JP4659967B2 - 射出成形同時絵付用シートの製造方法及び樹脂成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形同時絵付けに使用するラミネ−トタイプの絵付用シートとして、十分な成形性を有すると共に、耐溶剤性に加えて耐擦傷性も良好にできる絵付用シートを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂成形物の表面を絵付した絵付成形品の製造方法として、特公昭50−19132号公報、特開平11−91041号公報等で開示される射出成形同時絵付方法が知られている。射出成形同時絵付方法では、樹脂成形物の成形と同時にその表面に絵付用シートを積層一体化することで、絵付成形品を得る事ができる。また、これに用いる射出成形同時絵付用シートの基材シートには、ABS樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂等の各種の樹脂シート等が用途に応じて使用される。なかでも、アクリル樹脂は透明性に優れている事から、高意匠の塗装感が得られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、基材シートにアクリル樹脂を使用した場合、絵付成形品となった時に最表面が基材シートとなる様な射出成形同時絵付用シートの層構成では、表面の耐有機溶剤性(以降、単に「耐溶剤性」と呼称する)が不足する事があった。また、この耐溶剤性の問題は、アクリル樹脂製の基材シートに対して耐溶剤性を付与すべく該基材シート上に耐溶剤性層を、有機溶剤を含んだ塗液で塗工形成する場合には、使用する溶剤次第では基材シートの一部が溶剤で溶解、乃至は膨潤する等、自己矛盾的な問題でもあった。
また、基材シートにアクリル樹脂を使用する場合、表面の耐擦傷性に関してはあまり芳しくなかった。この点では、基材シートにポリカーボネート樹脂を使用すれば、耐擦傷性は向上するが、今度は、成形加工安定性が低下し、またコスト的にも高くなる傾向があった。その上、耐溶剤性については、アクリル樹脂と大差は無かった。
【0004】
すなわち、本発明の課題は、優れた塗装感及び成形性が得られ、なお且つ耐溶剤性に加えて耐擦傷性も良好にできる射出成形同時絵付用シートを製造する方法を提供する事である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の射出成形同時絵付用シートの製造方法では、熱可塑性アクリル樹脂からなる基材シートの裏面側にアクリル変性ポリオレフィン系樹脂からなる裏打基材層を溶融押出塗工法により積層した後、前記基材シートの表面側に転写シートを用いて少なくとも装飾層及びアクリル樹脂をシランカップリング剤で硬化させる2液硬化型アクリル樹脂の硬化物からなる耐溶剤性層をこの順に転写により積層する様にした。
【0006】
この様な特定材料の硬化物からなる耐溶剤性層を、基材シート上に転写により積層する事で、耐溶剤性層が硬化物層であっても、射出成形同時絵付用シートとして必要な成形性を維持したままでで、得られる射出成形同時絵付用シートには耐溶剤性が得られる上、更に耐擦傷性も得られる。しかも、耐溶剤性層は、転写で基材シート上に積層する為に、該耐溶剤性層を塗工形成する際の塗料中の有機溶剤によって基材シートが溶けだす等の基材シートの損傷も無い。
【0007】
また、基材シートの裏面側にポリオレフィン系樹脂の裏打基材層を設ければ、更に、射出成形樹脂として安価なポリオレフィン系樹脂に対して密着の良い射出成形同時絵付用シートが得られる。また、射出成形同時絵付用シートとして必要な総厚を、高価なアクリル樹脂による基材シート以外に、安価なポリオレフィン系樹脂による裏打基材層にも分担させて、射出成形同時絵付用シートを安価に製造できる様になる。
【0008】
また、請求項2に記載の樹脂成形品は、請求項1に記載の製造方法により得られる射出成形同時絵付用シートを用いて、雌雄両型を備えた射出成形型を型締めする前に、前記射出成形型の雌型を真空成形型として、前記射出成形同時絵付用シートを雌雄両型間に供給し加熱軟化させ真空成形で予備成形した後、型締めして射出成形樹脂を射出することにより樹脂成形物の表面に前記射出成形同時絵付用シートを積層することにより得られるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、実施の形態を説明する。
【0010】
〔概要〕
先ず、本発明の射出成形同時絵付用シートの製造方法で得られる射出成形同時絵付用シートの構成は、最も単純な構成では、図1の断面図で例示する射出成形同時絵付用シートSの如く、基材シート1及び耐溶剤性層2との2層のみからなり、熱可塑性アクリル樹脂からなる基材シート1の表面側に、アクリル樹脂をシランカップリング剤で硬化させる2液硬化型アクリル樹脂の硬化物からなる耐溶剤性層2が転写によって転写層4として積層されている構成である。
【0011】
そして、本発明の製造方法では、予め塗工成膜し、既に塗料中の有機溶剤を揮発乾燥し除去して成るこの耐溶剤性層2を、基材シート1上に転写によって積層する事で、耐溶剤性層2を直接塗工法で積層する際に問題となった、有機溶剤による基材シートの溶解等の基材シート損傷発生を防ぐ様にした。耐溶剤性層2を転写で積層するには、公知の転写法によれば良く、例えば、図1で概念的に示す如く、支持体シート3上の転写層4として耐溶剤性層2を有する転写シートTを用意し、鉄芯の表面をシリコーンゴム等の弾性体で被覆する等した転写ローラRによって、圧或いは通常熱圧を加えて、転写シートTから耐溶剤性層2を含む転写層4を、基材シート1上に転写すれば良い。
この様にして、硬化物からなる耐溶剤性層によって、アクリル樹脂を基材シートに用いた射出成形同時絵付用シートの表面に、耐溶剤性が付与されると共に、耐擦傷性も付与する事ができる。
【0012】
なお、製造する射出成形同時絵付用シートとしては、通常は更に高意匠とすべく、耐溶剤性層2の下側に印刷絵柄等を表現する装飾層等を設ける。例えば、図4(B)で例示する如く装飾層7を基材シート1と耐溶剤性層2との間に設けたり、或いは基材シート1の裏面側(射出成形樹脂側)に設けたりする(図示略)。なお、この場合、耐溶剤性層や基材シート等の装飾層より観察者側となる層は、絵柄等を意匠表現した装飾層が透視可能な様に透明である。
また、図2で例示の如く、基材シート1の裏面側にポリオレフィン系樹脂からなる裏打基材層5を積層しても良い。同図の場合は、耐溶剤性層2を転写積層する前の基材シート1に予め裏打基材層5を積層する場合を例示した図である。裏打基材層5の積層は、例えば溶融塗工法等の公知の積層法によれば良い。
【0013】
以下、更に本発明を詳述する。
【0014】
〔基材シート〕
基材シート1には、熱可塑性アクリル樹脂からなる樹脂シートが使用される。熱可塑性アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂〔但し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味〕を単体又は2種以上の混合物で用いる。基材シートはこれらアクリル樹脂からなる単層又は2層以上の積層体のシートとして用いる。
なお、基材シートの厚みは、特に限定されず用途によるが、30〜500μm程度、一般的には50〜250μm程度である。
また、基材シートは、用途に応じ、透明以外に、不透明(着色又は無着色)でも良い。絵柄等を意匠表現する為の装飾層が基材シートの裏側となる場合は透明となるが、該装飾層が基材シートの表側となる場合には不透明とすることもできる。なお、基材シートを着色(透明或いは不透明)するには、後述する装飾層で述べる公知の着色剤等を樹脂中に練り込めば良い。
【0015】
〔耐溶剤性層〕
耐溶剤性層2は、アクリル樹脂をシランカップリング剤で硬化させる2液硬化型アクリル樹脂の硬化物からなる層として、転写により基材シートの表側に形成する。また、耐溶剤性層2は通常は装飾層等が透視可能な様に透明な層として形成される。この耐溶剤性層によって、表面に耐溶剤性を付与できる。また、この耐溶剤性層によって、耐擦傷性も付与することができる。
上記2液硬化型アクリル樹脂の主剤としては、ヒドロキシル基やカルボキシル基等のシランカップリング剤と反応性を有する1種又は2種以上の官能基を、分子中に通常は2以上の複数導入したアクリル樹脂を使用できる。
例えば、上記官能基が2以上のヒドロキシル基の場合、該アクリル樹脂はアクリルポリオールと呼ぶ事もできる。この様なヒドロキシル基含有アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体等の1種又は2種以上と、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル等の分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体の1種又は2種以上と、更に必要に応じ、スチレン単量体等の他のビニルモノマーとを共重合させて得られた共重合体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸の意味である。
また、カルボキシル基を導入する場合には、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマーを共重合した共重合体等が使用される。
【0016】
また、硬化剤となるシランカップリング剤としては、アルコキシ基の他に更に、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等を有する公知のシランカップリング剤を用途に応じて使用すれば良い。
例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどである。
なお、硬化剤としてのシランカップリング剤の添加量は、主剤とするアクリル樹脂に対して、5〜15質量%程度である。
【0017】
なお、耐溶剤性層中には、更に粉末充填剤を添加しても良い。粉末充填剤の添加により、耐擦傷性を更に向上させる事ができる。該粉末充填剤としては、無機物、或いは有機物の粉末が使用される。耐溶剤性層の樹脂よりも硬質でその硬さにより耐擦傷性を付与するには、樹脂ビーズ等の有機物よりは無機物の方が付与し易い。無機物の粉末充填剤として、例えば、アルミニウム、チタニウム、珪素、ジルコニウム、マグネシウム等の金属の酸化物、硝子、炭酸カルシウム、ダイヤモンド等が挙げられる。具体的には、例えばα−アルミナ等のアルミナ等である。この様な、粉末充填剤は、例えば、平均粒径2〜3μmで、粒径分布の最小値が0.01μm、最大値が6μmの範囲に入るものが、良好な耐擦傷性が得られる点で好ましい。また、粉末充填剤の粒子形状は、球形、鱗片状、多面体等の形状のものが使用される。
なお、粉末充填剤の添加量は、要求物性によるが、通常は、上記2液硬化型アクリル樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部程度、より好ましくは5〜30質量部程度である。
なお、本発明では硬化剤にシランカップリング剤を使用している関係上、粉末充填剤として上記金属酸化物等を使用した場合には、シランカップリング剤を粉末充填剤とも反応させて、該充填剤がバインダー樹脂中に強固に結合分散した耐溶剤性層とする事もできる。
【0018】
なお、耐溶剤性層中には、上記粉末充填剤以外に、シリコーン樹脂、ワックス等の滑剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、微粒子酸化セリウム系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、体質顔料、着色剤等の公知の添加剤を適宜使用することができる。
【0019】
〔耐溶剤性層等の転写形成〕
耐溶剤性層2を基材シート上に積層するには、本発明では転写法によって行う。すなわち、耐溶剤性層2は、図1で例示する如く、支持体シート3上に耐溶剤性層2を転写層4として一旦形成して転写シートTとした後、この転写シートTから転写層4として基材シート1上に転写形成する。支持体シート3上への耐溶剤性層2の形成法は、上記シランカップリング剤及びアクリル樹脂からなる2液硬化型アクリル樹脂を含む塗液(或いはインキ)を用いて、ロールコート等の公知の塗工法、或いはグラビア印刷等の公知の印刷法により形成すれば良い。転写圧の形式としては、特に限定は無いが、転写対象物は樹脂成形物と異なり平坦な基材シート(枚葉或いは連続帯状)であるので、例えば慣用的なローラ転写法で十分である。ローラ転写法では、鉄芯等の表面をシリコーンゴム等の弾性体で被覆した弾性体ローラ(ゴムローラ)を転写ローラとして用いて転写圧を転写シートに加える。また、該ローラは通常は赤外線輻射や内部の電熱ヒータ等で加熱して、転写圧の加圧と共に加熱も併用して転写する。従って、加熱による熱融着で転写層を被転写体(基材シート)に接着させる。なお、転写層が常温でも粘着性を呈する等すれば、加熱は必ずしも転写に必須では無い。
【0020】
ここで、耐溶剤性層の形成に用い得る転写シートの構成について更に説明する。
【0021】
支持体シート3としては、転写層と剥離性を有するシートであれば特に制限は無い。例えば、射出成形同時絵付用シートに要求される成形性は有っても良いが無くても良い。従って、支持体シートとしては、転写シートに於ける公知のシートを使用する事ができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレート、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、塩化ビニル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ビニロン等のビニル重合体等からなる樹脂シート(フィルム)、或いは上質紙、薄葉紙等にポリオレフィン系樹脂やシリコーン樹脂による離型層を積層した塗工紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙である。なお、支持体シートの厚さは、通常10〜100μm程度である。
【0022】
なお、支持体シートとしては、その転写層側に転写層との剥離性を向上させる為、支持体シートの構成要素として離型層を設けても良い。離型層を設ける場合、(離型層付きの)支持体シートは、上述支持体シートを素材シートとして、この素材シートに離型層が積層された構成となる。この離型層は支持体シートを転写層から剥離時に、基材シート側に移行する転写層に対して、支持体シートの一部として転写層と分離し剥離除去される。離型層としては、例えば、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ワックス等の単体又はこれらを含む混合物が用いられる。
【0023】
また、支持体シートの転写層側の面に凹凸模様を設けておけば、転写後の転写層表面に砂目、梨地、木目等の凹凸模様を賦形したり、表面艶を調整したりすることもできる。凹凸模様は、エンボス加工、サンドブラスト加工、賦形層(離型層)による盛り上げ印刷加工〔図4(A)の離型層3B参照〕等の公知の方法で形成する。
【0024】
なお、耐溶剤性層2の転写形成に用いる転写シートTとしては、その転写層4として耐溶剤性層2以外の層を設けておいても良い。例えば、図3及び図4で例示する如く、支持体シートと転写層との剥離性を調整したりする為に支持体シートに接して設けられる剥離層6、或いは、後述する装飾層7等である。
【0025】
なお、剥離層6としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のアクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等の樹脂が使用される。
剥離層はグラビア印刷等の公知の形成方法で形成すれば良い。なお、剥離層は、表面保護が目的では無い点、また絵付成形品に於いてその下層となる耐溶剤性層の効果発現の点から、その厚みは薄くても良い。例えば剥離層の厚みは0.1〜4μm等である。
【0026】
〔装飾層〕
製造する射出成形同時絵付用シートは、基材シート1及び耐溶剤性層2からなる構成でも、例えば基材シートが着色シートであれば、被着体表面を着色により装飾する絵付用シートとなる。しかし、通常は、より高意匠な装飾ができる様に、例えば図4の如く、絵柄を表現したりする為に装飾層7を印刷等で形成する。この装飾層も耐溶剤性層同様の理由から、転写形成するのが好ましい事は既に述べた通りである。
【0027】
装飾層7は、代表的には模様や文字等の絵柄を表現する層である。絵柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等である。
【0028】
装飾層7の代表的な形成法は、インキによる印刷で形成する方法である。該インキとしては、接着性等を考慮して公知のものの中から適宜選択使用すれば良い。例えば、インキのバインダーの樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等を1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。また、インキに含有させる着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、カドミウムレッド、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、イソインドリノンイエロー、キナクリドンレッド、ペリレンレッド等の有機顔料、アルミニウム、真鍮等の金属の粉末又は鱗片等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母の粉末又は鱗片等の真珠光沢(パール)顔料、或いは染料等が用いられる。
【0029】
なお、装飾層としては、例えばアルミニウム、クロム等を蒸着して全面或いは部分的に形成した金属薄膜層等でも良い。この場合、耐溶剤性の問題は無いので、転写シートからの転写で基材シート上に形成する以外に、基材シートに直接形成するのも好ましい。
【0030】
なお、装飾層と耐溶剤性層の位置関係は、装飾層を耐溶剤性層に対して、転写シートに於いては支持体シート側から遠い方、すなわち、絵付成形品となった時に耐溶剤性層の下側となる様な位置関係とするのが、装飾層を耐溶剤性層によって保護できる点で好ましい(図4参照)。
なお、装飾層は、基材シートの裏面側(樹脂成形物側)に設けても良い。この場合には、樹脂射出時に加熱溶融した射出樹脂で、装飾層が流れて絵柄が崩れない様な装飾層樹脂内容、射出条件、シート構成等とする必要がある。例えばシート構成では、基材シートと裏打基材層との間、基材シートと裏面接着剤層との間等に装飾層を設ける等である。基材シート裏面側に装飾層を設ける事によって、透明とした基材シートの厚みを活かして、より豊かな塗装感を付与する事ができる。
【0031】
(プライマー層)
なお、転写層のうち基材シートに接する層、すなわち、耐溶剤性層、或いは装飾層も転写層に有する構成では装飾層が、基材シートとの接着性が乏しい場合には、転写層と基材シートとの接着性を向上させる為に、転写層のうち基材シートに接する層として、図3〜図5で例示する如く、プライマー層8を設けても良い。
プライマー層8には、例えば、熱融着性を有する従来公知の熱可塑性樹脂等を用いることができる。例えば、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー、塩素化ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂等である。
プライマー層は、上記樹脂からなるインキ(又は塗液)をグラビア印刷(又はロールコート)等の公知の印刷法(又は塗工法)等で形成すれば良い。プライマー層の厚さは特に制限は無いが、通常は1〜100μm程度である。
【0032】
〔裏打基材層〕
裏打基材層5は、ポリオレフィン系樹脂からなる層として設けるものであり、射出成形同時絵付用シートの被着体の樹脂が、特にポリオレフィン系樹脂の場合に、この裏打基材層5を設けるのが、被着体との密着性の点で好ましい。該裏打基材層を設ける事によって、成形樹脂として安価なポリオレフィン系樹脂に対する密着性が向上して、ポリオレフィン系樹脂対応の射出成形同時絵付用シートを製造することが出来る。また、高価なアクリル樹脂からなる基材シートと共に、射出成形同時絵付用シートの成形性、取扱性等を確保する為に必要なシートの厚みを分担させる事で、射出成形同時絵付用シートを安価に製造できる様になる。
【0033】
裏打基材層5を基材シート1に積層するには、Tダイを用いた溶融押出塗工法、2層等の多層同時押出法、或いはドイララミネーション法等の公知の積層法によれば良い。但し、ドライラミネーション時に使用する接着剤は、基材シートの耐溶剤性の問題を避ける点で裏打基材層とする樹脂シート側に施すか、基材シート側に施す場合には水性接着剤を使用する等するのが好ましい。
【0034】
裏打基材層5に使用するポリオレフィン系樹脂は、射出成形同時絵付用シートの積層対象となる被着体の樹脂材料に応じて、該被着体に接着性が得られる樹脂を使用すれば良く、特に制限は無い。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル変性ポリオレフィン系樹脂等を1種で、或いは2種以上の混合物として使用する。なお、これらポリオレフィン系樹脂としては、密着性向上の為に樹脂分子中に極性基としてヒドロキシル基やカルボキシル基等を持たせた樹脂等も好ましい。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のグラフト重合でヒドロキシル基を導入した樹脂、或いは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の共重合でカルボキシル基を導入した樹脂等である。また、アクリル樹脂からなる基材シートとの密着性の点では、ポリオレフィン系樹脂をアクリル系モノマー(或いは該モノマーの重合物としてのプレポリマー)で変性した樹脂であるアクリル変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。この際、ヒドロキシル基やカルボキシル基等の極性基も導入しておけば、ポリオレフィン系樹脂の被着体に対する密着性も向上した樹脂となる。
【0035】
〔裏面接着剤層〕
なお、被着体の樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、上記裏打基材層を設けるのが、該被着体との密着性の点で好ましいが、被着体の樹脂がポリオレフィン系樹脂以外の樹脂である場合には、図3及び図4で例示の如く、被着体樹脂に応じて裏面接着剤層9を設けても良い。裏面接着剤層は、耐溶剤性層を基材シートに積層する前、又は後に設ける。
裏面接着剤層の樹脂には、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いれば良い。例えば、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー、塩素化ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等である。なお、被着体の樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合でも、裏打基材層を設けずに、この裏面接着剤層を設けてもよい。裏面接着剤層は、裏打基材層と異なり射出成形同時絵付用シートとしての必要な厚みを分担させる必要が無い。従って、裏面接着剤層の厚みは、通常1〜20μm程度である。なお、裏面接着剤層は、上記樹脂からなるインキ又は塗液で、公知の印刷法又は塗工法で形成する。
【0036】
〔射出成形同時絵付方法〕
本発明の射出成形同時絵付用シートの用途である射出成形同時絵付方法について、ここで一応説明しておく。
【0037】
射出成形同時絵付方法とは、特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載されるように、射出成形同時絵付用シートを射出成形の雌雄両型間に配置した後、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、樹脂成型物の成形と同時にその表面に射出成形同時絵付用シートを積層して絵付する方法である。
【0038】
射出成形同時絵付方法では、従来公知の射出成形同時絵付方法に於ける各種形態が可能である。例えば、絵付用シートの予備成形を行う形態でも行わない形態でも、いずれでも良い。また、絵付用シートの予熱を行っても良く、行わなくても良い。なお、予備成形時には通常は絵付用シートは予熱する。
【0039】
なお、もちろんの事だが、絵付用シートの絞りが大きい場合は、予備成形を行うのが好ましい。一方、絵付用シートの絞りが少ない場合は、射出される流動状態の樹脂の樹脂圧のみで絵付用シートを成形しても良い。この際、絞りが浅ければ、予備成形無しで樹脂射出と同時に型内に充填される流動状態の樹脂の樹脂圧で絵付用シートを成形しても良い。また、樹脂圧で絵付用シートを成形する場合でも、絵付用シートは予熱せずに射出樹脂の熱を利用する事もある。また、絵付用シートの予備成形は、通常は、射出成形型を真空成形型と兼用して行うが、型間に絵付用シートを供給する前に、型外部で別の真空成形型で絵付用シートを真空成形する様な予備成形(オフライン予備成形)でも良い。但し、予備成形は、射出成形型と真空成形型とを兼用して行う形態が効率的且つ精度良く絵付用シートを積層できる点で好ましい。しかし、予備成形済みの絵付用シートを予め別の場所で纏めて製造しておく場合等では、予備成形はオフライン予備成形の形態が好ましい。なお、本発明の説明に於いて真空成形とは真空圧空成形も包含する。
【0040】
次に、図6の概念図によって、射出成形同時絵付方法を、その或る一形態で説明する。なお、ここで説明する形態は、型締めする前に、射出成形同時絵付用シートを型間で加熱し軟化させて射出成形型で真空成形により予備成形した後に、型締めして樹脂を射出する形態である。また、この形態は、上記した絵付用シートの予備成形、予熱の各種組合わせ形態の中で、絵付用シートの絞りが深い場合に、より好ましい形態である。
なお、射出成形同時絵付方法で用いる射出成形同時絵付用シートは、枚葉、連続帯状のどちらでも良い事はもちろんである。
【0041】
先ず、図6(A)の如く、射出成形型としては、射出ノズルと連通する湯道(ランナー)及び湯口(ゲート)を有する型Maと、キャビティ面に吸引孔41を有しシートの予備成形型を兼用する型Mbの一対の成形型を用いる。これらの型は鉄等の金属、或いはセラミックスからなる。型開き状態に於いて両型Ma、Mb間に絵付用シートSを供給し、型Mbに絵付用シートSを平面視枠状のシートクランプ42で押圧する等して固定する。この際、絵付用シートの耐溶剤性層に対して基材シート側は、図面右側の射出樹脂側となる様にする事はもちろんである。次いで、適宜、両型間に挿入したヒータ(図示略)で絵付用シートを加熱軟化させる。加熱は例えば非接触の輻射加熱とするが、接触による伝導加熱でも良い。そして、吸引孔から吸引して真空成形して、絵付用シートを型Mbのキャビティ面に沿わせ予備成形する。次いで、ヒータを両型間から退避させ、図6(B)の如く両型を型締めし、両型で形成されるキャビティに加熱熔融状態等の流動状態の樹脂を充填する。そして、樹脂が冷却等によって固化した後、型開きして成形物を取り出す。
そして、絵付用シートの不要部分は適宜トリミングすれば、樹脂成形物に絵付用シートが積層され構成の絵付成形品が得られる。
【0042】
ここで、図7の断面図で、本発明の製造方法で得られる射出成形同時絵付用シートを使った絵付成形品の一例を示す。同図の絵付成形品Pは、射出成形同時絵付等によって、樹脂成形物Bの凹凸表面に、本発明の製造方法で製造された射出成形同時絵付用シートSが、積層一体化した構成の成形品である。なお、図示はしいなが射出成形同時絵付用シートが有する耐溶剤性層は、絵付成形品の表面側となる様に射出成形同時絵付用シートは樹脂成形物に積層されている。
【0043】
なお、本発明の製造方法で得られる射出成形同時絵付用シートの積層対象となる樹脂成形物Bの樹脂、すなわち、射出成形する樹脂としては、基本的には特に制限はなく公知の樹脂で良い。製品の要求物性やコスト等に応じて選定すれば良い。熱可塑性樹脂であれば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂等である。なお、該ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマーの1種又は2種以上の混合物等を用いる。また、射出成形同時絵付用シートとの密着性を向上させる為に、これらポリオレフィン系樹脂に、エチレンプロピレンゴムを添加するのも良い。エチレンプロピレンゴムはエチレン−プロピレン共重合体からなるゴム(EPR)であり、非晶質のランダム共重合体である。また、エチレンプロピレンゴムとしては純粋なエチレン−プロピレン共重合体の他に、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)も使用できる。エチレンプロピレンゴムはポリオレフィン系樹脂100質量部に対し1〜40質量部の範囲で添加するのが、密着性向上、剛性維持の点から好ましい。
また、射出成形樹脂が硬化性樹脂の場合は、2液硬化型の樹脂、例えば、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の未硬化樹脂液等である。熱可塑性樹脂は加熱熔融して流動状態で射出し、また硬化性樹脂は(その未硬化物を)室温又は適宜加熱して流動状態で射出する。
なお、射出成形樹脂としては、射出成形同時絵付用シートの裏面にポリオレフィン系樹脂からなる裏打基材層を設ける場合には、ポリオレフィン系樹脂に対して密着性が良い点で、射出成形樹脂としてはポリオレフィン系樹脂が好適である。
【0044】
なお、射出成形樹脂は、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用しても良い。着色剤には、前述装飾層で述べた如き公知の着色剤を使用できる。また、射出成形樹脂には、必要に応じて適宜、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機物粉末、ガラス繊維等の充填剤、安定剤、滑剤等の公知の各種添加剤を含有させる。
【0045】
〔その他〕
なお、本発明でいう「絵付」とは、単に絵柄や文字、図形等の目視可能な模様を成形品に付与する以外に、目視不可能な模様、あるいは導電体層、磁性体層等の機能性層を付与することも包含する。目視可能な模様としては、印刷等により形成した装飾層など公知のものが、目視不可能な模様の例としては可視光に対しては透明で紫外線照射で蛍光を発する蛍光インキで印刷した絵柄、赤外線吸収性インキで印刷したバーコード等が、用いられる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳述する。
【0047】
〔実施例1〕
図3(A)の如き構成の転写シートT(及び基材シート1)を用いて、図3(B)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして製造した。
【0048】
厚さ26μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体シート3とし、その片面に透明な転写層4として、順次、ポリメチルメタクリレートを主成分とするアクリル樹脂からなる厚さ2μmの剥離層6、特定材料からなる耐溶剤性層2、及び、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との1対1質量比混合樹脂からなる厚さ4μmのプライマー層8の各層をグラビア印刷で全面に形成して転写シートTを用意した。なお、耐溶剤性層2は、アクリル樹脂の主剤100質量部に対してシランカップリング剤を硬化剤として12質量部添加した2液硬化型アクリル樹脂100質量部に対して、更に平均粒径2.5μmのアルミナ粉末を30質量部添加し、これに適量の有機溶剤を添加したインキで乾燥時膜厚4μmとなる様に形成した。
【0049】
次に、厚さ125μmの透明なメチルメタクリレート−ブルチメタクリレート共重合体系のアクリル樹脂シートからなる基材シート1に対して、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との1対1質量比混合樹脂からなる厚さ3μmの裏面接着剤層9を形成した後、上記転写シートTから通常のローラ転写法によって、その転写層4を転写して、基材シート1上に転写層4として、基材シート側からプライマー層8、耐溶剤性層2及び剥離層6を同時に積層して、図3(B)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを得た。
【0050】
次に、上記射出成形同時絵付用シートを、射出成形樹脂としてABS樹脂を用いて図6の如き射出成形同時絵付法によって、図7の様な樹脂成形物Bの凹凸表面に射出成形同時絵付用シートSが積層した構成の絵付成形品Pを試作した。なお、射出成形同時絵付けは、射出成形の雌型を真空成形型として、絵付用シートを型間に供給後、加熱軟化して真空成形で予備成形する形態によった。
【0051】
〔実施例2〕
図4(A)の如き構成の転写シートT(及び基材シート1)を用いて図4(B)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして製造した。
【0052】
先ず、厚さ26μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを素材シート3Aとし、その片面に木目導管溝模様の凹凸を賦形する為の離型層(凹凸模様賦形層)3Bを、熱硬化性ポリエステルからなるインキをグラビア印刷して形成して、支持体シート3を用意した。
次に、支持体シート3の離型層3B側の面に、順次、ポリメチルメタクリレートを主成分とするアクリル樹脂からなる厚さ2μmの剥離層6、特定材料からなる耐溶剤性層2、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との1対1質量比混合樹脂に弁柄、カーボンブラックを主成分とする着色剤を添加した着色インキによる木目柄の装飾層7、及び、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との1対1質量比混合樹脂からなる厚さ4μmのプライマー層8の各層をグラビア印刷で形成して転写シートTを用意した。なお、耐溶剤性層2は、実施例1同様に、アクリル樹脂の主剤100質量部に対してシランカップリング剤を硬化剤として12質量部添加した2液硬化型アクリル樹脂100質量部に対して、更に平均粒径2.5μmのアルミナ粉末を30質量部添加し、これに適量の有機溶剤を添加したインキで乾燥時膜厚4μmとなる様に形成した。
【0053】
次に、厚さ125μmの透明なメチルメタクリレート−ブルチメタクリレート共重合体系のアクリル樹脂シートからなる基材シート1に対して、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との1対1質量比混合樹脂からなる厚さ3μmの裏面接着剤層9を形成した後、上記転写シートTから通常のローラ転写法によって、その転写層4を転写して、基材シート1上に転写層4として、基材シート側からプライマー層8、装飾層7、耐溶剤性層2及び剥離層6を同時に積層して、図4(B)の如き構成の表面に導管溝状凹部を有する射出成形同時絵付用シートSを得た。
【0054】
次に、上記の様にして製造した射出成形同時絵付用シートを、実施例1同様な射出成形同時絵付法によって、ABS樹脂の樹脂成形物表面に積層して絵付成形品を試作した。
【0055】
〔実施例3〕
図5(A)の如き構成の転写シートT(及び基材シート1)を用いて図5(B)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして製造した。
実施例1に於いて、基材シート1の裏面側に、アクリル変性ポリプロピレンからなるオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いた厚さ100μmの裏打基材層5を溶融押出塗工法によって積層した後、実施例1同様の転写シートTを用いて、該基材シート1の表側に転写層4として基材シート1側からプライマー層8、耐溶剤性層2及び剥離層6を同時に積層して、図5(B)の如き射出成形同時絵付用シートSを製造した。なお、実施例1にて設けた裏面接着剤層の形成は省略した。
そして、実施例1同様の射出成形同時絵付法だが、射出成形樹脂にはABS樹脂の代わりにポリプロピレン系樹脂を用いて、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成形物表面に射出成形同時絵付用シートを積層した絵付成形品を試作した。なお、射出成形樹脂のポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンに対して、エチレン−プロピレンゴムが10質量%添加され、またタルク粉末が20質量%添加された樹脂を用いた。
【0056】
〔比較例1〕
実施例1に於いて用いた基材シート1の片面に、実施例1と同じ裏面接着剤層9を形成したのみで転写層4は未形成(すなわち耐溶剤性層等未形成)の構成の射出成形同時絵付用シートを製造した。そして、この射出成形同時絵付用シートを用いて、実施例1同様に絵付成形品を試作した。
【0057】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた絵付成形品について、耐溶剤性及び耐擦傷性を評価した。
【0058】
(1) 耐溶剤性:絵付成形品表面をメチルエチルケトンをしみ込ませたガーゼにて、9.8N(1kgf)の荷重にて複数回擦った後、表面の異常の有無を目視観察して評価した。その結果、比較例1の絵付成形品では、3往復で表面に白化が生じたが、実施例1〜実施例3の各絵付成形品では、20回往復にて始めて表面に白化が生じる程度であり、耐溶剤性の向上が確認され、耐溶剤性は良好であった。
【0059】
(2) 耐擦傷性:絵付成形品表面をスチールウール(日本スチールウール株式会社製、商品名「ボンスター」、品番0000)にて、9.8N(1kgf)の荷重にて複数回擦った後、表面の異常の有無を目視観察して評価した。その結果、比較例1の絵付成形品では、3往復で表面に擦り傷が認められたが、実施例1〜実施例3の各絵付成形品では、50回往復にて始めて表面に擦り傷が認められる程度であり、耐擦傷性の向上が確認され、耐擦傷性は良好であった。
【0060】
【発明の効果】
(1) 本発明の射出成形同時絵付用シートの製造方法によれば、成形性及び塗装感と共に耐溶剤性が得られる上、更に耐擦傷性も得られる。しかも、耐溶剤性層形成時に有機溶剤によって基材シートが溶け出す等の基材シートの損傷も無い。
(2) また、基材シート裏面側にポリオレフィン系樹脂からなる裏打基材層を設けておけば、安価だが密着し難いポリオレフィン系樹脂の樹脂成形物に対して、密着良い射出成形同時絵付用シートが得られる。また、射出成形同時絵付用シートとして必要な総厚を、高価なアクリル樹脂による基材シート以外に、安価なポリオレフィン系樹脂による裏打基材層にも分担させて、射出成形同時絵付用シートを安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の一形態を説明する概念図と、得られる射出成形同時絵付用シートの一例を例示する断面図。
【図2】本発明の製造方法の別の形態を説明する概念図と、得られる射出成形同時絵付用シートの一例を例示する断面図。
【図3】本発明で使用する転写シートと得られる射出成形同時絵付用シートの別の例を示す断面図。
【図4】本発明で使用する転写シートと得られる射出成形同時絵付用シートの別の例を示す断面図。
【図5】本発明で使用する転写シートと得られる射出成形同時絵付用シートの別の例を示す断面図。
【図6】射出成形同時絵付方法の一例を説明する概念図。
【図7】絵付成形品の一例を例示する断面図。
【符号の説明】
1 基材シート
2 耐溶剤性層
3 支持体シート
3A 素材シート
3B 離型層(凹凸模様賦形層)
4 転写層
5 裏打基材層
6 剥離層
7 装飾層
8 プライマー層
9 裏面接着剤層
41 吸引孔
42 シートクランプ
Ma 射出成形型(雄型)
Mb 射出成形型(雌型)
B 樹脂成形物
P 絵付成形品
S 射出成形同時絵付用シート
T 転写シート
Claims (2)
- 熱可塑性アクリル樹脂からなる基材シートの裏面側にアクリル変性ポリオレフィン系樹脂からなる裏打基材層を溶融押出塗工法により積層した後、前記基材シートの表面側に転写シートを用いて少なくとも装飾層及びアクリル樹脂をシランカップリング剤で硬化させる2液硬化型アクリル樹脂の硬化物からなる耐溶剤性層をこの順に転写により積層することを特徴とする射出成形同時絵付用シートの製造方法。
- 熱可塑性アクリル樹脂からなる基材シートの裏面側にアクリル変性ポリオレフィン系樹脂からなる裏打基材層を溶融押出塗工法により積層した後、前記基材シートの表面側に転写シートを用いて少なくとも装飾層及びアクリル樹脂をシランカップリング剤で硬化させる2液硬化型アクリル樹脂の硬化物からなる耐溶剤性層をこの順に転写により積層することにより得られる射出成形同時絵付用シートを用いて、雌雄両型を備えた射出成形型を型締めする前に、前記射出成形型の雌型を真空成形型として、前記射出成形同時絵付用シートを雌雄両型間に供給し加熱軟化させ真空成形で予備成形した後、型締めして射出成形樹脂を射出することにより樹脂成形物の表面に前記射出成形同時絵付用シートを積層した樹脂成形品。
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