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JP4634371B2 - tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに標的化する化合物の同定方法、および該化合物の抗増殖剤としての使用 - Google Patents

tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに標的化する化合物の同定方法、および該化合物の抗増殖剤としての使用 Download PDF

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JP4634371B2
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Description

1.発明の分野
本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物のスクリーニングおよび同定方法に関する。特に本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを阻害または低減する化合物を同定するためのアッセイを提供する。本発明の方法は、癌またはその1以上の症状の予防、治療、管理または寛解に有用な医薬品のリードを同定するための、化合物ライブラリをハイスループットでスクリーニングするための簡便な高感度アッセイを提供する。
2.発明の背景
2.1 癌および新生物疾患
癌は米国における死因の第2位である。米国癌学会は、2001年には、130万件の新しい癌の症例が生じ、癌によって550,000人が死亡すると推定した。1990年代では、全体の割合が年間1%低下していた。癌に罹患したことのある米国人が9百万人生存している。NIHは、癌の直接医療費が600億ドルと推定している。
現在、癌の治療は患者内の新生物細胞を根絶させるための手術、化学療法および/または放射線療法を含む(たとえば、Stockdale、1998、「Principles of Cancer Patient Management」、Scientific American:Medicine、第3巻、RubensteinおよびFederman編、第12章、セクションIV参照)。これらの手法はすべて患者にとって顕著な不利益をもたらす。たとえば手術は、患者の健康状態により禁忌であったり、または患者に承諾されていなかったりする場合がある。さらに、手術によって新生物組織が完全に除去されない可能性もある。放射線療法は、照射された新生物組織が正常な組織よりも放射線に対して高い感度を示す場合にのみ有効であり、また放射線療法はしばしば重篤な副作用を誘発させることがある(同上)。化学療法に関しては、新生物疾患の治療に利用可能な様々な化学療法剤が存在する。しかし、様々な化学療法剤が利用可能であるにもかかわらず、従来の化学療法には多くの不利益が存在する(たとえば、Stockdale、1998、「Principles Of Cancer Patient Management」、Scientific American Medicine、第3巻、RubensteinおよびFederman編、第12章、セクション10参照)。化学療法剤のほぼすべてに毒性があり、化学療法は重篤な嘔気、骨髄抑制、免疫抑制などを含めた、顕著かつ多くの場合危険性の高い副作用を引き起こすことがある。さらに、多くの腫瘍細胞が多剤耐性によって化学療法剤に耐性を有するか、耐性を確立する。
したがって、新規化合物および組成物、ならびに前述の副作用が軽減されたまたは存在しない、癌もしくは新生物疾患の治療に有用な方法が当分野で顕著に必要とされている。さらに、特異性が高く毒性が低い、癌細胞に特異的な治療を提供する癌の治療法が必要とされている。
2.2 tRNAの生成
真核細胞内のtRNAの成熟および維持には、5’および3’末端の切断、特定の塩基の修飾、ならびに場合によってはイントロンの除去を含めたいくつかのプロセシング事象が必要である。プロセシングにおけるこれらの様々なステップの酵素は、酵母、古細菌、哺乳動物および細菌系において特性決定されている(Deutscher, M.P.、tRNA Processing Nucleases、tRNA: Structure, Biosynthesis and Function、D. SoilおよびU. RjaBhandary (編)、American Society for Microbiology、ワシントンDC、(1995)、51-65ページ)。5’末端の切断にはRnasePの活性が必要であり、3’末端の切断には様々なエンドヌクレアーゼおよびエクソヌクレアーゼの機能が必要である。修飾は、tRNAと様々な修飾酵素との相互作用によって起こる。ほとんどのtRNAがいくつかの普遍的修飾および種に特異的な修飾を含む(Bjork, G、Biosynthesis and Function of Modified Nucleosides、tRNA: Structure, Biosynthesis and Function、D. SoliおよびU. RajBhandary (編)、American Society for Microbiology、ワシントンDC、(1995)、165-205ページ)。古細菌および真核生物では、いくつかのtRNAのイソ受容体群が14〜105個のヌクレオチドの大きさにわたる介在配列を含む(Trotta, C.R.およびAbelson, J.N.、tRNA Splicing: An RNA World Add-On or an Ancient Reaction?、RNA World II、Tom Cech、Ray GestelandおよびJohn Atkins (編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)、ならびにAbelson他、1998、Journal of Biological Chemistry、273:12685-12688)。イントロンの除去には3つの酵素の活性が必要である。第1ステップでは、tRNAが認識され、5’および3’結合点でtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによって切断される。古細菌および真核生物のtRNAエンドヌクレアーゼは進化的に保存されている酵素であり、5’および3’スプライシング部位で切断を行うために類似の活性部位を含む。しかし、これらはtRNA基質を異なる様式で認識するように分岐している。古細菌の酵素はバルジ−ヘリックス−バルジとして知られる保存されているイントロン構造を認識する。この構造は、4−ヌクレオチドヘリックスによって隔てられた2つの3−ヌクレオチドバルジからなる。各バルジ内で切断が生じ、イントロンが放出される。真核生物のエンドヌクレアーゼは成熟ドメインに依存する様式でtRNA基質を認識し、成熟ドメインから5’および3’スプライシング部位までの間の一定の距離を測定する(Reyes他、1988、Cell、55:719-730)。しかし、最近になって、真核生物の酵素は各スプライシング部位にバルジを必要とし、この酵素が実際には、古細菌のエンドヌクレアーゼと同一の、イントロンに依存する認識機構によってtRNAを認識する能力を保持していたことが実証された(Fruscoloni他、2001、EMBO Rep、2:217-221)。切断されたあと、tRNAの半分子は独特のtRNAスプライシングリガーゼによってライゲーションされる(Trotta, C.R.およびAbelson, J.N.、tRNA Splicing: RNA World Add-On or an Ancient Reaction?、RNA World II、Tom Cech、Ray GestelandおよびJohn Atkins (編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)、ならびにAbelson他、1998、Journal of Biological Chemistry、273:12685-12688)。酵母では、ライゲーション産物はスプライシング結合点にリン酸を有するtRNAである。リン酸の除去はtRNA2’−ホスホトランスフェラーゼによって行われ、成熟tRNA産物が得られる(Trotta, C.R.およびAbelson, J.N.、tRNA Splicing: RNA World Add-On or an Ancient Reaction?、RNA World II、Tom Cech、Ray GestelandおよびJohn Atkins (編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)、ならびにAbelson他、1998、Journal of Biological Chemistry、273:12685-12688)。
tRNAは翻訳機構の重要な構成要素であり、様々な他のタンパク質系の構成要素(伸長因子、アミノアシル合成酵素など)と比較した場合に非常に安定している。tRNA分子は非常に長い半減期を有する。さらに、rRNAおよびリボソームと同様、tRNAは活動的に成長中の細胞の細胞質中に過剰に存在する(Ikemura, T.およびOkeki, H.、1983、Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol.、47:1087-1097)。したがって、tRNA分子の特異的標的化により非制御の細胞増殖の選択的阻害が可能となるが、細胞成長の選択的阻害は可能とならない。
本明細書における参照文献の引用は、先行技術として利用可能であることを承認するものと解釈されるべきではない。
3.発明の概要
本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物の同定方法を提供する。特に、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害する化合物の同定方法を提供する。本発明は、増殖性疾患もしくはその症状を予防、治療、管理または寛解するための、本発明の方法を利用して同定される化合物の使用を包含する。
本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ、好ましくは哺乳動物のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ、最も好ましくはヒトtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物を同定するための細胞系アッセイおよび無細胞系アッセイを提供する。これらのアッセイは、レポーター遺伝子に基づいたアッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移(「FRET」)に基づいたアッセイ、または蛍光偏光アッセイであり得、これらをハイスループットスクリーニング形式で実施し得る。さらに、これらのアッセイは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼをモジュレートする化合物の能力を直接的または間接的に測定する。好ましい実施形態では、間接的なアッセイ(たとえばレポーター遺伝子細胞系アッセイまたはFRET細胞系アッセイなどの細胞系アッセイ)を利用して同定される動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼをモジュレートする化合物の能力を、より直接的なアッセイ(たとえばFISHアッセイ)を利用して確認する。
レポーター遺伝子に基づいたアッセイは、化合物を、レポーター遺伝子を含む核酸を発現するように遺伝子操作した動物界の細胞と接触させるステップであって、前記レポーター遺伝子はtRNAイントロンを含むステップと、前記レポーター遺伝子の発現を測定するステップとによって実施し得る。あるいは、レポーター遺伝子に基づいたアッセイは、化合物を、動物界の無細胞抽出物およびレポーター遺伝子を含む核酸と接触させるステップであって、前記レポーター遺伝子はtRNAイントロンを含むステップと、前記レポーター遺伝子の発現を測定するステップとによって実施し得る。このようなレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおいて、事前に決定した基準範囲に対する、または前記化合物の非存在下もしくは適切な対照(たとえば陰性対照)の存在下における発現に対するレポーター遺伝子の発現の変化は、特定の化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートすることを示す。具体的には、このようなレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおいて、事前に決定した基準範囲に対する、または前記化合物の非存在下もしくは適切な対照(たとえば陰性対照)の存在下における発現に対するレポーター遺伝子の発現の低減は、特定の化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を低減または阻害することを示す(たとえば、tRNAイントロンの認識または切断)。対照的に、このようなレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおいて、事前に決定した基準範囲に対する、または前記化合物の非存在下もしくは適切な対照(たとえば陰性対照)の存在下における発現レポーター遺伝子の発現の増大は、特定の化合物は動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強することを示す。
一実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物の同定方法であって(a)レポーター遺伝子を含む核酸を細胞中で発現させるステップであって、前記レポーター遺伝子はtRNAイントロンを含むステップと、(b)前記細胞を化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップと、(c)前記レポーター遺伝子の発現を検出するステップであって、ある化合物の存在下における前記レポーター遺伝子の発現が、事前に決定した基準範囲と比較して、または前記化合物の存在下の非存在下もしくは適切な対照(たとえば陰性対照)の存在下における前記レポーター遺伝子の発現と比較して変化している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物の同定方法であって、(a)化合物ライブラリのメンバーを、レポーター遺伝子を含む核酸を含有する細胞と接触させるステップであって、前記レポーター遺伝子はtRNAイントロンを含むステップと、(b)前記レポーター遺伝子の発現を検出するステップであって、ある化合物の存在下における前記レポーター遺伝子の発現が、事前に決定した基準範囲と比較して、または前記化合物の非存在下もしくは適切な対照(たとえば陰性対照)の存在下における前記レポーター遺伝子の発現と比較して変化している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物の同定方法であって、(a)化合物ライブラリのメンバーを、無細胞抽出物およびレポーター遺伝子を含む核酸と接触させるステップであって、前記レポーター遺伝子はtRNAイントロンを含むステップと、(b)前記レポーター遺伝子の発現を検出するステップであって、ある化合物の存在下における前記レポーター遺伝子の発現が、事前に決定した基準範囲と比較して、または前記化合物の非存在下もしくは適切な対照(たとえば陰性対照)の存在下における前記レポーター遺伝子の発現と比較して変化している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。
本発明によれば、本明細書中に記載のレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおける、化合物を、細胞、または無細胞抽出物および核酸と接触させるステップは、緩衝液ならびに複数の塩の組合せ(KCl、NaClおよび/またはMgClなど)を含む水溶液中で実施することが好ましい。水溶液中で使用する各塩の最適な濃度はtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼおよび使用する化合物に依存し、慣用の実験を用いて決定することができる。具体的な実施形態では、水溶液は生理的条件に近似するかまたはそれを模倣する。別の具体的な実施形態では、水溶液はさらに界面活性剤またはサーファクタントを含む。
本明細書中に記載のレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおいて利用するレポーター遺伝子構築体は、レポーター遺伝子のコード領域およびtRNAイントロンを含み得、これによりレポーター遺伝子をコードしているmRNAをフレーム外とする。あるいは、本明細書中に記載のレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおいて利用するレポーター遺伝子構築体は、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、または5’および3’非翻訳領域のどちらにもtRNAイントロンを含む。別の代替方法では、tRNAイントロンはmRNAスプライシングエレメントを分断する。具体的な実施形態では、本明細書中に記載のレポーター遺伝子に基づいたアッセイで利用するレポーター遺伝子構築体は、レポーター遺伝子のオープンリーディングフレーム内にレポーター遺伝子のコード領域およびtRNAイントロンを含む。本明細書中に記載のレポーター遺伝子構築体で利用するイントロンはバルジ−ヘリックス−バルジコンホメーションを含み得る。好ましい実施形態では、本明細書中に記載のレポーター遺伝子に基づいたアッセイで利用するレポーター遺伝子構築体は、tRNAイントロンを含む成熟ドメインを含む。
当業者に周知の任意のレポーター遺伝子を本明細書中に記載のレポーター遺伝子構築体で利用し得る。レポーター遺伝子の例としては、それだけには限定されないが、ホタルルシフェラーゼをコードする遺伝子、ウミシイタケルシフェラーゼをコードする遺伝子、コメツキムシルシフェラーゼをコードする遺伝子、緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子、黄色蛍光タンパク質をコードする遺伝子、赤色蛍光タンパク質をコードする遺伝子、シアン蛍光タンパク質をコードする遺伝子、青色蛍光タンパク質をコードする遺伝子、β−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子、β−グルコロニダーゼをコードする遺伝子、β−ラクタマーゼをコードする遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子、アルカリホスファターゼをコードする遺伝子が挙げられる。
本明細書中に記載のレポーター遺伝子に基づいたアッセイは、レポーター遺伝子を発現させるために遺伝子操作した細胞中で実施するか、または無細胞抽出物を利用してin vitroで実施し得る。当業者に周知の任意の種の任意の細胞または細胞系を本発明の方法に従って利用し得る。さらに、無細胞抽出物は当業者に周知の任意の種の任意の細胞または細胞系由来であり得る。細胞および細胞種の例には、それだけには限定されないが、ヒト細胞、培養マウス細胞、培養ラット細胞またはチャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞が含まれる。
蛍光共鳴エネルギー転移(「FRET」)アッセイを、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物を同定するために使用し得る。FRETアッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの標識したサブユニット、または動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの標識した基質を利用して実施し得る。FRET細胞系アッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を動物界の細胞中に微量注入またはトランスフェクトし、その細胞を化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、あるいは前記基質は5’末端がクエンチャーで標識され、3’末端がフルオロフォアで標識されているステップと、たとえば蛍光顕微鏡またはViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、その結果検出可能な蛍光シグナルが生成される。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって検出可能な蛍光シグナルの生成が阻害または低減される。内在性エンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって検出可能な蛍光シグナルの生成が増大する。あるいは、FRET細胞系アッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を細胞中に微量注入またはトランスフェクトし、その細胞を化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、あるいは前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、たとえば蛍光顕微鏡観察またはViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、蛍光ドナー部分の波長における、蛍光ドナー部分および蛍光アクセプター部分による蛍光発光の低減がもたらされる。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって、蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が増大する。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって、蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が低減する。
任意選択で、化合物がリガーゼの活性のみを阻害または低減するという可能性を排除するために、動物界のtRNAスプライシングリガーゼに特異的に結合する抗体などの、動物界のtRNAスプライシングリガーゼの活性を阻害または低減することが知られている薬剤をFRETアッセイの接触ステップに含める。あるいは、tRNAスプライシングリガーゼを欠損する動物界の細胞または動物界の無細胞抽出物をFRETアッセイで使用する。別の実施形態では、アッセイからATPを排除する。特定の作用機構に拘束されることを意図するものではないが、リガーゼの反応にはATPが必要であるため、ATPの非存在下でのFRETアッセイにおける化合物の作用は、リガーゼ反応に対する作用に起因するものではなく、従って動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに対する作用である。
一実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する抗増殖性化合物の同定方法であって、(a)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を動物界の細胞中に微量注入またはトランスフェクトするステップであって、前記基質が5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、あるいは前記基質は5’末端がクエンチャーで標識され、フルオロフォアで標識されているステップと、(b)細胞を化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップと、(c)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を測定するステップであって、化合物の非存在下もしくは陰性対照の存在下と比較して化合物の存在下において蛍光シグナルが検出可能でない場合に、tRNAスプライシング活性を阻害または低減する抗増殖性化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する抗増殖性化合物の同定方法であって、(a)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を含む動物界の細胞を化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップであって、前記基質は5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、あるいは前記基質は5’末端がクエンチャーで標識され、もしくは3’末端がフルオロフォアで標識されているステップと、(b)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を測定するステップであって、化合物の非存在下もしくは陰性対照の存在下と比較して化合物の存在下において蛍光シグナルが検出可能でない場合に、tRNAスプライシング活性を阻害または低減する抗増殖性化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する抗増殖性化合物の同定方法であって、(a)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を動物界の細胞中に微量注入またはトランスフェクトするステップであって、前記基質が5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、あるいは前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、(b)細胞を化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップと、(c)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を測定するステップであって、化合物の存在下において蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が、化合物の非存在下または陰性対照の存在下と比較して増大している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害または低減する抗増殖性化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する抗増殖性化合物の同定方法であって、(a)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を含む動物界の細胞を化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップであって、前記基質が5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、あるいは前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、(b)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を測定するステップであって、化合物の存在下において蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が、化合物の非存在下または陰性対照の存在下と比較して増大している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害または低減する抗増殖性化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。
FRET無細胞系アッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を、動物界の無細胞抽出物(好ましくはtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ抽出物)または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼおよび化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、あるいは前記基質は5’末端がクエンチャーで標識され、3’末端がフルオロフォアで標識されているステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。動物界の無細胞抽出物中のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼまたは精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、その結果検出可能な蛍光シグナルが生成される。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって検出可能な蛍光シグナルの生成が阻害または低減する。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって検出可能な蛍光シグナルの生成が増大する。あるいは、FRET無細胞系アッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を、動物界の無細胞抽出物または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼおよび化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、あるいは前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。動物界の無細胞抽出物中のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼまたは精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、その結果、蛍光ドナー部分の波長における、蛍光ドナー部分および蛍光アクセプター部分による検出可能な蛍光シグナルが生成される。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が増大する。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が低減する。
一実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する抗増殖性化合物の同定方法であって、(a)動物界の無細胞抽出物(好ましくはtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ抽出物)または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質および化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップであって、前記基質が5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、あるいは前記基質は5’末端がクエンチャーで標識され、3’末端がフルオロフォアで標識されているステップと、(b)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を測定するステップであって、化合物の非存在下または陰性対照の存在下と比較して、その化合物の存在下でより低い蛍光シグナルが検出可能な場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害または低減する抗増殖性化合物が同定されるステップを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する抗増殖性化合物の同定方法であって、(a)動物界の無細胞抽出物(好ましくはtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ抽出物)または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質および化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップであって、前記基質は5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、あるいは前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、(b)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を測定するステップであって、化合物の存在下において蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が、化合物の非存在下または陰性対照の存在下と比較して増大している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害または低減する抗増殖性化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。
本明細書中に記載のFRETアッセイで利用するtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質はイントロンを含む。好ましい実施形態では、本明細書中に記載のFRETアッセイで利用するtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質はtRNAイントロンを含む。イントロンはバルジ−ヘリックス−バルジコンホメーションを有しうる。好ましい実施形態では、基質はイントロンを含む成熟ドメインを含む。
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に対する化合物の効果は、蛍光偏光に基づいたアッセイを利用して決定し得る。このようなアッセイでは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの蛍光標識した基質を、動物界の無細胞抽出物または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼおよび化合物または化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップと、当業者に周知のまたは本明細書中に記載の技術を利用して蛍光偏光放射を測定するステップであって、対照に対する、または化合物もしくは化合物ライブラリのメンバーの非存在下に対する蛍光偏光放射の変化は、その化合物または化合物ライブラリのメンバーが動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートすることを示すステップとを行う。
さらに、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に対する化合物の効果は、tRNAエンドヌクレアーゼ抑制アッセイを用いて決定し得る。このようなアッセイは、レポーター遺伝子およびサプレッサーtRNAを含むように宿主細胞を遺伝子操作するステップであって、オープンリーディングフレームが分断され、サプレッサーtRNAの発現が誘導性調節エレメントによって調節され、サプレッサーtRNAがアンチセンスコドン中にtRNAイントロンを含むように、レポーター遺伝子構築体はそのオープンリーディングフレーム内にナンセンスコドンを有するレポーター遺伝子を含むものである上記ステップ;サプレッサーtRNAの発現を誘導するステップ;宿主細胞を化合物と接触させるステップ;当業者に周知のまたは本明細書中に記載の技術を利用してレポーター遺伝子の発現および/またはレポーター遺伝子にコードされているタンパク質の活性を測定するステップを含む。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は機能的サプレッサーtRNAの産生を阻害または低減し、したがって、事前に決定した基準範囲と比較して、または前記化合物の非存在下もしくは適切な対照(たとえば陰性対照)の存在下におけるレポーター遺伝子の発現と比較してレポーター遺伝子の発現を低減する。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は機能的サプレッサーtRNAの産生を増大し、したがって、事前に決定した基準範囲と比較して、または前記化合物の非存在下もしくは適切な対照(たとえば陰性対照)の存在下におけるレポーター遺伝子の発現と比較してレポーター遺伝子の産生を増大させる。
本発明のアッセイは、様々なインキュベーション時間を用いて行うことができる。無細胞系では、化合物または化合物ライブラリのメンバーを加える前に、無細胞抽出物または精製されたtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼおよび動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を一緒にインキュベートすることができる。特定の実施形態では、無細胞抽出物または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの酵素の基質と共に、化合物または化合物ライブラリのメンバーを加える前に、少なくとも0.2時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、または少なくとも1日間インキュベートする。他の実施形態では、無細胞抽出物もしくは精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ、または動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を、化合物または化合物ライブラリのメンバーと共に、それぞれ基質、または無細胞抽出物もしくは精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを加える前にインキュベートする。特定の実施形態では、化合物または化合物ライブラリのメンバーを、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質または無細胞抽出物もしくは精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼと共に、残りの構成要素、すなわちそれぞれ無細胞抽出物もしくは精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ、または動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を加える前に、少なくとも0.2時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、または少なくとも1日間インキュベートする。反応器に3つの構成要素、すなわち、化合物または化合物ライブラリのメンバー、無細胞抽出物または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ、および動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を導入したあと、反応を少なくとも0.2時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、または少なくとも1日間、さらにインキュベートし得る。
反応の進行は連続的に測定することができる。たとえば、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼまたは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットの基質をフルオロフォア(または複数のフルオロフォア)で標識した場合、ViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器を用いて反応の進行を連続的にモニターすることができる。あるいは、反応の異なる時に時点を採り、反応の進行をモニターし得る。
tRNAエンドヌクレアーゼ抑制アッセイおよび細胞系アッセイなどの本発明の特定のアッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに影響を与える化合物の間接的なアッセイであり、tRNAスプライシング経路の別の側面に影響を与える化合物を検出し得る。ある化合物が特定の動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのモジュレーターであることを確認するまたは確実にするためには、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に対する化合物の直接的な効果を測定する任意のアッセイを行うことができる。このようなアッセイには精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを用いたアッセイが含まれ、これらを以下に説明する。
本明細書中に記載のアッセイで利用する化合物は、化合物ライブラリのメンバーであり得る。具体的な実施形態では、化合物は、ペプトイド;ランダムバイオオリゴマー;ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチドなどのダイバーソマー(diversomer);ビニル性ポリペプチド;非ペプチド性ペプチド模倣体;オリゴカルバメート;ペプチジルホスホネート;ペプチド核酸ライブラリ;抗体ライブラリ;炭水化物ライブラリ;ならびに有機小分子ライブラリを含むコンビナトリアル化合物ライブラリから選択される。好ましい実施形態では、有機小分子ライブラリはベンゾジアゼピン、イソプレノイド、チアゾリジノン、メタチアザノン、ピロリジン、モルホリノ化合物、またはジアゼピンジオンのライブラリである。
特定の実施形態では、化合物をプールに分けてスクリーニングする。陽性のプールが同定されたあと、そのプールの個々の化合物を個別に試験する。特定の実施形態では、プールの大きさは少なくとも2種、少なくとも5種、少なくとも10種、少なくとも25種、少なくとも50種、少なくとも75種、少なくとも100種、少なくとも150種、少なくとも200種、少なくとも250種、または少なくとも500種の化合物である。
tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物が同定されたあと、周知の技術を利用して、または事前に決定したコードを参照することによって化合物の構造を決定し得る。たとえば、化合物の構造は質量分析、NMR、振動分光分析、またはX線結晶構造解析によって決定し得る。
特定の実施形態において、本発明の方法に従って同定される化合物は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットの相互作用を破壊しうる。他の実施形態において、本発明の方法に従って同定される化合物は、それ自体が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性部位に挿入しうる。
本発明によって同定される化合物は、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに直接結合し得る。あるいは、本発明の方法によって同定される化合物は、イントロンに結合し得る。本発明の方法によって同定される化合物はまた、tRNAイントロンとtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼとの相互作用を破壊し得る。さらに、本発明の方法によって同定される化合物はtRNA成熟ドメインとtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼとの相互作用を破壊し得る。好ましい実施形態においては、本発明の方法によって同定される化合物は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害する。別の好ましい実施形態において、本発明の方法によって同定される化合物は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を選択的に阻害する。
本発明の特定の実施形態では、本明細書中に記載のアッセイを用いて同定される化合物は小分子である。好ましい実施形態では、本明細書中に記載のアッセイを用いて同定される化合物は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に影響を与えないと考えられている。別の好ましい実施形態では、本明細書中に記載のアッセイを用いて同定される化合物は、抗増殖剤または抗真菌剤として使用されたことがなく、またそのように提案されたこともない。
本明細書中に記載のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物は、当業者に周知のまたは本明細書中に記載のin vitroアッセイもしくはin vivoアッセイ(たとえば細胞系アッセイもしくは無細胞系アッセイ)で、mRNAの翻訳に対する前記化合物の効果を試験し得る。本発明の方法によって同定される化合物は、ヒトtRNA前駆体を含む28個のイントロンのうち任意のものからの成熟tRNAの産生に対するその効果についてスクリーニングすることができる。当業者に周知のまたは本明細書中に記載のin vitroおよびin vivoアッセイを使用して過剰増殖細胞対正常細胞に対する特定の化合物の抗増殖効果を決定し得る。さらに、本明細書中に記載のアッセイを利用して同定される特定の化合物は、癌もしくはその症状の予防、治療、管理または寛解におけるその化合物の有効性を決定するために癌の動物モデルで試験し得る。さらに、本明細書中に記載のアッセイを利用して同定される化合物の効果は、酵母tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに対するその効果について試験し得る。
本発明は、増殖性疾患もしくはその症状の予防、治療、管理または寛解方法であって、本明細書中に記載の方法によって同定された、治療上または予防上有効な量の化合物もしくは製薬上許容されるその塩を、それを必要としている対象に投与することを含む方法を提供する。具体的には、本発明は、癌もしくはその症状の予防、治療、管理または寛解方法であって、本明細書中に記載の方法によって同定された、有効量の化合物または製薬上許容されるその塩を、それを必要としている対象に投与することを含む方法を提供する。
具体的な実施形態において、本発明は、癌またはその症状を予防、治療、管理または寛解する治療剤の同定方法を提供し、該方法は、(a)化合物ライブラリのメンバーを、レポーター遺伝子を含む核酸を含有する細胞と接触させるステップであって、該レポーター遺伝子がtRNAイントロンを含む、上記ステップ、(b)上記レポーター遺伝子の発現を検出するステップを含み、事前に決定した基準範囲と比較して該レポーター遺伝子の発現を低減する、または化合物の非存在下もしくは適当な対照(例えば、PBSなどの陰性対照)の存在下と比較して該レポーター遺伝子の発現を低減する化合物が(b)において検出される場合には、続いて、(c)該化合物を癌細胞または新生物細胞と接触させ、該癌細胞または新生物細胞の増殖を検出するステップを含み、その結果、該化合物が該癌細胞または新生物細胞の増殖を低減または阻害する場合に、該化合物を抗増殖性化合物と同定する。
理論に拘束されるものではないが、すべてのtRNAがスプライシングを必要としておらず、tRNAスプライシングは増殖中の細胞でより頻繁に起こるので、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを標的とする化合物は、増殖性の高い形質転換した悪性細胞に対してのみ毒性を有し、正常細胞の増殖および代謝は可能であるべきである。イントロン配列の除去を必要とするtRNA種は僅かしか存在しない(Trotta, C.R.およびAbelson, J.N.、tRNA Splicing: RNA World Add-On or an Ancient Reaction?、RNA World II、Tom Cech、Ray GestelandおよびJohn Atkins (編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999))。ヒトゲノム配列の最新版では648個のtRNA種が同定されている。これらのうち、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによって除去される必要のあるイントロンを含むのは28種のみである。tRNAを含む28種のイントロンは、8種の異なるイソ受容体群をコードしている。これらイソ受容体群のうち7種は、冗長の、イントロンを含まない変種を含むか、コドン−アンチコドン相互作用のゆらぎ法則によって解読することができる(Bjork, G.、Biosynthesis and Function of modified Nucleoside in tRNA: Structure, Biosynthesis and Function、D. SollおよびV. RayBhandary (編)、American Society for Microbiology、ワシントンDC (1995)。したがって、tRNAスプライシングの阻害における潜在的な制限のある構成要素として1種のtRNAが残る。tRNAイントロンの除去に専ら機能する酵素であるtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを標的化することによって、tRNA産生の阻害は非常に少数の重要なtRNA分子(潜在的には1種のみのtRNA)に微調整される。したがって、このプロセスを阻害することによって、正常細胞に対して生じる毒性は存在しても非常に穏和であり、翻訳能力の損失の結果として、迅速に増殖中の形質転換細胞が分裂する能力は低減するまたは取り除かれる。
本発明はさらに、化合物がtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする能力を検証または確認する方法を提供する。化合物がtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする能力は、このような化合物を同定するための本明細書中に記載のアッセイのうちの1つを利用して検証または確認することができる。第1の実施形態において、本発明は、化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害する能力を検証する方法を提供し、該方法は、(a)細胞においてレポーター遺伝子を含む核酸を発現させるステップであって、該レポーター遺伝子がtRNAイントロンを含む、上記ステップ、(b)該細胞を化合物を接触させるステップ、(c)該レポーター遺伝子の発現を検出するステップであって、化合物の存在下における該レポーター遺伝子の発現が、該化合物の非存在下または対照の存在下における該レポーター遺伝子の発現と比較して低減している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害する化合物が検証される。
別の実施形態において、本発明は、化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害する能力を検証する方法を提供し、該方法は、(a)化合物を、無細胞抽出物およびレポーター遺伝子を含む核酸と接触させるステップであって、該レポーター遺伝子がイントロンを含む、上記ステップ、(b)該レポーター遺伝子の発現を検出するステップであって、化合物の存在下における該レポーター遺伝子の発現が、該化合物の非存在下または対照の存在下における該レポーター遺伝子の発現と比較して低減している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害する化合物が検証される。別の実施形態において、本発明は、化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害する能力を検証する方法を提供し、該方法は、(a)化合物ライブラリのメンバーを、レポーター遺伝子を含む核酸を含有する細胞と接触させるステップであって、該レポーター遺伝子がtRNAイントロンを含む、上記ステップ、(b)該レポーター遺伝子の発現を検出するステップであって、化合物の存在下における該レポーター遺伝子の発現が、該化合物の非存在下または対照の存在下における該レポーター遺伝子の発現と比較して低減している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害する化合物が検証される。
3.1 用語
本明細書中で使用する用語「化合物」とは、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼをモジュレートするその能力が試験される、またはtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートすると同定される任意の薬剤または複合体をいう。
本明細書中で使用する用語「障害」および「疾患」とは、対象の状態をいう。
本明細書中で使用する用語「有効量」とは、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の進行、重篤度、および/または継続期間を軽減または寛解させるため、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の確立、再発または発症を予防するため、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の進行を防止するため、あるいは別の治療の治療効果を増強または改善するために十分な化合物の量をいう。
本明細書中で使用する用語「蛍光アクセプター部分」とは、蛍光ドナー部分からエネルギーを吸収し、転移されたエネルギーを蛍光として再放出する蛍光化合物をいう。蛍光アクセプター部分の例には、それだけには限定されないが、クマリンおよび関連するフルオロフォア、キサンテン(たとえば、フルオレセイン、ロドール(rhodol)、およびローダミン)、レゾルフィン、シアニン、ジフルオロボラジアゾインダセン(difluoroboradiazindacene)ならびにフタロシアニンが含まれる。
本明細書中で使用する用語「蛍光ドナー部分」とは、エネルギーを吸収し、そのエネルギーを別の蛍光化合物などのアクセプターへと転移することができる蛍光化合物をいう。蛍光ドナー部分の例には、それだけには限定されないが、クマリンおよび関連する色素、キサンテン色素(たとえば、フルオレセイン、ロドールおよびローダミン)、レゾルフィン、シアニン色素、ビマン(bimane)、アクリジン、イソインドール、ダンシル色素、アミノフタルヒドラジド(たとえばルミノールおよびイソルミノール誘導体)、アミノフタルイミド、アミノナフタルイミド、アミノベンゾフラン、アミノキノリン、ジシアノヒドロキノン、蛍光ユーロピウム、テルビウム錯体ならびに関連する化合物が含まれる。
本明細書中で使用する用語「フルオロフォア」とは、蛍光発光する発色団をいう。
本明細書中で使用する用語「宿主細胞」には、核酸分子をトランスフェクトした特定の対象細胞およびこのような細胞の子孫または潜在的な子孫を含むことを意味する。このような細胞の子孫は、後世代で起こり得る変異もしくは環境の影響または核酸分子が宿主細胞ゲノム中に取り込まれることにより、核酸分子をトランスフェクトした親細胞と同一ではないこともありうる。
本明細書中で使用する用語「併用」とは、1を超える治療(たとえば予防剤および/または治療剤)の使用をいう。用語「併用」の使用は、増殖性疾患に罹患している対象に治療(たとえば予防剤および/または治療剤)を投与する順序を制限するものではない。第1の治療(たとえば本発明によって同定された化合物などの予防剤または治療剤)を、第2の治療(たとえば、化学療法剤またはTNF−α拮抗剤などの予防剤または治療剤)の投与の前に(たとえば、5分間、15分間、30分間、45分間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もしくは12週間前)、同時に、またはその後に(たとえば、5分間、15分間、30分間、45分間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もしくは12週間後)、増殖性疾患に罹患している対象に投与することができる。
本明細書中で使用する用語「ライブラリ」とは、複数の化合物をいう。ライブラリは、コンビナトリアルライブラリ、たとえば、コンビナトリアル化学技術を用いて合成した化合物の集合、またはそれぞれが独特の三次元空間を占める低分子量(1000ダルトン未満)の独特の化学物質の集合であることができる。
本明細書中で使用する用語「ORF」とは、mRNAのオープンリーディングフレーム、すなわちタンパク質へと翻訳されるmRNA中の領域をいう。
本明細書中で使用する用語「管理する」、「管理している」、および「管理」とは、増殖性疾患の治癒をもたらさない、対象が治療(たとえば予防剤または治療剤)から得る有益な効果をいう。特定の実施形態では、対象に疾患または障害を「管理する」ために1種もしくは複数種の治療を投与し、その疾患または障害の進行または悪化を予防する。
本明細書中で使用する用語「非応答性」および「不応性」とは、増殖性疾患(例えば癌)の現在利用可能な治療(たとえば予防剤または治療剤)で治療したが、それがそのような増殖性疾患に関連する1もしくは複数の症状を軽減させるのに不十分であった患者を説明する用語である。通常、このような患者は重篤な、持続的に活動性の疾患に罹患しており、その増殖性疾患に関連する症状を寛解させるためにさらなる治療を必要とする。
本明細書中で使用する表現「製薬上許容される塩(または複数の塩)」には、それだけには限定されないが、本発明の方法を用いて同定される化合物中に存在し得る酸性基または塩基性基の塩が含まれる。塩基性の性質を有する化合物は様々な無機酸および有機酸と様々な塩を形成することができる。このような塩基性化合物の製薬上許容される酸付加塩の調製に使用することができる酸は、無毒性の酸付加塩、すなわち、それだけには限定されないが、硫酸(sulfuric)、クエン酸(citric)、マレイン酸(maleic)、酢酸(acetic)、シュウ酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸(sulfate)、硫酸水素、リン酸、酸性リン酸、イソニコチン酸、酢酸(acetate)、乳酸、サリチル酸、クエン酸(citrate)、酸性クエン酸、酒石酸、オレイン酸、タンニン酸、パントテン酸、酒石酸水素、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸(maleate)、ゲンチジン酸、フマル酸、グルコン酸、グルカロン酸、サッカリン酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびパモ酸(すなわち1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸))の塩を含めた薬理学的に許容される陰イオンを含む塩を形成する酸である。アミノ部分を含む化合物は、上述の酸に加えて様々なアミノ酸と製薬上許容される塩を形成し得る。酸性の性質を有する化合物は様々な薬理学的に許容される陽イオンと塩基塩を形成することができる。このような塩の例には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウムリチウム、亜鉛、カリウム、および鉄の塩が含まれる。
本明細書中で使用する用語「予防する(prevent)」「予防している(preventing)」および「予防(prevention)」は、本発明の方法により同定される1もしくは複数の化合物の投与、あるいはかかる化合物と増殖性疾患の既知の治療との組合せの投与の結果から生じる、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の確立、再発または発症の防止を意味する。
本明細書中で使用する用語「事前に決定した基準範囲」とは、特定のアッセイのリードアウトの基準範囲をいう。具体的な実施形態において、この用語は、特定の細胞による、または特定の無細胞抽出物中のレポーター遺伝子の発現および/もしくは活性の基準範囲をいう。それぞれの実験室がそれぞれの特定のアッセイ、それぞれの細胞種およびそれぞれの無細胞抽出物について独自の基準範囲を確立するであろう。好ましい実施形態では、分析する化合物バッチのそれぞれに少なくとも1つの陽性対照および少なくとも1つの陰性対照が含まれる。
本明細書中で使用する用語「予防剤」および「複数の予防剤」とは、増殖性疾患の予防に使用することができる任意の薬剤(もしくは複数の薬剤)をいう。特定の実施形態では、用語「予防剤」とは、本明細書中に記載のスクリーニングアッセイで同定された化合物をいう。特定の他の実施形態では、用語「予防剤」とは、本明細書中に記載のスクリーニングアッセイで同定された化合物以外の薬剤であり、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の発症、確立および/または進行を予防または妨害するために有用であると知られている、あるいはそのために現在使用されている薬剤をいう。
本明細書中で使用する表現「予防上有効な量」とは、増殖性疾患に関連する1もしくは複数の症状の確立、再発もしくは発症の予防をもたらすのに十分な治療(たとえば予防剤)の量をいう。
本明細書中、化合物、たとえば本発明の方法によって同定される化合物の文脈で使用する用語「精製された」とは、化学合成した際の化学物質の前駆体または他の化学物質を実質的に含まない化合物をいう。具体的な実施形態では、化合物は他の異なる化合物を60%、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、または99%含まない。好ましい実施形態では、本発明によって同定される化合物は精製されている。
本明細書中、タンパク質性薬剤(たとえば、ペプチド、ポリペプチド、またはtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼやそのサブユニットなどのタンパク質)の文脈で使用する「精製された」という用語は、それが由来する細胞もしくは組織供与源からの細胞性物質もしくは汚染タンパク質を実質的に含まない、または化学合成した際の化学物質の前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないタンパク質性薬剤をいう。「細胞性物質を実質的に含まない」という用語には、タンパク質性薬剤が、それを単離したまたは組換えによって生成した、元の細胞の細胞構成要素から分離されているタンパク質性薬剤の調製物が含まれる。したがって、細胞性物質を実質的に含まないタンパク質性薬剤には、約30%未満、20%未満、10%未満、または5%未満(乾重量)の異種タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、または抗体(「汚染タンパク質」とも呼ばれる)を含むタンパク質性薬剤の調製物が含まれる。タンパク質性薬剤を組換えによって生成する場合は、培地も実質的に含まない、すなわち培地がタンパク質調製物の体積の約20%未満、10%未満、または5%未満を表すことが好ましい。タンパク質性薬剤を化学合成によって生成する場合は、化学物質の前駆体または他の化学物質を実質的に含まない、すなわちタンパク質性薬剤がその合成に関与する化学物質の前駆体または他の化学物質から分離されていることが好ましい。したがって、このようなタンパク質性薬剤の調製物は目的のタンパク質性薬剤以外に約30%未満、20%未満、10%未満、5%未満(乾重量)の化学物質の前駆体または化合物を含む。好ましくは、本明細書中に開示するタンパク質性薬剤は単離されている。
本明細書中で使用する用語「クエンチャー」とは、蛍光部分からの発光を低減することができる分子または化合物の一部分をいう。このような低減には、光子が蛍光部分から正常に放出された時点よりあとに光を低減させることが含まれる。
本明細書中で使用する用語「小分子」および類似用語には、それだけには限定されないが、ペプチド、ペプチド模倣体、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、1モルあたり約10,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物(すなわち異種有機化合物および有機金属化合物を含む)、1モルあたり約5,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、1モルあたり約1,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、1モルあたり約500グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、1モルあたり約100グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、ならびにこのような化合物の塩、エステル、および他の製薬上許容される形態が含まれる。このような化合物の塩、エステル、および他の製薬上許容される形態も包含される。
本明細書中で使用する用語「対象」および「患者」とは、本明細書中で互換性があるように使用される。用語「対象」および「複数の対象」とは、動物、好ましくは非霊長類(たとえばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、およびマウス)ならびに霊長類(たとえばチンパンジー、カニクイザルなどのサルおよびヒト)を含めた哺乳動物、より好ましくはヒトをいう。一実施形態では、対象は増殖性疾患の現在の治療に対して不応性または非応答性である。別の実施形態では、対象は家畜(たとえばウマ、ウシ、ブタなど)またはペット(たとえばイヌやネコ)である。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
本明細書中で使用する表現「動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質」とは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによって認識および切除される任意のヌクレオチド配列をいう。たとえば、バルジ−ヘリックス−バルジ構造または前駆体tRNAの成熟ドメインを含むヌクレオチド配列は、本明細書中に記載のアッセイにおいて動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質として利用し得る。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによって認識および切除されるヌクレオチド配列は、10個のヌクレオチド、15個のヌクレオチド、20個のヌクレオチド、25個のヌクレオチド、25個のヌクレオチド、30個のヌクレオチド、40個のヌクレオチド、45個のヌクレオチド、50個のヌクレオチド、55個のヌクレオチド、60個のヌクレオチド、65個のヌクレオチド、75個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、125個のヌクレオチド、150個のヌクレオチド、またはそれ以上を含み得る。具体的な実施形態では、本明細書中に記載のアッセイで利用するtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質はtRNAイントロンを含む。この基質は成熟ドメインまたはバルジ−ヘリックス−バルジコンホメーションを含み得る。好ましい実施形態では、基質は前駆体tRNAの成熟ドメインを含む。
動物界のtRNAエンドヌクレアーゼの基質は、当業者に周知の任意の方法によって生成し得る。たとえば、ホスホルアダイトまたは他の液相もしくは固相の方法を用いて基質を化学合成し得る。ホスホルアミダイト法によってポリヌクレオチドを形成させるために使用する化学の詳細な説明は周知である(たとえば、Caruthers他、米国特許第4,458,066号および同第4,415,732号;Caruthers他、1982、Genetic Engineering、4:1-17;Users Manual、モデル392および394のポリヌクレオチド合成機、1990、6-1〜6-22ページ、Applied Biosystems、第901237号;Ojwang他、1997、Biochemistry、36:6033-6045参照)。合成後、当業者に公知の標準的な技術を用いて基質を精製することができる(Hwang他、1999、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、96(23):12997-13002およびそれ中で引用された参考文献参照)。基質の長さおよびその合成方法に応じて、このような精製技法には、それだけには限定されないが、逆相高速液体クロマトグラフィー(「逆相HPLC」)、高速液体クロマトグラフィー(「FPLC」)、およびゲル精製が含まれる。
具体的な実施形態では、図1に示す基質を本明細書中に記載のアッセイで利用する。図1に示すハイブリッド形成したtRNA基質を作製するために、ハイブリッド形成した基質の両方の鎖を別々に転写させ、次いで加熱および冷却によって2本の鎖をハイブリッド形成させる。環状に配置したtRNA基質の合成には、RNAをイントロン中の5’末端から(図1C参照)イントロン中の3’末端へと転写する。
本明細書中で使用する用語「相乗的な」とは、本明細書中に記載の方法のうち1つを用いて同定される化合物と、増殖性疾患またはその症状を予防、治療もしくは管理するために使用されてきた、または現在使用されている別の治療(たとえば薬剤)の組合せであって、任意の2つ以上の単一の治療の相加効果よりも有効である組合せをいう。治療(たとえば予防剤または治療剤)の組合せの相乗効果により、増殖性疾患に罹患している患者に1もしくは複数の治療をより低い用量で使用すること、および/または前記治療をより低い頻度で投与することが可能となる。治療(たとえば予防剤または治療剤)をより低い用量で利用できること、および/または前記治療をより低い頻度で投与できることにより、増殖性疾患の予防、治療または管理において、前記治療の有効性を低減させることなく前記薬剤を対象に投与することに関連する毒性が低減される。さらに、相乗効果により、増殖性疾患の予防、治療または管理における治療(たとえば薬剤)有効性の改善がもたらされる場合がある。最後に、治療(たとえば予防剤または治療剤)の組合せの相乗効果により、いずれかの治療(たとえば薬剤)を単独で使用することに関連する有害または望ましくない副作用が回避または軽減され得る。
本明細書中で使用する用語「治療剤」および「複数の治療剤」とは、増殖性疾患の1もしくは複数のその症状の予防、治療、管理または寛解に使用することができる任意の薬剤(または複数の薬剤)をいう。特定の実施形態では、用語「治療剤」とは、本明細書中に記載のスクリーニングアッセイで同定される化合物をいう。他の実施形態では、用語「治療剤」とは、本明細書中に記載のスクリーニングアッセイで同定される化合物以外の薬剤であり、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の予防、治療、管理または寛解に有用であると知られている、あるいはそのために現在使用されている薬剤をいう。
本明細書中で使用する用語「治療上有効な量」とは、増殖性疾患の1もしくは複数の症状を寛解させるため、増殖性疾患の進行を防止するため、増殖性疾患の退縮を引き起こすため、あるいは別の治療(例えば治療剤)の治療効果を増強または改善するために十分な治療(たとえば治療剤)の量をいう。具体的な実施形態では、癌の治療に関して、治療上有効な量とは、癌細胞の増殖を阻害または低減する、癌細胞の伝播(転移)を阻害または低減する、癌に関連する1もしくは複数のその症状の発症、発生もしくは進行を阻害または低減する、あるいは腫瘍の大きさを減少させる治療(たとえば治療剤)の量をいう。好ましくは、治療(たとえば治療剤)の治療上有効な量により癌細胞の増殖または腫瘍の大きさが対照(たとえばリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」))と比較して少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも90%減少する。
本明細書中で使用する用語「治療する」、「治療」および「治療している」とは、本発明の方法によって同定される1もしくは複数の化合物、または本発明によって同定される1もしくは複数の化合物と別の治療との組合せを投与することにより生じる増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の進行、継続期間および/または重篤度の軽減または寛解をいう。具体的な実施形態では、このような用語は、癌細胞の増殖の阻害または軽減、癌細胞の伝播(転移)の阻害または軽減、癌に関連する1もしくは複数の症状の発症、発生または進行の阻害または軽減、あるいは腫瘍の大きさの減少をいう。
本明細書中で使用する用語「tRNAイントロン」とは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによって認識および切除される任意のヌクレオチド配列をいう。具体的には、用語「tRNAイントロン」とは、通常前駆体tRNA中に見つかるイントロンをいう。
本明細書中で使用する用語「tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ」とは、前駆体tRNA中に含まれるスプライシング部位の認識および前駆体tRNA中に存在するイントロンの切断を担う酵素をいう。古細菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは古細菌の前駆体tRNA中のバルジ−ヘリックス−バルジモチーフを認識する。真核生物のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは、成熟ドメインからスプライシング部位までの距離を測定することによって前駆体tRNA中に含まれるスプライシング部位を認識する。真核生物のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼはまた、前駆体tRNA中に含まれるバルジ−ヘリックス−バルジモチーフを認識する能力も有する。酵母のtRNAエンドヌクレアーゼは、分子量54kDa(SEN54)、44kDa(SEN2)、34kDa(SEN34)、および15kDa(SEN15)のサブユニットを含むヘテロ四量体である。SEN2およびSEN34サブユニットのヒト相同体は同定されており、そのアミノ酸配列はそれぞれGenBankのアクセッション番号NP_079541およびXP_085899に見つかる。具体的な実施形態では、本明細書中に記載のアッセイで利用するtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは、動物のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ(好ましくは哺乳動物のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ)由来である、またはこれをコードしている。好ましい実施形態では、本明細書中に記載のアッセイで利用するtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼはヒトのtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼである。
本明細書中で使用する用語「治療」および「複数の治療」とは、疾患もしくは障害(たとえば増殖性疾患もしくは真菌感染症)または1もしくは複数のその症状の予防、治療、管理または寛解に使用することができる任意の方法、プロトコルおよび/または薬剤をいう。特定の実施形態では、このような用語は、疾患もしくは障害(たとえば増殖性疾患もしくは真菌感染症)または1もしくは複数のその症状の予防、治療、管理または寛解に有用な、医療従事者に知られている化学療法、放射線療法、外科手術、支持療法および/または他の療法をいう。
本明細書中で使用する用語「tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ抽出物」とは、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を含む細胞からの抽出物をいう。特定の実施形態では、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ抽出物は、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性ならびに遺伝子の転写および翻訳に必要な構成要素を含む細胞抽出物である。
略記
HTS ハイスループットスクリーニング
FP 蛍光偏光
FRET 蛍光共鳴エネルギー転移
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
FPLC 高速性能液体クロマトグラフィー
FACS 蛍光活性化細胞分取器
3.2 図面の簡単な説明
図1:HTS蛍光スクリーニングにおけるtRNAスプライシングエンドヌエレアーゼの基質を示す図である。パネルAに内在性tRNAを示し、パネルBにハイブリッド形成したtRNA基質を示し、パネルCに環状に配置したtRNA基質を示す。5’ssは5’スプライシング部位を意味し、3’ssは3’スプライシング部位を意味する。
図2:ヒト(HsSen2(配列番号1)およびHsSen2変種(配列番号2))、ならびに酵母(ScSen2p(配列番号3))のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのSen2サブユニットのアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。四角の枠で囲んだアミノ酸残基はYRGGY(配列番号4)活性部位モチーフを示し、周りを囲んだアミノ酸残基は活性部位のヒスチジンを示し、下線を引いたアミノ酸残基は酵母の推定膜貫通ドメインを示す。
4.発明の詳細な説明
本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物の同定方法を提供する。特に本発明は、哺乳動物のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害する化合物を同定するための、簡便、迅速かつ高感度な方法を提供する。本明細書に記載する細胞系アッセイおよび無細胞系アッセイをハイスループット形式で用いて化合物ライブラリをスクリーニングし、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物を同定しうる。
レポーター遺伝子に基づいたアッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物を同定するために使用しうる。本明細書中に記載するレポーター遺伝子に基づいたアッセイは、化合物を、tRNAイントロンを含むレポーター遺伝子を含む核酸を発現するように遺伝子操作した細胞と接触させるステップと、前記レポーター遺伝子の発現を測定するステップとによって実施し得る。あるいは、レポーター遺伝子に基づいたアッセイは、化合物を、無細胞抽出物、およびtRNAを含むレポーター遺伝子を含む核酸と接触させ、前記レポーター遺伝子の発現を測定することにより実施し得る。このようなレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおいて、事前に決定した基準範囲と比較した、または化合物もしくは適当な対照(例えば陰性対照)の非存在下におけるレポーター遺伝子の発現と比較した場合のレポーター遺伝子の発現の変化は、特定の化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートすることを示す。
FRETアッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物を同定するために使用することができる。本明細書に記載するFRET−細胞に基づいたアッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を細胞内に微量注入またはトランスフェクション(たとえばリポソームまたはエレクトロポレーションを用いる)して、その細胞を化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、または前記基質は5’末端がクエンチャーで標識され、3’末端がフルオロフォアで標識されているステップと、たとえば蛍光顕微鏡またはViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、その結果検出可能な蛍光シグナルが生成される。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は、検出可能な蛍光シグナルの生成を防止する。あるいは、FRET−細胞系アッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を細胞内に微量注入またはトランスフェクトして、その細胞を化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、または前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、たとえば蛍光顕微鏡またはViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップによって実施し得る。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、蛍光ドナー部分の波長における蛍光ドナー部分と蛍光アクセプター部分とによる検出可能な蛍光シグナルが生成される。しかしながら、内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害する化合物は、蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を増大する。
FRET無細胞系アッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を無細胞抽出物または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ、および化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、あるいは前記基質は3’末端がフルオロフォアで標識され、5’末端がクエンチャーで標識されているステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器で基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、その結果対照と比較して検出可能な蛍光シグナルが生成される。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は、蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を増大しうる。しかしながら、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は、対照と比較して検出可能な蛍光シグナルの生成を阻害または低減する。あるいは、FRET無細胞系アッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を無細胞抽出物または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ、および化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、あるいは前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、蛍光ドナー部分の波長における蛍光ドナー部分と蛍光アクセプター部分とによる検出可能な蛍光シグナルが生成される。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は、蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を増大する。対照的に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は、蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を低減する。
動物界のtRNAエンドヌクレアーゼの活性を増強または阻害する能力について、無細胞蛍光偏光アッセイを利用して化合物を試験しうる。動物界のtRNAエンドヌクレアーゼの基質を、動物界のtRNAエンドヌクレアーゼによる切断によって該基質の標識部分のサイズが低減して蛍光偏光の変化が生じるように、その5’末端および3’末端を標識する。動物界のtRNAエンドヌクレアーゼの標識した基質を、無細胞抽出物または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼおよび試験対象化合物と共にインキュベートする。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は、陰性対照または化合物の非存在下と比較して、基質の回転が増大し、その結果より多くの放射光が偏光解消する。対照的に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を低減する化合物は、陰性対照または化合物の非存在下と比較して基質の回転が低減し、その結果偏光を保った放射光が生じる。
さらに、動物界のtRNAエンドヌクレアーゼの活性を増強または阻害する能力について、tRNAエンドヌクレアーゼ抑制アッセイまたはFISHアッセイを利用して化合物を試験しうる。
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする、本明細書に記載のアッセイにおいて同定される化合物は、tRNAプロセシング、そして最終的にはmRNA翻訳に対する該化合物の効果について、当業者に周知のまたは本明細書に記載のin vitroアッセイ(例えば細胞系アッセイもしくは無細胞系アッセイ)またはin vivoアッセイにおいて試験しうる。特に、当業者に周知のまたは本明細書に記載のin vitroアッセイまたはin vivoアッセイを用いて、正常細胞と比較した過増殖細胞に対する特定の化合物の抗増殖効果を測定することができる。さらに、本明細書に記載のアッセイを利用して同定される特定の化合物は、癌またはその症状の予防、治療または寛解における該化合物の有効性を判定するために、癌の動物モデルにおいて試験しうる。さらに、本明細書に記載のアッセイを利用して同定される特定の化合物は、真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに対するその効果について試験してもよい。
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする、本明細書に記載のアッセイにおいて同定される化合物の構造は、当業者に周知のまたは本明細書に記載のアッセイを用いて決定しうる。使用する方法は、部分的にはスクリーニング対象のライブラリの性質に応じて異なる。例えば、それぞれがアドレスまたは識別子を有するアッセイまたは化合物のマイクロアレイは、例えば陽性サンプルと個々の試験アッセイにアプライした元の化合物リストとを相互参照することにより、解析することができる。あるいは、本明細書において同定される化合物の構造は、質量分析法、核磁気共鳴(NMR)、X線結晶構造解析、または振動分光分析を用いて決定しうる。
本発明は、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状を予防、治療、管理または寛解させるための、本明細書に記載の方法によって同定される、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物の使用を包含する。特に、本発明は、癌または1もしくは複数のその症状を予防、治療、管理または寛解させるための、本明細書に記載の方法によって同定される、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物の使用を包含する。
4.1 レポーター遺伝子構築体、トランスフェクト細胞および細胞抽出物
本発明は、1または複数の調節エレメントに機能的に連結されたtRNAイントロンを含むレポーター遺伝子を含む特異的なベクター、および前記ベクターをトランスフェクトした宿主細胞を提供する。本発明はまた、1または複数の調節エレメントにより挟まれたレポーター遺伝子のin vitroでの翻訳を提供する。本発明のこの特定の態様を実行するための技術では、別段に支持しない限り、当業者が慣用的に実行している分子生物学、微生物学、ならびに組換えDNAの操作および産生の慣用技術を利用する。たとえば、Sambrook、1989、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、第2版;DNA Cloning、第I巻およびII巻(Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis (Gait編、1984);Nucleic Acid Hybridization (HamesおよびHiggins編、1984);Transcription and Translation (HamesおよびHiggins編、1984);Animal Cell Culture (Freshney編、1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press、1986);Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (MillerおよびCalos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory);Methods in Enzymology、第154巻および155巻(それぞれWuおよびGrossman編、ならびにWu編)、(MayerおよびWalker編、1987);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press、London、Scopes、1987)、Expression of Proteins in Mammalian Cells Using Vaccinia Viral Vectors、Current Protocols in Molecular Biology、第2巻(Ausubel他編、1991)を参照されたい。
4.1.1 レポーター遺伝子
動物界のtRNAエンドヌクレアーゼに対する化合物の効果を確認するために、当業者に周知の任意のレポーター遺伝子をレポーター遺伝子構築体中で使用し得る。レポーター遺伝子とは、その存在または活性によって容易に検出可能なタンパク質をコードするヌクレオチド配列をいう。レポーター遺伝子は当業者に周知の任意の方法で得られ、そのエレメントのヌクレオチド配列は当業者に周知の任意の方法によって決定し得る。レポーター遺伝子のヌクレオチド配列は、たとえば文献またはGenBankなどのデータベースから得ることができる。あるいは、レポーター遺伝子をコードするポリヌクレオチドは、適切な供与源由来の核酸から作製し得る。特定のレポーター遺伝子をコードする核酸を含むクローンは利用可能でないが、レポーター遺伝子の配列が知られている場合は、レポーター遺伝子をコードしている核酸を化学合成するか、適切な供与源(たとえば、cDNAライブラリ、あるいはレポーター遺伝子を発現している任意の組織もしくは細胞から作製したcDNAライブラリ、またはレポーター遺伝子を発現している任意の組織もしくは細胞から単離した核酸、好ましくはポリA+RNA)から、PCR増幅によって得てもよい。レポーター遺伝子のヌクレオチド配列が決定されたあと、レポーター遺伝子のヌクレオチド配列をヌクレオチド配列の操作について当分野で周知の方法、たとえば、組換えDNA技術、部位特異的突然変異誘発、PCRなどを用いて操作し(たとえば、Sambrook他、1990、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州Cold Spring HarborおよびAusubel他編、1998、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨークに記載の技術を参照。これらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)、異なるアミノ酸配列を有するレポーター遺伝子、たとえばアミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を作製し得る。
レポーター遺伝子の例には、それだけには限定されないが、ルシフェラーゼ(たとえば、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、およびコメツキムシルシフェラーゼ)、緑色蛍光タンパク質(「GFP」)(たとえば、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、および青色蛍光タンパク質)、β−ガラクトシダーゼ(「β−gal」)、β−グルコロニダーゼ、β−ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(「CAT」)、ならびにアルカリホスファターゼ(「AP」)が含まれる。以下の表1は、様々なレポーター遺伝子およびアッセイすることができるレポーター遺伝子の産物の特性を示す。好ましい実施形態では、リポーター構築体で利用するレポーター遺伝子は容易にアッセイすることができ、目的の細胞または生物中に通常見い出されない活性を有する。
Figure 0004634371
本明細書中以下に、具体的なレポーター遺伝子およびこれらレポーター遺伝子の特徴を詳述する。
4.1.1.1 ルシフェラーゼ
ルシフェラーゼとは、酸素および基質(ルシフェリン)の存在下で発光する酵素であり、細胞培養物、個々の細胞、生物全体、およびトランスジェニック生物において遺伝子発現のリアルタイムの微光イメージングに使用されている(GreerおよびSzalay、2002、Luminescence、17(1):43-74に総説)。
本明細書中で使用する用語「ルシフェラーゼ」とは、すべてのルシフェラーゼ、またはルシフェラーゼの活性を有するルシフェラーゼ由来の組換え酵素を包含することを意図する。ホタル由来のルシフェラーゼ遺伝子は、たとえばフォチナス(Photinus)およびルシオラ(Luciola)の種由来のものが特性決定されている(たとえば、フォチナス・ピラリス(Photinus pyralis)には国際公開公報WO95/25798号、ルシオラ・クルシオータ(Luciola cruciata)およびルシオラ・ラテラリス(Luciola lateralis)には欧州特許出願EP0 524 448号、ルシオラ・ナイングレリカ(Luciola naingrelica)にはDevine他、1993、Biochim. Biophys. Acta、1173(2):121-132を参照)。他の真核性ルシフェラーゼ遺伝子には、それだけには限定されないが、コメツキムシ(Photinus plagiophthalamus、たとえばWood他、1989、Science、244:700-702参照)、ウミシイタケ(Renilla reniformis、たとえばLorenz他.、1991、Proc Natl Acad Sci USA、88(10):4438-4442参照)、およびツチボタル(Lampyris noctiluca、たとえばSula-Newby他、1996、Biochem J.、313:761-767参照)が含まれる。コメツキムシは、この種の異なるメンバーが546nm(緑色)、560nm(黄色〜緑色)、578nm(黄色)および593nm(オレンジ色)の異なる色を生物発光するという点で特異である(たとえば、その開示が全体で本明細書中に組み込まれている米国特許第6,475,719号;第6,342,379号;および第6,217,847号参照)。細菌のルシフェリン−ルシフェラーゼ系には、それだけには限定されないが、陸生フォトラブダス・ルミネッセンス(Photorhabdus luminescens)の細菌性lux遺伝子(たとえばManukhov他、2000、Genetika、36(3):322-30参照)ならびに海生細菌ビブリオ・フェッシェリ(Vibrio fischeri)およびビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)が含まれる(たとえば、それぞれMiyamoto他、1988、J Biol Chem.、263(26):13393-9およびCohn他、1983、Proc Natl Acad Sci USA.、80(1):120-3参照)。本発明に包含されるルシフェラーゼには、Squirrell他の米国特許第6,265,177号(その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載の突然変異ルシフェラーゼも含まれる。
好ましい実施形態では、ルシフェラーゼは、その開示が全体で本明細書中に組み込まれている上記参考文献のうちいずれかに記載のホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、またはコメツキムシルシフェラーゼである。
4.1.1.2 緑色蛍光タンパク質
緑色蛍光タンパク質(「GFP」)とは、アミノ酸残基65〜67が発色団の形成に関与しており、蛍光発光するためにさらなる基質または補因子を必要としない、238個のアミノ酸からなるタンパク質である(たとえば、Prasher他、1992、Gene、111:229-233;Yang他、1996、Nature Biotechnol.、14:1252-1256;およびCody他、1993、Biochemistry、32:1212-1218参照)。
本明細書中で使用する用語「緑色蛍光タンパク質」または「GFP」とは、すべてのGFP(緑色以外の色を示すGFPの様々な形態を含む)またはGFPの活性を有するGFP由来の組換え酵素を包含することを意図する。好ましい実施形態では、GFPには、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、および青色蛍光タンパク質が含まれる。GFPの天然遺伝子は生物発光性のクラゲ、エクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)からクローニングした(たとえば、Morin他、1972、J. Cell Physiol.、77:313-318参照)。野生型GFPは395nmに主要な励起ピークを有し、470nmに小さな励起ピークを有する。470nmでの吸収ピークにより、標準的なフルオレセインイソチオシアネート(FITC)フィルターセットを用いたGFPのレベルのモニターが可能となる。GFP遺伝子の突然変異体は、発現を増強するため、ならびに励起および蛍光を改善するために有用であることが見出されている。たとえば、65位でセリンがアラニン、グリシン、イソロイシン、またはスレオニンで置換されたGFP突然変異体は、488nmで励起させた場合に最大励起がシフトされ、野生型タンパク質より蛍光が大きいGFP突然変異体がもたらされる(たとえば、Heim他、1995、Nature、373:663-664;米国特許第5,625,048号;Delagrave他、1995、Biotechnology、13:151-154;Cormack他、1996、Gene、173:33-38;およびCramer他、1996、Nature Biotechnol.、14:315-319参照)。GFPを488nmで励起させる能力により、GFPを標準的な蛍光活性化細胞分取(「FACS」)装置と共に使用することが可能となる。別の実施形態では、GFPをそれだけには限定されないが、ウミシイタケ(Renilla reriformis)などのクラゲ以外の生物から単離する。
一般に細胞をGFPで標識する技術は、米国特許第5,491,084号および同第5,804,387号;Chalfie他、1994、Science、263:802-805;Heim他、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91:12501-12504;Morise他、1974、Biochemistry、13:2656-2662;Ward他、1980、Photochem. Photobiol.、31:611-615;Rizzuto他、1995、Curr. Biology、5:635-642;ならびにKaetherおよびGerdes、1995、FEBS Lett、369:267-271に記載されている(これらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。大腸菌(E. coli)および線虫(C. elegans)におけるGFPの発現は、Tan他の米国特許第6,251,384号(その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。植物細胞におけるGFPの発現はHuおよびCheng、1995、FEBS Lett、369:331-33に記載されており、ショウジョウバエ(Drosophila)におけるGFPの発現はDavis他、1995、Dev. Biology、170:726-729に記載されている。
4.1.1.3 β−ガラクトシダーゼ
β−ガラクトシダーゼ(「β−gal」)とは、ラクトースを含めたβ−ガラクトシド、ならびにガラクトシド類似体であるo−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(「ONPG」)およびクロロフェノールレッド−β−D−ガラクトピラノシド(「CPRG」)の加水分解を触媒する酵素である(たとえば、Nielsen他、1983、Proc Natl Acad Sci USA、80(17):5198-5202;Eustice他、1991、Biotechniques、11:739-742;およびHenderson他、1986、Clin. Chem.、32:1637-1641参照)。β−gal遺伝子は、そのタンパク質産物が非常に安定しており、細胞溶解物中でタンパク質溶解性の分解に抵抗性を示し、容易にアッセイできるので、レポーター遺伝子として良好に機能する。ONPGを基質として使用した場合、β−galの活性は分光光度計またはマイクロプレートリーダーで定量することができる。
本明細書中で使用する用語「β−ガラクトシダーゼ」または「β−gal」とは、lacZ遺伝子の産物、またはβ−galの活性を有するβ−gal由来の組換え酵素を含めたすべてのβ−galを包含することを意図する。β−gal遺伝子は、そのタンパク質産物が非常に安定しており、細胞溶解物中でタンパク質溶解性の分解に耐性があり、容易にアッセイできるので、レポーター遺伝子として良好に機能する。ONPGが基質である実施形態では、変換されたONPGの量を決定するために、分光光度計またはマイクロプレートリーダーを用いて420nmでβ−galの活性を定量することができる。CPRGが基質である実施形態では、変換されたCPRGの量を決定するために、分光光度計またはマイクロプレートリーダーを用いて570〜595nmでβ−galの活性を定量することができる。さらに別の実施形態では、β−gal構築体で形質転換させた細菌細胞をXgalおよびIPTGを含むプレート上にプレーティングすることによってβ−galの活性を目視確認することができる。濃青色の細菌コロニーは高いβ−gal活性が存在することを示し、様々な濃さの青色のコロニーはβ−gal活性が様々な程度のレベルであることを示す。
4.1.1.4 β−グルコロニダーゼ
β−グルクロニダーゼ(「GUS」)は非常に広範なβ−グルクロニドの加水分解を触媒し、また、それよりはるかに低い効率で一部のβ−ガラクツロニドを加水分解する。GUSは非常に安定しており、多くの界面活性剤および広範なイオン条件を許容し、補因子もイオン性の要件もなく、任意の生理的pHでアッセイすることができ(最適pHは5.0〜7.8である)、熱失活に対して適度に耐性がある(たとえば米国特許第5,268,463号参照。その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
一実施形態では、GUSは大腸菌(Esherichia coli)のβ−グルクロニダーゼ遺伝子に由来する。本発明の別の実施形態では、核酸をコードしているβ−グルクロニダーゼは大腸菌のβ−グルクロニダーゼ遺伝子に相同である、かつ/または別の生物もしくは種由来であり得る。
GUSの活性は、蛍光もしくは分光測定によって、または米国特許第5,268,463号(この開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載の任意の他の方法によってアッセイすることができる。蛍光アッセイでは、4−トリフルオロメチルウンベリフェリルβ−D−グルクロニドがGUSの非常に感度の高い基質である。蛍光の最大値は500nm(青みがかった緑色)に近く、ここでは非常に僅かな植物化合物しか蛍光発光または吸収しない。4−トリフルオロメチルウンベリフェリルβ−D−グルクロニドはまた、中性pH付近ではるかに強力に蛍光発光し、MUGと比較して連続的なアッセイを行うことがより容易に可能となる。4−トリフルオロメチルウンベリフェリルβ−D−グルクロニドは、in vivoにおいて蛍光指示薬として使用することができる。分光光度アッセイは非常に簡便であり、中程度の感度がある(Jefferson他、1986、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86:8447-8451)。分光光度測定の好ましい基質はp−ニトロフェノールβ−D−グルクロニドであり、これは、GUSによって切断されると発色団であるp−ニトロフェノールを放出する。そのpK(約7.15)よりも高いpHでは、イオン化された発色団は400〜420nmの光を吸収して黄色を与える。
4.1.1.5 β−ラクタマーゼ
β−ラクタマーゼはβ−ラクタムを加水分解するその触媒作用がほぼ拡散律速性であるということに関してほぼ最適な酵素であり、したがってこれらは細胞内レポーター酵素の役割に適している(たとえばChristensen他、1990、Biochem. J.、266:853-861参照)。これらはペニシリンやセファロスポリンなどのβ−ラクタム抗生物質のβ−ラクタム環を切断し、その過程で新しい荷電部分を生じる(たとえば、O'Callaghan他、1968、Antimicrob. Agents. Chemother.、8:57-63およびStratton、1988、J. Antimicrob. Chemother.、22、補遺A:23-35参照)。多数のβ−ラクタマーゼが単離および特性決定されており、これらのすべてが本発明による使用に適している(たとえば、その開示が全体で本明細書中に組み込まれているRichmondおよびSykes、1978、Adv. Microb. Physiol.、9:31-88ならびにAmbler、1980、Phil. Trans. R. Soc. Lond. [Ser.B.]、289:321-331参照)。
使用した例示的なβ−ラクタマーゼのコード領域が、その開示が全体で本明細書中に組み込まれている米国特許第6,472,205号、Kadonaga他、1984、J. Biol. Chem.、259:2149-2154、およびSutcliffe、1978、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、75:3737-3741に記載されている。当業者には容易に明らかであるように、この配列およびβ−ラクタマーゼの活性を有するペプチドの他の類似する配列は、本発明による使用に同等に適している。その開示が全体で本明細書中に組み込まれている米国特許第6,472,205号、第5,955,604号、および第5,741,657号に記載の蛍光原基質と適切なβ−ラクタマーゼとの組合せを、米国特許第4,740,459号(この開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されているものなどの様々な広範のアッセイ系で使用することができる。
4.1.1.6 クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ
クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(「CAT」)は、哺乳動物細胞のCAT活性が検出可能なレベルではないので哺乳動物細胞系においてレポーター遺伝子として一般的に使用されている。CATのアッセイは、細胞性抽出物を放射標識したクロラムフェニコールおよび適切な補因子と共にインキュベートすること、たとえば薄層クロマトグラフィー(「TLC」)によって出発物質を産物から分離すること、次いでシンチレーション計数を行うことを含む(たとえば、米国特許第5,726,041号参照。その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
本明細書中で使用する用語「クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ」または「CAT」とは、すべてのCATまたはCATの活性を有するCAT由来の組換え酵素を包含することを意図する。細胞のプロセシング、放射性同位元素、およびクロマトグラフィーによる分離を必要としないレポーター系がハイスループットスクリーニングをより行いやすいことが好ましいが、レポーター遺伝子の安定性が重要である場合にはCATがレポーター遺伝子として好ましいかもしれない。たとえば、CATレポータータンパク質はin vivoでの半減期が約50時間であり、これは所望される結果の種類が累積変化対動的変化である場合に有利である。
4.1.1.7 分泌性アルカリホスファターゼ
分泌性アルカリホスファターゼ(「SEAP」)酵素とはアルカリホスファターゼの切断された形態であり、タンパク質の膜貫通ドメインが切断されることによりこれが細胞から周辺培地中に分泌されることが可能となる。好ましい実施形態では、アルカリホスファターゼはヒト胎盤から単離する。
本明細書中で使用する用語「分泌性アルカリホスファターゼ」または「SEAP」とは、すべてのSEAPまたはアルカリホスファターゼの活性を有するSEAT由来の組換え酵素を包含することを意図する。SEAPの活性は、それだけには限定されないが、蛍光基質の触媒作用の測定、免疫沈降、HPLC、および放射検出を含めた様々な方法によって検出することができる。熱量検出方法よりも感度が高いので発光方法が好ましい。SEAPを用いる利点は、SEAPタンパク質は細胞から分泌されるので細胞溶解ステップが必要ないことであり、これによりサンプリングおよびアッセイ手順の自動化が容易になる。C型肝炎ウイルスプロテアーゼの阻害剤の細胞系評価法で使用するための、SEAPを用いた細胞系アッセイは、Potts他の米国特許第6,280,940号(その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。
4.1.2 tRNAイントロン
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによって認識および切除される任意のヌクレオチド配列を、周知の分子生物学の技術を利用してレポーター遺伝子をコードしているmRNAがフレーム外にあるようにレポーター遺伝子のコード領域に挿入し得る。たとえば、バルジ−ヘリックス−バルジ構造または前駆体tRNAの成熟ドメインを含むヌクレオチド配列を、レポーター遺伝子をコードしているmRNAがフレーム外にあるようにレポーター遺伝子のコード領域に挿入し得る。あるいは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによって認識および切除されるヌクレオチド配列を、レポーター遺伝子構築体の5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、または5’および3’非翻訳領域の両方に挿入し得る。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによって認識および切除されるヌクレオチド配列は10ヌクレオチド、15ヌクレオチド、20ヌクレオチド、25ヌクレオチド、25ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチド、45ヌクレオチド、50ヌクレオチド、55ヌクレオチド、60ヌクレオチド、65ヌクレオチド、75ヌクレオチド、100ヌクレオチド、125ヌクレオチド、150ヌクレオチド、またはそれ以上を含み得る。特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は少なくとも10ヌクレオチド長である。
具体的な実施形態では、tRNAイントロンをレポーター遺伝子のオープンリーディングフレーム内に挿入する。別の実施形態では、2個、3個、4個、5個またはそれ以上のtRNAイントロンをレポーター遺伝子のオープンリーディングフレーム内に挿入する。別の実施形態では、tRNAイントロンをレポーター遺伝子構築体の5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、または5’および3’非翻訳領域の両方に挿入する。別の実施形態では、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上のtRNAイントロンをレポーター遺伝子構築体の5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、または5’および3’非翻訳領域の両方に挿入する。tRNAイントロンはバルジ−ヘリックス−バルジコンホメーションを含み得る。
tRNAイントロンを含むレポーター遺伝子は当業者に周知の任意の方法によって産生させ得る。たとえば、tRNAイントロンを含むレポーター遺伝子は、ホスホルアミダイト法または他の液相もしくは固相の方法を用いて化学合成し得る。ホスホルアミダイト法によってポリヌクレオチドを形成させるために使用する化学の詳細な説明は周知である(たとえば、Caruthers他、米国特許第4,458,066号および第4,415,732号;Caruthers他、1982、Genetic Engineering、4:1-17;Users Manual、モデル392および394のポリヌクレオチド合成機、1990、6-1〜6-22ページ、Applied Biosystems、第901237号;Ojwang、他、1997、Biochemistry、36:6033-6045参照)。合成後、当業者に公知の標準的な技術を使用してtRNAイントロンを含むレポーター遺伝子を精製することができる(Hwang他、1999、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、96(23):12997-13002およびそれ中で引用された参考文献参照)。tRNAイントロンを含むレポーター遺伝子の長さおよびその合成方法に応じて、このような精製技法には、それだけには限定されないが、逆相高速液体クロマトグラフィー(「逆相HPLC」)、高速液体クロマトグラフィー(「FPLC」)、およびゲル精製が含まれる。基質を蛍光アクセプター部分、蛍光ドナー部分および/またはクエンチャーで標識する方法は当分野で周知である(たとえば、米国特許第6,472,156号、同第6,451,543号、同第6,348,322号、同第6,342,379号、同第6,323,039号、同第6,297,018号、同第6,291,201号、同第6,280,981号、同第5,843,658号、および同第5,439,797号参照。これらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
4.1.3 ベクター
レポーター遺伝子をコードしているヌクレオチド配列およびtRNAイントロンをコードしているヌクレオチド配列を、適切な発現ベクター、すなわち挿入されたタンパク質をコードしている配列の転写および翻訳に必要なエレメント(配列)を含むベクター内に挿入することができる。必要な転写および翻訳シグナルは、レポーター遺伝子によっても供給することができる。レポーター遺伝子を発現させるために様々な宿主−ベクター系を利用し得る。これらには、それだけには限定されないが、ウイルス(たとえばワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)に感染した哺乳動物細胞系;ウイルス(たとえばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;酵母ベクターを含む酵母、またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNAで形質転換した細菌などの微生物;および選択マーカーを用いた形質転換によって作製した安定した細胞系が含まれる。ベクターの発現エレメントはその強度および特異性が様々である。利用する宿主−ベクター系に応じて、いくつかの適切な転写および翻訳エレメントのうち任意のものを使用し得る。
ベクター内にDNA断片を挿入する既に記載されている方法のうち任意のものを使用して、適切な転写/翻訳調節シグナルおよびタンパク質をコードしている配列からなるキメラ核酸を含む発現ベクターを構築し得る。これらの方法には、in vitro組換えDNAおよび合成技法ならびにin vivo組換え(遺伝的組換え)が含まれ得る。レポーター遺伝子の発現構築体は、レポーター遺伝子が組換えDNA分子で形質転換させた宿主内で発現されるように第2の核酸配列によって調節され得る。たとえば、レポーター遺伝子構築体の発現は、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、または誘導性プロモーターなどの当分野で既知の任意のプロモーター/エンハンサーエレメントによって調節され得る。遺伝子の発現の調節に使用し得るプロモーターの具体例には、それだけには限定されないが、SV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon、1981、Nature、290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3’末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamoto他、1980、Cell、22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼのプロモーター(Wagner他、1981、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster他、1982、Nature、296:39-42);β−ラクタマーゼのプロモーター(Villa-Kamaroff他、1978、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、75:3727-3731)またはtacプロモーター(DeBoer他、1983、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、80:21-25)などの原核生物の発現ベクター;「Useful proteins from recombinant bacteria」、Scientific American、1980、242:74-94も参照;ノパリン合成酵素のプロモーター領域(Herrera-Estrella他、Nature、303:209-213)またはカリフラワーモザイクウイルスの35SRNAプロモーター(Gardner他、1981、Nucl. Acids Res.、9:2871)、および光合成酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrella他、1984、Nature、310:115-120)を含む植物発現ベクター;Gal4のプロモーター、ADC(アルコール脱水素酵素)のプロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)のプロモーター、アルカリホスファターゼのプロモーターなどの酵母または他の真菌由来のプロモーターエレメント、および組織特異性を示し、トランスジェニック動物で利用されている以下の動物性転写調節領域:膵腺房細胞中で活性のあるエラスターゼI遺伝子の調節領域(Swift他、1984、Cell、38:639-646;Omitz他、1986、Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol.、50:399-409;MacDonald、1987、Hepatology、7:425-515)、膵臓β細胞中で活性のあるインスリン遺伝子の調節領域(Hanahan、1985、Nature、315:115- 122)、リンパ球細胞中で活性のある免疫グロブリン遺伝子の調節領域(Grosschedl他、1984、Cell、38:647-658;Adames他、1985、Nature、318:533-538;Alexander他、1987、Mol. Cell. Biol.、7:1436-1444)、精巣、乳房、リンパ球およびマスト細胞中で活性のあるマウス乳腺腫瘍ウイルス調節領域(Leder他、1986、Cell、45:485-495)、肝臓中で活性のあるアルブミン遺伝子の調節領域(Pinkert他、1987、Genes and Devel.、1:268-276)、肝臓中で活性のあるα−胎児性タンパク質遺伝子の調節領域(Krumlauf他、1985、Mol. Cell. Biol.、5:1639-1648;Hammer他、1987、Science、235:53-58)、肝臓中で活性のあるα1−抗トリプシン遺伝子の調節領域(Kelsey他、1987、Genes and Devel.、1:161-171)、骨髄性細胞中で活性のあるβ−グロビン遺伝子の調節領域(Mogram他、1985、Nature、315:338-340;Kollias他、1986、Cell、46:89-94)、脳内の乏突起膠細胞中で活性のあるミエリン塩基性タンパク質遺伝子の調節領域(Readhead他、1987、Cell、48:703-712)、骨格筋中で活性のあるミオシン軽鎖−2遺伝子の調節領域(Sani、1985、Nature、314:283-286)、ならびに視床下部中で活性のある性腺刺激放出性ホルモン遺伝子の調節領域(Mason他、1986、Science、234:1372-1378)が含まれる。
具体的な実施形態では、レポーター遺伝子に機能的に連結されているプロモーター、1または複数の複製起点、および任意選択で1または複数の選択マーカー(たとえば抗生物質耐性遺伝子)を含むベクターを使用する。好ましい実施形態では、ベクターはCMVベクター、T7ベクター、lacベクター、pCEP4ベクター、5.0/Fベクター、またはテトラサイクリンに制御されるプロモーターを有するベクター(たとえばInvitrogenのpcDNA(商標)5/FRT/TO)である。
本発明のレポーター遺伝子構築体を含む発現ベクターは、3つの一般的な手法、すなわち(a)核酸ハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」核酸の機能が存在することまたは存在しないこと、(c)挿入された配列の発現、および(d)配列決定によって同定することができる。第1の手法では、発現ベクター中に挿入したレポーター遺伝子の存在は、挿入されたレポーター遺伝子に相同的な配列を含むプローブを用いた核酸ハイブリダイゼーションによって検出することができる。第2の手法では、目的の核酸、すなわちレポーター遺伝子構築体をベクター中に挿入することによって生じる特定の「マーカー」核酸の機能(たとえば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、形質転換の表現型、バキュロウイルスにおける封入体(occlusion body)の形成など)が存在することまたは存在しないことに基づいて、組換えベクター/宿主系を同定および選択することができる。たとえば、目的の核酸をベクターのマーカー核酸配列中に挿入した場合は、マーカー核酸の機能が存在しないことによって挿入物を含む組換え体を同定することができる。第3の手法では、組換え体によって発現されたレポーター遺伝子の産物のアッセイを行うことによって組換え発現ベクターを同定することができる。このようなアッセイは、たとえば特定のレポーター遺伝子の物理的または機能的特性に基づくことができる。
好ましい実施形態では、レポーター遺伝子構築体を安定した細胞系発現ベクター内にクローニングする。好ましい実施形態では、安定した細胞系発現ベクターは部位特異的なゲノム組込み部位を含む。別の好ましい実施形態では、レポーター遺伝子構築体をエピソーム性の哺乳動物発現ベクター内にクローニングする。
4.1.4 トランスフェクション
適切な遺伝子をコードしているベクターを合成したあと、宿主細胞を目的のベクターで形質転換またはトランスフェクトする。安定した形質転換体を使用することが好ましい。好ましい実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。より好ましい実施形態では、宿主細胞はヒト細胞である。別の実施形態では、宿主細胞は目的の組織または他の目的生体試料から単離した一次細胞である。本発明の方法で使用することができる宿主細胞には、それだけには限定されないが、ハイブリドーマ、前B細胞、293細胞、293T細胞、HeLa細胞、HepG2細胞、K562細胞、および3T3細胞が含まれる。別の好ましい実施形態では、宿主細胞は組織などの供与源の不死化細胞系である。本発明で使用することができる他の宿主細胞には、それだけには限定されないが、ウイルス感染した細胞が含まれる。
形質転換は、たとえばポリヌクレオチドをウイルス内にパッケージングすることおよび宿主細胞にウイルスを形質導入することを含めた、ポリヌクレオチドを宿主細胞内に導入する任意の公知の方法、ならびにポリヌクレオチドを直接取り込ませることによって行い得る。使用する形質転換手順は形質転換させる宿主に依存する。直接取り込ませることによる哺乳動物の形質転換(すなわちトランスフェクション)は、GrahamおよびVan der Eb、1978、Virol.、52:546のリン酸カルシウム沈降方法、またはその様々な公知の改変方法によって実施し得る。組換えポリヌクレオチドを細胞内、特に哺乳動物細胞内へ導入する他の方法には、デキストラン媒介のトランスフェクション、リン酸カルシウム媒介のトランスフェクション、ポリブレン媒介のトランスフェクション、プロトプラストの融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチド(または複数のポリヌクレオチド)をリポソーム内に封入すること、およびポリヌクレオチドを核内へ直接微量注入することが含まれる。このような方法は当業者に周知である。
好ましい実施形態では、目的の構築体を含む安定した細胞系をハイスループットスクリーニング用に作製する。このような安定した細胞系は、選択マーカーを含むレポーター遺伝子構築体を導入させ、細胞を富化培地中で1〜2日間成長させ、細胞を選択培地中で成長させることによって作製し得る。組換えプラスミド中の選択マーカーは選択された細胞に耐性を与え、細胞がプラスミドをその染色体内に安定に組み込み、成長して増殖巣を形成することを可能にし、次にこれをクローニングして細胞系へと拡大させることができる。
それだけには限定されないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler他、1977、Cell、11:223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(SzybalskaおよびSzybalski、1962、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、48:2026)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy他、1980、Cell、22:817)遺伝子を含めたいくつかの選択系を使用し得、それぞれtk−、hgprt−またはaprt−細胞で使用することができる。また、メトトレキセートに対する耐性を与えるdhfr遺伝子(Wigler他、1980、Natl. Acad. Sci. USA、77:3567;O'Hare他、1981、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、78:1527)、ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt(MulliganおよびBerg、1981、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、78:2072)、アミノグリコシドG−418に対する耐性を与えるneo遺伝子(Colberre-Garapin他、1981、J. Mol. Biol.、150:1)、およびハイグロマイシンに対する耐性を与えるhygro遺伝子(Santerre他、1984、Gene、30:147)を選択するための基礎として代謝拮抗剤耐性を使用することができる。
4.1.5 無細胞抽出物
本発明は、無細胞系中のレポーター遺伝子構築体の翻訳を提供する。本発明のこの特定の態様を実行するための技術では、別段に支持しない限り、当業者が慣用的に実行している分子生物学、微生物学、ならびに組換えDNAの操作および産生の慣用技術を利用する。たとえば、Sambrook、1989、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、第2版;DNA Cloning、第I巻および第II巻(Glover編、1985);およびTranscription and Translation (HamesおよびHiggins編、1984)を参照されたい。
当業者に周知の任意の技術を用いてin vitroで翻訳させるための無細胞抽出物を作製し得る。たとえば、in vitroでの翻訳反応のための無細胞抽出物は、細胞を遠心分離し、上清を清澄にすることによって作製することができる。具体的には、本発明によって利用する細胞抽出物はS1抽出物(すなわち1,000×gの回転の上清)からS500抽出物(すなわち500,000×gの回転の上清)、好ましくはS10抽出物(すなわち10,000×gの回転の上清)からS250抽出物(すなわち250,000×gの回転の上清)であり得る。具体的な実施形態では、本発明によって利用する細胞抽出物はS50抽出物(すなわち50,000×gの回転の上清)からS100抽出物(すなわち100,000×gの回転の上清)である。
無細胞翻訳抽出物は、任意の種由来の細胞から単離し得る。たとえば、無細胞翻訳抽出物はヒト細胞、培養マウス細胞、培養ラット細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、アフリカツメガエル(Xenopus)の卵母細胞、ウサギの網状赤血球、コムギ胚芽、またはライムギ胚から単離し得る(たとえば、KriegおよびMelton、1984、Nature、308:203ならびにDignam他、1990、Methods Enzymol.、182:194-203参照)。あるいは、無細胞翻訳抽出物、たとえばウサギの網状赤血球溶解物およびコムギ胚芽抽出物を、たとえばPromega(Madison,WI)から購入することができる。好ましい実施形態では、無細胞抽出物はヒト細胞から単離した抽出物である。より好ましい実施形態では、ヒト細胞はHeLa細胞である。
4.2 tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの精製
動物界、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトのtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼまたはそのサブユニットは、当業者に公知の任意の方法を用いて発現および精製することができる。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは、組換えDNA技術によって発現させることができる。具体的な実施形態では、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの精製を容易にするために、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼをペプチドタグに融合させる。他の実施形態では、内在性の動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを精製する。
特定の実施形態では、組換えヒトtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを精製して本発明の方法で用いる。他の実施形態では、任意のヒト細胞源由来の部分的に精製されたヒトのtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを本発明の方法で用いる。
4.2.1 組換えDNA
様々な実施形態において、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットは、転写および翻訳される特定のヌクレオチド配列によってコードされている。ヌクレオチド配列は組換え細胞中で増幅および発現させるために発現ベクター内に挿入する。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼはヘテロ四量体であり、4つのサブユニットのそれぞれを同一細胞内で同時に発現させるか、異なる細胞内で別々に発現させ得る。サブユニットを単離し、その後合わせてtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを生成する。好ましくは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットを同一細胞内で発現させ、機能するtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを細胞から単離する。
本明細書中で使用する発現構築体とは、1、2、3または4つの動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニット(好ましくはヒトのtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニット)をコードしているヌクレオチド配列であって、1または複数の調節領域もしくはエンハンサー/プロモーター配列に機能的に連結されており、適切な宿主細胞において動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットの発現を可能にする配列をいう。「機能的に連結されている」とは、調節領域および発現させる動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットをコードしているヌクレオチド配列が転写、および最終的には翻訳が可能となるように結合および配置されている結合をいう。
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットの転写に必要な調節領域は、発現ベクターによって提供することができる。適合性のある宿主−構築体系では、RNAポリメラーゼなどの細胞性転写因子が発現構築体上の調節領域に結合して宿主生物中での動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットの転写をもたらす。遺伝子の発現に必要な調節領域の性質の詳細は宿主細胞間で異なり得る。一般に、RNAポリメラーゼを結合して、機能的に結合している核酸配列の転写を促進する能力を有するプロモーターが必要である。このような調節領域には、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列などの転写および翻訳の開始に関連する5’非コード配列が含まれ得る。コード配列の3’にある非コード領域は、ターミネーターおよびポリアデニル化部位などの転写停止調節配列を含み得る。
構成的、組織特異的かつ/または誘導性の調節領域を動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットの発現に使用し得る。宿主細胞の増殖に最適な条件と動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを高レベルに発現させる条件とが異なる場合には誘導性プロモーターを使用することが望ましいかもしれない。有用な調節領域の例を以下に示す。
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットをコードしている配列にプロモーターなど調節的機能を有するDNA配列を付加させるため、あるいは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットをコードしている配列をベクターのクローニング部位内に挿入するために、当分野で周知の技術を用いて、適合性のある適切な制限部位を提供するリンカーまたはアダプターをcDNAの末端にライゲーションさせ得る(Wu他、1987、Methods in Enzymol、152:343-349)。制限酵素を用いた切断に次いで、ライゲーションの前に一本鎖DNAの末端を消化または充填することによって平滑末端を作製するための修飾を行うことができる。あるいは、所望の制限酵素部位を含むプライマーを用いたPCRを使用することによるDNAの増幅によって、所望の制限酵素部位をDNAの断片内に導入することができる。
調節領域(エンハンサー/プロモーター配列)に機能的に連結されている動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットをコードしている配列を含む発現構築体は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを発現および産生させるために、それ以上クローニングすることなく適切な宿主細胞内に直接導入することができる。発現構築体はまた、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットをコードしている配列の、たとえば相同組換えによる宿主細胞ゲノム内への組み込みを促進するDNA配列も含むことができる。この場合、宿主細胞中で動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを増幅および発現させるために適切な宿主細胞に適した複製起点を含む発現ベクターを使用する必要はない。
それだけには限定されないが、プラスミド、コスミド、ファージ、ファージミド、または改変ウイルスを含めた様々な発現ベクターを本発明で使用し得る。典型的には、このような発現ベクターは、適切な宿主細胞中でベクターを増殖させるための機能的な複製起点、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットをコードしている配列を挿入するための1または複数の制限エンドヌクレアーゼ部位、および1または複数の選択マーカーを含む。発現ベクターは、それだけには限定されないが細菌、酵母、昆虫、哺乳動物、およびヒトを含めた原核生物または真核生物由来であり得る適合性のある宿主細胞と共に使用する必要がある。
大腸菌系のベクターは、外来タンパク質を高レベルで発現させるための最も一般的かつ多用途の系である(Makrides、1996、Microbiol Rev、60:512-538)。大腸菌中での発現に使用できる調節領域の非限定的な例には、それだけには限定されないが、lac、trp、lpp、phoA、recA、tac、T3、T7およびλPが含まれ得る(Makrides、1996、Microbiol Rev、60:512-538)。原核生物の発現ベクターの非限定的な例には、λgt11などのλgtベクター系(Huynh他、1984、「DNA Cloning Techniques」、第1巻:A Practical Approach (D. Glover編)、49-78ページ、IRL Press、Oxford)およびpETベクター系(Studier他、1990、Methods Enzymol.、185:60-89)が含まれ得る。しかし、原核生物の宿主−ベクター系の潜在的な不利点は、哺乳動物細胞の翻訳後プロセシングの多くを行えないことである。したがって、真核生物の宿主−ベクター系が好ましく、哺乳動物の宿主−ベクター系がより好ましく、ヒトの宿主−ベクター系が最も好ましい。
哺乳動物の宿主細胞中で動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを発現させるために、様々な調節領域、たとえばSV40初期および後期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)極初期プロモーター、およびラウス肉腫ウイルス末端反復配列(RSV−LTR)プロモーターを使用することができる。哺乳動物細胞で有用であり得る誘導性プロモーターには、それだけには限定されないが、メタロチオネインII遺伝子、マウス乳腺腫瘍ウイルスグルココルチコイド応答性末端反復配列(MMTV−LTR)、β−インターフェロン遺伝子、およびhsp70遺伝子に関連するものが含まれる(Williams他、1989、Cancer Res.、49:2735-42;Taylor他、1990、Mol. Cell Biol.、10:165-75)。組換え宿主細胞中での動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットの発現を駆動するために、熱ショックプロモーターまたはストレスプロモーターを使用することが有利であるかもしれない。
さらに、発現ベクターは、選択された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットをコードしているDNAを含む宿主細胞を最初に単離、同定または追跡するために、選択可能またはスクリーニング可能なマーカー遺伝子を含み得る。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを長期的に高収率で産生させるためには、哺乳動物細胞中での安定した発現が好ましい。それだけには限定されないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wigler他、1977、Cell、11:223)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(SzybalskiおよびSzybalski、1962、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、48:2026)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy他、1980、Cell、22:817)を含めたいくつかの選択系を哺乳動物細胞で使用し得、それぞれtk、hgprtまたはaprt細胞で使用することができる。また、メトトレキセートに対する耐性を与えるジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)(Wigler他、1980、Natl. Acad. Sci. USA、77:3567;O'Hare他、1981、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、78:1527)、ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt(MulliganおよびBerg、1981、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、78:2072)、アミノグリコシドG−418に対する耐性を与えるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)(Colberre-Garapin他、1981、J. Mol. Biol.、150:1)、およびハイグロマイシンに対する耐性を与えるハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hyg)(Santerre他、1984、Gene、30:147)を選択するための基礎として代謝拮抗剤耐性を使用することができる。それだけには限定されないが、ヒスチジノールおよびゼオシン(商標)などの他の選択マーカーも使用することができる。
4.2.2 組換えタンパク質の産生
4.2.2.1 ペプチドのタグ付加
ペプチドタグおよび動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを含む融合タンパク質を作製するにより、該動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットの精製を補助することができる。好ましい実施形態では、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットは哺乳動物のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットである。より好ましい実施形態では、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットはヒトの動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットである。ペプチドおよび動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを含む融合タンパク質は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットをコードしているヌクレオチド配列を、ペプチドタグをコードしている配列に、適切なリーディングフレーム中でライゲーションさせることによって作製するとこができる。改変した遺伝子が、翻訳停止シグナルおよび/または偽性(spurious)メッセンジャーRNAスプライシングシグナルによって分断されずに同一翻訳リーディングフレーム内に確実に保たれるように注意すべきである。
ペプチドタグは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットのアミノ末端またはカルボキシル末端に融合させ得る。融合を行う正確な部位は重要ではない。最適な部位は慣用の実験によって決定することができる。
当分野で公知の様々なペプチドタグ(例えばそれだけには限定されないが、免疫グロブリンの定常領域、ポリヒスチジン配列(Petty、1996、Metal-chelate affinity chromatography、Current Protocols in Molecular Biology、第2巻、Ausubel他編、Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST;Smith、1993、Methods Mol. Cell Bio.、4:220-229)、大腸菌のマルトース結合タンパク質(Guan他、1987、Gene、67:21-30)、様々なセルロース結合ドメイン(米国特許第5,496,934号;第5,202,247号;第5,137,819号;Tomme他、1994、Protein Eng.、7:117-123)、およびFLAGエピトープ(Short Protocols in Molecular Biology、1999、Ausubel他編、John Wiley & Sons、Inc.、ユニット10.11)を含む)を、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットにコンジュゲートさせ得る。特異的結合パートナーによって認識され、したがって(好ましくは固定されているかつ/または固体担体上にある)結合パートナーとの親和性結合による単離を容易にする当業者に周知の他のペプチドタグを、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットにコンジュゲートさせ得る。当業者は理解されるように、上述のペプチドタグのコード領域を得るために、それだけには限定されないが、DNAクローニング、DNA増幅、および合成方法を含めた多くの方法を使用することができる。それらを検出および単離するためのペプチドタグおよび試薬の一部は市販されている。
具体的な実施形態では、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットにコンジュゲートさせたポリヒスチジンタグは、少なくとも6個、少なくとも8個、少なくとも10個または少なくとも10個のヒスチジンを有する。好ましい実施形態では、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットにコンジュゲートさせたポリヒスチジンタグは8個のヒスチジンを有する。
別の実施形態では、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットを複数のペプチドで標識することができる。具体的な実施形態では、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットを8個のヒスチジンおよび1個のFlagエピトープタグからなるペプチドタグで標識する。
本発明の特定の実施形態では、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの異なるサブユニットを異なるペプチドタグにコンジュゲートさせうる。
4.2.2.2 発現系および宿主細胞
好ましい哺乳動物の宿主細胞には、それだけには限定されないが、SV40によって形質転換させたサル腎臓細胞系(COS−7、ATCC寄託番号CRL1651)、ヒト胎児腎臓細胞系(懸濁培養での増殖用にサブクローニングした293、293−EBNA、または293細胞、Graham他、J. Gen. Virol.、36:59、1977、ハムスター新生児腎臓細胞(BHK、ATCC寄託番号CCL10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞−DHFR(CHO、UrlaubおよびChasin、Proc. Natl. Acad. Sci.、77;4216、1980)、マウスセルトリ細胞(Mather、Biol. Reprod.、23:243-251、1980)、マウス線維芽細胞細胞(NIH−3T3)、サル腎臓細胞(CVI、ATCC寄託番号CCL70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC寄託番号CRL−1587)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC寄託番号CCL2)、イヌ科動物腎臓細胞(MDCK、ATCC寄託番号CCL34)、バッファローラット肝臓細胞(BRL3A、ATCC寄託番号CRL1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC寄託番号CCL75)、ヒト肝臓細胞(HepG2、HB8065)、およびマウス乳腺腫瘍細胞(MMT060562、ATCC寄託番号CCL51)などのヒト、サルおよびげっ歯類由来のもの(たとえばKriegler M.、「Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual」、ニューヨーク、Freeman & Co.、1990参照)が含まれる。
いくつかのウイルス系の発現系も哺乳動物細胞で利用して動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを産生させ得る。DNAウイルスの骨格を用いたベクターはシミアンウイルス40(SV40)(Hamer他、1979、Cell、17:725)、アデノウイルス(Van Doren他、1984、Mol Cell Biol、4:1653)、アデノ随伴ウイルス(McLaughlin他、1988、J Virol、62:1963)、およびウシパピローマウイルス(Zinn他、1982、Proc Natl Acad Sci、79:4897)由来であった。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合は、ドナーDNA配列をアデノウイルスの転写/翻訳調節複合体、たとえば後期プロモーターおよびトリパータイト(tripartite)リーダー配列にライゲーションさせ得る。その後、in vitroまたはin vivoでの組換えによってこのキメラ遺伝子をアデノウイルスのゲノム内に挿入し得る。ウイルスゲノムの非必須領域(たとえばE1またはE3領域)内に挿入することにより、生存可能であり、感染させた宿主中で異種産物を発現させることができる組換えウイルスがもたらされる。(たとえばLoganおよびShenk、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA)、81:3655-3659参照)。
他の有用な真核生物の宿主−ベクター系には酵母系および昆虫系が含まれる。酵母では、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含むいくつかのベクターをサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(パン酵母)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(分裂酵母)、ピヒア・パアストリス(Pichia pastoris)、およびハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)(メチロトローフ酵母)で使用し得る。総説には、Current Protocols in Molecular Biology、第2巻、1988、Ausubel他編、Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience、第13章;Grant他、1987、Expression and Secretion Vectors for Yeast、Methods in Enzymology、WuおよびGrossman編、1987、Acad. Press、ニューヨーク、第153巻、516-544ページ;Glover、1986、DNA Cloning、第II巻、IRL Press、ワシントンDC、第3章;ならびにBitter、1987、Heterologous Gene Expression in Yeast、Methods in Enzymology、BergerおよびKimmel編、Acad. Press、ニューヨーク、第152巻、673-684ページ;ならびにThe Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces、1982、Strathern他編、Cold Spring Harbor Press、第I巻およびII巻を参照されたい。
昆虫系では、バキュロウイルスであるオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)の核多角体病ウイルス(AcNPV)を、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞中でヒトのtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを発現させるベクターとして使用することができる。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットをコードしている配列をウイルスの非必須領域(たとえばポリヘドリンの遺伝子)内にクローニングし、AcNPVプロモーター(たとえばポリヘドリンのプロモーター)の調節下に置き得る。その後、これらの組換えウイルスを用いて宿主細胞を感染させ、その宿主細胞中で挿入されたDNAが発現される。(たとえば、Smith他、1983、J Virol、46:584;Smith、米国特許第4,215,051号参照)。
本明細書中に記載のクローニングベクターおよび発現ベクターのうち任意のものを、当分野で周知の技術によって既知のDNA配列から合成およびアセンブルし得る。調節領域およびエンハンサーエレメントは、天然および合成の様々な起源のものであることができる。一部のベクターおよび宿主細胞は購入し得る。有用なベクターの非限定的な例は、Current Protocols in Molecular Biologyの付録5、1988、Ausubel他編、Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience、ならびにClontech Laboratories、Stratagene Inc.、およびInvitrogen, Incなどの供給業者のカタログに記載されている(これらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
クローニングした動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットをコードしているヌクレオチド配列を含む発現構築体は、それだけには限定されないが、原核細胞には細菌の形質転換(Hanahan、1985、DNA Cloning, A Practical Approach、1:109-136)、ならびに真核細胞にはリン酸カルシウム媒介のトランスフェクション(Wigler他、1977、Cell、11:223-232)、リポソーム媒介のトランスフェクション(Schaefer-Ridder他、1982、Science、215:166-168)、エレクトロポレーション(Wolff他、1987、Proc Natl Acad Sci、84:3344)、および微量注入(Cappechi、1980、Cell、22:479-488)を含めた当分野で公知の様々な技法によって宿主細胞内に導入することができる。
正しくプロセシングされた動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを長期的に高収率で産生させるためには、哺乳動物細胞中での安定した発現が好ましい。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを安定して発現させる細胞系は、選択マーカーを含むベクターを用いることによって遺伝子操作し得る。例として示し限定するものではないが、発現構築体を導入したあと、遺伝子操作した細胞を富化培地中で1〜2日間増殖させ、その後選択的培地に交換し得る。発現構築体中の選択マーカーは選択に対する耐性を付与し、それにより最適に発現構築体がその染色体内に安定に組み込まれ、培地中で増殖して細胞系へと拡大可能となる。このような細胞を長期間培養する一方で、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを連続的に発現させることができる。
好ましい実施形態では、動物界のヒトのtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを293T細胞(ATCC寄託番号CRL−11268)中に安定にトランスフェクトする。
4.2.2.3 タンパク質の精製
一般に、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットまたは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは、硫安塩析、酸性抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含めた既知の方法によって組換え細胞培養物から回収および精製することができる。好ましい実施形態では、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットまたは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは、それぞれ哺乳動物のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットまたは哺乳動物のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼである。より好ましい実施形態では、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットまたは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは、それぞれヒトのtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットまたはヒトのtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼである。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットが精製可能となる前に、細胞培養物から全タンパク質を調製しなければならない。この手順は前記細胞の収集、洗浄および溶解を含み、当業者に周知である。
具体的には、ペプチドタグと融合した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを、ペプチドタグの特性に基づいて精製し得る。手法の1つは、タグとその結合パートナーとの特異的な分子相互作用に基づく。他の手法は、抗体の、精製するタグ上またはタンパク質上に存在するエピトープに対する免疫特異的結合に依存する。当分野で周知のアフィニティークロマトグラフィーの原理は、一般にこれらの手法のいずれにも適用可能である。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニット−ペプチドタグの融合タンパク質を溶出させたあと、画分を回収して動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの存在および/またはペプチドタグの存在について試験することができる。具体的な実施形態では、画分をtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性について試験する。次いで、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性のレベルが特定の閾値レベルを超える画分をプールすることができる。
以下に、タグとその結合パートナーとの特異的な分子相互作用に基づいたいくつかの方法を記載する。
免疫グロブリンの定常領域に融合した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットの精製に一般的に適用可能な方法は、当分野で周知の技術であるプロテインAアフィニティークロマトグラフィーである。ブドウ球菌(staphylococcus)のプロテインAは、鎖免疫グロブリンの第2および第3の定常領域の間に位置する領域に特異的に結合する42kDのポリペプチドである。免疫グロブリンの様々なクラス、サブクラスおよび種のFcドメインにより、ヒトFc領域に対するプロテインAの親和性は強力であるが種間で異なり得る。より好ましくないサブクラスにはヒトIgG−3およびほとんどのラットのサブクラスが含まれる。特定のサブクラスでは、精製において(ブドウ球菌の)プロテインGをプロテインAの代わりに使用し得る。抗体の親和性精製で一般的に使用される固相はプロテインA−セファロース(PharmaciaまたはBiorad)であり、これは、本質的に同じ様式で免疫グロブリンのFcフラグメントに融合した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットの精製で使用することができる。結合した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニット−Fc融合タンパク質は、pHが徐々に低下する連続的なクエン酸、酢酸およびグリシン−HCl緩衝液を含めた当分野で公知の様々な緩衝液系によって溶出させることができる。この方法は、組換え細胞がヒトのtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットと同時精製しうる抗体も産生する場合はあまり好ましくない。たとえば、Langone、1982、J. Immunol. meth.、51:3;Wilchek他、1982、Biochem. Intl.、4:629;Sjobring他、1991、J. Biol. Chem.、26:399;Antibodies A Laboratory Manual、617-618ページ、HarlowおよびLane編、Cold Spring Harbor laboratory、1988を参照されたい。
あるいは、ポリヒスチジンタグを使用してもよく、この場合、金属キレートクロマトグラフィーによって動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットを精製することができる。ポリヒスチジンタグは通常6個のヒスチジンの配列であり、ニッケルイオン(Ni2+)などの二価の金属イオンに対して高い親和性を有し、ニトリロ三酢酸マトリックスなどの固相上に固定することができる。ポリヒスチジンはNi2+−NTA−アガロースに対する十分に特徴的な親和性を有しており、2つの緩和な処理のどちらかによって溶出させることができる。イミダゾール(0.1〜0.2M)は結合部位に関して樹脂と有効に競合し、pHを6.0より僅かに低くまで低下させることによりヒスチジン側鎖がプロトン化されて結合が破壊される。精製方法は、細胞培養溶解物をNi2+−NTA−アガロースカラムにアプライすること、汚染物質を洗い流すこと、および動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットをイミダゾールまたは弱酸で溶出させることを含む。Ni2+−NTA−アガロースはSigma(St.Louis)およびQiagenなどの供給業者から得ることができる。ヒトのtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットの検出および定量に使用することができるポリヒスチジンタグを認識する抗体も利用可能である。
使用できる別の例示的なペプチドタグは、蠕虫である日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)から最初にクローニングされたグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)配列である。一般に、大腸菌などの原核宿主細胞中で発現される動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニット−GST融合タンパク質は、グルタチオンアガロースビーズを用いて吸着させ、次いで遊離還元グルタチオンの存在下、中性pHで溶出することによって、細胞培養溶解物から精製することができる。GSTは特定の条件下で二量体を形成することが知られているので、二量体の動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットが得られうる。Smith、1993、Methods Mol. Cell Bio.、4:220-229を参照されたい。
使用できる別の有用なペプチドタグは、malE遺伝子にコードされている大腸菌のマルトース結合タンパク質(MBP)である。MBPに融合した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットはアミロース樹脂に結合し、汚染物質は洗い流される。マルトースによって結合した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニット−MBP融合体をアミロース樹脂から溶出させる。たとえば、Guan他、1987、Gene、67:21-30を参照されたい。
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットまたは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを精製する第2の手法は、そのポリクローナルまたはモノクローナル抗体が利用可能なエピトープを含むペプチドタグに適用される。また、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットまたは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体が利用可能な場合にも適用される。イムノアフィニティークロマトグラフィーおよび免疫沈降などの、免疫特異的結合によってタンパク質を精製するための当分野で公知の様々な方法を使用することができる。たとえば、Antibodies A Laboratory Manual、第13章、HarlowおよびLane編、Cold Spring Harbor laboratory、1988;ならびにCurrent Protocols in Immunology、第8章、セクションIおよびII、Coligan他編、John Wiley、1991を参照されたい(これらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
特に、本発明はヒトtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットのHsSen2pおよびHsSen34pの発現および精製に関する(表2を参照)。
Figure 0004634371
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットのオープンリーディングフレームの5’および3’末端に相補的なオリゴヌクレオチドを、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼをコードしているオープンリーディングフレームのPCR増幅に使用することができる。
本発明はまた、HsSen2p変種(「HsSen2変種」)の発現および精製に関する。HsSen2変種とは、ヒトSen2のゲノムDNA配列のエクソン8を欠いたHsSen2のスプライシング変種である。図2は、2つのヒトSen2のサブユニット(すなわちHsSen2およびHsSen2変種)のアミノ酸配列ならびに酵母のサブユニットScSen2pのアミノ酸配列のアミノ酸配列アラインメントを示す。配列アラインメントにより、YRGGYモチーフ(配列番号4)、酵母(ScSen2p)の5’スプライシング部位の活性部位および古細菌の(示さず)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ間で高い類似度が示されている。配列アラインメントに基づいて、HsSen2変種はHsSen2のエンドヌクレアーゼに存在する推定膜貫通ドメインを欠き、これにより動物界の細胞中におけるHsSent変種の局在化に影響が与えられ得る。
具体的な実施形態では、HsSen2変種はtRNAイントロンを含むもの以外の基質のエンドヌクレアーゼ溶解性の切断を触媒する。他の実施形態では、HsSent変種はtRNAイントロンを含む基質のエンドヌクレアーゼ溶解性の切断を触媒する。さらに他の実施形態では、HsSen2変種はtRNAイントロンを含む基質および基質tRNAイントロンを含まない基質のエンドヌクレアーゼ溶解性の切断を触媒する。
それだけには限定されないが、HsSen2、HsSen2変種およびHsSen34を含めたヒトサブユニットを本発明の方法によって利用することができる。具体的な実施形態では、HsSen2サブユニットを本発明の方法によって利用する。別の実施形態では、HsSen2変種サブユニットを本発明の方法によって利用する。別の実施形態では、HsSen34サブユニットを本発明の方法によって利用する。さらに別の実施形態では、HsSen2、HsSen2変種、HsSen34またはその任意の組合せを本発明の方法によって利用する。
4.2.2.4 真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの発現および精製
真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニット(特に、酵母のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニット)および真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ(特に、酵母のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ)は、当業者に公知の任意の方法により発現させ、精製することができる。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットまたは真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットまたは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼについて上述した方法により精製することができる。具体的な実施形態において、酵母のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼまたはそのサブユニットは、Trottaら、1997, Cell 89:849-858に記載の手順により精製する。
4.3 化合物
本発明の方法を用いてスクリーニングしたライブラリは様々な化合物種を含むことができる。本発明の方法によってスクリーニングすることができるライブラリの例には、それだけには限定されないが、ペプトイド;ランダムバイオオリゴマー;ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチドなどのダイバーソマー;ビニル性ポリペプチド;非ペプチド性ペプチド模倣体;オリゴカルバメート;ペプチジルホスホネート;ペプチド核酸ライブラリ;抗体ライブラリ;炭水化物ライブラリ;ならびに小分子ライブラリ(好ましくは有機小分子ライブラリ)が含まれる。一部の実施形態では、スクリーニングするライブラリ中の化合物は核酸またはペプチド分子である。非限定的な例では、ファージディスプレイライブラリ中にペプチド分子が存在することができる。他の実施形態では、化合物の種類には、それだけには限定されないが、天然に存在しないアミノ酸、たとえば、D−アミノ酸、α−アミノリン酸やα−アミノリン酸などのアミノ酸のリン類似体、または非ペプチド結合を有するアミノ酸を含むペプチドを含むペプチド類似体、ホスホロチオエートやPNAなどの核酸類似体、ホルモン、抗原、合成もしくは天然に存在する薬物、オピエート、ドーパミン、セロトニン、カテコールアミン、トロンビン、アセチルコリン、プロスタグランジン、有機分子、フェロモン、アデノシン、スクロース、グルコース、ラクトースおよびガラクトースが含まれる。ポリペプチドまたはタンパク質のライブラリも本発明のアッセイで使用することができる。
好ましい実施形態では、コンビナトリアルライブラリは、それだけには限定されないが、ベンゾジアゼピン、イソプレノイド、チアゾリジノン、メタチアザノン、ピロリジン、モルホリノ化合物、およびベンゾジアゼピンを含めた有機小分子ライブラリである。別の実施形態では、コンビナトリアルライブラリはペプトイド;ランダムバイオオリゴマー;ベンゾジアゼピン;ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチドなどのダイバーソマー;ビニル性ポリペプチド;非ペプチド性ペプチド模倣体;オリゴカルバメート;ペプチジルホスホネート;ペプチド核酸ライブラリ;抗体ライブラリ;または炭水化物ライブラリを含む。コンビナトリアルライブラリはそれ自体が市販されている(たとえば、ComGenex、ニュージャージー州Princeton;Asinex、Moscow、ロシア、Tripos,Inc.、ミズーリ州St.Louis;ChemStar,Ltd、Moscow、ロシア;3D Pharmaceuticals、ペンシルベニア州Exton;Martek Biosciences、メリーランド州Columbiaなどを参照)。
好ましい実施形態では、ライブラリの化合物がより細胞に取り込まれやすくなるようにライブラリを事前に選択する。たとえば、化合物が細胞内に入る可能性を増大する、それだけには限定されないが大きさ、親油性、親水性、および水素結合などの特定のパラメータに基づいて化合物を選択する。別の実施形態では、化合物を三次元または四次元のコンピュータ計算プログラムによって解析する。
本発明の方法によって使用するためのコンビナトリアル化合物のライブラリは合成してもよい。薬理学的活性、生物学的活性または他の活性についてスクリーニングすることができる有機小化合物の大きなコレクション、すなわちライブラリの作製に向けられた合成方法に大きな関心がもたれている。巨大なコンビナトリアルライブラリを作製するために適用する合成方法は、溶液中または固相中、すなわち固体担体上で行う。固相合成では、過剰の試薬を加えて各反応ステップ後に洗い流すことが容易に行えるので、複数ステップの反応を実施し、反応を高収率で完了させることが容易になる。固相コンビナトリアル合成はまた、単離、精製およびスクリーニングを改善させる傾向にある。しかし、より慣例の液相化学が固相化学よりも広範な有機反応を支持する。
本発明のコンビナトリアル化合物のライブラリは、Kilcoin他の米国特許第6,190,619号(その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載の装置を用いて合成し得る。米国特許第6,190,619号は、複数の別々の化合物の並行合成用またはコンビナトリアル化合物ライブラリ用の複数の反応器を保持できる合成装置を開示している。
一実施形態では、コンビナトリアル化合物のライブラリを溶液中で合成することができる。Boger他の米国特許第6,194,612号(その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載の方法は、コンビナトリアルライブラリの液相合成の鋳型として有用な化合物を特徴とする。鋳型は、液体/液体抽出または固体/液体抽出を用いて未反応物質から反応産物を容易に精製することが可能になるよう設計されている。鋳型を用いてコンビナトリアル合成によって産生される化合物は、好ましくは有機小分子である。ライブラリ中の一部の化合物は非ペプチドまたはペプチドの効果を模倣し得る。コンビナトリアル化合物のライブラリの固相合成とは対照的に、液相合成では複数ステップの固相合成の個々のステップをモニターするための特殊なプロトコルを使用する必要がない(Egner他、1995、J. Org. Chem.、60:2652;Anderson他、1995、J. Org. Chem.、60:2650;Fitch他、1994、J. Org. Chem.、59:7955;Look他、1994、J. Org. Chem.、49:7588;Metzger他、1993、Angew. Chem., Int. Ed. Engl.、32:894;Youngquist他、1994、Rapid Commun. Mass Spect.、8:77;Chu他、1995、J. Am. Chem. Soc.、117:5419;Brummel他、1994、Science、264:399;およびStevanovic他、1993、Bioorg. Med. Chem. Lett.、3:431)。
本発明の方法に有用なコンビナトリアル化合物のライブラリは固体担体上で合成することができる。一実施形態では、分割合成(split synthesis)法、すなわち合成中に固体担体を分離および混合するプロトコルを使用して化合物ライブラリを固体担体上で合成する(たとえば、Lam他、1997、Chem. Rev.、97:41-448;Ohlmeyer他、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:10922-10926、およびそれ中で引用された参考文献参照)。最終ライブラリ中の各固体担体は、実質上1種の化合物がその表面に結合している。各担体に1種の産物が結合している、コンビナトリアルライブラリを固体担体上で合成する他の方法は当業者には公知でありうる(たとえば、Nefzi他、1997、Chem. Rev.、97:449-472参照)。
本明細書中で使用する用語「固体担体」とは、特定の種類の固体担体に限定されない。多数の担体が利用可能であり、当業者に公知である。固体担体には、シリカゲル、樹脂、誘導体化プラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、ポリスチレンビーズ、アルミナゲル、および多糖類が含まれる。適切な固体担体は、所望の最終用途および様々な合成プロトコルへの適切性に基づいて選択し得る。たとえば、ペプチドの合成では、固体担体は、p−メチルベンズヒドリルアミン(pMBHA)樹脂(Peptides International、ケンタッキー州Louisville);クロロメチルポリスチレン、ヒドロキシメチルポリスチレンおよびアミノメチルポリスチレンを含めたポリスチレン(たとえばBachem Inc.、Peninsula Laboratoriesなどから得られるPAM樹脂);ポリ(ジメチルアクリルアミド)グラフトスチレンコ−ジビニル−ベンゼン(たとえばAminotech、カナダから得られるPOLYHIPE樹脂)、ポリアミド樹脂(Peninsula Laboratoriesから得られる)、ポリエチレングリコールグラフトポリスチレン樹脂(たとえばTENTAGELもしくはARGOGEL、Bayer、ドイツTubingen)ポリジメチルアクリルアミド樹脂(Milligen/Biosearch、カリフォルニア州から得られる)、またはセファロース(Pharmacia、スウェーデン)などの樹脂でありうる。
本発明の一部の実施形態では、リンカーによって化合物を固体担体に結合させることができる。リンカーは固体担体の必須構成要素および一部分であることができ、または固体担体上で合成されるもしくは合成後に固体担体上に結合される必須構成要素でないものであってもよい。リンカーは、固体担体に化合物の結合点を提供することだけでなく、リンカーの性質に応じて様々な条件下で分子の様々な基が固体担体から切断されることを可能にすることでも有用である。たとえば、リンカーは、とりわけ求電子的に切断される、求核的に切断される、光切断可能である、酵素的に切断される、金属によって切断される、還元的条件下で切断されるまたは酸化的条件下で切断されることができる。好ましい実施形態では、化合物は、化合物のハイスループットスクリーニングの前に固体担体から切断される。
本発明の特定の実施形態では、試験化合物は小分子である。
4.4 in vitroスクリーニングアッセイ
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物の能力を同定および検証するために様々なin vitroアッセイを使用することができる。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に対する化合物の効果を評価するために複数のin vitroアッセイを同時にまたは順次に行うことができる。好ましい実施形態では、本明細書中に記載のin vitroアッセイをハイスループット形式で行う。別の好ましい実施形態においては、本明細書に記載のアッセイにおいて用いられる動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは、哺乳動物のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼであり、より好ましくはヒトのtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼである。
4.4.1 レポーター遺伝子に基づいたアッセイ
4.4.1.1 細胞系アッセイ
レポーター遺伝子構築体を含むベクターを宿主細胞内に形質転換またはトランスフェクトし、化合物ライブラリの合成もしくは購入または両方を行ったあと、間接細胞系アッセイで動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物を同定するために、細胞を用いてライブラリをスクリーニングする。レポーター遺伝子に基づいたアッセイは、化合物または化合物ライブラリのメンバーを、レポーター遺伝子のオープンリーディングフレーム内、またはレポーター遺伝子構築体の5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、もしくは5’および3’非翻訳領域の両方の内、またはレポーター遺伝子のmRNAスプライシング部位内にレポーター遺伝子を含むレポーター遺伝子構築体とtRNAイントロンとを含むように遺伝子操作した細胞と接触させるステップと、前記レポーター遺伝子の発現を測定するステップとによって実施し得る。このようなレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおいて、事前に決定した基準範囲に対する、化合物または対照の非存在下におけるレポーター遺伝子の発現の変化は、特定の化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートすることを示す。このようなレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおいて、事前に決定した基準範囲に対する、化合物または対照の非存在下におけるレポーター遺伝子の発現の低減は、特定の化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を低減または阻害する(たとえば、tRNAイントロンの認識もしくは切断を低減もしくは阻害する)ことを示す。このようなレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおいて、事前に決定した基準範囲に対する、化合物または対照の非存在下におけるレポーター遺伝子の発現の増大は、特定の化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強することを示す。好ましい実施形態では、陰性対照(たとえば、PBSまたはレポーター遺伝子の発現に影響を与えないことが知られている別の薬剤)および陽性対照(たとえばレポーター遺伝子の発現に影響を与えることが知られている薬剤、好ましくは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に影響を与える薬剤)を本明細書中に記載の細胞系アッセイに含める。
化合物または化合物ライブラリのメンバーを、レポーター遺伝子のオープンリーディングフレーム内、レポーター遺伝子構築体の5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、もしくは5’および3’非翻訳領域の両方の内、またはmRNAスプライシング部位内にレポーター遺伝子を含むレポーター遺伝子構築体とtRNAイントロンとを含むように遺伝子操作した動物界の細胞と接触させるステップは、生理的条件下で実施しうる。具体的な実施形態では、水溶液の存在下で化合物または化合物ライブラリのメンバーを細胞に加える。この実施形態によれば、水溶液は緩衝液および複数の塩の組合せを含み得、生理的条件に近いまたはそれを模倣することが好ましい。あるいは、水溶液は緩衝液、複数の塩の組合せ、および界面活性剤またはサーファクタントを含み得る。水溶液中で使用し得る塩の例には、それだけには限定されないが、KCl、NaCl、および/またはMgClが含まれる。水溶液中で使用する各塩の最適な濃度は使用する細胞および化合物に応じて異なり、慣用の実験を用いて決定することができる。化合物または化合物ライブラリのメンバーを、レポーター遺伝子構築体を含むように遺伝子操作した動物界の細胞と接触させるステップは、少なくとも0.2時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、または少なくとも1日間行い得る。
一実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物の同定方法であって、(a)レポーター遺伝子を含む核酸を細胞中で発現させるステップであって、前記レポーター遺伝子はtRNAイントロンを含むステップと、(b)前記細胞を化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップと、(c)前記レポーター遺伝子の発現を検出するステップであって、ある化合物の存在下における前記レポーター遺伝子の発現が、事前に決定した基準範囲と比較して、または前記化合物の非存在下もしくは対照の存在下における前記レポーター遺伝子の発現と比較して変化している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物の同定方法であって、(a)化合物ライブラリのメンバーを、レポーター遺伝子を含む核酸を含有する細胞と接触させるステップであって、前記レポーター遺伝子はtRNAイントロンを含むステップと、(b)前記レポーター遺伝子の発現を検出するステップであって、ある化合物の存在下における前記レポーター遺伝子の発現が、前記試験化合物の非存在下もしくは対照の存在下における前記レポーター遺伝子の発現の事前に決定した基準範囲と比較して変化している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。
レポーター遺伝子の発現は、たとえば前記遺伝子にコードされているタンパク質および/またはRNAを定量することによって容易に検出することができる。したがって、それだけには限定されないが、遺伝子の発現を検出および/もしくは可視化する免疫アッセイ(たとえば、ウエスタンブロット、免疫沈降、次いでドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、免疫細胞化学など)、ならびに/またはそれぞれ遺伝子をコードしているmRNAを検出および/もしくは可視化することによって遺伝子の発現を検出するハイブリダイゼーションアッセイ(たとえば、ノーザンアッセイ、ドットブロット、in situハイブリダイゼーションなど)などを含めた当分野で標準的な多くの方法を使用することができる。このようなアッセイは慣用的であり、当分野で周知である(たとえば、Ausubel他編、1994、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons、Inc.、ニューヨーク参照。その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。例示的な免疫アッセイを以下に簡単に記載する(これらは限定することを意図しない)。
免疫沈降プロトコルは一般に、タンパク質ホスファターゼおよび/またはプロテアーゼ阻害剤(たとえばEDTA、PMSF、アプロチニン、バナジン酸ナトリウム)を加えたRIPA緩衝液(1%NP−40またはTritonX−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、0.15M NaCl、0.01Mリン酸ナトリウム(pH7.2)、1%トラジロール)などの溶解緩衝液中で細胞集団を溶解すること、該抗原を認識する抗体を細胞溶解液に加えること、一定時間(たとえば1〜4時間)40℃でインキュベートすること、プロテインAおよび/またはプロテインGセファロースビーズを細胞溶解液に加えること、約1時間以上40℃でインキュベートすること、ビーズを溶解緩衝液で洗浄すること、およびビーズをSDS/試料緩衝液に再懸濁させることを含む。抗体が特定の抗原を免疫沈降させる能力は、たとえばウエスタンブロット分析によって評価することができる。当業者は、抗体と抗原との結合を増大させ、バックグラウンドを減少させるために改変できるパラメータに関する知識を有するであろう(たとえば細胞溶解液をセファロースビーズで事前に清澄にすること)。免疫沈降プロトコルに関するさらなる記述には、たとえば、Ausubel他編、1994、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨークの10.16.1を参照されたい。
ウエスタンブロット分析は一般に、タンパク質試料を調製すること、タンパク質試料をポリアクリルアミドゲルで電気泳動すること(たとえば、抗原の分子量に応じて8%〜20%のSDS−PAGE)、タンパク質試料をポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース、PVDFまたはナイロンなどの膜へと写すこと、膜をブロッキング溶液(たとえば3%のBSAを含むPBSや無脂肪乳)でブロッキングすること、膜を緩衝液(たとえばPBS−Tween20)で洗浄すること、膜をブロッキング緩衝液で希釈した一次抗体(該抗原を認識する抗体)でブロッキングすること、膜を緩衝液で洗浄すること、膜をブロッキング緩衝液で希釈した、酵素基質(たとえば西洋ワサビペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼ)または放射性分子(たとえば32Pや125I)にコンジュゲートさせた二次抗体(一次抗体を認識する、たとえば抗ヒト抗体など)でブロッキングすること、膜を洗浄緩衝液で洗浄すること、および抗原の存在を検出することを含む。当業者は、検出されるシグナルを増大させ、バックグラウンドのノイズを減少させるために改変できるパラメータに関する知識を有するであろう。ウエスタンブロットプロトコルに関するさらなる記述には、たとえば、Ausubel他編、1994、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨークの10.8.1を参照されたい。
ELISAは、抗原を調製すること、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに抗原をコーティングすること、酵素基質(たとえば西洋ワサビペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼ)などの検出可能な化合物にコンジュゲートさせた(特定の抗原を認識する)一次抗体をウェルに加えて一定時間インキュベートすること、および抗原の存在を検出することを含む。ELISAでは、目的の抗体は検出可能な化合物にコンジュゲートされていなくてもよく、代わりに、検出可能な化合物にコンジュゲートさせた(一次抗体を認識する)二次抗体をウェルに加え得る。さらに、ウェルを抗原でコーティングする代わりに、抗体をウェルにコーティングしてもよい。この場合、コーティングしたウェルに目的の抗原を加える前に検出可能な化合物にコンジュゲートさせた二次抗体を加えてもよい。当業者は、検出されるシグナルを増大させるために改変できるパラメータ、ならびに当分野で公知のELISAの他の変形に関する知識を有するであろう。ELISAに関するさらなる記述には、たとえば、Ausubel他編、1994、Current Protocols in Molecular Biology、第19巻、John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨークの11.2.1を参照されたい。
レポーター遺伝子によりコードされるタンパク質の活性を検出する方法は使用するレポーター遺伝子に応じて異なる。様々なレポーター遺伝子のアッセイは当業者に周知である。たとえば、セクション5.2.1に記載したように、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ(「β−gal」)、β−グルコロニダーゼ(「GUS」)、β−ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(「CAT」)、およびアルカリホスファターゼ(「AP」)が基質の存在下で分析でき、ハイスループットスクリーニングが行える酵素である。たとえば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ(「β−gal」)、およびアルカリホスファターゼ(「AP」)の反応産物を、光イメージング(たとえばルシフェラーゼ)、分光光度吸光(たとえばβ−gal)、または蛍光(たとえばAP)における変化によってアッセイする。光出力、吸光、および/または蛍光における変化のアッセイはハイスループットスクリーニングに容易に適応できる。たとえば、β−galの活性はマイクロプレートリーダーで測定することができる。緑色蛍光タンパク質(「GFP」)の活性は蛍光の変化によって測定することができる。488nmで蛍光発光するGFP突然変異体の場合は、GFP活性に基づいて細胞を分離するために標準的な蛍光活性化細胞分取(「FACS」)装置を使用することができる。
レポーター遺伝子の発現の改変は、レポーター遺伝子の発現レベルを陰性対照(たとえばPBSまたはレポーター遺伝子の発現に影響を与えないことが知られている別の薬剤)、および任意選択で陽性対照(たとえばレポーター遺伝子の発現に影響を与えることが知られている薬剤、好ましくは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に影響を与えることが知られている薬剤)と比較することによって決定し得る。あるいは、レポーター遺伝子の発現の改変は、レポーター遺伝子の発現レベルを事前に決定した基準範囲と比較することによって決定し得る。
4.4.1.2 無細胞系アッセイ
レポーター遺伝子構築体を含むベクターを作製し、無細胞翻訳抽出物を作製または購入し、化合物ライブラリの合成もしくは購入または両方を行ったあと、間接無細胞系アッセイで動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物を同定するために、無細胞翻訳抽出物および核酸を用いてライブラリをスクリーニングする。レポーター遺伝子に基づいたアッセイは、化合物を、無細胞抽出物、およびレポーター遺伝子とレポーター遺伝子のオープンリーディングフレーム内、レポーター遺伝子構築体の5’非翻訳領域、3’非翻訳領域もしくは5’および3’非翻訳領域の両方の内、またはレポーター遺伝子のmRNAスプライシング部位内のtRNAイントロンとを含むレポーター遺伝子構築体と接触させ、前記レポーター遺伝子の発現を測定することによる無細胞様式で実施し得る。このようなレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおいて、事前に決定した基準範囲に対する、化合物または対照の非存在下におけるレポーター遺伝子の発現の変化は、特定の化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートすることを示す。このようなレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおいて、事前に決定した基準範囲に対する、化合物または対照の非存在下におけるレポーター遺伝子の発現の低減は、特定の化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を低減または阻害する(たとえば、tRNAイントロンの認識または切断を阻害または低減する)ことを示す。このようなレポーター遺伝子に基づいたアッセイにおいて、事前に決定した基準範囲に対する、化合物または対照の非存在下におけるレポーター遺伝子の発現の増大は、特定の化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強することを示す。好ましい実施形態では、陰性対照(たとえばPBSまたはレポーター遺伝子の発現に影響に影響を与えないことが知られている別の薬剤)および陽性対照(たとえばレポーター遺伝子の発現に影響に影響を与えることが知られている薬剤、好ましくは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に影響を与える薬剤)を本明細書中に記載の無細胞系アッセイに含める。
具体的な実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物の同定方法であって、(a)化合物ライブラリのメンバーを、無細胞抽出物およびレポーター遺伝子を含む核酸と接触させるステップであって、前記レポーター遺伝子はtRNAイントロンを含むステップと、(b)前記レポーター遺伝子の発現を検出するステップであって、ある化合物の存在下における前記レポーター遺伝子の発現が、前記化合物の非存在下もしくは対照の存在下における前記レポーター遺伝子の発現と比較して変化している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。
無細胞抽出物中の化合物の活性は、レポーター遺伝子にコードされているレポータータンパク質の活性をアッセイすることによって、あるいは、たとえば、in vitroで翻訳されたタンパク質の標識(たとえば35Sで標識したメチオニンを用いる)、ノーザンブロット分析、RT−PCR、またはウエスタンブロット分析や免疫沈降などの免疫学的方法によってレポーター遺伝子の発現を定量することによって測定することができる。このような方法は当業者に周知である。
4.4.2 FRETアッセイ
蛍光共鳴エネルギー転移(「FRET」)は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性の改変を検出するために使用することができる。FRETアッセイにおいては、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットまたは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質をフルオロフォアで標識しうる。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットが決定されていないまたは単離されていない場合には、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質をフルオロフォアで標識する。
蛍光ドナー部分と蛍光アクセプター部分またはクエンチャーとのFRETを得るためには、2つの部分は互いに空間的に近接していなければならない。したがって、特定の実施形態では、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質は、蛍光ドナー部分および蛍光アクセプター部分またはクエンチャーが互いに最大で0.5nm、最大で1nm、最大で5nm、最大で10nm、最大で20nm、最大で30nm、最大で40nm、最大で50nmもしくは最大で100nmしか離れていないように標識する。
特定の実施形態では、図1に示した基質をFRETアッセイで利用する。特に、図1Bおよび1Cにそれぞれ示すハイブリッド形成したtRNA基質および環状に配置されたtRNA基質をFRETアッセイにおいて用いる。ハイブリッド形成したtRNA基質のイントロンの5’および3’遊離末端(図1B)または環状に配置されたtRNA基質のイントロンの5’および3’遊離末端(図1C)を、5’末端のフルオロフォアと3’末端のフルオロフォアとが空間的に近接することにより蛍光共鳴エネルギー転移がもたらされるようにフルオロフォアで標識する。その後、基質の切断によって標識した5’末端と標識した3’末端とが空間的に離れ、したがって蛍光共鳴エネルギー転移の低減がもたらされる。それゆえ、当業者であれば、FRETを測定し、切断された基質に対する切断されていない基質の濃度を決定することが可能である。切断されていない基質の濃度はFRETが減退すると共に低減する。
あるいは、3’末端または5’末端をフルオロフォアで標識し、他方の末端(すなわち、それぞれ5’末端または3’末端)をフルオロフォアのクエンチャーで標識する。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによるイントロンの切断の際に、クエンチャーとフルオロフォアとが互いに離れ、測定可能な蛍光の変化が生じる。蛍光シグナルは切断反応が進行すると共に増大する。
4.4.2.1 標識した基質を用いた細胞系アッセイ
FRET−細胞に基づいたアッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を細胞内に微量注入またはトランスフェクション(たとえばリポソームまたはエレクトロポレーションを用いる)して、その細胞を化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、または前記基質は5’末端がクエンチャーで標識され、3’末端がフルオロフォアで標識されているステップと、たとえば蛍光顕微鏡またはViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、その結果検出可能な蛍光シグナルが生成される。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能な蛍光シグナルの生成が阻害または低減する。内在性エンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能なシグナルの生成が増大される。
あるいは、FRET−細胞系アッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を細胞内に微量注入またはトランスフェクトして、その細胞を化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、または前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、たとえば蛍光顕微鏡またはViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップによって実施し得る。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、蛍光ドナー部分の波長における蛍光ドナー部分と蛍光アクセプター部分とによる検出可能な蛍光シグナルが生成される。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が増強される。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が低減する。好ましい実施形態において、陰性対照(たとえばPBS、または基質の切断に対する効果がないことが知られている薬剤)および陽性対照(例えば基質の切断に効果を有することが知られている薬剤)を本明細書に記載のFRET細胞系アッセイに含める。
任意により、動物界のtRNAスプライシングリガーゼの活性を阻害または低減する薬剤(たとえば該リガーゼに特異的に結合する抗体)を接触ステップにおいて使用して、化合物が該リガーゼの活性の阻害または低減によって専ら機能することがないことを確保または確認しうる。あるいは、FRET細胞系アッセイは、tRNAスプライシングリガーゼを欠損する細胞中で実施することができる。別の実施形態においては、ATPをアッセイから排除しうる。特定の作用機構に拘束されることを意図するものではないが、tRNAスプライシングリガーゼの反応にはATPが必要であるため、アッセイにおいて化合物が有する効果は全てエンドヌクレアーゼに対する化合物の効果に起因することとなる。
このアッセイは、tRNAエンドヌクレアーゼの反応に貢献する条件を提供する任意の緩衝液系中で実施することができる。このような緩衝液系は当業者に周知である。具体的な実施形態では、緩衝液は細胞を維持する培地である。培地中にマグネシウムイオンを含めるよう注意すべきである。
特定の実施形態では、アッセイを少なくとも0.2時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、または少なくとも1日間実施する。
具体的な実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する抗増殖性化合物の同定方法であって、(a)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を動物界の細胞中に微量注入またはトランスフェクトするステップであって、前記基質は5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、あるいは前記基質は5’末端がクエンチャーで標識され、フルオロフォアで標識されているステップと、(b)その細胞を化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップと、(c)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を測定するステップであって、化合物の非存在下もしくは対照の存在下と比較して化合物の存在下において蛍光シグナルが検出可能でない場合に、tRNAスプライシング活性を阻害または低減する抗増殖性化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する抗増殖性化合物の同定方法であって、(a)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を含む動物界の細胞を化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップであって、前記基質は5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、あるいは前記基質は5’末端がクエンチャーで標識され、もしくは3’末端がフルオロフォアで標識されているステップと、(b)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を測定するステップであって、化合物の非存在下もしくは対照の存在下と比較して化合物の存在下において蛍光シグナルが検出可能でない場合に、tRNAスプライシング活性を阻害または低減する抗増殖性化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する抗増殖性化合物の同定方法であって、(a)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を動物界の細胞中に微量注入またはトランスフェクトするステップであって、前記基質は5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、あるいは前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、(b)その細胞を化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップと、(c)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を測定するステップであって、化合物の存在下において検出される蛍光シグナルが、化合物の非存在下または対照の存在下と比較して変化している場合に、tRNAスプライシング活性を阻害または低減する抗増殖性化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する抗増殖性化合物の同定方法であって、(a)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を含む動物界の細胞を化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップであって、前記基質は5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、あるいは前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、(b)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を測定するステップであって、化合物の存在下での蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が、化合物の非存在下または対照の存在下と比較して増大している場合に、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害または低減する抗増殖性化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによって認識および切除される任意のヌクレオチド配列を本明細書中に記載のFRETアッセイの動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質として利用し得る。たとえば、バルジ−ヘリックス−バルジ構造または前駆体tRNAの成熟ドメインを含むヌクレオチド配列を本明細書中に記載のFRETアッセイにおいて動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質として利用し得る。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによって認識および切除されるヌクレオチド配列は、10個のヌクレオチド、15個のヌクレオチド、20個のヌクレオチド、25個のヌクレオチド、25個のヌクレオチド、30個のヌクレオチド、40個のヌクレオチド、45個のヌクレオチド、50個のヌクレオチド、55個のヌクレオチド、60個のヌクレオチド、65個のヌクレオチド、75個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、125個のヌクレオチド、150個のヌクレオチド、またはそれ以上を含み得る。具体的な実施形態では、本明細書中に記載のFRETアッセイで利用するtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質はtRNAイントロンを含む。基質はバルジ−ヘリックス−バルジコンホメーションを含み得る。好ましい実施形態では、基質はtRNAイントロンを含む成熟ドメインを含む。
本発明によれば、1対の蛍光ドナーおよびアクセプター部分を用いる。基質は蛍光ドナー部分および蛍光アクセプター部分の異なる対を用いて標識することができる。たとえば、2対、3対、4対、5対以上の蛍光ドナー部分および蛍光アクセプター部分を使用することができる。この場合、少なくとも1対は他の対のうち少なくとも1対の蛍光アクセプター部分の発光スペクトルとは異なる発光スペクトルを有する蛍光アクセプター部分を含むことが好ましい。あるいは、少なくとも3対用いる場合は、第1対、第2対および第3対の蛍光アクセプター部分は他の2対の蛍光アクセプター部分とは異なる発光スペクトルを有する。基質を蛍光アクセプター部分、蛍光ドナー部分および/またはクエンチャーで標識する方法は当分野で周知である(たとえば、米国特許第6,472,156号、同第6,451,543号、同第6,348,322号、同第6,342,379号、同第6,323,039号、同第6,297,018号、同第6,291,201、同第6,280,981号、同第5,843,658号、および同第5,439,797号参照。これらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。標識した基質は、当業者に周知の技法を利用して動物界の細胞(好ましくは、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞)内に微量注入またはトランスフェクトすることができる(たとえば、Adams他、1991、Nature、349:694-697参照)。
FRET細胞系アッセイにおける動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに対する化合物の活性は、当業者に周知の技法を用いて基質の蛍光発光スペクトルを測定することにより決定しうる。測定される蛍光発光スペクトルは、部分的には使用するフルオロフォアの種類に応じて異なる。
4.4.2.2 標識した基質を用いた無細胞系アッセイ
FRET無細胞系アッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を無細胞抽出物(無細胞抽出物に関するセクション4.4.1.2を参照。好ましくはtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ抽出物)または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ、および化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、あるいは前記基質は3’末端がフルオロフォアで標識され、5’末端がクエンチャーで標識されているステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器で基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。無細胞抽出物中のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、その結果検出可能な蛍光シグナルが生成される。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能な蛍光シグナルの生成が阻害または低減される。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能なシグナルの生成が増大される。
あるいは、FRET無細胞系アッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を無細胞抽出物(好ましくはtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ抽出物)または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ、および化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、あるいは前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、蛍光ドナー部分の波長における蛍光ドナー部分と蛍光アクセプター部分とによる検出可能な蛍光シグナルを生成する。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を増大する。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が低減する。好ましい実施形態において、陰性対照(たとえばPBS、または基質の切断に対する効果がないことが知られている別の薬剤)および陽性対照(例えば基質の切断に効果を有することが知られている薬剤)を本明細書に記載のFRET無細胞系アッセイに含める。
このアッセイは、tRNAエンドヌクレアーゼ反応に貢献する条件を提供する任意の緩衝液系中で実施することができる。このような緩衝液系は当業者に周知である。具体的な実施形態では、緩衝液はpH7.0の20mMトリス、50mM KCl、0.1mM DTT、5mM MgCl、および0.4%TritonX−100を含む。緩衝液系のpH、塩濃度、界面活性剤濃度などがFRETを妨げないよう注意すべきである。
特定の実施形態では、アッセイを少なくとも0.2時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、または少なくとも1日間実施する。
一実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を阻害または低減する抗増殖性化合物の同定方法であって、(a)動物界の無細胞抽出物(好ましくはtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ抽出物)または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質および化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップであって、前記基質は5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、あるいは前記基質は5’末端がクエンチャーで標識され、3’末端がフルオロフォアで標識されているステップと、(b)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を測定するステップであって、化合物の非存在下もしくは対照の存在下と比較して化合物の存在下における蛍光シグナルが検出可能でない場合に、tRNAスプライシング活性を阻害または低減する抗増殖性化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害する抗増殖性化合物の同定方法であって、(a)動物界の無細胞抽出物(好ましくはtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ抽出物)または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質および化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップであって、前記基質は5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、あるいは前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、(b)tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を測定するステップであって、化合物の存在下において、蛍光ドナー部分の波長での蛍光アクセプター部分の蛍光発光が、化合物の非存在下または対照の存在下と比較して増大している場合に、tRNAスプライシング活性を阻害する抗増殖性化合物が同定されるステップとを含む方法を提供する。

本発明によれば、1対の蛍光ドナー部分およびアクセプター部分を用いて基質を標識することができる。基質は蛍光ドナー部分および蛍光アクセプター部分の異なる対を用いて標識することができる。たとえば、2対、3対、4対、5対以上の蛍光ドナー部分および蛍光アクセプター部分を使用することができる。この場合、少なくとも1対は他の対のうち少なくとも1対の蛍光アクセプター部分の発光スペクトルとは異なる発光スペクトルを有する蛍光アクセプター部分を含むことが好ましい。あるいは、少なくとも3対用いる場合は、第1対、第2対および第3対の蛍光アクセプター部分は他の2対の蛍光アクセプター部分とは異なる発光スペクトルを有する。基質を蛍光アクセプター部分、蛍光ドナー部分および/またはクエンチャーで標識する方法は当分野で周知である(たとえば、米国特許第6,472,156号、同第6,451,543号、同第6,348,322号、同第6,342,379号、同第6,323,039号、同第6,297,018号、同第6,291,201号、同第6,280,981号、同第5,843,658号、および同第5,439,797号参照。これらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
FRET無細胞系アッセイにおける動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに対する化合物の活性は、当業者に周知の技法を用いて基質の蛍光発光スペクトルを測定することにより決定しうる。測定される蛍光発光スペクトルは、部分的には使用するフルオロフォアの種類に応じて異なる。
4.4.2.3 標識した酵素を用いた細胞系アッセイ
FRET−細胞に基づいたアッセイは、フルオロフォアで標識した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの第1のサブユニット(たとえばSEN2)およびクエンチャーで標識した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの別の第2のサブユニット(たとえばSEN34)を細胞内に微量注入またはトランスフェクションするステップと、その細胞を化合物と接触させるステップと、たとえば蛍光顕微鏡またはViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの蛍光を測定するステップとによって実施し得る。好ましくは、微量注入またはトランスフェクトした細胞は、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの1以上のサブユニットを欠損するものである。細胞からの動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの1以上のサブユニットの発現および/または機能を除外するために当業者に公知の任意の方法を用いることができる。特定の実施形態においては、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの1以上のサブユニットを一過性に除外するためにRNAiを用いる。標識したサブユニットから、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成により、検出可能な蛍光の低減が生じる。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を阻害または低減する化合物は陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能な蛍光シグナルの生成を阻害または低減する。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を増強する化合物は陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能な蛍光を増大する。
あるいは、FRET−細胞系アッセイは、蛍光ドナー部分で標識した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの第1のサブユニット(たとえばSEN2)および蛍光アクセプター部分で標識した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの別の第2のサブユニット(たとえばSEN34)を細胞内に微量注入するステップと、その細胞を化合物と接触させるステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光顕微鏡または蛍光発光検出器によって動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの蛍光を測定するステップによって実施し得る。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成により、蛍光ドナー部分の波長における蛍光ドナー部分と蛍光アクセプター部分とによる検出可能な蛍光シグナルが生成する。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を阻害または低減する化合物は陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を低減しうる。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を増強する化合物は陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を増大する。好ましい実施形態において、陰性対照(たとえばPBS、または基質の切断に対する効果がないことが知られている薬剤)および陽性対照(例えば基質の切断に効果を有することが知られている薬剤)を本明細書に記載のFRET細胞系アッセイに含める。
特定の実施形態では、化合物および細胞を、少なくとも0.2時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、または少なくとも1日間にわたりインキュベートする。
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットを蛍光アクセプター部分、蛍光ドナー部分および/またはクエンチャーで標識する方法は当分野で周知である(たとえば、米国特許第6,472,156号、同第6,451,543号、同第6,348,322号、同第6,342,379号、同第6,323,039号、同第6,297,018号、同第6,291,201、同第6,280,981号、同第5,843,658号、および同第5,439,797号参照。これらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
4.4.2.4 標識した酵素を用いた無細胞系アッセイ
FRET無細胞系アッセイは、フルオロフォアで標識した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの第1のサブユニット(たとえばSEN2)およびクエンチャーで標識した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの別の第2のサブユニット(たとえばSEN34)を、該エンドヌクレアーゼの形成を助ける条件下でin vitroにおいて化合物と接触させるステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器で動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの蛍光を測定するステップとによって実施し得る。標識したサブユニットから、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成により、検出可能な蛍光が低減しうる。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を阻害または低減する化合物は、該化合物の非存在下もしくは陰性対照(たとえばPBS)の存在下と比較して検出可能な蛍光シグナルの生成を増大する。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を増強する化合物は、該化合物の非存在下もしくは陰性対照(たとえばPBS)の存在下と比較して検出可能な蛍光を低減または阻害しうる。
あるいは、FRET無細胞系アッセイは、蛍光ドナー部分で標識した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの第1のサブユニット(たとえばSEN2)および蛍光アクセプター部分で標識した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの別の第2のサブユニット(たとえばSEN34)を、該エンドヌクレアーゼの形成を助ける条件下でin vitroにおいて化合物と接触させるステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの蛍光を測定するステップとによって実施し得る。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成により、蛍光ドナー部分の波長における蛍光ドナー部分と蛍光アクセプター部分とによる検出可能な蛍光シグナルが生成しうる。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を阻害または低減する化合物は、該化合物の非存在下もしくは陰性対照(たとえばPBS)の存在下と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を低減しうる。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を増強する化合物は、該化合物の非存在下もしくは陰性対照(たとえばPBS)の存在下と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を増大しうる。好ましい実施形態において、陰性対照(たとえばPBS、または基質の切断に対する効果がないことが知られている別の薬剤)および陽性対照(例えば基質の切断に効果を有することが知られている薬剤)を本明細書に記載のFRET無細胞系アッセイに含める。
4.4.3 直接結合アッセイ
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物を直接結合アッセイによって同定することができる。具体的には、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質と動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼとの相互作用を直接または間接的に低減または阻害することによって、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害する化合物を同定することができる。このようなアッセイは、国際公開公報WO02/083837号および同WO02/083953号(これらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。簡単に説明すると、直接結合アッセイは、化合物ライブラリを、それぞれの固体担体の表面に実質上1種の化合物が結合するように、固体担体(たとえばポリマービーズ)に結合させることによって実施し得る。ライブラリの複数の固体担体を、検出可能な標識を有する動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質に水溶液中で曝し、色素標識した基質:担体に結合した化合物の複合体を形成させる。基質を特定の化合物に結合させることにより、化合物を含む固体担体(たとえばビーズ)が標識され、これは他の未標識の固体担体から物理的に分離することができる。標識した固体担体を同定したあと、担体上の化合物の化学構造は、たとえば結合した化合物の構造に対応する固体担体上のコードを読み取ることによって決定することができる。
あるいは、直接結合アッセイは、検出可能な標識を有する動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を、ラベルをつけた試験管もしくはマイクロタイターウェル、またはマイクロアレイ中の溶液中の遊離の化合物ライブラリのメンバーと接触させることによって実施し得る。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの標識した基質に結合するライブラリ中の化合物は検出可能に標識された複合体を形成し、該複合体は様々な方法(それだけには限定されないが、複合体形成した基質の電気泳動、クロマトグラフィー、もしくは熱安定性特性の変化を区別する方法を含む)によって同定され、かつライブラリ中の複合体形成していない未標識の化合物、および複合体形成していない動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの標識基質から除去することができる。
4.4.4 蛍光偏光アッセイ
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に対する化合物の効果は、蛍光偏光に基づくアッセイを利用して決定してもよい。このようなアッセイは、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの蛍光標識した基質を、動物界の無細胞抽出物(好ましくは動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ抽出物)または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼおよび化合物または化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップと、蛍光偏光放射を測定することによって実施する。このアッセイの重要な側面は、アッセイで使用する基質の大きさが、基質の切断に引き続く発光した蛍光偏光の変化を識別するのに十分に大きいことである。無細胞抽出物中のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼまたは精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、その結果放射偏光の強度の変化がもたらされる。蛍光標識した基質は、平面偏光で励起した際には、励起と発光との間の時間に回転しない場合にのみ固定平面内で光を発する。放射光の偏光解消の度合いは、基質の大きさに依存する基質の回転量に依存する。小さな基質は、励起された時点と蛍光を発した時点との間に、大きな基質よりも多く回転する。小さな蛍光標識基質は高速に回転し、放射光の偏光解消が起こる。大きな蛍光標識基質はよりゆっくりと回転し、偏光を保った放射光がもたらされる。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して、または化合物の非存在下と比較して基質の回転が低減し、その結果偏光を保った放射光が生じる。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して、または化合物の非存在下と比較して基質の回転が増大し、その結果より多くの放射光が偏光解消する。
光の強度は90°離れた平面内で測定され、多くの場合水平強度および垂直強度と呼ばれる。一部の機器では、励起フィルターは可動であり、発光フィルターは固定されている。特定の他の機器では、水平強度および垂直強度は光ファイバーによって同時に測定する。研究グレードの蛍光偏光機器がたとえばPanVera、BMG Lab Technologies、およびLJL Biosystemsから市販されている。Abottは臨床検査機器を提供している。蛍光偏光値は以下の式によって決定される:
偏光=強度 垂直 −強度 水平
強度垂直+強度水平
蛍光偏光値はほとんどの場合1000で割算し、ミリ偏光単位(mP)として表される。
具体的な実施形態では、図1に示したハイブリッド形成したtRNA基質または環状に配置された(circularly permitted)tRNA基質をエンドヌクレアーゼの基質として使用する。この実施形態においては、ハイブリッド形成したtRNAもしくは環状に配置されたtRNAのイントロンの5’末端またはハイブリッド形成したtRNAもしくは環状に配置されたtRNAのイントロンの3’末端、あるいはその両方を、フルオロフォアで標識する。イントロンは、切断の際に基質から放出されるため、フルオロフォアが結合する分子のサイズが変化する。標識した分子の分子量が低減することにより、フルオロフォアから発せられる光の偏光解消が増大する。偏光解消の量を測定することによって、当業者であれば切断された基質の量を測定することができる。
4.4.5 tRNAエンドヌクレアーゼ抑制アッセイ
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に対する化合物または化合物ライブラリのメンバーの効果は、tRNAエンドヌクレアーゼ抑制アッセイを用いて決定してもよい。このようなアッセイでは、第1のレポーター遺伝子構築体およびサプレッサーtRNAを含むように宿主細胞を遺伝子操作するステップと、サプレッサーtRNAの発現を誘導するステップと、宿主細胞を化合物または化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップと、レポーター遺伝子の発現および/またはレポーター遺伝子にコードされているタンパク質の活性を測定するステップを行う。第1のレポーター遺伝子構築体は、そのオープンリーディングフレーム内に、オープンリーディングフレームが分断されるようにナンセンスコドンを有するレポーター遺伝子を含む。たとえばSambrook (Sambrook、1989、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、第2版;DNA Cloning、第I巻および第II巻(Glover編、1985))に記載の標準的な突然変異誘発技術を使用して、当業者に周知の任意のレポーター遺伝子のオープンリーディングフレーム内にナンセンスコドンを導入してもよい。第1のレポーター遺伝子構築体を、サプレッサーtRNAを含むよう遺伝子操作した宿主細胞内にトランスフェクトする。あるいは、第1のレポーター遺伝子を、サプレッサーtRNAと共に宿主細胞内に同時トランスフェクトする。サプレッサーtRNAの発現は、テトラサイクリンにより調節される調節エレメントなどの制御可能な調節エレメントによって調節されており(たとえば、Buvoli他、2000、Molecular and Cellular Biology、20:3116-3124;ParkおよびBhandary、1998、Molecular and Cellular Biology、18:4418-4425参照)、サプレッサーtRNAは正しくスプライシングされたサプレッサーtRNAのみが機能的であるように、アンチコドンステムにtRNAイントロンを含む。機能的サプレッサーtRNAの発現は(i)サプレッサーtRNAの転写、および(ii)tRNAスプライシングに依存する。機能的サプレッサーtRNAの発現によりレポーター遺伝子中のナンセンスコドンが抑制され、完全長の機能的なレポーター遺伝子の発現がもたらされる。したがって、完全長の機能的なレポーター遺伝子の発現は機能的サプレッサーtRNAの発現と相関し、言い換えると、サプレッサーtRNAの転写レベルおよびtRNAスプライシングレベルと相関する。完全長のレポーター遺伝子の発現およびレポーター遺伝子にコードされているタンパク質の活性は、当業者に周知の、または本明細書中に記載の任意の方法によってアッセイすることができる。
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は、機能的サプレッサーtRNAの産生を阻害または低減し、したがって事前に決定した基準範囲または対照と比較して、レポーター遺伝子の発現が低減する。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は機能的サプレッサーtRNAの産生を増大し、したがって、事前に決定した基準範囲または対照と比較してレポーター遺伝子の産生が増大する。
サプレッサーtRNAの発現を誘導するステップは、宿主細胞を化合物と接触させるステップと同時に、または化合物を宿主細胞と接触させるステップの少なくとも5分間、少なくとも15分間、少なくとも0.5時間、少なくとも1時間、少なくとも1.5時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間もしくは少なくとも12時間前に実施してもよい。特定の実施形態では、宿主細胞をたとえばテトラサイクリンなどの薬剤と共に、約5分間、約15分間、約0.5時間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約8時間、約10時間、または約12時間インキュベートすることによってサプレッサーtRNAの発現を誘導する。他の実施形態では、約5分間、約15分間、約0.5時間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約8時間、約10時間または約12時間、宿主細胞を化合物と接触させる。
場合によっては、ナンセンスコドンを含まない第1のレポーター遺伝子とは異なるレポーター遺伝子を含む第2のレポーター遺伝子構築体を含むように宿主細胞を遺伝子操作する。具体的な実施形態では、tRNAエンドヌクレアーゼ抑制アッセイで使用するレポーター遺伝子は赤色および緑色のコメツキムシルシフェラーゼであり、赤色のルシフェラーゼがナンセンスコドンを含む。宿主細胞は、2つのルシフェラーゼ遺伝子およびその発現が制御される調節エレメントによって調節されるサプレッサーtRNA(テトラサイクリンに制御される調節エレメントなど)を安定して発現するよう遺伝子操作してもよい。テトラサイクリンなどの薬剤が存在しない場合はサプレッサーtRNAが発現せず、したがって赤色対緑色の比が低い。テトラサイクリンなどの薬剤が存在する場合はサプレッサーtRNAが発現し、したがって赤色対緑色の比が増大する。ハイスループットスクリーニングには、化合物の存在下で細胞を蒔く。一定時間後、テトラサイクリンなどの薬剤を含む培地を加えてサプレッサーtRNAの発現を誘導する。
tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを阻害する化合物は、該化合物を含まない対照と比較して赤色対緑色の比を減少させる。このアッセイで動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする化合物を同定したあと、それらの活性を確認するために、本明細書中に記載のアッセイのうち1または複数を用いてそれらを試験し得る。
4.4.6 FISHアッセイ
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性は、動物界の細胞中でtRNAイントロンの持続性(persistence)および量を検出するアッセイで決定してもよい。tRNAイントロンの量は、細胞を化合物とインキュベートした後またはその間の様々な時点で定量する。tRNAイントロンは、tRNAイントロンに特異的なプローブを用いた蛍光in situハイブリダイゼーション(「FISH」)によって検出することができる。特定の実施形態では、動物界の細胞を化合物と接触させない対照実験を平行して実施する。
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの阻害剤の非存在下では、スプライシング反応は速く、細胞中のイントロンの濃度は低い。理論に拘束されるものではないが、スプライシングされたイントロンは通常分解されるので、動物界の細胞中のtRNAイントロンの濃度は検出閾値より低い。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの阻害剤が存在する場合には、スプライシング反応が減速し、tRNAイントロンの量が増加する。したがって、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを阻害する化合物を、動物界の細胞中のtRNAイントロンのレベルを増加させるその能力によって同定することができる。
FISHを実施する方法は当業者に周知であり、本発明で使用することができる。FISHの例示的な方法は、SarkarおよびHopper、1998 (Mol. Biol. Cell、9:3041-3055)(その全体が本明細書中に組み込まれる)に記載されている。
特定の実施形態では、ハイスループットスクリーニングで動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に対する化合物の効果を決定するためにFISHアッセイを用いる。特に、96レンズの顕微鏡をFISHに基づくハイスループットスクリーニングに使用することができる。具体的な実施形態では、96個の細胞培養物を、それぞれ別個の化合物と共に96ウェルプレートでインキュベートする。次いで、細胞をtRNAイントロンに特異的なプローブを用いたFISH解析に供し、96レンズの顕微鏡を用いて解析する。シグナルの存在、または有意により強いシグナルの存在は、細胞中にtRNAイントロンが高いレベルで存在し、したがって化合物がtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの阻害剤候補であることを示す。
理論に拘束されるものではないが、FISHアッセイは化合物をtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの阻害剤として直接同定する。したがって、特定の実施形態では、tRNAスプライシングの阻害剤としてFISHアッセイで同定された化合物はtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの阻害剤の明白な候補である。
4.4.7 他のスクリーニングアッセイ
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性は、対照(好ましくは陰性対照、より好ましくは陰性対照および陽性対照)と比較した、化合物の存在下でエンドヌクレアーゼによって切断されるtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質の量を検出するアッセイによって決定してもよい。このようなアッセイは、化合物を、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの標識基質および無細胞抽出物または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼと、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を促す条件で接触させるかまたはインキュベートするステップと、切断された基質の量を測定するステップとによって実施し得る。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質は、任意の検出可能な薬剤で標識しうる。本発明において有用な標識としては、それだけには限定されないが、蛍光色素(たとえば、フルオレセインおよび誘導体(たとえばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)およびオレゴングリーン(商標))、ローダミンおよび誘導体(たとえばテキサスレッド、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン(BODIPY(登録商標))および誘導体など)、ジゴキシゲニン、ビオチン、フィコエリスリン、AMCA、CyDye(商標)などが含まれる)などの分光学的標識、放射性標識(たとえばH、125I、35S、14C、32P、33Pなど)、酵素(たとえば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、金コロイドや有色ガラスもしくはプラスチック(たとえばポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズなどの分光学的有色標識、またはナノ粒子(0.1〜1000nmの規定寸法を有する無機イオンのナノクラスター)が挙げられる。
たとえば、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質は当業者に公知の任意の方法によって標識することができる。特定の実施形態では、フルオロフォアを用いたRNAの部位特異的な標識を使用して動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を標識することができる。より具体的な実施形態では、QinおよびPyle、1999 (Methods、18(1):60-70、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載の方法を用いて動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を標識する。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を標識するための最適な方法は慣用の実験を用いて当業者が決定することができる。具体的な実施形態では、異なる方法、異なる標識および/またはtRNA基質中の異なる標識位置を用いて動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を標識する。その後、異なる標識を行った基質を個別に、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの阻害剤または活性化剤をそれぞれ存在させておよび存在させずにスプライシングアッセイに供する。スクリーニングアッセイの最適な標識は、最も容易に検出可能であり、阻害剤または活性化剤の効果の最も再現性のある検出を可能にする標識である。しかし、他の標識化手順も、特にそれらが他の望ましい利点を提供する場合は使用し得る。
特定の実施形態では、化合物を、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの標識基質および無細胞抽出物または精製された動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼと、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、もしくはそれ以上接触させるかまたはインキュベートする。切断された基質の量はtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に比例する。切断されたtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの量は、当業者に公知のいかなる技術によっても測定することができる。
特定の実施形態では、切断されたtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を、切断されていないtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質からゲル電気泳動によって分離する。切断されたtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質の量は、切断されたtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質のシグナルの強度を測定することによって定量することができる。切断されていないtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質に対して、切断されたtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質によって生成されるシグナルが強ければ強いほど、tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼはより活性である。シグナル強度はオートラジオグラフィーまたはホスホイメージャーを使用して定量することができる。ある化合物の存在下でtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性が低減しているとき、すなわち、その化合物の非存在下または陰性対照の存在下での反応と比較して、切断されたtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質のシグナルが切断されていないtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質に対して低減している場合は、その化合物はtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの阻害剤として同定される。
他の実施形態では、切断されたtRNAの量は質量分析を用いて決定する。
4.5 化合物の構造の特性決定
ライブラリが化合物のアレイまたはマイクロアレイを含み、各化合物がアドレスまたは識別子を有する場合は、たとえば陽性試料を、個々の試験アッセイに適用した当初の化合物リストと相互参照することによって化合物をデコンボリューションすることができる。
ライブラリがペプチドまたは核酸ライブラリである場合は、ペプチドまたは核酸の直接配列決定を行うことによって化合物の配列を決定することができる。このような方法は当業者に周知である。
標的RNAに結合した化合物の新たな特性決定を行うためにいくつかの物理化学的技法を使用することができる。このような技法の例としては、それだけには限定されないが、質量分析、NMR分光分析、X線結晶構造解析および振動分光分析が挙げられる。
4.5.1 質量分析
化合物の構造を解明するために、質量分析(たとえばエレクトロスプレーイオン化法(「ESI」)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(「MALDI」)、およびフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴法(「FT−ICR」))を使用することができる。
MALDIではイオンの脱離用のパルスレーザーおよび飛行時間解析器を用い、これは非共有的なtRNA:アミノアシル−tRNA合成酵素の複合体を検出するために使用されている(Gruic-Sovulj他、1997、J. Biol. Chem.、272:32084-32091)。しかし、非共有結合した複合体はMALDIプロセス中に分解し得るので、検出には標的核酸と化合物との共有的な架橋結合が必要である。
ESI質量分析(「ESI−MS」)は、MALDIプロセスとは異なり、断片化がほとんどないか、まったくない分子イオンを生じるので、ESI−MSは非共有的な分子相互作用を研究するためにより高い有用性を有している(Xavier他、2000、Trends Biotechnol.、18(8):349-356)。ESI−MSは、HIV Tatペプチドおよびタンパク質とTAR RNAによって形成される複合体を研究するために使用されている(Sannes-Lowery他、1997、Anal. Chem.、69:5130-5135)。
フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FT−ICR」)質量分析は、高分解能のスペクトル、同位元素に分解した(isotope-resolved)前駆体イオンの選択、および正確な質量の割り当てをもたらす(Xavier他、2000、Trends Biotechnol.、18(8):349-356)。FT−ICRは、アミノグリコシド抗生物質と同族および非同族RNAとの相互作用の研究に用いられている(Hofstadler他、1999、Anal. Chem.、71:3436-3440;およびGriffey他、1999、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、96:10129-10133)。本明細書中に記載したすべての質量分析方法にも当てはまるように、FT−ICRでは化合物の標識化を必要としない。
質量分析の利点は、化合物の構造を解明することだけでなく、RNAに結合した化合物の構造を決定することにもある。このような情報は、RNAに特異的に結合する化合物のコンセンサス構造の発見を可能にすることができる。
4.5.2 NMR分光測定
NMR分光分析は、化学シフトの変化を定性的に決定することにより、具体的には緩和効果を用いて測定した距離から決定することによって、複合体形成した標的核酸を同定する有益な技術であり、NMRに基づく手法は、タンパク質薬物標的の小分子結合体の同定に用いられている(Xavier他、2000、Trends Biotechnol.、18(8):349-356)。NMRによる構造−活性関係(「SAR」)の決定は、隣接するサブサイトに結合する小分子が標的タンパク質の二次元H−15Nスペクトルによって同定される、NMRについて記載された最初の方法である(Shuker他、1996、Science、274:1531-1534)。線幅拡大、転移核NOEおよびパルスフィールド勾配拡散測定により結合分子からのシグナルをモニターする(Moore、1999、Curr. Opin. Biotechnol.、10:54-58)。小分子のライブラリを用いたNMRによるリード(lead)作製の戦略が最近記載されている(Fejzo他、1999、Chem. Biol.、6:755-769)。
化合物の構造を解明するためにNMRによるSARを用いることができる。
上述のように、NMR分光分析は、化学シフトの変化を定性的に決定することにより、具体的には緩和効果を用いて測定した距離から決定することによって標的核酸中の結合部位を同定する技術である。本発明で用いることができるNMRの例としては、それだけには限定されないが、一次元NMR、二次元NMR、相関分光法(「COSY」)、および核オーバーハウザー効果(「NOE」)分光分析が挙げられる。化合物の構造決定を行うためのこのような方法は当業者に周知である。
質量分析と同様に、NMRの利点は化合物の構造を解明することだけでなく、RNAに結合した化合物の構造を決定することにもある。このような情報は、RNAに特異的に結合する化合物のコンセンサス構造の発見を可能にすることができる。
4.5.3 X線結晶構造解析
化合物の構造を解明するためにX線結晶構造解析を用いることができる。X線結晶構造解析の総説としては、たとえばBlundell他、2002、Nat Rev Drug Discov、1(1):45-54を参照されたい。X線結晶構造解析の第1のステップは結晶の形成である。結晶の形成は、高度に精製された可溶性のある試料の調製から始まる。その後、核形成を誘導することが知られているいくつかの溶液の可変因子(pH、イオン強度、温度、ならびに有機添加物、塩および界面活性剤の比濃度など)を最適化することによって、結晶化の条件を決定する。高品質のタンパク質結晶の生成を自動化するために、結晶化プロセスを自動化する技術が開発されている。結晶が形成されたあと、データ収集のために結晶が回収され、準備される。その後、回析によって結晶を解析する(多軸回析計(multi-circle diffractometer)、高速CCD検出器、および検出器オフセットなど)。一般に、構造を決定するには複数の結晶をスクリーニングする必要がある。
4.5.4 振動分光分析
化合物の構造を解明するために振動分光分析(たとえば赤外線(IR)分光分析やラマン分光分析)を用いることができる。
赤外線分光分析では、量子力学的な選択規則(光の吸収により分子の電気双極子モーメントの変化が引き起こされることを必要とする)に従った振動モードの励起の結果、化合物により吸収される赤外光(100〜10,000nmの波長)の周波数を測定する。いかなる分子の赤外線スペクトルも、任意の化合物を同定するための分子指紋(molecular fingerprint)とみなすことができる、様々な強度の吸収波長の独特なパターンである。
赤外線スペクトルは、標準的な強度(ダブルビーム機器)または事前に測定した(「ブランク」)強度(シングルビーム機器)と比較して、化合物による、光の個々の周波数(混合周波数の赤外線光源から周波数を分離する回折格子により生成した)の吸収を測定することによって、走査モードで測定することができる。好ましい実施形態では、赤外線スペクトルを、すべての赤外光周波数の混合光線(干渉計によって生成する)を化合物に通すかまたは化合物に反射させるパルスモード(「FT−IR」)で測定する。その結果生じる干渉写真は、シグナル強度を増大させ、電気シグナル中のランダムノイズを平均化するために後続のパルスから生じる干渉写真と合わせても合わせなくてもよいが、フーリエ変換または高速フーリエ変換アルゴリズムを用いてスペクトルへと数学的に変換される。
ラマン分光分析では、入射光線に対する、散乱可視光または紫外光の赤外線周波数の吸収による周波数の差を測定する。通常は単一レーザー周波数である入射単色光線は、正確には化合物に吸収されるわけではなく、過渡的に電場と相互作用する。試料から散乱される光の大部分は無変化であるが(レイリー散乱)、散乱光の一部は入射周波数および分子振動周波数の和または差である周波数を有する。ラマン(非弾性)散乱の選択規則には分子の分極率の変化が必要である。一部の振動遷移は赤外線およびラマン分光測定のどちらでも観察可能であるが、多くの場合はどちらか一方の技法でのみ観察可能である。いかなる分子のラマンスペクトルも、任意の化合物を同定するための分子指紋とみなすことができる、様々な強度の吸収波長の独特なパターンである。
ラマンスペクトルは、単色光を試料に対して、それに通すか好ましくは反射させ、レイリー散乱光をフィルタリングし、かつラマン散乱光の周波数を検出することによって測定する。改良されたラマン分光計が、Fink他の米国特許第5,786,893号(参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。
振動顕微鏡観察は、可視顕微鏡および分光計を組み込むことによって、単一ビーズを扱うために空間的に分解された形式で測定することができる。顕微鏡赤外線分光計は、Reffiner他の米国特許第5,581,085号(その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。試料の顕微鏡赤外線解析および顕微鏡ラマン解析を同時に行う機器が、Sostek他の米国特許第5,841,139号(その全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。
本方法の一実施形態では、それだけには限定されないが、Fenniri他、2000、J. Am. Chem. Soc.、123:8151-8152に記載のものを含めた方法によって、生じる各ビーズが振動(IRまたはラマン)スペクトル中の吸収線の特徴的なパターンを有するように化学修飾したスチレンモノマーを塗布したポリスチレンビーズ上で化合物を合成する。当業者に公知の分割−プール合成方法を用いて、ビーズの分光学的パターンがビーズ上の化合物の構成要素のうち1つを同定するように化合物ライブラリを調製する。標的RNAを結合するその能力に応じて分離されたビーズは、その振動スペクトルによって同定することができる。本方法の一実施形態では、合成中のビーズの適切なソーティングおよびビンニングが、任意の1個のビーズ上の化合物の1または複数のさらなる構成要素の同定を可能にする。本方法の別の実施形態では、合成中のさらなるソーティングの補助を用いてまたは用いずにビーズの分光学的パターンを使用し、次いで塗布したビーズおよび合成中の適切なソーティングに助けられた、可能性のある化合物の部分的な再合成を行うことによって、ビーズ上の化合物の部分的な同定が可能である。
別の実施形態では、好ましくは化合物がビーズ上にあるうちに、またはそれだけには限定されないが光化学、酸、もしくは熱処理を含めた方法を用いてビーズから切断したあとに、化合物のIRまたはラマンスペクトルを検査する。化合物は、IRまたはラマンスペクトルのパターンを、コンビナトリアルライブラリ中の各化合物について事前に得られたスペクトルと比較することによって同定することができる。
4.6 二次アッセイ
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする、上述のアッセイで同定される化合物(利便上、本明細書中で「リード」(lead)化合物と呼ぶ)は、RNAへの直接結合および生物学的活性のどちらについてもさらに試験することができる。一実施形態では、さらなるアッセイおよび/または動物モデルで生物学的活性について化合物を試験する。別の実施形態では、リード化合物を、同属種または類似体を設計するために用いる。別の実施形態では、真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼおよび真菌の繁殖に対するその効果について評価するためにリード化合物を用いる。さらに別の実施形態では、リード化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートする機構を評価するために、突然変異誘発の研究を実施することができる。
4.6.1 表現型のまたは生理学的なリードアウト
上述のアッセイで同定した化合物(利便上、本明細書中で「リード」化合物と呼ぶ)は、それだけには限定されないが、機能的リードアウトシステム(functional readout system)に連結した動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを含むか、または含むよう遺伝子操作した宿主細胞を用いて、生物学的活性について試験することができる。たとえば、リード化合物の存在下または非存在下における動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を評価するために、表現型的または生理学的なリードアウト(readout)を使用することができる。
一実施形態では、リード化合物の存在下または非存在下における動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を評価するために、表現型のまたは生理学的なリードアウトを使用することができる。たとえば、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼが、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼが内在的に発現される細胞で過剰発現されてもよい。リード化合物の効果は、標的細胞の細胞成長または生存度を測定することによってアッセイすることができる。このようなアッセイは、特定の増殖性疾患に関与している細胞種の代表的な細胞を用いて実施することができる。接触させた細胞の増殖または生存のレベルがより低いことは、リード化合物が無制御の細胞増殖を特徴とする患者の状態の治療に有効であることを示す。あるいは、患者由来の細胞を培養する代わりに、腫瘍もしくは悪性細胞株または内皮細胞株の細胞を用いてリード化合物のスクリーニングを行ってもよい。細胞培養物モデルの具体例としては、それだけには限定されないが、肺癌に対する原発性ラット肺腫瘍細胞(Swafford他、1997、Mol. Cell. Biol.、17:1366-1374)および大細胞未分化癌細胞株(Mabry他、1991、Cancer Cells、3:53-58);結腸癌に対する結腸直腸細胞株(ParkおよびGazdar、1996、J. Cell Biochem.、Suppl. 24:131-141);乳癌に対する複数の確立された細胞株(Hambly他、1997、Breast Cancer Res. Treat.、43:247-258;Gierthy他、1997、Chemosphere、34:1495-1505;PrasadおよびChurch、1997、Biochem. Biophys. Res. Commun.、232:14-19);前立腺癌に対するいくつかの十分に確立された細胞モデル(Webber他、1996、Prostate、第1部、29:386-394;第2部、30:58-64;および第3部、30:136-142;Boulikas、1997、Anticancer Res.、17:1471-1505);泌尿生殖器癌に対する一連のヒト膀胱癌細胞株(Ribeiro他、1997、Int. J. Radiat. Biol.、72:11-20);移行細胞癌の器官培養物(Booth他、1997、Lab Invest.、76:843-857)およびラット進行モデル(Vet他、1997、Biochim. Biophys Acta、1360:39-44);ならびに白血病およびリンパ腫に対する確立された細胞株(Drexler、1994、Leuk. Res.、18:919-927、Tohyama、1997、Int. J. Hematol.、65:309-317)が挙げられる。細胞系のより具体的な例としては、癌細胞系Huh7(ヒト肝細胞癌細胞系)および癌細胞系Caco−2(大腸癌細胞系)が挙げられる。特定の実施形態において、癌細胞または形質転換細胞の増殖および/または生存に対するリード化合物の効果を、非癌性の正常細胞の増殖および/または生存に対するかかる化合物の効果と比較する。好ましくは、癌細胞または形質転換細胞の増殖および/または生存に対して示差的に影響を及ぼす化合物を抗増殖性薬剤として選択する。
リード化合物に曝したあとに患者細胞もしくは細胞株の生存および/または増殖を評価するために、当分野で周知の多くのアッセイを使用することができる。たとえば、細胞増殖は、ブロモデオキシウリジン(BrDU)の取り込み(たとえば、Hoshino他、1986、Int. J. Cancer、38、369;Campana他、1988、J. Immunol. Meth.、107:79参照)または(H)−チミジンの取り込み(たとえば、Chen, J.、1996、Oncogene、13:1395-403;Jeoung, J.、1995、J. Biol. Chem.、270:18367-73参照)を測定することによって、細胞を直接計数することによって、およびプロトオンコジーン(たとえばfos、myc)や細胞周期マーカー(Rb、cdc2、サイクリンA、D1、D2、D3、Eなど)のような既知の遺伝子の転写、翻訳もしくは活性の変化を検出することによってアッセイすることができる。このようなタンパク質およびmRNAのレベルならびに活性は、当分野で周知のいずれの方法によっても決定することができる。たとえば、タンパク質は、市販されている抗体を用いたウエスタンブロットまたは免疫沈降などの既知の免疫診断的方法によって定量することができる。mRNAは、たとえばノーザン分析、RNaseプロテクション、および逆転写と組み合わせたポリメラーゼ連鎖反応を用いた当分野で周知かつ慣用の方法を用いて定量することができる。細胞の生存度は、トリパンブルー染色または当分野で公知の他の細胞死もしくは生存度マーカーを用いて評価することができる。具体的な実施形態では、細胞の生存度を決定するために細胞のATPのレベルを測定する。分化は、たとえば形態の変化に基づいて視覚的に評価することができる。
リード化合物は、in vitroでの細胞の形質転換(または悪性表現型への進行)を阻害するその能力についても評価することができる。この実施形態では、形質転換細胞表現型を有する細胞をリード化合物と接触させ、形質転換表現型に関連する特徴(in vivoにおける腫瘍化能力に関連するin vitroでの特徴のセット)の変化について検査し、そのような変化としてはたとえば、それだけには限定されないが、軟寒天中でのコロニー形成、より円形の細胞形態、基層へのより緩やかな付着、接触阻止の損失、足場依存性の損失、プラスミノーゲンアクチベーターなどのプロテアーゼの放出、糖輸送の増大、血清要求の低減、または胎児性抗原の発現などが挙げられる(Luria他、1978、General Virology、第3版、John Wiley & Sons、New York、436-446ページ参照)。
侵襲性の損失または接着力の低下も、リード化合物の抗癌効果を実証するために評価することができる。たとえば、転移癌形成の一態様は、前癌細胞または癌細胞が疾患の原発部位から剥離し、続発部位で新規増殖コロニーを確立する能力である。細胞が末梢部位に浸潤する能力は、その細胞の癌状態の潜在性を反映している。侵襲性の損失は、たとえばE−カドヘリン媒介性の細胞−細胞接着の誘導を含めた当分野で公知の様々な技法によって測定することができる。このようなE−カドヘリン媒介性の接着は、表現型の逆転および侵襲性の損失をもたらすことが可能である(Hordijk他、1997、Science、278:1464-66)。
侵襲性の損失は、細胞遊走の阻害によってさらに検査することができる。様々な2次元および3次元の細胞マトリックスが市販されている(Calbiochem-Novabiochem Corp.、San Diego、CA)。マトリックスを通過するかまたはその中に向かう細胞遊走は、顕微鏡観察、経時的写真撮影もしくは動画撮影を用いて、または細胞遊走の測定を可能にする当分野の任意の方法によって検査することができる。関連する実施形態では、侵襲性の損失は、肝細胞成長因子(HGF)に対する応答によって検査する。HGF誘導細胞散乱は、マディンダービー・イヌ腎(MDCK)細胞などの細胞の侵襲性と相関する。このアッセイでは、HGFに応答した細胞の散乱活性を失った細胞集団を同定する(Hordijk他、1997、Science、278:1464-66)。
あるいは、侵襲性の損失は、化学走性チャンバ(Neuroprobe/Precision Biochemicals Inc.、Vancouver、BC)を通る細胞遊走によって測定することができる。このようなアッセイでは、化学誘引性物質をチャンバの片側(たとえば下のチャンバ)でインキュベートし、反対側(たとえば上のチャンバ)を分離しているフィルター上に細胞を蒔く。細胞が上のチャンバから下のチャンバへと渡るためには、細胞はフィルター中の小さな孔を通って能動的に遊走しなければならない。その後、遊走した細胞数のチェッカーボード解析を侵襲性と相関させることができる(たとえばOhnishi, T.、1993、Biochem. Biophys. Res. Commun.、193:518-25参照)。
特定の実施形態において、リード化合物は、PBMC(末梢血単核細胞)に対するその効果、たとえば限定されるものではないが、細胞傷害性、遺伝子発現の改変、および形態の改変について試験する。
4.6.2 動物モデルおよび毒性研究
本明細書中に記載のアッセイで同定されるリード化合物は、増殖性疾患の動物モデルを用いて生物学的活性について試験することができる。これらには、トランスジェニックマウスなどの、機能的リードアウトシステムと組み合わせた動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを含むよう遺伝子操作した動物が含まれる。このような動物モデル系としては、それだけには限定されないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、イヌ、ウサギなどが挙げられる。本発明の具体的な実施形態では、本発明の方法によって同定される化合物をマウスモデル系で試験する。このようなモデル系は、SCIDマウスモデルやトランスジェニックマウスなどのように、当業者に慣用され、かつ周知である。
本発明によって同定される化合物の抗血管形成活性は、血管新生化した腫瘍の様々な実験動物モデルを用いて決定することができる。本発明によって同定される化合物の抗腫瘍活性は、化合物を動物モデルに投与し、その化合物が前記動物モデル内での癌細胞の増殖または伝播を低減するのに有効であることを立証することによって決定することができる。一般に、ヒト癌の動物モデルの例には、それだけには限定されないがコンパニオン・アニマルの自発性腫瘍が含まれる(たとえばVailおよびMacEwen、2000、Cancer Invest、18(8):781-92参照)。
肺癌の動物モデルの例としては、それだけには限定されないが、ZhangおよびRoth (1994、In Vivo、8(5):755-69)に記載の肺癌動物モデルおよびp53機能が破壊されたトランスジェニックマウスモデル(たとえばMorris他、1998、J La State Med Soc、150(4):179-85参照)が挙げられる。乳癌の動物モデルとしては、それだけには限定されないが、サイクリンD1を過剰発現するトランスジェニックマウスが挙げられる(たとえばHosokawa他、2001、Transgenic Res、10(5):471-8参照)。結腸癌の動物モデルの例としては、それだけには限定されないが、TCRβおよびp53のダブルノックアウトマウスが挙げられる(たとえばKado他、2001、Cancer Res、61(6):2395-8参照)。膵臓癌の動物モデルの例としては、それだけには限定されないが、Panc02ネズミ膵臓腺癌の転移性モデル(たとえばWang他、2001、Int J Pancreatol、29(1):37-46参照)および皮下膵臓腫瘍中を発生させたnu−nuマウス(たとえばGhaneh他、2001、Gene Ther、8(3):199-208参照)が挙げられる。非ホジキンリンパ腫の動物モデルの例としては、それだけには限定されないが、重症複合型免疫不全(「SCID」)マウス(たとえばBryant他、2000、Lab Invest、80(4):553-73参照)およびIgHmu−HOX11トランスジェニックマウス(たとえばHough他、1998、Proc Natl Acad Sci USA、95(23):13853-8参照)が挙げられる。食道癌の動物モデルの例としては、それだけには限定されないが、ヒトパピローマウイルス16E7型オンコジーンを遺伝子組み換えしたマウスが挙げられる(たとえばHerber他、1996、J. Virol、70(3):1873-81参照)。結腸直腸癌の動物モデルの例としては、それだけには限定されないが、Apcマウスモデルが挙げられる(たとえば、FoddeおよびSmits、2001、Trends Mol Med、7(8):369-73ならびにKuraguchi他、2000、Oncogene、19(50):5755-63参照)。
本発明によって同定される化合物の毒性および/または有効性は、たとえばLD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物での標準的な薬学的手法によって決定することができる。本発明により同定される化合物の細胞毒性を評価するために用いることができる細胞および細胞系としては、限定されるものではないが、末梢血単核細胞(PBMC)、Caco−2細胞、およびHuh7細胞が挙げられる。毒性と治療効果との用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比として表すことができる。本発明によって同定される化合物で、高い治療指数を示すものが好ましい。本発明によって同定される化合物で毒性の副作用を示すものを使用してもよいが、未感染細胞の潜在的な損傷を最小限にし、したがって副作用を低減するために、罹患組織の部位をこのような薬剤の標的とさせる送達系を設計するよう注意すべきである。
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータを、ヒトで使用するために本発明によって同定される化合物の用量範囲を設定するのに使用することができる。このような薬剤の用量は、毒性をほとんど伴わないか全く伴わないでED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。用いる剤形および利用する投与経路に応じて、用量はこの範囲内で変動し得る。本発明の方法で用いるいかなる薬剤についても、治療上有効な用量は最初に細胞培養アッセイから見積もることができる。動物モデルにおいて、細胞培養物で決定されたIC50(すなわち症状の最大半値阻害が得られる化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように用量を設定し得る。このような情報を使用して、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。血漿レベルは、たとえば高速液体クロマトグラフィーによって測定してもよい。
4.6.3 同属種または類似体の設計
所望の生物学的活性を示す化合物は、有用な薬理学的活性を有する同属種または類似体を開発または設計するためのリード化合物として使用することができる。たとえば、リード化合物を同定したあと、分子モデリング技術を用いて、より有効であり得る該化合物の変種を設計することができる。分子モデリングシステムの例はCHARMおよびQUANTAプログラムである(Polygen Corporation、Waltham、MA)。CHARMは、エネルギー最小化および分子力学機能を行う。QUANTAは分子構造の構築、グラフィックモデリングおよび分析を行う。QUANTAにより、分子の互いに対する挙動のインタラクティブな構築、修飾、可視化、および分析が可能となる。
いくつかの論文が、特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピュータモデリングを概説しており、そのようなものとしては、Rotivinen他、1988、Acta Pharmaceutical Fennica、97:159-166;Ripka、1998、New Scientist、54-57;McKinalyおよびRossmann、1989、Annu. Rev. Pharmacol. Toxiciol.、29:111-122;PerryおよびDavies、OSAR: Quantitative Structure-Activity Relationships in Drug Design、189-193ページ(Alan R. Liss, Inc.、1989);LewisおよびDean、1989、Proc. R. Soc. Lond.、236:125-140および141-162;Askew他、1989、J. Am. Chem. Soc.、111:1082-1090などがある。化学物質のスクリーニングを行い、グラフィックに示す他のコンピュータプログラムが、BioDesign,Inc.(Pasadena、California)、Allelix,Inc.(Mississauga、Ontario、Canada)、およびHypercube,Inc.(Cambridge、Ontario)などの会社から市販されている。これらは主に特定のタンパク質に対して特異的な薬物への適用のために設計されているが、任意の同定された領域に対して特異的な薬物を設計するために適合させることができる。類似体および同属種は、上述した生物学的活性のスクリーニングを用いて、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼへの結合について試験することができる。あるいは、スクリーニングによって生物学的活性がほとんどないか全くないと確認されたリード化合物を使用しても、生物学的活性を有する化合物の類似体および同属種を設計することが可能である。
4.6.4 真菌アッセイ
動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに対するリード化合物の特異性を測定するために、種々の真菌アッセイを実施することができる。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼについての上述した任意のアッセイを用いて、真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに対するリード化合物の効果を評価しうる。動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼおよび真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの両方に影響を及ぼす化合物は、癌患者における癌の1もしくは複数の症状および/または真菌感染症を治療、予防または寛解するために用いることができる。
4.6.4.1 標識した基質を用いた真菌細胞系アッセイ
FRET−細胞に基づいたアッセイ(細胞系アッセイ)は、真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を真菌細胞内に微量注入して、その真菌細胞を化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、または前記基質は5’末端がクエンチャーで標識され、3’末端がフルオロフォアで標識されているステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、その結果検出可能な蛍光シグナルが生成される。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能な蛍光シグナルの生成が阻害または低減する。内在性エンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能な蛍光シグナルの生成が増大される。
あるいは、FRET−細胞系アッセイは、真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を真菌細胞内に微量注入して、その真菌細胞を化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、または前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップによって実施し得る。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、蛍光ドナー部分の波長における蛍光ドナー部分と蛍光アクセプター部分とによる検出可能な蛍光シグナルが生成される。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が増強される。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が低減する。好ましい実施形態において、陰性対照(たとえばPBS、または基質の切断に対する効果がないことが知られている薬剤)および陽性対照(例えば基質の切断に効果を有することが知られている薬剤)を本明細書に記載のFRET真菌細胞系アッセイに含める。
真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによって認識および切除される任意のヌクレオチド配列を本明細書中に記載のFRETアッセイの真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質として利用し得る。たとえば、バルジ−ヘリックス−バルジ構造または前駆体tRNAの成熟ドメインを含むヌクレオチド配列を本明細書中に記載のFRETアッセイにおいて真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質として利用し得る。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼによって認識および切除されるヌクレオチド配列は、10個のヌクレオチド、15個のヌクレオチド、20個のヌクレオチド、25個のヌクレオチド、25個のヌクレオチド、30個のヌクレオチド、40個のヌクレオチド、45個のヌクレオチド、50個のヌクレオチド、55個のヌクレオチド、60個のヌクレオチド、65個のヌクレオチド、75個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、125個のヌクレオチド、150個のヌクレオチド、またはそれ以上を含み得る。具体的な実施形態では、本明細書中に記載のFRETアッセイで利用するtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質はtRNAイントロンを含む。イントロンはバルジ−ヘリックス−バルジコンホメーションを含み得る。好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列はイントロンを含む成熟ドメインを含む。
本発明によれば、1対の蛍光ドナーおよびアクセプター化合物を用いる。基質は蛍光ドナー部分および蛍光アクセプター部分の異なる対を用いて標識することができる。たとえば、2対、3対、4対、5対以上の蛍光ドナー部分および蛍光アクセプター部分を使用することができる。この場合、少なくとも1対は他の対のうち少なくとも1対の蛍光アクセプター部分の発光スペクトルとは異なる発光スペクトルを有する蛍光アクセプター部分を含むことが好ましい。あるいは、少なくとも3対用いる場合は、第1対、第2対および第3対の蛍光アクセプター部分は他の2対の蛍光アクセプター部分とは異なる発光スペクトルを有する。基質を蛍光アクセプター部分、蛍光ドナー部分および/またはクエンチャーで標識する方法は当分野で周知である(たとえば、米国特許第6,472,156号、同第6,451,543号、同第6,348,322号、同第6,342,379号、同第6,323,039号、同第6,297,018号、同第6,291,201、同第6,280,981号、同第5,843,658号、および同第5,439,797号参照。これらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。標識した基質は、当業者に周知の技法を利用して真菌細胞(好ましくは酵母)内に微量注入することができる。
FRET細胞系アッセイにおける真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに対する化合物の活性は、当業者に周知の技法を用いて基質の蛍光発光スペクトルを測定することにより決定しうる。測定される蛍光発光スペクトルは、部分的には使用するフルオロフォアの種類に応じて異なる。
4.6.4.2 標識した基質を用いた真菌無細胞系アッセイ
FRET無細胞系アッセイは、真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を真菌抽出物(たとえば酵母抽出物)または精製された真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ、および化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端がフルオロフォアで標識され、3’末端がクエンチャーで標識されているか、あるいは前記基質は3’末端がフルオロフォアで標識され、5’末端がクエンチャーで標識されているステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器で基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、その結果検出可能な蛍光シグナルが生成される。tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能な蛍光シグナルの生成が阻害または低減される。内在性エンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能な蛍光シグナルの生成が増大される。
あるいは、FRET無細胞系アッセイは、真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質を無細胞抽出物または精製された真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ、および化合物と接触させるステップであって、前記基質は5’末端が蛍光ドナー部分で標識され、3’末端が蛍光アクセプター部分で標識されているか、あるいは前記基質は5’末端が蛍光アクセプター部分で標識され、3’末端が蛍光ドナー部分で標識されているステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって基質の蛍光を測定するステップとによって実施し得る。真菌抽出物中のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、蛍光ドナー部分の波長における蛍光ドナー部分と蛍光アクセプター部分とによる検出可能な蛍光シグナルが生成される。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害または低減する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を増大する。内在性tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が低減する。好ましい実施形態において、陰性対照(たとえばPBS、または基質の切断に対する効果がないことが知られている別の薬剤)および陽性対照(例えば基質の切断に効果を有することが知られている薬剤)を本明細書に記載のFRET真菌無細胞系アッセイに含める。
本発明によれば、1対の蛍光ドナー部分およびアクセプター部分を用いて基質を標識することができる。基質は蛍光ドナー部分および蛍光アクセプター部分の異なる対を用いて標識することができる。たとえば、2対、3対、4対、5対以上の蛍光ドナー部分および蛍光アクセプター部分を使用することができる。この場合、少なくとも1対は他の対のうち少なくとも1対の蛍光アクセプター部分の発光スペクトルとは異なる発光スペクトルを有する蛍光アクセプター部分を含むことが好ましい。あるいは、少なくとも3対用いる場合は、第1対、第2対および第3対の蛍光アクセプター部分は他の2対の蛍光アクセプター部分とは異なる発光スペクトルを有する。基質を蛍光アクセプター部分、蛍光ドナー部分および/またはクエンチャーで標識する方法は当分野で周知である(たとえば、米国特許第6,472,156号、同第6,451,543号、同第6,348,322号、同第6,342,379号、同第6,323,039号、同第6,297,018号、同第6,291,201号、同第6,280,981号、同第5,843,658号、および同第5,439,797号参照。これらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
FRET真菌抽出物アッセイにおける真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼに対する化合物の活性は、当業者に周知の技法を用いて基質の蛍光発光スペクトルを測定することにより決定しうる。測定される蛍光発光スペクトルは、部分的には使用するフルオロフォアの種類に応じて異なる。
特定の実施形態において、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニットをフルオロフォアで標識し、そしてtRNA基質の動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼとの結合によってFRETが生じるようにtRNA基質をフルオロフォアで標識する。続いて、化合物をそれらがFRETを阻害する能力についてアッセイする。化合物が標識した基質と動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼとの間のFRETを阻害または低減する場合には、その化合物を動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ−tRNA相互作用の阻害剤として同定する。続いて、当業者に周知の任意のアッセイ(例えば上記参照)により動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのエンドヌクレアーゼ活性を阻害する能力についてこの化合物をアッセイしうる。
4.6.4.3 標識した酵素を用いた真菌細胞系アッセイ
FRET−細胞に基づいたアッセイは、フルオロフォアで標識した真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの第1のサブユニット(たとえばSEN2)およびクエンチャーで標識した真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの別の第2のサブユニット(たとえばSEN34)を真菌細胞内に微量注入またはトランスフェクションするステップと、その真菌細胞を化合物と接触させるステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの蛍光を測定するステップとによって実施し得る。好ましくは、微量注入またはトランスフェクトした細胞は、真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの1以上のサブユニットを欠損するものである。標識したサブユニットから、真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成により、検出可能な蛍光の低減が生じる。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を阻害または低減する化合物は、陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能な蛍光シグナルの生成を増大する。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を増強する化合物は、陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能な蛍光を低減または阻害する。
あるいは、FRET−細胞系アッセイは、蛍光ドナー部分で標識した真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの第1のサブユニット(たとえばSEN2)および蛍光アクセプター部分で標識した真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの別の第2のサブユニット(たとえばSEN34)を真菌細胞内に微量注入またはトランスフェクトするステップと、その真菌細胞を化合物と接触させるステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって真菌tRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの蛍光を測定するステップによって実施し得る。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成により、蛍光ドナー部分の波長における蛍光ドナー部分と蛍光アクセプター部分とによる検出可能な蛍光シグナルが生成する。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を阻害または低減する化合物は、陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光が低減しうる。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を増強する化合物は、陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を増大する。好ましい実施形態において、陰性対照(たとえばPBS、または基質の切断に対する効果がないことが知られている薬剤)および陽性対照(例えば基質の切断に効果を有することが知られている薬剤)を本明細書に記載のFRET真菌細胞系アッセイに含める。
真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニットを蛍光アクセプター部分、蛍光ドナー部分および/またはクエンチャーで標識する方法は当分野で周知である(たとえば、米国特許第6,472,156号、同第6,451,543号、同第6,348,322号、同第6,342,379号、同第6,323,039号、同第6,297,018号、同第6,291,201、同第6,280,981号、同第5,843,658号、および同第5,439,797号参照。これらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
4.6.4.4 標識した酵素を用いた他の真菌アッセイ
FRETアッセイは、フルオロフォアで標識した真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの第1のサブユニット(たとえばSEN2)およびクエンチャーで標識した真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの別の第2のサブユニット(たとえばSEN34)を、該エンドヌクレアーゼの形成を助ける条件下でin vitroにおいて化合物と接触させるステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器で真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの蛍光を測定するステップとによって実施し得る。標識したサブユニットから、真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成により、検出可能な蛍光シグナルが低減しうる。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を阻害または低減する化合物は、陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能な蛍光シグナルの生成を増大する。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を増強する化合物は、陰性対照(たとえばPBS)と比較して検出可能な蛍光を低減または阻害しうる。
あるいは、FRET真菌アッセイは、蛍光ドナー部分で標識した真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの第1のサブユニット(たとえばSEN2)および蛍光アクセプター部分で標識した真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの別の第2のサブユニット(たとえばSEN34)を、該エンドヌクレアーゼの形成を助ける条件下でin vitroにおいて化合物と接触させるステップと、たとえばViewluxやAnalystなどの蛍光発光検出器によって真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの蛍光を測定するステップとによって実施し得る。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成により、蛍光ドナー部分の波長における蛍光ドナー部分と蛍光アクセプター部分とによる検出可能な蛍光シグナルが生成しうる。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を阻害または低減する化合物は、陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を低減しうる。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの形成を増強する化合物は、陰性対照(たとえばPBS)と比較して蛍光ドナー部分の波長における蛍光アクセプター部分の蛍光発光を増大しうる。好ましい実施形態において、陰性対照(たとえばPBS、または基質の切断に対する効果がないことが知られている別の薬剤)および陽性対照(例えば基質の切断に効果を有することが知られている薬剤)を本明細書に記載のFRET真菌アッセイに含める。
4.6.4.5 蛍光偏光アッセイ
真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に対する化合物の効果は、蛍光偏光に基づくアッセイを利用して決定してもよい。このようなアッセイは、真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの蛍光標識した基質を、真菌の無細胞抽出物(好ましくは真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ抽出物)または精製された真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼおよび化合物または化合物ライブラリのメンバーと接触させるステップと、蛍光偏光放射を測定することによって実施する。このアッセイの重要な側面は、アッセイで使用する基質の大きさが、基質の切断に引き続く発光した蛍光偏光の変化を識別するのに十分に大きいことである。無細胞抽出物中の真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼまたは精製された真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼは基質を切断し、その結果放射偏光の強度の変化がもたらされる。蛍光標識した基質は、平面偏光で励起した際には、励起と発光との間の時間に回転しない場合にのみ固定平面内で光を発する。放射光の偏光解消の度合いは、基質の大きさに依存する基質の回転量に依存する。小さな基質は、励起された時点と蛍光を発した時点との間に、大きな基質よりも多く回転する。小さな蛍光標識基質は高速に回転し、放射光の偏光解消が起こる。大きな蛍光標識基質はよりゆっくりと回転し、偏光を保った放射光がもたらされる。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を阻害する化合物は基質の切断を阻害または低減し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して、基質の回転が低減し、その結果偏光を保った放射光が生じる。真菌のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性を増強する化合物は基質の切断を亢進し、したがって陰性対照(たとえばPBS)と比較して、基質の回転が増大し、その結果より多くの放射光が偏光解消する。
光の強度は90°離れた平面内で測定され、多くの場合水平強度および垂直強度と呼ばれる。一部の機器では、励起フィルターは可動であり、発光フィルターは固定されている。特定の他の機器では、水平強度および垂直強度は光ファイバーによって同時に測定する。研究グレードの蛍光偏光機器がたとえばPanVera、BMG Lab Technologies、およびLJL Biosystemsから市販されている。Abottは臨床検査機器を提供している。
蛍光偏光値は以下の式によって決定される:
偏光=強度 垂直 −強度 水平
強度垂直+強度水平
蛍光偏光値はほとんどの場合1000で割算し、ミリ偏光単位(mP)として表される。
4.6.4.6 抗真菌アッセイ
当分野で周知の技法を使用してリード化合物の抗真菌作用を評価することができる。本発明は、米国臨床検査標準化委員会(NCCLS)が推奨する抗真菌感受性試験の方法(National Committee for Clinical Laboratories Standards、1995、Proposed Standard M27T、Villanova、Pa.(これらのすべてはその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)を参照されたい)および当業者に公知の他の方法(Pfaller他、1993、Infectious Dis. Clin. N. Am.、7:435-444)を包含する。本発明は、当業者に周知のプロトコルを用いた大量希釈(macrodilution)法および/または微量希釈(microdilution)法を使用して本発明のリード化合物の抗真菌活性を測定することを包含する(たとえば、Clancy他、1997、Journal of Clinical Microbiology、35(11):2878-82;Ryder他、1998、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、42(5):1057-61;米国特許第5,521,153号;同第5,883,120号、同第5,521,169号参照、これらのすべてはその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。簡単に説明すると、真菌株を適切な液体培地中で培養し、使用した特定の真菌株に応じた適切な温度で、やはり使用した特定の真菌株に応じた所定の時間、生育させる。その後、光度測定により接種菌を調製し、懸濁液の濁度を標準(たとえばマクファーランド標準)の濁度に合わせる。接種菌の濁度に対するリード化合物の効果を目視または分光光度測定によって決定する。培養物の濁度を決定することによって測定した接種菌の可視的な成長を阻止するリード化合物の最低濃度として定義される、リード化合物の最小阻害濃度(MIC)を決定する。
本発明はまた、本発明のリード化合物の抗真菌活性を測定するための比色アッセイを包含する。本発明の方法に用いるための1つの例示的な比色アッセイは、Pfaller他(1994、Journal of Clinical Microbiology、32(8):1993-6、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる;Tiballi他、1995、Journal of Clinical Microbiology、33(4):915-7も参照されたい)に記載されている。このアッセイでは、酸化−還元指示薬(Alamar Biosciences,Inc.、Sacramento CA)を用いた比色終点を使用する。
本発明は、既に記載されている方法論を用いて本発明のリード化合物の抗真菌活性を測定するための光度アッセイを包含する(Clancy他、1997、Journal of Clinical Microbiology、35(11):2878-82;Jahn他、1995、Journal of Clinical Microbiology、33(3):661-667参照、これらのそれぞれはその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。光度アッセイは、臭化3−(4,5−ジメチル−2チアゾリル)−2,5,−ジフェニル−2H−テトラゾリウム(MTT)のホルマザンへの還元によって、生存真菌によるミトコンドリア呼吸を定量することに基づいている。このアッセイによって決定されるMICは、光学密度の最初の急落を伴うリード化合物の最も高い濃度と定義される。一部の実施形態では、大量希釈、微量希釈およびMTTアッセイを平行して用いて本発明の化合物を抗真菌活性についてアッセイする。
本発明のリード化合物の抗真菌特性は、真菌溶解アッセイから、ならびに、とりわけ成長阻害アッセイ、蛍光に基づく真菌生存度アッセイ、フローサイトメトリー分析、および当業者に公知の他の標準的なアッセイを含めた他の方法によって決定してもよい。本発明により試験対象となる真菌としては、限定されるものではないが、ブラストマイセス属(ブラストマイセス・デルマティティス(Blastomyces dermatitis)等)、パラコクシジオイデス属(パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)等)、スポロスリックス属(スポロスリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)等)、クリプトコッカス属、カンジダ属(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)およびカンジダ・グラブラーラ(Candida glabrala)等)、アスペルギルス属(アスペルギルス・フミガラス(Aspergillus fumigarus)およびアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)等)、ヒストプラスマ属(ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)等)、クリプトコッカス属(クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)等)、バイポラリス属、クラドフィアロフォーラ属(Cladophialophora)、クラドスポリウム属、ドレッシュレラ属(Drechslera)、エクソフィアラ属、フォンセセア属、フィアロフォーラ属、キシロハイファ属(Xylohypha)、オクロコニス属(Ochroconis)、リノクラジエラ属(Rhinocladiella)、スコレコバシジウム属(Scolecobasidium)、およびワンギエラ属(Wangiella)が挙げられる。
4.6.5 突然変異誘発研究
本発明の方法によって同定される化合物が動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性をモジュレートするために必要な動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのサブユニット(もしくは複数のサブユニット)および/または動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質のヌクレオチド配列は、当業者に周知の標準的な突然変異誘発技術を利用して決定することができる。1または複数の変異(たとえば、欠失、付加および/または置換)を動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼサブユニット中に導入してもよく、そして化合物の存在下または非存在下における動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に対する変異の効果を、本明細書中に記載のアッセイを用いて決定することができる。特に、1または複数の変異(たとえば、欠失、付加、および/または置換)を動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質中にも導入してもよく、そして化合物の存在下または非存在下における動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性に対する変異の効果を、本明細書中に記載のアッセイを用いて決定することができる。例えば、1または複数の変異(たとえば、欠失、付加および/または置換)を、レポーター遺伝子のオープンフレームリーディング内のtRNAイントロンのヌクレオチド配列中に導入してもよく、本明細書中に記載のレポーター遺伝子に基づくアッセイにおけるレポーター遺伝子の発現に対する効果を決定することができる。tRNAイントロン中の変異が、レポーター遺伝子の発現をモジュレートする化合物の能力に影響を与える場合は、変異した配列がtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの活性において役割を果たしている。
当業者に公知の標準的な技術を使用して、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのヌクレオチド配列および/または動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質のヌクレオチド配列中に変異を導入することができき、そのような技術としてたとえば部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発が挙げられる。具体的な実施形態では、75個未満の核酸残基の置換、50個未満の核酸残基の置換、45個未満の核酸残基の置換、40個未満の核酸残基の置換、35個未満の核酸残基の置換、30個未満の核酸残基の置換、25個未満の核酸残基の置換、20個未満の核酸残基の置換、15個未満の核酸残基の置換、10個未満の核酸残基の置換、または5個未満の核酸残基の置換を、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのヌクレオチド配列および/または動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼの基質のヌクレオチド配列中に導入する。
4.7 増殖性疾患を治療/予防するための同定化合物の使用
本発明は、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の予防、治療、管理または寛解方法であって、本発明の方法によって同定される1もしくは複数の化合物を、それを必要としている対象に投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、本発明は、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の予防、治療、管理または寛解方法であって、本発明の方法によって同定される1もしくは複数の化合物を、予防上または治療上有効な量の用量でそれを必要としている対象に投与することを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明によって同定した化合物は、このような化合物が以前に前記増殖性疾患を予防、治療、管理または寛解させるために使用されたことがある場合は、前記増殖性疾患または1もしくは複数のその症状を予防、治療、または寛解させるために投与しない。
本発明はまた、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の予防、治療、管理または寛解方法であって、本明細書中に記載のスクリーニング方法を利用して同定される1もしくは複数の化合物と、前記増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の予防、治療、管理または寛解に現在使用されている、使用されていた、あるいは有用であることが知られている(それだけには限定されないが、以下のセクション4.6.1に記載の予防剤または治療剤)1もしくは複数の他の治療(たとえば予防剤または治療剤)とを、それを必要としている対象に施すことを含む方法を提供する。本発明の併用療法の治療(たとえば予防剤または治療剤)は、順次または同時に施すことができる。具体的な実施形態では、本発明の併用療法は、本発明により同定された化合物と、前記化合物と同じ作用機構を有する少なくとも1つの他の治療とを含む。別の実施形態では、本発明の併用療法は、本発明の方法により同定された化合物と、前記化合物とは異なる作用機構を有する少なくとも1つの他の治療(たとえば予防剤または治療剤)とを含む。本発明の併用療法は、相加または相乗効果を有して化合物と一緒に機能することによって本発明の化合物の予防効果または治療効果を改善する。本発明の併用療法は、それぞれの治療(たとえばそれぞれの予防剤または治療剤)に関連する副作用を軽減させる。
併用療法の予防剤または治療剤は、同じ医薬組成物中に含めて対象に投与することができる。あるいは、併用療法の予防剤または治療剤は、別々の医薬組成物中で対象に同時に投与することができる。予防剤または治療剤は、同一または異なる投与経路によって対象に投与し得る。
具体的な実施形態では、動物界のtRNAスプライシング経路内の酵素の活性を阻害または低減する、本明細書中に記載のスクリーニングアッセイで同定される1または複数の化合物を含む医薬組成物を、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状を予防、治療、管理または寛解するために対象、好ましくはヒトに投与する。本発明によれば、医薬組成物は、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の予防、治療、管理または寛解に現在使用されている、使用されていた、あるいは有用であることが知られている1または複数の治療(たとえば予防剤または治療剤)も含み得る。
本発明によって同定される化合物は、増殖性疾患の一連の治療の第1、第2、第3、第4または第5治療として使用し得る。本発明は、このような増殖性疾患の従来の治療に対して不応性の対象において、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状を治療、管理または寛解させる方法であって、本発明の方法によって同定される化合物を、予防上または治療上有効な量の用量で前記対象に投与することを含む方法を提供する。特に、癌が、ある治療に対して不応性であると決定され得ることは、癌細胞の少なくともある程度の有意な部分がその治療に応答して死滅しないかまたはその細胞分裂が停止しないことを意味する。このような決定は、このような文脈中で当分野で認められる「不応性」の意味を用いて、癌細胞に対する処置の有効性をアッセイする当技術分野で公知の任意の方法によってin vivoまたはin vitroで行うことができる。具体的な実施形態では、癌細胞の数が有意に低下していないか、または増加している場合に癌は不応性である。
本発明は、ある増殖性疾患の既存の単一薬剤治療に不応性の対象における該増殖性疾患の1もしくは複数のその症状の治療、管理または寛解方法であって、本発明によって同定される化合物の予防上または治療上有効な量の用量と、予防上または治療上有効な量の用量の1または複数の他の治療(たとえば予防剤または治療剤)とを前記対象に投与することを含む方法を提供する。本発明はまた、増殖性疾患または1もしくは複数のその症状の治療または管理方法であって、本発明によって同定される化合物を、任意の他の治療(たとえば、放射線療法、化学療法または手術)と組み合わせて、他の治療に不応性であると証明されたが既にその治療を受けていない患者に投与することを含む方法を提供する。本発明はまた、増殖性疾患に罹患しており、以前に他の治療を受けたことが原因で免疫抑制状態にある患者の治療または管理方法を提供する。本発明はまた、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、および/もしくは生物学的療法/免疫療法では毒性がありすぎると証明されたか、または証明され得る、すなわち、それらが治療または管理される対象にとって容認できないか、または耐えられない副作用をもたらす場合に、癌などの増殖性疾患を治療または管理する別の方法を提供する。さらに、本発明は、本発明によって同定される化合物を投与することによって、以前に治療されており、かつ疾患活動性がない患者において癌などの増殖性疾患の再発を予防する方法を提供する。
本発明に包含される方法によって治療することができる増殖性疾患には、それだけには限定されないが、新生物、腫瘍、転移、または無制御の細胞増殖を特徴とするいかなる疾患もしくは障害(たとえば乾癬および肺繊維症)も含まれる。癌は原発性または転移癌であってよい。本発明に包含される方法によって治療することができる癌の具体例としては、それだけには限定されないが、頭部、頚部、眼、口、咽喉、食道、胸部、骨、肺、結腸、直腸、胃、前立腺、乳房、卵巣、腎臓、肝臓、膵臓、および脳の癌が挙げられる。さらなる癌としては、それだけには限定されないが、以下のものが挙げられる:白血病(たとえばそれだけには限定されないが、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(たとえば骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病性白血病および脊髄形成異常症候群)、慢性白血病(たとえば、それだけには限定されないが、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病);真性赤血球増加症;リンパ腫(たとえば、それだけには限定されないが、ホジキン病、非ホジキン病);多発性骨髄腫(たとえば、それだけには限定されないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、孤立性形質細胞腫および髄外性形質細胞腫);ワルデンストレームマクログロブリン血症;意義未確定の単クローン性免疫グロブリン血症;良性単クローン性免疫グロブリン血症;重鎖病;骨および結合組織の肉腫(たとえば、それだけには限定されないが、骨肉腫(bone sarcoma)、骨肉腫(osteosarcoma)、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨線維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma)(血管肉腫(hemangiosarcoma))、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管血管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫);脳腫瘍(たとえば、それだけには限定されないが、神経膠腫、星細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、乏突起膠腫、非グリア腫瘍、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫);乳癌(たとえば、それだけには限定されないが、腺癌、小葉(小細胞)癌、腺管内癌、髄様乳癌、粘液性乳癌、管状乳癌、乳頭乳癌、パジェット病、および炎症性乳癌);副腎癌(たとえば、それだけには限定されないが、褐色細胞腫および副腎皮質癌);甲状腺癌(たとえば、それだけには限定されないが、乳頭状または濾胞性甲状腺癌、髄様甲状腺癌および未分化甲状腺癌);膵臓癌(たとえば、それだけには限定されないが、膵島細胞腫、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌性腫瘍、およびカルチノイドまたは島細胞腫);下垂体癌(たとえば、それだけには限定されないが、クッシング病、プロラクチン分泌性腫瘍、末端肥大症、および尿崩症);眼癌(たとえば、それだけには限定されないが、眼球黒色腫(虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、および毛様体黒色腫など)、ならびに網膜芽細胞腫);膣癌(たとえば扁平上皮癌、腺癌、および黒色腫);外陰部癌(たとえば扁平上皮癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、およびパジェット病);子宮頸癌(たとえば、それだけには限定されないが、扁平上皮癌および腺癌);子宮癌(たとえば、それだけには限定されないが、子宮内膜癌および子宮肉腫);卵巣癌(たとえば、それだけには限定されないが、上皮性卵巣癌、境界腫瘍、生殖細胞腫瘍、および間質腫瘍);食道癌(たとえば、それだけには限定されないが、扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘膜表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、疣状癌、および燕麦細胞(小細胞)癌);胃癌(たとえば、それだけには限定されないが、腺癌、菌状(ポリープ状)、潰瘍性、表層伝播性、拡散伝播性、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および癌肉腫);結腸癌;直腸癌;肝臓癌(たとえば、それだけには限定されないが、肝細胞癌および肝芽腫);胆嚢癌(たとえば腺癌);胆管癌(たとえば、それだけには限定されないが、乳頭性、結節性、および拡散性);肺癌(たとえば非小細胞肺癌、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌および小細胞肺癌);精巣癌(たとえば、それだけには限定されないが、胚腫瘍、精上皮腫、未分化、標準型(典型型)、精母細胞性、非精上皮腫、胚性癌腫、奇形腫癌、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍));前立腺癌(たとえば、それだけには限定されないが、腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫);陰茎癌;口腔癌(たとえば、それだけには限定されないが、扁平上皮癌);基底癌;唾液腺癌(たとえば、それだけには限定されないが、腺癌、粘膜表皮癌、および腺様嚢胞癌);咽頭癌(たとえば、それだけには限定されないが、扁平上皮癌および疣状癌);皮膚癌(たとえば、それだけには限定されないが、基底細胞癌、扁平上皮癌および黒色腫(表層伝播性黒色腫、結節状黒色腫、黒子悪性黒色腫、末端性黒子性黒色腫));腎臓癌(たとえば、それだけには限定されないが、腎細胞癌、腺癌、副腎腫、線維肉腫、移行上皮癌(腎盂および/または尿管));ウィルムス腫瘍;膀胱癌(たとえば、それだけには限定されないが、移行上皮癌、扁平上皮癌、腺癌、癌肉腫)。さらに、癌としては、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌および乳頭腺癌が挙げられる(このような障害の総説には、Fishman他、1985、Medicine、第2版、J.B. Lippincott Co.、PhiladelphiaおよびMurphy他、1997、Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery、Viking Penguin、Penguin Books U.S.A., Inc.、米国を参照)。また、アポトーシスの異常によって引き起こされる癌も本発明の方法および組成物によって治療することが企図される。このような癌には、それだけには限定されないが、濾胞性リンパ腫、p53変異を有する癌、乳房、前立腺および卵巣のホルモン依存性腫瘍、ならびに前癌性の病変(たとえば家族性大腸ポリープ症および骨髄異形成症候群)が挙げられる。
4.7.1 他の抗癌治療
本発明は、癌または1もしくは複数のその症状の予防、治療、管理または寛解方法であって、本発明の方法によって同定される1もしくは複数の化合物および1または複数の治療(たとえば予防剤または治療剤)を、それを必要としている対象に投与することを含む方法を提供する。治療剤または予防剤には、それだけには限定されないが、ペプチド、ポリペプチド、融合タンパク質、核酸分子、小分子、模倣剤、合成薬、無機分子、および有機分子が含まれる。癌または1もしくは複数のその症状の予防、治療、管理または寛解に有用であることが知られている、あるいはそのために使用されてきた、または現在使用されている、任意の治療(たとえば、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、および/または生物学的療法/免疫療法)を、本発明によって同定される化合物と組み合わせて使用することができる。このような薬剤(すなわち抗癌剤)の例としては、それだけには限定されないが、血管形成阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤および免疫調節剤(化学療法剤など)が挙げられる。血管形成阻害剤(すなわち抗血管形成剤)としては、それだけには限定されないが、以下のものが挙げられる:アンジオスタチン(プラスミノーゲン断片);抗血管形成性抗トロンビンIII;アンジオザイム(angiozyme);ABT−627;Bay12−9566;ベネフィン;ベバシズマブ;BMS−275291;軟骨由来阻害剤(CDI);CAI;CD59補体断片;CEP−7055;Col3;コンブレタスタチンA−4;エンドスタチン(コラーゲンXVIII断片);フィブロネクチン断片;Gro−β;ハロフギノン;ヘパリナーゼ;ヘパリン六糖断片;HMV833;ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG);IM−862;インターフェロンα/β/γ;インターフェロン誘導性タンパク質(IP−10);インターロイキン−12;クリングル5(プラスミノーゲン断片);マリマスタット;メタロプロテイナーゼ阻害剤(TIMP);2−メトキシエストラジオール;MMI270(CGS27023A);MoAb IMC−1C11;ネオバスタット;NM−3;パンゼム;PI−88;胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤;プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤;血小板因子−4(PF4);プリノマスタット;プロラクチン16kD断片;プロリフェリン(Proliferin)関連タンパク質(PRP);PTK787/ZK222594;レチノイド;ソリマスタット(solimastat);スクワラミン;SS3304;SU5416;SU6668;SU11248;テトラヒドロコルチゾール−S;テトラチオモリブデ―ト;サリドマイド;トロンボスポンジン−1(TSP−1);TNP−470;トランスフォーミング増殖因子−β;バスキュロスタチン(vasculostatin);バソスタチン(vasostatin)(カルレティキュリン断片);ZD6126;ZD6474;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)およびビスホスフォネート。具体的な実施形態において、抗血管形成剤には、インテグリンαβに免疫特異的に結合する抗体またはそのフラグメントは含まれない。
本発明の方法によって使用することができる抗癌剤の具体例としては、それだけには限定されないが、以下のものが挙げられる:アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;アメタントロンアセテート;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アンスラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ビスナフィドジメシレート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;アクチノマイシンC(cactinomycin);カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クリスナトールメシレート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン(dactinomycin);ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニンメシレート;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;ドロモスタノロンプロピオネート;ヅアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロキシウリジン;フルダラビンリン酸塩;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモフォシン;インターロイキンII(組換えインターロイキンII、すなわちrIL2を含む)、インターフェロンα−2a;インターフェロンα−2b;インターフェロンα−n1;インターフェロンα−n3;インターフェロンβ−Ia;インターフェロンγ−Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチドアセテート;レトロゾール;ロイプロリドアセテート;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソルナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコル;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;メゲストロールアセテート;メレンゲストロールアセテート;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスパー(mitosper);ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;プロマイシン;プロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;トレストロンアセテート;トリシリビンリン酸塩;トリメトレキセート;トリメトレキセートグルクロン酸塩;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジン硫酸塩;ビングリシネート硫酸塩;ビンロイロシン硫酸塩;ビノレルビン酒石酸塩;ビンロシジン硫酸塩;ビンゾリジン硫酸塩;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩。他の抗癌薬としては、それだけには限定されないが、以下のものが挙げられる:20−エピ−1,25ジヒドロキシビタミンD3;5−エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL−TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管形成阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタリレリックス;抗背方化形態発生タンパク質−1;抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシネート;アポトーシス遺伝子調節物質;アポトーシス制御物質;アプリン酸;ara−CDP−DL−PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン類;ベンゾイルスタウロスポリン;βラクタム誘導体;β−アレチン;βクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジニルスペルミン;ビサナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルフォキシミン;カルシポトリオール;カルフォスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリポックスIL−2;カペシタビン;カルボキサミド−アミノ−トリアゾール;カルボキサミドトリアゾール;CaRestM3;CARN700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリックス;クロリン類;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;cis−ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クランベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタアントラキノン類;シクロプラタム;シペミシン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;ジヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシフォスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ−5−アザシチジン;ジヒドロタキソール、9−;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロミチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エピリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシドリン酸塩;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;フルオロダウノルニシン塩酸塩;ホルフェニメックス;ホルメスタン;ホストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;ガリウム硝酸塩;ガロシタビン;ガニレリックス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモフォシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン類;イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様増殖因子−1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン類;インターロイキン類;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポミアノール、4−;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン−N3酢酸;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;レンチナン硫酸塩;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン;レバミゾール;リアロゾール;直鎖状ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリンアミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解性ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコル;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;マイトトキシン線維芽細胞増殖因子−サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリル脂質A+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;多腫瘍サプレッサー1−ベースの治療法;マスタード抗癌剤;ミカパーオキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N−アセチルジナリン;N−置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調節物質;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン;O6−ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド類;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導剤;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペグアスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリスルフェートナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;パーフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;
フェニルアセテート;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニル;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤;白金複合体;白金化合物;白金−トリアミン複合体;ポリフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニソン;プロピルビスアクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;タンパク質A−ベースの免疫調節物質;タンパク質キナーゼC阻害剤;タンパク質キナーゼC阻害剤、ミクロアルガル;タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン類;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras−GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;レニウムRe186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチンアミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣体;セムスチン;セネセンス由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達調節物質;一本鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプテート;ナトリウムフェニルアセテート;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルフォシン酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクワラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメライシン阻害剤;スルフィノシン;スーパー活性血管活性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;5−フルオロウラシル;ロイコボリン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾマイド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;サリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;サイマルファシン;サイモポエチン受容体アゴニスト;サイモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;チタノセン二塩化物;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキセート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;トリホスチン類;UBC阻害剤;ウベニメックス;尿生殖洞由来増殖阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子治療;サリドマイド;ベラレソール;ベラミン;ベルディンス;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマー。
本発明はまた、本発明の方法によって同定される1または複数の化合物を、癌細胞を破壊するための、X線、γ線および他の放射線源を使用することを含む放射線療法と組み合わせて投与することを包含する。好ましい実施形態では、放射線療法を外部放射線照射または遠隔地にある源から放射線を向ける遠隔療法として施す。他の好ましい実施形態では、放射線療法を内部療法または放射活性源を体内の癌細胞もしくは腫瘍塊の近くに置く近接照射療法として施す。
癌の治療法ならびにその用量、投与経路および推奨される用法は当分野で公知であり、Physician's Desk Reference (第56版、2002)などの文献に記載されている。
4.8 化合物を投与するための組成物および方法
本発明の方法を用いて同定される、生物学的に活性な化合物または製薬上許容されるその塩を、増殖性疾患に罹患している患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに投与することができる。具体的な実施形態では、増殖性疾患に対する予防措置として、化合物または製薬上許容されるその塩を患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに投与する。
患者に投与する場合、化合物または製薬上許容されるその塩は、場合によっては製薬上許容されるビヒクルを含む組成物の構成要素として投与することが好ましい。組成物は、経口的に、または任意の他の都合のよい経路(たとえば点滴もしくはボーラス注射、上皮もしくは粘膜皮膚の内面(たとえば、口腔粘膜、直腸、および腸管粘膜など)を介した吸収)によって投与することができ、別の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与し得る。投与は全身性または局所的であることができる。様々な送達系(たとえばリポソーム、微粒子、ミクロカプセル、カプセルへのカプセル封入など)が公知であり、化合物および製薬上許容されるその塩を投与するために使用することができる。
投与方法としては、それだけには限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸から、吸入によって、または特に耳、鼻、眼、もしくは皮膚へ局所的な投与が挙げられる。投与方法は専門家の裁量に任される。ほとんどの場合、投与の結果、化合物または製薬上許容されるその塩が血流中に放出される。
具体的な実施形態では、化合物または製薬上許容されるその塩を局所的に投与することが望まれ得る。限定しないが、これは、たとえば手術中の局所注入によって、局所適用(たとえば手術後に創傷包帯と組み合わせて)、注射によって、カテーテルによって、坐薬によって、あるいはシラスティック膜などの膜を含めた多孔性、非多孔性、もしくはゼラチン状材料または線維からなる移植物によって行ってもよい。
特定の実施形態では、化合物または製薬上許容されるその塩を、脳室内、くも膜下腔内および硬膜外注射を含めた任意の適切な経路によって中枢神経系内に導入することが望まれ得る。脳室内注射は、たとえばオンマヤリザーバー(Ommaya reserver)などのリザーバーに接続した脳室内カテーテルによって容易になるかもしれない。
たとえば吸入器または噴霧器を用い、かつエアロゾル化剤と共に製剤化することによるか、または炭化フッ素もしくは合成肺サーファクタント中での灌流を介した肺投与を用いることもできる。特定の実施形態では、化合物および製薬上許容されるその塩は、慣用の結合剤およびトリグリセリドなどのビヒクルを用いて、坐薬として製剤化することができる。
別の実施形態では、化合物および製薬上許容されるその塩を、小胞、特にリポソーム中で送達することができる(Langer、1990、Science、249:1527-1533;Treat他、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer、Lopez-BeresteinおよびFidler (編)、Liss、New York、353-365ページ(1989);Lopez-Berestein、同書、317-327ページを参照;一般に同書を参照)。
さらに別の実施形態では、化合物および製薬上許容されるその塩を徐放系で送達することができる(たとえばGoodson、Medical Applications of Controlled Release、上記、第2巻、115-138ページ(1984)参照)。Langer、1990、Science、249:1527-1533による総説に記載の他の徐放系を使用してもよい。一実施形態では、ポンプを使用し得る(Langer、上記;Sefton、1987、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng.、14:201;Buchwald他、1980、Surgery、88:507;Saudek他、1989、N. Engl. J. Med.、321:574参照)。別の実施形態では、高分子物質を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise (編)、CRC Pres.、Boca Raton、Florida (1974);Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance、SmolenおよびBall (編)、Wiley、New York (1984);RangerおよびPeppas、1983、J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem.、23:61参照;Levy他、1985、Science、228:190;During他、1989、Ann. Neurol.、25:351;Howard他、1989、J. Neurosurg.、71:105も参照)。さらに別の実施形態では、徐放系を化合物または製薬上許容されるその塩の標的RNAの近傍に配置することができ、これにより全身用量の一部しか必要でなくなる。
化合物または製薬上許容されるその塩を含む組成物(化合物組成物)は、さらに、患者に対する適正な投与のための形態をとるように適量の製薬上許容されるビヒクルを含み得る。
具体的な実施形態では、用語「製薬上許容される」とは、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって認可されたか、または米国薬局方もしくは動物、哺乳動物、より詳細にはヒトでの使用についての他の一般に認識されている薬局方に記載されていることを意味する。用語「ビヒクル」とは、本発明の化合物かそれと共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体をいう。このような製薬用ビヒクルは、水や油(たとえばピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などの、石油、動物、野菜もしくは合成起源のもの)などの液体であることができる。製薬用ビヒクルは、生理食塩水、アカシアガム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであることができる。さらに、補助剤、安定化剤、濃化剤、潤滑剤および着色剤を使用してもよい。患者に投与する際、製薬上許容されるビヒクルは無菌的であることが好ましい。本発明の化合物を静脈内投与する場合、水が好ましいビヒクルである。生理食塩水およびデキストロース水溶液およびグリセロール溶液もまた、液体ビヒクルとして、特に注射用溶液に使用することができる。適切な製薬用ビヒクルはとしてはまた、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどの賦形剤が挙げられる。化合物の組成は、所望する場合は少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含むこともできる。
化合物組成物は、液剤、懸濁液、乳剤、錠剤、丸薬、ペレット、カプセル、液体を含むカプセル、散剤、徐放性製剤、坐薬、乳剤、エアロゾル、スプレー、懸濁液の形態、または使用に適したいかなる他の形態をとることもできる。一実施形態では、製薬上許容されるビヒクルはカプセルである(たとえば米国特許第5,698,155号参照)。好適な製薬用ビヒクルの他の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences、Alfonso R. Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、第19版、1995、1447〜1676ページ(参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。
好ましい実施形態では、化合物または製薬上許容されるその塩を、人間への経口投与に適応した医薬組成物として慣用の方法によって製剤化する。経口送達用の組成物は、たとえば錠剤、ロゼンジ、水性または油性懸濁液、顆粒、散剤、乳剤、カプセル、シロップ、またはエリキシルの形態であり得る。製薬上、口当たりのよい調製物を提供するために、経口投与する組成物は1または複数の薬剤、たとえばフルクトース、アスパルテームまたはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリーなどの香味剤;着色料;および保存料を含み得る。さらに、錠剤または丸薬形態の場合は、胃腸管内での分散および吸収を遅延させ、それにより長時間持続した作用をもたらすために、組成物をコーティングすることができる。浸透活性により制御される化合物を覆う選択的透過膜もまた、経口投与する組成物に適している。これらの後者の方針(platform)では、カプセルの周囲の環境からの流体が制御化合物に吸収され、化合物が膨張して薬剤または薬剤組成物がすき間から排出される。これらの送達方針では、即放配合物のスパイク状特性とは対照的に、本質的にゼロ次の送達特性を提供することができる。モノステアリン酸グリセロールやステアリン酸グリセロールなどの時間遅延剤を用いてもよい。経口組成物は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的なビヒクルを含むことができる。このようなビヒクルは、製薬グレードであることが好ましい。通常、静脈内投与用の組成物は無菌的な等張水性緩衝液を含む。必要な場合は、組成物は可溶化剤も含み得る。
別の実施形態では、化合物または製薬上許容されるその塩を静脈内投与用に製剤化することができる。静脈内投与用の組成物は、注射部位での痛みを軽減させるために、場合によりリグノカインなどの局所麻酔剤を含んでもよい。一般に、たとえば、活性物質の量を示したアンプルやサシェなどの気密に密閉された容器中で、乾燥した凍結乾燥散剤または水を含まない濃縮物として、成分を個別にまたは一緒に混合して剤形単位で供給する。化合物または製薬上許容されるその塩を点滴によって投与する場合は、たとえば無菌的な製薬グレードの水または生理食塩水を含む点滴瓶を用いて投薬することができる。化合物または製薬上許容されるその塩を注射によって投与する場合は、投与前に成分を混合することができるように、注射用の滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
特定の疾患の治療に有効となる化合物または製薬上許容されるその塩の量は疾患の性質に依存し、標準的な臨床的技法によって決定することができる。さらに、最適な用量範囲の特定を補助するために、場合によってはin vitroまたはin vivoアッセイを使用してもよい。使用する正確な用量もまた、投与経路および疾患の重篤度に依存し、専門家の判断および各患者の状況に応じて決定されるべきである。しかし、経口投与の好適な用量範囲は一般に、体重1キログラムあたり1日約0.001ミリグラム〜約500ミリグラムの化合物または製薬上許容されるその塩である。本発明の具体的な好ましい実施形態では、経口用量は、体重1キログラムあたり1日約0.01ミリグラム〜約100ミリグラム、より好ましくは体重1キログラムあたり1日約0.1ミリグラム〜約75ミリグラム、より好ましくは体重1キログラムあたり1日約0.5ミリグラム〜5ミリグラムである。本明細書中に記載の用量とは、投与される全量をいう。すなわち、複数の化合物を投与する場合、または化合物を治療薬と共に投与する場合は、好ましい用量は投与する全量に相当することをいう。経口用組成物は、好ましくは約10重量%〜約95重量%の活性成分を含む。
静脈内(i.v.)投与に対する好適な用量範囲は、体重1キログラムあたり1日約0.01ミリグラム〜約100ミリグラム、体重1キログラムあたり1日約0.1ミリグラム〜約35ミリグラム、および体重1キログラムあたり1日約1ミリグラム〜約10ミリグラムである。鼻腔内投与に対する好適な用量範囲は、一般に約0.01pg/kg体重/日〜約1mg/kg体重/日である。坐薬は一般に体重1キログラムあたり1日約0.01ミリグラム〜約50ミリグラムの本発明の化合物を含み、約0.5重量%〜約10重量%の範囲の活性成分を含む。
皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、硬膜外、舌下、脳内、膣内、経皮投与または吸入による投与に対して推奨される用量は、体重1キログラムあたり1日約0.001ミリグラム〜約200ミリグラムである。局所投与に対する好適な用量は、投与部位に応じて約0.001ミリグラム〜約1ミリグラムの範囲である。有効な用量は、in vitroまたは動物モデルの試験系から導いた用量応答曲線から推定し得る。このような動物モデルおよび系は当分野で周知である。
化合物および製薬上許容されるその塩は、ヒトで使用する前に、所望の治療活性または予防活性についてin vitroおよびin vivoでアッセイすることが好ましい。たとえば、化合物、製薬上許容されるその塩、および/または別の治療薬を投与することが好ましいかどうかを決定するためにin vitroアッセイを使用することができる。安全性および有効性を実証するために動物モデル系を使用することができる。
等価な内容(Equivalents):
本発明は、本明細書中に記載の具体的な実施形態による範囲に限定されるものではない。実際、当業者には、前述の説明および添付の図から、記載したものに加えて本発明の様々な変形が明らかとなるであろう。このような変形は添付の特許請求項の範囲内にあることを意図する。
様々な出版物が本明細書中で引用されており、それらの開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
HTS蛍光スクリーニングにおけるtRNAスプライシングエンドヌエレアーゼの基質を示す図である。パネルAに内在性tRNAを示し、パネルBにハイブリッド形成したtRNA基質を示し、パネルCに環状に配置したtRNA基質を示す。5’ssは5’スプライシング部位を意味し、3’ssは3’スプライシング部位を意味する。 ヒト(HsSen2(配列番号1)およびHsSen2変種(配列番号2))、ならびに酵母(ScSen2p(配列番号3))のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼのSen2サブユニットのアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。四角の枠で囲んだアミノ酸残基はYRGGY(配列番号4)活性部位モチーフを示し、周りを囲んだアミノ酸残基は活性部位のヒスチジンを示し、下線を引いたアミノ酸残基は酵母の推定膜貫通ドメインを示す。

Claims (9)

  1. 動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物の同定方法であって、
    (a)化合物または化合物ライブラリのメンバーを、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼを含み、レポーター遺伝子構築体によりコードされるレポータータンパク質を発現する動物界の細胞と接触させるステップであって、上記レポーター遺伝子構築体はレポーター遺伝子のコード領域およびレポータータンパク質をコードしているmRNAをフレーム外とするtRNAイントロンを含み、該tRNAイントロンはtRNA前駆体の成熟ドメインに含まれるものである、上記ステップ;
    (b)上記レポータータンパク質の量または活性を検出するステップであって、化合物の存在下におけるレポータータンパク質の量または活性が上記化合物の非存在下または陰性対照の存在下におけるレポータータンパク質の量または活性と比較して変化する場合に、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性をモジュレートする化合物が同定される、上記ステップ
    を含む、上記方法。
  2. レポータータンパク質の量または活性が、化合物の存在下において上記化合物の非存在下または陰性対照の存在下におけるレポータータンパク質の量または活性と比較して低減する場合に、動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼ活性を低減させる化合物が同定される、請求項1記載の方法。
  3. レポータータンパク質の量または活性が、化合物の存在下において上記化合物の存在下または陰性対照の存在下におけるレポータータンパク質の量または活性と比較して増大する場合に、動物界のtRNAスプライシング活性を増大させる化合物が同定される、請求項1記載の方法。
  4. tRNAイントロンが、レポーター遺伝子の5’非翻訳領域内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. tRNAイントロンが、レポーター遺伝子の3’非翻訳領域内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  6. tRNAイントロンが、レポーター遺伝子のオープンリーディングフレーム内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  7. レポーター遺伝子が、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、コメツキムシルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコロニダーゼ、β−ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、およびアルカリホスファターゼからなる群の少なくとも1つをコードする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 動物界の細胞がヒト細胞である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 動物界のtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼがヒトtRNAスプライシングエンドヌクレアーゼである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
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