本発明に係る発光ダイオード(以下「LED(Light Emitting Diode)」という)を構成する各半導体層としては種々の窒化物半導体を用いることができる。具体的には、有機金属気相成長法(MOCVD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)などにより基板上にInXAlYGa1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の半導体を複数形成させたものが好適に用いられる。また、その層構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合を有したホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。また、各層を超格子構造としたり、活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
LEDは、一般的には、特定の基板上に各半導体層を成長させて形成されるが、その際、基板としてサファイア等の絶縁性基板を用いその絶縁性基板を最終的に取り除かない場合、通常、p側電極およびn側電極はいずれも半導体層上の同一面側に形成されることになる。この場合、フェイスアップ実装すなわち半導体層側を視認側に配置し発光された光を半導体層側から取り出すことも可能であるし、フェイスダウン実装すなわち基板側を視認側に配置し発光された光を基板側から取り出すことも可能である。もちろん、最終的に基板を除去した上で、フェイスアップ実装或いはフェイスダウン実装することもできる。なお、基板はサファイアに限定されず、スピネル、SiC、GaN、GaAs等、公知の部材を用いることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光ダイオードを例示するものであって、本発明は発光ダイオードを以下のものに特定しない。
また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施の形態1)
図1、2に基づいて、実施の形態1のLEDについて説明する。本実施の形態に係るLEDは、図に示すように同一面側にp側電極およびn側電極を配置したLEDである。図1は、本実施の形態のLEDを電極配置面側から見た概略図である。また、図2は、本実施の形態のLEDの層構成を示す模式的断面図であり、図1のII−II線における断面図を示す。
図1に示すように、本発明の実施の形態1に係るLEDは、電極配置面側から見て所定の方向に長い長手形状である。本実施の形態では、一対の辺が他の一対の辺よりも長い長方形とする。そして、長方形の長手方向における一端近傍にn側接続部9−1が配置され、長方形の長手方向における他端近傍にp側接続部10b−1が対向して配置されている。
図2に示すように、本実施の形態のLEDは、例えば、サファイア基板1上にGaNバッファ層2、ノンドープGaN層3、n型コンタクト層となるSiドープGaN層4、n型クラッド層となるSiドープGaN層5、活性層となるInGaN層6、p型クラッド層となるMgドープAlGaN層7、p型コンタクト層となるMgドープGaN層8が、順次積層された層構造を有する。さらに、MgドープGaN層8、MgドープAlGaN層7、InGaN層6、SiドープGaN層5、SiドープGaN層4が部分的にエッチング等により除去され、SiドープGaN層4の露出面にn側電極9が形成され、MgドープGaN層8の上面の略全面にp側電極10が設けられている。なお、本実施の形態では、「特許請求の範囲」に記載するn型窒化物半導体層がn型コンタクト層となるSiドープGaN層4に対応し、p型窒化物半導体層がp型コンタクト層となるMgドープGaN層8に対応している。
本実施の形態では、n側電極9は、nコンタクト層側から順にW、Al、Wl、Pt、Auを積層してn側電極とするが、材料および積層構造は他の公知のものを用いてもよい。また、最終的に導電性部材となるワイヤーを接続すべきn側接続部9−1と、その一部分から長手方向に延伸したn側延伸部9−2から構成される。
p側電極10は、p型コンタクト層の比較的広い領域(略全面)に形成されたp型コンタクト層とオーミック接触すると共に、次に記載するp側パッド部から供給された電流を拡散するp側電流拡散部10aと、p側電流拡散部の所定の一部に形成されたp側パッド部10bから構成される。本実施の形態では、p型コンタクト層から順にNi、Au、Auが積層されてp側電極とするが、材料および積層構造は他の公知のものを用いてもよい。この場合、LEDからの光の少なくとも一部を透過する(以下、「透光性」ともいう)程度の比較的薄膜で積層したNi、Auがp側電流拡散部であり、透光性を有さない比較的厚膜で積層したAuがp側パッド部である。さらに、p側パッド部は、最終的に導電性部材となるワイヤーを接続すべきp側接続部10b−1と、その一部分から長手方向に対向するn側接続部9−1に向かって延伸したp側延伸部10b−2から構成される。
さらに、図1に示すように本発明の実施の形態1に係るLEDは、n側接続部9−1を含むn側接続部領域と、p側接続部10b−1を含むp側接続部領域と、その間に位置する中間領域とに分割される。ここでは、各領域を、長手方向と略垂直をなす方向にLEDを分割した領域とする。
中間領域内には、n側延伸部9−2が配置され、その中間領域においてn側延伸部9−2がp側電流拡散部10aと対向するように延伸している。すなわち、n側延伸部はp側接続部領域には侵入せずに中間領域のみに配置されており、その中間領域の内部でn側延伸部9−2とp側電流拡散部10aとが対向するように配置されている。
このように構成することにより、中間領域のn側延伸部9−2とp側電流拡散部10aとが対向する領域において、p側電流拡散部10aからn側延伸部9−2に均一に電流を供給することができる。また、n側延伸部9−2は中間領域内に配置されているので、n側延伸部からp側接続部周辺のp側電流拡散部10aに電流が集中することを軽減することができる。
すなわち、p側接続部10b−1には直接導電性部材が接続されるので、当然その周辺が電流密度が高くなり易い領域となる。しかしながら、本発明の実施の形態1に係るLEDは、n側延伸部がp側接続部領域まで延伸していないので、p側接続部近傍において電流が集中するのを大幅に軽減すると共に、中間領域においてより広い領域により均一に電流を供給することができる。
また、本実施の形態のように、p側電流拡散部10aが透光性を有する構成とすると、p側接続部10b−1はp側延伸部10b−2を備えることが特に好ましい。すなわちp側電流拡散部10aを透光性にするには、その膜厚を比較的薄膜に形成する必要がある。しなしながら、p側電流拡散部10aを透光性がある程薄膜にすると必然的に電気抵抗が大きくなり、p側パッド部から供給された電流をp側電流拡散部10a全体に広げることが困難となる。そこで、電気抵抗が比較的小さいp側接続部10b−1からp側延伸部10b−2が延伸するようにp側パッド部10bを構成し、p側延伸部10b−2に電流を広げた上でp側電流拡散部10aに電流を供給することにより、p側電流拡散部10a全体に電流を拡散することがより容易になる。
さらに、本実施の形態のLEDは、中間領域において、n側延伸部9−2とp側延伸部10b−2が、長手方向に略垂直をなす方向(以下、「幅方向」という)に互いにより遠方に対向して位置することにより、LED全体により広く電流を供給することができる。
一方、一般に、LED内部から生じた光は、半導体層と半導体層、半導体層と電極等、あらゆる界面で反射されながらLED外部に放出される。光が反射する際は、完全に反射されるのではなく、光の一部が各部材に吸収されてしまう。ここで、光反射の回数を減らすことができれば、自動的に光吸収の回数も減らすことができる。このような事情に鑑みて、LEDの電極配置面側からみてその外形を幅方向にできるだけ薄くすることにより、光の吸収を最小限に抑えつつ、幅方向からの光の取り出しを向上させることができる。また、薄くすることにより、薄い側から集中的に光を取り出すことができる。このような形状としては、一対の辺が他方の一対の辺より長い長方形や平行四辺形、楕円形等があるが、実際問題として歩留まり等を考慮すると長方形が最も好ましい。
このように、LEDは電極配置面側からみて、一方の方向に薄いことが好ましい。しかしながら、最終的に導電性部材を各電極に接続するためには、p側接続部10b−1およびn側接続部9−1にある程度の面積が必要となる。電極配置面側からみて、LEDの外形を導電性部材が接続可能な幅方向の厚さを残して限界まで薄くすると、光の取り出しは最大限に利用することができると考えられるが、効果的にn側延伸部を配置することが困難になってしまう。
そこで、本実施の形態のLEDは、図1に示すように、中間領域において、p側電流拡散部10aの所定の一部に窪みを有する。そして、その窪みに沿ってn側延伸部9−2が配置される。この際、中間領域におけるn側延伸部とp側電流拡散部のn側延伸部から遠方の端部との距離Dを、p側接続部領域におけるp側電流拡散部の幅方向の距離Eよりも小さくすることが好ましい。これにより、p側接続部における導電性部材が接続できるだけの面積を確保しつつn側延伸部が配置可能になると共に、LEDの幅方向をより薄くすることができる。
さらに、距離Dが距離Eよりも小さい場合、互いに対向するn側延伸部とp側電流拡散部との距離Aが、n側延伸部の先端と先端からp側接続部領域側に位置するp側電流拡散部との距離Bよりも小さいことが好ましい。なお、n側延伸部の先端からp側接続部領域側に位置するp側電流拡散部とは、つまり、n側延伸部とp側電流拡散部とが対向していない非対向領域のp側接続部領域近傍におけるp側電流拡散部を指す。図1では、n側接続部の一部から緩やかな曲線を伴ってn側延伸部が延伸しているので、距離Bはn側延伸部とその緩やかな曲線との距離となる。
すなわち、前に説明したように、p側接続部10b−1には直接導電性部材が接続されるので、当然その周辺が最も電流密度の高い領域となるが、本実施の形態のように距離Aが距離Bよりも小さいことで、B間において電流の集中を軽減すると共に、A間においてより均一な電流供給を得ることができる。
また、本実施の形態のLEDは、図1に示すように、n側接続部とp側電流拡散部が長手方向において互いに対向している。そして、対向するn側延伸部とp側電流拡散部との距離Aが、少なくともp側延伸部の先端近傍において対向するn側接続部とp側電流拡散部の距離Cよりも小さいことが好ましい。すなわち、p側延伸部の先端近傍はn側接続部と隣接するので、当然その周辺が電流密度の高くなり易い領域となるが、本実施の形態のように距離Aが距離Cよりも小さいことで、C間において電流の集中を軽減すると共に、A間においてより均一な電流供給を得ることができる。
なお、本実施の形態においては、p側電流拡散部が十分に電流を拡散する場合について説明したが、p側電流拡散部の電流拡散機能が充分でない場合は、p側接続部およびp側延伸部から構成されるp側パッド部の形状自体を変えることにより、実質的に距離A、B、Cを増減させることができる。具体的には、例えば、距離Aを大きくしたい場合は、p側延伸部をより細くしてn側延伸部から離れるような構成にすればよいし、距離Bを大きくしたい場合は、図1に示す略四角形のp側接続部の一角をよりラウンドさせてn側延伸部から離れるような構成にすればよい。同様に、距離Cを大きくしたい場合は、p側延伸部を短くしてn側接続部から離れるような構成にすればよい。
なお、p側電流拡散部の電流拡散機能が充分でない場合は、距離Cはp側延伸部の先端に近いほど距離Aと距離Cとの関係による上記効果が顕著となり、p側延伸部の先端から離れるにしたがってその効果は小さくなる。そのため、例えば発光面積を大きくするために、p側延伸部の先端から離れるにしたがって長手方向に対向するp側電流拡散部とn側接続部との距離を小さくすることもできる。
さらに、ここでは、側面方向において光出射部となる活性層から出射される光を遮らないように、光出射部よりも低い位置にn側延伸部を備える。本実施の形態においては、電極配置面側からみて、LEDの外形を長方形としているために、長手方向からではなく、幅方向から主に光が出射されるので、このような構成が特に有効となる。なお、ここでは、素子構造をDH(ダブルヘテロ)構造としているので、活性層であるInGaN層6が光出射部に相当する。もちろん、素子構造がpn接合である場合はその界面が光出射部ということになる。
また、本実施の形態のLEDをフェイスアップ実装する場合は、導電性部材として金線等からなるワイヤーが主に用いられ、フェイスダウン実装する場合は、導電性部材として半田等が用いられる。
ここでは、p側電流拡散部を比較的薄膜とすることにより、p側電流拡散部自体がLEDの光の一部を透過することができる構成としたが、p側電流拡散部を比較的厚膜としてLED光を透過しない構成とすることもできる。特に、フェイスダウン実装する場合は、Rh、Al、Ag等の各種金属部材を所定の膜厚に積層させp側電流拡散部に光を反射させることにより、視認側への光の取り出しを向上させることができる。この場合、p側電流拡散部の所定の一部にp側パッド部を設ける必要はなく、n電極と同様に一体的に構成させることもできる。
また、LEDの所定の一部に凹凸を設けることにより光を乱反射させ、結果的に光の取り出し効率を向上させることができる。例えば、n側電極を備えるn型コンタクト層の表面に凹凸を設けたり、サファイア基板とエピ層との界面に凹凸を設けることにより、より効果的に光を乱反射させることができる。
特に、本発明の実施の形態1に係るLEDは電極配置面側からみて長手形状であるので、縦方向(半導体積層方向)だけでなく横方向(特に幅方向)からも効果的に光が出射されるが、例えばn型コンタクト層の表面に凹凸を設けることにより、横方向からの光の出射に加えて、縦方向からの光の出射をも向上させることができ、より立体的な発光を得ることができる。なお、n型コンタクト層の表面に凹凸を形成するには、例えば、n型コンタクト層の表面に形成させた円形、三角形、四角形など所定の形状に開口したマスクを利用して、RIE(反応性イオンエッチング)により該所定の形状の凹部を設けることにより形成することができる。また、該所定の形状を残して他の部分を除去することにより凹凸すなわち凸部を形成することもできる。n型コンタクト層に凹凸を形成する場合、n側電極とn型コンタクト層の界面以外はもちろん、該界面に凹凸を形成することもできる。
また、凹凸を形成する工程とn側電極を積層するための面を露出させる工程とを一括に行うこともできる。すなわち、例えば、p型コンタクト層を積層した後に、レジスト膜を塗布して所望のパターンに露光し、残存するレジスト膜をマスクとして用い、発光素子として機能する発光層が残存する部位、n型コンタクト層表面の最終的にn側電極が配置される部位、そしてn型コンタクト層上のn型コンタクト層からp型コンタクト層までを含んだ凸状柱状物を形成することができる。これにより、n側電極を形成する露出面を形成すると共に凸状柱状物を同時に形成されるので、工程を簡略化することが可能となる。このように、凹凸を形成する工程とn側電極を積層するための面を露出させる工程とを一括に行う場合、必然的に、凸状柱状物は活性層よりも高い位置に形成されることになる。この凸状柱状物により、n型コンタクト層を導波してきた光を観測面側に反射させ外部に取り出すことができると共に、活性層から側面方向に出射された光が直接凸状柱状物により観測面側に進行方向を変えるので、観測面側への光の取り出し効率がより効果的なものとなる。凸状柱状物は発光観測面側から見て円形、菱形、三角形や六角形など所望に応じて種々とりうることができる。さらに、凸状柱状物はn型コンタクト層側からp型コンタクト層側に向かって徐々に細くなっていることが好ましい。これにより、観測面側への光の取り出しをさらに向上させることができる。
なお、これまで説明した凹凸の効果は、本実施の形態のLEDだけでなく他の構造のLEDに対しても当てはまることは言うまでもない。
一方、上述したいずれの場合においても、発光観測面からみた凹凸形状または凸状柱状物の形状の端面は、発光端面と角度をもって、好ましくは垂直に形成された辺を有していれば放出された光を効率よく外部に取り出すことが可能となる。特に、凹凸または凸状柱状物の発光観測面側から見た形状を三角形とし、該三角形の一角を発光端面に対向させると共に、該一角と対向する三角形の一辺を発光端面から遠方に位置させ、かつ発光端面と略平行にすることにより、発光端面と角度を持って対向する一辺をより大きく形成することができるので好ましい。すなわち、各々の三角形の一角が発光端面に対向するように、発光端面に対して各三角形を放射線状に配置させることができる。なお、三角形は二等辺三角形あるいは正三角形が好ましく、この場合、前記した一角とは長さの等しい二辺により形成された角であることが好ましい。これにより、より均一に光を取り出すことができる。また、発光端面とは最終的に電流が供給されて発光するn型コンタクト層からp型コンタクト層までを備えた積層体における端面である。
さらに、活性層にて発光した光を効率よく外部に取り出すためには、半導体積層構造内を光が反射する回数ができるだけ少ないことが好ましい。このために、例えば、基板としてサファイアを用い、半藤体積層構造を擬似的にGaNとすると、サファイアの屈折率、GaNの屈折率は、おおよそ1.77と2.5であるので、スネルの法則により、その界面での臨界角は約45°となり、光が半導体積層構造内を反射して外部に出ていく光の反射回数を設計者側で任意に設定することができる。具体的には、例えば、図1における中間領域の活性層端面を構成する半導体積層構造の幅方向の距離を、光が一回反射するような距離に設定することができる。これにより、幅方向における光の取りだしをさらに向上させることができる。もちろん、このことは中間領域の活性層端面を構成する半導体積層構造の幅方向の距離についてだけでなく種々の距離設計に応用することができる。
(実施の形態2)
図3、4に基づいて、実施の形態2のLEDについて説明する。図3は、本実施の形態のLEDを電極配置面側から見た概略図である。また、図4は、実施の形態2のLEDの層構成を示す模式的断面図であり、図3のIV−IV線における断面を表す。また、実施の形態1と同じ機能を有する部材には同一の符号を付している。
本実施の形態のLEDは、p側電流拡散部10aが複数の開口部10aaを有する以外は、実施の形態1に開示するLEDと同様の構成とする。また、p側パッド部はp側延伸部を有していない。このように構成することにより、活性層から出射される光がp側延伸部により遮られることがないので、光取りだしの点から好ましい。もちろん、電流の広がりを考慮して、p側延伸部を備える構成とすることもできる。いずれの効果を重要視するかは、設計者側で任意に選択すればよい。
p側電極10は、p型コンタクト層の比較的広い領域(略全面)に形成されたp型コンタクト層とオーミック接触すると共に、次に記載するp側パッド部から供給された電流を拡散するp側電流拡散部10aと、p側電流拡散部の所定の一部に形成されたp側パッド部10bから構成される。ここで、p電流拡散層は、実質的にpコンタクト層が露出した複数の開口部を備える。LEDからの光の少なくとも一部はこの開口部から外部に取り出される。
本実施の形態では、p型コンタクト層から順にRh、Ir、Auを積層してp側電極とするが、材料および積層構造は他の公知のものを用いてもよい。この場合、連続して積層したRh、Irがp側電流拡散部であり、Auがp側パッド部である。本実施の形態においては、最終的に導電性部材を接続すべきp側接続部10bがp側パッド部そのものに対応する。
また、本実施の形態のように、p電流拡散層に複数の開口部を備えると、p側接続部はp側延伸部を備えなくてもよい。すなわち、p電流拡散層に開口部を形成する場合には、透光性が無くなる程その膜厚を比較的厚膜に形成する。これは、比較的厚膜に形成することにより電気抵抗を小さくし、p側パッド部から供給される電流を拡散し易くするためである。しなしながら、p電流拡散層を透光性を備えない程厚膜にするとp側電流拡散部から光を取り出すことが困難となる。そこで、p側電流拡散部に複数の開口部を設けることにより、電気抵抗を小さくしつつ光の取り出しを可能とすることができる。
なお、図4に示すように、開口部を形成しないp側電流拡散部の上にp側パッド部を配置してもよいが、他の形態として、開口部を有するp側電流拡散部の上にp側接続部を配置してもよい。すなわち、開口部を備えることにより断面が凹凸のp電流拡散層の上面及び凹部内部にp側パッド部が配置されるように構成することもできる。これにより、p側パッド部からp電流拡散層への接触面積を向上させることができるので、p側パッド部とp電流拡散層との密着性を向上させることができると共に、p側パッド部からp電流拡散層に効果的に電流を供給することができる。
なお、開口部の形状、大きさ、配置位置等は任意に設定することができることは言うまでもない。さらに、p側電流拡散部のn側延伸部側端部に開口部を備えることで、その端部が一直線にならずに開口部により凹凸となる場合であっても、全体的に見て、n側延伸部とp側電流拡散部が互いに対向していればよい。
また、ここでは、図1または図3に示すように、例えば、対向するn側延伸部とp側電流拡散部、対向するn側延伸部とp側延伸部、対向するするn側接続部とp側電流拡散部がそれぞれ互いに略平行になるように構成しているが、必ずしも平行でなくともよいことは言うまでもない。この場合、距離A、B、C、D、Eは対応する領域における最短距離となる。
ここで、実施の形態1および2においては、図1および3に示すように、n側接続部領域にp側電流拡散部が位置しない、すなわち中間領域内にp側電流拡散部が位置する構成となっているが、例えば、図5〜8に示すように、p側電流拡散部をn側接続部領域に含まれるように構成させることもできる。この場合、例えば各図に示すように、長方形かつ長手形状である発光ダイオードの対角線上にn側パッド部およびp側パッド部がそれぞれ配置された構成とすることが好ましい。なお、この場合、n側接続部領域、中間領域、p側接続部領域はそれぞれ、長手方向に略垂直をなすように区分された領域である。以下、実施の形態3、4を図5〜8に基づいて説明する。
(実施の形態3)
図5、6に基づいて、本実施の形態のLEDについて説明する。なお、実施の形態1と同じ機能を有する部材には同一の符号を付している。本実施の形態のLEDは、以下の構成が異なる他は、基本的に実施の形態1に開示するLEDと同様の構成とする。
すなわち、本実施の形態のLEDは、前記したようにp側電流拡散部10aがn側接続部領域に達して形成されており、n側パッド部9−1およびp側パッド部10b−1は、電極配置面側からみて、長方形であるLEDの対角線上にそれぞれ配置されている。また、n側延伸部9−2とp側延伸部10b−2は部分的に対向している。さらに、n側電極を形成するために露出させたn型コンタクト層4まで露出した領域には、光の取りだしを向上させるための複数の凸部11が、活性層を含む半導体積層構造を取り囲むように備えられる。
図5においては、電極配置面側からみた凸部11の形状が菱形である場合の例であり、図6においては、電極配置面側からみた凸部11の形状が三角形である場合の例である。このように、所定の形状の凸部11を密に配置することによりフェイスアップ実装した場合の、視認側への光の取りだしを向上させることができる。この理由は定かではないが、凸部11下方(図における背面側)のn型コンタクト層内で導波する光が凸部11の付け根で乱反射するか、あるいは、n型コンタクト層内で導波する光が凸部11内部に入り込むことにより、視認側への光の取り出し効率が向上するものと考えられる。さらには、LED側面からみて、凹凸頂部が活性層の位置よりも高い(p側に位置する)ことにより、出射端面からの光が直接凹凸を形成する凸部に当たり、光の進行方向を観測面側に変えることができると考えられる。
さらに、出射端面からの光が必ずいずれかの凸部11に当たるように、すなわち出射端面からの光が一直線にLED外部まで抜けないように、各凸部を配置することがより好ましい。具体的には、光が通ると考えられる出射端面から延伸する所定のあらゆる直線上に少なくとも1つの凸部が配置されることにより、より大きな光取りだしを期待できる。
さらに、凸部は、工程を簡略化するために、n側電極を配置させるためにn側コンタクト層まで露出する工程で形成することができる。この場合、各凸部は、基板側からn側コンタクト層4からp側コンタクト層8までが順に積層された構成となる。なお、エッチング等により凸部を形成させる場合には、電極配置面側からみた凸部の最前面の形状が、例えば角が欠けたりして一定でない場合があるが、最も重要なのはその頂部が活性層よりも高い凸部を形成することであるので、このような場合であっても、光の取り出し効率は向上させることができる。
(実施の形態4)
図7、8に基づいて、本実施の形態のLEDについて説明する。なお、実施の形態1と同じ機能を有する部材には同一の符号を付している。本実施の形態のLEDは、以下の構成が異なる他は、基本的に実施の形態1に開示するLEDと同様の構成とする。
すなわち、本実施の形態のLEDは、前記したようにp側電流拡散部10aがn側接続部領域に達して形成されており、n側パッド部9−1およびp側パッド部10b−1は、電極配置面側からみて、長方形であるLEDの対角線上にそれぞれ配置されている。また、n側延伸部9−2とp側延伸部10b−2は部分的にも対向していない。さらに、n側電極を形成するために露出させたn型コンタクト層4まで露出した領域には、光の取りだしを向上させるための凸部11が複数備えられる。凸部11については、図7は図5と同様であり、図8は図6と同様である。
(実施の形態5)
図9に基づいて本実施の形態のLEDについて説明する。なお、実施の形態1と同じ機能を有する部材には同一の符号を付している。本実施の形態のLEDは、以下の構成が異なる他は、基本的に実施の形態1に開示するLEDと同様の構成とする。
すなわち、本実施の形態のLEDは、図9に示すように、サファイア基板1とバッファ層2との界面からn型コンタクト層4のn側電極9が設けられる面までが傾斜している。このように傾斜面を備えることにより、フェイスアップ実装またはフェイスダウン実装した場合の視認側への光の取りだしをより向上させることができる。
具体的には、例えばフェイスダウン実装した場合、図9に示す傾斜角度を64°とした場合には、傾斜角度が90°の実施の形態1に場合に比較して、視認側への光の取り出しを略1.1倍とすることができる。さらには、傾斜角度を34°とし傾斜をより緩やかにした場合には、傾斜角度が90°である場合に比較して、視認側への光の取り出しを略1.6倍とすることができる。
なお、本実施の形態においては、傾斜面が、サファイア基板1とバッファ層2との界面からn型コンタクト層4のn側電極9が設けられる面までが傾斜している構成としたが、傾斜面は他の領域に設けることも可能である。すなわち、LEDの側面の少なくとも一部に傾斜面を備えることができる。例えば、上記した構成に加えて、n型コンタクト層4のn側電極9が設けられる面からp型コンタクト層のp側電極10が設けられる面までが傾斜していても良い。いずれにしても、より大きい側面領域に傾斜面を設けることで上記効果はより大きいものとなる。
さらに、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、ITO、酸化インジウム、酸化スズ等、公知の絶縁性材料で、LED内部からの光を透過あるいは反射するように膜厚等を制御して、傾斜面に絶縁性材料を単層または多層設けることにより、フェイスアップ実装、フェイスダウン実装のいずれの場合においても視認側への光の取りだしをさらに向上させることができる。なお、本実施の形態においては、基本的な素子構造を実施の形態1としたが、もちろん他の素子構造においても、傾斜面を設けることで、視認側への光の取りだしは向上する。
(実施の形態6)
次に、図10、図11に基づいて実施の形態6のLEDについて説明する。図10は本実施の形態のLEDを電極形成面側からみた平面図である。また、図11は、図10のXI−XI線におけるp側電極20のパッド部20b(以下、「p側パッド部」ともいう)近傍の断面図であり、p側電極20が設けられた第1の領域の半導体積層構造と、第1の領域と異なる第2の領域に設けられた凸部11との位置関係を示している。
本実施の形態のLEDは、p側電極20及びn側電極19が同一面側に設けられており、観測面側を電極形成面側とした電極形成面側から光を取り出す構成である。LEDを構成する半導体積層構造は、実施の形態1と同様に、サファイア基板1上にGaNバッファ層2、ノンドープGaN層3、n型コンタクト層となるSiドープGaN層4、n型クラッド層となるSiドープGaN層5、活性層となるInGaN層6、p型クラッド層となるMgドープAlGaN層7、p型コンタクト層となるMgドープGaN層8が、順次積層された層構造を有する。さらに、MgドープGaN層8、MgドープAlGaN層7、InGaN層6、SiドープGaN層5、SiドープGaN層4が部分的にエッチング等により除去され、SiドープGaN層4の露出面にn側電極19が形成され、MgドープGaN層8にはp側電極20が設けられている。n側電極19は、n型コンタクト層側から順にW、Pt、Auが積層されてなる。p側電極20の電流拡散部20a(以下、「p側電流拡散部」ともいう)はp型コンタクト層のほぼ全面に形成されると共にp型コンタクト層側から順にNi、Auが積層されてなり(又は、NiとAuの合金)、パッド部20bはn側電極と同様にW、Pt、Auが順に積層されてなる。このように、p側パッド部20bとn側電極19とを同一の構成とすることにより、p側パッド部20bとn側電極19の形成工程を1つにすることができる。また、本実施の形態では、発光領域(第1の領域)を確保するために、p側電流拡散部20aはn側電極19を部分的に囲んでいる。
ここで、本実施の形態のLEDは、複数の凹凸を形成する各凸部11が第1の領域の周囲を囲んでいる。すなわち、本実施の形態のLEDは、駆動時に発光する第1の領域の周囲を凸部で囲むことにより、LEDの電極形成面側表面領域を有効に利用して光取り出し効率及び光指向性の制御を行うことができる。一般に、LEDはサファイア等の基板上に各種の半導体層を積層した後に、所定の領域を薄膜化し、その薄膜領域にて個々のLEDに分割する。本願発明は、凸部を形成するための特別な領域を設けてもよいが、例えば、ウエハーを分割する薄膜領域、又はn電極周辺に凸部を複数形成することにより、工程の増加を抑えることができる。すなわち、本来、単に、電極形成面側に設けられるn型コンタクト層平面の所望の領域に、本願発明の凸部を形成することが好ましい。
ここで、n型コンタクト層は、電極形成面側からみて、p側電極を有する半導体積層構造が設けられた第1の領域と、前記第1の領域と異なる第2の領域から構成され、第2の領域にはn電極19および複数の凸部11が設けられている。図11に示すように、第2の領域に設けられた各凸部の頂部は、LED断面において、活性層よりもp型コンタクト層側、好ましくはp型コンタクト層と実質的に同じ高さとなるように構成される。すなわち、凸部の頂部が活性層よりも高くなるように形成されている。また、凹凸底部は活性層よりも低くなるように形成されている。本実施の形態のLEDはDH構造であるので、凹凸の頂部は、少なくとも活性層とそれに隣接するn側層との界面より高ければよいが、活性層とそれに隣接するp側層との界面より高いことがより好ましい。また、凹凸の底部は、少なくとも活性層とそれに隣接するp側層との界面より低ければよいが、活性層とそれに隣接するn側層との界面より低いことがより好ましい。さらに、DH構造に限られず、例えば活性層に量子井戸構造を用い、この活性層をn側層とp側層で挟んだ構造においても同様の凸部を形成できる。すなわち、凹凸の頂部は活性層とn側層との界面より高く、好ましくは活性層とp側層との界面より高くする。また凹凸の底部は、活性層とp側層との界面より低く、好ましくは活性層とn側層との界面より低くする。
このように構成することにより、観測面側への光の取り出し効率を例えば10〜20パーセント向上させることができる。その理由は明らかではないが、以下の理由1〜3ように考えられる。すなわち、1.n型コンタクト層内を導波する光がn型コンタクト層から凸部内部に光が取り込まれ、凸部の頂部又はその途中部分から光が観測面側に取り出される。2.活性層端面から側面外部に出射された光が複数の凸部により反射散乱され観測面側へ光が取り出される。3.n型コンタクト層内を導波する光が凸部の根本(n型コンタクト層と凸部の接続部分)にて乱反射され、観測面側へ光が取り出される。
また、凸部を複数設けることにより、観測面側の全域に渡って均一な光取り出しが可能となる。さらに、凸部をp型コンタクト層を含むように構成することにより、それらの頂部が略同じ高さとなるので、p側電極を有する半導体積層構造が設けられた第1の領域に遮られることなく、凸部頂部から観測面側に効果的に光を取り出すことができる。また、凸部をp型コンタクト層、好ましくはp型電極よりも高くなるように構成することにより、より効果的に光を取り出すことができる。
さらに、上記効果は、凸部断面において、半導体積層方向つまりn型コンタクト層側からp型コンタクト層側に向かって、凸部が徐々に細くなるように傾斜させることで、より大きなものとなる。すなわち、凸部に故意に角度を付けることにより、活性層からの光を凸部表面にて全反射させて、或いは、n型コンタクト層を導波した光を散乱させ、結果として観測面側への光取り出しを効果的に行うことができる。凸部の傾斜角は、30°〜80°が好ましく、40°〜70°がより好ましい。
さらに、凸部断面の形状は円錐、半円等、種々の形状が可能であるが、好ましくは台形、すなわち凸部自体が円錐台形状であることが好ましい。このように構成することにより、光の指向性制御がより容易になると共に、全体としてより均一な光取り出しが可能となる。p型コンタクト層側から光を取り出し、p側コンタクト層を観測面とする場合に、凸部の観測面側が頂点を含まずに平面を含むことにより、この効果が得られるものと考えられる。
また、凸部断面の形状が台形である場合、台形の上辺(p側)において、さらに凹部を備えることもできる。これにより、n型コンタクト層内を導波してきた光が凸部内部に侵入した際に、凸部の頂部に形成された凹部により、観測面側に光が出射されやすくなるので好ましい。
さらに、本願発明のLEDは、n型コンタクト層の第1の領域に形成された半導体積層構造の出射端面とほぼ垂直をなす方向において、2以上、好ましくは3以上の凸部が少なくとも部分的に重複して配置されていることが好ましい。これにより、第1の領域からの光が高確率で凸部を介することになるので、上記効果をより容易に得ることができる。
本実施の形態における凸部は、n側電極を形成するために、n型コンタクト層を露出する際に、同時に形成することが好ましい。すなわち、本実施の形態のLEDは、同一面側に、p側電極及びn側電極を備える構造であるため、基板上にp型コンタクト層までを積層した後に、半導体積層構造のp側から少なくともn側電極に対応する領域をn型コンタクト層が露出するように除去することが必要となる。詳細には、例えば、p型コンタクト層を積層した後に、レジスト膜を塗布して所望のパターンに露光し、残存するレジスト膜をマスクとして用い、後にp側電極を設ける部位(第1の領域)、および凸部を形成すべき部位(第2の領域の一部分)以外をn型コンタクト層が露出するまでエッチング等により除去する。これにより、n側電極を形成する露出面を形成すると共に凸部を同時に形成することができるので、工程を簡略化することが可能となる。なお、ここではマスクとしてレジスト膜を用いたが、SiO2等の絶縁膜をマスクとしても良い。
このように形成された凸部は、第1の領域における半導体積層構造と同じ積層構造を備える。しかしながら、第1の領域に含まれる活性層は発光層として機能するが、第2の領域の凸部に含まれる活性層は発光層として機能しない。これは、第1の領域がp側電極を有するのに対して、第2の領域(凸部)にはp側電極が形成されていないことによる。すなわち、第1の領域の活性層は通電によりキャリア(正孔及び電子)が供給され得るのに対し、第2の領域に設けられた凸部の活性層には通電によりキャリアは供給されない。このように、本願発明の凸部はそれ自体で発光しうるものではない。
また、第1の領域の内部に周囲が完全に第1の領域で囲まれた開口部を設け、各開口部内に発光し得ない複数の凸部を設けることもできるが、この場合、開口部が電流経路を阻害する場合があり素子抵抗が上がるばかりでなく、均一な発光が得られない傾向があるので好ましくない。したがって、本件発明は、本来発光すべき領域(第1の領域)では、発光に必要な少なくともn型コンタクト層、活性層、p型コンタクト層が一様に積層され、一様に発光することが好ましく、本来発光しない領域(第2の領域)のみに複数の凸部を設けることが好ましい。いずれにしても、本件発明は、本来発光し得ない領域に複数の凸部を設け、本来発光し得ない領域を有効に利用することにより、上記したような効果を得ることを大きな特徴とする。
また、上記のように形成された凸部は、第1の領域における半導体積層構造と同じ積層構造となっており、言い換えれば、凸部が材料の異なる複数層からなっている。材料が異なれば、必然的に、各層の屈折率も異なるので、凸部に取り込まれた光が各界面で反射し易くなり、結果として、観測面側への光取り出し向上に寄与しているものと考えられる。
さらに、本件発明における凸部の数、密度等は特に限定されないが、発明者らの実験によれば、第2の領域において少なくとも100個以上、好ましくは200個以上、さらに好ましくは300個以上、より好ましくは500個以上とすることができる。これにより、上記効果をより向上させることができる。なお、電極形成面側から見て、第2の領域における凸部が占める面積の割合(詳細には、第2の領域における、凸部と第2の領域の界面の面積の占める割合)は、20パーセント以上、好ましくは30パーセント以上、さらに好ましくは40パーセント以上とすることができる。なお上限は特に限定されないが80パーセント以下とすることが好ましい。また、1つの凸部と第2の領域の界面の面積は、3〜300μm2、好ましくは6〜80μm2、さらに好ましくは12〜50μm2とすることができる。
第2の領域に凸部11を設けることにより、光が反射散乱されて取り出し効率が高まる。ここで、図11に示す凸部11は、第2の領域でn型コンタクト層4を露出させるように凹凸を設けてディンプル状に形成されるため、各々の凸部11は発光領域である第1の領域と同様の層構成を備えている。したがって、凸部11も活性層部分を備えている。ただ、光を放出する第1の領域の活性層と、凸部11の活性層部分とがそのまま対向して配置していると、第1の領域の活性層から放出される光が凸部11の活性層部分で一部吸収されることがあり、この部分で光利用効率が低下することが考えられる。一方で、第1の領域の活性層から放出される光は拡散して放射されるため、凸部11の活性層部分のみならず、クラッド層部分にも照射される。活性層からの発光が対向する凸部11のクラッド層部分で反射・散乱されると、光の利用効率は高まる。したがって、第1の領域の活性層から放出される光が拡散放射されやすくし、かつこの光が凸部11のクラッド層で反射、散乱されやすい形状とすることで、光の利用効率を高めることが期待できる。このような理由からも、上述した凸部の構成によって光の取り出し効率の改善が得られているものと考えられる。
ここまで説明した通り、本願発明のLEDは、横方向(LEDの側面方向)に出射する光を減少させ、上方向(観測面側)へ選択的に出射させるものである。特に、活性層を挟む上下の層の少なくとも一方(好ましくは上あるいはp側層)に屈折率の低い層を備えるLEDにおいては、該屈折率の低い層で光が反射されやすく、どうしても側面方向の光が主となってしまう。本件発明はこのような素子に対して特に効果的である。
さらに、LEDは実際に使用する際は、一般に、例えば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの有機樹脂からなる封止樹脂でその周囲を封止して使用される。本件発明はこのような使用においても、光による樹脂劣化を大幅に軽減することができる。これは、活性層側面からの光が、活性層側面に位置する封止樹脂に集中せずに、複数の凸部により光が分散されることによるものと考えられる。特にエポキシ樹脂は光に対して弱いので、本件第2の発明はエポキシ樹脂を封止樹脂としたLEDに特に効果的である。同様に、有機樹脂(例えばナイロン系樹脂)からなる支持体にLEDを配置した際においても、その支持体自体の寿命を長くすることができる。すなわち、本願発明のLEDを用いることにより、LED側面から出射される光により支持体が劣化するのを大幅に軽減することができる。このような効果は、当然、支持体の表面がLEDに近いものほどより顕著なものとなる。
また、本実施の形態のLEDは、n側電極19と第1の領域との間に凸部を形成していないが、実施の形態7および実施の形態8のように、該領域に凸部を形成しても良い。n側電極19周辺部は比較的発光が強いので、n側電極19とp側電流拡散部20aとの間に凸部を設けることにより、上記の効果をさらに向上させることができる。さらに、例えば、n電極及び第1の領域近傍の比較的発光の強い領域に複数の凸部を高密度に設け、それと異なる領域の比較的発光の弱い領域に複数の凸部を低密度に設けてもよい。発光領域の強い領域、弱い領域はLEDの構造によって異なるが、いずれにしても、発光領域の強度を考慮して、複数の凸部の密度を変化させることにより、より効果的な光取り出し及び指向性制御が可能となる。
(実施の形態7)
図12に基づいて、本実施の形態のLEDについて説明する。本実施の形態のLEDは、第1の領域における半導体積層構造の形状と、それに伴うp側電流拡散部20aの形状と、凸部の形成領域が異なる他は、実施の形態6のLEDと同様の構成である。
すなわち、本実施の形態のLEDは、電極配置面側からみて、n側電極19とp側電極20との間に位置する第1の領域がくびれ部分を有しており、さらにそのくびれ部分に複数の凸部が形成されている。すなわち、電極配置面側からみて、n側電極とp側電極のパッド部との間に位置する第1の領域に設けられた半導体積層構造が、n側電極とp側電極のパッド部を結ぶ直線に垂直をなす方向において、第1の領域の両側がくびれ部分を有すると共に、くびれ部分に複数の凸部を備える。これにより、発光および観測面側への光取り出しを効果的に行うことができる。
詳細には、本実施の形態のLEDは、p側電極のパッド部20bとn側電極19が直線X−X上に配置されている。そして、図12に示すように、電極形成面側からみて、p側電流拡散部20aが直線X−Xに沿った長手形状をしており、それに伴いLED自体の形状も直線X−Xに沿った長手形状としている。また、p側電極のパッド部20bからn側電極19に流れる電流は、その経路が最短になるように主に直線X−Xに流れる。しかしながら、本発明者等は、p側電極のパッド部20bとn側電極19の間の電流拡散部20aのうち、直線X−X、p側パッド部20b、n側電極19の3箇所から離れた領域には、電流が供給されにくく、その結果、他の領域に比較して発光が弱いことを見いだし、本実施の形態を発明するに至った。
本実施の形態のLEDは、上記事情を考慮して、n側電極19とp側電極のパッド部20bとの間に位置する第1の領域にくびれ部分を設け、本来発光すべき該くびれ部分に対応する領域の半導体積層構造を除去し、さらにそのくびれ部分に複数の凸部を形成することにより、結果として良好な光取り出しが実現可能となる。これは、くびれ部分に相当する発光の弱い領域をあえて除去し、その除去した領域に凸部を設けることにより、強い発光がそのまま側面外部に放出され、その放出された強い発光が凸部を介して観測面側に方向転換するために、光の取り出し、光の指向制御性が向上するものと考えられる。
(実施の形態8)
図13に基づいて、本実施の形態のLEDについて説明する。本実施の形態のLEDは、第1の領域における半導体積層構造の形状と、それに伴うp側電流拡散部20aの形状と、凸部の形成領域が異なる他は、実施の形態6のLEDと同様の構成である。
すなわち、本実施の形態のLEDは、電極配置面側からみて、n側電極とp側電極のパッド部との間に位置する第1の領域に設けられた半導体積層構造が、n側電極とp側電極のパッド部を結ぶ直線X−X上において、n側電極側からくびれ部分を有すると共に、くびれ部分に複数の凸部を備える。これにより、光の取り出し、光の指向制御性をより向上させることがでる。前に説明したように、電流は直線X−Xに主に流れるが、第1の領域の直線X−X上の一部をあえて除去し、その除去領域に複数の凸部を設けることにより、結果的に、光の取り出し効率、光の指向性制御を効果的に向上させることができる。これは、直線X−X上の一部をあえて除去することにより、電流を半導体積層構造のより広い領域に広げることが可能となると共に、直線X−X上から除去した領域における活性層を含む半導体積層構造端面から出射される比較的強い光を、効果的に観測面側に取り出すことができるためと考えられる。
さらに、発明者によれば、第2の発明のように、第2の領域に凸部を複数設けることにより、順方向と逆方向の双方の静電耐圧が向上する傾向が得られた。この理由は明らかではないが、おそらく、凸部を複数設け表面積が増加したことに関係するものと考えられる。
また、本実施の形態のLEDは、実施の形態7のLEDの構成と併用すればより好ましい。すなわち、本実施の形態のLEDに実施の形態7のくびれ部分を備えることにより、上記の効果をより向上させることができる。実施の形態7及び8のくびれ部分の大きさ、形状等は、任意に設定可能である。
なお、各実施の形態のLEDの半導体積層構造は上記に限定されない。各半導体層における混晶材料や混晶比、積層数、積層順等は、作製者側で任意に設定すればよい。p側電極、n側電極についても同様であり、その積層順、構成材料、膜厚等は任意に設定できる。
さらに、実施の形態6、7、8においては、電極形成面側から見て、長方形の外形であり、さらにその長手方向の両端の略中央にn電極及びp電極のパッド部がそれぞれ配置されて構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。本明細書に開示したLED構造の他に、例えば、四角形の対角線上に、n電極及びp電極のパッド部がそれぞれ配置された構成とすることもできる。
また、実施の形態6〜8においては、電極形成面側から見て、第2の領域に複数の凸部により凹凸が設けられた例について説明したが、電極形成面側から見て、第2の領域に複数の凹部により凹凸が設けられるようにすることもできる。このようにしても、光の取り出し効率は向上するが、作業が繁雑になるので好ましくない。すなわち、第2の領域に凹部を設ける場合であっても、リークを防止するために、第1の領域の周囲は一旦n型コンタクト層が露出するように溝を設けることが好ましい。これは、第1の領域の周囲に溝を形成しないと、第1の領域及び第2の領域が連結した状態になり、例えば、最終的に各チップに切断する際に、切断面にゴミ等が付着するとリークしてしまう可能性が生じるからである。このように溝を設けてしまうと、必然的に凹凸を設け得る面積が少なくなるので好ましくない。
なお、電極形成面から見て、第2の領域に複数の凹部を設ける場合は、凹部の数が、少なくとも100個以上、好ましくは200個以上、さらに好ましくは300個以上、より好ましくは500個以上とすることができる。
以上の各実施の形態では、保護膜の説明を省略したが、実際にLEDを使用する際には、LEDの表面の少なくとも一部をSiO2、SiNx等の絶縁膜で被覆することが好ましい。例えば、p、n側各パッド部に導電性部材が接続される領域を除く、電極形成面側から視認できる領域を絶縁膜で被覆することができる。この際、各凹凸も絶縁膜で被覆されることになる。