JP4572515B2 - 電界効果トランジスタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機半導体を用いた電界効果トランジスタに関する。
【0002】
【従来の技術】
電界効果トランジスタは、バイポーラトランジスタと並んで重要なスイッチ、増幅素子として広く利用されている。電界効果トランジスタは、半導体材料にソース電極及びドレイン電極と、絶縁体層を介してゲート電極を設けた構造を有する。電界効果トランジスタの動作特性は、用いられる半導体のキャリア移動度μ、電気伝導度σ、絶縁体層の静電容量Ci、素子の構成(ソース電極−ドレイン電極間距離L及び幅W、絶縁体層の膜厚d等)により決まるが、この中で、半導体材料の特性としては、高い移動度(μ)を有するものが良好な特性を示すことになる。
【0003】
現在、半導体材料としてはシリコンが広く用いられている。シリコンに代表される無機半導体は、製造時に300℃以上の高温で処理する必要があることから、基板にプラスチック基板やフィルムを用いることが難しく、かつ製造に多くのエネルギーを必要とするという欠点がある。また、真空での素子作製プロセスを経るため、製造ラインに高価な設備を必要とし、高コストになるという欠点もある。
【0004】
これに対して、有機半導体を用いたトランジスタは、その殆どが無機半導体より低温プロセスで製造することができるため、基板としてプラスチック基板やフィルムを用いることができ、軽量で壊れにくい素子を作製することができる。また、溶液の塗布や印刷法を用いた素子作製が可能なものもあり、大面積の素子を低コストで製造することが可能である。更に、材料のバリエーションが豊富であり、分子構造を変化させることにより容易に材料特性を根本的に変化させることが可能であるため、異なる機能を組み合わせることで、無機半導体では不可能な機能、素子を実現することも可能である。
【0005】
半導体として有機半導体を用いたトランジスタについて、特許文献1には、導電性高分子、共役高分子を利用したものが記載され、特許文献2には、低分子化合物を利用したものが記載されている。
【0006】
従来の半導体として有機半導体を用いたトランジスタの代表的な構造を図1〜3に示す。
【0007】
図1の電界効果トランジスタにあっては、支持基板1上にゲート電極2が設けられ、更にこの上に絶縁体層3及び有機半導体層4が設けられている。この有機半導体層4に接するように、ソース電極5とドレイン電極6が絶縁体層3上に設けられている。この電界効果トランジスタはボトムゲート・ボトムコンタクト型と称される。
【0008】
図2の電界効果トランジスタにあっては、絶縁体層3上の有機半導体層4上にソース電極5とドレイン電極6が設けられている点が図1に示す電界効果トランジスタと異なり、その他は同様の構成とされている。この電界効果トランジスタはボトムゲート・トップコンタクト型と称される。
【0009】
図3に示す電界効果トランジスタにあっては、支持基板1上にソース電極5とドレイン電極6が設けられ、支持基板1上に有機半導体層4及び絶縁体層3が積層され、絶縁体層3上にゲート電極2が設けられている。この電界効果トランジスタは、トップゲート・ボトムコンタクト型と称される。
【0010】
このような電界効果トランジスタでは、ゲート電極2に電圧が印加されると、有機半導体層4と絶縁体層3の界面近傍における有機半導体層4のキャリア密度を変化させて、ソース−ドレイン電極5,6間に流れる電流量を変化させる。
【0011】
このような有機半導体を用いた電界効果トランジスタ(以下「有機電界効果トランジスタ」と称す場合がある。)においては、前述のように支持基板としてプラスチック基板やフィルムを用いた場合、フレキシブルで壊れ難いトランジスタを実現することができ、このような有機電界効果トランジスタはフレキシブルディスプレイにおけるスイッチング素子として用いられることが非特許文献1に開示されている。
【0012】
しかし、支持基板としてプラスチック基板やフィルムを用いた場合であっても、例えば支持基板と絶縁体層などとの間に力学的特性において大きな差異がある場合には、有機電界効果トランジスタに応力が加えられた場合、支持基板は変形し、その後応力が解除されたときには元の形状に戻っても、絶縁体層は元の形状に戻らず、それにより素子としての機能が破壊される場合があり得るが、このようなフレキシブル素子としての力学的特性と素子特性に関しての詳細な検討は未だ行われてはいない。
【0013】
【特許文献1】
特開昭61−202469号公報
【特許文献2】
特許2984370号公報
【非特許文献1】
Bell Lab. Lucent Technologies,
PNAS.,98,4835
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、特にフレキシブルディスプレイにおけるスイッチング素子の構成部材として大きな面積を占め、力学的影響を強く受ける支持基板と絶縁体層の力学的特性を最適化し、それにより有機電界効果トランジスタにおける高い移動度と、高いon電流及び低いリーク電流と、高いon/off比とを達成すると共に、これらのトランジスタ性能が安定した有機電界効果トランジスタを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の電界効果トランジスタは、絶縁体層と、該絶縁体層により隔離されたゲート電極及び有機半導体層と、該有機半導体層に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極と、ポリマーを含有する支持基板とを有する電界効果トランジスタにおいて、該絶縁体層の降伏点での伸びε1(%)が、該支持基板の降伏点での伸びε2(%)より大きく、ε2が3.1%以上であることを特徴とする。
【0016】
前述の如く、有機電界効果トランジスタにおいて、支持基板としてプラスチック基板やフィルムを用いた場合には、フレキシブルで壊れ難いトランジスタとすることが可能であるが、本発明者らは、フレキシブルディスプレイ用途に用いられる支持基板と絶縁体層とを有する有機電界効果トランジスタにあっては、支持基板によるフレキシブル特性を有効に発揮させるためには、支持基板自体がフレキシブルであるだけでなく、応力が加えられたときには、支持基板のしなりに応じて絶縁体層が追随し、且つ、応力が除去されたときには元の形状に復元される物性が得られるような、支持基板と絶縁体層との組み合せが重要であることを知見した。
【0017】
本発明に従って、絶縁体層の降伏点での伸びε1(%)が支持基板の降伏点での伸びε2(%)より大きく、好ましくは、この伸びε1(%)と伸びε2(%)との比(ε1/ε2)が、1.1以上で15以下である組み合せを採用することにより、上記物性を十分に得ることができる。
【0018】
なお、このような物性は、「弾性限界点(応力を除去した時に、応力変形座標で原点に戻る点)の伸びε(%)」が関係すると考えられる。しかし、この「弾性限界点の伸び」を測定することは困難であるので、本発明では、「弾性限界点での伸び」とほぼ一致する「降伏点での伸びε(%)」をパラメータとして用いる。従って、本発明においては、支持基板及び絶縁体層の「降伏点での伸びε(%)」の関係を特定しているが、本質的には、「弾性限界点の伸び」の関係を示している。
【0019】
本発明において、伸びを測定する降伏点とは、次のようなものである。即ち、支持基板や絶縁体層に作用する応力を増してゆき、弾性限界を超えてある値に達すると、応力の増加が殆どないまま、急激に塑性ひずみが増加する。この点が降伏点(降伏応力)である。本発明では、支持基板及び絶縁体層について、この降伏点での伸び%を規定する。
【0020】
本発明に係る「降伏点での伸び」は、支持基板と絶縁体層の各々について、同じ厚さ、同じ大きさの試験片を作成し、JIS K7113に従って求めるものであり、材料に純粋な引張応力を所定のひずみ速度(又は荷重速度)でかけることにより、その材料の引張応力と伸びひずみとの関係を求め、この引張応力−ひずみ曲線から降伏点を求め、その降伏点の伸び(%)を特定することにより求めることができる。
【0021】
本発明においては、絶縁体層が、有機電界効果トランジスタに応力が加えられたときには、支持基板のしなりに応じて十分に追随し、応力が除去されたときに元の形状に復元され、初期の形状を保持するという、良好なフレキシブル特性を有するため、応力が加えられることによるクラックの発生等が抑止され、これによりリーク電流が低減されることで、高い移動度と高いon電流及び低いリーク電流、高いon/off比が達成される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の電界効果トランジスタの実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明の電界効果トランジスタは、絶縁体層と、この絶縁体層により隔離されたゲート電極及び有機半導体層と、この有機半導体層に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極とを、支持基板上に有するものであり、その構造には特に制限はなく、図1に示すボトムゲート・ボトムコンタクト型、図2に示すボトムゲート・トップコンタクト型、図3に示すトップゲート・ボトムコンタクト型などが挙げられる。
【0024】
本発明においては、このような電界効果トランジスタにおいて、絶縁体層の降伏点での伸びε1(%)が支持基板の降伏点での伸びε2(%)より大きい、即ち、ε1>ε2、好ましくは、前記絶縁体層の降伏点での伸びε1(%)と支持基板の降伏点での伸びε2(%)との比(ε1/ε2)の下限が1.1以上である。また、上限については特に限定はないが、好ましくは15以下、より好ましくは13以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
【0025】
絶縁体層の降伏点での伸びε1(%)が支持基板の降伏点での伸びε2(%)より小さいと、支持基板のしなりに絶縁体層が十分に追随し得ず、また形状の復元性も劣るものとなり、本発明の目的を達成し得ない。また、絶縁体層の降伏点での伸びε1(%)が支持基板の降伏点での伸びε2(%)と同じ場合には、支持基板のしなりに絶縁体層が追随するものの、部分的に絶縁膜が伸びたり、歪んだ場合に絶縁膜の変化が起こる可能性がある。絶縁体層の降伏点での伸びε1(%)が支持基板の降伏点での伸びε2(%)に対して過度に大きいと、絶縁体層と支持基板及び電極との接着性が悪くなり、素子形状の維持に問題が発生する。
【0026】
このような本発明の範囲となる支持基板と絶縁体層との組み合せを選択するには、使用する支持基板に対して、絶縁体層の降伏点での伸びε1が支持基板の降伏点での伸びε2より大きくなるように、絶縁体層の成膜条件を調節するのが簡便である。具体的には、絶縁体層の材料として硬化性樹脂組成物を用い、更にこの組成物中のエラスチックな成分の添加量を調節する方法等が挙げられる。
【0027】
なお、絶縁体層の降伏点での伸びε1(%)の下限は特に限定はないが、1%以上であることが好ましく、更に好ましくは1.2%以上である。上限は特に制限はないが、25%以下であることが好ましく、更に好ましくは10%以下である。絶縁体層の降伏点での伸びε1(%)が小さすぎると、支持基板の曲げに追随できず、クラックの発生や支持基板及び電極半導体層との剥離が生じてしまう。また、大きすぎると絶縁体層の曲げによる伸びに支持基板、電極及び半導体層が剥離してしまう可能性がある。
【0028】
また、支持基板の降伏点での伸びε2(%)の下限は特に限定はないが、0.5%以上であることが好ましく、更に好ましくは1%以上である。上限は特に制限はないが、20%以下であることが好ましく、更に好ましくは8%以下である。支持基板の降伏点での伸びε2(%)が小さすぎると曲げにより破壊がおき、トランジスタ全体の形状維持が困難で、大きすぎると支持基板の曲げによる伸びに絶縁体層、電極及び半導体層が追随できずに剥離してしまう可能性がある。
【0029】
本発明において、電界効果トランジスタの構成材料自体には特に制限はなく、従来電界効果トランジスタに適用されているものをいずれも好適に用いることができる。
【0030】
本発明において支持基板は単層構造であっても、積層構造であっても特に構わないが、積層構造の場合、最も絶縁体層に近い基板構成層の降伏点での伸びε2(%)が、絶縁体層の降伏点での伸びε1(%)以下であることが必要である。
【0031】
支持基板の材料としては、ポリマーを含有し電界効果トランジスタ及びその上に作成される表示素子、表示パネル等を支持できるものであれば良く、好ましくは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、アモルファスポリオレフィン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ビニル系ポリマー、ポリパラバン酸、ポリシルセスキオキサン、及びシロキサンよりなる群から選択されるプラスチック基板が好適である。更に、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類やポリカーボネート等の汎用樹脂が強度やコストの点から好ましく、また、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリパラバン酸等の縮合系高分子や、熱処理などにより不溶化が行えるポリビニルフェノール等の架橋体が耐熱性や耐溶剤性の点から好ましい。支持基板の構成材料としては、特に、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが好ましく、最も好ましいのはポリエチレンテレフタレート等のポリエステル及びポリイミドである。
【0032】
支持基板の材料としては、上記ポリマーを含む共重合体やブレンドであっても構わない。また、必要に応じて、充填剤、添加剤等を含んでいても構わない。
【0033】
支持基板の材料としては、ガラス転移点(Tg)が40℃以上であることが好ましい。支持基板の構成材料のTgが40℃より低いと流動性が高く、基板とはなり得ない。また、絶縁体層作製時の使用溶媒に対して耐溶剤性を示すものが好ましい。また、線膨張係数が25×10−5・cm・cm−1・℃−1以下であるのが好ましく、更に好ましくは10×10−5・cm・cm−1・℃−1以下である。線膨張係数が25×10−5・cm・cm−1・℃−1より大きいと、製造時の熱処理に寸法変化を起こし、トランジスタ性能が安定しない。また、絶縁体層や電極との密着性が高いものが望ましい。
【0034】
支持基板の厚みの上限は2mm以下が好ましく、更に好ましくは1mm以下である。また、下限は0.01mm以上が好ましく、更に好ましくは0.05mm以上である。
【0035】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の構成材料は、導電性を示すものであれば良く、公知のものをいずれでも用いることができ、例えば白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属、InO2、SnO2、ITO等の導電性酸化物、樟脳スルホン酸がドープされたポリアニリン、パラトルエンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン等のドープされ良好な電気伝導度を示す導電性高分子、カーボンブラック、金属微粒子、グラファイト粉等がバインダーに分散されてなり良好な電気伝導度を示す導電性複合材料などが挙げられる。
【0036】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の形成法としては、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等が挙げられ、更にそのパターニング方法としては、フォトレジストのパターニングとエッチング液や反応性のプラズマでのエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法及びこれらの手法を複数組み合わせた手法などが挙げられる。また、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去することや材料の導電性を変化させることにより、直接パターンを作製することも可能である。
【0037】
これらゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の厚みの下限は0.01μm以上が好ましく、更に好ましくは0.02μm以上である。また、上限は2μm以下が好ましく、更に好ましくは1μm以下である。
【0038】
なお、ソース電極−ドレイン電極間距離(チャンネル長さL)は通常100μm以下、好ましくは50μm以下であり、チャンネル幅Wは通常2000μm以下、好ましくは500μm以下であり、L/Wは通常0.1以下、好ましくは0.05以下である。
【0039】
絶縁体層を構成する絶縁材料としては、その降伏点での伸びε1(%)が支持基板の降伏点での伸びε2(%)より大きいものであって、ゲート電極への電流の漏れを防ぎかつ低ゲート電圧で電界効果トランジスタを駆動させることができるように絶縁性に優れかつ比較的大きな比誘電率を持つものであれば公知のものをいずれでも用いることができ、例えばポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフッ化ビニリデン、シアノ基やニトロ基を含む炭化水素系樹脂等のポリマー及びこれらを組み合わせた共重合体、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、窒化珪素等の窒化物、SrTiO3、BaTiO3等の強誘電性酸化物、あるいは、上記酸化物や窒化物、強誘電性酸化物等の粒子を分散させたポリマー膜等が挙げられる。中でもエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シアノ基やニトロ基を含む炭化水素系樹脂が好ましい。シアノ基やニトロ基を含む炭化水素系樹脂として好ましいのは、シアノ基やニトロ基で置換された炭化水素が水酸基に結合した多糖類で、更に好ましくはシアノプルランである。
【0040】
また、絶縁体の前駆物質としてモノマーを塗布した後、光を照射して硬化させることにより絶縁体を形成する光硬化樹脂を用いたり、もしくは架橋剤や架橋基によりポリマーやモノマーを熱架橋する樹脂を用いることもできる。その際に、エラスチックな成分の添加量を調節することにより、前述の如く、絶縁体層の伸びを支持基板に対応して容易に所望の範囲に調節することができ、好ましい。
【0041】
絶縁体層は、単層構造であっても、積層構造であっても特に限定されない。例えば、高誘電性の絶縁膜を安定的に使用するために、低誘電性の絶縁膜を積層した積層構造の絶縁体層とすることもできる。絶縁体層が積層構造の場合は、降伏点での伸びε1(%)が最も小さい層が、支持基板の降伏点での伸びε2(%)より大きい必要がある。
【0042】
また、絶縁体層の材料としては、ガラス転移点(Tg)が80℃以上であることが好ましい。Tgが80℃より低いと、流動性が高く、膜厚不均一化や表面状態凹凸化等が発生し、絶縁体層を維持できない。また、支持基板を溶解しない溶媒に可溶で、かつ塗布型半導体層の作製時に溶剤に侵食されない耐溶剤性を有することが望ましい。
【0043】
また、絶縁体層の表面粗さとしては300nm以下が好ましく、更に好ましくは10nm以下となるような材料であることが望まれる。絶縁体層の表面粗さが300nmより大きいと、絶縁体層と有機半導体層との界面が粗くなり、トランジシタ特性が悪化する。また、絶縁体層は線膨張係数が25×10−5・cm・cm−1・℃−1以下であるのが好ましく、更に好ましくは10×10−5・cm・cm−1・℃−1以下である。線膨張係数が25×10−5・cm・cm−1・℃−1より大きいと、トランジスタ製造時の熱処理で寸法変化を起こし、トランジスタ性能が安定しない。更に基板や電極との密着性が高いものが望ましい。
【0044】
絶縁体層の形成方法としては、スピンコートやブレードコートなどの塗布法、蒸着法、スパッタ法、スクリーン印刷やインクジェット等の印刷法等、材料の特性に合わせた形成方法を採用することができる。好ましくは、塗布法や印刷法である。
【0045】
このようにして形成される絶縁体層は、ゲート電極への漏れ電流、電界効果トランジスタの低ゲート電圧駆動に関係することから、室温での電気伝導度が10−12S/cm以下、更には10−14S/cm以下、比誘電率が2.0以上、更には2.5以上を示すことが好ましい。
【0046】
このような絶縁体層の厚みの上限は4μm以下が好ましく、更に好ましくは2μm以下である。下限は0.1μm以上が好ましく、更に好ましくは0.2μm以上である。
【0047】
有機半導体層を形成する有機半導体は特に限定されず、π共役系の低分子及び高分子であれば公知のものをいずれでも用いることができ、例えばペンタセン、オリゴチオフェン、置換基を有するオリゴチオフェン、ビスジチエノチオフェン、置換基を有するジアルキルアントラジチオフェン、金属フタロシアニン、ベンゾポルフィリン、フッ素置換された銅フタロシアニン、N,N’−ジアルキル−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド置換体、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、N,N’−ジアルキル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、フラーレンなどのπ共役系低分子やレジオレギュラーポリ(3−ヘキシルチオフェン)に代表されるレジオレギュラーポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ−9,9’−ジアルキルフルオレンコビチオフェンなどのπ共役系共重合体等のπ共役系高分子が挙げられる。
【0048】
これらπ共役系低分子、高分子のなかでも、有機半導体層を形成した場合、そのソース電極−ドレイン電極方向の電気伝導度が10−4S/cm以下、10−12S/cm以上を示すものが好ましく、特に10−6S/cm以下、10−11S/cm以上、とりわけ10−7S/cm以下、10−10S/cm以上を示すものがより好ましい。更にまた、これらπ共役系低分子、高分子のなかでも、有機半導体層を形成した場合に電界効果移動度とソース電極−ドレイン電極方向の電気伝導度、及び電荷素量から求めたキャリア密度が107cm−3以上、1018cm−3以下を示すものが好ましく、特に108cm−3以上、1017cm−3以下を示すものがより好ましい。また、これらπ共役系低分子、高分子のなかでも、有機半導体層を形成した場合に電界効果移動度の室温以下での温度依存性から求められる電荷移動に要する活性化エネルギーが0.2eV以下を示すものが好ましく、特に0.1eV以下を示すものがより好ましい。
【0049】
更にまた、これらπ共役系低分子のなかでも分子長が40Å以下のものにおいては、該電界効果トランジスタに用いた絶縁体層と同じ絶縁体層上に有機半導体層を形成した場合、層表面に対する法線に対して60°の角度から入射光を入れて測定した偏光吸収において、これらπ共役系低分子の分子軸方向の遷移モーメントに由来する吸収ピーク強度のp偏光成分とs偏光成分の比であるp偏光成分/s偏光成分が1.5以上、更には2.0以上、特には3.0以上を示す特性を持つものが好ましい。
【0050】
また一方で、分子長が40Åより大きいπ共役系高分子においては、該電界効果トランジスタに用いた絶縁体層と同じ絶縁体層上に有機半導体層を形成した場合、層表面に垂直方向から入射光を入れて測定した偏光吸収において、これらπ共役系高分子の主鎖方向の遷移モーメントに由来する吸収ピーク強度のソース電極−ドレイン電極方向成分とそれに垂直方向成分の比であるソース電極−ドレイン電極方向成分/垂直方向成分が3.5以上、更には4.5以上、特には5.0以上を示す特性を持つものが好ましい。
【0051】
更にまた、これらπ共役系低分子、高分子のなかでも、該電界効果トランジスタに用いた絶縁体層と同じ絶縁体層上に有機半導体層を形成した場合、最隣接分子或いは高分子間の距離が3.9Å以下、更には3.85Å以下、特には3.8Å以下である特性を示すものが好ましい。
【0052】
このような有機半導体層の膜厚の下限は、好ましくは1nm以上で、更に好ましくは10nm以上である。また、上限は10μm以下が好ましく、更に好ましくは500nm以下である。
【0053】
これらの有機半導体を用いた有機半導体層を形成する方法としては、低分子有機半導体の場合には、真空蒸着により絶縁体層又は支持基板上に蒸着して形成する方法、溶媒に溶解してキャスト、ディップ、スピンコートなどにより塗布して形成する方法などが挙げられる。高分子有機半導体の場合は、溶媒に溶解してキャスト、ディップ、スピンコートなどにより塗布して形成する方法などが挙げられる。また、目的とする低分子前駆体或いは目的とする高分子前駆体を用いて前述の適切な方法により層形成し、その後に加熱処理等により目的とする有機半導体層に変換する方法も挙げられる。
【0054】
本発明の電界効果トランジスタの基本的な構造は、絶縁体層と、この絶縁体層により隔離されたゲート電極及び有機半導体層と、この有機半導体層に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極とを支持基板上に有するものであり、その具体的な構造としては図1〜3に示すようなものが挙げられるが、本発明の電界効果トランジスタは、何ら図1〜3に示す構造の電界効果トランジスタに限定されず、更に図1〜3に示される層以外の層が形成されていても良い。
【0055】
例えば、図1,2に示す電界効果トランジスタのように、有機半導体層が表出している電界効果トランジスタにあっては、有機半導体に対する外気の影響を最小限にするために、更にこの上に保護膜を形成しても良く、この場合、保護膜の材料としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール等のポリマーや酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物や窒化物等が挙げられる。保護膜の形成方法としては塗布法や真空蒸着法などが挙げられる。
【実施例】
以下に実験例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
まず、各樹脂材料について、降伏点での伸びを測定する実験を行った。
【0057】
実験例1
以下の樹脂を用い、下記のNo.1〜7の各材料の降伏点での伸びを、JIS−K7113規格による引張り試験の10回の平均値として求め、結果を表1に示した。
ポリエチレンテレフタレート(PET):三菱化成製「SP−976−3」
ポリイミド(PI):Du pont製「カプトン(商品名)」
ポリスチレン(PS):Aldrich製
(Mw=280000(GPC法))
シアノプルラン(CYEPL):Shinetsu co.製
「シアノレジン CR−S」
ポリカーボネート(PC):Aldrich製
(Mw=64000(GPC法))
ポリビニルフェノール(PVP):Aldrich製
(Mw=20000(GPC法))
【0058】
No.1:ポリスチレン(PS)を15重量%濃度でクロロホルムに溶解させた後、0.45μmのフィルターで濾過した。このPS溶液を10×10cm2のガラス板上に5mL展開し、1000rpmで120secの間スピンコートを行った。減圧乾燥機で24時間真空乾燥を行った後、PSフィルム付きガラス板を純水に浸してPSフィルムの剥離処理を行った。剥離したPSフィルムを減圧乾燥機で24時間真空乾燥を行った後、マイクロメーター(Anritsu社製)でPSフィルムの膜厚を測定した結果、20μmであった。このフィルムについて、降伏点での伸び率を測定した。
【0059】
No.2:上記1において、ポリスチレンの代わりに、シアノプルラン(CYEPL)を5重量%濃度でジメチルホルムアミド(DMF):アセトニトリル(1:1(重量比))混合溶媒に溶解させたこと以外は、上記No.1と同様にして膜厚30μmのCYEPLフィルムを得、このフィルムについて降伏点での伸び率を測定した。
【0060】
No.3:上記No.1において、ポリスチレンの代わりに、ポリカーボネート(PC)を用いたこと以外は、上記No.1と同様にして膜厚20μmのPCフィルムを得、このフィルムについて降伏点での伸びを測定した。
【0061】
No.4:ポリビニルフェノール(PVP)と架橋剤としてポリ(メラミン−co−ホルムアルデヒド)メタクリレート(Aldrich社製)とを、4:1(重量比)の割合で用い、この混合物を15重量%濃度でテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた後、0.45μmのフィルターで濾過した。このPVP溶液を10×10cm2のガラス板上に5mL展開し、1000rpmで120secの間スピンコートを行った。その後、120℃にて熱処理を3min行い、PVP熱架橋膜を作製した。減圧乾燥機で24時間真空乾燥を行った後、PVPフィルム付きガラス板を純水に浸してPVP架橋フィルムの剥離処理を行った。剥離したPVP架橋フィルムを減圧乾燥機で24時間真空乾燥を行った後、マイクロメーター(Auritsu社製)でPVP架橋フィルムの膜厚を測定した結果、20μmであった。このフィルムを低架橋PVPフィルムとして降伏点での伸び率を測定した。
【0062】
No.5:上記No.4において、ポリビニルフェノール(PVP)と架橋剤としてのポリ(メラミン−co−ホルムアルデヒド)メタクリレート(Aldrich社製)との混合比を3:2とし、濃度を5重量%に変更したこと以外は、上記No.4と同様にして、膜厚20μmの高架橋PVPフィルムを得、このフィルムについて降伏点での伸び率を測定した。
【0063】
No.6:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(膜厚200μm)を10×10cm2に切り出し、降伏点での伸び率を測定した。
【0064】
No.7:ポリイミド(PI)フィルム(膜厚100μm)を10×10cm2に切り出し、降伏点での伸び率を測定した。
【0065】
なお、表1には、各々の樹脂材料のデータハンドブック等に記載されている降伏点での伸びを文献値として併記すると共に、比誘電率を記載した。
【0066】
【表1】
【0067】
次に、表1の樹脂材料を用いて、実施例1〜5及び比較例1〜5の方法で支持基板上に絶縁体層を形成して絶縁膜付き支持基板を作製し、各々の絶縁膜付き支持基板について、以下の評価を行った。
【0068】
<JIS−K6744規格による曲げ試験>
絶縁膜付き支持基板を、JIS−K6744規格に準じて作製した金属製Vブロックに装着し、荷重を変化させて支持基板の降伏点に到達する直前まで曲げ試験を行った。なお、支持基板がPET基板の場合は、降伏点での伸び率が2.6%、PI基板の場合は、降伏点での伸び率が1.7%になるように曲げ試験を行い、次の判定を行った。
○:支持基板から絶縁膜の剥離なし。
×:支持基板から絶縁膜の剥離あり。又は、表面に亀裂あり。
【0069】
<絶縁膜の表面形状観察>
一部の絶縁膜付き支持基板について、上記のJIS−K6744規格による曲げ試験前後の表面形状を、Seiko Instruments社製の原子間力顕微鏡(AFM)にて観察し、次の判定を行った。
○:曲げ試験前後で表面形状に差なし。
×:曲げ試験前は平坦であったが、曲げ試験後は表面に凹凸や亀裂が観察された。
【0070】
<絶縁膜の電気抵抗測定>
一部の絶縁膜付き支持基板について、上記のJIS−K6744規格による曲げ試験前後における絶縁膜の電気抵抗を測定した。ゲート電極に対してクロスになるように幅1mmのシャドーマスクを用いて、厚さ1000Åのアルミニウム電極をウルバック社製真空蒸着機EX−400(真空度:1.3×10−4Pa)を用いて蒸着し、電極間をAgilent社製の半導体パラメーターアナライザー4155で測定し、電圧−電流曲線を求めて、その電気伝導度を算出した。
【0071】
<トランジスタ特性>
上記のJIS−K6744規格による曲げ試験を行った絶縁膜付き支持基板と曲げ試験を行っていない絶縁膜付き支持基板に対して、有機半導体層としてペンタセンを、ウルバック社製真空蒸着機EX−400(真空度:1.3×10−4Pa)を用いて、るつぼから1Å/secの速度で1000Åの厚さに蒸着した。この有機半導体層上にソース・ドレイン電極を作製するため、チャンネル(L:1000μm,W:50μm)のシャドーマスクを用いて金を1000Åの厚さで蒸着し、有機トランジスタを作製した。このトランジスタ素子について、Agilent社製の半導体パラメーターアナライザー4155を用いて測定することにより、電圧−電流曲線を求め、曲げ試験前後のトランジスタ特性の変化を評価した。
【0072】
実施例1
厚さ200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを2.5×2.5cm2に切り出した。このPETフィルム(線膨張係数2.5×10−5・cm・cm−1・℃−1,表面粗さ10nm以下)を支持基板として、この上を幅1mmのシャドーマスクで覆い、ウルバック社製真空蒸着機EX−400(真空度:1.3×10−4Pa)を用いて、アルミニウムを1000Åの厚さに蒸着して、ゲート電極を形成した。この上に、シアノプルラン(CYEPL)を、ジメチルホルムアミド(DMF):アセトニトリル=1:1(重量比)の混合溶媒に5重量%濃度に溶解させ、0.45μmのフィルターで濾過したCYEPL溶液を、5mL展開し、3000rpmで120secの間スピンコートを行って絶縁膜を形成した。膜厚計(Alpha−Step500:Tencor社製)でこのCYEPL絶縁膜の膜厚を測定した結果、5000Åであった。
【0073】
このようにして作製されたCYEPL絶縁膜(表面粗さ10nm以下)付きPET支持基板の絶縁膜の降伏点での伸びε1及び支持基板の降伏点での伸びε2とその比は表2に示す通りである。この絶縁膜付き支持基板について評価を行い、結果を表2に示した。
【0074】
実施例2
実施例1において、CYEPL溶液の代りに、ポリカーボネート(PC)を5重量%濃度でクロロホルムに溶解させたPC溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚4000ÅのPC(線膨張係数7×10−5・cm・cm−1・℃−1)絶縁膜付きPET支持基板を作製した。
【0075】
このようにして作製されたPC絶縁膜付きPET支持基板の絶縁膜の降伏点での伸びε1及び支持基板の降伏点での伸びε2とその比は表2に示す通りである。この絶縁膜付き支持基板について評価を行い、結果を表2に示した。
【0076】
実施例3
実施例1において、PETフィルムをポリイミド(PI)フィルム(線膨張係数5.0×10−5・cm・cm−1・℃−1,表面粗さ10nm以下)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚5000ÅのCYEPL絶縁膜付きPI支持基板を作製した。
【0077】
このようにして作製されたCYEPL絶縁膜付きPI支持基板の絶縁膜の降伏点での伸びε1及び支持基板の降伏点での伸びε2とその比は表2に示す通りである。この絶縁膜付き支持基板について評価を行い、結果を表2に示した。
【0078】
実施例4
実施例2において、PETフィルムをポリイミド(PI)フィルムに変更したこと以外は、実施例2と同様にして、膜厚4000ÅのPC絶縁膜付きPI支持基板を作製した。
【0079】
このようにして作製されたPC絶縁膜付きPI支持基板の絶縁膜の降伏点での伸びε1及び支持基板の降伏点での伸びε2とその比は表2に示す通りである。この絶縁膜付き支持基板について評価を行い、結果を表2に示した。
【0080】
実施例5
実施例1において、PETフィルムをポリイミド(PI)フィルムに、CYEPL溶液を、PVPとポリ(メラミン−co−ホルムアルデヒド)メタクリレート(Aldrich社製)(混合比4:1)をテトロヒドロフラン(THF)に5重量%濃度で溶解させたPVP溶液に変更し、更にこの溶液をスピンコート後に120℃にて熱処理を3min行い、PVP熱架橋膜としたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚3000Åの低架橋PVP絶縁膜付きPI支持基板を作製した。
【0081】
このようにして作製された低架橋PVP絶縁膜付きPI支持基板の絶縁膜の降伏点での伸びε1及び支持基板の降伏点での伸びε2とその比は表2に示す通りである。この絶縁膜付き支持基板について評価を行い、結果を表2に示した。
【0082】
比較例1
実施例1において、CYEPL溶液を、ポリスチレン(PS)をクロロホルムに5重量%濃度で溶解させたPS溶液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚3000ÅのPS絶縁膜付きPET支持基板を作製した。
【0083】
このようにして作製されたPS絶縁膜(表面粗さ10nm以下)付きPET支持基板の絶縁膜の降伏点での伸びε1及び支持基板の降伏点での伸びε2とその比は表2に示す通りである。この絶縁膜付き支持基板について評価を行い、結果を表2に示した。
【0084】
比較例2
実施例5において、PIフィルムをPETフィルムに変更したこと以外は、実施例5と同様にして、膜厚3000Åの低架橋PVP絶縁膜付きPET支持基板を作製した。
【0085】
このようにして作製された低架橋PVP絶縁膜付きPET支持基板の絶縁膜の降伏点での伸びε1及び支持基板の降伏点での伸びε2とその比は表2に示す通りである。この絶縁膜付き支持基板について評価を行い、結果を表2に示した。
【0086】
比較例3
実施例1において、CYEPL溶液を、ポリビニルフェノール(PVP)と架橋剤としてポリ(メラミン−co−ホルムアルデヒド)メタクリレート(Aldrich社製)(混合比3:2)をTHFに5重量%濃度で溶解させたPVP溶液に変更し、更にこの溶液をスピンコート後に120℃にて熱処理を3min行い、PVP熱架橋膜としたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚3000Åの高架橋PVP絶縁膜付きPET支持基板を作製した。
【0087】
このようにして作製された高架橋PVP絶縁膜付きPET支持基板の絶縁膜の降伏点での伸びε1及び支持基板の降伏点での伸びε2とその比は表2に示す通りである。この絶縁膜付き支持基板について評価を行い、結果を表2に示した。
【0088】
比較例4
比較例1において、PETフィルムをPIフィルムに変更したこと以外は、比較例1と同様にして、PS絶縁膜付きPI支持基板を作製した。
【0089】
このようにして作製されたPS絶縁膜付きPI支持基板の絶縁膜の降伏点での伸びε1及び支持基板の降伏点での伸びε2とその比は表2に示す通りである。この絶縁膜付き支持基板について評価を行い、結果を表2に示した。
【0090】
比較例5
比較例3において、PETフィルムをPIフィルムに変更したこと以外は、比較例3と同様にして、膜厚3000Åの高架橋PVP絶縁膜付きPI支持基板を作製した。
【0091】
このようにして作製された高架橋PVP絶縁膜付きPI支持基板の絶縁膜の降伏点での伸びε1及び支持基板の降伏点での伸びε2とその比は表2に示す通りである。この絶縁膜付き支持基板について評価を行い、結果を表2に示した。
【0092】
【表2】
【0093】
なお、実施例1,3及び比較例1,4における曲げ試験前後の表面性状のAFM観察写真を図4〜7にそれぞれ示す。
また、実施例1,3及び比較例1,4における曲げ試験前後の電圧−電流曲線の変化を図8,9にそれぞれ示す。
また、実施例1〜5及び比較例1〜5における曲げ試験前後のトランジスタ特性の変化を図10〜19に示す。
【0094】
実験例2
PS及びCYEPLにおける降伏点での伸び(%)と絶縁抵抗(電気伝導度)との関係を、絶縁ワニスの評価として行われるJIS−C2103規格による折り曲げ試験に準じて調査した。
【0095】
JIS−C2103規格に準じて、金属板上に絶縁膜としてPS及びCYEPLを上記のトランジスタ作成条件と同様の条件でそれぞれスピンコートし、次いで対向電極として金をウルバック社製真空蒸着機EX−400(真空度:1.3×10−4Pa)を用いて1000Å蒸着した。その対向電極上にリード線をドウタイト接着剤(藤倉化成製)で固定して電流測定用プローバーと接続した。徐々に基板を曲げていき、その電流量をAgilent社製の半導体パラメーターアナライザー4155で測定した結果をプロットした。
【0096】
その結果、図20に示すようにPSの降伏伸びである1.1%から絶縁抵抗の劣化が観測された。一方、CYEPLでは3.5%を超えたあたりから絶縁抵抗の劣化が観測され始めた。
【0097】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の電界効果トランジスタによれば、フレキシブルディスプレイにおけるスイッチング素子の構成部材として大きな面積を占め、力学的影響を強く受ける支持基板と絶縁体層の力学的特性が最適化されることにより、有機電界効果トランジスタにおける高い移動度と、高いon電流及び低いリーク電流と、高いon/off比とを達成すると共に、これらのトランジスタ性能が安定した有機電界効果トランジスタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】電界効果トランジスタの構造例を示す断面図である。
【図2】電界効果トランジスタの構造例を示す断面図である。
【図3】電界効果トランジスタの構造例を示す断面図である。
【図4】実施例1における曲げ試験前後の表面性状のAFM観察写真を示す図である。
【図5】実施例3における曲げ試験前後の表面性状のAFM観察写真を示す図である。
【図6】比較例1における曲げ試験前後の表面性状のAFM観察写真を示す図である。
【図7】比較例4における曲げ試験前後の表面性状のAFM観察写真を示す図である。
【図8】実施例1,3における曲げ試験前後の電圧−電流曲線の変化を示すグラフである。
【図9】比較例1,4における曲げ試験前後の電圧−電流曲線の変化を示すグラフである。
【図10】実施例1における曲げ試験前後のトランジスタ特性の変化を示すグラフである。
【図11】実施例2における曲げ試験前後のトランジスタ特性の変化を示すグラフである。
【図12】実施例3における曲げ試験前後のトランジスタ特性の変化を示すグラフである。
【図13】実施例4における曲げ試験前後のトランジスタ特性の変化を示すグラフである。
【図14】実施例5における曲げ試験前後のトランジスタ特性の変化を示すグラフである。
【図15】比較例1における曲げ試験前後のトランジスタ特性の変化を示すグラフである。
【図16】比較例2における曲げ試験前後のトランジスタ特性の変化を示すグラフである。
【図17】比較例3における曲げ試験前後のトランジスタ特性の変化を示すグラフである。
【図18】比較例4における曲げ試験前後のトランジスタ特性の変化を示すグラフである。
【図19】比較例5における曲げ試験前後のトランジスタ特性の変化を示すグラフである。
【図20】実験例2における絶縁膜の降伏点での伸びと絶縁抵抗(電気伝導度)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 支持基板
2 ゲート電極
3 絶縁体層
4 有機半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 界面
Claims (12)
- 絶縁体層と、該絶縁体層により隔離されたゲート電極及び有機半導体層と、該有機半導体層に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極と、ポリマーを含有する支持基板とを有する電界効果トランジスタにおいて、
該絶縁体層の降伏点での伸びε1(%)が、該支持基板の降伏点での伸びε2(%)より大きく、ε2が3.1%以上であることを特徴とする電界効果トランジスタ。 - 請求項1において、前記絶縁体層の降伏点での伸びε1(%)と前記支持基板の降伏点での伸びε2(%)との比(ε1/ε2)が、15以下であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
- 請求項1又は2のいずれか1項において、前記絶縁体層の厚みが0.1〜4μmであることを特徴とする電界効果トランジスタ。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記支持基板の厚みが0.01〜2mmであることを特徴とする電界効果トランジスタ。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、前記ゲート電極が前記支持基板上に設けられており、該ゲート電極上に絶縁体層を介して有機半導体層が設けられていることを特徴とする電界効果トランジスタ。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、前記ソース電極及びドレイン電極が前記絶縁体層に接していることを特徴とする電界効果トランジスタ。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、前記ソース電極及びドレイン電極が前記有機半導体層上に設けられていることを特徴とする電界効果トランジスタ。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、前記ソース電極及びドレイン電極が前記支持基板上に設けられていることを特徴とする電界効果トランジスタ。
- 請求項1ないし8のいずれか1項において、前記支持基板が、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、アモスファスポリオレフィン、ポリエーテルスルフォン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ビニル系ポリマー、ポリパラバン酸、ポリシルセスキオキサン、及びシロキサンよりなる群から選択されるプラスチック基板であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
- 請求項9において、前記支持基板が、ポリエチレンテレフタレートであるプラスチック基板であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
- 請求項1ないし10のいずれか1項において、前記絶縁体層における比誘電率が2.0以上であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
- 請求項1ないし11のいずれか1項において、前記絶縁体層における電気伝導度が10−12S/cm以下であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
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