの混合物をゾルゲル反応させて得られるものが、特に好ましい。このようにして得られるシリカ−チタニアの複合酸化物は、屈折率をアモルファスシリカよりも高く調整することができると共に、線膨張率を低く抑えることができる。
このような無機フィラーは、例えばテトラエトキシシランのエタノール溶液と、ジエトキシ・ジアセチルアセトナートチタン或いはテトラアセチルアセトナートチタンのエタノール溶液との混合物に、加水分解開始剤の水溶液あるいはアルコール溶液を攪拌下で滴下してゾルゲル反応を生じさせ、生成物であるポーラスなシリカ−チタニア粒子を水洗した後、回収し、1000℃前後で焼成することで得ることができる。ここで、チタン源としてテトラアルコキシチタンを使用すると加水分解速度が速くなりチタニアだけの粒子が生成するなど、均質なシリカ−チタニア複合酸化物粒子が得られにくくなる。
〔エポキシ樹脂フィルム〕
上記のようなエポキシ樹脂組成物は、フイルム状に成形することができる。フイルム成形には一般的な方法を採用できる。例えば、液状又はワニスに調製したエポキシ樹脂組成物をベースフィルム10上に塗工・乾燥し、得られたエポキシ樹脂フィルム1の表面に更にカバーフィルム11を密着させて形成することができる(図1参照)。この加工過程での塗工性を向上するためにエポキシ樹脂組成物中に各種の界面活性剤を配合することが好ましい。また、ベースフィルム10ヘの濡れ性を向上させるためのレベリング剤や、気泡の発生を防ぐための消泡剤などを配合することもできる。このフィルム成形にあたっては、溶剤の種類によっては乾燥後もエポキシ樹脂中に残存する溶剤自身が硬化性を損ねる場合があるので注意が必要である。また、ベースフィルム10は表面の凹凸状態がコア4あるいはクラッドの表面に転写される場合があるので、凹凸の少ない、平坦度の高いものを使用することが好ましい。
〔光導波路〕
上記のようなエポキシ樹脂組成物又はエポキシ樹脂フィルム1を用いてクラッド層2を形成すると共にこのクラッド層2に隣接してこのクラッド層2よりも屈折率の大きいコア4を形成することで、光導波路を得ることができる。
ここで、光導波路にて光が伝搬してゆく際には、この光の大部分はコア4を導波するが、一定の割合の光はクラッド層2にも分布して導波していくことが知られている。そのため、クラッド層2で光の散逸が生じると、光波路全体として光損失が大きくなるという不具合を生じる。よって、コア4の透明性は高い必要があるのは当然だが、クラッド層2にも高い透明性が必要になる。これに対し、上記のエポキシ樹脂組成物では含有されている無機フィラーが上記所定の屈折率及び平均粒子径を有することから、この無機フィラーが組成物の硬化物の透明性に悪影響を与えることがなく、このためこのエポキシ樹脂組成物又はこのエポキシ樹脂組成物にて得られるエポキシ樹脂フィルム1にて形成されるクラッド層2は優れた透明性を有し、クラッド層2における光損失が少なって、光導波路全体の導波効率が極めて優れたものとなる。また、コア4を取り巻くクラッド層2は光導波路の体積の大部分を占めるが、このクラッド層2の線膨張係数を低く抑えることができ、線膨張率が影響する光導波路全体としての温度サイクル特性などの信頼性を高めることができる。
また、コア4は透明且つクラッド層2よりも屈折率が大きい適宜のものを形成するものであるが、特に光導波路を高速の光信号を通すマルチモードのリッジ導波路として使用する場合は、クラッド層2とコア4との間の屈折率差が、クラッド層2の屈折率の0.5%〜5%の範囲となるようにすることが好ましい。この屈折率差が小さいと発光素子からの発光を光導波路に導入する際に光をコア4へ取り入れにくくなって、光入射部での損失が大きくなるおそれがある。逆にこの屈折率差が大きすぎると、光導波路から光が導出される際の放射角度が大きくなり、この導出された光を受光素子にて受光する際に受光部分に全ての光を照射しにくくなって損失が大きくなったり、高速伝送において光信号のパルスのパターンが劣化するおそれがある。
また、コア4は無機フィラーを含有しない光硬化性樹脂組成物にて形成することが好ましい。このような光硬化性樹脂組成物としては、適宜のものを用いることができ、例えばクラッド層2を形成するためのエポキシ樹脂組成物と同様にエポキシ樹脂、光カチオン重合開始剤、水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエン等を含有するものを用いることができるが、その硬化物の屈折率がクラッド層2よりも大きい所望の範囲となるように組成を調整する必要がある。このような無機フィラーを含有しない光硬化性樹脂組成物にてコア4を形成すると、コア4の透明性を高くすることができ、特に導波損失の低さが求められる用途には好適である。
また、コア4を、平均粒子径100nm以下のシリカ粒子を含有する光硬化性樹脂組成物で形成することも好ましい。このような平均粒子径のシリカ粒子をコア4に含有させると、いわゆるナノサイズシリカとしての特徴を発現させる事ができ、使用する光の波長よりも充分に短いことからコア4の透明性悪化を抑え、且つコア4の線膨張率を低くすることができる。これにより、無機フィラーを含有しない光硬化性樹脂組成物にてコア4を形成した場合に比べて、光導波路の導波損失を著しく悪化させることなく、光導波路の線膨張率が影響する温度サイクル特性などの信頼性を著しく高めることができる。
平均粒子径100nm以下のシリカ粒子を含有する光硬化性樹脂組成物としては、このような光硬化性樹脂組成物としては、適宜のものを用いることができ、例えばクラッド層2を形成するためのエポキシ樹脂組成物と同様にエポキシ樹脂、光カチオン重合開始剤、水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエン等を含有し、更に前記特定のシリカ粒子を含有するものを用いることができるが、その硬化物の屈折率がクラッド層2よりも大きい所望の範囲となるように組成を調整する必要がある。具体的には例えばドイツ国ハンゼケミー(Hanse−Chemi)社製のナノシリカ分散エポキシ樹脂である商品名「NANOPOX」を使用したり、これに更にアルコール溶媒のシリカゾルを混合した後アルコールを減圧蒸留して除去して調製したものを用いたりすることができる。前記商品名「NANOPOX」には、既述の脂環式エポキシである「セロキサイド2021」相当のエポキシ樹脂に平均粒子径5.0nmのシリカを40重量%含有させた品番「XP22/0314」や、ビスフェノールAジグリシジルエーテルに平均粒子径50nmのシリカを40wt%含有させた品番「XP22/0516」等がある。
このようなコア4を形成するための光硬化性樹脂組成物中に占める平均粒子径100nm以下のシリカの重量含有率は、好ましくは5〜20重量%の範囲とするものであり、このようにすると、透明性が著しく悪化させることなく線膨張率を有意に低減できる。
光導波路を作製するための具体的な手法の一例について説明する。まず上記エポキシ樹脂組成物をガラス、フィルム、樹脂板、金属板等の平坦な部材12の上にバーコータ、スピンコータ、コンマコータ、ダイコータ、カーテンコータ、スクリーン印刷、グラビア印刷等の方法で塗工して乾燥し、或いは前記部材12に上記エポキシ樹脂フィルム1からカバーフィルム11を剥離してラミネートする(図2(a)参照)。エポキシ樹脂フィルム1を用いている場合には更にベースフィルム10をエポキシ樹脂フィルム1から剥離する。このエポキシ樹脂組成物の塗膜又はエポキシ樹脂フィルム1に、組成物中に含まれるカチオン重合開始剤に応じて光照射や加熱等の処理を施すことで光硬化あるいは熱硬化させて、硬化させ、ベース層2aを形成する(図2(b)参照)。光硬化を施す場合には更に加熱によるアフターキュアを施すの好ましい。
このように形成されるベース層2aの表面には、コア4との密着性を向上させるためにオゾン処理やプラズマ処理を施すことで、このベース層2a表面にカルボキシル基や水酸基等の反応性の官能基を生成させることが好ましい。
次いで、上記ベース層2aの表面に、上記のような光硬化性樹脂組成物を、ベース層2aを形成する場合と同様の適宜の塗工方法で塗工し、或いは前記のような光硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形した光硬化性フィルム3をラミネートする。光硬化性フィルム3は上記エポキシ樹脂フィルム1と同様にベースフィルム10及びカバーフィルム11を用いて形成し、カバーフィルム11を剥離してラミネートすることができる。続いて、この光硬化性樹脂組成物の塗膜又は光硬化性フィルム3をネガマスク13を通してこの組成物の硬化特性に応じて矢印14に示すように紫外線等で露光することで、所望のパターンの硬化を行う(図2(c)参照)。光硬化性フィルム3を用いている場合には図示のようにベースフィルム10越しに露光することができる。更に非露光部分を現像液で洗い流してリッジ状にコア4を形成する(図2(d)参照)。
その後、上記のエポキシ樹脂組成物又エポキシ樹脂フィルム1を用い、上記コア4を包み込むようにして、ベース層2aの表面にこのベース層2aの形成と同様の手法を用いて被覆層2bを形成し(図2(e)参照)、エポキシ樹脂フィルム1を用いている場合にはベースフィルム10を剥離して、ベース層2aと被覆層2bによりコア4を取り巻くクラッド層2を形成する(図2(f)参照)。これにより、光導波路を得ることができる。上記平坦な部材12は必要に応じて光導波路から剥離する。
また、上記金属板等の平坦な部材12に代えて、このような部材12の表面に銅箔等の金属箔17を貼着したものを用い、この金属箔17に積層させて上記のように光導波路を形成しても良い(図3参照)。このときの金属箔17は、後述するように光・電気混載配線基板を形成する際の導体配線24を形成するために用いることができる。
〔光・電気混載配線基板〕
上記のような光導波路を備えた光配線部と、導体配線24を備えた電気配線部とを一体化して光・電気混載配線基板を得ることができる(図5(b)参照)。
具体的には、例えば上記のようなクラッド層2とコア4とを有する光導波路にて光配線部を構成し、また絶縁樹脂等からなる絶縁層22に銅等の導体配線24を設けた基板にて電気配線部を構成することができる。光配線部と電気配線部とを一体化するにあたっては適宜の手法を採用することができ、例えば光導波路からなる光配線部を形成すると共に、別途に絶縁層22と導体配線24とを積層したプリント配線板等からなる電気配線部を形成し、電気配線部の絶縁層22と光配線部のクラッド層2とを積層接着することで両者を一体化することができる。また、光導波路からなる光配線部を形成した後、この光配線部のクラッド層2の表面に直接銅等の導体配線24を積層して形成しても良い。
また、光導波路からなる光配線部を形成した後、この光配線部のクラッド層2の表面に、いわゆるビルドアップ法にて絶縁樹脂槽と導体配線24とを逐次積層成形することで電気配線部を光配線部と一体化した状態で形成するようにしても良い。
また、この光・電気混載配線基板は、一面側に電気配線部が、他面側に光配線部が形成されたものとすることができるが、光配線部の両面側に電気配線部をそれぞれ一体化するようにしても良い。いずれの場合も、電気配線部と光配線部との間の接着力を十分に確保するように、電気配線部を構成する絶縁層22と、光配線部を構成するクラッド層2との間の接着に配慮する必要がある。
またこの光・電気混載配線基板を、複数層の導体配線24を有する多層配線板として形成する場合には、光導波路にて構成される光配線部を貫通するビアホール(Via Ho1e)やスルーホール(Through Ho1e)を形成しても良い。
また、このような光・電気混載配線基板に、光配線部の光導波路へ光を入射する面発光レーザー(VCSEL)等の発光素子や、光導波路から導出される光を受光する面実装フォトダイオード(PD)等の受光素子を実装する場合には、上記の光配線部の形成プロセスの途中、あるいは光配線部を形成した後に、光導波路を導波する光の光軸を曲げてこれを受光素子の受光面へ入射し、或いは発光素子の発光面からコア4へ向けて出射された光の光軸を曲げてこれを光導波路へ導波させるための光の出し入れ部21を設けることもできる。このとき光の出し入れ部21は、例えばコア4内に45°に傾斜して設けられるマイクロミラー20(図4参照)や、コア4に対してフェムト秒レーザの照射や干渉露光などを施すことで形成されるグレーティング等のような、光軸の向きを変換する偏光器を設けることで、光導波路の表面における前記偏光器の直上に形成することができる(図5(b)(c)参照)。
このようにして得られる光・電気混載回路基板は、プリント配線板工法との親和性が高いので製造しやすく、また光導波路として低損失であり、且つ部品実装時から使用環境時に亘って高い耐ヒートサイクル性と耐湿信頼性を実現できるものである。
〔電子デバイス〕
上記のようなエポキシ樹脂組成物は、光導波路と、この光導波路へ光を入射する発光素子や、この光導波路から出射する光を受光する受光素子とを有する電子デバイスを得る場合に、この光導波路と受光素子又は発光素子との間を封止するために用いることもできる(図5(c)参照)。以下、受発光素子26という場合には、受光素子又は発光素子を指すものとする。
この電子デバイスは、例えば上記のような光の出し入れ部21を有する光・電気混載配線基板に受発光素子26を実装することにより形成することができる。また、上記の光・電気混載配線基板において、光配線部を構成する光導波路のクラッド層2やコア4を上記以外の適宜の材料及び手法を採用して形成したものを用いても良い。
光・電気混載配線基板に受発光素子26を実装するにあたっては、例えば光導波路のクラッド層2に直接積層して設けた導体配線24上に受発光素子26を実装しても良く、また光導波路のクラッド層2に透明な樹脂等からなる絶縁層22を介して導体配線24を形成し、この導体配線24上に受発光素子26を実装しても良い。
受発光素子26の実装はフリップチップ実装等の表面実装により行うことができる。このとき例えば受発光素子26における発光面側又は受光面側の面に半田ボール等のバンプ27を設け、この受発光素子26の発光面又は受光面を光導波路の光の出し入れ部21と対向させた状態で、前記バンプ27を、光・電気混載配線基板側の導体配線24における共晶半田をプリコートした電極パッド部上に載置し、リフロー処理を施すことにより実装することができる。
次に、この受発光素子26と光導波路との間に形成される隙間(例えば光導波路のクラッド層2に直接積層して設けた導体配線24上に受発光素子26を実装する場合は前記クラッド層2と受発光素子26との間の隙間。光導波路のクラッド層2に透明な樹脂等からなる絶縁層22を介して導体配線24を形成してこの導体配線24上に受発光素子26を実装する場合は前記絶縁層22と受発光素子26との間の隙間)に、エポキシ樹脂組成物を注入する。この状態でエポキシ樹脂を加熱、露光するなどして硬化させることで、この硬化物28にて封止を行うことができる。
このような封止を行うと、表面実装型の受発光素子26の受光面又は発光面と電極が汚染されることにより受発光効率が悪化したり、腐食により電気導通しなくなる等の重大な不具合が生じることを防止し、信頼性を高めることができる。また、受発光素子26と光導波路との間の隙間における、光導波路側の面や受発光素子26側の面が汚染されることを防止し、このような汚染により光伝搬の損失や、重篤な場合は光が伝わらなくなるなどの不具合が発生することも防止することができる。
更に、受発光素子26と光導波路との間の隙間に屈折率が1である空気が介在していると、一般に屈折率が1.5〜1.6の範囲であるで光導波路との屈折率差が大きくなり、界面での光の反射が生じて損失となるが、前記隙間を屈折率の大きく且つ透明性の高いエポキシ樹脂組成物にて封止すれば、かかる光の損失を著しく低減することが可能となる。
しかも、上記エポキシ樹脂組成物は線膨張率が小さく、電子デバイスが熱サイクルに曝された場合にも熱応力による断線等の接続不良等を防止することができて、熱応力起因の信頼性を向上することができるものである。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。尚、以下の記載で「部」は全て重量部を示す。
〔原材料〕
脂環式エポキシ樹脂は「セロキサイド2021P」(ダイセル化学工業製、室温で液状、CEL2021Pと略す)及び「EHPE3150」(ダイセル化学工業製、室温で固体)を使用した。
ビスフェノールA型エポキシとしては「エピクロン840S」(大日本インキ工業株式会社製、室温で液状)及び「エピコート1006」(ジャパンエポキシレジン株式会社製、室温で固体)を使用した。
水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンとしては「PB3600」(ダイセル化学工業製)を使用した。
ナノシリカ分散樹脂としては「XP22/0516」(ハンゼケミー社製、平均粒子径50nmのシリカを40重量%含有させたビスフェノールAエポキシ樹脂)を使用した。
UVカチオン重合開始剤としては「SP−170」(旭電化工業株式会社製)を、熱カチオン重合開始剤としては「SI−160L」(三新化学工業株式会社製)を使用した。
溶媒のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEAと略す)は工業用試薬を使用した。
〔無機フィラーの合成〕
各無機フィラーの合成に使用した原料は全て工業用試薬を使用した。
(1)無機フィラーa
テトラアルコキシシラン93部、ジアセチルアセトナート・ジエトキシチタン7部、エタノール200部を撹拌しながら、室温で10%塩酸水溶液50部をゆっくり滴下した。滴下完了後、1時間撹拌を続け、イオン交換水で遠心分離によるデカンテーションを5回行って洗浄し、更にエチルアルコールで同様に洗浄した。
得られた湿潤ぺ一ストを100℃で乾燥した後、1000℃で3時間焼成して、平均粒子径0.4μm、屈折率1.51のシリカチタニア粒子である無機フィラーaを得た。
(2)無機フィラーb
テトラアルコキシシラン93部、ジアセチルアセトナート・ジエトキシチタン7部、エタノール400部を撹拌しながら、室温で5%塩酸水溶液100部をゆっくり滴下した。滴下完了後、1時間撹拌を続け、イオン交換水で遠心分離によるデカンテーションを5回行って洗浄し、更にエチルアルコールで同様に洗浄した。
得られた湿潤ぺーストを100℃で乾燥した後、1000℃で3時間焼成して、平均粒子径0.8μm、屈折率1.51のシリカチタニア粒子である無機フィラーbを得た。
(3)無機フィラーc
テトラアルコキシシラン90部、ジアセチルアセトナート・ジエトキシチタン10部、エタノール200部を撹拌しながら、室温で10%塩酸水溶液50部をゆっくり滴下した。滴下完了後、1時間撹拌を続け、イオン交換水で遠心分離によるデカンテーションを5回行って洗浄し、更にエチルアルコールで同様に洗浄した。得られた湿潤ぺ一ストを100℃で乾燥した後、1000℃で3時間焼成して、平均粒子径0.3μm、屈折率1.55のシリカチタニア粒子である無機フィラーcを得た。
〔配合例1〜5、比較配合例1〜3〕
各配合例及び比較配合例について、下記表1に示す原材料配合にてエポキシ樹脂組成物を調製した。
調製にあたっては、まず「PB3600」とカチオン重合開始剤以外の成分を秤取し、撹拌混合した後、ビーズミルにて分散したものに、室温にてカチオン開始剤を加えて撹拌混合した。次いで、更に「PB3600」を加え、更に撹拌混合した。
そして、得られた組成物を400メッシュのフィルターで濾過し、減圧脱泡してエポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物の特性評価は次のように行った。
(1)屈折率測定。
各配合例及び比較配合例のエポキシ樹脂組成物を、20mm×10mm×5mmの寸法の高屈折率ガラス(屈折率1.6)の平滑面に樹脂厚が0.2〜0.5mmの範囲となるように塗布した。
次いで、溶剤を含まず光カチオン重合開始剤を含む配合例1及び比較配合例1〜3については超高圧水銀灯のUV光を2J/cm2の光量で露光した後、160℃30分の熱処理で硬化させた。
また、溶剤を含む配合例2〜5については、80℃で30分加熱し、続いて120℃で30分加熱することで乾燥を行い、更にこのうち光カチオン重合開始剤を配合した配合例2,4〜5では、超高圧水銀灯のUV光を2J/cm2の光量で露光した後、160℃で30分熱処理して硬化させ、熱カチオン重合開始剤を含む配合例3では160℃で1時間の熱処理硬化を行った。
そして、得られた硬化物の表面を平滑にするために研磨した後、アタゴ社製の屈折率測定装置にて屈折率を測定した。
また、無機フィラーを含有する組成物については、無機フィラーを除いた以外は同一の組成を有する組成物の樹脂硬化物についても、上記と同様に屈折率を測定したが、その測定結果は無機フィラーを含有する場合と同一となった。
(2)透過損失測定
溶剤を含まず、光カチオン重合開始剤を含む配合例1及び比較配合例1〜3では、エポキシ樹脂組成物をガラス板で挟んだ3cm×5cm×2mmの枠に注型し、超高圧水銀灯のUV光を2J/cm2の光量で露光した後、脱型して160℃で30分熱処理して硬化させ、厚み3mmのテストピースを作製した。
また、溶剤を含む配合例2〜5では、エポキシ樹脂組成物をバーコータでベースフィルム10(厚み25μmのPETフイルム)に塗工し、80℃で5分の一次乾燥の後、120℃で5分の二次乾燥を行い、塗膜厚み60μmの樹脂フイルムを作製し、次いで同様に形成した二つの樹脂フィルムを対向させて貼り合わせ、70℃で真空ラミネートし、片方のベースフィルム10を剥離して厚み120μmの樹脂フィルムを作製した。更に同様の操作を繰り返し行い、厚み1.9mmのシートを作製した。次いで、このうち光カチオン重合開始剤「SP170」を含む配合例2,4〜5では、更に超高圧水銀灯のUV光を2J/cm2の光量で露光した後、160℃30分の熱処理を施して硬化させ、また熱カチオン重合開始剤を含む配合例3では160℃1時間の熱処理硬化を行った。次いで、ベースフィルム10を剥離してテストピースを作製した
そして、これらのテストピースを島津製作所製分光光度計「UV−3100PC」に積分球を搭載したシステムを用い、波長850nmでの光の透過率(T:単位は%)と、この入射角を7°ずらして測定した表面反射率(R:単位は%)とを計測し、これらの結果に基づいて透過損失を算出した。ここで、テストピースの厚みをt(単位はmm)とすると、透過損失は次の式で算出される。
透過損失[dB/cm]=−10×1og(T/(100−R))/(t/10)
(3)線膨張係数(CTE)測定
各配合例及び比較配合例のエポキシ樹脂組成物をバーコータにて、厚み25μmのPETフィルムに、ウェット厚80μmの塗布量で塗布した。
次いで、溶剤を含まず、光カチオン重合開始剤を含む配合例1及び比較配合例1〜3では、超高圧水銀灯のUV光を2J/cm2の光量で露光した後、160℃30分の熱処理で硬化させ、エポキシ樹脂フィルム1を得た。
また、溶剤を含む配合例2〜5では、80℃で30分、続いて120で℃30分の熱処理を施して乾燥を行った後、光カチオン重合開始剤を配合した配合例2,4〜5では超高圧水銀灯のUV光を2J/cm2の光量で露光の後160℃30分の熱処理で硬化させ、熱カチオン重合開始剤を含む配合例3では160℃1時間の熱処理硬化を行い、エポキシ樹脂フィルム1を得た。
これらのエポキシ樹脂フィルム1を8mm×20mmの寸法の短冊状に切り出し、TMA装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製、「EXSTAR6000」)にて、引っ張りモードで30℃〜70℃の範囲の線膨張係数を測定した。
以上の結果を表1にまとめて示す。
表1にみられるように、配合例1〜3では、比較配合例1〜3に比べ、エポキシ樹脂とカチオン重合開始剤と水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンを必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、樹脂硬化物との屈折率差が0.01以下でかつ平均粒子径0.5μm以下の無機フィラーを配合しているので、透過損失が低く優れた透明性を有すると共に、線膨張係数も低いという特性を併せ持っている。これに対して、無機フィラーを含有しない比較配合例1では線膨張計数が大きく、無機フィラーの粒径が大きい比較配合例2で及び無機フィラーの屈折率が大きい比較配合例では透過損失が大きくなった。
また、配合例4及び5はコア4形成用のエポキシ樹脂組成物であるが、無機フィラーを含有する配合例4では透過損失が低く、また平均粒子径100μm以下のシリカを含む配合例5では透過損失の増大が抑制されつつ線膨張係数が低減されている。
〔エポキシ樹脂フィルム及び光導波路〕
エポキシ樹脂フィルム1として下記クラッド用フィルムa乃至cを形成し、また光硬化性フィルム3として下記コア用フィルムa,bを形成した。
(クラッド用フィルムa)
上記配合例2に示すエポキシ樹脂組成物を用い、これをバーコータでベースフィルム10(25μm厚のPETフイルム)に塗工し、80℃5分の一次乾燥の後、120℃5分の二次乾燥を行った。得られたフィルムの厚みは30μmあった。
(クラッド用フィルムb)
バーコータの番手を変更した以外はフィルム1の場合と同様にして、厚み60μmのフィルムを形成した。
(クラッド用フィルムc)
上記配合例3に示すエポキシ樹脂組成物を用い、バーコータの番手を変更した以外はクラッド用フィルムaの場合と同様にして、厚み20μmのフィルムを形成した。
(コア用フイルムa)
配合例4に示すエポキシ樹脂組成物を用い、これをバーコータでベースフィルム10(25μm厚のPETフイルム)に塗工し、80℃5分の一次乾燥の後、120℃5分の二次乾燥を行った。得られたフィルムの厚みは40μmであった。
(コア用フイルムb)
配合例5に示すエポキシ樹脂組成物を用い、コア用フイルムaの場合と同様にして厚み40μmのフィルムを形成した。
これらのフイルムはタック性良好で、折り曲げても塗膜にクラックは入らず良好な屈曲性を示した。
〔光導波路及び光・電気混載配線基板〕
(作製例1)
両面に厚み18μmの銅箔を有する4cm×14cm×1.6mm厚の寸法のFR4両面銅張り積層板の銅箔にパターニングを施したプリント配線板を電気配線部として用い、この電気配線部に光導波路からなる光導波路部を設けると共にこの光導波路部の電気配線部とは反対側の面に、部品実装用の銅回路を配置した構成の光・電気混載配線板を作製した。
具体的には、まず平坦な部材12として6cm×16cm×0.6mm厚のアルミニウム板12aと、金属箔17として6cm×16cm×35μm厚の銅箔17aの平滑面とを対向させ、両者間の外周部を3mm幅でホットメルト型の熱可塑性接着シートを介して熱ラミネートして銅箔17aをアルミニウム板16に支持させた(図3(a))。
この銅箔17aの外面に露出する粗面に、エポキシ樹脂フィルム1として上記クラッド用フィルムa(エポキシ樹脂塗膜厚み30μm)をベースフィルム10に支持された状態で真空ラミネートし(図3(b))、このベースフィルム10越しにクラッド用フィルムaの全面に超高圧水銀ランプのUV光を2000mJ/cm2の光量で照射して硬化させ、その後150℃30分の条件で後硬化を施してからベースフィルム10を剥離してベース層2aを形成した(図3(c))。
このベース層2aの表面を酸素プラズマで高周波出力200Wで1分間処理した後、この面に光硬化性フィルム3として上記コア用フイルムa(無機フィラーを含まず、塗膜厚み40μm)をベースフィルム10に支持された状態で真空ラミネートし、このベースフィルム10越しに、40μm幅、16cm長のスリットが250μmピッチで12本並ぶネガマスク13をスリット方向と銅箔の長手方向が平行になるよう、かつ導波路スリットが短手方向の中央部にくるように配置し、密着させて、超高圧水銀ランプのUV光(矢印14)を2000mJ/cm2のエネルギーで照射して露光硬化させ(図3(d)、更に120℃で5分の熱処理を施した後、ベースフィルム10を剥離し、トルエンにて現像して、断面40μm角の16cmm長のコア4を形成した(図3(e))。
次に、コア4を形成した面にエポキシ樹脂フィルム1として上記クラッド用フィルムb(塗膜厚み60μm)をベースフィルム10に支持された状態で100℃で真空ラミネートした後(図3(f))、このベースフィルム10越しに全面を超高圧水銀ランプで2000mJ/cm2のエネルギーで露光硬化させ、その後150℃30分の条件で後硬化を施した後、ベースフィルム10を剥離して被覆層2bを形成し、この被覆層2bと上記ベース層2aにてクラッド層2を形成した。これによりアルミニウム板16に支持された光導波路付き銅箔を作製した(図3(g))。
次に、ブレード(砥粒:5000番、先端角:90度)が装着されたダイシングマシンで、コア4の長手方向と直角に銅箔両端から3cmの場所を樹脂表面から70μmの深さまで被覆層2b側から刃を入れて、銅箔17aの短手方向の幅6cmの位置をカットし、10cm間隔で2本のミラー用V溝18を形成した(図4(a))。このV溝18表面の研削による凹凸をエキシマレーザーでスムージングした後、V溝18部分のみにメタルマスク19越しに金を真空蒸着してマイクロミラー20を形成し(図4(b)(c))、マイクロミラー形成済みアルミ補強の光導波路付き銅箔を作製した。
次いで、6cm×16cm×1.6mm厚のFR4両面銅張積層板の両面の銅箔のうちの一方を全面エッチング除去して絶縁層22と金属箔17(銅箔17b)との積層体を形成し、この絶縁層22に、上述のクラッド用フィルムc(エポキシ樹脂塗膜厚み20μm)を100℃で真空ラミネートし、ベースフィルム10を剥がした面に、上記マイクロミラー形成済みアルミ補強の導波路付き銅箔の被覆層2b側の面を合わせて、140℃で真空ラミネートした。
その後160℃1時間の熱処理を行った後、その四辺をそれぞれ5mm幅で切り落とすことでアルミニウム板12aを取り外し、上記絶縁層22と光導波路とがクラッド用フィルムcが硬化した樹脂層23にて一体化された両面銅張り光・電気複合基板を得た(図5(a))。
この基板の光導波路側の銅箔17aの周囲から1cmのみをエッチング除去して、光導波路のコア4とマイクロミラー20の位置を確認できるようにした上で、それらを位置マーカーとして、光導波路からの光の出し入れ部21であるコア4とマイクロミラー20の交点の位置を算出し、その位置を基準にして銅箔パターニングの際に必要なマスクのガイド孔を基板の四隅に設けた。
その後、光導波路側の銅箔17aにエッチング処理を施すことにより、前記光の出し入れ部21の直上に発光素子や受光素子を実装するための電極パッド部、基板裏面回路へのスルーホールパッド部、それらを結ぶ配線パターン等の導体配線24を形成すると共に、この光導波路と反対側の銅箔17bにもエッチング処理を施してスルーホールパッド部、外部回路との電気接続端子用パッド部、それらを結ぶ配線パターン等の導体配線24を形成し、また表裏のスルーホールパッド部を結ぶ貫通孔を設けると共にこの貫通孔の内面にホールメッキを施してスルーホール25を形成し、光・電気混載配線基板を作製した(図5(b))。
この光・電気混載配線基板における二つの光出し入れ部21のうち、一方の光出し入れ部21の直上から、シリコーンオイルをマッチングオイルとして介在させて、波長850nmの光源からの光をコア4径10μmの光ファイバーで導入し、他方の光出し入れ部21の直上にはシリコーンオイルをマッチングオイルとして介在させて、コア4径200μmの光ファイバーで受光し、パワーメータに接続して、光導波路を導波する光の損失を評価した。
その結果、一方の光出し入れ部21から入力され、光導波路を10cm導波した後、他方の光出し入れ部21から出力された光(図5(b)中の矢印参照)の全体の損失(挿入損失)は3.2dBであった。
また、この基板に対して、ピーク温度265℃の鉛フリー半田リフロー条件での半田リフロー処理を3回施した後、同様に挿入損失を測定したところ、3.7dBであった。
また、同一条件で作製した別途の光・電気混載配線基板に対して、−50℃の液相中への5分間浸漬と125℃の液相への5分間浸漬とを300回繰り返すヒートショック試験を行ったところ、試験後の挿入損失は3.6dBとわずかに増加しただけであった。
また、同一条件で作製した別途の光・電気混載配線基板を光出し入れ部21を切除して切除面にコア4の断面を露出させ、光学研磨を行ってコア4長9cmの光導波路を得た後、850nmの光源からの光をコア4径10μmの光ファイバーを通して光導波路の一方のコア4の断面から導入し、他方のコア4の断面からはコア4径200μmの光ファイバーを通して光導波路を導波した光を導出し、これをパワーメータに接続して、光導波路部分のみの光の損失を評価した。その結果光の損失は0.1dB/cmであった。
このように、この光・電気混載回路基板は、エポキシ樹脂と、カチオン重合開始剤と、水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンと、特定の無機フィラーとを含有するエポキシ樹脂組成物からなるフィルムを用いて形成したクラッド層2の内部に、無機フィラーを含まない光硬化性樹脂組成物で形成されたコア4を設けた光導波路からなる光配線部と、導体配線24を備えた電気配線部とを一体に備えるので、プリント配線板工法との親和性が高くて製造しやすく、電子部品、光部品の表面実装が可能で、光導波路として極めて低損失であり、且つ部品実装時から使用環境時に亘って高い信頼性を実現できるものである。
(作製例2)
コア4の形成にあたり、平均粒子径100nm以下のシリカを含むエポキシ樹脂フィルム1であるコア用フイルムbを用いる以外は、上記作製例1と同一の条件にて光・電気混載配線基板を作製し、同様に特性評価を行った。
この結果、一方の光出し入れ部21から入力され、光導波路を10cm導波した後、他方の光出し入れ部21から出力された光の全体の損失(挿入損失)は3.4dBであり、半田リフロー後の挿入損失は3.5dBであり、ヒートショック試験後の挿入損失は3.6dBであり、また導波長9cmの光導波路部分のみの導波損失は0.12dB/cmであった。
このように、この光・電気混載回路基板は、エポキシ樹脂と、カチオン重合開始剤と、水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンと、特定の無機フィラーとを含有するエポキシ樹脂組成物からなるフィルムを用いて形成したクラッド層2の内部に、平均粒子径100nm以下のシリカを含む光硬化性樹脂組成物で形成されたコア4を設けた光導波路からなる光配線部と、導体配線24を備えた電気配線部とを一体に備えるので、プリント配線板工法との親和性が高くて製造しやすく、電子部品、光部品の表面実装が可能で、光導波路として極めて低損失であり、且つ部品実装時から使用環境時に亘って高い信頼性を実現できるものである。
〔電子デバイス〕
受発光素子26として3mm×4mmのインターポーザからなる受光素子であるフォトダイオード(PD)パッケージ26aを用い、上記作製例1で得られた光・電気混載配線基板の一方の光出し入れ部21と、前記PDパッケージ26aの受光面とを対向させた状態で、このPDパッケージ26aの受光面側に設けたバンプ27(高温半田ボール)を、光・電気混載配線基板側の導体配線24における共晶半田をプリコートした電極パッド部上に載置し、リフロー処理を施してフリップチップ実装することにより、他方の光出し入れ部21から光ファイバにて光導波路に導入した光を前記PDパッケージ26aで受光する電子デバイスを作製した。
この電子デバイスに対し、PDパッケージ26aを封止しない状態で他方の光出し入れ部21から波長850nmのレーザー光をコア4径10μmの光ファイバーを介して入射し、このときのPDパッケージ26aの出力電圧(V1)を測定した。
次に、そのPDパッケージ26aと光・電気混載配線基板との間の隙間に配合例1の液状エポキシ樹脂組成物を浸透させ、斜め上方からUV光を2J/cm2の条件で照射した後、150℃1時間の熱処理を行って、このエポキシ樹脂組成物の硬化物28による封止を行った(図5(c))。
このようにしてPDパッケージ26aを封止した後、再度、同様にPDパッケージ26aの出力電圧(V2)を測定した。
そして、これらの結果に基づき、全損失を次の式により導出した。
全損失[dB]=−10×log(V2/V1)
この結果、全損失は−2.8dBと、未封止の場合に比べて著しい低損失化が図れた。
また、上記と同様にしてPDパッケージ26aにて封止したサンプルと、PDパッケージ26aにて封止したサンプルとをそれぞれ10個ずつ作製し、これら各サンプルについて、−55℃で30分間、室温で5分間、125℃で30分間、室温で5分間を1サイクルとする気相中での温度サイクル試験を2000サイクル行い、100サイクル毎に基板とPDパッケージ26aとの間の半田ボールの電気導通状態を確認して良否を判定した。
そして、各10個のサンプルにおける不良数が、初めて半数以上となったサイクル数にて温度サイクル性を評価した。
この結果、PDパッケージ26aを封止していないサンプルでは100サイクルで既に半数が不良となり、これを故障解析に供したところ、半田バンプ27にクラックが入り、熱応力によってバンプ27が破壊されていることがわかった。一方、PDパッケージ26aを封止したサンプルでは、700サイクルになって半数が不良となり、温度サイクル性が著しく向上した。
このように、受発光素子26と光導波路との間を、エポキシ樹脂、カチオン重合開始剤、水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエン及び特定の無機フィラーとを含有するエポキシ樹脂組成物にて封止することにより、電子デバイスは光の損失を最低限に抑えたまま信頼性を充分に確保することができることが明らかとなった。
エポキシ樹脂フィルムの作製工程の一例を示すものであり、(a)及び(b)は断面図である。
光導波路の作製工程の一例を示すものであり、(a)乃至(f)は断面図である。
光導波路、光・電気混載基板及び電子デバイスの作製工程の一例を示すものであり、(a)乃至(g)は断面図である。
図3に示す工程に続く工程を示すものであり、(a)乃至(c)は図3(g)のI−I断面に相当する断面図である。
図4に示す工程に続く工程を示すものであり、(a)乃至(c)は断面図である。
符号の説明
1 エポキシ樹脂フィルム
2 クラッド層
4 コア
24 導体配線