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JP4754831B2 - 質量分析法のイオン化効率の増大方法 - Google Patents

質量分析法のイオン化効率の増大方法 Download PDF

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Description

(関連出願の参照)
本願は、2002年10月29日に出願された米国特許仮出願第60/422,393号の利益を請求するものであり、その内容は本願で参照として組み込まれる。
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
該当無し
(コンパクトディスクで提出されたシーケンスリスト、表、コンピュータプログラムリスティング付録等の参照)
該当無し
(発明の背景)
変動する化学的バックグラウンドにおいて化学物質の瞬間的で微小な飛跡(単一分子への縮小)を識別しかつ迅速に特定することは、分析化学に広がる目的である。広範囲にわたる軍事的、公共的及び個人的な用途のために、以下のような化学的検出方法を継続的に改善することが必要とされている:郵便物、空港、国境検問所、学校及び職場での禁制品(薬物や爆発物)の検出、法医学、化学的及び生物学的な防衛(爆発物、化学兵器及び生物兵器)、人体及び動物の診断、人体及び動物の治療や農業用化学物質及び産業用生物学のために行われる吸着、堆積、代謝、排出及び毒物学の研究、環境運命、生物情報科学及びハイスループットスクリーニング。
エアロゾル化された化学的毒素は、これが工業的排出物及び軍事的排出物のいずれであっても、多くの戦域で軍事力を確実に脅かす。爆発物(地雷)及び軍需品を検出することは、化学的検出器の重要な軍事的任務である。軍事的脅威としては、さらに、従来のまたは新たな化学兵器(CW)が公然または秘密に使用されることが挙げられる。非軍事的な脅威として可能性のあるものは、工業汚染(例えば、イースタンブロック及び多くの発展途上国)や工業地域における付随的または内在的なダメージ(例えば、砂漠の嵐作戦中に生じた油井火事)が挙げられる。
既存の化学的検出システムでは、上記のバックグラウンドの検出の達成は十分な量の薬剤の蓄積に依存し、これらの本質的な感度が制限される。分光検出法は、多くの場合、変動する自然の化学的バックグラウンドから既知の化学物質を識別するために利用される。特殊な化学的プローブ(例えば、抗体や分子インプリントされた吸着剤)を微小分子の有機化合物のために開発することは困難であると判明しているため、残りは直接的な検出方法(例えば、表面弾性波素子、質量分析法及び光学的システム)であり、これらの方法だけが、殆どの化学的薬剤の検出に現在利用できる方法である。十分な量を狭いスペースに蓄積することは困難であり、このような質量感度の問題があるため、これらの検出システムを小型化することは困難である。このことは、化学的検出用ポイントセンサには、目立った高価な収集・予濃縮システムが必要であることを意味する。
質量分析法の他の主要な化学的検出の用途としては、禁制品や爆発物の検出、食品、飲料及び化粧品の品質管理、食品の安全性及び品質保証、及び換気制御(オフィスや航空機)などが挙げられる。連邦議会予算事務局(CBO)は、1997年に以下のような見積もり書を作成した。つまり、全レベルの米国政府が公共の場での禁制品、爆発物及び救助作業の検出のための捜索犬の保護及び訓練に10億ドル/年を費やすという見積もりを行った。(USニュースアンドワールドレポート(US News&World Report)で報告された連邦議会予算事務局の見積もり(1997年11月))。2001年以前に、FAAは、検出の方策に基づいて質量分析装置を米国の空港に設置することに失敗している。それは、これらの装置の感度が乏しいことが実証されたためである(爆発物に対しては実質的に1〜100fmoleの範囲)。
USPSの最も優先度が高い問題の一つは、不正または禁止された郵送物の検出である。テッドカジンスキ(Ted Kazinski)(「ユナボマー」)は、侵入することのない広範囲で高感度な検査の必要性を再び浮き彫りにした。水銀が航空機の機内で小包で発見されたことがある。このような物質が飛行中に漏れると、その後で破滅的な中毒が起こる恐れがあり、これは、破壊的なものとなる可能性がある。さらに、欧州で最近起こった口蹄疫の発生により高まった、生物学的作用物質の問題についても対処できる可能性がある。郵政事業が懸念している物質としては、マリファナ、メタンフェタミン、コカイン及びヘロインがある。
センサ及びユーザインターフェースのシステム統合を検討及び計画する際にUSPSが懸念しなければならない2つの重要な問題は、誤報率(可能な限り低く維持しなければならない)と、郵便物の分類及び輸送処理量への影響である。MS検出システムの検出効率が悪くなければ、MS検出システムのみがこれらの要求事項を満たすものとなる。MSをベースとしたセンサにおける問題は、検出するためには、現在のところ、禁制品が比較的高い濃度を有していなければならないことである。禁制品は、多くの場合に捜索犬から隠すために、包装容器内部にあるため、検出できる濃度は、通常、現在のMS検出レベルを下回る。
質量分析法は、現在のところ、化学的検体を確実に特定できる幾つかの分析技術の一つであることから、科学捜査において最も重要な位置にある。しかし、科学捜査における重要な問題として、検査のために利用できるサンプルの量が限られることである。MS技術の感度が高いほど科学捜査を大幅に改善して、有罪判決率を上げることができる。科学捜査の用途は、法執行機関のみには限定されず、兵器に関する条約の順守のための情報機関,大量破壊兵器、根源及び管理に関する無法国家の監視、部屋、オフィス、工場及び学校における違法薬物の調査においても有用である。
産業上の環境に関する監視は、環境保護及び産業衛生の両方の点から、質量分析装置のもう一つの主要な利用分野である。浮上している用途としては、建物や商業用航空路の悪臭防止のみならず、食品及び飲料の安全性及び品質管理が挙げられる。
高感度のMS技術が必要となるもう一つの用途としては、生物学的情報の収集(例えば、ゲノミクス、プロテオミクス及びメタボロミクス)が挙げられる。生物学的情報の収集の際の質量分析装置の役割は、重要でかつ拡大しつつある。次世代の高処理能力・低コスト遺伝子配列決定(一塩基多型(SNPs)のためのコスト効率の高い識別、遺伝的疾患に関する広く知られたゲノタイピング、疾患傾向のスクリーニング、治療上の耐性及び結果予測のために必要)は、MS技術に基づくものである(Butler,J.M.,J.Li,J.A.Monforte,and C.H.Becker,“DNA typing by mass spectrometry with POLYMORPHIC DNA repeat markers”、米国特許第6090558号(2000年7月18日)、Schmidt,G.,A.H.Thompson,R.A.W.Johnstone,“Compounds for mass spectrometry comprising nucleic acid bases and aryl ether mass MARKERS”、欧州特許出願公開第1042345号(2000年10月11日)、Schmidt,G.,A.H.Thompson,R.A.W.Johnstone,“Mass label linked hybridisation probes”、欧州特許出願公開第979305号(2001年2月16日)、Koster,H.,“DNA sequencing by mass SPECTROMETRY”、米国特許第6194144号(2001年2月27日))。現在、全てのタンパク質の識別及び配列決定は、殆どMSのみによって行われている。タンデムMSによるペプチドのフィンガープリント法及びデノボペプチドの配列決定は、広く行われている殆ど一般的な方法である(SHEVCHENKO,A.et al.,“LINKING genome and PROTEOME by mass spectrometry: Large−scale identification of yeast proteins from two dimensional gels,”Proc.Natl.ACAD.Sci.(USA),93: 14440−14445 (1996)、Yates,J.R.,S.Speicher,P.R.Griffin and T.Hunkapiller,“Peptide mass maps:a highly informative approach to protein identification”,Anal.Biochem.,214:397〜408(1993))。MSのサンプルの要求事項が少なくかつ速度が大きいという理由で、古典的なエドマン分解でさえもMSが適用されてきた(Aebersold,R.et al.,Protein Sci.,1:494〜503(1992))。インバートマスラダー配列決定(Inverted mass ladder sequencing)は、超高速のデボノタンパク質配列決定方法であり(Schneider,L.V.et al.,“Methods for determining protein and peptide terminal sequences”,仮特許出願第60/242398号及び第60/242165号(2000))、これもまたESI−TOF MSを利用するものである。安定同位体比MSは、代謝データ(メタボロミクス)の生成のために利用されている(Schneider,L.V.et al.“Metomics,米国特許出願第09/553424号(2000))。質量分析装置をベースとしたディファレンシャルディスプレイ技術の最近の発明(例えば、ICAT法(ICAT(登録商標))(Aebersold,R.H.,et al.WO00/11208(2000年5月2日)及びisotope diffentiated binding energy shift tags(IDBEST(登録商標))(Schneider,L.V.et al.,WO01/49951(2002年8月29日)、Hall,M.P.et al.,後にシエナ会議(イタリア、シエナ、2002年9月1〜5日)にて提案)によって、質量分析装置内の安定同位体の比率に基づいて複数のサンプル間で相対的タンパク質表示を直接に量的に比較できる。これらの用途は全て、検出のためにMSを利用するものであり、MSの検出効率によりその機能が損なわれる。一次的生物情報データの生成に加えて、MSは、コンビナトリアルケミストリー及び高処理能力の薬物ライブラリスクリーニングにおいて重要な役割を担う(Sugarman,J.H.,R.P.Rava,and H.Kedar,“Apparatus and method for parallel coupling reactions”、米国特許第6056926号(2000年5月2日))、Schmidt,G.,A.H.Thompson, and R.A.W.Johnstone,“Mass label linked hydridisation probes”、欧州特許出願公開第979305号(2000年2月16日))、Van Ness,J.,Tabone,J.C.,H.J.Howbert and J.T.Mulligan、“Methods and compositions for enhancig sensitivity in the analysis of biological−based assays”、米国特許6027890号(2000年2月22日))。
実質的にこれらの全てのMS生物情報学的用途を制限する要因は、利用できるサンプルの量である。例えば、2−Dゲル電気泳動におけるタンパク質の検出限界は、通常の40kDaタンパク質であると仮定すると、約0.2ng(銀染色)(Steinberg,Jones,Haugland,and Singer,Anal.Biochem.,239:223(1996))〜約0.05fmol(蛍光染色)(Haugland,R.P.,“Detection of proteins in gels and on blots”in Handbook of fluoescent probes and research chemicals,Spence,M.T.Z(ed)(6th ed.)(モレキュラープローブス社、ユージーン,オレゴン州、1996年))である。1fmolという少量の標識されていないタンパク質が検出(UV検出)のために必要であり(Beckman Instruments,“eCAP SDS 200:Fast,reproducible,quantitative protein analysis”BR2511B(Beckman Instruments,Fullerton,CA,1993年))、1〜10zmolという少量の蛍光標識されたタンパク質が必要である(レーザー誘起蛍光、LIF)(Beckman Instruments,“P/ACE(登録商標)laser−induced fluorescence detectors,BR−8118A”(Beckman Instruments,Fullerton,CA,1995年)、Harvey,M.D.,D.Bandilla and P.R.Banks,“Subnanomolar detection limit for sodium dodecyl sulfate−capilary gel electrophoresis using a fluorogenic,noncovalent dye”,Electrophoresis,19:2169〜2174(1998))。はキャピラリー電気泳動分離で検出できる。しかし、最小で0.1fmol、より一般的には100fmolまでのタンパク質がMS配列決定には必要である。
おそらく、高分解能の質量分析法(MS)は、最大の化学的識別能力(1ppmの質量精度で50〜100000+amuの質量範囲)を有し、イオン検出器により単一イオンをカウントし、いかなる分析化学技術にも広く適用可能である。しかし、質量分析装置は、一般に、有機物サンプルに対する検出効率が低く、イオン化方法及び使用する質量分析装置によるが、多くの場合に0.001〜100(ppm)の範囲内、つまり約0.001〜100fmole(初期の分子は約10〜1011)の範囲内である。
質量分析法(MS)は、基本的に、3つの構成要素(イオン発生源、質量分析装置及びイオン検出器)から成る。これらの3つの構成要素は、相互に関連しており、あるイオン発生源は、特定のタイプの質量分析装置または検体により適している。特定のイオン検出器が特定の質量分析装置により適している。エレクトロスプレー(ESI)及びマトリクス支援レーザー脱離(MALDI)イオン発生源は、有機物分子(特に生体分子)に広く利用されており、一般的に、不揮発性の有機物種のイオン化に適している。ESIは、識別能力を付加するために液体クロマトグラフィーやキャピラリー電気泳動と組み合わせることが容易であることから、広く利用されている。MALDI技術は、ESIでは可溶化及び揮発させることが困難な大きな分子(例えば、タンパク質)のために広く利用されている。MALDIの主な利点は、様々なイオン化可能な基を有する分子から生じる荷電状態の数が小さいことである。MALDIの主な欠点は、約900amu未満のマトリクスイオンによりイオン検出器が飽和してしまうことである。マイクロ/ナノESI発生源の出現により、これらの2種類のイオン発生源は、広範囲の有機材料に対して実質的に同程度の感度を示す。
いかなるMSの検出効率(η,式1)も、イオン化効率(η,式2)と輸送効率(η,式3)との積から求められる。簡単化のため、検出素子の効率を輸送効率と一括して扱う。
Figure 0004754831
MSの全検出効率を高精度に測定することは困難である。イオンの生成、収集、輸送及び検出に影響し得る要因は多数存在し、これらを日毎、MS毎及び実験室毎に厳密に再現することは困難である。
エレクトロスプレー質量分析法に関して一般的に知られていることは、実際には全ての損失は質量分析装置へのイオン輸送中及び質量分析装置内部でのイオン通過中に生じること、及びイオン化効率が100%に近いということである。このような仮定は、以下の2つの観測結果に基づいている。1)スプレー先端からの全イオン電流の測定値または質量分析装置内部の様々な位置における全イオン電流の測定値、及び2)大部分の検体が複数の荷電状態を示すこと。
スミスら(Tang,K.et al,Anal.Chem.,73:1658−1663(2001)は、最近、ESIのマイクロスプレー先端からの実際の全イオン電流(TIC)が約150nAであることを測定した。このとき、一般的な生体分子サンプルマトリクス(メタノール:水:酢酸=50:50:1)の流量は、1μl/分であった。デラモラ及びロセータル(De la Mora,J.F. and I.G.Loscertales、J. Fluid Mech.,260:155〜184(1994))は、同様の測定装置を用い、しかしサンプルマトリクスとしては硫酸をドープしたオクタノールを用いた場合、イオン電流が50〜280nAであり(流量1μl/分)、このイオン流は硫酸の濃度(0.3〜3%)によって変わったことを報告した。これらの結果は両方とも、液滴(drop)が1〜10μmであると仮定すると、一液滴あたりに10〜10の不平衡電荷が存在することに相当する(後述の表1)。しかし、デラモラ及びロセータルは、測定されたイオン電流が理論上の最大値の4倍であることを認め、この差が、ギャップを横断する微細液滴(droplet)によるイオン対流によるものではなく、噴流の頂点部分における電子の伝導度に起因するものとみなした。これが真実であれば、一液滴あたりの実際の電荷数は、全イオン電流のデータにより示されるものよりもはるかに小さい可能性がある。
スミスら(Smith,R.D.et al.,Anal.Chem.,62:882−899(1990))は、さらに、質量分析装置内部のイオン経路に沿った様々な位置に配置された検出板に衝突するTICを測定することによって、輸送効率を見積もることを試みた。彼らは、輸送効率が大部分のイオン損失の原因であり、これが検出効率の低下をもたらすという結論に達した。多重の荷電状態が存在、より具体的には荷電状態の分布が単一の荷電状態に集中しないことは、完全なイオン化を支持する第2の所見である。電荷が不足している場合には、現れる荷電状態は少ないはずである。
ESIとは異なり、MALDIにおけるイオン化効率が小さいことは一般的に認識されている。これに対する一つの論理は、多数のイオン化部位を有する検体から発生した、強く帯電した種の欠乏である。例えば、正イオンモードでは、多くの塩基性残留物(すなわち,Arg,Lys及びHis)が存在したとしても、タンパク質はイオン化して+1または+2の電荷のみを有する種を発生する。レビス(Levis,R.J.,Annu.Rev.Phys.Chem.,45:483〜518(1994))は、イオン化レーザーによりターゲットから放出される全ての材料を収集及び分析することによって、MALDIイオン化効率が非常に低くかつ多量の中性材料がレーザー除去プロセスによりMALDI表面から融除されることを明確に実証した。このような主張は、ブルーン(Brune)らの結果(Brune,D.C.ら,後にアメリカ質量分析学会の年次会議(イリノイ州シカゴ、2001年5月27〜30日)で提案)によっても支持される。彼らは、マトリクス分子の気相塩基度に基づいて負イオンMALDIマトリクスの最適化について報告した。彼らは、気相プロトン輸送の理論を導出して、MALDIにおいて塩基性の強いマトリクスによって検体の効率が高くなることを説明した。従って、このイオン化の問題のために提案されたイオンガンの解決法(後述)を、ESI技術及びMALDI技術の両方に適用できると我々は期待している。
(発明の要約)
一実施例によると、本発明は、質量分析法のイオン化方法を提供する。このイオン化方法では、エレクトロスプレーの微細液滴または固体サンプルマトリクスがイオンビームにあてられ、これによって、この検体の不平衡電荷が増大する。他の実施例によると、本発明は、質量分析法のイオン化方法を提供し、このイオン化方法では、検体を含む液体または固体のサンプルマトリクスにイオンビームをあててこの検体をイオン化し不平衡電荷をこれに添加することによって、サンプルのイオン化を行う。
他の形態によると、本発明では、さらに、イオン検出器のデューティサイクルに同期するように、質量分析装置のインターフェースを介して帯電した検体をあてる。検体を、サンプル表面におけるそれぞれ別個の頂点に堆積することが可能である。サンプルを、バクテリア、ウイルスまたは細胞とすることができる。イオンビームとしては、プロトンビーム、リチウムイオン、セシウムイオン、陰イオン(例えばNH やHSi)または電子を用いることができる。このようなサンプルを、集束用四重極に直接に導入することができる。好適な実施例として、イオンビーム流束を約1mA/cm〜約17mA/cmとし、イオンビームのエネルギーを約5〜約50電子ボルト、より好適には、約5〜約10電子ボルトとすることができる。しかし、飽和しなければ、イオン検出器を使用して、イオン流束をより大きくすることも可能である。
他の実施例によると、本発明は、検体イオン発生源、イオンビーム、質量分析装置及びイオン検出器を含む質量分析システムを提供する。さらに、本発明は、液相または固相の検体サンプル、イオンビーム、質量分析装置及びイオン検出器を備えた質量分析システムを提供する。
(発明の詳細な説明)
質量分析法(MS)は、基本的に、3つの構成要素(イオン発生源、質量分析装置及びイオン検出器)から成る。これらの3つの構成要素は、相互に関連しており、あるイオン発生源は、特定のタイプの質量分析装置または検体により適している。特定のイオン検出器が特定の質量分析装置により適している。本発明の焦点は、イオン発生源にあり、より具体的には、イオン化プロセスにある。ESIイオン発生源及びMALDIイオン発生源は、有機物分子に広く利用されており、一般的に、不揮発性の有機物種のイオン化に適している。ESIは、識別能力を付加するために液体クロマトグラフィーやキャピラリー電気泳動と組み合わせることが容易であることから、広く利用されている。MALDI技術は、ESIでは可溶化及び揮発させることが困難な大きな分子(例えば、タンパク質)のために広く利用されている。MALDIの主な利点は、様々なイオン化可能な基を有する分子から生じる荷電状態の数が小さいことである。MALDIの主な欠点は、約900amu未満のマトリクスイオンによりイオン検出器が飽和してしまうことである。マイクロ/ナノESI発生源の出現により、これらの2種類のイオン発生源は、広範囲の有機材料に対して実質的に同程度の感度を有する。
いかなるMSの検出効率(η,式1)も、イオン化効率(η,式2)と輸送効率(η,式3)との積から求められる。簡単化のため、検出素子の効率を、輸送効率と一括して扱う。
Figure 0004754831
さらに、MSの全検出効率を高精度に測定することが困難であることを言及しなければならない。イオンの生成、収集、輸送及び検出に影響し得る要因は多数存在し、これらを日毎、MS毎及び実験室毎に厳密に再現することは困難である。このことは、多くの場合に検出効率が報告されない理由を示唆している。我々の経験によると、多数の実験を通して再現可能でない場合、概算での差は通常は大きくはない。
MSにおける重要な疑問は、全ての分子がどこへ行くかということである。エレクトロスプレー飛行時間(ESI−TOF)型MSを例に挙げると(図1)、イオン損失をもたらす様々な可能性が存在することは明らかである。第1の箇所では、分子がイオン化できない可能性がある。すなわち、ESIにおける脱溶媒和中に含まれている対イオンによって純粋な中性塩を生成する可能性があり(Kebarle,P,J. Mass Spectron.,35:804〜817(2000))、またはMALDIにおける検体−塩マトリクスの結合した揮発により、分子が純粋な中性塩を生成する可能性がある。従って、イオンが検出器のオリフィスに入れない可能性がある。マイクロ/ナノスプレー技術によって、ESI MSの収集効率が、以前の空気式スプレー技術よりも大幅に改善された。MSの内側面は、それぞれ異なる電位に維持されてそれぞれイオンを含む電界を形成するようになっている一方で、中性気体分子から分離され、これらのイオンを検出素子へと向かわせる。イオンは、MSの内側面との静電気的相互作用により失われる可能性がある。イオンの飛跡がそのイオン自体に固有の質量/電荷にのみ依存するほどに検出素子までのイオンの平均自由工程が長くなるように、MS検出器を高真空で動作させなければならない。従って、幾つかのイオンが、真空ポンプへと除去される中性気体中に含まれてしまう可能性がある。図1には直交型イオン検出器が示されているが、このような検出器では、検出器に固有のデューティサイクルに起因して、更なるイオン損失が起こる。
エレクトロスプレー質量分析法において一般的に知られている点は、実際には全ての損失が質量分析装置へのイオン輸送中及び質量分析装置内部でのイオン輸送中に生じること、及びイオン化効率が100%に近いということである。このような仮定は、以下の2つの観測に基づくものである。1)スプレー先端からの全イオン電流の測定値または質量分析装置内部の様々な位置における全イオン電流の測定値、及び2)大部分の検体が多数の荷電状態を示すこと。
上述したように、スミスら(Tang,K.et al,Anal.Chem.,73:1658−1663(2001))は、最近、ESIのマイクロスプレー先端からの実際の全イオン電流が約150nAであることを測定した。このとき、一般的な生体分子サンプルマトリクス(メタノール:水:酢酸=50:50:1)の流量を1μl/分とした。デラモラ及びロセータル(De la Mora,J.F. and I.G.Loscertales、J. Fluid Mech.,260:155〜184(1994))は、同様の測定装置を用い、しかしサンプルマトリクスとしては硫酸をドープしたオクタノールを用いた場合、イオン電流が50〜280nAであり(流量は1μl/分)、このイオン流は硫酸の濃度(0.3〜3%)によって変わったことを報告した。これらの結果は、両方とも、液滴が1〜10μmであると仮定すると、一液滴あたりに10〜10の不平衡電荷が存在することに相当する(表1)。しかし、デラモラ及びロセータルは、測定されたイオン電流が理論上の最大値の4倍であることを認め、この差が、ギャップを横断する微細液滴によるイオン対流によるものではなく、噴流の頂点部分における電子の伝導度に起因するものとみなした。これが真実であれば、一液滴あたりの実際の電荷数は、全イオン電流のデータにより示されるよりもはるかに小さい可能性がある。TIC測定値に誤差があることを示唆する更なる証拠として、これらを一液滴あたりの電荷数に変換した値が、レイリー限界(表1)をはるかに上回ることが挙げられる。レイリー限界とは、液滴がクーロン力により自発的に破裂する前に、真空中でその液滴に存在し得る不平衡電荷の最大数である。
Figure 0004754831
スミスら(Smith,R.D.et al.,Anal.Chem.,62:882−899(1990))は、さらに、質量分析装置内部のイオン経路に沿った様々な位置に配置された検出板に衝突する全イオン電流を測定することによって、質量分析装置内部の輸送効率を直接に測定することを試みた。彼らは、輸送効率が大部分のイオン損失の原因であり、これが検出効率の低下をもたらすという結論に達した。スミスの研究により示唆されるように、彼らは、結論を全イオン流に基づかせることにより、輸送効率による損失を過大に見積もっている。質量分析装置は、通常、非常に微小なイオン(例えば、プロトンやヒドロニウムイオン)をイオン流から除去するように調整される。これらの種がイオン電流の大部分を含んでいるならば、輸送効率が著しく低く見積もられる可能性がある。従って、対象となる特定のイオンに対して輸送効率を求めることが重要である(すなわち、特定のイオン流を用いる)。
多数の荷電状態が存在すること、より具体的には荷電状態の分布が単一の荷電状態に集中しないことは、完全なイオン化の理由を正当であると証明するために用いられた第2の所見である。この議論は、電荷が不足しているとしたら、何故多数の荷電状態がみられるのか、というものである。しかし、ESIプロセスでは、脱溶媒和中に、帯電した微細液滴が非対称に分裂することもまた主張できる(Kebarle,P and L,Tang,Anal.Chem.,65:972A−986A(1993))。液滴の表面における帯電した検体は、気相へと移行するに従って、協同性により更なる電荷を拾い続ける。この主張は、脱溶媒和中及び液滴破裂中に分裂している微細液滴が電荷の塊を運び去り、これによって、元の液滴には殆ど電荷が残らないという証拠により支持される(Kebarle,P and L,Tang,Anal.Chem.,65:972A−986A(1993))。本質的には、このことによって、以下の2つの起こり得る検体の群の準二峰性分布が生じる:1)ESI−MSにおけるピークの包絡線を生じる強く帯電した種、及び2)検出されずに残るイオン化されていない検体。従って、電荷は有限であるが、特に分裂過程及び破裂過程での微細液滴が不均一となることは、これらの2つの群の中間の電荷数を有する種が検出されないことを説明する。
イオン化効率に関するこれらの未解決の疑問を解決するための1つの方法は、モノマーの重量分率は同じであるが鎖長がそれぞれ異なる一連のイオン化可能なホモポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド(PEO))により生じる特定のイオン電流を測定するものである(図2)。よりイオン化し易い残留物を含むポリマー鎖は、統計上、モノマーの体積分率または重量分率が同じ場合に、利用可能な電荷を得るために競合する可能性がより大きい。ESI−TOF MSにおいて、様々な鎖長を有するPEOポリマーの溶液に対してエレクトロスプレーイオン化を行った場合、検出効率が鎖長に比例するように増大することがわかる(図2)。さらに、鎖長が最大(8MDa,182000のモノマー単位)の場合には、検出効率が0.1%(1000ppm)を上回る。この0.1%という値は、使用されたマリナ(Mariner)(登録商標)機器に対して製造者(アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems))が見積もった理論上の輸送効率である。この試験された最大分子量を有するPEOの検出効率が、我々の装置に対して報告された輸送効率の値またはこの近傍の値であることから、分子量がこれより小さい種のイオン化効率は、100%ではないことは明らかである。
ポリマー鎖の各モノマーが独立に作用しかつ利用可能な電荷に対して規定された親和性を有すると仮定すると、単一荷電した検体に対して、エンケ(Enke,C.G.,Anal.Chem., 69:4885〜4893(1997))により報告されたものに従ってPEOのイオン化効率のモデルを確立することが可能である。このようなモデルによって、PEO(C )のイオン化可能な残留物の全濃度、利用可能な電荷を得るために競合する仮定の種の全濃度(C )及び微細液滴の全電荷(C)の間の相対的な電荷分離定数(α)の項によるモノマー検出効率(η)の2次解が得られる。
Figure 0004754831
→0の極限をとると、式4の正の根のみが有効であることを証明できる。モノマーのイオン化効率(η)がポリマーの鎖長に依存せずに一定であると仮定しているため、ポリマーの効率(η)を鎖あたりのモノマー単位の数の平均値(n)により除することにより、図2に示されるポリマー検出効率データを濃縮することができる。実際には、これによって、様々な鎖長のポリマー間の差を取り除いた単一の曲線(図3)が得られる。このことは、さらに、200〜1500の質量電荷比(これは、これらの様々なPEO鎖長によりカバーされる範囲である)に対して、輸送効率が一定であることを示している。
輸送効率(η)を仮定した場合、図3のデータを用いて、パラメータα、C ,Cを見積もることができる。これらの研究に用いた質量分析装置の製造者であるアプライドバイオシステムズは、理論上の輸送効率は約0.1%であることを言及している。8MDaPEOのイオン化効率が1に近いと仮定すると、実際の輸送効率を約0.167%と見積もることができる(600イオン毎に1イオン)。この値を用いると、全電荷濃度(C)は約4.3×10−9Mと見積もられる。競合する種の全濃度(C )は、約4.4×10−9Mと見積もられ、αは約1.3×10−6と見積もられる。このデータに最も当てはまるモデルが、図3に実線で示されている。
このモデルは、幾つかの事を示している。第1に、全てのイオン化可能な基が、独立して、エレクトロスプレー液滴における限られた量の不平衡電荷を得るために競合することを示している。第2に、検体もまたこのような電荷を得るためにそれ自体と競合し、検体の濃度が増大すると、特に利用可能な電荷を得るための競争に優勢でない種のイオン化効率が減少する可能性がある。最後に、全電荷濃度(C)の見積もりによって、液滴における不均衡電荷の総数を見積もることができる(表1)。我々は、電荷を求めて競い得る全ての種を単一の種としてひとまとめにしているとともに実際の輸送効率を厳密には見積もらないため、モデルに当てはまる曲線により見積もられた全電荷濃度が、液滴における実際の不平衡電荷の濃度よりも小さく見積もられる可能性がある。
検出器内部のイオン輸送を最適化するために多くの努力が既になされてきており、タンデムMS検出器にもかかわらずzmolのイオン効率が達成されている(Belov,M.E.et al.,Anal.Chem.,72:2271〜2279(2000))。このような高い輸送効率は、幾つかの簡単な実験により容易に実証される。収集効率については、カーガー(Karger)(Felton,C.et al.,Anal.Chem.,73:1449〜1454)により記載されたものを簡単化した低圧ESIヘッド(図4)を用いることにより試験することができる。ESI源及びノズルは、大気からシールされているため、スプレー先端で生成された気相イオンは全て質量分析装置に入る。キャピラリの径及び長さを操作することによって、真空状態でのサンプル流量を変更する。我々は、通常の大気中におけるマイクロスプレーの状態(すなわち、3種のペプチドをそれぞれ10μM含む溶液の流量を1.0μl/分とする)と等しくして、これらのペプチドの全検出効率(1〜10ppb)は最低であったが、通常のマイクロスプレーの運転で日常的にみられる検出効率の経験的な誤差の範囲内(5〜50ppb)であることを見出した。従って、マイクロ/ナノスプレーの収集効率は100%に近いと思われる。
これらの値は、製造者がこの装置に対して設定した感度の仕様と一致するものであり、3年間の運転の間に行われる週毎の較正により一定に維持されている。ミオグロビン(17kDaタンパク質)及びトリエチルアミンの検出効率は、何ヶ月にもわたって行われる多数の実験を通して、ともに同じ0.1〜100ppbの範囲内に維持されている。これらの結果は、イオン化効率の問題の普遍性を実証している。
我々は、さらに、ノズル及びスキマーを通り越すようにスプレー先端を移動させて、サンプルが集束用四重極に直接に注入されるようにすることによって、真空ポンプや検出器の内側面への損失が無視できるものであることを実証した。平均自由工程が最小でかつ中性気体流にイオンが含まれる可能性が最大となるのは、ノズル及びインターフェースの領域である。これらの実験では、上述したペプチドの混合物と同じものを用い、0.01〜1ppbの範囲の検出効率が得られた。これは上述した結果よりも低いが、この差は全てサンプルの導入に使用された非被覆の長い(250cmまでの)キャピラリの内壁に検体が吸収されたことに起因することが更なる試験により判明した。
直交型TOF検出器の検出器デューティサイクルは、基本的にイオンの飛行時間により制限され、現在のマリナ(Mariner)(登録商標)(ESI−TOF)システムの製造者であるアプライドバイオシステム(ABI)によれば約20%である。軸方向型のTOFシステム及びFT−ICRシステムでは、全てのイオンが一度にセンサ素子へと収集及び放出されるため、検出効率を増大するために利用できる。しかし、ICRのデューティサイクルが所望の質量精度により制限され、ICRでの時間が増大するにつれて得られる質量解像度が向上するが、分析装置の全デューティサイクルが犠牲になる。同様に、タンデム型または三重極型の分析装置によっても、イオンがイオン検出器へと放出される前に発生源から長時間蓄積されるため、検出感度を改善できると思われる。質量精度が重要でない用途では、軸方向型TOF検出器を利用することができる。軸方向TOF検出器は、本質的に、センサ素子に到達する全てのイオンをカウントするものである。ABIは、独自で、マリナ(Mariner)プラットフォームの全輸送効率を0.1%以上と見積もっている。これは、他者により引用される輸送効率に見合うものである(Belov,M.E.ら、アメリカ質量分析学会、11:19〜23(2000)、Martin S.E.,J.Shabanowitz,D.F.Hunt, and J.A.marto,Aanal Chem,72:4266−4274(2000))。検出器素子のデューティサイクルの他に、イオン化効率がMSプロセスにおけるイオン損失の主要因であることが我々の実験からわかる。
以上の証拠から、イオン化効率には基本的な限界があることがわかる。我々は、この基本的な限界は、電荷分離(すなわち、電気的中性による制限)によるものであると考えている。テイラーコーン(Taylor cone)(図5)からの微細液滴生成の問題を再検討すると、電界が存在しない場合には全ての陽イオンが近傍の陰イオンにより平衡されることは、局部的な電気的中性の制限から明らかである(すなわち、溶媒が分離されるにもかかわらず、液相で全ての有機物イオンが塩として存在する)。電界を印加すると、液体中の電荷分離が起こり始め、局部的な電荷の不平衡が液面及びその付近で押し進められる。起こり得る電荷分離の程度は、印加された電界の大きさによって決まる。10,000V/cmでは、空気中で絶縁破壊が起こり、接地面からスプレー先端への電子流が生じ、微細液滴が生成されなくなる。従って、このような電界強度は、電荷分離のために印加できる最大電位を示している。
クーロンの法則から電荷分離の問題に臨む、単位電荷(q)の液滴をスプレー先端から分離させるのに要する電位(Ψ)は、以下のように表わされる。
Figure 0004754831
ここで、Rは有効液滴半径,ε及びεは真空誘電率及び空気中のε誘電率(≒1)である。式5により、単位電荷を有する単一の液滴を分離するには、1μmと10μmの液滴の場合には3〜0.3mVの電位が必要となることが予測される。これは、1μmと10μmの液滴に対する60〜0.6V/cmの電界強度に相当する。ESIの電界強度は、結局、空気中の絶縁破壊により制限される(10000V/cm)。従って、1μmの液滴あたりの最大の不平衡イオン数は約174個であり、10μmの液滴あたりの最大の不平衡イオン数は17400個であると予測される(表1)。これらの見積もり値は、PEOデータから見積もった値よりも2桁程度大きいものであり、1〜10μmの液滴径の範囲に対するレイリー限界よりも2桁小さい。微細液滴及びスプレー先端の周囲の電界の形状に加えて、微細液滴の形状及び微細液滴内部の不平衡電荷の分布が、このような予測に影響を及ぼす。しかし、明らかに、このような総合的な分析は、ESIによるイオン化プロセスは未だ完全には理解されておらず、イオン化効率がおそらく100%であるという目下の仮定が誤りである可能性がある。
さらに、スミスの研究で興味深いものは、それぞれ別個のスプレー先端の数に厳密に伴って全イオン電流が増大するという観測(Tang,K.et.al,Anal.Chem.,73:1658〜1663(2001))である(すなわち、単一のスプレー先端あたりの体積流量を等しくすると、先端が9個の場合には、単一の先端によるイオン電流の9倍になる)。この観測は、デラモラ及びロセータルによるESIの準経験的な次元の分析と一致し、この分析によると、テイラーコーンの先端でイオン電流が上限となり、これは真空誘電率(すなわちε→1)及びQ−1/2により決まることを彼らは主張している(De la Mora,J.F. and I.G.Loscertales、J. Fluid Mech.,260:155〜184(1994))。このような観測は、単一液滴が有し得る不平衡電荷数に最大値が存在しかつこの最大数がスプレー先端における電荷分離により決まり、微細液滴分裂に対するレイリー限界(Kebarle,P),J. Mass Spectrom.,35:804〜817(2000)によっては決まらないという我々の主張を支持するものである。
脱溶媒和が発生してしまうかあるいは塩クラスタが気相中に生成されてしまう(例えばMALDIイオン化)と、接触イオン対を分離するのに要する電界強度が極めて大きくなる(R→10−9m,Ψ→17000kV/cmであり、これは、空気中における絶縁破壊よりも3桁大きい)ことは明らかである。スペースに制限があることから、MALDIイオン化をほぼ完全に分析することは不可能であるが、この電荷分離の論理(式5)に基づいて、MALDIマトリクス及び含まれている有機物イオンの揮発中に生成される塩を分離することがどの程度困難であるかを調べることは容易である。一般的に、多くの最新式MALDI装置で検出可能な信号を発生させるには、1〜100fmolのタンパク質が必要である。
ESIとは異なり、MALDIにおけるイオン化効率が小さいことは一般的に認識されている。このことに対する一つの議論は、多数のイオン化部位を潜在的に有する検体から、強く帯電した種が多く発生しないことである。例えば、正イオンモードでは、多くの塩基性残留物(すなわち,Arg,Lys及びHis)が存在したとしても、タンパク質はイオン化して+1または+2の電荷のみを有する種を発生する。レビス(Levis,R.J.,Annu.Rev.Phys.Chem.,45:483〜518(1994))は、イオン化レーザーによりターゲットから放出される全ての材料を収集及び分析することによって、MALDIのイオン化効率が非常に低くかつ多量の中性材料がMALDI表面から融除されることを明確に実証した。このような主張は、ブルーン(Brune)らの結果(Brune,D.C.ら,後にアメリカ質量分析学会の年次会議(イリノイ州シカゴ、2001年5月27〜30日)で提案)によっても支持される。彼らは、マトリクス分子の気相塩基度に基づいて負イオンMALDIマトリクスの最適化について報告した。彼らは、気相プロトン輸送の議論を導出し、MALDIではマトリクスの塩基性が強いと検体の効率が高くなる理由を説明した。従って、このイオン化の問題のために提案されたイオンガンの解決法(後述)を、ESI技術及びMALDI技術の両方に適用できると我々は期待している。
本発明の最も重要な利点は、有機物分子のMS検出効率を、直交型MS検出器の場合には少なくとも10zmolレベル(0.1%)にまで改善し、軸方向型MS検出器の場合にはymolレベル(10%)にまで改善することである。この増加は、既存のESI及びMALDIのMS検出効率よりも5桁増大することを示している。質量分析法が発明されてから、多くの研究者がMS性能をより改善するために努めてしてきた。このような努力の殆どは、質量分析装置内部における検出素子へのイオン輸送の改善に焦点をあてたものであった。しかし、我々は、従来の考えとは逆に、低いイオン化効率(質量分析装置内部のイオンの最終結果ではなく)が、質量分析装置の低い検出効率の根本的な原因であることの有力な実験的証拠を提供する。我々は、この証拠及びこれを支持しているモデルの重要性に基づいて、イオン化を促進するのに有用な不平衡電荷を増大させるためにイオンガンを使用することを提案する。このような取り組みは、この分野での技術的な飛躍的進歩である。
MS検出効率における5桁のギャップを埋めるために、有機物分子のイオン化を改善するための革新的で斬新な方法が必要であることは明らかである。我々の基本的な技術的取り組み方は、対象となるサンプルにプロトンを追加する(正イオンモードで)かまたはこのサンプルからプロトンを除去する(負イオンモードで)ことによって、不平衡電荷を付加的に発生させるものである。プロトンイオンビームを用いて正に帯電したイオンを発生させるか、電子ビームまたは陰イオンビームを用いて負に帯電したイオンを発生させることによって、このことを達成することができる。ESIの場合は、脱溶媒和中にこれらのイオンを液滴に導入することができる。MALDIの場合は、イオンビームまたは電子ビームを脱離用レーザーと平行して使用することによって、これらのイオンまたは電子を固体のサンプルマトリクスに直接に導入することができる。
イオンビームには、有機物分子のMS検出効率を大幅に増大することができるのみならず、他の利点もある。エレクトロスプレーの印加電位と組み合わせてイオンビームまたは電子ビームを用いる代わりに、スプレーの電位の助けを利用せずにイオンビームまたは電子ビームを直に検体にあてることによりイオン化を好適に行うことができる。スプレー電位を利用しないことによって、通常のエレクトロスプレーに優る少なくとも2つの利点が得られる。つまり、(1)通常、ESIに伴いサンプルを劣化させ得る(例えば、ジスルフィド結合を減少させたり、pHの変化により特殊な非共有結合複合体を分離させ得る)酸化還元の化学的現象を回避することができるとともに、さらに(2)「イオンオンデマンド」を提供することが可能であり、これによって、FT型,TOF型及びイオントラップ型の質量分析装置のようなマルチチャンネル型検出装置における検出とイオン生成とを同期させて、サンプルの消費を大幅に減少させることができる。エレクトロスプレーイオン化ではサンプルが連続的に消費されるが、サンプルを最適に利用する(すなわち負荷サイクルを100%にする)ためには、TOF型の場合にはイオンのパルスが必要であり、FT型及びイオントラップ型装置の場合にはイオンのパルスが理想的である。イオンを集中させる方法を利用できるが、これらの方法のいずれによっても100%の効率を得ることができない。「イオンオンデマンド」のパルスの発生源は、プロトンビームを用いてキャピラリ端部で溶液を直に帯電させ、得られた帯電した微細液滴をインターフェースを介して質量分析装置に導入することにより達成できる。単一の微細液滴から生成されたイオンの全てから質量スペクトルが得られる。代替的な方法としては、圧電性微細液滴生成装置を用いて必要に応じて微細液滴を生成し、これらの微細液滴をインターフェースを介して導入し、イオンビームによって各液滴を帯電させるものがある。同様な方法によって、大気中から実時間でサンプリングされる単一種類の粒子(バクテリアやウイルス等)を直接かつ迅速に検出することも可能である。実時間の単一種類の粒子の分析は、微小な分子の基本的かつ有限の分子情報を提供するレーザー融除TOF MSを用いて行われてきた(Morrical,B.D.et al.,J.Am.Soc.Mass Spectrom.,9:1068〜1073(1998))。十分なエネルギーを有するイオンビームによって、タンパク質やバクテリアやウイルス内のバイオマーカーを分裂させて直接にイオン化することが可能である。時間を要する蓄積方法やサンプル前処理方法を要することなく、各粒子から得られるイオンスペクトルから、これらのタイプのサンプルに特有のフィンガープリントが得られる。
MALDIでは、提案されたイオンビームまたは電子ビームによってサンプルを直接に融除(ablate)してイオン化することができ、レーザー及びマトリクスの必要性がなくなる。これによって、サンプルの準備が簡単になる。すなわち、イオンビームにより帯電させると強い電界を生じる鋭利な隆起部または方向付けられた微小ワイヤを有する表面で、サンプルを直に乾燥させることができる。これによって、光子を吸収するマトリクスの必要性及びこれに伴うマトリクスの不純物ピークが取り除かれる。このようなマトリクスや不純物ピークは、より低いm/z範囲での通常のMALDI分析を制限するものである。
このような実験に基づく新たな証拠及び理論上の議論は、イオン化効率がMS感度を制限する要因であることを明らかに示唆している。従って、MSの低い検出効率は主にイオン化が不十分なことに起因しているため、過剰な不平衡電荷を添加することにより、検出効率を大幅に向上することができる。しかし、絶縁破壊による制限があるため、ESI及びMALDIのいずれにおいても電界強度を増大させることによっては、このことは達成できない。本発明では、イオンガンを用いて不平衡電荷を添加することによって、このような制限を解消する。プロトンガンを用いることによって、正イオンモードでの電荷を増大させる。同様に、2次的な分裂を起こすのに必要なエネルギーを下回るエネルギーを有する低エネルギーの電子ビームまたは陰イオンガンを用いて、負イオンモードでの残留プロトンを除去する。
高速原子衝撃法(FAB)は、通常は固体表面分析(例えば、金属及び金属酸化物)(Mathieu,H.J.及びD.Leonard,high Temp Mater and Processes,17:29〜44(1998))及び原子レベル表面洗浄(Mahoney,J.F.、米国特許第5796111号(1998年8月18日),Mahoney,J.F.、米国特許第6033484号(2000年3月7日))に伴うイオン化技術であり、液体マトリクスから有機物をイオン化するのに利用されてきた(Cornett D.S.,T.D.Lee and J.F.Mahoney,Rapid Commun Mass Spectrom 8:996〜1000(1994);Mahoney J.F.,D.S.Cornett and T.D.Lee,Rapid Commun Mass Spectrom 1998:403〜406(1994);Mahoney J.F.ら,Rapid Commun Mass Spectrom,5:441〜445(1991))。一般的なFAB源は、CsまたはLiを含む。これらのイオンは、電界または磁界によって真空中のある面へと加速され、この面の一部を除去またはスパッタリングするのに十分な運動量を有しながらこの面に衝突し、その衝突面から中性原子及びイオンを放出させる。FABは、多くの場合、2次中性粒子質量分析(SNMS)法の初期スパッタリング源として利用される(Mathieu,H.J.及びD.Leonard,High Temp Mater and Processes,17:29〜44(1998))。これは、ペプチドのイオン化効率を向上するために利用されてきたが、高レベルの分裂をもたらし、これは、誘導体化により部分的にのみ制御することができる(Wagner,D.S.ら,Biol.Mass Spectrom.,20:419〜425(1991))。
固体表面を融除するために運動量が大きいイオンが必要であるが、ESI法またはMALDI法によりある面から既に放出されたイオンクラスタや微細液滴に不均衡正電荷を添加するには、運動量が小さいイオン(例えばプロトン)が適している。スミスらは以下のことを明らかにした。ESIにより生じた微細液滴を、コロナ放電(Ebeling,D.D.ら,Anal.Chem.,72:5158〜5161(2000))またはα粒子源(例えば、241[Am]または216[Po])から発生したイオンのバスガス(bath gas)(Scalf,M.,M.S.Westphall,and L.M.Smith,Anal.Chem.,72:52〜60(2000))に通すと、タンパク質及びDNAにおける複数の荷電状態の数が減少する。このような場合、バスイオン(bath ion)はイオンクラスタを透過して、タンパク質におけるイオン化された残留物からの不平衡プロトン及び電子を中性化または分離する。誘電結合プラズマMS(ICP−MS)もまた、高感度の元素分析に利用されるが、通常は金属分析に限定される(Dambovari,J.,J.S.Becker and H.J.Dietze,Fresenius J Anal Chem,367:407〜413(2000))。しかし、これらのどの場合にも、微細液滴が通過するイオンバスが、自由電子のみならず正イオン及び負イオンの両方を含むため、電荷の減少のメカニズムが不明確である。さらに、検出効率の効果については報告されなかった。
低エネルギーのプロトンビームによりイオン化効率を向上できることの証拠は、MSで電子ビームを用いることからも得られる。電子ビーム(20〜1000eVの範囲)は、MSにおいて中性の非有機物気体(例えば、CO及びNO)をイオン化するために以前から用いられてきた(Adamczyk B,K.Bederski,and L.Wojcik,Biomed Environ Mass Spectrom,16:415〜7(1988))。このような高エネルギーの電子は、非有機物気体から多数の正イオンを発生させ、気相の有機物分子を分裂させるのに十分なエネルギーを有する(Biggs J.T.et al.,J Pharm Sci 65:261−8(1976))。しかし、低エネルギーの電子ビーム(例えば0.025〜30eV)(Laramee J.A.,C.A.Kocher,and M.L.Deinzer,Anal.Chem.,64:2316〜2322(1922))や、高エネルギー電子ビームイオン化MSと組み合わせて利用される衝突安定化技術(Berkout VD,P.H.Mazurkiewic,and M.L.Deinzer,Rapid Commun Mass Spectrom.13:1850〜4(1999))が、電子捕獲型負イオン質量分析法において負の有機物イオンの生成を促進するために利用されてきた。
電子ビームによる経験と同様に、高エネルギーのMeV〜GeVのプロトンビームが、外科的用途のためのエキシマレーザー及びX線に代わるものとして利用されており(Harsh G,J.S.et al.,Neurosurg Clin N Am.,10:243〜56(1999))、Hug EB and J.D.Slater Neurosurg Clin N Am;11:627〜38(2000)、Krisch E.B.and C.D.Koprowski,Semin Urol Oncol;18::214〜25(2000))、さらに、高速原子表面洗浄技術に代わるものとしても利用されている。これらのプロトンは我々の目的にはエネルギーが大きすぎるが、これらの利用法は、融除レーザーまたはエレクトロスプレー技術と組み合わせずに、イオンビームをイオン化メカニズム(イオンオンデマンド)として直に利用できるという主張を支持する。50eVのプロトン(日本電気株式会社(NEC))は水中を約1μmの深さまで透過し、5eVのプロトンは0.15μmの深さまで透過することを発見した。Cの第1イオン化電位は11eVより大きいため、5〜10eVのプロトンは、有機物分子から電子を分離しないが、不平衡プロトンをESI微細液滴またはイオンクラスタに添加するよう機能する。このようなプロトンは、塩または微細液滴に存在するいかなる陰イオンをも中性化して有機物のイオン化を促進するよう機能する。
NECのプロトンビームでは、バスガスの衝突によるイオンの損失に起因して、100torr未満でのみ十分なイオン電流が得られる。このことは、既に低圧で実行されているMALDIにとっては問題ではなく、我々は既に、低圧ESIヘッド(図4)を実証している。
残されている考察すべき事項は、利用可能な時間内に十分な数のプロトンが確実にイオンクラスタまたは微細液滴に移送されるようにするのに必要なプロトン流束である。このような流束は、単位面積当たりのイオン電流である。一般的なマイクロ/ナノスプレーESIシステム(1%酢酸溶液が1.0μl/分以下)の流れの動力学の分析から、最大で260μAの不平衡プロトン電流が必要となることが示される。このようなイオン電流を受け入れるMS検出器のノズル開口部の径は、約0.025cmである。スプレー先端は、ノズルから0(ノズル内で中心付けられる)〜0.6cmの距離だけ離間して配置して、イオン電流のための断面積を最大の0.15cmとし、従って約17mA/cmのイオン流束が必要となる。しかし、マトリクスのpHでは、酢酸はほとんどイオン化されないため、必要なプロトン流束は実質的に17mA/cmを下回る。スプレー先端へのサンプル移送速度を0.1μl/分まで低下させることによって、このような要求量を1.7mA/cmまでさらに削減できる。NECのソースによれば、約0.01cmのビーム寸法断面積内で10μAのプロトン電流を移送して、約1mA/cmのプロトン流束を提供する。この約1mA/cmのプロトン流束の値は、理論上の最小要求量に近い。他の構成として、ターゲットまたはスプレー先端から質量分析装置内を通るイオン流の軸線に沿ってイオンビームを噴射するものがある。これは、イオンガンから放出されたイオンが検出器にわたってソースイオン流と対向するように、イオンガンを質量分析装置内でイオンビームの終端部に配置することを意味する。他の好適な構成としては、スプレー先端つまりターゲットを質量分析装置内部でのイオン流方向からずらし、イオンガンからのイオンビームを、通常のサンプルイオン経路と同軸方向及び同方向にあてるものである。
低エネルギーのプロトンビームによる方法は、容易にイオン化して正イオンを生成する窒素、酸素及び硫黄のヘテロ原子を含む有機化合物にのみ適している。外側の分子軌道から電子を分離することによっては有機物分子が分裂またはイオン化されない場合、弱い塩基性のヘテロ原子のプロトネーション、分子構造に含まれる弱い酸性のヘテロ原子のデプロトネーションによりイオンを発生させなければならない。好都合なことに、大部分の生物活性化合物は、そのようなヘテロ原子を含むため、この方法を広く適用することができる。
MALDIの複雑な問題は、イオン化マトリクスとイオンビームとの相互作用である。MALDIマトリクス(表2)は、イオン化のためのレーザーとの相互作用を最大化するとともに対象となる検体へと電荷を移送する能力を得るために、何年にもわたって最適化されてきた。
負イオンモード(多くの場合、リン酸化(核酸及びリン酸化タンパク質)、スルホン化、及びカルボキシル化された(脂肪酸)有機物種の検査に用いられる)での検出効率は、正イオンモードでみられる検出効率よりも低いことが一般的に判明している。我々は、マトリクス内の過剰なプロトンまたはイオン化されていないプロトンドナーが問題であると考えている。負イオンモードでは様々なプロトンドナーが利用可能なプロトンを引き離すよう競合することは想像できる。従って、陰イオンビーム、または低エネルギーの電子ビームでさえも、過剰なプロトンを除去して、負に帯電した種のイオン化効率を改善するよう機能し得ることを期待することが妥当である。
上述したように、電子ビーム(Eビーム)は、プロトンを提供する部位及び受け入れる部位が少ない有機物分子(例えば、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素)のイオン化を促進するために利用されてきた。これらの用途において、高エネルギーのEビームが、検体を含む中性気体流にあてられる。高エネルギーの電子と検体との衝突によって、付加的な低エネルギーの電子またはプロトンラジカルが検体から引き離され、ラジカルイオンが生じる。得られたラジカルイオンまたはこれらの再結合物は、移送されて、質量分析装置により検出される。不安定な酸性プロトンが通常存在する生体分子の感度を向上させるためには、高エネルギーのEビームは理想的ではない。一般的な分裂及び化学的反応の懸念があるためである。このような場合、低エネルギーのEビームを使用すると、より不安定な酸性プロトンが除去され(これによって水素ラジカルまたは水素ガスが生成)、これによって、通常のESI及びMALDIに特有の「穏やかな」イオン化を維持することができる。Eビームを検討することの最も重要な利点は、0〜100keVの調整可能なエネルギーを有する廉価なEビームが商業的に入手可能なことである(Kimball Physics,Wilton,NH)。
この代替例として、特有のエネルギーを有する様々な原子または分子の陰イオンビームを発生させることができる。例えば、ミッチェル(Mitchell)らは、様々なエネルギーのメチド(CH )ビームの発生について記載している(Mitchell,S.E.ら、後にアメリカ物理学会のDAMOPミーティング(ニューメキシコ州サンタフェ,1998年5月27〜30日)で提案)。前駆物質としてメタンを用いた場合、得られるメチドビームは非常に弱いものとなるが、前駆物質としてジアゾメタンを用いることにより強度のビームを発生させることができる。しかし、いかなるエネルギーのメチド陰イオンも、例示的な酸性タンパク質及び核酸残留物と比較して非常に強い気相プロトン親和性を有することに基づくと、生体分子の感度向上に最も適さないと思われる(表3)。メチドイオンビームは最も無差別にプロトンを除去し、分裂や望ましくない副作用(β脱離)をもたらすと思われる。気相の親和性が低い陰イオンを選択することが妥当である。例えば、NH は、そのプロトン親和性が水(過剰なプロトンの発生源であると考えられている)よりも高くかつメチド(脂肪族炭化水素を分離しないことを示唆する)よりも低いことから、より適した選択である(表3)。従って、NH ビームは、水による検体の脱プロトン化を発生させずに、検体を適切に脱プロトン化及びイオン化するものと期待される。NH ビームは、アンモニアプラズマから容易に発生すべきである。気相プロトン親和性は、MALDIのための判断基準として最も有用であると思われるが、ESIのための陰イオンビームを選択するための判断基準としては、液相の塩基度がより適している。そのイオン化のメカニズムが液相と気相との間の化学作用によるためである。MALDIの感度向上のための陰イオンビームの選択の議論としては、プロトン親和性がフォスフォジエステル(1360kJ/mol)及びカルボキシラート(1429kJ/mol)より高くかつ他の側鎖部位(例えば脂肪族アルコール(1569kJ/mol))よりも低い陰イオンを選択することによって、核酸及びタンパク質のイオン化のための「ソフトな」負イオンモードイオン化が可能なことである。可能性のある候補として、プロトン親和性が1525kJ/molであるHSiがあげられる。HSiは、SiHプラズマから得ることが可能であり、あるいは適切なSi面からスパッタリングする際の質量選択(mass−selection)によって容易に得ることが可能である。
Figure 0004754831
Figure 0004754831
ESIでは、微細液滴がスプレー先端から離れた後でかつ脱溶媒和が起こる前にイオンを微細液滴に導入し、このとき塩クラスタの生成の前に溶媒によるイオン対の分離が電荷分離を促進するため、最も成功する可能性が高い。図4に示されたものと同様な低圧ESIマイクロスプレーヘッドを、既製のTOF分析装置に用いることが可能である。スプレーチャンバを延長してイオンビームまたはレーザーをスプレー方向に垂直に導入できるように、ヘッドの設計を変更することが可能である。さらに、別個のポートを更に設けて、マイクロメータリングバルブにより気体を制御して添加することによって、スプレーチャンバの圧力制御を維持することが可能である。同様な検査システムに最小の変更を加えて、ESIを含む以下の機能を得ることができる。
正イオンモードMSのためには、低エネルギー(5〜50eV)のプロトンビーム(NEC)が最も論理的な初期選択肢であると我々は考えている。融除レーザーと平行してイオンガンを受けることができるように、低圧MALDIイオン化ヘッドを改善することが可能である。同じNECプロトンビームを用いてサンプルのイオン化が最大となるように、レーザー及びイオンガンの配置を最適化する。このようなテストベッドのためのUVレーザーではなく、熱脱離システム(すなわち赤外線レーザー)を用いて、UVにより誘起される分裂やエネルギーの大きいプロトンとの再結合による、混乱を生じ得る作用を最小にすることができる。
Figure 0004754831
最適な電子ビームは、pKaがはるかに大きいプロトンを取り除いたり望ましくない副作用(例えば、脱離や再配列)をもたらすことなく、検体の不安定なプロトン(例えば、カルボキシレートプロトン)を中性化するのに十分なエネルギーを有する。または、陰イオン「プロトン捕捉」ビーム。好適な陰イオンは、有機物検体との副作用を広範囲で引き起こさずに検体における不安定なプロトンを除去するのに十分な気相塩基度を有する。
ESIまたはMALDIのどちらの用途においても得られる感度の向上とは独立して、イオンビームによって、イオンオンデマンドを提供できる可能性がある。このような用途における成功の鍵は、十分な電荷を十分に絶縁された面に添加して、電荷の斥力によりこの面から分子を駆動する能力である(すなわち、レイリー限界に到達させる)。上述したように、このような方法によって、エレクトロスプレーイオン化でみられるような電気化学的な複雑な問題やMALDIの用途でみられるような光化学的な複雑な問題を取り除くことができる可能性がある。従って、イオンビームを、従来のESI法及びMALDI法の付属物としてではなく、イオン化方法として単独に利用することができる。
イオン化は電荷の斥力に依存するため、MALDI表面が電気的に絶縁しなければならない。ポリマーの表面がイオン化して、得られるスペクトルに現れる可能性がある。絶縁バッキングのみならず、ケイ酸塩及びアルミン酸塩のセラミックを、金属(金及びステンレス鋼)のターゲットと置き換えることが可能である。さらに、MALDI面を、非平面的形状とすることも可能であり、例えば、スパイク面の先端でイオン化が最大となる電界脱離イオン化法で必要とされるような形状とすることが可能である。
エアロゾル化システムに代えて、細菌またはウイルスの試験システムのサンプルをそのままMALDIターゲットに堆積し、ターゲットからイオン化することによって、各種から固有のフィンガープリントを得ることも可能である。
ESI−TOS−MSのイオン損失(青色で示す)の可能性のある発生源。 ESI−TOSによる、様々なPEOポリマーに対する検出効率。 体積分率の関数としのPEOモノマー検出効率。 低圧ヘッドの実験用構成。 テイラーコーンの先端における微細液滴生成及びその中身の概略図。

Claims (15)

  1. 質量分析法のためのイオン化方法であって、
    溶媒及び検体を含むエレクトロスプレー微細液滴をエレクトロスプレーイオン化質量分析計のエレクトロスプレーノズルから供給することと
    前記エレクトロスプレー微細液滴を、エネルギーが5〜10電子ボルトのプロトンビームに暴露しこのエレクトロスプレー微細液滴不平衡電荷を添加することと
    を含む方法。
  2. 質量分析法のためのイオン化方法であって、
    検体を含む固体サンプルマトリクスに、エネルギーが5〜10電子ボルトのイオンビームをあてて、この検体及びサンプルマトリクスに不平衡電荷を添加することと
    脱離レーザーにより帯電した検体を脱着させることと
    を含む方法。
  3. 質量分析法のためのイオン化方法であって、
    検体を含む液体または固体のサンプルマトリクスに、エネルギーが5〜10電子ボルトのイオンビームをあてて、前記検体をイオン化して不平衡電荷をこれに添加することを含む方法。
  4. イオン検出器のデューティサイクルに同期するように、質量分析装置のインターフェースを介して帯電した検体をあてることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
  5. 前記検体が、サンプル表面におけるそれぞれ別個の頂点に堆積される、請求項3又は4に記載の方法。
  6. 前記サンプルが、バクテリア、ウイルスまたは細胞である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記イオンビームがプロトンから成り、これによって、検体がプロトン化される、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記イオンビームが陰イオンまたは電子から成り、これによって、検体が脱プロトン化される、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記微細液滴が、集束用四重極に直接導入される、請求項1に記載の方法。
  10. 前記検体が、窒素、酸素または硫黄のヘテロ原子を有する有機化合物を含む、請求項7に記載の方法。
  11. 前記イオンビームの流束が1mA/cm〜17mA/cmである、請求項2〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記エレクトロスプレーの流量が0.025μL/分〜0.5μL/分である、請求項1に記載の方法。
  13. 前記イオンビームが正イオンを含み、該正イオンが、プロトン、リチウムイオンまたはセシウムイオンを含む、請求項2〜8及び10のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記陰イオンが、NH 、またはHSiを含む、請求項8に記載の方法。
  15. 前記サンプルマトリクスが、α−シアノ−ヒドロキシケイ皮酸、シナピン酸、2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸、コハク酸、2,6−ジヒドロキシアセトフェノン、フェルラ酸、カフェー酸、2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン、3−ヒドロキシピコリン酸、アントラニル酸、サリチルアミド、ニコチン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、イソバニリン、3−アミノキノリン、1−イソキノリロール、2,5,6−トリヒドロキシアセトフェノン、又はジトラノールを含む、請求項2に記載の方法。
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