JP4786063B2 - マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は冷間鍛造性及び打抜き性等の加工性が良好なマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法に関し、特に、JISに記載されているSUS630相当のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ばね及びボルト等の材料には、優れた耐食性及び高い強度が要求される。このような材料として析出硬化型ステンレス鋼がある。析出硬化型ステンレス鋼の一例として、約4質量%のCuを含有し時効効果処理によりCuの固溶体が析出して析出硬化するSUS630がある。
【0003】
図2は従来の析出硬化型ステンレス鋼の製造方法を示す工程図である。図2に示すように、従来の析出硬化型ステンレス鋼の製造方法においては、先ず、鋼を溶製して所定の組成を有する鋳塊を製造する。次に、この鋳塊に対し、熱間加工率が50%以上の条件で熱間圧延加工又は熱間伸線加工等の熱間加工を行う。次に、冷間加工率が20%以下の条件で冷間圧延加工又は冷間伸線加工等の冷間加工を行い、板状又は棒状に加工する。その後、1020乃至1060℃の温度に約0.5時間加熱して熱処理した後、水冷(WQ)することにより固溶化処理(solution treatment:以下、STという)を行う。これにより、析出硬化型ステンレス鋼が製造される。その後、このステンレス鋼に冷間鍛造又は打抜き加工等の成形加工を施し、例えばばね又はボルト等の所定の形状に成形する。その後、必要に応じて更に固溶化処理を行った後、時効硬化処理を行い、析出硬化させる。
【0004】
しかしながら、SUS630等の析出硬化型ステンレス鋼は、強度が高い反面、冷間鍛造性及び打抜き性(以下、総称して加工性という)が劣るという問題点がある。この問題点を解決する技術として、SUS630において鋼中のC及びNの含有量を低減することにより、ST後の硬さを低下させる技術がある。
【0005】
しかしながら、このように単にC及びNの含有量を低減するだけでは、析出硬化後のステンレス鋼の靭性及び延性が著しく低下するという問題点がある。そこで、この問題点の解決を図った技術として、特開平9−143632号公報において、鋼中のNb、C及びNの各含有量の関係を制御する技術が開示されている。特開平9−143632号公報においては、Nb、C及びNの各含有量の関係が規定された鋼塊を熱間鍛造により丸棒に加工し、冷間伸線加工等の冷間加工を行わず、1010乃至1060℃の温度に0.5時間加熱した後急冷する固溶化処理(ST)を行っている。これにより、熱間加工性が優れ、ST後の加工性が良好で、ピーク時効状態における靭性及び延性並びに過時効状態における強度が改善された析出硬化型ステンレス鋼が得られると記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の従来の技術には以下に示す問題点がある。特開平9−143632号公報に記載された技術においては、鋼の成分を調整し、熱間加工後の冷間加工を省略することにより、ST後のステンレス鋼の硬度が上昇しすぎることを抑え、ST後の加工性をある程度改善している。しかしながら、特開平9−143632号公報に記載されたステンレス鋼においても、実用上十分な加工性を得ることはできない。また、特開平9−143632号公報においては冷間加工を省略しているため、成形可能な形状が限定されてしまうという問題点がある。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、熱間加工後に十分な冷間加工率で冷間圧延又は冷間伸線加工を行うことができ、固溶化処理後の加工性が良好なマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法は、C:0.01乃至0.029質量%、Si:1.0質量%以下、Mn:1.0質量%以下、P:0.05質量%以下、S:0.05質量%以下、Cr:14乃至17.5質量%、Cu:3乃至5質量%、Ni:3乃至5質量%、Nb:0.15乃至0.45質量%、N:0.03質量%以下を含有し、更に好ましくは、Mo:1.0質量%以下及びB:0.001乃至0.004質量%からなる群から選択された少なくとも一種を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する鋳塊を熱間加工する工程と、この熱間加工材に対し冷間加工率が25乃至50%の条件で冷間圧延加工又は冷間伸線加工を施す工程と、この冷間加工材に対し温度が920乃至1000℃の条件で固溶化処理を行う工程と、を有し、前記固溶化処理の後に結晶粒径が粒度番号で6以上、ロックウェル硬さがHRC30以下のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼を製造することを特徴とする。
【0009】
本発明においては、前記組成の鋳塊を熱間加工し、この熱間加工材に対し冷間加工率が25乃至50%の条件で冷間圧延加工又は冷間伸線加工を施し、この冷間加工材に対し温度が920乃至1000℃の条件で固溶化処理を行い、前記固溶化処理後の結晶粒径を粒度番号で6以上とし、ロックウェル硬さをHRC30以下とすることにより、固溶化処理後の加工性、例えば冷間鍛造性及び打抜き性を向上させることができる。また、冷間加工率が25乃至50%と高いため、十分な冷間加工を行い、ステンレス鋼を任意の形状に加工することができる。なお、冷間加工率とは、冷間圧延加工においては圧延率を指し、冷間伸線加工においては減面率を指す。また、ロックウェル硬さはJISZ2245に記載の試験方法により測定し、結晶粒径はJISG0551に記載の試験方法により測定する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照して具体的に説明する。本実施例においては、ステンレス鋼の組成を、C:0.01乃至0.03質量%、Si:1.0質量%以下、Mn:1.0質量%以下、P:0.05質量%以下、S:0.05質量%以下、Cr:14乃至17.5質量%、Cu:3乃至5質量%、Ni:3乃至5質量%、Nb:0.15乃至0.45質量%、N:0.03質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成とする。また、このステンレス鋼に、更に、Mo:1.0質量%以下及びB:0.001乃至0.004質量%からなる群から選択された少なくとも一種を含有させてもよい。
この組成はSUS630相当のステンレス鋼の組成である。
【0011】
図1は本実施例に係る析出硬化型ステンレス鋼の製造方法を示す工程図である。図1に示すように、本実施例に係る析出硬化型ステンレス鋼の製造方法においては、先ず、溶解炉にて前記組成を有する鋳塊を溶製する。その後、この鋳塊に対し、熱間加工率が例えば40%以上の条件で熱間圧延加工又は熱間伸線加工等の熱間加工を行う。次に、この熱間加工材に対し、冷間加工率が25乃至50%の条件で冷間圧延加工又は冷間伸線加工等の冷間加工を行い、板状又は棒状に加工する。続いて、920乃至1000℃の温度に例えば0.2乃至0.5時間加熱して熱処理した後、水冷(WQ)又は空冷(AC)することにより固溶化処理を行う。これにより、析出硬化型ステンレス鋼が製造される。その後、このST後のステンレス鋼に冷間鍛造又は打抜き加工等の成形加工を施し、例えばばね又はボルト等の所定の形状に成形する。その後、この成形材に対して、必要に応じて更に固溶化処理を行った後、時効硬化処理を行い、このステンレス鋼を析出硬化させる。
【0012】
以下、本発明の各構成要件における数値限定理由について説明する。先ず、鋼の組成について説明する。
【0013】
C:0.01乃至0.03質量%
Cは、その含有量が少ないほどST後の鋼の硬さが軟らかくなるが、Cの含有量が0.01質量%未満であるとST後の結晶粒が大きくなり、鋼の靭性等の特性が劣化する。このためCの添加量の下限を0.01質量%とする。一方、Cを0.03質量%を超えて添加すると、ST後の鋼の硬さが硬くなり加工性が低下する。従って、Cの添加量の上限を0.03質量%とする。
【0014】
Si:1.0質量%以下
Siは鋼の脱酸剤として有効な元素であり、脱酸のため少量添加するが、Siを1.0質量%を超えて添加するとST後の鋼の加工性が低下する。従って、Si添加量の上限を1.0質量%とする。
【0015】
Mn:1.0質量%以下
Mnは鋼の脱酸剤として有効な元素であり、脱酸のため少量添加するが、Mnを1.0質量%を超えて添加するとST後の鋼の加工性が低下する。このため、上限を1.0質量%とする。
【0016】
P:0.05質量%以下
Pは粒界に偏析して鋼の延性を低下させる元素であるため、Pの含有量は可及的に低い方が望ましいが、Pの含有量を極度に低下させようとすると製造コストが上昇する。従って、許容できる範囲として上限を0.05質量%とする。
【0017】
S:0.05質量%以下
Sは多量に含有していると鋼の熱間加工性を低下させるため、Sの含有量は可及的に低い方が望ましいが、Sの含有量を極度に低下させようとすると製造コストが上昇する。従って、許容できる範囲として上限を0.05質量%とする。
【0018】
Cr:14乃至17.5質量%
Crは耐食性を得るために必要な元素である。良好な耐食性を得るためには14質量%以上のCrの添加が必要である。一方、Crを17.5質量%を超えて添加すると鋼の熱間加工性及び加工性が低下するため、Crの添加量は17.5質量%以下とする。
【0019】
Cu:3乃至5質量%
Cuはステンレス鋼を析出硬化させるために必要な元素である。ステンレス鋼において十分な析出硬化硬さを得るためには、Cuを3質量%以上添加することが必要である。一方、Cuを5質量%を超えて添加すると鋼の熱間加工性が低下する。このため、上限を5質量%とする。
【0020】
Ni:3乃至5質量%
Niは鋼中のδフェライト量を抑制する作用があり、また、熱間加工時の疵発生を抑制する作用がある。前記作用を得るためにはNiを3質量%以上添加する必要がある。一方、Niを5質量%を超えて添加すると、鋼のMs点(マルテンサイト変態点)を低下させると共にST後の加工性を劣化させる。従って、Niの含有量は3乃至5質量%とする。
【0021】
Nb:0.15乃至0.45質量%
Nbは鋼中のC及びNを固着させて鋼の硬さを下げる効果がある。前記効果を得るためにはNbを0.15質量%以上添加する必要がある。一方、Nbを0.45質量%を超えて添加すると鋼の熱間加工性を低下させる。従って、Nbの添加量は0.15乃至0.45質量%とする。
【0022】
N:0.03質量%以下
Nはその含有量が少ないほどST後の鋼の硬さを軟らかくすることができる。
Nの含有量が0.03質量%を超えると、ST後の鋼が硬くなりすぎるため、Nの含有量の上限を0.03質量%とする。
【0023】
Mo:1.0質量%以下
Moは耐食性の向上に有効な元素であるが、Moを1.0質量%を超えて過度に添加すると鋼中のδフェライト量が増加する。このため、Mo添加量の上限を1.0質量%とする。
【0024】
B:0.001乃至0.004質量%
Bは熱間加工性を向上させる効果がある。前記効果を得るためにはBを0.001質量%以上添加することが好ましい。一方、Bを0.004質量%を超えて過度に添加するとST後の鋼の加工性が低下する。このため、Bの添加量の上限を0.004質量%とする。
【0025】
次に、各製造条件の数値限定理由について説明する。
【0026】
冷間圧延加工又は冷間伸線加工における冷間加工率:25乃至50%
冷間加工率が25%未満では、固溶化処理(ST)の温度を920乃至1000℃とする場合、ST後に熱延組織が残ってしまう。このため、鋼の結晶粒が粗大になり、加工性(冷間鍛造性及び打抜き性等)が低下する。一方、冷間加工率が50%を超えると、ST時に冷間圧延組織の回復及び再結晶が過度に進行し、ST後の結晶粒が粗大化すると共に、合金元素の再固溶が起こりST後の鋼の硬さがHRC30を超える。このため、ST後の鋼の加工性が低下する。従って、冷間加工率は25乃至50%とする。なお、冷間加工率とは、冷間圧延加工の場合は冷間圧延率を指し、冷間伸線加工の場合は減面率を指す。減面率とは、被加工材の加工方向に直交する断面における面積の変化率をいう。
【0027】
固溶化処理温度;920乃至1000℃
固溶化処理温度が920℃未満では、ST後に冷間加工組織が残り、ST後の鋼の硬さがHRC30を超えてしまい、加工性が低下する。一方、固溶化処理温度が1000℃を超えると、結晶粒が粗大化すると共に、合金元素の溶け込みが過剰になりST後の鋼の硬さがHRC30を超え、やはりST後の鋼の加工性が低下する。従って、固溶化処理温度は920乃至1000℃とする。
【0028】
固溶化処理後の鋼の硬さ:HRC30以下
ST後の鋼の硬さがHRC30を超えると、冷間鍛造性及び打抜き性等の加工性が低下する。従って、ST後の鋼の硬さはHRC30以下とする。
【0029】
固溶化処理後の鋼の結晶粒径:粒度番号6以上
ST後の鋼の粒度番号が6未満であると、結晶粒が大きすぎてST後の加工に必要な靭性が得られず、鋼の加工性が低下する。従って、ST後の鋼の結晶粒径は粒度番号で6以上とする。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の実施例の効果について、その特許請求の範囲から外れる比較例と比較して具体的に説明する。先ず、試験溶解炉を使用して表1に示す化学組成を有する鋳塊を溶製した。なお、表1に示す化学組成の単位は質量%である。
【0031】
【表1】
【0032】
次に、この鋳塊を熱間加工により厚さが5乃至7mmの板材及び直径が30mmの丸棒材に成形した。次に、前記板材に対して冷間加工率即ち圧延率を変えて冷間圧延加工した。また、前記丸棒材に対して冷間加工率即ち減面率を変えて冷間伸線加工した。その後、前記冷間圧延加工後の板材及び前記冷間伸線加工後の丸棒材を固溶化処理した。このとき、固溶化処理の温度及び時間を変化させた。その後、固溶化処理後の板材及び丸棒材のロックウェル硬さ及び結晶粒径を測定した。
【0033】
次いで、前記板材及び前記丸棒材の加工性を評価した。前記板材に対しては打抜き試験を行って打抜き性を評価した。また、前記丸棒材に対しては圧縮試験を行って冷間鍛造性を評価した。前記各板材の冷間加工率(圧延率)、固溶化処理条件、固溶化処理後のロックウェル硬さ、結晶粒径及び打抜き試験の結果を表2に示す。また、前記各丸棒材の冷間加工率(減面率)、固溶化処理条件、固溶化処理後のロックウェル硬さ、結晶粒径及び圧縮試験の結果を表3に示す。
【0034】
ロックウェル硬さの測定はJISZ2245に記載の試験方法に沿って実施した。結晶粒径の測定はJISG0551に記載の試験方法に沿って実施した。板材の打抜き試験においては、プレスにより直径が20mmの円板を打抜き、割れ等の発生の有無を観察した。割れ等の発生が認められない場合を「打抜き性:○(良好)」とし、割れ等の発生が認められた場合を「打抜き性:×(不良)」とした。丸棒材の圧縮試験については、直径が10mm、長さが15mmの試験片を圧縮し、割れが発生する限界圧縮率を測定した。限界圧縮率が75%以上の場合を「冷鍛性:○(良好)」とし、限界圧縮率が75%未満の場合を「冷鍛性:×(不良)」とした。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示すNo.1、5、6及び8は本発明の実施例である。実施例No.1、5、6及び8は請求項1又は2に記載の鋼成分を有し、冷間加工率(圧延率)が25乃至50%であり、固溶化処理温度が920乃至1000℃であり、ロックウェル硬さがHRC30以下であり、結晶粒径が粒度番号で6以上であるため、打抜き性が優れていた。
【0037】
これに対して、No.2乃至4、7、9乃至14は比較例である。比較例No.2及び11は冷間加工率(圧延率)が20%と小さいため、熱間圧延時の粗大な組織がST後にも残り、打抜き性が劣っていた。比較例No.3は冷間加工率が55%と大きいため、合金元素の再固溶により固溶化時の硬さがHRC32と硬くなり、打抜き性が劣っていた。比較例No.4及び7はST温度が1040℃と高いため、結晶粒が粗大化すると共に、合金元素の溶け込みが過剰となり固溶化処理後の硬さがHRC31と硬くなったため、打抜き性が劣っていた。比較例No.9はST温度が1040℃と高いため、合金元素の溶け込みが過剰となり固溶化処理後の硬さがHRC31と硬くなったため、打抜き性が劣っていた。比較例No.10はST温度が880℃と低いため、短時間の固溶化処理では冷間加工組織の回復及び再結晶が進まず、ST後の硬さがHRC32と硬くなり、打抜き性が劣っていた。
【0038】
また、比較例No.12は鋼中のC含有量が0.034質量%と高いため、ST後の鋼の硬さがHRC31と硬くなり、打抜き性が劣っていた。比較例No.13は鋼中のCr含有量が18.0質量%と高いため、ST後の鋼の硬さがHRC32と硬くなり、打抜き性が劣っていた。比較例No.14は鋼中のNi含有量が5.5質量%と高いため、ST後の鋼の硬さがHRC31と硬くなり、打抜き性が劣っていた。
【0039】
【表3】
【0040】
表3に示すNo.15、16、19及び23は本発明の実施例である。実施例No.15、16、19及び23は請求項1又は2に記載の鋼成分を有し、冷間加工率(減面率)が25乃至50%であり、固溶化処理温度が920乃至1000℃であり、ロックウェル硬さがHRC30以下であり、結晶粒径が粒度番号で6以上であるため、冷間鍛造性が優れていた。
【0041】
これに対して、No.17、18、20乃至22、24乃至27は比較例である。比較例No.17は冷間加工率(減面率)が55%と大きいため、合金元素の再固溶により固溶化時の硬さがHRC31と硬くなり、冷間鍛造性が劣っていた。比較例No.18及び20はST温度が1020℃と高いため、結晶粒が粗大化すると共に、合金元素の溶け込みが過剰となり固溶化処理後の硬さがHRC32と硬くなったため、冷間鍛造性が劣っていた。比較例No.21はST温度が900℃と低いため、冷間加工組織の回復及び再結晶が進まず、ST後の硬さがHRC31と硬くなり、冷間鍛造性が劣っていた。比較例No.22は冷間加工率が20%と小さいため、熱間圧延時の粗大な組織がST後にも残り、冷間鍛造性が劣っていた。比較例No.24はST温度が1020℃と高いため、合金元素の溶け込みが過剰となり固溶化処理後の硬さがHRC31と硬くなったため、冷間鍛造性が劣っていた。
【0042】
また、比較例No.25は鋼中のC含有量が0.034質量%と高いため、ST後の鋼の硬さがHRC31と硬くなり、冷間鍛造性が劣っていた。比較例No.26は鋼中のCr含有量が18.0質量%と高いため、ST後の鋼の硬さがHRC32と硬くなり、冷間鍛造性が劣っていた。比較例No.27は鋼中のN含有量が0.036質量%と高いため、ST後の鋼の硬さがHRC32と硬くなり、冷間鍛造性が劣っていた。
【0043】
なお、本実施例においては、ST後の鋼の加工性として打抜き性及び冷間鍛造性を評価したが、加工性は打抜き性及び冷間鍛造性に限定されず、曲げ加工性又はプレス加工性等であってもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、熱間加工後に十分な冷間加工率で冷間圧延加工又は冷間伸線加工を行うことができ、固溶化処理後の加工性が良好なマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る析出硬化型ステンレス鋼の製造方法を示す工程図である。
【図2】従来の析出硬化型ステンレス鋼の製造方法を示す工程図である。
Claims (3)
- C:0.01乃至0.029質量%、Si:1.0質量%以下、Mn:1.0質量%以下、P:0.05質量%以下、S:0.05質量%以下、Cr:14乃至17.5質量%、Cu:3乃至5質量%、Ni:3乃至5質量%、Nb:0.15乃至0.45質量%、N:0.03質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する鋳塊を熱間加工する工程と、この熱間加工材に対し冷間加工率が25乃至50%の条件で冷間圧延加工又は冷間伸線加工を施す工程と、この冷間加工材に対し温度が920乃至1000℃の条件で固溶化処理を行う工程と、を有し、前記固溶化処理の後に結晶粒径が粒度番号で6以上、ロックウェル硬さがHRC30以下のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼を製造することを特徴とするマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法。
- C:0.01乃至0.029質量%、Si:1.0質量%以下、Mn:1.0質量%以下、P:0.05質量%以下、S:0.05質量%以下、Cr:14乃至17.5質量%、Cu:3乃至5質量%、Ni:3乃至5質量%、Nb:0.15乃至0.45質量%、N:0.03質量%以下を含有し、更に、Mo:1.0質量%以下及びB:0.001乃至0.004質量%からなる群から選択された少なくとも一種を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する鋳塊を熱間加工する工程と、この熱間加工材に対し冷間加工率が25乃至50%の条件で冷間圧延加工又は冷間伸線加工を施す工程と、この冷間加工材に対し温度が920乃至1000℃の条件で固溶化処理を行う工程と、を有し、前記固溶化処理の後に結晶粒径が粒度番号で6以上、ロックウェル硬さがHRC30以下のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼を製造することを特徴とするマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法。
- ばね用又はボルト用のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼を製造することを特徴とする請求項1又は2に記載のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法。
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