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JP4699156B2 - ガスバリアフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、例えば食品、医薬品などの包装、あるいはフィルム液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の電子部材用に有用なガスバリアフィルムに関するものである。
食品、医薬品、化学薬品等の包装には、水蒸気や酸素の透過防止のため、ガスバリアフィルムが使用されている。そして、内容物の変質を防ぐためさらに良好な水蒸気や酸素の透過防止性が必要な用途には、高度なガスバリア性を有するガスバリアフィルムが用いられている。
このようなガスバリアフィルムとしては、プラスチックフィルムを基材として、その片面または両面にガスバリア層を形成した構成のものが一般的である。このガスバリア層は、CVD法やPVD法等の様々な方法で形成されている。
例えば、基材上にガスバリア層として、PVD法により酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成したガスバリアフィルムが提案されている(例えば特許文献1参照)。このようなガスバリアフィルムは、ガスバリア性が非常に優れており、しかも透明であるため内容物を外から確認できるという利点がある。しかしながら、蒸着膜は無機酸化物粒子の積み重ねで形成されており、膜内に必ず欠陥構造を含むため、成膜手法を変えても、ガスバリア性には限界がある。
また、食品の包装に用いられるガスバリアフィルムでは、大面積であることや、生産性が重要視されため、ロールで連続して基材上に高速で蒸着膜を成膜するのが一般的である。蒸着膜は上述したように欠陥構造を含むが、このように成膜された蒸着膜では、さらに欠陥構造の多い膜となりやすい。このように、蒸着膜では製造面で構造的に欠陥が生じやすく、ガスバリア性を保持することが困難である。
さらに例えば、基材上にガスバリア層として、CVD法の一種である低温プラズマ化学蒸着法により酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成したガスバリアフィルムが提案されている(例えば特許文献2〜4参照)。低温プラズマ化学蒸着法は、基材に対する熱的ダメージが少ないという利点を有するが、PVD法と同様、膜内の欠陥構造のためにガスバリア性に限界があるという問題がある。
このように、従来のガスバリアフィルムでは、高いガスバリア性を必要とする用途に使用される場合には、酸素透過率や水蒸気透過率が未だ不十分である。また、蒸着膜を厚膜にすることによってガスバリア性を高めることも可能であるが、非常にコストが高くなってしまう。
特開平4−7139号公報 特開平8−176326号公報 特開平11−309815号公報 特開2000−6301公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、蒸着膜を有するガスバリアフィルムであって、ガスバリア性に優れ、安価なガスバリアフィルムを提供することを主目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、樹脂からなる基材と、上記基材上に形成され、蒸着膜である第1無機層と、上記第1無機層上に形成され、超微粒子で形成された膜である第2無機層とを有することを特徴とするガスバリアフィルムを提供する。
本発明によれば、第2無機層が超微粒子で形成された膜であるので、蒸着膜である第1無機層にピンホール等の欠陥が存在する場合でも、超微粒子によりピンホール等の欠陥を塞ぐことができる。このため、第1無機層のピンホール等の欠陥から水蒸気や酸素等が浸入するのを防ぐことができる。また、蒸着膜には、ピンホールや異物等の表面欠陥の他に構造欠陥もあり、そのような欠陥部分は構造的に弱い部分となるが、超微粒子のサイズ効果により超微粒子が構造的に弱い部分に入り込むので、蒸着膜の充填密度を向上させガスバリア性を向上させることができる。特に、大面積のガスバリアフィルムを効率良く製造するためにロールで連続して基材上に蒸着膜を高速で成膜した場合には、構造欠陥の多い蒸着膜となりやすいが、本発明においては、この蒸着膜の欠陥部分に超微粒子が入り込むので、構造欠陥の多い蒸着膜である場合にはガスバリア性を飛躍的に向上させることができ、またガスバリア性を保持することが可能である。
また、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することにより第2無機層を形成する場合には、超微粒子特有のサイズ効果により、焼結温度を通常の焼結温度よりも低くすることができる。これにより、耐熱性が比較的低い基材も用いることが可能となる。さらに、第1無機層上に第2無機層を設けることにより、上述したように水蒸気や酸素の侵入を防ぐことができるので、ガスバリア性を得るために厚膜の蒸着膜を設ける必要がなく、製造コストを削減することができる。
上記発明においては、上記第1無機層が、複数の蒸着膜からなるものであってもよい。複数の蒸着膜(第1無機層)と超微粒子で形成された膜(第2無機層)とが積層されることにより、ガスバリア性をさらに向上させることができるからである。
また本発明においては、上記超微粒子の焼結温度が350℃以下であることが好ましい。焼結温度が上記範囲である超微粒子を用いることにより、超微粒子分散液を塗布し焼成することにより第2無機層を形成する場合には、より低い温度で焼成できるからである。
さらに本発明においては、上記超微粒子が、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることが好ましい。また、上記超微粒子が、インジウム、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることも好ましい。これらの超微粒子を用いることにより、所望の特性を有する第2無機層とすることができるからである。
さらに本発明においては、上記超微粒子の平均粒径が0.5nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さすぎる超微粒子は製造が難しく、超微粒子の平均粒径が大きすぎると第1無機層のピンホール等の欠陥を塞ぐことが困難となる場合があるからである。
本発明は、また、樹脂からなる基材上に少なくとも一層の蒸着膜を形成する第1無機層形成工程と、上記第1無機層上に超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する第2無機層形成工程とを有することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法を提供する。
本発明によれば、蒸着膜である第1無機層にピンホール等の欠陥が存在する場合でも、その上に超微粒子分散液を塗布することにより第2無機層を形成するので、超微粒子によりピンホール等の欠陥を塞ぐことができる。そのため、ガスバリア性に優れるガスバリアフィルムを得ることができる。また、従来のように厚膜の蒸着膜を設ける必要がなく、製造コストを削減することができ、歩留まりを向上させることができる。
さらに本発明によれば、第2無機層形成工程にて、超微粒子特有のサイズ効果により、通常の温度よりも低温で焼結することができる。これにより、基材の耐熱温度以下での焼成が可能となる。
上記発明においては、上記第2無機層形成工程にて、上記超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成し、その後、酸化性雰囲気中で焼成することが好ましい。これにより、超微粒子の焼結を十分に進行させ、緻密な膜を形成できるからである。
また本発明においては、上記第1無機層形成工程にて、上記基材上に下層の蒸着膜を形成し、上記下層の蒸着膜表面を研磨した後、上記下層の蒸着膜上に上層の蒸着膜を形成してもよい。例えば下層の蒸着膜表面に異物が存在する場合、研磨により異物を除去することができ、その上にさらに蒸着膜を形成することにより異物があった部分のガスバリア性を補強することができるからである。
さらに本発明においては、上記溶剤の沸点が120℃以上であることが好ましい。溶剤の沸点が比較的高ければ、超微粒子分散液塗布後の乾燥時にて溶剤が一気に蒸発するのを防ぐことができ、これにより超微粒子が凝集して膜の平坦性が損なわれるのを回避することができるからである。
本発明によれば、蒸着膜である第1無機層上に超微粒子で形成された膜である第2無機層が形成されているので、超微粒子によって第1無機層に存在するピンホール等の欠陥を塞ぐことができ、水蒸気や酸素等に対するバリア性を向上させることができるという効果を奏する。
以下、本発明のガスバリアフィルムおよびその製造方法について詳細に説明する。
A.ガスバリアフィルム
まず、本発明のガスバリアフィルムについて説明する。
本発明のガスバリアフィルムは、樹脂からなる基材と、上記基材上に形成され、蒸着膜である第1無機層と、上記第1無機層上に形成され、超微粒子で形成された膜である第2無機層とを有することを特徴とするものである。
本発明のガスバリアフィルムについて図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のガスバリアフィルムの一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明のガスバリアフィルム10は、樹脂からなる基材1上に第1無機層2および第2無機層3が順次積層されたものである。
第1無機層は蒸着膜であり、第2無機層は超微粒子で形成された膜である。一般にスパッタリング法や真空蒸着法などの蒸着法により形成された蒸着膜はパーティクル等の異物やピンホールが存在する場合が多いが、本発明においては、蒸着膜である第1無機層上に超微粒子で形成された膜である第2無機層を積層するので、蒸着膜の製造面での欠陥やミクロ的な構造欠陥等を超微粒子で塞ぐことができ、水蒸気や酸素に対して高いバリア性を実現することができる。
さらに、蒸着膜には、ピンホールや異物等の表面欠陥の他に構造欠陥もあり、そのような欠陥部分は構造的に弱い部分となる。また、蒸着膜の異物を研磨により除去し、さらにその上に蒸着膜を成膜した場合には、ピンホールのない層とすることができるが、研磨より異物が除去された部分は、上層の蒸着膜で覆われているとしても構造的に弱い。これに対し、本発明によれば、超微粒子のサイズ効果により超微粒子が構造的に弱い部分に入り込むので、蒸着膜の充填密度を向上させガスバリア性を向上させることができる。特に、大面積のガスバリアフィルムを効率良く製造するためにロールで連続して基材上に蒸着膜を高速で成膜した場合には、構造欠陥の多い蒸着膜となりやすいが、本発明においては、この蒸着膜の欠陥部分に超微粒子が入り込むので、構造欠陥の多い蒸着膜である場合にはガスバリア性を飛躍的に向上させることが可能である。
また、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することにより第2無機層を形成する場合には、超微粒子特有のサイズ効果により、焼結温度を、通常の焼結温度と比較して低くすることができる。そのため、耐熱性が比較的低い基材も用いることが可能となる。
さらに本発明においては、第1無機層および第2無機層を設けることにより、水蒸気や酸素に対するバリア性を得ることができるので、従来のように厚膜の蒸着膜を設ける必要がないため、低コスト化および歩留まり向上が図れる。
また、本発明における超微粒子の平均粒径は可視光領域の波長よりも小さいので、超微粒子による光散乱を抑制することができる。このため、高い透明性を有する第2無機層とすることができる。
以下、このようなガスバリアフィルムの各構成について説明する。
1.第2無機層
本発明に用いられる第2無機層は、後述する第1無機層上に形成され、超微粒子で形成された膜である。
ここで、「超微粒子で形成された膜」とは、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することにより得られる膜をいう。超微粒子で形成された膜であることは、走査型電子顕微鏡(SEM)観察写真(倍率:5万倍以上)により確認することができる。図2(a),(b)に超微粒子で形成された膜の断面および上面のSEM写真の一例をそれぞれ示す。また比較として、図3にスパッタリング法で形成された蒸着膜の断面のSEM写真の一例を示す。図3に例示するように、蒸着膜では断面にて柱状の粒子が確認できる。一方、図2に例示するように、超微粒子で形成された膜では、上面および断面のいずれにおいても柱状の粒子を確認できない。したがって、第2無機層の断面のSEM写真において、柱状の粒子を確認できない場合には、第2無機層は超微粒子で形成された膜であるということができる。
また、ゾルゲル法により形成される膜も、柱状の粒子を確認できないものではあるが、ゾルゲル法では分子レベルで液体である塗工液を塗布し硬化させて成膜するのに対し、本発明においては超微粒子を焼結させて成膜するため、ゾルゲル法により形成される膜と、超微粒子で形成された膜とでは、構造的に異なるものとなる。なお、膜の構造が異なることは、高倍率のSEM観察により確認することができる。
また、「超微粒子」とは、平均粒径が100nm以下の無機材料からなる微粒子であり、分散媒中で個々に独立して均一に分散する微粒子をいう。なお、このような超微粒子については、特開2002−121437公報や特開2005−81501公報等を参照することができる。
本発明に用いられる超微粒子は、ガスバリア性を発現するものであれば特に限定されるものではなく、ガスバリアフィルムの用途に応じて適宜選択される。
超微粒子としては、例えば無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物の超微粒子を挙げることができる。具体的に、無機酸化物としては、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリム、酸化リチウム、酸化カリウム等が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化ケイ素等が挙げられる。無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、無機酸化物および無機窒化物の混合系であってもよい。
また、上記超微粒子としては、金属の超微粒子を用いることもできる。具体的に、金属としては、In、Al、Ti、Ta、Zn、Sn、Y、Ge、Pb、Zr、アルカリ金属(Li、Na、K)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)等が挙げられる。
さらに、上記超微粒子としては、表面が酸化された状態である金属の超微粒子を用いることもできる。金属としては、上述したものが挙げられる。
本発明のガスバリアフィルムを例えば食品や医薬品等の包装材料として用いる場合には、超微粒子として、安全性が高いものを用いることが好ましい。また、内容物を外から確認できるように、超微粒子は透明性を有することが好ましい。このような超微粒子としては、上述した無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物の超微粒子、金属の超微粒子、ならびに表面が酸化された状態である金属の超微粒子の中から、所望の性質を有するものを適宜選択すればよい。
この場合には、上述した中でも、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子が好ましく用いられる。酸化ケイ素、窒化ケイ素、または酸化窒化ケイ素の超微粒子で形成された膜は、第1無機層との親和性が良く、製造の安定性や安全性が高く、コスト的にも有利であるからである。
またこの場合、酸化インジウム、インジウム、および表面が酸化された状態であるインジウムの超微粒子も好ましく用いられる。超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することにより第2無機層を形成する場合には、このようなインジウムを含む超微粒子を用いることにより、焼結温度をより低温にすることができるからである。
また、本発明のガスバリアフィルムを例えば有機ELディスプレイに適用する場合には、超微粒子は絶縁性および透明性を有することが好ましい。有機ELディスプレイに適用されるガスバリアフィルムには、絶縁性および透過性が要求されるからである。このような超微粒子としては、上述した無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物の超微粒子、ならびに表面が酸化された状態である金属の超微粒子を挙げることができる。
この場合には、上述した中でも、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子が好ましく用いられる。これらの超微粒子を用いることにより、絶縁性を高めることができるからである。また、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することにより第2無機層を形成する場合には、酸化インジウムの超微粒子を用いることにより、焼結温度をより低温にすることができるからである。さらに、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素の超微粒子で形成された膜は、第1無機層等との密着性が良好であるからである。
またこの場合、表面が酸化された状態である、In(インジウム)、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子も好ましく用いられる。インジウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属は酸化性が高いため、比較的低い温度での焼成でも酸化が促進されるからである。表面が酸化された状態である金属の超微粒子は、絶縁性を有する。
また、上記超微粒子は、焼結温度が350℃以下であることが好ましい。焼結温度が上記範囲である超微粒子を用いることにより、第2無機層形成時の焼成温度をより低温にできる。また、超微粒子の焼結温度は低ければ低いほどよいが、通常は下限が180℃程度である。金属の中には融点が180℃未満であるものもあり、そのような金属を含む超微粒子の焼結温度は通常180℃未満となるが、融点が180℃未満である金属は、非常に酸化しやすく、焼結温度の上昇につながるため、焼結温度の下限は上記範囲とする。
ここで、焼結とは、超微粒子の集合体を高温に加熱した場合に、焼き固まって緻密な多結晶体となる現象をいう。超微粒子は、熱力学的に非平衡な状態にあり、表面積を減少する方向に物質移動が起こり、その結果、粒子と粒子の間に結合が生じて緻密化する。つまり、焼結の駆動力は、系の表面エネルギーを最小にしようとする力である。また、焼結温度とは、超微粒子の溶融点以下の温度で超微粒子の集合体を加熱したときに、超微粒子同士が緻密化して焼き固まる温度をいう。
本発明において、上記焼結温度は、示差熱分析(DTA:differential thermal analysis)により測定することができる。DTAでは、試料と基準物質(一般的にはアルミナ)との温度差を測定して、転移温度を求めることができるものであり、試料および基準物質に熱を加えたときに生じる温度差(試料と基準物質との温度差で判断する)により、焼結温度を求めることができる。すなわち、試料および基準物質を同一雰囲気にて加熱した場合に、基準物質の温度が上昇しているのに対して、試料の温度が上昇していない場合には、超微粒子の焼結に熱が費やされており、吸熱現象が起きているということができる。したがって、吸熱現象が見られる温度、すなわちDTA曲線における吸熱開始温度を、本発明でいう焼結温度とする。
なお、上記焼結温度の測定には、リガク製のTG−DTA装置(TG 8120)を用いることとする。
さらに、上記超微粒子は、融点がおおよそ700℃以下である金属を含むことが好ましい。金属単体としての融点が上記範囲のように比較的低ければ、超微粒子の焼結温度も比較的低くなると予想されるからである。このような金属としては、例えばAl(660℃)、In(156.4℃)、Mg(651℃)、Sn(231.85℃)、Zn(419.43℃)、Pb(327.5℃)、Na(97.5℃)、Li(186℃)、K(62.3℃)等が挙げられる。なお、括弧内の数字は融点である。
上記超微粒子は、後述する第1無機層に用いられる材料と同一の材質であってもよく異なる材質であってもよいが、同一の材質であることが好ましい。同一の材質であれば、膜応力を低減することができるとともに、密着性が良好であるからである。
また、超微粒子の平均粒径としては、第1無機層のピンホール等の欠陥を塞ぐことが可能であればよく、具体的には0.5nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1nm〜50nm、さらに好ましくは1nm〜10nmの範囲内である。平均粒径が小さすぎるものは製造が難しく、一方、平均粒径が大きすぎると、第1無機層のピンホール等の欠陥を塞ぐことが困難となる場合があり、また超微粒子特有のサイズ効果による焼結温度の低下が期待できなくなるからである。
なお、上記平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察写真(高倍率)により確認することができる。
本発明に用いられる第2無機層は、透明性を有していても有さなくてもよく、ガスバリアフィルムの用途に応じて適宜選択される。
第2無機層に透明性が要求される場合には、第2無機層の可視光領域における透過率が60%以上であることが好ましく、中でも80%以上、特に90%以上であることが好ましい。
一方、第2無機層に透明性が要求されない場合には、第2無機層の可視光領域における透過率が50%以下であることが好ましい。上記透過率が50%以下である第2無機層とするには、例えば金属の超微粒子を用いたり、第2無機層を厚膜にしたりすればよい。一般に、金属の膜は無機酸化等の膜に比べてガスバリア性が高いので、金属の超微粒子を用いることによりガスバリア性を高めることができる。また、第2無機層を厚膜にすることによってもガスバリア性を高めることができる。このように、第2無機層の透過率を50%以下とすることにより、ガスバリア性を向上させることが可能である。
なお、上記透過率は、波長380nm〜800nmの範囲内において、島津製作所(株)社製 UV−3100を用いて測定した値の平均値である。
上記第2無機層の膜厚としては、第1無機層のピンホール等の欠陥を塞ぐことができる厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には5nm〜2000nmの範囲内で設定することができ、好ましくは50nm〜500nmの範囲内である。第2無機層の膜厚が厚すぎると、透過率が低下したり、また第1無機層からの剥離が生じたりする可能性があるからである。一方、第2無機層の膜厚が薄すぎると、第1無機層に存在するピンホール等を塞ぐことが困難となるからである。
本発明においては、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することによって第2無機層を形成することが好ましい。すなわち、第2無機層は、超微粒子で形成された塗膜であることが好ましい。このような方法で第2無機層を形成することにより、超微粒子で効果的にピンホールを塞ぐことができるとともに、超微粒子特有のサイズ効果によって焼結温度を例えば基材の耐熱温度以下まで低くすることができる。
なお、第2無機層の形成方法については、後述する「B.ガスバリアフィルムの製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
2.第1無機層
本発明に用いられる第1無機層は、蒸着膜である。
第1無機層の形成方法としては、蒸着法であれば特に限定されるものではない。なお、第1無機層の形成方法については、後述する「B.ガスバリアフィルムの製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
上記第1無機層は、ガスバリア性を発現するものであれば特に限定されるものではなく、ガスバリアフィルムの用途に応じて適宜選択される。第1無機層に透明性や絶縁性が要求される場合には、例えば無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物等が好ましく用いられる。具体的に、無機酸化物としては、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリム、酸化リチウム、酸化カリウム等が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化ケイ素等が挙げられる。また、無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素等が挙げられる。一方、第1無機層に特に透明性や絶縁性が要求されない場合には、金属を用いることができ、例えばSi、Al、Zr、Ti、Sn、In、Zn、Sb、Fe、Ni、Co、Cu、Ag等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上述した中でも、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。これらの材料は、基材や第2無機層等との密着性が良好であり、第2無機層との親和性が良く、製造の安定性や安全性が高く、コスト的にも有利であるからである。
上記第1無機層は、単層の蒸着膜であってもよく、複数の蒸着膜が積層されたものであってもよい。図4に、二層の蒸着膜12aおよび12bが積層された第1無機層2を有するガスバリアフィルム10の例を示す。図4に例示するように下層の蒸着膜12aにピンホールP1が存在する場合、図示しないが例えば蒸着膜12a上に直接第2無機層を形成すると、ピンホールP1部分のガスバリア性が低下する可能性がある。一方、図4に例示するように二層の蒸着膜12aおよび12bが積層されていると、下層の蒸着膜12aのピンホールP1部分には上層の蒸着膜12bが形成され、さらにその上に第2無機層3が形成されているので、ピンホールP1部分のガスバリア性の低下を防ぐことができる。また、上層の蒸着膜12bにピンホールP2が存在しても、上層の蒸着膜12bのピンホールP2部分の下には下層の蒸着膜12aが形成され、上には第2無機層3が形成されているので、同様にピンホールP2部分のガスバリア性の低下を防ぐことができる。複数の蒸着膜を積層する場合、上下の蒸着膜で同一部分にピンホールが生じるのは極めて稀であると考えられるので、複数の蒸着膜からなる第1無機層と、第2無機層とを積層することにより、さらにガスバリア性を向上させることが可能である。蒸着膜は、異物等によるピンホールなどの表面欠陥の他に、構造欠陥などもあり、上層の蒸着膜を形成しても下層の蒸着膜のピンホール部分は、構造的に弱い部分となるが、そのような構造的に弱い部分に超微粒子が入り込むので、蒸着膜の充填密度が向上しガスバリア性が向上するのである。
第1無機層が複数の蒸着膜が積層されたものである場合、蒸着膜の積層数としては特に限定されるものではないが、通常は2層〜4層程度であり、好ましくは2層または3層である。積層数が多すぎると透過率が低下し、また高コストになるからである。この際、積層する蒸着膜の組み合わせとしては、同種、異種を問わない。
本発明に用いられる第1無機層は、透明性を有していても有さなくてもよく、ガスバリアフィルムの用途に応じて適宜選択される。
第1無機層に透明性が要求される場合には、第1無機層の可視光領域における透過率が60%以上であることが好ましく、中でも80%以上、特に90%以上であることが好ましい。
一方、第1無機層に透明性が要求されない場合には、第1無機層の可視光領域における透過率が50%以下であることが好ましい。上記透過率が50%以下である第1無機層とするには、例えば金属を用いたり、金属と無機酸化物等とを併用して金属リッチな蒸着膜としたり、第1無機層を厚膜にしたりすればよい。一般に、金属の蒸着膜は無機酸化等の蒸着膜に比べてガスバリア性が高いので、金属の蒸着膜や金属リッチな蒸着膜とすることによりガスバリア性を高めることができる。また、第1無機層を厚膜にすることによってもガスバリア性を高めることができる。このように、第1無機層の透過率を50%以下とすることにより、ガスバリア性を向上させることが可能である。
なお、上記透過率の測定方法については、上記第2無機層の項に記載した方法と同様である。
上記第1無機層の膜厚は、上述した材料により適宜選択される。通常は5nm〜5000nmの範囲内であり、好ましくは5nm〜500nmの範囲内である。また、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を用いた場合は、10nm〜300nmの範囲内であることがより好ましい。第1無機層の膜厚が薄すぎると、ガスバリア性が低下するおそれがあるからである。一方、第1無機層の膜厚が厚すぎると、第1無機層形成時にクラック等が生じる可能性があり、また透過率が低下する場合があるからである。
3.基材
本発明に用いられる基材は、樹脂からなるものであり、第1無機層および第2無機層を保持することができるものであれば、特に限定されるものではないが、所定の耐熱性を有することが好ましい。基材は、第2無機層を形成する際の焼成工程に耐える必要があるからである。
基材の耐熱性としては、80℃以上、中でも120℃以上、特に180℃以上を実現することが好ましい。
また、30℃〜150℃の範囲内において、線膨張係数が70ppm/℃以下であることが好ましい。上記線膨張係数が上記値を超えると、高温で基材寸法が安定せず、熱膨張および収縮に伴い、ガスバリア性能が劣化したり、クラックが生じたり、第1無機層等から剥離したりする可能性があるからである。なお、上記線膨張係数とは、幅5mm、長さ20mmのサンプルを用い、長さ方向に一定荷重(2g)をかけ、25〜200℃までの温度範囲を昇温速度で5℃/分で測定される寸法変動量をいうこととする。
また、本発明のガスバリアフィルムを食品や医薬品等の包装材料として用いる場合には、内容物を外から確認できるように、基材は透明であることが好ましい。さらに、本発明のガスバリアフィルムを有機ELディスプレイに適用する場合であって、基材側から光を取り出す場合にも、基材は透明であることが好ましい。
このような基材に用いられる樹脂としては、例えばポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、UV硬化型メタクリル樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
また、上記基材に用いられる樹脂としては、例えばシクロアルキル骨格を有した極性高分子を挙げることができる。具体的には、シクロアルキル骨格を有したアクリレート化合物もしくはメタアクリレート化合物およびその誘導体等を挙げることができる。中でも、特開平11−222508号公報に示されるようなシクロアルキル骨格を有した(メタ)アクリレート化合物(アクリレート化合物もしくはメタアクリレート化合物を意味する。)およびその誘導体を含む樹脂組成のものを挙げることができる。
さらに、本発明における基材は、上述した樹脂と、例えば環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂等と2種以上併せて用いることができる。
また、上記基材は、耐溶媒性や寸法安定性に優れていることが好ましい。これにより、基材上に第1無機層および第2無機層等を安定して形成できるからである。
基材の厚みは、10μm〜500μmの範囲内、中でも50〜400μmの範囲内、特に100〜300μmの範囲内であることが好ましい。基材の厚みが厚すぎると、耐衝撃性に劣ることや、巻き取り時に巻き取りが困難となり、ガスバリア性が劣化する可能性があるからである。また、基材の厚みが薄すぎると、機械適性が悪く、ガスバリア性が低下する可能性があるからである。
また、本発明においては、基材を洗浄して用いることが好ましく、その洗浄方法としては、酸素、オゾン等による紫外光照射処理や、プラズマ処理、アルゴンスパッタ処理等を行うことが好ましい。これにより、水分や酸素の吸着のない状態とすることができるからである。
5.ガスバリアフィルム
本発明においては、第1無機層上に第2無機層を設けることにより、水蒸気や酸素に対するバリア性を得ることができる。本発明のガスバリアフィルムのガスバリア性としては、酸素ガス透過率が1cc/m/day/atm以下、中でも0.5cc/m/day/atm以下であることが好ましい。また、水蒸気透過率が、1g/m/day以下、中でも0.5g/m/day以下であることが好ましい。酸素ガス透過率および水蒸気透過率が上述した範囲であることにより、高いガスバリア性を実現することができるからである。
なお、上記酸素ガス透過率は、測定温度23℃、湿度90%Rhの条件下で、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製、OX−TRAN 2/20:商品名)を用いて測定した値である。また、上記水蒸気透過率は、測定温度37.8℃、湿度100%Rhの条件下で、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN−W 3/31:商品名)を用いて測定した値である。
本発明のガスバリアフィルムは、例えば食品、医薬品、化学薬品、電子部材等の包装に用いることができる。また本発明のガスバリアフィルムは、フィルム液晶ディスプレイ用や、有機ELディスプレイ用のガスバリアフィルムとして用いることもできる。
また本発明においては、基材と第1無機層との間にアンカー層が形成されていてもよい。アンカー層を設けることにより、基材と第1無機層との密着性を向上させることができる。アンカー層には、例えばポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、アルキルチタネート等を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アンカーコート層の形成方法としては、例えばロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等が挙げられる。
B.ガスバリアフィルムの製造方法
次に、本発明のガスバリアフィルムの製造方法について説明する。
本発明のガスバリアフィルムの製造方法は、樹脂からなる基材上に少なくとも一層の蒸着膜を形成する第1無機層形成工程と、上記第1無機層上に超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する第2無機層形成工程とを有することを特徴とするものである。
図5は、本発明のガスバリアフィルムの製造方法の一例を示す工程図である。本発明においては、まず樹脂からなる基材1上に蒸着法により蒸着膜を形成して第1無機層2とする(第1無機層形成工程、図5(a))。次に、第1無機層2上に、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液23を塗布し、焼成して、第2無機層3を形成する(第2無機層形成工程、図5(b),(c))。
本発明によれば、蒸着膜である第1無機層にピンホール等の欠陥が存在する場合でも、第1無機層上に超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布して第2無機層を形成するので、超微粒子により第1無機層のピンホール等の欠陥を塞ぐことができる。また、塗布によるレベリング性によっても第1無機層のピンホール等の欠陥を効果的に塞ぐことができるので、ガスバリア性に優れるガスバリアフィルムを得ることができる。
さらに、第2無機層を形成する際、超微粒子が、一般的な温度よりもはるかに低温で緻密に焼結するため、耐熱性が比較的低い基材も用いることができる。
以下、本発明のガスバリアフィルムの製造方法の各工程について説明する。
1.第1無機層形成工程
本発明における第1無機層形成工程は、基材上に少なくとも一層の蒸着膜を形成する工程である。
第1無機層の形成方法としては、蒸着法であれば特に限定されるものではなく、PVD法(物理的蒸着法)およびCVD法(化学的蒸着法)のいずれであってもよいが、中でもPVD法が好ましく用いられる。PVD法で形成された蒸着膜は、CVD法に比べてピンホール等の欠陥や製造面で構造的な欠陥が生じやすいが、本発明においては第2無機層中の超微粒子によりピンホール等の欠陥を塞ぐことができるので、本発明の効果が顕著に発揮されるからである。また、CVD法に比べてPVD法はコスト的に有利である。
PVD法としては、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの一般的な方法が用いられる。特に、生産性が高い真空蒸着法あるいはイオンプレーティング法を用いた場合には、ガスバリア性向上の効果が顕著に発揮されるので、有効である。
また本工程においては、複数の蒸着膜を積層して第1無機層としてもよい。複数の蒸着膜を積層することにより、ガスバリア性を高めることができるからである。なお、蒸着膜の積層数については、上記「A.ガスバリアフィルム」の第1無機層の項に記載したものと同様である。
この際、ピンホールがないように蒸着膜を積層することが好ましい。具体的には、基材上に下層の蒸着膜を形成し、下層の蒸着膜表面を研磨した後に、その上に上層の蒸着膜を形成することが好ましい。例えば図6(a)に示すように樹脂からなる基材1上に蒸着膜12aを形成したときに、この蒸着膜12a表面に異物31が存在する場合には、蒸着膜12表面をサンドペーパー32等を用いて研磨することによって、図6(b)に例示するように異物31を除去することができる。そして、図6(c)に例示するように蒸着膜12a上にさらに蒸着膜12bを積層することで、異物31が存在していた部分のガスバリア性を補強することができる。次いで、図6(d)に例示するように二層の蒸着膜12aおよび12bからなる第1無機層2上に第2無機層3を形成することによって、ガスバリア性を得ることができる。
また、ピンホールがないように蒸着膜を積層するには、上述したように二層の蒸着膜を積層する以外にも、研磨した蒸着膜上にさらに複数層の蒸着膜を形成し、多層化してもよい。
研磨方法としては、例えば適当な砥粒をシート上に散布して接着したサンドペーパー等を用いて行なう方法や、化学的研摩法もしくは機械的研摩法、またはそれらを併用したケミカルメカニカルポリッシング(CMP)等を用いることができる。
化学的研摩法は、例えば布、不織布、もしくはポリウレタン樹脂等の発泡体からなる研摩部材に、研摩剤としてエッチング性の液体を供給して行うものである。
機械的研摩法は、例えば布、不織布、もしくはポリウレタン樹脂等の発泡体を研摩部材とし、コロイダルシリカもしくは酸化セリウムの微粉末を研摩剤として含浸させて用いるか、あるいは研摩剤としてコロイダルシリカもしくは酸化セリウムを分散させた分散液を供給して行なうものである。
上記いずれの方法においても、研磨は、対象物を回転させる等して対象物と研磨部材とを相対的に移動させつつ、蒸着膜表面に研摩部材を接触させ、必要に応じて研摩剤を供給しながら行なうことが好ましい。また、異物がすべて除去されるまで研磨を行なうことがより好ましい。
2.第2無機層形成工程
本発明における第2無機層形成工程は、上記第1無機層上に超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する工程である。
本工程は、超微粒子の種類により3つの態様に分けることができる。第1態様は、無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子を用いるものであり、この無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子で形成された膜が得られる。第2態様は、金属の超微粒子を用いるものであり、表面が酸化された状態である金属の超微粒子で形成された膜が得られる。第3態様は、金属の超微粒子を用いるものであり、金属の超微粒子で形成された膜が得られる。以下、各態様に分けて説明する。
(1)第1態様
本態様においては、無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子を溶剤に分散させた超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する。これにより、無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子で形成された膜が得られる。
本態様の第2無機層形成工程は、超微粒子分散液を調製する超微粒子分散液調製工程と、この超微粒子分散液を塗布する塗布工程と、この塗布工程で得られた塗膜を焼成する焼成工程とを有するものである。以下、各工程について説明する。
(i)超微粒子分散液調製工程
本態様に用いられる超微粒子分散液は、超微粒子が個々に独立して均一に分散したものであり、無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子を溶剤に分散させることにより調製される。
なお、無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物の超微粒子については、上記「A.ガスバリアフィルム」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
ここで、超微粒子分散液に用いられる超微粒子の平均粒径は、レーザー法により測定した値とする。平均粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を細くし、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。なお、上記平均粒径は、レーザー法による粒径測定機として、リーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)社製 粒度分析計 マイクロトラックUPA Model-9230を使用して測定した値である。
超微粒子の作製方法としては、特に限定されるものではなく、例えばガス中蒸発法、湿式還元法、有機金属化合物の高温雰囲気へのスプレーによる熱還元法等が用いられる。
ガス中蒸発法では、ガス雰囲気中でかつ溶剤の蒸気の共存する気相中で金属もしくはケイ素等を蒸発させ、蒸発した金属もしくはケイ素等を反応ガス(酸素、窒素等)と接触させて、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物等を形成し、これらを均一な超微粒子に凝縮させて溶媒中に分散し、分散液を得る方法である。このガス中蒸発法では、粒度の揃った超微粒子を得ることができる。ガス中蒸発法により得られた超微粒子を原料として、超微粒子分散液を調製するには、超微粒子分散液に使用する溶剤で置換を行えばよい。また、超微粒子の分散安定性を増すために、分散剤を添加してもよい。これにより、超微粒子が個々に独立して均一に分散され、かつ、流動性のある状態が保持されるようになる。
また例えば、以下のようにして酸化インジウムの超微粒子を作製することもできる。
塩化インジウム、硝酸インジウム、硫酸インジウム、酢酸インジウム、シュウ酸インジウム等のインジウム塩の水溶液を所定の温度に保持し、この水溶液と所定温度に保持されたアンモニウム化合物やアルカリ金属化合物等のアルカリ水溶液とを混合し、所定のpHで所定時間共沈反応を行い、水酸化物を沈殿させる。その後、所望により沈殿物をイオン交換水により繰返し傾斜洗浄し、上澄み液の電気伝導度が所定の値以下になった時点で、沈殿したインジウムの共沈水酸化物を濾別する。次いで、この共沈水酸化物ケーキを大気中で350〜800℃、好ましくは500〜800℃の温度で焼成処理し、酸化インジウム超微粒子を作製する。焼成後の粒子は凝集しているので、粉砕してその凝集粒子をほぐすことが好ましい。
上記共沈反応において、反応温度は一般に25〜70℃であり、反応時間は反応温度に依存するが、一般に30〜120分間であり、反応終了時のpHは5〜11である。
また、超微粒子分散液に用いられる溶剤としては、使用する超微粒子によって適宜選択されるものであり、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル等のエステル類;メトキシエタノール、エトキシエタノール等のエーテルアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、トリメチルペンタン等の長鎖アルカン;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の環状アルカン;などを挙げることができる。さらに、水を用いることもできる。
これらは、単独で用いても、混合溶剤として用いてもよい。例えば、長鎖アルカンの混合物であるミネラルスピリットであってもよい。
例えば上述の方法により得られた酸化インジウム超微粒子を用いて超微粒子分散液を調製する際に用いられる溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、4−ヒドロキシ−4メチル−2ペンタノン等のケトン類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのアルキルエーテル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;などが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で、もしくは2種以上を混合して使用することができる。
さらに、上記溶剤は、後述する超微粒子分散液を塗布した後に行われる乾燥および焼成の際に蒸発するものであることが好ましい。特に、溶剤の沸点が120℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは170℃以上、最も好ましくは190℃以上である。溶剤の沸点が上記範囲より低いと、例えば乾燥時に一気に蒸発しやすくなるので、超微粒子が凝集しやすくなり、均一な膜が得られない場合があるからである。一方、溶剤の沸点の上限は、焼成温度の上限から350℃程度とされる。
このような溶剤としては、上記の中でも、テルピネオール、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ドデシルベンゼン、ミネラルスピリットなどが好ましく用いられる。
上記溶剤の使用量は、使用する超微粒子に応じて、塗布しやすく、かつ所望の膜厚を得ることができるように適宜選択すればよい。具体的には、超微粒子分散液中の超微粒子の濃度が、1〜50wt%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜40wt%の範囲内である。超微粒子の濃度が上記範囲未満であると、第1無機層のピンホール等の欠陥を塞ぐことが困難となり、また所望の膜厚が得られない可能性があるからである。一方、超微粒子の濃度が上記範囲を超えると、超微粒子分散液の粘度が高くなり流動性が低下するので、これもまた第1無機層のピンホール等の欠陥を塞ぐことが困難となり、さらには第2無機層表面の平坦性が損なわれる可能性があるからである。
また、超微粒子分散液の粘度としては、20℃において100cP以下であることが好ましく、中でも10cP以下であることが好ましい。粘度が上記範囲であれば、第1無機層のピンホール等の欠陥を塞ぐとともに、平坦な膜を形成できるからである。
(ii)塗布工程
本態様においては、次に、上記超微粒子分散液を塗布して塗膜を形成する。
超微粒子分散液の塗布方法としては、第1無機層のピンホール等の欠陥を塞ぐことができ、かつ均一な厚みに塗布できる方法であればよく、例えばスピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
上記超微粒子分散液を塗布して塗膜を形成した後は、塗膜を乾燥させて、溶剤を除去してもよい。乾燥温度としては、溶剤の種類に応じて適宜選択されるが、通常は50℃〜100℃程度である。
(iii)焼成工程
本態様においては、次に、上記塗膜を焼成する。
焼成温度は、使用する超微粒子の種類等によって適宜選択されるものであるが、150℃〜350℃程度であることが好ましく、より好ましくは150℃〜250℃の範囲内であり、さらに好ましくは150℃〜220℃の範囲内である。焼成温度が低すぎると超微粒子が十分に焼結しない可能性があり、また、焼成温度が高すぎると基材等に熱的ダメージを与えるおそれがあるからである。超微粒子を構成する無機酸化物等を単体で焼結するのに必要な温度は一般に400〜700℃程度であるが、本発明においては超微粒子のサイズ効果により、150℃〜350℃という極めて低い温度で焼成することができる。
また、焼成時間についても、使用する超微粒子の種類等によって適宜選択されるものであるが、通常は10分〜1時間程度であり、好ましくは15分〜30分である。
本工程においては、酸化性雰囲気中で焼成してもよく、また超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成し、その後、酸化性雰囲気中で焼成してもよい。すなわち、一段階プロセスで焼成してもよく、二段階プロセスにより焼成してもよい。二段階プロセスによる焼成では、超微粒子の表面だけがさらに酸化されて、焼結が不十分となるのを回避できるからである。また、二段階で焼成するので、低温焼成でさらに緻密な膜を形成することができるからである。
超微粒子が酸化しない雰囲気としては、例えば真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気等が挙げられる。
不活性ガス雰囲気としては、例えば希ガス、二酸化炭素、窒素等の不雰囲気が挙げられる。
還元性雰囲気としては、例えば水素、一酸化炭素、低級アルコール等の雰囲気が挙げられる。低級アルコールとしては、炭素数が1〜6の低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等が挙げられる。
また、真空雰囲気が、例えば希ガス、二酸化炭素、窒素等の不活性ガス;酸素、水蒸気等の酸化性ガス;水素、一酸化炭素、低級アルコール等の還元性ガス;または上記不活性ガスと酸化性ガスもしくは還元性ガスとの混合ガス;を含んでいてもよい。真空雰囲気の場合に酸化性ガスを導入すると、超微粒子は酸化せずに、超微粒子に付着している有機化合物(溶剤や分散剤)だけを燃焼させる効果がある。真空状態は、単にポンプで引いただけでもよく、また一旦ポンプ引きした後、不活性ガス、還元性ガス、酸化性ガスを導入してもよい。真空雰囲気中での焼成は、通常、10−5〜10Pa程度で行うことができる。
酸化性雰囲気は、酸素、水蒸気、酸素含有ガス(例えば空気等)、水蒸気含有ガスなどを含んでいてもよい。
本態様においては、超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成した後、酸化性雰囲気中で焼成する前に、塗膜を乾燥させてもよい。これにより、溶剤や分散剤を除去することができるからである。溶剤や分散剤の除去は、焼成時に行ってもよい。
また、酸化性雰囲気中での焼成後、さらに還元性雰囲気中で焼成してもよい。
さらに、焼成時に紫外線照射を行ってもよい。時間短縮・低温化の面でさらに効果がある。また、焼成では、大気圧プラズマ等を用いた、いわゆるプラズマ焼結を用いることもできる。
(2)第2態様
本態様においては、金属の超微粒子を含有する超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する。これにより、表面が酸化された状態である金属の超微粒子で形成された膜が得られる。本態様においては、焼成時に酸化および焼結が同時に進行するため、表面が酸化された状態である金属の超微粒子で形成された膜が形成されるのである。
本態様の第2無機層形成工程は、超微粒子分散液を調製する超微粒子分散液調製工程と、この超微粒子分散液を塗布する塗布工程と、この塗布工程で得られた塗膜を焼成する焼成工程とを有するものである。なお、塗布工程および焼成工程については、上記第1態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、超微粒子分散液調製工程について説明する。
(i)超微粒子分散液調製工程
本態様に用いられる超微粒子分散液は、超微粒子が個々に独立して均一に分散したものであり、金属の超微粒子を溶剤に分散させることにより調製される。
なお、金属の超微粒子については、上記「A.ガスバリアフィルム」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
超微粒子の作製方法としては、特に限定されるものではなく、例えばガス中蒸発法、湿式還元法、有機金属化合物の高温雰囲気へのスプレーによる熱還元法等が用いられる。得られた超微粒子の表面は、金属状態であることが好ましいが、一部が酸化された状態であってもよい。
ガス中蒸発法は、ガス雰囲気中でかつ溶剤の蒸気の共存する気相中で金属を蒸発させ、蒸発した金属を均一な超微粒子に凝縮させて溶媒中に分散し、分散液を得る方法である。このガス中蒸発法では、粒度の揃った金属超微粒子を得ることができる。ガス中蒸発法により得られた金属超微粒子を原料として、超微粒子分散液を調製するには、超微粒子分散液に使用する溶剤で置換を行えばよい。また、超微粒子の分散安定性を増すために、分散剤を添加してもよい。これにより、超微粒子が個々に独立して均一に分散され、かつ、流動性のある状態が保持されるようになる。
なお、ガス中蒸発法による超微粒子の作製方法ついては、特許第2561537号公報や特開2005−183054公報などに詳しい。
また、超微粒子の作製方法として、液相還元法等の化学還元法を用いることができる。この場合、超微粒子を製造するための原料として、金属含有有機化合物である還元用原料を使用することができる。
化学還元法は、還元剤を用いる化学反応により超微粒子分散液を調製する方法である。この化学還元法により得られる製造した微粒子の場合、粒径を任意に調整可能である。化学還元法では、まず、原料に分散剤を添加した状態で、所定の温度で原料を加熱分解させるか、あるいは、還元剤、例えば水素や水素化ホウ素ナトリウム等を利用して、金属超微粒子を発生させる。次いで、発生した金属超微粒子のほぼ全量を独立分散状態で回収する。得られた分散液を、超微粒子分散液に使用する溶剤に置換すれば、所望の超微粒子分散液が得られる。得られた超微粒子分散液は、真空中での加熱により濃縮しても、安定な分散状態を維持している。
なお、化学還元法による超微粒子の作製方法ついては、特開2005−81501公報などに詳しい。
なお、超微粒子分散液に用いられる溶剤、ならびに、超微粒子分散液の濃度および粘度等については、上記第1態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(3)第3態様
本態様においては、金属の超微粒子を含有する超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する。これにより、金属の超微粒子で形成された膜が得られる。
本態様の第2無機層形成工程は、超微粒子分散液を調製する超微粒子分散液調製工程と、この超微粒子分散液を塗布する塗布工程と、この塗布工程で得られた塗膜を焼成する焼成工程とを有するものである。なお、塗布工程については、上記第1態様に記載したものと同様であり、超微粒子分散液調製工程については、上記第2態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、焼成工程について説明する。
(i)焼成工程
本態様においては、金属の超微粒子で形成された膜を形成するので、超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成を行う。なお、超微粒子が酸化しない雰囲気については、上記第1態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、焼成温度および焼成時間については、上記第1態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例]
(第1無機層の形成)
透明基材として、DAIKIN製 フッ素樹脂フィルム(商品名:ネオフロンFEP、厚み:100μm)を準備した。この透明基材を定法にしたがって洗浄した。
透明基材上に下記の条件でスパッタリング法により酸化ケイ素膜を2回成膜して、厚み200nmの第1無機層を形成した。各成膜工程の間では、#800程度の研磨テープを用いて純水を噴霧しながらラッピング研磨を行った。次いで、下層の酸化ケイ素膜に対し、回転研磨機(Speed Fam社製)を使用してアルミナの微粒子研磨剤を噴霧しながら鏡面研磨(ポリッシング)を行った。
酸化珪素膜の成膜条件
・RFスパッタ電力:50W/cm、周波数13.56MHz
・成膜レート:10nm/分
・成膜圧力:0.5Pa
・SiOターゲット:4N(密度2.25g/cm
(第2無機層の形成)
ヘリウムガス圧力0.5torrの条件下で高周波誘導加熱を用いるガス中蒸発法によりIn微粒子を生成する際に、生成過程のIn微粒子にα−テルピネオールとドデシルアミンとの20:1(容量比)の蒸気を接触させ、冷却捕集してIn微粒子を回収し、α−テルピネオール溶媒中に独立した状態で分散している平均粒径10nmのIn微粒子を20重量%含有する分散液を調製した。この分散液(コロイド液)1容量に対してアセトンを5容量加え、攪拌した。極性のアセトンの作用により分散液中の微粒子は沈降した。2時間静置後、上澄みを除去し、再び最初と同じ量のアセトンを加えて攪拌し、2時間静置後、上澄みを除去した。この沈降物から、残留溶媒を完全に除去し、平均粒径10nmのIn微粒子を作製し、X線回折により、酸化されていない微粒子であることを確認した。この微粒子を10wt%の濃度にてテトラデカン中に分散させ、超微粒子分散液を得た。
この超微粒子分散液をスピンコート法により上記第1無機層上に塗布した。その後、塗膜を1×10−3Paの減圧下において230℃、10minの条件で焼成した。次いで、酸化性雰囲気(大気)中で、230℃、60minの焼成を行った。このときの膜厚は200nmであった。このようにして形成した第2無機層について、5cmの領域における大きさ1μm以上のピンホールを、光学顕微鏡写真(倍率=1000倍)にて観察した結果、検出できなかった。
[比較例]
実施例の第1無機層の成膜条件にて、透明基材上にスパッタリング法により酸化ケイ素膜を2回成膜して、無機層(厚み300nm)を形成した。各成膜工程の間では、実施例と同様にして研磨処理を行った。このようにして形成した無機層について、5cmの領域における大きさ1μm以上のピンホール数を、光学顕微鏡写真(倍率=1000倍)にて計数した結果は、実施例と同じであった。
[評価]
透明基材と、実施例および比較例のガスバリアフィルムについて、上述した方法により酸素透過率および水蒸気透過率を測定した。
DAIKIN製 フッ素樹脂フィルム(商品名:ネオフロンFEP、厚み:100μm)単体では、酸素透過率が300cc/m/day/atmであり、水蒸気透過率が0.7g/m/dayであった。また、比較例のガスバリアフィルムでは、酸素透過率が12cc/m/day/atmであり、水蒸気透過率が0.12g/m/dayであった。これに対し、実施例のガスバリアフィルムでは、酸素透過率が1.1cc/m/day/atm、水蒸気透過率が0.01g/m/dayとなり、高いガスバリア性が得られた。
本発明のガスバリアフィルムの一例を示す概略断面図である。 超微粒子で形成された膜のSEM写真である。 蒸着膜のSEM写真である。 本発明のガスバリアフィルムの他の例を示す概略断面図である。 本発明のガスバリアフィルムの製造方法の一例を示す工程図である。 本発明のガスバリアフィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。
符号の説明
1 … 樹脂からなる基材
2 … 第1無機層
3 … 第2無機層
10 … ガスバリアフィルム
12a,12b … 蒸着膜
23 … 超微粒子分散液

Claims (8)

  1. 樹脂からなる基材と、前記基材上に形成され、蒸着膜である第1無機層と、前記第1無機層上に形成され、超微粒子で形成された膜である第2無機層とを有するガスバリアフィルムであって、
    前記超微粒子が、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることを特徴とするガスバリアフィルム。
  2. 前記第1無機層が、複数の蒸着膜からなることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
  3. 前記超微粒子の焼結温度が350℃以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスバリアフィルム。
  4. 前記超微粒子の平均粒径が0.5nm〜100nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のガスバリアフィルム。
  5. 樹脂からなる基材上に少なくとも一層の蒸着膜を形成する第1無機層形成工程と、前記第1無機層上に超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する第2無機層形成工程とを有するガスバリアフィルムの製造方法であって、
    前記超微粒子が、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法
  6. 前記第2無機層形成工程にて、前記超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成し、その後、酸化性雰囲気中で焼成することを特徴とする請求項5に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  7. 前記第1無機層形成工程にて、前記基材上に下層の蒸着膜を形成し、前記下層の蒸着膜表面を研磨した後、前記下層の蒸着膜上に上層の蒸着膜を形成することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  8. 前記溶剤の沸点が120℃以上であることを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれかの請求項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
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