JP4622643B2 - 電動パワーステアリング装置の制御装置 - Google Patents

Description

本発明は、自動車や車両の操舵系にモータによる操舵補助力を付与するようにした電動パワーステアリング装置（以下、ＥＰＳという。）の制御装置に関する。

自動車や車両のステアリング装置をモータの回転力で補助負荷付勢（アシスト）する電動パワーステアリング装置は、モータの駆動力を、減速機を介してギア又はベルトなどの伝達機構により、ステアリングシャフト又はラック軸に補助負荷付勢するようになっている。かかる従来の電動パワーステアリング装置は、アシストトルク（操舵補助力）を正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御が行われる。フィードバック制御は、電流指令値とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にＰＷＭ（パルス幅変調）制御のデューティ比の調整で行っている。

ここで、ＥＰＳの一般的な構成を図８に示して説明すると、操向ハンドル５１のコラム軸５２は、減速ギア５３、ユニバーサルジョイント５４ａ、５４ｂ、ピニオンラック機構５５を経て操向車輪のタイロッド５６に連結されている。コラム軸５２には、操向ハンドル５１の操舵トルクを検出するトルクセンサ５７が設けられており、操向ハンドル５１の操舵力を補助するモータ５８が減速ギア５３を介してコラム軸５２に連結されている。また、ＥＰＳを制御するコントロールユニット５９には、バッテリー６０から電力が供給されると共に、イグニッションキー６１からイグニッション信号が入力されている。コントロールユニット５９は、トルクセンサ５７で検出された操舵トルクＴと車速センサ６３で検出された車速Ｖとに基づいてアシスト指令の操舵補助指令値Ｉの演算を行い、演算された操舵補助指令値Ｉに基づいてモータ５８に供給する電流が制御される。

この種のＥＰＳでは、特許文献１に示すように、モータ電流の大きさをデジタル量に変換するアナログ−デジタル変換手段（以下、ＡＤＣという。）と、該ＡＤＣによって変換されたモータ電流のデジタル量に応じてモータ電流を制御する電流制御手段とを備え、操舵状態を検出して、操舵状態に基づいてモータ電流の制御に用いる変換手段を切り替えて、変換デジタル量の大きさを選択できるようにしたものは知られている。
特許第３５０８７０２号公報

これら従来のＥＰＳの制御装置は、電動モータを流れる電流値を検出するための電流検出アンプの出力は、そのままマイコンに入力され、その信号が電流検出信号としてモータ電流の制御に用いられていた。

ところで、モータの高出力化に伴って、電流検出の計測レンジが増えているにもかかわらず、アナログデジタルコンバータ（以下、ＡＤＣという。）の分解能は、相対的に荒くなっている。これは、近年高い分解能を持つＡＤＣが発売されているが、コストアップや使用実績を考慮すると、直ちに変更して対応することが難しいという理由で従来品を使い続けている為である。

ところが、近年、ＥＰＳの操舵性能について小電流領域での操舵フィーリングが重要視されるようになっており、従来の分解能のままでは、操舵フィーリングが悪化してしまうという問題があった。

そこで、本発明は、小電流領域での電圧を補正することにより、小電流領域での操舵特性を良好にすることを目的とする。

本発明の上記目的は、電流検出器によって検出されたモータの電流値に基づいて、前記モータの作動をマイコンによってフィードバック制御するようにした電動パワーステアリング装置において、前記電流検出器の電流検出アンプと前記マイコンとの間に、電流検出特性の任意関数発生器を設けて、モータ電流検出特性を補正するようにしたことにより、達成される。

また、前記目的は、電流検出器によって検出されたモータの電流値に基づいて、前記モータの作動をマイコンによってフィードバック制御するようにした電動パワーステアリング装置において、前記電流検出器の電流検出アンプと前記マイコンとの間に、電流検出特性の任意関数発生器を設けて、モータ電流検出特性を補正した信号と、補正していない前記電流検出アンプの出力信号の双方を前記マイコンへ入力するようにしたことにより、達成される。

また、前記目的は、補正した電流検出信号を小電流領域の電流制御に使用し、補正していない電流検出信号を中電流から大電流領域の電流制御に使用することにより、効果的に達成される。

以上のように、本発明に係る電動パワーステアリング装置の制御装置によると、電流検出アンプとマイコンの間に、例えばＬＯＧアンプのような任意関数発生器を設け、電流検出アンプからの出力信号を対数特性として補正するようにした。これにより、モータ電流検出特性を対数特性にすれば、電流検出アンプの出力電圧を繊細に補正することができ、特に、ハンドルの中立点近傍など、モータ電流を繊細に制御しなければならない運転状態にある小電流領域で、良好な操舵フィーリングが得られる。また、任意関数発生器にモータ電流の大きさに応じて電流検出特性を可変にすれば、任意関数発生器のバイパス経路を省略することができる。

以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。

図１は、本発明に係る電動パワーステアリング装置の制御装置を車両に適用した場合の
概略構成を示すブロック図である。制御部１０は、マイコン１１と、複数のスイッチング素子などから構成されるモータ駆動回路１２と、モータ３０を流れる電流を検出するための電流検出回路１３とを備えている。

また、マイコン１１は、ＣＰＵ２１と、アナログ信号をデジタル信号に変換するＡＤＣ２２と、入力インターフェイス２３と、出力インターフェイス２４と、ＲＯＭやＲＡＭなどからなるメモリ２５とを備えている。また、ＣＰＵ２１は、入力インターフェイス２３からの入力信号に基づいて、出力インターフェイス２４を介してモータ駆動回路１２を制御するようになっている。

また、電流検出回路１３は、図２に示すように、モータ駆動回路１２に接続され、モータ電流を検出するための抵抗（シャント抵抗）３１と、該抵抗３１の両端に接続されてモータ電流を検出するための電流検出アンプ３２とを備える。この電流検出アンプ３２は、シャント抵抗３１の両端電圧を検出して所定の増幅率で増幅して、マイコン１１に出力するようになっている。

そして、電流検出アンプ３２の出力側でマイコン１１との間に、電流検出特性を任意の関数として発生させる任意関数発生器３５が設けられ、モータ電流検出特性を補正した信号と、補正していない電流検出アンプ３２の電流検出信号の双方をマイコン１１に出力し、モータ電流検出特性を最適に補正するようになっている。

この任意関数発生器３５は、ログアンプなどで構成され、電流検出特性として対数特性を有し、モータ電流の小電流領域から大電流領域に亘って電圧を補正することが可能である。すなわち、ログアンプは、小さな信号は大きく、大きな信号は小さく増幅するような対数増幅が行われるため、電流検出アンプ３２で得られる電流検出信号は、モータ電流の小電流領域で、中電流から大電流に亘った領域よりもより微細な補正が可能になる。

例えば、図３は、電流検出回路１３のモータ電流検出特性であり、モータ電流に対する検出電圧の関係を示す。この場合、電流検出回路１３の出力を任意関数発生器３５によって補正すると、ログアンプなどの任意関数発生器３５は対数特性を有するため、図４（リニア表示）及び図５（片対数表示）に示すように、小電流領域では大きく増幅され、大電流領域では少ししか増幅されないことがわかる。

これにより、電動パワーステアリング装置のモータ制御で、電流検出特性を対数特性にすれば、ハンドルの中立点近傍など、モータ電流が小さくなる小電流領域でモータ３０の作動を精度よく制御することができる。すなわち、電流検出アンプ３２からの出力を、小電流領域では、任意関数発生器３５によってモータ電流の大きさに応じて電流検出特性を切り替え、中電流から大電流領域では、任意関数発生器３５をバイパスして、マイコン１１に送るようにすれば、モータ電流が小さくなる小電流領域で、モータの作動を高精度に制御することができ、小電流領域での良好な操舵フィーリングを得ることができる。

従って、電流検出アンプ３２とマイコン１１の間に任意関数発生器３５を設け、任意関数発生器３５の電流検出特性は対数特性を有するので、モータ電流が小さな小電流領域で、電流検出アンプ３２の電流検出信号を繊細に補正することができる。すなわち、モータ電流の中電流から大電流領域では、電流検出アンプ３２からの出力をそのままマイコン１１に入力する一方、ハンドルの中立付近など、モータ電流の小さい小電流領域では、電流検出特性を対数特性に切り替えるように制御することができる。よって、ハンドルの中立付近にあってモータ電流が小さく、モータ電流を微細に制御する必要がある場合の操舵フィーリングが良好になる。

また、図６は、任意関数発生器３５をモータ電流の大きさに応じて電流検出特性を可変にした変形例を示す。この例では、電流検出アンプ３２とマイコン１１の間に任意関数発生器３５を設け、モータ電流検出特性を補正した信号と、補正していない電流検出アンプ３２の出力信号の双方をマイコン１１に入力するようにした。例えば、図７に示すように、任意関数発生器３５の電流検出特性を可変にし、小電流領域の電流検出特性を、他の領域と異なるように設定することもできる。この例では、モータ電流に対する検出電圧の関係を、ｔ点を境にして、小電流領域（Ｙ＝２Ｘ）と、中電流から大電流領域（Ｙ＝Ｘ）に変えた状態を示す。よって、任意関数発生器３５のバイパス経路を省略できるとともに、上記実施例と同様の効果も有する。

また、任意関数発生器３５の特性変更は、ＣＰＵ２１からの指令に基づいて任意に変更することも可能であり、使用目的に応じて大小種々の電流領域に亘って適宜特性を選択することができ、より一層操舵フィーリングが良好になる。

本発明に係る電動パワーステアリング装置の制御装置の概略構成を示すブロック図である。 モータ電流検出回路を概略的に説明する図である。 電流検出アンプで検出されたモータ電流に対する検出電圧の関係を示す図である。 図３の検出データを任意関数発生器によって補正した場合に、モータ電流に対する検出電圧の関係をリニア表示で説明する電流検出特性図である。 図３の検出データを任意関数発生器によって補正した場合に、モータ電流に対する検出電圧の関係を対数表示で説明する電流検出特性図である。 任意関数発生器の電流検出特性を可変にし、電流検出アンプの出力信号をマイコンに送るようにした図である。 任意関数発生器の電流検出特性を可変にした状態で、モータ電流に対する検出電圧の関係を示す図である。 一般的な電動パワーステアリング装置の構成例を示す図である。

符号の説明

１１ マイコン
１２ モータ駆動回路
１３ 電流検出回路
２１ ＣＰＵ
２２ ＡＤＣ
２８ トルクセンサ
３０ モータ
３１ 抵抗
３２ 電流検出アンプ
３５ 任意関数発生器

Claims (3)

1. 電流検出器によって検出されたモータの電流値に基づいて、前記モータの作動をマイコンによってフィードバック制御するようにした電動パワーステアリング装置において、
   前記電流検出器の電流検出アンプと前記マイコンとの間に、電流検出特性としてモータ電流の小電流域では前記電流検出アンプからの出力信号を大きく増幅し、中電流域から大電流域では前記出力信号を小さく増幅する任意関数発生器を設けて、モータ電流検出特性を補正するようにしたことを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
2. 電流検出器によって検出されたモータの電流値に基づいて、前記モータの作動をマイコンによってフィードバック制御するようにした電動パワーステアリング装置において、
   前記電流検出器の電流検出アンプと前記マイコンとの間に、電流検出特性としてモータ電流の小電流域では前記電流検出アンプからの出力信号を大きく増幅し、中電流域から大電流域では前記出力信号を小さく増幅する任意関数発生器を設けて、モータ電流検出特性を補正した信号と、補正していない前記電流検出アンプの出力信号の双方を前記マイコンへ入力するようにしたことを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
3. 補正した電流検出信号を小電流領域の電流制御に使用し、補正していない電流検出信号を中電流から大電流領域の電流制御に使用することを特徴とする請求項２に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。

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