JP4692428B2

JP4692428B2 - 車両用回転電機の回転子とその製造方法

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Publication number: JP4692428B2
Application number: JP2006199383A
Authority: JP
Inventors: 中村　　重信
Original assignee: Denso Corp
Current assignee: Denso Corp
Priority date: 2006-07-21
Filing date: 2006-07-21
Publication date: 2011-06-01
Anticipated expiration: 2026-07-21
Also published as: US7569968B2; US20080018191A1; JP2008029124A

Description

本発明は、車両に搭載される交流発電機等の車両用回転電機の回転子とその製造方法に関する。

従来より、例えば、車両に搭載される交流発電機では、回転子を構成するランデル型の爪状磁極とステータとの間で磁束を確実に受け渡すため、この爪状磁極の側面間に永久磁石を介在させて、爪状磁極間の磁束の漏洩を防止する技術が公知となっている。さらに、この永久磁石が遠心力により径方向外側に飛び出して破損することを防止するための技術が知られている。

このような従来技術として、回転子の外周部に鍔部を設けるとともに永久磁石の保持部材を円環状の連結部でつなぎあわせたものを組み付けたもの（例えば、特許文献１参照。）や、回転子を組み付け後に爪状磁極の鍔部とともに磁石を挿入する部分を除去加工するもの（例えば、特許文献２参照。）が知られている。

一方、回転子は、最終工程で回転バランスを取るために切削されるのが通常である。このときに、切削で生じた鉄材や鉄粉が永久磁石によって回転子の溝部などに吸着してしまう。これらが、発電機の作動時に回転子の回転によって、ステータ内に持ち込まれて回転不良など種々の不具合を派生する可能性がある。また、永久磁石が回転子として組付完了するまでに工場内で保管されたり、搬送されたりする工程の途中段階で、工場内の微小鉄粉などを吸着してステータ内に持ち込まれ、上記と同様に種々の不具合を派生する可能性があった。よって、未着磁の磁石を組み付け、回転アンバランス補正加工も終了した後に、着磁する製造方法が考えられている（例えば、特許文献３参照。）。
特開平１０−３１３５６０号公報（第３−４頁、図１−９）米国特許第６，４８６，５８５号明細書（第１−３頁、図１−８）特開平６−１７８４７４号公報（第３−６頁、図１−１３）

ところで、特許文献１には着磁をどの時点で行うのかについて記載はないが、特許文献３に示されたように回転子製造の最終段階で着磁することは可能である。しかし、特許文献１では、磁石保持部材やそれら円環状に連結する部材が必要であり、部品点数や加工工数の増大によって永久磁石本体以外でのコストアップが大きいという問題があった。

また、特許文献２では永久磁石を最後に配置することは可能であるが、爪状磁極の鍔部とともに永久磁石を挿入する部分を除去加工するときの切削で生じた鉄材や鉄粉が、爪状磁極の内側に巻かれた界磁コイルを傷つけたり、爪状磁極と界磁コイル最外周との間に取り残され、発電時の不具合を生ずるおそれがあるという問題があった。

また、特許文献３では、永久磁石は爪状磁極間のみならず、爪状磁極の軸方向にも延びており、全体で円環形状を成している。このような形状は、特許文献３に記載されているように、磁性紛末を混入させた樹脂を成形したものであり、近年の車両用の高出力発電機においては磁束の漏洩を防止するためには磁力が不足しているとともに、高速回転に対する強度も不足し、よって、車両用発電機への採用は難しい。さらに、永久磁石を軸方向に全周にわたって包囲するため、磁石保持部材に用いる金属素材の使用量も多くなる。以上により、特許文献３に記載された磁石保持部材は製造コストが高くなるという問題があった。

本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、コスト低減が可能であり、信頼性低下を防止することができる車両用回転電機の回転子およびその製造方法を提供することにある。

上述した課題を解決するために、本発明の車両用回転電機の回転子は、回転軸に圧入される円筒状のボス部とボス部の軸方向端部から径方向外側に延びるディスク部とディスク部の外周端から互いに噛み合うように軸方向に延びて外周部に鍔部が形成された複数の爪状磁極とを有する一対のポールコアと、周方向に隣接する２つの爪状磁極の間に配置された複数の永久磁石および永久磁石を保持する金属製の複数の磁石保持部材とを備え、磁石保持部材が永久磁石の外周面と周方向両側面とを囲み、磁石保持部材が外周面と鍔部の間および周方向両側面と爪状磁極の周方向側面の間に配置されている。そして、永久磁石の軸方向端面に対向する一対のポールコアのそれぞれのディスク部には軸方向に凹部となる段差部が形成され、永久磁石および磁石保持部材の一部が段差部内に配置されている。ディスク部に形成された段差部内に永久磁石と磁石保持部材の一部を配置することで、永久磁石と磁石保持部材を周方向、径方向、軸方向に拘束することができ、拘束のためにこれらを円環状に連結する他の部材が不要になるため、部品点数や加工工数の増大を防止することができるとともに、単純な構造の磁石保持部材を用いることによる製造コストの低減が可能となる。

また、上述した永久磁石は、回転子の組み付け時は未着磁であり、車両用回転電機に回転子が組み込まれる前に着磁されることが望ましい。回転子の組み付けおよび外径などの切削加工や回転バランス取りのための切削加工を行なった後に、最後に永久磁石の着磁を行うことにより、あらかじめ着磁した永久磁石を組み付けることによって生じる信頼性低下の問題を回避することができる。

また、上述した段差部は、爪状磁極の周方向側面と鍔部の両方に連接して形成されていることが望ましい。段差部２４を爪状磁極の周方向側面と鍔部に連接して形成することにより、ポールコアを鍛造によって製造する場合に、個別の切削工程ではなく、鍛造工程で各段差部を形成することが可能になり、コストアップを抑制することができる。

また、本発明の車両用回転電機の回転子の製造方法は、上述した回転子の製造方法であって、永久磁石と磁石保持部材とを組み合わせた状態で回転軸方向の両側から加圧して保持する保持部と、回転軸方向に隣接する保持部をつなぎつつ永久磁石と磁石保持部材とを回転軸に対して傾斜させた傾斜部と、周方向に隣接する複数の傾斜部を爪状磁極部よりも外側で連結する連結部とを有する連結部材を用いて複数の永久磁石および複数の磁石保持部材を連結し、連結部材によって連結された複数の永久磁石および複数の磁石保持部材とを、一方のポールコアの爪状磁極の周方向側面に接するように配置した後に、一対のポールコアの爪状磁極によって永久磁石と磁石保持部材とを挟み込むように一対のポールコアの組み付けを行い、その後、連結部材を回転子の径方向外側へはがしている。複数の永久磁石と磁石保持部材を連結する連結部材は、回転子の組み付け時にのみ使用するため、回転子には残らず、また次の組み付けに再利用することができるので、材料費の低減とともに、永久磁石と磁石保持部材を爪状磁極に簡単な工程で組み付けることができることから、従来の磁極爪間に永久磁石が配置された回転子に比べてコスト低減が可能となる。

以下、本発明を適用した一実施形態の車両用回転電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、車両用回転電機として、内燃機関（図示せず）により回転駆動され車載電源（図示せず）等に電力を供給する車両用交流発電機を取り上げて説明する。

図１は、一実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。図１に示す車両用交流発電機１は、界磁極として機能する回転子２と、電機子として機能する固定子３と、回転子２および固定子３を収容するハウジング４と、固定子３に備わった電機子コイル５に誘起される交流電力を直流電力に変換する整流器６などにより構成されている。

回転子２は、プーリ９およびベルト（図示せず）を介して内燃機関により回転駆動される回転軸１０と、スリップリング１１を介して界磁電流の通電を受ける界磁コイル１２と、周方向に互いに対向し界磁電流により励磁される磁束の受け渡しを行う複数の爪状磁極１３を有するとともに回転軸１０に組み付けられる一対のポールコア１４と、互いに向かい合う一対の爪状磁極１３の間に介在して磁束の漏洩を減少する方向に着磁された複数の永久磁石１５と、永久磁石１５を保護するとともに一対の爪状磁極１３の間に永久磁石１５を保持する磁石保持部材１６と、各ポールコア１４の軸方向両端面に取り付けられた冷却ファン１７などを備える。

ポールコア１４は、回転軸１０に圧入して組み付けられる円筒状のボス部２１と、ボス部２１の軸方向端部から径方向外側に延びるディスク部２２と、ディスク部２２の外周端から互いに噛み合うように軸方向に延びる複数の爪状磁極１３とを備えている。

図２は、ポールコア１４の主に爪状磁極１３の形状を示す部分図である。図２に示すように、爪状磁極１３は、横断面がほぼ台形形状を有し、先端部に近づくほど先細形状であって、外周面に鍔部３６を有している。回転軸１０に一対のポールコア１４が組み付けられた状態では、周方向に隣り合う２つの爪状磁極１３は、図２に示す各々の周方向側面２３が互いに対向する。そして、界磁コイル１２に界磁電流が通電されると、周方向に隣り合う２つの爪状磁極１３の一方がＮ極に磁化され、他方がＳ極に磁化されるとともに、互いに対向する周方向側面２３の間で磁束が周方向に受け渡される。

図３は、永久磁石１５の組み込み状態を示す回転子２の部分的な斜視図である。永久磁石１５は、ほぼ直方体に成形されたネオジウム磁石などの希土類磁石であり、長手方向が軸方向を向くように回転子２に組み込まれている。また、永久磁石１５は、周方向の２つの側面の一方がＮ極の磁極面をなし、他方がＳ極の磁極面をなす。そして、永久磁石１５は、Ｎ極の側面がＮ極に磁化される爪状磁極１３の周方向側面２３に対向するように、かつ、Ｓ極の側面がＳ極に磁化される爪状磁極１３の周方向側面２３に対向するように、２つの爪状磁極１３の間に配置される。これにより、隣り合うＮ極およびＳ極の爪状磁極１３の間で発生する磁束の漏洩を減少させ、確実に回転子２からの磁束を固定子３へ受け渡すことができる。

図４は、永久磁石１５と磁石保持部材１６の組み付け状態を示す分解斜視図である。磁石保持部材１６は、永久磁石１５の外周面２６Ａおよび周方向の２つの側面２６Ｂ、２６Ｃを囲うようにほぼコの字状を有している。すなわち、磁石保持部材１６は、永久磁石１５の両側面２６Ｂ、２６Ｃを覆う２つの側部２７と、外周面を覆うとともに２つの側部２７を架橋する両側架橋部２８とにより構成されている。また、磁石保持部材１６は、ステンレスなどの非磁性金属の素材を用いて形成されている。この磁石保持部材１６は、図３に示すように、永久磁石１５をほぼコの字状に包囲するとともに、両側架橋部２８が永久磁石１５よりも外周側に配置されるように、２つの爪状磁極１３の間に装着される。このとき、磁石保持部材１６は、２つの側部２７が爪状磁極１３の周方向側面２３に当接することで周方向に拘束される。また、図３に示すように、両側架橋部２８が爪状磁極１３の鍔部３６の内周面に当接して、磁石保持部材１６は径方向に拘束される。

また、ディスク部２２には、軸方向に深堀りされて凹部となる段差部２４が周方向側面２３と鍔部３６に連接して形成されている。永久磁石１５の軸方向端面は、この段差部２４によって軸方向に拘束される。段差部２４の径方向寸法は、永久磁石１５と磁石保持部材１６の両方を含めた径方向厚さよりも大きく設定されている。

ところで、上述した磁石保持部材１６は、個々の永久磁石１５に取り付けられ、互いに分離しているため、それぞれの磁石保持部材１６を別々にポールコア１４の爪状磁極１３の間に装着する場合にはその作業が繁雑となる。このような煩雑さを回避するために、本実施形態では、未着磁の永久磁石１５と磁石保持部材１６のそれぞれを、可撓性の高い、例えばナイロン材などによって成形されている連結部材１９であらかじめ連結、保持し、円環状に配置された状態で、一方のポールコア１４の各爪状磁極１３に接するように配置した後に、一対のポールコア１４の各爪状磁極１３によって永久磁石１５と磁石保持部材１６とを挟み込むようにこれら一対のポールコア１４の組み付けを行い、その後、連結部材１９を取り外す製造工程が採用されている。

図５は、連結部材１９によって相互に連結された永久磁石１５と磁石保持部材１６を一方のポールコア１４に接するように配置した状態を示した部分的な斜視図である。図６は、連結部材１９の部分的な詳細形状を示す図であり、一対の永久磁石１５と磁石保持部材１６に対応する部分が示されている。図７は、磁石保持部材１６を周方向に展開した図である。

連結部材１９は、永久磁石１５と磁石保持部材１６を回転軸方向の両側から、適度な加重ｆを持たせて加圧するようにしめしろのある保持部としてのＵ字反転部１９２と、この両端のＵ字反転部１９２をつなぎつつ永久磁石１５と磁石保持部材１６の回転軸に対するスキュー（爪状磁極１３の側部２７の傾斜）にあわせた向きを有する傾斜部１９１と、複数の傾斜部１９１のほぼ中央部を連結して連結端部１９３１、１９３２を噛み合わせることによって爪状磁極１３の外側にスキマを持ちつつ、複数の傾斜部１９１を円環状に配置する連結部１９３とを含んで構成されている。そして、永久磁石１５と磁石保持部材１６とを挟み込むように一対のポールコア１４の組み付けが行われた後、連結端部１９３１、１９３２を外して、連結部材１９のみを回転子２の径方向外側へ容易にはがすことができる。

このように、未着磁状態の永久磁石１５と磁石保持部材１６を、周方向、径方向、軸方向に拘束した状態で回転子２の組み付けおよび外径などの切削加工や回転バランス取りのための切削加工を行なった後に、最後に着磁工程を行う。したがって、あらかじめ着磁した永久磁石を組み付けることによって生じる信頼性低下の問題を回避することができる。また、ディスク部２２に形成された段差部２４内に永久磁石１５と磁石保持部材１６の一部を配置することで、永久磁石１５と磁石保持部材１６を周方向、径方向、軸方向に拘束することができ、拘束のためにこれらを円環状に連結する他の部材が不要になるため、部品点数や加工工数の増大を防止することができるとともに、単純な構造の磁石保持部材を用いることによる製造コストの低減が可能となる。また、永久磁石１５と磁石保持部材１６の軸方向を拘束するディスク部２２の段差部２４は、周方向側面２３と鍔部３６に連接して形成することができるので、ポールコア１４を鍛造によって製造する場合には、個別の切削工程ではなく、鍛造工程で段差部２４を形成することができ、コストアップを抑制することができる。さらに、複数の永久磁石１５と磁石保持部材１６を円環上に連結する連結部材１９は、組み付け時にのみ使用するため、回転子２には残らず、また次の組み付けに再利用することができるので、材料費の低減とともに、永久磁石１５と磁石保持部材１６を爪状磁極１３に簡単な工程で組み付けることができることから、従来の磁極爪間に永久磁石が配置された回転子に比べ、コスト低減が可能となる。

一実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。ポールコアの主に爪状磁極の形状を示す部分図である。永久磁石の組み込み状態を示す回転子の部分的な斜視図である。永久磁石と磁石保持部材の組み付け状態を示す分解斜視図である。連結部材によって相互に連結された永久磁石と磁石保持部材を一方のポールコアに接するように配置した状態を示した部分的な斜視図である。連結部材の部分的な詳細形状を示す図である。磁石保持部材を周方向に展開した図である。

符号の説明

１車両用交流発電機
２回転子
３固定子
４ハウジング
５電機子コイル
６整流器
９プーリ
１０回転軸
１１スリップリング
１２界磁コイル
１３爪状磁極
１４ポールコア
１５永久磁石
１６磁石保持部材
１９連結部材
２１ボス部
２２ディスク部
２３周方向側面
２４段差部
２６Ａ外周面
２６Ｂ、２６Ｃ側面
２７側部
２８両側架橋部
３６鍔部
１９１傾斜部
１９２Ｕ字反転部
１９３連結部

Claims

回転軸に圧入される円筒状のボス部と前記ボス部の軸方向端部から径方向外側に延びるディスク部と前記ディスク部の外周端から互いに噛み合うように軸方向に延びて外周部に鍔部が形成された複数の爪状磁極とを有する一対のポールコアと、周方向に隣接する２つの前記爪状磁極の間に配置された複数の永久磁石および前記永久磁石を保持する金属製の複数の磁石保持部材とを備え、前記磁石保持部材が前記永久磁石の外周面と周方向両側面とを囲み、前記磁石保持部材が前記外周面と前記鍔部の間および前記周方向両側面と前記爪状磁極の周方向側面の間に配置された車両用回転電機の回転子において、
前記永久磁石の軸方向端面に対向する前記一対のポールコアのそれぞれの前記ディスク部には軸方向に凹部となる段差部が形成され、前記永久磁石および前記磁石保持部材の一部が前記段差部内に配置されていることを特徴とする車両用回転電機の回転子。
請求項１において、
前記永久磁石は、回転子の組み付け時は未着磁であり、車両用回転電機に前記回転子が組み込まれる前に着磁されることを特徴とする車両用回転電機の回転子。
請求項１または２において、
前記段差部は、前記爪状磁極の周方向側面と前記鍔部の両方に連接して形成されていることを特徴とする車両用回転電機の回転子。
請求項１〜３のいずれかに記載された車両用回転電機の回転子の製造方法であって、
前記永久磁石と前記磁石保持部材とを組み合わせた状態で回転軸方向の両側から加圧して保持する保持部と、回転軸方向に隣接する前記保持部をつなぎつつ前記永久磁石と前記磁石保持部材とを回転軸に対して傾斜させた傾斜部と、周方向に隣接する複数の前記傾斜部を前記爪状磁極部よりも外側で連結する連結部とを有する連結部材を用いて複数の前記永久磁石および複数の前記磁石保持部材を連結し、
前記連結部材によって連結された複数の前記永久磁石および複数の前記磁石保持部材とを、一方の前記ポールコアの前記爪状磁極の周方向側面に接するように配置した後に、一対の前記ポールコアの前記爪状磁極によって前記永久磁石と前記磁石保持部材とを挟み込むように一対の前記ポールコアの組み付けを行い、その後、前記連結部材を前記回転子の径方向外側へはがすことを特徴とする車両用回転電機の回転子の製造方法。