JP4799720B2 - コーティング処理を施した打錠用杵 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば酸性の薬理作用物質、酸性の賦形剤などの酸性物質を含有する錠剤の製造に用いられ、優れた耐腐食性及び離型性を有する打錠用杵に関する。又、本発明は、例えば付着性のある薬理作用物質、付着性のある賦形剤(例えば糖アルコール)などの付着性物質を含有する錠剤の製造に用いられ、好適な離型性を有する打錠用杵に関する。
さらに本発明は、かかる打錠用杵を具有した打錠機、該打錠機を使用する錠剤の製造方法および該製造方法によって製造される錠剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般の錠剤は、打錠機に設けられた杵と臼とを用いて打錠末を圧縮成型することにより打錠される。即ち、回転盤に付設された臼内に臼孔を形成し、臼孔の下方に配置した下杵の位置を調整して臼孔内の空間を所定容積に設定し、この臼孔内に粉末薬剤等の打錠末を収納したのち上杵で圧縮して錠剤を形成し、その後、下杵で押し上げて上記錠剤を臼孔内から取り出すように構成してある。
上記の杵は、頻繁に繰り返される上記圧縮操作で容易に変形してはならないことから高い機械的強度が要求され、従来は超鋼合金や合金工具鋼を用いて形成されており、さらに腐食対策として杵表面にクロムメッキ等を施したものも使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記合金工具鋼などを用いた従来の杵は、その金属材料が基本的に腐食される性質を有しており、特に打錠用末が酸性薬物等の酸性物質を含む場合、これを打錠するときは上記金属材料の腐食が一層進行しやすく、打錠中に腐食が開始する虞がある。
これらの腐食が杵に発生すると、表面の滑り性や打錠末との離型性が低下し、錠剤を臼孔から取り出し難くなるうえ、上記腐食により生じた異物が錠剤に混入する虞もある。
【0004】
また、打錠末と杵の表面の離型性が悪い場合は、杵の表面に打錠末が付着して打錠された錠剤表面が粗面になったり、錠剤表面に明瞭な刻印を形成できなくなったりする等の問題が生じる。
本発明は、上記問題点を解消し、特に、酸性薬物等の酸性物質を含有する製剤について錠剤を成型するための打錠機に好適な、優れた耐腐食性と離型性を有する打錠用杵を提供することを技術的課題とする。
【0005】
又さらに、上記合金工具鋼などを用いた従来の件は、その金属材料が基本的に表面に打錠末が付着する性質を有しており、特に打錠用末が例えば付着性のある薬理作用物質、付着性のある賦形剤(例えば糖アルコール)などの付着性物質を含む場合これを打錠するときは上記金属材料への付着が一層進行しやすい。これらの付着が杵に発生すると打錠末と杵の表面の離型性が悪くなり、打錠された錠剤表面が粗面になったり、錠剤表面に明瞭な刻印を形成できなくなったりする等の問題が生じる。
本発明は、上記問題点を解消し、特に、例えば付着性のある薬理作用物質、付着性のある賦形剤(例えば糖アルコール)などの付着性物質を含有する製剤について錠剤を成型するための打錠機に好適な、優れた離型性を有する打錠用杵を提供することを技術的課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、母材(たとえば合金工具鋼)にクロームドッペ−N(Cr-Dope'-N、登録商標、以下同じ。)でコーティングを施した杵は優れた耐腐食性及び離型性を有するとの予想外の新知見を得、さらに検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)医薬品と農薬と肥料と食品とのいずれかである錠剤の製造に用いる、クロームドッペ−Nでコーティング表面処理した打錠用杵、
(2)医薬品と農薬と肥料と食品とのいずれかである錠剤の製造に用いる、クロームドッペ−Nコーティングで表面を耐腐食処理した打錠用杵、
(3)医薬品と農薬と肥料と食品とのいずれかである錠剤の製造に用いる、クロームドッペ−Nコーティングで表面を離型処理した打錠用杵、
(4)医薬品と農薬と肥料と食品とのいずれかである錠剤の製造に用いる、クロームドッペ−Nコーティングで表面を付着防止処理した打錠用杵、
(5)酸性物質又は付着生物質を含有する錠剤を成形するための打錠機(1)に用いる杵(4、6)に適用した前記(1)の打錠用杵、
(6)酸性物質が塩酸ピオグリタゾンである前記(5)の打錠用杵、
(7)付着性物質が糖アルコールである前記(5)の打錠用杵、
(8)糖アルコールがD−マンニトールである前記(7)の打錠用杵、
(9)医薬品と農薬と肥料と食品とのいずれかである錠剤の製造に用いる打錠機であって、クロームドッペ−Nでコーティング処理した杵を具用することを特徴とする打錠機、
(10)前記(9)の打錠機を使用することを特徴とする錠剤の製造方法、
(11)錠剤が酸性物質又は付着性物質を含有する前記(10)の製造方法、
(12)酸性物質が塩酸ピオグリタゾンである前記(11)の製造方法、
(13)付着性物質が糖アルコールである前記(11)の錠剤の製造方法、及び
(14)糖アルコールがD−マンニトールである前記(13)の製造方法、
に関する。
【0008】
本発明の打錠用杵の原料として用いられる母材は従来技術において、打錠用杵材として用いられるものはどのようなものでもよく、具体的には例えば、超硬合金、合金工具鋼、燒結合金など頻繁に繰り返される圧縮操作で容易に変形せず高い機械的高度を有するものであればどのようなものでもよく、より具体的には、SKS2、SKD、NHアロイ、SUS440Cなどが挙げられるが、SKS2が最も好ましい。
【0009】
さらに詳論すれば、鉄を95%、クロムを1%、タングステンを1.5%、炭素1%、ケイ素を0.35%、マンガンを0.8%、リンを0.03%、イオウを0.03%(%はいずれも重量比、以下も同じ)を含む合金工具鋼で製造したSKS2やコバルトを36〜53%、クロムを27〜35%、タングステンを10〜20%、炭素を2〜3%含有する成分にタンタルとニオブの少なくともいずれか一方を0.2〜5%加え、さらに所望によって鉄を1〜5%、ケイ素を1〜3%加え、必要な場合さらにニッケルを5%以下を加えたことを特徴とする燒結合金等が好ましい。
【0010】
母材のクロームドッペ−Nによるコーティングは自体公知の方法、例えば物理蒸着技術の一種であるスパッタリング法によって行うことができ、より具体的には例えば型技術第8巻第5号(1993年4月号)第70〜78頁に記載された方法によって容易に行われる。
【0011】
本発明における錠剤は、医薬品に限らず、農薬、肥料、食品、プラスチック、セラミック、金属などを含む。これらの錠剤は例えば医薬における薬理活性成分のように生理活性成分を含む場合が多く、薬理活性成分はどのようなものでもよい。薬理活性成分は特に限定されない。医薬用途の酸性物質、例えば酸性薬物としては、具体的には塩酸ピオグリタゾン、塩酸マニジピン、塩酸デラプリル、塩酸フルスルチアミン、塩酸セフォチアムヘキセチル、塩酸チアミン、塩酸ヒドロキシジンなどが挙げられる。これら酸性薬物は自体公知の手段に従って容易に製造される。
【0012】
また、さらに、本発明における酸性薬物は例えば酸性薬物と中性薬物の混合物であってよく、要するに本発明における酸性薬物は酸性を示す固形物質であればどのようなものでもよい。
【0013】
本発明に使用する打錠末は付着性物質を含む。そのような付着性物質として付着性薬理活性成分、付着性のある賦形剤(例えば糖アルコール)が挙げられる。付着性のある薬理活性成分として、例えば3−〔1−(フェニルメチル)ピペリジンー4−イル〕−1−(2,3,4,5−テトラヒドロー1H−1−ベンズアゼピン−8−イル)−1−プロパノン フマレート、リセドロネート、塩酸ピオグリタゾン等が例示される。又さらに打錠末に付着性のある賦形剤が含まれるとき、薬理活性成分は付着性がなくてもよい。付着性がなくても本発明に使用されてよい薬理活性成分としては、例えばランソプラゾール、塩酸マニジピン、塩酸デラプリル、カンデサルタンシレキセチル、ビンポセチン、セラトロダスト等が挙げられる。
従って、錠剤を製造する場合は、上記薬理活性成分以外に例えば賦形剤あるいは結合剤として杵に付着性がある糖アルコールが打錠末原料として使用される。
【0014】
糖アルコールも医薬用途のみならず、農薬、肥料、食品、プラスチック、セラミック、金属の分野で使用される糖アルコールを含む。医薬用途の糖アルコールとしては、具体的にはエリスリトール、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、マルチトール、無水マルトース、含水マルトース、無水ラクチトール、無水マルト−ス、含水マルトース、無水ラクチトール、含水ラクチトール、還元麦芽糖水アメが挙げられる。
また、複数の糖アルコールを組み合わせて用いることもできる。
なお、上記の例示(例えば塩酸ピオグリタゾン)から明らかなように、酸性物質であり同時に付着性物質である物質も本発明で便宜に使用される。
【0015】
錠剤はいわゆる錠剤の形状を有する物ならどのようなものでもよく、薬物を含有する細粒、ペレット等を包含する錠剤であってよいことは言うまでもない。
かかる錠剤を製造する場合、通常上記薬理活性成分(薬物)は賦形剤、滑沢剤、崩壌剤などと混合して打錠末となしこれを杵と臼で圧縮されて錠剤が製造される。本発明においては、通常は例えば糖アルコール又は付着性を有する薬物が打錠末に含有されている。このようにして得られる錠剤を常法に従ってさらに表面コーティングして製品としてもよい。また錠剤には必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、香料、フレーバーなどの製剤添加剤を打錠末に配合することもできる。
【0016】
賦形剤の好適な例としては、例えば乳糖、白糖などの糖類、D−マンニトール、D−ソルビトールなどの糖アルコール、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、小麦デンプンなど)、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、デキストリン、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0017】
滑沢剤の好適な例としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどが挙げられる。
【0018】
結合剤の好適な例としては、例えばデンプン、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0019】
崩壊剤の好適な例としては、例えばデンプン、α化デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
【0020】
コーティング剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン80、プルロニックF68,ヒマシ油、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、オイドラキット(ローム社製、西ドイツ、アクリル酸系共重合物)、カルボキシメチルエチルセルロース、ポルビニルアセタルジエチルアミノアセテート、ワックス類およびタルク、酸化チタン、ベンガラ等の色素などが挙げられる。
【0021】
酸味料としては、例えばクエン酸(無水クエン酸)、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
人工甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチンニカリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。
香料としては、合成物および天然物のいずれでもよく、例えばレモン、ライム、オレンジ、メントール、ストロベリーなどが挙げられる。
着色剤としては、例えば食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、ベンガラ、タルク、タール系色素などが挙げられる。
【0022】
打錠末中の酸性薬物等の酸性物質の使用割合は、一概に言えず広範囲に渉る。具体的に約0.001〜99.5%、より好ましくは約0.01〜70%、最も好ましくは約0.1〜50%程度である。
打錠圧は通常は約0.1〜3.0トン/杵程度、好ましくは0.5〜3.0トン/杵程度であり、さらに好ましくは0.8〜1.6トン/杵程度である。
臼の内径は通常は約3〜20mm程度、好ましくは約3〜13mm程度、さらに好ましくは5〜9mm程度である。臼の形状は円形でもよいし、オーバル、オブロングなど異形の場合もある。
【0023】
打錠末中の糖アルコールの使用割合は、一概に言えず広範囲に渉る。具体的に約0.001〜99.5%、より好ましくは約0.01〜90%、最も好ましくは約0.1〜90%程度である。
打錠圧は通常は約0.1〜3.0トン/杵程度であり、好ましくは0.8〜1.6トン/杵程度である。
臼の内径は通常は約3〜20mm程度、好ましくは5〜13mm程度である。臼の形状は円形でもよいし、オーバル、オブロングなど異形の場合もある。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態の杵を用いた回転式打錠機の概略断面図である。図1に示すように、この回転式打錠機(1)の回転盤(2)には、周方向に所定間隔をおいて複数の臼を配置してあり、この臼(3)内に臼孔(3a)を形成してある。
【0025】
この臼孔(3a)の上方には、上杵(4)を臼孔(3a)に対して上下動可能に上杵保持盤(5)に保持してある。また、臼孔(3a)の下方には下杵(6)を保持盤(7)に上下動可能に保持し、この下杵(6)の杵先を臼孔(3a)内に下方から突入させてある。
【0026】
上記上杵(4)の上方には、上杵(4)の上端に設けた頭部と接触するように上杵ガイドレール(8)を配置してあり、一方、下杵(6)の下方には、下杵(6)の下端に設けた頭部と接触するように下杵ガイドレール(9)を配置してある。そして、上記回転盤(2)と上杵保持盤(5)及び下杵保持盤(7)は同軸に回転駆動され、この回転により上杵(4)と下杵(6)はそれぞれ両ガイドレール(8・9)に案内されて所定位置で上下に駆動される。
上記上杵(4)と下杵(6)とは、いずれも合金工具鋼にクロームドッペ−Nコーティングを施してある。
【0027】
上記回転式打錠機では次の手順で錠剤が打錠される。
最初に、下杵ガイドレール(9)により下杵(6)が所定高さに位置決めされて臼孔(3a)内の空間が所定容積に設定され、充填ゾーンにおいてこの臼孔(3a)内に打錠末(10)が充填される。次いで、圧縮ゾーンにおいて上杵(4)が上杵ガイドレール(8)に案内され下方へ移動して圧縮ローラに導かれ、上記打錠末(10)が圧縮されることにより打錠される。
【0028】
その後、上杵ガイドレール(8)に案内されて上杵(4)が持ち上げられ、取り出しゾーンにおいて下杵(6)が下杵ガイドレール(9)により押し上げられ、臼孔(3a)から上記圧縮成型された錠剤が取り出される。
次に、上記クロームドッペ−Nコーティングを施した杵の酸性薬物を含有する製剤に対する耐腐食性及び離型性と当該N−クロームドッペ−Nコーティングを施した杵の糖アルコールを含有する製剤に対する離型性を、従来の合金工具鋼および合金工具鋼にコーティングを施した杵等の耐腐食性、離型性と比較しながら説明する。
【0029】
【実施例】
〔実施例1〕
従来の合金工具鋼からなる杵(以下SKS2)に上記の自体公知の手段(型技術第8巻第5号(1993年4月号)第70〜78頁参照)に従ってクロームドッペ−Nコーティングを施して杵(以下単に実施例杵ともいう)を得た。
上記のクロームドッペ−Nコーティングを施した杵の腐食性をSKS2、燒結合金(以下アロイ)およびSKS2にコーティングを施した杵と比較した。結果は表1に示す通りであった。SKS2杵は保管(RH75%、室温、3日間)時に腐食を生じ、塩酸ピオグリタゾンを27.55%含有する打錠末(塩酸ピオグリタゾン33.06重量部、乳糖76.34重量部、ヒドロキシプロピルセルロース3.0重量部、カルボキシメチルセルロースカルシウム7.2重量部およびステアリン酸マグネシウム0.4重量部を混合して得た)との接触により腐食が大きく加速された。窒化チタン(以下、TiN)コーティング杵は打錠末との接触により部分的に腐食を生じた。一方、実施例杵、アロイ杵、クロムメッキ杵、窒化クロム(以下、CrN)コーティング杵は全く腐食されなかった。
【0030】
なお、比較に用いた杵は以下のものを使用した。
a) SKS2杵:鉄を95%、クロムを1%、タングステンを1.5%、炭素を1%、ケイ素を0.35%、マンガンを0.8%、リンを0.03%、イオウを0.03%含む合金工具鋼で製造したもの。
b) アロイ杵 :耐腐食性に優れた燒結合金(特願平09−323123号)で製造したもの。
c) クロムメッキ杵、TiNコーティング杵およびCrNコーティング杵
:SKS2杵に公知手段に従ってそれぞれクロムメッキ、TiNコーティングおよびCrNコーティングを施して製造したもの。
【0031】
【表1】
【0032】
次に上記の杵の離型性を打錠時に発生する杵の表面に打錠末が付着して錠剤表面に明瞭な刻印を形成しない錠剤(以下刻印不良)の発生状況にて評価した。上記の塩酸ピオグリタゾン27.55%含有する打錠末を用いて上記と同様の杵を対照に比較した。結果は表2に示す通りとなり、クロムメッキ杵、TiNコーティング杵およびCrNコーティング杵は打錠初期から刻印不良が発生し、打錠不可となったのに対し、実施例杵、SKS2杵およびアロイ杵は打錠初期及び終期においても刻印不良の発生は認められなかった。
【0033】
【表2】
【0034】
表1、2より耐腐食性、離型性ともに満足するものはクロームドッペ−Nコーティング杵(実施例杵)とアロイ杵であることがわかった。ただし、アロイ杵については、長時間打錠した際に杵先に亀裂が入り強度面で杵への適用は困難であった。
なお、ダイアモンドライクカーボン(DLC)、ニウロイ96処理等の他の表面処理もSKS2杵に試みたが満足な結果を得ることができなった。
【0035】
〔実施例2〕
従来の合金工具からなる杵(以下SKS2)に上記の自体公知の手段(型技術第8巻第5号(1993年4月号)第70〜78頁参照)に従ってクロームドッペ−Nコーティングを施して杵(以下単に実施例杵ともいう)を得た。上記実施例杵の離型性をSKS2で製造した杵、SUS440Cで製造した杵およびSKS2にダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)コーティングを施した杵とを比較した。杵の離型性を、打錠時に発生する杵の表面に打錠末が付着して錠剤表面に明瞭な刻印を形成しない錠剤(以下刻印不良)の発生状況および杵表面への打錠末の付着(以下杵付着不良)発生状況にて評価した。なお、この打錠の実施においてD−マンニトールを含有する下記の処方の打錠末を用いた。
【0036】
【0037】
結果は表3に示す通りとなり、SKS2杵、SUS440C杵およびDLCコーティング杵は打錠初期から刻印不良が発生し、打錠不可となったのに対し、実施例杵は打錠初期及び終期においても刻印不良の発生は認められず、杵表面への打錠末の付着発生も認められなかった。
【0038】
【表3】
【0039】
〔実施例3〕
ランソプラゾール30重量部を含有するランソプラゾール細粒(日本特許出願特願平11−135177に記載の方法により製造した) 270重量部、D−マンニトール 204重量部、L−HPC−33 30重量部、セオラスKG−801 30重量部、クロスポビドン 15重量部、無水クエン酸 3重量部、アスパルテーム 9重量部、ストロベリ−D 3重量部およびステアリン酸マグネシウム 6重量部を混合して得られる打錠末を図1で示される打錠機で打錠した。杵材質および杵の表面処理は実施例1と同一である。打錠条件は打錠外径7mmφ、重量180mg/錠、打圧0.57tonであった。杵材質・表面処理、20000錠/杵打錠時の結果は下記表4のとおりであった。
【0040】
【表4】
【0041】
【発明の効果】
本発明の合金工具鋼にクロームドッペ−Nコーティングを施した杵は、酸性物質を含有する製剤の打錠において優れた耐腐食性と離型性を示し、付着性物質を含有する製剤の打錠において、離型性に優れ、安定した工業的生産に適した打錠を提供する。
【0042】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の杵を用いた、回転式打錠機の概略断面図である。
[符号の説明]
1………………回転式打錠機、
2………………回転盤、
3………………臼、
3a……………臼孔、
4………………上杵、
5………………上杵保持盤、
6………………下杵、
7………………下杵保持盤、
8………………上杵ガイドレール、
9………………下杵ガイドレール、
10……………打錠末
Claims (14)
- 医薬品と農薬と肥料と食品とのいずれかである錠剤の製造に用いる、クロームドッペ−N(登録商標)でコーティング表面処理した打錠用杵。
- 医薬品と農薬と肥料と食品とのいずれかである錠剤の製造に用いる、クロームドッペ−N(登録商標)コーティングで表面を耐腐食処理した打錠用杵。
- 医薬品と農薬と肥料と食品とのいずれかである錠剤の製造に用いる、クロームドッペ−N(登録商標)コーティングで表面を離型処理した打錠用杵。
- 医薬品と農薬と肥料と食品とのいずれかである錠剤の製造に用いる、クロームドッペ−N(登録商標)コーティングで表面を付着防止処理した打錠用杵。
- 酸性物質又は付着性物質を含有する錠剤を成形するための打錠機(1)に用いる杵(4、6)に適用した請求項1の打錠用杵。
- 酸性物質が塩酸ピオグリタゾンである請求項5の打錠用杵。
- 付着性物質が糖アルコールである請求項5の打錠用杵。
- 糖アルコールがD−マンニトールである請求項7の打錠用杵。
- 医薬品と農薬と肥料と食品とのいずれかである錠剤の製造に用いる打錠機であって、クロームドッペ−N(登録商標)でコーティング処理した杵を具用することを特徴とする打錠機。
- 請求項9の打錠機を使用することを特徴とする錠剤の製造方法。
- 錠剤が酸性物質又は付着性物質を含有する請求項10の製造方法。
- 酸性物質が塩酸ピオグリタゾンである請求項11の製造方法。
- 付着性物質が糖アルコールである請求項11の錠剤の製造方法。
- 糖アルコールがD−マンニトールである請求項13の製造方法。
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