JP4594533B2 - トリクロロシランを用いた不飽和有機化合物の還元体の製造方法、及び還元剤 - Google Patents
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Description
本発明は、トリクロロシランを用いた不飽和有機化合物の還元体の製造方法に関し、より詳しくは、特定の配位子化合物、特に、アミンのN−ホルミル化物をトリクロロシランと共存させることにより、不飽和有機化合物を効率よく還元して、その還元体を製造する方法に関する。
本発明はまた、不飽和有機化合物を効率よく還元できる、特定の珪素錯体からなる還元剤に関し、より詳しくは、珪素原子の配位数が5又は6である単核又は複核の珪素錯体からなる還元剤に関する。
[背景技術]
還元反応は、不飽和結合のみに水素原子を反応させることができるので、位置特異的或いは立体特異的な有機化合物を合成するために極めて重要な素反応である。
特に、1−フェニル−1−エタノール、2−ブタノール、2−オクタノール等の二級アルコール化合物は、染料、香料或いは農薬の中間体として工業上重要な化合物である。該二級アルコール化合物の製造方法としては、ケトン化合物を還元剤により還元する方法があり、従来から数多くの還元剤及び還元反応が開発されている。
一方、高純度多結晶シリコンの工業原料として極めて重要な化合物であるトリクロロシランは、還元性を有するばかりでなく、経済的にも安価でしかも取り扱いが容易であるため、有機合成への応用が、近年益々盛んに行われている。
このような状況の中、トリクロロシランを用いたケトン化合物の二級アルコール化合物への還元反応として、ジメチルホルムアミド存在下に還元する方法が知られている{ケミストリー・レターズ、407〜408頁、1996年(Chemistry Letters,407〜408,1996)}。
しかし、上記方法は、アラルキルケトン化合物に対しては高い収率を示すが、アリールケトン化合物に関しては収率が54%に留まっているため、汎用性のある還元方法とは言い難い。また、脂肪族ケトン化合物に対しては全く行われていない。
このため、経済的にも安価でしかも取り扱いが容易なトリクロロシランを用いて、不飽和有機化合物、特に汎用性の高いケトン化合物、を還元する方法の開発が望まれている。
[発明の開示]
かかる実状に鑑み、本発明者らは鋭意検討を行った結果、トリクロロシランを用いた不飽和有機化合物の還元反応を、特定の配位子化合物、特に炭素原子数3以上の二級アミンのN−ホルミル化物、特にピロリジン誘導体等の環状アミンのホルミル化物或いは窒素原子のβ位の炭素がオキソ基を形成する二級アミンのN−ホルミル化物の存在下で行った場合には、不飽和有機化合物の還元反応が効率的に進行するという知見を得た。
即ち、本発明は、工業的に安価で取り扱いが容易なトリクロロシランを還元剤として、不飽和有機化合物を効率よく還元して、その還元体を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、工業的に安価で取り扱いが容易なトリクロロシランを用いた、不飽和有機化合物を効率よく還元することができる還元剤を提供することを目的とする。
本発明によれば、トリクロロシランと混合したときに74.9MHzの29Si−NMR測定で−15〜−120ppmにシグナルを与える配位子化合物の存在下に、不飽和有機化合物とトリクロロシランとを混合して不飽和有機化合物を還元することを特徴とする不飽和有機化合物の還元体の製造方法が提供される。ここで、配位子化合物とは、トリクロロシランに配位可能な化合物を意味する。
上記製造方法においては、
1. 前記配位子化合物が、トリクロロシラン0.2モル/リットルの溶液にトリクロロシランに対して該配位子を等モル加えたときに得られる溶液において、74.9MHzの29Si−NMR測定で−15〜−120ppmにシグナルを与える化合物であること、特に、炭素原子数が3以上の二級アミンのN−ホルミル化物(特に、炭素原子数が3以上の環状アミン、又は、窒素原子のβ位の炭素がオキソ基を形成する二級アミン)であること、
2. 前記不飽和有機化合物が、ケトン化合物、アルデヒド化合物及びイミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であること、
が好ましい。
本発明によればまた、
(a)珪素原子の配位数が5である単核の珪素錯体であって、該珪素錯体中の珪素原子に配位する5個の配位子の内、4個の配位子は1つの水素原子と3つの塩素原子であり、残りの1個の配位子はトリクロロシランに作用して安定な5配位の珪素錯体を形成し得る配位子化合物からなる単核の珪素錯体、及び/又は
(b)各珪素原子の配位数が6である複核の珪素錯体であって、該珪素錯体中の各珪素原子にそれぞれ配位する6個の配位子の内、5個の配位子は1つの水素原子と4つの塩素原子であり、残りの1個の配位子はトリクロロシランに作用して安定な5配位の珪素錯体を形成し得る配位子化合物からなる複核の珪素錯体
からなる還元剤が提供される。
上記還元剤においては、トリクロロシランに作用して安定な5配位の珪素錯体を形成し得る配位子化合物が、
1. トリクロロシラン0.2モル/Lの溶液中で該配位子化合物をトリクロロシランに対して等モル作用させたときに得られる溶液を74.9MHzの29Si−NMR測定したときに検出可能な5配位の珪素錯体を形成する化合物であること;
2. トリクロロシラン0.2モル/Lの溶液にトリクロロシランに対して該配位子化合物を等モル加えたときに得られる溶液を74.9MHzの29Si−NMR測定したときに−15〜−120ppmにシグナルが観測される化合物であること;
3. 炭素原子数が3以上の二級アミンのN−ホルミル化物(特に、炭素原子数が3以上の環状アミンのN−ホルミル化物、又は窒素原子のβ位の炭素がオキソ基を形成する二級アミンのN−ホルミル化物)であること;
が好ましい。
本発明者らは、同じトリクロロシランを用いても共存させる化合物の種類によってトリクロロシランの還元力が異なる点に着目し、還元力の弱いトリクロロシランと種々の化合物とを共存させて還元反応を検討した。
その結果、特定の配位子化合物、特に、炭素原子数が3以上の二級アミンのN−ホルミル化物をトリクロロシランと共存させた場合に、不飽和有機化合物の還元反応が効率よく進行することを見出した。
還元反応が効率よく進行する詳細な理由については、未だ不明であるが、還元力の弱いトリクロロシランが反応系内では共存させる化合物の種類に応じて活性の異なる活性種に変換していると考えられる。
ここで、炭素原子数3以上の二級アミンのN−ホルミル化物は、例えば、下記一般式(I)
(式中、R1は、同一でも異なってもよく、水素原子又は一価の有機基であり、R1の内少なくとも1つは有機基である)
により表すことができる。
上記のような活性種の存在に関して、本発明者らは、活性種がトリクロロシランから誘導される珪素錯体からなるのではないかと更に考え、高い反応活性を示す活性種を特定すべく29Si−NMR測定による検討も行った。
先ず、重ジクロロメタンを溶媒としたトリクロロシランの0.2モル/Lの溶液を調整し、ここにトリクロロシランと等モルのジメチルホルムアミドを加えて、74.9MHzの29Si−NMRを測定したところ、−186.4ppmと−192.0ppmに、トリクロロシランにジメチルホルムアミドが配位することによって六配位の珪素錯体を形成していることを示す二本のシグナルのみが検出された。
珪素原子は通常の四価の原子価だけでなく、高原子価構造を形成し、六配位の錯体だはでなく五配位の錯体を形成することはよく知られている事実である。そこで、本発明者らは、かかる事実に着目し、トリクロロシランと共存させたときにジメチルホルムアミドを共存させたときよりも高い活性を示す前記ピロリジン誘導体では、六配位の錯体以外の活性種が見出されるのでなはいかと考え、同様の条件下でNMR測定を行った。
その結果、ジメチルホルムアミドのように等モルのトリクロロシランと完全に六配位の錯体を形成するのではなく、五配位の錯体と六配位の錯体の混合物、或いはトリクロロシランと五配位の錯体の混合物のような状態で珪素錯体が存在することが判明した。
そして、種々の化合物をトリクロロシランに配位させて得られる錯体について珪素原子の配位数と活性(還元力)との関係について調べた所、トリクロロシランに配位させたときに六配位の珪素錯体しか形成しない配位子化合物を配位させたときよりも、五配位の錯体を形成し得る配位子化合物を配位させたときの方が高い活性を示すことも見出した。即ち、本発明者らは、トリクロロシランを用いた還元剤の還元力を制御する手段をも見出したのである。
ここで、安定な5配位の珪素錯体とは、例えば、トリクロルシラン0.2モル/Lの溶液中で配位子化合物をトリクロルシランに対して等モル作用させたときに得られる溶液を74.9MHzの29Si−NMR測定したときに検出可能である程度に安定な5配位の珪素錯体である。
なお、上記NMR測定において5配位の珪素錯体が検出できることの確認は、−15〜−120ppmにシグナルが観測されることによって行われる。したがって、本発明の新規な還元剤は、トリクロルシラン0.2モル/Lの溶液にトリクロルシランに対して配位子化合物を等モル加えたときに得られる溶液を74.9MHzの29Si−NMR測定したときに−15〜−120ppmにシグナルが観測される化合物とトリクロロシランとを溶媒中で混合したときに得られる珪素錯体からなることを特徴とする還元剤であるとも言える。
このような安定な5配位の珪素錯体を与える上記配位子化合物としては、前述したように、炭素原子数3以上の二級アミンのN−ホルミル化物(特に、炭素原子数3以上の環状アミンのホルミル化物又は窒素原子のβ位の炭素がオキソ基を形成する二級アミンのN−ホルミル化物)を挙げることができる。
[発明を実施するための最良の形態]
本発明の製造方法では、トリクロロシランと混合したときに74.9MHzの29Si−NMR測定で−15〜−120ppmにシグナルを与える配位子化合物、特に、炭素原子数3以上の二級アミンのN−ホルミル化物の存在下、トリクロロシランを用いて不飽和有機化合物を還元する。
<不飽和有機化合物>
不飽和有機化合物としては、有機合成の原料或いは中間体として還元反応に供するものであれば、特に限定されない。通常、還元反応が良好に進行し、且つ還元後の生成物が有機合成化学上有用な不飽和有機化合物として、カルボニル化合物(特に、ケトン化合物、アルデヒド化合物)、イミン化合物等を例示することができる。
即ち、上記の還元反応では、原料となる不飽和有機化合物の不飽和結合に水素原子が付加して、例えば以下の生成物が得られる。
カルボニル化合物:
本還元反応で使用される原料が、カルボニル化合物の場合は、目的とする一級アルコール化合物或いは二級アルコール化合物の種類に応じて、試薬或いは工業原料として入手容易なアルデヒド化合物或いはケトン化合物が何等制限なく用いられる。
これらの化合物を具体的に例示すると、アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール等の炭素数2〜20の鎖状脂肪族アルデヒド化合物;ベンズアルデヒド、2−クロロベンズアルデヒド、4−クロロベンズアルデヒド、2−ニトロベンズアルデヒド、4−ニトロベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−アセトキシベンズアルデヒド、2−フラルデヒド、2−チオフェンカルボキサルデヒド、3−チオフェンカルボキサルデヒド等の炭素数5〜10のアリールアルデヒド化合物;フェニルアセトアルデヒド等の炭素数7〜13のアラルキルアルデヒド化合物;アクロレイン、trans−2−ペンテナール、trans−2−ヘキセナール、trans−2−ヘプテナール等の炭素数3〜15のα,β−不飽和アルデヒド化合物等を挙げることができ、ケトン化合物としては、アセトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、6−ウンデカノン等の炭素数3〜20の鎖状脂肪族ケトン化合物;シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、4−tert−ブチルシクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン等の炭素数3〜20の環状脂肪族ケトン化合物;アセトフェノン、ベンゾフェノン、9−アセチルアントラセン、2−アセチルビフェニレン、4−アセチルビフェニル、アセチルピラジン、2−アセチルピリジン、3−アセチル−2,4−ジメチルフラン、3−アセチル−2,4−ジメチルピロール、5−アセチル−2,4−ジメチルチアゾール、3−アセチル−2,5−ジメチルチオフェン、2−アセチルフルオレン、2−アセチルフラン、3−アセチルインドール、2−アセチル−5−メチルフラン、2−アセチル−3−メチルチオフェン、2−アセチルナフタレン、2−アセチルフェナントレン、3−アセチルフェナントレン、9−アセチルフェナントレン、2−アセチルチアゾール、2−アセチルチオフェン等のアリールケトン化合物;2−フェニルシクロヘキサノン、4−フェニルシクロヘキサノン、1−フェニル−2−ブタノン、4−フェニル−2−ブタノン、2−フェニルシクロペンタノン、2−フェニルシクロヘプタノン、3−フェニル−1−インダノン、4−アセチル−1−メチルシクロヘキセン、2−アセチル−5−ノルボルネン等のアラルキルケトン化合物、3−ブテン−2−オン、1−ペンテン−3−オン、3−ペンテン−2−オン、4−ヘキセン−3−オン、2−シクロペンテン−1−オン、3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、2−シクロヘキセン−1−オン、2−シクロヘプテン−1−オン等の炭素数4〜10のα,β−不飽和ケトン化合物等を挙げることができる。
これらの化合物の中でも特に高い収率が期待できる、炭素数2〜20の鎖状脂肪族アルデヒド化合物、炭素数5〜10のアリールアルデヒド化合物、炭素数7〜13のアラルキルアルデヒド化合物、炭素数3〜15のα,β−不飽和アルデヒド化合物、炭素数3〜20の鎖状脂肪族ケトン化合物、炭素数3〜20の環状脂肪族ケトン化合物、およびアラルキルケトン化合物等の中から選ばれるケトン化合物、炭素数4〜10のα,β−不飽和ケトン化合物が好適に使用できる。
イミン化合物:
一方、イミン化合物は、工業的にも試薬として市販されている化合物が少ないため、目的物のアミン化合物に相当するイミン化合物を上記カルボニル化合物とアンモニア或いは一級アミン化合物と反応させて調製するのが一般的である。この時、イミン化合物の合成に用いられる一級アミン化合物としては、メチルアミン、2−エチルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、1−ブチルアミン、2−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、シクロペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン等の炭素数1〜10の脂肪族アミン化合物;アニリン、2−アミノチアゾール、ベンジルアミン、ジフェニルメチルアミン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン等の炭素数3〜10の芳香族アミン化合物等を挙げることができる。
本発明に用いられるイミン化合物は、上記記載のカルボニル化合物とアンモニア及び一級アミン化合物をp−トルエンスルホン酸等の酸触媒存在下、ベンゼン、キシレン、ジエチルエーテル等の不活性有機溶媒中加熱することによって合成される。
そのようなイミン化合物を具体的に例示すると、エチリデンイミン、プロピリデンイミン、ブチリデンイミン、ペンチリデンイミン、ヘキシリデンイミン、N−エチリデンメチルアミン、N−プロピリデンメチルアミン、N−ブチリデンメチルアミン、N−ペンチリデンメチルアミン、N−ヘキシリデンメチルアミン、N−エチリデンエチルアミン、N−エチリデン−1−ブチルアミン、N−エチリデン−1−ペンチルアミン、N−エチリデン−1−ヘキシルアミン、N−メチリデンシクロヘキシルアミン、N−エチリデンシクロヘキシルアミン、N−ブチリデンシクロヘキシルアミン、N−イソプロピリデンメチルアミン、N−イソプロピリデンエチルアミン、N−イソプロピリデンプロピルアミン、N−インプロピリデンシクロヘキシルアミン等の炭素数2〜20の脂肪族イミン化合物;N−ベンジリデンアミン、N−ベンジリデンメチルアミン、N−ベンジリデンエチルアミン、N−ベンジリデン−1−プロピルアミン、N−ベンジリデン−1−ブチルアミン、N−ベンジリデンアニリン、1−メチルイミノ−1−フェニルエタン、1−エチルイミノ−1−フェニルエタン、1−プロピルイミノ−1−フェニルエタン、1−シクロヘキシルイミノ−2−フェニルエタン、1−フェニルイミノ−1−フェニルエタン、1−ベンジルイミノ−1−フェニルエタン、N−ジフェニルメチリデンメチルアミン、N−ジフェニルメチリデンエチルアミン、N−ジフェニルメチリデンプロピルアミン等の炭素数7〜20の芳香族イミン化合物等を挙げることができる。
これらの化合物の中でも特に高い収率が期待できる、炭素数7〜20の芳香族イミン化合物から選ばれるイミン化合物が好適に使用できる。
これらのイミン化合物は、化合物の種類によっては、シン体、アンチ体の異性体が存在するが、本発明においてはこれらの異性体は全く区別することなく使用できる。
<反応試剤>
トリクロロシラン:
本発明の還元方法で使用されるトリクロロシランとしては、試薬や工業原料として市販されているものが特に制限無く使用できる。トリクロルシランは、一般に高純度シリコンの原料として使用されるため、極めて高純度のものが市販されており、特に精製等を行うことなくこれらを使用することができる。
本発明における不飽和有機化合物とトリクロロシランとの反応は、量論反応であるため、トリクロロシランの使用量としては、不飽和有機化合物1モルに対して1モル以上使用すれば特に制限はないが、あまり量が多いと、後処理の中和工程において副生するシリカの除去操作が煩雑となるため、通常、不飽和有機化合物1モルに対して1〜5モル、好ましくは1〜3モルの範囲から採用するのが良い。
配位子化合物:
本発明に於いては、不飽和有機化合物を、トリクロロシランと混合したときに74.9MHzの29Si−NMR測定で−15〜−120ppmにシグナルを与える配位子化合物、特に、炭素原子数3以上の二級アミンのホルミル化物の存在下に、トリクロロシランを用いて還元する。
本還元反応において、反応活性種は29Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルの化学シフト値で−15〜−120ppmに対応するものであり、このため、この範囲内の化学シフト値のシグナルを与える配位子化合物の存在が必要である。
炭素原子数3以上の二級アミンのN−ホルミル化物は、例えば、下記一般式(I)
(式中、R1は、同一でも異なってもよく、水素原子又は一価の有機基であり、R1の内少なくとも1つは有機基である)
により表すことができる。
一般式(I)のホルミル化物の中でも、炭素原子数3以上の環状アミンのホルミル化物及び/又は窒素原子のβ位の炭素がオキソ基を形成する二級アミンのN−ホルミル化物が好適である。
より具体的には、炭素原子数3以上の環状アミンのホルミル化物としては、下記一般式(II)
(式中、R2及びR3は、同一でも異なってもよく、水素原子又は一価の有機基であり、R2及びR3の少なくとも1組は互いに結合して炭素原子数3以上の環を形成する)
で表されるものを例示することができ、また、窒素原子のβ位の炭素がオキソ基を形成する二級アミンのN−ホルミル化物としては、下記一般式(III)
(式中、R4及びR5は、同一でも異なってもよく、水素原子又は一価の有機基であり、R4及びR5は互いに結合して環を形成してもよく、R6は、置換基を有してもよい、アミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基である)
で表されるものを例示することができる。
これらの化合物を具体的に例示すると、環状アミンのホルミル化物としては、1−ホルミルピロリジン、1−ホルミルピペリジン、1−ホルミルヘキサメチレンイミン、1−ホルミルヘプタメチレンイミン、1−ホルミルピロール、1−ホルミルイミダゾール、1−ホルミルピラゾール等の環に置換基を有しない環状アミンのホルミル化物;1−ホルミル−2−ヒドロキシメチルピロリジン、1−ホルミル−2−ベンジルオキシメチルピロリジン、1−ホルミル−2−ジフェニルヒドロキシメチルピロリジン等のプロリノール誘導体;3−ホルミル−4−(S)−イソプロピルオキサゾリン、3−ホルミル−4−(S)−フェニルオキサゾリン、3−ホルミル−4−(S)−フェニルアミノカルボニルオキサゾリン等のオキサゾリン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、高い収率が期待できるという観点から1−ホルミルピロリジン、1−ホルミルピペリジン、1−ホルミルヘキサメチレンイミン、1−ホルミルヘプタメチレンイミン等の環に置換基を有しない環状アミンのホルミル化物;1−ホルミル−2−ヒドロキシメチルピロリジン等のプロリノール誘導体;3−ホルミル−4−(S)−フェニルアミノカルボニルオキサゾリン等のオキサゾリン化合物等を使用するのが好適である。
また、窒素原子のβ位の炭素がオキソ基を形成する二級アミンのN−ホルミル化物としては、N−フェニル−1−ホルミルプロリンアミド、N−ベンジル−1−ホルミルプロリンアミド、N−ヘキシル−1−ホルミルプロリンアミド、N−ジフェニル−1−ホルミルプロリンアミド、N,N−ジフェニルメチル−1−ホルミルプロリンアミド、N−(1−ナフチル)−1−ホルミルプロリンアミド、N−tert−ブチル−1−ホルミルプロリンアミド等のプロリンアミド誘導体;1−ホルミルプロリンベンジルエステル、1−ホルミルプロリンtert−ブチルエステル、1−ホルミルプロリンヘキシルエステル、1−ホルミルプロリンフェニルエステル、1−ホルミルプロリンメチルエステル、1−ホルミルプロリンエチルエステル等のプロリンエステル誘導体;N−ホルミル−L−プロリル−L−フェニルアラニンメチルエステル、N−ホルミル−L−プロリル−D−フェニルアラニンメチルエステル等のペプチド化合物;N−ホルミル−N−メチルグリシンベンジルエステル;等が挙げられる。
これらの中でも、高い収率が期待できるという観点からN−フェニル−1−ホルミルプロリンアミド、N−ベンジル−1−ホルミルプロリンアミド、N−ヘキシル−1−ホルミルプロリンアミド、N−ジフェニルメチル−1−ホルミルプロリンアミド、N−(1−ナフチル)−1−ホルミルプロリンアミド、N−tert−ブチル−1−ホルミルプロリンアミド等のプロリンアミド誘導体、1−ホルミルプロリンベンジルエステル、1−ホルミルプロリンtert−ブチルエステル、1−ホルミルプロリンヘキシルエステル、1−ホルミルプロリンフェニルエステル、1−ホルミルプロリンエチルエステル等のプロリンエステル誘導体;N−ホルミル−L−プロリル−L−フェニルアラニンメチルエステル、N−ホルミル−L−プロリル−D−フェニルアラニンメチルエステル等のペプチド化合物;N−ホルミル−N−メチルグリシンベンジルエステル等を使用するのが好適である。
上記したホルミル化物は、多くのものが試薬等として市販されており入手は容易であるが、例えば、次のような方法により簡単に合成することもできる。
即ち、環に置換基を有しない環状アミンのホルミル化物については、工業原料として或いは試薬として入手容易な環状アミンと、ぎ酸メチル、ぎ酸エチル、又はぎ酸及び酢酸からなる混合酸無水物等のホルミル化剤とを反応させることによって合成することが可能である。また、プロリンアミド誘導体に関してはプロリンと塩化チオニルから酸クロライドを調整し、所定のアミン化合物を反応させてアミド体とした後、上記ホルミル化剤によって窒素原子をホルミル化することによって合成することができる。さらに、プロリンエステル誘導体に関しては、同様に酸クロライドと所定のアルコール化合物を反応させてエステル体にした後、上記ホルミル化剤を用いてホルミル化することによって合成が可能であり、プロリノール誘導体に関しては、上記方法で得られるプロリンエステルを水素化ホウ素ナトリウムによって還元し、必要とあれば、水酸基をエーテル化し、ホルミル化剤でホルミル化を行うか、プロリンメチルエステルを過剰のグリニャール試薬と反応させることで合成が可能である。さらにまた、N−ホルミル−N−メチルグリシンベンジルエステルに関しては、入手容可能なN−メチルグリシンをベンジルエステル化した後、ホルミル化することによって合成が可能である。
また、オキサゾリン誘導体は、アミノ酸メチルエステルを還元してアミノアルコールに変換した後、環化、ホルミル化を行なうことで合成ができる。
なお、前記ホルミル化物のうち、プロリノール、プロリンアミド、又はプロリンエステルから誘導される各化合物については、ピロリジン環の2位に不斉炭素を有するため、S体、R体の異性体が存在するが、本発明においては、どちらの異性体も全く問題なく使用できるし、ラセミ体でも一向に差し支えない。
また、前記ホルミル化物のうち、アミノ酸から誘導される化合物については、窒素原子のα位に不斉炭素を有するため、S体、R体の異性体が存在するが、本発明においては、どちらの異性体も全く問題なく使用できるし、ラセミ体でも一向に差し支えない。
また、本発明において、プロリノール、プロリンアミド、又はプロリンエステルから誘導される化合物の光学的に純粋な異性体を用いた場合には、生成物である二級アルコール化合物又は二級アミン化合物等の還元体に光学活性が発現する場合がある。光学純度的にはいまだ満足すべきものではないが、トリクロロシランを用いたケトン化合物又はイミン化合物の還元において、生成物の二級アルコール化合物又は二級アミン化合物に光学活性が発現する例は、本発明が初めてである。
本発明における、前記ホルミル化物の使用量としては特に制限はないが、あまり量が少ないと反応速度が著しく小さくなり、あまり量が多いと、後処理工程での除去操作が煩雑となる上に、経済的にも不利になることから、通常、不飽和有機化合物1モルに対して0.01〜3モル、好ましくは0.05〜2モルの範囲から選択されるのが良い。
有機溶媒:
本発明は、通常有機溶媒中で実施される。本発明において使用される溶媒については、還元反応を阻害しない有機溶媒が何等制限なく使用できる。これらの有機溶媒の種類を具体的に例示すると、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラハイドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルカーボネート等のカーボネート類、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;等を挙げることができる。
これらの中でも、特に高い収率が期待できる、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、エーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類、カーボネート類等が好適に採用される。
なお、本発明においては、水は反応阻害因子として作用するため、上記溶媒は乾燥して用いるのが好適である。溶媒の乾燥方法としては、溶媒によって最適な方法が異なるため一概には言えないが、塩化カルシウム、ゼオライト、硫酸マグネシウム等の脱水剤或いはカルシウムハイドライド等の水素化物と溶媒を接触させた後、蒸留等の操作によって、乾燥溶媒を調製することができる。
本発明におけるこれらの有機溶媒の使用量としては、特に制限はないが、あまり量が多いと、一バッチあたりの収量が小さくなるため経済的ではなく、あまり量が多いと攪拌等に支障をきたすため、通常不飽和有機化合物の濃度が0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%となるように有機溶媒を使用することが好ましい。
珪素錯体:
本発明の還元剤は、特定の配位子を有し、且つ珪素原子の配位数が5又は6である単核又は複核の珪素錯体からなる。該単核又は複核の珪素錯体において、珪素原子に配位する5又は6個の配位子の内、4個の配位子は1つの水素原子と3つの塩素原子であり、残りの1又は2個の配位子の少なくとも1つはトリクロルシランに作用して安定な5配位の珪素錯体を形成し得る配位子化合物(以下、特定配位子化合物ともいう。)である。
上記本発明の還元剤である珪素錯体は、上記条件を満足すればその構造は特に限定されないが、代表的な珪素錯体の具体的構造としては、下記(1)又は(2)に示す構造が挙げられる。
(1) 珪素原子に1個の水素原子、3個の塩素原子、及び1個の特定配位子化合物が配位した単核の5配位の珪素錯体。該珪素錯体は、トリクロロシラン1分子に特定配位子化合物が1つ配位したような、下記一般式で示される構造を有している。(下記式中、Lは特定配位子化合物である。)
(2) 2個の珪素原子を有する珪素の2核錯体であって、各珪素原子にそれぞれ1個の水素原子、4個の塩素原子(但し、この内の2個の塩素原子が二座配位子で2つの珪素原子に配位している。)、及び1つの特定配位子化合物が配位した6配位の珪素錯体。該珪素錯体は、トリクロロシラン2分子に特定配位子化合物が2つ作用して形成されるような珪素2核錯体であり、下記一般式で示される構造を有している。(式中、L1及びL2は、互いに異なっていてもよい特定配位子化合物である。)
前記珪素錯体の中でもその還元力の高さの観点から、前記(1)で示される珪素錯体が好適である。
本発明の還元剤である前記珪素錯体における、特定配位子化合物は、トリクロルシランに作用して安定な5配位の珪素錯体を形成し得る配位子であれば特に限定されない。ここで安定な5配位の珪素錯体とは、何らかの方法でその存在が確認できる程度に安定な珪素錯体であることを意味するが、還元力の強さの観点から、トリクロロシラン0.2モル/Lの溶液中で特定配位子化合物をトリクロロシランに対して等モル加えて調製したときに得られる溶液を74.9MHzの29Si−NMR測定した時に、−15〜−120ppmにシグナル(5配位の珪素原子に由来するシグナル)が観測される錯体であるのが好適である。
なお、上記29Si−NMR測定は、トリクロロシランが0.2モル/Lの濃度になっている溶液にトリクロロシランのモル数と等しいモル数の特定配位子化合物を加えてサンプルを調製し、これをガラス製のサンプル管に入れ標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を使用し、−50〜50℃の温度範囲で測定すればよい。通常、特定配位子化合物とトリクロロシランを溶液中で共存させた場合には、錯体が形成されるが、トリクロロシランと上記配位子化合物の間には、配位子化合物の種類によって、トリクロロシランと5配位の錯体の間に、或いは5配位の錯体と6配位の錯体との間に平衡関係が存在する。このため、5配位の錯体の有無を測定するのであれば、トリクロロシランと配位子化合物の混合比には最適な混合比があると思われるが、上記条件で29Si−NMR測定を行ったときに5配位の錯体が検出されるような配位子化合物を特定配位子化合物とした場合には、高い還元力を有する還元剤となる。
前記特定配位子化合物となる好適な化合物としては、窒素原子を含む有機化合物、特に、前述したN−ホルミル化物(特に、炭素原子数3以上の環状アミンのN−ホルミル化物又は窒素原子のβ位の炭素がオキソ基を形成する二級アミンのN−ホルミル化物)が挙げられる。
本発明の還元剤は、上記のような特定配位子化合物となる化合物と前述したトリクロロシランとを溶媒中で混合することにより得ることができる。
また、このとき使用される溶媒は、トリクロロシランと反応せず、且つ本発明の還元剤によって還元されない有機溶媒であれば特に限定されず、前述したものを使用することができる。特にトリクロロシランに対して相互作用が少なく、還元力の強い珪素錯体を形成するという観点から、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類が好適に採用される。また、前述したように、有機溶媒はあらかじめ乾燥して用いるのが好適である。
このようにして得られる本発明の還元剤は、非常に強い還元力を有しており、従来、トリクロロシランのみでは還元できなかった不飽和有機化合物、例えばケトン化合物を還元する反応に有効に作用する。なお、本発明の還元剤を上記還元反応に用いる場合(以下、この時の反応を本還元反応と称す。)には、予めトリクロロシランと特定配位子となる化合物を溶媒中で混合して調製してから使用しても良いし、反応系にトリクロロシランと特定配位子となる化合物を添加して、反応系内で調製してもよい。
本還元反応においては、例えば、ケトン化合物の>C=O基が本発明の還元剤である珪素錯体の珪素に配位した水素原子(Si−H)の作用により還元されて>CH−OH)−基に変換される。ところで、本発明の還元剤である珪素錯体は、溶液中にトリクロロシランと特定配位子となる化合物とを共存させたときに得られるが、前記したようにこの時トリクロロシランと5配位の錯体の間に、或いは5配位の錯体と6配位の錯体との間に平衡関係が存在する。そのため、本還元反応を行うにあたって、トリクロロシランが過剰量存在すれば使用された還元剤から再生される特定配位子となる化合物がトリクロロシランに配位することによって新たに還元剤が反応系内で再生されるので、反応系内に本発明の還元剤は必ずしも原料ケトン化合物に対してSi−H換算で等モル存在する必要はない。したがって、本還元反応における本発明の還元剤の使用量は、トリクロロシラン及び特定配位子となる化合物の使用量として捉えるのがより現実的である。
上記珪素錯体からなる還元剤を使用するにあたって、必要なトリクロロシラン及び特定配位子化合物の使用量は、基本的には、前述したトリクロロシラン及びN−ホルミル化物の使用量と同様である。具体的に説明すると、トリクロロシランの使用量は、不飽和有機化合物1モルに対して1モル以上使用すれば特に制限はないが、あまり量が多いと、後処理の中和工程において副生するシリカの除去操作が煩雑となるため、通常、不飽和有機化合物1モルに対して1〜5モル、好ましくは1〜3モルの範囲で使用するのが好適である。また、特定配位子となる化合物の使用量は、該化合物の種類によって異なるため、一概に規定することは出来ないが、あまり量が少ないと還元反応の速度が極めて遅くなり、あまり量が多いと、生成物からの除去操作が煩雑となり、経済的にも不利になることから、通常、不飽和有機化合物1モルに対して0.01〜3モル、特に0.05〜2モルの範囲で使用するのが好適である。
本還元剤による還元反応は、通常有機溶媒中で実施され、該有機溶媒としては本発明の還元剤を調製するときに使用できる前記の有機溶媒が何等制限なく用いられる。本還元反応におけるこれらの有機溶媒の使用量としては、特に制限はないが、あまり量が多いと、一バッチあたりの収量が小さくなるため経済的ではなく、あまり量が少ないと攪拌等に支障をきたすため、通常不飽和有機化合物の濃度が0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%となるように有機溶媒を使用することが好ましい。
<反応条件>
本発明の製造方法の操作手順は特に限定されないが、例えば、反応容器中に不飽和有機化合物、N−ホルミル化物等の特定配位子化合物及び有機溶媒を加えた後、所定の温度でトリクロロシランを添加することで実施される。
本発明における反応温度としては特に制限はないが、あまり温度が高いと副反応を助長し、あまり温度が低いと反応速度が著しく小さくなるため、通常、−78〜50℃、好ましくは−30〜40℃の範囲で行われるのが良い。
本発明における反応時間としては、用いる不飽和有機化合物の種類によって異なるため一概には言えないが、通常1〜30時間あれば十分である。
本発明は、常圧、減圧、加圧のいずれの状態でも実施可能である。また、本発明は、水が反応阻害因子として作用するため、通常、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性気体雰囲気下、或いは乾燥空気雰囲気下で行われることが好ましい。
このようにして得られた、還元生成物の単離精製方法としては特に制限はなく公知の方法が採用される。例えば、反応液に、炭酸ナトリウム水溶液を加えて完全に反応系を中和し、水に相溶しない有機溶媒を加えて抽出する。得られた有機溶媒を乾燥し、溶媒を減圧留去した後、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離精製することができる。
[実施例]
以下、実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等制限されるものではない。
尚、実施例で使用する各環状アミンのホルミル化物、及び窒素原子のβ位の炭素がオキソ基を形成する二級アミンのホルミル化物(以下、総称して本ホルムアミド化合物ともいう。)は以下の方法で製造した。
即ち、環に置換基を有しない環状アミンのホルミル化物については、環状アミンとぎ酸メチルを反応させて製造した。プロリンアミド誘導体については、プロリンと塩化チオニルを反応させて酸クロライドを調製した後、この化合物に所定のアミンを反応させてプロリンアミド誘導体に変換し、ぎ酸メチルを反応させて製造した。プロリンエステル誘導体については、上記酸クロライドに所定のアルコールを反応させて、プロリンエステル誘導体に変換した後、ぎ酸メチルを反応させて製造した。
また、プロリノール誘導体に関しては、上記プロリンエステル誘導体をナトリウムボロハイドライドでプロリノール誘導体に変換した後、ぎ酸メチルを反応させることによって製造した。尚、必要に応じて上記プロリノール誘導体をベンジルクロライドを用いて水酸基をエーテル化を行った。さらには、上記プロリンエステル誘導体に過剰のフェニルマグネシウムブロマイドを反応させて製造した。 また、N−ホルミル−N−メチルグリシンエステルに関しては、N−メチルグリシンを上記と同様の方法でエステル化した後、ぎ酸メチルを用いてホルミル化することによって合成した。
<実施例1>
窒素雰囲気下、30mlの茄子型フラスコに、ケトン化合物としてのアセトフェノン(和光純薬試薬特級)0.120g(1mmol)、環状アミンのホルミル化物としての1−ホルミルピロリジン0.150g(1.5mmol)、溶媒としての塩化メチレン(和光純薬試薬特級)5mlを加え、0℃に冷却する。この溶液に、トリクロロシラン(信越化学社製)0.203g(1.5mmol)の塩化メチレン溶液を滴下し、12時間反応させた。
反応終了後、反応溶液を50mlの飽和炭酸ナトリウム水溶液に注いだ後、30mlの塩化メチレンで3回抽出操作を行った。得られた塩化メチレン溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行い、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製したところ、1−フェニル−1−エタノールを0.110g(収率90%)で取得した。
<実施例2〜6>
1−ホルミルピロリジンに代えて表1に示した本ホルムアミド化合物を溶媒として用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1に示した。なお、ここで使用した本ホルミルアミド化合物は全て環状アミンのホルミル化物である。
<実施例7>
1−ホルミルピロリジンに代えて、本ホルムアミド化合物として窒素原子のβ位の炭素にオキソ基を有するアミド化合物であるN−フェニル−1−ホルミル−(S)−プロリンアミドを用い、反応時間を15時間にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、1−フェニル−1−エタノールを0.121g(収率99%)で得た。また、この化合物の光学純度を測定したところ32.5%ee(R)であった。
<実施例8〜21>
1−ホルミルピロリジンに代えて表2に示した本ホルムアミド化合物を用い、反応時間を15時間にした以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果を、表2に示した。なお、実施例8〜10は本ホルムアミド化合物として環状アミンのホルミル化物の種類を変えて使用した例であり、実施例11〜21は本ホルムアミド化合物として窒素原子のβ位の炭素にオキソ基を有するアミド化合物の種類を変えて使用した例である。
<実施例22>
1−ホルミルピロリジンの使用量を0.1mmolにし、反応時間を24時間にした以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、1−フェニル−1−エタノールを0.072g(収率59%)得た。
<実施例23〜34>
表3に示した本ホルムアミド化合物を0.1mmol用い、反応時間を24時間にした以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果を表3に示した。
<実施例35〜43>
アセトフェノンに代えて表4に示したケトン化合物を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果を表4に示した。
<実施例44>
窒素雰囲気下、30mlの茄子型フラスコにケトン化合物としての4−tert−ブチルシクロヘキサノン0.154g(1mmol)、環状アミンのホルミル化物としての1−ホルミルピロリジン0.0099g(0.1mmol)、溶媒としての塩化メチレン5mlを加え、0℃に冷却した。この溶液に、トリクロロシラン0.203g(1.5mmol)の塩化メチレン溶液を滴下し、室温下24時間反応させた。
反応終了後、実施例1と同様の操作を行なったところ、4−tert−ブチルシクロヘキサノールを0.139g(収率89%)で取得した。この時、得られたアルコール化合物のシス体とトランス体の比は、18:82であった。
<実施例45>
4−tert−ブチルシクロヘキサノールに代えて、2−メチルシクロヘキサノンを用いた以外は実施例44と同様の操作を行なった。
その結果、2−メチルシクロヘキサノールを0.100g(収率89%)で取得した。この時、得られたアルコール化合物のシス体とトランス体の比は、93:7であった。
<比較例1>
1−ホルミルピロリジンに代えて、本ホルムアミド化合物に属さないN,N−ジメチルホルムアミドを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、1−フェニル−1−エタノールの収量は、0.065g(収率53%)にすぎなかった。
以下の実施例で使用する各環状アミンのホルミル化物、窒素原子のβ位の炭素にオキソ基を有するアミド化合物は以下の方法で製造した。
即ち、環に置換基を有しない環状アミンのホルミル化物については、ぎ酸メチルと環状アミン或いはぎ酸と無水酢酸から調整した混合酸無水物と環状アミンを反応させて製造した。プロリンアミド誘導体については、N−t−ブトキシカルボニル−プロリン(N−BOC−プロリン)をジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の脱水剤存在下、所定のアミン類と反応させ、次いでトリフルオロ酢酸で脱BOC化し、或いは塩化チオニルを反応させて酸クロライドを調整した後、この化合物に所定のアミンを反応させてプロリンアミド誘導体に変換し、ぎ酸メチルを反応させて製造した。
プロリンエステル誘導体については、N−BOC−プロリンをDCC等の脱水剤存在下、所定のアミン類と反応させ、次いでトリフルオロ酢酸で脱BOC化し、或いは、上記酸クロライドに所定のアルコールを反応させて、プロリンエステル誘導体に変換した後、ぎ酸メチルを反応させて製造した。
また、プロリノール誘導体に関しては、上記プロリンエステル誘導体をナトリウムボロハイドライドでプロリノール誘導体に変換した後、ぎ酸メチルを反応させることによって製造した。尚、必要とあれば上記プロリノール誘導体をベンジルクロライドを用いて水酸基のエーテル化を行った。さらには、上記プロリンエステル誘導体に過剰のフェニルマグネシウムブロマイドを反応させて製造した。
また、N−ホルミル−N−メチルグリシンエステルに関しては、N−メチルグリシンを上記と同様の方法でエステル化した後、ぎ酸メチルを用いてホルミル化することによって合成した。
また、オキサゾリン化合物に関しては、アミノ酸をリチウムアルミニウムハイドライド等の還元剤でアミノアルコールに変換した後、37%ホルマリン水溶液を作用させてオキサゾリン環を形成し、この化合物にぎ酸と無水酢酸から調製した混合酸無水物を反応させて製造した。
また、ペプチド化合物に関しては、N−ホルミルアミノ酸とアミノ酸アルキルエステルとをDCC等の脱水剤存在下で反応させることによって製造した。
<実施例46>
窒素雰囲気下、10mlの茄子型フラスコに、トリクロロシラン(信越化学社製)54mg(0.4mmol)、1−ホルミルピロリジン40mg(0.4mmol)を重ジクロロメタン2mlに溶解する。この溶液1mlをサンプリング管(WILMAD社製、5mmφ×8inch)に分取して、79.4MHzの29Si−NMRを測定した。その結果、−41.5ppmと−185.4ppmのシグナルを検出し、トリクロロシランが五配位の錯体と六配位の錯体の混合物に変換していることが判明した。
<実施例47〜49’>
1−ホルミルピロリジンに代えて、表5に記載されている配位子を用いて実施例46と同様の操作を行なった。その結果を表5に示すが、いずれの配位子を用いても五配位の珪素錯体が溶液中で存在していることが確認された。
<実施例50>
窒素雰囲気下、30mlの茄子型フラスコにケトン化合物としてのアセトフェノン(和光純薬試薬特級)0.120g(1mmol)、塩化メチレン3mlを加え、0℃に冷却する。この溶液に、トリクロロシラン(信越化学社製)0.203g(1.5mmol)、環状アミンのホルミル化物としての1−ホルミルピロリジン0.150g(1.5mmol)を2mlの塩化メチレンに溶液させ、この溶液を冷却下、滴下し、その後、室温下12時間反応させた。
反応終了後、反応溶液を15mlのメタノールと水の1:2の混合溶液に注いだ後、30mlの塩化メチレンで3回抽出操作を行った。得られた塩化メチレン溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行い、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製したところ、1−フェニル−1−エタノールを0.112g(収率92%)で取得した。
<実施例51〜54>
1−ホルミルピロリジンに代えて表6に示したホルムアミド化合物を配位子として用いた以外は実施例50と同様の操作を行った。その結果を表6に示した。
<実施例55>
窒素雰囲気下、30mlの茄子型フラスコにアセトフェノン0.120g(1mmol)、1−ホルミルピロリジン、0.150g(1.5mmol)、塩化メチレン5mlを加え、0℃に冷却する。この溶液に、トリクロロシラン0.203g(1.5mmol)の塩化メチレン溶液を滴下し、12時間反応させた。
反応終了後、実施例5と同様の後処理操作を行なったところ、1−フェニル−1−エタノールを0.110g(収率90%)で取得した。
<実施例56〜58>
1−ホルミルピロリジンに代えて表7に示したホルムアミド化合物を配位子として用い、反応時間を15時間にした以外は実施例55と同様の操作を行った。その結果を表7に示した。
<実施例59>
1−ホルミルピロリジンの使用量を0.1mmolにし、反応時間を24時間にした以外は、実施例55と同様の操作を行ったところ、1−フェニル−1−エタノールを0.068g(収率56%)得た。
<実施例60〜63>
表8に示したホルムアミド化合物を0.1mmol用い、反応時間を24時間にした以外は実施例55と同様の操作を行った。その結果を表8に示した。
<実施例64>
1−ホルミルピロリジンに代えて、N−ホルミル−L−プロリル−D−フェニルアラニルメチルエステルを使用した以外は実施例59と同様の操作を行ったところ、1−フェニル−1−エタノールを0.085g(収率70%)得た。また、この時の光学純度は25%eeで、R体が主生成物であった。
<実施例65〜73>
アセトフェノンに代えて表9に示したケトン化合物を用いた以外は実施例55と同様の操作を行った。その結果を表9に示した。
<比較例2>
1−ホルミルピロリジンに代えて、本ホルムアミド化合物に属さないN,N−ジメチルホルムアミドを用いた以外は実施例46と同様の操作を行なった。その結果、−186.4ppmと−192.0ppmにシグナルが観測され、その錯体は六配位であった。
<比較例3>
1−ホルミルピロリジンに代えて、N,N−ジメチルホルムアミドを用いた以外は実施例55と同様の操作を行った。その結果、1−フェニル−1−エタノールの収量は、0.064g(収率53%)にすぎなかった。
<比較例4>
1−ホルミルピロリジンに代えて、N,N−ジメチルホルムアミドを用いた以外は実施例59と同様の操作を行った。その結果、1−フェニル−1−エタノールの収量は、0.034g(収率28%)にすぎなかった。
<実施例74>
窒素雰囲気下、30mlの茄子型フラスコに2−シクロヘキセン−1−オン0.192g(2mmol)、1−ホルミルピロリジン0.020g(0.2mmol)溶媒としての塩化メチレン10mlを加え、0℃に冷却した。この溶液に、トリクロロシラン0.813g(6mmol)の塩化メチレン溶液3mlを滴下し、室温下45時間反応させた。
反応終了後、実施例50と同様の操作を行なったところ、シクロヘキサノールを0.175g(収率87%)2−シクロヘキセン−1−オールを0.021g(収率11%)で取得した。
<実施例75>
窒素雰囲気下、30mlの茄子型フラスコに1−フェニルイミノ−1−フェニルエタン0.195g(1mmol)、1−ホルミル−L−プロリンフェニルアミド0.022g(0.1mmol)、溶媒としての塩化メチレン4mlを加え、0℃に冷却した。この溶液に、トリクロロシラン0.203g(1.5mmol)の塩化メチレン溶液2mlを滴下し、室温下24時間反応させた。
反応終了後、実施例50と同様の操作を行なったところ、N−フェニル−1−フェニルエチルアミンを0.180g(収率91%)を取得した。この時の光学純度は55%eeで、R体が主生成物であった。
<実施例76>
配位子を1−ホルミル−L−プロリン(1−ナフチル)アミドに代えた以外は実施例75と同様の操作を行った。その結果、N−フェニル−1−フェニルエチルアミンを0.103g(収率52%)取得した。この時の光学純度は66%eeで、R体が主生成物であった。
<実施例77〜79>
イミン化合物を表10に示した化合物にした以外は実施例76と同様の操作を行った。その結果を表10に示した。
<実施例80>
窒素雰囲気下、30mlの茄子型フラスコにベンズアルデヒド0.212g(2mmol)、1−ホルミルピロリジン2.0mg(0.02mmol)、溶媒としての塩化メチレン10mlを加え、0℃に冷却した。この溶液に、トリクロロシラン0.406g(3mmol)の塩化メチレン溶液2mlを滴下し、0℃で5時間反応させた。
反応終了後、実施例50と同様の操作を行なったところ、ベンジルアルコールを0.210g(収率97%)を取得した。
<実施例81〜85>
ベンズアルデヒドに代えて表11に示したアルデヒド化合物を原料として用いた以外は実施例80と同様の操作を行った。その結果を表11に示した。
<比較例5>
1−ホルミルピロリジンに代えて、N,N−ジメチルホルムアミドを用いた以外は実施例80と同様の操作を行った。その結果、ベンジルアルコールの収量は、0.054g(収率25%)にすぎなかった。
<実施例86>
窒素雰囲気下、30mlの茄子型フラスコにN−ベンジリデンアラニン0.362g(2mmol)、1−ホルミルピロリジン2.0mg(0.02mmol)、溶媒としての塩化メチレン4mlを加え、0℃に冷却した。この溶液に、トリクロロシラン0.406g(3mmol)の塩化メチレン溶液2mlを滴下し、0℃で3時間反応させた。
反応終了後、実施例50と同様の操作を行なったところ、N−ベンジルアラニンを0.352g(収率96%)を取得した。
<実施例87〜90>
N−ベンジリデンアラニンに代えて表12に示したイミン化合物を原料として用いた以外は実施例86と同様の操作を行った。その結果を表12に示した。
<比較例6>
1−ホルミルピロリジンに代えて、N,N−ジメチルホルムアミドを用いた以外は実施例86と同様の操作を行った。その結果、N−ベンジルアラニンの収量は、0.183g(収率50%)にすぎなかった。
Claims (8)
- トリクロロシランと混合したときに74.9MHzの29Si−NMR測定で−15〜−120ppmにシグナルを与える、炭素原子数が3以上の二級アミンのN−ホルミル化物からなる配位子化合物の存在下に、不飽和有機化合物とトリクロロシランとを混合して不飽和有機化合物を還元することを特徴とする不飽和有機化合物の還元体の製造方法。
- 前記配位子化合物が、トリクロロシラン0.2モル/リットルの溶液にトリクロロシランに対して該配位子化合物を等モル加えたときに得られる溶液において、74.9MHzの29Si−NMR測定で−15〜−120ppmにシグナルを与える配位子化合物である請求項1に記載の不飽和化合物の還元体の製造方法。
- 前記炭素原子数が3以上の二級アミンのN−ホルミル化物が、炭素原子数が3以上の環状アミンのN−ホルミル化物であるか、又は窒素原子のβ位の炭素がオキソ基を形成する二級アミンのN−ホルミル化物である請求項1に記載の還元体の製造方法。
- 前記不飽和有機化合物が、ケトン化合物、アルデヒド化合物及びイミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の還元体の製造方法。
- (a)珪素原子の配位数が5である単核の珪素錯体であって、該珪素錯体中の珪素原子に配位する5個の配位子の内、4個の配位子は1つの水素原子と3つの塩素原子であり、残りの1個の配位子は、トリクロロシランに作用して安定な5配位の珪素錯体を形成し得る、炭素原子数が3以上の二級アミンのN−ホルミル化物よりなる配位子化合物からなる単核の珪素錯体、及び/又は(b)各珪素原子の配位数が6である複核の珪素錯体であって、該珪素錯体中の各珪素原子にそれぞれ配位する6個の配位子の内、5個の配位子は1つの水素原子と4つの塩素原子であり、残りの1個の配位子は、トリクロロシランに作用して安定な5配位の珪素錯体を形成し得る、炭素原子数が3以上の二級アミンのN−ホルミル化物よりなる配位子化合物からなる複核の珪素錯体からなる還元剤。
- トリクロロシランに作用して安定な5配位の珪素錯体を形成し得る、炭素原子数が3以上の二級アミンのN−ホルミル化物よりなる配位子化合物が、トリクロロシラン0.2モル/リットルの溶液中で該配位子化合物をトリクロロシランに対して等モル作用させたときに得られる溶液を74.9MHzの29Si−NMR測定したときに検出可能な5配位の珪素錯体を形成する化合物である請求項5に記載の還元剤。
- トリクロロシランに作用して安定な5配位の珪素錯体を形成し得る、炭素原子数が3以上の二級アミンのN−ホルミル化物よりなる配位子化合物が、トリクロロシラン0.2モル/リットルの溶液中で該配位子化合物をトリクロロシランに対して等モル加えたときに得られる溶液を74.9MHzの29Si−NMR測定したときに−15〜−120ppmにシグナルが観測される化合物である請求項5に記載の還元剤。
- 前記炭素原子数が3以上の二級アミンのN−ホルミル化物が、炭素原子数が3以上の環状アミンのN−ホルミル化物であるか、又は窒素原子のβ位の炭素がオキソ基を形成する二級アミンのN−ホルミル化物である請求項5に記載の還元剤。
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