以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この発明に係る一構成例を示し、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の材料および条件等を用いることがあるが、これら材料および条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、各図において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。また、以下に示す概略的ブロック構成図においては、光ファイバ等の光信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。
<光アクセスネットワークシステム>
図1を参照して、光アクセスネットワークシステムの構成及びその動作を説明する。図1は、光アクセスネットワークシステムの概略的ブロック構成図である。図1に示す光アクセスネットワークシステムは、加入者数(ユーザー数)が4である場合、すなわち、光端末装置が4台である場合を想定してあるが、4台にかかわらず何台であっても以下の説明は成立する。
図1においては、複数の光端末装置を識別するために、第1チャンネルを割り当てられた光端末装置をONU-1とし、第4チャンネルを割り当てられた光端末装置をONU-4として表してある。ONU-2及びONU-3は図示を省略してあるが、ONU-1からONU-4のいずれも同一の構成である。以後の光アクセスネットワークシステムの説明において、光端末装置の構造を説明する場合には、光端末装置10と一般的に表記して説明する。
光アクセスネットワークシステムは、事業者側に設置される装置である光回線終端装置100と、ユーザー側に設置される装置である光端末装置(ONU-1からONU-4、以後、光端末装置10と表記する。)との間で符号分割多重による双方向光通信を行う光アクセスネットワークシステムである。光回線終端装置100と光端末装置10とは、光ファイバ伝送路70、光合分岐器66及び複数の分岐光ファイバ伝送路を介して結合されている。
光ファイバ伝送路70は、その一端に光合分岐器66が設けられ、この光ファイバ伝送路70の他端には、光回線終端装置100が結合されている。また、この光ファイバ伝送路70は光合分岐器66によって複数の分岐光ファイバ伝送路に分岐されて、その分岐光ファイバ伝送路それぞれには一つずつ光端末装置が結合される。図1では、ONU-1を接続する光ファイバ伝送路を分岐光ファイバ伝送路74と表記し、ONU-4を接続する光ファイバ伝送路を分岐光ファイバ伝送路76と表記してある。
これら複数の光端末装置のそれぞれ(ONU-1からONU-4)と、光回線終端装置100との間で、符号分割多重による双方向光通信が行われる。
光端末装置10は、光処理部12及び電気処理部14を具えて構成されている。光処理部12は符号化送信信号を電気信号の形態から光信号の形態に変換するための発光素子20、及び符号分割多重信号を光信号の形態から電気信号の形態に変換するための受光素子18を具えている。
電気処理部14は、送信信号を符号化して電気信号の形態の符号化送信信号を生成する送信信号処理部24と、上記受光素子18によって光信号の形態から電気信号の形態に変換された符号分割多重信号を復号化して受信信号を取り出す受信信号処理部22とを具えている。
受信信号処理部22は、符号分割多重信号を復号化するための処理を行う復号化処理回路30を具え、自動利得制御(AGC: Auto Gain Control)素子28、クロック信号再生回路34、分周器38、遅延回路40を具えている。また、送信信号処理部24は、符号化処理回路56及びドライバ60を具えている。ドライバ60には増幅器(AMP: Amplifier)が利用される。
一方、光回線終端装置100も光端末装置10と同様に、光処理部102及び電気処理部104を具えて構成されている。光処理部102は、光端末装置10の光処理部12と同様に、発光素子122と受光素子126とを具えている。また、電気処理部104は、送信信号処理部106、受信信号処理部108及びクロック信号生成回路110を具えている。
送信信号処理部106は、符号化処理回路を並列に具える符号化処理回路列116と、ドライバ120とを具えている。ドライバ120には増幅器が利用される。符号1から符号4と示してある符号化処理回路のそれぞれから出力される送信信号は、電気信号合波器118で合波されてドライバ120に入力される。
また、受信信号処理部108は、復号化処理回路を並列に具える復号化処理回路列132と、自動利得制御素子128とを具えている。自動利得制御素子128から出力される電気信号を電気信号分岐器130で分岐し、復号1から復号4と示してある復号化処理回路のそれぞれに入力されて復号化される。
送信信号処理部106及び受信信号処理部108に、クロック信号生成回路110からクロック信号が供給される。クロック信号生成回路110から供給されるクロック信号は、この光アクセスネットワークシステムの基準となるクロック信号である。光端末装置10では、クロック信号再生回路34によって、受信した符号分割多重信号からこのクロック信号が抽出されて、符号分割多重信号の復号化のために利用される。
図1に示す上述の構成の光アクセスネットワークシステムは、以下に説明するように動作する。
まず、下り信号について第1チャンネルを例にとって説明する。第1チャンネルの下りの送信信号は、この送信信号を符号化する符号化処理回路(後述する第1及び第2実施例では「符号1」と表されている符号化処理回路)に入力され、符号化されて符号化送信電気信号として出力される。符号化送信電気信号は、電気信号合波器118で合波されて符号分割多重電気信号としてドライバ120に入力されて増幅され、増幅された符号分割多重電気信号は、光処理部102が具える発光素子122によって光信号に変換され、符号分割多重光信号として出力される。発光素子122は、例えば、半導体レーザを利用することができる。
符号分割多重光信号は、光カプラ124、光コネクタ72を介して、光ファイバ伝送路70、光コネクタ68、光合分岐器66、光コネクタ61を介して光端末装置10の光処理部12に入力される。光処理部12に入力された符号分割多重光信号は、光処理部12が具える光カプラ16を介して受光素子18に入力され、符号分割多重電気信号に変換されて、光端末装置10の電気処理部14に入力される。受光素子18は、例えば、フォトダイオードを利用することができる。
電気処理部14に入力された符号分割多重電気信号は、電気信号分岐器26によって二分岐されて、一方はクロック信号再生回路34に、もう一方は自動利得制御素子28に入力される。クロック信号再生回路34に入力された符号分割多重電気信号からは、クロック信号が抽出される。また、自動利得制御素子28に入力された符号分割多重電気信号は、その強度にかかわらずこの自動利得制御素子28に設定されている一定の電圧値を持つ符号分割多重電気信号として整えられて、復号化処理回路30に入力される。この一定の電圧値は、復号化処理回路30が具えるアナログマッチドフィルタ44の構成素子であるアナログシフトレジスタの入力レベルに等しい値である。
電圧値を整えられた符号分割多重電気信号は、まず、復号化処理回路30が具えるアナログマッチドフィルタ44によって復号化されて、判定回路46に入力される。判定回路46では、アナログマッチドフィルタ44によって復号化された信号のうち自己相関波形成分のみを抽出して出力する。すなわち、この自己相関波形成分から生成される受信信号が、第1チャンネルのONU-1が受信した信号成分である。
上述したように下り信号、すなわち光回線終端装置100から光端末装置10に向けて伝送される送信信号は、符号化されて多重された符号分割多重光信号として伝送される。そして、光端末装置10において、符号分割多重光信号が符号分割多重電気信号に変換されて復号化される。すなわち、光端末装置10における復号化処理は、いずれも電気信号の状態で実行される。
この発明の光アクセスネットワークシステムの特徴は、送信信号の符号化及び受信信号の復号化を行う電気処理部に特徴があり、以後の説明の大半は電気処理部における動作説明が中心である。この電気処理部の動作説明に必要な信号は符号化送信電気信号あるいは符号分割多重電気信号である。したがって以後の説明では、特に必要な場合を除き、光信号であるか電気信号であるかを区別しない。すなわち、符号分割多重光信号あるいは符号分割多重電気信号が、電気信号であるか光信号であるかを明示せず、符号分割多重信号と表記する。
次に、上り信号について第1チャンネルを例にとって説明する。第1チャンネルの送信信号(図1で、光端末装置10の「送信信号入力」と示してある。)は、光端末装置10の電気処理部14の送信信号処理部24に具えられている符号化処理回路56に入力され、符号化されて符号化送信信号として出力される。符号化送信信号は、ドライバ60に入力されて増幅され、増幅された符号化送信信号は、光処理部12が具える発光素子20によって、光信号に変換される。発光素子20は半導体レーザを利用することができる。
符号化送信信号は、光カプラ16及び光コネクタ61を介して光合分岐器66に入力されて符号分割多重信号となって、光コネクタ68、光ファイバ伝送路70、光コネクタ72を介して光回線終端装置100の光処理部102に入力される。光処理部102に入力された符号分割多重信号は、光処理部102が具える光カプラ124を介して受光素子126に入力され電気信号に変換されて、光回線終端装置100の電気処理部104に入力される。受光素子126はフォトダイオードを利用することができる。
電気処理部104に入力された符号分割多重信号は、受信信号処理部108が具える自動利得制御素子128に入力され、その強度にかかわらずこの自動利得制御素子128に設定されている一定の電圧値を持つ符号化受信電気信号として整えられて、復号化処理回路列132の「復号1」と表されている復号化処理回路に入力される。この復号化処理回路では、光端末装置10が具える復号化処理回路30と同様の処理がなされて、第1チャンネルのONU-1から伝送されてきた信号が生成されて出力される。
<第1実施例>
この発明の特徴は、チャンネルごとに、ONUが具える送信信号処理部に設定する符号と、OLTが具える送信信号処理部に設定する符号とが異なる符号となるように符号を選択することにある。図2を参照して、この場合のONUの構成について第1実施例として説明する。図2は、第1実施例のONUの概略的ブロック構成図である。図2は、図1に示す光アクセスネットワークシステムの、ONUの部分の構成を抜き出した図であり、以後の説明に必要となる限度において簡略化して示してある。
図1に示した、電気処理部14は、図2に示す電気処理部14-1から14-4に対応し、光カプラ16は、図2に示す光カプラ16-1から16-4に対応し、受光素子18は、図2に示す受光素子18-1から18-4に対応し、発光素子20は、図2に示す発光素子20-1から20-4に対応し、受信信号処理部22は、図2に示す受信信号処理部22-1から22-4に対応し、送信信号処理部24は、図2に示す送信信号処理部24-1から24-4に対応している。
ONU-1からONU-4はそれぞれ、光コネクタ61、62、63、及び64を介して光合分岐器66と接続されている。ONU-1からONU-4のぞれぞれの電気処理部は、受信信号処理部と送信信号処理部とを具えている。そして、ONU-1の受信信号処理部22-1には符号1が、送信信号処理部24-1には符号2が、それぞれ設定されている。同様に、ONU-2の受信信号処理部22-2には符号3が、送信信号処理部24-2には符号4が、それぞれ設定されており、ONU-3の受信信号処理部22-3には符号5が、送信信号処理部24-3には符号6が、それぞれ設定されており、ONU-4の受信信号処理部22-4には符号7が、送信信号処理部24-4には符号8が、それぞれ設定されている。
一方、図1を参照して既に説明したように、OLT 100にも、ONU-1からONU-4の送信信号処理部のそれぞれに割り当てられた符号と同一の符号が割り当てられた、符号化処理回路を並列に具える符号化処理回路列116と、ONU-1からONU-4の受信信号処理部のそれぞれに割り当てられた符号と同一の符号が割り当てられた復号化処理回路を並列に具える復号化処理回路列132と、自動利得制御素子128とを具えている。
第1チャンネルが割り当てられたONU-1について、上り及び下り信号の処理の流れを説明する。まず下り信号について説明する。OLTからONU-1に向けた第1チャンネルの下り信号は、OLTから符号1で符号化されて符号化送信信号として、他のチャンネルの符号化送信信号と共に符号分割多重されて符号分割多重信号として、ONU-1に送信される。この符号分割多重信号は、ONU-1の電気処理部14-1が具える受信信号処理部22-1において、符号1によって復号化され、ONU-1が受信する第1チャンネルの受信信号が抽出される。ONU-2からONU-4においても、OLTから送られてくる下り信号は、同様に処理される。
OLTからONU-2、3及び4に向けた第2、3及び4チャンネルの下り信号は、OLTから符号3、5及び7でそれぞれ符号化されて符号化送信信号に変換されて、それらが符号分割多重されて符号分割多重信号として、ONU-2、3及び4にそれぞれ送信される。この符号分割多重信号は、ONU-2、3及び4の電気処理部14-2、14-3及び14-4がそれぞれ具える受信信号処理部22-2、22-3及び22-4において、それぞれ符号3、5及び7によって復号化され、ONU-2、3及び4がそれぞれ受信する第2、3及び4チャンネルの受信信号が抽出される。
次に、上り信号について説明する。ONU-1からOLTに向けた第1チャンネルの上り信号は、ONU-1の送信信号処理部24-1で符号2によって符号化されて符号化送信信号として、他のチャンネルの符号化送信信号と共に符号分割多重されて符号分割多重信号として、OLTに送信される。この符号分割多重信号は、OLTの電気処理部104が具える受信信号処理部108において、符号2によって復号化され、OLTが受信する第1チャンネルの受信信号が抽出される。第2から第4チャンネルのそれぞれの上り信号においても、同様に処理される。
ONU-2、3及び4から、それぞれOLTに向けた第2、3及び4チャンネルの上り信号は、符号4、6及び8でそれぞれ符号化されて符号化送信信号に変換されて、それらが符号分割多重されて符号分割多重信号として、OLTに送信される。この符号分割多重信号は、OLTの電気処理部104が具える受信信号処理部108において、符号4、6及び8によって復号化され、それぞれOLTが受信する第2、3及び4チャンネルの受信信号が抽出される。
上述したように、ONU-1が具える受信信号処理部22-1に設定する符号(ここでは「符号1」)と、送信信号処理部24-1に設定する符号(ここでは「符号2」)とが、異なっている。すなわち、第1チャンネルの上り信号の符号化のために使われる符号(ここでは「符号2」)と、第1チャンネルの下り信号の符号化のために使われる符号(ここでは「符号1」)とが異なる。
このため、第1チャンネルにおいて、OLTから送られてくる下り信号(符号1で符号化されている。)に第1チャンネルからOLTに向けて送られる上り信号(符号2で符号化されている。)成分の一部が光コネクタ(ここでは、光コネクタ61)で、反射されて混入しても、上り信号と下り信号とは異なる符号(それぞれ符号2及び符号1)で符号化されているので、この下り信号を第1チャンネルのONU-1で復号化される際には、上り信号成分は復号化されない。
したがって、ONU-1が受信する受信信号に、ONU-1から送信される送信信号の一部が反射雑音として混入しても、この雑音成分のために、ONU-1において受信信号を正しく受信できない、すなわち復号化できないという事態は起こりにくい。第2から第4チャンネルの上り及び下り信号についても同様である。ONU-1、ONU-2、ONU-3及びONU-4、のそれぞれの下り信号に混入する上り信号の一部は、それぞれ光コネクタ61、光コネクタ62、光コネクタ63及び光コネクタ64から反射される。ONU-1には、光コネクタ61以外の光コネクタ、すなわち、ONU-1とは直接接続されていない光コネクタ(光コネクタ62、63及び64)からも僅かに上り信号の一部が反射されるが、途中に光合分岐器66を介しているので、問題となるほどの大きさになることはない。ONU-2、ONU-3及びONU-4のそれぞれにおいても同様である。
上述したように、各ONUにおいて、受信する受信信号に送信する送信信号の一部が反射雑音として混入しても、受信信号を正しく受信できないという事態は起こりにくい。したがって、図1に示す光コネクタ68には、低反射タイプの高価な部品を使用する必要がない。また、同様にOLTにおいても、同一チャンネルの上り信号と下り信号の符号が異なるので、受信する受信信号に送信する送信信号の一部が反射雑音として混入しても、受信信号を正しく受信できないという事態は起こりにくい。このため、図1に示す光コネクタ72にも、低反射タイプの高価な部品を使用する必要がない。
<第2実施例>
図3を参照して、チャンネルごとに、ONUが具える送信信号処理部に設定する符号と、OLTが具える送信信号処理部に設定する符号とが異なる符号となるように符号を選択する、上述の第1実施例とは別の選択方法を説明する。
この選択方法では、第1チャンネルのONU-1が具える送信信号処理部24-1に設定する符号を符号2とし、OLTから第2チャンネルのONU-2に向けた下り信号も符号2で符号化して送信する。第2チャンネルのONU-2が具える送信信号処理部24-2に設定する符号を符号3とし、OLTから第3チャンネルのONU-3に向けた下り信号も符号3で符号化して送信する。第3チャンネルのONU-3が具える送信信号処理部24-3に設定する符号を符号4とし、OLTから第4チャンネルのONU-4に向けた下り信号も符号4で符号化して送信する。第4チャンネルのONU-4が具える送信信号処理部24-4に設定する符号を符号1とし、OLTから第1チャンネルのONU-1に向けた下り信号も符号1で符号化して送信する。
このように、第1から第4チャンネルの送受信信号を符号化するための符号を設定することによって、ONU-1が具える受信信号処理部22-1に設定する符号(ここでは「符号1」)と、送信信号処理部24-1に設定する符号(ここでは「符号2」)とが、異なっている。すなわち、第1チャンネルの上り信号の符号化のために使われる符号(ここでは「符号2」)と、第1チャンネルの下り信号の符号化のために使われる符号(ここでは「符号1」)とが異なる。
また、ONU-2が具える受信信号処理部22-2に設定する符号(ここでは「符号2」)と、送信信号処理部24-2に設定する符号(ここでは「符号3」)とが、異なっている。すなわち、第2チャンネルの上り信号の符号化のために使われる符号(ここでは「符号3」)と、第2チャンネルの下り信号の符号化のために使われる符号(ここでは「符号2」)とが異なる。
同様に、第3チャンネルの上り信号の符号化のために使われる符号(ここでは「符号4」)と、第2チャンネルの下り信号の符号化のために使われる符号(ここでは「符号3」)とが異なる。また、第4チャンネルの上り信号の符号化のために使われる符号(ここでは「符号1」)と、第4チャンネルの下り信号の符号化のために使われる符号(ここでは「符号4」)とが異なる。
このため、第1実施例の場合と同様に、受信信号に送信信号の一部が反射雑音として混入しても、この雑音成分のために受信信号を正しく受信できない、すなわち復号化できないという事態は起こりにくい。
上述したように、各ONUにおいて、受信する受信信号に送信する送信信号の一部が反射雑音として混入しても、受信信号を正しく受信できないという事態は起こりにくい。したがって、図1に示す光コネクタ68には、低反射タイプの高価な部品を使用する必要がない。しかしながら、OLT側に設定される光コネクタ72には、低反射タイプの光コネクタを採用する必要がある。これは、送信信号処理部106と受信信号処理部108とでは同一の符号が使われているので、送信信号処理部106からの送信信号の一部が、受信信号処理部108が受信する信号に混入することによって、受信信号を正しく受信できないという事態が起こり得る。
上述したように、センター側の装置であるOLTは1台あればよいので、OLTの前段に設定される光コネクタ72も1台必要となるだけである。したがって、システム全体としての装置コストには大きな影響を与えない。
第2実施例における利点は、新たな符号を必要としないで、上述の第kチャンネルの上り信号の符号化のために使われる符号と、第kチャンネルの下り信号の符号化のために使われる符号とが異なるという条件を満たすことが可能となる点である。
<符号化処理>
図4(A1)から(C)を参照して送信信号を符号化する過程について、第1チャンネルを例にとって、説明する。図4(A1)から(C)において、横軸及び縦軸は省略してあるが、横軸の方向は時間軸の方向を示し、縦軸の方向は信号の強度を示している。図4(A1)及び(A2)は、それぞれ第1チャンネルの送信信号及び符号化送信信号を示し、図4(B1)及び(B2)は、それぞれ第2チャンネルの送信信号及び符号化送信信号を示している。そして、図4(C)は、第1チャンネルの符号化送信信号と第2チャンネルの符号化送信信号とが合波された符号分割多重信号の時間波形を示している。図4(A1)から(C)において、信号の0レベルを一点破線で示してある。そして、0レベル以上を「1」とし、0レベル以下を「-1」と表してある。
図4(A1)に示す第1チャンネルの送信信号は、(1, 0, 1,...)である場合を想定しその時間波形を示している。図4(A2)は、符号長が4である(1, 0, 0, 1)で与えられる符号を想定し、この符号によって符号化されて生成された第1チャンネルの符号化送信信号の時間波形を示している。また、図4(B1)に示す第2チャンネルの送信信号は、(1, 1, 0,...)である場合を想定しその時間波形を示している。図4(B2)は、符号長が4である(1, 0, 1, 0)で与えられる符号を想定し、この符号によって符号化されて生成された第2チャンネルの符号化送信信号の時間波形を示している。
ここで、符号を規定する「0」及び「1」からなる数列の項数を符号長ということもある。この例では、符号を規定する数列が(1, 0, 0, 1)あるいは(1, 0, 1, 0)であり、この数列の項数が4であるから符号長は4であることになる。また、符号を与える数列を符号列といい、符号列の各項「0」及び「1」をチップということもある。そして、0及び1そのものを符号値ということもある。送信信号の1ビットに割り当てられる時間幅(時間スロットともいう。)は、送信信号の伝送速度であるビットレートの逆数である。
符号化するにあたっては、送信信号の1ビットに割り当てられる時間スロットに対して、符号を構成する4チップが割り当てられる。すなわち、時間軸上で、送信信号の1ビット内に符号を規定する、数列(1, 0, 0, 1)あるいは(1, 0, 1, 0)に対応する符号化信号が完全に収まるように、時間軸上に配置される。
送信信号を符号長4の符号で符号化するという意味は、送信信号(以後「D」と表すこともある。)と符号化信号(以後「C」と表すこともある。)との積D×Cを求めることに相当する。また、以下の説明において、どのチャンネルに対応するDであるかCであるかを区別する必要があるときは、チャンネル数を添えて示す。例えば第1チャンネルのDで及びCであることをそれぞれD1及びC1と示す。第2チャンネル等についても同様である。
積D×Cを求めるための符号化処理回路には、具体的には、排他的論理和演算EXOR(エクスクルシーブ・オア)ゲートの出力にインバータを接続したゲート回路であるEXNOR(エクスクルシーブ・ノア)回路を用いる。この場合には、1と0との2値信号として表した送信信号及び符号化送信信号等を、1と-1の2値信号に変換する。具体的には、送信信号及び符号化送信信号のバイアス電圧を調整して、これらの信号の振幅の中心を0 Vの水準に変更すればよい。
図4(A1)に示す第1チャンネルの送信信号は、(1, 0, 1,...)であるので、これを1と-1の2値信号に変換すると(1, -1, 1,...)となる。第1チャンネルの送信信号を符号化するために利用する符号は、(1, 0, 0, 1)であるので、これを1と-1の2値信号に変換すると(1, -1, -1, 1)となる。
第1チャンネルの送信信号の第1番目のビットは「1」であり、第2番目のビットは「0」であり、第3番目のビットは「1」である。ここで、第1チャンネルの送信信号が、(1, -1, -1, 1)で与えられる符号で符号化されるとは、第1番目のビットである「1」が(1, -1, -1, 1)で与えられる符号で符号化され、第2番目のビットである「-1」が(1, -1, -1, 1)で与えられる符号で符号化され、第3番目のビットである「1」が(1, -1, -1, 1)で与えられる符号で符号化されることを意味する。図示はしていないが、第4番目以降のビットが符号化されることも同様である。
送信信号Dを符号Cで符号化するということは、積D×Cを求めることに相当するから、送信信号の第1番目のビットである「1」は、(Dの第1番目のビット(1))×C(1, -1, -1, 1)=(1×1, 1×(-1), 1×(-1), 1×1)=(1, -1, -1, 1)と符号化される。送信信号の第2番目のビットである「-1」は、(Dの第2番目のビット(-1))×C(1, -1, -1, 1)=((-1)×1, (-1)×(-1), (-1)×(-1), (-1)×1)=(-1, 1, 1, -1)と符号化される。第3番目のビットについても同様である。したがって、図4(A1)に示す第1チャンネルの送信信号が符号化されて得られる符号化送信信号は、上述の説明のように((1, -1, -1, 1),(-1, 1, 1, -1),(1, -1, -1, 1))=(1, -1, -1, 1、-1, 1, 1, -1, 1, -1, -1, 1,...)となる。
また、図4(B1)に示す第2チャンネルの送信信号が符号(1, 0, 1, 0)を1と-1の2値信号に変換した(1, -1, 1, -1)で符号化する場合も、上記の第1チャンネルの場合と同様である。送信信号の第1番目のビットである「1」は、(Dの第1番目のビット(1))×C(1, -1, 1, -1)=(1×1, 1×(-1), 1×1, 1×(-1)=(1, -1, 1, -1)と符号化される。送信信号の第2番目のビットも「1」であるからDの第2番目のビットも(1, -1, 1, -1)と符号化される。
第3番目のビットは「-1」であるから(Dの第3番目のビット(-1))×C(1, -1, 1、-1)=((-1)×1, (-1)×(-1), (-1)×1, (-1)×(-1)=(-1, 1, -1, 1)と符号化される。したがって、図4(B1)に示す第2チャンネルの送信信号が符号化されて得られる符号化送信信号は、上述の説明のように((1, -1, 1, -1),(1, -1, 1, -1),(-1, 1, -1, 1))=(1, -1, 1, -1, 1, -1, 1, -1, -1, 1, -1, 1,...)となる。
第1チャンネルの符号化送信信号(1, -1, -1, 1, -1, 1, 1, -1, 1, -1, -1, 1,...)と第2チャンネルの符号化送信信号(1, -1, 1, -1, 1, -1, 1, -1, -1, 1, -1, 1,...)との和で与えられる符号分割多重信号は、(1+1, -1-1, -1+1, 1-1, -1+1, 1-1, 1+1、-1-1, 1-1, -1+1, -1-1, 1+1)=(+2, -2, 0, 0, 0, 0, 2, -2, 0, 0, -2, 2)となり、図4(C)にこの符号分割多重信号の時間波形を示す。
図4(C)に示す符号分割多重信号が、光信号に変換されて光ファイバ伝送路を伝送する。光回線終端装置あるいは光端末装置によって受信されると、再び電気信号に変換されて復号化されて受信信号が抽出される。したがって、図4(C)に示す符号分割多重信号の時間波形の振幅の絶対値は本質的な意味を持っていない。したがって、図4(C)に示す符号分割多重信号は、振幅の最大値と最小値の中心を0レベルに設定して、振幅の値を1に規格化して(+1, -1, 0, 0, 0, 0, 1, -1, 0, 0, -1, 1)と表現しても同一の意味を持つ。
<復号化処理>
図5(A)から(D)を参照して符号分割多重信号を復号化する過程について、第1チャンネルを例にとって、説明する。図5(A)及び(B)において、横軸は時間軸の方向を示し、縦軸は省略してあるが縦軸の方向は信号の強度を示している。図5(A)は、符号化処理回路が具えるアナログマッチドフィルタに入力される符号分割多重信号の時間波形を示す。上述の図4(C)に示す符号分割多重信号の振幅の最大値と最小値の中心を0レベルに設定し、振幅の値を1に規格化して示してある。図5(B)は、アナログマッチドフィルタで復号化されて出力される信号の時間波形を示している。図5(B)の横軸は時間軸の方向を示す。アナログマッチドフィルタから出力される信号は、後述するように、受信したチャンネルの光端末装置の受信信号成分である自己相関波形成分と、受信したチャンネルの光端末装置以外が受信する相互相関波形成分との和となっている。すなわち、相互相関波形成分は、雑音成分になる。
図5(C1)は、判定回路で閾値判定がなされて出力された信号の時間波形を示す。図5(C2)は、図5(C1)に示す信号をラッチするためのクロック信号の時間波形を示す。また、図5(D)は、図5(C1)に示す閾値判定がなされて出力された信号を図5(C2)に示すクロック信号でラッチして得られる信号の時間波形を示す。この図5(D)に示す信号が受信信号である。図5(C1)、(C2)及び(D)の横軸及び縦軸は省略してあるが、横軸の方向が時間軸の方向を示し、縦軸の方向が信号の強度を示してある。また、信号の0レベルを一点破線で示してある。
アナログマッチドフィルタから出力された信号を判定処理する判定回路は、図1に示す復号化処理回路30が具える判定回路46が相当する。また、図1では、図5(C1)に示す判定処理がなされて出力された信号を、図5(C2)に示すクロック信号でラッチするためのラッチ回路も含めて、判定回路46と示してあり、ラッチ回路そのものは図示を省略してある。
送信信号を符号化するという意味は、上述したように送信信号Dと符号化信号Cとの積D×Cを求めることに相当する。一方、符号化されて送信されてきた符号分割多重信号を受信して、この符号分割多重信号を復号化することは、符号分割多重信号を再度同一の符号で符号化することに対応する。
符号分割多重信号は、第1チャンネルの符号化送信信号(D1×C1)、第2チャンネルの符号化送信信号(D2×C2)、第3チャンネルの符号化送信信号(D3×C3)等、多重される全ての符号化送信信号の和となっている。したがって、符号分割多重信号は、(D1×C1)+(D2×C2)+(D3×C3)+....で表される。この符号分割多重信号を第1チャンネルに割り当てられた符号C1で復号化するとは、{(D1×C1)+(D2×C2)+(D3×C3)+....}×C1を求めること、すなわち符号分割多重信号を符号C1で符号化することに相当する。
すなわち、アナログマッチドフィルタで復号化されて出力される信号の時間波形は、{(D1×C1)+(D2×C2)+(D3×C3)+....}×C1=(D1×C1)×C1+(D2×C2)×C1+(D3×C3)×C1+....=D1×C1 2+ (D2×C2×C1) + (D3×C3×C1) + ....を反映した信号である。ここで、C1 2=1である。なぜならば、同一符号の積であるから、両者の符号を構成するチップは全て同一の値、すなわち「1」あるいは「-1」である。すなわち、C1 2の演算を符号のチップごとに見ると、1×1=1あるいは(-1)×(-1)=1と必ず「1」となるからである。したがって、上述したアナログマッチドフィルタで復号化されて出力される信号の時間波形を表す第1項D1×C1 2は、D1となり、第1チャンネルの送信信号を構成する各ビットのパルスD1が再生される。すなわち、この成分がアナログマッチドフィルタで復号化されて出力される信号の、第1チャンネルの送信信号に対する自己相関波形成分に相当する。
一方、上述したアナログマッチドフィルタで復号化されて出力される信号の時間波形を表す第2項以下の項は、C1×Ci≠1(ここで、i=2, 3,...である。)であるので、(D2×C2)×C1及び(D3×C3)×C1の項からは、第2、第3チャンネルの送信信号を構成する各ビットのパルスD2及びD3は再生されない。すなわち、これらの成分がアナログマッチドフィルタで復号化されて出力される信号の、第1チャンネルの送信信号に対する相互相関波形成分に相当する。
以上説明したように、アナログマッチドフィルタによれば、符号分割多重信号を復号化して、自己相関波形成分を再生することが可能である。図5(B)において、時間軸上に示すパルス成分(図5(B)でP及びQで示してある。)が自己相関波形成分である。また、相互相関波形成分は、時間軸を挟んで上下に示す破線の間に収まる雑音成分である。図5(B)では、相互相関波形成分はその形状が極めて複雑であるので、その最大値と最小値のレベルを、時間軸を挟んで上下に示す破線で示し、その詳細な形状は省略してある。
図5(B)に示すアナログマッチドフィルタで復号化されて出力される信号の時間波形を、判定回路で処理して自己相関波形成分のみが抽出されて出力された信号が図5(C1)に示されている。図5(C1)に示されている信号が図5(C2)に示されているクロック信号によってラッチされて、図5(D)に示す受信信号が得られる。
次に、判定回路でのラッチ処理の内容を、図5(C1)、(C2)及び(D)を参照して説明する。ラッチ処理を行うためのラッチ回路には、周知のDフリップフロップ回路等を利用することができるので、ラッチ回路そのものの説明は省略する。この実施例では、Dフリップフロップ回路として、MC100LVEL31(ON semiconductor社製)を利用した。
図5(C1)に示す時間波形は、後述するように閾値処理回路によって、図5(B)に示すアナログマッチドフィルタで復号化されて出力された信号を処理して生成される。すなわち、閾値処理回路は、図5(B)に示すアナログ復号化信号を、図5(C1)に示すデジタル復号化信号に変換する役割を果たす。したがって、図5(C1)に示す時間波形は、図5(B)に示す復号化されて出力された信号の自己相関波形成分に対応して矩形波(矩形パルス)が現れるのが特徴である。この矩形パルスの振幅の大きさは、閾値処理回路によって規定され、図5(C1)に現れている矩形パルス全ての振幅の大きさは一定である。図5(C1)ではこの矩形パルスの一例を、a、bをそれぞれ付した2本の下向きの矢印で挟んで示してある。閾値処理回路には、周知のコンパレータから好適なものを適宜選択して利用できる。この実施例では、MAX9600(MAXIM Integrated Products社製)を利用した。
図5(C1)に示すデジタル復号化信号と図5(C2)に示すクロック信号とが、ラッチ回路として機能するDフリップフロップ回路に入力されると、次のような処理が行われて、図5(D)に示す受信信号が得られる。
図5(C2)に示すクロック信号の立ち上がりの瞬間(例えば、図5(C2)にXと示してある瞬間)が、デジタル復号化信号の自己相関波形のピークに対応する矩形パルス(例えば、図5(C2)にa、bをそれぞれ付した2本の下向きの矢印で挟んで示してある。)が存在している場合には、Dフリップフロップ回路の出力端子から「1」に相当する強度の信号が出力され始める。そして、再びクロック信号の次の立ち上がりの瞬間(図5(C2)にYと示してある瞬間)まで、Dフリップフロップ回路の出力端子から「1」に相当する強度の信号が出力され続け、この瞬間にDフリップフロップ回路の出力端子から「-1」に相当する強度の信号に変化する。
同様に、次にDフリップフロップ回路の出力端子から「1」に相当する強度の信号が出力され始めるのは、図5(C2)にZと示すクロック信号の立ち上がりの瞬間である。そして、Dフリップフロップ回路の出力端子からの出力信号が「-1」に相当する強度の信号に変化するのは、再びクロック信号が立ち上がる瞬間である(この瞬間は、図5(C2)から外れている。)。
以上説明したように、デジタル復号化信号の自己相関波形のピークに対応する矩形パルスの存在時間内に、クロック信号の立ち上がり信号がDフリップフロップ回路に入力されると、図5(D)に示す受信信号の「1」に相当する強度の矩形パルスが生成される。一方、デジタル復号化信号の自己相関波形のピークに対応する矩形パルスの存在時間外に、クロック信号の立ち上がり信号がDフリップフロップ回路に入力された場合には、Dフリップフロップ回路の出力端子からは「-1」に相当する信号が出力されたままである。
このように、クロック信号の立ち上がりの瞬間にデジタル復号化信号の自己相関波形のピークに対応する矩形パルスが存在するか否かに対応して、Dフリップフロップ回路の出力端子からは「1」に相当する信号が出力されたり、「-1」に相当する信号が出力されたりする。このことによって、受信信号が再生される。図5(D)に示す受信信号は、図4(A1)に示す送信信号(1, -1, 1,...)の一部である(1, -1, 1,...)の部分が再生されたものとなっている。図5(D)で(1, -1, 1,...)に相当する部分を明示するために、信号の値である「1」及び「-1」を括弧で括って示してある。
上述の説明から明らかなように、クロック信号の立ち上がりの瞬間にデジタル復号化信号の自己相関波形のピークに対応する矩形パルスが存在していなければ、図5(D)に示す受信信号を生成することができない。したがって、必ず図5(C1)に示すデジタル復号化信号と図5(C2)に示すクロック信号との時間軸上での相対的な位置関係を調整する必要がある。両者の相対的な位置関係の調整について、図1を参照して説明する。
受光素子18から出力される符号分割多重信号は、電気信号分岐器26によって分岐されて、分岐された一方がクロック信号再生回路34に入力されて、伝送レート周波数のクロック信号が再生され出力される。この伝送レート周波数のクロック信号は、電気信号分岐器36で分岐されて、分岐された一方が分周器38に入力されて、ベースレート周波数のクロック信号に変換されて出力される。ここで、伝送レート周波数とは、符号分割多重信号のビットレートに対応する周波数を指し、ベースレート周波数とは、個々のチャンネルの送信信号のビットレートに対応する周波数を指す。すなわち、伝送レート周波数をチャンネル数で除した周波数が、ベースレート周波数となる。
分周器38から出力されるクロック信号は、遅延回路40に入力されて、その位相が調整されて出力される。遅延回路40から出力されたクロック信号が図5(C2)に示されている。すなわち、遅延回路40によって、図5(C2)に示されているクロック信号の時間軸上での位置を調整することができる。この調整は、手動で行ってもかまわないが、自動的に行うことも可能である。この調整を自動化するための一手段は、公開特許公報(特開2005−33544号公報)に開示されている。
ここで、図5(B)に示したアナログマッチドフィルタで復号化されて出力される信号の時間波形に含まれる雑音成分について説明する。図1に示す光アクセスネットワークシステムの光端末装置10では、送信信号処理部24からは送信信号が出力され、一方、受信信号処理部22には受信信号が入力される。ここで、各チャンネルには、符号化するための符号及び復号化するための符号が割り当てられている。そしてこれらの符号は同一のものが使われると、光伝送路に設けられる光合分岐器66との接続のための光コネクタ61において発生する反射雑音が、受信信号処理部に入力される受信信号に混入するという問題が発生する。
この反射雑音の受信信号への混入のメカニズムを、図6を参照して説明する。図6は、光コネクタからの反射光が受信信号処理部に混入する様子の説明に供する図である。図6では、反射雑音の受信信号への混入のメカニズムの説明に必要な部分だけを図1から抜き出して示してある。送信信号は発光素子20から出力されて光カプラ16のポート3から入力され、ポート1から出力されて光コネクタ61に入力される。光コネクタ61からは、送信信号の一部が反射されて光カプラ16のポート1に入力される。この反射された送信信号は、光カプラ16のポート2から出力されて受光素子18に入力される。
したがって、受光素子18には、光カプラ16のポート1から入力されてポート2から出力される受信信号aと、光コネクタ61から反射された送信信号の一部bの両方が入力される。この送信信号の一部bは、主に、光カプラ16のポート3から入力されてポート1から出力された送信信号が光コネクタ61から反射され、再びポート1に入力されて、ポート2から出力されたものである。
図7(A)及び(B)を参照して、受信信号と反射された送信信号が混入した信号を復号化した場合について説明する。図7(A)及び(B)は、受信信号と反射された送信信号が混入した信号を復号化した信号の時間波形を示す図である。横軸は時間軸の方向を示し、縦軸は省略してあるが、縦軸の方向に信号強度を示している。
図7(A)は、同一チャンネルにおいて、ONUで送信信号を符号化する符号と、OLTからONUへの送信信号、すなわち、ONUでの受信信号を符号化する符号とが等しい場合に、この受信信号と反射された送信信号が混入した信号を復号化して得られる時間波形を示している。図7(B)は、同一チャンネルにおいて、ONUで送信信号を符号化する符号と、OLTでONUへの送信信号、すなわち、ONUでの受信信号を符号化する符号とが異なる場合に、この受信信号と反射された送信信号が混入した信号を、OLTで受信信号を符号化する符号と同一の符号で復号化して得られる時間波形を示している。
図7(A)において、受信信号の自己相関波形成分のピークをc1で表し、送信信号(光コネクタで反射した成分)の自己相関波形成分のピークをc2で表してある。また、図7(B)において、受信信号の自己相関波形成分のピークをcで表し、送信信号(光コネクタで反射した成分)の相互相関波形成分のピークをrで表してある。
図7(A)及び(B)において、共通して2本の時間軸に平行な破線によって、送信信号(光コネクタで反射した成分)の相互相関波形成分のピーク値の絶対値に等しい幅で、時間軸を挟んで示してある。
図7(A)に示す、同一チャンネルにおいて、ONUで送信信号を符号化する符号と、OLTでONUへの送信信号、すなわち、ONUでの受信信号を符号化する符号とが等しい場合には、受信信号の自己相関波形のピーク(c1で表してある。)と送信信号の自己相関波形のピーク(c2で表してある。)が重なり、両者のピーク値の差が、正味の信号成分となり、図7(A)においてS1で示してある。この場合のS/N比を与えるNの値は、送信信号の自己相関波形のピーク値であり、図7(A)においてN1で示してある。
一方、図7(B)に示す、同一チャンネルにおいて、ONUで送信信号を符号化する符号と、OLTでONUへの送信信号、すなわち、ONUでの受信信号を符号化する符号とが異なる場合には、自己相関波形のピーク(cで表してある。)値と受信信号の相互相関波形成分のピーク(rで表してある。)値との差が、正味の信号成分となり、図7(B)においてS2で示してある。この場合のS/N比を与えるNの値は、受信信号の相互相関波形成分のピーク値であり、図7(B)においてN2で示してある。
図7(A)及び(B)に示すように、2本の時間軸に平行な破線を基準としてみると、S1<S2であり、N1>N2であるから、図7(B)に示す同一チャンネルにおいて、ONUで送信信号を符号化する符号と、OLTでONUへの送信信号、すなわち、ONUでの受信信号を符号化する符号とが異なる場合のS/N比S2/N2の方が、図7(A)に示す同一チャンネルにおいて、ONUで送信信号を符号化する符号と、OLTでONUへの送信信号、すなわち、ONUでの受信信号を符号化する符号とが等しい場合のS/N比S1/N1より大きい。すなわち、(S2/N2)>(S1/N1)である。したがって、同一チャンネルにおいて、ONUで送信信号を符号化する符号と、OLTでONUへの送信信号、すなわち、ONUでの受信信号を符号化する符号とを異なる符号とすることによって、S/N比を大きくすることができることから、このように両者の符号を異なるように設定することが好適であるといえる。
<アナログマッチドフィルタ>
この発明の光アクセスネットワークシステムでは、符号分割多重信号をアナログマッチドフィルタによって復号化する。そこで、図8(A)及び(B)を参照して、アナログマッチドフィルタの構成及びその動作について説明する。
図8(A)及び(B)は、アナログマッチドフィルタの概略的ブロック構成図である。アナログマッチドフィルタは、アナログシフトレジスタ140と、プラス信号用加算器142と、マイナス信号用加算器144と、このプラス信号用加算器142及びこのマイナス信号用加算器144からそれぞれ出力された出力信号を加算するアナログ加算器146と、ローパスフィルタ148とを具えている。プラス信号用加算器142及びマイナス信号用加算器144は、それぞれ増幅器150及び反転増幅器152を具えている。増幅器150及び反転増幅器152は、その周辺回路を省略して示してある。
データ入力と示す入力端子には、自動利得制御素子28から出力される符号分割多重信号が入力される。また、クロック入力と示す入力端子には、電気信号分岐器36で分岐された伝送レート周波数のクロック信号が入力される。
図8(A)に示すアナログマッチドフィルタは、数列(1, 0, 0, 1)で与えられる符号によって復号することを想定して設計されている。すなわち第1実施例の第1チャンネルに割り当てられた符号によって復号することを想定してある。数列(1, 0, 0, 1)で与えられる符号は、「1」と「-1」の2値表示すると数列(1, -1, -1, 1)で与えられる符号といってもよい。
ここでは、簡単のために、まず符号分割多重信号のうち、第1チャンネルの成分のみを取り上げて、説明する。符号分割多重信号には、第1チャンネル以外のチャンネルの符号化された送信信号も混入しているが、これらは、第1チャンネルに割り当てられた符号とは別の符号で符号化されているので、再生されない。
図4(A2)に示された第1チャンネルの符号化送信信号が、アナログマッチドフィルタによって、図4(A1)に示された時間波形を持つ第1チャンネルの送信信号と同一の時間波形である受信信号として再生されることについて説明する。
アナログシフトレジスタ140としては、4段(入力側から順に1, 2, 3, 4と示してある。)の電荷結合型素子CCD(Charge Coupled Device)によって形成されるシフトレジスタ(以後、「CCDシフトレジスタ」という。)が使われる。すなわち、アナログシフトレジスタ140は、4ビットのCCDシフトレジスタである。第1実施例では、チップ数が4の符号(符号長が4である符号)によって符号化する場合を想定しているので、4段のCCDシフトレジスタが使われる。実際には、チップ数が16あるいは32の符号等、符号長が長い符号が使われるので、16あるいは32段のCCDシフトレジスタ等段数の多いCCDシフトレジスタが使われるが、以下に説明する原理は同様である。
CCDシフトレジスタ140のクロック入力端子には、伝送レート周波数のクロック信号が入力される。また、CCDシフトレジスタ140のデータ入力端子には、符号分割多重信号(図4(A2)に示す符号化送信信号)が入力される。図8(A)及び(B)に示すCCDシフトレジスタ140の第1段の入力端子をD1、出力端子をQ1、と示してある。また、第2、第3及び第4段の入力端子を、それぞれD2、D3、D4と示し、出力端子を、それぞれQ2、Q3、Q4と示してある。CCDシフトレジスタ140のデータ入力端子は、第1段の入力端子D1に接続されている。
図8(A)を参照して、符号(1, -1, -1, 1)で符号化された第1チャンネルの符号分割多重信号が復号化される原理を説明する。
まず、CCDシフトレジスタの第1段のデータ入力端子D1に、符号分割多重信号、すなわち、ここでは、図4(A2)に示された第1チャンネルの符号化送信信号の「1」(図4(A2)のCS1と示された時間スロットが1になっている。)が入力されると、クロック信号に同期して、第1段の出力端子Q1からは「1」が出力される。次に、第1段のデータ入力端子D1に第1チャンネルの符号化送信信号の「-1」(図4(A2)のCS2と示された時間スロットが−1になっている。)が入力されると、クロック信号に同期して第1段の出力端子Q1からは「-1」が出力され第2段の出力端子Q2からは「1」が出力される。このように次々とCS3と示された時間スロット、CS4と示された時間スロットの信号が第1段のデータ入力端子D1に入力されると、クロック信号に同期して、第1段から第4段の出力端子からは、先に出力された信号が1段ずつずれて出力される。
符号化送信信号の、ちょうどCS1からCS4までの時間スロットに存在するチップが全てアナログシフトレジスタ140のデータ入力端子から入力された段階で、第1段から第4段のそれぞれの出力端子、Q1、Q2、Q3及びQ4の出力端子からの出力値(Q1、Q2、Q3、Q4)は、(1,-1,-1, 1)となる。すなわち、第1段から第4段のそれぞれの出力値である(Q1, Q2, Q3, Q4)は、アナログシフトレジスタ140にF、G、H、Iと示す位置における電圧値として現れる。
位置Fの電圧値と位置Iの電圧値とは、プラス信号用加算器142に入力され、電気信号合波器154で合波されて増幅器150に入力されて、位置Fの電圧値と位置Iの電圧値との和に相当する信号となって出力される。一方、位置Gの電圧値と位置Hの電圧値とは、マイナス信号用加算器144に入力され、電気信号合波器156で合波されて反転増幅器152に入力されて、位置Gの電圧値と位置Hの電圧値との和に相当する電圧値(負の値である。)が正の電圧値に変換されて出力される。
増幅器150からの出力信号と反転増幅器152からの出力信号とは、アナログ加算器146で合波されて、ローパルフィルタ148に入力される。
ローパスフィルタ148は、アナログ加算器146から出力される信号のうち、ベースレート周波数の信号を濾しとって、高周波の雑音成分を遮断する役割を果たす。
符号化送信信号の、ちょうどCS1からCS4までの時間スロットに存在するチップが全てアナログシフトレジスタ140のデータ入力端子から入力された段階でQ1、Q2、Q3及びQ4の出力端子からの出力値(Q1, Q2, Q3, Q4)が(1, -1, -1, 1)となるので、電気信号合波器154では、F及びIの位置での電位である電位1と電位1とが入力されて、電位2となって増幅器150に入力される。また、電気信号合波器156には、G及びHの位置での電位である電位-1と電位−1とが入力されて、電位−2となって反転増幅器152に入力される。
したがって、増幅器150からは電位2に比例する電位(ここでは、簡単のため増幅率を1とする。)の信号が出力され、反転増幅器152からは、電位-2が反転(ここでは、簡単のため増幅率を-1とする。)された電位2の信号が出力され、両者はアナログ加算器146で合波されて、電位4である信号として、ローパスフィルタ148を介して、CCDシフトレジスタ140のデータ出力端子から出力される。
CCDシフトレジスタ140の出力値(Q1, Q2, Q3, Q4)が次に(1, -1, -1, 1)となるのは、CS9からCS12までの時間スロットに存在するチップが全てアナログシフトレジスタ140のデータ入力端子から入力された段階である。このときも同様にCCDシフトレジスタ140のデータ出力端子から、電位4である信号が出力される。
CCDシフトレジスタ140の出力値(Q1, Q2, Q3, Q4)が(1, -1, -1, 1)とは異なる出力となっているときは、CCDシフトレジスタ140のデータ出力端子から電位4以上の信号が出力されることはなく、必ず電位4未満である。これは、CCDシフトレジスタ140の出力値(Q1, Q2, Q3, Q4)が(1,-1, -1, 1)とは異なる、例えば(-1, -1, 1, 1)等の状態となる場合を、上記の説明と同様に検討すれば明らかである。
次に、図8(B)を参照して、符号(1, -1, 1, -1)で符号化された第2チャンネルの符号分割多重信号が復号化される原理を説明する。図8(A)に示したアナログマッチドフィルタと図8(B)に示すアナログマッチドフィルタとの相違は、増幅器150と反転増幅器152に入力する信号を、F、G、H、Iのいずれの位置から取り出すかの相違である。図8(A)に示したアナログマッチドフィルタでは、増幅器150への入力信号をF及びIの位置から取り出し、反転増幅器152への入力信号をG及びHの位置から取り出している。これに対して、図8(B)に示したアナログマッチドフィルタでは、増幅器150への入力信号をG及びIの位置から取り出し、反転増幅器152への入力信号をF及びHの位置から取り出している。このように、増幅器150と反転増幅器152に入力する信号をF、G、H、Iのいずれから取り出すかによって、符号長が4である任意の符号を設定することができる。
符号分割多重信号には、第2チャンネル以外のチャンネルの符号化された送信信号も混入しているが、これらは、第2チャンネルに割り当てられた符号とは別の符号で符号化されているので、再生されない。
図4(B2)に示された第2チャンネルの符号化送信信号が、アナログマッチドフィルタによって、図4(B1)に示された時間波形を持つ第2チャンネルの送信信号と同一の時間波形である受信信号として再生されることについて説明する。図8(B)に示したアナログマッチドフィルタにおいても、復号化の動作は基本的に図8(A)に示したアナログマッチドフィルタと同様である。
まず、CCDシフトレジスタの第1段のデータ入力端子D1に、符号分割多重信号、すなわち、ここでは、図4(B2)に示された第2チャンネルの符号化送信信号の「1」(図4(B2)のCS1と示された時間スロットが1になっている。)が入力されると、クロック信号に同期して、第1段の出力端子Q1からは「1」が出力される。次に、第1段のデータ入力端子D1に第2チャンネルの符号化送信信号の「-1」(図4(B2)のCS2と示された時間スロットが−1になっている。)が入力されると、クロック信号に同期して第1段の出力端子Q1からは「-1」が出力され第2段の出力端子Q2からは「1」が出力される。このように次々とCS3と示された時間スロット、CS4と示された時間スロットの信号が第1段のデータ入力端子D1に入力されると、クロック信号に同期して、第1段から第4段の出力端子からは、先に出力された信号が1段ずつずれて出力される。
符号化送信信号の、ちょうどCS1からCS4までの時間スロットに存在するチップが全てアナログシフトレジスタ140のデータ入力端子から入力された段階で、第1段から第4段のそれぞれの出力端子、Q1、Q2、Q3及びQ4の出力端子からの出力値(Q1, Q2, Q3, Q4)は、(-1, 1, -1, 1)となる。すなわち、第1段から第4段のそれぞれの出力地である(Q1, Q2, Q3, Q4)は、アナログシフトレジスタ140にF、G、H、Iと示す位置における電圧値として現れる。
位置Gの電圧値と位置Iの電圧値とは、プラス信号用加算器142に入力され、電気信号合波器154で合波されて増幅器150に入力されて、位置Gの電圧値と位置Iの電圧値との和に相当する信号となって出力される。一方、位置Fの電圧値と位置Hの電圧値とは、マイナス信号用加算器144に入力され、電気信号合波器156で合波されて反転増幅器152に入力されて、位置Fの電圧値と位置Hの電圧値との和に相当する電圧値(負の値である。)を正の電圧値に変換されて出力される。
増幅器150からの出力信号と反転増幅器152からの出力信号とは、アナログ加算器146で合波されて、ローパルフィルタ148に入力される。
符号化送信信号の、ちょうどCS1からCS4までの時間スロットに存在するチップが全てアナログシフトレジスタ140のデータ入力端子から入力された段階でQ1、Q2、Q3及びQ4の出力端子からの出力値(Q1, Q2, Q3, Q4)が(-1, 1, -1, 1)となるので、電気信号合波器154では、G及びIの位置での電位である電位1と電位1とが入力されて、電位2となって増幅器150に入力される。また、電気信号合波器156には、F及びHの位置での電位である電位-1と電位−1とが入力されて、電位−2となって反転増幅器152に入力される。
したがって、増幅器150からは電位2に比例する電位の信号が出力され、反転増幅器152からは、電位-2が反転された電位2の信号が出力され、両者はアナログ加算器146で合波されて、電位4である信号として、ローパスフィルタ148を介して、CCDシフトレジスタ140のデータ出力端子から出力される。
CCDシフトレジスタ140の出力値(Q1, Q2, Q3, Q4)が次に(-1, 1, -1, 1)となるのは、CS5からCS8までの時間スロットに存在するチップが全てアナログシフトレジスタ140のデータ入力端子から入力された段階である。このときも同様にCCDシフトレジスタ140のデータ出力端子から、電位4である信号が出力される。
CCDシフトレジスタ140の出力値(Q1, Q2, Q3, Q4)が(-1, 1, -1, 1)とは異なる出力となっているときは、CCDシフトレジスタ140のデータ出力端子から電位4以上の信号が出力されることはなく、必ず電位4未満である。
以上説明したように、CCDシフトレジスタ140の出力値(Q1, Q2, Q3, Q4)が、設定された符号と一致した場合のみ、CCDシフトレジスタ140のデータ出力端子から、電位4である信号が出力される。これが、自己相関波形に相当する信号である。例えば、図5(B)に示した、第1チャンネルの符号化送信信号を復号化されて得られた信号の時間波形では、P及びQとして示されているピークは、CCDシフトレジスタ140のデータ出力端子から、電位4である信号が出力された瞬間に現れたピークである。
<判定回路>
図9(A)から(C)を参照して、判定回路の構成及びその動作について説明する。図9(A)は、判定回路の概略的ブロック構成図であり、図9(B)は、アナログマッチドフィルタから出力された復号化された信号の時間波形を示している。また、図9(C)は、閾値判定がなされて出力された信号の時間波形を示している。図9(B)及び(C)において、横軸の方向は時間を任意スケールで示し、縦軸は省略してあるが縦軸方向に信号強度を任意スケールで示してある。
図9(B)に示す時間波形は、図5(B)に示した、アナログマッチドフィルタで復号化されて出力される信号の時間波形に相当する。図9(B)と図5(B)とは、見かけ上異なるが、それぞれの図は説明の便宜のために抽象化して示しており、現実の信号の時間波形は、図9(B)に近い。
判定回路は、コンパレータ42とDフリップフロップ回路52とを具えて構成される。判定回路のアナログデータ入力端子からコンパレータ42の入力端子(IN)に図9(B)に示すアナログマッチドフィルタから出力された復号化された信号を入力する。一方閾値レベル入力端子(REF)からは、閾値として設定する電位の信号を入力する。この電位は、図9(B)に閾値と表記されている電位に相当する。
コンパレータ42の出力端子(OUT)からは、入力端子(IN)から入力された信号のレベルが閾値を超えている場合には、1に相当する電位の信号が出力される。一方入力端子(IN)から入力された信号のレベルが閾値を下回っている場合には、0に相当する電位の信号が出力される。したがって、コンパレータ42の出力端子(OUT)から出力される信号の時間波形は、図9(C)に示す時間波形となる。図9(C)に示す時間波形が、上述した図5(C1)に示した時間波形と対応する。
図9(C)に示す時間波形の信号が、Dフリップフロップ回路52の入力端子(D)に入力される。一方Dフリップフロップ回路52のクロック信号入力端子(CLK)には、クロック信号が入力される。クロック信号入力端子(CLK)に入力されるクロック信号は、図5(C2)に示すクロック信号である。すなわち、このクロック信号によって、入力端子(D)に入力される閾値判定がなされて出力された信号をラッチすることになる。ラッチ動作の原理については既に説明したので、ここでは繰り返さない。
図5(C1)では、矩形パルスの幅を等しく表してあるが、実際には、図9(C)に示す時間波形のように、矩形パルスの幅は等しくない。しかしながら、この矩形パルスの幅の範囲内に、クロック信号の立ち上がりの瞬間が含まれればよいので、この矩形パルスの幅は、必ずしも等しい必要はない。ただし、クロック信号入力端子(CLK)に入力されるクロック信号の立ち上がりの瞬間が、図9(C)に示す矩形パルスの幅(W1及びW2)の範囲内に収まるように、遅延回路40によってクロック信号の時間軸上での位置を調整する必要がある。
<第3実施例>
図10を参照して、第3実施例の光アクセスネットワークシステムの構成及びその動作を説明する。図10は、第3実施例の光アクセスネットワークシステムの概略的ブロック構成図である。第3実施例においては、加入者数が16である場合を想定してある。第1及び第2実施例の光アクセスネットワークシステムと異なる点は、第1及び第2実施例の光アクセスネットワークシステムでは、送受信に使われる信号の波長が一種類のみであったのに対して、第3実施例の光アクセスネットワークシステムでは、4種類の波長を信号の波長として利用する、いわゆるWDMシステムとなっていることである。
したがって、信号の波長がλ1で送受信が行われる部分についての構成は、第1実施例の光アクセスネットワークシステムと同一である。信号の波長として利用する波長をλ1からλ4の4種類を使うことによって、ユーザーの数にして4倍(ONU-1からONU-16)の大きさのシステムに拡張されている。すなわち、ONU-1からONU-4では波長λ1を利用し、ONU-5からONU-8では波長λ2を利用し、ONU-9からONU-12では波長λ3を利用し、ONU-13からONU-16では波長λ4を利用する。また、ONU-1、5、9及び13に割り当てる符号は共通にすることができる。同様に、ONU-2、6、10及び14に割り当てる符号、ONU-3、7、11及び15に割り当てる符号、ONU-4、8、12及び16に割り当てる符号は、それぞれ共通にすることができる。また、ONU-1からONU-16に、それぞれ第1チャンネル(ch1)から第16チャンネル(ch16)を対応させてある。もちろん、上述の符号の割り当て及びONUへのチャンネルの割り当ては、一例を示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
信号の波長として利用する波長をλ1からλ4の4種類に増やしたことによって、図1に示した光アクセスネットワークシステムにおける光合分岐器66に対応する光合分岐器66-1及び66-4と、光カプラ124に対応する光カプラ124-1及び124-4との間に、波長選択性を持った波長選択性合分波器50及び54が必要である。
波長選択性を持った波長選択性合分波器としては、例えば、WDM合分波器を利用することができる。また、波長選択性を持たない光合分岐器とこの光合分岐器の分岐光を出力する各ポートに、透過波長の異なる光フィルタを設置した装置を利用することもできる。
第3実施例の光アクセスネットワークシステムにおいても、信号の波長がλ1からλ4で送受信が行われる各部分の構成は、それぞれ第1実施例の光アクセスネットワークシステムと同一であるから、光合分岐器とONUとを接続するために使われる光コネクタからの反射光成分が、ONUの受信信号に混入しても、受信信号のS/N比が低下することがないという効果が得られることは明らかである。