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JP4644634B2 - 脱硝触媒組成物、一体構造型脱硝触媒、及びそれを用いた脱硝方法 - Google Patents

脱硝触媒組成物、一体構造型脱硝触媒、及びそれを用いた脱硝方法 Download PDF

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Description

本発明は、脱硝触媒組成物、一体構造型脱硝触媒、及びそれを用いた脱硝方法に関し、より詳しくは、炭化水素系還元剤を用いて、ボイラーや、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなど希薄燃焼により稼動される内燃機関の排気ガスから窒素酸化物を効率的に還元除去するための脱硝触媒組成物、一体構造型脱硝触媒、及びそれを用いた脱硝方法に関する。
ボイラーや内燃機関は、その構造、種類に応じて、燃料や燃焼空気に由来した様々な有害物質を排出する。これら有害物質には、未燃焼の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、可溶性有機成分、煤など、大気汚染防止法で規制されている有害な成分が含まれている。それら有害物質のうち、NOxを浄化する方法として、排気ガスに還元剤を混合してから触媒に接触させ、浄化する接触処理法が実用化されている。
ボイラーなどの燃焼装置では、燃料の種類や供給量に応じて燃焼に最適な量の空気が供給され、燃焼温度が有害物質の発生量を抑制できる温度に制御されている。しかし、空気と燃料を常に理想の状態に制御できるわけではなく、不完全燃焼によって窒素酸化物を多量に発生させてしまうことがある。また、リーンバーンエンジン、ディーゼルエンジンなどの燃焼機関では、多量の空気を混合して燃料を希薄な状態で稼動すると、排気ガス中に窒素酸化物が多く発生する事がある。特に、ディーゼルエンジンの場合、高い圧縮率のもとで希薄燃焼を行うことから窒素酸化物が多量に排出されやすい。
このようにして排出された窒素酸化物を浄化するために、排気ガス中にアンモニアなどを還元剤として添加混合する接触還元法では、主として次に示す反応式によって窒素酸化物がNに還元される。
4NO+4NH+O→4N+6H
2NO+4NH+O→3N+6H
NO+NO+2NH→2N+3H
ボイラーからの排気ガスは、触媒を充填した浄化装置に導入する前に、必要により熱交換して排気ガスの温度を調整してから還元剤と混合され、浄化装置で接触処理される。この場合、浄化装置には、触媒組成物をペレット状に成型した構造型触媒が充填されることが多い。その触媒組成物としては、Cu、Mo,Co,Mnなどを活性金属として、アルミナ、シリカ‐アルミナ、ジルコニア、活性炭などに担持させた触媒が使用されている。
また、鉄、あるいは鉄とセリウムを含有させたゼオライトを触媒として用い、排気ガスにアンモニアを還元剤として加えて接触させ、窒素酸化物を還元する排気ガス浄化方法が提案されている(特許文献1参照)。これにより、窒素酸化物をより安定的に還元することが可能となった。
一方、自動車では、排気ガス流路に浄化すべき有害物質に応じた触媒を配置し、一度にまたは段階的に排気ガス中の有害成分を浄化する方法が知られている。そのために、ハニカム状の構造体に触媒組成物を被覆した一体構造型触媒が用いられてきた。ハニカム状の構造体とは、ステンレス等の金属やセラミック等の耐熱性材料で出来た構造体の胴体の中に、多数の細い平行な気体流路が伸びているものであり、この気体流路を形成する部位に触媒組成物を被覆しているものである。このようなハニカム構造体のうち、気体流路の両端面が開口しているものをフロースルー型といい、気体流路の一方の端面が目封じされたものをウォールフロー型という。ウォールフロー型では気体流路壁面がフィルターの役目を果たし、煤などの粒子成分を排気ガス中から濾し取る働きをする。
アンモニアや尿素を還元剤として用いる場合、還元剤は、ガスで供給してもよいが、取り扱い上、水溶液として供給されることが好ましい。したがって、接触還元法では、供給する還元剤水溶液を蓄える容器が必要となる。ボイラーなどの燃焼装置であれば、このような容器を設置するスペースを確保しやすいが、自動車では燃費の低減と消費者の好みに合ったデザインが重視され、容器を搭載できる空間には設計上の制約が伴っていた。また、自動車に還元剤を補給するための供給施設が別途必要となり、そのインフラ整備にも莫大な費用と手間がかかる。
これに対して、炭化水素を還元剤として用いる脱硝技術であれば、例えばディーゼルエンジンの場合、燃料の軽油を還元用の炭化水素として用いる事ができるので、新たに還元剤を収容する容器を搭載することや、それに付帯して特別な還元剤の補給設備を設置する必要もない。その一例として、ディーゼルエンジンからの排気ガスを浄化するために、モルデナイト型ゼオライト担体に、遷移金属および貴金属を担持した触媒を用いることが提案されている(特許文献2)。これにより、排気ガス中の酸素過剰雰囲気下で効率的に窒素酸化物を還元することが可能となった。
しかしながら、ディーゼルエンジンからの排気ガスは、温度が400℃以下と低くなる事が多く、窒素酸化物との反応性が低い軽油を還元剤として用いた場合、特に300℃以下では十分な脱硝性能が得られないことが指摘されていた。そこで、このような低温時における脱硝性能を向上するため、脱硝触媒の前段に窒素酸化物の吸着材を配置し、脱硝触媒の活性が低い時に発生した窒素酸化物を一時的に吸着し、脱硝触媒が充分に活性な温度に達した時に窒素酸化物を放出し、窒素酸化物を還元する事が提案されている(特許文献3)。しかし、窒素酸化物を吸着させるのみで充分にその排出を抑制するためには、吸着材の容量を大きなものとしなければならず、船舶と違ってスペースが確保しにくいディーゼル自動車などの移動体に搭載する事は、装置設計上の困難があった。
近年、ディーゼル自動車から排出される窒素酸化物の規制が強化されると予想されており、これまで使用あるいは提案されている脱硝触媒には、さらに高い窒素酸化物除去性能が求められている。しかし、ディーゼルエンジン、リーンバーンエンジンから排出される排気ガス中の窒素酸化物を、軽油やガソリンを還元剤として利用して浄化する脱硝技術は十分には確立されていない。
自動車の排気ガス規制においては、実際の道路での走行を想定した規制基準が設けられており、排気ガス濃度は、定常状態のエンジン稼動条件で測定されるものではない。このような実際の道路の走行を想定した規制基準では、燃焼状態が安定した高速走行だけでなく、市街地などアクセル開度が少なく、エンジン回転数の低い条件で走行する事も想定されている。一般に触媒活性を高めるためには、ある程度高い温度条件が望ましいのであるが、ディーゼル自動車では、市街地走行条件における排気ガスの温度が300℃以下と低くなることが多い。このような低温時には触媒の活性が充分ではなく、満足すべき排気ガスの浄化効果が得られないことがあった。
このような状況下、触媒組成物中の活性金属量を増やすことなく排気ガス浄化能力を向上でき、安定して排気ガス中の窒素酸化物を浄化できる脱硝触媒組成物及び一体構造型触媒が切望されていた。
特表2005―502451号公報(請求項35、請求項41) 特開平08−229400号公報(0015) 特開2002−295241(請求項1、請求項7、0019、0020)
本発明の目的は、上記従来の課題に鑑み、炭化水素系還元剤を用いて、ボイラーや、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなど希薄燃焼により稼動される内燃機関の排気ガスから窒素酸化物を効率的に還元除去するための脱硝触媒組成物、一体構造型脱硝触媒、及びそれを用いた脱硝方法を提供することにある。
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、排気ガス中の窒素酸化物を軽油などの炭化水素系還元剤によって還元する際、鉄元素を担持したβゼオライト(A1)、セリウム元素を担持したβゼオライト(A2)、及びプロトン型MFIゼオライト(A3)からなるゼオライト触媒(A)と、貴金属元素を担持した多孔質無機酸化物を含む脱硝触媒(B)を用いることにより、低温での脱硝性能を大幅に向上でき、また、この脱硝触媒組成物をハニカム構造担体に被覆し、一体構造型脱硝触媒とすることで、ディーゼル機関からの排気ガス中の窒素酸化物の浄化に対して優れた効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、炭化水素系還元剤によって排気ガス中の窒素酸化物を還元するのに用いられる、脱硝触媒組成物であって、鉄元素を担持したβゼオライト(A1)、セリウム元素を担持したβゼオライト(A2)、及びプロトン型MFIゼオライト(A3)からなるゼオライト触媒(A)と、貴金属元素の1種以上を担持した多孔質無機酸化物(B)とを含むことを特徴とする脱硝触媒組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ゼオライト触媒(A)が、さらにH型βゼオライト(A4)を含むことを特徴とする脱硝触媒組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記鉄元素及びセリウム元素の少なくとも一部が、イオン交換によってβゼオライト(A1)又は(A2)に担持されていることを特徴とする脱硝触媒組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記鉄元素の担持量が、酸化物換算で、0.1〜3.5重量%であり、前記セリウム元素の担持量が、酸化物換算で0.05〜2重量%であることを特徴とする脱硝触媒組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記貴金属元素が、白金、パラジウム、またはロジウムから選ばれる一種以上であることを特徴とする脱硝触媒組成物が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、多孔質無機酸化物(B)が、アルミナまたはシリカ−アルミナのいずれかであることを特徴とする脱硝触媒組成物が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、前記炭化水素系還元剤が、軽油またはガソリンのいずれかであることを特徴とする脱硝触媒組成物が提供される。
一方、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明の脱硝触媒組成物を、ハニカム構造担体の表面に被覆してなる一体構造型脱硝触媒が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、前記脱硝触媒組成物の被覆量が、ハニカム構造担体の容積に対して、60〜300g/Lであることを特徴とする一体構造型脱硝触媒が提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第8又は9の発明において、ゼオライト触媒(A)の成分、(A1)〜(A4)の被覆量が、ハニカム構造担体の容積に対して、いずれも5.0〜37.5g/Lであり、一方、多孔質無機酸化物(B)の被覆量が、40〜150g/L、かつ担持される貴金属元素の量が0.1〜10g/Lであることを特徴とする一体構造型脱硝触媒が提供される。
一方、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明に係り、窒素酸化物を含む排気ガスに炭化水素系還元剤を混合し、150〜400℃の温度範囲で、前記脱硝触媒組成物又は一体構造型脱硝触媒と接触させることを特徴とする脱硝方法が提供される。
本発明の脱硝触媒組成物は、炭化水素系還元剤による窒素酸化物の還元活性に優れ、各種燃焼装置から排出される窒素酸化物に対して低温でも高い浄化性能を発揮する。また、この触媒をハニカム構造担体に被覆して一体構造型触媒とすることで、ディーゼルエンジンから排出される窒素酸化物を高い浄化効率で処理することができる。
さらに、本発明の脱硝触媒組成物は、高価な活性金属の使用量が少なくて済むため低コストで製造する事もでき、排気ガス浄化装置を安定的に生産し供給することができる。
以下、本発明の脱硝触媒組成物、一体構造型脱硝触媒、及びそれを用いた脱硝方法について詳細に説明する。なお、ディーゼル自動車における実施形態を中心に述べるが、本発明は、自動車用途に限定されるものではなく、排気ガス中の窒素酸化物の脱硝技術に広く適用可能である。
1.脱硝触媒組成物
本発明の脱硝触媒組成物は、炭化水素系還元剤によって排気ガス中の窒素酸化物を還元するのに用いられる、脱硝触媒組成物であって、鉄元素を担持したβゼオライト(A1)、セリウム元素を担持したβゼオライト(A2)、及びプロトン型MFIゼオライト(A3)からなるゼオライト触媒(A)と、貴金属元素の1種以上を担持した多孔質無機酸化物(B)とを含むことを特徴とする。また必要に応じてH型βゼオライト(A4)を含むものである。なお、これらゼオライト成分(A1)(A2)(A3)および(A4)を包括して、以下ゼオライト群と言うことがある。
すなわち、本発明は、軽油やガソリン、あるいは燃焼機関中に一時的に多量の燃料を供給して発生させた未燃炭化水素や、排気ガス中に軽油やガソリンそのものを供給し、それらを還元剤として、排気ガス中の窒素酸化物を浄化するものである。なお、本発明においては、以下、特にことわりの無いかぎり、これら軽油などの炭化水素からなる還元剤を、包括して炭化水素系還元剤という。
本発明の脱硝触媒組成物は、脱硝触媒として鉄元素により促進されたβゼオライトと、セリウム元素により促進されたβゼオライトと、プロトン型MFIゼオライトと、また、望ましくはH型βゼオライトを含むものである。
βゼオライトに対する鉄元素の担持量は、酸化物換算で0.1〜3.5重量%、βゼオライトに対するセリウム元素の含有量は酸化物換算で0.05〜2重量%である事が好ましく、より好ましくは鉄として0.5〜2.5重量%(酸化物換算)、セリウムとして0.1〜1.2重量%(酸化物換算)である。鉄元素の量が3.5重量%を超えると、活性な固体酸点数が確保できなくなり活性が下がる事があり、耐熱性が低下する場合もあり、0.1重量%未満では、充分なNOx浄化性能が得られず排気ガスの浄化性能が低下する場合があるので好ましくない。一方、セリウム元素の量が2重量%を超えると、活性な固体酸点数が確保できなくなり活性が下がる場合があるだけでなく、耐熱性も低下する場合があり、0.05重量%未満では、HC被毒抑制効果が充分に発揮されない事があり、排気ガスの浄化性能が向上しない場合があるので好ましくない。
なお、鉄元素、セリウム元素で促進されたβゼオライトとして、市販のものを用いる場合も、鉄元素成分、セリウム元素成分の含有量が上記範囲内にあるものを選択することが好ましい。
そして、βゼオライトには、鉄元素、セリウム元素の他に、遷移金属、希土類金属、貴金属などを含んでいてもよい。具体的には、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、銅などの遷移金属、ランタン、プラセオジム、ネオジウムなどの希土類金属、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属などを挙げることができる。
ただし、白金などの酸化活性の高い貴金属は、βゼオライトに対する含有量は4重量%以下(酸化物換算)が望ましい。4重量%以下であれば、HCによるNOxの還元が良好に進行する。
βゼオライトは、単位胞組成が下記の平均組成式で表される組成を有し、かつ正方晶系の合成ゼオライトとして分類される。
m/x[AlSi(64−m)128]・pH
(式中、Mはカチオン種であり、xは前記Mの価数であり、mは0を越え64未満の数であり、pは0以上の数である)
また、βゼオライトは、一般に、比較的大きな径を有する一方向に整列した直線的細孔とこれに交わる曲線的細孔とからなる比較的複雑な3次元細孔構造を有し、イオン交換時におけるカチオンの拡散、および還元時における炭化水素ガス分子の拡散が容易になされる等の性質を有している。これは、モルデナイト、ホージャサイト等が一方向に整列した直線的な空孔のみを有するのに対して、特異な構造を有しており、このような複雑な空孔構造であるがゆえに、βゼオライトは、熱による構造破壊が生じにくく安定性が高い。
HC吸着能を発現するために酸点が多いものが好ましく、そのためにはシリカ/アルミナモル比(以下、SARともいう)の低いβゼオライトが好ましい。しかし、低SARゼオライトは水熱耐久性が低く、水熱耐久時には脱アルミが促進するため酸点の低下、ゼオライト構造の破壊が著しいという問題が生じることがある。そのため、本発明に用いられるβゼオライトとしては、トレードオフの関係にある酸点数と耐熱性のバランスを適切に選択する必要がある。そのため、SARとしては10〜100が好ましく、20〜50がより好ましい。
本発明において、イオン交換によってβゼオライトへの鉄元素、セリウム元素の添加を行う場合、イオン交換の割合としては、鉄元素(イオン)、セリウム元素(イオン)のうち1個と、ゼオライト中の一価のイオン交換サイトである上記[AlO4/2単位の3個とがイオン対を形成することに基づいて、次式(1)で表されることが好ましい。
[単位重量のゼオライト中にイオン交換により含まれている鉄イオン又はセリウムイオンのモル数/{(単位重量のゼオライト中に存在するAlのモル数)×(2/3)}]×100 ………(1)
また、そのイオン交換率は、10〜100%である事が好ましく、12〜92%であることがより好ましく、15〜80%であることが最も好ましい。このようなイオン交換率であると、耐熱性並びに脱硝性能が共に優れる。脱硝性能が優れている理由は定かで無いが、ゼオライトの骨格構造がより安定化し、触媒の耐熱性、ひいては触媒の寿命が向上しより安定した触媒活性を得ることができるのではないかと考えられる。ただし、イオン交換率が低すぎて、10%未満になると充分な脱硝性能が得られない場合がある。なお、前記イオン交換率が100%である場合には、ゼオライト中のカチオン種全てが鉄イオンやセリウムイオンでイオン交換されていることを意味する。
本発明の脱硝触媒組成物が、鉄元素により促進したゼオライト、及びセリウム元素により促進したゼオライトを用いることで、脱硝性能が向上する理由は定かではないが、ゼオライトによって炭化水素の燃焼性が向上するので、炭化水素による触媒の被毒が抑制されるためと考えられる。
また、ゼオライト自身あるいはゼオライトに導入された鉄元素、セリウム元素などの促進部位に窒素酸化物と炭化水素が吸着することで、互いの反応が活発に進行するためでもあると考えられる。
本発明に用いられるプロトン型MFIゼオライトとしては、ゼオライト原料から様々な方法で製造できるが、NH型MFIゼオライトを原料として用い、焼成によりプロトン型MFIゼオライトとしてもよい。前記βゼオライトと同様に、HC吸着能を発現するために酸点が多いものが好ましく、そのためにはシリカ/アルミナモル比(以下、SARともいう)の低いゼオライトが好ましい。しかし、低SARゼオライトは水熱耐久性が低く、水熱反応時には脱アルミが促進するため酸点の低下、ゼオライト構造の破壊が著しいという問題が生じることがある。そのため、本発明に用いられるプロトン型MFIゼオライトとしては、トレードオフの関係にある酸点数と耐熱性のバランスを適切に選択する必要がある。そのため、SARとしては10〜100が望ましく、20〜50がより望ましい。
また、本発明の脱硝触媒組成物には、加えてH型βゼオライトを使用する事が好ましい。本発明に用いられるH型βゼオライトは、長鎖のHCを細孔内に吸着保持する能力が高温時にも優れているものが好ましい。H型βゼオライトは細孔径が大きく、本発明に適用するには好ましいが、加えてH型βゼオライトとしては高いSARを持つものが好ましい。SARが高いことで耐熱性が高く、ゼオライト細孔構造を維持できる。このようなH型βゼオライトとしては、SARが100〜700であるものが好ましく、300〜550のものがより好ましい
また、プロトン型MFIゼオライト及び、H型βゼオライトにも、前記βゼオライトの場合と同様、その一部に遷移金属、希土類金属、貴金属などを含んでいてもよい。
このようなゼオライトを用いることで、炭化水素の反応性を増し、低温での軽油添加時における炭化水素被毒の抑制効果が向上し、軽油などの炭化水素系還元剤を用いた脱硝反応における高温耐性、高温活性、低温活性が向上し、排気ガス中の窒素酸化物に対して優れた浄化能力を長期間にわたり発揮することができる。
本発明では、上記特定のゼオライト触媒(A)が個別に有する機能に加えて、多様なゼオライトを使用することで、化石燃料を還元剤として使用した場合の脱硝性能に優れた効果を発揮する。
すなわち、ゼオライトは、その結晶構造の違いにより、炭化水素の炭素鎖長に対する選択性を発揮する。ここで、多様な結晶構造のゼオライトを使用することによって、様々な炭素鎖長の還元成分に対し、充分な反応性を得る事ができる。
このように、本発明の脱硝触媒は、各ゼオライト個別の機能と、それらゼオライトを混合して使用することにより、それら機能の相乗効果で、様々な炭素鎖長成分からなるガソリン、軽油等の化石燃料を還元剤として使用した場合にも優れた脱硝性能を発揮することができる。
また、還元剤として用いた炭化水素に対する高い反応性により、触媒の被毒も抑制され、長期間に渡り脱硝性能を維持することができる。
本発明の脱硝触媒組成物は、前記ゼオライト触媒(A)の他に、必須成分として、貴金属元素の一種以上からなる触媒活性種が担持された多孔質無機酸化物(B)を含むものである。多孔質無機酸化物は、耐熱性が高いアルミナ、シリカ−アルミナなどの複合酸化物であり、アルミナとしてはγ−アルミナ、α−アルミナが挙げられる。複合酸化物としては、シリカ−アルミナのほか、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−ボリアなどのアルミナを含む複合酸化物等がある。本発明においては、これらの中でγ−アルミナが耐熱性の点で最も好ましい。
また、このような多孔質無機酸化物(B)は、比表面積値(BET)が150〜250m/gである事が好ましい。比表面積値が大きすぎて、250m/gを超えると耐熱性に劣る場合があり、比表面積値が小さすぎて、150m/g未満であると触媒材料としての活性面積が不足し、還元剤の反応性能が低下する恐れがある。
ここで、貴金属元素としては、白金、パラジウム、またはロジウムが挙げられる。多孔質無機酸化物に担持された白金、またはパラジウムにより炭化水素の燃焼性能がより向上し、ロジウムにより脱硝性能が向上するもので、炭化水素の燃焼性能もより向上し、触媒被毒もより抑制されるが、ここで、触媒活性種は白金であることが好ましい。
なお、パラジウムは白金に比べて安価であるが、硫黄被毒によりその活性を著しく低下させる事があるため、低硫黄濃度の炭化水素系還元剤を用いる事が好ましい。また、ロジウムを触媒活性種として用いる場合、ロジウムは高価であるがNOx浄化特性に優れており、白金と併せて使用することで脱硝性能の更なる向上が期待される。
このような貴金属元素(触媒活性種)の含有量は、後述するハニカム構造体に本発明の脱硝触媒組成物を被覆した場合の担持量で換算すると、0.1〜10g/Lが好ましく、1.5〜3g/Lがより好ましい。
本発明では、前記のとおり、還元剤として軽油、またはガソリン等の化石燃料を炭化水素系還元剤として用いる。それは、特別な還元剤容器を省略できるという点で自動車の設計上好ましいものである。ところが、一般にガソリンは、炭素数が比較的小さい炭化水素を主体とする沸点範囲が約30〜200℃程度の揮発性石油留分であり、軽油は、ガソリンよりも炭素数が大きい炭化水素を主体とする沸点範囲が約200〜400℃程度に入る石油留分であって、いずれも炭素数の異なる多種類の炭化水素の混合物である。しかも、これら炭化水素には、直鎖のものだけでなく、分岐鎖のもの、環状のものも混在している。これに対し、ゼオライトは、結晶構造やイオン交換種等によって炭化水素の種類に対する選択性が異なることから、単一のゼオライトでは幅広い沸点範囲を有する炭化水素の混合物である軽油やガソリンに対して、充分な反応性を得ることが難しい場合がある。
そのような場合、本発明の脱硝触媒組成物では、前記ゼオライト触媒(A)に、更にそれとは異なる型のゼオライト(A5)を配合することで、ガソリン、軽油等、幅広い沸点範囲(炭素鎖長)を有する炭化水素系還元剤に対する反応性を向上させることができる。また、これにより還元剤として用いた炭化水素によるゼオライト触媒の被毒が抑制も期待される。
使用できるゼオライト(A5)としては、前記ゼオライト群の他、β、A、X、Y、MFI(ZSM−5)、MOR等様々なタイプのゼオライトが挙げられる。これらのうち一種以上を含ませることで、活性金属で促進されたゼオライト群のみを用いる場合よりも優れた脱硝性能を発揮することが期待できる。なお、これらゼオライト(A5)はFe、Ce、Cu、Mo,Co,Mnなど、活性な金属により促進されたものであっても良い。
本発明の脱硝触媒組成物においては、上記成分のほかに、セリウム含有酸化物を含んでもよい。セリウム含有酸化物は、酸素吸蔵放出材料(oxgen storage component。以下、OSC材という)として知られており、純セリアの他、セリウム−遷移金属複合酸化物、セリウム−希土類複合酸化物などがある。このようなセリウム含有酸化物は、酸化、還元の雰囲気に応じて下記の式2のように酸素の吸蔵放出を行うものである。他の排気ガス浄化技術では、この反応を利用してCOおよびHC、可溶性有機成分の酸化反応、およびRhを介したNOxの還元反応を調節して浄化効率の向上を図るものである。
2CeO⇔Ce+O・・・・・・(2)
また、本発明においては、OSC材と酸化触媒としての白金、パラジウムの配合により脱硝性能が向上する。その理由は、「環境触媒−実際と展望 40頁 共立出版株式会社 1997年3月20日発行」の記載から明らかであり、NOx成分としてその大部分を占めるNOが、触媒中の白金、パラジウムによりNOに酸化され、次いで、このNOがOSC材に吸着され、これが排気ガス中のHCと反応することで、窒素と水と二酸化炭素に浄化されることによる。なお、OSC材に吸着されるものは、NO2に限られるものではなく、NOも吸着されるが、NOよりもNOの方がOSC材への吸着力が勝る。
このように、本発明の触媒にOSC材が添加されたものでは、OSC材と白金、パラジウムとの併用により、OSC材が本来もつ酸素の吸蔵放出機能により、排気ガス中のHC、CO、可溶性有機成分の酸化機能も発揮され、NOxの浄化機能も発揮される。
本発明の脱硝触媒組成物においては、前記ゼオライトの特性を阻害しない他の触媒材料、例えば、TiO、WO/TiO、WO/Zr、SO/Zr、メタロシリケートなどの固体酸、あるいはアルミナ、シリカゾル、シリカアルミナなどのバインダーを混合して用いる事もできる。
本発明の脱硝触媒組成物は、前記ゼオライト触媒(A)および多孔質無機酸化物(B)を含む触媒成分が、各種担体表面に被覆された構造型触媒として用いることが望ましい。ここで担体の形状は、特に限定されるものではなく、角柱状、円筒状、球状、ハニカム状、シート状などから選択可能である。構造型担体のサイズは、特に制限されないが、角柱状、円筒状、球状のいずれかであれば、例えば数ミリから数センチの直径(長さ)のものが使用できる。
本発明の脱硝触媒組成物は、(1)前記ゼオライト群を用意し、次に、(2)これに、貴金属元素の1種以上を担持した多孔質無機酸化物を混合することにより得ることができる。
本発明における、鉄元素で促進されたβゼオライト、およびセリウム元素で促進されたβゼオライトは、主要なゼオライトメーカーから様々なグレードのものが購入でき、また、特表2004−536756号公報に記載された要領で製造できる。
鉄元素及びセリウム元素(以下、これらを金属触媒成分ともいう)は、前記βゼオライトの細孔内あるいは細孔入り口付近に担持されればよく、担持の方法は、イオン交換でも含浸による方法でも構わない。本発明では、βゼオライトの少なくとも一部が、鉄元素、セリウム元素によりイオン交換によって促進されることが望ましい。適切にイオン交換されることにより、ゼオライトの骨格構造が安定化され、ゼオライトそのものの耐熱性が向上する。なお、鉄元素、セリウム元素は、完全にイオン交換されなくてもよく、その一部が酸化物として存在しても良い。
イオン交換ゼオライトを得る方法は、特に制限されず、常法により、βゼオライトを鉄含有化合物(例えば、硝酸第二鉄)の水溶液や、セリウム含有化合物(例えば、硝酸セリウム)の水溶液を用いてイオン交換処理し、乾燥後に焼成すればよい。金属触媒成分の原料は、通常、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩等の形態で使用される。
なお、焼成条件は、金属触媒成分が安定して担持されたゼオライトが得られるのに十分な程度であればよく、特に限定されない。焼成温度は、300〜700℃が好ましく、400〜600℃がより好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
次に、前記ゼオライト触媒(A)を貴金属元素が担持された多孔質無機酸化物と混合する。本発明において、貴金属元素が担持された多孔質無機酸化物の調製方法は、特に限定されるものでは無いが、例えば、アルミナ粉末に対して白金など貴金属元素(触媒活性種)の塩溶液を含浸させ、乾燥後に焼成して得ることができる。
本発明においては、このような貴金属元素(触媒活性種)の含有量は、後述するハニカム構造担体に脱硝触媒組成物を被覆した場合の担持量で換算すると、0.1〜10g/Lが好ましく、1.5〜3g/Lがより好ましい。
2.一体構造型脱硝触媒
本発明の一体構造型脱硝触媒は、上記脱硝触媒組成物を、一体構造型担体の表面に被覆した脱硝触媒である。一体構造型担体の全体形状は任意であり、円柱型、四角柱型、六角柱型など適用する排気系の構造に応じて適宜選択できる。
すなわち、上記脱硝触媒組成物を自動車から排出される窒素酸化物の浄化に適用するためには、前記ゼオライト触媒(A)および上記多孔質無機酸化物を含む脱硝触媒組成物を、ステンレスやセラミック等の耐熱性材で出来たモノリス状のハニカム構造体に被覆し、一体構造型の脱硝触媒として構成する。
ハニカム構造担体とは、コージェライト、シリコンカーバイド、窒化珪素等のセラミックや、ステンレス等の金属からなるもので、その構造は構造担体中の全体に渡って伸びている平行な多数の微細な気体流路を有するものである。このうち材質としてはコージェライトが耐久性、コストの理由で好ましい。
また、このようなハニカム構造担体としては、さらに開口部の孔数についても処理すべき排気ガスの種類、ガス流量、圧力損失あるいは除去効率などを考慮して適正な孔数が決められるが、そのセル密度は100〜900セル/inchであることが好ましく、200〜600セル/inchである事がより好ましい。セル密度が900セル/inchを超えると、付着したPMで目詰まりが発生しやすく、100セル/inch未満では幾何学的表面積が小さくなるため、触媒の有効使用率が低下してしまう。なお、セル密度とは、ハニカム構造担体を気体流路に対して直角に切断した際の断面における単位面積あたりのセル数のことである。
また、ハニカム構造担体には、気体流路が連通しているフロースルー型構造体と、気体流路の一部端面が目封じされ、かつ気体流路の壁面を通して気体が流通可能になっているウォールフロー型構造体とが広く知られている。フロースルー型構造体であれば空気抵抗が少なく、排気ガスの圧力損失が少ない。また、ウォールフロー型構造体であれば、排気ガス中に含まれる粒子状成分を濾し取ることが可能である。本発明の脱硝触媒組成物は、そのどちらの構造体にも用いる事ができる。
本発明の一体構造型脱硝触媒は、前記脱硝触媒組成物と必要に応じてバインダーなどを水系媒体と混合してスラリー状混合物にしてから、一体構造型担体へ塗工して、乾燥、焼成する事により製造される。
すなわち、まず、脱硝触媒組成物と水系媒体を所定の比率で混合してスラリー状混合物を得る。本発明においては、水系媒体は、スラリー中で脱硝触媒組成物が均一に分散できる量を用いれば良い。
この際、必要に応じてpH調整のための酸、アルカリを配合し、粘性の調整やスラリー分散性向上のための界面活性剤、分散用樹脂等を配合する事ができる。スラリーの混合方法としては、ボールミルなどによる粉砕混合が適用可能であるが、他の粉砕、もしくは混合方法を適用しても良い。
次に、一体構造型担体へスラリー状混合物を塗工する。塗工方法は、特に限定されないが、ウオッシュコート法が好ましい。
本発明の脱硝触媒組成物は、このようなハニカム構造担体に対して、60〜300g/Lの担持量で被覆される事が好ましく、140〜220g/Lである事がより望ましい。また、ゼオライト触媒(A)、すなわち(A1)、(A2)、(A3)、(A4)成分の被覆量は、ハニカム構造担体の容積に対して、いずれも5〜37.5g/Lとすることが好ましく、15〜32.5g/Lとすることがより好ましい。各ゼオライトの被覆量が40g/Lを超えると、生産コストが上昇してしまい、また、触媒厚みが増加することから圧力損失が増加するため燃費の低減をもたらす。5g/L未満では、炭化水素の選択性が低下し窒素酸化物の還元性能が低下する。また、多孔質無機酸化物(B)の被覆量は、40〜150g/Lが好ましく、60〜120g/Lがより好ましい。被覆量が150g/Lを超えると、生産コストが上昇してしまい、40g/L未満では、Ptのシンタリングが進行しやすく低温時、つまり排気ガス温度が適当な温度域に無いときにおける窒素酸化物の還元性能が低下する。
塗工した後、乾燥、焼成を行う事により脱硝触媒組成物が担持された一体構造型脱硝触媒が得られる。なお、乾燥温度は、100〜300℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。また、焼成温度は、300〜700℃が好ましく、さらには400〜600℃が好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
3.脱硝方法
本発明の脱硝方法は、窒素酸化物を含む排気ガスに炭化水素系還元剤を混合し、150〜400℃、好ましくは200〜300℃の温度範囲で、前記脱硝触媒組成物又は一体構造型脱硝触媒と接触させることを特徴とする。
ボイラーからの排気ガスを浄化対象とする場合は、触媒を充填した浄化装置に導入する前に、必要により熱交換して排気ガスの温度を調整してから還元剤と混合され、浄化装置で接触処理される。この場合、浄化装置には、触媒組成物をペレット状に成型した構造型触媒が充填されることが多い。
一方、ディーゼルエンジンを搭載した自動車からの排気ガスであれば、本発明の一体構造型脱硝触媒は、エンジンで発生した排気ガスがマフラーから排出されるまでの流路に設置される。その際の排気ガスの流速、並びに排気ガスの温度は走行条件によっても異なるが、空間速度は概ね40000〜200000/hrであり、排気ガスの温度は概ね150〜400℃である。本発明の脱硝方法は、このような空間速度域、温度域において浄化性能を発揮できる。なお、前記温度範囲150〜400℃とは、その範囲で本発明の顕著な効果が確認されることを意味している。
また、本発明において、排気ガスの温度が150℃より多少下がることがあっても、他の条件を最適化することで一定の脱硝効果を期待することができる。このことは今まで難しいとされていた、ディーゼル自動車の始動直後や低回転域など排気ガスが低温時においても浄化機能が得られるということである。
次に、本発明の脱硝方法が好適に適用できる、ディーゼルエンジン排気ガス処理プロセスの例を説明する。第一の例は、ディーゼルエンジンからの排気ガス管路中には、第一酸化触媒、続いて本発明からなる一体構造型脱硝触媒が配置される。炭化水素系還元剤である燃料供給ユニットは、予め設定されたプログラムに基づくエンジンコントロールユニットの制御により、還元剤(燃料)供給管を経て排気ガス管路中のノズルに圧送され噴霧される。噴霧された還元剤は、高温の排気ガスと接触して気化され、それを構成する炭化水素分子となって分散し、脱硝触媒の機能によって排気ガス中のNOxを還元する。第一酸化触媒は、排ガス中のNOをNOに転換し、脱硝触媒に供給される排ガス中のNO/NO比を調整するとともに、可溶性有機成分(SOF)を酸化して分解する機能を有する。
第二の例は、第一の例の一体構造型脱硝触媒の後段に第二の酸化触媒を配置するものである。第二酸化触媒は、主として未反応の還元剤(炭化水素)を酸化する機能を有する。
なお、本発明の脱硝方法が好適に適用できる、ディーゼルエンジン排気ガス処理プロセスとしては、上記の例の他、第二の例において第一酸化触媒を使用しない場合。また、他の触媒と組合せて使用せず、触媒としては本発明からなる一体構造型脱硝触媒が単独で使用される場合等もある。
なお、上記のように構成されるプロセスに用いられる酸化触媒は、HCの酸化や、NOの酸化の他、煤の酸化に使用されるものであってもよい。
また、このように、脱硝のために供給される炭化水素系還元剤は、排ガス管路中のノズルに圧送され噴霧されるように構成しているが、通常は燃焼機関の燃料として消費されるものであるから、排ガス管路中のノズルに圧送・噴霧するのではなく、燃焼機関中に一時的に多量の燃料を供給して未燃炭化水素を発生させ、それを還元剤として利用することもできる。
以下、本発明の実施例、比較例を示すが、本発明は、この実施例に限定して解釈されるものではない。
[実施例1]
アルミナに塩化白金水溶液を含浸させた後で乾燥させた粉末に、鉄元素でイオン交換されたβゼオライト(イオン交換率:80%、SAR:35)と、セリウム元素でイオン交換されたβゼオライト(イオン交換率:70%、SAR:25)と、プロトン型MFIゼオライト(SAR:27)と水を加え、アルミナボールを用いてミリングしスラリー化した。アルミナの比表面積値(BET)は、200m/gであった。また、このイオン交換されたβゼオライト中の鉄元素、セリウム元素の含有量は、それぞれ、酸化物換算で1.3wt%、酸化物換算で1.2wt%であった。シリカ/アルミナモル比(以下、SARという)
=一体構造型脱硝触媒の製造=
このスラリーをウオッシュコート法により、5.66φ×3インチ(1249cc)、セル密度400/inchのコーディエライト製フロースルー型ハニカム構造体にコーティングし、不要なスラリーをエアガンで吹き飛ばしてから乾燥後、下記焼成条件で焼成した。
このようにして得られた脱硝触媒組成物が被覆されたハニカム構造体を、下記エージング条件でエージング処理し、実施例1の一体構造型脱硝触媒を得た。表1に、この一体構造型脱硝触媒の組成を記す。
=焼成条件=
・焼成装置:電気炉
・焼成温度:450℃
・焼成時間:30分
=エージング条件=
・エージング装置:水熱耐久炉
・エージング雰囲気:10%HO / 空気
・エージング温度:700℃
・エージング時間:20時間
[実施例2]
実施例1の各種ゼオライトに加え、H型βゼオライト(SAR:500)を加えた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の一体構造型脱硝触媒を得た。表1に、この一体構造型脱硝触媒の組成を記す。
[比較例1]
アルミナに塩化白金水溶液を含浸させた後で乾燥させた粉末に、鉄元素でイオン交換されたβゼオライト(イオン交換率:80%、SAR:35)と、プロトン型MFIゼオライト(SAR:27)と水を加え、アルミナボールを用いてミリングしスラリー化した。このイオン交換されたβゼオライト中の鉄元素の含有量は酸化物換算で1.3wt%であった。この触媒には、実施例1と異なり、セリウム元素でイオン交換されたβゼオライトが含まれていない。
上記スラリーを用いて、実施例1と同様にして脱硝触媒が被覆されたハニカム構造体を得た。表1に一体構造型脱硝触媒における材の組成を記す。
Figure 0004644634
以上のように製作した一体構造型脱硝触媒の脱硝性能を、以下の測定条件で測定した。結果を表2に示した。
=測定条件=
・エンジン:2000ccディーゼルエンジン
・エンジン回転数:1500rpm
・空間速度:72000/hr
・評価温度:250℃(触媒入口におけるガスの温度)
・軽油噴霧量:5cc/min
・軽油噴霧時間:5min
・測定装置:HORIBA製MEXA9500
=NOx浄化率=
NOx浄化率は以下の式(3)のようにして求めた。
なお、NOx(in)は触媒入口側のNOx濃度を、NOx(out)は触媒出口側のNOx濃度を表し、NOxはNOとNOの合計値を表している。
NOx浄化率[%]={[NOx(in)]−[NOx(out)]}/[NOx(in)]・・・(3)
Figure 0004644634
表2の結果から、実施例1、実施例2の触媒では、比較例1の触媒に比べて、NOx浄化率が高いことがわかる。特に、鉄元素を担持したβゼオライトと、セリウム元素を担持したβゼオライトだけでなく、プロトン型MFIゼオライトと、H型βゼオライトを併用しているので脱硝反応性能が向上している事がわかる。
このことから、本発明の脱硝触媒組成物は、軽油などを還元剤とした場合の脱硝触媒材料として優れた機能を発揮するもので、一体構造型脱硝触媒としてディーゼル機関等の排気ガス浄化に用いても優れた効果を発揮するといえる。

Claims (11)

  1. 炭化水素系還元剤によって排気ガス中の窒素酸化物を還元するのに用いられる、脱硝触媒組成物であって、
    鉄元素を担持したβゼオライト(A1)、セリウム元素を担持したβゼオライト(A2)、及びプロトン型MFIゼオライト(A3)からなるゼオライト触媒(A)と、貴金属元素の1種以上を担持した多孔質無機酸化物(B)とを含むことを特徴とする脱硝触媒組成物。
  2. ゼオライト触媒(A)が、さらにH型βゼオライト(A4)を含むことを特徴とする請求項1に記載の脱硝触媒組成物。
  3. 前記鉄元素及びセリウム元素の少なくとも一部が、イオン交換によってβゼオライト(A1)又は(A2)に担持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の脱硝触媒組成物。
  4. 前記鉄元素の担持量が、酸化物換算で、0.1〜3.5重量%であり、前記セリウム元素の担持量が、酸化物換算で0.05〜2重量%であることを特徴とする請求項1〜3に記載の脱硝触媒組成物。
  5. 前記貴金属元素が、白金、パラジウム、またはロジウムから選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脱硝触媒組成物。
  6. 多孔質無機酸化物(B)が、アルミナまたはシリカ−アルミナのいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の脱硝触媒組成物。
  7. 前記炭化水素系還元剤が、軽油またはガソリンのいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の脱硝触媒組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の脱硝触媒組成物を、ハニカム構造担体の表面に被覆してなる一体構造型脱硝触媒。
  9. 前記脱硝触媒組成物の被覆量が、ハニカム構造担体の容積に対して、60〜300g/Lであることを特徴とする請求項8に記載の一体構造型脱硝触媒。
  10. ゼオライト触媒(A)の成分、(A1)〜(A4)の被覆量が、ハニカム構造担体の容積に対して、いずれも5.0〜37.5g/Lであり、一方、多孔質無機酸化物(B)の被覆量が、40〜150g/L、かつ担持される貴金属元素の量が0.1〜10g/Lであることを特徴とする請求項9に記載の一体構造型脱硝触媒。
  11. 窒素酸化物を含む排気ガスに炭化水素系還元剤を混合し、150〜400℃の温度範囲で、請求項1〜7のいずれかに記載の脱硝触媒組成物、又は請求項8〜10のいずれかに記載の一体構造型脱硝触媒と接触させることを特徴とする脱硝方法。
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