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JP4704586B2 - 医療用アクリル系粘着剤の製造方法 - Google Patents

医療用アクリル系粘着剤の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は医療用アクリル系粘着剤の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、皮膚面から薬物を経皮投与して治療または予防を行うための外用医薬製剤が種々提案されている。外用医薬製剤は、各種プラスチックフィルム、不織布、織布、紙、金属箔またはこれらの2種以上の積層体からなる柔軟な支持体に、薬物を配合した感圧性粘着剤を塗工乾燥して粘着剤層を形成することによって製造されている。上記感圧性粘着剤としては、接着力、凝集力、品種の多様性等の理由からアクリル系感圧性粘着剤が多く使用されている
【0003】
上記アクリル系感圧性粘着剤(以下、単にアクリル系粘着剤と称す)は(メタ)アクリル酸アルキルエステルと他のビニル単量体との共重合体であり、通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合組成は50重量%以上である。アクリル系粘着剤の重合は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などで行われるが、いずれの場合も、重合反応終了時に未反応の単量体が残存するので、これが製剤の性能に悪影響を及ぼす。すなわち、未反応の単量体(以下、残存モノマーともいう)を多量に含む重合生成物に薬物を配合(含有)した製剤を使用すると、モノマーが直接皮膚に接触(密着)して、人体に刺激を与えたり、かぶれ、かゆみ、紅斑等を生じる原因になる。また、残存モノマーは、薬物の安定性に悪影響を与えて、製剤中の薬物の含有量が経時的に減少したり、また、副反応生成物や着色を生じる原因となる。
【0004】
そこで、本件出願人は、特開平5−131022号公報において、残存モノマー量を固形分の0.2重量%以下にしたアクリル系粘着剤からなる感圧性粘着剤に薬物を配合した外用医薬製剤を提案した。すなわち、アクリル系粘着剤中の残存モノマー量を固形分の0.2重量%以下にすることにより、人体への刺激、かぶれ、かゆみ、紅斑等を解消し、薬物の安定性を高めている。当該公報では、粘着剤中の残存モノマーを固形分の0.2重量%以下に低減するための方法として、重合後の粘着剤溶液を貧溶媒中に添加し、固形分を沈殿させた後分取する、所謂、再沈殿法によって残存モノマーを除去する方法や、重合後の粘着剤溶液を薄膜に塗工、或いは、糸状に押出し、加熱下で残存モノマーを揮散させる方法等を挙げている。
【0005】
しかし、前者の再沈殿による方法は、貧溶媒を多量に用いなければならないために経済的に不利であり、また、貧溶媒は種類によっては外用医薬製剤調製後に製剤中に残存する可能性があり、薬物の安定性において未だ改善されるべき問題を含んでいる。一方、後者の粘着剤溶液を塗工する方法、すなわち、剥離処理がなされた工程紙上に薄膜状に展開して加熱下に乾燥する方法(以下、塗工乾燥方法とも称す)は、前者の方法のように、多量の溶媒を必要としない分経済的であり、また、製剤中に貧溶媒が残存することもない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、医療用アクリル系粘着剤における極性薬物の溶解性を向上させるために、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに対して、N−ビニル−2−ピロリドンを比較的多量に共重合させる場合がある。すなわち、環状アミド構造のN−ビニル−2−ピロリドンを共重合することで粘着剤の極性が高くなり、極性薬物の溶解性が向上する。しかし、N−ビニル−2−ピロリドンは(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合反応性がかなり低く、これを共重合させた場合、極めて多量のN−ビニル−2−ピロリドンが残存してしまう。かかるN−ビニル−2−ピロリドンを比較的多量に共重合させた医療用アクリル系粘着剤を製造する場合も、前記の塗工乾燥方法を使用することによって、残存モノマー量を固形分の0.2重量%以下に低減することは可能である。しかし、多量に残存するN−ビニル−2−ピロリドンを塗工乾燥法で揮散させるには、かなりの長時間を要する。かかる乾燥時間に長時間を要することは、実験室レベルの製造では大きな問題とはならないが、工業的な製造(量産化)においては、エネルギーコストが極めて大きく嵩むため、無視できない問題となっている。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、従来よりも飛躍的に短縮した時間で、N−ビニル−2−ピロリドンを共重合成分として比較的多く含有する医療用アクリル系粘着剤を、残存モノマー量が固形分の0.2重量%以下となるように製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有している。
(1)N−ビニル−2−ピロリドンを共重合成分として含む医療用アクリル系粘着剤の製造方法であって、(メタ)アクリル酸アルキルエステル50重量%以上、N−ビニル−2−ピロリドン10〜40重量%およびこれらと共重合可能な単量体1〜10重量%を含む単量体組成物を、重合溶媒中で、ラジカル重合開始剤の存在下に重合率が90%以上となるまで第1段階の重合反応を行い、次いで、該第1段階の重合反応の温度よりも高い温度で、ラジカル重合開始剤の残存量が仕込み量の5重量%以下になるまで第2段階の重合反応を行い、さらに、当該第2段階の重合反応終了後の反応物に、ラジカル重合開始剤とともに、前記単量体組成物の構成単量体であって、N−ビニル−2−ピロリドン以外の各単量体を、それぞれ、当該単量体と反応物中に残存するN−ビニル−2−ピロリドンとの組成比が、前記単量体組成物における当該単量体とN−ビニル−2−ピロリドンとの組成比に等しくなる量の50%〜200%の範囲内で添加して、第3段階の重合反応を行って、N−ビニル−2−ピロリドンの残存量を当該重合反応前の半分以下にするとともに、N−ビニル−2−ピロリドン以外の単量体の総残存量をN−ビニル−2−ピロリドンの残存量の半分以下にし、しかる後、当該重合反応終了後の反応物を薄膜状で乾燥して、残存モノマー量を固形分の0.2重量%以下にすることを特徴とする医療用アクリル系粘着剤の製造方法。
(2)第1段階の重合反応を重合開始剤の10時間半減期温度以下の温度で行う上記(1)記載の医療用アクリル系粘着剤の製造方法。
(3)第2段階の重合反応を重合溶媒の沸点付近で行う上記(1)記載の医療用アクリル系粘着剤の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。なお、以下の記載において「単量体」と「モノマー」の両方の文言を使用するが、これらの使い分けに特に意味はなく、両者は同義である。
【0010】
本発明の医療用共重合体の製造方法は、N−ビニル−2−ピロリドンを共重合成分として含む医療用アクリル系粘着剤の製造方法であって、(メタ)アクリル酸アルキルエステル50重量%以上、N−ビニル−2−ピロリドン10〜40重量%およびこれらと共重合可能な単量体1〜10重量%を含む単量体組成物を、重合溶媒中で、ラジカル重合開始剤の存在下に重合率が90%以上となるまで第1段階の重合反応を行い、次いで、該第1段階の重合反応の温度よりも高い温度で、ラジカル重合開始剤の残存量が仕込み量の5重量%以下になるまで第2段階の重合反応を行い、さらに、当該第2段階の重合反応終了後の反応物に、ラジカル重合開始剤とともに、前記単量体組成物の構成単量体であって、N−ビニル−2−ピロリドン以外の各単量体を、それぞれ、当該単量体と反応物中に残存するN−ビニル−2−ピロリドンとの組成比が、前記単量体組成物における当該単量体とN−ビニル−2−ピロリドンとの組成比に等しくなる量の50%〜200%の範囲内で添加して、第3段階の重合反応を行って、N−ビニル−2−ピロリドンの残存量を当該重合反応前の半分以下にするとともに、N−ビニル−2−ピロリドン以外の単量体の総残存量をN−ビニル−2−ピロリドンの残存量の半分以下にし、しかる後、当該重合反応終了後の反応物を薄膜状で乾燥して、残存モノマー量を固形分の0.2重量%以下にするようにしたものである。
【0011】
本発明に用いる単量体組成物(第1段階の重合反応での仕込み単量体)は、製造するアクリル系粘着剤の薬物安定性、接着力、皮膚刺激性、品種の多様性等の点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50重量%以上、好ましくは50〜80重量%を含有する。粘着剤として用いるために必要な低弾性率とタックを有する低ガラス転移温度の重合体を得る観点から、当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は4〜12が好ましく、アクリル酸アルキルエステルにおいては炭素数4〜8が特に好ましく、メタクリル酸アルキルエステルにおいては炭素数8〜12が特に好ましい。
【0012】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n‐ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n‐へキシル、(メタ)アクリル酸n‐オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0013】
また、単量体組成物は、N−ビニル−2−メチルピロリドンを含有する。すなわち、N−ビニル−2−メチルピロリドンは環状アミド構造を有し、これを前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と共重合させることで、粘着剤の極性が増し、極性薬物の溶解性に優れた粘着剤を得ることができる。また、アミド結合間の水素結合によって粘着剤の凝集力が向上し、親水性が更に向上するといった利点も得られる。このような粘着剤特性を示すためにN−ビニル−2−メチルピロリドンは単量体組成物中に10〜40重量%、好ましくは20〜30重量%含有させる。
【0014】
また、単量体組成物中は、アクリル系粘着剤にさまざまな機能性を付与する目的で、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびN−ビニル−2−メチルピロリドン以外に、これらと共重合可能な他の単量体を含有する。当該単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等に代表されるカルボキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル等に代表される水酸基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド等に代表されるアミド基含有モノマー、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等に代表されるビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等に代表されるビニルエーテル類、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等のビニル系モノマーが挙げられ、これらは単独で用いられても、2種以上が併用されてもよく、製剤の要求特性、製剤化のために添加する薬物や添加剤等に応じて適宜選択される。当該単量体は通常、単量体組成物中に1〜10重量%含有させる。
【0015】
上単量体組成物を重合する際の重合溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどケトン系溶剤、ベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶剤、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤などが用いられ、これらは単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0016】
重合時の単量体濃度は、単量体組成物を構成する単量体の共重合反応性や目的の粘着剤の物性の要求特性によっても異なるが、20〜80%の範囲が好ましく、特に好ましくは30〜40%である。
【0017】
また、重合開始剤は、通常、熱によってラジカルを発生するラジカル重合開始剤が用いられ、有機過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤のいずれも使用できる。有機過酸化物系開始剤としては、例えば、パーオキシカーボネート、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド(ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル等が好ましく、アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸メチル等が好ましい。これらは単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0018】
第1段階の重合反応において、重合開始剤の使用量は、単量体組成物(仕込み量)に対し0.01〜5重量%が好ましい。なかでも、重合反応の初期段階での反応制御が最終的な粘着剤の接着力、凝集力などに大きく影響するので、この点を考慮して0.1〜0.5重量%が特に好ましい。なお、重合開始剤は反応工程の開始時に一括添加しても、第1段階の重合反応中の所定の複数の段階(反応開始時を含む)に分けて添加してもよい。
【0019】
第1段階の重合反応の温度は使用する重合開始剤の分解速度等を考慮して適宜決定されるが、重合開始剤よっては温度が高すぎると重合開始剤の分解速度が速くなり過ぎ、重合反応初期段階で反応の制御が困難となる場合がある。よって、重合開始剤の10時間半減期温度を目安に、それ以下の温度で重合反応を行うのが好ましい。すなわち、重合開始剤の10時間半減期温度以下の温度で、モノマーの種類や反応の制御、目的の粘着剤の物性等を考慮して適切な反応温度を決定する。10時間半減期温度以下の温度であれば概ね反応の制御は容易である。なお、重合開始剤の10時間半減期温度は、実際に測定して知ることができるが、文献等にも記載されているのでその値を参考にしてもよい。なお、ここで注意すべきことは、代表的なアゾニトリル系開始剤(AIBN等)は重合溶媒やモノマーによって10時間半減期温度に大きな変化はなく、文献値を適用できるが、有機過酸化物や一部のアゾ系開始剤は重合溶媒やモノマーの種類に依存して10時間半減期温度が変化することがわかっているため、これらについては実際に測定しておくのが好ましい。
【0020】
第1段階の重合反応工程は、重合開始剤の10時間半減期温度以下の温度で単量体組成物の重合反応を開始し、反応が穏やかになるまで同温度を重合溶媒の滴下、外浴の冷却などによって維持するのが好ましい。反応が穏やかになるとは、単量体組成物の重合率が90%以上に達した状態である。すなわち、重合率が90%以上になると、一般的に系内のモノマーの反応速度は重合反応初期と比較して大きく低下するため、反応が穏やかになる。
【0021】
本発明では、かかる単量体組成物の重合率が90%以上に達して反応が穏やかになった時点を第1段階の重合反応の終了点とし、ここから、残存モノマーの低減のために反応系の温度(反応温度)を昇温して重合反応をさらに続行する。この昇温してからの重合反応が第2段階の重合反応である。かかる第2段階の重合反応で、反応系内の温度を高く設定することで重合開始剤の分解速度およびモノマーとの反応速度が高まり、残存モノマーが効率よく低減される。
【0022】
第2段階の重合反応の温度(昇温温度)は可能な限り高いほうが残存モノマーの低減に効果的と考えられる。ここで、可能な限り高い温度(昇温温度)とは、反応系を開放系で加熱して重合溶媒を沸騰還流させる温度である。かかる温度は使用するモノマーおよび生成した共重合体の種類や濃度によって変化するが、概ね常圧における重合溶媒の沸点付近である。ここで沸点付近とは、重合溶媒の沸点±2℃の範囲を示す。なお、沸点付近またはそれより低い温度であっても共重合体のゲル化を発生することがあり、このような場合には、問題が起こらない上限温度を予め粘着剤の物性測定などによって把握しておき、かかる上限温度に設定する。
【0023】
第2段階の重合反応は、重合開始剤が失活するまで行う。ここで重合開始剤が失活するとは、重合開始剤の残存量が仕込み量(すなわち、第1段階の重合反応開始時の量)の5重量%以下になった状態を意味する。この状態になれば、モノマーの消費速度は著しく減少しており、実質的に重合反応は終了していると考えられ、これ以降反応を続行することに意味はなく、この時点を第2段階の反応の終了とする。
【0024】
なお、重合開始剤が失活する時間は昇温した温度での重合開始剤の半減期から計算することが可能である。半減期は文献値等を参考にすることが可能であるが、先に述べたように有機過酸化物や一部のアゾ系開始剤は重合溶媒やモノマーの種類に依存して半減期が変化することが分かっているため、これらの開始剤を用いる場合は加熱温度と開始剤の減少挙動を実測して把握しておくことが好ましい。
【0025】
当該第2段階の重合反応終了時の総残存モノマー量は、第1段階の終了時のそれに比べて低減されるが、目標の固形分の0.2重量%よりもかなり多い量である。
【0026】
一般的にビニル単量体の共重合反応では、モノマー間の共重合反応性を予想するのに、モノマーの共鳴効果を示すQ値と極性効果を示すe値を用いることが知られ、特にQ値が共重合反応性に大きく影響する。すなわち、モノマー間のQ値が大きく異なる場合、それらの共重合は起こりにくいことが知られている(例えば、2種のモノマーの共重合では、Q値の大きなモノマーの消費速度のほうがQ値の低いモノマーよりも大きくなる)。このQ値とe値は文献等で知ることができる(たとえば(”Polymer Handbook,”4thEd., Interscience(1999)など)。
【0027】
Q値が約0.2以上のモノマーを共役モノマー(反応性が高い)、Q値が約0.2以下のモノマーを非共役モノマー(反応性が低い)として大別されるが、N−ビニル−2−ピロリドンはQ値が0.088(文献値)であり、非共役モノマーに分類される。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類は共役モノマーである。
【0028】
N−ビニル−2−ピロリドンの共重合組成が少ないものである場合、第2段階の重合反応終了時の残存モノマー量も少なく、共重合体(粘着剤固形分)の0.2重量%以下に成り得る。しかし、本発明で製造するN−ビニル−2−ピロリドンを10〜40重量%含む共重合組成のアクリル系粘着剤を製造する場合、第2段階の重合反応終了時の総残存モノマーの量は、共重合体(粘着剤固形分)の0.2重量%よりもかなり多く、そして、残存モノマーの殆どは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類との共重合反応性が低いN−ビニル−2−ピロリドンとなる。
【0029】
例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA):72重量%、N−ビニル−2−ピロリドン(VP):25重量%、アクリル酸(AA):3重量%の単量体組成物を、重合溶媒に酢酸エチル、重合開始剤としてAIBNを用いて重合を行った場合、第2段階の重合反応終了時、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびアクリル酸の残存量は固形分の0.01重量%よりも少なく、殆ど消失したといえるが、N−ビニル−2−ピロリドンが約0.6重量%残存する。
【0030】
しかし、かかるN−ビニル−2−ピロリドンが約0.6重量%残存する粘着剤溶液から塗工乾燥法で残存モノマー量を目的の0.2重量%以下まで低減するには工業的生産においては、乾燥工程に極めて長い時間を要することとなる。それは、乾燥温度は粘着剤のゲル化が起こらない温度に設定するが、本発明で製造するN−ビニル−2−ピロリドンを10〜40重量%含む共重合体(粘着剤)の場合、粘着剤のゲル化が起こらない乾燥温度の上限は約110℃であり、乾燥温度を高く設定できないためである。例えば、工業的生産レベルで、上記のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA):72重量%、N−ビニル−2−ピロリドン(VP):25重量%、アクリル酸(AA):3重量%を含む単量体組成物から第1段階の重合反応および第2段階の重合反応を経て得られた重合反応物1000kg(粘着剤固形分300kg)を110℃の温度で塗工乾燥(塗工幅:400mm、塗工厚み:100μm)した場合、N−ビニル−2−ピロリドンの残存量を乾燥前の0.65重量%から0.16重量%に低減するには、工程全体の所要時間は78時間かかった(比較例1)。この際、塗工速度は1.5m/分が限界であり(塗工速度を1.5m/分より大きくすると、残存モノマー量を目標値である固形分の0.2重量%以下になるまで低減することができない等の問題が生じる。)、また、塗工幅を大きくして、工程全体の所要時間を短縮することも試みたが、本発明における粘着剤溶液のように比較的粘性の高い溶液を均一な厚みで塗工することが行い難く、特に局所的に厚くなってしまった場合、その部分の残存モノマー量が著しく大きくなって、結果的に、残存モノマー量を目標値(固形分の0.2重量%以下)まで低減できない場合を生じたり、目標値以内であっても、塗工後の回収した粘着剤(固形分)中の残存モノマー量が均一でないために、採取する部分で残存モノマー量が異なる結果となり、医薬品(製剤)用として好ましくない。
【0031】
そこで、本発明では、第2段階の重合反応後の粘着剤溶液に、初期単量体組成物(第1段階の重合反応の仕込みの単量体組成物)の構成単量体のうちのN−ビニル−2−ピロリドン以外の各単量体(以下、後添加モノマーとも称す)と、ラジカル重合開始剤を添加し、再び重合反応、すなわち、第3段階の重合反応を行って、残存モノマー量を更に低減させ、この後、塗工乾燥を行う。これにより、塗工速度を速めることができる。かかる残存モノマー量の更なる低減によって、塗工乾燥工程での塗工速度を速めても、最終目標値を達成することが可能となる。
【0032】
なお、第3段階の重合反応で添加する後添加モノマーの量が多いと、N−ビニル−2−ピロリドンの低減効果は高いが、その代わりに後添加モノマーが多く残存し、第2段階の重合反応後の粘着剤溶液における総残存モノマーよりも第3段階の重合反応終了後の総残存モノマー量が多くなることがある。また、後添加モノマーの量が少なすぎると、N−ビニル−2−ピロリドンを十分に低減することができない。(メタ)アクリル酸アルキルエステルには、N−ビニル−2−ピロリドンよりも揮発しにくいものがあるので(例えば、前記例のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)等)、第3段階の重合反応後の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの残存量が、第3段階の重合反応後のN−ビニル−2−ピロリドンの残存量よりも多くなると、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを塗工乾燥で効率良く除去できず、却って、塗工乾燥時間の長大化を招く虞がある。
【0033】
従って、第3段階の重合反応で添加する後添加モノマーは、第3段階の重合反応後のN−ビニル−2−ピロリドンの残存量が第3段階の重合反応前(第2段階の重合反応終了時)の半分以下となり、かつ、第3段階の重合反応後のN−ビニル−2−ピロリドン以外の単量体の総残存量がN−ビニル−2−ピロリドンの残存量の半分以下となる量にする。さらに、かかる後添加モノマーの量は、当該単量体と第2段階の重合反応終了時の粘着剤溶液に残存するN−ビニル−2−ピロリドンとの組成比が、初期単量体組成物における当該単量体とN−ビニル−2−ピロリドンとの組成比に等しくなる、または、近似する量とし、通常、初期単量体組成物における当該単量体とN−ビニル−2−ピロリドンとの組成比に等しくなる量の50〜200%の範囲内で選択される。
【0034】
このようにして得られた第3段階の重合反応後の粘着剤溶液を塗工乾燥することで、第2段階の重合反応終了後の粘着剤溶液を塗工乾燥する場合に比べて塗工速度(温度、塗工厚み、塗工幅は同一として)を2倍以上にでき、塗工乾燥時間を飛躍的に短縮することができる。なお、第3段階の重合反応に要する時間は、かかる塗工乾燥工程の所要時間が短縮する時間に比べて極めて小さい。
【0035】
また、第3段階の重合反応を行うことによって、第2段階の重合反応後の反応物(粘着剤溶液)を塗工乾燥して最終の粘着剤を得る場合よりも、目的の共重合組成に近い共重合体(粘着剤)を得ることもできる。例えば、後添加モノマーによって第3段階の重合反応終了後の共重合体(粘着剤)中の含有割合が第2段階の重合反応終了時のそれに比べて増加する傾向の成分については、第1段階の重合反応における仕込単量体組成物中の量を予めかかる増加分を差し引いた量にし、後添加モノマーによって最終的に目的の共重合組成を達成するという操作を行うことができる。
【0036】
当該第3段階の重合反応において、後添加モノマーおよびラジカル重合開始剤は、通常、第2段階の重合反応終了後の反応系内の温度をそのままの温度(第2段階の重合反応工程終了時の温度)に維持したまま該反応系内に投入する。後添加モノマーは溶液である場合はそのままで、固体である場合は必要最小量の重合溶媒に溶解して投入する。重合開始剤も必要最小量の重合溶媒に溶解して投入する。また、一旦系内を開放した場合は溶存酸素の影響による反応効率の低下が生じやすいので、第2段階の重合反応終了時の反応系を開放することなくそのまま第3段階の重合反応に移行するのが好ましい。
【0037】
ラジカル重合開始剤の添加量は、第1段階の初期仕込み単量体組成物に対し0.01〜5重量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜1.0重量%である。添加量が多すぎると1次残存モノマーの低減の効果は高いが、重合開始剤を消失させるのに長時間を要し、生産性が低下する傾向となり、一方、添加量が少なすぎると、重合開始剤の効率にもよるが十分な残存モノマーの低減効果が得られない場合がある。上記の好ましい添加量であれば、十分な残存モノマーの低減効果が得られ、かつ、重合開始剤の消失も比較的短時間で行うことができる。重合開始剤は全量を一括して添加しても、複数の段階に分けて添加してもよい。
【0038】
本第3段階の重合反応工程で添加する重合開始剤は第1段階および第2段階の重合反応工程で用いたものと同じもの、または、異なるもの(例えば、第1段階および第2段階の重合反応工程で用いたものよりも半減期が長いものや短いもの)を用いても良い。但し、第1段階および第2段階の重合反応工程で用いたものよりも半減期が長いものを用いる場合、半減期が長すぎると、反応が緩慢となって、残存モノマーの低減に長時間を要して生産性や長時間の加熱による粘着剤物性の低下が懸念される。第3段階の重合反応工程に要する時間は第2段階の重合反応工程と同様に48時間以内が好ましく、特に好ましくは18時間以内であり、これに見あった半減期の重合開始剤を用いるのが好ましい。
【0039】
第3段階の重合反応後に行う塗工乾燥工程では、乾燥温度は、製造する粘着剤の組成に応じて、110℃以下の温度で粘着剤のゲル化等の不具合が生じない範囲で可能な限り高い温度とする。塗工厚み、すなわち、塗工形成する薄膜の厚みは一般に50〜200μmが好ましい。50μmより小さいと生産効率が低下し、200μmより大きいとモノマーの揮散効率が大きく低下し、また、乾燥工程中に溶媒が揮発することによる発泡が起こりやすくなり、乾燥塔内に付着したり、巻き取りに支障をきたすため、好ましくない。
【0040】
塗工機としては、ロールコーター、グラビアコーター、ダイヘッドコーター、コンマコーター等の公知の塗工機を使用することができる。
【0041】
工程紙としては、一般に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、紙等の基材の表面にシリコーン系剥離剤を塗布して剥離処理したものを使用する。
【0042】
塗工乾燥工程後の製剤化は、通常、塗工乾燥して得られた粘着剤を適当な溶媒に再溶解し、以下の薬物を配合することで行われる。
【0043】
薬物としては、例えば、冠血管拡張剤、麻酔剤、性ホルモン、消炎鎮痛剤、抗炎症剤、精神安定剤、抗高血圧剤、抗生物質、抗菌性物質、抗真菌性物質、抗てんかん剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤等が挙げられる。
【0044】
薬物とともに種々の添加剤を配合してもよく、該添加剤としては、粘着剤の可塑剤として働き、粘着特性をコントロールするものや、経皮吸収促進効果を有するもの、薬物の安定性を向上させるもの等が挙げられる。このような添加剤としては、例えば、グリコール類、油脂類、液状の界面活性剤、可塑剤、炭化水素類などが拳げられる。
【0045】
上記の薬物または薬物と添加剤が配合された粘着剤溶液を支持体上に塗工し、乾燥することで外用医薬製剤が製造される。粘着剤溶液の塗工には粘着テープの製造で使用されている常法の塗工技術をそのまま使用できる。支持体は薬物を含有する粘着剤層を保持するものであり、皮膚面に貼付した際にその動きに追従し、屈曲面に貼付した際に違和感なく適応するために、適度な柔軟性を有するものが選択される。例えば、ポリエチレン、多孔質ポリエチレン、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、多孔質ポリテトラフルオロエチレン等の各種樹脂の中実または多孔質状フィルム、不織布、織布、紙、金属箔などが挙げられる。また、これらの異なる材質、形態のシート材を積層した積層フィルムも使用できる。
【0046】
支持体の厚みは外用医薬製剤の種類(薬効の種類)によっても異なるが、一般に0.02〜0.5mm程度、好ましくは0.02〜0.2mm程度である。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例によってさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下に記載する実施例によって限定されるものではない。また、以下の記載において、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、N−ビニル−2−ピロリドン(VP)の定量はガスクロマトグラム法で行い、アクリル酸(AA)、AIBNの定量は高速液体クロマトグラム法で行った。また、共重合体の共重合組成はNMR法で行った。
なお、ガスクロマトグラム法は、試料を酢酸エチルに希釈または溶解した溶液を測定試料とし、メチルシリコンポリマーを内面に保持したキャピラリーカラムを用いて定量を行った。
また、高速液体クロマトグラム法は、溶液の試料についてはアセトニトリルで再沈殿を行った際の上澄溶液を測定試料とし、また、塗工乾燥後の固形の試料は酢酸エチルに溶解後、アセトニトリルで再沈殿を行った際の上澄溶液を測定試料とし、オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したカラムを用いて定量を行った。 また、NMR法は、”Aldrich Library of NMR Spectra” や Sadtler Research Lab.,”13C NMR Spectra”等を参考に共重合成分のピークを帰属した。また、共重合組成は1Hおよび13Cの積分値を用いて算出した。なお、測定装置はJNM−GX400(日本電子(株)製)を使用し、溶媒には重クロロホルムを使用し、測定温度は27℃とした。
【0048】
実験例
(実験例1)
▲1▼アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA):2160g(72重量%)
▲2▼N−ビニル−2−ピロリドン(VP):750g(25重量%)
▲3▼アクリル酸(AA):90g(3重量%)
総モノマー量:3000g
上記▲1▼〜▲3▼からなる単量体組成物を、攪拌棒、温度計、還流冷却器、不活性ガス導入管及び滴下漏斗を取り付けた5つロフラスコ(20リットル)中に仕込み、モノマー濃度が30重量%となるように酢酸エチルを加え、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を総モノマー量に対し0.2重量%(6g)加えた。この反応溶液および反応容器内を十分窒素置換した後、反応系を60℃に制御し、6時間反応させた(第1段階:重合率92%)。その後、反応系を77℃に昇温し、反応(第2段階の重合反応)を48時間行った。
下記表1に第2段階の重合反応における反応時間と残存モノマー及び重合開始剤の関係を示す。
【0049】
【表1】
Figure 0004704586
【0050】
表1中の数値(重量%)は、残存2EHA、残存VP、残存AA、残存AIBNについては固形分(重合体)に対する値であり、AIBNについては仕込みの総モノマー量に対する値である。
【0051】
表1のように、第2段階の重合反応が経過する従って各モノマーの量は低下し、アクリル酸(AA)は開始2時間以降0.01重量%未満(極限)まで低減し、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)は開始8時間以降0.01重量%未満(極限)まで低減した。これに対し、N−ビニル−2−ピロリドン(VP)は、開始後16時間で約0.6重量%となり、それ以降は一定値を示した。また、重合開始剤は開始後16時間で0.002重量%以下(初期仕込み量に対して1重量%以下)であった。
この結果から、当該反応系では、第2段階の重合反応時間を16時間にすることを決めた。
なお、ここで注意すべきことは、開始8時間の段階で残存しているモノマーの殆どがVPであり、この段階で後添加モノマーを添加しても最終的な残存VPを低減する効果があることが予想される。しかし、開始8時間での残存VP量は0.76重量%で、16時間まで行った場合の約0.6重量%と比較するとまだ多く残存している。もし開始8時間の段階で後添加モノマーを加えて第3段階の反応に進むならば、VP残存量から考えて、16時間まで反応を行った場合よりも多くの後添加モノマーが必要と考えられ、最終的な総残存モノマー量が結果的に多くなってしまう可能性がある。よって、本発明では第3段階に進む前にできるだけVPを低減しておく。また、第2段階反応時の各モノマーの減少挙動は初期仕込み量や第1段階での重合反応の状態によって変化し、再現性が得られにくいが、第2段階でVPの残存量が一定となるまで重合を行うと最終的なVPの残存量は比較的良好な再現性が得られることが分かっており、後添加モノマーの添加量を決定しやすくなる。
【0052】
(実験例2〜8)
実験例1で用いた単量体組成物と同じもの(▲1▼〜▲3▼)を実験例1と同じ条件で、第1段階の重合反応を6時間行ない、その後、反応系を77℃に昇温して第2段階の重合反応を16時間行った。第2段階の重合反応終了時の残存モノマー量は、2EHA/VP/AA=<0.01/0.56/0.01(重量%)であった。なお、残存AIBNは0.002重量%以下(初期仕込み量に対して1重量%以下)であった。次に、反応系にVP以外の共重合成分である2EHAおよびAAを、これらと残存VP(0.56重量%)との組成比が初期仕込み単量体組成物におけるこれらとVPとの組成比に近似したものとなる量(2EHA:1.6重量%、AA:0.07重量%)と、粘着剤固形分に対し0.2重量%のAIBNを反応系に添加し、77℃で第3段階の重合反応を行った。この温度でのAIBNの半減期を約2時間とし、昇温時のタイムラグ等を考慮して第3段階の重合反応は、後添加した開始剤が失活する時間である16時間とした(実験例2)。
また、第3段階の重合反応時に粘着剤固形分に対し0.2重量%のAIBNを反応系に添加し、後添加モノマーを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして重合反応を行った(実験例3)。
また、初期単量体組成物の初期仕込み配合比、および、後添加モノマーの添加量を種々変更した以外は実験例1と同様にした重合反応を行った(実験例4〜8)。
なお、以上の実験では、後添加モノマーにおけるAAの添加量は0.07重量%に固定した。
これらの結果が表2である。
【0053】
【表2】
Figure 0004704586
【0054】
表2中、第2段階の重合反応終了時の残存モノマーの量、後添加モノマーの量は、第2段階の重合反応終了時の粘着剤固形分に対する値、第3段階の重合反応終了時の残存モノマーの量は、第3段階の重合反応終了時の粘着剤固形分に対する値である。
【0055】
表2から第3段階の重合反応において、VP以外の共重合成分である2EHAとAAを後添加モノマーとして加えた例(実験例2、4〜8)では、重合開始剤のみしか加えていない例(実験例3)と比較するとVPが効率的に減少していることがわかる。また、実験例7では後添加モノマーの添加量が少なすぎ、N−ビニル−2−ピロリドンの減少の度合いが低下し、目標値(第2段階の重合反応終了後の残存量の半分以下)に至らず、また、実験例8では後添加モノマーの添加量が多すぎ、VPの残存量は目標値(第2段階の重合反応終了後の残存量の半分以下)に達していたが、その代わり後添加モノマーが多量に残存し、VPの残存量の半分よりも多くなった。
【0056】
実施例および比較例
(実施例1)
上記の小スケールでの実験例の結果、実験例6が第3段階の重合反応後のN−ビニル−2−ピロリドンの残存量が最も少なく(0.18重量%)、更に総残存モノマー量も最も少ない(約0.26重量%)ので、これが好ましい重合条件と判断し、この実験例6に従って、工業的製造スケールで同様の粘着剤の重合を行ない、さらに、塗工乾燥して最終製品(医療用粘着剤)を製造した。詳細は以下の通りである。
【0057】
▲1▼アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA):212.10kg(70.7重量部)
▲2▼N−ビニル−2−ピロリドン(VP):75kg(25重量部)
▲3▼アクリル酸(AA):8.79kg(2.93重量部)
総モノマー重量:295.89kg
攪拌棒、温度計、還流冷却器、不活性ガス導入管及び滴下漏斗を取り付けた重合装置に▲1▼〜▲3▼を仕込み、モノマー濃度が30%となるように酢酸エチルを加え、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を総モノマー量に対し0.2重量%(0.59kg)加えた。この反応溶液および反応容器内を十分窒素置換した後、反応系を60℃に制御し、第1段階の重合反応を6時間行った。その後、反応系を77℃に昇温して第2段階の重合反応を16時間行った。第2段階の重合反応終了時の残存モノマー量は2EHA/VP/AA=<0.01/0.63/<0.01(重量%)、残存AIBNは0.002重量%以下(初期仕込み量に対して1重量%以下)であった。
【0058】
次に反応系に、2EHA:3.9kg(1.3重量%)、AA:0.21kg(0.07重量%)および総モノマー量(300kg)に対し0.2重量%のAIBN(0.6kg)を反応系に添加し、77℃で第3段階の重合反応を行った。該第3段階の重合反応時間は、実験例6と同様に16時間とした。第3段階の重合反応後の残存モノマー量は、2EHA/VP/AA=0.10/0.22/<0.01(重量%)、残存AIBNは0.002重量%以下(初期仕込み量に対して1重量%以下)であった。
【0059】
そして、この粘着剤溶液1000kg(粘着剤固形分300kg)を、塗工方式がコンマコーター、乾燥工程12mの塗工機を用いて、塗工幅400mm、塗工厚み100μm、塗工速度4.0m/分、予備乾燥温度100℃、乾燥温度110℃で、紙の両面にシリコーン系剥離剤で剥離処理した工程紙上に塗工し、加熱乾燥を行った。加熱乾燥後の残存モノマー量(粘着剤固形分に対する比率)は2EHA/VP/AA=0.04/0.12/<0.01(重量%)となり、総残存モノマー量は目標値である固形分の0.2重量%以下となった。粘着剤溶液全量の乾燥に要した累計時間は30時間であった。よって、粘着剤(最終製品)を得るための全所要時間は、かかる乾燥工程に要した時間(30時間)に、先の重合反応工程に要した時間(38時間)を加え、68時間であった。
【0060】
(比較例1)
▲1▼アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA):216kg(72重量部)
▲2▼N−ビニル−2−ピロリドン(VP):75kg(25重量部)
▲3▼アクリル酸(AA):9kg(3重量部)
総モノマー重量:300kg
攪拌棒、温度計、還流冷却器、不活性ガス導入管及び滴下漏斗を取り付けた重合装置に▲1▼〜▲3▼を仕込み、モノマー濃度が30%となるように酢酸エチルを加え、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を総モノマー量に対し0.2重量%加えた(0.6kg)。この反応溶液および反応容器内を十分窒素置換した後、実施例1と同様の反応条件で、第1段階の重合反応と第2段階の重合反応を行った。第2段階の重合反応後の残存モノマー量は2EHA/VP/AA=<0.01/0.65/<0.01(重量%)、残存AIBNは0.002重量%以下(初期仕込み量に対して1重量%以下)であった。
【0061】
この粘着剤溶液1000kg(粘着剤固形分300kg)を、実施例1と同じ塗工装置を用いて、塗工幅400mm、塗工厚100μm、塗工速度1.5m/分、乾燥温度110℃で、実施例1と同じ工程紙上に塗工し、加熱乾燥を行った。加熱乾燥後の残存モノマー量(粘着剤固形分に対する比率)は2EHA/VP/AA=<0.01/0.16/<0.01(重量%)となり、総残存モノマー量は目標の0.2重量%以下となった。粘着剤溶液全量の乾燥に要した時間は78時間であった。よって、粘着剤(最終製品)を得るための全所要時間は、かかる乾燥工程に要した時間(78時間)に、先の重合時間(22時間)を加え、100時間であった。
【0062】
下記表3は実施例1と比較例1の初期配合単量体組成物の組成、第2段階の重合反応終了時の残存モノマー量、後添加モノマー量、第3段階の重合反応終了時の残存モノマー量、塗工乾燥工程後の残存モノマー量、最終製品(粘着剤)の共重合組成を示し、表4は実施例1と比較例1の粘着剤製造(重合工程と塗工乾燥工程)に要した時間を示す。
【0063】
【表3】
Figure 0004704586
【0064】
【表4】
Figure 0004704586
【0065】
表3中、第2段階の重合反応終了時の残存モノマーの量および後添加モノマーの量は第2段階の重合反応終了時の粘着剤固形分に対する値、第3段階の重合反応終了時の残存モノマーの量および塗工乾燥後の残存モノマーの量は第3段階の重合反応終了時の粘着剤固形分に対する値である。
【0066】
表3、4から、実施例1の重合反応後(第3段階の重合反応後)に残存するN−ビニル−2−ピロリドンの量が、比較例1のそれ(第2段階の重合反応後に残存するN−ビニル−2−ピロリドンの量)に比べて更に低減することから、重合反応後の全残存モノマー量を目標値である固形分の0.2重量%以下に低減するための塗工乾燥工程における塗工速度を、比較例1のそれの200%以上にすることができ、その結果、塗工乾燥工程に要する時間が比較例1よりも大きく短縮して、粘着剤の製造に要する全時間(重合時間+塗工乾燥時間)が比較例1よりも大きく短縮することが分かる。また、実施例1の最終製品の粘着剤の共重合組成は2EHA/VP/AA=73/24/3となり、比較例1の2EHA/VP/AA=75/21/4と比較すると、目的とする共重合組成2EHA/VP/AA=72/25/3に近いことがわかる。
【0067】
【本発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明によれば、N−ビニル−2−ピロリドンを共重合成分として比較的多く含有する医療用アクリル系粘着剤を、残存モノマー量が固形分に対して0.2重量%以下となるように、従来よりも製造時間を飛躍的に短縮して製造できる。また、所望の共重合組成により近い粘着剤を製造することができる。

Claims (3)

  1. N−ビニル−2−ピロリドンを共重合成分として含む医療用アクリル系粘着剤の製造方法であって、(メタ)アクリル酸アルキルエステル50重量%以上、N−ビニル−2−ピロリドン10〜40重量%およびこれらと共重合可能な単量体1〜10重量%を含む単量体組成物を、重合溶媒中で、ラジカル重合開始剤の存在下に重合率が90%以上となるまで第1段階の重合反応を行い、次いで、該第1段階の重合反応の温度よりも高い温度で、ラジカル重合開始剤の残存量が仕込み量の5重量%以下になるまで第2段階の重合反応を行い、さらに、当該第2段階の重合反応終了後の反応物に、ラジカル重合開始剤とともに、前記単量体組成物の構成単量体であって、N−ビニル−2−ピロリドン以外の各単量体を、それぞれ、当該単量体と反応物中に残存するN−ビニル−2−ピロリドンとの組成比が、前記単量体組成物における当該単量体とN−ビニル−2−ピロリドンとの組成比に等しくなる量の50%〜200%の範囲内で添加して、第3段階の重合反応を行って、N−ビニル−2−ピロリドンの残存量を当該重合反応前の半分以下にするとともに、N−ビニル−2−ピロリドン以外の単量体の総残存量をN−ビニル−2−ピロリドンの残存量の半分以下にし、しかる後、当該重合反応終了後の反応物を薄膜状で乾燥して、残存単量体量を固形分の0.2重量%以下にすることを特徴とする医療用アクリル系粘着剤の製造方法。
  2. 第1段階の重合反応を重合開始剤の10時間半減期温度以下の温度で行う請求項1記載の医療用アクリル系粘着剤の製造方法。
  3. 第2段階の重合反応を重合溶媒の沸点±2℃の範囲にて行う請求項1記載の医療用アクリル系粘着剤の製造方法。
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