この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、この発明の実施の形態に従う車両100の概略構成図である。
図1を参照して、この発明の実施の形態に従う車両100は、一例として、エンジンENG、ならびにモータジェネレータMG1およびMG2を備えるハイブリッド自動車である。そして、車両100は、エンジンENGと、動力分割機構6と、減速機18と、駆動輪20と、従動輪22と、パワーコントロールユニットPCU(Power Control Unit)と、電源部PSと、制御部ECU(Electrical Control Unit)と、モータジェネレータMG1,MG2とを含む。
エンジンENGは、燃料と空気との混合気を燃焼させてクランクシャフト(図示せず)を回転させ、駆動力を発生する。エンジンENGが発生した駆動力は、動力分割機構6により、2経路に分割される。一方は、減速機18を介して駆動輪20を駆動させる経路である。他方は、モータジェネレータMG1を駆動して発電させる経路である。
モータジェネレータMG1およびMG2は、一例として、永久磁石形の三相交流同期回転電機である。すなわち、モータジェネレータMG1およびMG2の各々は、ステータに設けられたコイルに駆動電流が流されることで生じる電流磁界(回転磁界)によって、永久磁石を有するロータを回転させるように構成される。
なお、モータジェネレータMG1およびMG2は、いずれも電動機(モータ)および発電機(ジェネレータ)として機能することが可能であるが、この発明の実施の形態に従う車両100においては、主としてモータジェネレータMG1が発電機として機能し、モータジェネレータMG2が電動機として機能する。すなわち、モータジェネレータMG1は、動力分割機構6により分割されたエンジンENGの駆動力を受けて発電可能に構成される。また、モータジェネレータMG2は、エンジンENGおよび動力分割機構6と同一の回転軸上に配置され、エンジンENGおよび駆動輪20との相互間で駆動力を授受可能に構成される。
さらに、モータジェネレータMG1には、ステータ温度検出部8および回転角検出部10が配置される。ステータ温度検出部8は、モータジェネレータMG1のステータ温度Ts1を検出し、その検出したステータ温度Ts1を制御部ECUへ出力する。また、モータジェネレータMG1の回転軸に連結される回転角検出部10は、ロータの回転位置に基づいて回転角θ1を検出し、その検出した回転角θ1を制御部ECUへ出力する。
同様に、モータジェネレータMG2には、ステータ温度検出部12および回転角検出部14が配置される。ステータ温度検出部12は、モータジェネレータMG2のステータ温度Ts2を検出し、その検出したステータ温度Ts2を制御部ECUへ出力する。また、モータジェネレータMG2の回転軸に連結される回転角検出部14は、ロータの回転位置に基づいて回転角θ2を検出し、その検出した回転角θ2を制御部ECUへ出力する。
なお、回転角検出部10および14は、それぞれモータジェネレータMG1およびMG2のロータの機械的な回転角を検出した後、当該機械的な回転角を電気角に変換して出力するものとする。また、以下の説明においては、回転角θ1およびθ2はいずれも対応のロータの電気角として取扱う。
パワーコントロールユニットPCUは、それぞれモータジェネレータMG1およびMG2、ならびに電源部PSと電気的に接続され、制御部ECUからの指令に応じて相互間で電力授受および電力変換を行なう。具体的には、パワーコントロールユニットPCUは、直流コンバータCONVと、インバータINV1およびINV2とを含む。直流コンバータCONVは、電源部PSから供給される直流電力を所定の電圧に変換してインバータINV1およびINV2へ供給可能であるとともに、インバータINV1またはINV2から回生される直流電力を所定の電圧に変換して電源部PSへ供給可能である。インバータINV1およびINV2は、直流コンバータCONVを介して、電源部PSから供給される電力により駆動電流を生成して、それぞれモータジェネレータMG1およびMG2へ与える。なお、駆動電流の電圧および位相を調整することで、それぞれモータジェネレータMG1およびMG2を電動機として作動させ、もしくは発電機として作動させることが可能である。
電源部PSは、充放電可能に構成された蓄電装置を含んで構成される。そして、電源部PSは、制御部ECUから与えられる作動開始指令に応答して、パワーコントロールユニットPCUへの電力供給を開始し、また、制御部ECUから与えられる作動停止指令も応答して、パワーコントロールユニットPCUへの電力供給を停止する。
制御部ECUは、予め格納されたプログラムを実行することで、図示しない各センサから送信された信号、走行状況、アクセル開度の変化率、蓄電装置のSOC、格納しているマップなどに基づいて演算処理を行なう。これにより、制御部ECUは、運転者の操作に応じて、車両100が所望の運転状態となるように、搭載された回路・機器類を制御する。
また、制御部ECUは、運転者の操作により与えられるイグニッションオン信号(以下、IGON信号とも称す)、およびイグニッションオフ信号(以下、IGOFF信号とも称す)を受入可能に構成される。そして、制御部ECUは、運転者の操作によりIGON信号が与えられると、車両100を始動させるための処理を実行する。このような処理の一部として、制御部ECUは、モータジェネレータMG1およびMG2のロータにおける永久磁石の温度を取得し、当該取得したそれぞれの永久磁石の温度と予め定められたしきい温度とを比較する。いずれかの永久磁石の温度が予め定められたしきい温度を下回っていれば、しきい温度を下回っている永久磁石を昇温するために、制御部ECUは、対応のインバータを制御して、当該永久磁石でジュール熱を生じるような昇温用の駆動電流を供給する。
なお、モータジェネレータのロータは回転可能に構成されるので、センサなどを用いてロータに設けられる永久磁石の温度を直接的に検出しようとすると、回転するロータと静止しているステータ側との間のセンサ配線を回転ジョイントなどによって構成する必要がある。そのため、モータジェネレータの構造が複雑化してしまう。そこで、この発明の実施の形態においては、後述するように、モータジェネレータMG1およびMG2のステータ温度Ts1およびTs2、ならびに外気温検出部4によって検出された車両外部の外気温Toutなどに基づいて、永久磁石の温度Tm1およびTm2を推定する。
さらに、制御部ECUは、ロータの磁束方向を基準とする回転座標系(d−q座標系)を導入して、インバータINV1およびINV2に対して、いわゆるベクトル制御を実行する。具体的には、ロータに設けられる永久磁石の磁束方向と平行方向が直軸(以下、d軸とも称す)に規定され、永久磁石の磁束方向と直交方向が横軸(以下、q軸とも称す)に規定される。すなわち、回転座標系は、回転運動するロータから見た磁束方向を基準とするものである。
そして、直軸方向の電流磁界成分をロータに印加するための直軸電流目標値、および横軸方向の電流磁界成分をロータに印加するための横軸電流目標値に従って、それぞれインバータを制御するための制御指令が生成される。なお、直軸方向の電流磁界成分は、ロータの磁束を増減させる作用を奏する一方、横軸方向の電流磁界成分は、ロータに駆動トルクを生じさせる作用を奏する。
特に、この発明の実施の形態においては、ロータに印加される直軸方向の電流磁界成分を時間的に変化させることで、永久磁石内部にジュール熱を発生させるとともに、横軸方向の電流磁界成分をゼロ値に固定することで、モータジェネレータMG1およびMG2での駆動トルクの発生をゼロにして車両100を停止状態に維持する。
すなわち、ロータには、その回転位置および回転速度にかかわらず、直軸方向の電流磁界成分が鎖交する。そのため、直軸方向の電流磁界成分を時間的に変化させることで、永久磁石自体に渦電流損によるジュール熱を発生させることができる。これにより、永久磁石をより効率的に昇温できる。
図2は、この発明の実施の形態に従う車両100の要部を示すより詳細な概略構成図である。
図2を参照して、電源部PSは、正線PLおよび負線SLを介して、パワーコントロールユニットPCUと電気的に接続される。また、電源部PSは、蓄電装置BATと、システムリレーSR1およびSR2とを含む。
蓄電装置BATは、一例として、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池、もしくは電気二重層キャパシタなどの蓄電素子で構成される。
システムリレーSR1およびSR2は、それぞれ正線PLおよび負線SLと蓄電装置BATとの間に介装される。そして、システムリレーSR1およびSR2は、制御部ECUから与えられるシステム信号SEに応じて、蓄電装置BATとパワーコントロールユニットPCUとを電気的に接続または遮断する。
パワーコントロールユニットPCUは、直流コンバータCONVと、インバータINV1およびINV2と、主正線MPLと、主負線MSLと、コンデンサCとを含む。
直流コンバータCONVは、正線PLおよび負線SLと主正線MPLおよび主負線MSLとの間に介装され、正線PLと負線SLとの線間に現れる直流電圧と、主正線MPLと主負線MSLとの線間に現れる直流電圧とを相互に電圧変換する。一例として、直流コンバータCONVは、昇降圧チョッパで構成され、制御部ECUからのスイッチング指令PWCに応じて、昇圧動作および降圧動作を切換える。
インバータINV1およびINV2は、主正線MPLおよび主負線MSLを介して、直流コンバータCONVに並列接続される。一例として、インバータINV1およびINV2は、格子状に配置されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子で構成される。そして、インバータINV1は、制御部ECUからのスイッチング指令PWM1に応じて、モータジェネレータMG1に供給する駆動電流を生成する。同様に、インバータINV2は、制御部ECUからのスイッチング指令PWM2に応じて、モータジェネレータMG2に供給する駆動電流を生成する。
コンデンサCは、主正線MPLと主負線MSLとの線間に接続され、その線間に現れる直流電圧を安定化する。
インバータINV1からモータジェネレータMG1への駆動電流の供給線には、電流検出部9が設けられる。電流検出部9は、モータジェネレータMG1へ供給される駆動電流I1u,I1v,I1wを検出し、その検出値を制御部ECUへ出力する。また、インバータINV2からモータジェネレータMG2への駆動電流の供給線には、電流検出部11が設けられる。電流検出部11は、モータジェネレータMG2へ供給される駆動電流I2u,I2v,I2wを検出し、その検出値を制御部ECUへ出力する。
上述したように、ステータ温度検出部8および回転角検出部10は、それぞれモータジェネレータMG1のロータの回転角θ1およびステータ温度Ts1を検出し、それぞれ検出値を制御部ECUへ出力する。また、ステータ温度検出部12および回転角検出部14は、それぞれモータジェネレータMG2のロータの回転角θ2およびステータ温度Ts2を検出し、それぞれの検出値を制御部ECUへ出力する。さらに、外気温検出部4は、車両外部の外気温Toutを検出し、その検出値を制御部ECUへ出力する。
制御部ECUは、運転者の操作によりIGON信号が与えられると、システム信号SEを活性化し、電源部PSからの電力供給を開始する。また、制御部ECUは、運転者の操作によりIGOFF信号が与えられると、システム信号SEを非活性化して、電源部PSからの電力供給を停止する。
この発明の実施の形態に従う車両100においては、モータジェネレータMG1およびMG2のいずれに対しても、本発明に係る昇温処理が同様に実行される。そのため、以下の説明では、モータジェネレータMG1およびMG2を区別することなく、その詳細な内容について記載する。
そのため、以下では、モータジェネレータMG1およびMG2を総称して「モータジェネレータMG」とも示し、インバータINV1およびINV2を総称して「インバータINV」とも示す。また、以下では、モータジェネレータMG1およびMG2を区別しない場合には、「駆動電流Iu,Iv,Iw」、「回転角θ」、「ステータ温度Ts」、「永久磁石の温度Tm」、「スイッチング指令PWM」などのように添え字を省略して記載する場合もある。
(永久磁石の昇温処理)
図3は、モータジェネレータMGが発生する逆起電圧とインバータINVを構成するスイッチング素子の耐電圧との関係を示す特性図である。なお、モータジェネレータMGが発生する逆起電圧は、モータジェネレータMGが所定の規定値で回転した場合において、モータジェネレータMGの中性点に対する電圧値である。
図3(a)は、従来の車両における関係を示す。
図3(b)は、本発明に係る車両における関係を示す。
図3(a)を参照して、想定されるモータジェネレータMGの温度範囲、すなわち使用下限値(たとえば、−50℃)から使用上限値(たとえば、130℃)の範囲において、モータジェネレータMGの回転によって生じる逆起電圧は、低温になるにつれて上昇する。一方、インバータINVを構成するスイッチング素子の耐電圧特性は、低温になるにつれて低下する。
そのため、従来の車両では、使用下限値において、スイッチング素子の耐電圧がモータジェネレータMGの回転によって生じる逆起電圧Va以上となるように設計される。なお、より現実的には、耐電圧が所定の余裕量をもつように設計される。
このような設計の結果、たとえば使用上限値におけるスイッチング素子の耐電圧は、モータジェネレータMGの回転によって生じる逆起電圧より大幅に高くなり、過剰な余裕量が存在することになる。このような過剰な余裕量は、設計上のムダであり、設計自由度を制約するという問題があった。
一方、図3(b)を参照して、この発明の実施の形態では、IGON信号が与えられたときに、ロータの永久磁石の温度が予め定められたしきい温度(永久磁石使用下限値に相当)を下回っていれば、永久磁石でジュール熱を生じるような昇温用の駆動電流がモータジェネレータMGへ供給される。このような昇温動作は、少なくとも永久磁石の温度が永久磁石使用下限値に到達するまで継続される。
また、このような昇温動作中には、横軸電流目標値がゼロ値に固定されるため、モータジェネレータMGで発生する駆動トルクはゼロ値に制限される。また、エンジンENGから駆動輪20(図1)への駆動力の伝達も遮断される。そのため、車両100は、停止状態に維持され、モータジェネレータMGが回転することはない。
したがって、図3(b)に示す昇温領域(永久磁石使用下限値より温度の低い領域)では、モータジェネレータMGから逆起電圧が発生することはないので、スイッチング素子の耐電圧を考慮する必要がなくなる。したがって、スイッチング素子の耐電圧がモータジェネレータMGの回転によって生じる逆起電圧を超過する領域があっても問題にはならない。
よって、本発明に係る車両では、永久磁石使用下限値より温度の高い領域において、スイッチング素子の耐電圧がモータジェネレータMGの回転によって生じる逆起電圧以上となることを考慮して設計すればよい。この結果、従来の車両に比較して、スイッチング素子に要求される耐電圧を緩和できるとともに、より磁力(磁束密度)の大きな、すなわちより大きな駆動トルクを発生可能な永久磁石を採用することができる。
図4は、ロータに設けられる永久磁石に印加される電流磁界を模式的に示した図である。
図4を参照して、一例として、ロータROTの磁極の各々が2つの永久磁石で構成される場合について説明する。すなわち、ロータROTに埋め込まれた一対の永久磁石32.1が1つの磁極を構成し、別の一対の永久磁石32.2が隣接する磁極を構成する。そして、図4に示すロータでは、一対の永久磁石32.1の発生する磁束は径方向に生じる。この一対の永久磁石32.1が生じる磁束と平行方向に直軸(d軸)方向が規定される。そして、永久磁石32.1の温度が予め定められたしきい温度を下回っていれば、直軸方向に沿って、その強度が時間的に変化する電流磁界30が印加される。一対の永久磁石32.1と一対の永久磁石32.2との間には磁路が形成されるため、電流磁界30によって、隣接する一対の永久磁石32.2にも直軸方向の電流磁界が印加される。そのため、永久磁石32.1,32.2の各々には、電流磁界30による磁束が貫通することになる。
一方、一対の永久磁石32.1が生じる磁束と直交方向に規定される横軸(q軸)方向には、電流磁界は印加されない。
このように、時間的に強度が変化する電流磁界30が印加されることで、永久磁石32.1,32.2の各々の内部には、当該電流磁界30による磁束変化を妨げようとする渦電流が生じ、この渦電流によってジュール熱を生じる。永久磁石32.1,32.2の各々の内部にジュール熱が生じるのは、貫通する磁束が時間的に変化するためであり、従来のように、貫通する磁束が時間的に一定である場合には、渦電流によるジュール熱は発生しない。
なお、電流磁界30は、どのような波形であってもよいが、永久磁石32.1,32.2の材料に応じて、渦電流損失が相対的に大きい周波数成分を含むように生成されることが望ましい。このような周波数は、予め実験的に求めることができる。
一例として、ロータから取り外した状態の永久磁石に対して、さまざまな周波数の電流磁界を印加するとともに、当該電流磁界を生じさせるために要する電力を計測する。電流磁界を生じさせるために要する電力は、永久磁石でジュール熱として消費される電力に相当する。そのため、このように印加される電流磁界の周波数と永久磁石で消費される電力との関係を実験的に求めることで、相対的に永久磁石での消費電力が大きくなるような周波数を見出すことができる。そして、このような永久磁石での消費電力が大きくなるような周波数の正弦波を基準として、電流磁界30の時間波形を生成する。
なお、永久磁石での消費電力が大きくなるような周波数は、複数のピークが存在する場合もある。その場合には、各ピークに相当する複数の周波数の正弦波を加算して、電流磁界30の基準としてもよい。
図5は、ロータの磁束方向を基準とする回転座標系(d−q座標系)と、ステータコイル3.1,3.2,3.3との関係を示す模式図である。なお、図5に示す回転角θは電気角である。
図5を参照して、ステータSTから見ると、直軸(d軸)方向および横軸(q軸)方向は、ロータROTの回転角θに応じて変化することがわかる。すなわち、直軸方向および横軸方向は、ロータROTの磁束方向を基準とするため、ロータROTの回転に伴って、直軸方向および横軸方向も回転することになる。
ステータコイル3.1,3.2,3.3の各々は、ステータST内に所定の位置関係で配置されるため、直軸方向に一定の電流磁界を印加するためには、ロータROTの回転角θに応じて、ステータコイル3.1,3.2,3.3の各々に流すべき駆動電流Iu,Iv,Iwを変化させる必要がある。具体的には、直軸方向の電流磁界を印加するための直軸電流目標値をId*とし、横軸方向の電流磁界を印加するための横軸電流目標値をIq*とすると、駆動電流目標値Iu*,Iv*,Iw*は、(1)式のように表わすことができる。
そして、上述したように、直軸方向の電流磁界を時間的に変化させる一方、横軸方向の電流磁界をゼロ値に維持するためには、直軸電流目標値Id*および横軸電流目標値Iq*は、(2)式のように設定される。
なお、ωkは、永久磁石での渦電流損失が相対的に大きい角周波数である。
(制御構造)
図6は、制御部ECUにおける制御構造の要部を示すブロック図である。
図6を参照して、制御部ECUの制御構造には、磁石温度取得部40と、比較部42と、昇温要求発生部44と、トルク制御部46と、直軸電流目標値決定部48と、横軸電流目標値決定部50と、制御指令生成部52とを含む。
磁石温度取得部40は、IGON信号を受けると、ステータ温度Ts、外気温Toutおよび内部に格納されている値に基づいて、ロータを構成する永久磁石の温度Tmを取得する。そして、磁石温度取得部40は、取得した永久磁石の温度Tmを比較部42へ出力する。なお、磁石温度取得部40において永久磁石の温度Tmを取得するための制御構造は後述する。
比較部42は、磁石温度取得部40から与えられる永久磁石の温度Tmと、予め定められたしきい温度Tthとを比較する。そして、比較部42は、その温度差ΔTを昇温要求発生部44へ出力する。
昇温要求発生部44は、IGON信号を受けたときの永久磁石の温度Tmがしきい温度Tthを下回っていれば、すなわち温度差ΔTが負値であれば、昇温要求を発生する。また、昇温要求発生部44は、温度差ΔTに基づいて、昇温要求を継続すべき時間を決定する。具体的には、昇温要求発生部44は、永久磁石で発生することが予想される単位時間当たりのジュール熱と、永久磁石もしくはロータ全体の熱容量とを考慮して、当該温度差ΔTの温度上昇を実現するために要する時間を算出する。
トルク制御部46は、車両100の走行状況に応じて決定される要求トルクτ*に基づいて、当該要求トルクを発生するための直軸電流目標値(通常時)および横軸電流目標値(通常時)を算出し、それぞれ直軸電流目標値決定部48および横軸電流目標値決定部50へ出力する。
直軸電流目標値決定部48は、選択スイッチで構成され、トルク制御部46から直軸電流目標値(通常時)を与えられるとともに、時間的に変化する直軸電流目標値(一例として、Asinωkt;但し、ωkは永久磁石での渦電流損失が相対的に大きい角周波数)を与えられる。そして、直軸電流目標値決定部48は、昇温要求発生部44からの昇温要求が継続する期間において、直軸電流目標値Id*=Asinωktに決定する。その他の期間においては、直軸電流目標値決定部48は、トルク制御部46から与えられる直軸電流目標値(通常時)を直軸電流目標値Id*として、制御指令生成部52へ出力する。
横軸電流目標値決定部50は、選択スイッチで構成され、トルク制御部46から横軸電流目標値(通常時)を与えられるとともに、ゼロ値を与えられる。そして、横軸電流目標値決定部50は、昇温要求発生部44からの昇温要求が継続する期間において、横軸電流目標値Iq*=0に固定する。その他の期間においては、横軸電流目標値決定部50は、トルク制御部46から与えられる横軸電流目標値(通常時)を横軸電流目標値Iq*として、制御指令生成部52へ出力する。
制御指令生成部52は、直軸電流目標値Id*および横軸電流目標値Iq*に従って、インバータINVを制御するためのスイッチング指令PWMを生成する。そして、制御指令生成部52は、電流制御部54,56と、回転座標変換部58と、インバータ制御部60と、回転座標逆変換部62とを含む。
電流制御部54は、回転座標逆変換部62から与えられる直軸電流Id(実績値)が直軸電流目標値Id*に一致するように制御演算を実行し、その制御指令(直軸成分)を回転座標変換部58へ出力する。
電流制御部56は、回転座標逆変換部62から与えられる横軸電流Iq(実績値)が横軸電流目標値Iq*に一致するように制御演算を実行し、その制御指令(横軸成分)を回転座標変換部58へ出力する。
回転座標変換部58は、電流制御部54から与えられる制御指令(直軸成分)、および電流制御部56から与えられる制御指令(横軸成分)を受けて、ステータコイル3.1,3.2,3.3(図5)の各々に流すべき駆動電流目標値Iu*,Iv*,Iw*を生成する。具体的には、上述の(1)式と同様の変換式に基づいて、回転座標系(d−q座標系)から静止座標系への変換を実行する。そして、回転座標変換部58は、生成した駆動電流目標値Iu*,Iv*,Iw*をインバータ制御部60へ出力する。
インバータ制御部60は、駆動電流目標値Iu*,Iv*,Iw*に従って、インバータINVの各スイッチング素子のオン/オフを制御するためのスイッチング指令PWMを生成する。
回転座標逆変換部62は、電流検出部9もしくは13(図2)によって検出される駆動電流Iu,Iv,Iw(実績値)から、直軸電流Id(実績値)および横軸電流Iq(実績値)を生成する。具体的には、上述の(1)式の逆変換を実行することで、静止座標系から回転座標系(d−q座標系)への変換を実行する。そして、回転座標変換部58は、それぞれ生成した直軸電流Id(実績値)および横軸電流Iq(実績値)を電流制御部54および56へ出力する。
(磁石温度取得部)
上述したように、回転体のロータにセンサを直接取付けて、永久磁石の温度を検出しようとすると、モータジェネレータの構成が複雑化してしまう。そこで、この発明の実施の形態では、ステータ温度Ts、外気温Toutおよび内部に格納される値に基づいて、ロータに設けられる永久磁石の温度Tmを推定する。
通常の駆動電流が供給されることによりロータで発生する熱量(熱損失)は、ステータで発生する熱量とは異なる。また、ステータとロータとの熱拡散特性も互いに異なる。そのため、モータジェネレータMGの作動中では、ステータ温度Tsと、ロータに設けられる永久磁石の温度Tmとの間には温度差が生じる。
一方、モータジェネレータMGの作動停止後、すなわちIGOFF信号を受けた後には、ステータおよびロータで熱損失は発生しない。そのため、ステータ温度Tsおよび永久磁石の温度Tmは、それぞれの熱拡散時定数に従って環境温度に漸近することになる。
したがって、IGOFF信号を受けてから十分に時間が経過すれば、ステータ温度Tsおよび永久磁石の温度Tmは、いずれも一様に環境温度になっていると考えることができる。そのため、永久磁石の温度Tmは、ステータ温度Tsに一致するとみなすことができる。そこで、制御部ECUは、IGOFF信号を受けた後の経過時間を計測しておき、次回のIGON信号を受けた時点で、計測されている経過時間が予め定められたしきい時間を上回っていれば、ステータ温度Tsを永久磁石の温度Tmとみなす。なお、予め定められたしきい時間は、ステータおよびロータの熱拡散時定数に応じて適宜設定される。
一方、IGOFF信号を受けた後から十分に時間が経過していなければ、すなわち、計測された経過時間が予め定められたしきい時間以下であれば、永久磁石の温度Tmは、まだ環境温度に到達していないと考えることができる。ここで、ステータおよびロータの熱拡散は、それぞれ独立して生じるものではなく、相互に熱影響を及ぼし合う。そのため、ステータの熱拡散過程とロータの熱拡散過程との間には、比較的大きな相間関係が存在する。そこで、制御部ECUは、ステータの熱拡散過程に基づいて、永久磁石の温度についての第1推定値を算出する。
また、環境温度の影響についても考慮することが好ましい。そこで、制御部ECUは、IGOFF信号を受けた時点の外気温Toutと、IGON信号を受けた時点の外気温Toutとの温度差に基づいて、永久磁石の温度についての第2推定値を算出する。
以上のように算出される第1推定値と第2推定値とを加算して、永久磁石の温度が取得される。
具体的には、IGOFF信号を受けた時点のステータ温度(以下では、最終ステータ温度とも称す)を第1パラメータとし、IGOFF信号を受けた後の経過時間を第2パラメータとした第1推定値についてのマップが予め実験的に取得される。また、IGOFF信号を受けた時点の外気温(以下では、最終外気温とも称す)と、IGON信号を受けた時点の外気温Toutとの温度差をパラメータとして、第2推定値についてのマップが予め実験的に取得される。
そして、制御部ECUは、検出されるパラメータの値に基づいて、それぞれのマップを参照して得られる第1および第2推定値から、永久磁石の温度を取得する。
図7は、磁石温度取得部40のより詳細な制御構造を示すブロック図である。
図7を参照して、磁石温度取得部40の制御構造には、停止時間計測部70と、比較部72と、レジスタ部74,80と、第1推定部76と、加算部78と、減算部82と、第2推定部84と、選択部86とを含む。
停止時間計測部70は、IGOFF信号を受けると、当該時点からの経過時間TIMの計測を開始する。そして、停止時間計測部70は、その計測する経過時間TIMを比較部72および第1推定部76へ出力する。なお、停止時間計測部70は、IGOFF信号を受ける毎に、計測中の経過時間TIMを一旦リセットして、再度計測を開始する。したがって、停止時間計測部70から出力される経過時間TIMは、最も直近のIGOFF信号を受けた時点からの経過時間に相当する。
比較部72は、停止時間計測部70から与えられる経過時間TIMと、予め定められたしきい時間TIMthとを比較する。そして、比較部72は、その比較結果を選択部86へ出力する。
レジスタ部74は、IGOFF信号を受けると、当該時点のステータ温度Tsを取得して、最終ステータ温度Ts(last)として格納する。そして、レジスタ部74は、次回のIGOFF信号を受けるまで、当該格納した最終ステータ温度Ts(last)を第1推定部76へ出力し続ける。なお、レジスタ部74は、IGOFF信号を受ける毎に、格納する最終ステータ温度Ts(last)をリセットする。したがって、レジスタ部74から出力される最終ステータ温度Ts(last)は、最も直近のIGOFF信号を受けた時点のステータ温度Tsに相当する。
第1推定部76は、最終ステータ温度Ts(last)および経過時間TIMをパラメータとして第1推定値#Tmaを規定したマップを格納している。そして、第1推定部76は、レジスタ部74から与えられる最終ステータ温度Ts(last)および停止時間計測部70から与えられる経過時間TIMに基づいて、格納するマップを参照して、第1推定値#Tmaを決定する。そして、第1推定部76は、決定した第1推定値#Tmaを加算部78へ出力する。
レジスタ部80は、IGOFF信号を受けると、当該時点の外気温Toutを取得して、最終外気温Tout(last)として格納する。そして、レジスタ部80は、次回のIGOFF信号を受けるまで、当該格納した最終外気温Tout(last)を減算部82へ出力し続ける。なお、レジスタ部80は、IGOFF信号を受ける毎に、格納する最終外気温Tout(last)をリセットする。したがって、レジスタ部80から出力される最終外気温Tout(last)は、最も直近のIGOFF信号を受けた時点の外気温Toutに相当する。
減算部82は、レジスタ部80から与えられる最終外気温Tout(last)と、現時点の外気温Toutとの温度差ΔToutを算出し、第2推定部84へ出力する。
第2推定部84は、温度差ΔToutをパラメータとして第1推定値#Tmaを規定したマップを格納している。そして、第2推定部84は、減算部82から与えられる温度差ΔToutに基づいて、格納するマップを参照して、第2推定値#Tmbを決定する。そして、第2推定部84は、決定した第2推定値#Tmbを加算部78へ出力する。
加算部78は、第1推定部76から与えられる第1推定値#Tmaと、第2推定部84から与えられる第2推定値#Tmbとを加算し、選択部86へ出力する。
選択部86は、比較部72から与えられる比較結果に応じて、現時点のステータ温度Tsおよび加算部78から与えられる加算値のうちいずれか一方を永久磁石の温度Tmとして出力する。すなわち、経過時間TIMがしきい時間TIMthを上回っていれば、現時点のステータ温度Tsを永久磁石の温度Tmとして出力する。一方、経過時間TIMがしきい時間TIMth以下であれば、加算部78から与えられる第1推定値#Tmaと第2推定値#Tmbとの加算値を永久磁石の温度Tmとして出力する。
なお、上述の図6および図7の説明においては、モータジェネレータMG1およびMG2について総称的に説明したが、実際には、モータジェネレータMG1,MG2の各々に対応して、図6および図7に示す制御構造が設けられる。
(処理フロー)
図8は、この発明の実施の形態に従う処理手順を示すフローチャートである。
図8を参照して、制御部ECUは、IGON信号を受けたか否かを判断する(ステップS100)。IGON信号を受けていない場合(ステップS100においてNOの場合)には、制御部ECUは、IGON信号を受けるまで待つ(ステップS100)。
IGON信号を受けた場合(ステップS100においてYESの場合)には、制御部ECUは、モータジェネレータMG1についての磁石温度取得サブルーチンをコールして、モータジェネレータMG1のロータにおける永久磁石の温度Tm1を取得する(ステップS102)。そして、制御部ECUは、取得した永久磁石の温度Tm1が予め定められたしきい温度Tthを下回っているか否かを判断する(ステップS104)。
永久磁石の温度Tm1が予め定められたしきい温度Tthを下回っている場合(ステップS104においてYESの場合)には、制御部ECUは、モータジェネレータMG1に対して昇温用の駆動電流を供給するための昇温要求を発生する(ステップS106)。また、制御部ECUは、永久磁石の温度Tm1としきい温度Tthとの温度差に基づいて、昇温要求を継続すべき時間を決定する(ステップS108)。
そして、制御部ECUは、モータジェネレータMG1についての直軸電流目標値Id1*を時間的に変化させる(ステップS110)とともに、モータジェネレータMG1についての横軸電流目標値Iq1*をゼロ値に固定する(ステップS112)。さらに、制御部ECUは、ステップS110において決定される直軸電流目標値Id1*およびステップS112において決定される横軸電流目標値Iq1*に従って、インバータINV1を制御するためのスイッチング指令PWM1を生成する(ステップS114)。
さらに、制御部ECUは、ステップS108において決定された継続時間が経過したか否かを判断する(ステップS116)。継続時間が経過していない場合(ステップS116においてNOの場合)には、制御部ECUは、ステップS106〜ステップS116の処理を再度実行する。
永久磁石の温度Tm1が予め定められたしきい温度Tthを下回っていない場合(ステップS104においてNOの場合)、もしくは継続時間が経過している場合(ステップS116においてYESの場合)には、制御部ECUは、モータジェネレータMG1における永久磁石の昇温完了を発生する(ステップS118)。
並列的に、IGON信号を受けた場合(ステップS100においてYESの場合)には、制御部ECUは、モータジェネレータMG2についての磁石温度取得サブルーチンをコールして、モータジェネレータMG2のロータにおける永久磁石の温度Tm2を取得する(ステップS122)。そして、制御部ECUは、取得した永久磁石の温度Tm2が予め定められたしきい温度Tthを下回っているか否かを判断する(ステップS124)。
永久磁石の温度Tm2が予め定められたしきい温度Tthを下回っている場合(ステップS124においてYESの場合)には、制御部ECUは、モータジェネレータMG2に対して昇温用の駆動電流を供給するための昇温要求を発生する(ステップS126)。また、制御部ECUは、永久磁石の温度Tm2としきい温度Tthとの温度差に基づいて、昇温要求を継続すべき時間を決定する(ステップS128)。
そして、制御部ECUは、モータジェネレータMG2についての直軸電流目標値Id2*を時間的に変化させる(ステップS130)とともに、モータジェネレータMG2についての横軸電流目標値Iq2*をゼロ値に固定する(ステップS132)。さらに、制御部ECUは、ステップS130において決定される直軸電流目標値Id2*およびステップS132において決定される横軸電流目標値Iq2*に従って、インバータINV2を制御するためのスイッチング指令PWM2を生成する(ステップS134)。
さらに、制御部ECUは、ステップS128において決定された継続時間が経過したか否かを判断する(ステップS136)。継続時間が経過していない場合(ステップS136においてNOの場合)には、制御部ECUは、ステップS126〜ステップS136の処理を再度実行する。
永久磁石の温度Tm2が予め定められたしきい温度Tthを下回っていない場合(ステップS124においてNOの場合)、もしくは継続時間が経過している場合(ステップS136においてYESの場合)には、制御部ECUは、モータジェネレータMG2における永久磁石の昇温完了を発生する(ステップS138)。
ステップS118においてモータジェネレータMG1における永久磁石の昇温完了が発生され、かつステップS138においてモータジェネレータMG2における永久磁石の昇温完了が発生された後、制御部ECUは、直軸電流目標値Id1*,Id2*および横軸電流目標値I1q*,Iq2*の各々に要求トルクτ1*,τ2*に応じた目標値を設定し(ステップS140)、車両100の通常走行モードへ移行する。
なお、上述したように、この発明の実施の形態に従う車両100では、予め格納される最終ステータ温度Ts(last)および最終外気温Tout(last)に基づいて、永久磁石の温度Tmが取得される場合もある。そのため、車両100の作動停止される時点、すなわちIGOFF信号を受ける時点において、図9に示すような作動停止処理が実行される。
図9は、この発明の実施の形態に従う作動停止処理の手順を示すフローチャートである。
図9を参照して、制御部ECUは、IGOFF信号を受けたか否かを判断する(ステップS200)。IGOFF信号を受けていない場合(ステップS200においてNOの場合)には、制御部ECUは、IGOFF信号を受けるまで待つ(ステップS200)。
IGOFF信号を受けた場合(ステップS200においてYESの場合)には、制御部ECUは、当該時点のモータジェネレータMG1のステータ温度Ts1を最終ステータ温度Ts1(last)として格納する(ステップS202)。また、制御部ECUは、当該時点のモータジェネレータMG2のステータ温度Ts2を最終ステータ温度Ts2(last)として格納する(ステップS204)。そして、制御部ECUは、当該時点の外気温Toutを最終外気温Tout(last)として格納する(ステップS206)。
さらに、制御部ECUは、IGOFF信号を受けた後の経過時間TIMの計測を開始する(ステップS208)。
図10は、図8に示すフローチャートにおける磁石温度取得サブルーチンの各々での処理を示すフローチャートである。
図10を参照して、制御部ECUは、計測中の経過時間TIMを取得する(ステップS300)。また、制御部ECUは、現時点のステータ温度Tsを取得する(ステップS302)。
そして、制御部ECUは、取得した経過時間TIMがしきい時間TIMthを上回っているか否かを判断する(ステップS304)。
経過時間TIMがしきい時間TIMthを上回っている場合(ステップS304においてYESの場合)には、ステップS302において取得した現時点のステータ温度Tsをロータにおける永久磁石の温度Tmに決定する(ステップS306)。そして、制御部ECUは、元の処理に戻る。
経過時間TIMがしきい時間TIMthを上回っていない場合(ステップS304においてNOの場合)には、格納する最終ステータ温度Ts(last)を読出す(ステップS308)。そして、制御部ECUは、ステップS306において読出した最終ステータ温度Ts(last)および経過時間TIMに基づいて、格納するマップを参照して、第1推定値#Tmaを決定する(ステップS310)。
また、制御部ECUは、格納する最終外気温Tout(last)を読出す(ステップS312)。また、制御部ECUは、現時点の外気温Toutを取得する(ステップS314)。そして、制御部ECUは、ステップS312において読出した最終外気温Tout(last)とステップS314において取得した外気温Toutとの温度差ΔToutを算出する(ステップS316)。さらに、制御部ECUは、ステップS316において算出した温度差ΔToutに基づいて、格納するマップを参照して、第2推定値#Tmbを決定する(ステップS318)。
制御部ECUは、ステップS310において決定した第1推定値#Tmaと、ステップS318において決定した第2推定値#Tmbとの加算値を、現時点のステータ温度Tsをロータにおける永久磁石の温度Tmに決定する(ステップS320)。そして、制御部ECUは、元の処理に戻る。
この発明の実施の形態においては、電源部PSが「電源部」に相当し、モータジェネレータMG1およびMG2が「モータジェネレータ」に相当し、インバータINV1およびINV2が「インバータ」に相当する。そして、制御部ECUが「磁石温度取得手段」、「第1の比較手段」、「昇温要求発生手段」、「制御指令生成手段」、「直軸電流目標値決定手段」、「横軸電流目標値決定手段」、「停止時間計測手段」、「ステータ温度取得手段」、「第2の比較手段」、「第1の磁石温度推定手段」、「外気温取得手段」、および「第2の磁石温度推定手段」を実現する。
この発明の実施の形態によれば、IGON信号を受けたときに、ロータに設けられた永久磁石の温度がしきい温度を下回っていれば、昇温要求が発せられる。すると、直軸電流目標値が時間的に変化するように決定されるとともに、横軸電流目標値がゼロ値に決定される。これにより、永久磁石の磁束方向と平行な方向に沿って、時間的に変化する電流磁界が印加されるため、永久磁石には当該電流磁界を妨げるように渦電流が生じる。この渦電流によって、永久磁石の内部でジュール熱が発生するので、永久磁石を直接的に昇温することができる。一方、永久磁石の磁束方向と直交する方向の電流磁界はゼロ値に抑制されるので、ロータには何らの駆動トルクも生じない。これにより、車両を停止状態に維持できるため、車両の走行に伴う意図しない逆起電圧の発生を回避できる。
また、この発明の実施の形態によれば、回転可能に構成されるロータに設けられる永久磁石の温度を取得するために、モータジェネレータ内での熱拡散特性に基づいて、温度が推定される。これにより、永久磁石の温度を取得するための温度センサを必要としないので、回転するロータと静止しているステータ側との間でセンサ配線を構成するための回転ジョイントなどを設ける必要がない。よって、特別な構造のモータジェネレータを用いることなく本発明を実施できる。
なお、この発明の実施の形態においては、2個のモータジェネレータを搭載する車両について説明したが、当然のことながら、モータジェネレータの数が制限されることはなく、1個もしくは3個以上のモータジェネレータを搭載する車両であってもよい。
また、この発明の実施の形態においては、一例として、エンジンENGおよびインバータINV1およびINV2を搭載してハイブリッド自動車について説明したが、本発明は、「ステータに設けられたコイルに駆動電流が流れることで生じる電流磁界によって、永久磁石を有するロータを回転させるように構成されたモータジェネレータ」を搭載するいずれの車両にも適用できる。一例として、燃料電池を搭載した燃料電池車などにも適用できる。
また、この発明の実施の形態においては、より好ましい形態として、ロータに設けられた永久磁石の温度を取得するために、当該温度を直接検出するための温度センサを用いることなく、ステータ温度や外気温などに基づいて温度推定を行なう構成について説明したが、この構成に限られることはない。すなわち、放射温度計などの非接触でその表面温度を検出可能な温度検出器を用いてもよく、さらに、周知のいずれの温度検出方法を採用してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
3.1,3.2,3.3 ステータコイル、4 外気温検出部、6 動力分割機構、8 ステータ温度検出部、9 電流検出部、10 回転角検出部、11 電流検出部、12 ステータ温度検出部、14 回転角検出部、18 減速機、20 駆動輪、22 従動輪、30 電流磁界、32.1,32.2 永久磁石、40 磁石温度取得部、42 比較部、44 昇温要求発生部、46 トルク制御部、48 直軸電流目標値決定部、50 横軸電流目標値決定部、52 制御指令生成部、54,56 電流制御部、58 回転座標変換部、60 インバータ制御部、62 回転座標逆変換部、70 停止時間計測部、72 比較部、74,80 レジスタ部、76,84 推定部、78 加算部、82 減算部、86 選択部、100 車両、BAT 蓄電装置、C コンデンサ、CONV 直流コンバータ、ECU 制御部、ENG エンジン、Iu,Iv,Iw 駆動電流、Id 直軸電流、Id* 直軸電流目標値、INV インバータ、Iq 横軸電流、Iq* 横軸電流目標値、Iu*,Iv*,Iw* 駆動電流目標値、MG モータジェネレータ、MPL 主正線、MSL 主負線、PCU パワーコントロールユニット、PL 正線、PS 電源部、PWC,PWM1,PWM2 スイッチング指令、ROT ロータ、SE システム信号、SL 負線、SR1,SR2 システムリレー、ST ステータ、TIM 経過時間、TIMth しきい時間、Tm 永久磁石の温度、Tout 外気温、Tout(last) 最終外気温、Ts ステータ温度、Ts(last) 最終ステータ温度、θ 回転角。